説明

粘稠物の環状塗布方法およびその装置

【課題】ホットメルトなどの粘稠物をオーバーラップさせて隙間なく環状に塗布することができ、しかもオーバーラップによるビルトアップやこれによる落下飛散などが発生しない粘稠物の環状塗布方法およびその装置を提供すること。
【解決手段】外径Dが粘稠物の塗布幅Bより細く、長さLが粘稠物の塗布厚みTより長いノズル3を、被塗布体1から粘稠物の塗布厚み乃至塗布厚みの1.4倍の距離δだけ離し、粘稠物の吐出開始位置から塗布体とノズル3とを相対的に1周以上周回させて粘稠物をオーバーラップさせるとともに、オーバーラップ部分2aをノズル3で均すように塗布する。
これにより、オーバーラップによるビルトアップやこれによる落下飛散などが発生せず、隙間なく環状に塗布するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は粘稠物の環状塗布方法およびその装置に関し、円筒側面上や平板上に環状に接着剤やシール材などの粘稠物をオーバーラップさせて塗布する場合にノズル先端への粘稠物の堆積落下を防止できるようにしたもので、特に缶体のカール端へのホットメルトの塗布に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
接着剤やシール材などの粘稠物を環状に塗布する必要がある場合として、例えば製缶において缶蓋内側の周縁内溝に接着剤を塗布する場合(特許文献1参照)やロータリトランスの組立においてコイルを接着するコアの溝に接着剤を塗布する場合(特許文献2参照)などがあるほか、図5に示すように、ボトル状の缶1のカール端1aの防錆のためホットメルト2を塗布する場合があり、開口端近傍の外周側壁1bにホットメルト2を環状に塗布し、カール端1aをホットメルト2で覆って金属が露出しないようにする。
【0003】
例えば粘稠物であるホットメルトをノズルから吐出させて平面上や円筒状の外周側面上に隙間なく環状に塗布する場合には、図6(a)に示すように、オーバーラップ2aを形成して塗布する必要がある。
【0004】
このようなホットメルトをオーバーラップさせて塗布する場合、例えば図6(b)に示すように、ノズル3の先端にホットメルト2が堆積しないようノズル3の先端と被塗布体である外周側壁1bからの距離を離すと、塗布したホットメルト2が一定の塗布幅や塗布厚さにならず波状となるコールドビード2bが発生してしまう。
【0005】
一方、ノズル先端を被塗布体の表面に接近させると、ノズル先端がオーバーラップして塗布厚さが厚くなったホットメルトと接触し、ホットメルトが堆積するビルドアップが発生し、時間の経過とともに成長し、大きくなると落下して被塗布体である缶に当たって飛散し、これにより、前後数缶が不良品となってしまう。
【0006】
特に、ホットメルトをオーバーラップさせて塗布後、ノズルからの吐出を停止して缶を空転させてから缶を取り出す場合には、一層、ビルトアップが発生し易い。
【0007】
そこで、特許文献1では、ノズルの上方に溶剤注射口を設けて溶剤を流下させることで、ビルドアップを防止するようにしている。
【0008】
また、特許文献2では、ノズルを傾斜させて設置し、粘稠物をオーバーラップさせずに塗布するようにしている。
【特許文献1】特開昭61−161171号公報
【特許文献2】特開平6−246214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、溶剤を間欠的に流下させると、ノズル先端の温度が変化し、ホットメルトの塗布に適用しようとしても安定した塗布ができなくなるという問題が生じ、ノズルを傾斜させ、オーバーラップを生じさせずに塗布すると、ホットメルトが塗布されない僅かな隙間が生じる恐れがあり、この部分から腐食が発生するという問題が生じる。
【0010】
