説明

粘着剤及び表面保護フィルム

【課題】初期接着力に優れ、経時による接着力の変動が少なく、被着体から剥離された後の被着体表面の汚染などが生じ難い粘着剤層を構成し得る粘着剤、及び該粘着剤を用いた表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】粘着性ポリマーと粘着付与樹脂とからなる粘着剤組成物に常温で固体のブロッキング防止剤が外部添加されてなる粘着剤であって、ブロッキング防止剤が粘着性ポリマーと相溶性を有する粘着剤、及び該粘着剤からなる粘着剤層が積層された表面保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体表面への塵埃の付着や被着体表面の傷つきを防止する表面保護フィルムに用いられる粘着剤に関し、より詳細には、例えばフィルム基材等に粘着剤層を構成するのに用いられる粘着剤及び該粘着剤を用いた表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
物品や部材を保護するために、物品や部材の表面に表面保護フィルムが仮着されることがある。表面保護フィルムは、例えば、合成樹脂板、金属板、化粧合板、塗装鋼板、塗装樹脂板または各種銘板などの様々な被着体において、加工時及び運搬時にこれらの表面への汚れの付着や表面の傷つきを防止するのに用いられている。中でも、塗装鋼板や塗装樹脂板に表面保護フィルムが多用されている。
【0003】
この種の表面保護フィルムは、フィルム基材に粘着剤層が積層された構造を有する。フィルム基材には、一般に、熱可塑性樹脂からなるフィルムが用いられている。
【0004】
ところで、表面保護フィルムは、その粘着剤層の粘着力を利用して被着体表面に貼付され、被着体表面を保護する。表面保護フィルムは、被着体が使用されるまで貼付され、被着体が使用される際に被着体表面から剥離される。従って、表面保護フィルムには、1)初期接着力が十分であること、2)接着力の経時安定性が良好であり、経時により接着力が変動し難いこと、並びに3)被着体からの剥離が容易であり、かつ剥離後の被着体への糊残りや、粘着剤に含まれる添加剤のブリードアウトが生じ難いこと等が求められている。
【0005】
下記の特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂フィルムよりなる基材層の片面にクレー、炭酸カルシウム、タルク、有機珪素化合物、及び合成樹脂微粒子から選ばれる固形微粒子またはそれらの混合物を含有する再剥離型粘着剤層が形成されてなる自動車用表面保護フィルムが開示されている。この表面保護フィルムは、自動車等の被着体に貼付された後、屋外に一時放置されても粘着力の上昇が少なく再剥離性に優れているとされている。
【特許文献1】特開平7−216323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の自動車用表面保護フィルムでは、被着体から剥離された後に、被着体への糊残りや、粘着剤に含まれる添加物のブリードアウトが生じることがあった。
【0007】
ところで、粘着剤組成物は通常、ペレット状或いはブロック状にして取り扱うことが多いが、自着性(自己ブロッキング性)が高いため、粘着剤組成物からなる粘着剤層を構成して表面保護フィルムを製造する際に、ハンドリング性が非常に悪いといった課題があった。そこで、粘着剤組成物の自己ブロッキングを抑制するために、粘着剤組成物と相溶しないブロッキング防止剤が粘着剤組成物に配合されることがあった。
【0008】
しかしながら、粘着剤組成物と相溶しないブロキング防止剤が粘着剤組成物に配合されていると、この粘着剤組成物からなる粘着剤層が構成された粘着テープ、粘着フィルム等では、高温高湿条件下でブロッキング防止剤がブリードアウトすることがあった。この場合、経時により接着力が変動したり、例えば塗装鋼板等の被着体から表面保護フィルムを剥離した後に被着体が汚染されることがあった。
【0009】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、初期接着力に優れ、経時による接着力の変動が少なく、被着体から剥離された後の被着体表面の汚染などが生じ難い粘着剤層を構成し得る粘着剤、及び該粘着剤を用いた表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、粘着性ポリマーと粘着付与樹脂とからなる粘着剤組成物に常温で固体のブロッキング防止剤が外部添加されてなる粘着剤であって、ブロッキング防止剤が粘着性ポリマーに相溶性を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る粘着剤のある特定の局面では、粘着性ポリマーは、ハードセグメントとソフトセグメントとからなるブロック共重合体であって、ブロッキング防止剤がハードセグメントに相溶性を有している。
【0012】
本発明に係る粘着剤の他の特定の局面では、粘着性ポリマーは、スチレン系重合体ブロック(A)とオレフィン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体、またはブロック重合体の水添物を主骨格とするスチレン系エラストマーである。
