説明

粘着剤組成物、偏光板用保護フィルム、偏光板及び液晶表示装置

本発明は、粘着剤組成物、上記の硬化物を含む偏光板用保護フィルム、偏光板及び液晶表示装置に関する。本発明では、高温及び/又は多湿条件下で優れた耐久信頼性を示し、切断性、再剥離性及び作業性などの物性に優れた粘着剤を提供することができ、特に光弾性係数の低いフィルムに適用された場合にも、液晶表示装置から生ずる光漏れ現象を防止しうる粘着剤組成物を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、偏光板用保護フィルム、偏光板及び液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)は2枚のガラス基板間に液体結晶を入れて画面を表示する装置である。上記装置では、液晶に連結された電極を通して電圧を加えると、液体結晶の分子配列方式が変わり、これに伴い、液晶を通過する光の透過率が変わって映像を表示することができる。このような液晶表示装置は電力消耗が少なく、平面的に薄くすることができるという長所を有していることから、現在、多分野で脚光を浴びている表示装置である。
【0003】
液晶表示装置を製造するためには、液晶及び電極層が形成された透明基板を含む液晶セルと偏光板が必要とされ、また、これらを貼合するための接着剤又は粘着剤が必要とされる。
【0004】
偏光板は一定方向に配列されたヨード系化合物や二色性偏光物質を含み、両面に保護フィルムを含む多層構造を有する。
【0005】
上記のような多層構造で、現在まで保護フィルムとして最も汎用されている素材はTAC(triacetyl cellulose)系フィルムである。しかし、TAC系フィルムは一般的に耐熱性及び耐湿性に劣るため、高温及び/又は多湿条件で長期間使用すると、偏光度が低下し、偏光素子から剥離し、光特性が低下する問題が発生する。
【0006】
また、TAC系フィルムは周囲環境変化による寸法安定性が低下し、相対的に大きな光弾性係数を有し、位相差の変化も激しく、長期間使用すると、画像品質が大きく低下する。
【0007】
液晶表示装置の設計時に考慮しなければならない更に別の特性は低光漏れ特性である。即ち、偏光板には、位相差板、広視野角補償板又は輝度向上フィルムのような機能性フィルムが更に接着され得る。このように、多層の偏光板を構成するそれぞれの機能性フィルムは互いに異なる分子構造及び組成を有する材料で製造されており、これにより、互いに異なった物理的特性を示す。特に、高温及び/又は多湿条件では、それぞれの材料の収縮及び膨脹挙動の差によって、寸法安定性が不十分になる問題がある。その結果、偏光板が粘着剤により固定されている場合、高温及び/又は多湿条件下で応力が集中し、複屈折が生じて、光漏れを引き起こす問題がある。
【0008】
このような問題点を解決するための代表的な方法としては、偏光板を固定する粘着剤の設計を最適化する方法がある。例えば、粘着剤を外部応力に対して容易に変形できるようにソフトに設計して応力緩和特性を与えるか、又は非常にハードに設計して外部環境による偏光板の収縮を抑制する方法などが使われている。
【0009】
しかし、現在までに知らされた技術だけでは、耐久信頼性、裁断性、再剥離性及び作業性などの物性を同時に充足させる粘着剤を具現することが難しく、また大部分がTAC系保護フィルムの使用を前提にしているので、最終的に製造された液晶表示装置の性能が低下する根本的な限界を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した問題点を考慮してなされたものであり、苛酷な環境下でも優れた耐久信頼性を示し、切断性、再剥離性及び作業性などの物性に優れ、特に光弾性係数値の低いフィルムに適用された時にも、光漏れ現象を効率的に抑制しうる粘着剤組成物を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、下記式(1)の条件を満たす粘着剤組成物を提供する:
ΔX≦2nm (1)
{式中、ΔXは上記粘着剤組成物を用いて製造したシート状粘着剤を、23℃の温度で、シート面の縦軸方向に500μm延伸させた時、式「(n−n)× d」(ここで、 nは上記シート状粘着剤の面方向から横軸への屈折率を表し、nは上記シート状粘着剤の面方向から縦軸への屈折率を表し、dは上記シート状粘着剤の厚さを表す。)で測定される面方向位相差(Rin)の絶対値を表す。}
【0012】
本発明は、上記課題を解決するための別の手段として、基材フィルム;及び上記基材フィルムの一面又は両面に形成され、本発明に係る粘着剤組成物の硬化物を含有する粘着層;を含む偏光板用保護フィルムを提供する。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するための更に別の手段として、偏光フィルム又は偏光素子;及び上記偏光フィルム又は偏光素子の一面又は両面に形成された本発明に係る保護フィルム;を含む偏光板を提供する。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するための更に別の手段として、本発明に係る偏光板が液晶セルの一面又は両面に貼合されている液晶パネルを含む液晶表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、高温及び/又は多湿条件などの苛酷環境下で優れた耐久信頼性を示し、切断性、再剥離性及び作業性などの物性に優れ、特に低い光弾性係数の値を有する保護フィルムに適用された時にも液晶表示装置で生ずる光漏れ現象を効率的に抑制しうる粘着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、下記式(1)の条件を満たす粘着剤組成物に関するものである:
ΔX≦2nm (1)
{式中、ΔXは上記粘着剤組成物を用いて製造した、シート状粘着剤を、23℃の温度で、シート面の縦軸方向に500μm延伸させた時、数式「(n−n)× d」(ここで、 nは上記シート状粘着剤の面方向から横軸への屈折率を表し、nは上記シート状粘着剤の面方向から縦軸への屈折率を表し、dは上記シート状粘着剤の厚さを表す。)で測定される面方向位相差(Rin)の絶対値を表す。}
【0017】
本発明の粘着剤組成物は優れた耐久信頼性、作業性、光学特性及び位相差特性などにより、例えば、偏光板用粘着剤組成物として效果的に使用することができる。
【0018】
以下、本発明の粘着剤組成物を詳細に説明する。
本発明の粘着剤組成物は、粘着剤に一定の変形が生じた時、発生する位相差の絶対値が特定範囲に属するように設計される。
【0019】
更に具体的には、本発明では粘着剤組成物を用いてシート状の粘着剤を製造し、23℃の温度で上記粘着剤シートの平面から縦軸方向に、約500μm 、好ましくは500μm〜600μm、より好ましくは400μm〜600μm、最も好ましくは、100μm〜600μmの変形量で延伸させた場合、上記シート状の粘着剤の面方向より測定される位相差(Rin)の絶対値が2nm以下に制御される。本発明では上記位相差(Rin)の絶対値が、好ましくは1.5nm以下、より好ましくは1.0nm以下に制御され得る。本明細書で用いる用語“変形量”は上記シート状の粘着剤の延伸後の寸法から、延伸前の初期寸法を引いた数値を意味する。
【0020】
上記で粘着剤の綿方向位相差(Rin)は、例えば、下記式(2)によって測定でき
る:
in=(n−n)×d (2)
(式中、nはシート状粘着剤の面方向から横軸への屈折率を表し、nはシート状粘着剤の面方向から縦軸への屈折率を表し、dは上記シート状粘着剤の厚さを表す。)
【0021】
更に、本発明では粘着剤に対して、上記面方向位相差(Rin)の測定時と同じ条件で測定される厚さ方向の位相差(Rth)の絶対値が2nm以下であることが好ましいが、これに制限されない。この場合、上記厚さ方向の位相差(Rth)は、例えば、下記式(3)によって測定できる:
th=(n−n)×d (3)
(式中、nはシート状粘着剤の厚さ方向の屈折率を表し、nはシート状粘着剤の面方向から縦軸への屈折率を表し、dは上記シート状粘着剤の厚さを表す。)
【0022】
本発明の粘着剤組成物の位相差特性を上述した範囲内に制御することによって、周囲環境変化による光学特性の変化及び光漏れ現状の発生を防止し、液晶表示装置の全体的な画像品質を高品質に保持でき、また偏光板などの光学装置に適用時に、優れた寸法安定性や耐久信頼性を保持することができる。
【0023】
本発明で使われる粘着剤組成物の組成は、上述した範囲の物性を有する限り、特に限定されない。本発明では、例えば、重量平均分子量(M)が500,000以上のベース樹脂を含む粘着剤組成物を使用してもよい。ベース樹脂の重量平均分子量が500,000未満のとき、凝集力低下によって高温及び/又は多湿条件下で気泡又は剥離現象が生ずる等、粘着剤の耐久信頼性が低下する恐れがある。本発明でベース樹脂の重量平均分子量の上限は特に限定されない。但し、重量平均分子量が過度に増加すれば、応力緩和特性が低下し、光漏れ抑制性能が低下するか、又は粘度上昇によりコーティング性が悪化する恐れがあるので、2,000,000以下の範囲内で適宜制御できる。
【0024】
本発明で用いられるベース樹脂の具体的な種類は特に制限されなく、例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ゴム系樹脂又はEVA系樹脂が挙げられる。液晶表示装置のような光学装置に適用される場合、透明性、酸化抵抗性及び黄変に対する抵抗性に優れている側面から、アクリル系樹脂が主に用いられるが、本発明の範囲がこれに制限されるものではない。
【0025】
本発明では、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体80重量部〜99.8重量部;及び架橋性単量体0.01重量部〜10重量部を含む単量体混合物の重合体を上述したベース樹脂として用いることができる。
【0026】
上記で、(メタ)アクリル酸エステル単量体の種類は特に限定されなく、例えば、アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。この場合、単量体に含まれるアルキル基が過度に長鎖になれば、粘着剤の凝集力が低下し、ガラス転移温度(T)又は粘着性の調節が難しくなる恐れがあるので、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることが好ましい。このような単量体の例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレートが挙げられ、本発明では上記中の1種又は2種以上の混合物を使用することができる。上記のような(メタ)アクリル酸エステル単量体は、架橋性単量体の含量に対して、80重量部〜99.8重量部の量で単量体混合物に含まれることが好ましい。上記含量が80重量部未満のとき、初期接着力が低下する恐れがあり、99.8重量部を超えると、凝集力低下によって耐久性の問題が生ずる恐れがある。
【0027】
単量体混合物に含まれる架橋性単量体は、後述する多官能性架橋剤と反応して粘着剤に凝集力を付与し、粘着力及び耐久信頼性などを調節する役割をする架橋性官能基を重合体に付与することができる。このような架橋性単量体の例は、ヒドロキシ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体及び窒素含有単量体が挙げられる。上記でヒドロキシ基含有単量体の例は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート又は2−ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられ、カルボキシル基含有単量体の例は、アクリル酸、メタクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸及びマレイン酸無水物が挙げられ、窒素含有単量体の例は、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン又はN−ビニルカプロラクタムが挙げられるが、これらに制限されるものではない。本発明では上記中の1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
【0028】
架橋性単量体は上述した(メタ)アクリル酸エステル単量体の含量に対して、0.01重量部〜10重量部の量で単量体混合物に含まれ得る。上記含量が0.01重量部未満のとき、粘着剤の耐久信頼性が低下する恐れがあり、10重量部を超えると、粘着性及び/又は剥離力が低下する恐れがある。
【0029】
本発明において、また上記単量体混合物に下記化学式(1)で示される単量体が更に含まれていてもよい。このような単量体は粘着剤のガラス転移温度の調節及びその他機能性付与を目的として付加できる。
【化1】

