説明

粒子ビーム補助による薄膜材料の改良

基板を処理する方法の様々な例が開示される。特定の実施形態において、この方法は、複数の粒子を含む連続粒子ビームを発生させること、およびこの連続粒子ビームを、非晶相である基板の領域に導入して、領域を非晶相から結晶相に変換することを含み、前記連続粒子ビームは、5×1014個/cm2・秒またはそれを超える電流密度を有するものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、同時継続出願である、米国仮出願番号12/269276号(出願日:2008年11月12日、発明の名称:粒子ビーム補助による薄膜材料の改良)および米国仮出願番号12/269344号(出願日:2008年11月12日、発明の名称:粒子ビーム補助による薄膜材料の改良)に関連する。これら同時継続出願のそれぞれは、参照することによって完全に組み込まれる。
【0002】
本発明は、基板を処理するためのシステムおよび技術に関し、特に、基板を結晶相に形成するためのシステムおよび技術に関する。
【背景技術】
【0003】
フラットパネルディスプレイ(FPD)や太陽電池のような新技術の広い採用は、低価格基板上に電気デバイスを製造する能力に依存する。FPDの製造において、典型的な低価格フラットパネルディスプレイ(FPD)の画素は、薄膜トランジスタ(TFT)によって切り替えられ、このTFTは、典型的に、不活性のガラス基板上に堆積される非晶質シリコンの薄膜(-50nm厚)上に製造されることができる。しかしながら、改良されたFPDsは、より良い画素性能を有するTFTsを要求し、これは、パネル上に直接高性能の制御電子回路を製造するのに有利である。一つの利点は、パネルと外部の制御電子回路との間の、高価でかつ潜在的に信頼できない接続の必要性を排除することである。
【0004】
現在のFPDsは、スパッタリング、蒸着、プラズマ化学気相成長法(PECVD)、または低圧化学気相成長法(LPCVD)のような低温堆積プロセスを経てディスプレイのガラスパネル上に堆積されるSi層を含む。FPDを製造するのに用いられるパネルは非晶質である傾向があり、約600℃のガラス転移点を有するため、そのような低温プロセスは望ましい。600℃を超えて製造される場合、パネルは、不均一または平坦でない構造または表面を有するおそれがある。石英やサファイアパネルのように、より高温に耐性があるガラスパネルは存在するが、しかしながら、そのようなガラスの高価格は、それらの使用を妨げる。もし、より安い低温耐性ガラスまたはプラスチックパネルが用いられることができるのであれば、さらなる価格の低減が可能となる。
【0005】
しかしながら、低温堆積プロセスは、最適なSi膜を生じさせない。当技術分野で周知のように、固体のSiは、非結晶相、多結晶相および単結晶相の3つの共通の相を有する。低温でSiが堆積された場合、堆積されたSi膜は、非結晶相になる傾向がある。非晶質のSi膜に基づく薄膜トランジスタのチャネルは、多結晶Si膜または単結晶Si膜上のチャネルと比較して、より低い移動度を有するおそれがある。
【0006】
多結晶または単結晶Si層を得るため、パネルは、さらなるプロセスを経て、非晶質Si膜を多結晶または単結晶膜のいずれかに変換されることができる。多結晶Si層を有するパネルを得るため、パネルは、エキシマレーザアニーリング(ELA)プロセスを経ることができる。ELAプロセスの例は、特許文献1により詳細に記載されている。より大きい結晶を有するパネルを得るため、パネルは、順次横方向結晶化(SLS)プロセスとして知られるプロセスを経ることができる。SLSプロセスの例は、特許文献2により詳細に記載されている。ELAプロセスおよびSLSプロセスは、結果として、単結晶または多結晶Si薄膜を有するパネルを生じさせることができるが、各プロセスに不利益がないわけではない。例えば、両方のプロセスで用いられるエキシマレーザは、動作コストが高く、結果として高価なTFTを生じるおそれがある。加えて、デューティサイクルは、非晶質Siの結晶性Siへの最良の変換にとって最適条件ではないおそれがある。さらに、エキシマレーザは、供給中にパルス対パルス変動および空間非均一性を有する可能性があり、プロセスの均一性に影響を与えるおそれがある。また、例えばビームの自己干渉に起因する可能性があるパルス内非均一性も存在するおそれがある。そのようなパルス間およびパルス内の非均一性は、結果として不均一な結晶を有するSi膜を生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第5,766,989号公報
【特許文献2】米国特許出願第6,322,625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのようなものとして、低温基板上の高品質結晶性材料の、費用効率が高くかつ製造に適した、粒子処理の新しい方法および装置が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
基板を処理する方法の様々な例が開示される。特定の実施形態において、この方法は、複数の粒子を含む連続粒子ビームを発生させること、およびこの連続粒子ビームを、非晶相である基板の領域に導入して、領域を非晶相から結晶相に変換することを含み、前記連続粒子ビームは、5×1014個/cm2・秒またはそれを超える電流密度を有するものとすることができる。
【0010】
本発明は、添付図面に示されるような実施形態を参照することにより詳細に説明される。本発明が、実施形態を参照して以下に記載される一方で、本発明がそれらに限定されないということは理解されるべきである。当業者であれば、ここで記載された本発明の範囲内における追加の実施、変更および実施形態ならびに他の使用分野を認識し、本発明が重大な有用性を有することに関して認識するであろう。
【0011】
本発明のより十分な理解を容易にするため、以下で添付図面について言及する。同様の構成には、同様の参照番号が付されている。これら図面は、一例として示されるものであって、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】非晶質材料が結晶性材料に変換することができる、種々のメカニズムを示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に従うSi基板に導入されたArイオンの深さを示すグラフである。