【0013】
本発明に係る表面保護フィルムは、合成樹脂からなる基材に、本発明に従って構成された粘着剤からなる粘着剤層が積層されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る粘着剤は、粘着性ポリマーと粘着付与樹脂とからなるペレット状或いはブロック状の粘着剤組成物に常温で固体のブロッキング防止剤が外部添加されてなるものである。本発明では、ブロッキング防止剤が粘着性ポリマーに相溶性を有するため、初期接着力に優れ、被着体表面に対して容易に貼付し得る粘着剤層を構成することができる。よって、例えば、この粘着剤層が構成された表面保護フィルムを用いると、被着体表面への塵埃の付着を防止したり、表面の傷つきを防止することができる。
【0015】
また、本発明に係る粘着剤では、接着力の経時による安定性が高められており、粘着剤層の剥離作業性にも優れている。さらに、剥離後に被着体に糊残りや、添加剤のブリードアウトも生じ難いため、被着体の汚染を防止することができる。従って、本発明の粘着剤を用いれば、初期接着力、接着力の経時安定性、剥離作業性、及び塗膜の汚染防止性に優れた表面保護フィルムを提供することができる。
【0016】
粘着性ポリマーが、ハードセグメントとソフトセグメントとからなるブロック共重合体であって、ブロッキング防止剤がハードセグメントに相溶性を有する場合には、更に剥離後の被着体の糊残りや添加剤のブリードアウトを抑制することができる。
【0017】
粘着性ポリマーが、スチレン系重合体ブロック(A)とオレフィン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体、または該ブロック重合体の水添物を主骨格とするスチレン系エラストマーである場合には、初期接着力、接着力の経時安定性、および剥離作業性により一層優れた粘着剤層を構成することができる。
【0018】
本発明に係る表面保護フィルムでは、合成樹脂からなる基材に、本発明に従って構成された粘着剤からなる粘着剤層が積層されている。よって、表面保護フィルムは、初期接着力、接着力の経時安定性、剥離作業性、塗膜の汚染防止性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0020】
本発明に係る粘着剤は、粘着性ポリマーと粘着付与樹脂とからなる粘着剤組成物に、粘着性ポリマーに相溶性を有する常温で固体のブロッキング防止剤が外部添加されて構成されている。
【0021】
本発明に使用される上記粘着性ポリマーとしては特に限定されず、例えば、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリイソブチレン(イソブチレンの重合体)、ブチルゴム(イソブチレンとイソプレンとの共重合体を主成分とし、必要に応じて架橋性官能基を有するモノマーを共重合したものまたは変性したもの)、ポリブテン(1−ブテンの重合体)等のオレフィン系エラストマー、ポリクロロプレン、ニトリルゴムなどが挙げられる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。なかでも再剥離性、成形性に優れるので、スチレン系エラストマーが好ましい。
【0022】
上記スチレン系エラストマーとしては、特に限定されないが、スチレン−共役ジエン系ブロック共重合体やスチレン−イソブチレン系ブロック共重合体が挙げられる。スチレン系エラストマーが脂肪族性不飽和結合を有する場合には、水素添加されていることが好ましい。
【0023】
上記スチレン系エラストマーの重量平均分子量は、GPC法によるポリスチレン換算重量平均分子量で50,000〜400,000の範囲が好ましく、より好ましくは80,000〜200,000の範囲である。重量平均分子量が50,000未満では、粘着剤の凝集力が低下するため、再剥離時に被着体に糊残りが生じるおそれがある。重量平均分子量が400,000を超えると、粘着力が不足するとともに、流動性が悪くなるおそれがある。
【0024】
本発明では、粘着性ポリマーとして、ハートセグメントとソフトセグメントとからなるブロック状重合体である粘着性ポリマーがより好ましく用いられる。ハートセグメントとソフトセグメントとからなるブロック状重合体である粘着性ポリマーとしては、例えばオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、アクリル系エラストマー等の各種エラストマーが挙げられる。
【0025】
また、本発明では、スチレン系重合体ブロック(A)とオレフィン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体、または該ブロック共重合体の水添物を主骨格とするスチレン系エラストマーがさらに好ましく用いられる。このスチレン系エラストマーとは、スチレン系重合体ブロック(A)とオレフィン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体、スチレン系重合体ブロック(A)とスチレンとオレフィンとのランダム共重合体ブロック(B´)とのブロック共重合体、またはこれらの水添物を主骨格とするスチレン系エラストマーである。言い換えると、上記スチレン系エラストマーは下記の(1)、(2)または(3)のスチレン系エラストマーである。
