説明

粘着フィルム及び半導体ウエハ加工用テープ

【課題】接着剤層が空気中の水分を吸収することにより軟化することを低減し、ピックア
ップミスの発生を抑制することができる粘着フィルム及び半導体ウエハ加工用テープを提
供する。
【解決手段】本発明の粘着フィルムは、基材フィルムと該基材フィルム上に設けられた粘
着剤層とからなる粘着フィルムであって、透湿度が10.0g/m/day以下である
。また、本発明の半導体ウエハ加工用テープは、基材フィルムと該基材フィルム上に設け
られた粘着剤層とからなる粘着フィルムと、粘着剤層上に設けられた接着剤層とを有する
ウエハ加工用テープであって、粘着フィルムの透湿度が10.0g/m/day以下で
ある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハを半導体チップに切断し、半導体装置を製造するために使用す
る粘着フィルム及び半導体ウエハ加工用テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程に使用される半導体ウエハ加工用テープとして、粘着フィルム(
ダイシングテープ)に、接着剤層(ダイボンディングフィルム)が積層された構造を有す
る半導体ウエハ加工用テープが提案され(例えば、特許文献1参照)、既に実用化されて
いる。
【0003】
半導体装置の製造工程では、半導体ウエハに半導体ウエハ加工用テープを貼り付けた後
、半導体ウエハをダイシングブレードを用いてチップ単位に切断(ダイシング)する工程
、半導体ウエハ加工用テープをエキスパンドする工程、さらに切断されたチップを接着剤
層とともに粘着剤層からピックアップする工程、チップに付着した接着剤層を介してチッ
プを基板等に実装する工程が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−32181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の半導体ウエハ加工用テープでは、輸送中や保管
中に接着剤層が空気中の水分を吸収して軟らかくなり、切削性が低下する場合があった。
このような場合には、ダイシング時に、ヒゲ状の切削屑が発生し、これらの切削屑が基材
フィルムや粘着剤層の切削屑とともにダイシングされ隣接するチップ間で融着して、ピッ
クアップ時に、ピックアップしようとするチップに隣接するチップが付随してピックアッ
プされてしまうピックアップミス(ダブルダイ)が発生するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、接着剤層が空気中の水分を吸収することにより軟化すること
を低減し、ピックアップミスの発生を抑制することができる粘着フィルム及び半導体ウエ
ハ加工用テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の粘着フィルムは、基材フィルムと該基材フィルム上
に設けられた粘着剤層とからなる粘着フィルムであって、透湿度が10.0g/m/d
ay以下であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の半導体ウエハ加工用テープは、基材フィルムと該基材フィルム上に設け
られた粘着剤層とからなる粘着フィルムと、前記粘着剤層上に設けられた接着剤層とを有
するウエハ加工用テープであって、前記粘着フィルムの透湿度が10.0g/m/da
y以下であることを特徴とする。
【0009】
また、前記半導体ウエハ加工用テープにおいて、前記粘着フィルムと前記接着剤層とを
合わせた吸水率が2.0体積%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粘着フィルム及び半導体ウエハ加工用テープは、粘着フィルムに接着剤層が接
合されて輸送・保管された場合に、接着剤層が空気中の水分を吸収することにより軟化す
ることを低減し、ピックアップミスの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の半導体ウエハ加工用テープの一例を示す断面図である。
【図2】(a)は、半導体ウエハ加工用テープに、半導体ウエハWとリングフレームが貼り合わされた状態を示す断面図であり、(b)は、ダイシング後の半導体ウエハ加工用テープと半導体ウエハを示す断面図であり、(c)は、エキスパンド後の半導体ウエハ加工用テープと半導体ウエハを示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施の形態に係る半導体ウエハ加工用テープ15は、図1に示すように、基材フィル
ム11の上に、粘着剤層12が積層された粘着フィルム14を有し、粘着剤層12の上に
接着剤層13が積層されたダイシング・ダイボンディングフィルムである。なお、粘着剤
層12及び接着剤層13は、使用工程や装置にあわせて予め所定形状に切断(プリカット
)されていてもよい。ウエハW(図2(a)参照)に応じてプリカットされた接着剤層1
3を積層した場合、ウエハWが貼り合わされる部分には接着剤層13があり、ダイシング
