粒子状物質を組織サンプル上に捕集し堆積させるシステムおよび方法
静電エアロゾルインビトロ暴露のシステムおよび方法が開示されており、予備濃縮なしで、かつ水中またはフィルタ上での使用などのいかなる中間捕集工程もなしで、粒子状物質を組織上に捕集し堆積させるのに用いることができる。該システムは、粒子状物質を含有する空気を受け入れるように構成されている入口と、1つまたは複数の組織サンプルを保持するように構成されている容器と、組織サンプルの気液界面のための支持をもたらす多孔質膜と、電気集塵領域とを含み得る。入口で受け入れられた空気中に含有されている粒子状物質は、電気集塵領域内で帯電され、組織サンプル上を流動させることができ、該粒子状物質は、そこで捕集し測定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
現在開示されている主題は、2010年1月29日付けで出願された米国特許第61/336,993号と、2010年5月3日付けで出願された米国特許第61/343,753号の利益および優先権を主張するものであり、それらの開示は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
政府の権利
現在開示されている主題は、環境保護庁により与えられたGrant No.R−829762−01−0に基づき、米国政府の支援によって成されたものである。したがって、米国政府は、現在開示されている主題に一定の権利を有する。
【0003】
本明細書に開示されている主題は、全般的に、粒子状物質を細胞サンプル上に捕集し堆積させるシステムおよび方法に関する。さらに詳細には、本明細書に開示されている主題は、粒子状物質に対する培養されたヒト肺細胞のインビトロ暴露のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
粒子状物質(PM: particulate matter)が、特に世界の成長都市における毎年何万という死を含む、大気汚染に起因する健康への影響のかなりの割合に関与することが証明されているが、傷害メカニズム、およびこの複合汚染の何の要因源および成分が最たる原因であるのかということに関する多くの問題が残されている。例えば、科学者が研究室でPMの既知の成分に関する従来の毒性研究を実施した場合、我々の周囲の空気中に認められる暴露レベルでは、健康への影響がほとんど見つからないことが多い。この結果は、人が汚染物質の混合物を吸い込んでいるためである可能性があり、該汚染物質の多くは測定できず、排ガスにおける太陽光による化学反応により空気中で産生されることが多い。実際、排ガスが太陽光中で時を経た場合、それらは、新しい排ガスよりも、ヒトの健康に対して5〜10倍有害になることが、研究により分かっている。
【0005】
これらの問題を念頭に置いて、インビトロ状態を正確に再現してPMの影響を測定することができる試験インビトロシステムおよび方法を開発する取組みが行われてきた。インビトロモデルは、細胞の自然環境における全ての細胞間相互作用を説明する能力に欠けるが、インビトロ暴露モデルを使用するシステムおよび方法は、研究者が特定の細胞種類への吸入毒の影響を調査することを可能にする可能性があり、したがって、これらの反応を媒介する潜在的な細胞機構を判定する際に役立つ可能性がある。
【0006】
過去数年間に亘って、インビボ暴露を厳密に模倣するインビトロ暴露モデルを開発することに関して、重要な進歩がもたらされてきた。詳細には、PMに対するインビトロ暴露を実施するいくつかの方法が開発されてきた。しかし、これらの方法は全て既知の欠点を有し、したがって、PMに起因するインビボの健康への影響を正確に表さない可能性がある。例えば、PMに対するインビトロ暴露に最も広く用いられている方法の1つが、フィルタ上にPMを捕集し、捕集されたPMを液体培地内に再懸濁し、次に、その混合物を細胞培地に添加するというものである。フィルタは、粒子状物質を効率的に捕集し、次の細胞との接触のために、粒子は液体中に容易に再懸濁される。しかし、フィルタ捕集の主な欠点には、PMからの揮発性有機化合物(VOC: volatile organic compound)の損失、捕集中の小粒子の凝集、回収工程中のかつ液体培地内にある間の可能性のある粒子の変化が含まれる。同様に、インパクタを使用して、大直径のPMをプレート上に比較的効率的に捕集することができるが、やはり、VOCは捕集中に失われる可能性があり、フィルタと同様に、捕集されたPMは、細胞と共に用いる前に、液体培地に移される必要がある。さらに、インパクタは、小粒子に関する低捕集効率のせいで、もっぱら比較的大径の粒子をサンプリングするために使用することができる。あるいは、粒子が中で捕集される液体を介してPMを含有する空気をサンプリングするために、インピンジャーが使用されてきた。また、液体培地内への粒子の移動により、対象の化合物および表面フィーチャが、変化するかまたは失われる可能性がある。このようにして液体培地内に粒子が捕集されると、溶液中のPM濃度を正確に判定することは困難であり、したがって、インビトロ暴露のためのインピンジャー捕集の有用性がさらに低減する。最近、例えば、PMを細胞上に直接堆積させるためにインパクション(impaction)を用いるインビトロシステムが開発され、試験されている。この暴露システムは、インビトロPM暴露のための遥かに改良された方法を提示するが、インパクション法は、大粒子に関しては有効な堆積法であるが、小粒子に関しては有用性が遥かに低いという問題を含む多数の欠点が残っている。
【0007】
電気集塵(ESP)は、PMの捕集およびモニタリングの広く用いられている方法である。従来、ESPは、居住環境および産業環境において、浮遊粉塵の管理におけるエアロゾル捕集の方法として用いられてきた。粒子は帯電され、次いで、流動全体に亘って粒子を浮遊させる強電場に晒され、最終的に、接地捕集板上に堆積する。PMがESPを用いて捕集された場合、捕集面に対して垂直な速度は、同じ流量でのインパクタサンプリングの速度より一桁低い。しかし、そのような利点があっても、培養されたヒト肺細胞の暴露は、呼吸器系内の環境と類似した環境を必要とし、かつ上皮細胞が帯電粒子に対して異なる反応をする可能性があるため、ESPの従来の方法は、PMの穏やかな捕集および肺細胞上への直接堆積に適切ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
結果として、インビトロ暴露のための既存のシステムおよび方法のどれも、インビボ暴露を正確に模倣することができない。詳細には、現在開発中のシステムおよび方法はどれも、特定の細胞種類への吸入毒の影響を媒介する細胞機構に適切に近似することができていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に基づき、粒子状物質を細胞サンプル上に捕集し堆積させるシステムおよび方法が提供されている。一態様では、予備濃縮なしで且ついかなる中間捕集工程もなしで、粒子状物質を組織上に捕集し堆積させる静電エアロゾルインビトロ暴露システムが提供されている。該システムは、粒子状物質を含有する空気を受け入れるように構成されている入口と、1つまたは複数の組織サンプルを保持するように構成されている容器と、組織サンプルの気液界面のための支持をもたらす多孔質膜と、電気集塵領域とを含み得る。入口で受け入れられた空気は、電気集塵領域を通って組織サンプル上を移動することができる。
【0010】
別の態様では、静電エアロゾルインビトロ暴露システムを用いて粒子状物質を捕集する方法が提供されている。本方法は、粒子状物質を含有する空気を受け入れるように構成されている入口、1つまたは複数の組織サンプルを保持するように構成されている容器、組織サンプルの気液界面のための支持をもたらす多孔質膜、および電気集塵領域を含む、粒子捕集装置を設ける工程を含み得る。本方法は、電気集塵領域内の粒子状物質を帯電させる工程と、帯電した粒子状物質を有する空気を組織サンプルの周囲に流動させる工程と、組織サンプル上に粒子状物質を堆積させる工程とをさらに含み得る。これらの工程は、粒子状物質の予備濃縮なしで、かつ水中またはフィルタ上での使用などのいかなる中間捕集工程もなしで、達成することができる。
【0011】
さらに別の態様では、静電エアロゾルインビトロ暴露システムを用いて粒子状物質を捕集する方法が提供されている。本方法は、組織サンプルを含む粒子捕集装置に粒子状物質を含有する空気を供給する工程と、粒子捕集装置内の粒子状物質を帯電させる工程と、帯電した粒子状物質を有する空気を組織サンプルの周囲に流動させる工程と、粒子状物質を組織サンプル上に直接堆積させる工程とを含み得る。やはり、これらの工程は、粒子状物質の予備濃縮なしで且ついかなる中間捕集工程もなしで、達成することができる。
【0012】
本明細書に開示されている主題の目的のいくつかは、本明細書に前述されており、かつそれらは、現在開示されている主題により全体的にまたは部分的に達成されるが、他の目的は、本明細書以下に最も良く示されている添付図面に関連して採用されている説明が進むにつれて明白になるであろう。
【0013】
本主題の特徴および利点は、単に説明的かつ非限定的な例として与えられている添付図面と併せて読まれるべきである以下の詳細な説明から、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムの側面切断図である。
