説明

粘着テープ製造システム

【課題】粘着テープの製造中に微細な凹凸に起因する表面欠陥が発生した場合に、その表面欠陥の原因をインラインで迅速に検出するとともに、表面欠陥の原因を除去するように製造条件を変更可能な粘着テープ製造システムを提供する。
【解決手段】ダイ5と乾燥装置6の間に配設された第1フィゾー干渉計8により、塗布後におけるフィルムシート2上の粘着剤表面を測定するともに粘着剤表面の干渉縞画像データを取得し、また、干渉縞解析装置9を介して第1フィゾー干渉計8により取得された粘着剤表面の干渉縞画像データをフーリエ変換法を使用して解析するとともに、粘着剤表面に発生する微細凹凸に関するRa(算術平均粗さ)、P−V(最大高さと最小高さとの差)の基準数値データを演算し、その演算された基準数値データに基づき、制御装置10を介してダイ5による粘着剤の塗布条件を変更するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置によりテープ上へ粘着剤を塗布するとともに、乾燥装置により粘着剤を乾燥して粘着テープを製造する粘着テープ製造システムに関し、特に、テープ上に塗布された粘着剤の塗布状態を表す基準値データを取得するとともに、その得られた基準値データに基づき塗布装置による粘着剤の塗布条件を変更するように構成された粘着テープ製造システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の粘着テープ製造装置が提案されており、例えば、特開平11−276959号公報には、赤外式やレーザ式の膜厚検出器によりシート上に塗布された後の粘着剤を測定し、その測定結果や他の補正データと目標厚み設定部に設定されたデータとを比較して、その比較結果に基づきギャップ間隔可変機構を駆動することにより、2つの塗布ローラ間のギャップの調整を行うように構成された塗膜厚み制御装置が記載されている。
【特許文献1】特開平11−276959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、粘着テープの製造においては、テープ上に塗布形成された粘着剤表面や粘着剤を乾燥させた後における粘着剤表面に微細な凹凸が存在する場合、かかる微細な凹凸に起因する表面欠陥に基づき、粘着テープの品質低下や歩留まり低下が発生してしまうことから、粘着テープの製造工程中や製造条件設定時に粘着剤表面に発生する微細な凹凸を迅速に把握し、この微細な凹凸に起因する粘着テープの表面欠陥を抑制することが重要なファクタとなる。
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載された塗膜厚み制御装置においては、赤外式やレーザ式の膜厚検出器を使用してシート上に塗布形成された粘着剤の厚みを検出するものではあるが、粘着剤表面に発生する微細な凹凸に起因する表面欠陥を検出するものではなく、従って、特許文献1の塗膜厚み制御装置によっては粘着テープの製造工程中や製造条件設定時に粘着剤表面に発生する微細な凹凸を迅速に把握することができず、この微細な凹凸に起因する粘着テープの表面欠陥を抑制することはできない。
【0005】
また、従来においても、粘着テープの製造に関して、テープ上に塗布形成された粘着剤表面や乾燥後における粘着剤表面に発生する微細な凹凸に起因する表面欠陥を検出して塗布ムラや乾燥ムラを防止する粘着テープ製造装置が存在しているが、この種の粘着テープ製造装置では、テープを高速移動させながら粘着剤の塗布や乾燥を行っていることから、塗布形成後や乾燥後における粘着剤表面における微細な凹凸に起因する表面欠陥を製造途中(インライン)で検出できないのが実状である。
【0006】
例えば、一般に、表面欠陥の原因とする凹凸を判断するためには、分解能1nmで測定し、少なくとも凹凸差100nm以上又は算術平均高さRa50nm以上を判断することが必要となるが、これを達成する装置としては、プローブを用いテープ上に塗布形成された粘着剤表面を接触あるいは非接触式で走査する点計測式の測定装置や、光学的な面計測式の光波干渉計測定装置が知られている。
ここに、接触式の測定装置としては、テーラーホブソン社のタリサーフ表面粗さ計があり、また、光波干渉計測定装置としては、小坂研究所のレーザ表面粗さ計やフジノンのレーザ干渉計F601がある。
【0007】
