説明

粉体含有化粧料

【課題】水不溶性の粉体の分散性が改善された化粧料を提供することが、本発明の課題である。
【解決手段】本発明により、以下の成分(A)〜(C);
(A)0.05〜30質量%の水不溶性の粉体
(B)0.05〜10質量%のリン脂質、
(C)0.01〜5質量%のポリビニルピロリドン又は、ビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマー
を含有する混合物を水中に分散させた粉体含有化粧料が与えられた。本発明の粉体含有化粧料は、粉体の分散性において優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水不溶性の粉体、リン脂質、ポリビニルピロリドン又は、ビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマーを含有する粉体混合物を水中に分散させることにより、粉体の分散性を向上させた粉体含有化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
メイクアップ化粧料は、皮膚に色や陰影をつけることによって美しさを装う目的に用いられる。そのような化粧料の製剤の基本は、粉体をエマルジョンや油剤などの基材に分散させたものである。化粧料において分散性の向上は大きな問題であり、分散性を向上させることにより、粉体が凝集することなく、均一な状態を保つことが可能であり、それによって、色の分離等が生じない経時的な安定性に優れた化粧料を開発することができる。また粉体の分散性の良い化粧料は、外観色と塗布色の差が小さく、化粧膜の均一性と発色性に優れ、化粧料の伸び等、使用時の感触も良好となる。
【0003】
よってこれまで粉体の分散性を向上させるために、粉体表面を被覆・改質する種々の方法や分散剤を使用する方法等が開発されてきた。そのような例として、粉体表面をN−アシル化シルクペプタイドにより表面処理することにより、感触、分散性に優れた改質粉体と化粧料を得られることが、特開平9-328413号公報において開示されている。更に、シランカップリング剤と当該シランカップリング剤と反応する反応性モノマー組成物で処理した粉体を親水性樹脂で被覆した複合体を化粧料に含有させることにより、電解質の存在下でも粉体が凝集を起こさない化粧料が、特開平10-45529号公報において開示されている。更に、アルミナで表面処理された酸化鉄、黒酸化チタン及びチタン・酸化チタン焼結物などの無機着色粉体を含有する水系メイクアップ化粧料は、顔料の分散性及び分散安定性に優れていることが、特開平11-189513号公報において開示されている。更に、表面をポリビニルピロリドンで処理した粉体をカルボキシビニルポリマー等の増粘剤とともに皮膚外用剤に含有させることにより、粉体を含有する系であっても粉体が凝集することないことが、特開2001-48731号公報において開示されている。
【0004】
更に、分散剤を使用した例としては、疎水化処理粉体とポリオキシエチレン6モル付加ソルビタンモノオレートなどの非イオン性界面活性剤を含有する水性メーキャップ化粧料は、疎水化処理粉体の分散性が良好であることが、特開2000-72623号公報において開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9-328413号公報
【特許文献2】特開平10-45529号公報
【特許文献3】特開平11-189513号公報
【特許文献4】特開2001-48731号公報
【特許文献5】特開2000-72623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように化粧料において粉体の分散性は重要であることから、粉体の分散性を改善する更なる技術が求められていた。本発明の課題は、化粧料において水不溶性の粉体の分散性を改善するための新たな技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは、リン脂質と、ポリビニルピロリドンあるいは、ビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマー、および粉体を含有する混合物を検討したところ、上記処理によって、粉体の水中分散性が飛躍的に上昇することを見出した。なおこれまでに、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子とリン脂質を配合することにより、粉体の保湿性と密着性を改善することは報告されていたが(特開平8-3026号公報)、水不溶性の粉体の分散性を改善できることは報告されていなかった。
【0008】
よって本発明は、以下の成分(A)〜(C);
(A)0.05〜30質量%の水不溶性の粉体
(B)0.05〜10質量%のリン脂質
(C)0.01〜5質量%のポリビニルピロリドン又は、ビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマー、
を含有する粉体混合物を水中に分散させた粉体含有化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、水不溶性の粉体の分散性を向上させた化粧料が提供された。本発明は、日焼け止め料やファンデーションなど、種々の用途の化粧料において、みずみずしい使用感や伸び感などの好ましい性質を付与するのに有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の構成について詳しく説明する。本発明は(A)水不溶性の粉体、(B)リン脂質、(C)ポリビニルピロリドン又は、ビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマーを含有する混合物を、水中に分散させた化粧料を提供するものである。