この発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、ホットメルトなどの粘稠物をオーバーラップさせて隙間なく環状に塗布することができ、しかもオーバーラップによるビルトアップやこれによる落下飛散などが発生しない粘稠物の環状塗布方法およびその装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来技術の有する課題を解決するためこの発明の請求項1記載の粘稠物の環状塗布方法は、ノズルから吐出される粘稠物を被塗布体に環状に塗布するに際し、外径が前記粘稠物の塗布幅より細く、長さが前記粘稠物の塗布厚みより長いノズルを、前記被塗布体から前記粘稠物の塗布厚み乃至塗布厚みの1.4倍の距離離し、前記粘稠物の吐出開始位置から前記塗布体と前記ノズルとを相対的に1周以上周回させて前記粘稠物をオーバーラップさせるとともに、オーバーラップ部分を当該ノズルで均すように塗布することを特徴とするものである。
【0012】
この粘稠物の環状塗布方法によれば、ノズルから吐出される粘稠物を被塗布体に環状に塗布するに際し、外径が前記粘稠物の塗布幅より細く、長さが前記粘稠物の塗布厚みより長いノズルを、前記被塗布体から前記粘稠物の塗布厚み乃至塗布厚みの1.4倍の距離離し、前記粘稠物の吐出開始位置から前記塗布体と前記ノズルとを相対的に1周以上周回させて前記粘稠物をオーバーラップさせるとともに、オーバーラップ部分を当該ノズルで均すように塗布しており、塗布厚みに対して設定した距離のノズルで、外径が塗布幅より細いノズルとすることで、オーバーラップ部分を通過する際に塗布幅を不要に広げることなく均すようにでき、塗布厚みに対して長いノズルとすることで、ノズルの途中までしか塗布物に接触せず、例え僅かにノズルに残っても塗布中やオーバーラップ部分を通過する際に塗布物にさらわれてビルトアップが起こり難くなる。
【0013】
これにより、オーバーラップによるビルトアップやこれによる落下飛散などが発生せず、隙間なく環状に塗布することができる。
【0014】
また、この発明の請求項2記載の粘稠物の環状塗布方法は、請求項1記載の構成に加え、前記被塗布体に前記粘稠物をオーバーラップさせて塗布した後、塗布停止状態で前記被塗布体と前記ノズルとを相対的に周回させるようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
この粘稠物の環状塗布方法によれば、前記被塗布体に前記粘稠物をオーバーラップさせて塗布した後、塗布停止状態で前記被塗布体と前記ノズルとを相対的に周回させるようにしており、塗布後オーバーラップ部分を通過するノズルで一層確実に均すようにでき、例え僅かにノズルに残っても塗布中やオーバーラップ部分を通過する際に塗布物にさらわれて一層ビルトアップが起こり難くなる。
【0016】
また、この発明の請求項3記載の粘稠物の環状塗布方法は、請求項1または2記載の構成に加え、前記被塗布体を円筒状またはボトル状の缶体とし、当該缶体を回転させて前記粘稠物であるホットメルトを外周側壁にオーバーラップさせて塗布するようにしたことを特徴とするものである。
【0017】
この粘稠物の環状塗布方法によれば、前記被塗布体を円筒状またはボトル状の缶体とし、当該缶体を回転させて前記粘稠物であるホットメルトを外周側壁にオーバーラップさせて塗布するようにしており、円筒状やボトル状の缶体の外周側壁にホットメルトをオーバーラップさせて塗布することができ、オーバーラップによるビルトアップやこれによる落下飛散などが発生せず、隙間なく環状に塗布することができる。
【0018】
さらに、この発明の請求項4記載の粘稠物の環状塗布装置は、被塗布体が取り付けられ1周以上周回駆動可能な支持周回手段と、この支持周回手段に取り付けられた前記被塗布体の被塗布部と対向して設置され、粘稠物を吐出して塗布し得るノズル手段とを備え、前記ノズル手段を、外径が前記粘稠物の塗布幅より細く、長さが前記粘稠物の塗布厚みより長く、前記被塗布体から前記粘稠物の塗布厚み乃至塗布厚みの1.4倍の距離離して配置したノズルで構成したことを特徴とするものである。
【0019】
