説明

粘着フィルム

【課題】 粘着フィルム同士のブロッキングが少なく、特に粘着フィルムをロール状態で保管した後にもブロッキングが少なく、加工適性に優れ、被着体に貼り合せ後、高温で処理しても発泡しにくく、透明性に優れる、被着体の外観を維持しつつ粘着力の変化が少ない粘着フィルムを提供すること。
【解決手段】 ポリプロピレン系樹脂からなる基材層の片面に粘着層を、反対面に離形層を積層してなる積層体からなるポリプロピレン系樹脂フィルムであって、前記離形層表面の平均表面粗さSRaが0.050μm以上、0.200μm以下であり、前記粘着層の表面の平均表面粗さSRaが0.030μm以下であって、明細書中で定義する被着体との接触面積が90%以上、100%以下であり、明細書記載の方法によるアクリル板に粘着後23℃で24時間経過後に剥離した時の粘着面及びアクリル板上の高分子成分のブリード物の量をa1、酸化防止剤のブリード物の量をb1、アクリル板に粘着後40℃で1週間経過後に剥離した粘着面及びアクリル板上の高分子成分のブリード物の量をa2、酸化防止剤の量をb2とした時、(a2−a1)×2−(b2−b1)が、−50mg/m、以上50mg/m以下でありかつフィルムヘイズが1〜40%の範囲であることを特徴とする粘着フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着フィルムに関する。本発明の粘着フィルムは、合成樹脂板、化粧合板、金属板および塗装鋼板のような物品の表面にそれを貼ることによって、物品の表面を塵の付着や傷つきのような好ましくない影響から保護するための表面保護フィルムとして、また、プリント基板のハンダ浸漬時の表面保護フィルムとして、特に好ましく用いることができる。本発明における「粘着フィルム」という用語は、粘着シートや粘着テープをも意味する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被覆体の表面保護を目的とした粘着フィルムは、建築資材や電気、電子製品、自動車等の加工、保管、輸送時にもちいられており、このような粘着フィルムは、良好な粘着性を有するとともに、使用後は、各表面を粘着剤で汚染することなく容易に引き剥がすことができなければならない。近年、可塑化塩化ビニル樹脂を基材とした粘着フィルムに替わって、ポリオレフィン系樹脂を基材とした粘着フィルムが使用されるようになってきた。が、これらのポリオレフィン系樹脂を基材とした粘着フィルムは、主としてEVA、低密度ポリエチレン等の低結晶性又は非晶性の粘着層やSIS、SEBS等のエラストマーからなる粘着層を基材層と共押出によって一体に形成されたものが使用されている。しかしながら、上記の粘着フィルムは、接合体の置かれる環境の影響を受けやすく、特に高温環境下では、極端な経時変化をおこし、そのため粘着力が上昇して被着体からの剥離が困難となったり、粘着剤が残存するなどの問題があった。
【0003】
この問題に対して、使用温度範囲に係らず低温環境下や高温環境下でも極端な経時変化することなく、好適な粘着性を維持する粘着剤として、非晶性オレフィン重合体と特定のエチレン系重合体よりなる組成物が開示されている(例えば、特許文献1、2、3等参照)。
しかしながら、上記の粘着フィルムにおいても保管によりブロッキングが生じるという問題があった。
【0004】
また、粘着層の反対面に特定の表面粗さを有する表面層を設け、耐ブロッキング性を向上させたフィルムが開示されている(例えば、参考文献4、5、6参照。)。
しかしながら、このフィルムも性能面では十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−63123号公報
【特許文献2】特開2006−299060号公報
【特許文献3】特開2006−257191号公報
【特許文献4】特開2008−68564号公報
【特許文献5】特開2008−162059号公報
【特許文献6】特開2009−143074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、粘着フィルム同士のブロッキングが少なく、特に粘着フィルムをロール状態で保管した後にもブロッキングが少なく、加工適性に優れ、被着体に貼り合せ後、高温で処理しても発泡しにくく、透明性に優れる、被着体の外観を維持しつつ粘着力の変化が少ない粘着フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討の結果、粘着フィルム同士を重ね合わせる場合は、粘着層表面は、その反対面の影響を受けやすく、粘着力の低下や、貼り合せ時に被着体とフィルムの間に小さな気泡をかみ込むことや粘着層からのブリード物が粘着挙動に関係することを見出し、本発明に到達したものである。