【図3】本発明の一実施形態に従う基板を処理するためのシステムを示すブロック図である。
【図4】図3において示されたシステムの特定の例となるシステムを示すブロック図である。
【図5】本発明の別の実施形態に従う基板を処理するための別のシステムを示すブロック図である。
【図6】レーザービームまたは粒子ビームが照射された基板の温度を比較するグラフである。
【図7】本発明の別の実施形態に従う集束粒子ビームが照射された基板の温度を示すグラフである。
【図8】AおよびBは、本発明の別の実施形態に従う太陽電池の製造に組み込まれることができる方法を示す図である。
【図9】A〜Cは、本発明の別の実施形態に従う太陽電池の製造に組み込まれることができる別の方法を示す図である。
【図10】A〜Dは、本発明の別の実施形態に従う太陽電池の製造に組み込められうる別の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
従来のレーザベースの薄膜材料処理の、上記に示した問題および他の問題を克服するため、粒子ベースの処理のいくつかの実施形態を開示する。粒子ベース処理は、非平衡プロセスを促進することができるため有利である。加えて、粒子パラメータは、レーザのパラメータよりもはるかに正確に制御することができる。粒子パラメータの例は、空間パラメータ(ビームサイズや電流密度など)、粒子フラックス(および/または、ビーム電流)、粒子種類および粒子線量などを含むことができる。
【0014】
本開示において、いくつかの実施形態は、例えばプラズマ補助ドーピング(PLAD)システムまたはプラズマイマーションイオン注入(PIII)システムのような、ビームラインイオン注入システムおよびプラズマベース基板処理システムに関して本文中に開示される。しかしながら、本分野における通常の知識を有する者は、本開示が粒子ベースシステムの他のタイプを含む他のシステムに等しく適用可能であると認めるべきである。ここで使われる用語「粒子」は、亜原子、原子、または荷電若しくは中性分子の粒子に言及する。例えば、粒子は、陽子、または、イオン、原子若しくは分子、または、気体クラスタとすることができる。
【0015】
本開示において、いくつかの実施形態は、基板に関して本文中で説明される。この基板は、ウェハ(例えば、Siウェハ)または複数の膜を備えた基板とすることができる。加えて、基板は、一つの元素のみを含む元素基板(例えば、Siウェハもしくは金属箔)としてもよく、複数の元素(例えばSiGe、SiC、InTe、GaAs、InP、GaInAs、GaInP、CdTe、CdS、または、(Al、Gaおよび/またはIn)を有する(Cu、Agおよび/またはAu)と(S、Seおよび/またはTe)との組み合わせ、例えばCuInGaSe、CuInSe2、他のIII-V族半導体および他のII-VI族化合物など)を含む化合物の基板としてもよく、および/または、合金基板としてもよい。基板に含まれる材料は、金属、半導体および/または絶縁物(例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、サファイア、及び石英)とすることができる。さらに、基板は、複数の薄膜を含む薄膜基板(例えばSOI)とすることができる。もし基板が複数の薄膜を具えるならば、これら薄膜の少なくとも1枚は半導体膜または金属膜とすることができる一方で、他の薄膜は、絶縁膜とすることができる。半導体膜または金属膜は、単一の絶縁膜上に配置されるか、あるいは、代案として、複数の絶縁膜の間に配置されることができる。逆に言えば、絶縁膜は、単一の半導体膜または金属膜上に配置されるか、あるいは、代案として、複数の半導体膜または金属膜またはそれらの両方の間に配置されることができる。
【0016】
(相変態)
薄い非晶質層を最も急速に結晶化するメカニズムは、固相エピタキシャル再成長(SPER)である。SPERにおいて、非晶質Siは、下層の予め存在する広域の結晶層を拡張することによって、結晶性Siに変化することができる。一般的に、この状況は、イオン注入によって非晶質化された後の、結晶性Siウェハの表面層のアニーリング中に遭遇する。本発明は、広域の予め存在する格子が存在せず、かつ結晶の成長前に結晶核形成を経て相変態が発生する、非晶質基板の処理に関連するものである。図1によれば、広域の予め存在する格子のない材料が、非晶相から結晶相に変態することができる種々のメカニズムのブロック図が示される。当技術分野で周知のように、結晶相は、多結晶相または単結晶相に分類されることができる。多結晶相は、時々、結晶サイズによって(例えば多結晶、微結晶、ナノ結晶等のような)異なる種類にさらに再分割されることができる。しかしながら、そのような区別はこの開示の文脈において重要ではないので、図1を説明するのに必要ではない。したがって、ここで、これらの相はまとめて結晶相と称するものとすることができる。
【0017】
図1に示されるように、非結晶相からの結晶相への相変態は、様々なメカニズムを経て生じることができる。例えば、この変態は、融解および凝固メカニズム100aと、固相結晶化(SPC)変換メカニズム100bとを経て生じることができる。融解および凝固メカニズム100aとSPCメカニズム100bとにおいて、変態は、結晶の核形成および微結晶の成長を経て生じることができる。SPERメカニズム100bにおいて、変換は、広域の予め存在する結晶格子上への成長によって発生することができる。
【0018】
融解および凝固メカニズム100aにおいて、放射、熱または運動エネルギーの形のエネルギーは、非晶質基板の一部分に導入されて、この部分を融解することができる。融解された領域の条件が、核形成(例えば過冷却)を引き起こすのに十分である場合、古典の核形成理論で説明されるように、結晶は核を成すであろう。結晶は、2つの計画を経て核となることができる。結晶は、予め存在するシード上に不均一に核になる可能性がある。このシードは、エネルギー導入時に融解されなかった予め存在する結晶の粒界であることができる。また、シードは、融解された領域と、これに隣接する固体領域との間の境界であることもできる。シードがない場合、結晶は、均一に核になることができる。核形成において、結晶は、その成長が停止するまで成長することができる。
【0019】
