説明

粒子の動的パラメータを測定するための方法およびデバイス

本発明は、ディジタル画像の検出領域に対する粒子の揺らぎに時間相関分析を適用する段階を含む、粒子の動的パラメータを測定するための方法およびデバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子の並進速さおよび回転速さなど、粒子、たとえば精子の動的パラメータを測定するための方法およびデバイスに関する。さらに、粒子の数を評価することも可能である。
【背景技術】
【0002】
本発明は、溶液中の粒子、詳細には生物学的エンティティ、たとえば精子を含む細胞および細胞小器官の動力学/移動度に関連するパラメータを確定するために使用される。精液中の精子の動的パラメータおよび数の分析は、精子を特徴付けるための重要な分析であり、男性の生殖能力を評価するための重要なツールを構成している。
【0003】
並進速さ(速度)は、検出面積または体積内における粒子の1つまたは複数の方向の有向運動、つまり経路長が観察長より著しく長い運動を意味している。この並進速さに対して、たとえば粒子のあらゆる方向の確率的運動、つまり経路長が観察長より著しく短い運動を意味するブラウン運動が存在している。
【0004】
米国特許第5116125号に、前記アナライザが動的レーザ光散乱に基づく、精子の運動性を決定するための方法が開示されている。
【0005】
精子の運動性を測定するためのもう1つの方法は、ビデオカメラを使用して精子をモニタし、かつ、コンピュータによる個々の軌道分析を使用して精子の運動を分析することである。このタイプのコンピュータ支援分析により、手動試験と比較すると、どちらかと言えばより速く適性パラメータが生成されるが、この分析にはいくつかの欠点があり、特に、精子の濃度が高くなると、得られるパラメータに対する変化が著しく大きくなる。
【特許文献1】米国特許第5116125号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、溶液中の粒子の動的パラメータの品質が実質的に改善される方法およびデバイスを提供することである。また、粒子濃度を正確に確定することも可能である。本発明は、低濃度の粒子ならびに高濃度の粒子を含んだ溶液中の粒子の動的パラメータの測定にとりわけ有利である。
【0007】
他の利点については、以下の本文より明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、特許請求の範囲に定義されている、溶液中のたとえば精子などの粒子の動的パラメータおよび濃度を測定するための方法およびデバイスが提供される。
【0009】
より詳細には、本発明は、粒子の濃度および動的パラメータまたは移動度パラメータを測定するための方法であって、粒子によって生成される検出フィールド内の事象を検出する段階と、これらの事象の揺らぎに基づいて時間相関関数を計算する段階とを含む方法に関している。他の方法には、ディジタル画像の検出領域に対する粒子の一時的な揺らぎに相関分析を適用する段階が含まれている。本発明は、さらに、粒子の動的パラメータを測定するための方法であって、ディジタル画像を生成することができる検出器によって粒子を検出する段階と、ディジタル画像の検出領域に対する粒子の一時的な揺らぎに基づいて相関分析を適用する段階とを含む方法に関している。本発明によるさらに他の方法は、粒子の動的パラメータを測定するための方法であって、溶液中の粒子、光源、ディジタル画像を生成することができる検出器および計算手段を提供する段階と、相関分析を適用する段階、つまりディジタル画像の検出領域に対する粒子の一時的な揺らぎに基づいて、1つまたは複数の時間相関関数を計算する段階とを含む方法に関している。
【0010】
また、本発明には、粒子の動的パラメータまたは移動度パラメータを測定するためのデバイスであって、粒子を含んだ溶液を含有した試料コンパートメントと、光源と、少なくとも1つの検出フィールドを備えた位置感応検出器と、検出器からの信号を処理するための計算手段とを備え、粒子によって生成される事象が検出フィールド内で検出され、かつ、時間分解相関関数が計算されるデバイスが包含されている。他の実施形態では、デバイスは、粒子溶液を含有した試料コンパートメントと、光源と、イメージセンサと、センサからの信号を処理するための計算手段とを備えており、イメージセンサによって生成されるディジタル画像上で粒子が検出され、かつ、相関分析が適用される(つまりディジタル画像の検出領域に対する粒子の一時的な揺らぎに基づいて(時間)相関関数が計算される)。溶液中または他の物理環境中の粒子の動的パラメータの測定とは別に、本発明による方法およびデバイスを使用して、存在している粒子の数、延いては、たとえば試料溶液中の濃度を計算することも可能である。
【0011】