{式中、R〜Rはそれぞれ独立して水素又はアルキルを表し、Rはシアノ;アルキルで置換された又は無置換のフェニル;アセチルオキシ;又はCOR(ここで、Rはアルキル又はアルコキシアルキルで置換された又は無置換のアミノ又はグリシジルオキシを表す。)を表す。}
【0030】
上記式のR〜Rの定義で、アルキル又はアルコキシは炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル又はアルコキシを意味し、具体的にはメチル、エチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ又はブトキシであってもよい。
【0031】
化学式(1)の単量体の具体的な例は、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド又はN−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどの窒素含有単量体;スチレン又はメチルスチレンなどのスチレン系単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有単量体;又はビニルアセテートなどのカルボン酸ビニルエステルなどの1種又は2種以上が挙げられるが、これに制限されるものではない。上記のような単量体は単量体混合物内に、上述した(メタ)アクリル酸エステル単量体又は架橋性単量体の含量に対して20重量部以下の量で含まれ得る。上記含量が20重量部を超えると、粘着剤の柔軟性及び/又は剥離力が低下する恐れがある。
【0032】
本発明で、上記単量体混合物には、粘着剤の位相差特性制御効率の観点から、芳香族環含有化合物が更に含まれていてもよい。この場合、用いられる芳香族環含有化合物の例は、芳香族環を含む(メタ)アクリレート系単量体が挙げられ、具体的には下記化学式(2)で示される化合物であってもよい:
【化2】

