説明

精密部品用洗浄剤組成物

【課題】電子部品などのアルミ使用部材やガラス使用部材等を切削・研磨した後に残る切削片、研磨材や研磨片などのパーティクル除去性に優れた水系洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)ヒドロキシカルボン酸およびこれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種0.1〜25重量%、(b)配位子数が10個以下である有機ホスホン酸およびこれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種0.1〜25重量%、及び(c)配位子数が11個以上である有機ホスホン酸およびこれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種0.1〜25重量%を含有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として精密部品の洗浄に用いられる洗浄剤組成物に関し、詳しくは電子部品に用いられるアルミやステンレスなどの金属部品やガラス基板などの切削加工や研磨加工をした直後の部品表面に付着した加工油や研削片である微粒子を、安全且つ効率的に除去することができる洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
精密部品の製造工程等において洗浄によって除去すべき汚染物は、加工油やそれぞれの加工時に発生した素材由来の金属やガラス等の微粉末や、ほこり、イオン性諸物質、指紋などがある。
【0003】
これらの洗浄には、ハロゲン化炭化水素、石油系炭化水素およびアルコールなどの有機溶剤、またはアルカリ剤や界面活性剤を含む水系洗浄剤水溶液が使用されている。
【0004】
しかし、有機溶剤には共通して環境問題とイオン性諸物質を効果的に除去できないという問題があり、石油系炭化水素やアルコールは引火し易いという危険性を有する。
【0005】
一方、アルカリ剤や界面活性剤を含む水系洗浄液は、実質上すべての汚染物質を除去する能力を持ち、大気汚染の危険がなく、かつ取り扱い上安全であるが、洗浄力を十分に発揮し、維持させるためには、複数の成分を適切に組み合わせる必要がある。
【0006】
そのため、例えば特許文献1〜3のように、水、アルカリ及び/又はアルカリビルダー、非イオン界面活性剤、キレート剤、必要に応じてアニオン界面活性剤等を含む洗浄剤組成物や、精密部品用洗浄剤、それを用いた洗浄方法等が従来から提案されている。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1で提案されている組成物はケイ酸塩を配合した洗浄剤であり、すすぎ不良を生じた場合、素材にケイ酸塩が固着してしまい、除去できなくなるという問題を有する。また、上記特許文献2で提案されている洗浄剤組成物は、カルボン酸やホスホン酸などの配位子を含有していないことからキレート性能が低く、パーティクル除去性に劣っている。さらに、上記特許文献3で提案されている洗浄剤組成物は、アルカリ金属水和物を含有しているためにpH10以上のアルカリ性を示すことから、アルミ素材に対して腐蝕を生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−331473号公報
【特許文献2】特開2004−2778号公報
【特許文献3】特開2010−109329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、安全性や取扱い性に優れた水系洗浄剤組成物であって、電子部品などのアルミ使用部材やガラス使用部材等を切削・研磨した後に残る切削片、研磨材や研磨片などのパーティクル除去性に優れた洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、キレート性能に優れるヒドロキシカルボン酸、有機ホスホン酸等を所定の割合で用いることで、硬質表面に付着した研磨材粒子を効果的に除去でき、かつ安定分散させることで再付着を防止することが可能になることを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
すなわち、本発明の洗浄剤組成物は、上記の課題を解決するために、(a)ヒドロキシカルボン酸およびこれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種0.1〜25重量%、(b)配位子数が10個以下である有機ホスホン酸およびこれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種0.1〜25重量%、及び(c)配位子数が11個以上である有機ホスホン酸およびこれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種0.1〜25重量%を含有するものとする。
【0012】