本発明によれば、重要な粒子を表す事象の揺らぎを検出フィールドによって検出することができる。ディジタル動画像の粒子の一時的な揺らぎは、1つまたは複数の相関関数を生成する相関分析を使用して分析されることが好ましく、前記1つまたは複数の相関関数によって、粒子の動的パラメータに関する情報、たとえば拡散時間、並進速さ、回転周波数などの情報、および体積要素中の粒子の数すなわち濃度に関する情報が得られる。上記動的パラメータを使用して、粒子の移動度を評価することができる。本発明によれば、溶液中に存在している、サイズが分子のレベルから巨視的レベルに及ぶあらゆる粒子またはエンティティを評価することができる。粒子が精子を表している場合、運動性と呼ばれている遊泳速さ、回転周波数および精子濃度などの多くの重要な動的パラメータを計算することができる。
【0012】
本発明の新規な特徴は、ディジタル動画像に存在している粒子の揺らぎに相関分析が適用されることである。重要な粒子を含んだ溶液のディジタル動画像が、とりわけ、ディジタル画像を生成することができる適切な検出器、たとえば計算手段に接続されたイメージセンサなどを使用して生成される。ディジタル画像は、計算手段によって、粒子の数すなわち粒子の濃度の適切な時間依存(一時的)揺らぎを検出領域の境界を越えて生成することができる複数の測定/検出領域に適切に分割することができる。したがって検出領域内の粒子の数は、平均の数を中心にして無作為に変化する。ディジタル画像の検出領域に対する粒子の数の揺らぎが、粒子を表す揺らぎ信号の相関関数によって分析される。したがって、揺らぎは、動的パラメータおよび粒子の数を生成するための1つまたは複数の(時間)相関関数を計算するための基本である。粒子は、ディジタル画像内で常に移動するが、この移動は、検出領域の境界を跨ぐ出入り運動である。本発明によるイメージセンサは、移動する粒子のディジタルイメージを生成することができるセンサである。このディジタルイメージは、像平面に分解能を有している。つまりこのディジタルイメージは、x軸およびy軸に空間分解能を有している。イメージセンサは、時間分解能を有する一連のディジタルイメージ(フレーム)を生成するため、動画像が得られる。この動画像が、相関分析を適用することによってさらに分析される。本発明によれば、適切な記憶手段に記憶されているディジタル動画像にこの方法を適用することも可能であるが、ディジタルイメージ(ディジタル動画像)の生成と同時に、溶液中の粒子の動的パラメータを評価することができる。
【0013】
イメージセンサによって生成されるディジタル画像上の情報は、とりわけ、粒子を透過する光、粒子で散乱する光、あるいは粒子から放出される光に由来している。通常、重要な粒子とリンクしていない事象は、任意のタイプのディジタル画像解析を使用して適切にフィルタ除去される。適切な画像解析ツールを適用して、イメージセンサからの望ましくない情報が除去されると、粒子の登録済み揺らぎに基づく時間相関関数が計算される。ディジタルイメージに複数の検出領域が存在している場合、複数の時間相関関数を同時に計算することができ、1つの同じ検出領域から個々の相関関数が生成される。
【0014】
ディジタル画像の検出領域内の事象および/または粒子の数の揺らぎは、特定の時間インターバルの間、複数の時間(τ1、τ2、τ3等)でモニタされる。得られる時間相関関数は、基本的には、時間スケール上の事象の自己相似を記述している関数であり、したがって検出される粒子は一時的に相関する。単純化すると、時間相関関数G'(τ)は、
G'(τ)=<I(t)*I(t+τ)>
で与えられる。角括弧<>は、時間平均を表しており、場合によっては同じく複数の検出領域にわたる平均を表している。Iは、検出される粒子によって生成される信号を表している。
【0015】
相関関数が計算されると、τ=ゼロにおける相関関数の値から、検出領域に存在している粒子の数の逆数である濃度を引き出すことができる。
【0016】
光学エレメントが、物体平面つまり試料仕切り(コンパートメント)と像平面(イメージセンサの平面)の間の光ビーム中に配置されている場合、ディジタル画像は、溶液の面積要素内に位置している粒子だけでなく、焦点が合っているすべての粒子を表すことができる。したがって、ディジタル画像によって、とりわけ1つまたは複数の光学エレメントの焦点深度(フィールドの深さ)によって与えられる、試料の体積要素に関する情報が得られる。
【0017】
一般項では、平均二乗強度<I2>によって正規化された時間相関関数G'(τ)は、G(τ)=G'(τ)/<I 2>である、
G(τ)=1+1/N[f(移動度)]
で与えられる濃度および移動度に関連している。
【0018】
上の式では、振幅項1/Nは、並進運動ならびに回転運動を記述している体積要素当たりの粒子の数Nおよび関数f(移動度)の逆数で決まる。ゆらぎ理論によって明らかなように、揺らぎは、平均粒子数が減少すると大きくなる。