(式中、Rは水素又はアルキルを表し、Aはアルキレンを表し、nは0〜3の定数を表し、Qは単一結合、−O−、−S−又はアルキレンを表し、Pは芳香族環を表す。)
【0033】
上記化学式(2)の定義で、“単一結合”はQの両側の二つ原子団が直接結合された場合を意味する。
【0034】
上記化学式(2)の定義で、Rは、好ましくは水素又は炭素数1〜4のアルキル、より好ましくは水素、メチル又はエチルであってもよい。
【0035】
また、上記化学式(2)の定義で、Aは炭素数1〜12、好ましくは1〜8のアルキレン、より好ましくはメチレン、エチレン、へキシレン又はオクチレンであってもよい。
また、上記化学式(2)の定義で、nは好ましくは0〜2の定数、より好ましくは0又は1であってもよい。また、上記化学式(2)の定義で、Qは好ましくは単一結合、−O−又は−S−であってもよい。
【0036】
また、上記化学式(2)の定義で、Pは芳香族化合物から誘導される置換基であり、好ましくは炭素数6〜20の芳香族環、より好ましくはフェニル、ビフェニル、ナフチル又はアントラセニル、更に好ましくはフェニルであってもよい。
【0037】
一方、上記化学式(2)の化合物で、芳香族環は、任意に一つ以上の置換基によって置換されていてもよく、上記で置換基の具体的な例は、ハロゲン又はアルキル、好ましくはハロゲン又は炭素数1〜12のアルキル、より好ましくは塩素、臭素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ノニル又はドデシルが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0038】
上記のような化学式(2)の化合物の具体的な例は、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルチオ−1−エチル(メタ)アクリレート、6−(4,6−ジブロモ−2−イソプロピルフェノキシ)−1−ヘキシル(メタ)アクリレート、6−(4,6−ジブロモ−2−sec−ブチルフェノキシ)−1−ヘキシル(メタ)アークレート、2,6−ジブロモ−4−ノニルフェニル(メタ)アクリレート、2,6−ジブロモ−4−ドデシルフェニル(メタ)アクリレート、2−(1−ナフチルオキシ)−1−エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ナフチルオキシ)−1−エチル(メタ)アクリレート、6−(1−ナフチルオキシ)−1−ヘキシル(メタ)アクリレート、6−(2−ナフチルオキシ)−1-ヘキシル(メタ)アクリレート、8−(1−ナフチルオキシ)−1−オクチル(メタ)アクリレート及び8−(2−ナフチルオキシ)−1−オクチル(メタ)アクリレートの1種又は2種以上の混合物が挙げられ、より好ましくはフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート2−フェニルチオ−1−エチルアクリレート、8−(2−ナフチルオキシ)−1−オクチルアクリレート及び2−(1−ナフチルオキシ)−エチルアクリレートの1種又は2種以上が挙げられ、最も好ましくはフェノキシエチル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレートの1種又は2種以上の混合物であってもよい。
【0039】
芳香族環含有化合物は単量体混合物内で、上述した(メタ)アクリル酸エステル単量体又は架橋性単量体の含量に対して、15重量部以下の量で含まれ得る。上記含量が15重量部を超えると、光漏れ防止効果が低下するか、又は位相差特性の制御が難しくなる恐れがある。
【0040】
本発明で上記単量体混合物を用いて重合体を製造する方法は特に限定されなく、例えば、溶液重合、光重合、バルク重合、サスペンション重合又はエマルジョン重合などの一般的な重合法を介して製造することができる。本発明では、特に溶液重合法を用いることが好ましく、溶液重合はそれぞれの単量体が均一に混合された状態で開始剤を混合し、50℃〜140℃の重合温度で遂行することが好ましい。この時、用いられる開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリル又はアゾビスシクロヘキサンカルボニトリルなどのアゾ系重合開始剤;及び/又は過酸化ベンゾイル又は過酸化アセチルなどの過酸化物などの通常の開始剤が挙げられる。
【0041】
本発明の粘着剤組成物は、位相差特性の制御の側面から、正の光弾性係数を有する化合物を更に含んでいてもよく、このような化合物は本発明の粘着剤組成物内に単純混合されるか、又は粘着剤内に多層構造で含まれていてもよい。
【0042】
正の光弾性係数を有する化合物の例は、軸方向に沿って非対称構造を有するものであり、非対称性分子構造を有し、且つ長軸方向に正の光弾性係数を有する化合物;又はメソゲン(mesogen)のメタ位に置換基(例えば、アルキル、アルケニル及び/又はアルキニル含有置換基)を有する化合物などが挙げられる。このような化合物の例は、芳香族系化合物又は脂環式系化合物が挙げられ、上記芳香族系化合物の例は、芳香族系結晶性化合物、コレステリック系化合物及びスメクチック系化合物などの芳香族系液晶性化合物が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0043】
本発明の上記正の光弾性係数を有する化合物の具体的な例は、下記化学式(3)で示される化合物であってもよい:
【化3】

{式中、
Bは単一結合、−CH=N−、−N=N−、−N=N(O)−、−COO−、−CHO−、−C(R−CO−、−COO−CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−S−、−SO−、−φ(R)−、−CH=N−φ(R)−N=CH−、−CH=CH−φ(R)−N=CH−、−CH=CH−φ(R)−CH=CH−、−CH=CH−φ(R)−φ(R)−CH=CH−、−CH=N−φ(R)−(R)−N=CH−、−CH=N−φ(R)−φ(R)−CH=CH−、−N=N−φ(R)−N=CH−、−C(=O)−O−φ(R)−C(CH−、ナフタレンコア又はアントラセンコアを表し、
X、Y、R及びRはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アリール、ジアルキルアミン及びクミルを表し、
aは0〜3の定数を表し、
bはaが0のとき1〜3の定数、aが1〜3の定数の時0〜3の定数を表す。}
【0044】
上記化学式(3)の定義で、単一結合はBの両側の芳香族基が2つ原子団が直接結合された場合を意味し、この場合、直接結合は、例えば、ビフェニルのように両側芳香族基のそれぞれ一つの炭素原子が直接結合された場合はもちろん、ナフタレン又はアントラセンのように両側芳香族基のそれぞれ二つの炭素原子が互いに結合している場合を含んでいてもよい。
【0045】
また、上記化学式(3)の定義で、−φ−は芳香族コアを表し、好ましくはベンゼンコアを表す。
【0046】
一方、上記化学式(3)の定義で、X又はYは好ましくは、それぞれ独立して、水素、シアノ、炭素数1〜12のアルキル又は炭素数1〜12のアルコキシ、より好ましくは水素、シアノ、エチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、メトキシ、エトキシ又はペントキシであってもよい。
【0047】
また、上記化学式(3)の定義で、R及びRは好ましくは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜12のアルキル又は炭素数1〜12のアルコキシ、より具体的には、水素、シアノ、エチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル又はペントキシであってもよい。
【0048】
また、上記化学式(3)の定義で、好ましくはa及びbが1であるか、又はaが0であり、bが1であってよい。
【0049】
また、上記化学式(3)の定義で、Bは好ましくは、単一結合、−N=N−、−CH=CH−、−C≡C−、−(C)−、−CH=CH−(C)−N=CH−、−N=N−φ(R)−N=CH−、−C(=O)−O−φ(R)−C(CH−又はナフタレンコアであってもよい。
【0050】
上記化学式(3)で示される化合物の具体的な例は、ビフェニル、トランススチルベン、アゾベンゼン、p−テルフェニル、m−テルフェニル、クミルフェニルベンゾエート、ジフェニルアセチレン、4−エチルビフェニル、4‘−ペンチル−4−ビフェニルカルボニトリル、4−ビフェニルカルボニトリル、4’−ペンチルビフェニル、4‘−ペントキシ−4−ビフェニルカルボニトリル、4’−ヘキシル−4−ビフェニルカルボニトリル、4‘−オクチル−4−ビフェニルカルボニトリル、トランス−4−オクチル−4’−エトキシスチルベン、ナフタレン、アントラセン、4‘−メトキシベンジリデンアミノスチルベン、4’−メトキシベンジリデンアミノアゾベンゼン又は上記化合物の誘導体の1種又は2種以上が挙げられるが、これに制限されるものではない。即ち、本発明では化合物がベース樹脂と相溶性を有し、且つ分子構造上非対称電子構造を有して正の光弾性係数を表す限り、その具体的な種類は特に制限されない。
【0051】
本発明で用いられる正の光弾性係数を有する化合物の更に別の例は、下記化学式(4)で示される化合物が挙げられる:
【化4】