【0026】
(1)スチレン系重合体ブロック(A)とオレフィン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体を主骨格とするスチレン系エラストマー。ここで、オレフィン系重合体ブロック(B)としては、より具体的には、共役ジエン重合体ブロック、イソブチレン重合体ブロックなどが挙げられる。このスチレン系エラストマーとしては、(A)−(B)ブロック共重合体を主骨格とする限り、特に限定されず、例えばA−B、A−B−A、(A−B)nまたは(A−B)nXなどで表される共重合体が挙げられる。なお、Xはカップリング剤による残基である。
【0027】
(2)スチレン系重合体ブロック(A)とスチレンと共役ジエンやイソブチレンとのランダム共重合体ブロック(B´)とからなるブロック共重合体を主骨格とするスチレン系エラストマー。このようなスチレン系エラストマーとしては、下記の(2−1)〜(2−4)が挙げられる。
【0028】
(2−1)ブロック(A)とブロック(B´)とが結合したもの:A−B´ブロック共重合体
(2−2)スチレンと共役ジエンやイソブチレンの内スチレンが漸増するテーパーブロック(C)を含むもの:A−B´−Cブロック共重合体
(2−3)上記テーパーブロック(C)に代えてスチレン系重合体ブロック(A)を含むもの:A−B´−Aブロック共重合体
(2−4)(2−1)〜(2−3)の繰り返しやこれらが任意の割合で結合したもの:(A−B´)n、(A−B´)nX 、(A−B´−C)nX、(A−B´−A)nXなど。
【0029】
(3)上記(1)または(2)の水添物からなるスチレン−共役ジエン共重合体であるスチレン系エラストマー。
【0030】
スチレン系エラストマーのオレフィン系重合体ブロック(B)やランダム共重合体ブロック(B´)に用いられるオレフィン成分としてはイソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられるが、好ましくはイソブチレンが用いられる。イソブチレンが用いられている場合、水添工程が必要ないために、低コスト化、熱安定性に優れている。
【0031】
上記粘着付与樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、テルペン系樹脂、テルペン・フェノール系樹脂、アルキル・フェノール系樹脂、クマロン・インデン系樹脂、またはロジン系樹脂、及びその水素添加物等が挙げられる。なかでも、水素添加された脂肪族系、脂環族系、芳香族系等の石油樹脂やテルペン系樹脂が、耐候性に優れているので好ましい。より好ましい粘着付与樹脂の具体例としては、例えば、水素添加された脂環族系石油樹脂である荒川化学社製、商品名:アルコンや、テルペン系樹脂であるヤスハラケミカル社製、商品名:クリアロンなどが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
上記粘着付与樹脂は、粘着性ポリマー100重量部に対し、5〜70重量部の範囲で配合されることが好ましく、より好ましくは10〜50重量部の範囲である。配合量が5重量部未満では、被着体に対する粘着力が不足することがある。配合量が70重量部を超えると、粘着剤の凝集力が不足し、表面保護フィルムとして使用した場合に被着体から剥離し難いことがあり、また剥離した後に糊残りが生じるおそれがある。
【0033】
本発明に係る粘着剤は、上述のように、上記粘着性ポリマーと粘着付与樹脂とからなる粘着剤組成物に、粘着性ポリマーに相溶性を有するブロッキング防止剤が添加されている。
【0034】
粘着性ポリマーとブロッキング防止剤との相溶性は、以下の方法により評価する。
【0035】
粘着性ポリマー100重量部にブロッキング防止剤5重量部を溶融ブレンドし、厚み1mmのプレスシートを作製する。このプレスシートを用いて、JIS K 7105に準じてヘイズを測定する。ヘイズが20%以下である場合に相溶性を有するものとし、ヘイズが20%を超える場合に相溶性を有しないものとする。
【0036】
上記ブロッキング防止剤としては、常温で固体であり、それ自身が非自着性のものであって、且つ粘着性ポリマーに相溶性を有すれば特に限定されず、例えば、エチレンビスステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等のアミド系化合物、ネオペンチルポリオール脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸に代表される低分子化合物や、相転移温度(TgまたはTm)が室温よりも高い高分子材料を用いることができる。なかでも、粘着剤ポリマーとの相溶性に優れるので、高分子材料が好ましく用いられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
