説明

糖尿病の治療又は予防のためのジペプチジルペプチダーゼIV−阻害剤としてのヘキサヒドロジアゼピノン

本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素の阻害剤(「DPP−IV阻害剤」)であり、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する、糖尿病及び特に2型糖尿病などの疾病の治療又は予防に有用であるヘキサヒドロジアゼピノン化合物に関する。本発明は、これらの化合物を含む医薬組成物、並びにジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与するこのような疾病の予防又は治療におけるこれらの化合物及び組成物の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素の阻害剤(「DPP−IV阻害剤」)であり、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する、糖尿病及び特に2型糖尿病などの疾病の治療又は予防に有用である新規ヘキサヒドロジアゼピノン化合物に関する。本発明は、これらの化合物を含む医薬組成物、並びにジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与するこのような疾病の予防又は治療におけるこれらの化合物及び組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病とは、複数の原因因子に由来し、絶食状態又は経口グルコース負荷試験時のグルコースの投与後における血漿グルコースレベルの上昇又は高血糖を特徴とする疾病過程を指す。高血糖が持続する場合、又は制御されない場合、罹病率及び死亡率が上昇し、発病及び死亡時期が早まる。グルコースホメオスタシスの異常は、直接的及び間接的に、脂質、リポタンパク質及びアポリポタンパク質の代謝の変化並びに他の代謝性及び血行動態性疾患を伴うことが多い。従って、2型糖尿病患者は、冠状動脈性心疾患、発作、末梢血管疾患、高血圧、腎症、神経障害及び網膜症を含む、大血管及び微小血管の合併症を発症するリスクが著しく高くなる。従って、糖尿病の臨床管理及び治療では、グルコースのホメオスタシス、脂質代謝及び高血圧を治療によって管理することが非常に重要である。
【0003】
糖尿病には、一般に認知されている2つの形態が存在する。1型糖尿病又はインスリン依存性糖尿病(IDDM)の場合、患者は、グルコースの利用を制御するホルモンであるインスリンをほとんど、又は全く産生しない。2型糖尿病又はインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)の場合、非糖尿病の個体と比較して、患者の血漿インスリンレベルは同レベルであることが多く、上昇している場合さえあるが、これらの患者においては、主要なインスリン感受性組織である筋肉、肝臓及び脂肪組織中でのグルコース及び脂質代謝へのインスリンの刺激効果に対する耐性が生じており、血漿インスリンレベルが上昇しているにもかかわらず、顕著なインスリン抵抗性を克服するには十分でない。
【0004】
インスリン抵抗性は、インスリン受容体数の減少が主たる原因ではなく、未だ解明されていないインスリン受容体結合後の欠陥が原因である。インスリン応答性に対するこのような抵抗性があるために、筋肉中へのグルコースの取り込み、酸化及び貯蔵がインスリンにより十分に活性化されず、脂肪組織中でのインスリンによる脂肪分解の抑制及び肝臓中でのインスリンによるグルコース産生及び分泌の抑制が不十分となる。
【0005】
2型糖尿病に対して実施できる治療は、長年にわたって実質的に変化しておらず、限界が認められている。身体的な運動及び食事におけるカロリー摂取を抑えることにより、糖尿病の症状が劇的に改善するものと思われるが、デスクワーク中心のライフスタイルと過度の食物消費(特に、飽和脂肪を大量に含有する食物の消費)が確立されているために、この治療はほとんど遵守されない。スルホニル尿素(例えば、トルブタミド及びグリピジド)もしくはメグリチニド(膵臓のβ細胞を刺激して、より多くのインスリンをβ細胞に分泌させる。)を投与することによって、及び/又はスルホニル尿素もしくはメグリチニドが有効でなくなった場合にはインスリンを注射することによって、インスリンの血漿レベルを増加させると、インスリン抵抗性が極めて強い組織を刺激するのに十分な濃度までインスリン濃度を高くすることができる。しかしながら、インスリン又はインスリン分泌促進物質(スルホニル尿素又はメグリチニド)の投与によって、血漿グルコースレベルが危険なまでに低下する場合があり、血漿インスリンレベルがさらに高まる可能性があるため、インスリン抵抗性のレベルが上昇し得る。ビグアナイドは、インスリン感受性を向上させ、それにより高血糖をある程度是正する。しかしながら、2種類のビグアナイド、フェンホルミン及びメトホルミンは、乳酸アシドーシス及び悪心/下痢を引き起こし得る。メトホルミンは、フェンホルミンに比べて副作用が少なく、2型糖尿病の治療のために処方されることが多い。
【0006】
グリタゾン(すなわち、5−ベンジルチアゾリジン−2,4−ジオン)は、さらに最近になって報告された化合物のクラスであり、2型糖尿病の数多くの症候を軽減する可能性を秘めている。これらの薬剤は、いくつかの2型糖尿病の動物モデルにおいて、筋肉、肝臓及び脂肪組織中のインスリン感受性を大きく向上させ、その結果、低血糖を生じさせずに、血漿グルコースレベルの上昇をある程度、又は完全に是正する。現在市販されているグリタゾンは、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)、主にPPAR−γサブタイプのアゴニストである。一般に、グリタゾンを用いた場合に見られるインスリン感受性の向上は、PPAR−γのアゴニズムによるものと考えられている。II型糖尿病の治療に向けて試験されている、さらに新しいPPARアゴニストは、α、γもしくはδサブタイプ又はこれらの組み合わせのアゴニストであり、多くの場合、グリタゾンとは化学的に異なっている(すなわち、それらは、チアゾリジンジオンではない。)。トログリタゾンなど、グリタゾンの一部には、深刻な副作用(例えば、肝臓毒性)が生じるものがある。
【0007】
本疾病を治療するさらなる方法が、今なお研究途上にある。最近導入された、又は現在開発中である新しい生化学的アプローチには、α−グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース)及びタンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤を用いた治療がある。
【0008】
ジペプチジルペプチダーゼ−IV(「DPP−IV」又は「DP−IV」)酵素の阻害剤である化合物も、糖尿病及び特に2型糖尿病の治療において有用であり得る薬物として研究中である。例えば、WO 97/40832号、WO 98/19998号、米国特許第5,939,560号、Bioorg. Med. Chem. Lett., 6:1163−1166(1996);及びBioorg. Med. Chem. Lett., 6:2745−2748(1996)を参照されたい。2型糖尿病の治療におけるDPP−IV阻害剤の有用性は、DPP−IVがインビボで即座にグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1、glucagon like peptide−1)及び胃抑制ペプチド(GIP、gastric inhibitory peptide)を不活化するという事実に基づいている。GLP−1及びGIPはインクレチンであり、食物を摂取する際に産生される。インクレチンは、インスリンの産生を刺激する。DPP−IVの阻害により、インクレチンの不活化が抑制され、次いで、その結果、膵臓によるインスリンの産生を刺激する上でのインクレチンの有効性が向上する。従って、DPP−IVの阻害により、血清インスリンのレベルが向上する。インクレチンは、食物を摂取した時のみ身体によって産生されるので、DPP−IVの阻害により、有利に、食間などの不適切な時間にインスリンレベルが向上する(これは、極度に低い血糖(低血糖)をもたらし得る。)ことはないと予想される。従って、DPP−IVの阻害は、インスリン分泌促進物質の使用に伴う危険な副作用である低血糖のリスクを増加させずにインスリンを増加させるものと思われる。
【0009】
DPP−IV阻害剤は、本明細書に述べられているように、他の治療用途も有している。DPP−IV阻害剤は、現在まで、とりわけ糖尿病以外の用途については深く研究されていない。糖尿病の治療のために使用され、その他の疾病及び症状にも使用できる可能性がある改善されたDPP−IV阻害剤を発見できるような、新しい化合物が必要とされている。2型糖尿病の治療に対するDPP−IV阻害剤の治療剤としての可能性に関して、D.J.Drucker(Exp. Opin.Invest.Drugs,12,87−100(2003))及びK.Augustynsら(Exp.Opin.Ther.Patents,13:499−510(2003))により考察が行われている。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素の阻害剤(「DPP−IV阻害剤」)であり、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与する、糖尿病及び特に2型糖尿病などの疾病の治療又は予防に有用である新規ヘキサヒドロジアゼピノン化合物に関する。本発明は、これらの化合物を含む医薬組成物、並びにジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素が関与するこのような疾病の予防又は治療におけるこれらの化合物及び組成物の使用にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、ジペプチジルペプチダーゼIVの阻害剤として有用なヘキサヒドロジアゼピノン化合物に関する。本発明の化合物は、構造式I:
【0012】
【化5】

で表されるか、又はそれらの医薬適合性の塩である;
(式中、
各nは、独立に、0、1又は2であり;
Arは、1個から5個のR置換基で置換されているフェニルであり;
は、
水素、
1−10アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル及びフェニル−C1−3アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)、
(CH−アリール(アリールは、置換されていないか、又はハロゲン、CN、ヒドロキシ、R、OR、NHSO、NRSO、SO、COH及びC1−6アルキルオキシカルボニルから独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロアリール(ヘテロアリールは、置換されていないか、又はヒドロキシ、ハロゲン、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロシクリル(ヘテロシクリルは、置換されていないか、又はオキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され;(CHのいずれのメチレン(CH)炭素原子も、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキル(置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から2個の基で置換されており;
各Rは、
水素、
ハロゲン、
シアノ、
ヒドロキシ、
1−6アルキル(置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)、
1−6アルコキシ(置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)、
カルボキシ、
アルコキシカルボニル、
アミノ、
NHR
NR
NHSO
NRSO
NHCOR
NRCOR
NHCO
NRCO
SO
SOHN
SONHR及び
SONRからなる群から独立に選択され;
各Rは、独立にC1−6アルキル(置換されていないか、又はハロゲン、COH及びC1−6アルキルオキシカルボニルから独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)であり;
、R及びR10は、
水素、
シアノ、
カルボキシ、
1−6アルキルオキシカルボニル、
1−10アルキル(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル及びフェニル−C1−3アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)、
(CH−アリール(アリールは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロアリール(ヘテロアリールは、置換されていないか、又はヒドロキシ、ハロゲン、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロシクリル(ヘテロシクリルは、置換されていないか、又はオキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)、
(CHCONR1213(R12及びR13は、水素、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)からなる群から独立に選択されるか;又はR12及びR13は、それらが結合している窒素原子と一緒に、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成し、ここで、該複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)
からなる群からそれぞれ独立に選択され;
(CHのいずれのメチレン(CH)炭素原子も、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキル(置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から2個の基で置換されており、
は、ハロゲン、ヒドロキシ及びRからなる群から選択され;
、R及びR11は、それぞれ独立に、水素又はC1−6アルキルであるか;又は、R及びRは、Rが結合している窒素原子と一緒に、アゼチジン、ピロリジン及びピペリジンから選択される複素環を形成し、該複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されており;
、R、R及びRのうち少なくとも1つが水素ではないという条件のもと、Rは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン又はC1−6アルキルからなる群から選択される。)。
【0013】
本発明の化合物のある実施形態において、の印が付された炭素原子は、式Ia:
【0014】
【化6】

(式中、
Ar、R、R、R、R、R、R、R、R10及びR11は、本明細書中で定義されるとおりである。)で示されるとおりのR立体配置をとる。
【0015】
本発明化合物の第2の実施形態において、Rは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル及びメチルからなる群から選択される。この実施形態のクラスにおいて、Rは、水素、フルオロ及びクロロからなる群から選択される。このクラスのサブクラスにおいて、Rは、水素又はフルオロである。
【0016】
本発明の化合物の第3の実施形態において、Rは、
水素、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル及びフェニル−C1−3アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)及び
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)からなる群から選択され;(CHのいずれのメチレン(CH)炭素原子も、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキル(置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から2個の基で置換されている。
【0017】
本発明の化合物のこの実施形態のクラスにおいて、Rは、
水素、
メチル及び
シクロプロピル
からなる群から選択される。
【0018】
このクラスのサブクラスにおいて、Rは、水素である。
【0019】
本発明の化合物の第4の実施形態において、Rは、
水素、
1−6アルキル(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル及びフェニル−C1−3アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)、
(CH−アリール(アリールは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロアリール(ヘテロアリールは、置換されていないか、又はヒドロキシ、ハロゲン、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され;(CHのいずれのメチレン(CH)炭素原子も、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキル(置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から2個の基で置換されている。
【0020】
この実施形態のクラスにおいて、Rは、
水素、
CH
CHCH
CHCF
CH(2−ピリジル)、
CHPh、
CH(2−F−Ph)、
CH(2−Me−Ph)及び
CH(2−CF−Ph)からなる群から選択される。
【0021】
本発明の化合物の第5の実施形態において、Rは、
水素、
1−6アルキル(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル及びフェニル−C1−3アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)、
(CH−アリール(アリールは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロアリール(ヘテロアリールは、置換されていないか、又はヒドロキシ、ハロゲン、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され;(CHのいずれのメチレン(CH)炭素原子も、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキル(置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から2個の基で置換されている。
【0022】
この実施形態のクラスにおいて、Rは、
水素、
1−6アルキル(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル及びフェニル−C1−3アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)及び
(CH−アリール(アリールは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され;(CHのメチレン(CH)炭素原子は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキル(置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から2個の基で置換されている。
【0023】
このクラスのサブクラスにおいて、Rは、
水素、
CH
CHCH
CF
CHPh及び
CH(2−F−Ph)からなる群から選択される。
【0024】
本発明の化合物の第6の実施形態において、Rは、
水素、
ヒドロキシ、
ハロゲン及び
1−6アルキル(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル及びフェニル−C1−3アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択される。
【0025】
この実施形態のクラスにおいて、Rは、水素である。
【0026】
本発明の化合物の第7の実施形態において、R10は、
水素及び
1−6アルキル(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル及びフェニル−C1−3アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択される。
【0027】
この実施形態のクラスにおいて、R10は、水素である。
【0028】
本発明の化合物の第8の実施形態において、R、R及びR11は、水素及びメチルからそれぞれ独立に選択される。
【0029】
この実施形態のクラスにおいて、R、R及びR11は、水素である。
【0030】
本発明の化合物の第9の実施形態において、Rは、水素、ハロゲン及びメチルから選択される。
【0031】
この実施形態のクラスにおいて、Rは、水素である。
【0032】
この実施形態のさらなるクラスにおいて、Rは、メチルであり、R、R、R、R10及びR11は、水素である。このクラスのサブクラスにおいて、Rは、
水素、
CH
CHCH
CHCF
CH(2−ピリジル)、
CHPh、
CH(2−F−Ph)、
CH(2−Me−Ph)及び
CH(2−CF−Ph)
からなる群から選択される。
【0033】
本発明の化合物の第10の実施形態において、Rが水素でないという条件のもと、R、R、R、R、R10及びR11は、水素である。この実施形態のクラスにおいて、Rは、
水素、
CH
CHCH
CHCF
CH(2−ピリジル)、
CHPh、
CH(2−F−Ph)、
CH(2−Me−Ph)及び
CH(2−CF−Ph)
からなる群から選択され;
は、
CH
CHCH
CF
CHPh及び
CH(2−F−Ph)
からなる群から選択される。
【0034】
このクラスのサブクラスにおいて、Rは、水素である。
【0035】
このサブクラスのサブクラスにおいて、**及び***で印を付したステレオジェニック(stereogenic)な炭素原子は、式Ib:
【0036】
【化7】