固相結晶化変換メカニズム100bにおいて、相変態は、融解がなくても生じることができる。例えば、結晶は、エネルギーが導入された領域で核になることができ、その後、核となった結晶の成長が続く。この融解プロセスの場合、もしシードが存在するならば、SPC中、核形成は不均一に生じる可能性があり、もしそのようなシードがないのであれば、核形成は均一に生じることができる。
【0020】
(粒子ビーム補助プロセス)
本発明において、粒子は、基板に導入されて相変態を引き起こすことができる。相変態は、非結晶相から、多結晶相および/または単結晶相の一つとすることができる。加えて、相変態は、結晶の核形成と成長を経て生じることができる。変態を引き起こすように、粒子は、基板の上面、基板の下面または基板の上面と基板の下面との間の領域、またはそれらの組み合わせの近くに導入されることができる。基板が2以上の異なる材料を含む場合、粒子は、異なる材料の界面の近くの領域に導入されることができる。
【0021】
(粒子種類)
粒子の多くの種類は、相変態を引き起こすために導入されることができる。例えば、基板に対して化学的におよび/または電気的に不活発である粒子を用いることができる。しかしながら、化学的におよび/または電気的に活性な材料を用いることもできる。上述したとおり、粒子は、荷電または中性の亜原子、原子の粒子もしくは分子の粒子またはこれらの組み合わせとすることができる。いくつかの実施形態においては、分子の粒子を用いるのが好ましい。他の実施形態においては、クラスタ粒子を用いるのが好ましい。分子の粒子およびクラスタ粒子は、非常に高い線量およびエネルギーで基板に導入されることができるため好ましい。特に、基板に導入された分子およびクラスタの粒子は、衝突で分解することができ、粒子の運動エネルギーは、原子の粒子の原子量に比例して分けられることができる。重複衝突カスケードは、非常に高い線量率で、原子の粒子の導入と同様の結果を達成することができる。それらのより大きい質量のため、分子の粒子は、非常に高いエネルギーで基板に導入されることもできる。注入機、PLAD、およびPIIIにおいて、原子および分子の種類の生成は、当業者によく知られている。クラスタ粒子の生成の詳細な説明は、米国特許番号5,459,326で見つけることができ、これは、参照することによって完全に組み込まれる。
【0022】
基板に導入される粒子の選択は、基板上の粒子の効果にも依存する。いくつかの特性および説明に役立つ実例が、表1に示される。表1は、イオン種のいくつかの可能な選択を示す。
【0023】
【表1】

【0024】
(深さとエネルギー)
粒子が基板に導入されるとき、粒子の運動エネルギーは基板に移動する。移動された運動エネルギーの大きさは、粒子のサイズ、質量およびエネルギーに依存する。例えば、基板に導入された重いイオンは、より軽いイオンよりも核阻止を経験することができる。粒子が核阻止メカニズムを経てそれらの運動エネルギーを失うとき、メカニズムは、例えばダングリングボンド、空孔または複空孔のような、結晶化プロセスを強化できる欠陥を形成する傾向がある。同時に、電子阻止を経て基板に移動された運動エネルギーは、結晶化を生じさせることができる。
【0025】
粒子のエネルギー、粒子配送の位置および基板の特性(例えば、基板の熱伝導率、熱容量および融解温度)に依存して、結晶の核形成は、基板の上面、基板の下面、基板の上面と基板の下面との間の領域、または、異なる材料の界面の近くで開始されることができる。その後、相変態は、変態が開始される位置から離れる方向に続くことができる。
【0026】
放射ベースの相変態とは違って、粒子導入を経た基板に蓄積されたエネルギーは、表面で、または代案として、表面の下でピークに達することができる。加えて、粒子は一定のエネルギーで基板に導入されることができる。代案として、粒子は、変化するエネルギーで導入されることができる。例えば、粒子が導入されている間、基板に導入された粒子のエネルギーが変化することができる。このエネルギーの変化は、連続的にまたは順々に生じることができる。ビームライン粒子システムを用いる場合、粒子エネルギーは、粒子導入の間、ここに説明されたビームラインシステムと関連した加速電圧または減速電圧を用いて変化させられる。PLAD、PIII、または他のプラズマベースシステムを用いる場合、エネルギーは、導入の間、基板に印加される電圧を変えることによって変化させられる。
【0027】
図2は、本発明の一実施形態に従う、基板に導入された粒子の深さとエネルギーを示すグラフである。本実施形態において、ArイオンはSi薄膜に注入される。図2に示されるように、線で結ばれた点は、Arイオンの平均的な範囲を表し、垂直のエラーバーは、深さ方向における拡がりを表す。すべてのイオンの全体の範囲は、平均的な範囲と拡がりの多数(1以上)の合計により評価されることができる。既知の深さのSiの表面層内に含まれることがArイオンに要求される場合、最大のエネルギーはこの曲線から推定されることができる。挿図は、主要な図の低いエネルギースケールのより大きい表現である。
【0028】
(空間的および時間的なプロファイル)
エネルギーに加えて、粒子の空間的および時間的なプロファイルは制御されることができる。例えば、粒子は粒子ビームとして導入されることができ、ビームは、一定または変化するビーム電流密度(すなわち、所定時間で予定地点にある粒子の数)を有することができる。この電流密度は、粒子電流および/またはビームサイズと、ビームおよび/また基板の走査速度および/またパルス長を制御することによるビームの滞留時間と、ビームのデューティサイクル(例えば、ビームパルス間の時間、または、ビームおよび/または基板の再実行時間が走査される)を変化させることによって調整されることができる。
【0029】
本発明において、粒子は、基板に継続的にまたは順々に周期的に導入されることができる。粒子が粒子ビームとして導入される場合、ビームは様々な形を有することができる。例えば、粒子はリボンビームまたはスポットビームとして導入することができる。リボンビームは、リボン形または1つの方向に沿ったビームの寸法が別の方向に沿ったものより大きい形を有することができる。そのようなリボンビームは、基板より広くても良いし、その代わりに、基板より狭くても良い。その一方で、スポットビームは、基板よりも小さい寸法を有することができる。もし使用されるのであれば、スポットビームは、磁気的または静電気的にリボンビームと似た約100〜1000Hzの速度で走査されることができる。