この粘稠物の環状塗布装置によれば、被塗布体が取り付けられ1周以上周回駆動可能な支持周回手段と、この支持周回手段に取り付けられた前記被塗布体の被塗布部と対向して設置され、粘稠物を吐出して塗布し得るノズル手段とを備え、前記ノズル手段を、外径が前記粘稠物の塗布幅より細く、長さが前記粘稠物の塗布厚みより長く、前記被塗布体から前記粘稠物の塗布厚み乃至塗布厚みの1.4倍の距離離して配置したノズルで構成しており、支持周回手段で1周以上周回駆動される被塗布体にノズル手段のノズルを塗布厚みに対して設定した距離で、ノズルの外径を塗布幅より細いノズルとすることで、オーバーラップ部分を通過する際に塗布幅を不要に広げることなく均すようにでき、塗布厚みに対して長いノズルとすることで、ノズルの途中までしか塗布物に接触せず、例え僅かにノズルに残っても塗布中やオーバーラップ部分を通過する際に塗布物にさらわれてビルトアップが起こり難くなる。
【0020】
これにより、オーバーラップによるビルトアップやこれによる落下飛散などが発生せず、隙間なく環状に塗布することができる。
【0021】
また、この発明の請求項5記載の粘稠物の環状塗布装置は、請求項4記載の構成に加え、前記支持周回手段で前記被塗布体を2周以上周回駆動可能に構成するとともに、前記ノズル手段で前記粘稠物をオーバーラップさせて塗布した後、塗布停止状態で前記被塗布体を周回可能に構成したことを特徴とするものである。
【0022】
この粘稠物の環状塗布装置によれば、前記支持周回手段で前記被塗布体を2周以上周回駆動可能に構成するとともに、前記ノズル手段で前記粘稠物をオーバーラップさせて塗布した後、塗布停止状態で前記被塗布体を周回可能に構成しており、塗布後オーバーラップ部分を通過するノズル手段で一層確実に均すようにでき、例え僅かにノズルに残っても塗布中やオーバーラップ部分を通過する際に塗布物にさらわれて一層ビルトアップが起こり難くなる。
【0023】
また、この発明の請求項6記載の粘稠物の環状塗布装置は、請求項4または5記載の構成に加え、前記被塗布体が、円筒状またはボトル状の缶体であり、前記ノズルで当該缶体の外周側壁に前記粘稠物であるホットメルトを塗布可能に構成したことを特徴とするものである。
【0024】
この粘稠物の環状塗布装置によれば、前記被塗布体が、円筒状またはボトル状の缶体であり、前記ノズルで当該缶体の外周側壁に前記粘稠物であるホットメルトを塗布可能に構成しており、円筒状やボトル状の缶体の外周側壁にホットメルトをオーバーラップさせて塗布することができ、オーバーラップによるビルトアップやこれによる落下飛散などが発生せず、隙間なく環状に塗布することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明の請求項1記載の粘稠物の環状塗布方法によれば、ノズルから吐出される粘稠物を被塗布体に環状に塗布するに際し、外径が前記粘稠物の塗布幅より細く、長さが前記粘稠物の塗布厚みより長いノズルを、前記被塗布体から前記粘稠物の塗布厚み乃至塗布厚みの1.4倍の距離離し、前記粘稠物の吐出開始位置から前記塗布体と前記ノズルとを相対的に1周以上周回させて前記粘稠物をオーバーラップさせるとともに、オーバーラップ部分を当該ノズルで均すように塗布するので、塗布厚みに対して設定した距離のノズルで、外径が塗布幅より細いノズルとすることで、オーバーラップ部分を通過する際に塗布幅を不要に広げることなく均すようにすることができ、塗布厚みに対して長いノズルとすることで、ノズルの途中までしか塗布物に接触せず、例え僅かにノズルに残っても塗布中やオーバーラップ部分を通過する際に塗布物にさらわれてビルトアップを起こり難くすることができる。
【0026】
これにより、オーバーラップによるビルトアップやこれによる落下飛散などが発生せず、隙間なく環状に塗布することができる。
【0027】
さらに、この発明の請求項2記載の粘稠物の環状塗布方法によれば、前記被塗布体に前記粘稠物をオーバーラップさせて塗布した後、塗布停止状態で前記被塗布体と前記ノズルとを相対的に周回させるようにしたので、塗布後オーバーラップ部分を通過するノズルで一層確実に均すようにすることができ、例え僅かにノズルに残っても塗布中やオーバーラップ部分を通過する際に塗布物にさらわれて一層ビルトアップが起こり難くなる。
