説明

管体用ガイド針

【課題】管体を体内目的箇所に配置して行う処置についてあらゆる状況でも管体を正確且つ安全に挿入して患者への侵襲を過大にせずに処置を実施可能とする。
【解決手段】管体を経皮的に体内目的箇所に配置するためのガイド針2であって、管体に挿入可能な太さで直線状に形成された本体20先端側にベベル面22aを形成した針先部22を備え、本体20先端側の所定範囲が他の部分よりもベベル面22aの向きの逆側に湾曲しやすい易湾曲部23とされ、本体20基端側にベベル面の向きを術者に認識させるための方向指示部24を備えて、体内に刺入することで主に易湾曲部を湾曲させてベベル面22aの向きの逆側に刺入方向を曲げるものとされ、術者が本体20を軸周りに回動させて刺入方向を所望の向きにコントロールしながら針先を進め目的箇所手前に到達させた後、管体を本体20に沿って体内に挿入することで管体先端を目的箇所までガイドするものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管体用ガイド針に関し、殊に、体内目的箇所までのルートを確保して穿刺針やカテーテル等の管体を体外から目的箇所まで誘導するのに用いる管体用ガイド針に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超音波やX線等によるリアルタイムの画像ガイド下にて、所定の機能を有する穿刺針を体内の目的箇所まで刺入して所定の処置を行う治療法が普及しており、このように穿刺針を介して経皮的に処置を行うことで通常の手術療法よりも患者への侵襲や負担を小さく抑えることができる。
【0003】
例えば、注入針を介して腫瘍組織にエタノールを注入してこれを変性・壊死させる経皮的エタノール注入療法や、腫瘍組織に電極針を刺入して高周波による熱でこれを壊死させる高周波温熱療法、或いは注入針を介して神経節にピンポイントで薬剤を注入して痛みの伝達経路を遮断する神経ブロックなどの治療法が知られている。
【0004】
斯かる治療法では、穿刺針の先端側を目的箇所に正確に置くことが重要になるが、目的箇所が体深部などの到達が難しい場所にあるケースでは、穿刺針が目的箇所に到達するまでに何度も針の抜き刺し動作を行ってしまうことがある。殊に、呼吸運動により目的臓器が動いてしまう場合や、目的箇所の近くや刺入ルートの途中に太い動脈や他の臓器がある場合には、手技において困難やリスクを伴いやすい。
【0005】
これに対し、例えば特開平8−238248号公報には、位置決め用の投光器及び支持器を備えて、体表側でガイド筒を目的箇所の方向に支持することにより穿刺針の刺入点及び刺入角を決定する器具が提案されており、CTガイド下でこれを用いることにより、目的箇所が体深部にあっても穿刺針の刺入点と刺入方向を正確に決定して穿刺できるようにしている。
【0006】
しかし、このようにして最初の刺入位置・角度が正確に決まっても、上腹部や胸部の病変では、息止めが可能な患者でも、息止めのタイミングのわずかな差で目的箇所は移動し、また穿刺針は体内組織の抵抗により比較的容易に曲がって最初の刺入方向からずれることが多々あり、特に、カット面が傾斜しているベベルタイプのものはベベル面の向きの逆側に針が曲がりやすいため、体深部にある目的箇所に真っ直ぐ到達させるのが困難である。また、目的箇所への刺入ルートの途中に他の臓器や血管などの危険部位がある場合には、目的箇所に安全に到達できないのは従来と同様である。
【0007】
このように穿刺針の刺入に際し困難やリスクを伴うケースでは、細い穿刺針の方が複数回抜き差し動作を行っても患者への侵襲が小さく、また他の臓器等に誤って刺入した場合でも危険性が小さい点で有利とも言える。ところが、細い針では体内でさらに曲がりやすくなるため、針先の正確なコントロールが一層困難になってしまう。従って、比較的細い針を用いて体内で刺入方向を自在にコントロールすることができれば、先に体内目的箇所まで刺入して挿入ルートを確保しておくことにより、所定の機能を発揮する穿刺針を正確且つ安全に目標箇所まで到達させることが可能になるため、極めて有用なものとなる。
【0008】
