粉末充填方法および粉末充填装置
【課題】目的材料粉末を製造するために出発材料粉末の処理を所定の雰囲気にて行う際に、粉末と雰囲気ガスとの接触性を良好にして粉末の反応をより均一に行うことができるように、粉末を処理用容器に充填する粉末充填方法と粉末充填装置を提供する。
【解決手段】雰囲気処理される粉末3をボート2に充填する粉末充填方法であって、粉末3の内部の空間を占有する嵩密度調整部材41を、ボート2内に供給された粉末3の内部に存在させた状態で粉末3に振動を与え、振動を停止した後、嵩密度調整部材41を粉末3の内部から除去する。粉末充填装置は、雰囲気処理される粉末3をボート2に充填する粉末充填装置であって、粉末3を収容するボート2と、粉末3の内部の空間を占有する嵩密度調整部材41をボート2の外部と内部との間で移動させるリニアアクチュエータ46と、ボート2に振動を与える振動アクチュエータ52とを備える。
【解決手段】雰囲気処理される粉末3をボート2に充填する粉末充填方法であって、粉末3の内部の空間を占有する嵩密度調整部材41を、ボート2内に供給された粉末3の内部に存在させた状態で粉末3に振動を与え、振動を停止した後、嵩密度調整部材41を粉末3の内部から除去する。粉末充填装置は、雰囲気処理される粉末3をボート2に充填する粉末充填装置であって、粉末3を収容するボート2と、粉末3の内部の空間を占有する嵩密度調整部材41をボート2の外部と内部との間で移動させるリニアアクチュエータ46と、ボート2に振動を与える振動アクチュエータ52とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には粉末充填方法および粉末充填装置に関し、特定的には切削工具等の材料粉末を製造するために出発材料としての粉末の処理を所定の雰囲気にて行う際の粉末充填方法および粉末充填装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉末を均一に充填するための方法や装置は種々提案されている。
【0003】
たとえば、特開2005−81352号公報(以下、特許文献1という)には、金型に投入する粉体の量を精度良く均一にし、特に長尺で幅の狭い溝内に供給された粉体を、長手方向に均一に分散・充填する粉体均一充填方法および充填装置が提案されている。この粉体充填装置は、粉体を充填する金型のテーブルと、このテーブルに周期的な振動を与えるための二つ以上の振動源と、このテーブルの振動を制御するための防振装置とを備えている。
【0004】
また、特開2001−179497号公報(以下、特許文献2という)には、粉体の充填性を高めるための動作状態を変更することによって装置構造の複雑化や大型化を抑制しつつ粉体の充填量を均一化することができる、圧粉成形に好適な粉体充填方法及び粉体充填装置の構造が提案されている。この粉体充填装置は、ダイベース及びダイの上面には略板状のベース部材が水平方向にスライド自在に案内されており、このベース部材の一端寄り部分には開口部が形成されている。この開口部の開口縁には略円筒状の収容部材が取り付けられている。また、ベース部材の他端寄り部分にはエアバイブレータ等からなる振動源が取り付けられている。この振動源は上下方向に振動するように構成されている。
【0005】
さらに、特開平7−164193号公報(以下、特許文献3という)には、圧縮成形用金型のキャビティに対して粉末を均一に高密度に充填し得るようにして密度のバラツキが少ない良好な粉末成形品が得られる成形方法が提案されている。この粉末成形体の製造方法では、金型のキャビティに向けて給粉シューボックスを移動させると同時に、その給粉シューボックスに振動を与えてキャビティに粉末を充填する。そして、キャビティ内の粉末の充填密度を見掛け密度の1.1倍以上としたのち圧縮成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−81352号公報
【特許文献2】特開2001−179497号公報
【特許文献3】特開平7−164193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3では、振動を利用して金型内に粉末成形体を形成する技術が提案されている。基本的には、従来の粉末の充填技術は、均一かつ高密度に粉末を金型内に充填することを目的としている。
【0008】
一方、目的とする材料粉末を製造するために出発材料としての粉末を所定の雰囲気にて処理する際には、出発材料としての粉末は、処理用容器として、たとえば、充填用ボートに充填される。この場合、従来から、粉末への熱の伝達と、粉末と雰囲気ガスとの反応性を考慮して、ボート内の粉末の充填厚さを均一にすることがなされる。すなわち、粉末を所定の雰囲気にて処理する場合においても、処理される粉末を充填用ボート内に均一に充填することが一般的に行われる。
【0009】
しかしながら、粉末をボート内に均一に充填しても、実際には雰囲気ガスや反応ガスの熱処理炉内の流れなどにより、ボート内に充填された粉末は均一に反応し難いという問題があった。
【0010】
具体的には、ボートの上から雰囲気ガスが供給されると、ボート内に充填された粉末の最表面部は雰囲気ガスとの接触性がよいが、ボートの底部に充填された粉末は雰囲気ガスとの接触性が悪いことは避けられない。また、一般的に振動などを利用して粉末の充填厚さを均一にすることが多いので、粉末の充填密度が高くなる。このため、ボートの上から雰囲気ガスが供給されると、その雰囲気ガスはボートの底部に充填された粉末にはより流入し難くなり、ボートの底部に充填された粉末と雰囲気ガスとの接触性がより悪くなる。さらに、処理装置内のガスの供給口や導入孔の位置等に影響されてガスの流動状況が処理装置内のボートの位置によって異なり、ボート内の中央部と端部に充填された粉末にても雰囲気ガスとの接触性が異なる。
【0011】
なお、このような問題を解決するためにボート内での粉末と雰囲気ガスとの接触性を考慮した充填方法については提案されていない。
【0012】
そこで、この発明の目的は、目的とする材料粉末を製造するために出発材料としての粉末の処理を所定の雰囲気にて行う際に、粉末と雰囲気ガスとの接触性を良好にして粉末の反応をより均一に行うことができるように、粉末を処理用容器に充填する粉末充填方法と粉末充填装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に従った粉末充填方法は、雰囲気処理される粉末を処理用容器に充填する粉末充填方法であって、粉末内部の空間を占有する空間占有部材を、処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させた状態で粉末に振動を与える第1の工程と、振動を停止した後、空間占有部材を粉末の内部から除去する第2の工程とを備える。
【0014】
この発明の粉末充填方法では、第1の工程においては、振動により、空間占有部材が存在する箇所以外では、粉末の嵩密度はほぼ均一になる。そして、第2の工程においては、空間占有部材が粉末の内部から除去されると、空間占有部材が存在した箇所に粉末の一部が移動する。このため、空間占有部材が存在した箇所とその箇所の近傍に充填される粉末の嵩密度は、他の箇所に比べて相対的に低くなる。これにより、処理用容器に充填された粉末の嵩密度を局所的に不均一にすることができる。
【0015】
このように処理用容器に充填された粉末の嵩密度を局所的に不均一にすることができるので、たとえば、雰囲気ガスが流入し難い箇所である処理用容器の底部、中央部、端部等に充填された粉末の嵩密度を相対的に低くすることにより、粉末と雰囲気ガスの接触性を良好にすることができる。したがって、目的とする材料粉末を製造するために出発材料としての粉末の処理を所定の雰囲気にて行う際に、処理用容器に充填された粉末と雰囲気ガスとの接触性を良好にして、処理用容器に充填された粉末の反応をより均一に行うことが可能となる。
【0016】
この発明の粉末充填方法における第1の工程では、処理用容器内に粉末を供給した後、処理用容器内に供給された粉末の表面から内部に向かって空間占有部材を挿入することによって、空間占有部材を、処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させるようにしてもよい。
【0017】
また、この発明の粉末充填方法における第1の工程では、処理用容器内の開口部から底部に向かって空間占有部材を挿入した後、処理用容器内に粉末を供給することによって、空間占有部材を、処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させるようにしてもよい。
【0018】
この発明の粉末充填方法において、空間占有部材は棒状部材であり、第1の工程では、棒状部材の一方端部を、処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させた状態で粉末に振動を与えるようにしてもよい。
【0019】
また、この発明の粉末充填方法において、空間占有部材は板状部材であり、第1の工程では、板状部材の一方端部を、処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させた状態で粉末に振動を与えるようにしてもよい。
【0020】
さらに、この発明の粉末充填方法において、空間占有部材は一方端部が曲がった線状部材であり、第1の工程では、線状部材の一方端部を、処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させた状態で粉末に振動を与えるようにしてもよい。
【0021】
この発明に従った粉末充填装置は、雰囲気処理される粉末を処理用容器に充填する粉末充填装置であって、粉末を収容する処理用容器と、粉末内部の空間を占有する空間占有部材を処理用容器の外部と内部との間で移動させる空間占有部材移動部と、処理用容器に振動を与える振動付与部とを備える。
【0022】
この発明の粉末充填装置では、空間占有部材移動部によって、空間占有部材を処理用容器の内部に移動させて、処理用容器内に収容された粉末の内部に空間占有部材を存在させた状態で、振動付与部によって粉末に振動を与えることができる。この振動により、空間占有部材が存在する箇所以外では、粉末の嵩密度はほぼ均一になる。そして、振動付与部による振動を停止した後、空間占有部材移動部によって、空間占有部材を処理用容器の外部に移動させて、処理用容器内に収容された粉末の内部から空間占有部材を除去することができる。空間占有部材が粉末の内部から除去されると、空間占有部材が存在した箇所に粉末の一部が移動する。このため、空間占有部材が存在した箇所とその箇所の近傍に充填される粉末の嵩密度は、他の箇所に比べて相対的に低くなる。これにより、処理用容器に充填された粉末の嵩密度を局所的に不均一にすることができる。
【0023】
このように本発明の粉末充填装置を用いることにより、処理用容器に充填された粉末の嵩密度を局所的に不均一にすることができるので、たとえば、雰囲気ガスが流入し難い箇所である処理用容器の底部、中央部、端部等に充填された粉末の嵩密度を相対的に低くすることにより、粉末と雰囲気ガスの接触性を良好にすることができる。したがって、目的とする材料粉末を製造するために出発材料としての粉末の処理を所定の雰囲気にて行う際に、処理用容器に充填された粉末と雰囲気ガスとの接触性を良好にして、処理用容器に充填された粉末の反応をより均一に行うことが可能となる。
【0024】
この発明の粉末充填装置において、空間占有部材は棒状部材であり、空間占有部材移動部は、棒状部材の一方端部を処理用容器の外部と内部との間で移動させるようにしてもよい。
【0025】
また、この発明の粉末充填装置において、空間占有部材は板状部材であり、空間占有部材移動部は、板状部材の一方端部を処理用容器の外部と内部との間で移動させるようにしてもよい。
【0026】
さらに、この発明の粉末充填装置において、空間占有部材は一方端部が曲がった線状部材であり、空間占有部材移動部は、線状部材の一方端部を処理用容器の外部と内部との間で移動させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0027】
以上のようにこの発明によれば、目的とする材料粉末を製造するために出発材料としての粉末の処理を所定の雰囲気にて行う際に、処理用容器に充填された粉末と雰囲気ガスとの接触性を良好にして、処理用容器に充填された粉末の反応をより均一に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の一つの実施の形態としての粉末充填方法の工程(1)を示す部分断面側面図である。