【図2】現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムの上面切断図である。
【図3】現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システム内で使用するための、組織培養挿入物の側面切断図である。
【図4】現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムの側面切断図である。
【図5】現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムが中に含まれている環境照射室の概略図である。
【図6】現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムのブロック図である。
【図7】電源オン状態および電源オフ状態の両方における、現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムを出る粒子のサイズ間隔当たりの粒子個数のヒストグラムを示すグラフである。
【図8A】対照群の環境に対する、現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムの動作中に清浄な空気に暴露された細胞内での細胞毒性および炎症性メディエータ産出の比較を示すグラフである。
【図8B】対照群の環境に対する、現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムの動作中に清浄な空気に暴露された細胞内での細胞毒性および炎症性メディエータ産出の比較を示すグラフである。
【図9A】対照群の環境に対する、現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムの動作中に粒子を含有している空気に暴露された細胞内での細胞毒性および炎症性メディエータ産出の比較を示すグラフである。
【図9B】対照群の環境に対する、現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムの動作中に粒子を含有している空気に暴露された細胞内での細胞毒性および炎症性メディエータ産出の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本主題は、粒子状物質を細胞サンプル上に捕集し堆積させるシステムおよび方法を提供する。一態様では、本主題は、生存細胞を保持すること、該細胞上に異なる種類のPMを穏やかにかつ効率的に堆積させることの両方が可能な、静電エアロゾルインビトロ暴露システムを提供している。図1に示されている通り、全般的に100に指定されている該システムは、粒子捕集装置110を備えることができ、粒子捕集装置110は、その内部空間Sを出入りするアクセスを実現する入口112と出口114とを有する。
【0016】
内部空間S内で、電気集塵領域120が、反発板122と対向する捕集板124(例えば、陽極酸化アルミ捕集板)とを含み得る。集塵電圧を設定し、捕集板124と反発板122との間で維持することができる。例えば、集塵電圧は約1.4キロボルトに設定することができ、該集塵電圧は、PMの捕集中に細胞の生存を確実にするように助けることができる一方、より高い印加電圧により、板間でアーク放電が起こる可能性があり、より低い印加電圧により、捕集効率がより低くなる可能性がある。さらに、電気集塵領域120はまた、反発板122および捕集板124の前に(before or in front of)(すなわち、入口112のより近くに)配置することができるコロナユニット130を含み得る。コロナユニット130は、入口112を通って粒子捕集装置110内に受け入れられたPMを帯電させるために使用することができる。具体的には、コロナシステム130は、それらの間を通過するPMに帯電を与えるために共に動作可能である、コロナ電線132と、対向するコロナ電力板134とを含み得る。例えば、コロナ電線132は、約7.5μAの電流まで帯電させることができる。このようにして、入口112を通って受け入れられた粒子は帯電され、次いで、流動の全体に亘って粒子を浮遊させかつ捕集板124上に堆積させる強電場に晒されることが可能である。
【0017】
当然のことながら、コロナ電線132などのコロナ電線が、ことによると暴露空気流の成分と反応し、その化学組成を変化させる可能性があるであろう少量のオゾンを産生する可能性がある。例えば、1L/分のサンプルレートで1.5μAのコロナ電流設定で動作した場合、粒子を帯電させるのに使用される、システム100のコロナユニット130は、1時間の動作後、排気中に平均60ppbのオゾンを産生し得る。このオゾン暴露に加えて、また、粒子を堆積させるためにサンプラ内に印加された電場がデバイス内の細胞に悪影響を及ぼすであろう可能性に関する懸念が存在し得ることが分かる。
【0018】
しかし、試験により、コロナユニット130が上記で検討されたものより高い電流設定で動作している場合でも、産生されたオゾンおよび集塵フィールドはサンプル細胞に顕著な悪影響をもたらさないことが証明されている。具体的には、コロナ電線132が約7.5μAの電流を有するように調節することにより、依然としてオゾン産生を軽減すると同時に、電気集塵領域120内での堆積のために十分にPMが帯電される。さらに、暴露気流がシステム100を通過する際、カルボニルを産生する化学反応またはカルボニルと反応する化学反応は起こらず、システム100を通って流動するd−リモネンと反応するコロナ電線からのオゾンに起因する、観察可能な粒子産生もまたないと考えられる。
【0019】
さらに、システム100は、フライス加工などにより、捕集板124に形成されている1つまたは複数の井戸状穴部126(例えば、円形井戸状穴部)をさらに含み得る。例えば、円形井戸状穴部126は、深さ約0.6cm、直径3.5cmとすることができ、コロナ電線132から約3.75cmに中心を置くことができる。円形井戸状穴部126内に配置されるので、皿部127が、暴露中に組織培地CMを受け入れるように構成することができる。皿部127は、非反応性金属であるため培地CMに干渉しないチタンで構成することが可能であり、該皿部は、複数の組織培地挿入物128(例えば、各々0.69cm2の表面積を有するミリセル)を含むことが可能であり、その例が図3に示されている。例えば、図2は、4つのそのような挿入物128を含んでいる皿部127を示す。さらに、2つ以上の井戸状穴部126を、捕集板124に形成することができる。(例えば、図4参照)
【0020】
1つの特定の例では、いくつかの肺胞II型細胞特性を維持しているヒト肺上皮細胞株からのA549細胞を、円形井戸状穴部126内に配置されるサンプルとして使用することができる。A549細胞の細胞層CLを、完全培地(例えば、F12K培地、抗生物質[ペニシリン/ストレプトマイシン0.01%]を添加したウシ胎仔血清10%)内のコラーゲンを被覆した多孔質膜129上で培養することができる。皿部127の挿入物128の深さは、組織培養挿入物128の上縁部が、システム100の皿部127の縁部と同じ高さであることを可能にするような大きさ(例えば、約0.5cm)に作ることができる。細胞層CL内の細胞がコンフルエントに至ると、かつ暴露の数時間前に、完全培地は無血清培地(例えば、F12K培地、抗生物質[ペニシリン/ストレプトマイシン0.01%]を添加したウシ血清アルブミン1.5μg/ml)と交換することができる。システム100内での暴露の直前に、培地は、膜の頂端側から除去することができる一方、培地は、残留する多孔質膜129との接触により、基底外側に残留させることができる。そのような装置は、細胞層CLに基底外側から無血清培地からの養分を供給しながら、培地からの顕著な干渉なしに気液界面を横断してシステム100により送達されるサンプルに対する、肺上皮細胞の細胞層CLの直接暴露を容易にする。
【0021】
図5に示されている通り、システム100は、所望の温度(例えば、約37℃)で保持されている組織培養インキュベータ200内に収容することができる。また、インキュベータ200は、肺細胞ガス暴露室210を収容することができる。暴露中の粒子損失を防止するために、システム100に、炭素含浸シリコン管類によるなど、粒子を含有する空気混合物を(例えば、入口112経由で)供給することができる。清浄な室空気は、(例えば、5%濃度を達成するように)二酸化炭素源220からのCO2と混合することができる。該混合物は、該システムを用いて暴露を実施するために、必要に応じて1時間以上、1L/分(0.05L/分でCO2を含む)でシステム100を通って流動することができるようになる。さらに、システム100は、屋外大気反応室300と連通して配置することができ、該屋外大気反応室は、太陽光中で流入排ガスを「老化させ」て、排ガスにおける太陽光による化学反応により、空気中で産生される汚染物質の測定を可能にするために使用することができる。屋外大気反応室300または他の試験源からの、粒子を含有するサンプルはまた、CO2と混合することができ、一定の流量1L/分で、デバイスを通して取り出すことができる。
【0022】