で示されるとおりの立体配置をとる。
【0037】
本発明の化合物の第11の実施形態において、R及びRは、Rが結合している窒素原子と一緒に、アゼチジン、ピロリジン及びピペリジンから選択される複素環を形成し、該複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。
【0038】
この実施形態のクラスにおいて、R及びRは、Rが結合している窒素原子と一緒に、ピロリジン環を形成する。このクラスのサブクラスにおいて、Rは、
水素、
CH
CHCH
CHCF
CH(2−ピリジル)、
CHPh、
CH(2−F−Ph)、
CH(2−Me−Ph)及び
CH(2−CF−Ph)からなる群から選択される。
【0039】
ジペプチジルペプチダーゼ−IVの阻害剤である本発明の化合物の、実例であるが非限定的な例は、次のもの:
【0040】
【化8】


又はその医薬適合性の塩である。
【0041】
本明細書で使用される場合、以下の定義が使用される。
【0042】
「アルキル」、並びにアルコキシ及びアルカノイルなどの接頭語「アルク(alk)」を有する他の基は、炭素鎖に別段の定義が与えられていなければ、線状又は分枝及びそれらの組み合わせであり得る炭素鎖を意味する。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル及びtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルなどである。炭素原子の指定された数が、例えば、C3−10を許容する場合、アルキルという用語には、シクロアルキル基及びシクロアルキル構造と組み合わされた線状又は分枝アルキル鎖の組み合わせも含まれる。炭素原子の数が指定されていない場合には、C1−6を意味するものとする。
【0043】
「シクロアルキル」は、アルキルのサブセットであり、指定された数の炭素原子を有する飽和炭素環式環を意味する。シクロアルキルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどである。特段の記載がなければ、シクロアルキル基は、一般的には、単環式である。特段の記載がなければ、シクロアルキル基は飽和している。
【0044】
「アルコキシ」という用語は、指定された炭素原子数の直鎖もしくは分枝鎖アルコキシド(例えば、C1−10アルコキシ)又はこの範囲に属する任意の数の直鎖もしくは分枝鎖アルコキシド(すなわち、メトキシ(MeO−)、エトキシ、イソプロポキシなど)を表す。
【0045】
「アルキルチオ」という用語は、指定された炭素原子数の直鎖もしくは分枝鎖アルキルスルフィド(例えば、C1−10アルキルチオ)、又はこの範囲に属する任意の炭素原子数の直鎖もしくは分枝鎖アルキルスルフィド(すなわち、メチルチオ(MeS−)、エチルチオ、イソプロピルチオなど)を表す。
【0046】
「アルキルアミノ」という用語は、指定された炭素原子数の直鎖もしくは分枝鎖アルキルアミン(例えば、C1−6アルキルアミノ)又はこの範囲に属する任意の炭素原子数の直鎖もしくは分枝鎖アルキルアミン(すなわち、メチルアミノ、エチルアミノ、イソプロピルアミノ、t−ブチルアミノなど)を表す。
【0047】
「アルキルスルホニル」という用語は、指定された炭素原子数の直鎖もしくは分枝鎖アルキルスルホン(例えば、C1−6アルキルスルホニル)又はこの範囲に属する任意の炭素原子数の直鎖又は分枝鎖アルキルスルホン(すなわち、メチルスルホニル(MeSO−)、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニルなど)を表す。
【0048】
「アルキルオキシカルボニル」という用語は、指定された炭素原子数の本発明のカルボン酸誘導体の直鎖もしくは分枝鎖エステル(例えば、C1−6アルキルオキシカルボニル)又はこの範囲に属する任意の炭素原子数の本発明のカルボン酸誘導体の直鎖もしくは分枝鎖エステル(すなわち、メチルオキシカルボニル(MeOCO−)、エチルオキシカルボニル又はブチルオキシカルボニルなど)を表す。
【0049】
「アリール」は、炭素環原子を含有する単環又は多環式芳香族環系を意味する。好ましいアリールは、単環又は二環式の6員から10員環芳香族環系である。フェニル及びナフチルは、好ましいアリールである。最も好ましいアリールは、フェニルである。
【0050】
「複素環」及び「ヘテロシクリル」は、O、S及びNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、さらにイオウの酸化型(すなわち、SO及びSO)を含む、飽和又は不飽和非芳香族環又は環系を意味する。複素環の例には、テトラヒドロフラン(THF)、ジヒドロフラン、1,4−ジオキサン、モルホリン、1,4−ジチアン、ピペラジン、ピペリジン、1,3−ジオキソラン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピロリン、ピロリジン、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、オキサチオラン、ジチオラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジチアン、オキサチアン、チオモルホリンなどが含まれる。
【0051】
「ヘテロアリール」は、O、S及びNから選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含有する芳香族又は部分的芳香族複素環を意味する。ヘテロアリールには、アリール、シクロアルキル及び芳香族でない複素環などの他の種類の環に縮合したヘテロアリールも含まれる。ヘテロアリール基の例としては、ピロリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、2−オキソ−(1H)−ピリジニル(2−ヒドロキシ−ピリジニル)、オキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、トリアジニル、チエニル、ピリミジニル、ピラジニル、ベンズイソキサゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、インドリニル、ピリダジニル、インダゾリル、イソインドリル、ジヒドロベンゾチエニル、インドリジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、ベンゾジオキソリル、キノキサリニル、プリニル、フラザニル、イソベンジルフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、インドリル、イソキノリル、ジベンゾフラニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、[1,2,4−トリアゾロ][4,3−a]ピリジニル、ピラゾロ[1,5−a]ピリジニル、[1,2,4−トリアゾロ][1,5−a]ピリジニル、2−オキソ−1,3−ベンズオキサゾリル、4−オキソ−3H−キナゾリニル、3−オキソ−[1,2,4]−トリアゾロ[4,3−a]−2H−ピリジニル、5−オキソ−[1,2,4]−4H−オキサジアゾリル、2−オキソ−[1,3,4]−3H−オキサジアゾリル、2−オキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾリル、3−オキソ−2,4−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾリルなどがある。ヘテロシクリル基及びヘテロアリール基の場合、3個から15個の原子を含有する環及び環系が含まれ、1個から3個の環を形成する。
【0052】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を表す。塩素及びフッ素が、一般に好ましい。アルキル又はアルコキシ基に対してハロゲンが置換される場合には、フッ素が最も好ましい(例えば、CFO及びCFCHO)。
【0053】
本発明の化合物は、1又は複数の不斉中心を含有することができ、このため、ラセミ体及びラセミ混合物、単一の鏡像異性体、ジアステレオマー混合物並びに個別のジアステレオマーとして存在することができる。特に、本発明の化合物は、式Ia中の印が付された炭素原子及び式Ib中の**及び***印が付された炭素原子に1つの不斉中心を有する。分子上に存在する様々な置換基の性質に応じて、不斉中心がさらに存在することがあり得る。このような不斉中心のそれぞれが、独立に、2つの鏡像異性体を与え、混合物において、及び純粋な又は部分的に精製された化合物として、想定し得る全ての鏡像異性体及びジアステレオマーが本発明の範囲に含まれるものとする。本発明は、これらの化合物のかかる異性体形態を全て包含するものとする。
【0054】
本明細書に記載されている化合物の中には、オレフィン二重結合を含有するものがあり、別段の記載がなければ、E及びZ幾何異性体の両方を含むものとする。
【0055】
本明細書に記載されている化合物の中には、互変異性体として存在し得るものがあり、1又は複数の二重結合の移動に付随して水素の結合点に変化が生じる。例えば、ケトンとそのエノール型は、ケト−エノール互変異性体である。各互変異性体ならびにそれらの混合物が、本発明の化合物とともに包含される。
【0056】
式Iには、好ましい立体化学を表さずに、化合物のクラスの構造が示されている。式Iaは、これらの化合物の調製源であるβアミノ酸のアミノ基が結合された炭素原子における好ましい立体化学を示している。式Ibは、これらの化合物の調製源であるβアミノ酸のアミノ基が結合された炭素原子及び本ヘキサヒドロジアゼピノン環のステレオジェニック(stereogenic)な炭素原子のうち2個における好ましい立体化学を示している。
【0057】
これらのジアステレオマーの独立した合成又はクロマトグラフィーによるこれらの分離は、本明細書に開示されている方法を適切に改変することによって、本分野で知られているとおりに行うことができる。それらの絶対的な立体化学は、必要であれば、絶対配置が既知である不斉中心を含有する試薬で誘導体化された結晶産物又は結晶中間体のX線結晶構造解析によって決定し得る。
【0058】
必要であれば、各鏡像異性体が単離されるように、前記化合物のラセミ混合物を分離することができる。分離は、鏡像異性体として純粋な化合物に化合物のラセミ混合物をカップリングさせてジアステレオマー混合物を形成させた後に、分別再結晶又はクロマトグラフィーなどの標準的な方法によって各ジアステレオマーを分離するような、本分野で周知の方法によって実施することができる。カップリング反応は、多くの場合、鏡像異性体として純粋な酸又は塩基を用いた塩の形成である。次いで、付加されたキラル残基を切断することによって、ジアステレオマー誘導体を純粋な鏡像異性体に変換させることができる。前記化合物のラセミ混合物は、本分野で周知の方法であるキラル固定相を用いたクロマトグラフィー法によって、直接分離することも可能である。
【0059】
あるいは、化合物の任意の鏡像異性体は、立体配置が知られた光学的に純粋な出発物質又は試薬を用いた立体選択的な合成により、本分野で周知の方法によって得ることもできる。
【0060】
本明細書中において、構造式Iの化合物と表記する場合には、医薬適合性の塩も含まれること、及び、遊離の化合物もしくは医薬適合性のそれらの塩への前駆体として使用した場合、又はその他の合成操作において使用する場合には、医薬適合性でない塩も含まれることが理解できるであろう。
【0061】
本発明の化合物は医薬適合性の塩の形態で投与することができる。「医薬適合性の塩」という用語は、無機又は有機塩基及び無機又は有機酸を含む医薬適合性の非毒性塩基又は酸から調製された塩を表す。「医薬適合性の塩」という用語に包含される塩基性化合物の塩は、一般に、遊離塩基を適切な有機酸又は無機酸と反応させることによって調製される本発明の化合物の非毒性塩を表す。本発明の塩基性化合物の代表的な塩には、酢酸塩(acetate)、ベンゼンスルホン酸塩(benzenesulfonate)、安息香酸塩(benzoate)、重炭酸塩(bicarbonate)、重硫酸塩(bisulfate)、重酒石酸塩(bitartrate)、ホウ酸塩(borate)、臭化物(bromide)、カンシル酸塩(camsylate)、炭酸塩(carbonate)、塩化物(chloride)、クラブラン酸塩(clavulanate)、クエン酸塩(citrate)、二塩酸塩(ジヒドロchloride)、エデト酸塩(edetate)、エジシル酸塩(edisylate)、エストル酸塩(estolate)、エシル酸塩(esylate)、フマル酸塩(fumarate)、グルセプトン酸塩(gluceptate)、グルコン酸塩(gluconate)、グルタミン酸塩(glutamate)、グリコリルアルサニル酸塩(glycollylarsanilate)、ヘキシルレゾルシン酸塩(hexylresorcinate)、ヒドラバミン(hydrabamine)、臭化水素酸塩(hydrobromide)、塩酸塩(hydrochloride)、ヒドロキシナフトエ酸塩(ヒドロキシnaphthoate)、ヨウ化物(iodide)、イソチオン酸塩(isothionate)、乳酸塩(lactate)、ラクトビオン酸塩(lactobionate)、ラウリン酸塩(laurate)、リンゴ酸塩(malate)、マレイン酸塩(maleate)、マンデル酸塩(mandelate)、メシル酸塩(mesylate)、臭化メチル(methylbromide)、硝酸メチル塩(methylnitrate)、硫酸メチル塩(methylsulfate)、粘液酸塩(mucate)、ナプシル酸塩(napsylate)、硝酸塩(nitrate)、N−メチルグルカミンアンモニウム塩(N−メチルglucamine ammonium salt)、オレイン酸塩(oleate)、シュウ酸塩(oxalate)、パモン酸塩(pamoate)(エンボナート)、パルミチン酸塩(palmitate)、パントテン酸塩(pantothenate)、リン酸塩/二リン酸塩(phosphate/diphosphate)、ポリガラクツロン酸塩(polygalacturonate)、サリチル酸塩(salicylate,)、ステアリン酸塩(stearate)、硫酸塩(sulfate)、塩基性酢酸塩(subacetate)、コハク酸塩(succinate)、タンニン酸塩(tannate)、酒石酸塩(tartrate)、テオクル酸塩(teoclate)、トシル酸塩(tosylate)、トリエチオダイド(triethiodide)及び吉草酸塩(valerate)が含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに、本発明の化合物が酸性部分を有する場合には、医薬適合性の適切なそれらの塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(manganic)、亜マンガン(mangamous)、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの無機塩基から得られる塩が含まれるが、これらに限定されるものではない。特に好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。医薬適合性の非毒性有機塩基から得られる塩には、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの、一級、二級及び三級アミン、環状アミン並びに塩基性イオン交換樹脂の塩が含まれる。
【0062】
また、本発明の化合物中に存在するカルボン酸(−COOH)又はアルコール基の場合には、アルコールのメチル、エチル又はピバロイルオキシメチル又はアシル誘導体(酢酸エステル又はマレイン酸エステルなど)のような、カルボン酸誘導体の医薬適合性のエステルも使用することができる。徐放又はプロドラッグ製剤として使用するために溶解度又は加水分解特性を改変するための、本分野において公知のエステル及びアシル基が含まれる。
【0063】
溶媒和物、特に、構造式Iの化合物の水和物も、本発明に含まれる。
【0064】
本発明の例は、実施例及び本明細書に開示されている化合物の使用である。
【0065】
本発明の化合物は、該化合物の有効量を投与することを含む、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素の阻害を必要とする哺乳動物などの患者のジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素を阻害する方法において有用である。本発明は、本明細書に開示されている化合物の、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性の阻害剤としての使用に関する。
【0066】
ヒトなどの霊長類に加えて、本発明の方法に従って、他の様々な哺乳動物を治療することができる。例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット又は他のウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、げっ歯類もしくはマウスの種を含む哺乳動物を治療することができるが、これらに限定されない。しかしながら、前記方法は、鳥類種(例えば、ニワトリ)などの他の種に対して実施することもできる。
【0067】
本発明は、さらに、本発明の化合物を医薬適合性の担体又は希釈剤と混合することを含む、ヒト及び動物中のジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性を阻害するための医薬を製造する方法に関する。
【0068】
本方法で治療される患者は、一般的には、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性の阻害が必要とされる雄又は雌の哺乳動物であり、好ましくはヒトの男性又は女性である。「治療的有効量」という用語は、研究者、獣医、医師又は他の臨床家によって調べられている組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的反応を惹起させると予想される本発明の化合物の量を意味する。
【0069】
本明細書において使用される「組成物」という用語は、一定の成分を一定の量で含む生成物の他、一定の成分を一定の量で組み合わせることによって、直接又は間接的に得られるあらゆる生成物を包含するものとする。医薬組成物に関連したこのような用語には、活性成分及び担体を構成する不活性成分、並びに、任意の成分の2以上の化合、錯化もしくは凝集から、又は1もしくは複数の成分の解離から、又は1もしくは複数の成分の他の種類の反応又は相互作用から直接又は間接的に得られるあらゆる生成物を含む生成物が包含されるものとする。従って、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物と医薬適合性の担体とを混合することによって調製されるあらゆる組成物が包含される。「医薬適合性の」とは、担体、希釈剤又は賦形剤が、製剤の他の成分に対して適合性があり、且つそれらの受容者に対して有害でないことを意味する。
【0070】
化合物の「投与」及び/又は「投与する」という用語は、治療を必要としている個体に、本発明の化合物又は本発明の化合物のプロドラッグを与えることを意味するものと理解されたい。
【0071】
ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性の阻害剤としての本発明による化合物の有用性は、本分野において公知の方法によって実証し得る。阻害定数は、以下のように決定される。DPP−IVによって切断されて蛍光性のAMC脱離基を放出する基質Gly−Pro−AMCを用いた連続的蛍光定量アッセイを利用する。この反応を説明する速度論パラメータは、以下のとおり:K=50μM;kcat=75s−1;kcat/K=1.5x10−l−lである。典型的な反応系は、100μLの総反応体積中に、約50pMの酵素、50μMのGly−Pro−AMC及び緩衝液(100mM HEPES、pH7.5、0.1mg/mL BSA)を含有する。360nmの励起波長と460nmの発光波長とにより、96ウェルのプレート蛍光光度計中で、AMCの遊離を連続的にモニターする。これらの条件下では、25℃にて30分間に、約0.8μMのAMCが生成される。これらの研究に使用した酵素は、バキュロウイルス発現系(Bac−To−Bac、Gibco BRL)中で産生された可溶性の(膜貫通ドメインと細胞質伸長が除去された)ヒトタンパク質であった。Gly−Pro−AMC及びGLP−1の加水分解に対する速度定数は、ネイティブ酵素についての文献値と一致することが明らかとなった。化合物の解離定数を測定するために、酵素と基質とを含有する反応液にDMSO中の阻害剤の溶液を添加した(最終DMSO濃度は1%である。)。全ての実験は、上記の標準的な反応条件を用いて、室温で行った。解離定数(Ki)を求めるために、拮抗阻害のためのミカエリス−メンテンの方程式に対する非線形回帰により、反応速度のフィッティングを行った。解離定数を再現する際の誤差は、通常2倍未満である。
【0072】
特に、以下の実施例の化合物は、先述したアッセイにおいて、概してIC50が約1μM未満というように、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素を阻害する活性を有していた。このような結果は、ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性の阻害剤として使用される活性が前記化合物に内在していることを示唆するものである。
【0073】
ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素(DPP−IV)は、多岐にわたる生物機能への関与が予想されている細胞表面タンパク質である。本酵素は、幅広い組織に分布しており(腸、腎臓、肝臓、膵臓、胎盤、胸腺、脾臓、上皮細胞、血管内皮、リンパ球及び骨髄性細胞、血清)、組織及び細胞の種類によって発現レベルが異なる。DPP−IVは、T細胞活性化マーカーCD26と同一であり、インビトロにおいて、多数の免疫制御、内分泌及び神経ペプチドを切断することができる。この事実から、ヒト又はその他の種において、該ペプチダーゼが様々な疾病過程に関与している可能性があることが示唆される。
【0074】
従って、本化合物は、以下の疾病、疾患及び症状を予防又は治療する方法において有用である。
【0075】
II型糖尿病及び関連疾患:インクレチンであるGLP−1及びGIPがインビボでDPP−IVによって急速に不活化されることは、十分に確定されている。DPP−IVを阻害するとGLP−1及びGIPの定常状態濃度が上昇し、グルコース耐性が改善されることが、DPP−IV(−/−)欠損マウスを用いた研究及び臨床前試験によって示されている。GLP−1及びGIPへの類推により、グルコース制御に関わる他のグルカゴンファミリーペプチドもDPP−IVによって不活化されるものと思われる(例えば、PACAP)。DPP−IVによるこれらのペプチドの不活化は、グルコースのホメオスタシスにも関与している可能性がある。従って、本発明のDPP−IV阻害剤は、II型糖尿病の治療並びにシンドロームX(メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)としても知られている。)、反応性低血糖及び糖尿病性異脂肪血症などのII型糖尿病を伴うことが多い多数の症状の治療及び予防に使用される。以下で考察されている肥満は、II型糖尿病とともに観察されることが多く、本発明の化合物による治療に反応し得るまた別の症状である。
【0076】
以下の疾病、疾患及び症状は、2型糖尿病に関連しており、従って、本発明の化合物を用いた治療によって治療し、制御し、又は、いくつかの事例では、予防することができる。(1)高血糖、(2)低グルコース耐性、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質疾患、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその続発症、(13)血管再狭窄、(14)過敏性腸症候群、(15)クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、(16)その他の炎症性症状、(17)膵炎、(18)腹部肥満、(19)神経変性疾患、(20)網膜症、(21)腎症、(22)神経障害、(23)シンドロームX、(24)卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群)、並びにインスリン抵抗性を要素とする他の疾患。メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)としても知られているシンドロームXにおいて、肥満は、インスリン抵抗性、糖尿病、異脂肪血症、高血圧及び心血管系リスク上昇を促進すると考えられている。従って、DPP−IV阻害剤はまた、この症状を伴う高血圧の治療にも有用であり得る。
【0077】
肥満:DPP−IV阻害剤は、肥満の治療に有用であり得る。これは、GLP−1及びGLP−2が食物摂取及び胃内容排出に対して阻害的効果を示すことが観察されたことに基づく。GLP−1をヒトに外来投与すると、食物摂取が著しく減少し、胃内容排出が著しく遅くなる(Am.J.Physiol.,277:R910−R916(1999))。GLP−1のラット及びマウスへのICV投与によっても、食物摂取に対して著しい効果が得られる(Nature Medicine,2:1254−1258(1996))。かかる摂食の阻害は、GLP−1R(−/−)マウスでは観察されないので、これらの効果には脳のGLP−1受容体が介在することが示唆される。GLP−1への類推により、GLP−2もDPP−IVによって調節されるものと思われる。GLP−2のICV投与も、GLP−1について観察された効果と同様に、食物摂取を阻害する(Nature Medicine,6:802−807(2000))。さらに、DPP−IV欠損マウスを用いた研究から、これらの動物が食餌により誘発される肥満及び関連病態(例えば、高インスリン血症)に耐性があることが示唆される。
【0078】
成長ホルモン欠乏症:下垂体前葉からの成長ホルモンの放出を刺激するペプチドである成長ホルモン放出因子(GRF)が、DPP−IV酵素によってインビボで切断されるという仮説に基づけば、DPP−IV阻害は成長ホルモン欠乏症の治療に有用であり得る(WO 00/56297号)。以下のデータは、GRFが内因性基質であるという証拠を提供する。(1)GRFは、インビトロで効率的に切断されて、不活性産物GRF[3−44]を生成する(BBA 1122:147−153(1992))。(2)GRFは、血漿中で素早く分解されてGRF[3−44]になるが、これは、DPP−IV阻害剤であるジプロチンAによって抑制される。(3)GRF[3−44]は、ヒトGRFトランスジェニックブタの血漿中に見出される(J.Clin.Invest.,83:1533−1540(1989))。このため、DPP−IV阻害剤は、成長ホルモン分泌促進物質について考えられる適応症と同一の領域に対して有用であり得る。
【0079】
腸の損傷:DPP−IVに対する内因性基質であると思われるグルカゴン様ペプチド−2(GLP−2)が、腸上皮に対して栄養性効果を示し得ることを示唆する研究結果から、腸の損傷の治療にDPP−IV阻害剤を使用できる可能性があることが示唆されている(Regulatory Peptides,90:27−32(2000))。GLP−2の投与の結果、げっ歯類において小腸重量が増加し、大腸炎及び腸炎のげっ歯類モデルにおいて腸の損傷が緩和される。
【0080】
免疫抑制:T細胞の活性化及びケモカインのプロセシングにDPP−IV酵素が関与していること、及び疾病のインビボモデルにおいてDPP−IV阻害剤が有効であることを示唆する研究に基づくと、DPP−IVの阻害は、免疫反応の調節に有用であり得る。DPP−IVは、活性化された免疫細胞の細胞表面マーカーであるCD26と同一であることが示されている。CD26の発現は、免疫細胞の分化及び活性化状態によって制御される。CD26はT細胞活性化のインビトロモデルにおいて同時刺激分子として機能することが一般に認められている。多数のケモカインが、おそらくは非特異的アミノペプチダーゼによる分解から保護するために、最後から2番目の位置にプロリンを含有している。これらの多くは、DPP−IVによってインビトロでプロセシングを受けることが示されている。複数の事例で(RANTES、LD78−β、MDC、エオタキシン、SDF−1α)、切断により化学走性及びシグナル伝達アッセイにおける活性が変化する。いくつかの事例では(RANTES)、受容体の選択性も変更されるようである。DPP−IV加水分解の予想産物を含む数多くのケモカインのN末端切断型が、インビトロ細胞培養系で複数同定されている。
【0081】
DPP−IV阻害剤は、移植及び関節炎の動物モデルにおいて、効果的な免疫抑制物質であることが示されている。DPP−IVの不可逆的阻害剤であるプロジピン(Pro−Pro−ジフェニル−ホスホネート)は、ラットにおける心臓同種移植の生存日数を7日から14日まで倍増させることが示された(Transplantation,63:1495−1500(1997))。コラーゲン及びアルキルジアミンでラットに誘発された関節炎においてDPP−IV阻害剤を試験したところ、このモデルでは、後肢の腫脹が統計的に有意に減弱されることが示された[Int.J.Immunopharmacology,19:15−24(1997)及びImmunopharmacology,40:21−26(1998)]。DPP−IVは、関節リウマチ、多発性硬化症、グレーブズ病及び橋本甲状腺炎を含む、数多くの自己免疫疾患において上方制御される(Immunology Today,20:367−375(1999))。
【0082】
HIV感染:HIV細胞侵入を阻害する数多くのケモカインがDPP−IVの基質となり得る可能性があるので、DPP−IV阻害は、HIV感染又はAIDSの治療又は予防に有用であり得る(Immunology Today 20:367−375(1999))。SDF−1αの場合には、切断により抗ウイルス活性が低下する(PNAS,95:6331−6(1998))。このため、DPP−IVの阻害によりSDF−1αを安定化させると、HIV感染性が低下すると予想される。
【0083】
造血:DPP−IVは造血に関与している可能性があるので、DPP−IVの阻害は、造血の治療又は予防に有用であり得る。DPP−IV阻害剤であるVal−Boro−Proは、シクロホスファミドで誘発した好中球減少症のマウスモデルにおいて造血を刺激した(WO 99/56753号)。
【0084】
ニューロン疾患:ニューロンの様々な過程に関与していることが示唆される多くのペプチドがDPP−IVによってインビトロで切断されるので、DPP−IV阻害は、様々なニューロン疾患又は精神疾患の治療又は予防に有用であり得る。このため、DPP−IV阻害剤は、ニューロン疾患の治療において、治療上の利点を有し得る。エンドモルフィン−2、β−カソモルフィン及びサブスタンスPは全て、DPP−IVに対するインビトロ基質であることが示されている。いずれの場合にも、インビトロ切断は極めて効率的であり、kcat/Kは約10−1−1以上である。ラットにおける無痛覚症の電気ショックジャンプ試験モデルでは、DPP−IV阻害剤は、外来性エンドモルフィン−2の存在とは無関係に顕著な効果を示した(Brain Research,815:278−286(1999))。
【0085】
DPP−IV阻害剤が、運動ニューロンを興奮毒性による細胞死から保護できること、MPTPと同時に投与した場合にドーパミン作動性ニューロンの線条体への神経分布を保護できること、MPTP処置後に治療的な様式で与えた場合に線条体の神経分布密度の回復を促進できることによっても、DPP−IV阻害剤の神経保護効果及び神経再生効果が裏付けられた[Yong−Q.Wuら、“Neuroprotective Effects of Inhibitors of Dipeptidyl Peptidase−IV In Vitro and In Vivo,”Int. Conf.On Dipeptidyl Aminopeptidases:Basic Science and Clinical Applications,September 26−29,2002(Berlin,Germany)を参照。]。
【0086】
心臓血管疾患:GLP−1は、急性心筋梗塞後に患者に投与した場合、左心室機能を向上させ、基本的血管形成術(primary angioplasty)後の死亡率を低下させ、有用であることが示されている(Circulation,109:962−965(2004))。GLP−1の投与はまた、拡張型心筋症のイヌにおける左心室収縮機能障害及び虚血により誘発される左心室収縮機能障害の治療にも有用であり、このように、心不全の患者の治療に有用であることが裏付けられ得る(US2004/0097411)。DPP−IV阻害剤は、内因性GLP−1安定化能を介して同様の効果を示すことが期待される。
【0087】
腫瘍の侵襲及び転移:正常な細胞が悪性表現型へと変化する間に、DPP−IVを含む複数のエクトペプチダーゼの発現が増加又は減少することが観察されているので、DPP−IV阻害は、腫瘍の侵襲及び転移の治療又は予防に有用であり得る(J.Exp.Med.,190:301−305(1999))。これらのタンパク質の上方制御又は下方制御は、組織及び細胞の種類に特異的であるものと思われる。例えば、T細胞リンパ腫、T細胞急性リンパ芽球性白血病、細胞由来甲状腺癌、基底細胞癌及び乳癌において、CD26/DPP−IV発現の増加が観察されている。このため、DPP−IV阻害剤は、このような癌の治療に有用であり得る。
【0088】
良性前立腺肥大症:BPH患者から得た前立腺組織中でDPP−IV活性の向上が認められたので、DPP−IV阻害は、良性前立腺肥大症の治療に対して有用であり得る(Eur.J.Clin.Chem.Clin.Biochem.,30:333−338(1992))。
【0089】
精子の運動性/男性避妊:精液中では、プロステートソーム(精子の運動性にとって重要な前立腺由来の細胞小器官)が極めて高レベルのDPP−IV活性を有しているので、DPP−IV阻害は、精子の運動性の変更及び男性避妊に有用であり得る(Eur.J.Clin.Chem.Clin.Biochem.,30:333−338(1992))。
【0090】
歯肉炎:歯肉溝液中にDPP−IV活性が見出され、いくつかの研究では、歯周病の重篤度に相関していたので、DPP−IV阻害は、歯肉炎の治療に有用であり得る(Arhc.Oral Biol.,37:167−173(1992))。
【0091】
骨粗鬆症:GIP受容体が骨芽細胞中に存在するので、DPP−IV阻害は、骨粗鬆症の治療又は予防に有用であり得る。
【0092】
本発明の化合物は、以下の症状又は疾病の1又は複数を治療又は予防する上で有用性がある。(1)高血糖、(2)低グルコース耐性、(3)インスリン抵抗性、(4)肥満、(5)脂質疾患、(6)異脂肪血症、(7)高脂血症、(8)高トリグリセリド血症、(9)高コレステロール血症、(10)低HDLレベル、(11)高LDLレベル、(12)アテローム性動脈硬化症及びその続発症、(13)血管再狭窄、(14)過敏性腸症候群、(15)クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、(16)その他の炎症性症状、(17)膵炎、(18)腹部肥満、(19)神経変性疾患、(20)網膜症、(21)腎症、(22)神経障害、(23)シンドロームX、(24)卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群)、(25)II型糖尿病、(26)成長ホルモン欠乏症、(27)好中球減少症、(28)ニューロン疾患、(29)腫瘍の転移、(30)良性前立腺肥大、(32)歯肉炎、(33)高血圧、(34)骨粗鬆症並びにDPP−IVの阻害によって治療又は予防し得る他の症状。
【0093】
本化合物は、さらに、他の薬剤と組み合わせて、先述した疾病、疾患及び症状を予防又は治療する方法においても有用である。
【0094】
本発明の化合物は、式Iの化合物又はその他の薬物を使用し得る疾病又は症状の治療、予防、抑制又は軽減において、1又は複数の他の薬物と組み合わせ使用することができ、この場合、薬物を組み合わせると、それぞれの薬物単独に比べて安全性又は有効性がさらに高くなる。このような他の薬物は、かかる薬物に対して一般的に用いられている経路及び量で、式Iの化合物と同時に又は順次に投与することができる。式Iの化合物が、1又は複数の他の薬物と同時に使用される場合、このような他の薬物と式Iの化合物とを含有する単位剤形の医薬組成物が好ましい。しかしながら、式Iの化合物と1又は複数の他の薬物とが重複する様々なスケジュールで投与される療法も、併用療法に含まれ得る。1又は複数の他の活性成分と組み合わせて使用される場合、本発明の化合物及び他の活性成分は、それぞれが単独で使用される場合に比べて少ない用量で使用し得ることも想定される。従って、本発明の医薬組成物には、式Iの化合物に加えて、1又は複数の他の活性成分を含有する医薬組成物が含まれる。
【0095】
式Iの化合物と組み合わせて投与することができ、個別に又は同一の医薬組成物中で投与し得る他の活性成分の例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
(a)他のジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)阻害剤;
(b)(i)グリタゾン(例えば、トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、ロシグリタゾンなど)などのPPARγアゴニスト及びKRP−297などのPPARα/γデュアルアゴニストを含む他のPPARリガンド及びフェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレート及びベンザフィブレレート)などのPPARαアゴニスト、(ii)メトホルミン及びフェンホルミンなどのビグアナイド、並びに(iii)タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤などのインスリン増感剤;
(c)インスリン又はインスリン模倣物;
(d)スルホニル尿素、並びにトルブタミド、グリブリド、グリピジド、グリメピリド及びメグリチニド(レパグリニドなど)などの他のインスリン分泌促進物質;
(e)α−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース及びミグリトールなど);
(f)WO 98/04528、WO 99/01423、WO 00/39088及びWO 00/69810号に開示されているものなどのグルカゴン受容体アンタゴニスト;
(g)WO 00/42026及びWO 00/59887に開示されているものなどのGLP−1、GLP−1模倣物及びGLP−1受容体アゴニスト;
(h)GIP及びWO 00/58360に開示されているものなどのGIP模倣物、並びにGIP受容体アゴニスト:
(i)PACAP、PACAP模倣物及びWO 01/23420に開示されているものなどのPACAP受容体アゴニスト;