【図2】この発明の一つの実施の形態としての粉末充填装置を用いて行われる粉末充填方法の工程(2)を示す部分断面側面図である。
【図3】この発明の一つの実施の形態としての粉末充填装置を用いて行われる粉末充填方法の工程(3)を示す部分断面側面図である。
【図4】この発明の一つの実施の形態としての粉末充填装置を用いて行われる粉末充填方法の工程(4)を示す部分断面側面図である。
【図5】この発明の一つの実施の形態としての粉末充填装置を用いて行われる粉末充填方法の工程(5)を示す部分断面側面図である。
【図6】この発明の一つの実施の形態としての粉末充填装置を用いて行われる粉末充填方法の工程(6)を示す部分断面側面図である。
【図7】この発明の粉末充填装置における空間占有部材としての棒状部材の種々の形態を示す部分側面図である。
【図8】この発明の粉末充填装置における空間占有部材としての板状部材の種々の形態を示す部分側面図(A)(B)(C)と下面図(D)(E)(F)である。
【図9】この発明の粉末充填装置における空間占有部材としての線状部材の種々の形態を示す部分側面図である。
【図10】この発明の粉末充填装置における処理用容器の一つの形態を示す斜視図である。
【図11】この発明の実施例1で用いられた空間占有部材としての嵩密度調整部材の構成を示す部分側面図(A)、下面図(B)、および、下面図(B)においてC−C線の方向から見た部分断面図(C)である。
【図12】この発明の実施例2で用いられた空間占有部材としての嵩密度調整部材の構成を示す部分側面図(A)、下面図(B)、および、下面図(B)においてC−C線の方向から見た部分断面図(C)である。
【図13】この発明の実施例3で用いられた空間占有部材としての嵩密度調整部材の構成を示す部分側面図(A)、下面図(B)、および、下面図(B)においてC−C線の方向から見た部分断面図(C)である。
【図14】この発明の実施例4で用いられた空間占有部材としての嵩密度調整部材の構成を示す部分側面図(A)、下面図(B)、および、下面図(B)においてC−C線の方向から見た部分断面図(C)である。
【図15】この発明の実施例5で用いられた空間占有部材としての嵩密度調整部材の構成を示す部分側面図(A)、下面図(B)、および、下面図(B)においてC−C線の方向から見た部分断面図(C)である。
【図16】この発明の実施例1〜5にて加熱処理により作製された粉末の試料の色分布を示す平面図(A)と断面図(B)である。
【図17】この発明の比較例にて加熱処理により作製された粉末の試料の色分布を示す平面図(A)と断面図(B)である。
【図18】図16または図17の箇所Iの走査電子顕微鏡写真である。
【図19】図17の箇所IVcの走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明の一つの実施の形態としての粉末充填方法と粉末充填装置は、粉末の還元反応、酸化反応、炭化反応、窒化反応などの雰囲気反応処理を行う前に処理用容器に粉末を充填するために用いられる。たとえば、本発明の粉末充填方法と粉末充填装置は、雰囲気処理に利用される処理用容器の一例としてのボートの内部に充填された粉末をより均一に反応させるために用いられる。後述するように、本発明の粉末充填方法と充填装置を用いることにより、ボートの上部に充填された粉末の表面部分、ボートの底部に充填された粉末の一部分、ボートの中央部に充填された粉末の一部分、ボートの端部に充填された粉末の一部分などにおいて、ボート内の充填位置によって粉末の反応性が相違するのを抑制することが可能になる。
【0030】
本発明は、以下のように発明者らが種々検討を重ねた結果、なされたものである。
【0031】
従来、粉末の加熱炉による雰囲気処理では、ボート内に粉末が充填される。粉末が充填されたボートは、1段又は複数段に積み重ねられて加熱炉内に装入される。このようにして、粉末の加熱炉による雰囲気処理がバッチ処理または連続処理により行われている。
【0032】
処理されるべき粉末と雰囲気ガスとを反応させるとき、雰囲気ガスの加熱炉内への供給方法や排出方法、すなわち、ガスの流れ性、ボートの形状、粉末の充填厚さ、加熱炉内の温度分布などが粉末の反応性に大きな影響を与える。このため、一般的には、(a)ボート内の粉末の充填厚さを薄くする、(b)粉末の充填厚さを均一にする、(c)加熱炉内のボートやヒーターの配置を考慮する、(d)ボートに雰囲気ガス導入口を設ける、などの対策がとられている。
【0033】
しかしながら、ボート内の粉末の充填厚さを薄くすると、単位時間当たりの処理量が減少し、量産性が劣ることになる。これを解決するために、粉末が充填されたボートを複数段、積み重ねると、加熱炉内に温度分布が存在するために、複数段の中に配置されるボートの位置によっては、粉末の反応性が異なることになり、最終的に均一な品質の粉末が得られなくなるという問題があった。
【0034】
また、ボート内の粉末に加熱炉内の異物が入らないようにボートに蓋をし、かつ、雰囲気ガスがボート内に流入しやすいようにボートの側面にガス流入口や排出口などを施したりする。しかし、この場合、ボートの上部に充填された粉末の表面部分でも、ガス流入口や排出口の位置の影響を受けるため、ボート内の充填位置によって粉末の雰囲気ガスとの接触性に相違が生じる。
【0035】
さらに、粉末を均一に反応させるために、当該ボートの蓋や当該ボートの上に配置される別のボートの底部と、当該ボート内の粉末とが接触しないように、一般的に充填厚さを均一にする。しかし、このとき、ボートに振動を与えると、ボートに充填された粉末の嵩密度が増し、ボートの底部近傍に充填された粉末と雰囲気ガスとの接触性が悪化する。その結果、処理後において、ボートの上部に充填された粉末の表面部分と、ボートの底部近傍に充填された粉末の部分との間で粉末の反応性に相違が生じてしまうことがあった。
【0036】
そこで、発明者らは、処理用容器としてのボートに充填する粉末の嵩密度を調整するために、種々の形状の空間占有部材(嵩密度調整部材ともいう)を、ボートに充填される粉末の内部の適切な位置に設置し、振動により充填粉末の厚さを調整した後に、この空間占有部材を抜き出すことによりボート内の充填粉末の嵩密度を制御すれば、ボートに充填された粉末と雰囲気ガスとの接触性を良好にして、ボートに充填された粉末の反応をより均一に行うことが可能になることを見出した。すなわち、発明者らの知見は、目的とする材料粉末を製造するために出発材料としての粉末の処理を所定の雰囲気にて行う際に、あえてボート内の粉末の嵩密度を不均一化すれば、雰囲気ガスと粉末の接触性がより均一になることである。
【0037】
以上の知見に基づいて、要約すれば、本発明の粉末充填方法と粉末充填装置は、次のような特徴を備えている。
【0038】
粉末充填方法は、雰囲気処理される粉末を処理用容器に充填する粉末充填方法であって、粉末内部の空間を占有する空間占有部材を、処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させた状態で粉末に振動を与える第1の工程と、振動を停止した後、空間占有部材を粉末の内部から除去する第2の工程とを備える。
【0039】
粉末充填装置は、雰囲気処理される粉末を処理用容器に充填する粉末充填装置であって、粉末を収容する処理用容器と、粉末内部の空間を占有する空間占有部材を処理用容器の外部と内部との間で移動させる空間占有部材移動部と、処理用容器に振動を与える振動付与部とを備える。
【0040】
具体的には、本発明の一つの実施の形態として、粉末充填方法は、次の工程からなる。
【0041】
(1)雰囲気処理される粉末を処理用容器としてのボート内に供給する工程。
【0042】
(2)振動発生装置に結合されたボート設置台の所定の位置にボートを固定する工程。
【0043】
(3)粉末の充填嵩密度を調整するために空間占有部材として、棒状部材、板状部材、または、線状部材の1種の部材または複数の部材からなる一つまたは複数の嵩密度調整部材を、ボートの上方よりボート内に降下させる工程。
【0044】
(4)ボート設置台またはボート設置台および嵩密度調整材を通じて粉末に振動を与え、粉末の充填厚さおよび嵩密度を制御する工程。
【0045】
(5)振動を停止する工程。
【0046】
(6)嵩密度調整材をボート内から上昇させて抜き出す工程。
【0047】
ここで、工程(1)〜工程(3)は(2)、(3)、(1)の順で行ってもよい。
【0048】
以下、各工程について、図1〜図6を参照して説明する。
【0049】
図1に示すように、工程(1)では、粉末3をボート2内に供給する。雰囲気処理される出発材料としての粉末3を、粉末貯蔵槽(図示せず)から振動や回転羽根による切り出しなど公知の粉末供給機1によってボート2内に所定量供給する。粉末供給量の調節は粉末貯蔵槽またはボート設置台に備えた計量器にて行うことが好ましい。
【0050】
次に、図2に示すように、工程(2)では、粉末3が充填されたボート2を振動可能なボート設置台51の上に配置して固定する。ボート2の配置はローラコンベアやロボットアーム等の任意のハンドリング装置で行う。
【0051】
ここで、粉末3の充填厚さを均一にするために本発明では振動を用いている。振動付与装置5は、ボート設置台51と、ボート設置台51に連結された振動発生装置としての振動アクチュエータ52と、ボート設置台51の振動に応じて付勢される受けバネ53と、受けバネ53を支持する受けバネ支柱54と、受けバネ支柱54が固定されるベース55とから構成される。
【0052】
このように、粉末3に与えられる振動は、ボート設置台51を通じて行う方法が好適であるため、ボート設置台51は振動アクチュエータ52に連結されている。
【0053】
そして、図3に示すように、工程(3)では、リニアアクチュエータ46を駆動させることにより、粉末3の充填嵩密度を調整するための棒状部材、板状部材、または、線状部材の1種または複数の部材からなる一つまたは複数の嵩密度調整部材41を、矢印Pで示す方向に、ボート2の上方よりボート2内に降下させる。
【0054】
ここで、嵩密度調整装置4は、ボート2の開口部から底部に向かって挿入可能な一方端部を有する嵩密度調整部材41と、嵩密度調整部材41の他方端部を固定するための固定部材42と、固定部材42を保持して上下方向にスライド可能なスライド部材43と、スライド部材43をアクチュエータに結合するためのジョイント部材44と、ジョイント部材44に係合するストッパ部材45と、ストッパ部材45を介してジョイント部材44に結合するリニアアクチュエータ46と、リニアアクチュエータ46を固定するためのフレーム部材47と、スライド部材43を押さえる押さえバネ48と、押さえバネ48を支持する押さえバネ支柱49とから構成されている。
【0055】
複数の嵩密度調整部材41は、粉末3と雰囲気ガスとの接触性が良好でないボート2の箇所に、たとえば、嵩密度が相対的に高くなる箇所に、多く挿入することができるように配置することが好ましい。複数の嵩密度調整部材41の配置は、ボート2の形状や雰囲気加熱炉の構造により適宜決定される。また、嵩密度調整部材41の材質も、粉末3の材質や雰囲気ガスや処理温度等により適宜選択される。
【0056】
嵩密度調整部材41の粉末3内への挿入深さは深いほどよい。しかし、振動によりボート2と嵩密度調整部材41とが衝突することによってボート2と各種構造部材が破損するおそれ、または、ボート2の材料や嵩密度調整部材41の摩耗によって粉末3中に不純物が混入するおそれがあるため、嵩密度調整部材41の一方端部がボート2の底部に接しないように配置するのが好ましい。
【0057】
また、嵩密度調整部材41を固定する固定部材42が粉末3に触れても、後工程の振動により、山状の粉末3は平坦に広がるので構わない。しかし、固定部材42が大きな力で粉末3を押さえつけることがないようにするのがよい。
【0058】
なお、嵩密度調整部材41の形状によっては、ボート2内に嵩密度調整部材41を下降させるときにボート2内の粉末3を嵩密度調整部材41が不必要に圧縮する場合がある。この場合、前述したように、嵩密度調整部材41をボート2内に下降させる工程の後、粉末3をボート2内に供給する工程を行う、すなわち、工程順を(2)、(3)、(1)にしてもよい。
【0059】
その後、図4に示すように、工程(4)では、振動アクチュエータ52を矢印Vの方向に偏心回転させて振動させることにより、ボート設置台51を通じて粉末3に振動を与え、粉末3の充填厚さおよび嵩密度を制御する。このとき、ボート設置台51、嵩密度調整部材41の両方から粉末3に振動を与えてもよい。
【0060】