用のリングフレーム20(図2(a)参照)が貼り合わされる部分には接着剤層13がな
く粘着剤層12のみが存在することになる。一般に、接着剤層13は被着体と剥離しにく
いため、プリカットされた接着剤層13を使用することで、リングフレーム20は粘着剤
層12に貼り合わすことができ、使用後のリングフレーム20への糊残りを生じにくいと
いう効果が得られる。また、本発明の半導体ウエハ加工用テープ15は、ウエハ1枚分ご
とに切断され積層された形態と、これが複数形成された長尺のシートをロール状に巻き取
った形態とを含む。以下に、基材フィルム11、粘着剤層12、及び接着剤層13につい
てそれぞれ詳細に説明する。
【0013】
<基材フィルム>
基材フィルムを構成する材料としては、特に限定されないが、ポリオレフィン及びポリ
塩化ビニルから選択されることが好ましい。
【0014】
上記ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン
共重合体、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重
合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エ
チレン−アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのα−オレフィンの単独重合体または共
重合体あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0015】
後述する粘着剤層として放射線照射により硬化し、粘着力が低下するタイプを用いる場
合には、基材フィルムは、放射線透過性であることが好ましい。基材フィルムの厚さは、
強度およびチップのピックアップ性確保の観点から、50〜300μmであることが好ま
しい。また、基材フィルムは、単層であっても、複数層で構成されていてもよい。
【0016】
<粘着剤層>
粘着剤層は、基材フィルム上に粘着剤を塗工して製造することができる。粘着剤層とし
ては特に制限はなく、エキスパンドの際に接着剤層及び半導体ウエハが剥離したりしない
程度の保持性や、ピックアップ時には接着剤層と剥離が容易とする特性を有するものであ
ればよい。ピックアップ性を向上させるために、粘着剤層は放射線硬化性のものが好まし
い。
【0017】
例えば、粘着剤に使用される公知の塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエ
ステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、付加反応型オルガノポリシロキサン系樹
脂、シリコンアクリレート樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸
エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体
、ポリイソプレンやスチレン・ブタジエン共重合体やその水素添加物等の各種エラストマ
ー等やその混合物に、放射線重合性化合物を適宜配合して粘着剤を調製することが好まし
い。また、各種界面活性剤や表面平滑化剤を加えてもよい。粘着剤層の厚さは特に限定さ
れるものではなく適宜に設定してよいが、1〜30μmが好ましい。
【0018】
重合性化合物は、例えば光照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭
素二重結合を少なくとも2個以上有する低分子量化合物や、光重合性炭素−炭素二重結合
基を置換基に持つポリマーやオリゴマーが用いられる。具体的には、トリメチロールプロ
パントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトール
テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペ
ンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、
1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートや、オ
リゴエステルアクリレート等、シリコンアクリレート等、アクリル酸や各種アクリル酸エ
ステル類の共重合体等が適用可能である。
【0019】
また、上記のようなアクリレート系化合物のほかに、ウレタンアクリレート系オリゴマ
ーを用いることもできる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型または
ポリエーテル型などのポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物(例えば、2,4
−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレン
ジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジ
イソシアナートなど)を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに
、ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレート(例えば、2−ヒドロキ
シエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピル
アクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリ
レート、ポリエチレングリコールメタクリレートなど)を反応させて得られる。なお、粘
着剤層には、上記の樹脂から選ばれる2種以上が混合されたものでもよい。また、以上に
挙げた粘着剤の材料は、表面自由エネルギーを40mJ/m以下とするうえで、トリフ
ルオロメチル基、ジメチルシリル基、長鎖アルキル基等の無極性基をなるべく多く分子構
造中に含むことが望ましい。
【0020】
なお、粘着剤層の樹脂には、放射線を基材フィルムに照射して粘着剤層を硬化させる放
射線重合性化合物の他、アクリル系粘着剤、光重合開始剤、硬化剤等を適宜配合して粘着
剤を調製することもできる。
【0021】
光重合開始剤を使用する場合、例えばイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベ
ンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ドデシ
ルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチ
ルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェ
ニルプロパン等を使用することができる。これら光重合開始剤の配合量はアクリル系共重
合体100質量部に対して0.01〜30質量部が好ましく、1〜10重量部がより好ま
しい。
【0022】
なお、粘着剤中に低分子成分が存在していると、基材フィルム製造後に長期保管してい
る間に、低分子成分が粘着剤層表面に移行し粘接着特性を損なう恐れがあるため、ゲル分
率が高いことが望ましく、通常60%以上、好ましくは70%以上である。ここで、ゲル
分率とは、以下のように算出されるものをいう。粘着剤層約0.05gを秤取し、キシレ
ン50mlに120℃で24時間浸漬した後、200メッシュのステンレス製金網で濾過
し、金網上の不溶解分を110℃にて120分間乾燥する。次に、乾燥した不溶解分の質
量を秤量し、下記に示す式1にてゲル分率を算出する。
ゲル分率(%)=(不溶解分の質量/秤取した粘着剤層の質量)×100 (式1)
【0023】
粘着フィルムの透湿度は、10.0g/m/day以下である。このように、粘着フ
ィルムの透湿度を10.0g/m/day以下とすることにより、半導体ウエハ加工用
テープが、ウエハ1枚分ごとに切断され積層された状態、あるいは長尺のシートをロール
状に巻き取った状態で輸送・保管される最中に、空気中の水蒸気が外側から内側へ透過し
にくくなるため、接着剤層に到達する水分量が減少し、接着剤層の軟化が低減される。こ
のため、ダイシング時のヒゲ状の切削屑の発生が低減され、これらの切削屑が基材フィル
ムや粘着剤層の切削屑とともにダイシングされ隣接するチップ間で融着して、ピックアッ
プ時にピックアップミスが発生するのを抑制することができる。
【0024】
粘着フィルムの透湿度を低下させるには、基材フィルムに用いるポリマーとして、ポリ
エチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート等透湿度の低いポリマーを使用す
るとよい。また、基材フィルムの厚みを大きくすることにより、粘着フィルムの透湿度を
低下させることもできる。さらに、粘着フィルムの透湿度を低下させるには、粘着剤層の
厚さを厚くするとよい。また、粘着剤層の架橋密度を上げることにより透湿度を低下させ
ることもできる。架橋密度を下げるためには、硬化剤量を増加、または粘着剤層に水酸基
の多いポリマーを使用すればよい。
【0025】
<接着剤層>
接着剤層は、半導体ウエハが貼り合わされ切断された後、チップをピックアップする際
に、切断された接着剤層が粘着剤層から剥離してチップに付着しており、チップをパッケ
ージ基板やリードフレームに固定する際のボンディングフィルムとして機能するものであ
る。
【0026】
接着剤層は、接着剤を予めフィルム化したものであり、例えば、接着剤に使用される公
知のポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂
、ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポ
リエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、
塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアク
リルアミド樹脂、メラミン樹脂等やその混合物を使用することができるが、接着剤層13
の分断性をよくするためには、アクリル系共重合体、エポキシ樹脂を含み、アクリル系共