【0030】
リボンビーム・スポットビームにかかわらず、ビームの断面が小さく、かつ基板の全体の表面面積を覆わないのであれば、ビームは、基板と相対的に追加的に走査されることができる。例えば、ビームが、幅方向および長さ方向の2つの方向に沿って走査されることで、粒子は基板の全体の表面に導入されることができる。本発明において、そのような走査は、固定のビームに対して、基板を、長さと幅方向に沿って平行移動させること、または、固定の基板に対して、ビームを、長さと幅方向に沿って平行移動させることによって達成することができる。ビームおよび/または基板の相対的な走査速度を制御することによって、基板の相変態は制御されることができる。
【0031】
加えて、基板に導入された粒子ビームは、集束ビームまたは非集束ビームとすることができる。加えて、粒子ビームは、その断面に沿って均一または不均一であることができる。例えば、リボンビームは、低い電流密度を有する後端が追随する、高い電流密度を有する先端を有することができ、その逆でもよい。不均一ビームは、他の強度プロファイルを有することもできる。不均一ビームが、核生成プロセスおよび成長プロセスを強化できることが信じられている。例えば、不均一ビームは、核形成を開始するために強い先端を有することができ、この先端に、それほど強くない後縁が追随する。例えば、ビームの高密度部分は、基板を融解させて相変態を開始することができ、ビームの低い密度部分は、融解した領域の凝固を制御して、変態の範囲を増進することができる。
【0032】
さらに、複数のビームが操作され、同時にまたは順々に基板に導入されることができる。複数のビームが用いられる場合、ビームは、1回で基板の全体の幅および/または長さに導入されることができる。
【0033】
(方向)
粒子補助相変態は、結晶成長および/または結晶形を定位させるのに、いくつか利点を有する。本発明において、粒子は、様々な角度で基板に導入されることができる。様々な角度での粒子の導入は、ビームに対して基板を傾けること、および/または、基板に対してビームを傾けることによって達成される。
【0034】
1つの実施形態において、粒子は、0°(すなわち、基板の表面に垂直)で基板に導入されることができる。0°で導入された粒子は、FPDsの電気伝導率を制限することができる{200}の粒界を優先的に破壊することができる。代案として、粒子は、他の角度、例えば7°で導入されることができる。
【0035】
(基板条件)
粒子のパラメータに加え、基板の条件も、粒子導入の前、中、後に調整することができる。例えば、基板の温度を調整することができる。一の実施形態において、基板は、粒子導入の前または中に、約500℃で加熱されることができる。基板を加熱することにより、粒子ビームによって生じた熱衝撃を和らげることができる。加えて、基板を加熱することにより、大きな結晶の形成を誘導することができる。例えば、基板を加熱することによって、粒子が導入された領域を、(この領域は、伝導を通じて、基板にそのエネルギーの大部分を逃がすことができるため、)より遅い速度で冷却されるようにできる。
【0036】
基板が室温よりも冷却された場合、結晶化は強化される。例えば、基板は、約0〜-100℃の範囲の温度に冷却されることができる。加えて、基板を冷却することで、絶縁膜の構造が不安定になるのを防ぐことができる。
【0037】
粒子が基板に導入される時、基板は、真空または大気圧中に存在することができる。ポンプコストを低減するために、通常、真空圧力は、イオン注入に使われる圧力(すなわち、10-4mbarよりも高い圧力)よりも高くすることができる。
【0038】
(典型的なシステム)
図3は、本発明の一実施形態に従う、基板を処理するための典型的なシステム300を示すブロック図である。システム300は、ビームライン粒子システム300とすることができる。システム300は、イオン源302、取出システム304、加速システム306、任意のビーム操作部品308および中和システム310を具えることができる。加えて、システム300は、中和システム310と通信するエンドステーション312を具えることができる。エンドステーション312は、ウインドウ314および1以上のロードロック316、318具えることができる。エンドステーション312内には、基板322を支持するプラテンを配置してもよい。加えて、エンドステーション312内には、1以上の、基板移動、冷却および/または加熱サブシステム324を配置することができる。
【0039】
本発明において、イオン源302は、間接的に加熱された陰極を有するバーナス型のイオン源としてもよい。当業者であれば、イオン源302が、他のタイプのイオン源でも良いことを理解するであろう。それと同時に、取出システム304は、単一スリットまたは複数スリット取出システム304とすることができる。取出システム304は、1以上の直交方向において平行移動が可能である。加えて、取出システム304は、時間的に一定のビーム電流を取り出すよう設計されることができる。加えて、取出システム304は、粒子を、継続的にまたは断続的に取り出すことができる。また、取出システム304は、粒子ビームまたはビームレットの焦点を合わせることによって、望ましい空間および/または時間的なビームプロフィールを許すこともできる。取出システム304を介して取り出された粒子ビームは、約80keVのエネルギーを有することができる。
【0040】
より高いエネルギーが必要とされる場合、システム300は、粒子ビームを加速することができる加速システム306を含むことができる。また、システム300は、1以上の、追加の任意のビーム操作部品308を含むことができ、粒子をフィルタし、スキャンし、そして粒子ビームへと形作る。システム300の詳細な例を示す図4に示されるように、任意のビーム操作部品308は、第1磁気解析器406、第1減速(D1)ステージ408、第2磁気解析器410および第2減速(D2)ステージ412を含むことができる。本発明において、第1磁気解析器406は実質的に双極子磁石であり、粒子の質量およびエネルギーに基づいて、粒子をフィルタにかけることができる。これにより、望まれない質量および/またはエネルギーを有する粒子は、磁気解析器406を通過しない。その一方で、実質的に別の双極子磁石である第2磁気解析器410は、粒子を平行にして所望の形状(例えばリボン)および/または寸法を有する粒子ビームにするよう構成されることができる。D1およびD2減速ステージ410,412は、通過する粒子のエネルギーを操作することができ、これにより、粒子は、所望のエネルギーで基板に導入されることができる。一の実施形態において、D1および/またはD2は、空間電荷効果を最小化し、かつビームの空間的完全性を維持する能力がある分割されたレンズとすることができる。
