説明

管継手の製造方法及び管継手

【課題】不良品の発生を抑制して品質の高い管継手が得られるようにすることを目的とする管継手の製造方法及び管継手を提供する。
【解決手段】芯型21の外周側を水膨張シート13により被覆する水膨張シート被覆工程と、その水膨張シート被覆工程により被覆された水膨張シート13の外周側を、樹脂シート15,151,167または樹脂筒体16により被覆する樹脂材被覆工程と、上記各被覆工程により積層された水膨張シート13と樹脂シート15,151,167または樹脂筒体16を、これらよりも外周側に配置された第2可動型29で型締めして一体化する型締め工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば電線やケーブルを地中に埋設する時に使用される管体を接続するための管継手の製造方法に関し、品質の良い管継手の製造方法及び管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のような管継手の一例として、円筒状に設けられた樹脂層の内周面に、水分を吸収することで膨張する水膨張層を備えた管継手が知られている。この管継手を用いて管体と接続する場合、該管継手は樹脂層と水膨張層とが一体化した単品となっているので、パッキンなどの独立した止水用の部品を配管時に組付ける必要がなくなり、部品点数の削減に加えて構造が簡素化する利点がある。これにより、配管時の作業性が良好になる。
【0003】
このような管継手は、パリソンを用いた成形(下記特許文献1参照)や射出成形を用いた手法(下記特許文献2参照)により製造されている。前者の場合、水膨張層(下記特許文献1では止水材)を全周囲に渡り巻き付けた内金型と、その外周囲に配置された外金型とを設け、該内金型と外金型との間にダイから円筒状に押し出させたパリソンを介入させた後、外金型を閉じて内金型との間でパリソンと止水材との両層を挟むように型締めすることにより、パリソンと止水材との両層が一体化した管継手が成形される。
【0004】
このようにして成形する場合、内金型に被せるように降下させたパリソンの径が小さいと、パリソンが内金型に当たってパリソンが捲れ上がるなど不良品を発生させるおそれがある。このため、やむをえず内金型との間に、ある程度の隙間ができる大きさにパリソンの径を設定しなければならなかった。
【0005】
しかし、パリソンが内金型に接触することを恐れるあまり、パリソンの径を大きくし過ぎると、変形量が大きくなって、型締め時に偏肉や歪等の不具合が発生するおそれがあり、製造に難しさがあった。
【0006】
後者の場合には、射出圧力やゲートの位置によっては、樹脂が水膨張層に入り込んで、吸水不良を招来する場合があった。
【特許文献1】特許第3955913号公報
【特許文献2】特開2006−26899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこでこの発明は、不良品の発生を抑制して品質の高い管継手が得られるようにすることを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、接続された管体の接続状態を保持すべく水分を吸収することで膨張する水膨張シートを内周面に備えた管継手の製造方法であって、外周面に螺旋状の凸部を有する円柱状の芯型の外周側を、上記水膨張シートにより被覆する水膨張シート被覆工程と、上記水膨張シート被覆工程により接触状態または近接状態で被覆された水膨張シートの外周側を、樹脂材により被覆する樹脂材被覆工程と、上記各被覆工程により積層された水膨張シートと樹脂材を、これらよりも外周側に配置された外金型で型締めして一体化する型締め工程とを備えたことを特徴とする。
【0009】
上記水膨張シートは、シート状のものであるも、筒状のものであるもよく、筒状の場合は、芯型の螺旋状の凸部に嵌まる凹凸を有するものであるもよい。
【0010】