前記した各測定装置では、粘着剤表面を走査するにつき数秒〜数分の時間を必要し、既存のこれらの測定装置では、粘着剤表面が、例えば、10m/minで移動し、測定時間が1秒である場合においても、測定時間1秒の間に粘着剤表面が約160mmも移動してしまうこととなり、これより粘着剤表面は測定領域から外れてしまい、測定することは不可能となってしまう。
【0008】
尚、粘着剤表面における凹凸に起因する表面欠陥を評価する手法として、従来より、粘着テープの製造後に巻き取られた粘着テープからサンプルを切り取り、透過光や反射光を利用して作業員が目視により判断する手法、及び、巻き取られた粘着テープからサンプルを切り取り、その表面の形状を測定装置にて数値化することで表面欠陥を検出する手法が存在している。
しかし、表面欠陥が発見されたとしても、粘着テープ製造ラインに問題ある場合や製造条件に起因した問題等各種の問題が存在し得、これらの問題を特定して見極めるには、作業者の経験によるところが大きく、従って、製造条件等を変更して粘着テープの表面状態を改善するまでには多大な時間を必要としていた。
【0009】
本発明は、前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、粘着テープの製造中に微細な凹凸に起因する表面欠陥が発生した場合に、その表面欠陥の原因をインラインで迅速に検出するとともに、表面欠陥の原因を除去するように製造条件を変更することにより、粘着テープ製造時の不良率を低減させて歩留まりの向上及び品質向上を可能とする粘着テープ製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため請求項1に係る粘着テープ製造システムは、テープ上に粘着剤を塗布する塗布装置、塗布装置の下流側に配設されるとともに粘着剤を乾燥する乾燥装置及び乾燥装置の下流側に配置されるとともに粘着剤層が形成された粘着テープを巻き取る巻取装置とを備えた粘着テープ製造システムにおいて、前記塗布装置と乾燥装置の間に配設され、塗布後におけるテープ上の粘着剤表面を測定するともに粘着剤表面の干渉縞画像データを取得する第1フィゾー干渉計と、前記第1フィゾー干渉計により取得された粘着剤表面の干渉縞画像データをフーリエ変換法を使用して解析するとともに、粘着剤の表面状態に関する第1基準数値データを演算する解析演算手段と、前記解析演算手段により演算された第1基準数値データに基づき、前記塗布装置による粘着剤の塗布条件を変更する変更手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に係る粘着テープ製造システムは、請求項1の粘着テープ製造システムにおいて、前記乾燥装置と巻取装置との間に配設され、乾燥後におけるテープ上の粘着剤表面を測定するともに粘着剤表面の干渉縞画像データを取得する第2フィゾー干渉計を備え、前記解析演算手段は、前記第2フィゾー干渉計により取得された粘着剤表面の干渉縞画像データをフーリエ変換法を使用して解析するとともに、粘着剤の表面状態に関する第2基準数値データを演算し、前記変更手段は、前記解析演算手段により演算された第2基準数値データに基づき、前記乾燥装置による粘着剤の乾燥条件を変更することを特徴とする。
【0012】
更に、請求項3に係る粘着テープ製造システムは、請求項1の粘着テープ製造システムにおいて、前記第1フィゾー干渉計は、前記テープの幅方向に走査可能に構成されていることを特徴とする。
また、請求項4に係る粘着テープ製造システムは、請求項2の粘着テープ製造システムにおいて、前記第2フィゾー干渉計は、前記テープの幅方向に走査可能に構成されていることを特徴とする。
また、請求項5に係る粘着テープ製造システムは、請求項1の粘着テープ製造システムにおいて、前記第1フィゾー干渉計は、前記テープの幅方向に渡って複数個配設されていることを特徴とする。
また、請求項6に係る粘着テープ製造システムは、請求項2の粘着テープ製造システムにおいて、前記第2フィゾー干渉計は、前記テープの幅方向に渡って複数個配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る粘着テープ製造システムでは、塗布装置と乾燥装置の間に配設された第1フィゾー干渉計により、塗布後におけるテープ上の粘着剤表面を測定するともに粘着剤表面の干渉縞画像データを取得し、また、解析演算手段を介して第1フィゾー干渉計により取得された粘着剤表面の干渉縞画像データをフーリエ変換法を使用して解析するとともに、粘着剤の表面状態に関する第1基準数値データを演算し、解析演算手段により演算された第1基準数値データに基づき、変更手段により塗布装置による粘着剤の塗布条件を変更するように構成されているので、塗布装置における塗布条件に起因してテープ上の粘着剤表面に微細な凹凸に起因する表面欠陥が発生した場合においても、塗布装置による塗布条件をインラインで変更することができる。これにより、粘着テープ製造時の不良率を低減させて歩留まりの向上及び品質向上を実現することができる。
