説明

管路更生工法

【課題】管路の開口端を確実に止水して管路の更生を容易にするとともに、堰き止められた下水を簡単に下流の管路に排水することが可能な管路更生工法を提供する。
【解決手段】止水部材40で堰き止められた下水45を排水する排水ホース27が、管ライニング材1の管路挿入につれて管ライニング材内に挿入される。管ライニング材1に含浸された硬化性樹脂を硬化させるとき、更生すべき管路の上流で堰き止められた下水45が、管ライニング材内の排水ホース27を介して更生すべき管路の下流に放流される。このような構成では、更生すべき管路の上流で堰き止められた下水の排水が容易になるとともに、下水に悩まされない円滑で効率的な管路更生が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路更生工法、さらに詳細には、管路の開口端を止水して管路を更生する管路更生工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された下水管等の管路が老朽化した場合、該管路を掘出することなく、その内周面にライニングを施して当該管路を更生する管路更生工法が知られている。
【0003】
この工法では、外周面が気密性の高いフィルムで被覆された管状不織布に硬化性樹脂を含浸せしめて成る管ライニング材を流体圧によって管路内に反転させながら挿入するとともに、これを管路の内周面に押圧し、この状態を保ったまま管ライニング材を加温等してこれに含浸された硬化性樹脂を硬化させることによって、管路の内周面にライニングを施している(特許文献1)。
【0004】
このような工法を用いて管路にライニングを施す場合、管路に下水が流れると、良好なライニングができないので、予め更生すべき管路の上流に止水部材を配置して下水を止水してから管路を更生している。
【特許文献1】特開2003−165158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来では、下水量が多い管路では、上流の管路が止水部材で堰き止められた下水で満水になる恐れがあるので、排水ポンプを用いて堰き止められた下水を排水ホースに流し、この排水ホースを一旦地上に持ち上げ、別のマンホールを介して下流の下水管に導き、そこで排水するという不便な排水作業を行っていた。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、管路の開口端を確実に止水して管路の更生を容易にするとともに、堰き止められた下水を簡単に下流の管路に排水することが可能な管路更生工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
硬化性樹脂を含浸してなる筒状の管ライニング材を管路内に挿入し、含浸樹脂を硬化させて管路を更生する管路更生工法であって、
更生すべき管路の上流を流れる下水を止水部材で堰き止めて止水し、
止水部材で堰き止められた下水を排水する排水ホースを、管ライニング材の管路挿入につれて管ライニング材内に挿入し、
管ライニング材を更生すべき管路内に挿入し終わったとき、管ライニング材内に挿入された排水ホースを管ライニング材外部に導き、
管ライニング材を膨張させて管路内面に押圧した状態で管ライニング材に含浸された硬化性樹脂を硬化させるとともに、更生すべき管路の上流で堰き止められた下水を、管ライニング材内に挿入された排水ホースを介して更生すべき管路の下流に排水することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、止水部材で堰き止められた下水を排水する排水ホースが、管ライニング材の管路挿入につれて管ライニング材内に挿入され、更生すべき管路の上流で堰き止められた下水が、管ライニング材内に挿入された排水ホースを介して更生すべき管路の下流に排水されるので、更生すべき管路の上流で堰き止められた下水の排水が容易になるとともに、下水に悩まされない円滑で効率的な管路更生が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0010】
図1には、下水管などの管路3を更生するための管ライニング材1を反転させる反転機10が、トラック11の荷台に支持板12と上下調節機構13、14を介して取り付けられ、マンホール2のある作業現場に移動される状態が図示されている。反転機10は、管ライニング材1を収納する気密な密閉構造の収納容器20を有しており、この収納容器20には、複数のガイドローラー21を有するガイド部22を介して取付管60が着脱可能に取り付けられる。取付管60には、誘導ノズル30が取り付けられ、この誘導ノズル30は、垂直方向に延び、その下方端には、案内管31、調節管34、案内管32を介して屈曲した反転ノズル33が着脱可能に取付けられる。