【0011】
本発明の粉体含有化粧料における上記成分(A)、即ち水不溶性の粉体の配合量は特には限定されないが、着色や感触等の観点から、化粧料全体に対して0.05〜30質量%(以下、単に「%」と略す)が好ましい。本発明において使用できる該水不溶性の粉体は、化粧料に一般に使用される粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、粉体級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。
【0012】
具体的に例示すれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機粉体、酸化鉄、カーボンブラック、チタン・酸化チタン焼結物、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機粉体粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの粉体はその一種又は二種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。
【0013】
更に本発明の粉体含有化粧料における上記成分(B)、即ちリン脂質の配合量は特には限定されないが、粉体の分散性と感触等の観点から、化粧料全体に対して0.05〜10%が好ましい。成分(B)として使用できるリン脂質として、卵黄レシチン、大豆レシチンまたはこれらの水素添加リン脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、及びスフィンゴミエリンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのリン脂質はその一種又は二種以上を用いることができる。
【0014】
更に本発明の粉体含有化粧料における上記成分(C)、即ちポリビニルピロリドン又は、ビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマーの配合量は特には限定されないが、粉体の分散性と感触等の観点から、化粧料全体に対して0.01〜5%が好ましい。本発明において使用されるポリビニルピロリドンの好適な平均分子量範囲は1万〜50万であるが、特には限定されない。
【0015】
更にビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマーとして使用できるものは特に限定されないが、その分子量が2万〜50万の範囲内であることが好ましい。該コポリマーにおけるビニルピロリドン/ビニルアセテートの組成比も特に限定されないが、3/7から9/1の範囲内、特に6/4程度であることが好ましい。またポリビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマーとして本発明において使用可能なものの例として、アコーンKS(大阪有機化学工業社製)、PVP/VA-S630(ゼネラルアニソン社製)、PVP/VAE-735(ISPヴァンダイク社製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
なお本発明は、各成分の粉体混合物を水中に分散させて粉体含有化粧料を得るものである。その各成分を分散させる水相を形成する水性溶媒は一般的には精製水であるが、微生物による汚染を避ける目的で、精製水の他に溶媒としてアルコール等を添加することもできる。
【0017】
また本発明の粉体含有化粧料には、その発明の効果を妨げない範囲で、上記した成分(A)〜(C)に加えて、通常の化粧料に使用される各種の任意成分、例えば、油性成分、界面活性剤、水性成分、香料、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤、ビタミン類、消炎剤、清涼剤、動物抽出物、植物抽出物などの美容成分の一種又は二種を適宜配合することができる。
【0018】
本発明の粉体含有化粧料の用途は特に限定されるものではなく、日焼け止め料、乳液、クリーム、美容液などのスキンケア化粧料、ファンデーション、下地化粧料、コントロール、アイカラー、口紅、マスカラ、マニキュアなどのメイクアップ化粧料など、広範な用途に用いることができる。本発明の粉体含有化粧料は粉体の分散性が良いために、みずみずしい使用感、伸びの良さや発色の良さなどを期待することができる。
【0019】
本発明は、リン脂質とポリビニルピロリドン(PVP)又は、ビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマー(PVP/VA)を配合することにより、化粧料において水不溶性の粉体の分散性を改善することを特徴としている。これらの成分は、粉体の分散性を改善するために粉体の表面を処理するために使用される処理剤として作用しており、微弱な電荷あるいは保護コロイド的な作用があると考えられる。
【実施例】
【0020】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なおこれらは本発明を何ら限定するものではない。
【0021】
分散性試験
以下の表1に示した組成のサンプルを三本ローラーで混練し、その混合物5部と精製水95部を均一に分散させ、分散性評価用試料とした。
【0022】
【表1】