即ち、本発明はポリプロピレン系樹脂からなる基材層の片面に粘着層を、反対面に離形層を積層してなる積層体からなるポリプロピレン系樹脂フィルムであって、前記離形層表面の平均表面粗さSRaが0.050μm以上、0.200μm以下であり、前記粘着層の表面の平均粗さSRaが0.030μm以下であって、明細書中で定義する被着体との接触面積が90%以上、100%以下であり、明細書記載の方法によるアクリル板に粘着後23℃で24時間経過後に剥離した時の粘着面及びアクリル板上の高分子成分のブリード物の量をa1、酸化防止剤のブリード物の量をb1、アクリル板に粘着後40℃で1週間経過後に剥離した粘着面及びアクリル板上の高分子成分のブリード物の量をa2、酸化防止剤の量をb2とした時、(a2−a1)×2−(b2−b1)が、−50mg/m以上、50mg/m以下であり、かつフィルムヘイズが1〜40%の範囲であることを特徴とする粘着フィルムである。
【0008】
本発明によれば、粘着フィルム同士のブロッキングが少なく、特に粘着フィルムをロール状態で保管した後にもブロッキングが少なく、加工適性に優れ、被着体に貼り合せ後、高温で処理しても発泡しにくく、粘着力の増加も少なく、しかも透明性に優れる粘着フィルムの保管状態の影響を受けることなく、経時での粘着力の変化の少ない粘着フィルムを得ることができる。
しかも、タック性に優れ、加工適性に優れる。
【0009】
またこの場合において、前記粘着層がポリプロピレン系エラストマーを含有することが好適である。
【0010】
さらにまた、この場合において、前記ポリプロピレン系エラストマーがポリプロピレン系樹脂のみからなる非晶性ポリプロピレンもしくはポリプロピレンとエレン−プロピレンゴムの共重合体であることが好適である。
【0011】
さらにまた、この場合において、前記離形層の表面の平均表面粗さSRaが0.150μm以下であることが好適である。
【0012】
さらにまた、この場合において、前記粘着層の表面の平均表面粗さSRaが0.020μm以下であることが好適である。
【0013】
さらにまた、この場合において、前記基材層、粘着層及び離形層とが、複数の押出し機から共押出法により溶融押し出し積層されたものであることが好適である。
【0014】
さらにまた、この場合において、前記フィルムからなるフィルムロールであって、前記フィルムロールの巾が450mm以上、長さ300m以上であるフィルムロールが好適な形態である。
【発明の効果】
【0015】
本発明による粘着フィルムは、粘着フィルム同士のブロッキングが少なく、特に粘着フィルムをロール状態で保管した後にもブロッキングが少なく、加工適性に優れ、被着体に貼り合せ後、高温で処理しても発泡しにくく、透明性に優れ、しかも被着体の外観を維持しつつ粘着力の変化が少ないという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の粘着フィルムの実施の形態を説明する。
【0017】
(基材層)
本発明の粘着フィルムは、ポリプロピレン系樹脂からなる基材層を必要とし、ここで用いるポリプロピレン系樹脂としては、結晶性ポリプロピレン、プロピレンと少量のαオレフィンとのランダム共重合ブロック共重合体等を挙げることができ、さらに詳しくは、結晶性ポリプロピレン樹脂として、通常の押出成形などで使用するn−へプタン不溶性のアイソタクチックのプロピレン単独重合体又はプロピレンを60重量%以上含有するポリプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができ、このプロピレン単独重合体あるいはプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体を、単独又は混合して使用することができる。
ここで、n−ヘプタン不溶性とは、ポリプロピレンの結晶性を指標すると同時に安全性を示すものであり、本発明では、昭和57年2月厚生省告示第20号によるn−ヘプタン不溶性(25℃、60分抽出した際の溶出分が150pPm以下〔使用温度が100℃を超えるものは30PPm以下〕)に適合するものを使用することが好ましい態様である。
【0018】
プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体のα−オレフィン共重合成分としては、炭素数が2〜8のα−オレフィン、例えば、エチレンあるいは1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのC4以上のα−オレフィンが好ましい。
ここで共重合体とは、プロピレンに上記に例示されるα−オレフィンを1種又は2種以上重合して得られたランダム又はブロック共重合体であることが好ましい。