一方、上述した治療法の他に、体内の病変に対し体外から生検針をガイド筒とともに刺入して経皮的に組織を採取する処置や、先に穿刺針で挿入ルートを確保してから体内目的箇所までカテーテルを挿入してドレナージや薬剤の連続注入を行う処置も普及しており、このような場合もこれらの管体を体内目的箇所に刺入または挿入して配置する際には、上述した問題が同様に生じることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−238248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、管体を体内目的箇所に配置して実施する処置について、あらゆる状況においても管体を正確且つ安全に挿入可能とし、患者への侵襲を過大にすることなく処置を実施できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明は、所定の機能を有する管体を経皮的に体内の目的箇所に配置するためのガイド針であって、その管体に挿入可能な太さで大部分が直線状に形成された線状金属からなる本体の先端側に1つのベベル面を形成した針先部を備えているとともに、この針先部に近接した本体先端側の所定範囲が他の部分よりもベベル面の向きの逆側に湾曲しやすい易湾曲部とされ、且つ本体基端側にベベル面の向き又はその逆の向きを術者に認識させるための方向指示部を備えており、体内に刺入することでベベル面の延長方向に針先の進行が案内されながら主として易湾曲部を湾曲させてベベル面の向きの逆側に刺入方向を曲げるものとされ、所定の画像ガイド下で術者が本体を軸周りに回動させて刺入方向を所望の向きにコントロールしながら針先を進めて目的箇所又は目的箇所手前に到達させた後、本体を挿通した管体を本体に沿って体内に挿入することにより、管体先端を目的箇所までガイドすることを特徴とするものとした。
【0012】
このように、所定の管体を体内の目的箇所までガイドするためのガイド針を、針先をベベル面にして針先に近接した所定範囲をベベル面の向きとは逆側に湾曲しやすい構造としながら、基端側にベベル面の向き又はその逆方向を認識させる構造を設けたことにより、術者が刺入方向の曲がる側を認識しつつ途中で抜き差し動作をしなくても刺入方向を変更できることに加え、危険な箇所を迂回して針先を進めることも可能になって、患者への侵襲とリスクを最小限にして体内目的箇所に正確に到達できるものとなる。
【0013】
また、その易湾曲部は、ベベル面の向きに一致する方向の幅がベベル面の向きに対し直角方向の幅よりも短く形成されてなることを特徴としたものとすれば、ベベル面の向きに一致する方向の可撓性がベベル面の向きに対し直角方向の可撓性よりも大きなものとなり、その方向に曲がりやすいものとなる。
【0014】
この場合、本体の中心軸線に対し直角な面による断面形状は易湾曲部及び針先部を除いて円形であり、易湾曲部の断面形状が円形からベベル面側の所定範囲を削ってなる略半円形であることを特徴としたものとすれば、湾曲により最も延伸されるベベル面側が削られていることにより、ベベル面の向きの逆側に一層湾曲しやすいものとなる。
【0015】
さらに、上述した管体用ガイド針において、その方向指示部は、直線状の線状金属部材からなる本体の基端側所定範囲を、ベベル面の向きとは逆側又はベベル面の向き側に屈曲してなることを特徴としたものとすれば、その屈曲された端部側の向きによりベベル面の向き又は刺入方向の曲がる側を術者が認識しやすいものとなる。
【0016】
さらにまた、上述した管体用ガイド針において、その本体の基端側には、本体よりも大径で円柱状の部材からなるハブが、その中心軸線を通る挿通孔に本体を挿通した状態で、少なくとも軸周り方向回動不能に本体に固定されており、刺入操作時の把持部として用いられるとともに、本体を軸周り方向に回動させる際の摘みとして用いられることを特徴としたものとすれば、術者によるガイド針の操作が容易なものとなる。
【0017】
加えて、上述した管体用ガイド針において、その本体には、先端からの距離が挿通する管体の全長に一致する位置に、管体の挿入深さの基準として用いるための目印が表示されていることを特徴としたものとすれば、管体の先端を正確な位置に置きやすいものとなる。
【0018】
また加えて、上述した管体用ガイド針において、その管体は所定の液体を注入するための注入針又は生検針用のガイド筒又は電極針用のガイド筒であることを特徴としたものとすれば、正確且つ安全な挿入操作の確保が極めて有用なものとなり、或いは、上述した管体用ガイド針において、その管体は所定の液体を注入するための注入用カテーテル又は体内腔に溜まった液体を排出するためのドレーン用カテーテルであることを特徴としたものとしても、同様に極めて有用なものとなる。
【発明の効果】
【0019】