【0011】
反転ノズル33の垂直位置は、案内管31と32の位置を調節管34で調節することにより、管路3が埋設される地中深さに応じて調節することができる。
【0012】
取付管60は、図5、図6に示したように、上下にフランジ60a、60bを備えた円管状の部材で、フランジ60aは、複数のクランプ73を介して気密な圧力蓋80のフランジ80aと気密に取付けられ、また取付管60のフランジ60bは、複数のボルトナット式の固定手段72を介してノズル円錐部30bのフランジ30cと気密に取付けられる。
【0013】
また、取付管60の側部には、後述する排水ホース27と蒸気ホース28を外部に導くことができるダクト61、62が取付けられ、また圧縮空気を供給するエア供給ホース(不図示)を取付ける取付穴63並びにエアを排出するエア排出ホース(不図示)を取付ける取付穴64が形成される。ダクト61、62並びに取付穴63、64は、いずれも各ホースを取付ける前は、キャップなどで気密に密閉される。
【0014】
後述するように、取付管60と収納容器20(ガイド部22も収納容器20の一部とする)が切り離された場合は、取付管60の上部に圧力蓋80が気密に取り付けられる。
【0015】
反転ノズル33は、管ライニング材1が取付けられる円柱状の先端が開放したノズル開口部33aと、この開口部33aに対して開口部の向きがほぼ直交する円柱部33cと、ノズル開口部33aと円柱部33cを結合する屈曲部33bから構成されている。反転ノズル33は、そのノズル開口部33aが管路3の開口部3aに向くように配置され、そのノズル軸心は、管路3の延びる方向(水平方向)と略一致している。反転ノズル33、案内管32、31、調節管34、誘導ノズル30、取付管60、ガイド部22、並びに収納容器20からなる全体は、ノズル開口部33aが開放している以外は、気密な密閉構造となっている。
【0016】
収納容器20の両側部には、リール24を回転自在に軸承する軸受け部25が取り付けられる。リール24は、図2(A)、(B)に図示したように、排水ホース27と蒸気ホース28を巻き取るとともに、その上に連結具29、29’を介して連結された管ライニング材1をロール状に巻き取るために使用され、電動モータ(不図示)により、図1で見て時計方向に回転するように駆動され、それにより排水ホース27、蒸気ホース28、管ライニング材1がリール24にロール状に巻き取られる。一方、リール24に巻き取られている管ライニング材1などが、後述するように、収納容器20から引き出される場合には、リール24に作用するトルクによりリール24が逆回転し、電動モータを回転させて発電機として動作させ、管ライニング材などの引き出しに制動がかかるようになっている。
【0017】
また、収納容器20には、管ライニング材1を反転させるための流体圧(圧縮空気)を収納容器20に送り込むためのダクト26が取り付けられる。
【0018】
リール24に巻き取られる管ライニング材1は、公知の筒状の管ライニング材であり、外表面がプラスチックフィルムで気密的に被覆された管状樹脂吸収材に未硬化の液状熱硬化性樹脂を含浸せしめて構成される。尚、プラスチックフィルムとしてはポリエチレン、塩化ビニル、ビニロン、ポリウレタン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン−ナイロン共重合体等のフィルムが用いられ、管状樹脂吸収材としてはポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン等の不織布が用いられる。又、管状樹脂吸着材に含浸される未硬化の液状硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。
【0019】
更生すべき管路3の上流には、下水45が流れ、その下水45は、管路3の開口部3bを塞ぐように取り付けられる止水部材40により堰き止められる。止水部材40には、堰き止められた下水45を外部に排水できる排水管41が取り付けられ、排水管41を流れる下水はダイヤフラム構造の排水ポンプ42により汲み出されて、切替弁43を介して排水パイプ44に導かれる。排水パイプ44の他端は反転ノズル33の屈曲部33bに気密に取り付けられ、排水ポンプ42で汲み出された下水を反転ノズル33内に排水できるようになっている。切替弁43には、排出口43aが設けられ、切替弁43が切り替えられたときには、下水は、後述するように、切替弁43の排出口43aに接続される排水ホース27内に導かれる。
【0020】