(j)(i)HMG−CoA還元酵素阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン及びロスバスタチン並びに他のスタチン)、(ii)金属イオン封鎖剤(コレスチラミン、コレスチポール及び架橋されたデキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はそれらの塩、(iv)フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレート及びベンザフィブレレート)などのPPARαアゴニスト、(v)KRP−297などのPPARα/γデュアルアゴニスト、(vi)β−シトステロール及びエゼチミブなどのコレステロール吸収の阻害剤、(vii)アバシミブ(avasimibe)などのアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤、並びに(viii)プロブコールなどの抗酸化剤などの、コレステロール降下剤;
(k)WO 97/28149に開示されているものなどの、PPARδアゴニスト;
(l)フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オルリスタット、ニューロペプチドY又はYアンタゴニスト、CB−1受容体逆アゴニスト及びアンタゴニスト、βアドレナリン作動性受容体アゴニスト、メラノコルチン−受容体アゴニスト、とりわけ、メラノコルチン−4受容体アゴニスト、グレリンアンタゴニスト及びメラニン凝集ホルモン(MCH)受容体アンタゴニストなどの抗肥満化合物;
(m)回腸の胆汁酸輸送体阻害剤;
(n)アスピリン、非ステロイド性抗炎症剤、グルココルチコイド、アザルフィジン及び選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤などの炎症症状に使用するための薬剤;
(o)ACE阻害剤(エナラプリル、リシノプリル、カプトプリル、キナプリル、タンドラプリル(tandolapril))、A−II受容体ブロッカー(ロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、エプロサルタン)、βブロッカー及びカルシウムチャネルブロッカーなどの降圧剤;及び
(p)WO03/015774で開示されているものなどの、グルコキナーゼ活性剤(GKAs);
(q)米国特許第6,730,690号で開示されているものなどの、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ タイプ1の阻害剤;及び
(r)トルセトラピブなど、コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害剤。
【0097】
構造式Iの化合物と組み合わせることができるジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤には、WO 03/004498(2003年1月16日);WO 03/004496(2003年1月16日);EP 1 258 476(2002年11月20日);WO 02/083128(2002年10月24日);WO 02/062764(2002年8月15日);WO 03/000250(2003年1月3日);WO 03/002530(2003年1月9日);WO 03/002531(2003年1月9日);WO 03/002553(2003年1月9日);WO 03/002593(2003年1月9日);WO 03/000180(2003年1月3日);及びWO 03/000181(2003年1月3日);で開示されているものが含まれる。具体的なDPP−IV阻害剤化合物には、イソロイシン チアゾリジド(P32/98);NVP−DPP−728;LAF237;P93/01;及びBMS 477118が含まれる。
【0098】
構造式Iの化合物と組み合わせることができる抗肥満化合物には、フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オルリスタット、ニューロペプチドY又はYアンタゴニスト、カナビノイドCB1受容体アンタゴニスト又は逆アゴニスト、メラノコルチン受容体アゴニスト、とりわけ、メラノコルチン−4受容体アゴニスト、グレリンアンタゴニスト及びメラニン凝集ホルモン(MCH)受容体アンタゴニストが含まれる。構造式Iの化合物と組み合わせることができる抗肥満化合物のまとめとして、S.Chakiら、“Recent advance in feeding suppressing agents:potential therapeutic strategy for the treatment of obesity,”Expert Opin.Ther.Patents,11:1677−1692(2001)及びD.Spanswick及びK.Lee,“Emerging antiobesity drugs,”Expert Opin.Emerging Drugs,8:217−237(2003)を参照のこと。
【0099】
構造式Iの化合物と組み合わせることができるニューロペプチドY5アンタゴニストには、米国特許第6,335,345号(2002年1月1日)及びWO 01/14376(2001年3月1日)で開示されているもの;及びGW 59884A;GW 569180A;LY366377;及びCGP−71683Aとされる具体的な化合物が含まれる。
【0100】
式Iの化合物と組み合わせることができるカナビノイドCB1受容体アンタゴニストには、PCT公開WO 03/007887;米国特許第5,624,941号(リモナバントなど);PCT公開WO 02/076949(SLV−319など);米国特許第6,028,084号;PCT公開WO 98/41519;PCT公開WO 00/10968;PCT公開WO 99/02499;米国特許第5,532,237号及び米国特許第5,292,736号で開示されているものが含まれる。
【0101】
構造式Iの化合物と組み合わせることができるメラノコルチン受容体アゴニストには、WO 03/009847(2003年2月6日);WO 02/068388(2002年9月6日);WO 99/64002(1999年12月16日);WO 00/74679(2000年12月14日);WO 01/70708(2001年9月27日);及びWO 01/70337(2001年9月27日)ならびに、J.D.Speakeら、“Recent advances in the development of melanocortin−4 receptor agonists,”Expert Opin.Ther.Patents,12:1631−1638(2002)で開示されているものが含まれる。
【0102】
糖尿病の治療のために安全かつ有効なグルコキナーゼ活性化剤(GKAs)を利用できる可能性については、J.Grimsbyら、“Allosteric Activators of Glucokinase:Potential Role in Diabetes Therapy”,Science,301:370−373(2003)で考察されている。
【0103】
本発明の化合物を1又は複数の他の薬物と同時に使用する場合、本発明の化合物に加えて、このような他の薬物を含有する医薬組成物が好ましい。従って、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物に加えて、1又は複数の他の活性成分も含有する医薬組成物が含まれる。
【0104】
第二の活性成分に対する本発明の化合物の重量比は変動させることができ、各成分の有効用量に依存するであろう。一般に、それぞれの有効用量が使用されるであろう。つまり、例えば、本発明の化合物を別の薬剤と組み合わせる場合には、他の薬剤に対する本発明の化合物の重量比は、一般に、約1000:1から約1:1000、好ましくは約200:1から約1:200の範囲にわたるであろう。本発明の化合物と他の活性成分との組み合わせは、一般に、先述した範囲内に存在するであろうが、各事例において、各活性成分の有効量を使用すべきである。
【0105】
このような組み合わせでは、本発明の化合物及び他の活性物質は、別個に又は同時に投与することができる。さらに、1つの要素の投与は、他の薬剤の投与の前、それと同時、又は後に行うことができる。
【0106】
本発明の化合物は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、大槽内注射もしくは注入、皮下注射又はインプラント)、吸入スプレー、経鼻、膣、直腸、舌下又は局所投与経路によって投与することができ、各投与経路に適切な非毒性の医薬適合性の従来の担体、佐剤及びビヒクルを含有する適切な投薬単位製剤中に、単独で又は一緒に調合することができる。マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、サルなどの温血動物の治療に加えて、本発明の化合物は、ヒトへの使用のために有効である。
【0107】
本発明の化合物を投与するための医薬組成物は、都合よく投薬単位形態で与えることができ、薬学の分野において周知のあらゆる方法によって調製することができる。全ての方法には、前記活性成分を、1又は複数の補助成分を成す担体と混合する段階が含まれる。一般に、前記医薬組成物は、液体担体もしくは微粉化された固体担体又は両方に、前記活性成分を均一かつ緊密に混合させ、必要であればその後、所望の製剤になるように生成物を成形することによって調製される。前記医薬組成物において、活性な対象化合物は、疾病の過程又は症状に対して所望の効果をもたらすのに十分な量で含有される。本明細書において使用される場合、「組成物」という用語は、一定の成分を一定の量で含む生成物の他、一定の成分を一定の量で組み合わせることによって、直接又は間接的に得られるあらゆる生成物を包含するものとする。
【0108】
前記活性成分を含有する医薬組成物は、経口での使用に適した形態、例えば、錠剤、トローチ、トローチ剤、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、乳剤、硬カプセルもしくは軟カプセル又はシロップもしくはエリキシル剤とすることができる。経口で使用するための組成物は、医薬組成物の製造の分野において公知である任意の方法に従って調製することができ、このような組成物は、薬学的に洗練されかつ口当たりがよい調製物を与えるために、甘味料、香味料、着色料及び防腐剤からなる群から選択される1又は複数の薬剤を含有することができる。錠剤は、錠剤の製造に適した医薬適合性の非毒性賦形剤と混合された活性成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウムなどの不活性な希釈剤;造粒剤及び崩壊剤、例えば、コーンスターチ又はアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン又はアラビアゴム、並びに潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであり得る。前記錠剤は素錠とすることができ、又は公知の技術によってコーティングを施して、胃腸管での崩壊及び吸収を遅延させることにより、長時間にわたって持続的な作用を与えることができる。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延物質を使用し得る。それらは、制御放出のための浸透圧性治療用錠剤を形成するための、米国特許第4,256,108号;第4,166,452号;第4,265,874号に記載されている技術によってコーティングを施すこともできる。
【0109】
経口用の製剤は、活性成分が不活性な固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリン)と混合された硬ゼラチンカプセルとして、又は活性成分が水もしくは油媒体(例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン又はオリーブ油)と混合された軟ゼラチンカプセルとして与えることもできる。
【0110】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合された活性物質を含有する。このような賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴムであり、分散剤又は湿潤剤は、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアリン酸)、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、又はエチレンオキシドと、脂肪酸及びヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールなど)、又はエチレンオキシドと、脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタン)であり得る。水性懸濁液は、1又は複数の防腐剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチル又はn−プロピル、1又は複数の着色料、1又は複数の香味料及び1又は複数の甘味料(スクロース又はサッカリンなど)も含有し得る。
【0111】
油性懸濁液は、活性成分を、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナッツ油などの植物油、又は流動パラフィンなどの鉱油中に懸濁させることによって調合することができる。油性懸濁液は、濃縮剤、例えば、蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールを含有し得る。口当たりがよい経口調製物を与えるために、上記のものなどの甘味料及び香味料を添加することもできる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を添加することによって保存し得る。
【0112】
水を加えることによって水性懸濁液を調製するのに適した分散性粉末及び顆粒は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤及び1又は複数の防腐剤と混合された活性成分を与える。適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤の例は、既に上述したものである。さらなる賦形剤、例えば、甘味料、香味料及び着色料も存在させ得る。
【0113】
本発明の医薬組成物は、水中油型乳剤の形態とすることもできる。油相は、植物油(例えば、オリーブ油もしくはラッカセイ油)又は鉱油(例えば流動パラフィン)、又はこれらの混合物とすることができる。適切な乳化剤は、天然に存在するゴム(例えば、アラビアゴム又はトラガカントゴム)、天然に存在するホスファチド(例えば、ダイズ、レシチン)、並びに脂肪酸及びヘキシトール無水物由来のエステル又は部分エステル(例えば、モノオレイン酸ソルビタン)、並びに前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)であり得る。乳剤は、甘味料及び香味料も含有し得る。
【0114】
シロップ及びエリキシル剤は、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール又はスクロース等の甘味料とともに調合することができる。このような製剤は、粘滑剤、防腐剤及び香味料及び着色料も含有し得る。
【0115】
前記医薬組成物は、無菌の注射可能な水性又は油脂性懸濁液の形態とすることができる。該懸濁液は、上述の適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて、本分野で公知の方法で調合することができる。無菌の注射可能な調製物は、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の注射可能な無菌溶液又は懸濁液とすることもできる。利用し得る許容可能なビヒクル及び溶媒には、水、リンゲル溶液及び等張の塩化ナトリウム溶液が含まれる。さらに、無菌の不揮発性油は、通常、溶媒又は懸濁媒体として使用される。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む、あらゆる無刺激性不揮発油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射剤の調製に使用できる。
【0116】
本発明の化合物は、薬物を直腸投与するための座薬の形態で投与することもできる。これらの組成物は、常温では固体であるが、直腸温では液体となり、従って、直腸内で溶けて薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤とともに薬物を混合することによって調製することができる。このような材料は、カカオバター及びポリエチレングリコールである。
【0117】
局所に使用する場合には、本発明の化合物を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、溶液又は懸濁液などが用いられる。(本願の目的のために、局所投与には、洗口剤及びうがい薬が含まれるものとする。)。
【0118】
本発明の医薬組成物及び方法は、上記の病態の治療に一般的に使用される、本明細書に記載されている治療的に活性のある他の化合物をさらに含むことができる。
【0119】
ジペプチジルペプチダーゼ−IV酵素活性の阻害を必要とする症状の治療又は予防においては、適切な投薬レベルは、一般に、約0.01から500mg/kg患者体重/日であり、これは単回又は複数回の投薬で与えることができる。好ましくは、前記投薬レベルは、約0.1から約250mg/kg/日、より好ましくは、約0.5から約100mg/kg/日であろう。適切な投薬レベルは、約0.01から250mg/kg/日、約0.05から100mg/kg/日、又は約0.1から50mg/kg/日とすることができる。この範囲内で、前記投薬量は、0.05から0.5、0.5から5又は5から50mg/kg/日とすることができる。経口投与の場合、治療すべき患者への投薬量を症状に応じて調節するために、前記組成物は、活性成分を1.0から1000mg、特に活性成分を1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0及び1000.0mg含有する錠剤の形態で与えることが好ましい。前記化合物は、1から4回/日、好ましくは1又は2回/日の投薬計画で投与することができる。
【0120】
糖尿病及び/又は高血糖もしくは高トリグリセリド血症、又は本発明の化合物の適応症となる他の疾病を治療又は予防する場合、約0.1mgから約100mg/kg動物体重の一日投薬量で、好ましくは一日一回の投薬もしくは一日に2回から6回に分割した投薬又は徐放形態で本発明の化合物を投与すると、一般に満足な結果が得られる。殆どの大型哺乳動物では、一日総投薬量は、約1.0mgから約1000mg、好ましくは約1mgから約50mgである。70kgの成人の場合には、一日総投薬量は、一般に、約7mgから約350mgであろう。この投薬計画は、最適の治療応答を与えるように調節され得る。
【0121】
しかしながら、個々の患者に対する具体的な投薬レベルと投薬の頻度には変更を加えることができ、使用する具体的な化合物の活性、当該化合物の代謝的安定性及び作用の長さ、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与の様式及び時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、症状の重篤度、並びに治療を受ける対象など様々な要因に依存し得ることが理解されるであろう。
【0122】
本発明の化合物を調製するいくつかの方法を、以下のスキーム及び実施例で説明する。出発物質は、本分野において公知の手法又は本明細書に記されている手法に従って調製される。
【0123】
本発明の化合物は、標準的なペプチドカップリング条件を用い、続いて脱保護することにより、式IIの化合物ようなβアミノ酸中間体及び式IIIの化合物のような置換されたヘキサヒドロジアゼピノン中間体から調製することができる。これらの中間体の調製を以下のスキームで説明する。
【0124】
【化9】