ガイド針先端にベベル面を有するとともにベベル面の向きの逆側に湾曲しやすい構造及び湾曲方向を認識させる構造を設けた本発明によると、術者が刺入方向を容易にコントロールできるようになり、あらゆる状況においても管体を正確且つ安全に挿入可能とし、患者への侵襲を過大にすることなく処置を実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態の管体用ガイド針の正面図。
【図2】(A)は図1の管体用ガイド針の先端側部分を拡大した部分正面図、(B)は(A)のX−X線に沿う拡大した断面図。
【図3】(A)は図1の管体用ガイド針のハブの構造の詳細を示す部分正面図、(B)は図1の管体用ガイド針を穿刺針に挿通した状態を示す部分正面図。
【図4】(A),(B),(C)は、図1の管体用ガイド針の使用手順を説明するための部分正面図(身体部分は縦断面図)。
【図5】(A),(B),(C)は、図4に引き続いて図1の管体用ガイド針の使用手順を説明するための部分正面図(身体部分は縦断面図)。
【図6】(A),(B)は、図1の管体用ガイド針を用いて1の刺入点で複数の病変を処置する場合の使用手順を説明するための部分正面図(身体部分は縦断面図)。
【図7】(A)は管体が生検針のガイド筒である場合の正面図(身体部分は縦断面図)、(B)は管体がカテーテルである場合の正面図(身体部分は縦断面図)、(C)は最初に挿入する管体が穿刺針でありガイドワイヤを介し最終的に挿入する管体がカテーテルである場合の正面図(身体部分は縦断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態である管体用のガイド針2の構成を示すものであり、このガイド針2は、体内に存在する病変等の目的箇所に、穿刺針、ガイド筒、カテーテルなどの管体を経皮的に配置して処置を行う際のガイドとして用いられ、ステンレス鋼線等の硬質で所定レベル以上の弾性変形能を備えた線状金属からなり大部分が直線状に形成された本体20の基端側に、これよりも大径で円柱状の部材で術者が操作時に把持する部分となるハブ25が同軸的に固定されてなるものである。
【0023】
その本体20は、図面では視認性の都合により実際より太めに描いてあるが、その径が0.35mm〜0.55mmの太さ(さらに好ましくは0.45mm前後)であることが、刺入時の患者への侵襲の小ささと画像上の視認性とのバランス、及び使用する管体に挿通可能な太さの観点から好適であり、その長さは25cm〜35cmであることが、使用する管体の長さと操作性のバランスの観点から好適である。
【0024】
また、この本体20は、その中心軸線に対し直角方向の面による断面形状が基本的に円形とされて、その先端側に中心軸線に対し傾斜した1つのベベル面22aを形成してなる針先部22を備えているが、全体としてある程度の可撓性を有しているとともに先端側を固定した状態で基端側のハブ25を術者が指で摘んで軸周りに捩った場合に殆どトルク変形しないトルク強度を有していることが好ましい。
【0025】
そして、この本体20先端側の針先部22に近接した位置、好ましくは針先部22に隣接した位置から、基端方向に15mm〜30mmの範囲で、本体20の他の部分よりもベベル面22aの向きの逆側に湾曲しやすい構造による易湾曲部23が形成されており、この点が本発明における第1の特徴部分となっている。
【0026】
さらに、この本体20は、易湾曲部23から続いて基端側まで断面円形の均一な状態で直線的に延びた部分からなる直線部21となっており、この直線部21の末端側、即ち本体20の基端側の所定範囲がベベル面22aの向きの逆側に屈曲されて、ベベル面22aにより刺入方向が曲がる側を術者に認識させるための方向指示部24が形成されており、この点が本発明における第2の特徴部分となっている。尚、この方向指示部24は、屈曲角度が90°前後で長さが1.5cm〜3cmであることが操作の邪魔にならずに方向を認識しやすい点で好適であり、また、その屈曲方向はベベル面22a側であっても良い。
【0027】
加えて、本体20の基端側には、これとは別部材の円柱状のハブ(針基)25が同軸的に固定されている。このハブ25は、その中心軸線を貫通した挿通孔を本体20が挿通した状態で、軸周り方向に回動不能且つ長手方向に摺動不能に固定されており、術者がガイド針2を刺入操作する際の把持部として用いられるとともに、術者が刺入方向を変えるために本体20を軸周りに回動させる際の摘み部としても用いられる。