また、メルトフローレート(MFR)は、0.1〜100g/10min、好ましくは0.5〜20g/10min、さらに好ましくは、1.0〜10g/10minの範囲のものを例示することができる。特に好ましくは2.0〜7.0g/10minの範囲が好ましい。
プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体を2種以上混合して使用することもできる。1−ブテン共重合ポリプロピレン共重合体を使用すると、フィルムの腰が柔らかくなりタック性が良くなり、接触面積比率を向上させるのに好適である。
【0019】
(粘着層)
また、本発明の要件である粘着層に用いる樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂からなる基材層の片面に粘着層を積層する関係上、オレフィン系重合体を用いることが、層間強度を高めたり、剥離後の被着体への粘着層の残存を防ぐ意味から望ましく、さらに、本発明要件の被着体との接触面積比率を達成する為には、粘着層が非晶質のポリオレフィン系樹脂を少なくとも50%以上含有し、かつこれが細かく分散していることが好ましい。
前記ポリオレフィン系エラストマーを含有させる方法としては、1)多段重合によってエラストマー成分が細かく島状に分散しているブロック共重合体を使用する方法、2)オレフィン系エラストマー樹脂を結晶性オレフィン樹脂で希釈する方法、及び3)両者を併用する方法などが挙げられる。
1)の事例としては、例えば三菱化学(株)製「ゼラスMC707」「ゼラスMC717」を挙げる事ができる。また2)の事例としては、例えば住友化学(株)製「タフセレンH3522A」を挙げる事ができる。
しかしながら、これらの樹脂をそのまま使用するだけでは、加温・経時による粘着力の促進、被着体の汚れを防止することは困難である。これらの弊害を防ぐ為には、本発明要件のひとつである高分子量由来のブリード物の量と酸化防止剤のブリード物の量を特定の範囲内、即ちアクリル板に粘着後23℃で24時間経過後に剥離した時の粘着面及びアクリル板上の高分子成分のブリード物の量をa1、酸化防止剤のブリード物の量をb1、アクリル板に粘着後40℃で1週間経過後に剥離した粘着面及びアクリル板上の高分子成分のブリード物の量をa2、酸化防止剤の量をb2とした時、(a2−a1)×2−(b2−b1)が、−50mg/m以上、50mg/m以下とすることが必要である。
【0020】
尚、ブリード物の量とは、クロロホルムでの抽出により得られた値であり、いわゆる粘着層の糊残りとは異なり極微量の粘着層表面の高分子や添加剤由来成分量を意味する。
【0021】
高分子量由来のブリード物の量と酸化防止剤のブリード物の量を特定の範囲内にする方策としては、1)製膜前に、原料レジンを水に浸漬させて高分子成分の低分子量物を洗浄する方法、2)製膜時もしくは製膜後に粘着層表面にコロナ処理を行い、初期の高分子量由来のブリード物を増やしておく方法、3)粘着後にブリードアウトの量が増大する熱安定剤を添加しておく方法 等が挙げられる。ただし、これらの方法は実施する条件によっては逆に粘着力の経時での低下をもたらす場合もあるので注意が必要である。
【0022】
本発明で用いられる酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤が好ましい。市販品を使用することもでき、例えば、イルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、イルガノックス1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、イルガノックス1330(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、イルガノックス3114(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、イルガノックス1425WL(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)等が挙げられる。
【0023】
粘着層は、メルトフローレート(MFR)は、0.1〜100g/10min、好ましくは0.5〜20g/10min、さらに好ましくは、1.0〜10g/10minの範囲のものを例示することができる。特に好ましくは2.0〜7.0g/10minの範囲が好ましい。
【0024】
本発明の粘着フィルムの粘着層の表面の平均表面粗さSRaは0.030μm以下である必要がある。好ましくは、0.025μm以下であり、さらに好ましくは、0.020μm以下であり、特に0.015μm以下であることが好ましい。