(式中、Ar、R、R、R、R、R、R、R、R10及びR11は、上記で定義されるとおりであり、Pは、tert−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)又は9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)などの適切な窒素保護基である。
【0125】
【化10】

式IIの化合物は、市販されており、文献に記載されており、又は当業者に周知の様々な方法によって都合よく調製することができる。ある一般的な経路をスキーム1で説明する。購入し得る、又は例えばジ−tert−ブチルジカルボネート(P=BOCに対する)、カルボベンジルオキシクロライド(P=Cbzに対する)又はN−(9−フルオレニルメトキシ−カルボニルオキシ)スクシニミド(P=Fmocに対する)を用いた保護により対応するアミノ酸から容易に調製され得る保護化α−アミノ酸1を、クロロギ酸イソブチル及び、トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミンなどの塩基で処理し、続いて、ジアゾメタンで処理する。次に、βアミノ酸IIを得るために、得られたジアゾケトンを、メタノール又はジオキサン水溶液などの溶媒中で安息香酸銀で処理し、Sewaldら、Synthesis,837(1997)の手順に従い、超音波破砕に供し得る。当業者により理解されるように、光学異性の面で純粋なβアミノ酸IIの調製のために、光学異性の面で純粋なαアミノ酸1を使用し得る。この保護化β−アミノ酸中間体IIを得るための代替経路は、次の概説で見出すことができる:E.Juaristi,Enantioselective Synthesis of β−Amino Acids.Ed., Wiley−VCH,New York:1997;Juaristiら、Aldrichimica Acta,27:3(1994);及びColeら、Tetrahedron,32:9517(1994)。
【0126】
【化11】

式IIIの化合物は、市販されており、文献に記載されており、又は当業者に周知の様々な方法によって都合よく調製することができる。ある一般的な経路をスキーム2で説明する。トリメチルアルミニウムを用いて、アミノエステル2を環状化させてN−保護化ヘキサヒドロジアゼピノン3を得る。例えば、Bocの場合、ジオキサン中の塩化水素又はジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸でなどの酸を用いて処理することによる、脱保護を行い、中間体IIIを得る。
【0127】
【化12】

アミノエステル2は、文献に記載されており、又は当業者に周知の様々な方法によって都合よく調製することができる。R、R、R及びRが水素であり、PがBoc基である場合の、ある一般的な経路をスキーム3で説明する。塩酸塩として都合よく用いられるアミノエステル4をアクリロニトリル5と縮合させ、形成された生成物のアミノ基を、例えば、そのtert−ブトキシカルボニル(Boc)誘導体として保護し、6を得る。例えば、酸化白金などの触媒を使用し、水素による処理を行いニトリル基を還元することにより、アミン2aが得られる。
【0128】
【化13】

10及びR11が水素であるアミン2の調製のための別の方法をスキーム4で説明する。都合よくEDC/HOBtなどのカップリング剤を用いてアミノ酸7をN,O−ジメチルアミンとカップリングさせ、得られたWeinrebアミドを還元し、アルデヒド8を得る。このアルデヒドをアミノエステル9で処理し、対応するイミンを、例えば接触水素化条件下で還元する。次に、例えばそのCbz誘導体として、得られた二級アミンを保護し、エステル10を得る(P=Cbz)。末端アミノ基の脱保護を行い、所望する中間体2bを得る。
【0129】
【化14】

、R10及びR11が水素であるヘキサヒドロジアゼピノンIIIの調製の代替法を、スキーム5で示す。ピルビン酸などのα−ケト酸11をアミノプロピオニトリル12と縮合させて、シアノエチルオキソプロパンアミド13を得て、それを酸化白金及び水素などの還元剤で還元的に環状化して、ヘキサヒドロジアゼピノンIIIを得ることができる。
【0130】
【化15】

ヘキサヒドロジアゼピノン中間体III及びそれらの合成のための中間体を様々な方法で修飾することができる。例えば、Rが水素である中間体3(スキーム2)に対して説明されているようにして調製される中間体14のアミド窒素を、スキーム6で示すように、水素化ナトリウムなどの塩基を用いて脱プロトン化し、次にハロゲン化アルキルにより処理することによりアルキル化することができる。得られた中間体15の脱保護により、中間体IIIが得られる。
【0131】
【化16】

別のそのような例を、スキーム7で説明する。スキーム6の中間体15に対して述べたようにして、又は中間体IIIを保護することにより調製することができる、R及び/又はRが水素である保護化ヘキサヒドロジアゼピノン16を、LDAなどの強塩基を用いて脱プロトン化し、続いてハロゲン化アルキルで処理することによりアルキル化することができる。第二のアルキル基、Rを導入するために、このプロセスを繰り返すことができる。脱保護により中間体IIIが得られる。
【0132】
【化17】

標準的ペプチドカップリング条件下で、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)又はジクロロメタンなどの溶媒中で、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(EDC/HOBT)又はO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート及び1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HATU/HOAT)を使用して、室温にて3時間から48時間、中間体II及びIIIをカップリングさせ、スキーム8で示すように中間体17を得る。ある場合において、中間体IIIは、塩酸塩又はトリフルオロ酢酸塩などの塩であり得、これらの場合、このカップリング反応に塩基、通常、N,N−ジイソプロピルエチルアミンを添加することが都合がよい。次に、例えば、Bocの場合、トリフルオロ酢酸又はメタノール性塩化水素により保護基を除去し、所望するアミンIを得る。必要であれば、再結晶化、摩砕、分取薄層クロマトグラフィー、Biotage(R)装置を用いるなど、シリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィー又はHPLCにより、この生成物を精製する。HPLCで精製した化合物は、対応する塩として単離され得る。中間体の精製を同様にして達成する。
【0133】
ある場合において、例えばAr、R、R、R、R、R、R、R、R10又はR11における置換基を操作することにより、上記スキームで説明した生成物I又は合成中間体IIIをさらに修飾する。これらの操作には、これらに限定されないが、当業者にとって周知の、還元、酸化、アルキル化、アシル化及び加水分解反応が含まれ得る。
【0134】
ある場合において、前述の反応スキームを行う順番は、反応を促進するために、又は不必要な反応産物を避けるために、変更し得る。次の実施例は、本発明をさらに詳しく理解するために提供するものである。これらの実施例は、実例にすぎず、本発明を何ら限定するものとして解釈されるべきではない。
【0135】
中間体1
【0136】
【化18】