重合体のTgが10℃以上であることが好ましい。さらには、無機フィラーを50%以上
含有することが好ましい。また、チップやリードフレームに対する接着力を強化するため
に、シランカップリング剤もしくはチタンカップリング剤を添加剤として前記材料やその
混合物に加えることが望ましい。接着剤層の厚さは特に制限されるものではないが、通常
5〜100μm程度が好ましい。
【0027】
エポキシ樹脂は、硬化して接着作用を呈するものであれば特に制限はないが、二官能基
以上で、好ましくは分子量が5000未満、より好ましくは3000未満のエポキシ樹脂
が使用できる。また、好ましくは分子量が500以上、より好ましくは800以上のエポ
キシ樹脂が使用できる。
【0028】
例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフ
ェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノール
ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノ
ボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジリエーテル化物、ナフタレンジオー
ルのジグリシジリエーテル化物、フェノール類のジグリシジリエーテル化物、アルコール
類のジグリシジルエーテル化物、及びこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加
物などの二官能エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。また、多官能エ
ポキシ樹脂や複素環含有エポキシ樹脂等、一般に知られているものを適用することもでき
る。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。さらに、特性
を損なわない範囲でエポキシ樹脂以外の成分が不純物として含まれていてもよい。
【0029】
アクリル系共重合体としては、例えば、エポキシ基含有アクリル共重合体を用いること
ができる。エポキシ基含有アクリル共重合体は、エポキシ基を有するグリシジルアクリレ
ート又はグリシジルメタクリレートを0.5〜6重量%含む。高い接着力を得るためには
、0.5重量%以上が好ましく、6重量%以下であればゲル化を抑制できる。
【0030】
官能基モノマーとして用いるグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートの
量は0.5〜6重量%の共重合体比である。つまり、本発明においてエポキシ基含有アク
リル共重合体は、原料としてグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートを、
得られる共重合体に対し0.5〜6重量%となる量用いて得られた共重合体をいう。その
残部はメチルアクリレート、メチルメタクリレートなどの炭素数1〜8のアルキル基を有
するアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、およびスチレンやアクリロニトリ
ルなどの混合物を用いることができる。これらの中でもエチル(メタ)アクリレート及び
/又はブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。混合比率は、共重合体のTgを考慮
して調整することが好ましい。重合方法は特に制限が無く、例えば、パール重合、溶液重
合等が挙げられ、これらの方法により共重合体が得られる。エポキシ基含有アクリル共重
合体の重量平均分子量は10万以上であり、この範囲であると接着性及び耐熱性が高く、
30万〜300万であることが好ましく、50万〜200万であることがより好ましい。
300万以下であると、フロー性が低下することにより、半導体素子を貼付ける支持部材
に必要に応じて形成された配線回路への充填性が低下する可能性を減らすことができる。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準
ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0031】
無機フィラーとしては特に制限が無く、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシ
ウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸
化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミ
ウイスカ、窒化ほう素、結晶質シリカ、非晶質シリカなどが挙げられる。これらは、1種
又は2種以上を併用することもできる。熱伝導性向上のためには、酸化アルミニウム、窒
化アルミニウム、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が好ましい。特性のバラン
スの観点ではシリカが好ましい。
【0032】
フィラーの平均粒径は、0.002〜2μmであることが好ましく、0.008〜0.