【化5】

[上記で、ZはC−W又はNであり;
〜Q16及びWはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキルオキシ、−R、-OR、−NHR、−N(R、−C(=O)R、−SR、−SOR、−SO、−C(=O)NR、−NRC(=O)R、−C(=O)OR、−OC(=O)R、又は−OC(=O)OR{ここで、Rは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル又は−(R10O)R11(ここで、R10はアルキレンであり、R11はアルキルであり、qは1〜5の定数である。)である。}である。]であり;
l、m、n及びoはそれぞれ独立して0〜2の定数であり、l+m+n+oは2つ以上の定数であり;
E及びFはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ、−R、−OR、−NHR、−N(R、−NCO、−NCS、−C(=O)R又は−Si(Rであり;
、G、及びGはそれぞれ独立して単一結合、−O−、−R10O−、−NR10−、−S−、−SO−、−SO−、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン又は−U−T−V−{ここで、U及びTはそれぞれ独立して単一結合、−S−、−NR10−、−O(CH−、カルボニル又は−O−(ここで、pは0〜5の定数である。)であり、Vは単一結合、−O−、カルボニル、−NR10−、−S−、−(CH−、−O(CH2)−、又は−(CHO−(ここで、pは0〜5の定数である。)である。}である。]
【0052】
上記化学式(4)で示される化合物は、分子構造中にメソゲンコアを含む光学異方性化合物である。上記で、用語“メソゲン”は通常的に液晶化合物(liquid crystal compound)に含まれて硬質部(rigid part)を構成する成分である。本発明では、例えば、二つ以上のベンゼン環が連結されているコア構造を意味できる。上記で、二つ以上のベンゼン環は互いに直接連結されていてもよく、必要に応じて、他の原子又は原子団を介して連結されていてもよい。また、上記で使用した用語ベンゼン環は、ベンゼン及びその誘導体も含む概念である。本発明でメソゲンコアは、好ましくはビフェニル、トルエン及びベンゼン環から選択されるコア構造を3個以上含む構造を意味できる。このようなメソゲンコアは、例えば、偏光板の収縮のような外部刺激に対して化合物を一定方向に整列でき、全体的に正の複屈折特性を現すようにすることができる。これにより、上記化学式(4)の化合物は、例えば、偏光板の収縮などにより生ずる負の複屈折を光学的に補償することができる。
【0053】
上記化学式(4)の定義で、アルキル又はアルキレンは炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8又は炭素数1〜4のアルキル又はアルキレンでであってもよく、アルケニル、アルケニレン、アルキニル又はアルキニレンは炭素数2〜20、炭素数2〜16、炭素数2〜12、炭素数2〜8又は炭素数2〜4のアルケニル、アルケニレン、アルキニル又はアルキニレンであってもよい。
【0054】
また、上記化学式(4)の定義で、アルキル、アルキレン、アルケニル、アルケニレン、アルキニル又はアルキニレンはヒドロキシ;シアノ;ハロゲン、好ましくは塩素又は臭素;炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル;炭素数1〜12、好ましくは1〜8、より好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ;炭素数2〜12、好ましくは炭素数2〜8、より好ましくは炭素数2〜4のアルキニル;又は炭素数2〜12、好ましくは炭素数2〜8、より好ましくは炭素数2〜4のアルケニルにより置換されていてもよい。
【0055】
また、上記化学式(4)の定義で“単一結合”は両側の原子団が別途の原子を媒介とせずに、直接結合されている場合を意味する。
【0056】
また、上記化学式(4)の定義で、l、m、n及びoは、好ましくはl、m及びoが1であり、nが0であるか、又はl及びoが1であり、m及びnが0であってもよい。
【0057】
また、上記化学式(4)の定義で、E及びFは好ましくは水素、シアノ、炭素数1〜8のアルキル、炭素数1〜8のアルコキシ又は炭素数1〜8のアルキル基で置換されたシリル、より好ましくは、水素、シアノ、エチル、プロピル、イソプロピル、ペンチル、ヘキシル、エトキシ、プロポキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ、トリメチルシリル、トリヘキシルシリル又はヘキシルジメチルシリル、更に好ましくは、水素、シアノ、プロピル、ヘキシル又はヘキシルジメチルシリルであってもよい。
【0058】
また、上記化学式(4)の定義で、
【化6】

{式中、ZはC−W又はNであり、Wは水素、−R又は−OR(ここで、Rは炭素数1〜12のアルキル又は炭素数2〜12のアルケニルである。)である。}であってもよい。
【0059】
また、上記化学式(4)の定義で、Gは好ましくは炭素数1〜4のアルキレン、炭素数2〜4のアルケニレン、炭素数2〜4のアルキニレン、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−OC(=O)−又は−C(=O)O−、より好ましくは、G1はエテニレン、プロペニレン、エチニレン又はプロチエニレン、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−C(=O)−O−又は−O−C(=O)−であってもよい。
【0060】
また、上記化学式(4)の定義で、G及びGは好ましくはそれぞれ独立して単一結合、炭素数1〜4のアルケニレン又は炭素数1〜4のアルキニレン、より好ましくはそれぞれ独立して単一結合、エテニレン、プロペニレン、エチニレン又はプロチエニレンであってもよい。
【0061】
また、上記化学式(4)の化合物は、より好ましくは、
l、m、n及びoで、l、m及びoが1であり、nが0であるか、又はl及びoが1であり、m及びnが0であり、
【0062】
E及びFは水素、シアノ、エチル、プロピル、イソプロピル、ペンチル、ヘキシル、エトキシ、プロポキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ、トリメチルシリル、トリヘキシルシリル又はヘキシルジメチルシリルであり、
【化7】

{式中、ZはC−W又はNであり、Wは水素、−R又は−OR(ここで、Rは炭素数1〜12のアルキル又は炭素数2〜12のアルケニルである。)である。}であり、
はエテニレン、プロペニレン、エチニレン又はプロチエニレン、−S−、−SO−、-SO−、−CO−、−C(=O)−O−又は−O−C(=O)−であり、
及びGはそれぞれ独立して単一結合、エテニレン、プロペニレン、エチニレン又はプロチエニレンであってもよい。
【0063】
また、上記化学式(4)の化合物は、より好ましくは、
l、m、n及びoで、l、m及びoが1であり、nが0であるか、又はl及びoが1であり、m及びnが0であり、
E及びFは水素、シアノ、エチル、プロピル、イソプロピル、ペンチル、ヘキシル、エトキシ、プロポキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ、トリメチルシリル、トリヘキシルシリル又はヘキシルジメチルシリルであり、
【化8】

{式中、Wは水素、−R又は−OR(ここで、Rは炭素数1〜12のアルキル又は炭素数1〜12のアルケニルである。)である。}であり、
【化9】

は好ましくはエテニレン、プロペニレン、エチニレン又はプロチエニレン、−S−、−SO−、−SO−、CO−、−C(=O)−O−又は−O−C(=O)−であり、
及びGはそれぞれ独立して単一結合、エテニレン、プロペニレン、エチニレン又はプロチエニレンであってもよい。
【0064】
本発明において、また、上記光学異方性化合物はメソゲンのメタ位に一つ以上の置換基を有することが好ましい。上記で使用した用語“メソゲンのメタ位”はメソゲンコアを構成するベンゼン環中の一つ以上のメタ位を意味し、好ましくはメソゲンコアを構成するベンゼン環中の末端に存在するベンゼン環のメタ位を意味する。このように、メソゲンのメタ位に一つ以上の置換基を含む場合、光学異方性化合物の粘着樹脂との相溶性などの物性が更に増進でき、これにより光学異方性化合物の添加による効果を更に上昇させることができる。この時、上記メソゲンのメタ位に存在する置換基の種類は特に制限されなく、例えば、アルキル、アルケニル及びアルキニルよりなる群から選択された一つ以上が含まれていてもよい。
【0065】
この場合、上記化学式(4)の定義で、
【化10】

であり、この場合、Eが水素であるか;及び/又は
【化11】

であり、この場合Fが水素であってもよい。
(式中、Q、Q、Q14、Q15及びWはそれぞれ独立して上述した置換基又は上述した置換基中の好ましい置換基であってもよく、より好ましくは上記置換基の中アルキル、アルケニル又はアルキニルを含む置換基であってもよい。
【0066】
また、上記化学式(4)の化合物は、より好ましくは、下記化学式(5)〜(25)で示される化合物中一つ以上であってもよい。
【化12A】