【0041】
また、図面には示されないが、ビーム操作部品は、1以上の実質的に四極子(quadrupole)磁石、または、ビームを焦点に合わせるためのアインツェルレンズを含むこともできる。さらに、ビーム操作部品は、米国特許第6,933,507号および米国特許第5,350,926に記載されるような、ビームプロファイルの均一性を制御するための磁気多重極または磁性ロッドを含むこともできる。
【0042】
図3に戻ると、電荷中和システム310は、本発明によれば、基板322における電荷蓄積を減少させるために含まれることもできる。電荷中和システム310は、米国仮出願番号11/376,850等に示されるような、熱フィラメント、マイクロウェーブまたはrf駆動型の、1以上のシステムとすることができる。
【0043】
エンドステーションにおいて、基板の周囲の環境は、例えば基板上に他の材料の堆積を防止するよう、または、結晶化プロセスを強化するための不動態化を促進するよう制御されることができる。環境を制御するため、エンドステーション312は、薄箔ウインドウまたは作動排気装置314を含むことができ、粒子は、これらを通って入ることができ、ならびに、1以上のロードロック316,318を含むことができ、基板は、これを通って収容されることができる。ロードロック316,318は、1以上の作動排気ステージであって、これを通って基板が収容されることができるステージによって置き換えられることができる。
【0044】
また、エンドステーション312は、基板移動、冷却および加熱システム324を含むこともできる。基板システム324の例は、冷却装置、熱源、種々の軸に沿って基板を平行移動/回転することができるロプラットを含むことができる。冷却装置の詳細な例は、米国仮出願番号11/504,367、11/525,878および11/733445において見つけられることができ、これら各開示全体を参照により取り込む。熱源の詳細な例は、レーザ、フラッシュランプ、流体加熱を提供するプラテン、抵抗加熱源とすることができ、これらは、米国仮出願番号11/770,220、11/778,335に開示があり、これら各開示全体を参照により取り込む。
【0045】
処理および基板のパラメータ/状態をモニタするために、1以上のパラメータ/状態測定部材が基板322付近に配置される。そのような構成部は1つ以上のコントローラに連結され、コントローラは基板のパラメータ/状態および/または粒子を、測定部からの信号に基づいて制御する。
【0046】
図5は、本開示の他の実施形態による基板処理のシステムの他の例である。具体的には、システム500はPLAD、PIIIシステムもしくは他のプラズマベース基板処理システムである。PLADシステム500は上部502及び下部504を含むチャンバー501を有する。上部502はほぼ水平方向に延在する第1誘電部506と、ほぼ垂直方向に延在する第2誘電部508を備える。一実施形態では、各誘電部506、508はセラミックであり、化学的耐性と良好な熱特性を有する。上部502はまた少なくとも1つ以上のアンテナ510、512を備える。これらの1つ以上のアンテナ510、512は、例えば水平アンテナ510および/または垂直アンテナ512である。一実施形態では、水平アンテナ510は多数巻きの平面コイルであり、垂直アンテナ512は多数巻きのヘリカルコイルである。アンテナ510、512のうちの少なくとも1つは、インピーダンス整合ネットワーク516を介して電源514と電気的に結合する。
【0047】
システム500の下部504においては、プラテン520と、プラテン520に支持された基板522が、上部502の下に所定の高さで配置されることができる。しかし、プラテン520および基板522が上部502に配置されることもある。バイアス電圧電源524は、プラテン520にDCバイアスまたはRFバイアスを行うために、プラテン520と電気的に結合される。
【0048】
作動中は、アンテナ510、512のうちの少なくとも1つが、電源514によりRFまたはDC駆動される。アンテナ510、512のうち一方のみがRFまたはDC駆動される場合、アンテナ510、512のうちの他方は無給電アンテナである。アンテナ510、512のうちの他方は電源514に電気的に結合していないため、無給電アンテナである。代わりに、アンテナ510、512のうちの他方は、電源514により駆動されるアンテナと磁気的に結合する。あるいは、アンテナ510、512の両方が電源514によりRF電流で駆動される。その後、アンテナ510、512のうちの少なくとも1つが、第一及び第二誘電部506、508を介してRF電流をシステム500に誘導する。RF電流により誘導された電磁場はシステム500に含まれるガスをプラズマに変換する。一方、バイアス電圧電源524はプラズマ内の荷電粒子を基板522に引き付けるよう、プラテン520にバイアスをかける。システム500の追加的詳細は、米国仮出願番号11/766984、米国特許出願公開番号2005/0205211、米国特許出願公開番号2005/0205212、および米国特許出願公開番号2007/0170867に記載されており、これら各開示全体を参照により取り込む。
【0049】
(任意構成部材)
上記の構成部に加え、例示的システム300〜500は任意で1つ以上のマスクを粒子源(例えばイオン源またはプラズマ)と基板の間に備えることができる。マスクを備える場合、マスクは炭素(C)系材料、Si系材料(例えばSiC)、もしくはWまたはTa等の耐火金属を含む材料であることが好ましい。しかし、他の材料を用いることも可能である。このようなマスクは、基板上の入射ビームの形状を制御するために逆V字型を含む様々な形状をした1つ以上の開口を有する。
【0050】
(フラットパネルディスプレイ)
以下、粒子誘起相変態のいくつかの適用について説明する。上述の通り、粒子は薄膜基板のSi層に導入され、非晶質相から結晶相へ相変態を誘起する。明確性を持たせるため、粒子誘起相変態の比較はELA処理により行う。
【0051】