ここで、粘着層の表面の平均表面粗さSRaが0.030μmを超える場合は、被着体と貼りあわせの際に接触面積が減る為、粘着力を下げる原因となり、好ましくない。粘着力を決める要因の一つに、貼り合わされたフィルムの接触しているそれぞれの表面では、物質同士が引き合う力、すなわちファンデルワールス力が働いており、この力が粘着力の源となっている。ここで、接触面積が少ないということは、張り合わされたフィルム表面と被着体表面の間での引き合う力が少なくなる事を意味し、粘着力を下げることとなるので好ましくないというものである。
また、粘着層表面を出来る限り平面にする必要があり、表面凹凸を形成する様な添加剤は、極力添加しない様にするのが好ましいといえる。
一方、粘着層の表面の平均表面粗さSRaを0.010μm未満とする事は、添加剤無添加の延伸フィルムにおいても事実上困難といえる。
【0025】
本発明の粘着フィルムは、フィルム製造時の巻き取り方向に対して直行する方向である横方向の厚み変動率が、2.0%以上、10.0%以下の範囲であることが好ましく、好ましくは、8.0%以下であり、さらに好ましくは、6.0%以下である。厚み変動率が10.0%を超える場合は、被着体に粘着フィルムを加圧貼り付けする際に、場所による圧力のムラが生じ、粘着力を低下させる原因となるので、好ましくない。一方、厚み変動率を2.0%未満に抑えることは、事実上困難といえる。
【0026】
本発明のフィルムはJIS−Z−0237粘着テープ・粘着シート試験方法に準拠して下記の方法により被着体との接触面性を測定した場合、その値が90%以上であることが好ましく、さらに95%以上であることが好ましく、特に98%以上であることが好ましい。
それにより、非80℃×24hrの条件で加熱処理を実施し場合に、発泡しにくく、貼着されたフイルムのアクリル板からの浮きや剥がれが抑えることができる。
した。
接触面積を大きくすることで、被着体とフィルムの界面に存在する目にみえない気泡が除去されたものと考えられる。
【0027】
このとき、前記フィルムの50℃における初期の粘着力と23℃における初期の粘着力の差が10cN/25mm以下であることが好ましく、特に5cN/25mm未満であることが好ましく、このように高温での粘着力が常温の場合に比べて変化が小さいと、経時での粘着力の変化が少ない。
【0028】
本願の粘着フィルムの粘着力は23℃において、3〜50cN/25cmの範囲であることが、被着体の保護性能及び剥離性の点から好ましい。粘着力は粘着層の樹脂の非晶成分の量、組成などの制御により、粘着力を適宜設定することにより可能である、
【0029】
本発明の粘着フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で公知の添加剤を必要に応じて含有させたりすることが出来る。例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃改良剤などを含有させたりしても良い。
但し、粘着層表面の低分子量物質を1mg/m未満にすることが好ましい。
【0030】
(離形層)
本発明の粘着フィルムは、基材層の片面に積層された粘着層とは反対面に離形層を形成するが、そうすることよって粘着フィルム同士を重ねても粘着フィルム同士のブロッキングが少なく、特に粘着フィルムをロール状態で保管した後にもブロッキングが少なく、加工適性に優れる。
この場合、その表面の平均表面粗さSRaを0.050μm以上とするのが好まししい。
しかしながら、単に離形層を設けるだけでは、離形層の表面凹凸が粘着層の表面に転写し、粘着力や上述した接着面積が低下したり、被着体に貼り合せた直後と経時後で粘着力の変化が生じさせることから、その平均表面粗さSRaを0.200μm以下とするのが好ましい。そうすることで耐ブロッキング性と被着体の保護性能を向上させることができる。
このとき、離形層の表面凹凸は、表面の平均表面粗さSRaで0.150μm以下となる様な表面にすることが好ましく、さらに0.060μm以上、0.130μm以下が好ましく、0.080μm以上、0.130μm以下が最も好ましい。
【0031】
上記のような表面凹凸を形成するには、例えば、シリコーン樹脂やフッ素樹脂からなる層や、プロピレンエチレンブロック共重合体からなる樹脂とポリエチレン樹脂を混合することによって得られるマット状に表面が荒れた層を積層することが出来る。
マット状の表面を得るのに好適な樹脂としては、具体的には日本ポリプロ(株)製「BC3HF」などのプロピレン−エチレンブロック共重合体を例示することが出来る。
表面の平均粗さSRaを大きくするという点ではロピレン−エチレンブロックコポリマー100%処方が有利であるが、単独で用いると表面粗さが大きくなりすぎる。そこで、ポリプロピレン単独重合体やプロピレン−エチレンランダム共重合体で希釈して、上記の表件粗さの範囲に収めることが必要となる。
【0032】
(粘着フィルム)
また、本発明の粘着フィルムのヘイズ値は1〜40の範囲であることが、特に光学用の被着体に使用する場合には好ましい。さらに好ましくは1〜30%、特に好ましくは1〜25%である。