【化12B】

【化12C】

【0067】
上記のような正の光弾性係数を有する化合物が本発明の粘着剤組成物内に含まれる場合、その含量はベース樹脂100重量部に対して15重量部以下が好ましい。上記含量が15重量部を超えると、低光漏れ特性が低下するか、又は位相差特性の制御が難しくなる恐れがある。
【0068】
本発明の粘着剤組成物はまたベース樹脂100重量部に対して、0.1重量部〜10重量部の架橋剤を更に含んでいてもよい。このような架橋剤はベース樹脂と架橋反応を通じて粘着剤に凝集力を付与することができる。
【0069】
この時、用いられる具体的な架橋剤の種類は特に限定されなく、例えば、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物及び金属キレート系化合物と同じ一般的な架橋剤を使用できる。
【0070】
上記でイソシアネート系化合物の具体的な例は、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート及び上記中のいずれかの化合物とポリオール(例えば、トリメチルロールプロパン)との反応物よりなる群から選択された一つ以上が挙げられ;エポキシ系化合物の具体的な例は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N、N、N‘、N’−テトラグリシジルエチレンジアミン及びグリセリンジグリシジルエーテルよりなる群から選択された一つ以上が挙げられ;アジリジン系化合物の具体的な例は、N、N‘−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、N、N’−ジフェニルメタン−4,4‘−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソプロタロイル(bisprothaloyl)−1−(2−メチルアジリジン)及びトリ−1−アジリジニルホスフィンオキシドよりなる群から選択された一つ以上が挙げられる。また、上記金属キレート系化合物の具体的な例は、アルミニウム、鉄、亜鉛、スズ、チタン、アンチモン、マグネシウム及び/又はバナジウムなどの多価金属がアセチルアセトン又はアセト酢酸エチルなどに配位している化合物を挙げてよいが、これらに制限されるものではない。
【0071】
上記架橋剤は上述したベース樹脂100重量部に対して、0.1重量部〜10重量部の量で含まれるのが好ましい。上記含量が0.1重量部未満のとき、粘着剤の凝集力が落ちる恐れがあり、10重量部を超えると、層間剥離や浮き現象が生ずる等耐久信頼性が低下する恐れがある。
【0072】
また、本発明の粘着剤組成物は上述した成分にベース樹脂100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部のシラン系カップリング剤を更に含んでいてもよい。シラン系カップリング剤は粘着剤が高温又は多湿条件で長時間放置された時、接着信頼性向上に寄与することができ、特にガラス基材との接着時に接着安定性を改善し、耐熱性及び耐湿性を向上させることができる。本発明で用いられるシラン系カップリング剤の例は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン及びγ−アセトアセテートプロピルトリメトキシシランなどの1種又は2種以上の混合物が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0073】
シラン系カップリング剤はベース樹脂100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部の量で含まれるのが好ましく、0.05重量部〜1重量部の量で含まれるのが更に好ましい。上記含量が0.01重量部未満のとき、粘着力増加効果が十分でない恐れがあり、10重量部を超えると、気泡又は剥離現象が生ずるなど耐久信頼性が低下する恐れがある。
【0074】
また、本発明の粘着剤組成物は、粘着性能の調節の観点から、ベース樹脂100重量部に対して、1重量部〜100重量部の粘着性付与樹脂を更に含んでいてもよい。このような粘着性付与樹脂の種類は特に限定されなく、例えば、(水素化)ヒドロカーボン系樹脂、(水素化)ロジン樹脂、(水素化)ロジンエステル樹脂、(水素化)テルペン樹脂、(水素化)テルペンフェノール樹脂、重合ロジン樹脂又は重合ロジンエステル樹脂などの1種又は2種以上の混合物が挙げられる。上記粘着性付与樹脂の含量が1重量部未満のとき、添加効果が十分でない恐れがあり、100重量部を超えると、相溶性及び/又は凝集力向上効果が低下する恐れがある。
【0075】
また、本発明の粘着剤組成物は発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、熱開始剤又は光開始剤のような開始剤;エポキシ樹脂;硬化剤;紫外線安定剤;酸化防止剤;調色剤;補強剤;充填剤;消泡剤;界面活性剤;多官能性アクリレートなどの光重合性化合物;及び可塑剤よりなる群から選択された一つ以上の添加剤を更に含んでいてもよい。
また、本発明は基材フィルム;及び上記基材フィルムの一面又は両面に形成され、上述した本発明に係る粘着剤組成物を含有する粘着層;を含む偏光板用保護フィルムに関するものである。
【0076】
本発明の保護フィルムは、特に基材フィルムとして、光弾性係数の絶対値が10ブリュースタ、好ましくは6ブリュースタ、より好ましくは3ブリュースタ以下のフィルムを使用することが好ましい。上記で“ブリュースタ(brewster)”は10−12/Nを意味する。
【0077】
上記で使用する用語“光弾性係数”は、被試験体(例えば、基材フィルム)に加えられた応力及び該応力によって引き起こされる複屈折の割合を意味し、このような光弾性係数は、例えば、等方性固体に外力を加えて応力(ΔF)を引き起こすと、一般的に光学異方性を示して複屈折(Δn)現象が生ずる。この時の上記応力及び複屈折の割合(Δn/ΔF)を光弾性係数として定義する。本発明で使用する基材フィルムの光弾性係数が上述した範囲を外れると、周囲環境変化による光学特性の変化が大きく生じ、全体的な画像品質が低下する恐れがある。
【0078】
本発明で使われる基材フィルムの具体的な種類は、上述した光学特性を示すものであれば、特に限定されなく、例えば、ポリカーボネート系フィルム;飽和シクロオレフィン系フィルム;側鎖に、置換された又は無置換のイミド基を有するオレフィン系熱可塑性樹脂フィルム;側鎖に、置換された、又は無置換のフェニル基及びニトリル基を有する熱可塑性樹脂フィルム;及びアクリル系フィルムが挙げられる。本発明では、特に、耐熱性及び耐湿性などの物性に優れており、高温及び/又は多湿条件で長期間使用しても、偏光度低下、偏光素子からの剥離又は光特性低下などの問題が防止できるという観点から、アクリル系フィルムを使用することができる。アクリル系フィルムは耐熱性、透明性及びその他の光学的物性に優れ、偏光板などの光学装置に適用された時、優れた性能を現すことができる。このようなアクリル系フィルムの具体的な種類は、アクリル系ベース樹脂及び強靱性改良剤(例えば、耐衝撃性アクリルゴム−メチルメタクリレートグラフト共重合体及びブチル変性アセチルセルロース等)を含むフィルム;又はアクリル系ベース樹脂に軟性アクリル系樹脂、アクリルゴム及び/又はゴム−アクリルグラフト型ポリマーを配合したフィルムなどを含んでいてもよいが、これに制限されるものではない。
【0079】
本発明では、特にアクリル系ベース樹脂;及び共役ジエン系ゴムとアクリル系樹脂を含有するグラフト共重合体を含むフィルムを使用することが好ましい。この時、上記アクリル系ベース樹脂の具体的な例は、アクリル系単量体、芳香族ビニル系単量体及びアクリロニトリル系単量体の共重合体;アクリル系単量体、芳香族ビニル系単量体及び酸無水物の共重合体;又はアクリル系単量体、芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル系単量体及び酸無水物の共重合体などの1種又は2種以上が挙げられる。また、上記アクリル系ベース樹脂には追加的な共単量体として(メタ)アクリル酸(例えば、(メタ)アクリル酸又はその誘導体)及び/又はイミド系単量体(例えば、フェニルマレイミド又はシクロヘキシルマレイミド等)などをさらに含んでいてもよい。
【0080】
本発明で、上記アクリル系ベース樹脂を構成するアクリル系単量体の具体的な種類は、エステル基、カルボニル基と共役化された炭素間の二重結合を含む化合物である限り、特に制限されなく、また、上記に含まれる置換基も特に限定されない。本発明では、例えば、アクリル系単量体として、下記化学式(26)で示される化合物を使用できる:
【化13】