【0014】
請求項2に係る粘着テープ製造システムでは、乾燥装置と巻取装置との間に配設された第2フィゾー干渉計により、乾燥後におけるテープ上の粘着剤表面を測定するともに粘着剤表面の干渉縞画像データを取得し、また、解析演算手段を介して第2フィゾー干渉計により取得された粘着剤表面の干渉縞画像データをフーリエ変換法を使用して解析するとともに、粘着剤の表面状態に関する第2基準数値データを演算し、解析演算手段により演算された第2基準数値データに基づき、変更手段により乾燥装置による粘着剤の乾燥条件を変更するように構成されているので、乾燥装置における乾燥条件に起因してテープ上の粘着剤表面に微細な凹凸に起因する表面欠陥が発生した場合においても、乾燥装置による乾燥条件をインラインで変更することができる。これにより、粘着テープ製造時の不良率を低減させて歩留まりの向上及び品質向上を実現することができる。
また、第1フィゾー干渉計及び第2フィゾー干渉計を介して、テープ上の粘着剤表面の表面状態をインラインで連続的に且つ定量的に測定しているので、粘着剤表面の表面状態を常時管理して塗布装置の塗布条件及び乾燥装置の乾燥条件を瞬時に変更することができる。
【0015】
請求項3に係る粘着テープ製造システムでは、第1フィゾー干渉計は、テープの幅方向に走査可能に構成されているので、テープの幅方向の全域に渡って粘着剤表面を測定して塗布装置の塗布条件を変更するための干渉縞画像データを取得することができる。
請求項4に係る粘着テープ製造システムでは、第2フィゾー干渉計は、テープの幅方向に走査可能に構成されているので、テープ幅方向の全域に渡って粘着剤表面を測定して乾燥装置の乾燥条件を変更するための干渉縞画像データを取得することができる。
請求項5に係る粘着テープ製造システムでは、第1フィゾー干渉計は、テープの幅方向に渡って複数個配設されているので、テープの幅方向に渡って粘着剤表面を測定して塗布装置の塗布条件を変更するための干渉縞画像データを取得することができる。
請求項6に係る粘着テープ製造システムでは、第2フィゾー干渉計は、テープの幅方向に渡って複数個配設されているので、テープ幅方向に渡って粘着剤表面を測定して乾燥装置の乾燥条件を変更するための干渉縞画像データを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】粘着テープ製造システムを模式的に示す説明図である。
【図2】粘着剤の塗布条件及び乾燥条件を制御する制御プログラムのフローチャートである。
【図3】粘着剤の塗布条件及び乾燥条件を制御する制御プログラムのフローチャートである。
【図4】バックロールに対するダイの左右の高さを調整する状態を模式的に示す説明図である。
【図5】バックロールに対するダイの全体の高さを調整する状態を模式的に示す説明図である。
【図6】バックロールに対するダイの水平方向の位置を調整する状態を模式的に示す説明図である。
【図7】バックロールに対するダイ全体の角度を調整する状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る粘着テープ製造システムについて、本発明を具体化した実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係る粘着テープ製造システムの概略構成について図1に基づき説明する。図1は粘着テープ製造システムを模式的に示す説明図である。
【0018】
図1において、粘着テープの基材となるフィルムテープの搬送方向に沿って、本粘着テープ製造システム1の最も上流側には、フィルムシート2が巻回された繰出ロール3が配設されている。繰出ロール3から繰り出されたフィルムシート2は、バックロール4に搬送される。バックロール4に対向する位置には、粘着剤を塗布するダイ5が配置されており、かかるダイ5からは、バックロール4上で支持されつつ搬送されるフィルムシート2の表面に対して粘着剤が塗布される。