以下に、管路3を修復する工程を説明する。
【0021】
反転機10は、排水ホース27、蒸気ホース28並びに管ライニング材1が収納容器20のリール24に巻き取られた状態で、誘導ノズル30がマンホール2上にくるように、移動される。反転機10は、誘導ノズル30の部分が足場4で支持され、誘導ノズル30の下端に案内管31、32を調節管34を介して取り付ける。そして、反転ノズル33を、ノズル軸心が管路3の延びる方向に向くように取り付け、ノズル開口部33aを更生すべき管路3の開口部3aに合わせる。
【0022】
管ライニング材の反転挿入に先立ち、管路3の上流に流れる下水45を止水するために、管路3の開口部3bを止水部材40で閉鎖する。排水管41を排水ポンプ43に接続し、切替弁43を介して排水パイプ44に接続し、排水パイプ44の他端を反転ノズル33の屈曲部33bに気密に結合する。
【0023】
続いて、管ライニング材1の他端1aが、反転ノズル33のノズル開口部33aに導びかれ、外側に折り返えされて、ノズル開口部33aの外周にバンド35などによって気密に取り付けられる。
【0024】
圧縮空気がダクト26を介して収納容器20内に供給され、この流体圧(圧縮空気圧)が管ライニング材1の折り返し部に作用することにより、管ライニング材1はリール24から巻き戻されて収納容器20から引き出され、点線で示したように、未反転のままマンホール2内に垂直方向に下方に挿入されていく。このとき、電動モータは発電機として動作し、リール24の逆回転、すなわち、管ライニング材1の引き出しに制動がかかるようになる。
【0025】
マンホール2内に未反転のまま挿入される管ライニング材1は、垂直方向から水平方向に屈曲してノズル開口部33aに達し、そこで流体圧の作用により反転されて管路3内に反転挿入される。
【0026】
この反転挿入時、止水部材40で堰き止められた下水45の水位が上昇し満水になる恐れがある場合には、排水ポンプ42を駆動し、下水を切替弁43、排水パイプ44を介して反転ノズル33内に汲み出し、反転した管ライニング材1内に放流する。これにより、管ライニング材反転中の下水の放出を円滑に行うことができる。
【0027】
管ライニング材1の終端に連結された排水ホース27と蒸気ホース28は、管ライニング材1が管路内に反転挿入されるにつれて管ライニング材1内に挿入されていく。管ライニング材1が修復すべき管路3内に所定の長さに渡って反転挿入され、下流にある次のマンホール2’内まで挿入された状態が図3に図示されている。この状態では、排水ホース27もほぼ次のマンホール2’の領域まで管ライニング材内に挿入されている。
【0028】
このように、管ライニング材が修復すべき管路3内に所定の長さに渡って反転挿入されたら、管ライニング材1の先端を切断して、排出口45aを備えた密閉キャップ45で切断部を密閉する。
【0029】
続いて、取付管60と収納容器20を切り離したあと、リール24に巻き取られていた排水ホース27の終端部を取付管60のダクト61を介して外部に導き、切替弁43の排出口43aに接続する。また排水ホース27の先端を密閉キャップ45の排出口45aを介して管ライニング材1の外部に導く。また、リール24に巻き取られていた蒸気ホース28の終端部を取付管60のダクト62を介して外部に導き、蒸気供給源(不図示)に接続し、圧力蓋80を取付管60の上部に気密に取り付ける。この状態が図4に図示されている。
【0030】
この状態で、切替弁43を切り替え、排水ポンプ42を駆動すると、止水部材40で堰き止められた下水45は、管ライニング材1内の排水ホース27を介して更生すべき管路の下流に排水される。したがって、更生すべき管路の上流が下水で満水になることがなく、円滑に管路の修復作業を実施することができる。また、排水は反転した管ライニング材内に導かれている排水ホース27を介して行われるので、排水作業が容易になる。
【0031】
また、圧力蓋80、取付管60、誘導ノズル30、案内管31、32、調節管34、反転ノズル33、並びに密閉キャップ45で端部が密閉された管ライニング材1は、全体として密閉構造となっているので、取付管60から内部に圧縮空気を供給すると、管ライニング材1は膨張して管路3の内壁面に押し付けられる。
【0032】
この状態で、蒸気ホース28を介して蒸気を供給すると、蒸気が蒸気ホース28に設けられた多数の噴出口(不図示)を介してミスト状態となって反転された管ライニング材1に吹き付けられる。それにより、管ライニング材1は加温され、管ライニング材1に含浸された熱硬化性樹脂が熱によって硬化するため、管路3の内面は、硬化した管ライニング材1によってライニングされて修復される。管ライニング材1が硬化した後は、エアをエア排出穴を介して外部に排出するようにする。