(注1)アルコキシシリル化ジメチルポリシロキサン5%処理
(注2)TILACK D (赤穂化成社製)
(注3)PVP/VAE-735 (ISPヴァンダイク社製)
(注4)LUVISCOL K90 (バディッシュ社製)
(注5)ゴーセノール EG-05 (日本合成社製)
【0023】
時間が経過するに従って分散した粉体は沈殿し、試験管に入れた試料には上部から透明層が現れる。表1の試料10mlを試験管に入れ、そのまま室温で二週間放置して、粉体の沈降度合いを透明層の体積比率で評価した。測定した透明層の体積比率の結果を表2に示す。
【0024】
【表2】

【0025】
表2の結果より、本発明の粉体混合物1(PVP/VAを含む)と本発明の粉体混合物2(PVPを含む)は共に、比較例1(PVAを含むが、PVP/VA又はPVPを含まない)と比較例2(ポリマーを含まない)と比べて透明相の体積比率が低く、粉体の沈降が少ないことが示された。
【0026】
日焼け止め乳液の製造
微粒子酸化亜鉛10質量部と、大豆レシチン1.5質量部、ポリビニルピロリドン(分子量7万)0.2質量部に、グリセリン2質量部と1,3-ブチレングリコール3質量部を加え、三本ロールで充分混練することにより、本発明の粉体混合物を得た。
【0027】
上記の粉体混合物(下記の成分6)を含む日焼け止め乳液を製造した。日焼け止め乳液の成分は以下の通りである。
(成分) (%)
(1)ステアリン酸 2
(2)セタノール 1
(3)スクワラン 10
(4)メトキシ桂皮酸オクチル 5
(5)オクタメチルシクロペンタシロキサン 5
(6)本発明の粉体混合物 5
(7)プロピレングリコール 10
(8)水 残量
(9)トリエタノールアミン 1.5
(10)防腐剤 適量
【0028】
製造方法
その成分を用いて以下の方法で水中油型日焼け止め乳液を製造した。
A:成分(1)〜(4)を70℃で加熱溶解する。
B:Aに成分(5)、(6)を添加し70℃に加熱する。
C:成分(7)〜(10)を70℃で均一に加熱混合後、Bを添加して乳化する。
D:Cを冷却後、容器に充填して日焼け止め乳液を得た。
【0029】
なおこのようにして得られた日焼け止め乳液を評価したところ、みずみずしい使用感や、伸びが良くて化粧膜が均一である事などの好ましい性質を有していた。
【0030】
ファンデーションの製造
以下の組成物を三本ロールで混練し、本発明の粉体混合物を得た。
(成分) (部)
1.酸化チタン 10
2.黄酸化鉄 0.8
3.ベンガラ 0.15
4.黒酸化鉄 0.02
5.水素添加大豆リン脂質 2.5
6.1,3-ブチレングリコール 3
7.グリセリン 1
8.PVP/VA(50%エタノール溶液) 0.3
9.精製水 2.5
【0031】
上記の粉体混合物(下記の成分1)を含むファンデーションを製造した。ファンデーションの組成は以下のとおりである。
(成分) (%)
(1)本発明の粉体混合物 20.3
(2)精製水 6
(3)カルボキシビニルポリマー 0.2
(4)1,3-ブチレングリコール 8
(5)エタノール 1
(6)精製水 残量
(7)トリエタノールアミン 0.2
(8)水素添加大豆リン脂質 0.8
(9)1,3-ブチレングリコール 1.9
(10)メチルパラベン 0.2
(11)流動パラフィン 6
(12)モノステアリン酸硬化ヒマシ油 0.3
【0032】
製造方法
A:成分(1)、(2)を混合し、粉体混合物の希釈分散物を調製した。
B:成分(3)〜(7)および成分(8)〜(12)を70℃で混合し、水中油型乳化物を調製した。
C:Bを冷却後、Aと混合し、容器に充填してファンデーションを得た。
【0033】
以上のようにして得られたファンデーションを評価したところ、みずみずしい使用感で、伸びが良くて化粧膜が均一であり、発色も良く、外観色と塗布色の差がない等の、好ましい性質を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、水不溶性の粉体の分散性を向上させた化粧料が提供された。本発明の粉体含有化粧料は粉体の分散性が良いために、伸びの良さやみずみずしい使用感などの好ましい特性を与えるのに有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)〜(C);
(A)0.05〜30質量%の水不溶性の粉体
(B)0.05〜10質量%のリン脂質
(C)0.01〜5質量%のポリビニルピロリドン又は、ビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマー、
を含有する粉体混合物を水中に分散させた粉体含有化粧料。
【請求項2】
前記成分(B)のリン脂質が、卵黄レシチン、大豆レシチンまたはこれらの水素添加リン脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、及びスフィンゴミエリンからなる群から選択される一種又は二種以上である請求項1記載の粉体含有化粧料。

【公開番号】特開2007−269715(P2007−269715A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98673(P2006−98673)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】