【0028】
また、この発明の請求項3記載の粘稠物の環状塗布方法によれば、前記被塗布体を円筒状またはボトル状の缶体とし、当該缶体を回転させて前記粘稠物であるホットメルトを外周側壁にオーバーラップさせて塗布するようにしたので、円筒状やボトル状の缶体の外周側壁にホットメルトをオーバーラップさせて塗布することができ、オーバーラップによるビルトアップやこれによる落下飛散などが発生せず、隙間なく環状に塗布することができる。
【0029】
さらに、この発明の請求項4記載の粘稠物の環状塗布装置によれば、被塗布体が取り付けられ1周以上周回駆動可能な支持周回手段と、この支持周回手段に取り付けられた前記被塗布体の被塗布部と対向して設置され、粘稠物を吐出して塗布し得るノズル手段とを備え、前記ノズル手段を、外径が前記粘稠物の塗布幅より細く、長さが前記粘稠物の塗布厚みより長く、前記被塗布体から前記粘稠物の塗布厚み乃至塗布厚みの1.4倍の距離離して配置したノズルで構成したので、支持周回手段で1周以上周回駆動される被塗布体にノズル手段のノズルを塗布厚みに対して設定した距離で、ノズルの外径を塗布幅より細いノズルとすることで、オーバーラップ部分を通過する際に塗布幅を不要に広げることなく均すようにすることができ、塗布厚みに対して長いノズルとすることで、ノズルの途中までしか塗布物に接触せず、例え僅かにノズルに残っても塗布中やオーバーラップ部分を通過する際に塗布物にさらわれてビルトアップを起こり難くすることができる。
【0030】
これにより、オーバーラップによるビルトアップやこれによる落下飛散などが発生せず、隙間なく環状に塗布することができる。
【0031】
また、この発明の請求項5記載の粘稠物の環状塗布装置によれば、前記支持周回手段で前記被塗布体を2周以上周回駆動可能に構成するとともに、前記ノズル手段で前記粘稠物をオーバーラップさせて塗布した後、塗布停止状態で前記被塗布体を周回可能に構成したので、塗布後オーバーラップ部分を通過するノズル手段で一層確実に均すようにすることができ、例え僅かにノズルに残っても塗布中やオーバーラップ部分を通過する際に塗布物にさらわれて一層ビルトアップが起こり難くなる。
【0032】
さらに、この発明の請求項6記載の粘稠物の環状塗布装置によれば、前記被塗布体が、円筒状またはボトル状の缶体であり、前記ノズルで当該缶体の外周側壁に前記粘稠物であるホットメルトを塗布可能に構成したので、円筒状やボトル状の缶体の外周側壁にホットメルトをオーバーラップさせて塗布することができ、オーバーラップによるビルトアップやこれによる落下飛散などが発生せず、隙間なく環状に塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1〜図4はこの発明の粘稠物の環状塗布方法およびその装置をボトル状缶のカール端のシール用のホットメルトの塗布に適用した一実施の形態にかかり、図1は塗布方法にかかる説明図、図2は塗布状態を模式的に示す説明図、図3は塗布装置の正面図、図4は塗布装置の側面図である。
【0034】
この粘稠物の環状塗布方法およびその装置では、既に図5で説明したように、例えば被塗布体をボトル状の缶1とし、その開口端近傍のカール端1aの防錆のため外周側壁1bに粘稠物であるシール材としてのホットメルト2をオーバーラップ2aを生じさせて環状に塗布する場合について説明する。
【0035】
このホットメルトの環状塗布方法では、図1に示すように、ホットメルト2の塗布幅B,塗布厚みTに対してノズル3の外径Dおよび長さLを適正に定めるとともに、被塗布体である缶1からノズル3の先端までの距離δを適正に定めることで、オーバーラップさせて環状に塗布すると同時に、ノズル3でのビルトアップやこれによる塗布物の堆積落下、飛散を防止するようにしている。
【0036】
すなわち、この環状塗布方法では、ノズル3の外径Dがホットメルト2の塗布幅Bより細く、ノズル3の長さLがホットメルト2の塗布厚みTより長いもので、被塗布体である缶1からノズル3の先端までの距離δを塗布厚みT乃至塗布厚みTの1.4倍(1.4×T)の距離に配置する。そして、ノズル3からホットメルト2を吐出する吐出開始位置から被塗布体である缶1とノズル3とを相対的に1周以上周回させ、通常はノズル3を固定しておき、缶1を周回させてホットメルト2をオーバーラップ2aを形成させて塗布する。