5μmであることがより好ましく、0.01〜0.05μmであることがさらに好ましい
。フィラーの平均粒径が0.002μm未満であると被着体へのぬれ性が低下し、接着性
が低下する傾向があり、2μmを超えるとフィラー添加による補強効果が小さくなり、耐
熱性が低下する傾向がある。ここで、平均粒径とは、TEM、SEM等により測定したフ
ィラー100個の粒径から求められる平均値をいう。
【0033】
半導体ウエハ加工用テープは、粘着剤層と接着剤層との間の剥離性を良くする観点から
、粘着フィルムと接着剤層とを合わせた吸水率が2.0体積%以下とすることが好ましい
。従来、ピックアップ時に、粘着剤層と接着剤層との間の剥離をしやすくするために、ウ
エハ加工用テープの下側からピンによって半導体チップを突き上げ力や突き上げ高さを大
きくすることが行われているが、近年、半導体チップが薄くなる傾向にあり、半導体チッ
プが薄い場合に、突き上げ力を大きくすると、チップが破損してしまうという問題もあっ
た。粘着フィルムと接着剤層とを合わせた吸水率が2.0体積%以下であると、接着剤層
が軟化して、切削の際に粘着剤層と共に癒着したり、粘着フィルムが吸収した水分が接着
剤層へと移行して、両者が癒着するのを低減することができるので、粘着剤層と接着剤層
との間の剥離性が良くなる。このため、ピンによる突き上げ力を大きくする必要がないた
め、半導体チップが薄い場合であっても、良好にピックアップすることができる。
【0034】
粘着フィルムと接着剤層とを合わせた吸水率を低下させるためには、基材フィルムに用
いるポリマーとして、ポリプロピレン、ポリエチレン等吸水率の低いポリマーを使用する
とよい。また、基材フィルムの厚みを小さくすることにより、吸水率を低下させることも
できる。また、粘着剤層は、ヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基、カルボキシル基などの
官能基やアミド結合、エーテル結合部分を少なくし、メチル基やアリール基の導入量を増
やすことで、吸水率を低下させることができる。また、接着剤層に、アクリル等吸水率の
低いポリマーを用いることにより、吸水率を低下させることもできる。また、接着剤層に
用いるエポキシやフェノール等について、分子量の低いものを用いることにより、吸水率
を低下させることもできる。さらには、接着剤層に含まれる無機フィラーの量を低減する
ことによっても、吸水率を低下させることもできる。
【0035】
次に、図1に示す本発明の半導体ウエハ加工用テープ15を使用して、接着剤層付き半
導体チップを製造する方法について、図2を参照しながら説明する。
【0036】
(貼合工程)
まず、図2(a)に示すように、半導体ウエハ加工用テープ15の接着剤層13に半導
体ウエハWの裏面を貼り合わせるとともに、粘着剤層12の所定位置にリングフレーム2
0を貼り合わせる。
【0037】
(ダイシング工程)
吸着ステージ22により、ウエハ加工用テープ15を基材フィルム11面側から吸着支
持し、図示しないブレードを用いて、半導体ウエハWを機械的に切断し、複数の半導体チ
ップCに分割する(図2(b))。なお、このとき、接着剤層13や粘着剤層12、基材
フィルム11の一部も適宜ダイシングされる。このとき、粘着フィルムの透湿度を10.
0g/m/day以下であるため、半導体ウエハ加工用テープの輸送・保管中に、空気
中の水蒸気が外側から内側へ透過しにくく、接着剤層の軟化が低減されているため、ヒゲ
状の切削屑の発生が低減される。
【0038】
(照射工程)
そして、放射線を基材フィルム11の下面から粘着剤層12に照射して粘着剤層12を
硬化させる。硬化させた粘着剤層12は粘着力が低下するため、粘着剤層12上の接着剤
層13を剥離させることが可能となる。なお、粘着剤層を複数の層で構成する場合、接着
剤層13を粘着剤層12から剥離するために、粘着剤層全体を硬化させる必要はなく、少
なくともウエハに対応する粘着剤層部分を硬化させてもよい。
【0039】
(エキスパンド工程)
照射工程の後、分割された複数の半導体チップCを保持する半導体ウエハ加工用テープ
15をエキスパンド装置のステージ21上に載置する。そして、図2(c)に示すように
、中空円柱形状の突き上げ部材23を、半導体ウエハ加工用テープ15の下面側から上昇
させ、上記粘着フィルム14をリングフレーム20の径方向及び周方向に引き伸ばす。
【0040】
(ピックアップ工程)