【0028】
図2は、本体20先端側部分の構成の詳細を示すものであり、図2(A)に示すように、針先部22は本体20の中心軸線に対し傾斜した面でカットして形成されたベベル面22aを有している。また、これに続く易湾曲部23は、図2(A)のX―X線に沿う断面図を拡大した図2(B)に示すように、断面円形の線状金属からなる本体20の針先部22に近接した所定範囲が、ベベル面22a側から所定範囲削られたことで平坦な切削面23aを形成して断面略半円形とされてなるものである。
【0029】
即ち、易湾曲部23は、例えば本体20の径が0.45mmの場合に、ベベル面22aの向きに一致する方向の幅を0.25mm程度にして、ベベル面22aの向きに対し直角方向の幅(0.45mm)よりも顕著に短くなるようにしたものである。これにより、ベベル面22aの向きに一致する方向の可撓性がベベル面22aの向きに対し直角方向の可撓性よりも大きくなって湾曲しやすくなるが、ベベル面22aの向きに対し直角方向には湾曲しにくいままとなる。また、湾曲に伴い最も延伸される側が削られたことにより、ベベル面22aの向きの逆側に一層湾曲しやすくなっている。
【0030】
図3(A)は、ハブ25の構造の詳細を示すものであり、ハブ25は樹脂素材からなる円柱状の上部251と、これよりも大径の樹脂素材からなる円柱状の下部252の2つの部材で構成され、上部251の下端側にはネジ状部251aが突設されており、このネジ状部251aを下部252上端に開口した図示しないネジ孔に螺入することにより、ネジ状部251aの2つに割れた先端側が閉じてその内周側で本体20を挟み込むようになっており、ネジ状部251aを完全に螺入することで、ハブ25は本体20上で軸方向回動不能かつ長手方向摺動不能な状態でしっかりと固定される。
【0031】
一方、図3(B)は、ガイド対象である穿刺針4基端側の連結部41開口端から本体20の先端側を挿入して管状の針部40先端の針先41aから突出させて完全に挿通した状態を示している。このように、ガイド針2の本体20は、その径が穿刺針4の内径よりも僅かに小さくこれにフィットした状態で挿入できるとともに、その全長が穿刺針4の全長よりも長くなっており、図のような状態で体外から体内目的箇所に向かって穿刺するようになっている。
【0032】
また、本体20の外周面には、先端からの距離が挿入する管体の全長に一致する位置に、図のように管体の挿入深さの基準として用いるための目印21a(穿刺針4の長さに一致した目印は穿刺針4の中腔に隠れている)を表示しておくことにより、管体の先端を正確な位置に置くことが容易になり、その先端からの距離は、例えば使用頻度の高い穿刺針等の管体の長さに一致するように、例えば15cm、18cm、20cmのように段階的に複数表示しておけばよい。
【0033】
次に、図4を参照しながら本実施の形態ガイド針2の使用手順を詳細に説明する。図4(A)に示すように、本実施の形態では使用する管体が穿刺針4の場合であり、ガイド針2を穿刺針4の基端側の連結部41の開口部から挿通して、穿刺針4先端から本体20先端側が所定の長さで突出した状態にして穿刺を開始する。
【0034】
この手技は、術者が超音波やX線等よる画像ガイド下にて操作を行うのが通常であるが、本実施の形態では、図のように途中に動脈、神経、臓器のような穿刺したくない危険部位90があるときに、これを迂回するため意図的に病変100に対し最初の刺入方向をずらして行う場合を説明する。尚、危険部位90が存在しなくても目的箇所である病変100に対して穿刺方向がずれてしまった場合に刺入方向を修正するケースでも同様の手順になる。
【0035】
ベベル面が形成された針は軸回りに回転させながら刺入することである程度直線的に進めることが可能であるため、図4(A)の位置まで回動させながらほぼ真っ直ぐに刺入する。そして、図4(B)に示すように、術者が指で本体20の基端側のハブ25を軸周りに回動させて方向指示部24が刺入方向を曲げたい側に向くように操作することにより、ベベル面22aの向きは病変100とは逆側に向く。
【0036】
この状態でガイド針2を押し進めると、図4(C)に示すように傾斜したベベル面22aが体内組織に当接しながら傾斜面の延長線に追従するように針先部22が曲がって進み、主に易湾曲部23を湾曲させながら刺入方向が病変100に向かって危険部位90を迂回しながら針先部22aを進めることができ、易湾曲部23が湾曲した状態で体内組織を通過することで曲がって形成された刺入ルートにより、易湾曲部23から続く直線部21も湾曲させられる。