【0019】
関連する時間フレーム内におけるディジタル画像内の事象および/または粒子の揺らぎは、正確な時間相関関数を計算することができる大きさでなければならない。したがって、ディジタル画像の1つまたは複数の検出領域は、検出領域の境界を越える適切な揺らぎが達成される寸法にしなければならない。通常、揺らぎが大きいほど、より良好な時間相関関数が生成される。ディジタル動画像は、複数の検出領域に適切に分割される。これらの検出領域は、すべての検出領域を全く同じサイズおよび形状にすることも、あるいはサイズおよび形状を変えることも可能である。
【0020】
ディジタル画像が計算手段によって複数の、好ましくは10個以上、たとえば100個の検出領域に分割され、個々の領域がそれぞれイメージセンサの複数の画素エレメントを表していると仮定する。時間インターバルの間、複数の時間τ1、τ2等で(つまり時間τ1、τ2等におけるイメージフレーム)、検出領域A1からの重要な粒子を表す強度I1、I2等を使用して、領域A1に対する相関関数G1が計算される。それと同時に、G2からG100までの他の99個の相関関数が計算される。複数の相関関数を有することにより、平均相関関数を容易に確定することができる。
【0021】
ディジタル画像は、ディジタル画像を生成することができる検出器、たとえばイメージセンサなどによって生成されることが好ましい。本発明には、ディジタル出力を生成することができ、そのディジタル出力を使用して、ディジタル出力にとりわけ相関分析を適用することによって移動する粒子の動的パラメータを引き出すことができる任意のセンサ/検出器が適している。画像は、アナログ形式で捕獲し、かつ、記憶した後、ディジタル形式に変換することができる。このディジタル形式の画像が相関分析を使用して処理される。ディジタル画像は、多数の時間分解イメージつまりイメージフレームによって適切に得られたディジタル動画像を意味している。イメージセンサは、イメージを速やかに捕獲する能力、いつでもコンピュータ分析することができるディジタルイメージを生成する能力、一時的な空間分解能および全スペクトルに対する高い感度を有する能力によって特性化される。適切なイメージセンサは、固体イメージセンサ/検出器およびビジコン管検出器カメラがその実例であるいわゆる管-管タイプの検出器である。固体タイプのイメージセンサであることがとりわけ好ましい。固体イメージセンサは、フォトサイトと呼ばれている、多数の感光性ダイオードを備えたシリコンチップである。シャッタが開く瞬間に、個々の画素が、電荷を蓄積することによって前記画素に当たる光の強度または輝度を記録する。ディジタル画像の時間分解イメージには、一般的には数ミクロンのサイズの極めて多数の画像素子すなわち画素が含まれており、個々の画素がイメージセンサのフォトサイトに対応している。したがって、イメージの解像度は、イメージセンサ上のフォトサイトの数でほぼ決まる。本発明の場合、イメージセンサの解像度は重要な要素ではなく、約1,000から最大約2,000万までの広い範囲にわたって変化してもよい。イメージセンサは、解像度が高いほど有利である。
【0022】
最も一般的な固体イメージセンサは、電荷結合デバイス(CCD)および相補性金属酸化膜半導体検出器(CMOS)である。いずれの等級の固体イメージセンサも、光子を捕獲し、かつ、捕獲した光子を電子に変換するように設計されたシリコン半導体である。CCDおよびCMOSイメージセンサは、基本設計に関しては類似しているが、センサからフォトサイトの電荷(電子)を引き出す方法に関しては異なっている。高い感度が必要である場合、CMOSアバランシェフォトダイオードイメージセンサを使用することができる。
【0023】
固体イメージセンサ、たとえばシリコンフォトダイオードは、約200nmから最大約1200nmまでの広いスペクトル範囲の光に敏感である。
【0024】
ディジタルイメージの解像度は、基本的にはイメージセンサの解像度によって決まるため、イメージセンサの個々の画素は、ディジタルイメージ内の1つの画素を表している。しかしながら、解像度は、ディジタルイメージに画素をソフトウェア追加することによって改善することも可能である。光学手段、たとえば対物レンズおよび接眼レンズを備えたレンズシステムなどの1つまたは複数の光学エレメントを導入することにより、溶液中の粒子を拡大することができる。したがって像平面(イメージセンサの平面)の粒子が、物体平面に位置している物理粒子に対して拡大される。しかしながら、像平面の粒子を物体平面の粒子より小さくする特性を光学手段に持たせることも可能である。粒子がイメージセンサの総面積と同様の投影面積を有している場合、このような構造を考慮することができる。