本実施形態において、粒子は、絶縁膜上に配置された厚さ約500Aの非晶質Si膜を有するFPDに向けられる。絶縁膜は、例えば厚さ約0.7mmの非晶質ガラスもしくはコーニング1737ガラス、石英、プラスチック、またはサファイアからなる。しかし、他タイプの絶縁膜を用いることもできることを、当業者は認識するべきである。
【0052】
ELA処理において、単一レーザーパルスは12ナノ秒間のパルスで360mJ/cm2のエネルギーパルスを供給する。これは、電力密度3×1010W/m2に等しい。ArイオンビームがSi膜に向けられた場合、ビームは20keVのエネルギーを有する。このエネルギーでは、向けられたArイオンの全てがSi層を超えて基板を貫通することはできない(図2参照)。リボン形状のアルゴン粒子ビームが用いられた場合、ビームは幅300mm、高さ0.1mmの寸法を有すると考えられる。ビーム電流25mAは、1.7×107W/m2の電力密度を意味する。
【0053】
ELA処理において、基板へ入射するレーザービームはSi層を非結晶Siの融点に近い1000℃に熱する。入射時に、レーザービームはSi層の少なくとも一部分の溶融を開始する。Siの熱拡散率は比較的高く、室温で〜1cm2/sec、1400Kで〜0.1cm2/sec間で変化する。従って、たとえレーザーエネルギーがSi表面の厚み数nmにおいて吸収されたとしても、潜熱効果がない限り、Si層内の温度勾配は非常に小さなものである。熱はSiからガラス内へ拡散する。ガラスの熱拡散率は小さく(広い温度範囲にわたり、〜0.0005cm2/s)、大きな温度勾配は厚いガラス層に存在する。図6に示すモデルの結果によると、Siの0.1μm以内の均一なガラスは、500℃に達していない。
【0054】
粒子ビームは低電力密度であるため、Si膜を加熱するために十分なエネルギーを蓄積するに必要な時間はレーザー(12ナノ秒)に比べて長い(80ミリ秒)。加えて、粒子を介して基板に蓄積された熱は、熱伝導を介して絶縁で失われるため、Si膜を充分加熱するためには、より高いエネルギーが必要となる。これらの前提の基にすると、Siの50μm以内の絶縁膜は600℃以上に加熱される。それでもなお、これらの条件が当てはまるよう、十分な量の絶縁はガラス転移(または溶融)温度を超えて加熱されない。
【0055】
リボンビームの高さが1mmに増えた場合、Si膜を充分に熱するに必要な時間はおよそ2.4秒であり、この時間においてガラス底部の最高温度は600℃に達する。図7に示すリボンビームの高さが0.1mmの場合と比較して、この例は、ビームの電力密度をできるだけ高く保つ必要があることを示している。これはビーム領域をできるだけ小さくし、ビーム電流を上げ、および/またはビームエネルギーを増やすことで達成される。また、イオン種の質量を増量する。分子粒子ビームを使用することが、より高いビームエネルギーを使用できるため、望ましい。同時に、より高いビームエネルギーは、空間電荷ブローアップ(blow-up)などの追加的有害作用を減少させるが、さもなければビーム電流およびビーム集束が制限される。
【0056】
粒子ビームの照射は固体Siを非晶質相内に保持し、1300Kで溶融させる。結晶Siは、1683Kになるまで溶融しない。従って、非晶質Siを溶融開始前に結晶化すると、完全に溶融するためにはさらなる電力が必要となる。また、一度Siの表面が溶融すると、液体Siがレーザ放射光線を一部反射するため、Siのバルクに電力を結合することが難しくなる。冷却および結晶化段階における粒子ビームの存在は、高品質材料の製造に影響を与える。
【0057】
(薄膜太陽電池)
本開示で説明する粒子誘起相変態は、薄膜太陽電池の製造に適用されることもできる。当技術分野で周知のように、非晶質Siは直接バンドギャップ材料であり、間接バンドギャップ材料である結晶Siよりも光を効果的に吸収する。さらに、非晶質Siは結晶Siよりも多く、可視スペクトルの光を吸収する。しかしながら、非晶質Siの導電率は低い。従って、非晶質Siが入射光を電流に変換し、結晶Sがは生成された電流を転送するのが望ましい。従って、本実施形態によると、太陽電池は好ましくは結晶Si層の上に非晶質Si層を有することが望ましい。可視波長の入射光は非晶質Si内で効果的に光電流に変換される。非晶質層で変換されなかった光(赤外線を含む)は、結晶Si内で光電流に変換される。
【0058】
図8は、本開示の別の実施形態による基板作製に組み込まれる処理を示したものである。本実施形態において、基板は結晶層および非晶質層を備えた薄膜太陽電池である。他の実施形態においては、基板は絶縁層(図示せず)上に配置されたFPDの半導体層である。図8Aに示すように、非晶質Si層802はガラス層(図示せず)上に堆積される。Si層802は厚さが1.5μmであり、一方ガラス層の厚みは3mmである。所定の線量とエネルギーを有する粒子804は、その後非晶質Si層802に導入される。図8Bに示すように、粒子804はSi層の表面の下に導入され、非晶質Si層802の上部の結晶化を誘起せずに、Si層802の下部を結晶化する。その結果生じた基板は、結晶Si層806の上に配置された非晶質Si層802を有する太陽電池に用いられる。
【0059】
図9は、本開示の別の実施形態による基板作製に組み込まれる処理を示したものである。本実施形態において、基板は結晶層および非晶質層を有する薄膜太陽電池である。他の実施形態においては、基板は絶縁層(図示せず)上に配置されたFPDの半導体層である。図9Aに示すように、非晶質Si層902はガラス層(図示せず)上に堆積される。その後、所定の線量とエネルギーを有する第1の粒子904は、非晶質Si層902に導入され、Si層906全体を結晶化する(図9B参照)。図9Cに示すように、所定の線量およびエネルギーを有する第2の複数の粒子908は結晶Si層の表面付近の層を非晶質化するために基板に導入される。その結果生じた太陽電池は、非晶質Si上層904及び結晶Si下層902を有する。
【0060】
図10は、本開示の別の実施形態による基板作製に組み込まれる処理を示したものである。本実施形態において、基板は結晶層および非晶質層を有する薄膜太陽電池である。他の実施形態においては、基板は絶縁層(図示せず)上に配置されたFPDの半導体層である。図10Aに示すように、非晶質Si層1002はガラス層(図示せず)上に堆積される。その後、所定の線量とエネルギーを有する粒子1004は、非晶質Si層1002に導入され、Si層1002内の副層1006を結晶化する(図10B参照)。図10BではSi層1002の上面付近に副層が配置されているが、副層1006をSi層1002の上面付近、下面付近、もしくは上面と下面の間のどこにでも配置することが可能であることを、当業者は認識するべきである。