システム100に供給される、粒子を含有する空気混合物の特定の汚染要因源または成分に関わらず、例えば図6に示されている通り、システム100を通る流動は、質量流量コントローラ140により制御することができる。流入流の特徴は、流動調整モジュール142で、所望のレベルであるように制御することができる。例えば、流動調整モジュール142は、単独でまたは他の外部構成要素(例えば、インキュベータ200)との組合せで、流入流の特徴を注意深く制御するために、温度制御デバイス、湿度制御デバイス、二酸化炭素制御デバイス等を含み得る。これら構成要素の動作は、各々がユーザインターフェース148を使用して動作することができるアナログ制御モジュール144および/またはデジタル制御モジュール146により、制御することができる。
【0023】
動作中、電場がオフにされている間、デバイス内で顕著な粒子堆積は起こらない。しかし、電場がオンにされると、デバイスに進入する粒子の大部分が堆積される可能性があり、残余部分は出口114を通って流出する。具体的には、粒子捕集効率は、デバイスを通過する全質量の98%を意味する、19nmと882nmの間の全粒子のおおよそ90%であると判定することができる。図7は、各サイズ範囲の個数の2つのヒストグラムとして例示的走査型移動度粒径測定器のデータを示し、電源オフ(P0)および電源オン(P1)の両方に関して、システム100の全捕集板に関する捕集効率を示す。さらに、皿部127は捕集板124の一部のみを占有している可能性があるが、堆積分析により、粒子は、質量の約36〜48%が組織培養挿入物上に直接堆積して、細胞上に効率的に堆積し、したがって、サブマイクロメータ粒子に対する効率的な暴露がもたらされることが分かっている。堆積が如何に均一であるかを評価するために、各膜支持体ごとに各細胞培養挿入物の質量を別個に計算し、類似した質量堆積を有することを示すことができる。
【0024】
このようにして、システム100により受け入れられたサンプルは、基底外側から養分を供給しながら、培地からの顕著な干渉なしで、気液界面に維持されている細胞上に直接堆積される。例えば、完全に陥凹した井戸状穴部は、捕集された粒子の放物線型堆積パターンDPの範囲内にあるように配置することができ、それにより、細胞培養表面上全体の比較的均一な粒子堆積を促進することができる。堆積される粒子状物質の量および種類、ならびに該粒子状物質の化学的特性および物理的特性は、次いで、粒子分析デバイス150(例えば、データ相関デバイス)により、測定し、分析することができる。
【0025】
上記で検討されたシステムおよび方法とは対照的に、インビトロ粒子暴露の従来の方法は、粒子をその本来の状態で細胞上に直接堆積させないかまたは微細粒子および超微粒子の堆積には全体的に非効率的である。粒子を溶液中に再懸濁する方法は、粒子の表面に分配されたVOCを損失することにより、または表面特性を変化させることにより、粒子の組成を変える可能性がある。これらの捕集方法はまた、粒子のサイズ分布を変化させて、非現実的な暴露につながる可能性がある。
【0026】
本明細書に記載されている通り、システム100は、新たな欠点を導入することなく、従来方法のこれら欠点の多くを克服する。システム100内の組織培養挿入物上に培養されている細胞表面上への粒子の堆積は、それらが電場に晒された時の帯電粒子の偏向(deflection)に基づく可能性がある。この方法論は、微細粒子のサンプリングおよび測定において広く用いられてきており、その帯電機構および捕集機構はよく適してきた。
【0027】
さらに、ヒト肺細胞での試験により、清浄な空気サンプルを用いてシステム100内で暴露された細胞には、電場が印加されてもされなくても、顕著な細胞毒性または炎症性メディエータ産生が起こらなかったことが実証されている。図8Aおよび8Bに示されている通り、例えば、清浄な空気に暴露された細胞の炎症性反応および細胞毒性の試験が、電場が長時間(例えば、1時間)電源オフである間および電場が同じ時間だけ電源オンである間の両方に実施され、等しい暴露期間でインキュベータ内に維持されている細胞の場合と、統計的相違がないという結果を生じた。同様に、システム100内のコロナ電線により産生される低オゾン濃度(例えば、約60ppb)に対する反応がない。システム100内の細胞上に堆積された生物学的に不活性な粒子の非常に小さい帯電も低堆積速度(例えば、約0.763cm/秒)も、顕著な炎症性反応を生じない。追加試験により、d−リモネンのような非常に反応性のVOCについても、デバイスを通る空気サンプルの通過中に検出可能な反応は生じず、いかなるSOA形成も明らかでないことがさらに実証されている。したがって、粒子のデノボ生成は存在しない。
【0028】
現実的なPMを含有する大気サンプルを用いてシステム100を試験するために、他の毒性測定でも評価されたPMサンプルに対する暴露に起因する影響を測定することが必要である可能性がある。例えば液体再懸濁を用いるディーゼル排気(DE)に対する暴露は、インターロイキン(IL)−8などの炎症性メディエータ産生を誘発し得ることを実証する多くの研究がある。しかし、図9Aおよび図9Bに示されている通り、電源がオフの状態でシステム100内でDEに暴露された細胞は、対照群を超える、炎症性反応のいかなる変化も呈さない。デバイスが電源オフである場合に集塵される粒子がほとんどないことを考慮すると、これらの結果は驚くことではない。
【0029】
対照的に、図9Aおよび図9Bを再度参照すると、システム100の静電場がオンの状態で同じDE混合物に暴露された細胞は、対照群と比較して、細胞毒性および炎症性メディエータ産生の両方で3倍増加した。液体培地中で再懸濁されたDE粒子を使用する研究においても、同様の結果が得られている。通常、再懸濁研究は、顕著な炎症性メディエータ反応を検出するために、培地中に再懸濁されている50μg/mlと400μg/mlの間のDE粒子を必要とする。比較により、システム100の堆積効率を考慮すると、システム100を用いたDE暴露実験中に各組織培養挿入物上に堆積されるPMのおおよその質量は、サンプルおよび暴露時間および選択的サンプルレートに応じて、おおよそ2.64±0.66μgのDE粒子(4.18±1.04μg/cm2)である可能性がある。これらのデータは、システム100を使用するDE粒子に対する暴露が、同じまたはさらに低い粒子濃度で、顕著な細胞への悪影響をもたらし、したがって、従来のインビトロ粒子暴露法より精度が高い可能性があることを示す。
【0030】
共に採用されると、これらのデータは、本明細書に記載されているシステム100などの、適切に設計され、注意深く作動される電気粒子集塵デバイスが、粒子状物質を含有する大気汚染混合物に対するインビトロ暴露のための従来の暴露法に対する優れた代替案であることを実証する。この技術は、細胞暴露の前に粒子を捕集しかつ液体中に再懸濁する必要なしに、研究者がインビトロ細胞を粒子を含有する空気流に暴露することを可能にし得る。結果として、システム100は、毒性試験のために、空気中でサンプリングされるエアロゾルまたは粒子を、「予備濃縮」なしで、現在行われているようないかなる中間捕集工程もなしで、本来の変化していない形状および組成で捕集し、かつ培養された細胞上に直接堆積させる能力、および大気汚染の健康への影響にとって興味深い広範なサイズに亘る粒径を用いて、このことをより均一に行う能力を実現する。このデバイスに類似した現在のデバイスが、非常に大きな粒子または非常に小さな粒子のどちらかに機能上限定されているか、またはサイズすなわちサンプル外形サイズに大きく影響される捕集効率を有する。したがって、システム100は、より効率的であるばかりでなく、暴露前に粒子の物理化学的特性を変化させる可能性を回避し、それにより、吸入粒子状物質の、可能性のある人間の健康への影響についてのより現実的な評価をもたらす。
【0031】
さらに、本来の変化していない形状および組成でエアロゾルまたは粒子を捕集する能力と共に、先行するシステムおよび方法に対するシステム100の比較的強化された捕集効率が、毒性測定のためばかりでなく、粒子の化学的特性および物理的特性の評価のために、望ましい可能性がある。例えば、上記で検討されかつ図6に示されている通り、堆積される粒子状物質の量および種類は、粒子分析デバイス150により測定し分析することができる。
【0032】
システム100は、複数の方法において革新的である。該システムは可搬式であるので、大気質が懸念される領域または人が排ガス関連の健康問題を経験した領域に容易に配置することができる。炎症または細胞死などの肺細胞への影響を研究することにより、暴露の健康への影響および潜在的深刻さを理解することができる。従来の空気監視機器と併用した場合、システム100は、確立された大気質尺度とヒトの健康への影響との間の、直接的な高度に正確な相関関係を示す。システム100は、ガスのいくつかが以前は未知であり測定できなかった場合にも、損傷を引き起こす有毒ガスの毒性および組成を発見するために分析することができる結果をもたらし得る。システム100は、リアルタイムの結果をもたらして、危険レベルの大気汚染に対する迅速な対応を可能にすることができる。最後に、その感度および最高度の捕集効率は、現在使用中の他のモデルに並ぶものがない。
【0033】
