説明

管継手の雌型継手

【課題】高圧流体の管継手において、雌型継手及び雄型継手の連結を適正に行うことができるコレット型の係止爪を備えた雌型継手を提供する。
【解決手段】 上記雄型継手受入部22が、雄型継手12の被係止部12−1が係止爪32の係止部32−1によって係合されるようになる固定位置まで雄型継手が雄型継手受入部22へ挿入される前の段階で、該雄型継手の先端部外周面12−2と摺動係合する奥部内面35−2と、該奥部内面が雄型継手の先端部外周面12−2に摺動係合するのと同時に、雄型継手における被係止部12−1を挟んで先端部外周面12−2よりも後方位置にある雄型継手の外周面12−3と摺動係合する前端内面20−1(2)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管継手に関し、特に高圧流体を扱うのに適した管継手の雌型継手に関する。
【背景技術】
【0002】
管継手は、一般的に、雄型継手を雌型継手に挿入した状態で両継手を連結固定するようになっており、この連結固定を行う手段としては、通常、雌型継手の雄型継手受入部に半径方向で変位可能に設けられたボールが設けられ、雄型継手が雄型継手受入部内に挿入された状態で該ボールを半径方向内側に変位して雄型継手の外周面に設けられたボール受入凹部に係合するようになっている(特許文献1)
しかし、このようなボールは、当該管継手が扱う流体が高圧である場合などには、雄型継手のボール受入凹部に強く押圧する必要があり、該ボール受入凹部に圧痕が生じ、一定期間使用することにより、固定作用が十分ではなくなる虞がある。
【0003】
これに対して、いわゆるコレット型の固定手段が用いられる場合がある。すなわち、この固定手段は、雌型継手の雄型継手受入部の周囲に一定間隔をあけて設けられ、それぞれ当該雄型継手受入部の雄型継手受入方向に伸びるようにされた複数の係止爪を有し、該係止爪を梃子状に揺動可能に支持して、その先端に設けた係止部を雄型継手の外周面に設けた係止凹部に係合/係合解除するようにしている(特許文献2)。
この係止爪の係止部は、上述のボールに比べて、圧痕が生じる程度は少なくなる。しかし、係止爪は雌型継手の雄型継手受入部の先端部分に設けられ、係止部を半径方向外側に広げた状態にした係止爪の中に雄型継手を受け入れ、該雄型継手に対して、係止部を半径方向内側に変位させて係合固定を行うものであるから、係止固定が行われる状態において、雄型継手と雌型継手とが必ずしも芯出しされた状態とはならない場合が生じ、結果として、雄型継手と雌型継手との連結が適正なものでなくなる虞がある。
【特許文献1】特願2003−133618
【特許文献2】米国特許2888278号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述のコレット型の固定手段の問題を解消した管継手、特に、雌型継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は
前端から後端に向けて延びる雄型継手受入部(以下の発明の実施形態の説明では参照番号22で示している)を有する筒状壁(同実施形態における第1本体部材20−1に相当する)を備える雌型継手本体(20)と、
上記筒状壁に取付けられ、該筒状壁の軸線方向(雄型継手受入方向)に延びる係止爪(32)であって、挿入された雄型継手の外周面に形成された被係止部(12−1)に係合して、該雄型継手(12)を雌型継手本体(20)内に係止する係止部(32−1)を前端に備える係止爪と、
を有する管継手の雌型継手(10)であって、
筒状壁(20−1)は、
係止爪を梃子状に支持する支持部(35−1)であって、係止爪が該支持部を中心に梃子状の運動をすることにより、係止部(32−1)が、上記雄型継手受入部に挿入された雄型継手の被係止部(12−1)に係合する係止位置と、該係止位置よりも半径方向外側に変位して雄型継手の被係止部から外れて、雄型継手が雄型継手受入部から引き出されるのを可能とする開放位置と、の間で変位するようにする支持部(35−1)と、
係止爪(32)の係止部(32−1)が当該筒状壁を通して上記係止位置と開放位置との間を半径方向で変位可能にするために該筒状壁の半径方向を貫通するように設けられた半径方向貫通孔(20−1(1))と、
を有し、
上記雄型継手受入部(22)が、
