説明

粗面形成用の砥石ロール

【課題】放電加工や彫刻加工より安価に作製でき、熱可塑性樹脂フィルムの表面に適度に細かく疎らに孔をあけることのできる粗面形成用の砥石ロールを提供すること。
【解決手段】押圧により熱可塑性樹脂フィルムの表面に粗面部を形成させる砥石ロールであって、台座ロール11の外周面に、多数の立体晶窒化ホウ素の砥粒12がニッケルメッキ13により電着されている。立体晶窒化ホウ素の砥粒は同一粒度のものを使用する。台座ロールの外周面は凹凸を付けた形状が良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルム等のフィルム表面に押圧等してフィルム表面に多数の開孔を有する粗面部を形成させるための粗面形成用の砥石ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポテトチップス等のスナック菓子に代表されるような食品を包装する包装袋は、内容物の変質を防ぐために外気を遮断して内容物の酸化を防止したり、遮光によりその促進を防止する機能を有している。また、内容物が保存中に吸湿したり、逆に乾燥したりして品質が劣化することを防止する機能も有している。
【0003】
これらの包装袋は、内面に施されたシーラント層によって熱融着することで封止する方法が一般的に用いられている。従って、前述の包装袋の目的を達成するためには、このシーラント層は十分な密封性を有することが必要であり、また、輸送等の過程でこの熱融着部分が剥がれないように十分なヒートシール強度を有することが必要とされている。
【0004】
しかしながら、内容物を保護するための過剰なヒートシール強度は逆に消費者が利用する際に、容易に手で開封することができず、はさみ等の器具を使わなければならないことも少なくなかった。そしてはさみ等の器具を使用しなくてもすむ方法としては、シーラント層の樹脂組成を検討したり、熱融着部分にV字ノッチ等の切り欠きを設ける方法が一般的であった。しかし、後者の熱融着部分にノッチ等の切り欠きを設ける方法は、開封位置や開封方法が固定されてしまうという問題がある。
【0005】
一方、フィルム等の表面を傷つけることでフィルム等の引っ張り強度や引き裂き強度が低下することが知られている。その方法として、外周面にローレット目をつけるなどした金属切削ロール刃を用いる方法があるが、この金属切削ロール刃を用いて熱可塑性樹脂フィルムの表面を傷つけても、適度に細かくまばらに孔を開けて粗面加工を施すことは困難である。
さらに外周面にローレット目をつけるなどした金属切削ロール刃を精度良く作製するためには、放電加工や彫刻によって加工を施すが、そのコストは比較的高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの表面を傷つけて粗面化する金属切削ロールに関する以上のような問題点に鑑みてなされたもので、放電加工や彫刻加工より安価に作製でき、かつ、熱可塑性樹脂フィルムの表面に適度に細かくまばらに孔を開けることのできる粗面形成用の砥石ロールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1の発明は、押圧により熱可塑性樹脂フィルムの表面に粗面部を形成させる砥石ロールであって、台座ロールの外周面に、多数の立体晶窒化ホウ素の砥粒がニッケルメッキにより電着されていることを特徴とする、粗面形成用の砥石ロールである。
【0008】
このように請求項1記載の発明によれば、台座ロールの外周面に、多数の立体晶窒化ホウ素の砥粒がニッケルメッキにより電着されているので、熱可塑性樹脂フィルム等のフィルムをこの砥石ロールと押圧ロールの間を通過させることにより,熱可塑性樹脂フィルムは必要部分に孔が多数開けられた粗面部を設けることができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記多数の立体晶窒化ホウ素の砥粒は、同一粒度のものが使用されていることを特徴とする、粗面形成用の砥石ロールである。
【0010】
このように請求項2記載の発明によれば、多数の立体晶窒化ホウ素の砥粒は、同一粒度のものが使用されているので、粒度が分布せず適度に細かくまばらな大きさの孔を設けることができ好ましい。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記台座ロールの外周面は、凹凸をつけた形状であることを特徴とする、粗面形成用の砥石ロールである。
【0012】
このように請求項3記載の発明によれば、台座ロールの外周面は、凹凸をつけた形状になっているので、粗面加工して開く熱可塑性樹脂フィルムの孔の間隔や数を、台座ロールの凹凸度合いによってコントロールでき、また、熱可塑性樹脂フィルムに押しつけられる台座ロール凸部の砥粒に圧力を集中させることができるため、粗面加工しやくなる。
【0013】
また、請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粗面形成用の砥石ロールを使用して作製した包装材料である。
【発明の効果】
【0014】
このように本発明の粗面形成用の砥石ロールは、台座ロールの外周面に多数の立方晶窒化ホウ素の砥粒がニッケルメッキにより電着されているので、放電加工や彫刻加工に比較して安価に作製することができるし、この刃を使用して熱可塑性樹脂フィルムに粗面加工すると、適度に細かくまばらに孔を開けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