【0037】
この缶1へのホットメルト2を塗布してオーバーラップ2aを形成する場合には、例えば図2に塗布状態を模式的に示すように、まず、ノズル3からのホットメルト2の塗布開始位置から1周を超えて缶1を回転させて塗布することでオーバーラップ2aを形成した後、ノズル3からのホットメルト2の吐出を停止する(図2(a),(b)参照)。
【0038】
そして、さらに缶1だけを2周を超えて回転することで、ノズル3でホットメルト2のオーバーラップ2a部分を均すようにする(図2(c),(d)参照)。
【0039】
なお、ノズル3からのホットメルト2の塗布開始位置から1周を超えて缶1を回転させて塗布することでオーバーラップ2aを形成した後、直ちに缶1の回転を停止し、ノズル3が再びホットメルト2のオーバーラップ部分を通過しないようにしても良い。
【0040】
すると、缶1の外周側壁1bにホットメルト2が塗布され、オーバーラップ2a以外の部分では、図1(a)に示すように、塗布幅Bで塗布厚みTで塗布され、例えば横断面形状が円の一部を切り取った半円より大きい略逆U状になる。
【0041】
そして、オーバーラップ2a部分では、塗布幅がB´と僅かに広がり、塗布厚みがT´と厚くなるが、ノズル3で押し退けるようにするとともに、均されることで、塗布幅B´が塗布条件により異なるが、例えば7.7%程度広がり、塗布厚みT´が2倍まで厚くなることはなく、塗布条件により異なるが、例えば1.4倍程度の厚みとなる。
【0042】
このようなノズル3を用いてホットメルト2を塗布することで、ホットメルト2の塗布幅Bに対してノズル3の外径Dを細くしてあるので、オーバーラップ2a部分を通過する場合に、既に塗布したホットメルトと吐出されて来るホットメルトを押し退け均しつつ、しかも、塗布幅を不要に広げることなく塗布することが可能となる。
【0043】
また、塗布厚みTに対して長いノズル3を用いているので、ノズル3が既に塗布されたホットメルトとオーバーラップさせるホットメルトを通過する際、ノズルの途中までしかホットメルトが接触しないため、ノズルにホットメルトが残り難く、多少残った場合も次の塗布でノズルがオーバーラップ部分を通過する際に、残ったホットメルトは次の缶1に対する塗布中または塗布されたホットメルトの方にさらわれ、ホットメルトのノズルへの堆積を防ぐことができる。
【0044】
以上のようにノズル3によるホットメルトの塗布状態(塗布幅B、塗布厚みT)とノズルの寸法(外径D、長さL)とを設定することで、ホットメルト2をオーバーラップ2aを生じさせて環状に塗布する場合でも、ノズル3にホットメルト2をビルトアップさせずに、しかもオーバーラップ2a部分の塗布幅を不要に広げることなく塗布することができる。
【0045】
すなわち、ノズル3については、その外径Dを少なくとも塗布幅Bよりも細くすることおよびその長さLを塗布厚みTよりも少なくとも長くすることであり、被塗布体とノズル3との距離δを塗布厚みT乃至塗布厚みTの1.4倍とすることである。
【0046】
ノズルの外径Dが塗布幅Bより大きい場合には、塗布幅Bを広げることになり、ノズルの長さLが短い場合には、ノズルの根元への粘稠物の堆積が生じてしまう。
【0047】
また、被塗布体とノズル3との距離δを塗布厚みTより小さくすると、オーバラップさせる場合に既に塗布した粘稠物と接触することになり、堆積が生じたり、塗布幅を広げる一方、塗布厚みTの1.4倍以上とすると、コールドビードなどが生じてしまう。
【0048】
次に、このような粘稠物をオーバーラップさせて環状に塗布する環状塗布装置について、図3、4により具体的に説明する。