雄型継手(12)の被係止部(12−1)が係止爪(32)の上記係止位置とされる係止部(32−1)によって係合されるようになる固定位置まで当該雄型継手が雄型継手受入部へ挿入される前の段階で、該雄型継手の先端部外周面(12−2)と摺動係合する奥部内面(35−2)と、該奥部内面が雄型継手の先端部外周面(12−2)に摺動係合するのと同時に、雄型継手における被係止部(12−1)を挟んで先端部外周面(12−2)よりも後方位置にある雄型継手の外周面(12−3)と摺動係合する前端内面(20−1(2)と、
を有し、
当該雌型継手(10)は、
雄型継手が雄型継手受入部(22)内の上記固定位置に挿入された状態で、上記係止爪(32)を上記係止位置に押圧する係止爪操作手段(24)を
有することを特徴とする管継手の雌型継手を提供する。
【0006】
具体的には、上記係止爪操作手段(24)が、上記筒状壁の外周面上に設けられ、上記係止爪の半径方向外側に位置し、上記支持部よりも上記前端側の部分で係止爪を半径方向内方へ押圧して、該係止爪の係止部を上記係止位置に押圧する押圧固定位置と、上記支持部よりも上記後端側の部分で係止爪を半径方向内方へ押圧して、該係止爪の係止部が上記開放位置となるようにする押圧開放位置との間を上記軸線方向で変位可能とされた操作スリーブを備えるものとすることができる。
【0007】
また、本発明は、
前端から後端に向けて延びる雄型継手受入部(22)を有する筒状壁(20−1)を備える雌型継手本体(20)と、
上記筒状壁に取付けられ、該筒状壁の軸線方向(雄型継手受入方向)に延びる係止爪(32)であって、雄型継手受入部の所定の固定位置まで挿入された雄型継手の外周面に形成された被係止部(12−1)に係合して、該雄型継手(12)を雌型継手本体(20)内に係止する係止部(32−1)を前端に備える係止爪(32)と、
を有する管継手の雌型継手(10)であって、
筒状壁(20−1)は、
係止爪を梃子状に支持する支持部(35−1)であって、係止爪が該支持部を中心に梃子状の運動をすることにより、該係止爪における支持部よりも上記前端側にある係止部(32−1)が、上記雄型継手受入部に挿入された雄型継手の被係止部(12−1)に係合する係止位置と、該係止位置よりも半径方向外側に変位して雄型継手の被係止部から外れて、雄型継手が雄型継手受入部(22)から引き出されるのを可能とする開放位置と、の間で変位するようにする支持部(35−1)と、
係止爪の係止部が当該筒状壁を通して上記係止位置と開放位置との間を半径方向で変位可能にするために該筒状壁の半径方向を貫通するように設けられた半径方向貫通孔(20−1(1))と、
を有し、
当該雌型継手が
上記筒状壁(20−1)の外周面上に設けられ、上記係止爪(32)の半径方向外側に位置し、上記支持部よりも上記前端側の部分で係止爪を半径方向内方へ押圧して、該係止爪の係止部を上記係止位置に押圧する押圧固定位置と、上記支持部よりも上記後端側の部分で係止爪を半径方向内方へ押圧して、該係止爪の係止部が上記開放位置となるようにする押圧開放位置との間を上記軸線方向で変位可能とされた操作スリーブ(40)を備えた係止爪操作手段を有する
ことを特徴とする管継手の雌型継手を提供する。
【0008】
これら雌型継手においては、係止爪(32)の係止部(32−1)が、雌型継手本体の先端よりも奥に位置する半径方向貫通孔(20−1(1))を通して雄型継手の被係止部(12−1)に係合するようになっており、従って、当該係止部(32−1)が該被係止部に係合する状態では、雄型継手を雌型継手に十分挿入されて芯出しされた状態とすることができる
【0009】
具体的には、上記係止爪(32)は、その係止部(32−1)が上記係止位置にある状態において、軸線方向に延びる平坦部(32−2)と、該平坦部における上記支持部よりも前方の位置で半径方向外側に隆起した第1隆起部(32−4)と、該平坦部における上記支持部よりも後方の位置で半径方向外側に隆起した第2隆起部(32−3)とを有する半径方向外側面を備え、
該操作スリーブ(24)が、
第1及び第2爪押えを有し、
上記押圧係止位置にあるときには、第1爪押え(40−2)が係止爪の第1隆起部(32−4)に押圧係合し、第2爪押え(46)が第2隆起部(32−3)よりも前方位置の位置とされて、該係止爪の係止部を上記係止位置に押圧し、