(3R)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−4−(2,5−ジフルオロフェニル)ブタン酸
段階A:(R,S)−N−(tert−ブトキシカルボニル)−2,5−ジフルオロフェニルアラニン
tert−ブタノール 5mL中の2,5−ジフルオロ−DL−フェニルアラニン 0.5g(2.49mmol)の溶液に、2N 水酸化ナトリウム水溶液 1.5mL及びジ−tert−ブチルジカルボネート 543mgを連続的に添加した。この反応物を室温にて16時間撹拌し、酢酸エチルで希釈した。この有機相を1N 塩酸及び食塩水で連続的に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。この未精製物質をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、97:2:1 ジクロロメタン:メタノール:酢酸)により精製し、表題化合物を得た。LC/MS 302(M+1)。
【0137】
段階B:(R,S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−1−ジアゾ−4−(2,5−ジフルオロ−フェニル)ブタン−2−オン
0℃におけるジエチルエーテル 100mL中の(R,S)−N−(tert−ブトキシカルボニル)−2,5−ジフルオロフェニルアラニン 2.23g(7.4mmol)の溶液に、トリエチルアミン 1.37mL(8.1mmol)及びクロロギ酸イソブチル 0.931mL(7.5mmol)を連続的に添加し、その反応物をこの温度で15分間撹拌した。次に、ジアゾメタンの冷却エーテル溶液を黄色が持続するまで添加し、さらに16時間撹拌し続けた。酢酸を滴下添加することにより過剰なジアゾメタンを不活性化し、その反応物を酢酸エチルで希釈し、5% 塩酸、重炭酸ナトリウム飽和水溶液及び食塩水で連続的に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、4:1 ヘキサン:酢酸エチル)により精製を行い、表題ジアゾケトンを得た。
【0138】
H NMR(500MHz,CDCl)δ7.03−6.95(m,1H),6.95−6.88(m,2H),5.43(bs,1H),5.18(bs,1H),4.45(bs,1H),3.19−3.12(m,1H),2.97−2.80(m,1H),1.38(s,9H)。
【0139】
段階C:(3R)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−4−(2,5−ジフルオロフェニル)ブタン酸
−30℃におけるメタノール 100mLに溶解させた(R,S)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)−アミノ]−1−ジアゾ−4−(2,5−ジフルオロフェニル)ブタン−2−オン 2.14g(6.58mmol)の溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン 3.3mL(19mmol)及び安息香酸銀 302mg(1.32mmol)を連続的に添加した。この反応物を90分間撹拌し、その後、酢酸エチルで希釈し、2N 塩酸、重炭酸ナトリウム飽和水溶液及び食塩水で連続的に洗浄した。この有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空中で濃縮し、その鏡像異性体を分取キラルHPLCで分離し(Chiralpak ADカラム、ヘキサン中5% エタノール)、最初に溶出される、所望する(R)−鏡像異性体 550mgを得た。テトラヒドロフラン:メタノール:1N 水酸化リチウム水溶液の混合液(3:1:1)50mLにこの物質を溶解し、50℃にて4時間撹拌した。この反応液を冷却し、5% 希塩酸で酸性化し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機相を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空中で濃縮し、白色の泡状固体として表題化合物を得た。
【0140】
H NMR(500MHz,CDCl)δ7.21(m,1H),6.98(m,2H),6.10(bs,1H),5.05(m,1H),4.21(m,1H),2.98(m,2H),2.60(m,2H),1.38(s,9H)。
【0141】
中間体2
【0142】
【化19】

(3R)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−4−[2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]−ブタン酸
段階A:(2R,5S)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−2−(2’−フルオロ−4’−(トリフルオロメチル)ベンジル)−5−イソプロピルピラジン
−70℃のテトラヒドロフラン 100mL中の市販の(2S)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−2−イソプロピルピラジン 3.32g(18mmol)の溶液に、ヘキサン中のブチルリチウムの1.6M溶液 12mL(19mmol)を添加した。この温度で20分間撹拌した後、テトラヒドロフラン 20mL中の2−フルオロ−4−トリフルオロメチルベンジルブロマイド 5g(19.5mmol)を添加し、3時間撹拌し続け、その後、この反応物を室温まで温めた。その反応を水で停止させ、真空中で濃縮し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機相を食塩水で洗浄し、乾燥させ、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーによる精製(シリカゲル、ヘキサン中の0−5% 酢酸エチル)を行い、表題化合物を得た。
【0143】
H NMR(500MHz,CDCl)δ7.33−7.25(m,3H),4.35−4.31(m,1H),3.75(s,3H),3.65(s,3H),3.60(t,1H,J=3.4Hz),3.33(dd,1H,J=4.6,13.5Hz),3.03(dd,1H,J=7,13.5Hz),2.25−2.15(m,1H),1.0(d,3H,J=7Hz),0.66(d,3H,J=7Hz)。
【0144】
段階B:(R)−N−(tert−ブトキシカルボニル)−2−フルオロ−4−トリフルオロメチル−フェニルアラニンメチルエステル
アセトニトリル:ジクロロメタン(10:1)の混合液 50mL中の(2R,5S)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−2−(2’−フルオロ−4’−(トリフルオロメチル)ベンジル)−5−イソプロピルピラジン 5.5g(15mmol)の溶液に、1N トリフルオロ酢酸水溶液 80mLを添加した。この反応物を6時間撹拌し、有機溶媒を真空中で除去した。溶液が塩基性になるまで(pH8超)炭酸ナトリウムを添加し、次に、この反応物をテトラヒドロフラン 100mLで希釈し、ジ−tert−ブチルジカルボネート 10g(46mmol)を添加した。得られたスラリーを16時間撹拌し、真空中で濃縮し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機相を食塩水で洗浄し、乾燥させ、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーによる精製(シリカゲル、ヘキサン中20%酢酸エチル)を行い、表題化合物を得た。
【0145】
H NMR(500MHz,CDCl)δ7.38−7.28(m,3H),5.10(bd,1H),4.65−3.98(m,1H),3.76(s,3H),3.32−3.25(m,1H),3.13−3.05(m,1H),1.40(s,9H)。
【0146】
段階C:(R)−N−(tert−ブトキシカルボニル)−2−フルオロ−4−トリフルオロメチル)フェニル−アラニン
テトラヒドロフラン:メタノール:1N 水酸化リチウムの混合液(3:1:1)350mL中の(R,S)−N−(tert−ブトキシカルボニル)−2−フルオロ−4−トリフルオロメチル)フェニルアラニンメチルエステル 5.1g(14mmol)の溶液を50℃にて4時間撹拌した。この反応液を冷却し、5% 塩酸で酸性化し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機相を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空中で濃縮し、表題化合物を得た。
【0147】
H NMR(500MHz,CDOD)δ7.45−7.38(m,3H),4.44−4.40(m,1H),3.38−3.33(m,1H),2.98(dd,1H,J=9.6,13.5Hz),1.44(s,9H)。
【0148】
段階D:(3R)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−4−[2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)−フェニル]ブタン酸
0℃におけるテトラヒドロフラン 60mL中の段階Cからの生成物 3.4g(9.7mmol)の溶液に、ジイソプロピルエチルアミン 2.3mL(13mmol)及びクロロギ酸イソブチル 1.7mL(13mmol)を連続的に添加し、この反応物をこの温度で30分間撹拌した。次に、黄色が持続するまで、ジアゾメタンの冷却エーテル溶液を添加し、さらに16時間撹拌し続けた。酢酸を滴下添加することにより過剰なジアゾメタンを不活性化し、この反応液を酢酸エチルで希釈し、5% 塩酸、重炭酸ナトリウム飽和水溶液及び食塩水で連続的に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーによる精製(シリカゲル、9:1 ヘキサンヘキサン:酢酸エチル)を行い、ジアゾケトン 0.5gを得た。0℃におけるメタノール 100mLに溶解させたこのジアゾケトン 0.5g(1.33mmol)の溶液に、ジイソプロピルエチルアミン 0.7mL(4mmol)及び安息香酸銀 32mg(0.13mmol)を連続的に添加した。この反応物を2時間撹拌し、その後、酢酸エチルで希釈し、2N 塩酸、重炭酸ナトリウム飽和水溶液及び食塩水で連続的に洗浄した。この有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空中で濃縮し、テトラヒドロフラン:メタノール:1N 水酸化リチウム水溶液の混合液(3:1:1)50mLに溶解し、50℃にて3時間撹拌した。この反応液を冷却し、5% 塩酸で酸性化し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機相を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空中で濃縮し、白色の泡状固体として表題化合物を得た。
【0149】
H NMR(500MHz,CDOD):δ7.47−7.33(m,3H),4.88(bs,1H),4.26−3.98(m,1H),3.06−3.01(m,1H),2.83−2.77(m,1H),2.58−2.50(m,2H),1.29(s,9H)。
【0150】
中間体3
【0151】
【化20】

(3R)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン酸
段階A:(2S,5R)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−2−イソプロピル−5−(2’,4’,5’トリフルオロベンジル)−ピラジン
中間体2、段階Aに対して述べた方法を使用して、(2S)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−2−イソプロピルピラジン 3.42g(18.5mmol)及び2,4,5−トリフルオロベンジルブロマイド 5g(22.3mmol)から、表題化合物(3.81g)を調製した。
【0152】
H NMR(500MHz,CDCl):δ7.01(m,1H),6.85(m,1H),4.22(m,1H),3.78(m,3H),3.64(m,3H),3.61(m,1H),3.20(m,1H),2.98(m,1H),2.20(m,1H),0.99(d,3H,J=8Hz),0.62(d,3H,J=8Hz)。
【0153】
段階B:(R)−N−(tert−ブトキシカルボニル)−2,4,5−トリフルオロフェニルアラニンメチルエステル
アセトニトリル 20mL中の(2S,5R)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−2−イソプロピル−5−(2’,4’,5’トリフルオロベンジル)−ピラジン 3.81g(11.6mmol)の溶液に、2N 塩酸 20mLを添加した。この反応液を72時間撹拌し、真空中で濃縮した。その残渣をジクロロメタン 30mL中に溶解し、トリエチルアミン 10mL(72mmol)及びジ−tert−ブチルジカルボネート 9.68g(44.8mmol)を添加した。この反応物を16時間撹拌し、酢酸エチルで希釈し、1N 塩酸及び食塩水で連続的に洗浄した。この有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、9:1 ヘキサン:酢酸エチル)により精製し、表題化合物を得た。
【0154】
H NMR(500MHz,CDCl):δ6.99(m,1H),6.94(m,1H),5.08(m,1H),4.58(m,1H),3.78(m,3H),3.19(m,1H),3.01(m,1H),1.41(s,9H)。
【0155】
段階C:(R)−N−(tert−ブトキシカルボニル)−2,4,5−トリフルオロフェニルアラニン
中間体2、段階Cに対して述べた方法を使用して、(R)−N−(tert−ブトキシカルボニル)−2,4,5−トリフルオロフェニルアラニンメチルエステル 2.41g(7.5mmol))から表題化合物(2.01g)を調製した。
LC/MS 220.9(M+1−BOC)。
【0156】
段階D:(3R)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブタン酸
−20℃におけるジエチルエーテル 10mL中の(R)−N−(1,1−ジメチルエトキシ−カルボニル)−2,4,5−トリフルオロフェニルアラニン 0.37g(1.16mmol)の溶液に、トリエチルアミン 0.193mL(1.3mmol)及びクロロギ酸イソブチル 0.18mL(1.3mmol)を連続的に添加し、この反応物をこの温度で15分間撹拌した。次に、黄色が持続するまでジアゾメタンの冷却エーテル溶液を添加し、さらに1時間撹拌を続けた。酢酸を滴下添加することにより過剰なジアゾメタンを不活性化し、この反応液を酢酸エチルで希釈し、重炭酸ナトリウム飽和水溶液及び食塩水で連続的に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、3:1 ヘキサン:酢酸エチル)による精製を行い、ジアゾケトン 0.36gを得た。1,4−ジオキサン:水(5:1) 12mLに溶解させたこのジアゾケトン 0.35g(1.15mmol)の溶液に、安息香酸銀 26mg(0.113mmol)を添加した。得られた溶液を2時間超音波破砕にかけ、その後、酢酸エチルで希釈し、1N 塩酸及び食塩水で連続的に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、97:2:1 ジクロロメタン:メタノール:酢酸)による精製を行い、表題化合物を得た。
【0157】
H NMR(500MHz,CDCl):δ7.06(m,1H),6.95(m,1H),5.06(bs,1H),4.18(m,1H),2.98(m,2H),2.61(m,2H),1.39(s,9H)。
【0158】
中間体4
【0159】
【化21】

(3R)−4−(2−ブロモ−4,5−ジフルオロフェニル)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−ブタン酸
テトラヒドロフラン 75mL中の2−ブロモ−4,5−ジフルオロ安息香酸(Braishら、Syn.Comm.,3067−3074(1992)の方法に従い調製。) 2.4g(10mmol)の溶液に、カルボニルジイミダゾール 2.43g(15mmol)を添加した。この溶液を還流下で3.5時間加熱し、室温に冷却し、水 15mL中の水素化ホウ素ナトリウム 0.38g(10mmol)を添加した。この反応物を10分間撹拌し、酢酸エチルと10% 重炭酸ナトリウム水溶液との間で分配した。この有機層を温水及び食塩水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーによる精製(シリカゲル、4:1 ヘキサン:酢酸エチル)を行い、2−ブロモ−4,5−ジフルオロベンジルアルコール 1.9gを得た。0℃におけるジクロロメタン 30mL中の2−ブロモ−4,5−ジフルオロベンジルアルコール 1.9g(8.4mmol)の溶液に、四臭化炭素3.4g(10mmol)及びトリフェニルホスフィン 2.7g(10mmol)を添加した。この反応物をこの温度で2時間撹拌し、溶媒を真空中で除去し、ジエチルエーテル 100mLとともに残渣を撹拌した。この溶液を濾過し、真空中で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、20:1 ヘキサン:酢酸エチル)で精製し、四臭化炭素が混入した2−ブロモ−4,5−ジフルオロベンジルブロマイドを得て、さらに精製せずに使用した。中間体2から4の調製に対して概説した手法を用いて、臭化ベンジル誘導体を表題化合物に変換した。
LC/MS 394及び396(M+1)。
【0160】
基本的に、中間体1から4の調製に対して概説した手段に従い、表1の中間体を調製した。
【0161】
表1
【0162】
【化22】