なお、ボート2内に充填される粉末3の厚さは、振動等による粉末の充填厚さの均一化がなされない場合、ボート2の箇所によって大きくなったり、小さくなったりしてばらつく。熱処理の際には、炉内上部からの落下物が粉末3内に混入することを防止するためにボート2の開口部を覆うように蓋が配置される。また、熱処理の際には、複数のボート2が積み重ねられる。このような場合において、蓋と当該ボート2の上部に充填された粉末3の表面部分との接触、当該ボート2の上に積重ねられるボートの底面と当該ボート2の上部に充填された粉末3の表面部分との接触を避けるために、ボート2内に充填される粉末3の厚さのばらつきを上記の振動により小さくする必要がある。
【0061】
ここで、図4に示すように、振動アクチュエータ52をボート設置台51の下部に設置して振動させた場合、粉末3の表面部は渦を巻くように移動する。この場合、振動付与時間が長すぎると、ボート2の中心部よりボート2の端部の方が粉末3の充填厚さが厚くなるだけでなく、嵩密度が必要以上に増大するので、振動アクチュエータ52の振動条件を調整するのが好ましい。
【0062】
そして、図5に示すように、工程(5)では、振動アクチュエータ52の振動を完全に停止させる。
【0063】
最後に、図6に示すように、工程(6)では、リニアアクチュエータ46を駆動させることにより、嵩密度調整部材41を矢印Qで示す方向に移動させて、ボート2内から上昇させて抜き出す。このとき、嵩密度調整部材41は急激に上昇させない方が好ましい。嵩密度調整部材41を急激に上昇させると、ボート2内の粉末が周囲に飛び散るおそれがあるので、歩留まりの観点からも好ましくない。
【0064】
以上の粉末充填方法または粉末充填装置で用いられる嵩密度調整部材41の種々の形態を図7〜図9に示す。
【0065】
嵩密度調整部材41の形状は、棒状部材(図7)、板状部材(図8)、または、線状部材(図9)のうちのいずれでもよく、複数の種類の形状を有する嵩密度調整部材41を組み合わせて用いてもよい。嵩密度調整部材41の断面形状は、適宜、作用効果に応じて決定すればよい。
【0066】
図7に示すように、嵩密度調整部材41の形状が棒状部材41a、41b、41cの場合、下方に位置づけられる一方端部は充填される粉末内に挿入される部分であり、上方の他方端部は固定部材42に支持される部分である。棒状部材41a、41b、41cの断面形状は円、楕円、または、多角形のうちの1種または複数からなる。
【0067】
図7の(A)に示すように、棒状部材41aの水平方向の断面積が棒状部材41aの長さ方向に沿って下方の位置になるほど、だんだん小さくなっていてもよい。また、図7の(B)に示すように、棒状部材41bの水平方向の断面積が棒状部材41bの長さ方向に沿って下方の位置になるほど、だんだん大きくなっていてもよい。さらに、図7の(C)に示すように、棒状部材41cの水平方向の断面積が棒状部材41cの長さ方向に沿って等しくてもよい。このように、棒状部材41a、41b、41cの水平方向の断面積は等しくても不均一であってもよい。
【0068】
ただし、図7の(B)に示す棒状部材41bにおいて、棒状部材41bの断面積が下方に位置する部分にて極端に大きい場合、ボート2の底部側に充填される粉末3の部分に断面積が極端に大きい棒状部材41bの部分が挿入されることになる。このとき、棒状部材41bを粉末3内から引き抜く際に、ボート2の底部側に充填される粉末3の一部分を表面部分側に持ち上げて、ボート2の上部に充填される粉末3の表面部分が噴火口状になることがある。このため、棒状部材41bの断面積が下方に位置する部分にて極端に大きくならないようにするのが好ましい。したがって、嵩密度調整部材41を粉末3内から引き抜いたときの状況や粉末の反応性を考慮して、棒状部材41a、41b、41cの断面形状を適宜決定する。
【0069】
図8の(A)(B)(C)に示すように、嵩密度調整部材41の形状が板状部材41d、41e、41fの場合、下方に位置づけられる一方端部は充填される粉末内に挿入される部分であり、上方の他方端部は固定部材42に支持される部分である。
【0070】
図8の(A)に示すように、板状部材41dの水平方向の断面積が板状部材41dの垂直方向の長さ方向に沿って下方の位置になるほど、だんだん小さくなっていてもよい。また、図8の(B)に示すように、板状部材41eの水平方向の断面積が板状部材41eの垂直方向の長さ方向に沿って下方の位置になるほど、だんだん小さくなっていて、かつ、板状部材41eの垂直方向の断面積が板状部材41eの水平方向の長さ方向に沿って右方の位置になるほど、だんだん小さくなっていてもよい。さらに、図8の(C)に示すように、板状部材41fの水平方向と垂直方向の断面積が、それぞれ、板状部材41fの垂直方向と水平方向の長さ方向に沿って等しくてもよい。
【0071】
また、図8の(D)(E)(F)に示すように、水平方向の断面が種々の形状を有する板状部材41g、41h、41i、41j、41kを用いてもよい。
【0072】
このように、板状部材41d、41e、41f、41g、41h、41i、41j、41kの垂直方向および/または水平方向の断面積は等しくても不均一であってもよい。
【0073】
ただし、板状部材において、板状部材の厚みが下方に位置する部分にて極端に大きい場合、ボート2の底部側に充填される粉末3の部分に厚みが極端に大きい板状部材の部分が挿入されることになる。このとき、板状部材を粉末3内から引き抜く際に、ボート2の底部側に充填される粉末3の一部分を表面部分側に持ち上げて、ボート2の上部に充填される粉末3の表面部分が盛り上がった形状になることがある。このため、板状部材の厚みが下方に位置する部分にて極端に大きくならないようにするのが好ましい。したがって、嵩密度調整部材41を粉末3内から引き抜いたときの状況や粉末の反応性を考慮して、板状部材41d、41e、41f、41g、41h、41i、41j、41kの断面形状を適宜決定する。
【0074】
図9に示すように、嵩密度調整部材41の形状が線状部材41l〜41tの場合、少なくとも線状部材41l〜41tの一つの端部は固定部材42に支持される。線状部材41l〜41tの断面形状は円、楕円、または、多角形のうちの1種以上からなり、かつ、線状部材41l〜41tの断面積は線状部材41l〜41tの長さ方向に沿って等しくても不均一であってもよい。図9の(A)〜(E)に示すように線状部材41l〜41pは、U字形状でもよく、図9の(F)〜(I)に示すようにL字形状であってもよい。また、線状部材は、渦巻状や蛇行したような曲線形状であってもよい。
【0075】
ただし、線状部材を粉末3内から引き抜く際に、線状部材の表面上に粉末3が載らないような形状が好ましい。線状部材の表面上に粉末3を載せた状況が発生すると、周囲へ粉末3が飛散する原因となり、また歩留まりの上でも好ましくない。
【0076】
なお、処理用容器として、一般的なボート2の形状の例を図10に示す。図10に示すように、ボート2は、ほぼ矩形状の開口部を有する直方体形状のものが一般的に用いられる。ボート2には、雰囲気ガスと粉末3とを接触しやすくするために雰囲気ガスの導入口として側面に開口部を設けてもよい。また、図6に示される工程(6)の後に、不純物混入防止のためにボート2の開口部を覆うように蓋を設置してもよい。
【0077】
以上のように行われる本発明の粉末充填方法では、図4〜図5に示される工程(4)に相当する第1の工程においては、振動により、空間占有部材としての嵩密度調整部材41が存在する箇所以外では、粉末3の嵩密度はほぼ均一になる。そして、図6に示される工程(6)に相当する第2の工程においては、空間占有部材としての嵩密度調整部材41が粉末3の内部から除去されると、嵩密度調整部材41が存在した箇所に粉末3の一部が移動する。このため、嵩密度調整部材41が存在した箇所とその箇所の近傍に充填される粉末3の嵩密度は、他の箇所に比べて相対的に低くなる。これにより、処理用容器としてのボート2に充填された粉末3の嵩密度を局所的に不均一にすることができる。
【0078】
このようにボート2に充填された粉末3の嵩密度を局所的に不均一にすることができるので、たとえば、雰囲気ガスが流入し難い箇所であるボート2の底部、中央部、端部等に充填された粉末3の嵩密度を相対的に低くすることにより、後工程で行われる雰囲気処理において粉末3と雰囲気ガスの接触性を良好にすることができる。したがって、目的とする材料粉末を製造するために出発材料としての粉末3の処理を所定の雰囲気にて行う際に、ボート2に充填された粉末3と雰囲気ガスとの接触性を良好にして、ボート2に充填された粉末3の反応をより均一に行うことが可能となる。
【0079】
また、この発明の粉末充填装置では、空間占有部材移動部としての嵩密度調整装置4のリニアアクチュエータ46によって、空間占有部材としての嵩密度調整部材41を処理用容器としてのボート2の内部に移動させて、ボート2内に収容された粉末3の内部に嵩密度調整部材41を存在させた状態で、振動付与部としての振動付与装置5の振動アクチュエータ52によって粉末3に振動を与えることができる。この振動により、嵩密度調整部材41が存在する箇所以外では、粉末3の嵩密度はほぼ均一になる。そして、振動付与装置5の振動アクチュエータ52による振動を停止した後、嵩密度調整装置4のリニアアクチュエータ46によって、嵩密度調整部材41をボート2の外部に移動させて、ボート2内に収容された粉末3の内部から嵩密度調整部材41を除去することができる。嵩密度調整部材41が粉末3の内部から除去されると、嵩密度調整部材41が存在した箇所に粉末3の一部が移動する。このため、嵩密度調整部材41が存在した箇所とその箇所の近傍に充填される粉末3の嵩密度は、他の箇所に比べて相対的に低くなる。これにより、ボート2に充填された粉末3の嵩密度を局所的に不均一にすることができる。
【0080】
このように本発明の粉末充填装置を用いることにより、ボート2に充填された粉末3の嵩密度を局所的に不均一にすることができるので、たとえば、雰囲気ガスが流入し難い箇所であるボート2の底部、中央部、端部等に充填された粉末3の嵩密度を相対的に低くすることにより、後工程で行われる雰囲気処理において粉末3と雰囲気ガスの接触性を良好にすることができる。したがって、目的とする材料粉末を製造するために出発材料としての粉末3の処理を所定の雰囲気にて行う際に、ボート2に充填された粉末3と雰囲気ガスとの接触性を良好にして、ボート2に充填された粉末3の反応をより均一に行うことが可能となる。
【実施例】
【0081】
以下で説明される実施例1〜5と比較例に従って雰囲気処理された粉末の各試料を作製した。
【0082】
(実施例1)
東邦金属株式会社製の水素化チタンを30μm以下の粒度になるようにボールミルで粉砕した粉末と、Fisher社製のSub Sieve Sizerにて測定されたFsss粒度が1μmの炭素粉末とに、直径が10mmのステンレス鋼製ボールを用いてボールミル法にて均一に混合されるように10時間混合・粉砕処理を施した。このようにして得られた出発材料とされる粉末は、走査電子顕微鏡写真で観察すると、各々の粒子およびそれらの凝集粒子の粒径は10μm以下であった。なお、炭素粉末と水素化チタン粉末の配合量は、化学式でTiC0.5N0.5になるように調整した。
【0083】
図10に示すように、内側寸法として幅が100mm、長さが150mm、高さが30mmの直方体形状の黒鉛製のボート2を準備した。
【0084】
次に、図1に示すように、水素化チタン粉末と炭素粉末の混合粉末200gを、ボート2の中央部の上方で高さ200mmの位置から、回転羽根による切り出しにて1秒間7gの速度でボート2に供給した。
【0085】
そして、嵩密度調整部材41として、直径が7mmの円柱状の棒状部材41cを28本、図11に示すように配置し、図5に示すように嵩密度調整部材41の先端部がボート2の内側底部から2mmだけ隔てた距離に位置付けられるように、図3に示すように、リニアアクチュエータ46を駆動させることにより、ボート2の上方から、嵩密度調整部材41を1mm/秒の下降速度にてボート2内へ降下させた。
【0086】
その後、図4に示すように、ボート設置台51に結合された振動アクチュエータ52(神鋼電機株式会社製の振動モータRV−072D)を矢印Vの方向に偏心回転駆動させることにより、ボート2内の粉末3に振動を与えた。振動条件は、振動周波数12Hz、時間10秒間とした。この振動により、図4に示すようにボート2内に山なり状に供給された粉末3は、図5に示すように充填厚さが等しくなるように移動し、かつ、嵩密度が増大した。
【0087】