この粘稠物の環状塗布装置10では、被塗布体であるボトル状の缶1が取り付けられ1周以上、例えば2周以上周回駆動可能な支持周回手段11を備えており、例えば順次間欠送りされるターレット12の各位置(図示例では、3ヶ所のみ図示してあり、例えば予回転位置、塗布位置、検査位置などとする。)にバキュームチャック13が水平な回転軸14に軸受を介して回転可能に設けてある。そして、回転軸14の中心部に真空吸引管が配置され、図示しない真空吸引装置に接続されて被塗布体であるボトル状の缶1の底部を吸着して水平に支持したり、開放できるようにしてある。
【0049】
各回転軸14に支持されたバキュームチャック13は、ゴムライニングが設けられモータで駆動される摩擦車15が側面に押し付けられて摩擦で動力が伝達されて駆動され、1周以上オーバーラップさせて駆動できるようになっている。
【0050】
したがって、この支持周回手段11により、被塗装体であるボトル状の缶1の底部をバキュームチャック13で吸着して水平状態に支持することができるとともに、摩擦車15を接触することで、1周以上、ここでは2周以上周回駆動することができる。
【0051】
この支持周回手段11で支持される被塗布体の塗布部分と対向するターレット12の1ヶ所に対応してノズル手段16が設けられ、ノズル17により粘稠物を塗布できるようにしてあり、例えばボトル状の缶1の開口端近傍の外周側壁と対向してノズル17が配置される。
【0052】
このノズル手段16は、環状塗布装置10の架台18にx、y、zの3軸方向の位置調整ボルト機構19を介して位置調整可能にノズル取付台20が支持され、このノズル取付台20に鉛直方向に対して傾けられ、缶1の中心に向くようにノズル17が取り付けてある。
【0053】
このノズル17は、既に説明したように、缶1への粘稠物の塗布幅Bおよび塗布厚みTにより、ノズル外径Dが塗布幅Bより細く、ノズル長さLが塗布厚みTより長いものが用いられる。そして、このノズル17がノズル取付台20の3軸方向の位置調整ボルト機構19で、ノズル先端から塗布面までの距離δを塗布厚みT乃至塗布厚みTの1.4倍の範囲に調整される。
【0054】
このノズル17には、粘稠物として、例えばホットメルトが供給されて吐出されるようになっている。
【0055】
このような環状塗布装置10を用いて、ノズル17からホットメルト2を吐出させ、吐出開始位置から被塗布体である缶1を支持周回手段11でバキュームチャック13を1周以上周回させることで、ホットメルト2を、オーバーラップ2aを形成させて塗布する。
【0056】
この缶1へのホットメルト2を塗布してオーバーラップ2aを形成する場合には、既に図2で説明したように、まず、ノズル17からのホットメルト2の塗布開始位置から支持周回手段11で1周を超えて缶1を回転させて塗布することでオーバーラップ2aを形成した後、ノズル17からのホットメルト2の吐出を停止する。
【0057】
そして、さらに缶1だけを支持周回手段11で2周を超えて空転することで、ノズル17でホットメルト2のオーバーラップ2a部分を均すようにする。
【0058】
なお、ノズル17からのホットメルト2の塗布開始位置から1周を超えて缶1を回転させて塗布することでオーバーラップ2aを形成した後、直ちに缶1の回転を停止し、ノズル17が再びホットメルト2のオーバーラップ部分を通過しないようにしても良い。
【0059】
このような環状塗布装置10により、既に説明した環状塗布方法を実現することができ、ノズル17によるホットメルトの塗布状態(塗布幅B、塗布厚みT)とノズルの寸法(外径D、長さL)とを設定することで、ホットメルト2をオーバーラップ2aを生じさせて環状に塗布する場合でも、ノズル3にホットメルト2をビルトアップさせずに、しかもオーバーラップ2a部分の塗布幅を不要に広げることなく塗布することができるなど、同様の効果を奏する。
【0060】
なお、環状塗布装置10には、ターレットの他の位置に対応して金属が露出していないことを検査するブラシ型金属露出検査装置が設置されたり、予め被塗布体を回転する予回転装置などが設置される。
【実施例】
【0061】
次に、この発明の実施例について、比較例とともに説明するが、この発明は、下記実施例に限定するものでない。
【0062】
実施例1