上記押圧開放位置にあるときには、第1爪押えが係止爪の第1隆起部よりも後方位置に位置し、第2爪押えが係止爪の第2隆起部に押圧係合するようにして、係止爪の係止部が上記開放位置になるようにすることができる。
【0010】
更に具体的には、
上記スリーブ(40)の前端内周面が上記第1爪押え(40−2)を形成し、
該スリーブは、その前端より後方位置において該スリーブの内周面よりも半径方向内側に突出する部分を有するボール(46)を備え、該ボールの上記突出部分により、上記第2爪押えが形成されるようにすることができる。
【0011】
係止爪操作手段(24)は、
上記雄型継手受入部(22)内に操作スリーブ固定位置と操作スリーブ開放位置との間を上記軸線方向で変位可能に設けられたスリーブ固定部材(42)と、
該スリーブ固定部材(42)を操作スリーブ固定位置に付勢する第1付勢部材(44)と、
操作スリーブ固定位置にあるスリーブ固定部材(42)により操作スリーブ(40)に係合されて該操作スリーブを上記押圧開放位置に保持し、スリーブ固定部材が操作スリーブ開放位置に変位することに応答して操作スリーブ(40)を上記押圧係止位置に変位するのを許容するスリーブ係合部材(34)と
を有するようにすることができる。
【0012】
また、上記スリーブ係合部材(34)は、上記筒状壁(20−1)を半径方向で貫通する半径方向孔(20−1(4))内に半径方向で変位可能に設けられたスリーブ係合ボールとされ、
上記操作スリーブ(40)はその内周面に、当該操作スリーブが上記押圧開放位置にあるときに該スリーブ係合ボールと半径方向で整合するボール受入凹部(40−1)を有し、
上記スリーブ固定部材(42)は、操作スリーブ固定位置にあるときにスリーブ係合ボールに係合して該ボールを操作スリーブの上記ボール受入凹部(40−1)に押圧係合させるボール押圧部(42−1)と、上記操作スリーブ開放位置にあるときにスリーブ係合ボールが半径方向内側に変位してボール受入凹部(40−1)から外れるのを可能にするボール開放部(42−2)とを有する外面を備えるようにすることができる。
【0013】
また、上記雄型継手受入部内に設けられた開閉弁であって、雌型継手本体内で該雄型継手受入部に軸線方向で連続して設けられた流体通路を閉止する前方閉止位置と、同流体通路を開放する後方開放位置との間を軸線方向で変位可能とされた開閉弁体(26)と、
該開閉弁体(26)を上記前方閉止位置に付勢する第2付勢手段(50)と、
を有し、
上記スリーブ固定部材(42)及び開閉弁体(26)は雄型継手受入部(22)内に挿入される雄型継手(12)によって後方へ押し込められ、開閉弁体(26)が上記後方開放位置とされた状態でスリーブ固定部材(42)がスリーブ開放位置とされるようにすることが好ましい。
【0014】
更に、雌型継手本体が、上記流体通路を開閉するための第2開閉弁(28)を有し、
操作スリーブ(40)は、上記押圧係止位置とされたときにのみ、該第2開閉弁が解放状態となるのを許容するようにすることが好ましい。
【0015】
また、雌型継手本体の先端には、上記押圧係止位置にあるときの操作スリーブの半径方向外側位置に位置して、該操作スリーブへの外部からのアクセスができないようにするための安全筒部(56)を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る雌型継手においては、雄型継手が雌型継手内の固定位置まで挿入される前に、雄型継手が雌型継手の雄型継手受入部内に十分に挿入されるようにすることができる。特に、雄型継手の先端部分外周面と、それよりも後方位置の外周面とが、雄型継手受入部を画定している壁面と摺動係合するようにすることにより、該雄型継手の雌型継手に対する芯出しが行われた状態で係止爪による係止が行われることが可能となり、従って、雄型継手と雌型継手との連結を従来のものに比べて適切に行うことができる。
特に高圧の流体を扱う場合には、コレット式固定手段を備える従来の継手の欠点を解消しながら、ボール型の固定手段ではなしえにくい確実な連結を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る管継手の実施形態を添付図面に基づき説明する。