そして、図5に示すように、振動が完全に停止したことを確認した後、図6に示すように、嵩密度調整部材41を矢印Qで示す方向に移動させて、ボート2内から上昇させて粉末3内から抜き出した。このときの上昇速度は1mm/秒とした。嵩密度調整部材41が存在した部分には、粉末3が流れ込み、円柱状の棒状部材41cの抜け穴として残らなかった。
【0088】
最後に、粉末3が充填されたボート2をバッチ型熱処理炉内に装入して、粉末3に雰囲気加熱処理を施した。加熱処理条件は、常温から最高温度1700℃まで7℃/分にて昇温した後、保持時間なしにて4時間かけて常温まで冷却した。雰囲気ガスである窒素ガスは、ボート2の長手方向の一方から供給し、他方へ1リットル/分で排出されるようにした。炉内圧力は、大気が炉内に入り込まないように0.11MPaになるようにした。得られた粉末の試料は、粉末全体がTiC0.5N0.5になるように反応していた。
【0089】
(実施例2)
実施例2では、嵩密度調整部材41として、最下部の直径が8mmの円錐台状の棒状部材41bを28本、振動停止後の粉末3の表面部位置における棒状部材41bの直径が5mmとなるように図12に示すように配置した以外は、実施例1と同様にして粉末の試料を作製した。
【0090】
(実施例3)
実施例3では、嵩密度調整部材41として、厚みが6mmの板状部材41fを8枚、図13に示すように配置した以外は、実施例1と同様にして粉末の試料を作製した。
【0091】
(実施例4)
実施例4では、嵩密度調整部材41として、最下部の厚みが8mmのテーパ状の板状部材41uを8枚、振動停止後の粉末3の表面部位置における板状部材41uの厚みが5mmとなるように図14に示すように配置した以外は、実施例1と同様にして粉末の試料を作製した。
【0092】
(実施例5)
実施例5では、嵩密度調整部材41として、断面が楕円の線状部材41vを8本、X−Y面(水平面)に沿って延びる各線状部材の断面の楕円の長軸がZ方向(鉛直方向)となるように図15に示すように配置した以外は、実施例1と同様にして粉末の試料を作製した。各線状部材の断面の楕円の長軸は8mm、短軸は5mmとした。
【0093】
(比較例)
比較例として、嵩密度調整部材を用いず、その他は実施例1と同様にしてボート2内に粉末3を充填した。粉末3が充填されたボート2をバッチ型熱処理炉内に装入して、粉末3に雰囲気加熱処理を施した。加熱処理条件は、常温から最高温度1700℃まで7℃/分にて昇温し、1700℃で30分間保持した後、4時間かけて常温まで冷却した。このように比較例では、実施例1〜5と異なる加熱処理条件を採用したのは、実施例1〜5と同様に1700℃にて保持時間なしとした場合、充填された粉末3の底部まで充分にN(窒素)を含有させることができず、ボート2内の粉末全体を所定の含有比率でNを含有したTiC0.5N0.5となるようにできなかったためである。
【0094】
以上のようにして作製された実施例1〜5と比較例の各試料の粉末の色調を観察した。実施例1〜5の粉末の観察結果を図16、比較例の粉末の観察結果を図17に模式的に示す。図16と図17において、箇所Iはグレー色、箇所IIは特に表面部に赤紫色またはオレンジ色が多く存在するグレー色、箇所IIIはグレー色に赤紫色やオレンジ色の部分が混じっており、また粒径が1mm以下の銀色粒が混ざっているところを示す。
【0095】
図16に示すように、実施例1〜5の試料では、ボート2内のいずれの位置でも色調はグレー色であった。これに対して、図17に示すように、比較例の試料では、グレー色以外の色調を有する部位があった。
【0096】
さらに、得られた各試料の粉末の色調を目視にて観察した後、図16または図17に示す箇所Iと図17に示す箇所IIIのうち箇所IVc(底部)の粉末部分を採取し、走査電子顕微鏡にて粒子の状態を観察した。図18は、図16または図17の箇所Iの走査電子顕微鏡写真である。図19は、図17の箇所IVcの走査電子顕微鏡写真である。
【0097】
図18に示すように、実施例1〜5と比較例で得られた粉末において、色調がグレー色のみの箇所Iの粉末部分は、数μmの粒状体が凝集していた。一方、図19に示すように、銀色粒が混ざっていてグレー色に赤紫色やオレンジ色の部分が混じった色調を呈する箇所IVcの粉末部分は、粒子が数百μmサイズに焼結されたような状態となっていた。
【0098】
粉末全体が図18に示すような状態の実施例1〜5の粉末は、粉砕処理することによって粒子の凝集をほぐしやすい。しかし、図19に示すような状態の粉末部分が混ざった比較例の粉末は、粉砕し難く、広い粒度分布を有するものになりやすい。図19に示すような箇所の粉末部分では、粉末の嵩密度が高いため、個々の粒子が焼結されたようになったものと考えられる。このことから、比較例のような粉末は、粉砕するためには強力な外力を与える必要があり、粉砕機の構成部材からの不純物の混入もあり得る。したがって、比較例の粉末は、粉末の微粉化に要するコストや品質において、本発明の実施例1〜5の粉末より劣ることは明らかである。
【0099】
次に、実施例1〜5と比較例の加熱処理前のボート内粉末の平均嵩密度と、加熱処理後に得られたボート内粉末の色調の結果をまとめて表1に示す。なお、粉末の平均嵩密度は、次のようにして測定されて算出された。内側の平面寸法が幅100mm、長さ150mmであるボートの側壁面から内側に距離5mmだけ離れた平面領域、すなわち、90mmx140mmの平面領域において、幅方向15mm間隔、長さ方向20mm間隔の碁盤目を想定し、その碁盤目の各交点の位置を充填粉末の深さ(充填厚さ)の測定位置とした。この各測定位置にて、水平に設置されたボートの上方に高さ方向の基準高さを設定し、この基準高さ位置とボートの内側底面との間の垂直方向の第1の距離と、上記の基準高さ位置と充填粉末の最表面との間の垂直方向の第2の距離を測定し、第1と第2の距離の差を求めた。なお、第1と第2の距離の測定はノギスを用いて行った。このようにして求められた差の値を、碁盤目の各交点の位置における充填粉末の深さ(充填厚さ)とした。得られた充填厚さの平均値とボートの内側の平面寸法と供給粉末質量とから、平均嵩密度を算出した。
【0100】
【表1】
【0101】
表1から、実施例1〜5では、比較例に比べて、加熱処理前の粉末の平均嵩密度は低いことがわかる。実施例1〜5では、嵩密度調整部材41が存在していた箇所では1.02g/cm3よりも低い嵩密度を示し、それ以外の箇所では1.02g/cm3よりも高い嵩密度を示し、嵩密度が不均一になっており、平均嵩密度が1.02g/cm3であった。これに対して、比較例では、嵩密度調整部材を用いなかったので、1.02g/cm3よりも高い平均嵩密度を示した。
【0102】
また、実施例1と比較例で得られた試料の粉末において、図17に示す箇所IVa(表層部)、箇所IVb(中層部)、箇所IVc(底部)で採取した粉末部分のN(窒素)含有量を測定した。その測定結果を表2に示す。なお、N含有量は、次のようにして測定されて算出された。N含有量は、LECO社製の酸素・窒素定量装置(TC−600)を用いて測定した。N含有量の測定方法は熱伝導度法による。この際、実施例1と比較例で得られた試料の粉末において上記の各箇所から、40mgの粉末部分を採取し、各々をNi製のカプセル中に装入し、さらにカーボン製のルツボに入れた状態でN含有量を測定した。
【0103】
【表2】
【0104】
表2から、比較例では、ボート内で粉末の深さ方向においてN含有量の差が大きいが、実施例1では、ボート内で粉末の深さ方向においてN含有量の差が小さいことがわかる。
【0105】
嵩密度調整部材を用いないでボートに粉末を充填した比較例の場合に、ボート内で粉末の深さ方向においてN含有量の差が大きくなるのは、出発原料の粉末の充填高さを調整する際に、振動が与えられた粉末は円を描くように外方向に、すなわち、ボートの内側面へと移動するので、長時間振動を行った場合、粉末の表面がすり鉢状になることからもわかるように、ボートの内周側面近傍、特にボートの内底部に位置する粉末部分がより密に充填するようになることに起因すると考えられる。これにより、比較例では、雰囲気ガスである窒素が、ボートの内底部に位置する粉末と容易に接することができないので、ボート内で粉末の深さ方向においてN含有量の差が大きくなり、底部に位置する粉末部分のN含有量がかなり低くなる。一方、実施例1では、嵩密度調整部材を用いてボートに粉末を充填するので、ボートの内底部に位置する粉末も雰囲気ガスである窒素と容易に接することができるので、ボート内で粉末の深さ方向においてN含有量の差が小さく、底部に位置する粉末部分のN含有量が、表層部や中層部に位置する粉末部分のN含有量と同程度になる。
【0106】
以上の実施例の結果から、本発明によれば、目的とする材料粉末を製造するために出発材料としての粉末3の熱処理を所定の雰囲気にて行う際に、従来に比べて、ボート2に充填された粉末3と雰囲気ガスとの接触性を良好にして、ボート2に充填された粉末3の反応をより均一に行うことが可能となることがわかった。
【0107】
今回開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものであることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0108】
この発明の粉末充填方法と粉末充填装置は、切削工具等の材料粉末、たとえば、切削工具用材料としてのサーメットを製造するためにTiCN粉末の出発材料粉末の熱処理を所定の雰囲気にて行う際に用いられる。
【符号の説明】
【0109】
2:ボート、3:粉末、4:嵩密度調整装置、5:振動付与装置、41:嵩密度調整部材、46:リニアアクチュエータ、52:振動アクチュエータ。
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には粉末充填方法および粉末充填装置に関し、特定的には切削工具等の材料粉末を製造するために出発材料としての粉末の処理を所定の雰囲気にて行う際の粉末充填方法および粉末充填装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉末を均一に充填するための方法や装置は種々提案されている。
【0003】
たとえば、特開2005−81352号公報(以下、特許文献1という)には、金型に投入する粉体の量を精度良く均一にし、特に長尺で幅の狭い溝内に供給された粉体を、長手方向に均一に分散・充填する粉体均一充填方法および充填装置が提案されている。この粉体充填装置は、粉体を充填する金型のテーブルと、このテーブルに周期的な振動を与えるための二つ以上の振動源と、このテーブルの振動を制御するための防振装置とを備えている。
【0004】
また、特開2001−179497号公報(以下、特許文献2という)には、粉体の充填性を高めるための動作状態を変更することによって装置構造の複雑化や大型化を抑制しつつ粉体の充填量を均一化することができる、圧粉成形に好適な粉体充填方法及び粉体充填装置の構造が提案されている。この粉体充填装置は、ダイベース及びダイの上面には略板状のベース部材が水平方向にスライド自在に案内されており、このベース部材の一端寄り部分には開口部が形成されている。この開口部の開口縁には略円筒状の収容部材が取り付けられている。また、ベース部材の他端寄り部分にはエアバイブレータ等からなる振動源が取り付けられている。この振動源は上下方向に振動するように構成されている。
【0005】
さらに、特開平7−164193号公報(以下、特許文献3という)には、圧縮成形用金型のキャビティに対して粉末を均一に高密度に充填し得るようにして密度のバラツキが少ない良好な粉末成形品が得られる成形方法が提案されている。この粉末成形体の製造方法では、金型のキャビティに向けて給粉シューボックスを移動させると同時に、その給粉シューボックスに振動を与えてキャビティに粉末を充填する。そして、キャビティ内の粉末の充填密度を見掛け密度の1.1倍以上としたのち圧縮成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−81352号公報
【特許文献2】特開2001−179497号公報
【特許文献3】特開平7−164193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3では、振動を利用して金型内に粉末成形体を形成する技術が提案されている。基本的には、従来の粉末の充填技術は、均一かつ高密度に粉末を金型内に充填することを目的としている。
【0008】
一方、目的とする材料粉末を製造するために出発材料としての粉末を所定の雰囲気にて処理する際には、出発材料としての粉末は、処理用容器として、たとえば、充填用ボートに充填される。この場合、従来から、粉末への熱の伝達と、粉末と雰囲気ガスとの反応性を考慮して、ボート内の粉末の充填厚さを均一にすることがなされる。すなわち、粉末を所定の雰囲気にて処理する場合においても、処理される粉末を充填用ボート内に均一に充填することが一般的に行われる。