ディジタル画像/イメージの最小検出領域は、イメージセンサの個々の画素エレメントを表すイメージの面積によって決まり、原理的にはすべての画素エレメントを備えた領域までである。通常、ディジタル画像の1つまたは複数の検出領域のサイズ/形状は、ディジタル画像内の重要な粒子の投影面積より大きい。試料内で分析される値は、とりわけ適用される光学手段で決まる。イメージセンサと整合する波長を有する光を透過させ、散乱させ、あるいは放出させる光源を有する、対物レンズおよび投影レンズを備えた複合顕微鏡などの顕微鏡は、光学手段として適している。物体平面と像平面(イメージセンサ)の間の光路内に光学手段を有している場合、試料内で分析される値は、原理的には対物レンズおよびその倍率で決まる。対物レンズおよびその倍率は、いずれも、光路に対して半径方向の体積を制限している。また、原理的には、光学手段の焦点深度によって測定体積が軸方向に制限されている。
【0025】
光源は、電磁放射のエネルギーが分析すべき粒子に重大な影響を及ぼさない限り、また、イメージセンサによって検出することができる限り、任意の波長の光源を使用することができる。光は、可視光などの広範囲にわたる波長、たとえば約200nmから最大約1200nmまでの波長を有することができ、あるいは単色光までの狭い範囲の波長を有することができる。別法としては、光源がより広い範囲の波長を有している場合、光源が単色光を放出するにせよ、あるいは狭い波長を有する光を放出するにせよ、適切なフィルタつまり単色フィルタが適用される。また、好ましいことには、コヒーレント光、好都合には単色コヒーレント光を生成する光源を使用することも可能である。コヒーレント光源の例は、レーザ光源である。適切な光源は、とりわけ、キセノン、高圧および低圧の水銀、タングステン、ハロゲン光源、青色ダイオードなどの発光ダイオード(LED)、レーザおよびレーザダイオードである。特定のタイプの運動(回転運動)を分析する場合、光が偏光されていることが有利である。本発明の場合、特定のタイプの照明を選択することは重要ではなく、したがって、正確な時間相関関数を生成することができる限り、任意のタイプの照明を適用することができる。
【0026】
光学手段として顕微鏡を使用する場合、適切な照明技法の例には、それらに限定されないが、ケーラー照明法、位相差照明法、微分干渉差照明法、暗視野照明法、反射(散乱)および発光(蛍光)照明法、ホフマン変調差照明法、ラインベルク照明法がある。
【0027】
粒子からの発光、たとえば蛍光をイメージセンサによって捕獲する場合、物体平面と像平面の間の光路内の光学手段は、通常、励起光と発光を分離するために、顕微鏡の他に、追加フィルタを備えるように適合される。蛍光顕微鏡に光が入射すると、対物レンズを介して試料が励起光で照射される。光は、波長に応じて、対物レンズとイメージセンサの間の光路に置かれた二色性ビームスプリッタを透過するか、あるいは二色性ビームスプリッタで反射する。通常、励起のために使用される光源はレーザである。重要な蛍光粒子を励起することができる、たとえばアルゴンレーザまたはアルゴンクリプトンレーザ、単線He-Neレーザ、レーザダイオードなどを始めとする任意のレーザを使用することができる。より大きい体積要素の励起が必要である場合、水銀高圧ランプまたはハロゲンランプのような非コヒーレント光源を使用することも可能である。蛍光を検出する場合、有利な信号対雑音比を有していることが好ましい。焦点外れの蛍光はフレアとして出現し、信号を著しく小さくする。したがって、原理的には半径方向の対物レンズの開口およびその倍率で決まる試料内の測定体積も、同じく軸方向に制限されている。体積のこの軸方向の制限は、物体平面と像平面に対して共役をなしている開口(ピンホール)を適用することによって得られることが好ましい。しかしながら、本質的に個々のフォトサイト(画素)からなっているイメージセンサは、検出器が物体平面に対して共役をなしている像平面に局所化される場合、開口および検出器としても機能することができる。分析される粒子が小さく、分子量が100 000メガダルトン未満である場合、入射エピイルミネセント(落射照明)蛍光顕微鏡が好ましい。このような微小粒子の例は、小胞または細胞小器官などの生体分子である。また、体積要素は、約10-16リットルから最大約10-10リットルまで、好ましくは約10-15リットルから最大約10-12リットルまでの適切な体積を有している。これらの微小測定体積を得るためには、対物レンズの開口数は、約0.7を超えていることが適切であり、1.0を超えていることがより好ましい。
【0028】
また、蛍光を測定する場合、蛍光強度揺らぎ分析を使用して、受精過程に重要である表面タンパク質などの特定の遺伝子生成物の発現に関連する特定の特性、および/または他の重要な機能特性を計算することができる。さらに、総精子数との関係での精子の割合ならびに固有発現レベル(精子毎分子で表される)を測定することができる。同様に、核酸含有量を分析することさえ可能である。