粘着性ポリマーがハードセグメントとソフトセグメントとからなるブロック共重合体である場合には、ハードセグメントおよびソフトセグメントの少なくとも一方に相溶性を有するブロッキング防止剤であれば使用することができるが、ハードセグメントに相溶性するブロッキング防止剤が好ましく用いられる。
【0038】
ハードセグメントに相溶性を有するブロッキング防止剤としては、スチレン系、オレフィン系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系等の樹脂が挙げられる。具体的には、スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、またはスチレン−α−メチルスチレン共重合体を粉砕したもの、ポリアミド系樹脂としてはナイロン6、ナイロン6,6を粉砕したもの、ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートを粉砕したもの、アクリル系としては、ポリメタクリル酸メチルを粉砕したもの、オレフィン系としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。他方、ソフトセグメントに相溶性を有するブロッキング防止剤としては、ソフトセグメントの組成により異なるが、例えば粘着性ポリマーがSEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンの三元共重合体)である場合には、低分子ポリエチレン(PE)ワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。
【0039】
粘着性ポリマーとブロッキング防止剤との好ましい組み合わせとしては、ハードセグメントとソフトセグメントとを有し、常態で海島構造をとるA−B型、A−B−A型スチレン系エラストマー等のブロック型スチレン系エラストマーと、ハードセグメントに相溶性を有するブロッキング防止剤との組み合わせが最も好ましく挙げられる。この場合、ペレット状或いは小ブロック状である粘着剤組成物のほとんどの表面を占めるソフトセグメント層に、ブロッキング防止剤が不溶であることが好ましい。ソフトセグメント層にブロッキング防止剤が不溶であると、粘着剤組成物の自己ブロッキングを長期間にわたり防止し得るので、ハンドリング性に優れたものとなる。
【0040】
ブロッキング防止剤としては、予め粉末状である市販のものを使用してもよく、ペレット等をヘンシルミキサー等のミキサーにより粉砕したものを使用しても良い。
【0041】
ブロッキング防止剤は、常温で粉末状であることが好ましい。また、ブロッキング防止剤の平均粒子径は、3〜50μmの範囲であることが好ましい。平均粒子径が3μm以下であると、小さすぎてハンドリング性が悪くなり、50μm以上であると、大きすぎてブロッキング防止剤としての効果が十分に発現しない場合がある。平均粒子径は、3〜20μmの範囲であることがより好ましい。
【0042】
上記ブロッキング防止剤の好ましい添加量としては、粘着剤組成物合計100重量部に対して、500ppm〜20000ppmの範囲である。添加量が500ppmより少ないと、十分なブロッキング防止性能が発揮されない場合がある。添加量が20000ppmを超えると、粘着物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0043】
粘着剤組成物にブロッキング防止剤を外部添加する方法としては、例えばターブラシェイカミキサ、ヘンシェルミキサ、リボンブレンダー、スパーミキサー、Vブレンダなどでドライブレンドする方法が挙げられる。
【0044】
上述のようにして構成された粘着剤は、常温で粒状、塊状のいずれであっても良い。具体的には、粒状とはペレット状態を示し、通常の円柱形や円形のペレット状のものも含まれる。塊状とはブロック状の塊を示す。
【0045】
粘着剤の周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率は、23℃で5×10〜5×10Paの範囲であることが好ましい。剪断貯蔵弾性率がこの範囲外の場合には、粘着力不足により表面保護フィルムが被着体から剥離したり、剥離工程における作業性が悪くなるおそれがある。
【0046】
本発明に係る表面保護フィルムは、上述のようにして構成された粘着剤からなる粘着剤層が、合成樹脂からなる基材に積層された構造を有する。好ましくは、合成樹脂からなる基材の片面に、粘着剤層が積層された構造を有する。
【0047】
合成樹脂からなる基材としては、特に限定されず、例えばオレフィン系、ポリエステル系、またはナイロン系などの基材が挙げられる。これらの基材は単独で用いられても良いし、2種類以上が積層されて用いられても良い。なかでも、原料単価が安いため、オレフィン系の基材を使用することが好ましい。
【0048】
基材の厚みは、特に限定されないが、10〜200μmの範囲が望ましい。10μm未満であると、十分な保護機能が発現しないことがあり、200μmを超えると、被着体の曲面箇所等平滑でない部分に対する追従性に劣ることがある。
【0049】