【0009】
しかしながら、粉末をボート内に均一に充填しても、実際には雰囲気ガスや反応ガスの熱処理炉内の流れなどにより、ボート内に充填された粉末は均一に反応し難いという問題があった。
【0010】
具体的には、ボートの上から雰囲気ガスが供給されると、ボート内に充填された粉末の最表面部は雰囲気ガスとの接触性がよいが、ボートの底部に充填された粉末は雰囲気ガスとの接触性が悪いことは避けられない。また、一般的に振動などを利用して粉末の充填厚さを均一にすることが多いので、粉末の充填密度が高くなる。このため、ボートの上から雰囲気ガスが供給されると、その雰囲気ガスはボートの底部に充填された粉末にはより流入し難くなり、ボートの底部に充填された粉末と雰囲気ガスとの接触性がより悪くなる。さらに、処理装置内のガスの供給口や導入孔の位置等に影響されてガスの流動状況が処理装置内のボートの位置によって異なり、ボート内の中央部と端部に充填された粉末にても雰囲気ガスとの接触性が異なる。
【0011】
なお、このような問題を解決するためにボート内での粉末と雰囲気ガスとの接触性を考慮した充填方法については提案されていない。
【0012】
そこで、この発明の目的は、目的とする材料粉末を製造するために出発材料としての粉末の処理を所定の雰囲気にて行う際に、粉末と雰囲気ガスとの接触性を良好にして粉末の反応をより均一に行うことができるように、粉末を処理用容器に充填する粉末充填方法と粉末充填装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に従った粉末充填方法は、雰囲気処理される粉末を処理用容器に充填する粉末充填方法であって、粉末内部の空間を占有する空間占有部材を、処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させた状態で粉末に振動を与える第1の工程と、振動を停止した後、空間占有部材を粉末の内部から除去する第2の工程とを備える。
【0014】
この発明の粉末充填方法では、第1の工程においては、振動により、空間占有部材が存在する箇所以外では、粉末の嵩密度はほぼ均一になる。そして、第2の工程においては、空間占有部材が粉末の内部から除去されると、空間占有部材が存在した箇所に粉末の一部が移動する。このため、空間占有部材が存在した箇所とその箇所の近傍に充填される粉末の嵩密度は、他の箇所に比べて相対的に低くなる。これにより、処理用容器に充填された粉末の嵩密度を局所的に不均一にすることができる。
【0015】
このように処理用容器に充填された粉末の嵩密度を局所的に不均一にすることができるので、たとえば、雰囲気ガスが流入し難い箇所である処理用容器の底部、中央部、端部等に充填された粉末の嵩密度を相対的に低くすることにより、粉末と雰囲気ガスの接触性を良好にすることができる。したがって、目的とする材料粉末を製造するために出発材料としての粉末の処理を所定の雰囲気にて行う際に、処理用容器に充填された粉末と雰囲気ガスとの接触性を良好にして、処理用容器に充填された粉末の反応をより均一に行うことが可能となる。
【0016】
この発明の粉末充填方法における第1の工程では、処理用容器内に粉末を供給した後、処理用容器内に供給された粉末の表面から内部に向かって空間占有部材を挿入することによって、空間占有部材を、処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させるようにしてもよい。
【0017】
また、この発明の粉末充填方法における第1の工程では、処理用容器内の開口部から底部に向かって空間占有部材を挿入した後、処理用容器内に粉末を供給することによって、空間占有部材を、処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させるようにしてもよい。
【0018】
この発明の粉末充填方法において、空間占有部材は棒状部材であり、第1の工程では、棒状部材の一方端部を、処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させた状態で粉末に振動を与えるようにしてもよい。
【0019】
また、この発明の粉末充填方法において、空間占有部材は板状部材であり、第1の工程では、板状部材の一方端部を、処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させた状態で粉末に振動を与えるようにしてもよい。
【0020】
さらに、この発明の粉末充填方法において、空間占有部材は一方端部が曲がった線状部材であり、第1の工程では、線状部材の一方端部を、処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させた状態で粉末に振動を与えるようにしてもよい。
【0021】
この発明に従った粉末充填装置は、雰囲気処理される粉末を処理用容器に充填する粉末充填装置であって、粉末を収容する処理用容器と、粉末内部の空間を占有する空間占有部材を処理用容器の外部と内部との間で移動させる空間占有部材移動部と、処理用容器に振動を与える振動付与部とを備える。
【0022】
この発明の粉末充填装置では、空間占有部材移動部によって、空間占有部材を処理用容器の内部に移動させて、処理用容器内に収容された粉末の内部に空間占有部材を存在させた状態で、振動付与部によって粉末に振動を与えることができる。この振動により、空間占有部材が存在する箇所以外では、粉末の嵩密度はほぼ均一になる。そして、振動付与部による振動を停止した後、空間占有部材移動部によって、空間占有部材を処理用容器の外部に移動させて、処理用容器内に収容された粉末の内部から空間占有部材を除去することができる。空間占有部材が粉末の内部から除去されると、空間占有部材が存在した箇所に粉末の一部が移動する。このため、空間占有部材が存在した箇所とその箇所の近傍に充填される粉末の嵩密度は、他の箇所に比べて相対的に低くなる。これにより、処理用容器に充填された粉末の嵩密度を局所的に不均一にすることができる。
【0023】
このように本発明の粉末充填装置を用いることにより、処理用容器に充填された粉末の嵩密度を局所的に不均一にすることができるので、たとえば、雰囲気ガスが流入し難い箇所である処理用容器の底部、中央部、端部等に充填された粉末の嵩密度を相対的に低くすることにより、粉末と雰囲気ガスの接触性を良好にすることができる。したがって、目的とする材料粉末を製造するために出発材料としての粉末の処理を所定の雰囲気にて行う際に、処理用容器に充填された粉末と雰囲気ガスとの接触性を良好にして、処理用容器に充填された粉末の反応をより均一に行うことが可能となる。
【0024】
この発明の粉末充填装置において、空間占有部材は棒状部材であり、空間占有部材移動部は、棒状部材の一方端部を処理用容器の外部と内部との間で移動させるようにしてもよい。
【0025】
また、この発明の粉末充填装置において、空間占有部材は板状部材であり、空間占有部材移動部は、板状部材の一方端部を処理用容器の外部と内部との間で移動させるようにしてもよい。
【0026】
さらに、この発明の粉末充填装置において、空間占有部材は一方端部が曲がった線状部材であり、空間占有部材移動部は、線状部材の一方端部を処理用容器の外部と内部との間で移動させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0027】
以上のようにこの発明によれば、目的とする材料粉末を製造するために出発材料としての粉末の処理を所定の雰囲気にて行う際に、処理用容器に充填された粉末と雰囲気ガスとの接触性を良好にして、処理用容器に充填された粉末の反応をより均一に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の一つの実施の形態としての粉末充填方法の工程(1)を示す部分断面側面図である。
【図2】この発明の一つの実施の形態としての粉末充填装置を用いて行われる粉末充填方法の工程(2)を示す部分断面側面図である。
【図3】この発明の一つの実施の形態としての粉末充填装置を用いて行われる粉末充填方法の工程(3)を示す部分断面側面図である。
【図4】この発明の一つの実施の形態としての粉末充填装置を用いて行われる粉末充填方法の工程(4)を示す部分断面側面図である。
【図5】この発明の一つの実施の形態としての粉末充填装置を用いて行われる粉末充填方法の工程(5)を示す部分断面側面図である。
【図6】この発明の一つの実施の形態としての粉末充填装置を用いて行われる粉末充填方法の工程(6)を示す部分断面側面図である。
【図7】この発明の粉末充填装置における空間占有部材としての棒状部材の種々の形態を示す部分側面図である。
【図8】この発明の粉末充填装置における空間占有部材としての板状部材の種々の形態を示す部分側面図(A)(B)(C)と下面図(D)(E)(F)である。
【図9】この発明の粉末充填装置における空間占有部材としての線状部材の種々の形態を示す部分側面図である。
【図10】この発明の粉末充填装置における処理用容器の一つの形態を示す斜視図である。
【図11】この発明の実施例1で用いられた空間占有部材としての嵩密度調整部材の構成を示す部分側面図(A)、下面図(B)、および、下面図(B)においてC−C線の方向から見た部分断面図(C)である。
【図12】この発明の実施例2で用いられた空間占有部材としての嵩密度調整部材の構成を示す部分側面図(A)、下面図(B)、および、下面図(B)においてC−C線の方向から見た部分断面図(C)である。
【図13】この発明の実施例3で用いられた空間占有部材としての嵩密度調整部材の構成を示す部分側面図(A)、下面図(B)、および、下面図(B)においてC−C線の方向から見た部分断面図(C)である。
【図14】この発明の実施例4で用いられた空間占有部材としての嵩密度調整部材の構成を示す部分側面図(A)、下面図(B)、および、下面図(B)においてC−C線の方向から見た部分断面図(C)である。
【図15】この発明の実施例5で用いられた空間占有部材としての嵩密度調整部材の構成を示す部分側面図(A)、下面図(B)、および、下面図(B)においてC−C線の方向から見た部分断面図(C)である。
【図16】この発明の実施例1〜5にて加熱処理により作製された粉末の試料の色分布を示す平面図(A)と断面図(B)である。
【図17】この発明の比較例にて加熱処理により作製された粉末の試料の色分布を示す平面図(A)と断面図(B)である。
【図18】図16または図17の箇所Iの走査電子顕微鏡写真である。
【図19】図17の箇所IVcの走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明の一つの実施の形態としての粉末充填方法と粉末充填装置は、粉末の還元反応、酸化反応、炭化反応、窒化反応などの雰囲気反応処理を行う前に処理用容器に粉末を充填するために用いられる。たとえば、本発明の粉末充填方法と粉末充填装置は、雰囲気処理に利用される処理用容器の一例としてのボートの内部に充填された粉末をより均一に反応させるために用いられる。後述するように、本発明の粉末充填方法と充填装置を用いることにより、ボートの上部に充填された粉末の表面部分、ボートの底部に充填された粉末の一部分、ボートの中央部に充填された粉末の一部分、ボートの端部に充填された粉末の一部分などにおいて、ボート内の充填位置によって粉末の反応性が相違するのを抑制することが可能になる。
【0030】
本発明は、以下のように発明者らが種々検討を重ねた結果、なされたものである。
【0031】
従来、粉末の加熱炉による雰囲気処理では、ボート内に粉末が充填される。粉末が充填されたボートは、1段又は複数段に積み重ねられて加熱炉内に装入される。このようにして、粉末の加熱炉による雰囲気処理がバッチ処理または連続処理により行われている。
【0032】
処理されるべき粉末と雰囲気ガスとを反応させるとき、雰囲気ガスの加熱炉内への供給方法や排出方法、すなわち、ガスの流れ性、ボートの形状、粉末の充填厚さ、加熱炉内の温度分布などが粉末の反応性に大きな影響を与える。このため、一般的には、(a)ボート内の粉末の充填厚さを薄くする、(b)粉末の充填厚さを均一にする、(c)加熱炉内のボートやヒーターの配置を考慮する、(d)ボートに雰囲気ガス導入口を設ける、などの対策がとられている。
【0033】