上記洗浄剤組成物には、(d)次の一般式(1)で示される非イオン界面活性剤0.01〜25重量%をさらに含有させることができる。
【0013】
R−O−(PO)m−(EO)n−H (1)
但し、式(1)中、Rは炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基または芳香族炭化水素基を示し、POはプロピレンオサイド、EOはエチレンオキサイドを示す。m、nは平均付加モル数であり、mは0≦m≦20の範囲の数であり、nは0≦n≦20の範囲の数であり、m+n≧2である。−(PO)m−(EO)nは、ブロックまたはランダムのいずれでもよく、POとEOのいずれが先でもよい。
【0014】
本発明の洗浄剤組成物は、(e)水溶性高沸点溶剤0.1〜30重量%をさらに含有するものとすることもできる。
【0015】
本発明の洗浄剤組成物は、上記(a)〜(e)成分の合計量が0.3〜75重量%であり、残部が水であるものとして、電子部品等の精密部品を切削又は研磨した後に、この精密部品の表面に残る切削油、切削片、研磨材、又は研磨片等の微粒子を除去するために使用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の洗浄剤組成物は、電子部品などのアルミ使用部材やステンレス使用部材、ガラス使用部材等の切削・研磨後に残る切削片、研磨材や研磨片などのパーティクルを除去する洗浄性及び洗浄剤除去性(すすぎ性)が極めて優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明で用いられる(a)ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、ヘプトン酸等が挙げられる。
【0018】
また、上記(c)ヒドロキシカルボン酸の塩の種類としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの金属イオンの塩、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミンなどのオニウムイオンの塩、および酸型(水素原子など)が挙げられる。好ましくは、ナトリウム、カリウム、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンの塩である。
【0019】
これらのヒドロキシカルボン酸およびこれらの塩は、1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
次に、本発明で用いられる(b)配位子数が10個以下である有機ホスホン酸としては、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸(NTMP)、3−カルボキシ−3−ホスホノヘキサン二酸(PBTC)等が挙げられる。なお、(b)配位子数が10個以下である有機ホスホン酸は、後述する(c)配位子数が11個以上である有機ホスホン酸と比較すると安価で、水への溶解性が高いという利点を有する。
【0021】
また、(b)有機ホスホン酸の塩の種類としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの金属イオンの塩、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミンなどのオニウムイオンの塩、および酸型(水素原子など)が挙げられる。好ましくは、ナトリウム、カリウム、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンの塩である。
【0022】
これらの(b)有機ホスホン酸およびこれらの塩は、1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
また、本発明に用いられる(c)配位子数が11個以上である有機ホスホン酸としては、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸およびこれらの塩等が挙げられる。
【0024】
また、上記(c)有機ホスホン酸塩の種類としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの金属イオンの塩、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミンなどのオニウムイオンの塩、および酸型(水素原子など)が挙げられる。好ましくは、ナトリウム、カリウム、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンの塩である。
【0025】
これらの(c)配位子数が11個以上である有機ホスホン酸およびこれらの塩は、1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
さらに、本発明で用いることができる(d)非イオン界面活性剤は、炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基または芳香族炭化水素基にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したものである。