図1は本発明に係る雌型継手10の縦断面図、図2は図1の雌型継手10に雄型継手12が挿入された状態の縦断面図、図3は雌型継手本体(後述)を想像線(一転鎖線)で表し、該雌型継手本体に取付けられる係止爪(後述)等を実線で示した斜視図、図4は図3のIV-IV線断面図であり、雌型継手本体が実線で示され、該雌型継手本体の外側に摺動可能に取り付けられる操作スリーブ(後述)等は想像線で表しており、図5は図3のV―V線断面である。
【0018】
図示のように、雌型継手10は、全体として筒型の雌型継手本体20を有している。具体的には該雌型継手本体20は、その前端側から後端側に向けて順次配置され相互にネジ係合された第1本体部材20−1、第2本体部材20−2、第3本体部材20−3からなる。
【0019】
第1本体部材20−1は、雄型継手12を受け入れるための雄型継手受入部22及び(該雄型継手受入部22に受け入れた雄型継手12を固定するための)雄型継手固定手段24を備えている。
【0020】
第2本体部材20−2は、第1本体部材20−1の雄型継手受入部22に連通した流体通路25を有しており、該流体通路25を開閉するためのポペット型の第1の開閉弁体26と、シャフト27に取り付けられて、該シャフトがその中心軸線を中心に回動することに伴って回動されるボール型の第2の開閉弁体28とを備えている。
【0021】
また、第2本体部材20−2は、第2の開閉弁体28を図1の閉止位置にしたときに流体通路25に連通されるようにシャフト27内に形成された残圧排出孔27−1に連通し、開閉弁体28が閉止位置にあるときに、該流体通路24内の残圧を外部へ排出するための残圧排出口30−1を備える残圧排出管30が設けられている。
第3本体部材20−3は、(図示しない)高圧流体源に接続されたパイプPが接続されるようになっている。
【0022】
図3には、第1本体部材20−1に対して取付けられる(雄型継手固定手段24の構成部材である)係止爪32、及び、操作スリーブ固定ボール34の第1本体部材20−1に対する位置関係が、また、図4には図3のIV-IV線に沿って見た場合の断面図が示されている。
【0023】
図1乃至図6から分かるように、係止爪32は第1本体部材20−1の軸線方向(雄型継手受入方向)に延びる細長い部材とされており、その先端に、(図2に示すように挿入された)雄型継手12の外周面に形成された被係止部すなわち環状凹部12−1に係合して、該雄型継手12を雌型継手本体20内に係止する係止部32−1を備えている。
【0024】
第1本体部材20−1は、その内周面に、係止爪32を梃子状に支持する支持部が形成されており、図示の例では環状リング35が該内周面に係合固定されて係止爪32を支持するようになっている。すなわち、環状リング35の図1で見て(支持部としての)左上角部35−1で係止爪32が支持されており、図2及び図5に示すように係止部32−1が、上記雄型継手受入部22に挿入された雄型継手12の被係止部12−1に係合する係止位置と、図1及び図6に示すように、該係止位置よりも係止部32−1が半径方向外側に変位して雄型継手12の被係止部12−1から外れて、雄型継手が雄型継手受入部から引き出されるのを可能とする開放位置と、なるように当該係止爪32が梃子状に動くように支持している。より精確に述べれば、係止爪32は、その半径方向内面が、(当該係止爪が図5に示す係止位置にあるときに)環状リング35の外周面と接触する面32−2と、環状リングの図でみて左端面に接触する面32−3とを有しており、当該係止爪32が環状リング35条で梃子状の動きをするときには、面32−3の先端32−4が環状リング35の左端面に係合し、該先端32−4を支点として動くようになっている。
【0025】
第1本体部材20−1の筒状壁には、係止爪32の係止部32−1が、当該筒状壁を通して上記係止位置(図2)と開放位置(図1)との間を半径方向で変位できるようにするための該筒状壁を半径方向で貫通する半径方向貫通孔20−1(1)が形成されている。具体的には、第1本体部材20−1の筒状壁には、図3に示すように、その周方向でほぼ90°の間隔をあけて設けられ、それぞれ当該第1本体部材の軸線方向に延び、半径方向で貫通する細長い係止爪収納孔20−1(2)が形成されており、環状リング35が、該係止爪収納孔20−1(2)の軸線方向のほぼ中間位置を横断するように設けられており、該環状リング35の前側に上記半径方向貫通孔20−1(1)が形成され、後側には第2の半径方向貫通孔20−1(3)が形成されるようになっている。
【0026】