エキスパンド工程を実施した後、粘着フィルム14をエキスパンドした状態のままで、
チップCをピックアップするピックアップ工程を実施する。具体的には、粘着フィルム1
4の下側からチップCをピン(図示しない)によって突き上げるとともに、粘着フィルム
14の上面側から吸着冶具(図示しない)でチップCを吸着することで、個片化されたチ
ップCを接着剤層13とともにピックアップする。ダイシング工程において接着剤層13
のヒゲ状の切削屑の発生が低減されるため、これらの切削屑が基材フィルム11や粘着剤
層12の切削屑とともに隣接するチップ間で融着して、ピックアップミスが発生するのを
抑制することができる。さらに、粘着フィルム14と接着剤層13とを合わせた吸水率が
2.0体積%以下である場合は、粘着剤層12と接着剤層13との間の剥離がし易くなる
ため、半導体チップCの厚みが薄い場合であっても、良好にピックアップされる。
【0041】
(ダイボンディング工程)
そして、ピックアップ工程を実施した後、ダイボンディング工程を実施する。具体的に
は、ピックアップ工程でチップCとともにピックアップされた接着剤層により、半導体チ
ップをリードフレームやパッケージ基板等に接着して、半導体装置を製造する。
【0042】
以上より、粘着フィルムに接着剤層が接合されて輸送・保管された場合に、接着剤層が
空気中の水分を吸収することにより軟化することを低減し、ピックアップミスの発生を抑
制することができる。
【0043】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるもので
はない。
【0044】
(粘着フィルムの調製)
(粘着フィルム1)
50℃で48時間、あらかじめ乾燥した低密度ポリエチレン(ノバテックLL(日本ポ
リエチレン株式会社製、商品名))を溶融し、押出し機を用いて厚さ100μmの長尺フ
ィルム状に基材フィルムを成形した。溶媒のトルエン400g中に、n−ブチルアクリレ
ート128g、2−エチルヘキシルアクリレート307g、メチルメタアクリレート67
g、メタクリル酸1.5g、重合開始剤としてベンゾイルペルオキシドの混合液を、適宜
、滴下量を調整し、反応温度および反応時間を調整し、官能基をもつポリマー溶液を得た
。次にこのポリマー溶液に、放射線硬化性炭素−炭素二重結合および官能基を有する化合
物として、別にメタクリル酸とエチレングリコールから合成した2−ヒドロキシエチルメ
タクリレート2.5g、重合禁止剤としてハイドロキノンを適宜滴下量を調整して加え反
応温度および反応時間を調整して、放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する化合物(A
)の溶液を得た。続いて、化合物(A)溶液中の化合物(A)100質量部に対してポリ
イソシアネート(コロネートL(日本ポリウレタン社製、商品名))1質量部を加え、光
重合開始剤(イルガキュアー184(日本チバガイギー社製、商品名))0.5質量部、
溶媒として酢酸エチル150質量部を化合物(A)溶液に加えて混合して、放射線硬化性
の粘着剤組成物を調製した。成形した基材フィルム上に、前記粘着剤組成物を乾燥後の膜
厚が10μmとなるように塗工し、110℃で10分間乾燥して粘着フィルム1を得た。
(粘着フィルム2)
低密度ポリエチレンに代えて高密度ポリエチレン(ノバテックHD(日本ポリエチレン
株式会社製、商品名))を使用した他は、粘着フィルム1と同様にして粘着フィルム2を
得た。
(粘着フィルム3)
基材フィルムの膜厚を70μmとした他は、粘着フィルム2と同様にして粘着フィルム
3を得た。
(粘着フィルム4)
基材フィルムの膜厚を70μmとした他は、粘着フィルム1と同様にして粘着フィルム
4を得た。
(粘着フィルム5)
低密度ポリエチレンに代えてEVA(ノバテックEVA(日本ポリエチレン株式会社製
、商品名))を使用した他は、粘着フィルム1と同様にして粘着フィルム5を得た。
(粘着フィルム6)
低密度ポリエチレンに代えてポリプロピレン(ノバテックPP(日本ポリプロ株式会社
製、商品名))を使用した他は、粘着フィルム1と同様にして粘着フィルム6を得た。
(粘着フィルム7)
低密度ポリエチレンに代えてポリアミド(ナイロンMXD6(三菱ガス化学株式会社製
、商品名))を使用した他は、粘着フィルム1と同様にして粘着フィルム7を得た。
【0045】
(接着フィルムの調整)
(接着フィルム1)
エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量197、分子
量1200、軟化点70℃)15重量部、アクリル樹脂(質量平均分子量:80万、ガラ
ス転移温度−17℃)70重量部、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(水酸基当量
104、軟化点80℃)15重量部、促進剤として2−フェニルイミダゾール(キュアゾ
ール2PZ(四国化成株式会社製、商品名))1部を有機溶剤中で攪拌し接着剤ワニスを
得た。得られた接着剤ワニスを、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)
フィルム上に塗布し、120℃で10分間加熱乾燥して接着フィルム1を作製した。
(接着フィルム2)
エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量197、分子
量1200、軟化点70℃)5重量部、シランカップリング剤として3−グリシドキシプ
ロピルトリメトキシシラン0.5質量部、平均粒径1.0μmのシリカフィラー50質量
部、アクリル樹脂(質量平均分子量:80万、ガラス転移温度−17℃)40質量部、硬
化剤としてフェノールノボラック樹脂(水酸基当量104、軟化点80℃)5重量部、促
進剤として2−フェニルイミダゾール(キュアゾール2PZ(四国化成株式会社製、商品
名))1部を有機溶剤中で攪拌し接着剤ワニスを得た。得られた接着剤ワニスを、厚さ5
0μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布し、120℃で10分
間加熱乾燥して接着フィルム2を作製した。
(接着フィルム3)
アクリル樹脂の代わりに2,2´−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プ
ロパン、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び無水ピロメリッ
ト酸より合成された質量平均分子量5万のポリイミド樹脂を使用した他は、接着フィルム
2と同様に作製した。
(接着フィルム4)
アクリル樹脂の代わりに2,2´−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プ
ロパン、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び無水ピロメリッ
ト酸より合成された質量平均分子量5万のポリイミド樹脂を使用した他は、接着フィルム
1と同様に作製した。
【0046】
(第1実施例)
粘着フィルム1〜5及び接着フィルム1を、それぞれ直径370mm、320mmの円
形にカットし、粘着フィルムの粘着剤層と接着フィルムの接着剤層とを貼り合わせた。最
後に、接着フィルムのPETフィルムを接着剤層から剥離し、表1の組合せのダイシング
・ダイボンディングフィルム(実施例1〜3、比較例1〜2)を得た。
【0047】
<透湿度>
粘着フィルム1〜5について、JIS K7129−C(ガスクロマトグラフ法による
水蒸気透過度測定)に基づいて透湿度を測定した。測定条件は温度25±0.5℃、相対
湿度差90±2%とした。その結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
<ピックアップ性試験>
上記実施例1〜3、比較例1〜2に係るダイシング・ダイボンディングフィルムを30
0枚ずつ重ね、72時間、温度25度、湿度70%RHの雰囲気中に放置した後、それぞ
れ上から10枚目のダイシングダイボンドフィルムを、厚み100μm及び75μmのウ
エハに70℃で10秒間加熱し貼合した後、10×10mmにダイシングした。その後、
粘着剤層に紫外線を空冷式高圧水銀灯により200mJ/cm照射した後、ウエハ中央
部のチップ250個について、ダイボンダー装置(CPS−100FM(NECマシナリ
ー株式会社製、商品名))によるピックアップ試験を行った。粘着剤層から剥離した接着
剤層が保持されたチップが、隣接するチップが付随することなくピックアップされた場合
をピックアップが成功したものとし、ピックアップ成功率が99%以上であれば良として
判定して○印で表し、99%未満の場合は不良と判定して×印で表した。これらの結果を
表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