【0029】
原始光源は、場合によっては、ビームの経路に回折光学エレメントを配置することによって得られる複数の光源に分割されることが好ましい。個々のビーム経路の数は、ディジタル画像内の等しい数の検出領域によって整合していることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
試料容器は、密閉型であれ、開放型であれ、粒子溶液の特性が時間によって著しく変化しない限り、広範囲にわたる様々な形状を持たせることができる。試料保持手段は、温度を特定のレベルに維持するための手段を備えていることが好ましい。生物学的システム、たとえば精子を分析する場合、溶液を所定の温度に維持することが重要である。試料容器の光路の方向のサイズは、光学手段が試料容器とイメージセンサの間の光路内に位置している場合、光学手段の焦点深度に等しいか、あるいはそれより小さいことが好ましい。
【0031】
本発明によるデバイスは、とりわけ、粒子から放出される蛍光などの光を捕獲する場合、ディジタル画像を生成することができる複数の検出器を有することができる(たとえばCCDタイプまたはCMOSタイプのセンサなどの異なるタイプの検出器を有することができる)。好都合には、第2の検出器は、短い応答時間で現象を捕獲するように適合されており、たとえばアバランシェフォトダイオード(APD)検出器、たとえばCMOS APD検出器などの検出器は、高い感度を有している。複数の検出器を有することにより、少なくとも1つの他のビームスプリッタがビームの経路に配置される(図3)。
【0032】
回折光学手段を使用することにより、光源を、複数の測定体積を生成する複数の光源に分割することができる。好都合には、回折光学エレメントによって生成される光源の数に対応する多数の測定フィールドを有するイメージセンサを適用することにより、個々の体積要素に存在している粒子の動的パラメータを計算することができる。適切な位置感応検出器には、上で言及した位置感応検出器のうちの任意の検出器を使用することができる。回折光学エレメントは、好都合には、たとえば図4に示すように、光源とビームスプリッタの間に配置される。
【0033】
本発明によれば、精子または精液を測定することができる。精子の適性は、遊泳速さおよび回転周波数で与えられ、精子の数は、τ=ゼロにおける相関関数の振幅で与えられるため、同じく濃度を計算することも可能である。精子の総合濃度には、死んだ精子または不動精子も含まれており、機械またはコンピュータのいずれかによって検出フィールドを移動させることによってそれらを検出システムに対して可動性にすることにより、検出フィールド内のこれらの精子の数を測定することも可能である。また、イメージセンサを使用することにより、同じく精子の視覚画像が生成される。また、蛍光染料共役マーカまたは染料共役マーカ、たとえば精子の特定の特性に対する特異性を有する抗体、たとえばDNA、表面ベース受容体、精子の頭部、中間部または尾部に関連するタンパク質によって精子にラベルを付けることも可能である。蛍光による精子のラベリングは、通常、蛍光マーカ、たとえば当業者に知られている抗体を精子に結合することによって実行される。適切な蛍光染料は、可視スペクトルつまり350nmから750nmまでの間で最大の吸収作用を有する蛍光染料であり、ローダミングリーン、TMR、ローダミンBおよび6Gなどのローダミン、Cy2、Cy3およびCy5などのシアニン、テキサスレッドはその実例である。遺伝子物質であるDNAなどの核酸を目で見えるようにする(特定の発光を生成する)ためには、とりわけDNAと相互作用するエチジウムブロマイド、プロピジウムヨウ化物、アクリジン染料などの染料、および他の核特化分子(たとえば遺伝子プローブ)を使用することができる。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、デバイスは、位相差複合顕微鏡およびCCD検出器またはCMOS検出器などのイメージセンサを備えている。精子/精液を測定する場合、顕微鏡の総合倍率(物体対中間画像)は、約10倍から約30倍までの範囲であることが適切である。したがって約3μmである精子の頭部は、中間像平面では、30μmから90μmまでのサイズを有することになる。イメージセンサは、中間画像の平面に配置されることが適切である。イメージセンサのディジタルイメージは、複数の個別検出領域に分割される。検出領域は、ディジタルイメージ内の粒子のサイズに等しいか、あるいはそれより大きいサイズを有することができることが好ましく、相関分析を使用して正確な動的パラメータを計算するためには、粒子の数の十分な揺らぎが得られる面積までのサイズであることが適切である。正確な相関関数を計算することができる限り、検出領域の形状は重要ではない。検出領域は、任意の形状を有することができ、たとえば円形または長方形の形状を有することができる。イメージセンサは、さらに、ビデオ画像を分析するための適切なソフトウェアおよびハードウェアを備えた計算手段に接続されている。コンピュータ画面を使用して試料のディジタル動画像が生成される。適切な画像解析を適用することにより、相関関数を計算するための基礎が関連する粒子の揺らぎのみによって形成されるよう、雑音、たとえば関係のない粒子の異なるカテゴリなどの背景をフィルタ除去することができる。また、イメージセンサによる粒子の登録および相関関数の計算は、本質的に同時に実行される。