環状リング35の内周面(特許請求の範囲で規定するところの雄型継手受入部22の奥部内面)35−2、及び、同第1本体部材20−1の先端部分内周面20−1(2)(すなわち、係止爪収納孔20−1(2)の前側位置の内周面)は、当該第1本体部材20−1の軸線に平行に延びるようにされており、(雄型継手12の被係止部12−1が係止爪32の係止部32−1によって係合されるようになる位置まで該雄型継手が雄型継手受入部へ挿入される前の段階で)環状リング35の内周面35−2が当該雄型継手の先端部外周面12−2と摺動係合し、同時に、第1本体部材20−1の先端部分内周面(特許請求の範囲で規定するところの雄型継手受入部22の前端内面)20−1(2)が雄型継手12における被係止部12−1を挟んで先端部外周面12−2よりも後方位置にある雄型継手の外周面12−3と摺動係合するようにされており、これにより、雄型継手12の被係止部12−1が係止爪32の係止部32−1によって係合固定される前に、当該雄型継手12が雌型継手10に対して芯合わせされた状態とされる。より詳細に述べれば、第1本体部材20−1の内周面は、図5に示すように、環状リング35の外周面が当接する大径の内周面20−4と、右端面が当接する肩状面20−5と、該肩状面に連続して環状リング35の内周面と同径とされた小径の内周面20−6とを有しており、雄型継手12を雌型継手10に対して芯合わせされた状態にするために、雄型継手の先端部外周面12−2と摺動係合する(特許請求の範囲で規定するところの)雄型継手受入部22の奥部内面は、該第1本体部材の上記小径とされた内周面20−6と上述の環状リング35の内周面35−2とにより構成されている。
【0027】
係止爪32は、図2、図3、図5に示すように、係止部32−1が雄型継手12の被係止部12−1と係合する係止位置にある状態において、軸線方向に延びる平坦部32−5と、該平坦部の後端から半径方向外側に傾斜隆起する隆起部32−6、該平坦部の前端から半径方向外側に傾斜隆起する隆起部32−7とを有する半径方向外側面を備えている。
【0028】
第1本体部材20−1の筒状壁の外周面上に操作スリーブ40が設けられている。該操作スリーブ40は、該操作スリーブに設けられた半径方向貫通孔内に設定され、一部が当該操作スリーブの内周面よりも内側に突出しているボール40−1を備える。操作スリーブ40は、図2及び図5に示す押圧係止位置にあるときには、(特許請求の範囲で第1爪押えとして規定される)当該操作スリーブ40の前端部分40−2が係止爪32の隆起部32−7と係合して半径方向内側に押圧係合し、(特許請求の範囲で第2爪押えとして規定される)ボール46が隆起部32−6よりも前方位置の位置とされて、該係止爪32の係止部32−1を雄型継手の被係止部12−1に係合させ、また、図1及び図6に示す押圧開放位置(すなわち、係止爪32の係止部32−1を図2に示す位置)にあるときには、第1爪押えとしての当該操作スリーブの前端部分40−2が係止爪32の隆起部32−7よりも後方位置に位置し、第2爪押えとしてのボール46が係止爪32の隆起部32−6に押圧係合して、係止爪32の係止部32−1が上記開放位置になるようにされている。41は操作スリーブ40を、図2の押圧係止位置に向けて付勢するコイルバネを示す。
【0029】
第1本体部材20−1の雄型継手受入部内には、(図4、図1に示す)操作スリーブ固定位置と図2に示す操作スリーブ開放位置との間を上記軸線方向で変位可能に設けられた筒状のスリーブ固定部材42と、該スリーブ固定部材42を操作スリーブ固定位置に付勢する第1付勢部材44と、操作スリーブ固定位置(図1、図4)にあるスリーブ固定部材42により押圧されて操作スリーブ40の内周面に設けられた凹部40−1に係合されて該操作スリーブ40を上記押圧開放位置(すなわち、係止爪32の係止部32−1を雄型継手12の被係止部12−1から外すした位置)に保持し、スリーブ固定部材42が操作スリーブ開放位置(図2)に変位することに応答して操作スリーブ40を上記押圧係止位置(すなわち、係止爪32の係止部32−1を雄型継手12の被係止部12−1押圧係合する位置)に変位するのを許容するスリーブ係合部材34(図3、図4)と有している。
【0030】