【0061】
結晶化された副層1006を形成した後、副層1006内の1つ以上の結晶が、Si層1002全体が結晶化するまで副層1006から徐々に成長する。結晶は炉アニーリング、高速熱アニーリング(RTA)、フラッシュランプアニーリング、およびレーザーアニーリングのいずれかを介して成長する。あるいは、結晶は粒子補助アニーリングにより成長する。例えば、同一粒子又は他の所定の線量および/または他の所定のエネルギーを有する他のタイプの粒子(図示せず)が、1つ以上の結晶の粒界を基板の下面に向って拡張するよう、結晶副層下の領域に導入される。この過程において、Si層1002全体は、垂直方向に延長する粒界を有する1つ以上の結晶を含む。本実施形態はまた、新たに結晶化されたSi層1006の一部を非晶質化する任意の非晶質ステップを含むこともできる。例えば、粒子1010はその後新たに結晶化されたSi層1002(図10D参照)に導入され、Si層1002の少なくとも一部を非晶質化して非晶質副層1012を形成する。本開示において、新たに結晶化されたSi層1002に導入される粒子は、以前の非晶質Si層1002を結晶化するために用いられた粒子と同じものである。あるいは、新たに結晶化されたSi層1002に導入される粒子は、以前の非晶質Si層1002を結晶化するために用いられた粒子とは異なるものである。上記過程は厚手の非晶質Si層を結晶化するために用いられる。
【0062】
粒子誘起相変態はまた、効果的な多結晶Si太陽電池を製造するために用いられる。結晶の粒界は、金属汚染物などの不純物をゲッタリングするに効果的な場所である。また、粒界は電荷キャリアの移動性に対するバリアとして機能し、キャリアが粒界を通過することを抑止する。従って、複数の結晶、つまり多数の粒界を有する多結晶太陽電池は、粒界が電荷キャリアの経路に交差して位置する場合、比較的低い導電率を有する。多結晶太陽電池において、上面で生成される電流は、一般的に太陽電池の下面に位置する接触領域に移送されなければならない。多結晶太陽電池内の粒界が電荷キャリアの経路に交差する場合、太陽電池の効率は下がる。従って、粒界が電荷キャリアの経路に対して並行に配向された多結晶太陽電池を製造することが望ましい。
【0063】
効率的な多結晶太陽電池を製造するためには、非晶質Si基板が作成される。その後、Si層の上面は結晶化され、結晶が固相エピタキシャル再成長(SPER)により下へ向かって成長する。基板に伝達される電力密度を最高にするため、イオンエネルギーが用いられる。これは、典型的なイオンビームシステムはイオン源から最大ビーム電流を抽出でき、空間電荷効果がビームの移送および集束のために減少する、40から100keVの間のエネルギーに対応する。このようなイオンビームはSi表面付近の結晶化を引き起こし、これは順々に層全体が結晶化するまでSPERのシードになる。SPERはビーム誘起結晶化ステップの一部として、もしくは加熱炉、RTA、フラッシュランプ、レーザまたは他のアニーリング方法のうちの1つ以上を使用するさらなるアニーリングステップ内で起こる。その結果生じた基板は垂直方向に延長する粒界を有する結晶を含む可能性が高い。その後、第二の種、エネルギーおよび線量の粒子が、多結晶基板の表面付近の層を非晶質化するために基板に導入される。その結果、太陽電池は垂直に延長する多結晶Si層の上に非晶質Si層を有する構造となる。上述の通り、そのような太陽電池は放射エネルギーをより効率的に電気エネルギーに変換すると同時に、変換された電気エネルギーをより効率的に移送する可能性が高い。
【0064】
本開示において、粒界のサイズおよび配向は最上層の結晶化を補助するために用いられる粒子ビーム条件の選択に影響される。リンは良いゲッター種であるため好ましく、太陽電池のドーパントとして選択される。注入方向は粒子の配向に影響を与えるために選択される。活性層全体が注入され、もしくは表面層が結晶上層を作るためにほとんど隙間なく注入され、基板の残りの部分はSPERにより再成長する。
【0065】
ここで用いられた用語および表現は説明を行うための用語として使用されたものであり、限定するものではなく、またそのような用語および表現の使用は、図示または説明(またはその一部)された特徴のいかなる均等物も排除するものではない。また、特許請求の範囲内での様々な変更が可能である。他の改良、変更および代替手段も可能である。従って、上記説明は例示的なものでしかなく限定するものではない。請求の範囲はここに詳述したいかなる特徴も含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する方法であって、該方法は、
複数の粒子を含む連続粒子ビームを発生させること、および
該連続粒子ビームを非晶相である基板の領域に導入して、該領域を非晶相から結晶相に変えること
を具え、前記連続粒子ビームは、5×1014個/cm2・秒以上の電流密度を有することを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記連続粒子ビームは、集束粒子ビームである請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記連続粒子ビームは、その第1断面端から第2断面端へ減少する密度プロファイルを有する請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第1断面端は先端であり、かつ前記第2断面端は、前記先端に追随する後端であり、前記先端は、前記後端に先立って前記領域に導入される請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記連続粒子ビームを前記基板の領域に導入する間に、前記連続粒子ビームのエネルギーを調整することをさらに具える請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記連続粒子ビームのエネルギーを調整することは、前記連続粒子ビームのエネルギーを線形的に調整することを含む請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