中間体14
【0163】
【化23】

(3R,7R)−3,7−ジメチル−1,4−ジアゼパン−2−オン
段階A:tert−ブチル[(1R)−3−[メトキシ(メチル)アミノ]−1−メチル−3−オキソプロピル]カルバメート
アセトニトリル(40mL)中の(3R)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]ブタン酸(1g、5mmol)の溶液を、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC;1.05g、5.5mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt;810mg、6mmol)、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(1.0g、10mmol)及びトリエチルアミン(1.4mL)で処理し、室温にて2日間撹拌した。この溶液を蒸発させ、Biotage(R)システム(シリカゲル、40−90% 酢酸エチル/ヘキサン勾配)を用いたフラッシュクロマトグラフィーにより残渣を精製し、無色の粘性のある油状物質として所望する生成物を得た。MS 269.1(M+Na)。
【0164】
段階B:tert−ブチル[(1R)−1−メチル−3−オキソプロピル]カルバメート
窒素雰囲気下で、−40℃において、テトラヒドロフラン(25mL)中のtert−ブチル[(1R)−3−[メトキシ(メチル)アミノ]−1−メチル−3−オキソプロピル]カルバメートの撹拌溶液に、水素化アルミニウムリチウム(5mL、THF中1.0M)をゆっくりと添加した。30分後、塩化アンモニウム飽和水溶液でこの反応混合物を不活性化した。冷却槽を取り外し、1時間撹拌を続けた。Celiteのパッドを介してこの混合液を濾過し、エーテルで洗浄した。この濾過液を氷冷1N 塩酸、重炭酸ナトリウム飽和水溶液及び食塩水で連続的に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させ、無色の油状物質として表題化合物を得た。MS 87.9(M−Boc+1)。
【0165】
段階C:メチルN−[(3R)−3−[tert−ブトキシカルボニル)アミノ]ブチル]−D−アラニナート
エタノール(25mL)中のtert−ブチル[(1R)−1−メチル−3−オキソプロピル]カルバメート(0.75g、3.65mmol)の溶液を、D−アラニンメチルエステル塩酸塩(0.5g、3.57mmol)、ボラン−ピリジン(0.5mL、8M)及び炭酸カリウム(0.5g、3.62mmol)で処理し、この反応混合物を一晩撹拌した。得られた白色の沈殿物を濾過し、クロロホルムで洗浄した。濾過液を蒸発させ、さらに精製せずに次の段階で使用した。MS 175.1(M−Boc+1)。
【0166】
段階D:メチルN−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−N−[(3R)−3−[tert−ブトキシカルボニル)アミノ]ブチル]−D−アラニナート
THF(30mL)中の前の段階から得たメチルN−[(3R)−3−[tert−ブトキシカルボニル)アミノ]ブチル]−D−アラニナートの溶液を、N−ベンジルオキシカルボニルオキシスクシニミド(0.99g、3.6mmol)で処理し、室温にて一晩撹拌した。溶媒を除去し、Biotage(R)システム(シリカゲル、10−75% 酢酸エチル/ヘキサン勾配)を用いてフラッシュクロマトグラフィーにより残渣を精製し、無色の油状物質として表題化合物を得た。MS 431.1(M+Na)。
【0167】
段階E:メチルN−[(3R)−3−アミノブチル]−N−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−D−アラニナート
メチルN−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−N−[(3R)−3−[tert−ブトキシカルボニル)アミノ]ブチル]−D−アラニナート(0.75g、1.8mmol)を室温にて2時間、ジオキサン(10mL)中の4N 塩酸とともに撹拌し、蒸発させた。Biotage(R)システム(シリカゲル、ジクロロメタン中8% メタノール/2N アンモニア)を用いてフラッシュクロマトグラフィーによりその残渣を精製し、無色の油状物質として所望する生成物を得た。MS 309.1(M+1)。
【0168】
段階F:ベンジル(2R,5R)−2,5−ジメチル−3−オキソ−1,4−ジアゼパン−1−カルボキシラート
ジクロロメタン(65mL)中のメチルN−[(3R)−3−アミノブチル]−N−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−D−アラニナート(0.5g、1.6mmol)の溶液に、トリメチルアルミニウム(0.8mL、トルエン中2M)及びトリエチルアミン(0.025mL、0.16mmol)を添加し、この反応混合物を室温にて一晩撹拌した。Celiteを添加し、塩化アンモニウム飽和水溶液を滴下添加することにより、この反応物を不活性化した。形成された白色粒状の固体を濾過し、ジクロロメタンで洗浄した。この濾過液を蒸発させ、Biotage(R)システム(シリカゲル、5% メタノール/ジクロロメタン)を用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、表題化合物を得た。MS 277.2(M+1)。
【0169】
段階G:(3R,7R)−3.7−ジメチル−1,4−ジアゼパン−2−オン
メタノール(15mL)中のベンジル(2R,5R)−2,5−ジメチル−3−オキソ−1,4−ジアゼパン−1−カルボキシラート(160mg)及び10% 炭素担持パラジウム(32mg)の混合物を、室温にて一晩撹拌し、Celiteで濾過し、ジクロロメタン中の10% メタノールで洗浄した。その濾過液を減圧下で濃縮し、表題化合物を得た。MS 143.1(M+1)。
【0170】
基本的に、上記の中間体14の調製に対して述べた方法に従い、表2に挙げた中間体を調製した。
【0171】
表2
【0172】
【化24】

中間体23
【0173】
【化25】

(3R,6R)−ヘキサヒドロ−3,6−ジメチル−2H−1,4−ジアゼピン−2−オン
段階A:3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−メチルプロパン酸
水(30mL)中のDL−3−アミノイソ酪酸(2.06g、20mmol)及び炭酸カリウム(3.0g、22mmol)の撹拌溶液に、ジ−tert−ブチルジカルボネート(22mL、22mmol、THF中1M)の溶液を添加し、室温にて一晩撹拌した。この水性混合液をエーテルで洗浄し、次に、0℃にて、3N 塩酸で慎重に酸性化(pH〜2)し、得られた混濁した混合物を酢酸エチルで抽出した(3x)。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させ、白色固体として、3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−メチルプロパン酸を得た。
【0174】
段階B:tert−ブチル{3−[メトキシ(メチル)アミノ]−2−メチル−3−オキソプロピル}カルバメート
3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ−2−メチルプロパン酸(2.0g、9.9mmol)をアセトニトリル(50mL)に溶解した。この溶液に、HOBT(1.6g、11.85mmol)及びEDC(2.0g、10.4mmol)を添加した。この反応物を室温にて2時間撹拌し、次に、トリエチルアミン(2.8mL、20mmol)及びN,O−ジメチルヒドロキシアミン塩酸塩(2.0g、20mmol)で処理した。この反応混合物を室温にて一晩撹拌した。その反応を水で停止させ、酢酸エチルで抽出した(3x)。合わせた有機抽出物を0.5N 塩酸、重炭酸ナトリウム水溶液及び食塩水で連続的に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。Biotage(R)システム(シリカ、40−100% ヘキサン中酢酸エチル)を用いたフラッシュクロマトグラフィーによりこの未精製生成物を精製し、白色固体としてtert−ブチル{3−[メトキシ(メチル)アミノ]−2−メチル−3−オキソプロピル}カルバメートを得た。MS (M+1−BOC):147。
【0175】
段階C:tert−ブチル(2−メチル−3−オキソプロピル)カルバメート
窒素下で、−40℃にて、THF(40mL)中のtert−ブチル{3−[メトキシ(メチル)アミノ]−2−メチル−3−オキソプロピル}カルバメート(2.2g、8.9mmol)の撹拌溶液に、LAH(10mL、10mmol、THF中1M)の溶液を〜15分間にわたりゆっくりと添加した。−40℃にて30分間撹拌した後、重硫酸ナトリウム飽和水溶液の滴下添加により、この反応混合物を慎重に不活性化し、室温にて1時間撹拌した。Celiteを介してこの混合液を濾過し、その濾過液を氷冷1N 塩酸(2x)、重炭酸ナトリウム飽和水溶液及び食塩水で連続的に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、無色の粘性のある油状物質として、tert−ブチル(2−メチル−3−オキソプロピル)カルバメートを得た。MS(M+1−Boc):88.0。
【0176】
段階D:メチルN−{3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−メチルプロピル}−D−アラニナート
エタノール中のtert−ブチル(2−メチル−3−オキソプロピル)カルバメート(2.0g、8.9mmol)の撹拌溶液に、D−アラニンメチルエステル塩酸塩(1.25g、8.9mmol)を添加し、続いて、炭酸カリウム(0.62g、4.5mmol)を添加した。得られた混合物を室温にて3時間撹拌した。水素化シアノホウ素ナトリウム(0.63g、10mmol)を1度に添加した。この反応混合物を室温にて一晩撹拌した。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、その残渣を水に溶解して、酢酸エチルで抽出した(3x)。合わせた有機抽出物を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させ、無色の粘性のある油状物質として、メチルN−{3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−メチルプロピル}−D−アラニナートを得て、さらに精製せずに使用した。MS(M+1−Boc):175.3。
【0177】
段階E:メチルN−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−N−{3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−メチルプロピル}−D−アラニナート
ジクロロメタン(50mL)中のメチルN−{3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−メチルプロピル}−D−アラニナート(2.5g、〜8.9mmol)の撹拌溶液に、Cbz−OSu(2.25g、9.0mmol)を添加した。得られた混合物を室温にて3日間撹拌した。ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、Biotage(R)システム(シリカ、ヘキサン中25−80% 酢酸エチル)を用いてフラッシュクロマトグラフィーによりこの未精製生成物を精製し、無色の粘性のある油状物質として、メチルN−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−N−{3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−メチルプロピル}−D−アラニナートを得た。MS(M+1−Boc):309.4。
【0178】
段階F:メチルN−(3−アミノ−2−メチルプロピル)−N−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−D−アラニナート
室温にて、2時間、メチルN−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−N−{3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−メチルプロピル}−D−アラニナート(1.6g、3.9mmol)を、ジオキサン(10mL)中の4N 塩酸で処理した。窒素気流下で溶媒を除去し、Biotage(R)システム(シリカ、前もって混合したジクロロメタン中の7% 2Nアンモニア/メタノール)を用いてフラッシュクロマトグラフィーによりこの未精製生成物を精製し、無色の粘性のある油状物質として、メチルN−(3−アミノ−2−メチルプロピル)−N−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−D−アラニナートを得た。MS(M+1):309.4。
【0179】
段階G:ベンジル(2R,6S)−ヘキサヒドロ−2,6−ジメチル−3−オキソ−1H−1,4−ジアゼピン−1−カルボキシレート及びベンジル(2R,6R)−ヘキサヒドロ−2,6−ジメチル−3−オキソ−1H−1,4−ジアゼピン−1−カルボキシレート
ジクロロメタン(60mL)中のメチルN−(3−アミノ−2−メチルプロピル)−N−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−D−アラニナート(0.6g、2.0mmol)の撹拌溶液に、エーテル(1.0mL、2mmol)中のtert−ブチルマグネシウムクロライドの2M溶液を添加し、窒素下で室温にて一晩、この反応物を撹拌した。さらなるマグネシウム剤(1mL、2mmol)を添加し、この反応をさらに1日継続し、次にCellite を添加し、続いて硫酸ナトリウム飽和水溶液を添加することにより不活性化した。この混合液を30分間撹拌し、濾過した。この濾過液を蒸発させた。Biotage(R)システム(シリカ、ヘキサン中60−100% 酢酸エチル)を用いてフラッシュクロマトグラフィーによりこの未精製生成物を精製し、両者とも黄色の粘性のある油状物質として、2種類のジアステレオマーを得たが、先にベンジル(2R,6S)−ヘキサヒドロ−2,6−ジメチル−3−オキソ−1H−1,4−ジアゼピン−1−カルボキシレートを溶出し、遅れて、ベンジル(2S,6R)−ヘキサヒドロ−2,6−ジメチル−3−オキソ−1H−1,4−ジアゼピン−1−カルボキシレートを溶出した。MS(M+1):それぞれ277.3;277.3。
【0180】
段階H:(3R,6R)−ヘキサヒドロ−3,6−ジメチル−2H−1,4−ジアゼピン−2−オン
触媒としてPd/C(30mg)を用いて、エタノール(10mL)中のベンジル(2R,6S)−ヘキサヒドロ−2,6−ジメチル−3−オキソ−1H−1,4−ジアゼピン−1−カルボキシレート(220mg、0.8mmol)の溶液を、水素バルーン下で室温にて一晩撹拌した。この触媒をCeliteで濾過し、ジクロロメタン中の10% メタノールで洗浄した。溶媒を除去して、白色の結晶性固体として、(3R,6R)−ヘキサヒドロ−3,6−ジメチル−2H−1,4−ジアゼピン−2−オンを得た。MS(M+1):143.1。
【0181】
基本的に、中間体23の合成に対して述べた方法と同様の方法で、表3の中間体を調製した。
【0182】
表3
【0183】
【化26】

中間体29
【0184】
【化27】

(9aR)−4−メチルオクタヒドロ−5H−ピロロ[1,2−d][1,4]ジアゼピン−5−オン
段階A:[(2R)−1−(カルボ−tert−ブチルオキシ)ピロリジン−2−イル]アセトニトリル
ジクロロメタン(100mL)中の(R)−N−Boc−プロリノール(4.33g、20mmol)の撹拌溶液に、トリエチルアミン(3.4mL、24mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(250mg、2mmol)及びp−トルエンスルホニルクロライド(4.0mg、20mmol)を添加した。この溶液を室温にて24時間撹拌し、冷(0℃)1N 塩酸、重炭酸ナトリウム飽和水溶液及び食塩水で連続的に洗浄した。この有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、粘性のある黄色の油状物質を得た。このようにして得た生成物をN,N−ジメチルホルムアミド(40mL)に溶解し、シアン化ナトリウムとともに室温にて7日間撹拌し、24時間、80℃に加熱し、次に、酢酸エチルと1N 重炭酸ナトリウム水溶液との間で分配した。通常の水系の処理後、Biotage(R)システム(シリカ、ヘキサン中、勾配5−60% 酢酸エチル)を用いてフラッシュクロマトグラフィーによりこの未精製生成物を精製し、わずかに黄色味を帯びた油状物質として、[(2R)−1−(カルボ−tert−ブチルオキシ)ピロリジン−2−イル]アセトニトリルを得た。
【0185】
段階B:[(2R)−1−ピルボイルピロリジン−2−イル]アセトニトリル
TFA及びジクロロメタン(1:1 混合液、12mL)中で、[(2R)−1−(カルボ−tert−ブチルオキシ)ピロリジン−2−イル]アセトニトリル(1.0g、4.75mmol)を室温にて3時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、その残渣をアセトニトリル(25mL)に溶解させた。この溶液に、ピルビン酸(450mg、5.0mmol)、続いてHOBT(0.8g、6mmol)、EDC(1.0g、5.5mmol)及びトリエチルアミン(1.0mL、7.0mmol)を添加した。この反応物を室温にて一晩撹拌した。溶媒を除去した後、Biotage(R)システム(シリカ、ヘキサン中、30−90% 酢酸エチル)を用いてフラッシュクロマトグラフィーによりこの未精製生成物を精製し、黄色の油状物質として、[(2R)−1−ピルボイルピロリジン−2−イル]アセトニトリルを得た。MS(M+Na):203.2。
【0186】
段階C:(9aR)−4−メチルオクタヒドロ−5H−ピロロ[1,2−d][1,4]ジアゼピン−5−オン
[(2R)−1−ピルボイルピロリジン−2−イル]アセトニトリル(250mg、1.38mmol)をエタノール(30mL)に溶解した。酸化白金(25mg)及びクロロホルム(0.25mL)の存在下、水素バルーン下で、この反応物を室温にて3日間撹拌した。触媒をCeliteで濾過し、ジクロロメタン中の10% メタノールで洗浄した。合わせた有機層を蒸発させ、Biotage(R)システム(シリカ、ヘキサン中、5−60% 酢酸エチル)を用いてフラッシュクロマトグラフィーにより未精製生成物を精製し、わずかに黄色味を帯びた油状物質として、ジアステレオマー混合物 4−メチルオクタヒドロ−5H−ピロロ[1,2−d][1,4]ジアゼピン−5−オンを得た。MS(M+1−Boc):169.2。
【0187】
(実施例1)
【0188】
【化28】