図示の例では、スリーブ係合部材34は、図3及び図4に示すように、第1本体部材20−1の筒状壁を半径方向で貫通する第3の半径方向孔20−1(4)内に半径方向で変位可能に設けられた操作スリーブ固定ボールとされ、操作スリーブ40の内周面に設けられた凹部40−1は、当該操作スリーブ40が押圧開放位置(図1)にあるときに該操作スリーブ固定ボール34と半径方向で整合するようになされている。スリーブ固定部材42は、図1の操作スリーブ固定位置にあるときに操作スリーブ固定ボール34に係合して該ボールを操作スリーブ40のボール受入凹部40−1に押圧係合させるボール押圧部42−1と、図2の操作スリーブ開放位置にあるときに操作スリーブ固定ボール34が半径方向内側に変位して凹部40−1から外れるのを可能にするボール開放部42−2とを有する外面を備えている。
【0031】
第1開閉弁26は、コイルバネ50によって、図1に示す前方閉止位置に付勢されている。該コイルバネ50は、第1開閉弁26の周囲に軸線方向で変位可能に取付けられ、第1開閉弁26の周囲に固定されたストップリング54係止されたバネ保持スリーブ52と、第2本体部材20−2との間に設定されている。
【0032】
スリーブ固定部材42及び第1開閉26は、雄型継手受入部22内に挿入される雄型継手12によって後方へ押し込められ、第1開閉弁が(図2に示す)後方開放位置とされた状態でスリーブ固定部材42がスリーブ開放位置とされ、操作スリーブ40が、コイルバネ41によって、図2に示す位置に変位されるようになっている。
【0033】
操作スリーブ40の外周面には、筒状部材55が固定されており、操作スリーブ40が軸線方向で変位することに伴い、第2継手本体20−2上を軸線方向に摺動するようになっている。すなわち、図1に示すような状態においては、該筒状部材54の図で見て左端部分55−1が(シャフト回動用レバーが取り付けられる)シャフト27の上端部に近接する位置とされ、該レバーによるシャフトの回動、従って、第2開閉弁体28を図1の閉止位置から開放位置に回動するが阻止されるようになっており、一方、図2に示すように操作スリーブと共に図で見て右方へ変位した場合には、同左端部分55−1がシャフト27の上端部から離れ、当該シャフト27の回動を許容し、第2開閉弁体28が図1の閉止位置から開放位置へ回動することができるようになっている。これにより、第2開閉弁体28は、雄型継手12が雌型継手10に完全に挿入され、係止爪32により固定された状態のときだけ、開放できるようになっている。
【0034】
なお、雌型継手本体20の先端には、押圧係止位置(図2)にあるときの操作スリーブ40の半径方向外側位置に位置して、該操作スリーブへの外部からのアクセスができないようにするための安全筒部56が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る雌型継手の縦断面図である。
【図2】図1の雌型継手に雄型継手が挿入された状態で、第2開閉弁体がまだ解放されていない状態を示す縦断面図である。
【図3】図1の雌型継手の雌型継手本体を想像線(一転鎖線)で表し、該雌型継手本体に取付けられる係止爪等を実線で示した斜視図である。
【図4】図3のIV-IV線断面図であり、雌型継手本体が実線で示され、該雌型継手本体の外側に摺動可能に取り付けられる操作スリーブ等が想像線で表されている。
【図5】図3のV-V線断面図であり、係止爪が係止位置にある状態を示す。
【図6】図5と同様の図であり、係止爪が開放位置にある状態を示す。
【符号の説明】
【0036】
10 雌型継手
12 雄型継手
12−1 被係止部(環状凹部)
12−2 先端部外周面
12−3 外周面
20 雌型継手本体
20−1 筒状壁(第1本体部材)
20−1(1)半径方向貫通孔
20−1(2)前端内面(先端部分内周面)
20−1(3)第2半径方向貫通孔
20−1(4)半径方向孔(第3の半径方向孔)
20−1(5)係止爪収納孔
20−2 第2本体部材
20−3 第3本体部材
20−4 大径の内周面
20−5 肩状面
20−6 小径の内周面
22 雄型継手受入部
24 係止爪操作手段(雄型継手固定手段)
25 流体通路
26 第1開閉弁体
27 シャフト
27−1 残圧排出孔
28 第2開閉弁体
30 残圧排出管
30−1 残圧排出口
32 係止爪
32−1 係止部
32−2 外周面と接触する面
32−3 左端面に接触する面
32−4 先端
32−5 平坦部
32−6 第2隆起部