【0019】
ここに、ダイ5には、コッタ(カム部材)を含むカム機構及びカム機構を作動させるモータが付設されており、ダイ5は、後述するように、カム機構及びモータを介して、バックロール4に対する左右の高さ(図4参照)、全体の高さ(図5参照)、水平方向の位置(図6参照)及び全体の角度(図7参照)を調整することができる。尚、ダイ5に付設されたカム機構及びモータの構成については公知であり、ここではその説明を省略する。
【0020】
バックロール4とダイ5とから構成される粘着剤塗布装置の下流側には、乾燥装置6が配設されている。乾燥装置6は、ダイ5を介してフィルムシート2上に塗布された粘着剤の乾燥を行う。
ここに、後述するように、乾燥装置6は、乾燥後におけるフィルムシート2上の粘着剤の表面状態に従って、風量が調整されたり、また、初期乾燥ゾーンの温度や乾燥装置6全体の乾燥ゾーンの温度が調整される。
【0021】
また、ダイ5により粘着剤が塗布されたフィルムシー2は、2つの案内ロール7、7により乾燥装置6に案内されるが、2つの案内ロール7、7の間には、第1フィゾー干渉計8が配置されている。かかる第1フィゾー干渉計8は、ダイ5を介してフィルムシート2上に塗布された粘着剤の表面を測定するものであり、その測定により粘着剤表面の干渉縞画像データが取得される。
ここに、第1フィゾー干渉計8としては、パルスレーザを使用するレーザ干渉計(フジノン株式会社製)が使用される。
【0022】
前記第1フィゾー干渉計8は、フィルムシート2の幅方向に渡って走査可能に構成されている。これにより、フィルムシート2の幅方向の全域に渡って粘着剤表面を測定することができ、後述するようにダイ5による粘着剤の塗布条件を変更するための干渉縞画像データを漏れなく取得することができる。
尚、第1フィゾー干渉計8を走査可能に構成することに代えて、フィルムシート2の幅方向の全域に渡って複数個の第1フィゾー干渉計8を配設するようにしてもよい。この場合にも、フィルムシート2の幅方向の全域に渡って粘着剤表面を測定することができ、ダイ5による粘着剤の塗布条件を変更するための干渉縞画像データを漏れなく取得するこができる。
【0023】
第1フィゾー干渉計8には干渉縞解析装置9が接続されており、第1フィゾー干渉計8により測定して取得された粘着剤表面の干渉縞画像データは干渉縞解析装置9にて解析される。干渉縞解析装置9には、干渉縞解析ソフトプログラム(フジノン株式会社製)が搭載されており、干渉縞画像データは、かかる干渉縞解析ソフトプログラムに基づき高速フーリエ変換法を使用して解析され、粘着剤の表面状態に関する基準数値データが演算される。
ここに、基準数値データとしては、粘着剤表面に発生する微細凹凸に関して、Ra(算術平均粗さ)、P−V(最大高さと最小高さとの差)の数値データが存在する。
【0024】
前記干渉縞解析装置9には制御装置10が接続されており、前記のように解析演算されたRa、P−Vの数値データがインプットされる。
ここに、制御装置10には、粘着剤の塗布条件に基づき、予めRa、P−Vの最適値、目標値及び許容誤差値(フィルムシートの幅方誤差許容値)がインプットされている。これらの数値データは、予め実験等により求められた数値データであり、後述するように、粘着テープを製造する際に、第1フィゾー干渉計8にて取得された干渉縞画像データを干渉縞解析装置9にて解析演算された数値データと比較され、ダイ5による粘着剤の塗布条件をインラインで変更するための数値データである。
【0025】
また、乾燥装置6の下流側には、第2フィゾー干渉計11が配設されており、かかる第2フィゾー干渉計11は、乾燥装置6により乾燥されたフィルムシート2上の粘着剤の表面を測定するものであり、その測定により粘着剤表面の干渉縞画像データが取得される。
ここに、第2フィゾー干渉計8としては、前記第1フィゾー干渉計8と同様、パルスレーザを使用するレーザ干渉計(フジノン株式会社製)が使用される。
【0026】
前記第2フィゾー干渉計11は、フィルムシート2の幅方向に渡って走査可能に構成されている。これにより、フィルムシート2の幅方向の全域に渡って粘着剤表面を測定することができ、後述するように乾燥装置6による粘着剤の乾燥条件を変更するための干渉縞画像データを漏れなく取得することができる。