上記樹脂材被覆工程では、樹脂材を水膨張シートの外周側に接触状態または近接状態に被覆して、樹脂材と水膨張シートとの間の空間を極力小さくした状態に被覆する。これにより、型締め時における樹脂材の変形を極力少なくでき、偏肉や歪の発生を抑制できる。
【0011】
上記樹脂材は、水膨張シートの外周側に被覆し得る樹脂シート、あるいは水膨張シートの外周側に被覆し得る筒状に成形された樹脂筒体で構成することができる。
【0012】
上記樹脂シートを用いた場合は、巻き付けるようにすれば、芯型に被覆され、水膨張シートの上に接触した状態に被覆できる。また、この樹脂シートは軟化状態のものであるのが好ましい。
【0013】
上記樹脂筒体を用いた場合は、芯型に嵌めるようにすれば、芯型に被覆された水膨張シートの上に接触した状態、あるいは接触しないまでも近接した状態に被覆できる。この樹脂筒体は、例えば押出成形や射出成形で形成され、その口径を適切に設定することによって、パリソンを用いた場合のように捲れ上がったりするような変形もなく、上記のような接触状態または近接状態に被覆できる。
【0014】
上記樹脂材被覆工程の前処理として、芯型に被覆された水膨張シートの外周側から、芯型の上記螺旋状の凸部間の螺旋状の凹部に対応する部位に向けて線材を巻き付ける線材巻付け工程を備えることができる。線材には、テープ状のものも含まれる。
【0015】
この場合は、芯型に被覆された水膨張シートを、線材によって芯型の螺旋状の凹部に密着させるように巻き付けることができる。このため、水膨張シートは芯型の外周側の凹凸に沿って密着されることになり、寸法精度の高い成形が可能になる。
このような製造方法により製造した管継手は、水膨張シートと樹脂材との両層が均一となる品質のよい製品である。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、樹脂材を水膨張シートの外周側に被覆させる際、樹脂材と水膨張シートとの間の空間を極力小さくした状態に被覆することができる。この結果、型締め時における樹脂変形を極力少なくし、偏肉や歪のない品質の良い管継手の製造が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図面は管継手の製造方法及び管継手を示し、図1は管継手11の斜視図であり、図2は管継手11の要部縦断面図であり、図3は管継手11の使用状態を示す要部縦断面図である。
【0018】
管継手11は、筒状の軸方向全長に渡り連続した螺旋凹凸条12が形成された形状を有している。そして、図2にも示すように、管継手11は、内周面の水膨張層11aと、その外周側の樹脂層11bとから構成される。
【0019】
ここで用いられる水膨張層11aは、水膨張シート13を構成する不織布を主素材とし、この水膨張シート13は伸縮可能な柔軟性を有し、水分を吸収することで膨張する吸水性高分子を含有する。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高吸水性樹脂繊維からなるものを使用し、繊維状、粉末状、シート状などの形状のものを使用する。これらの材料の選定と混合は、十分な水膨張性や強度など所望の性状作用が得られるように決定する。
また、樹脂層11bは、例えば合成樹脂等の樹脂材を使用し、軟化状態での成形や熱成形などによって、所望の形状に成形することができる熱可塑性を有する樹脂材が用いられる。
【0020】
このような両層11a,11bを有する管継手11は、図3に示すように、該管継手11と同様な形状を有する管体14を接続するために用いられる。この管継手11は内周側が螺合面となり、ここに同じく筒状の軸方向に連続した螺旋凹凸条14aを有する管体14の外周側が螺合面となって螺着接続される。図3では管継手11の両開口端に、左右より管体14,14をそれぞれねじ込んで直列に連結した接続完了状態を示している。
【0021】
このように筒体内周側に水膨張層11aを有し、その外周側に樹脂層11bを有する管継手11は、地中に埋設されて水膨張シート13に含まれる吸水性高分子が水分を吸収すると、管継手11と管体14との間で膨れ上がり、両者間での隙間を無くし、この結果、止水性が得られる。