【0027】
一般式(1)で示されるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、ヘキサコシル、ヘプタコシル、オクタコシル、ノナコシル、及びトリアコンチルなどが挙げられる。
【0028】
アルケニル基としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデニセニル、ノナデセニル、エイコセニル、ヘンエイコセニル、ドコセニル、トリコセニル、テトラコセニル、ペンタコセニル、ヘキサコセニル、ヘプタコセニル、オクタコセニル及びノナコセニルおよび、トリアコンテニルなどが挙げられる。
【0029】
芳香族炭化水素基としては、フェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、エチルフェノル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル、トリデシルフェニル、テトラデシルフェニル、ペンタデシルフェニル、ヘキサデシルフェニル、ヘプタデシルフェニル、オクタデシルフェニル、ノナデシルフェニル、エイコシルフェニル、ヘンエイコシルフェニル、ドコシルフェニル、トリコシルフェニル、テトラコシルフェニル、モノスチレン化フェニル、ジスチレン化フェニル、トリスチレン化フェニル、ナフチル、メチルナフチル、エチルナフチル、プロピルナフチル、ブチルナフチル、ペンチルナフチル、ヘキシルナフチル、ヘプチルナフチル、オクチルナフチル、ノニルナフチル、デシルナフチル、ウンデシルナフチル、ドデシルナフチル、トリデシルナフチル、テトラデシルナフチル、ペンタデシルナフチル、ヘキサデシルナフチル、ヘプタデシルナフチル、オクタデシルナフチル、ノナデシルナフチル、エイコシルナフチル、アントラセニル、フェナントラセニル、テトラセニル、クリセニル、ペンタセニル、ヘキサセニル、および、へプタセニルなどが挙げられる。
【0030】
本発明では、特にエチレンオキサイドの平均付加モル数nが0≦n≦20の範囲のものが使用される。好ましくは、2≦n≦15の範囲である。nが20を超えると親水性が増し、油性汚染物への洗浄性が低下する。また、プロピレンオキサイドの平均付加モル数mは0≦m≦20の範囲にあるものが使用され、好ましくは、0≦m≦5の範囲である。mが20を超えると疎水性が増し、洗浄剤のすすぎ性が低下する。
【0031】
これらの(d)非イオン界面活性剤は、1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
さらに、本発明で用いることができる(e)水溶性高沸点溶剤としては、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、ピロリドン系溶剤等が挙げられる。水溶性アルコール系溶剤としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。水溶性グリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。水溶性ピロリドン系溶剤としてはN−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0033】
これらの水溶性高沸点溶剤は、1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
本発明の洗浄剤組成物における上記各構成成分の配合割合は、(a)ヒドロキシカルボン酸およびこれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の含有量は0.1〜25重量%が好ましく、更に好ましくは0.5〜10重量%である。0.1重量%未満ではパーティクルの除去性が発揮されにくく、25重量%を超えると所定量の水に完全に溶解しにくくなるため安定な洗浄剤組成物が得られにくくなる。
【0035】
上記(b)配位子数が10個以下である有機ホスホン酸およびこれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の含有量は0.1〜25重量%が好ましく、更に好ましくは0.5〜10重量%である。0.1重量%未満ではパーティクルの除去性が発揮されにくく、25重量%を超えると所定量の水に完全に溶解しにくくなるため安定な洗浄剤組成物が得られにくくなる。
【0036】
上記(c)配位子数が11個以上である有機ホスホン酸およびこれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の含有量は0.1〜25重量%が好ましく、更に好ましくは0.5〜10重量%である。0.1重量%未満ではパーティクルの除去性が発揮されにくく、25重量%を超えると所定量の水に完全に溶解しにくくなるため安定な洗浄剤組成物が得られにくくなる。
【0037】