【0033】
本発明の粘着層の厚さは、1μm以上、30μm未満であることが好ましい。
粘着フィルムの厚さが1μm未満であると、粘着に問題があり、30μm以上であると、粘着層表面の粘着力が強すぎるという問題がある。
このとき、粘着力を大きくする場合は、その粘性を考慮し、厚みを大きくするのが好ましい。粘着層の厚みが大きいと、被着体との接触面積が大きくしやすく、特に硬めの樹脂を粘着層に用いたときに有効である。
粘着層の厚さは、ブロッキングの点では、2μm以上、20μm以下であることが好ましく、さらに2μm以上、15μm以下が好ましく、特に2μm以上、5μm以下が好ましい。
【0034】
本発明の基材層の厚さは、5μm以上、100μm未満であることが好ましく、15μm以上、25μm未満であることがさらに好ましい。
粘着フィルムの厚さが5μm未満であると、腰感が弱くなり、シワになったり、粘着力が十分に得られないという問題があり、100μm以上であるとコストの点で問題がある。
タック性とは、瞬間接着力を意味し、接着初期時間での接着のしやすさの指標である。
【0035】
本発明の粘着フィルムはロールの形態とするのが取り扱いの上で好適である。
フィルムロールの幅および巻長の上限は特に制限されるものではないが、取扱いのしやすさから、一般的には幅1.5m以下、巻長はフィルム厚み45μmの場合に6000m以下が好ましい。また、巻取りコアとしては、通常、3インチ、6インチ、8インチ等のプラスチックコアや金属製コアを使用することができる。
また、加工の適性から長さ300m以上、幅450mm以上の寸法で巻き取ったフィルムロールであることが好ましい。
【0036】
本発明の粘着フィルムは、特に合成樹脂板(例えば、光学用部材用、建築資材用)、ステンレス板(例えば、建築資材用)、アルミ板、化粧合板、鋼板、ガラス板、家電製品、精密機械および、製造時の自動車ボディーの表面を保護するため、物品を積み重ねたり、保管したり、輸送したり、製造工程で搬送する際の傷付きから防止するため、ならびに、物品を二次加工する(たとえば、曲げ加工やプレス加工)際の傷付きから防止するために、好適に用いることができる。
【実施例】
【0037】
次に実施例をあげて本発明をさらに説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない限り下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0038】
(1)結晶融解熱及び結晶化熱量
ポリオレフィン樹脂約5mgを秤量し、株式会社島津製作所製の示差走査熱量計(DSC−60)を使用して、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、降温速度10℃/分で0℃まで冷却した後、再度10℃/分で200℃まで昇温した時のチャートから結晶融解熱及び結晶化熱量を求める。
【0039】
(2)樹脂の弾性率
JIS K 7162試験方法に準拠して下記の条件にて測定した。
試験片:1A型
つかみ間:115mm
速度:1mm/min
【0040】
(3)表面粗さの測定
(株)小坂研究所製の接触式三次元中心面表面粗計(型式ET−30HK)及び三次元粗さ解析装置(SPA−11)を用いて、離型面、粘着面の表面の中心面平均粗さ(SRa)を次の条件で触針法により測定した。
条件は下記の通りであり、20回の測定値の平均値をもって値とした。
触針先端半径:0.5μm
触針圧:20mg
カットオフ値:80μm
測定長:1000μm
縦倍率:5000倍
測定速度:100μm/s
測定間隔:2μm
【0041】
(4)粘着性の評価
JIS−Z−0237(2000)粘着テープ・粘着シート試験方法に準拠して下記の方法にて測定した。
被着体として、アクリル板(三菱レイヨン(株)製:アクリライト3mm厚)50mm×150mmを準備し、試験片として、フィルム製造時の巻き取り方向に25mm、それとは直交する方向に180mmの試験片を切り出し、質量2000gのゴムロール(ローラ表面のスプリング硬さ80Hs、厚さ6mmのゴム層で被覆された、幅45mm、直径(ゴム層を含む)95mmのもの)を用いて、被着体と試験片を5mm/秒の速さで、1往復させて圧着した。圧着後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で30分放置したものを初期とし、24時間放置したものを経時として、東洋精機社製「テンシロン」(UTM−IIIL)を用いて、300mm/分の速度で180度剥離した際の抵抗値を粘着力[cN/25mm]とした。180度剥離とは、剥離時の抵抗値を測定する際のアクリル板とフィルムの剥離角度を180度に保持することを意味する。