【0022】
次に、上述のような管継手11の製造方法について説明する。
この管継手11の製造は、水膨張シート被覆工程と、樹脂材被覆工程と、型締め工程との3工程を有している。
まず、水膨張シート被覆工程では、上述の吸水性高分子を含有する水膨張シート13を、芯型21に被覆する。
【0023】
水膨張シート13は、芯型21に適宜の方法で被覆できるが、例えば長方形状の水膨張シート13の端部13a同士を適宜幅重ね合わせて筒状にした後、芯型21に被せるとよい。水膨張シート13の端部13aの重合部分は、ニードルパンチや縫い付け、さらには接着剤やステープル等を用いた適宜の方法で固定する。この固定は、仮止め程度でよい。
【0024】
また、水膨張シート13は、図4に示すように、その軸方向の長さL1を、芯型21の本体部25の軸方向の長さL2よりも長く設定しておく。これは、成形により水膨張シート13が芯型21と第1可動型22の凹凸に追従して変形した時に長さが縮むからであって、凹凸の深さに応じてその縮み量を考慮し、適宜設定する。
【0025】
この被覆工程に続いて、必要により水膨張シート13を芯型21に沿わせるための仮成形を行う。この仮成形工程は、上記管継手11の螺旋凹凸条12に対応した同螺旋凹凸条を有するように、後述する芯型21と第1可動型22とで型締めして行う。
【0026】
図4、図5が、その仮成形工程で使用する芯型21と第1可動型22を示している。
芯型21は、水膨張層11aの内側面の凹凸に対応する凹凸(凹部23及び凸部24)を有した略円柱状であり、上記凹凸を有する本体部25の下側には、本体部25よりも大径の受台26を形成している。
【0027】
上記第1可動型22は、水膨張層11aの外側面の凹凸に対応する凹凸(凹部27及び凸部28)を有しており、半割りではなく、図5に示したように、芯型21を囲む周方向において、4等分に分割して構成している。
【0028】
なお、芯型21と第1可動型22の凹凸は螺旋状に連続するものであるが、図5においては便宜上、芯型21を円形の断面で示し、第1可動型22をそれに対応させて示した。
【0029】
仮成形は、水膨張シート13を加熱圧縮して行う。水膨張シート13の素材や吸水性高分子の素材等の条件にもよるが、水膨張シートがPET(ポリエチレンテレフタレート)からなる場合には、例えば80度から200度くらいの温度で、5〜30秒程度、加熱圧縮すればよい。その後、開型すると、図6に示すように、水膨張シート13は芯型21の外周側に対して略同形の螺旋凹凸条12が形成された被覆状態となる。
【0030】
図7は樹脂材被覆工程における樹脂材の一例として樹脂シート15による被覆状態を示す斜視図であり、図8は同じく樹脂材被覆工程における樹脂材の一例として樹脂シート15を被覆した状態を示す縦断面図である。
【0031】
この樹脂シート15は水膨張シート13の外周側を被覆するものであって、その被覆時に、軟化状態の樹脂シート15を用い、該樹脂シート15を図8に示したように芯型21に被覆されている水膨張シート13の外周側に巻き付けることで被覆する。この場合、樹脂シート15の下端は下方の受台26に受け止められ、水膨張シート13とともに、次工程の型締めに適した高さに位置決めされる。よって、受台26の上面26aが巻き付け高さ基準となるので樹脂シート15の巻付作業が容易になる。
【0032】
樹脂シート15の軟化に際しては、例えば押出成形機から押し出された樹脂シート15を用いるとよい。この樹脂シート15は、外力を加えると変形する軟化状態であり、時間が経過すると冷却して、そのままの形状で固化する。よって、この軟化状態から所望の形状に容易に変形させることができる。これにより、樹脂シート15は水膨張シート13の外周面に一部(凸部に)密着した接触状態に被覆される。そして、これら両シート13,15が芯型21に積層して被覆された状態のまま、後述する型締め工程に移行する。
【0033】
次に、型締め工程を図9及び図10を参照して説明する。
この型締め工程では、上記管継手11の樹脂層11bの凹凸形状に対応した形状に樹脂を成形する。