本発明の粗面形成用の砥石ロール(10)は、例えば図1、図2に示すように、台座ロール(11)の外周面に、多数の立方晶窒化ホウ素の砥粒(12)がニッケルメッキ(13)により電着された構造を有するものである。
ニッケルメッキ層(13)の厚さは砥粒(12)の粒径にも依存するが概ね0.1〜10μm程度が適当である。
【0016】
台座ロール(11)は金属製で、外周面は図1に示すように凹凸をつけた形状にする方が、熱可塑性樹脂フィルムを粗面加工して開く熱可塑性樹脂フィルムの孔の間隔や数を、台座ロールの凹凸度合いによってコントロールでき、また、熱可塑性樹脂フィルムに押しつけられる台座ロール凸部の砥粒に圧力を集中させることができるため、粗面加工しやすくなり好ましい。
図3に示すようなフラット面に多数の立方晶窒化ホウ素の砥粒(12)を分布させ、ニッケルメッキ(13)により電着された構造とすることもできる。
【0017】
台座ロール(11)の外周面に取り付ける立方晶窒化ホウ素の砥粒(12)は、ある1粒度を使用し、粒度を分布させないことが肝要である。JIS B0601 「表面粗さの定義と表示」による粒度表示で、60/85、85/100、100/120、または120/140程度の砥粒を使用することが適度に細かくまばらな大きさの孔を設けることができるので好ましい。
【0018】
つぎに、本発明の粗面形成用の砥石ロール(10)をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
金属製台座ロール(11)の表面に、旋盤作業により図1に示すようなあや目状の網目
模様のローレット目を50山/インチの間隔をおいて付け、各四角錐の山(15)の頂点を研磨した。
四角錐の山(15)は、底辺が回転方向に対して横長の菱形で、長手方向の角度が80°、山の高さが1mm弱である。
【0020】
別に粒度が120/140の立方晶窒化ホウ素の砥粒(12)を準備し、これを埋め込み深さ80%で、あや目状のローレット目を形成した金属製台座ロール(11)の表面に埋め込み、ニッケルメッキ(13)を施し電着させ、実施例1の砥石ロール(10)とした(図2参照)。
【実施例2】
【0021】
金属製台座ロールの表面に、旋盤作業により図1に示すようなあや目状の網目模様のローレット目を1mmピッチで切刻した金属切刻ロール刃を作製し、比較例となる実施例2のロール刃を作製した。
【0022】
つぎに砥石ロールの効果を確認するため、以下に記す作業を実施した。
先ず、アルミニウムの蒸着薄膜を形成させた厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムと厚さ20μmの延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネート法により貼り合わせ、熱可塑性樹脂フィルムである複合フィルム(21)とした。
【0023】
この複合フィルム(21)を、上記2種類のロールとクッションロール(30)の間をそれぞれ加圧しながら回転させて通し、複合フィルムに粗面部(22)を形成させた(図4参照)。
最後に、粗面部(21)を形成させた複合フィルムの延伸ポリプロピレンフィルム面に押し出しラミネート法により厚さ30μmのポリエチレン樹脂層を形成させ、包装材料(20)を作製した。
【0024】
この実施例1の砥石ロールを使用して粗面加工を施した包装材料と、比較例である実施例2の金属ロール刃を使用して粗面加工を施した包装材料から、粗面部がシール部に配置されるように設計されたピロー包装袋を製袋した。
そして、粗面部に形成された孔の状態とピロー包装袋の易カット性を目視および手で引き裂きチェック、観察した。その結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の砥石ロールに使用する台座ロールの一実施例を示す、斜視説明図である。
【図2】図1の台座ロールに砥粒を電着させた状態を模式的に示す、説明図である。
【図3】台座ロールに砥粒を電着させた状態を模式的に示す、別の説明図である。
【図4】複合フィルムに粗面加工を施す状態を示す、模式説明図である。
【符号の説明】
【0027】
10‥‥砥石ロール
11‥‥台座ロール
12‥‥砥粒
13‥‥ニッケルメッキ(層)
15‥‥四角錐の山
20‥‥包装材料
21‥‥複合材料、熱可塑性樹脂フィルム
22‥‥粗面部
30‥‥クッションロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧により熱可塑性樹脂フィルムの表面に粗面部を形成させる砥石ロールであって、
台座ロールの外周面に、多数の立方晶窒化ホウ素の砥粒がニッケルメッキにより電着されていることを特徴とする、粗面形成用の砥石ロール。
【請求項2】
前記多数の立方晶窒化ホウ素の砥粒は、同一粒度のものが使用されていることを特徴とする、請求項1記載の粗面形成用の砥石ロール。
【請求項3】
前記台座ロールの外周面は、凹凸をつけた形状であるとを特徴とする、請求項1又は2記載の粗面形成用の砥石ロール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の粗面形成用の砥石ロールを使用して作製した包装材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−205288(P2006−205288A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19375(P2005−19375)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】