(式中、R12、R13及びR14はそれぞれ独立して水素、エポキシ基又はヘテロ原子を含む1価炭化水素基を表し、R12、R13及びR14中の一つ以上はエポキシ基であってもよく;R15は水素又はアルキル基を表す。)
【0081】
上記化学式(26)の定義で、1価炭化水素基は好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、さらに好ましくは、炭素数1〜12の1価炭化水素基であってもよく、最も好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であってもよい。具体的にはメチル、エチル、プロピル又はブチルなどであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0082】
また、上記化学式(26)で、アルキルは炭素数1〜12、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは、1〜4のアルキルであってもよい。具体的にはメチル又はエチルであってもよい。
【0083】
上記化学式(26)で示されるアクリル系単量体のさらに具体的な例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチルエタクリルレート及びエチルエタクリルレートよりなる群から選択される1種以上が挙げられ、好ましくはメチル(メタ)アクリレートであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0084】
一方、本発明において、上記アクリル系ベース樹脂を構成する芳香族ビニル系単量体の具体的な例は、ベンゼンコアが一つ以上のアルキル基(例えば、炭素数1〜5のアルキル基)又はハロゲン基(例えば、臭素又は塩素)で置換された又は無置換の構造の化合物のものが好ましく、その具体的な例は、スチレン及び/又はγ−メチルスチレンなどのスチレン系単量体が挙げられる。
【0085】
また、本発明において、上記アクリル系ベース樹脂を構成するアクリロニトリル系単量体の具体的な例は(メタ)アクリロニトリル及びエタアクリロニトリルの1種又は2種以上の混合が挙げられる。
【0086】
また、本発明において、上記アクリル系ベース樹脂を構成する酸無水物の例は、カルボン酸系無水物を使用することができ、1価又は2価以上の多価カルボン酸無水物を使用することができる。
【0087】
さらに具体的に、上記酸無水物の例には下記化学式(27)の化合物が含まれる:
【化14】

{式中、R16及びR17はそれぞれ独立して水素又はアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)を表す。}
【0088】
本発明において、上記アクリル系ベース樹脂として、上述したアクリル系単量体、芳香族ビニル系単量体及びアクリロニトリル系単量体の共重合体;アクリル系単量体、芳香族ビニル系単量体及び酸無水物の共重合体;又はアクリル系単量体、芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル系単量体及び酸無水物の共重合体を使用する場合、単量体混合物間の重量比はアクリル系単量体55重量部〜80重量部;芳香族ビニル系単量体10重量部〜35重量部;アクリロニトリル系単量体及び/又は酸無水物4重量部〜15重量部が好ましいが、これに制限されるものではない。
【0089】
本発明において、また、上記共役ジエン系ゴム及びアクリル系樹脂のグラフト共重合体は、特に上記共役ジエン系ゴム成分のコア部を形成し、上記アクリル系樹脂がシェル部を形成するコア−シェル構造を有することが好ましい。この場合、上記グラフト共重合体でコア部の平均粒径は、例えば150nm〜400nm、好ましくは200nm〜300nmであるが、これに制限されない。液晶表示装置などに用いられるフィルム材料には紫外線などに対する安定性及び耐熱性が大きく要求されるため、分子中の二重結合を含有する共役ジエン系化合物を多量使用することは好ましくない。しかし、上述の特徴的な構造の共役ジエン系ゴムを使用する場合には、上記ゴム成分の含有によるフィルム靭性向上効果を得ながらも、フィルムの安定性及び耐熱性低下問題を解消できる長所がある。
【0090】
本発明の上記のようなグラフト共重合体に含まれ得るコア部の共役ジエン系ゴムは、例えば、エチレン−プロピレンジエン系ゴム及び/又はブタジエン系ゴムが挙げられる。
【0091】
また、上記グラフト共重合体でシェル部を形成するアクリル系樹脂の種類は特に制限されなく、例えば、上述したアクリル系ベース樹脂と同一又は類似の組成の樹脂を使用することができる。
【0092】
本発明において、上記のようなグラフト共重合体は、コア部を構成する共役ジエン系ゴム10重量部〜50重量部及びシェル部を構成するアクリル系樹脂90重量部〜50重量部を含むことが好ましく、より好ましくは共役ジエン系ゴム15重量部〜45重量部及びアクリル系樹脂85重量部〜55重量部を含む。上記で、ジエン系ゴム成分の重量比が10重量部未満であるか、又はアクリル系樹脂の重量比が90重量部を超えると、フィルムの靭性(toughness)特性が低下する恐れがあり、ジエン系ゴム成分が50重量部を超えるか、又はアクリル系樹脂の含量が50重量部未満のとき、分散性低下、ヘイズ又は熱膨張係数の過度の上昇又はガラス転移温度の低下などの問題が生ずる恐れがある。
【0093】
本発明において、上記のようなグラフト重合体を製造する方法は特に制限されなく、この分野の一般的なグラフト重合方法、例えば、通常のエマルジョン重合法を用いることができる。この場合、グラフト率は、例えば、30%〜60%であってもよい。
【0094】
上記成分を含むフィルムにおいて、共役ジエン系ゴムはアクリル系ベース樹脂100重量部に対して20重量部〜65重量部の量で含まれることが好ましい。上記含量が20重量部未満のとき、フィルムの靭性が低下する恐れがあり、65重量部を超えると、フィルムの加工性が落ちるか、又はヘイズ増加又はガラス転移温度の低下などの問題が生ずる恐れがある。
【0095】
また、本発明は、上記基材フィルムとしてポリカーボネート系のフィルム;飽和シクロオレフィン系フィルム;又は側鎖に、置換された又は無置換のイミド基を有するオレフィン系の熱可塑性樹脂及び側鎖に、置換された又は無置換のフェニル基及びニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含むフィルムなどを使用できる。
【0096】
本発明の基材フィルムは可塑剤、潤滑剤、衝撃緩和剤、安定剤及び紫外線吸収剤よりなる群から選択された一つ以上の添加剤が更に含まれていてもよい。上記中から特に紫外線吸収剤は外部紫外線からの光学装置の保護のために添加されることが好ましい。この時、用いられる紫外線吸収剤の例は、ベンゾトリアゾール系化合物、又はトリアジン系化合物が挙げあれ、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)のようなヒンダードアミン系の光安定剤を使用できる。また、本発明の基材フィルムはスチレン含有ポリマー(例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体)などの位相差低減剤を適宜含むことができる。
【0097】
上記基材フィルムは、例えば、上述した原料組成物を公知の混合器(例えば、オムニミキサーなど)で混合し、得られた混合物を公知の混合器(例えば、単軸押出機、2軸押出機などの押出機又は加圧ニーダー等)で押出、混合した後、公知のフィルム成形法(例えば、溶液キャスト法、溶融押し出し法、カレンダー法、圧縮成形法等)で製造でき、特に溶液キャスト法又は溶融押し出し法などで製造することが好ましい。
【0098】
以上のような基材フィルムの厚さはフィルムが適用される用途に応じて適宜選択されるが、特に限定されない。例えば、20μm〜200μm、好ましくは40μm〜120μmであってもよい。また、上記基材フィルムは未延伸フィルム又は延伸フィルムであっってもよく、この時、延伸フィルムは1軸延伸フィルム又は2軸延伸フィルムであり、上記2軸延伸フィルムは同時2軸延伸又は順次2軸延伸フィルムであってもよい。また、本発明の基材フィルムはガラス転移温度が110℃〜130℃が好ましく、熱変形温度が110℃〜140℃が好ましく、溶融指数(Melt Index)(220℃、10Kg)は2〜6のものが好ましいが、これに制限されるものでない。
【0099】
上記のような基材フィルム上に粘着層を形成する方法は特に制限されなく、例えば、上記フィルムにバーコーターなどの通常の手段で粘着剤組成物を塗布し、乾燥及び硬化させる方法;又は粘着剤をまず、剥離性基材の表面に塗布、乾燥した後、上記剥離性基材を用いて粘着層を基材フィルムに転写し、熟成、硬化させる方法などが用いられる。
【0100】
上記粘着層の形成過程で組成物が架橋剤を含む場合、上記架橋剤は、均一なコーティング遂行の観点から、粘着層形成時には架橋反応が起きないように制御されることが好ましい。即ち、架橋剤はコーティング作業後の乾燥及び熟成過程で架橋構造を形成し、凝集力を向上させ、これにより、粘着製品の粘着物性及び切断性(cuttability)などを向上させることができる。また、本発明では、上記粘着層形成時に組成物内部の揮発成分又は反応残渣などの気泡誘発成分を十分に除去した後、使用することが好ましい。仮に架橋密度又は分子量などが過度に低くて弾性率が落ちる場合に、高温状態でガラス板及び粘着層間に存在する小さな気泡が大きくなり、内部で散乱体を形成する恐れがある。粘着層の製造時に、粘着剤組成物を硬化させる方法は特に限定されない。例えば、組成物に適切な熱又は活性エネルギー線(例えば、紫外線又は電子線)を加えて遂行することができる。
【0101】
この時、形成される粘着層の厚さは特に限定されなく、保護フィルムが適用される用途に応じて適宜選択されればよい。
【0102】
また、本発明で上記の通りに形成された粘着層は下記式(4)で示されるゲル含量が30%〜99%のものが好ましく、40%〜99%のものが更に好ましい。
【0103】
ゲル含量(%)=B/A×100 (4)
(式中、Aは本発明の粘着剤組成物で製造された粘着剤の質量を表し、Bは室温でエチルアセテートで2時間浸漬後、上記粘着剤の不溶解分の乾燥質量を表す。)
【0104】
上記ゲル含量が30%未満のとき、高温及び/又は高温多湿条件下で耐久信頼性が低下する恐れがあり、99%を超えると、粘着剤の応力緩和特性が低下する恐れがある。
【0105】
また、本発明は偏光フィルム又は偏光素子;及び上記偏光フィルム又は偏光素子の一面又は両面に形成された、本発明に係る保護フィルム;を含む偏光板に関するものである。
【0106】
本発明の偏光板を構成する偏光フィルム又は偏光素子の種類は特に制限されない。本発明では、例えば、偏光フィルム又は素子として、ポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムにヨウ素又は二色性染料などの偏光成分を含有させ、延伸して製造されるフィルムを使用することができる。この時、用いられるポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール又はエチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物などが挙げられる。この時、上記ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は100〜5,000、好ましくは1,400〜4,000である。また、上記偏光フィルムの厚さは液晶表示装置などの用途などに応じて適宜選択でき、通常は5μm〜80μmの厚さで形成されるが、これに制限されるものではない。
【0107】
上記のような偏光フィルム又は偏光素子に本発明の保護フィルムを接着する方法は特に制限されなく、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂及び架橋剤などを含むポリビニルアルコール系接着剤等の公知接着手段を用いて接着するか、又は上述した本発明に係る粘着剤組成物を使用して接着することができる。
【0108】
以上のような本発明の偏光板には、追加的な機能向上の観点から、保護層、反射層、防眩層、位相差板、広視野角補償フィルム及び輝度向上フィルムよりなる群から選択された一つ以上の機能性層を更に含んでいてもよい。
【0109】
また、本発明は、上述した本発明に係る偏光板が液晶セルの一面又は両面に貼合されている液晶パネルを含む液晶表示装置に関するものである。
【0110】
上記のような本発明の液晶表示装置を構成する液晶セルの種類は特に限定されなく、TN(Twisted Neumatic)、STN(Super Twisted Neumatic)、IPS(In Plane Switching)又はVA(Vertical Alignment)方式のような一般的な液晶セルを全部含む。このような本発明の液晶表示装置が適用される用途は、大型TVなどの表示装置、モニター又はデスクトップなどのモニターなどが含まれるが、これに制限されるものではない。
【0111】
本発明の液晶表示装置は上述した本発明に係る偏光板を含む限り、その他の部品などの種類及び製造方法は特に限定されなく、この分野の一般的な手段を制限することなく採用することができる。
【実施例】
【0112】
以下、本発明に係る実施例及び本発明に係らない比較例を通して本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲が下記提示された実施例に何ら制限されるものではない。
製造例1.アクリル系共重合体(A−1)の製造
窒素ガスが還流され、温度調節が容易なように冷却装置を備えた1Lの反応器に、n−ブチルアクリレート(n−BA)95.8重量部、アクリル酸(AA)4重量部及びヒドロキシエチルメタアクリレート(2−HEMA)0.2重量部を含む単量体混合物を投入し、溶剤としてエチルアセテート(EAc)100重量部を投入した。次いで、酸素除去のために窒素ガスを1時間パージングした後、62℃に保持した。その後、上記混合物を均一にした後、反応開始剤としてエチルアセテートに50%濃度に希釈したアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03重量部を投入し、8時間反応させてアクリル系共重合体(A−1)を製造した。
【0113】
製造例2.アクリル系共重合体A−2〜B−1製造
下記表1に示されるような組成を採用したことを除いては上記製造例1と同様にしてアクリル系共重合体を製造した。
【0114】
【表1】