図9が型締め工程で使用する、上記芯型21と、第2可動型29を示している。
【0034】
芯型21については、先に説明しているので、その説明を省略する。第2可動型29は、水膨張層11aの外側面に、樹脂層11bを形成するためのものである。よって、この第2可動型29は、図10に示すように、形成すべき樹脂層11bの外側面の螺旋凹凸条に対応する凹凸(凹部30及び凸部31)を有している。また、この第2可動型29は、上記第1可動型22のように4分割して構成してもよく、2分割して構成してもよい。
【0035】
型締め成形に当たっては、芯型21に水膨張シート13と樹脂シート15が被覆された状態で、図9(A)及び図9(B)に示すように、芯型21と、その外周側に4分割して配置された第2可動型29とにより両シート13,15を一体化する型締めを行う。そして、図9(C)及び図10に示すように、芯型21と第2可動型29との間で加圧された水膨張シート13と樹脂シート15が一体化される。
【0036】
これにより、両シート13,15は、芯型21の螺旋凹凸条と、第2可動型29の螺旋凹凸条との凹凸形状に沿った同螺旋凹凸条が形成される。その型締め後、樹脂シート15が冷却して固化すると、両型21,29間に、所望の形状に型締めされた管継手11が得られる。
【0037】
なお、型締め工程では、良好に成形できるように、芯型21と第2可動型29の少なくとも一方を加熱した状態で型締めするとよい。この場合は、樹脂シート15が加熱されて軟化し、水膨張シート13と樹脂シート15とが十分になじんで一体化される。また、芯型21と第2可動型29の全体を加熱するだけでなく、型締め時に最も結合を必要とする樹脂シート15端部の重ね合わせ部分に相当する部位の芯型21と第2可動型29の一部分を、さらに高温に加熱することができる。加熱に際しては、金属製の芯型21や第2可動型29に加熱装置(図示省略)を付設あるいは組込んで構成し、該加熱装置により芯型21と第2可動型29を型締め成形に適した温度に加熱するとよい。
【0038】
樹脂材被覆工程で被覆する樹脂材としては、図11(A)に示すような樹脂筒体16を用いることもできる。この樹脂筒体16は水膨張シート13に被覆したときに、その内径が水膨張シート13の外周面に接触する大きさに設定されている。
【0039】
この樹脂筒体16を用いた場合は、芯型21に嵌めるように被せるだけで芯型21への被覆ができる。また、樹脂筒体16の取扱いが容易であり、芯型21に被せる際に、該樹脂筒体16が硬化しているため変形するおそれがない。このため、被覆に際して樹脂筒体16が芯型21や水膨張シート13に接触しても、捲れ上がるなどの変形が起こることもない。このような樹脂筒体16は、押出成形や射出成形で成形できる。
【0040】
上記樹脂筒体16できる。を用いて水膨張シート13に被覆した場合、樹脂筒体16の径を適正に設定することによって、水膨張シート13に接触した状態で被覆することができる。例え接触状態でないにしても、図11(B)に示すように、水膨張シート13に近接状態で被覆することができる。これにより、被覆方向に対向する樹脂筒体16と水膨張シート13との間の対向隙間17を極力なくすことができる。それゆえ、その後の型締め工程では樹脂筒体16が偏肉を生じるような不具合な変形を防げる。
【0041】
このようにして成形される管継手11は、水膨張シート13の外周側に樹脂シート15を接触させた状態で型締めするため、被覆方向に対向する両シート13,15との間の対向隙間17を極力小さくすることができる。それゆえ、型締め工程では樹脂シート15が偏肉を生じる等の不具合な変形を生じなくなり、品質の良い管継手11を製造することができる。
【0042】
したがって、各層11a,11bが持つ本来特有の機能を確実に発揮できる。つまり、水膨張層11aでは、水分を吸収して膨張することにより止水する作用が確実に得られる。また、樹脂層11bではその特性、すなわち高強度性や高耐候性等により、管体14の接続状態を確実に保つとともに、内部のケーブル等を保護する。