【0037】
図5(A)を参照して、ガイド針2の針先が病変100の手前に到達したら、図5(B)に示すように穿刺針4をガイド針2に沿って進めて先端を病変100に到達させる。この場合、穿刺針4の針部40が18〜20Gの比較的太いものであっても、目標箇所の直前で方向転換する場合を除き、ガイド針2の本体20に沿ってスムースに湾曲した状態で進ませることができる。
【0038】
このようにしてガイド針2の穿刺ルート途中に危険な部位がある場合でも、術者は所定の画像によるガイド下にて途中で何回も抜き差し動作を行うことなく刺入方向を途中で適宜変更しながら、安全且つ確実に体内の目的箇所に到達させることができる。そして、例えばエタノール等の液体を病変に注入する処置では、図5(C)に示すように穿刺針4を留置してガイド針2を抜去し、液体を充填したシリンジ50を穿刺針4の連結部41に連結することにより、病変100に対し液体を注入することができる。
【0039】
図6は、図1のガイド針2を用いて複数の病変に対し1の刺入点で各々処置を行う場合を示しており、図6(A)に示すように、体内で比較的近接した位置に複数の病変101,102があるとき、所定の画像ガイド下にてガイド針2をその中間点に向かう位置・方向にて穿刺し、穿刺針4の先端を病変101,102の深さの中間位置あたりで止め、方向指示部24を最初の病変101に向けた状態にして針先部22が病変101の手前に達するまで進める。
【0040】
針先が病変100に向いてからは本体20を軸周りに回動させることでその先の部分を真っ直ぐに進めることができる。そして、図示は省略するが、ガイド針2の本体20に沿って穿刺針4を進めて病変101まで到達させ、上述と同様にガイド針2を抜去して液体注入等の所定の処置を行う。
【0041】
次に、穿刺針4の先端を病変101,102の深さの中間位置あたり(分岐点の手前)の位置になるまで引き戻し、図6(B)に示すようにガイド針2を穿刺針4の基端側から再度挿入して針先部22が穿刺針4の先端から突出したら、方向指示部24を次の病変102に向けた状態にして進めることで刺入ルートを分岐させ、針先が病変102手前に達するまで進めてから前述と同様の操作を行う。このようにすることで、1の刺入点にて比較的近接した複数箇所の病変に対し各々処置を行えることから、患者への侵襲は最小限に抑えられる。
【0042】
図7(A)は、ガイド筒5を前述の穿刺針4と同様にガイド針2を用いて病変103までガイドし、このガイド筒5を介して生検針51を病変103に挿入して組織を採取する場合を示しており、図7(B)はガイド針2で短尺のカテーテル52を体内の膿瘍腔104までガイドして配置し、連結部52aに連結した他の管体55を介して膿瘍のドレーンを行う場合を示している。また、図7(C)はガイド針2を用いて配置した穿刺針4に、先にガイドワイヤ54を挿通して先端を膿瘍腔104に置き、次に穿刺針4を抜去しガイドワイヤ54に沿ってカテーテル53を挿入して膿瘍のドレーンを行う場合を示している。
【0043】
このように、本実施の形態のガイド針2は、様々な処置において使用される管体を正確且つ安全に体内目的箇所までガイドして経皮的に配置させ、患者への侵襲を最小限に抑えながら処置を実施することを可能にする。また、目的箇所が体内の近接位置に複数ある場合には、前述と同様に1の刺入点で総ての目的箇所に対し処置を行うことができる。
【0044】
以下に、図1に示した管体用のガイド針を実際に作成して、超音波ガイド下にて穿刺針を目的箇所までガイドした実施例1、及び実際の経皮的エタノール注入療法に使用した実施例2について説明する。
【実施例1】
【0045】
(実施条件)
ガイド針:先端ベベル状のステンレス製ガイド針で長さ30cm、径0.45mmとし、易湾曲部を針先部に隣接した20mmの範囲(ベベル面方向から切削して0.25mmの断面略半円状に形成)とし、方向指示部をベベル面とは逆側に3cmの長さで直角に屈曲させて形成したものとした(ハブは樹脂成型品)。
穿刺針:上記ガイド針を挿通可能な内径を有したステンレス製の22ゲージで長さが20cmの市販品を用いた。
実施対象:生食に浸した新鮮な牛の肝臓の下に直径5mmの粘土ボールを2cm間隔で4個配置した(超音波イメージ面に平行、肝臓の表面から2〜8cm)。
【0046】
(実施方法)