【0115】
実施例1 粘着剤組成物の製造
アクリル系共重合体A−1 100重量部、架橋剤としてイソシアネート系トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物(TDI−1)0.5重量部及び正の光弾性係数を有する化合物として、下記一般式(1)の化合物5重量部を投入し、適正の濃度に希釈して均一に混合した後、離型紙にコーティングして乾燥し、厚さ25μmの均一な粘着層を製造した。
【0116】
【化15】

【0117】
粘着偏光板の製造
上記製造された粘着層を一面に光弾性係数が1.35ブリュースタのアクリル系保護フィルムが適用された偏光板に粘着加工した。得られた偏光板は適切な大きさに切断して評価に用いた。
【0118】
実施例2〜6及び比較例1〜4
粘着剤組成物の組成を下記表2に示されるように変更したことを除いては、実施例1と同様にして粘着偏光板を製造した。また、実施例及び比較例で使われた正の光弾性係数を有する化合物(1)〜(4)の具体的な種類は故に示した。
【0119】
【表2】

【0120】
【化16】

【0121】
上記製造された実施例及び比較例に対して、下記提示された方法で物性を測定した後、その結果を下記表3に示した。
【0122】
1.粘着剤の位相差評価
製造された粘着剤を二つのガラス板間に粘着面積を横10mm×縦20mmにして接着して試片を製造した。その後、製造された試片を引張試験機を用いて、23℃の温度で、縦方向に500μm及び600μmの変形量でそれぞれ延伸させて発生する位相差(Rin)を測定した。この時位相差(Rin)は下記式(1)により定義される。
【0123】
in=(n−n)×d (1)
(式中、Rinは面方向位相差を表し、nは粘着剤の面方向からx軸(横軸)への屈折率を表し、nは粘着剤の面方向からy軸(縦軸)への屈折率を表し、dは上粘着剤の厚さを表す。)
【0124】
2.耐久信頼性の評価
実施例及び比較例で製造された粘着剤がコーティングされた偏光板(90mm×170mm)をガラス基板(110mm×190mm×0.7mm)に両面に光学吸収軸がクロス状態で付着させた。この時、加えられた圧力は約5kg/cmであり、気泡や異物が生じないようにクリーンルーム作業を行った。製造された試片を耐湿熱特性は60℃の温度及び90%の相対湿度条件下で1000時間放置した後、気泡や剥離の発生を観察して評価し、耐熱特性は80℃の温度で1000時間間放置した後、気泡や剥離の発生を観察して評価した。評価直前試片を室温で24時間放置した後、試験を行っており、評価基準は次の通りである。
○:気泡や剥離現象ない
Δ:気泡や剥離現象若干発生
×:気泡や剥離現象多量発生
【0125】
3.光透過均一性(光漏れ)の評価
耐久信頼性評価時と同じ試片を使用して、光透過度の均一性を調べた。具体的にはバックライトを用いて暗室で光が漏れる部分があるかを観察しており、試験時、コーティングされた偏光板(400mm×200mm)をガラス基板(410mm×210mm×0.7mm)に光軸を交差して両面に付着した。光透過均一性評価に用いられた試片は60℃の温度で500時間、又は50℃の90%R.Hの相対湿度で500時間放置後、室温で使用した。評価基準は次の通りである。
○:光透過性の不均一現象肉眼で判断するのが困難
Δ:光透過性の不均一現象若干ある
×:光透過性の不均一現象多量ある
【0126】
【表3】