記連続粒子ビームのエネルギーを調整することは、前記連続粒子ビームのエネルギーを順々に調整することを含む請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記第1領域を非晶相から結晶相に変える前に、前記第1領域の少なくとも一部を融解させることをさらに具える請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記領域の少なくとも一部を融解させることなく、前記領域を非晶相から結晶相に変えることをさらに具える請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記粒子は、分子イオンを含む請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記粒子は、粒子集団を含む請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記粒子は、陽子または重陽子を含む請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記粒子は、He、Ne、Ar、Kr、XeおよびRnからなるグループから選ばれる一種類以上を含む請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記粒子の種類がGaである請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記連続粒子ビームが導入された領域を応力領域に変換するため、前記領域はSiを含み、かつ前記粒子は、CおよびGeからなるグループから選ばれる一種類以上を含む請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記領域の電気特性を変化させるために、前記領域は、IV族元素から選択された材料を含み、かつ前記粒子は、B、Ga、In、P、As、SbおよびBiから成るグループから選ばれる一種類以上を含む請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記領域のバンドギャップ特性を変化させるために、前記領域は、IV族元素から選択された材料を含み、かつ前記粒子は、Yb、Ti、Zr、Hf、Pd、PtおよびAlから成るグループから選ばれる一種類以上を含む請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項18】
前記領域の電気特性の変化を防止するために、前記領域は、IV族元素から選択された材料を含み、かつ前記粒子は、C含有粒子、Si含有粒子、Ge含有粒子、F含有粒子、N含有粒子、H含有粒子、He含有粒子、Sn含有粒子及び、Pb含有粒子からなるグループから選ばれる一種類以上を含む請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項19】
前記領域を非晶相から結晶相に変え速度を高めるために、前記領域は、IV族元素から選択される材料を含み、かつ前記粒子は、金属粒子を含む請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項20】
前記金属粒子は、Ni粒子を含む請求項19に記載の基板処理方法。
【請求項21】
前記連続粒子ビームを前記基板の前記領域に導入する前に、前記基板の温度を変化させることをさらに具える請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項22】
前記温度を変化させることは、温度を低減させることを含む請求項21に記載の基板処理方法。
【請求項23】
前記粒子を前記基板の前記領域の一部に導入するよう、前記複数の粒子を生成するイオン源と前記基板との間に少なくとも一つの開口部を含むマスクを配置することをさらに具える請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項24】
前記連続粒子ビームが前記領域に到達することを断続的に防止するために、前記連続粒子ビームを前記領域に導入することは、前記基板と前記連続粒子ビームとの相対的位置を周期的に変化させることを含む請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項25】
前記基板と前記連続粒子ビームとの相対的位置を周期的に変化させることは、固定された前記基板に対する前記連続粒子ビームの位置を変化させることによって達成される請求項24に記載の基板処理方法。
【請求項26】
前記基板と前記連続粒子ビームとの相対的位置を周期的に変化させることは、固定された前記連続粒子ビームに対する前記基板の位置を変化させることによって達成される請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項27】
前記連続粒子ビームは、前記基板の上面と直角な角度で前記領域に導入される請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項28】
前記連続粒子ビームは、前記基板の上面と直角である角度を除いた角度で前記領域に導入される請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項29】
前記連続粒子ビームの複数の粒子が、前記領域の外側の前記基板の一部に進むことを防止することをさらに具える請求項1に記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【公表番号】特表2011−505685(P2011−505685A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533344(P2010−533344)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/083382
【国際公開番号】WO2009/064867
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(500239188)ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド (69)
【Fターム(参考)】