しかしながら、ボート内の粉末の充填厚さを薄くすると、単位時間当たりの処理量が減少し、量産性が劣ることになる。これを解決するために、粉末が充填されたボートを複数段、積み重ねると、加熱炉内に温度分布が存在するために、複数段の中に配置されるボートの位置によっては、粉末の反応性が異なることになり、最終的に均一な品質の粉末が得られなくなるという問題があった。
【0034】
また、ボート内の粉末に加熱炉内の異物が入らないようにボートに蓋をし、かつ、雰囲気ガスがボート内に流入しやすいようにボートの側面にガス流入口や排出口などを施したりする。しかし、この場合、ボートの上部に充填された粉末の表面部分でも、ガス流入口や排出口の位置の影響を受けるため、ボート内の充填位置によって粉末の雰囲気ガスとの接触性に相違が生じる。
【0035】
さらに、粉末を均一に反応させるために、当該ボートの蓋や当該ボートの上に配置される別のボートの底部と、当該ボート内の粉末とが接触しないように、一般的に充填厚さを均一にする。しかし、このとき、ボートに振動を与えると、ボートに充填された粉末の嵩密度が増し、ボートの底部近傍に充填された粉末と雰囲気ガスとの接触性が悪化する。その結果、処理後において、ボートの上部に充填された粉末の表面部分と、ボートの底部近傍に充填された粉末の部分との間で粉末の反応性に相違が生じてしまうことがあった。
【0036】
そこで、発明者らは、処理用容器としてのボートに充填する粉末の嵩密度を調整するために、種々の形状の空間占有部材(嵩密度調整部材ともいう)を、ボートに充填される粉末の内部の適切な位置に設置し、振動により充填粉末の厚さを調整した後に、この空間占有部材を抜き出すことによりボート内の充填粉末の嵩密度を制御すれば、ボートに充填された粉末と雰囲気ガスとの接触性を良好にして、ボートに充填された粉末の反応をより均一に行うことが可能になることを見出した。すなわち、発明者らの知見は、目的とする材料粉末を製造するために出発材料としての粉末の処理を所定の雰囲気にて行う際に、あえてボート内の粉末の嵩密度を不均一化すれば、雰囲気ガスと粉末の接触性がより均一になることである。
【0037】
以上の知見に基づいて、要約すれば、本発明の粉末充填方法と粉末充填装置は、次のような特徴を備えている。
【0038】
粉末充填方法は、雰囲気処理される粉末を処理用容器に充填する粉末充填方法であって、粉末内部の空間を占有する空間占有部材を、処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させた状態で粉末に振動を与える第1の工程と、振動を停止した後、空間占有部材を粉末の内部から除去する第2の工程とを備える。
【0039】
粉末充填装置は、雰囲気処理される粉末を処理用容器に充填する粉末充填装置であって、粉末を収容する処理用容器と、粉末内部の空間を占有する空間占有部材を処理用容器の外部と内部との間で移動させる空間占有部材移動部と、処理用容器に振動を与える振動付与部とを備える。
【0040】
具体的には、本発明の一つの実施の形態として、粉末充填方法は、次の工程からなる。
【0041】
(1)雰囲気処理される粉末を処理用容器としてのボート内に供給する工程。
【0042】
(2)振動発生装置に結合されたボート設置台の所定の位置にボートを固定する工程。
【0043】
(3)粉末の充填嵩密度を調整するために空間占有部材として、棒状部材、板状部材、または、線状部材の1種の部材または複数の部材からなる一つまたは複数の嵩密度調整部材を、ボートの上方よりボート内に降下させる工程。
【0044】
(4)ボート設置台またはボート設置台および嵩密度調整材を通じて粉末に振動を与え、粉末の充填厚さおよび嵩密度を制御する工程。
【0045】
(5)振動を停止する工程。
【0046】
(6)嵩密度調整材をボート内から上昇させて抜き出す工程。
【0047】
ここで、工程(1)〜工程(3)は(2)、(3)、(1)の順で行ってもよい。
【0048】
以下、各工程について、図1〜図6を参照して説明する。
【0049】
図1に示すように、工程(1)では、粉末3をボート2内に供給する。雰囲気処理される出発材料としての粉末3を、粉末貯蔵槽(図示せず)から振動や回転羽根による切り出しなど公知の粉末供給機1によってボート2内に所定量供給する。粉末供給量の調節は粉末貯蔵槽またはボート設置台に備えた計量器にて行うことが好ましい。
【0050】
次に、図2に示すように、工程(2)では、粉末3が充填されたボート2を振動可能なボート設置台51の上に配置して固定する。ボート2の配置はローラコンベアやロボットアーム等の任意のハンドリング装置で行う。
【0051】
ここで、粉末3の充填厚さを均一にするために本発明では振動を用いている。振動付与装置5は、ボート設置台51と、ボート設置台51に連結された振動発生装置としての振動アクチュエータ52と、ボート設置台51の振動に応じて付勢される受けバネ53と、受けバネ53を支持する受けバネ支柱54と、受けバネ支柱54が固定されるベース55とから構成される。
【0052】
このように、粉末3に与えられる振動は、ボート設置台51を通じて行う方法が好適であるため、ボート設置台51は振動アクチュエータ52に連結されている。
【0053】
そして、図3に示すように、工程(3)では、リニアアクチュエータ46を駆動させることにより、粉末3の充填嵩密度を調整するための棒状部材、板状部材、または、線状部材の1種または複数の部材からなる一つまたは複数の嵩密度調整部材41を、矢印Pで示す方向に、ボート2の上方よりボート2内に降下させる。
【0054】
ここで、嵩密度調整装置4は、ボート2の開口部から底部に向かって挿入可能な一方端部を有する嵩密度調整部材41と、嵩密度調整部材41の他方端部を固定するための固定部材42と、固定部材42を保持して上下方向にスライド可能なスライド部材43と、スライド部材43をアクチュエータに結合するためのジョイント部材44と、ジョイント部材44に係合するストッパ部材45と、ストッパ部材45を介してジョイント部材44に結合するリニアアクチュエータ46と、リニアアクチュエータ46を固定するためのフレーム部材47と、スライド部材43を押さえる押さえバネ48と、押さえバネ48を支持する押さえバネ支柱49とから構成されている。
【0055】
複数の嵩密度調整部材41は、粉末3と雰囲気ガスとの接触性が良好でないボート2の箇所に、たとえば、嵩密度が相対的に高くなる箇所に、多く挿入することができるように配置することが好ましい。複数の嵩密度調整部材41の配置は、ボート2の形状や雰囲気加熱炉の構造により適宜決定される。また、嵩密度調整部材41の材質も、粉末3の材質や雰囲気ガスや処理温度等により適宜選択される。
【0056】
嵩密度調整部材41の粉末3内への挿入深さは深いほどよい。しかし、振動によりボート2と嵩密度調整部材41とが衝突することによってボート2と各種構造部材が破損するおそれ、または、ボート2の材料や嵩密度調整部材41の摩耗によって粉末3中に不純物が混入するおそれがあるため、嵩密度調整部材41の一方端部がボート2の底部に接しないように配置するのが好ましい。
【0057】
また、嵩密度調整部材41を固定する固定部材42が粉末3に触れても、後工程の振動により、山状の粉末3は平坦に広がるので構わない。しかし、固定部材42が大きな力で粉末3を押さえつけることがないようにするのがよい。
【0058】
なお、嵩密度調整部材41の形状によっては、ボート2内に嵩密度調整部材41を下降させるときにボート2内の粉末3を嵩密度調整部材41が不必要に圧縮する場合がある。この場合、前述したように、嵩密度調整部材41をボート2内に下降させる工程の後、粉末3をボート2内に供給する工程を行う、すなわち、工程順を(2)、(3)、(1)にしてもよい。
【0059】
その後、図4に示すように、工程(4)では、振動アクチュエータ52を矢印Vの方向に偏心回転させて振動させることにより、ボート設置台51を通じて粉末3に振動を与え、粉末3の充填厚さおよび嵩密度を制御する。このとき、ボート設置台51、嵩密度調整部材41の両方から粉末3に振動を与えてもよい。
【0060】
なお、ボート2内に充填される粉末3の厚さは、振動等による粉末の充填厚さの均一化がなされない場合、ボート2の箇所によって大きくなったり、小さくなったりしてばらつく。熱処理の際には、炉内上部からの落下物が粉末3内に混入することを防止するためにボート2の開口部を覆うように蓋が配置される。また、熱処理の際には、複数のボート2が積み重ねられる。このような場合において、蓋と当該ボート2の上部に充填された粉末3の表面部分との接触、当該ボート2の上に積重ねられるボートの底面と当該ボート2の上部に充填された粉末3の表面部分との接触を避けるために、ボート2内に充填される粉末3の厚さのばらつきを上記の振動により小さくする必要がある。
【0061】
ここで、図4に示すように、振動アクチュエータ52をボート設置台51の下部に設置して振動させた場合、粉末3の表面部は渦を巻くように移動する。この場合、振動付与時間が長すぎると、ボート2の中心部よりボート2の端部の方が粉末3の充填厚さが厚くなるだけでなく、嵩密度が必要以上に増大するので、振動アクチュエータ52の振動条件を調整するのが好ましい。
【0062】
そして、図5に示すように、工程(5)では、振動アクチュエータ52の振動を完全に停止させる。
【0063】
最後に、図6に示すように、工程(6)では、リニアアクチュエータ46を駆動させることにより、嵩密度調整部材41を矢印Qで示す方向に移動させて、ボート2内から上昇させて抜き出す。このとき、嵩密度調整部材41は急激に上昇させない方が好ましい。嵩密度調整部材41を急激に上昇させると、ボート2内の粉末が周囲に飛び散るおそれがあるので、歩留まりの観点からも好ましくない。
【0064】
以上の粉末充填方法または粉末充填装置で用いられる嵩密度調整部材41の種々の形態を図7〜図9に示す。
【0065】
嵩密度調整部材41の形状は、棒状部材(図7)、板状部材(図8)、または、線状部材(図9)のうちのいずれでもよく、複数の種類の形状を有する嵩密度調整部材41を組み合わせて用いてもよい。嵩密度調整部材41の断面形状は、適宜、作用効果に応じて決定すればよい。
【0066】
図7に示すように、嵩密度調整部材41の形状が棒状部材41a、41b、41cの場合、下方に位置づけられる一方端部は充填される粉末内に挿入される部分であり、上方の他方端部は固定部材42に支持される部分である。棒状部材41a、41b、41cの断面形状は円、楕円、または、多角形のうちの1種または複数からなる。
【0067】
図7の(A)に示すように、棒状部材41aの水平方向の断面積が棒状部材41aの長さ方向に沿って下方の位置になるほど、だんだん小さくなっていてもよい。また、図7の(B)に示すように、棒状部材41bの水平方向の断面積が棒状部材41bの長さ方向に沿って下方の位置になるほど、だんだん大きくなっていてもよい。さらに、図7の(C)に示すように、棒状部材41cの水平方向の断面積が棒状部材41cの長さ方向に沿って等しくてもよい。このように、棒状部材41a、41b、41cの水平方向の断面積は等しくても不均一であってもよい。
【0068】
ただし、図7の(B)に示す棒状部材41bにおいて、棒状部材41bの断面積が下方に位置する部分にて極端に大きい場合、ボート2の底部側に充填される粉末3の部分に断面積が極端に大きい棒状部材41bの部分が挿入されることになる。このとき、棒状部材41bを粉末3内から引き抜く際に、ボート2の底部側に充填される粉末3の一部分を表面部分側に持ち上げて、ボート2の上部に充填される粉末3の表面部分が噴火口状になることがある。このため、棒状部材41bの断面積が下方に位置する部分にて極端に大きくならないようにするのが好ましい。したがって、嵩密度調整部材41を粉末3内から引き抜いたときの状況や粉末の反応性を考慮して、棒状部材41a、41b、41cの断面形状を適宜決定する。
【0069】
図8の(A)(B)(C)に示すように、嵩密度調整部材41の形状が板状部材41d、41e、41fの場合、下方に位置づけられる一方端部は充填される粉末内に挿入される部分であり、上方の他方端部は固定部材42に支持される部分である。
【0070】
図8の(A)に示すように、板状部材41dの水平方向の断面積が板状部材41dの垂直方向の長さ方向に沿って下方の位置になるほど、だんだん小さくなっていてもよい。また、図8の(B)に示すように、板状部材41eの水平方向の断面積が板状部材41eの垂直方向の長さ方向に沿って下方の位置になるほど、だんだん小さくなっていて、かつ、板状部材41eの垂直方向の断面積が板状部材41eの水平方向の長さ方向に沿って右方の位置になるほど、だんだん小さくなっていてもよい。さらに、図8の(C)に示すように、板状部材41fの水平方向と垂直方向の断面積が、それぞれ、板状部材41fの垂直方向と水平方向の長さ方向に沿って等しくてもよい。