実際、本明細書に開示されているシステムおよび方法が、米国環境保護庁(EPA)が、通常空気中に認められる濃度レベルでの汚染物質の影響をきめ細かく測定すること、現在市場に出ているデバイスでは不可能なことを可能にするので、EPAは、本明細書に開示されているシステムおよび方法の現状打破の可能性を高く評価する可能性がある。システム100の重要な用途には、例えば、特定の汚染物質が如何にしてヒトの健康に悪影響を及ぼすかを判定すること、または産業発生源に近い「多発地域」を監視すること;工業労働現場、職場、または鉱業労働現場の空気の質を監視すること;病院、介護施設、学校、寮、および潜在的な社会的弱者が集中する他の環境の進行中の空気の質を監視すること;交通、スモッグ、または産業的放出に起因する大気毒性の変化を、喘息、COPD、および他の汚染関連疾患のための入院および緊急治療室滞在の増加と関連づけること;患者に対するより的を絞った予防および介護を実現するために、化学的毒と他の呼吸毒(例えば、黴および昆虫)とを見分ける際に医療従事者を補助すること;軍事基地、有害廃棄物の廃棄場所(toxic sites)、軍需品製造センタ(munitions manufacturing centers)、軍隊および周辺の地域社会に悪影響を及ぼす毒および汚染物質に関する交戦地帯を監視すること;大火などの自然災害後に、または911のようなテロ攻撃後に空気の質を調査すること;塩素除染の試み(例えば、炭疽菌攻撃の場合)後に空気の質および安全を評価すること;最も有毒な汚染物質を予測しランク付けするモデルを開発して、公害防止政策および擁護の取組みを導くこと;煤煙および自動車排ガスなどの大気汚染物質の動物研究に人道的代替物を提供すること;および毒物学研究者が様々な毒素に起因する傷害機構を理解し、かつ気道の種々の部分における様々な汚染物質の健康への影響を研究することを助けることが含まれる可能性があるが、それらに限定されない。
【0034】
本主題は、その精神および本質的特徴から逸脱することなく、他の形で具体化することができる。したがって、記載されている本実施形態は、あらゆる点で例示的であり、限定的でないと見なされる。本主題をある好適な実施形態の観点で記載したが、当業者に明らかな他の実施形態もまた、本主題の範囲内に入る。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
現在開示されている主題は、2010年1月29日付けで出願された米国特許第61/336,993号と、2010年5月3日付けで出願された米国特許第61/343,753号の利益および優先権を主張するものであり、それらの開示は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
政府の権利
現在開示されている主題は、環境保護庁により与えられたGrant No.R−829762−01−0に基づき、米国政府の支援によって成されたものである。したがって、米国政府は、現在開示されている主題に一定の権利を有する。
【0003】
本明細書に開示されている主題は、全般的に、粒子状物質を細胞サンプル上に捕集し堆積させるシステムおよび方法に関する。さらに詳細には、本明細書に開示されている主題は、粒子状物質に対する培養されたヒト肺細胞のインビトロ暴露のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
粒子状物質(PM: particulate matter)が、特に世界の成長都市における毎年何万という死を含む、大気汚染に起因する健康への影響のかなりの割合に関与することが証明されているが、傷害メカニズム、およびこの複合汚染の何の要因源および成分が最たる原因であるのかということに関する多くの問題が残されている。例えば、科学者が研究室でPMの既知の成分に関する従来の毒性研究を実施した場合、我々の周囲の空気中に認められる暴露レベルでは、健康への影響がほとんど見つからないことが多い。この結果は、人が汚染物質の混合物を吸い込んでいるためである可能性があり、該汚染物質の多くは測定できず、排ガスにおける太陽光による化学反応により空気中で産生されることが多い。実際、排ガスが太陽光中で時を経た場合、それらは、新しい排ガスよりも、ヒトの健康に対して5〜10倍有害になることが、研究により分かっている。
【0005】
これらの問題を念頭に置いて、インビトロ状態を正確に再現してPMの影響を測定することができる試験インビトロシステムおよび方法を開発する取組みが行われてきた。インビトロモデルは、細胞の自然環境における全ての細胞間相互作用を説明する能力に欠けるが、インビトロ暴露モデルを使用するシステムおよび方法は、研究者が特定の細胞種類への吸入毒の影響を調査することを可能にする可能性があり、したがって、これらの反応を媒介する潜在的な細胞機構を判定する際に役立つ可能性がある。
【0006】
過去数年間に亘って、インビボ暴露を厳密に模倣するインビトロ暴露モデルを開発することに関して、重要な進歩がもたらされてきた。詳細には、PMに対するインビトロ暴露を実施するいくつかの方法が開発されてきた。しかし、これらの方法は全て既知の欠点を有し、したがって、PMに起因するインビボの健康への影響を正確に表さない可能性がある。例えば、PMに対するインビトロ暴露に最も広く用いられている方法の1つが、フィルタ上にPMを捕集し、捕集されたPMを液体培地内に再懸濁し、次に、その混合物を細胞培地に添加するというものである。フィルタは、粒子状物質を効率的に捕集し、次の細胞との接触のために、粒子は液体中に容易に再懸濁される。しかし、フィルタ捕集の主な欠点には、PMからの揮発性有機化合物(VOC: volatile organic compound)の損失、捕集中の小粒子の凝集、回収工程中のかつ液体培地内にある間の可能性のある粒子の変化が含まれる。同様に、インパクタを使用して、大直径のPMをプレート上に比較的効率的に捕集することができるが、やはり、VOCは捕集中に失われる可能性があり、フィルタと同様に、捕集されたPMは、細胞と共に用いる前に、液体培地に移される必要がある。さらに、インパクタは、小粒子に関する低捕集効率のせいで、もっぱら比較的大径の粒子をサンプリングするために使用することができる。あるいは、粒子が中で捕集される液体を介してPMを含有する空気をサンプリングするために、インピンジャーが使用されてきた。また、液体培地内への粒子の移動により、対象の化合物および表面フィーチャが、変化するかまたは失われる可能性がある。このようにして液体培地内に粒子が捕集されると、溶液中のPM濃度を正確に判定することは困難であり、したがって、インビトロ暴露のためのインピンジャー捕集の有用性がさらに低減する。最近、例えば、PMを細胞上に直接堆積させるためにインパクション(impaction)を用いるインビトロシステムが開発され、試験されている。この暴露システムは、インビトロPM暴露のための遥かに改良された方法を提示するが、インパクション法は、大粒子に関しては有効な堆積法であるが、小粒子に関しては有用性が遥かに低いという問題を含む多数の欠点が残っている。
【0007】
電気集塵(ESP)は、PMの捕集およびモニタリングの広く用いられている方法である。従来、ESPは、居住環境および産業環境において、浮遊粉塵の管理におけるエアロゾル捕集の方法として用いられてきた。粒子は帯電され、次いで、流動全体に亘って粒子を浮遊させる強電場に晒され、最終的に、接地捕集板上に堆積する。PMがESPを用いて捕集された場合、捕集面に対して垂直な速度は、同じ流量でのインパクタサンプリングの速度より一桁低い。しかし、そのような利点があっても、培養されたヒト肺細胞の暴露は、呼吸器系内の環境と類似した環境を必要とし、かつ上皮細胞が帯電粒子に対して異なる反応をする可能性があるため、ESPの従来の方法は、PMの穏やかな捕集および肺細胞上への直接堆積に適切ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
結果として、インビトロ暴露のための既存のシステムおよび方法のどれも、インビボ暴露を正確に模倣することができない。詳細には、現在開発中のシステムおよび方法はどれも、特定の細胞種類への吸入毒の影響を媒介する細胞機構に適切に近似することができていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に基づき、粒子状物質を細胞サンプル上に捕集し堆積させるシステムおよび方法が提供されている。一態様では、予備濃縮なしで且ついかなる中間捕集工程もなしで、粒子状物質を組織上に捕集し堆積させる静電エアロゾルインビトロ暴露システムが提供されている。該システムは、粒子状物質を含有する空気を受け入れるように構成されている入口と、1つまたは複数の組織サンプルを保持するように構成されている容器と、組織サンプルの気液界面のための支持をもたらす多孔質膜と、電気集塵領域とを含み得る。入口で受け入れられた空気は、電気集塵領域を通って組織サンプル上を移動することができる。
【0010】
別の態様では、静電エアロゾルインビトロ暴露システムを用いて粒子状物質を捕集する方法が提供されている。本方法は、粒子状物質を含有する空気を受け入れるように構成されている入口、1つまたは複数の組織サンプルを保持するように構成されている容器、組織サンプルの気液界面のための支持をもたらす多孔質膜、および電気集塵領域を含む、粒子捕集装置を設ける工程を含み得る。本方法は、電気集塵領域内の粒子状物質を帯電させる工程と、帯電した粒子状物質を有する空気を組織サンプルの周囲に流動させる工程と、組織サンプル上に粒子状物質を堆積させる工程とをさらに含み得る。これらの工程は、粒子状物質の予備濃縮なしで、かつ水中またはフィルタ上での使用などのいかなる中間捕集工程もなしで、達成することができる。
【0011】