尚、第2フィゾー干渉計11を走査可能に構成することに代えて、第1フィゾー干渉計8の場合と同様、フィルムシート2の幅方向の全域に渡って複数個の第2フィゾー干渉計11を配設するようにしてもよい。この場合にも、フィルムシート2の幅方向の全域に渡って粘着剤表面を測定することができ、乾燥装置6による粘着剤の乾燥条件を変更するための干渉縞画像データを漏れなく取得するこができる。
【0027】
第2フィゾー干渉計11には干渉縞解析装置9が接続されており、第2フィゾー干渉計11により測定して取得された粘着剤表面の干渉縞画像データは干渉縞解析装置9にて解析される。干渉縞解析装置9は、第2フィゾー干渉計11からの干渉縞画像データを干渉縞解析ソフトプログラムに基づき高速フーリエ変換法を使用して解析し、これにより粘着剤の表面状態に関する基準数値データが演算される。
尚、この場合においても、基準数値データとして、粘着剤表面に発生する微細凹凸に関して、Ra(算術平均粗さ)、P−V(最大高さと最小高さとの差)の数値データが演算される。
【0028】
尚、第2フィゾー干渉計11からの干渉縞画像データに基づき、干渉縞解析装置9にて解析演算されたRa、P−Vの数値データは制御装置10にインプットされる。
ここに、制御装置10には、粘着剤の乾燥条件に基づき、予めRa、P−Vの最適値、目標値及び許容誤差値(フィルムシートの幅方誤差許容値)がインプットされている。これらの数値データは、予め実験等により求められた数値データであり、後述するように、粘着テープを製造する際に、第2フィゾー干渉計11にて取得された干渉縞画像データを干渉縞解析装置9にて解析演算された数値データと比較され、乾燥装置6による粘着剤の乾燥条件をインラインで変更するための数値データである。
【0029】
前記したように、乾燥装置6にて粘着剤の乾燥が行われたフィルムシート2は、2つの案内ロール12、12を介して下流側に搬送される。そして、フィルムシート2は、ラミネートロール13から繰り出されたにラミネートシート14と共に、一対の圧着ローラ17、17に挿通される。これにより、フィルムシート2はラミネートシート14と相互にラミネートされて粘着テープ15となり、その粘着テープ15は、巻取ロール16に巻き取られる。
【0030】
前記のように構成された粘着テープ製造システム1において、ダイ5による粘着剤の塗布条件及び乾燥装置6による粘着剤の乾燥条件をインラインで制御する手順について、図2及び図3に基づき説明する。図2及び図3は粘着剤の塗布条件及び乾燥条件を制御する制御プログラムのフローチャートである。
【0031】
図2において、先ず、S1において制御装置10に対して、塗布条件及び乾燥条件に関するRa、P−Vの最適値、目標値及び許容誤差値がインプットされる。続く、S2にて、第1フィゾー干渉計8により測定され取得された干渉縞画像データの結果に基づき、ダイ5の左右における差は許容誤差値以下であるかどうか判断される。具体的には、図4に示すように、ダイ5の右端とバックロール4の表面との間隔、及び、ダイ5の左端とバックロール4の表面との間隔が許容誤差値の以下であるかどうか判断される。
【0032】
ダイ5の左右における差が許容誤差値以下でないと判断された場合(S2:NO)、S3にて目標値との差が大きい側のコッタをモータにより駆動し、ダイ5の右端とバックロール4の表面との間隔、及び、ダイ5の左端とバックロール4の表面との間隔の差が最小となるようにダイ5の高さが調整される。この後、S2に戻る。
【0033】
ダイ5の左右における差が許容誤差値以下であると判断された場合(S2:YES)には、S4において、第1フィゾー干渉計8により測定され取得された干渉縞画像データの結果が目標値を達成しているかどうか判断される。干渉縞画像データの結果が目標値を達成していないと判断された場合(S4:NO)、S5にて、コッタをモータにより駆動し、干渉縞解析装置9により演算された解析値が最適値に最も近づくように、ダイ5全体の高さが調節される。具体的には、図5に示すように、モータを介してコッタを駆動し、バックロール4の表面に対してダイ5全体を近接又は離間させてダイ5全体の高さが調節される。尚、干渉縞画像データの結果が目標値を達成していると判断された場合(S4:YES)には、ダイ5における粘着剤の塗布条件は整ったものとして、後述するS12に移行する。
【0034】