32−7 第1隆起部
34 スリーブ係合部材(操作スリーブ固定ボール)
35 環状リング
35−1 支持部(左上角部)
35−2 奥部内面(内周面)
40 操作スリーブ
40−1 ボール受入凹部
40−1 ボール
40−2 第1爪押え(前端部分)
41 コイルバネ
42 スリーブ固定部材
42−1 ボール押圧部
42−2 ボール開放部
44 第1付勢部材
46 第2爪押え(ボール)
50 第2付勢手段(コイルバネ)
52 バネ保持スリーブ
54 ストップリング
55 筒状部材
55−1 左端部分
56 安全筒部
P パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端から後端に向けて延びる雄型継手受入部を有する筒状壁を備える雌型継手本体と、
上記筒状壁に取付けられ、該筒状壁の軸線方向(雄型継手受入方向)に延びる係止爪であって、挿入された雄型継手の外周面に形成された被係止部に係合して、該雄型継手を雌型継手本体内に係止する係止部を前端に備える係止爪と、
を有する管継手の雌型継手であって、
筒状壁は、
係止爪を梃子状に支持する支持部であって、係止爪が該支持部を中心に梃子状の運動をすることにより、係止部が、上記雄型継手受入部に挿入された雄型継手の被係止部に係合する係止位置と、該係止位置よりも半径方向外側に変位して雄型継手の被係止部から外れて、雄型継手が雄型継手受入部から引き出されるのを可能とする開放位置と、の間で変位するようにする支持部と、
係止爪の係止部が当該筒状壁を通して上記係止位置と開放位置との間を半径方向で変位可能にするために該筒状壁の半径方向を貫通するように設けられた半径方向貫通孔と、
を有し、
上記雄型継手受入部が、
雄型継手の被係止部が係止爪の上記係止位置とされる係止部によって係合されるようになる固定位置まで該雄型継手が雄型継手受入部へ挿入される前の段階で、当該雄型継手の先端部外周面と摺動係合する奥部内面と、該奥部内面が雄型継手の先端部外周面に摺動係合するのと同時に、雄型継手における被係止部を挟んで先端部外周面よりも後方位置にある雄型継手の外周面と摺動係合する前端内面と、
を有し、
当該雌型継手は、
雄型継手が雄型継手受入部内の上記固定位置に挿入された状態で、上記係止爪の係止部を上記係止位置に押圧する係止爪操作手段を
有することを特徴とする管継手の雌型継手。
【請求項2】
前端から後端に向けて延びる雄型継手受入部を有する筒状壁を備える雌型継手本体と、
上記筒状壁に取付けられ、該筒状壁の軸線方向(雄型継手受入方向)に延びる係止爪であって、雄型継手受入部の所定の固定位置まで挿入された雄型継手の外周面に形成された被係止部に係合して、該雄型継手を雌型継手本体内に係止する係止部を前端に備える係止爪と、
を有する管継手の雌型継手であって、
筒状壁は、
係止爪を梃子状に支持する支持部であって、係止爪が該支持部を中心に梃子状の運動をすることにより、該係止爪における支持部よりも上記前端側にある係止部が、上記雄型継手受入部に挿入された雄型継手の被係止部に係合する係止位置と、該係止位置よりも半径方向外側に変位して雄型継手の被係止部から外れて、雄型継手が雄型継手受入部から引き出されるのを可能とする開放位置と、の間で変位するようにする支持部と、
係止爪の係止部が当該筒状壁を通して上記係止位置と開放位置との間を半径方向で変位可能にするために該筒状壁の半径方向を貫通するように設けられた半径方向貫通孔と、
を有し、
当該雌型継手が
上記筒状壁の外周面上に設けられ、上記係止爪の半径方向外側に位置し、上記支持部よりも上記前端側の部分で係止爪を半径方向内方へ押圧して、該係止爪の係止部を上記係止位置に押圧する押圧固定位置と、上記支持部よりも上記後端側の部分で係止爪を半径方向内方へ押圧して、該係止爪の係止部が上記開放位置となるようにする押圧開放位置との間を上記軸線方向で変位可能とされた操作スリーブを備えた係止爪操作手段を有する
ことを特徴とする管継手の雌型継手。
【請求項3】
上記係止爪操作手段が、上記筒状壁の外周面上に設けられ、上記係止爪の半径方向外側に位置し、上記支持部よりも上記前端側の部分で係止爪を半径方向内方へ押圧して、該係止爪の係止部を上記係止位置に押圧する押圧固定位置と、上記支持部よりも上記後端側の部分で係止爪を半径方向内方へ押圧して、該係止爪の係止部が上記開放位置となるようにする押圧開放位置との間を上記軸線方向で変位可能とされた操作スリーブを備えることを特徴とする請求項1に記載の雌型継手。