【0071】
また、図8の(D)(E)(F)に示すように、水平方向の断面が種々の形状を有する板状部材41g、41h、41i、41j、41kを用いてもよい。
【0072】
このように、板状部材41d、41e、41f、41g、41h、41i、41j、41kの垂直方向および/または水平方向の断面積は等しくても不均一であってもよい。
【0073】
ただし、板状部材において、板状部材の厚みが下方に位置する部分にて極端に大きい場合、ボート2の底部側に充填される粉末3の部分に厚みが極端に大きい板状部材の部分が挿入されることになる。このとき、板状部材を粉末3内から引き抜く際に、ボート2の底部側に充填される粉末3の一部分を表面部分側に持ち上げて、ボート2の上部に充填される粉末3の表面部分が盛り上がった形状になることがある。このため、板状部材の厚みが下方に位置する部分にて極端に大きくならないようにするのが好ましい。したがって、嵩密度調整部材41を粉末3内から引き抜いたときの状況や粉末の反応性を考慮して、板状部材41d、41e、41f、41g、41h、41i、41j、41kの断面形状を適宜決定する。
【0074】
図9に示すように、嵩密度調整部材41の形状が線状部材41l〜41tの場合、少なくとも線状部材41l〜41tの一つの端部は固定部材42に支持される。線状部材41l〜41tの断面形状は円、楕円、または、多角形のうちの1種以上からなり、かつ、線状部材41l〜41tの断面積は線状部材41l〜41tの長さ方向に沿って等しくても不均一であってもよい。図9の(A)〜(E)に示すように線状部材41l〜41pは、U字形状でもよく、図9の(F)〜(I)に示すようにL字形状であってもよい。また、線状部材は、渦巻状や蛇行したような曲線形状であってもよい。
【0075】
ただし、線状部材を粉末3内から引き抜く際に、線状部材の表面上に粉末3が載らないような形状が好ましい。線状部材の表面上に粉末3を載せた状況が発生すると、周囲へ粉末3が飛散する原因となり、また歩留まりの上でも好ましくない。
【0076】
なお、処理用容器として、一般的なボート2の形状の例を図10に示す。図10に示すように、ボート2は、ほぼ矩形状の開口部を有する直方体形状のものが一般的に用いられる。ボート2には、雰囲気ガスと粉末3とを接触しやすくするために雰囲気ガスの導入口として側面に開口部を設けてもよい。また、図6に示される工程(6)の後に、不純物混入防止のためにボート2の開口部を覆うように蓋を設置してもよい。
【0077】
以上のように行われる本発明の粉末充填方法では、図4〜図5に示される工程(4)に相当する第1の工程においては、振動により、空間占有部材としての嵩密度調整部材41が存在する箇所以外では、粉末3の嵩密度はほぼ均一になる。そして、図6に示される工程(6)に相当する第2の工程においては、空間占有部材としての嵩密度調整部材41が粉末3の内部から除去されると、嵩密度調整部材41が存在した箇所に粉末3の一部が移動する。このため、嵩密度調整部材41が存在した箇所とその箇所の近傍に充填される粉末3の嵩密度は、他の箇所に比べて相対的に低くなる。これにより、処理用容器としてのボート2に充填された粉末3の嵩密度を局所的に不均一にすることができる。
【0078】
このようにボート2に充填された粉末3の嵩密度を局所的に不均一にすることができるので、たとえば、雰囲気ガスが流入し難い箇所であるボート2の底部、中央部、端部等に充填された粉末3の嵩密度を相対的に低くすることにより、後工程で行われる雰囲気処理において粉末3と雰囲気ガスの接触性を良好にすることができる。したがって、目的とする材料粉末を製造するために出発材料としての粉末3の処理を所定の雰囲気にて行う際に、ボート2に充填された粉末3と雰囲気ガスとの接触性を良好にして、ボート2に充填された粉末3の反応をより均一に行うことが可能となる。
【0079】
また、この発明の粉末充填装置では、空間占有部材移動部としての嵩密度調整装置4のリニアアクチュエータ46によって、空間占有部材としての嵩密度調整部材41を処理用容器としてのボート2の内部に移動させて、ボート2内に収容された粉末3の内部に嵩密度調整部材41を存在させた状態で、振動付与部としての振動付与装置5の振動アクチュエータ52によって粉末3に振動を与えることができる。この振動により、嵩密度調整部材41が存在する箇所以外では、粉末3の嵩密度はほぼ均一になる。そして、振動付与装置5の振動アクチュエータ52による振動を停止した後、嵩密度調整装置4のリニアアクチュエータ46によって、嵩密度調整部材41をボート2の外部に移動させて、ボート2内に収容された粉末3の内部から嵩密度調整部材41を除去することができる。嵩密度調整部材41が粉末3の内部から除去されると、嵩密度調整部材41が存在した箇所に粉末3の一部が移動する。このため、嵩密度調整部材41が存在した箇所とその箇所の近傍に充填される粉末3の嵩密度は、他の箇所に比べて相対的に低くなる。これにより、ボート2に充填された粉末3の嵩密度を局所的に不均一にすることができる。
【0080】
このように本発明の粉末充填装置を用いることにより、ボート2に充填された粉末3の嵩密度を局所的に不均一にすることができるので、たとえば、雰囲気ガスが流入し難い箇所であるボート2の底部、中央部、端部等に充填された粉末3の嵩密度を相対的に低くすることにより、後工程で行われる雰囲気処理において粉末3と雰囲気ガスの接触性を良好にすることができる。したがって、目的とする材料粉末を製造するために出発材料としての粉末3の処理を所定の雰囲気にて行う際に、ボート2に充填された粉末3と雰囲気ガスとの接触性を良好にして、ボート2に充填された粉末3の反応をより均一に行うことが可能となる。
【実施例】
【0081】
以下で説明される実施例1〜5と比較例に従って雰囲気処理された粉末の各試料を作製した。
【0082】
(実施例1)
東邦金属株式会社製の水素化チタンを30μm以下の粒度になるようにボールミルで粉砕した粉末と、Fisher社製のSub Sieve Sizerにて測定されたFsss粒度が1μmの炭素粉末とに、直径が10mmのステンレス鋼製ボールを用いてボールミル法にて均一に混合されるように10時間混合・粉砕処理を施した。このようにして得られた出発材料とされる粉末は、走査電子顕微鏡写真で観察すると、各々の粒子およびそれらの凝集粒子の粒径は10μm以下であった。なお、炭素粉末と水素化チタン粉末の配合量は、化学式でTiC0.5N0.5になるように調整した。
【0083】
図10に示すように、内側寸法として幅が100mm、長さが150mm、高さが30mmの直方体形状の黒鉛製のボート2を準備した。
【0084】
次に、図1に示すように、水素化チタン粉末と炭素粉末の混合粉末200gを、ボート2の中央部の上方で高さ200mmの位置から、回転羽根による切り出しにて1秒間7gの速度でボート2に供給した。
【0085】
そして、嵩密度調整部材41として、直径が7mmの円柱状の棒状部材41cを28本、図11に示すように配置し、図5に示すように嵩密度調整部材41の先端部がボート2の内側底部から2mmだけ隔てた距離に位置付けられるように、図3に示すように、リニアアクチュエータ46を駆動させることにより、ボート2の上方から、嵩密度調整部材41を1mm/秒の下降速度にてボート2内へ降下させた。
【0086】
その後、図4に示すように、ボート設置台51に結合された振動アクチュエータ52(神鋼電機株式会社製の振動モータRV−072D)を矢印Vの方向に偏心回転駆動させることにより、ボート2内の粉末3に振動を与えた。振動条件は、振動周波数12Hz、時間10秒間とした。この振動により、図4に示すようにボート2内に山なり状に供給された粉末3は、図5に示すように充填厚さが等しくなるように移動し、かつ、嵩密度が増大した。
【0087】
そして、図5に示すように、振動が完全に停止したことを確認した後、図6に示すように、嵩密度調整部材41を矢印Qで示す方向に移動させて、ボート2内から上昇させて粉末3内から抜き出した。このときの上昇速度は1mm/秒とした。嵩密度調整部材41が存在した部分には、粉末3が流れ込み、円柱状の棒状部材41cの抜け穴として残らなかった。
【0088】
最後に、粉末3が充填されたボート2をバッチ型熱処理炉内に装入して、粉末3に雰囲気加熱処理を施した。加熱処理条件は、常温から最高温度1700℃まで7℃/分にて昇温した後、保持時間なしにて4時間かけて常温まで冷却した。雰囲気ガスである窒素ガスは、ボート2の長手方向の一方から供給し、他方へ1リットル/分で排出されるようにした。炉内圧力は、大気が炉内に入り込まないように0.11MPaになるようにした。得られた粉末の試料は、粉末全体がTiC0.5N0.5になるように反応していた。
【0089】
(実施例2)
実施例2では、嵩密度調整部材41として、最下部の直径が8mmの円錐台状の棒状部材41bを28本、振動停止後の粉末3の表面部位置における棒状部材41bの直径が5mmとなるように図12に示すように配置した以外は、実施例1と同様にして粉末の試料を作製した。
【0090】
(実施例3)
実施例3では、嵩密度調整部材41として、厚みが6mmの板状部材41fを8枚、図13に示すように配置した以外は、実施例1と同様にして粉末の試料を作製した。
【0091】
(実施例4)
実施例4では、嵩密度調整部材41として、最下部の厚みが8mmのテーパ状の板状部材41uを8枚、振動停止後の粉末3の表面部位置における板状部材41uの厚みが5mmとなるように図14に示すように配置した以外は、実施例1と同様にして粉末の試料を作製した。
【0092】
(実施例5)
実施例5では、嵩密度調整部材41として、断面が楕円の線状部材41vを8本、X−Y面(水平面)に沿って延びる各線状部材の断面の楕円の長軸がZ方向(鉛直方向)となるように図15に示すように配置した以外は、実施例1と同様にして粉末の試料を作製した。各線状部材の断面の楕円の長軸は8mm、短軸は5mmとした。
【0093】
(比較例)
比較例として、嵩密度調整部材を用いず、その他は実施例1と同様にしてボート2内に粉末3を充填した。粉末3が充填されたボート2をバッチ型熱処理炉内に装入して、粉末3に雰囲気加熱処理を施した。加熱処理条件は、常温から最高温度1700℃まで7℃/分にて昇温し、1700℃で30分間保持した後、4時間かけて常温まで冷却した。このように比較例では、実施例1〜5と異なる加熱処理条件を採用したのは、実施例1〜5と同様に1700℃にて保持時間なしとした場合、充填された粉末3の底部まで充分にN(窒素)を含有させることができず、ボート2内の粉末全体を所定の含有比率でNを含有したTiC0.5N0.5となるようにできなかったためである。
【0094】
以上のようにして作製された実施例1〜5と比較例の各試料の粉末の色調を観察した。実施例1〜5の粉末の観察結果を図16、比較例の粉末の観察結果を図17に模式的に示す。図16と図17において、箇所Iはグレー色、箇所IIは特に表面部に赤紫色またはオレンジ色が多く存在するグレー色、箇所IIIはグレー色に赤紫色やオレンジ色の部分が混じっており、また粒径が1mm以下の銀色粒が混ざっているところを示す。
【0095】
図16に示すように、実施例1〜5の試料では、ボート2内のいずれの位置でも色調はグレー色であった。これに対して、図17に示すように、比較例の試料では、グレー色以外の色調を有する部位があった。
【0096】
さらに、得られた各試料の粉末の色調を目視にて観察した後、図16または図17に示す箇所Iと図17に示す箇所IIIのうち箇所IVc(底部)の粉末部分を採取し、走査電子顕微鏡にて粒子の状態を観察した。図18は、図16または図17の箇所Iの走査電子顕微鏡写真である。図19は、図17の箇所IVcの走査電子顕微鏡写真である。
【0097】
図18に示すように、実施例1〜5と比較例で得られた粉末において、色調がグレー色のみの箇所Iの粉末部分は、数μmの粒状体が凝集していた。一方、図19に示すように、銀色粒が混ざっていてグレー色に赤紫色やオレンジ色の部分が混じった色調を呈する箇所IVcの粉末部分は、粒子が数百μmサイズに焼結されたような状態となっていた。
【0098】
粉末全体が図18に示すような状態の実施例1〜5の粉末は、粉砕処理することによって粒子の凝集をほぐしやすい。しかし、図19に示すような状態の粉末部分が混ざった比較例の粉末は、粉砕し難く、広い粒度分布を有するものになりやすい。図19に示すような箇所の粉末部分では、粉末の嵩密度が高いため、個々の粒子が焼結されたようになったものと考えられる。このことから、比較例のような粉末は、粉砕するためには強力な外力を与える必要があり、粉砕機の構成部材からの不純物の混入もあり得る。したがって、比較例の粉末は、粉末の微粉化に要するコストや品質において、本発明の実施例1〜5の粉末より劣ることは明らかである。