測定の際は測定試料のつかみ代として厚み190μm、サイズ25mm×170mmのポリエステルシートを準備し、上記、粘着フィルムとアクリル板を圧着した測定試料の粘着フィルム側の端に、のり代15mmの幅でセロハンテープにて貼り付けて、測定の際のつかみ代とした。測定試料の模式図を図1に示す。測定は一つのサンプルに関して3回実施し、その平均値をそのサンプルの粘着力とした。
【0042】
(5)被着体との接触面積比率の評価
(4)と同様の方法で、粘着フイルムをアクリル板に貼着させ、23℃×30分後にアクリル板と粘着フイルムとの接触面の状態を観察した。
観察条件:KEYENCE製 デジタルマイクロスコープVHX−200Fを使用して、倍率100倍でデジタル画像を撮影後、画像解析ソフトでアクリル板と接触している部分の面積比率を算出した。
【0043】
(6)高分子成分のブリード物の量a1及び酸化防止剤のブリード物の量b1の定量方法
(4)と同様の方法でアクリル板に粘着後23℃で24時間経過後に剥離し、フィルム2枚の粘着層表面を向かい合わせ、1枚につき25.2cm×12.4cm面積を抽出できるようスペーサーをはさんで枠に固定した。クロロホルム20mlを抽出面間に注入し、3分間表面のブリード物を抽出した。抽出液を回収した後、再度新しいクロロホルム10mlを入れ、軽く洗浄した。
一方、あらかじめクロロホルムで洗浄したキムワイプを乾燥させた後n−ヘキサンを含ませ、アクリル板をふき取り、キムワイプをn−ヘキサンで抽出した(ふき取りと抽出を3度繰り返した)。これらの抽出液を集め、乾固し、残渣の重量を測定した。また、残渣を重クロロホルムに溶解させ、VARIAN製400MHz−NMR装置を用いてH−NMRスペクトルを測定した。H−NMRスペクトルの各成分のピーク面積から抽出物中に含まれる各成分の重量比を算出した。このうち高分子成分合計の重量比、酸化防止剤合計の重量比をそれぞれ全抽出物重量に乗じ、高分子成分のブリード物の量a1、酸化防止剤のブリード量の量b1を算出した。
【0044】
(7)高分子成分のブリード物の量a2及び酸化防止剤のブリード物の量b2の定量方法
(4)と同様の方法でアクリル板に粘着後40℃で一週間経過後に剥離し、以下(6)と同様の方法で測定した。
【0045】
(8)高温処理時の被着体の汚れ
(4)と同様の方法で粘着フイルムをアクリル板に貼着後、80℃×24hrの条件で加熱処理を実施した。貼着されたフイルムをアクリル板から剥した後、アクリル板の表面汚れを目視で評価した。
○:汚れがない
△:僅かに汚れが見られる
×:明らかに白く見える
【0046】
(9)フィルムヘイズ
JIS−K−7105プラスチックの光学的特性試験方法に準拠して日本電色工業(株)ヘイズメーターNDH−2000を用いて測定した。
(10)耐ブロッキング性の評価
粘着フイルムを縦150mm×横50mmのサイズに切り出し、粘着面と離型面を対向させて重ね合わせた後、20kgの荷重をかけて40℃環境下で7日間静置した。その後、処理した粘着フイルムを25mm巾×100mm長に切り出し、東洋精機製の引張り試験機テンシロンUT−IIILを用いて、速度300mm/分の速度で粘着面と離型面間を180°剥離した際の抵抗値[cN/25mm]を測定した。
【0047】
(11)厚み変動率
Anritsu FILM THICKNESS TESTER KG601A及K306Cを用いて、下記の方法にて測定した。
測定速度 0.01秒
送り速度 1.5m/分
HIGH CUT OFF
間引き処理 OFF
フィルム製造時の巻き取り方向に対して40mm、巻き取り方向とは直交する方向に対して500mmの長さのサンプルを切り出し、巻き取り方向と直交する方向の連続厚みを上記条件にて測定した。測定により得られた結果を基に以下の式により、厚み変動率を求めた。測定は一つのサンプルに関して5回実施し、その平均値をそのサンプルの厚み変動率とした。

厚み変動率(%)=[(厚みの最大値−厚みの最低値)/厚みの平均値]×100
【0048】
[実施例1]
(基材層の作製)
ホモポリプロピレン重合体(住友化学社製:FLX80E4、引張弾性率:1500MPa)100wt%を60mmφ単軸押出し機(L/D:22.4)にて溶融押出しして基層とした。
(粘着層の作製)
オレフィン系エラストマー(三菱化学製:ゼラスMC707)98wt%と、Irganox1076 50000ppm含有する熱安定剤マスターバッチ(MB)2wt%とを、45mmφ2軸押出し機(L/D:19)にて溶融押出しして粘着層とした。
(離型層の作製)
プロピレン−エチレンブロック共重合体(日本ポリプロ BC3HF)50wt%とプロピレン−エチレンランダム共重合体(住友化学製:WF836DG3)50wt%を65mmφ単軸押出し機(L/D:25)にて溶融押出しして離型層とした。
(フイルムの作製)