【0127】
上記表3の結果から明らかなように、面方向位相差の範囲が本発明の範囲に属する実施例の場合、耐久信頼性及び光透過均一性が何れも優れたが、その絶対値が2nmを超える場合には特に光透過均一性評価結果が悪く、液晶表示装置などに適用時に多量の光漏れが生じて、その性能が大きく低下することが予測された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)の条件を満たす粘着剤組成物:
X≦2nm (1)
式中、ΔXは上記粘着剤組成物を用いて製造したシート状粘着剤を、23℃の温度で、シート面の縦軸方向に500μm延伸させた時、式「(n−n)× d」(ここで、 nは上記シート状粘着剤の面方向から横軸への屈折率を表し、nは上記シート状粘着剤の面方向から縦軸への屈折率を表し、dは上記シート状粘着剤の厚さを表す。)で測定される面方向位相差(Rin)の絶対値を表す。
【請求項2】
重量平均分子量が500,000以上であるベース樹脂を含む請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記ベース樹脂は(メタ)アクリル酸エステル単量体80重量部〜99.8重量部;及び架橋性単量体0.01重量部〜10重量部を含む単量体混合物の重合体である請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレートよりなる群から選択された一つ以上である請求項3に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記架橋性単量体が、ヒドロキシ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体及び窒素含有単量体よりなる群から選択された一つ以上である請求項3に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記単量体混合物が下記化学式(1)で示される単量体を更に含む請求項3に記載の粘着剤組成物:
【化1】

式中、R〜R3はそれぞれ独立して水素又はアルキルを表し、Rはシアノ;アルキルで置換された又は無置換のフェニル;アセチルオキシ;又はCOR(ここで、Rはアルキル又はアルコキシアルキルで置換された又は無置換のアミノ又はグリシジルオキシを表す。)を表す。
【請求項7】
前記単量体混合物が下記化学式(2)で示される化合物を更に含む請求項3に記載の粘着剤組成物:
【化2】

式中、
6は水素又はアルキルを表し、Aはアルキレンを表し、nは0〜3の定数を表し、Qは単一結合、−O−、−S−又はアルキレンを表し、Pは芳香族環を表す。
【請求項8】
正の光弾性係数を有する化合物を更に含む請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
正の光弾性係数を有する化合物は下記化学式(3)で示される請求項8に記載の粘着剤組成物:
【化3】

式中、
Bは単一結合、−CH=N−、−N=N−、−N=N(O)−、−COO−、−CHO−、−C(R−CO−、−COO−CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−S−、−SO−、−φ(R)−、−CH=N−φ(R)−N=CH−、−CH=CH−φ(R)−N=CH−、−CH=CH−φ(R)−CH=CH−、−CH=CH−φ(R)−φ(R)−CH=CH−、−CH=N−φ(R)−(R)−N=CH−、−CH=N−φ(R)−φ(R)−CH=CH−、−N=N−φ(R)−N=CH−、−C(=O)−O−φ(R)−C(CH−、ナフタレンコア又はアントラセンコアを表し、
X、Y、R及びRはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アリール、ジアルキルアミン及びクミルを表し、
aは0〜3の定数を表し、
bはaが0のとき1〜3の定数、aが1〜3の定数の時0〜3の定数を表す。
【請求項10】
正の光弾性係数を有する化合物は下記化学式(4)で示される請求項8に記載の粘着剤組成物:
【化4】

[上記で、ZはC−W又はNであり;
〜Q16及びWはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキルオキシ、−R、-OR、−NHR、−N(R、−C(=O)R、−SR、−SOR、−SO、−C(=O)NR、−NRC(=O)R、−C(=O)OR、−OC(=O)R、又は−OC(=O)OR{ここで、Rは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル又は−(R10O)R11(ここで、R10はアルキレンであり、R11はアルキルであり、qは1〜5の定数である。)である。}である。]であり;
l、m、n及びoはそれぞれ独立して0〜2の定数であり、l+m+n+oは2つ以上の定数であり;
E及びFはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ、−R、−OR、−NHR、−N(R、−NCO、−NCS、−C(=O)R又は−Si(Rであり;
、G、及びGはそれぞれ独立して単一結合、−O−、−R10O−、−NR10−、−S−、−SO−、−SO−、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン又は−U−T−V−{ここで、U及びTはそれぞれ独立して単一結合、−S−、−NR10−、−O(CH−、カルボニル又は−O−(ここで、pは0〜5の定数である)であり、Vは単一結合、−O−、カルボニル、−NR10−、−S−、−(CH−、−O(CH2)−、又は−(CHO−(ここで、pは0〜5の定数である。)である。}である。
【請求項11】
前記ベース樹脂100重量部に対して、0.1重量部〜10重量部の架橋剤を更に含む請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項12】
前記架橋剤がイソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物及び金属キレート系化合物よりなる群から選択された一つ以上である請求項11に記載の粘着剤組成物。
【請求項13】
前記ベース樹脂100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部のシラン系カップリング剤を更に含む請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項14】
基材フィルム;及び上記基材フィルムの一面又は両面に形成され、 請求項1〜13のいずれか1項に記載の粘着剤組成物の硬化物を含有する粘着層を含む偏光板用保護フィルム。
【請求項15】
前記基材フィルムは光弾性係数の絶対値が10ブリュースタ(brewster)以下である請求項14に記載の偏光板用保護フィルム。
【請求項16】
前記基材フィルムは、ポリカーボネートフィルム;飽和シクロオレフィンフィルム;側鎖に置換された又は無置換のイミド基を有するオレフィン熱可塑性樹脂フィルム;側鎖に置換された又は無置換のフェニル基及びニトリル基を有する熱可塑性樹脂フィルム;又はアクリルフィルムである請求項15に記載の偏光板用保護フィルム。
【請求項17】
前記基材フィルムは、アクリル系樹脂及び共役ジエン系ゴム含有グラフト共重合体を含むアクリルフィルムである請求項15に記載の偏光板用保護フィルム。
【請求項18】
偏光フィルム又は偏光素子;及び上記偏光フィルム又は偏光素子の一面又は両面に形成された請求項14に記載の保護フィルムを含む偏光板。
【請求項19】
保護層、反射層、防眩層、位相差板、広視野角補償フィルム及び輝度向上フィルムよりなる群から選択された一つ以上を更に含む請求項18に記載の偏光板。
【請求項20】
請求項18に記載の偏光板が液晶セルの一面又は両面に貼合されている液晶パネルを含む液晶表示装置。

【公表番号】特表2011−526647(P2011−526647A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516151(P2011−516151)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【国際出願番号】PCT/KR2009/003604
【国際公開番号】WO2010/002198
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】