この後、S6において、再度、第1フィゾー干渉計8により測定され取得された干渉縞画像データの結果が目標値を達成しているかどうか判断される。干渉縞画像データの結果が目標値を達成していると判断された場合(S6:YES)には、S12に移行する。これに対して、干渉縞画像データの結果が目標値を達成していないと判断された場合(S6:NO)には、S7おいて、コッタをモータにより駆動し、干渉縞解析装置9により演算された解析値が最適値に最も近づくように、ダイ5の位置が水平方向に調節される。具体的には、図6に示すように、ダイ5の先端とバックロール4の表面との間隔Lを維持しつつ、ダイ5を矢印方向に移動させてダイ5の位置が水平方向に調節される。この後S8に移行する。
【0035】
S8においては、再度、第1フィゾー干渉計8により測定され取得された干渉縞画像データの結果が目標値を達成しているかどうか判断される。干渉縞画像データの結果が目標値を達成していると判断された場合(S8:YES)には、S12に移行する。これに対して、干渉縞画像データの結果が目標値を達成していないと判断された場合(S8:NO)には、S9おいて、コッタをモータにより駆動し、干渉縞解析装置9により演算された解析値が最適値に最も近づくように、ダイ5全体の角度が調節される。具体的には、図7に示すように、ダイ5が矢印方向に回転され、バックロール4の表面に対するダイ5の角度が調節される。この後S10に移行する。
【0036】
S10では、再度、第1フィゾー干渉計8により測定され取得された干渉縞画像データの結果が目標値を達成しているかどうか判断される。干渉縞画像データの結果が目標値を達成していると判断された場合(S10:YES)には、S12に移行する。これに対して、干渉縞画像データの結果が目標値を達成していないと判断された場合(S10:NO)には、S11おいて、「ダイ5の調節では改善できない不良モード」である旨が制御装置10に表示される。この後処理を終了する。
【0037】
続くS12においては、第2フィゾー干渉計11により測定され取得された干渉縞画像データの結果が目標値を達成しているかどうか判断される。干渉縞画像データの結果が目標値を達成していると判断された場合(S12:YES)には、乾燥装置6における乾燥条件は整ったものとして、処理を終了する。これに対して、干渉縞画像データの結果が目標値を達成していないと判断された場合(S12:NO)には、S13にて、干渉縞画像データの結果が粘着剤表面の面荒れを示す結果であれば、乾燥装置6の風量を下げるように風量調節が行われる。
【0038】
続くS14では、再度、第2フィゾー干渉計11により測定され取得された干渉縞画像データの結果が目標値を達成しているかどうか判断される。干渉縞画像データの結果が目標値を達成していると判断された場合(S14:YES)には、処理を終了する。これに対して、干渉縞画像データの結果が目標値を達成していないと判断された場合(S14:NO)には、S15にて、干渉縞画像データの結果が粘着剤表面に気泡の存在を示す結果であれば、乾燥装置6における初期乾燥ゾーンの温度を下げるように温度調節が行われる。
【0039】
この後、S16では、再度、第2フィゾー干渉計11により測定され取得された干渉縞画像データの結果が目標値を達成しているかどうか判断される。干渉縞画像データの結果が目標値を達成していると判断された場合(S16:YES)には、処理を終了する。これに対して、干渉縞画像データの結果が目標値を達成していないと判断された場合(S16:NO)には、S17にて、乾燥装置6における乾燥ゾーン全体の温度が下げられる。
【0040】
この後、S18では、再度、第2フィゾー干渉計11により測定され取得された干渉縞画像データの結果が目標値を達成しているかどうか判断される。干渉縞画像データの結果が目標値を達成していると判断された場合(S18:YES)には、処理を終了する。これに対して、干渉縞画像データの結果が目標値を達成していないと判断された場合(S18:NO)には、S19にて、「乾燥ゾーンの調節では改善できない不良モード」である旨が制御装置10に表示される。この後処理を終了する。
【0041】
以上詳細に説明した通り本実施形態に係る粘着テープ製造システム1では、ダイ5と乾燥装置6の間に配設された第1フィゾー干渉計8により、塗布後におけるフィルムシート2上の粘着剤表面を測定するともに粘着剤表面の干渉縞画像データを取得し、また、干渉縞解析装置9を介して第1フィゾー干渉計8により取得された粘着剤表面の干渉縞画像データをフーリエ変換法を使用して解析するとともに、粘着剤表面に発生する微細凹凸に関するRa(算術平均粗さ)、P−V(最大高さと最小高さとの差)の基準数値データを演算し、その演算された基準数値データに基づき、制御装置10を介してダイ5による粘着剤の塗布条件を変更するように構成されているので、ダイ5における塗布条件に起因してフィルムシート2上の粘着剤表面に微細な凹凸に起因する表面欠陥が発生した場合においても、ダイ5による塗布条件をインラインで変更することができる。これにより、粘着テープ製造時の不良率を低減させて歩留まりの向上及び品質向上を実現することができる。