【0035】
デバイスの概要を示す図1は、本発明の好ましい実施形態を実例で示したもので、デバイスは、光源(1)、粒子の溶液を含有した試料仕切り(3)、顕微鏡などの光学手段(5)およびイメージセンサ(7)を備えている。光ビームは、適切なレンズ(2)を使用して試料仕切りに集束させることが好ましい。光源には、上で言及したタイプのうちの任意の光源を使用することができる。光学手段(5)は、焦点(4)が試料仕切り(3)内に位置するよう、試料仕切りから一定の距離を隔てて適切に配置されている。イメージセンサは、CCDアレイタイプまたはCMOSアレイタイプのいずれかであることが適切であり、対物レンズの焦点に対して共役である像平面(6)に配置されていることが好ましい。イメージセンサを像平面に配置して(図1)、ディジタル画像内の粒子の揺らぎが分析される。図1には示されていないが、デバイスは、パーソナルコンピュータであることが適切である、信号を処理するための手段を備えている。
【0036】
本発明の他の実施形態(図2)によれば、デバイスは、光源(10)、粒子の溶液を含有した試料仕切り(8)、光学手段(9)、ビームスプリッタ(11)、発光(遮断)フィルタ(12)および検出器(14)を備えている。光ビームは、ビームスプリッタで90度反射し、焦点が試料溶液内に位置するように光学手段(9)によって集束する。ビームスプリッタには、反射光または励起光を光源から放出される光から十分に分離することができる任意の光学手段を使用することができ、たとえば波長依存(二色性)ビームスプリッタなどを使用することができる。蛍光を使用する場合の一般的な光学手段の1つは、二色性ミラーである。通常、信号対雑音比を改善するために、1つまたは複数の遮断フィルタ(12)が、ビームスプリッタとピンホールまたはイメージセンサの間のビーム経路に配置されている。測定される粒子は、非蛍光性であっても蛍光性であってもよい。別法としては、溶液は、蛍光性粒子および非蛍光性粒子の両方を含むことも可能である。本発明のこの実施形態は、後方散乱測定および/または蛍光測定のいずれにも使用することができる。
【0037】
本発明のさらに他の実施形態(図3)によれば、デバイスは、第1のビームスプリッタ(18)および第2のビームスプリッタ(19)の2つのビームスプリッタ、および2つのイメージセンサ(20、22)を備えている。これらの2つのイメージセンサおよび2つのビームスプリッタは別として、このレイアウトは、図2に示すデバイスのレイアウトと類似しており、さらに、試料仕切り(15)および光学手段(16)を備えている。センサは、対物レンズ(21、23)の焦点に対して共役である像平面に配置することができる。別法としては、開口(ピンホール)が像平面に配置される。センサ(20、22)のうちの一方はイメージセンサであり、たとえばCCD検出器またはCMOS検出器である。もう一方の検出器は、高速時間応答を有する検出器であってもよく、多重APD、多重CMOS APDまたはCMOS APDアレイはその実例である。
【0038】
図4は、本発明の一実施形態を示したもので、光源とビームスプリッタの間に回折光学エレメント(24)が配置されている。
【0039】
図5は、本発明の他の実施形態を示したもので、イメージセンサおよび照明が測定セルに統合されている。1つまたは複数のイメージセンサ(26)の反対側に、発光ダイオードによって照射されることが好ましい導波路(25)が配置されている。導波路とイメージセンサの間の空洞(27)には、粒子を含んだ溶液が配置されている。すべてのコンポーネントが微小であり、エネルギーをほとんど消費しないため、好ましいことには、このタイプのデバイスは、極めてコンパクトな寸法を有している。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】透過する光および散乱する光の強度揺らぎが測定される、本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】試料容器内の粒子から放出される蛍光光に基づく、本発明の他の実施形態を示す図である。