上記オレフィン系の基材としては、特に限定されず、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンやポリオレフィンにオレフィン系エラストマーを混合したものなどを用いることができる。上記オレフィン系基材の厚みは、使用目的によっても異なるが、20〜100μmの範囲が好ましい。
【0050】
本発明に係る表面保護フィルムでは、必要に応じて、被着体を汚染しない範囲で、粘着剤層に紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、接着昂進防止剤などが添加されてもよい。
【0051】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の通常使用されるものが挙げられる。
【0052】
上記酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系(モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系)、硫黄系、リン系等の通常使用されるものが挙げられる。
【0053】
上記光安定剤としては、ヒンダードアミン系の通常使用されるものが挙げられる。
【0054】
上記接着昂進防止剤としては、脂肪酸アミド、ポリエチレンイミンの長鎖アルキルグラフト物、大豆油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学社製、商品名「アラキード251」等)、トール油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学社製、商品名「アラキード6300」等)などが挙げられる。
【0055】
基材に積層される粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、3〜50μmの範囲が望ましい。厚みが3μm未満であると、粘着力不足となることがあり、50μmを超えると、コストが高くなるおそれがある。
【0056】
表面保護フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、粘着剤層を構成する粘着剤と、合成樹脂からなる基材を構成する組成物とを共押出しすることにより積層一体化する方法、あるいは成膜された合成樹脂からなる基材上に粘着剤をラミネートし、積層一体化する方法などが挙げられる。
【0057】
合成樹脂からなる基材層と粘着剤層とを共押出しにより積層一体化する方法としては、例えばインフレーション法やTダイ法などの公知の方法が用いられる。合成樹脂からなる基材に粘着剤をラミネートする方法としては、粘着剤溶液を塗工する溶液塗工法、ドライラミネーション法、Tダイを用いた押出しコーティング法などが用いられる。これらの中でも、品質を高めることができ、かつ経済的に製造し得るため、Tダイ法による共押出し法が好ましい。また、溶液塗工法が行われる場合には、基材と粘着剤層との間の接合強度を高めるために、合成樹脂からなる基材に予めプライマー塗布などし、表面処理を施すことが好ましい。
【0058】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げることにより本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
粘着性ポリマーとしてスチレン系エラストマーであるSEBS(クレイトンポリマージャパン社製、品番:G1657)100重量部と、粘着付与樹脂としてテルペン樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名:クリアロン)40重量部とを二軸押出機にて混練した後ペレット化し粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物合計140重量部に対して、ブロッキング防止剤としてポリエチレンワックス(三洋化成社製、161P)を配合割合が3000ppmとなるように添加してペレット状の粘着剤を作製した。
【0060】
なお、上記SEBS(クレイトンポリマージャパン社製、品番:G1657)は、スチレンと、エチレン、ブチレンと、スチレンとのブロック共重合体であり、全モノマー中のスチレン含有割合は13重量%である。
【0061】
次に、この粘着剤からなるゴム系粘着剤層と、ポリプロピレン(三井化学社製、品番:715M)からなるポリプロピレン基材層とをTダイ法により共押出し、50μmの厚みのポリプロピレン基材上に10μmの厚みのゴム系粘着剤層が積層された表面保護フィルムを得た。
【0062】
(実施例2)
ブロッキング防止剤をα−メチルスチレン(イーストマンケミカル社製、エンデックス155)に変更したこと、及び粘着剤組成物合計140重量部に対するブロッキング防止剤の配合割合を4000ppmとなるように変更したことを除いては、実施例1と同様にして粘着剤および表面保護フィルムを得た。
【0063】
(実施例3)