被塗布体として、ボトル状の缶(胴部外径が52.5mm、開口部近傍の外径が30mm)に、粘稠物として、ホットメルト(190℃下における粘度が3000mPa・s、軟化点が145℃)を195℃に加熱し、吐出速度を60g/minとし、ホットメルトの塗布幅Bを1.3mm、塗布厚みTを0.75mmで環状に塗布するようにした。
ノズルは、ノズル長さLを1.5mm、ノズル外径Dを0.9mm、ノズル内径を0.52mmとしたもの(Nordson製ニードルノズル;21G×1.5)を用いた。
このノズルを缶1の外周側壁からの距離δを0.9mmに位置調整した。
缶1を取り付けるバキュームチャックを800rpmで回転駆動した(この時の塗布位置の周速度は75.4m/minとなる)。
こうしてボトル状の缶に対してホットメルトを0.078秒間吐出させて1回転強回転させてオーバーラップを形成して塗布した。このホットメルトの塗布後、缶をさらに約1.5回転空転させた。
【0063】
その結果、ホットメルトが、缶に78mg塗布され、塗布したホットメルトの塗布幅B,B´は、オーバーラップしていない部分の塗布幅Bが1.3mmであったのに対し、オーバーラップ部の塗布幅B´はほぼ変わらず、1.4mmであった。
また、塗布したホットメルトの塗布厚みT,T´は、オーバーラップしていない部分の塗布厚みTは、0.75mmであるのに対し、オーバーラップ部の塗布厚みT´は、1.05mmであった。
また、ビルトアップについては、約4000缶に塗布後もノズルの根元にホットメルトが堆積することがなかった。
【0064】
実施例2
ホットメルトの目標塗布幅Bを0.8mm、塗布厚みTを0.65mmに変更するのに対応して、ノズルとして、ノズル外径Dが0.7mm,ノズル内径が0.42mmの細長ノズル(Nordson製ニードルノズル;22G×1.5)を用いた。
また、ホットメルトの吐出速度を34.5g/minとして吐出した。
これら以外の塗布条件は、実施例1と同一とした。
その結果、ホットメルトは、缶に45mg塗布され、塗布したホットメルトの塗布幅B,B´は、オーバーラップしていない部分の塗布幅Bが0.81mmであったのに対し、オーバーラップ部の塗布幅B´はほぼ変わらず0.88mmであった。
また、塗布したホットメルトの塗布厚みT,T´は、オーバーラップしていない部分の塗布厚みTは、0.67mmであるのに対し、オーバーラップ部の塗布厚みT´は、0.85mmであった。
また、ビルトアップについては、約4000缶に塗布後もノズルの根元にホットメルトが堆積することがなかった。
【0065】
比較例1
ノズルの缶の外周側壁からの距離δを1.3mmに離して位置調整した以外は、実施例1と同一にして塗布を行った。
この結果、ホットメルトの吐出状態が不安定となり、コールドビード(射出成形におけるジェッディングと同じ現象)が起こり、塗布幅Bが0.6〜2.5mmの範囲で変化し,塗布厚みTも0.4〜1.4mmの範囲で変化して不安定となった。
【0066】
比較例2
ノズルとして、ノズル長さLが1.5mm,ノズル先端外径Dが1.25mm,ノズル根元外径が3mm,ノズル先端内径が0.52mmの円錐台形状のノズルを用いた以外は、実施例1と同一にして塗布を行った。
その結果、ホットメルトの塗布状態は、実施例1とほぼ同じであった。
しかし、ビルトアップについては、約3000缶の塗布後あたりからノズルの根元にホットメルトの堆積が確認され、約4000缶の塗布後には、ホットメルトが缶へ落下したり、周囲への飛散が発生した。
なお、上記実施の形態では、ボトル状の缶の開口端部にホットメルトを塗布する場合を例に説明したが、被塗布体が円筒状部分でなく、平板状など他の形状であっても良く、また、粘稠物はホットメルトに限らず、接着剤やシール材など他の塗布物であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の粘稠物の環状塗布方法およびその装置をボトル状缶のカール端のシール用のホットメルトの塗布に適用した一実施の形態にかかる塗布方法の説明図である。