【請求項4】
上記係止爪が、その係止部が上記係止位置にある状態において、軸線方向に延びる平坦部と、該平坦部における上記支持部よりも前方の位置で半径方向外側に隆起した第1隆起部と、該平坦部における上記支持部よりも後方の位置で半径方向外側に隆起した第2隆起部とを有する半径方向外側面を備え、
該操作スリーブが、
第1及び第2爪押えを有し、
上記押圧係止位置にあるときには、第1爪押えが係止爪の第1隆起部に押圧係合し、第2爪押えが第2隆起部よりも前方位置の位置とされて、該係止爪の係止部を上記係止位置に押圧し、
上記押圧開放位置にあるときには、第1爪押えが係止爪の第1隆起部よりも後方位置に位置し、第2爪押えが係止爪の第2隆起部に押圧係合するようにして、係止爪の係止部が上記開放位置になるようにした
ことを特徴とする請求項2若しくは3に記載の雌型継手。
【請求項5】
上記スリーブの前端内周面が上記第1爪押えを形成し、
該スリーブは、その前端より後方位置において該スリーブの内周面よりも半径方向内側に突出する部分を有するボールを備え、該ボールの上記突出部分により、上記第2爪押えが形成されていることを特徴とする請求項4に記載の雌型継手。
【請求項6】
上記係止爪操作手段が、
上記雄型継手受入部内に操作スリーブ固定位置と操作スリーブ開放位置との間を上記軸線方向で変位可能に設けられたスリーブ固定部材と、
該スリーブ固定部材を操作スリーブ固定位置に付勢する第1付勢部材と、
操作スリーブ固定位置にあるスリーブ固定部材により操作スリーブに係合されて該操作スリーブを上記押圧開放位置に保持し、スリーブ固定部材が操作スリーブ開放位置に変位することに応答して操作スリーブを上記押圧係止位置に変位するのを許容するスリーブ係合部材と
を有することを特徴とする請求項4若しくは5に記載の雌型継手。
【請求項7】
上記スリーブ係合部材は、上記筒状壁を半径方向で貫通する半径方向孔内に半径方向で変位可能に設けられたスリーブ係合ボールとされ、
上記操作スリーブはその内周面に、当該操作スリーブが上記押圧開放位置にあるときに該スリーブ係合ボールと半径方向で整合するボール受入凹部を有し、
上記スリーブ固定部材は、操作スリーブ固定位置にあるときにスリーブ係合ボールに係合して該ボールを操作スリーブの上記ボール受入凹部に押圧係合させるボール押圧部と、上記操作スリーブ開放位置にあるときにスリーブ係合ボールが半径方向内側に変位してボール受入凹部から外れるのを可能にするボール開放部とを有する外面を備える
ことを特徴とする請求項6に記載の雌型継手。
【請求項8】
上記雄型継手受入部内に設けられた開閉弁であって、雌型継手本体内で該雄型継手受入部に軸線方向で連続して設けられた流体通路を閉止する前方閉止位置と、同流体通路を開放する後方開放位置との間を軸線方向で変位可能とされた開閉弁体と、
該開閉弁体を上記前方閉止位置に付勢する第2付勢手段と、
を有し、
上記スリーブ固定部材及び開閉弁は雄型継手受入部内に挿入される雄型継手によって後方へ押し込められ、開閉弁体が上記後方開放位置とされた状態でスリーブ固定部材がスリーブ開放位置とされるようになされている
ことを特徴とする請求項7に記載の雌型継手。
【請求項9】
上記雌型継手本体が、上記流体通路を開閉するための第2開閉弁を有し、
上記操作スリーブは、上記押圧係止位置とされたときにのみ、該第2開閉弁が解放状態となるのを許容するようにしたことを特徴とする請求項8に記載の雌型継手。
【請求項10】
雌型継手本体の先端に設けられ、上記押圧係止位置にあるときの操作スリーブの半径方向外側位置に位置して、該操作スリーブへの外部からのアクセスができないようにするための安全筒部を有することを特徴とする請求項4乃至9のいずれかに記載の雌型継手。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−112533(P2006−112533A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301113(P2004−301113)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000227386)日東工器株式会社 (158)
【Fターム(参考)】