【0043】
以下、他の例を説明する。
型締めする場合、芯型21に被覆された水膨張シート13が、芯型21の外周面に密着していることが好ましい。ところが、水膨張シート13の厚さや成形条件によっては、図13(A)に示すように、芯型21の凹部23と対応する水膨張シート13の内側面の凸部13aが離れて密着しない場合があると、両者の間に空隙13bを生じ、凹深さが異なって形成される。よって、その後の樹脂材との型締め工程において適正な形状の螺旋凹凸条12が得られなくなる。
【0044】
そこで、図12及び図13(B)に示すように、芯型21に被覆された水膨張シート13に対し、その外周側から、芯型21の凹部23に対応する部位に向けて線材Wを巻き付ければ、水膨張シート13が芯型21に密着し、空隙13bのない安定した被覆ができるので螺旋凹凸条の成形が正確になる。よって、型締めに先立って、線材巻付け工程を備えるのが好ましい。この線材巻付け工程は手作業により行ってもよく、装置化(図14参照)して行うようにしてもよい。
【0045】
図14は線材巻付け装置141の一例を示す構成図である。この線材巻付け装置141は、一方(図中左側)に、水膨張シート13が被覆された芯型21を保持する芯型ホルダ142を配置し、他方(図中左側)に、ワイヤアーム143とその駆動装置144を配設し、中間部にカッタ装置145及び制御部146を備えて構成される。
【0046】
上記芯型ホルダ142は、上記芯型21を水平に保持するとともに、線材始端部を初期セット位置に仮止めするクリップ部142aとを備えている。
ワイヤアーム143は、アーム基端側が駆動装置144に回転自由に軸支され、アーム先端側が芯型21側に延設されている。さらに、ワイヤアーム143は芯型21に対し、遠近自在にスライドし、且つ芯型21の外周側を旋回する。このワイヤアーム143へは、例えば3連のボビン147から3本の線材Wが引出しガイドされ、その引き出された線材Wを、ワイヤアーム143を介して芯型21上の水膨張シート13に巻き付ける役目を有している。
【0047】
駆動装置144は、ワイヤアーム143に対する図示しないスライド機構と回転機構とを有して構成される。例えば、スライド用モータの回転に連動して駆動されるピニオンとラックとのスライド機構により、該駆動装置144をスライド自由に進退させる。また、回転用モータの出力が回転機構を介して、一定の回転力がワイヤアーム143に伝達される。
【0048】
カッタ装置145は、線材巻き終わり部位に向けて進退自在に配置され、前進時に先端のカッタ145aが巻き終わった部位のワイヤアーム143先端近傍の線材Wを切断する。切断後は後退して、次の切断に備える。通常は、後退した待機位置にある。
【0049】
制御部146は、線材Wの巻き終わりを検知する巻終り検知センサS1の検知信号によりカッタ装置145を進退制御する。また、駆動装置144のスライド位置検知センサS2の検知信号により駆動装置144をスライド制御する。さらに、係員スイッチなどにより指示された巻付け開始信号により駆動装置144の回転を出力させる。上記線材Wの巻き付けに際して、制御部146では、予め芯型21の凹部23に対応する部位に向けて線材Wを巻き付けるようにワイヤアーム143のスライド速度及び旋回速度を定めている。
【0050】
このような線材巻付け装置141を使用すれば、制御部146からの出力信号を受けてワイヤアーム143は旋回しながらスライドして、水膨張シート13の一側からの線材Wの巻き付けを開始し、水膨張シート13の他側まで巻き付けた巻付け終了後は、制御部146がカッタ装置145を駆動させて巻き終わり部位の線材Wを切断する。これにより、水膨張シート13への線材Wの巻き付けが完了する。
【0051】
ここに用いられる線材Wとしては、例えば木綿糸や樹脂糸等の線材が用いられる。線材の巻付け効果を高めるために複数本巻き付けてもよく、またテープ状の線材や太い線材の場合は1本でよい。さらに、樹脂層11bと同色の熱可塑性を有するテグスのような樹脂線材でもよい。また、線材Wは最終の型締め工程において、熱成形により線材Wが溶けて樹脂層11bと一体化する熱溶着糸でもよい。これらの場合は、型締め成形後に、樹脂線材が溶け込んで樹脂層11bと一体となり、樹脂線材が外部に露出するような違和感を生じさせないので美観を損なわない管継手の成形が可能になる。