さらに別の態様では、静電エアロゾルインビトロ暴露システムを用いて粒子状物質を捕集する方法が提供されている。本方法は、組織サンプルを含む粒子捕集装置に粒子状物質を含有する空気を供給する工程と、粒子捕集装置内の粒子状物質を帯電させる工程と、帯電した粒子状物質を有する空気を組織サンプルの周囲に流動させる工程と、粒子状物質を組織サンプル上に直接堆積させる工程とを含み得る。やはり、これらの工程は、粒子状物質の予備濃縮なしで且ついかなる中間捕集工程もなしで、達成することができる。
【0012】
本明細書に開示されている主題の目的のいくつかは、本明細書に前述されており、かつそれらは、現在開示されている主題により全体的にまたは部分的に達成されるが、他の目的は、本明細書以下に最も良く示されている添付図面に関連して採用されている説明が進むにつれて明白になるであろう。
【0013】
本主題の特徴および利点は、単に説明的かつ非限定的な例として与えられている添付図面と併せて読まれるべきである以下の詳細な説明から、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムの側面切断図である。
【図2】現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムの上面切断図である。
【図3】現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システム内で使用するための、組織培養挿入物の側面切断図である。
【図4】現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムの側面切断図である。
【図5】現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムが中に含まれている環境照射室の概略図である。
【図6】現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムのブロック図である。
【図7】電源オン状態および電源オフ状態の両方における、現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムを出る粒子のサイズ間隔当たりの粒子個数のヒストグラムを示すグラフである。
【図8A】対照群の環境に対する、現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムの動作中に清浄な空気に暴露された細胞内での細胞毒性および炎症性メディエータ産出の比較を示すグラフである。
【図8B】対照群の環境に対する、現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムの動作中に清浄な空気に暴露された細胞内での細胞毒性および炎症性メディエータ産出の比較を示すグラフである。
【図9A】対照群の環境に対する、現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムの動作中に粒子を含有している空気に暴露された細胞内での細胞毒性および炎症性メディエータ産出の比較を示すグラフである。
【図9B】対照群の環境に対する、現在開示されている主題の実施形態による静電エアロゾルインビトロ暴露システムの動作中に粒子を含有している空気に暴露された細胞内での細胞毒性および炎症性メディエータ産出の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本主題は、粒子状物質を細胞サンプル上に捕集し堆積させるシステムおよび方法を提供する。一態様では、本主題は、生存細胞を保持すること、該細胞上に異なる種類のPMを穏やかにかつ効率的に堆積させることの両方が可能な、静電エアロゾルインビトロ暴露システムを提供している。図1に示されている通り、全般的に100に指定されている該システムは、粒子捕集装置110を備えることができ、粒子捕集装置110は、その内部空間Sを出入りするアクセスを実現する入口112と出口114とを有する。
【0016】
内部空間S内で、電気集塵領域120が、反発板122と対向する捕集板124(例えば、陽極酸化アルミ捕集板)とを含み得る。集塵電圧を設定し、捕集板124と反発板122との間で維持することができる。例えば、集塵電圧は約1.4キロボルトに設定することができ、該集塵電圧は、PMの捕集中に細胞の生存を確実にするように助けることができる一方、より高い印加電圧により、板間でアーク放電が起こる可能性があり、より低い印加電圧により、捕集効率がより低くなる可能性がある。さらに、電気集塵領域120はまた、反発板122および捕集板124の前に(before or in front of)(すなわち、入口112のより近くに)配置することができるコロナユニット130を含み得る。コロナユニット130は、入口112を通って粒子捕集装置110内に受け入れられたPMを帯電させるために使用することができる。具体的には、コロナシステム130は、それらの間を通過するPMに帯電を与えるために共に動作可能である、コロナ電線132と、対向するコロナ電力板134とを含み得る。例えば、コロナ電線132は、約7.5μAの電流まで帯電させることができる。このようにして、入口112を通って受け入れられた粒子は帯電され、次いで、流動の全体に亘って粒子を浮遊させかつ捕集板124上に堆積させる強電場に晒されることが可能である。
【0017】
当然のことながら、コロナ電線132などのコロナ電線が、ことによると暴露空気流の成分と反応し、その化学組成を変化させる可能性があるであろう少量のオゾンを産生する可能性がある。例えば、1L/分のサンプルレートで1.5μAのコロナ電流設定で動作した場合、粒子を帯電させるのに使用される、システム100のコロナユニット130は、1時間の動作後、排気中に平均60ppbのオゾンを産生し得る。このオゾン暴露に加えて、また、粒子を堆積させるためにサンプラ内に印加された電場がデバイス内の細胞に悪影響を及ぼすであろう可能性に関する懸念が存在し得ることが分かる。
【0018】
しかし、試験により、コロナユニット130が上記で検討されたものより高い電流設定で動作している場合でも、産生されたオゾンおよび集塵フィールドはサンプル細胞に顕著な悪影響をもたらさないことが証明されている。具体的には、コロナ電線132が約7.5μAの電流を有するように調節することにより、依然としてオゾン産生を軽減すると同時に、電気集塵領域120内での堆積のために十分にPMが帯電される。さらに、暴露気流がシステム100を通過する際、カルボニルを産生する化学反応またはカルボニルと反応する化学反応は起こらず、システム100を通って流動するd−リモネンと反応するコロナ電線からのオゾンに起因する、観察可能な粒子産生もまたないと考えられる。
【0019】
さらに、システム100は、フライス加工などにより、捕集板124に形成されている1つまたは複数の井戸状穴部126(例えば、円形井戸状穴部)をさらに含み得る。例えば、円形井戸状穴部126は、深さ約0.6cm、直径3.5cmとすることができ、コロナ電線132から約3.75cmに中心を置くことができる。円形井戸状穴部126内に配置されるので、皿部127が、暴露中に組織培地CMを受け入れるように構成することができる。皿部127は、非反応性金属であるため培地CMに干渉しないチタンで構成することが可能であり、該皿部は、複数の組織培地挿入物128(例えば、各々0.69cm2の表面積を有するミリセル)を含むことが可能であり、その例が図3に示されている。例えば、図2は、4つのそのような挿入物128を含んでいる皿部127を示す。さらに、2つ以上の井戸状穴部126を、捕集板124に形成することができる。(例えば、図4参照)
【0020】
1つの特定の例では、いくつかの肺胞II型細胞特性を維持しているヒト肺上皮細胞株からのA549細胞を、円形井戸状穴部126内に配置されるサンプルとして使用することができる。A549細胞の細胞層CLを、完全培地(例えば、F12K培地、抗生物質[ペニシリン/ストレプトマイシン0.01%]を添加したウシ胎仔血清10%)内のコラーゲンを被覆した多孔質膜129上で培養することができる。皿部127の挿入物128の深さは、組織培養挿入物128の上縁部が、システム100の皿部127の縁部と同じ高さであることを可能にするような大きさ(例えば、約0.5cm)に作ることができる。細胞層CL内の細胞がコンフルエントに至ると、かつ暴露の数時間前に、完全培地は無血清培地(例えば、F12K培地、抗生物質[ペニシリン/ストレプトマイシン0.01%]を添加したウシ血清アルブミン1.5μg/ml)と交換することができる。システム100内での暴露の直前に、培地は、膜の頂端側から除去することができる一方、培地は、残留する多孔質膜129との接触により、基底外側に残留させることができる。そのような装置は、細胞層CLに基底外側から無血清培地からの養分を供給しながら、培地からの顕著な干渉なしに気液界面を横断してシステム100により送達されるサンプルに対する、肺上皮細胞の細胞層CLの直接暴露を容易にする。
【0021】
図5に示されている通り、システム100は、所望の温度(例えば、約37℃)で保持されている組織培養インキュベータ200内に収容することができる。また、インキュベータ200は、肺細胞ガス暴露室210を収容することができる。暴露中の粒子損失を防止するために、システム100に、炭素含浸シリコン管類によるなど、粒子を含有する空気混合物を(例えば、入口112経由で)供給することができる。清浄な室空気は、(例えば、5%濃度を達成するように)二酸化炭素源220からのCO2と混合することができる。該混合物は、該システムを用いて暴露を実施するために、必要に応じて1時間以上、1L/分(0.05L/分でCO2を含む)でシステム100を通って流動することができるようになる。さらに、システム100は、屋外大気反応室300と連通して配置することができ、該屋外大気反応室は、太陽光中で流入排ガスを「老化させ」て、排ガスにおける太陽光による化学反応により、空気中で産生される汚染物質の測定を可能にするために使用することができる。屋外大気反応室300または他の試験源からの、粒子を含有するサンプルはまた、CO2と混合することができ、一定の流量1L/分で、デバイスを通して取り出すことができる。