【0042】
また、乾燥装置6の下流側に配設された第2フィゾー干渉計11により、乾燥後におけるフィルムシート2上の粘着剤表面を測定するともに粘着剤表面の干渉縞画像データを取得し、また、干渉縞解析装置9を介して第2フィゾー干渉計11により取得された粘着剤表面の干渉縞画像データをフーリエ変換法を使用して解析するとともに、粘着剤表面に発生する微細凹凸に関するRa(算術平均粗さ)、P−V(最大高さと最小高さとの差)の基準数値データを演算し、その演算された基準数値データに基づき、制御装置10を介して乾燥装置6による粘着剤の乾燥条件を変更するように構成されているので、乾燥装置6における乾燥条件に起因してフィルムシート2上の粘着剤表面に微細な凹凸に起因する表面欠陥が発生した場合においても、乾燥装置6による乾燥条件をインラインで変更することができる。これにより、粘着テープ製造時の不良率を低減させて歩留まりの向上及び品質向上を実現することができる。
【0043】
また、第1フィゾー干渉計8及び第2フィゾー干渉計11を介して、フィルムシート2上の粘着剤表面の表面状態をインラインで連続的に且つ定量的に測定しているので、粘着剤表面の表面状態を常時管理してダイ5の塗布条件及び乾燥装置6の乾燥条件を瞬時に変更することができる。
更に、塗布後におけるフィルムシート2上の粘着剤表面を第1フィゾー干渉計8により測定し、また、乾燥後におけるフィルムシート2の粘着剤表面を第2フィゾー干渉計11により測定していることに基づき、フィルムシート2上の粘着剤表面の測定を10μ秒程度で行うことができ、これよりフィルムシート2のライン速度が10m/minであっても1.67μmの移動量、ライン速度が50m/minであっても8.35μmの移動量しかなく、更に、測定領域はφ60mmをカバーできるので、フィルムシート2の粘着剤表面の測定を全く問題なく行うことができる。
【0044】
更に、第1フィゾー干渉計8は、フィルムシート2の幅方向に走査可能に構成されているので、フィルムシート2の幅方向の全域に渡って粘着剤表面を測定してダイ5の塗布条件を変更するための干渉縞画像データを取得することができる。
また、第2フィゾー干渉計11は、フィルムシート2の幅方向に走査可能に構成されているので、フィルムシート2の幅方向の全域に渡って粘着剤表面を測定して乾燥装置6の乾燥条件を変更するための干渉縞画像データを取得することができる。
【実施例】
【0045】
前記した粘着テープ製造システム1において、厚み38μmのPETフィルム(三菱ポリエステル株式会社製ダイアホイルMRF38)をフィルムシート2及びラミネートシート14として使用し、それぞれ繰出ロール3、ラミネートロール13にセットした。また、第1フィゾー干渉計8及び第2フィゾー干渉計11として、パルス幅10μsecのパルスレーザを使用したフィゾー干渉計(フジノン株式会社製)を使用した。更に、粘着剤として、ブチルアクリレートとアクリル酸モノマーにアニオン系界面活性剤(第一工業製薬製ハイテノール−17)を全量に対して4重量部添加し、乳化重合により共重合させて固形分45%の水分散型粘着剤を使用した。
【0046】
前記粘着剤をダイ5を介してフィルムシート2に塗布したところ、塗布された粘着剤は幅方向全面においてスジ状の欠陥を有していたが、第1フィゾー干渉計8の測定の結果、ダイ5の位置を制御装置10からの指示により自動的に最適化調節したところ、スジ状の欠陥は消滅した。
また、上記ダイ5の位置変更後、塗布面の片側の端がムラ状の欠陥を有していたが、第1フィゾー干渉計8の測定の結果、ダイ5とバックロール4との間の距離とダイ5の前後位置、ダイ5の角度を自動的に最適化調節したところ、ムラ状の欠陥は消滅した。
【0047】
また、粘着剤の塗布後における測定では、粘着剤の塗布面に凹凸状態の悪化を示すデータは示されなかったが、乾燥装置6による乾燥風量が強いことが原因で起こる粘着剤表面の荒れが確認されたところ、乾燥工程後の第2フィゾー干渉計11の測定の結果、乾燥装置6における乾燥ゾーンの風量条件を制御装置10からの指示により自動的に最適化調節したところ、粘着剤表面の荒れは消滅した。