基材層、粘着層、離型層それぞれが各押出し機にて溶融された状態のまま、250℃の3層Tダイ(マルチマニホールド型、リップ幅250mm、リップギャップ1mm)内で積層押出しを行った。押出したフイルムを温度20℃のキャスティングロールへエアーナイフで吹きつけ、12m/min速度で引取り、冷却固化して基材層厚みが35μm、粘着層厚みが10μm、離型層厚みが5μmの3種3層未延伸フイルムを得た。
このフイルムの特性を評価した結果、平滑な粘着層が形成され、常温での粘着性を有し、被着体と粘着層の接触ムラが無く、被着体との貼着後の粘着力増加幅が小さく、外観に優れ、離型層と粘着層間のブロッキングが無く取扱い性の良好なものであった。
【0049】
[実施例2]
基材層の樹脂を、プロピレン−1−ブテン共重合体(住友化学製:SPX78J1、引張弾性率:530MPa)50wt%とホモポリプロピレン重合体(住友化学社製:FLX80E4、引張弾性率:1500MPa)50wt%とした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作製した。このフィルムも、平滑な粘着層が形成され、常温での粘着性を有し、被着体と粘着層の接触ムラが無く、被着体との貼着後の粘着力増加幅が小さく、外観に優れ、離型層と粘着層間のブロッキングが無く取扱い性の良好なものであった。
【0050】
[実施例3]
基材層、離型層の作製は実施例1のままとした。粘着層とフィルムの作製は下記の通りとした。このフィルムも、平滑な粘着層が形成され、常温での粘着性を有し、被着体と粘着層の接触ムラが無く、被着体との貼着後の粘着力増加幅が小さく、外観に優れ、離型層と粘着層間のブロッキングが無く取扱い性の良好なものであった。
(粘着層)
非晶性PP(住友化学製:タフセレンH3522A、結晶融解熱量及び結晶化熱量が28J/g)とホモポリプロピレン樹脂(住友化学社製:FLX80E4、引張弾性率:1500MPa)を50/50wt%の比率で混合したものを、45mmφ2軸押出し機(L/D:19)にて溶融押出しして粘着層とした。
(フイルムの作製)
基材層、粘着層、離型層それぞれが各押出し機にて溶融された状態のまま、250℃の3層Tダイ(マルチマニホールド型、リップ幅250mm、リップギャップ1mm)内で積層押出しを行った。押出したフイルムを温度20℃のキャスティングロールへエアーナイフで吹きつけ、12m/min速度で引取り、冷却固化した後、粘着層の表面を表面張力が37mN/mとなるようにコロナ処理を施して、基材層厚みが30μm、粘着層厚みが15μm、離型層厚みが5μmの3種3層未延伸フイルムを得た。
このフィルムも実施例1と同様良好な特性を示した。
【0051】
[比較例1]
オレフィン系エラストマー(三菱化学製:ゼラスMC707)100wt%とした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作製した。
このフイルムの特性を評価した結果、平滑な粘着層が形成され、常温での粘着性を有し、被着体と粘着層の接触ムラが無く、外観に優れ、離型層と粘着層間のブロッキングが小さかったが、被着体との貼着後の粘着力増加幅が大きかった。
【0052】
[比較例2]
粘着剤層の処方を、非晶性PP(住友化学製:タフセレンH3522A、結晶融解熱量及び結晶化熱量が28J/g)とホモポリプロピレン樹脂(住友化学社製:FLX80E4、引張弾性率:1500MPa)を80/20wt%の比率で混合したものとし、かつコロナ処理を
実施しなかったこと意外は実施例3と同様にしてフィルムを作製した。
このフイルムの特性を評価した結果、平滑な粘着層が形成され、常温での粘着性を有し、被着体と粘着層の接触ムラが無く、外観に優れ、離型層と粘着層間のブロッキングが小さかったが、被着体との貼着後の粘着力増加幅が大きく、また被着体の汚れが確認された。
【0053】
[比較例3]
粘着層の処方を、オレフィン系エラストマー(三菱化学製:ゼラスMC707)95wt%と、Irganox1076 50000ppm含有する熱安定剤マスターバッチ(MB)5wt%とし、
粘着面表面を表面張力が45mN/mとなるようにコロナ処理を施した以外は実施例1とどうようにしてフィルムを作製した。
このフイルムの特性を評価した結果、平滑な粘着層が形成され、常温での粘着性を有していたが、経時により逆に粘着力が大きく低減する結果となった。
【0054】
[比較例4]
基材層、粘着層は実施例1のまま、離型層、各層構成を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フイルムを得た。
(離型層の作成)
プロピレン−エチレンブロックコポリマー(サンアロマー製:PC523A)100wt%を65mmφ単軸押出し機(L/D:25)にて溶融押出しして離型層とした。
(フイルムの作成)