粘着性ポリマーとしてスチレン系エラストマーであるSIBS(カネカ社製、品番:シブスター073T)100重量部と、粘着付与樹脂としてテルペン樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名:クリアロン)30重量部とを二軸押出機にて混練し、ペレット状粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物合計130重量部に対して、ブロッキング防止剤としてα−メチルスチレン粉末(イーストマンケミカル社製、エンデックス155)を配合割合が3000ppmとなるようにさらに添加してペレット状の粘着剤を作製した。
【0064】
なお、上記SIBS(カネカ社製、品番:シブスター073T)は、スチレンと、イソブチレンと、スチレンとのブロック共重合体であり、全モノマー中のスチレン含有割合は30重量%である。
【0065】
この粘着剤を用いて実施例1と同様にして表面保護フィルムを得た。
【0066】
(比較例1)
粘着付与樹脂の配合量を20重量部に変更したこと、ブロッキング防止剤をポリエチレンワックス(三洋化成社製、161P)に変更したこと、および粘着剤組成物合計120重量部に対するブロッキング防止剤の配合割合を4000ppmとなるように変更したことを除いては、実施例3と同様にして粘着剤および表面保護フィルムを得た。
【0067】
(比較例2)
粘着付与樹脂の配合量を40重量部に変更したこと、ブロッキング防止剤をエチレンビスステアロアミド(花王社製、カオーワックスEB−G)に変更したこと、および粘着剤組成物合計140重量部に対するブロッキング防止剤の配合割合を5000ppmとなるように変更したことを除いては、実施例3と同様にして粘着剤および表面保護フィルムを得た。
【0068】
(実施例及び比較例の評価)
上記のようにして得られた各表面保護フィルムにおける(1)スチレン系エラストマーとブロッキング防止剤との相溶性を以下の要領で測定した。また、得られた表面保護フィルムの(2)初期粘着力、(3)初期剥離力、(4)経時剥離力、及び(5)被着体汚染評価を以下の要領で行った。結果を下記の表1に示す。
【0069】
(1)スチレン系エラストマーとブロッキング防止剤との相溶性評価
スチレン系エラストマー100重量部とブロッキング防止剤5重量部とをラボプラストミル(東洋製機社製)を用いて200℃、15分、80rpmの条件にて溶融混練した。その後、プレス機にて厚み1mmの板状に成形した。厚み10mmのセルを使用し、流動パラフィン中でヘイズメーター(東京電色社製、TC−HIII DKP)を用いて、JIS K 7105に準じて全光線透過率およびヘイズの測定を行った。
【0070】
(2)初期粘着力
室温23℃及び相対湿度65%の環境下で、2kgの圧着ゴムローラーを用いて、300mm/分の速度で、表面保護フィルムを塗装綱板(表面グロス80%)に貼り付けた。貼付した状態で24時間放置した後、JIS Z 0237に準拠し、25mmにおける180度剥離強度を300mm/分の速度で測定した。このようにして測定された剥離強度を初期粘着力とした。
【0071】
(3)初期剥離力
剥離速度を30m/分の速度で測定としたこと以外は上記(2)と同様にして剥離強度を測定した。このようにして測定された剥離強度を初期剥離力とした。
【0072】
(4)経時剥離力
得られた表面保護フィルムを、(3)の初期剥離力測定の場合と同様にして塗装綱板に貼り付けた。その状態で70℃のギアオーブン中、若しくは温度50℃、相対湿度95%条件下に7日間放置した後、JIS Z 0237に準拠して25mm幅における180度剥離強度を30m/分の速度で測定した。このようにして測定された剥離強度を経時剥離力とした。
【0073】
(5)被着体の汚染評価:上記(4)の測定時において、剥離後の被着体表面の汚染の有無を目視により観察した。
【0074】
結果を下記表1に示す。
【0075】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性ポリマーと粘着付与樹脂とからなる粘着剤組成物に常温で固体のブロッキング防止剤が外部添加されてなる粘着剤であって、
前記ブロッキング防止剤が前記粘着性ポリマーと相溶性を有することを特徴とする、粘着剤。
【請求項2】
前記粘着性ポリマーが、ハードセグメントとソフトセグメントとからなるブロック共重合体であって、前記ブロッキング防止剤が前記ハードセグメントに相溶性を有することを特徴とする、請求項1に記載の粘着剤。
【請求項3】
前記粘着性ポリマーが、スチレン系重合体ブロック(A)とオレフィン系重合体ブロック(B)とのブロック共重合体、または該ブロック共重合体の水添物を主骨格とするスチレン系エラストマーである、請求項1または2に記載の粘着剤。
【請求項4】
合成樹脂からなる基材に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着剤からなる粘着剤層が積層されていることを特徴とする、表面保護フィルム。

【公開番号】特開2007−126569(P2007−126569A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320751(P2005−320751)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】