【0052】
図15は樹脂シート151の他の例を示す説明図である。
この樹脂シート151は両端縁に係止用のフックを有する。このフック付きの樹脂シート151は、長方板形状を有する一短辺側に、例えば端部をレの字形に上向きに屈曲させたレ形フック部152を有し、他短辺側に、同様に端部をレの字形に下向きに屈曲させたレ形フック部153を有して、全体がZ字形状となっている。
【0053】
このフック付きの樹脂シート151は、該樹脂シート152を丸めながら芯型21上の水膨張シート13上に被せるものとして、両レ形フック部152,153を突合せ方向(図においては左右方向)より互いに係止させると、図15(B)に示すように筒状に保持される。樹脂シートは軟化状態のものであるも、固化した状態のものであるもよい。
【0054】
次に、樹脂材自動被覆装置を図16及び図17を参照して説明する。
図16は樹脂材自動被覆装置161を示す概略説明図であり、図17(A)は樹脂筒体を巻き付けて被覆する被覆装置165の初期被覆状態を示す説明図であり、図17(B)はその被覆装置165の終期被覆状態を示す説明図であり、図17(C)はその被覆装置165の被覆完了状態を示す説明図である。
【0055】
この樹脂材自動被覆装置161は、樹脂材を被覆する被覆ライン162上に、押出成形機163と、切断装置164と、被覆装置165と、上述した芯型21と、上述した第2可動型29と同じ型締め用の装置(図示省略)とが配設されて構成される。
【0056】
上記押出成形機163からシート状に押し出された樹脂材の連続シート166は切断装置164に導かれ、ここで連続シート166は後段の被覆処理に要する長方形の樹脂シート167長さに切断される。その切断された樹脂シート167は、軟化状態のまま送りローラ168により被覆装置165へと送り込まれる。被覆装置165では、芯型21の外周側に、上述した水膨張シート被覆工程によって予め水膨張シート13が被せられている。よって、この水膨張シート13の外周側に対し、樹脂シート167が巻き付けられる。
【0057】
この被覆装置165に配置される芯型21は、被覆ライン162の進行方向に直交し、且つ水平に配置され、芯型21の外周囲にはシート巻き付けガイド用の複数の巻付けローラ169が等分配置されている。そして、ここに送り込まれてきた樹脂シート167は、まず、図17(A)に示すように、芯型21に予め被覆されている水膨張シート13の外周側と、巻付けローラ169との間に搬入され、水膨張シート13の外周側に沿って巻き付けられる。その後、図17(B)に示すように、樹脂シート167は芯型21の外周を略一周して巻き付けられ、巻き付けられた樹脂シート167は始端部167aと終端部167bとが重なり合って厚肉になるが、該樹脂シート167は軟化状態であるため、加圧されて十分に引き延ばされ、図17(C)に示すように、一定厚さの樹脂層11bとなる。
【0058】
上記樹脂シート167は、送りローラ168及び芯型21を一定速度で回転駆動させる回転駆動装置(図面省略)を駆動することで、水膨張シート13上に樹脂シート167を巻付けることができる。
【0059】
この被覆装置165の被覆完了後は、芯型21を軸方向に進退させる油圧シリンダ等を内蔵した図示しない進退装置により、該芯型21を軸方向に後退させて被覆位置から型締め位置へと引き出した後、上述した芯型21と、第2可動型29と同じ型締め用の装置(図示省略)とで加圧して型締めすることにより、図1〜図3で述べた管継手11が製造される。
【0060】
この発明の構成と、上記一形態の構成との対応において、
この発明の外金型は、上記一形態における第1可動型22と第2可動型29に対応するも、この発明は上記構成のみに限定されるものではなく、請求項に記載される技術思想に基づいて応用することができ、様々な形態を採用し得る。