【0022】
システム100に供給される、粒子を含有する空気混合物の特定の汚染要因源または成分に関わらず、例えば図6に示されている通り、システム100を通る流動は、質量流量コントローラ140により制御することができる。流入流の特徴は、流動調整モジュール142で、所望のレベルであるように制御することができる。例えば、流動調整モジュール142は、単独でまたは他の外部構成要素(例えば、インキュベータ200)との組合せで、流入流の特徴を注意深く制御するために、温度制御デバイス、湿度制御デバイス、二酸化炭素制御デバイス等を含み得る。これら構成要素の動作は、各々がユーザインターフェース148を使用して動作することができるアナログ制御モジュール144および/またはデジタル制御モジュール146により、制御することができる。
【0023】
動作中、電場がオフにされている間、デバイス内で顕著な粒子堆積は起こらない。しかし、電場がオンにされると、デバイスに進入する粒子の大部分が堆積される可能性があり、残余部分は出口114を通って流出する。具体的には、粒子捕集効率は、デバイスを通過する全質量の98%を意味する、19nmと882nmの間の全粒子のおおよそ90%であると判定することができる。図7は、各サイズ範囲の個数の2つのヒストグラムとして例示的走査型移動度粒径測定器のデータを示し、電源オフ(P0)および電源オン(P1)の両方に関して、システム100の全捕集板に関する捕集効率を示す。さらに、皿部127は捕集板124の一部のみを占有している可能性があるが、堆積分析により、粒子は、質量の約36〜48%が組織培養挿入物上に直接堆積して、細胞上に効率的に堆積し、したがって、サブマイクロメータ粒子に対する効率的な暴露がもたらされることが分かっている。堆積が如何に均一であるかを評価するために、各膜支持体ごとに各細胞培養挿入物の質量を別個に計算し、類似した質量堆積を有することを示すことができる。
【0024】
このようにして、システム100により受け入れられたサンプルは、基底外側から養分を供給しながら、培地からの顕著な干渉なしで、気液界面に維持されている細胞上に直接堆積される。例えば、完全に陥凹した井戸状穴部は、捕集された粒子の放物線型堆積パターンDPの範囲内にあるように配置することができ、それにより、細胞培養表面上全体の比較的均一な粒子堆積を促進することができる。堆積される粒子状物質の量および種類、ならびに該粒子状物質の化学的特性および物理的特性は、次いで、粒子分析デバイス150(例えば、データ相関デバイス)により、測定し、分析することができる。
【0025】
上記で検討されたシステムおよび方法とは対照的に、インビトロ粒子暴露の従来の方法は、粒子をその本来の状態で細胞上に直接堆積させないかまたは微細粒子および超微粒子の堆積には全体的に非効率的である。粒子を溶液中に再懸濁する方法は、粒子の表面に分配されたVOCを損失することにより、または表面特性を変化させることにより、粒子の組成を変える可能性がある。これらの捕集方法はまた、粒子のサイズ分布を変化させて、非現実的な暴露につながる可能性がある。
【0026】
本明細書に記載されている通り、システム100は、新たな欠点を導入することなく、従来方法のこれら欠点の多くを克服する。システム100内の組織培養挿入物上に培養されている細胞表面上への粒子の堆積は、それらが電場に晒された時の帯電粒子の偏向(deflection)に基づく可能性がある。この方法論は、微細粒子のサンプリングおよび測定において広く用いられてきており、その帯電機構および捕集機構はよく適してきた。
【0027】
さらに、ヒト肺細胞での試験により、清浄な空気サンプルを用いてシステム100内で暴露された細胞には、電場が印加されてもされなくても、顕著な細胞毒性または炎症性メディエータ産生が起こらなかったことが実証されている。図8Aおよび8Bに示されている通り、例えば、清浄な空気に暴露された細胞の炎症性反応および細胞毒性の試験が、電場が長時間(例えば、1時間)電源オフである間および電場が同じ時間だけ電源オンである間の両方に実施され、等しい暴露期間でインキュベータ内に維持されている細胞の場合と、統計的相違がないという結果を生じた。同様に、システム100内のコロナ電線により産生される低オゾン濃度(例えば、約60ppb)に対する反応がない。システム100内の細胞上に堆積された生物学的に不活性な粒子の非常に小さい帯電も低堆積速度(例えば、約0.763cm/秒)も、顕著な炎症性反応を生じない。追加試験により、d−リモネンのような非常に反応性のVOCについても、デバイスを通る空気サンプルの通過中に検出可能な反応は生じず、いかなるSOA形成も明らかでないことがさらに実証されている。したがって、粒子のデノボ生成は存在しない。
【0028】
現実的なPMを含有する大気サンプルを用いてシステム100を試験するために、他の毒性測定でも評価されたPMサンプルに対する暴露に起因する影響を測定することが必要である可能性がある。例えば液体再懸濁を用いるディーゼル排気(DE)に対する暴露は、インターロイキン(IL)−8などの炎症性メディエータ産生を誘発し得ることを実証する多くの研究がある。しかし、図9Aおよび図9Bに示されている通り、電源がオフの状態でシステム100内でDEに暴露された細胞は、対照群を超える、炎症性反応のいかなる変化も呈さない。デバイスが電源オフである場合に集塵される粒子がほとんどないことを考慮すると、これらの結果は驚くことではない。
【0029】
対照的に、図9Aおよび図9Bを再度参照すると、システム100の静電場がオンの状態で同じDE混合物に暴露された細胞は、対照群と比較して、細胞毒性および炎症性メディエータ産生の両方で3倍増加した。液体培地中で再懸濁されたDE粒子を使用する研究においても、同様の結果が得られている。通常、再懸濁研究は、顕著な炎症性メディエータ反応を検出するために、培地中に再懸濁されている50μg/mlと400μg/mlの間のDE粒子を必要とする。比較により、システム100の堆積効率を考慮すると、システム100を用いたDE暴露実験中に各組織培養挿入物上に堆積されるPMのおおよその質量は、サンプルおよび暴露時間および選択的サンプルレートに応じて、おおよそ2.64±0.66μgのDE粒子(4.18±1.04μg/cm2)である可能性がある。これらのデータは、システム100を使用するDE粒子に対する暴露が、同じまたはさらに低い粒子濃度で、顕著な細胞への悪影響をもたらし、したがって、従来のインビトロ粒子暴露法より精度が高い可能性があることを示す。
【0030】
共に採用されると、これらのデータは、本明細書に記載されているシステム100などの、適切に設計され、注意深く作動される電気粒子集塵デバイスが、粒子状物質を含有する大気汚染混合物に対するインビトロ暴露のための従来の暴露法に対する優れた代替案であることを実証する。この技術は、細胞暴露の前に粒子を捕集しかつ液体中に再懸濁する必要なしに、研究者がインビトロ細胞を粒子を含有する空気流に暴露することを可能にし得る。結果として、システム100は、毒性試験のために、空気中でサンプリングされるエアロゾルまたは粒子を、「予備濃縮」なしで、現在行われているようないかなる中間捕集工程もなしで、本来の変化していない形状および組成で捕集し、かつ培養された細胞上に直接堆積させる能力、および大気汚染の健康への影響にとって興味深い広範なサイズに亘る粒径を用いて、このことをより均一に行う能力を実現する。このデバイスに類似した現在のデバイスが、非常に大きな粒子または非常に小さな粒子のどちらかに機能上限定されているか、またはサイズすなわちサンプル外形サイズに大きく影響される捕集効率を有する。したがって、システム100は、より効率的であるばかりでなく、暴露前に粒子の物理化学的特性を変化させる可能性を回避し、それにより、吸入粒子状物質の、可能性のある人間の健康への影響についてのより現実的な評価をもたらす。
【0031】
さらに、本来の変化していない形状および組成でエアロゾルまたは粒子を捕集する能力と共に、先行するシステムおよび方法に対するシステム100の比較的強化された捕集効率が、毒性測定のためばかりでなく、粒子の化学的特性および物理的特性の評価のために、望ましい可能性がある。例えば、上記で検討されかつ図6に示されている通り、堆積される粒子状物質の量および種類は、粒子分析デバイス150により測定し分析することができる。
【0032】
システム100は、複数の方法において革新的である。該システムは可搬式であるので、大気質が懸念される領域または人が排ガス関連の健康問題を経験した領域に容易に配置することができる。炎症または細胞死などの肺細胞への影響を研究することにより、暴露の健康への影響および潜在的深刻さを理解することができる。従来の空気監視機器と併用した場合、システム100は、確立された大気質尺度とヒトの健康への影響との間の、直接的な高度に正確な相関関係を示す。システム100は、ガスのいくつかが以前は未知であり測定できなかった場合にも、損傷を引き起こす有毒ガスの毒性および組成を発見するために分析することができる結果をもたらし得る。システム100は、リアルタイムの結果をもたらして、危険レベルの大気汚染に対する迅速な対応を可能にすることができる。最後に、その感度および最高度の捕集効率は、現在使用中の他のモデルに並ぶものがない。