本発明の洗浄剤組成物は、上記(d)非イオン界面活性剤を配合することにより、微細部分への浸透力が向上し、優れた洗浄力が発揮される。更に非イオン界面活性剤の油性汚染への乳化力により切削油を除去する力が向上する。
【0038】
切削油の除去を考慮した場合、(d)非イオン界面活性剤は0.01〜25重量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜10重量%である。0.01重量%未満では油性切削油の乳化力が発揮されず、25重量%を超えると洗浄剤除去性(すすぎ性)に劣る傾向がある。
【0039】
本発明の洗浄剤組成物は、(e)水溶性高沸点溶剤を配合することにより、微細部分への浸透力が向上し、優れた洗浄力が発揮される。更に水溶性高沸点溶剤の油性汚染への浸透力により、切削油の洗浄力が向上する。
【0040】
切削油の除去を考慮した場合、(e)水溶性高沸点溶剤の配合量は、0.1〜30重量%が好ましく、より好ましくは1〜20重量%とする。但し、(a)〜(e)の合計量が100重量%以下になるものとする。配合量が0.1重量%未満では油性切削油の可溶化が発揮されず、30重量%を超えると均一な水溶液の作製が困難となり、安定な洗浄剤組成物が得られない。
【0041】
本発明の洗浄剤組成物は、上記(a)〜(c)成分、又はこれらに加えて(d)成分及び/又は(e)成分及び必要に応じて水を混合することにより得られる。通常は、これら(a)〜(e)成分(但し、(d)及び(e)成分のうちに含有しない成分がある場合はそれを除いた成分)の合計量が0.3〜75重量%であり、残部が水であるのが好ましい。
【0042】
また、本発明の洗浄剤組成物には、本発明の目的から外れない範囲内で、公知の消泡剤、防腐剤、防錆剤、酸化防止剤、pH調整剤等を添加して使用してもよい。
【0043】
消泡剤としては、シリコーン系、高級アルコール系、ポリグリコール系、鉱物油系等、種々の公知のものを使用することができる。
【0044】
本発明の目的から外れない範囲内であれば、公知の陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤を併用することもできる。
【0045】
本発明の洗浄剤組成物の洗浄対象は限定されるものではないが、アルミやステンレス等の金属やガラス等の無機材料を使用した電子部品関連材料の洗浄に特に好適であり、具体例としては、ハードディスクドライブに用いられるアルミやステンレスやガラス部品等が挙げられる。
【0046】
また、本発明の洗浄剤組成物が除去対象とする汚染物質は、切削・研磨した後に残る切削油、アルミやステンレスやガラスなどの切削片、研磨材であり、使用する研磨砥粒に制限はなく、アルミナ、シリカ、酸化セリウム、炭化ケイ素、酸化ジルコニウム、シリコン、ダイヤモンドなどが挙げられる。
【0047】
本発明の洗浄剤組成物は、原液のまま、または水で200倍以下(但し、体積基準とする。以下同様。)に希釈して使用する。200倍を超えると洗浄性が劣るようになる。洗浄性と濯ぎ性のバランス等から、通常は5〜100倍に希釈するのか好ましい。洗浄の後は、通常は水で濯ぐのが好ましい。
【0048】
具体的な洗浄方法としては、浸漬洗浄、超音波洗浄、ブラシ洗浄、スクラブ洗浄、噴流洗浄、スプレー洗浄、手拭き洗浄等各種の洗浄方法を特に限定なく、単独で又は組み合わせて用いることが可能であり、その洗浄方法に合わせて、前述したように200倍以下の範囲で適切な濃度に希釈することが好ましい。
【実施例】
【0049】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0050】
下記表1及び表2に示した割合(重量%)で各洗浄剤成分(a)〜(e)及び水を混合して洗浄剤組成物(実施例1〜24、比較例1〜9)を調製した。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
上記により得られた洗浄剤組成物につき、以下の1〜4の各評価を行った。結果を表3に示す。
【0054】
1.パーティクル分散性1(研磨材混入洗浄液の分散性)
各実施例及び比較例の各洗浄剤組成物の水50倍希釈品を調製し、その溶液100gに対してアルミナ粉末(日本軽金属(株)製、平均粒子径0.67μm)0.1gを配合し、100mlの有栓メスシリンダーに入れて撹拌後、25℃で24時間静置し、研磨砥粒の分散状態を確認した。
【0055】
24時間放置後、上層にできた透明な水層の体積をxmlとした場合に「100−x」で示される数値を「分散体積(体積%)」とした。透明な水層の体積が0mlで分散体積が100%の場合、良好な分散状態が得られ、パーティクルの再付着防止が可能であることを示している。透明な水層の体積が30ml以上で分散体積が70%以下の場合、砥粒の沈降が一部発生しており、パーティクルの凝集により、洗浄性に問題があることを示している。
【0056】
2.パーティクル分散性2(研磨材混入洗浄液のゼータ電位)