比較例1〜2では、粘着フィルムの透湿度が10.0g/m/dayを越えているた
め、空気中の水蒸気が外側から内側へ透過して接着剤層が吸水することにより軟化し、ダ
イシング時にヒゲ状の切削屑が発生して、ダブルダイによるピックアップミスが多発した
。これに対して、実施例1〜3では、粘着フィルムの透湿度が10.0g/m/day
以下であり、空気中の水蒸気が透過しにくく、接着剤層の軟化が低減されているため、ダ
イシング時のヒゲ状の切削屑の発生が低減され、ピックアップミスが十分に減少した。
【0052】
(第2実施例)
粘着フィルム1,6〜7及び接着フィルム1〜4を、それぞれ直径370mm、320m
mの円形にカットし、粘着フィルムの粘着剤層と接着フィルムの接着剤層とを貼り合わせ
た。最後に、接着フィルムのPETフィルムを接着剤層から剥離し、表3の組合せのダイ
シング・ダイボンディングフィルム(実施例4〜7、比較例3〜4)を得た。粘着フィル
ム1,6〜7について、第1実施例と同様に透湿度試験を行い、全ての粘着フィルムにつ
いて透湿度が10.0g/m/day以下であることを確認した。
【0053】
<吸水率>
上記実施例4〜7、比較例3〜4に係るダイシング・ダイボンディングフィルムを、5
0mm×50mmの大きさに切り出してサンプルとした。このサンプルを50℃のオーブ
ンで24時間乾燥させたものを、デシケーターで室温まで冷却し重量を測定した。その後
、23±1.0℃の蒸留水中にサンプルを24時間浸漬し、取り出してカールフィッシャ
ー水分計により吸水率を算出した。その結果を表3に示す。
【0054】
【表3】

【0055】
<ピックアップ性試験>
実施例1,4〜6、比較例3〜4に係るダイシング・ダイボンディングフィルムについ
て、上述の第1実施例と同様にピックアップ試験を行った。ただし、ウエハの厚みは10
0μm及び50μmとした。ピックアップされたチップに粘着剤層から剥離した接着フィ
ルムが保持されているものをピックアップが成功したものとし、ピックアップ成功率が9
9%以上であれば良として判定して○印で表し、99%未満の場合は不良と判定して×印
で表した。これらの結果を表4に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
比較例3〜4は、粘着フィルムの透湿度が10.0g/m/day以下であるため、
厚みが100μmのウエハについては、良好にピックアップできたが、粘着フィルムと接
着剤層とを合わせた吸水率が2.0体積%を越えているため、粘着剤層と接着剤層との間
の剥離性が悪く、厚みが50μmのウエハについてはピックアップミスが多発した。これ
に対して、実施例4〜7では、粘着フィルムと接着剤層とを合わせた吸水率が2.0体積
%以下であり、粘着剤層と接着剤層との間の剥離性が良いため、厚みが50μmと薄いウ
エハについてもピックアップミスが十分に減少した。
【符号の説明】
【0058】
11:基材フィルム
12:粘着剤層
13:接着剤層
14:粘着フィルム
15:半導体ウエハ加工用テープ
20:リングフレーム
21:ステージ
22:吸着ステージ
23:突き上げ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと該基材フィルム上に設けられた粘着剤層とからなる粘着フィルムであっ
て、透湿度が10.0g/m/day以下であることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項2】
基材フィルムと該基材フィルム上に設けられた粘着剤層とからなる粘着フィルムと、前
記粘着剤層上に設けられた接着剤層とを有するウエハ加工用テープであって、前記粘着フ
ィルムの透湿度が10.0g/m/day以下であることを特徴とする半導体ウエハ加
工用テープ。
【請求項3】
前記粘着フィルムと前記接着剤層とを合わせた吸水率が2.0体積%以下であることを
特徴とする請求項2に記載の半導体ウエハ加工用テープ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−275509(P2010−275509A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132321(P2009−132321)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】