【0099】
次に、実施例1〜5と比較例の加熱処理前のボート内粉末の平均嵩密度と、加熱処理後に得られたボート内粉末の色調の結果をまとめて表1に示す。なお、粉末の平均嵩密度は、次のようにして測定されて算出された。内側の平面寸法が幅100mm、長さ150mmであるボートの側壁面から内側に距離5mmだけ離れた平面領域、すなわち、90mmx140mmの平面領域において、幅方向15mm間隔、長さ方向20mm間隔の碁盤目を想定し、その碁盤目の各交点の位置を充填粉末の深さ(充填厚さ)の測定位置とした。この各測定位置にて、水平に設置されたボートの上方に高さ方向の基準高さを設定し、この基準高さ位置とボートの内側底面との間の垂直方向の第1の距離と、上記の基準高さ位置と充填粉末の最表面との間の垂直方向の第2の距離を測定し、第1と第2の距離の差を求めた。なお、第1と第2の距離の測定はノギスを用いて行った。このようにして求められた差の値を、碁盤目の各交点の位置における充填粉末の深さ(充填厚さ)とした。得られた充填厚さの平均値とボートの内側の平面寸法と供給粉末質量とから、平均嵩密度を算出した。
【0100】
【表1】
【0101】
表1から、実施例1〜5では、比較例に比べて、加熱処理前の粉末の平均嵩密度は低いことがわかる。実施例1〜5では、嵩密度調整部材41が存在していた箇所では1.02g/cm3よりも低い嵩密度を示し、それ以外の箇所では1.02g/cm3よりも高い嵩密度を示し、嵩密度が不均一になっており、平均嵩密度が1.02g/cm3であった。これに対して、比較例では、嵩密度調整部材を用いなかったので、1.02g/cm3よりも高い平均嵩密度を示した。
【0102】
また、実施例1と比較例で得られた試料の粉末において、図17に示す箇所IVa(表層部)、箇所IVb(中層部)、箇所IVc(底部)で採取した粉末部分のN(窒素)含有量を測定した。その測定結果を表2に示す。なお、N含有量は、次のようにして測定されて算出された。N含有量は、LECO社製の酸素・窒素定量装置(TC−600)を用いて測定した。N含有量の測定方法は熱伝導度法による。この際、実施例1と比較例で得られた試料の粉末において上記の各箇所から、40mgの粉末部分を採取し、各々をNi製のカプセル中に装入し、さらにカーボン製のルツボに入れた状態でN含有量を測定した。
【0103】
【表2】
【0104】
表2から、比較例では、ボート内で粉末の深さ方向においてN含有量の差が大きいが、実施例1では、ボート内で粉末の深さ方向においてN含有量の差が小さいことがわかる。
【0105】
嵩密度調整部材を用いないでボートに粉末を充填した比較例の場合に、ボート内で粉末の深さ方向においてN含有量の差が大きくなるのは、出発原料の粉末の充填高さを調整する際に、振動が与えられた粉末は円を描くように外方向に、すなわち、ボートの内側面へと移動するので、長時間振動を行った場合、粉末の表面がすり鉢状になることからもわかるように、ボートの内周側面近傍、特にボートの内底部に位置する粉末部分がより密に充填するようになることに起因すると考えられる。これにより、比較例では、雰囲気ガスである窒素が、ボートの内底部に位置する粉末と容易に接することができないので、ボート内で粉末の深さ方向においてN含有量の差が大きくなり、底部に位置する粉末部分のN含有量がかなり低くなる。一方、実施例1では、嵩密度調整部材を用いてボートに粉末を充填するので、ボートの内底部に位置する粉末も雰囲気ガスである窒素と容易に接することができるので、ボート内で粉末の深さ方向においてN含有量の差が小さく、底部に位置する粉末部分のN含有量が、表層部や中層部に位置する粉末部分のN含有量と同程度になる。
【0106】
以上の実施例の結果から、本発明によれば、目的とする材料粉末を製造するために出発材料としての粉末3の熱処理を所定の雰囲気にて行う際に、従来に比べて、ボート2に充填された粉末3と雰囲気ガスとの接触性を良好にして、ボート2に充填された粉末3の反応をより均一に行うことが可能となることがわかった。
【0107】
今回開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものであることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0108】
この発明の粉末充填方法と粉末充填装置は、切削工具等の材料粉末、たとえば、切削工具用材料としてのサーメットを製造するためにTiCN粉末の出発材料粉末の熱処理を所定の雰囲気にて行う際に用いられる。
【符号の説明】
【0109】
2:ボート、3:粉末、4:嵩密度調整装置、5:振動付与装置、41:嵩密度調整部材、46:リニアアクチュエータ、52:振動アクチュエータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雰囲気処理される粉末を処理用容器に充填する粉末充填方法であって、
粉末内部の空間を占有する空間占有部材を、処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させた状態で粉末に振動を与える第1の工程と、
前記振動を停止した後、前記空間占有部材を粉末の内部から除去する第2の工程と、
を備えた、粉末充填方法。
【請求項2】
前記第1の工程は、前記処理用容器内に粉末を供給した後、前記処理用容器内に供給された粉末の表面から内部に向かって前記空間占有部材を挿入することによって、前記空間占有部材を、前記処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させる工程を含む、請求項1に記載の粉末充填方法。
【請求項3】
前記第1の工程は、前記処理用容器内の開口部から底部に向かって前記空間占有部材を挿入した後、前記処理用容器内に粉末を供給することによって、前記空間占有部材を、前記処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させる工程を含む、請求項1に記載の粉末充填方法。
【請求項4】
前記空間占有部材は棒状部材であり、前記第1の工程では、前記棒状部材の一方端部を、前記処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させた状態で粉末に振動を与える、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の粉末充填方法。
【請求項5】
前記空間占有部材は板状部材であり、前記第1の工程では、前記板状部材の一方端部を、前記処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させた状態で粉末に振動を与える、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の粉末充填方法。
【請求項6】
前記空間占有部材は一方端部が曲がった線状部材であり、前記第1の工程では、前記線状部材の一方端部を、前記処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させた状態で粉末に振動を与える、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の粉末充填方法。
【請求項7】
雰囲気処理される粉末を処理用容器に充填する粉末充填装置であって、
粉末を収容する処理用容器と、
粉末内部の空間を占有する空間占有部材を前記処理用容器の外部と内部との間で移動させる空間占有部材移動部と、
前記処理用容器に振動を与える振動付与部と、
を備えた、粉末充填装置。
【請求項8】
前記空間占有部材は棒状部材であり、前記空間占有部材移動部は、前記棒状部材の一方端部を前記処理用容器の外部と内部との間で移動させる、請求項7に記載の粉末充填装置。
【請求項9】
前記空間占有部材は板状部材であり、前記空間占有部材移動部は、前記板状部材の一方端部を前記処理用容器の外部と内部との間で移動させる、請求項7に記載の粉末充填装置。
【請求項10】
前記空間占有部材は一方端部が曲がった線状部材であり、前記空間占有部材移動部は、前記線状部材の一方端部を前記処理用容器の外部と内部との間で移動させる、請求項7に記載の粉末充填装置。
【請求項1】
雰囲気処理される粉末を処理用容器に充填する粉末充填方法であって、
粉末内部の空間を占有する空間占有部材を、処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させた状態で粉末に振動を与える第1の工程と、
前記振動を停止した後、前記空間占有部材を粉末の内部から除去する第2の工程と、
を備えた、粉末充填方法。
【請求項2】
前記第1の工程は、前記処理用容器内に粉末を供給した後、前記処理用容器内に供給された粉末の表面から内部に向かって前記空間占有部材を挿入することによって、前記空間占有部材を、前記処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させる工程を含む、請求項1に記載の粉末充填方法。
【請求項3】
前記第1の工程は、前記処理用容器内の開口部から底部に向かって前記空間占有部材を挿入した後、前記処理用容器内に粉末を供給することによって、前記空間占有部材を、前記処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させる工程を含む、請求項1に記載の粉末充填方法。
【請求項4】
前記空間占有部材は棒状部材であり、前記第1の工程では、前記棒状部材の一方端部を、前記処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させた状態で粉末に振動を与える、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の粉末充填方法。
【請求項5】
前記空間占有部材は板状部材であり、前記第1の工程では、前記板状部材の一方端部を、前記処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させた状態で粉末に振動を与える、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の粉末充填方法。
【請求項6】
前記空間占有部材は一方端部が曲がった線状部材であり、前記第1の工程では、前記線状部材の一方端部を、前記処理用容器内に供給された粉末の内部に存在させた状態で粉末に振動を与える、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の粉末充填方法。
【請求項7】
雰囲気処理される粉末を処理用容器に充填する粉末充填装置であって、
粉末を収容する処理用容器と、
粉末内部の空間を占有する空間占有部材を前記処理用容器の外部と内部との間で移動させる空間占有部材移動部と、
前記処理用容器に振動を与える振動付与部と、
を備えた、粉末充填装置。
【請求項8】
前記空間占有部材は棒状部材であり、前記空間占有部材移動部は、前記棒状部材の一方端部を前記処理用容器の外部と内部との間で移動させる、請求項7に記載の粉末充填装置。
【請求項9】
前記空間占有部材は板状部材であり、前記空間占有部材移動部は、前記板状部材の一方端部を前記処理用容器の外部と内部との間で移動させる、請求項7に記載の粉末充填装置。
【請求項10】
前記空間占有部材は一方端部が曲がった線状部材であり、前記空間占有部材移動部は、前記線状部材の一方端部を前記処理用容器の外部と内部との間で移動させる、請求項7に記載の粉末充填装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−228836(P2010−228836A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76151(P2009−76151)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000220103)株式会社アライドマテリアル (192)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000220103)株式会社アライドマテリアル (192)
【Fターム(参考)】
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