各実施例及び比較例の各洗浄剤組成物の水50倍希釈品を調製し、その溶液100gに対してアルミナ紛末(日本軽金属(株)製、平均粒子径0.67μm)0.1gを配合し、撹拌後、ゼータ電位測定システム(大塚電子(株)製、ELSZ−1)でゼータ電位を測定した。
【0057】
ゼータ電位が、同符号で約20mV以上の場合、粒子間のポテンシャルが15kT(k:ポルツマン定数,T:絶対温度)以上となり、粒子は相互に分散しやすくなる。更に、同符号で約40mVを超えると、粒子間の静電反発は増大し、安定な分散状態になり、洗浄時にパーティクルの再付着が発生しない。一方、ゼータ電位が、同符号で約20mV以下の場合、粒子が相互に凝集しやすくなり、洗浄性に影響を与える。すなわち、ゼータ電位の絶対値が大きい方が分散性に優れ、洗浄性に良好に働く。
【0058】
3.パーティクル分散性2(研磨材混入洗浄液のゼータ電位)
各実施例及び比較例の各洗浄剤組成物の水50倍希釈品を調製し、その溶液100gに対して酸化セリウム粉末(ACGセイミケミカル(株)社製、平均粒子径1μm)0.1gを配合し、撹拌後、ゼータ電位測定システム(大塚電子(株)製、ELSZ−1)でゼータ電位を測定した。
【0059】
4.洗浄試験
ネジ穴の切削加工直後のアルミ製2.5インチ用ハードディスクシャーシ部品をテストピースとした。
【0060】
各実施例及び比較例の各洗浄剤組成物の水50倍希釈品を調製し、40℃に調温して上記テストピースを浸漬し、40KHz、300Wにて3分間超音波洗浄を実施した。その後、イオン交換水を用い、25℃で3分間浸漬し、超音波洗浄した。上記処理後、ハードディスクシャーシ部品のパーティクル残渣量及び有機汚染物の残渣量を判定し、洗浄性を比較した。
【0061】
パーティクル量は洗浄部品1枚を100mlの超純水で抽出し、パーティクルカウンター(リオン(株)製、液中パーティクルカウンターKL−30A)にて0.2μm以上のパーティクル個数を確認した。パーティクル残存個数が少ないほど高い洗浄性を示す。
【0062】
また、洗浄部品1枚を100mlの超純水で抽出し、有機汚染物の残渣量を全有機炭素計(島津製作所(株)製、TOC−V)にて確認した。TOC濃度が低いほど切削油や洗浄剤の残渣量が少なく、洗浄性やすすぎ性が高いことを示す。
【0063】
【表3】

【0064】
表3に示された結果から分かるように、実施例の洗浄剤組成物は比較例のものと比較して、パーティクル分散性が顕著に優れ、従って洗浄性も優れ、かつすすぎが極めて容易であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヒドロキシカルボン酸およびこれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種 0.1〜25重量%、
(b)配位子数が10個以下である有機ホスホン酸およびこれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種 0.1〜25重量%、及び
(c)配位子数が11個以上である有機ホスホン酸およびこれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種 0.1〜25重量%
を含有することを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項2】
(d)次の一般式(1)で示される非イオン界面活性剤 0.01〜25重量%をさらに含有することを特徴とする、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
R−O−(PO)m−(EO)n−H (1)
但し、式(1)中、Rは炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基または芳香族炭化水素基を示し、POはプロピレンオサイド、EOはエチレンオキサイドを示す。m、nは平均付加モル数であり、mは0≦m≦20の範囲の数であり、nは0≦n≦20の範囲の数であり、m+n≧2である。−(PO)m−(EO)nは、ブロックまたはランダムのいずれでもよく、POとEOのいずれが先でもよい。
【請求項3】
(e)水溶性高沸点溶剤0.1〜30重量%をさらに含有する(但し、合計量が100重量%になるものとする)ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記(a)〜(e)成分の合計量が0.3〜75重量%であり、残部が水であり、
電子部品等の精密部品を切削又は研磨した後に、この精密部品の表面に残る切削油、切削片、研磨材、又は研磨片等の微粒子を除去するために使用される
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2012−201741(P2012−201741A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65960(P2011−65960)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】