最初に超音波ガイド下でガイド針を回転させずに牛の肝臓に対し3cm又は8cm進めて湾曲させながら穿刺を行い、湾曲したガイド針に沿って穿刺針を進めることができるか否かを試した。次に、3人の異なる術者が1の刺入点にてボールを1,2,3,4の順に穿刺を行った(3人ともエタノール注入療法に精通しているが管体用のガイド針を使うトレーニングは行っていない)。この試験は、各術者が互いに肝臓の異なる場所で実施した。
【0047】
(結果)
ガイド針の先端は超音波ガイド下で充分に確認することができ、エコーで針先が迷うこともなかった。22ゲージの穿刺針は湾曲したガイド針に沿って容易に追従し、3cm,8cmの深さでも追従した。また、術者がガイド針を進めると同時に軸周りに回動させることで直進させることもできた。さらに、ベベル面の向きを変えることにより刺入方向を容易に変えることができ、ベベル面の向きに沿った方向以外には有意に曲がることはなかった。尚、4つのボールはガイド針を3〜4cm引いて進めることにより、連続的に穿刺することができた。このとき、ガイド針を何度か引いたり進めたりする動作は必要であったが、引く距離は2cm程度で済んだ。
【実施例2】
【0048】
(実施条件)ガイド針及び穿刺針は実施例1と同様。実施対象は肝臓に複数の腫瘍のある4人の患者(うち3人は肝硬変)。
(実施方法)肝臓の複数の腫瘍に対し超音波ガイド下にて経皮的エタノール注入療法を実施し、可能な限り1つの刺入点で複数の腫瘍に連続的に注入した。
【0049】
(結果)
この4人の患者おいても、比較的容易に刺入方向を途中で調節することができ、1の刺入点で複数の腫瘍に処置を行うことができ、実施例1とほぼ同様の操作性が確認できた。
【0050】
経皮的エタノール注入療法は、3cm以下3個以内の肝腫瘍に対して有用であることが確立された治療法であるが、追加する部分にエタノールを注入する必要があり、またアクシデンタルに穿刺針の方向が変位して病変を穿刺できなくなることも多々あるため、通常は多数回の穿刺が必要になる。一方、細い穿刺針は肝臓のダメージやエタノールの逆流・漏れを最小限に抑えられる点で優れているが、細ければ細い程、体内で曲がりやすくなって正確な穿刺が困難になり、深い病変に到達しにくくなる点が問題である。
【0051】
これに対し、本発明による管体用のガイド針を用いたことにより、針先を肝臓内で簡単にコントロールできるようになり、多数の病変に対し正確な穿刺が可能であった。その結果、針先の場所を決める時間を短縮することができ、合併症や患者の苦痛を減らすこともできたと考えられる。また、本実施例の管体用ガイド針は、通常用いる穿刺針と比べて極めて細いことから、肝臓のダメージを最小限に抑えることができた。尚、易湾曲部がベベル面側を削って平坦面を形成したものであるため、ベベル面方向のみのしなやかさが出て傾斜面の延長方向のみに曲がりやすくなったと思われる。
【0052】
本発明の管体用ガイド針を用いたことによる上述した作用・効果は、上述の経皮的エタノール注入療法に限らず、体内の目的箇所に管体を配置して経皮的に処置を行う様々な場合において同様に発揮されるものである。例えば、体内目的箇所にエタノール以外の液体(薬剤、低温の液化ガス、酢酸、熱湯等)を注入して行う治療法の場合や、高周波温熱療法において電極針がある程度細く可撓性があるものでそのガイド筒を目的箇所までガイドする場合、或いは体内所定位置からドレナージを行ったり体内目的箇所に連続的に薬液を注入したりする際にカテーテルを配置する場合にも同様に使用することができ、同様に有用なものとなる。
【0053】
殊に、病変への刺入ルート途中に他の臓器がある場合や呼吸により病変のある臓器が動きやすい場合、或いは病変の近くに危険な部位があるような場合に、困難なルートや危険なルートを回避しながら針を進めることにより、患者への侵襲とリスクを最小限に抑えながら、効果的に手技を行うことを可能にするものである。
【0054】
尚、上述した本発明によるガイド針を用いた経皮的エタノール注入療法は、その後数十人の患者に実際に使用しており、いずれも前述と同様の効果を発揮している。また、体内組織の生検にも複数例使用してその有用性が確認されており、殊に、ガイド針の進行経路の途中に太い血管や胆管、胆嚢など、穿刺を避けたい箇所がある場合に、一旦その箇所を迂回しながら目的箇所に到達することを可能とし、また同軸法による生検を実施した場合には外筒による1箇所の穿刺にて、その外筒を通して複数の異なった箇所で採取することを可能としている。
【0055】