【図3】デバイスが蛍光光信号を分析するための2つの検出器を備えた、本発明によるさらに他の実施形態の概要を示す図である。
【図4】回折光学エレメントを備えた図3に示すデバイスを示す図である。
【図5】試料チップに統合されたデバイスを示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1、10 光源
2 レンズ
3、8、15 試料仕切り
4 焦点
5、91、16 光学手段
6 像平面
7、20、22、26 イメージセンサ
11、18、19 ビームスプリッタ
12 発光(遮断)フィルタ
14 検出器
21、23 対物レンズ
24 回折光学エレメント
25 導波路
27 空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子の動的パラメータを測定するための方法であって、ディジタル画像の検出領域に対する前記粒子の揺らぎに相関分析を適用する段階を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ディジタル画像がイメージセンサによって生成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粒子の動的パラメータを測定するための方法であって、ディジタル画像を生成することができる検出器によって前記粒子を検出する段階と、前記ディジタル画像の検出領域に対する前記粒子の揺らぎに基づいて相関分析を適用する段階とを備えることを特徴とする方法。
【請求項4】
粒子の動的パラメータを測定するための方法であって、溶液中の粒子、光源、イメージセンサおよび計算手段を提供する段階と、前記イメージセンサによって生成されるディジタル画像上で事象を検出する段階と、前記ディジタル画像の検出領域に対する前記粒子の揺らぎに基づいて相関関数を計算する段階とを備えることを特徴とする方法。
【請求項5】
物体平面と前記イメージセンサの平面との間の光路に光学手段が配置されたことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記相関関数が複数の検出領域に対する粒子の揺らぎに基づくことを特徴とする請求項4又は5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記イメージセンサが固体検出器タイプのセンサであることを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、背景を除去する段階をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子が精子である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
溶液中の粒子の動的パラメータを測定するためのデバイスであって、試料仕切りと、光源と、イメージセンサと、前記イメージセンサからの信号を処理し、前記イメージセンサによって生成されるディジタル画像上で前記粒子を検出し、前記ディジタル画像の検出領域に対する前記粒子の揺らぎに基づく相関関数を計算する計算手段とを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項11】
前記イメージセンサが固体タイプのセンサであることを特徴とする請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
物体平面と前記イメージセンサの平面との間の光路に光学手段が配置されたことを特徴とする請求項10又は11のいずれかに記載のデバイス。
【請求項13】
前記1つまたは複数の相関関数が複数の検出領域に対する粒子の揺らぎに基づくことを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記粒子が精子であることを特徴とする請求項10から13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
動的パラメータを測定するための、請求項10から14のいずれか一項に定義されているデバイスの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−527359(P2008−527359A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550770(P2007−550770)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000369
【国際公開番号】WO2006/074965
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(507237864)バイオフォス・アーゲー (1)
【Fターム(参考)】