【0033】
なお、圧力蓋80の上部には、透明なアクリル板82を設けた窓81が取り付けられているので、作業者は、この窓を介して、作業中の内部の状態を確認することができる。
【0034】
また、管ライニング材の加温硬化は、蒸気ではなく、温水をミスト状態にして噴出したり、あるいは温水をシャワリングさせることで行うこともできる。
【0035】
また、取付管60には、図6で仮想線で示したように、異なる口径のダクト65、66を取付けて異なる径の熱媒供給(排出)ホースを取付けるようにすることもできる。
【0036】
また、管ライニング材を反転挿入させるための圧縮空気は、収納容器20に設けたダクト26から供給するのでなく、取付管60に形成された取付穴63に取り付けられるエア供給ホースを介して供給するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】管ライニング材をマンホールから管路に反転挿入する状態を示した説明図である。
【図2】(A)はリールに巻き取られる排水ホース、蒸気ホースならびに管ライニング材の平面図、(B)はその側面図である。
【図3】管ライニング材の反転挿入が完了したときの状態を示した説明図である。
【図4】管ライニング材の反転挿入が完了した後、下水を排水し管ライニング材を硬化させる状態を示した説明図である。
【図5】取付管と圧力蓋の外観を示す斜視図である。
【図6】取付管と圧力蓋の垂直断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 管ライニング材
2、2’ マンホール
3 管路
20 収納容器
27 排水ホース
28 蒸気ホース
33 反転ノズル
40 止水部材
42 排水ポンプ
60 取付管
80 圧力蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂を含浸してなる筒状の管ライニング材を管路内に挿入し、含浸樹脂を硬化させて管路を更生する管路更生工法であって、
更生すべき管路の上流を流れる下水を止水部材で堰き止めて止水し、
止水部材で堰き止められた下水を排水する排水ホースを、管ライニング材の管路挿入につれて管ライニング材内に挿入し、
管ライニング材を更生すべき管路内に挿入し終わったとき、管ライニング材内に挿入された排水ホースを管ライニング材外部に導き、
管ライニング材を膨張させて管路内面に押圧した状態で管ライニング材に含浸された硬化性樹脂を硬化させるとともに、更生すべき管路の上流で堰き止められた下水を、管ライニング材内に挿入された排水ホースを介して更生すべき管路の下流に排水することを特徴とする管路更生工法。
【請求項2】
前記管ライニング材が反転ノズルを介して反転されて管路内に挿入されることを特徴とする請求項1に記載の管路更生工法。
【請求項3】
前記管ライニング材の終端に排水ホースが連結され、管ライニング材の管路への反転挿入につれて管ライニング材の終端に連結された排水ホースが反転された管ライニング内に挿入されることを特徴とする請求項2に記載の管路更生工法。
【請求項4】
前記排水ホース並びに管ライニング材を電動機を用いて巻き取り、管ライニング材並びに排水ホースを管路に挿入するときは、電動機を発電機として機能させて管ライニング材並びに排水ホースを巻き戻し、その巻き戻しに制動をかけることを特徴とする請求項3に記載の管路更生工法。
【請求項5】
前記反転ノズルが更生すべき管路位置に配置され、止水部材で堰き止められた下水を反転ノズルに取り付けられた排水パイプを介して反転した管ライニング材内に排水することを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の管路更生工法。
【請求項6】
前記排水パイプによる排水と排水ホースによる排水が切り替え可能であることを特徴とする請求項5に記載の管路更生工法。
【請求項7】
前記排水パイプによる排水は管ライニング材の反転挿入時に行われ、排水ホースによる排水は管ライニング材の反転挿入が完了した後に行われることを特徴とする請求項5又は6に記載の管路更生工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−283571(P2007−283571A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111525(P2006−111525)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(592057385)株式会社湘南合成樹脂製作所 (61)
【Fターム(参考)】