以上、述べたように、管体を体内目的箇所に配置して実施する処置について、本発明により、あらゆる状況においても管体を正確且つ安全に挿入可能とし、患者への侵襲を過大にすることなく処置を実施できるようになった。
【符号の説明】
【0056】
2 管体用ガイド針、4 穿刺針、5 ガイド筒、20 本体、21 直線部、21a 目印、22 針先部、22a ベベル面、23 易湾曲部、23a 切削面、24 方向指示部、25 ハブ、40 針部、41,52a 連結部、41a 針先、50 シリンジ、51 生検針、52,53 カテーテル、54 ガイドワイヤ、55 管体、90 危険部位、100,101,102,103 病変、104 膿瘍腔、251 上部、251a ネジ状部、252 下部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の機能を有する管体を経皮的に体内の目的箇所に配置するためのガイド針であって、前記管体に挿入可能な太さで大部分が直線状に形成された線状金属からなる本体の先端側に1つのベベル面を形成した針先部を備えているとともに、該針先部に近接した前記本体先端側の所定範囲が他の部分よりも前記ベベル面の向きの逆側に湾曲しやすい易湾曲部とされ、且つ前記本体基端側に前記ベベル面の向き又はその逆の向きを術者に認識させるための方向指示部を備えており、体内に刺入することで前記ベベル面の延長方向に針先の進行が案内されながら主として前記易湾曲部を湾曲させて前記ベベル面の向きの逆側に刺入方向を曲げるものとされ、所定の画像ガイド下で術者が前記本体を軸周りに回動させて刺入方向を所望の向きにコントロールしながら前記針先を進めて前記目的箇所又は前記目的箇所手前に到達させた後、前記本体を挿通した前記管体を前記本体に沿って体内に挿入することにより、前記管体先端を前記目的箇所までガイドする、ことを特徴とした管体用ガイド針。
【請求項2】
前記易湾曲部は、前記ベベル面の向きに一致する方向の幅が前記ベベル面の向きに対し直角方向の幅よりも短く形成されてなる、ことを特徴とする請求項1に記載した管体用ガイド針。
【請求項3】
前記本体の中心軸線に対し直角な面による断面形状は前記易湾曲部及び前記針先部を除いて円形であり、前記易湾曲部の前記断面形状が、前記円形から前記ベベル面側の所定範囲を削ってなる略半円形である、ことを特徴とする請求項2に記載した管体用ガイド針。
【請求項4】
前記方向指示部は、前記本体の基端側所定範囲を前記ベベル面の向きの逆側又は前記ベベル面の向き側に屈曲してなる、ことを特徴とする請求項1,2または3に記載した管体用ガイド針。
【請求項5】
前記本体の基端側には、該本体よりも大径で円柱状の部材からなるハブがその中心軸線を通る挿通孔に前記本体を挿通した状態で、少なくとも軸周り方向回動不能に前記本体に固定されており、刺入操作時の把持部として用いられるとともに、前記本体を軸周り方向に回動させる際の摘みとして用いられる、ことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載した管体用ガイド針。
【請求項6】
前記本体には、先端からの距離が挿通する前記管体の全長に一致する位置に、前記管体の挿入深さの基準として用いるための目印が表示されている、ことを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載した管体用ガイド針。
【請求項7】
前記管体は、所定の液体を注入するための注入針又は生検針用のガイド筒又は電極針用のガイド筒である、ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6に記載した管体用ガイド針。
【請求項8】
前記管体は、所定の液体を注入するための注入用カテーテル又は体内腔に溜まった液体を排出するためのドレーン用カテーテルである、ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6に記載した管体用ガイド針。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−182898(P2011−182898A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49979(P2010−49979)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(510055828)
【Fターム(参考)】