乾燥風量変更後には、粘着剤の塗布後及び乾燥後の測定の結果が、予め入力しておいた目標値以下となったことから、粘着剤の表面状態が生産可能な表面形状状態であることと確認し、粘着テープの生産を開始した。
【0048】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、前記実施形態に係る粘着テープ製造システム1では、ダイ5における粘着剤の塗布条件及び乾燥装置6における粘着剤の乾燥条件を、制御装置10からの指示に基づき自動的に最適化するように構成されているが、これに限らず、制御装置10に表示される表示内容を見て、作業者が手動で塗布条件や乾燥条件を変更するように構成してもよい。
また、本実施形態に係る粘着テープ製造システム1では、フィゾー干渉計を介して測定される干渉縞画像データを干渉縞解析装置9にて解析演算して得られる基準数値データに基づき、ダイ5による粘着剤の塗布条件及び乾燥装置6による粘着剤の乾燥条件をインラインで変更するように構成されているが、本システムの構成は、粘着テープの生産速度や張力制御等の粘着テープの製造における他の条件を最適化するについても適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 粘着テープ製造システム
2 フィルムシート
3 繰出ロール
5 ダイ
6 乾燥装置
8 第1フィゾー干渉計
9 干渉縞解析装置
10 制御装置
11 第2フィゾー干渉計
16 巻取ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ上に粘着剤を塗布する塗布装置、塗布装置の下流側に配設されるとともに粘着剤を乾燥する乾燥装置及び乾燥装置の下流側に配置されるとともに粘着剤層が形成された粘着テープを巻き取る巻取装置とを備えた粘着テープ製造システムにおいて、
前記塗布装置と乾燥装置の間に配設され、塗布後におけるテープ上の粘着剤表面を測定するともに粘着剤表面の干渉縞画像データを取得する第1フィゾー干渉計と、
前記第1フィゾー干渉計により取得された粘着剤表面の干渉縞画像データをフーリエ変換法を使用して解析するとともに、粘着剤の表面状態に関する第1基準数値データを演算する解析演算手段と、
前記解析演算手段により演算された第1基準数値データに基づき、前記塗布装置による粘着剤の塗布条件を変更する変更手段とを備えたことを特徴とする粘着テープ製造システム。
【請求項2】
前記乾燥装置と巻取装置との間に配設され、乾燥後におけるテープ上の粘着剤表面を測定するともに粘着剤表面の干渉縞画像データを取得する第2フィゾー干渉計を備え、
前記解析演算手段は、前記第2フィゾー干渉計により取得された粘着剤表面の干渉縞画像データをフーリエ変換法を使用して解析するとともに、粘着剤の表面状態に関する第2基準数値データを演算し、
前記変更手段は、前記解析演算手段により演算された第2基準数値データに基づき、前記乾燥装置による粘着剤の乾燥条件を変更することを特徴とする請求項1に記載の粘着テープ製造システム。
【請求項3】
前記第1フィゾー干渉計は、前記テープの幅方向に走査可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の粘着テープ製造システム。
【請求項4】
前記第2フィゾー干渉計は、前記テープの幅方向に走査可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の粘着テープ製造システム。
【請求項5】
前記第1フィゾー干渉計は、前記テープの幅方向に渡って複数個配設されていることを特徴とする請求項1に記載の粘着テープ製造システム。
【請求項6】
前記第2フィゾー干渉計は、前記テープの幅方向に渡って複数個配設されていることを特徴とする請求項2に記載の粘着テープ製造システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−285498(P2010−285498A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139039(P2009−139039)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】