【0033】
実際、本明細書に開示されているシステムおよび方法が、米国環境保護庁(EPA)が、通常空気中に認められる濃度レベルでの汚染物質の影響をきめ細かく測定すること、現在市場に出ているデバイスでは不可能なことを可能にするので、EPAは、本明細書に開示されているシステムおよび方法の現状打破の可能性を高く評価する可能性がある。システム100の重要な用途には、例えば、特定の汚染物質が如何にしてヒトの健康に悪影響を及ぼすかを判定すること、または産業発生源に近い「多発地域」を監視すること;工業労働現場、職場、または鉱業労働現場の空気の質を監視すること;病院、介護施設、学校、寮、および潜在的な社会的弱者が集中する他の環境の進行中の空気の質を監視すること;交通、スモッグ、または産業的放出に起因する大気毒性の変化を、喘息、COPD、および他の汚染関連疾患のための入院および緊急治療室滞在の増加と関連づけること;患者に対するより的を絞った予防および介護を実現するために、化学的毒と他の呼吸毒(例えば、黴および昆虫)とを見分ける際に医療従事者を補助すること;軍事基地、有害廃棄物の廃棄場所(toxic sites)、軍需品製造センタ(munitions manufacturing centers)、軍隊および周辺の地域社会に悪影響を及ぼす毒および汚染物質に関する交戦地帯を監視すること;大火などの自然災害後に、または911のようなテロ攻撃後に空気の質を調査すること;塩素除染の試み(例えば、炭疽菌攻撃の場合)後に空気の質および安全を評価すること;最も有毒な汚染物質を予測しランク付けするモデルを開発して、公害防止政策および擁護の取組みを導くこと;煤煙および自動車排ガスなどの大気汚染物質の動物研究に人道的代替物を提供すること;および毒物学研究者が様々な毒素に起因する傷害機構を理解し、かつ気道の種々の部分における様々な汚染物質の健康への影響を研究することを助けることが含まれる可能性があるが、それらに限定されない。
【0034】
本主題は、その精神および本質的特徴から逸脱することなく、他の形で具体化することができる。したがって、記載されている本実施形態は、あらゆる点で例示的であり、限定的でないと見なされる。本主題をある好適な実施形態の観点で記載したが、当業者に明らかな他の実施形態もまた、本主題の範囲内に入る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備濃縮なしで且ついかなる中間捕集工程もなしで、粒子状物質を組織上に捕集し堆積させる、静電エアロゾルインビトロ暴露システムであって、
粒子状物質を含有する空気を受け入れるように構成されている入口と、
1つまたは複数の組織サンプルを保持するように構成されている容器と、
前記組織サンプルの気液界面のための支持をもたらす多孔質膜と、
電気集塵領域と、を含み、
空気が前記電気集塵領域を通って前記組織サンプル上を移動可能である、システム。
【請求項2】
前記電気集塵領域は、捕集板と反発板とを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電気集塵領域は、前記粒子状物質を帯電させる先行コロナ電線をさらに含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記捕集板は、陽極酸化処理されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記捕集板は、前記容器を保持するように構成されている井戸状穴部を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記コロナ電線は、7.5マイクロアンペアの電流まで帯電される、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記捕集板と前記反発板との間に1.4キロボルトの集塵電圧を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記電気集塵領域は、加熱された領域である、請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
前記多孔質膜は、肺細胞と培地の間に配設されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
温度制御デバイスをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
湿度制御デバイスをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
二酸化炭素制御デバイスをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
アウトレットデバイスをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記入口は、二酸化炭素源からの流れを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記システムは、大粒子および小粒子を含む広範な粒径に対して機能するようになされている、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記システムは、サイズすなわち粒子外形サイズによる影響が最小限である捕集効率を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
静電エアロゾルインビトロ暴露システムを用いて粒子状物質を捕集する方法であって、
粒子状物質を含有する空気を受け入れるように構成されている入口、
1つまたは複数の組織サンプルを保持するように構成されている容器、
前記組織サンプルの気液界面のための支持をもたらす多孔質膜、および
電気集塵領域、
を含む粒子捕集装置を提供する工程と、
前記電気集塵領域内の前記粒子状物質を帯電させる工程と、
帯電した粒子状物質を有する前記空気を前記組織サンプルの周囲に流動させる工程と、
前記組織サンプル上に前記粒子状物質を堆積させる工程と、を備え、
上記の工程は、前記粒子状物質の予備濃縮なしで且ついかなる中間捕集工程もなしで達成される、方法。
【請求項18】
前記組織サンプルの前記気液界面に養分を供給することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記装置を、最適な温度、湿度および/または二酸化炭素レベルに維持する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記温度は、おおよそ37℃に維持される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
堆積された前記粒子状物質を分析して、前記粒子状物質の毒物学的特性、量特性、化学的特性および/または物理的特性の1つまたは複数を測定することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記粒子状物質を帯電させる工程は、粒子状物質を含有する前記空気をコロナ電線上に流動させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記コロナ電線は、おおよそ7.5マイクロアンペアの電流まで帯電される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記コロナ電線内の電流が調節可能である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記集塵領域は、反発板と捕集板との間に維持されているおおよそ1.4キロボルトの集塵電圧を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記集塵領域の反発板と捕集板との間に維持されている集塵電圧が調節可能である、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記組織サンプル上に前記粒子状物質を堆積させる工程は、19nmと882nmの間のサイズを有する前記空気中に含有されている全粒子のおおよそ90%を、前記容器上に堆積させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
静電エアロゾルインビトロ暴露システムを用いて粒子状物質を捕集する方法であって、
組織サンプルを含む粒子捕集装置に、粒子状物質を含有する空気を供給する工程と、
前記粒子捕集装置内の前記粒子状物質を帯電させる工程と、
帯電した粒子状物質を有する前記空気を前記組織サンプルの周囲に流動させる工程と、
前記組織サンプル上に前記粒子状物質を堆積させる工程と、を備え、
前記工程は、前記粒子状物質の予備濃縮なしで且ついかなる中間捕集工程もなしで、達成される、方法。
【請求項29】
前記組織サンプル上に前記粒子状物質を堆積させる工程は、19nmと882nmの間のサイズを有する前記空気中に含有されている全粒子のおおよそ90%を、前記組織サンプルが保持されている容器上に堆積させることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