【図2】この発明の粘稠物の環状塗布方法およびその装置をボトル状缶のカール端のシール用のホットメルトの塗布に適用した一実施の形態にかかる塗布状態を模式的示す説明図である。
【図3】この発明の粘稠物の環状塗布方法およびその装置をボトル状缶のカール端のシール用のホットメルトの塗布に適用した一実施の形態にかかる塗布装置の正面図である。
【図4】この発明の粘稠物の環状塗布方法およびその装置をボトル状缶のカール端のシール用のホットメルトの塗布に適用した一実施の形態にかかる塗布装置の側面図である。
【図5】この発明の粘稠物の環状塗布方法およびその装置の適用対象の一例にかかるボトル状缶のカール端のシール部の説明図である。
【図6】この発明の粘稠物の環状塗布方法およびその装置の適用対象の一例にかかるボトル状缶のカール端のシール部へのホットメルトの塗布状態の説明図である。
【符号の説明】
【0068】
1 缶(被塗布体)
1a カール端
1b 外周側壁
2 ホットメルト(粘稠物)
2a オーバーラップ
2b コールドビード
10 粘稠物の環状塗布装置
11 支持周回手段
12 ターレット
13 バキュームチャック
14 回転軸
15 摩擦車
16 ノズル手段
17 ノズル
18 架台
19 位置調整ボルト機構
20 ノズル取付台
D ノズル外径
L ノズル長さ
B 塗布幅
T 塗布厚み
B´ オーバーラップ部の塗布幅
T´ オーバーラップ部の塗布厚み
δ ノズル先端から塗布面までの距離


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから吐出される粘稠物を被塗布体に環状に塗布するに際し、
外径が前記粘稠物の塗布幅より細く、長さが前記粘稠物の塗布厚みより長いノズルを、前記被塗布体から前記粘稠物の塗布厚み乃至塗布厚みの1.4倍の距離離し、前記粘稠物の吐出開始位置から前記被塗布体と前記ノズルとを相対的に1周以上周回させて前記粘稠物をオーバーラップさせるとともに、オーバーラップ部分を当該ノズルで均すように塗布することを特徴とする粘稠物の環状塗布方法。
【請求項2】
前記被塗布体に前記粘稠物をオーバーラップさせて塗布した後、塗布停止状態で前記被塗布体と前記ノズルとを相対的に周回させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の粘稠物の環状塗布方法。
【請求項3】
前記被塗布体を円筒状またはボトル状の缶体とし、当該缶体を回転させて前記粘稠物であるホットメルトを外周側壁にオーバーラップさせて塗布するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の粘稠物の環状塗布方法。
【請求項4】
被塗布体が取り付けられ1周以上周回駆動可能な支持周回手段と、
この支持周回手段に取り付けられた前記被塗布体の被塗布部と対向して設置され、粘稠物を吐出して塗布し得るノズル手段とを備え、
前記ノズル手段を、外径が前記粘稠物の塗布幅より細く、長さが前記粘稠物の塗布厚みより長く、前記被塗布体から前記粘稠物の塗布厚み乃至塗布厚みの1.4倍の距離離して配置したノズルで構成したことを特徴とする粘稠物の環状塗布装置。
【請求項5】
前記支持周回手段で前記被塗布体を2周以上周回駆動可能に構成するとともに、前記ノズル手段で前記粘稠物をオーバーラップさせて塗布した後、塗布停止状態で前記被塗布体を周回可能に構成したことを特徴とする請求項4記載の粘稠物の環状塗布装置。
【請求項6】
前記被塗布体が、円筒状またはボトル状の缶体であり、前記ノズルで当該缶体の外周側壁に前記粘稠物であるホットメルトを塗布可能に構成したことを特徴とする請求項4または5記載の粘稠物の環状塗布装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−196190(P2007−196190A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20632(P2006−20632)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】