(3R,7R)−4−[(3R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3,7−ジメチル−1,4−ジアゼパン−2−オン
段階A:(3R,7R)−4−[(3R)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3,7−ジメチル−1,4−ジアゼパン−2−オン
−20℃から−30℃において、ジクロロメタン 10mL中の(3R)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン酸(中間体3、210mg、0.63mmol)及びN−メチルモルホリン(0.008mL、0.7mmol)の溶液に、クロロギ酸イソブチル(0.085mL、0.63mmol)を添加し、得られた混合液を1時間撹拌した。ジクロロメタン(5mL)中の(3R,7R)−3,7−ジメチル−1,4−ジアゼパン−2−オンの溶液を上記溶液に添加した。この反応混合物を室温まで温め、一晩撹拌を続けた。この溶液を直接、Biotage(R)システム(シリカゲル、5% メタノール/ジクロロメタン)を用いたフラッシュクロマトグラフィーに供し、白色の固体として、表題化合物を得た。MS 358(M−Boc+1)。
【0189】
段階B:(3R,7R)−4−[(3R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3,7−ジメチル−1,4−ジアゼパン−2−オン、塩酸塩
ジオキサン(4mL、4N)中の4N 塩酸 4mL中の(3R,7R)−4−[(3R)−3[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−3,7−ジメチル−1,4−ジアゼパン−2−オンの溶液(175mg、0.38mmol)を2時間撹拌し、濃縮した。その残渣を真空下で一晩乾燥させ、白色の固体として、表題化合物を得た。MS 358.2(M+1)。
【0190】
基本的に、実施例1に対して述べた方法に従い、表4に挙げた実施例を調製した。
【0191】
表4
【0192】
【化29】

(実施例10)
【0193】
【化30】

(3R,6S)−4−[(3R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]ヘキサヒドロ−3,6−ジメチル−2H−1,4−ジアゼピン−2−オン
段階A:(3R,6S)−4−[(3R)−3[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]ヘキサヒドロ−3,6−ジメチル−2H−1,4−ジアゼピン−2−オン
アセトニトリル(10mL)中の(3R)−3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン酸(中間体3、120mg、0.36mmol)の撹拌溶液に、HOBT(60mg、0.43mmol)及びEDC(75mg、0.4mmol)を添加した。この反応物を室温にて1時間撹拌し、次に、(3R,6R)−ヘキサヒドロ−3,6−ジメチル−2H−1,4−ジアゼピン−2−オン(中間体23、50mg、0.35mmol)で処理した。この反応物を室温にて一晩撹拌した。溶媒を除去した後、Biotage(R)システム(シリカ、ジクロロメタン中、6% メタノール)を用いたフラッシュクロマトグラフィーによりこの未精製生成物を精製し、白色固体として、表題化合物を得た。MS(M+1−Boc):358.0。
【0194】
段階B:(3R,6S)−4−[(3R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]ヘキサヒドロ−3,6−ジメチル−2H−1,4−ジアゼピン−2−オン 塩酸塩
(3R,6S)−4−[(3R)−3[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]ヘキサヒドロ−3,6−ジメチル−2H−1,4−ジアゼピン−2−オン(135mg、0.3mmol)を、室温にて2時間、ジオキサン(2mL)中の4N 塩酸で処理した。窒素気流下でこの溶媒を除去し、分取TLCプレート(シリカ、ジクロロメタン中、10% 2N アンモニア/メタノール)でこの未精製生成物を精製し、白色固体として、表題化合物を得た。MS(M+1):358.2。
【0195】
基本的に、実施例10の合成に対して述べた方法と同様の方法により、次の実施例を調製した。
【0196】
表5
【0197】
【化31】


(実施例16)
【0198】
【化32】

(4R,9aR)−3−[(3R)−3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタノイル]−4−メチルオクタヒドロ−5H−ピロロ[1,2−d][1,4]ジアゼピン−5−オン
実施例10の合成に対して概説した手段に従い、中間体29から表題化合物を調製した。脱保護前に、2種のジアステレオマーをChiralCell ODカラムを用いて、ヘキサン中の10% エタノールで溶出して分離した。遅れて溶出されるジアステレオマー、tert−ブチル[(1R)−3−[(4R,9aR)−4−メチル−5−オキソオクタヒドロ−3H−ピロロ[1,2−d][1,4]ジアゼピン−3−イル]−3−オキソ−1−(2,4,5−トリフルオロベンジル)プロピル]カルバメートを最終産物を得るために用いた。MS(M+1):384.4。
【0199】
医薬製剤の例
経口用医薬組成物の具体的な実施形態として、100mgの効力錠剤は、本発明のいずれかの化合物 100mg、微結晶性セルロース 268mg、クロスカルメロースナトリウム 20mg及びステアリン酸マグネシウム 4mgから構成される。まず、活性な、微結晶性セルロースとクロスカルメロースとを混合する。次いで、ステアリン酸マグネシウムによってこの混合物を潤滑化し、圧縮して錠剤にする。
【0200】
本発明のいくつかの具体的な実施形態を参照しながら、本発明を記載し、説明してきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、操作及びプロトコールに対して様々な改変、変更、修飾、置換、削除又は付加を施し得ることが、当業者には自明であろう。例えば、上述されている本発明の化合物を用いて何らかの適応症の治療を受けている哺乳動物の反応性における変動の結果、本明細書に具体的に記載されている投薬量以外の有効投薬量を適用できる場合がある。観察される具体的な薬理学的応答は、選択した具体的な活性化合物又は薬学的担体の存否、並びに製剤の種類及び使用される投与の様式に従い、これらに依存して変動する場合があり、本発明の目的及び実施に応じて、結果にこのような予想される変動又は差異が生じることが想定される。従って、本発明は、特許請求の範囲により定義されるものであり、係る特許請求の範囲は、合理的な限度で最も広く解釈されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

又は医薬適合性のその塩。
(式中、
各nは、独立に、0、1又は2であり;
Arは、1個から5個のR置換基で置換されているフェニルであり;
は、
水素、
1−10アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル及びフェニル−C1−3アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)、
(CH−アリール(アリールは、置換されていないか、又はハロゲン、CN、ヒドロキシ、R、OR、NHSO、NRSO、SO、COH及びC1−6アルキルオキシカルボニルから独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロアリール(ヘテロアリールは、置換されていないか、又はヒドロキシ、ハロゲン、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロシクリル(ヘテロシクリルは、置換されていないか、又はオキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され;(CHのいずれのメチレン(CH)炭素原子も、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキル(置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から2個の基で置換されており;
各Rは、
水素、
ハロゲン、
シアノ、
ヒドロキシ、
1−6アルキル(置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)、
1−6アルコキシ(置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)、
カルボキシ、
アルコキシカルボニル、
アミノ、
NHR
NR
NHSO
NRSO
NHCOR
NRCOR
NHCO
NRCO
SO
SOHN
SONHR及び
SONRからなる群から独立に選択され;
各Rは、独立にC1−6アルキル(置換されていないか、又はハロゲン、COH及びC1−6アルキルオキシカルボニルから独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)であり;
、R及びR10は、
水素、
シアノ、
カルボキシ、
1−6アルキルオキシカルボニル、
1−10アルキル(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル及びフェニル−C1−3アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)、
(CH−アリール(アリールは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロアリール(ヘテロアリールは、置換されていないか、又はヒドロキシ、ハロゲン、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロシクリル(ヘテロシクリルは、置換されていないか、又はオキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)、
(CHCONR1213(R12及びR13は、水素、テトラゾリル、チアゾリル、(CH−フェニル、(CH−C3−6シクロアルキル及びC1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されており、フェニル及びシクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)からなる群から独立に選択されるか;又はR12及びR13は、それらが結合している窒素原子と一緒に、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選択される複素環を形成し、ここで、該複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)
からなる群からそれぞれ独立に選択され;
(CHのいずれのメチレン(CH)炭素原子も、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキル(置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から2個の基で置換されており;
は、ハロゲン、ヒドロキシ及びRからなる群から選択され;
、R及びR11は、それぞれ独立に、水素又はC1−6アルキルであるか;又は、R及びRは、Rが結合している窒素原子と一緒に、アゼチジン、ピロリジン及びピペリジンから選択される複素環を形成し、該複素環は、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されており;
、R、R及びRのうち少なくとも1つが水素ではないという条件のもと、Rは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン又はC1−6アルキルからなる群から選択される。)
【請求項2】
の印が付された炭素原子が、R立体配置をとる、式Ia:
【化2】

の、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル及びメチルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、水素、クロロ又はフルオロである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が、
水素、
1−6アルキル(アルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル及びフェニル−C1−3アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)及び
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)からなる群から選択され;(CHのいずれのメチレン(CH)炭素原子も、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキル(置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から2個の基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
が、水素、メチル及びシクロプロピルからなる群から選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
が、水素である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
が、
水素、
1−6アルキル(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル及びフェニル−C1−3アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)、
(CH−アリール(アリールは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロアリール(ヘテロアリールは、置換されていないか、又はヒドロキシ、ハロゲン、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され;(CHのいずれのメチレン(CH)炭素原子も、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキル(置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から2個の基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
が、
水素、
CH
CHCH
CHCF
CH(2−ピリジル)、
CHPh、
CH(2−F−Ph)、
CH(2−Me−Ph)及び
CH(2−CF−Ph)からなる群から選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
が、
水素、
1−6アルキル(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル及びフェニル−C1−3アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)、
(CH−アリール(アリールは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)、
(CH−ヘテロアリール(ヘテロアリールは、置換されていないか、又はヒドロキシ、ハロゲン、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)、
(CH−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から3個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択され;(CHのいずれのメチレン(CH)炭素原子も、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキル(置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から2個の基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
が、
水素、
1−6アルキル(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル及びフェニル−C1−3アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)及び
(CH−アリール(アリールは、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)、
からなる群から選択され;(CHのメチレン(CH)炭素原子が、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−4アルキル(置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から2個の基で置換されている、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
が、
水素、
CH
CHCH
CF
CHPh及び
CH(2−F−Ph)からなる群から選択される、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
が、
水素、
ヒドロキシ、
ハロゲン及び
1−6アルキル(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル及びフェニル−C1−3アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
が、水素である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
10が、
水素及び
1−6アルキル(置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、カルボキシ、C1−6アルキルオキシカルボニル及びフェニル−C1−3アルコキシ(アルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている。)
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
10が、水素である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
、R及びR11が、水素及びメチルからそれぞれ独立に選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
、R及びR11が、水素である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
が、水素、ハロゲン及びメチルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
が、水素である、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
が、メチルであり、R、R、R、R10及びR11が、水素である、請求項19に記載の化合物。
【請求項22】
が、
水素、
CH
CHCH
CHCF
CH(2−ピリジル)、
CHPh、
CH(2−F−Ph)、
CH(2−Me−Ph)及び
CH(2−CF−Ph)
からなる群から選択される、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
が水素でないという条件のもと、R、R、R、R、R10及びR11が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
が、
水素、
CH
CHCH
CHCF
CH(2−ピリジル)、
CHPh、
CH(2−F−Ph)、
CH(2−Me−Ph)及び
CH(2−CF−Ph)
からなる群から選択され;
が、
CH
CHCH
CF
CHPh及び
CH(2−F−Ph)
からなる群から選択される、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
が、水素である、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
**及び***で印を付したステレオジェニック(stereogenic)な炭素原子が、式Ib:
【化3】

で示されるとおりの立体配置をとる、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
及びRが、Rが結合している窒素原子と一緒に、アゼチジン、ピロリジン及びピペリジンから選択される複素環を形成し、該複素環が、置換されていないか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1−6アルキル及びC1−6アルコキシ(アルキル及びアルコキシは、置換されていないか、又は1個から5個のハロゲンで置換されている。)から独立に選択される1個から5個の置換基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項28】
及びRが、Rが結合している窒素原子と一緒に、ピロリジン環を形成する、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
が、
水素、
CH
CHCH
CHCF
CH(2−ピリジル)、
CHPh、
CH(2−F−Ph)、
CH(2−Me−Ph)及び
CH(2−CF−Ph)からなる群から選択される、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
【化4】


からなる群から選択される化合物又はその医薬適合性の塩。
【請求項31】
請求項1に記載の化合物と、医薬適合性の担体と、を含有する医薬組成物。
【請求項32】
哺乳類における高血糖症、2型糖尿病、肥満及び脂質疾患からなる群から選択される症状の治療において使用するための医薬品の製造における、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項33】
前記脂質疾患が、異脂肪血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL及び高LDLからなる群から選択される、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
付加的にメトホルミンを含有する、請求項31に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2007−500704(P2007−500704A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521974(P2006−521974)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/024052
【国際公開番号】WO2005/011581
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】