堆積された前記粒子状物質を分析して、前記粒子状物質の毒物学的特性、量特性、化学的特性および/または物理的特性の1つまたは複数を測定することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項1】
予備濃縮なしで且ついかなる中間捕集工程もなしで、粒子状物質を組織上に捕集し堆積させる、静電エアロゾルインビトロ暴露システムであって、
粒子状物質を含有する空気を受け入れるように構成されている入口と、
1つまたは複数の組織サンプルを保持するように構成されている容器と、
前記組織サンプルの気液界面のための支持をもたらす多孔質膜と、
電気集塵領域と、を含み、
空気が前記電気集塵領域を通って前記組織サンプル上を移動可能である、システム。
【請求項2】
前記電気集塵領域は、捕集板と反発板とを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電気集塵領域は、前記粒子状物質を帯電させる先行コロナ電線をさらに含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記捕集板は、陽極酸化処理されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記捕集板は、前記容器を保持するように構成されている井戸状穴部を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記コロナ電線は、7.5マイクロアンペアの電流まで帯電される、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記捕集板と前記反発板との間に1.4キロボルトの集塵電圧を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記電気集塵領域は、加熱された領域である、請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
前記多孔質膜は、肺細胞と培地の間に配設されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
温度制御デバイスをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
湿度制御デバイスをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
二酸化炭素制御デバイスをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
アウトレットデバイスをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記入口は、二酸化炭素源からの流れを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記システムは、大粒子および小粒子を含む広範な粒径に対して機能するようになされている、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記システムは、サイズすなわち粒子外形サイズによる影響が最小限である捕集効率を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
静電エアロゾルインビトロ暴露システムを用いて粒子状物質を捕集する方法であって、
粒子状物質を含有する空気を受け入れるように構成されている入口、
1つまたは複数の組織サンプルを保持するように構成されている容器、
前記組織サンプルの気液界面のための支持をもたらす多孔質膜、および
電気集塵領域、
を含む粒子捕集装置を提供する工程と、
前記電気集塵領域内の前記粒子状物質を帯電させる工程と、
帯電した粒子状物質を有する前記空気を前記組織サンプルの周囲に流動させる工程と、
前記組織サンプル上に前記粒子状物質を堆積させる工程と、を備え、
上記の工程は、前記粒子状物質の予備濃縮なしで且ついかなる中間捕集工程もなしで達成される、方法。
【請求項18】
前記組織サンプルの前記気液界面に養分を供給することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記装置を、最適な温度、湿度および/または二酸化炭素レベルに維持する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記温度は、おおよそ37℃に維持される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
堆積された前記粒子状物質を分析して、前記粒子状物質の毒物学的特性、量特性、化学的特性および/または物理的特性の1つまたは複数を測定することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記粒子状物質を帯電させる工程は、粒子状物質を含有する前記空気をコロナ電線上に流動させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記コロナ電線は、おおよそ7.5マイクロアンペアの電流まで帯電される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記コロナ電線内の電流が調節可能である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記集塵領域は、反発板と捕集板との間に維持されているおおよそ1.4キロボルトの集塵電圧を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記集塵領域の反発板と捕集板との間に維持されている集塵電圧が調節可能である、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記組織サンプル上に前記粒子状物質を堆積させる工程は、19nmと882nmの間のサイズを有する前記空気中に含有されている全粒子のおおよそ90%を、前記容器上に堆積させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
静電エアロゾルインビトロ暴露システムを用いて粒子状物質を捕集する方法であって、
組織サンプルを含む粒子捕集装置に、粒子状物質を含有する空気を供給する工程と、
前記粒子捕集装置内の前記粒子状物質を帯電させる工程と、
帯電した粒子状物質を有する前記空気を前記組織サンプルの周囲に流動させる工程と、
前記組織サンプル上に前記粒子状物質を堆積させる工程と、を備え、
前記工程は、前記粒子状物質の予備濃縮なしで且ついかなる中間捕集工程もなしで、達成される、方法。
【請求項29】
前記組織サンプル上に前記粒子状物質を堆積させる工程は、19nmと882nmの間のサイズを有する前記空気中に含有されている全粒子のおおよそ90%を、前記組織サンプルが保持されている容器上に堆積させることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
堆積された前記粒子状物質を分析して、前記粒子状物質の毒物学的特性、量特性、化学的特性および/または物理的特性の1つまたは複数を測定することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【公表番号】特表2013−518291(P2013−518291A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551371(P2012−551371)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2011/023183
【国際公開番号】WO2011/094692
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(501345323)ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (52)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
【住所又は居所原語表記】308 Bynum Hall,Campus Box 4105,Chapel Hill,North Carolina 27599−4105, United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2011/023183
【国際公開番号】WO2011/094692
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(501345323)ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (52)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
【住所又は居所原語表記】308 Bynum Hall,Campus Box 4105,Chapel Hill,North Carolina 27599−4105, United States of America
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]