基材層、粘着層、離型層それぞれが各押出し機にて溶融された状態のまま、250℃の3層Tダイ(マルチマニホールド型、リップ幅250mm、リップギャップ1mm)内で積層押出しを行った。押出ししたフイルムを温度20℃のキャスティングロールへエアーナイフで吹きつけ、12m/min速度で引取り、冷却固化して基材層厚みが40μm、粘着層厚みが5μm、離型層厚みが5μmの3種3層未延伸フイルムを得た。
このフイルムの特性を評価した結果、常温での粘着性が若干低下し、粘着層表面の粗度が高く、被着体と粘着層の接触ムラが見られ、被着体と粘着面の接触面積が少ないものとなっていた。また、貼着後の高温処理時に発泡しており、加熱後に外観の悪化が見られた。離型層と粘着層間のブロッキングは無く取扱い性は良好であった。
【0055】
[比較例5]
基材層、粘着層は実施例1のまま、離型層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法でフイルムを作成して基材層厚みが35μm、粘着層厚みが10μm、離型層厚みが5μmの3種3層未延伸フイルムを得た。
(離型層)
ホモポリプロピレン樹脂(住友化学社製:FLX80E4)100wt%を65mmφ単軸押出し機(L/D:25)にて溶融押出しして離型層とした。
このフイルムの特性を評価した結果、平滑な粘着層が形成され、常温での粘着性を有し、被着体と粘着層の接触ムラは見られず、被着体と粘着面の接触面積は充分だった。また、貼着後の高温処理時に発泡も無く、加熱後の外観も良好だったが、離型層と粘着層間のブロッキングが強く、取扱い性に問題があった。
【0056】
上記結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の粘着フィルムは、粘着フィルム同士のブロッキングが少なく、特に粘着フィルムをロール状態で保管した後にもブロッキングが少なく、加工適性に優れ、被着体に貼り合せ後、高温で処理しても発泡しにくくかつ粘着力の経時変化が少ないため、合成樹脂板、化粧合板、金属板および塗装鋼板、また、自動車の焼付け塗装時やプリント基板などの幅広い用途分野に利用することができ、産業界に寄与することが大である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】測定試料の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂からなる基材層の片面に粘着層を、反対面に離形層を積層してなる積層体からなるポリプロピレン系樹脂フィルムであって、前記離形層表面の平均表面粗さSRaが0.050μm以上、0.200μm以下であり、前記粘着層表面の平均表面粗さSRaが0.030μm以下であって、明細書中で定義する被着体との接触面積が90%以上、100%以下であり、明細書記載の方法によるアクリル板に粘着後23℃で24時間経過後に剥離した時の粘着面及びアクリル板上の高分子成分のブリード物の量をa1、酸化防止剤のブリード物の量をb1、アクリル板に粘着後40℃で1週間経過後に剥離した粘着面及びアクリル板上の高分子成分のブリード物の量をa2、酸化防止剤の量をb2とした時、(a2−a1)×2−(b2−b1)が、−50mg/m以上、50mg/m以下であり、かつフィルムヘイズが1〜40%の範囲であることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項2】
粘着層がポリオレフィン系エラストマーを含有するものである請求項1記載の粘着フィルム。
【請求項3】
ポリオレフィン系エラストマーがポリプロピレン系樹脂のみからなる非晶性ポリプロピレンもしくはポリプロピレンとエチレン−プロピレンゴムの共重合体である請求項2記載の粘着フィルム。
【請求項4】
離形層の平均表面粗さSRaが0.150μm以下である請求項1記載の粘着フィルム。
【請求項5】
粘着層の平均表面粗さSRaが0.020μm以下である請求項1記載の粘着フィルム。
【請求項6】
基材層、粘着層及び離形層とが、複数の押出し機から共押出法により溶融押し出し積層されたものである請求項1記載の粘着フィルム。
【請求項7】
請求項1記載のフィルムからなるフィルムロールであって、前記フィルムロールの巾が450mm以上、長さ300m以上であるフィルムロール。

【図1】
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【公開番号】特開2011−42761(P2011−42761A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193114(P2009−193114)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】