【0061】
例えば、管継手11は上述例のような同種の管体を接続する継手ではなく、異種の管体を接続する異種管継手であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】管継手の外観斜視図。
【図2】管継手の要部縦断面図。
【図3】管継手の使用状態を示す要部縦断面図。
【図4】水膨張シートの成形状態を示す芯型と第1可動型の縦断正面図。
【図5】水膨張シートの成形状態を示す芯型と第1可動型の横断平面図。
【図6】水膨張シートの成形状態を示す一部縦断正面図。
【図7】樹脂シートの巻き付け状態を示す斜視図。
【図8】樹脂シートの巻き付け完了状態を示す縦断正面図。
【図9】(A)は型締め前の芯型と第2可動型を示す横断平面図、(B)は型締め直前の芯型と第2可動型を示す横断平面図、(C)は型締め後の芯型と第2可動型を示す平面図。
【図10】型締め状態を示す芯型と第2可動型の縦断面図。
【図11】(A)は樹脂筒体を示す外観斜視図、(B)は樹脂筒体が水膨張シートの外周側を近接状態に被覆した状態を示す要部拡大縦断面図。
【図12】線材を巻き付けた水膨張シートを示す正面図。
【図13】(A)は空隙発生状態を示す要部拡大縦断面図、(B)は線材巻き付け状態を示す要部拡大縦断面図。
【図14】線材巻付け装置の一例を示す構成図。
【図15】(A)はフック付きの樹脂シートを示す斜視図、(B)はフック付きの樹脂シートから筒状に作成した一例を示す斜視図。
【図16】樹脂材自動被覆装置の一例を示す概略説明図。
【図17】(A)は被覆装置の初期被覆状態を示す説明図、(B)は被覆装置の終期被覆状態を示す説明図、(C)は被覆装置の被覆完了状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0063】
11…管継手
11a…水膨張層
11b…樹脂層
12…螺旋凹凸条
13…水膨張シート
15,151,167…樹脂シート
16…樹脂筒体
17…対向隙間
21…芯型
22…第1可動型
29…第2可動型
W…線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続された管体の接続状態を保持すべく水分を吸収することで膨張する水膨張シートを内周面に備えた管継手の製造方法であって、
外周面に螺旋状の凸部を有する円柱状の芯型の外周側を、上記水膨張シートにより被覆する水膨張シート被覆工程と、
上記水膨張シート被覆工程により被覆された水膨張シートの外周側を、樹脂材により接触状態または近接状態で被覆する樹脂材被覆工程と、
上記各被覆工程により積層された水膨張シートと樹脂材を、これらよりも外周側に配置された外金型で型締めして一体化する型締め工程とを備えた
管継手の製造方法。
【請求項2】
上記樹脂材が、水膨張シートの外周側に被覆し得る樹脂シートである
請求項1に記載の管継手の製造方法。
【請求項3】
上記樹脂材が、水膨張シートの外周側に被覆し得る筒状に成形された樹脂筒体である
請求項1に記載の管継手の製造方法。
【請求項4】
上記樹脂材被覆工程の前処理として、芯型に被覆された水膨張シートの外周側から、芯型の上記螺旋状の凸部間の螺旋状の凹部に対応する部位に向けて線材を巻き付ける線材巻付け工程を備えた
請求項1、2または3に記載の管継手の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1つに記載の管継手の製造方法により製造した
管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−248474(P2009−248474A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100129(P2008−100129)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(392035341)共和ゴム株式会社 (15)
【Fターム(参考)】