説明

糖耐性を改善するためのアミノ酸組成物

イソロイシン、ロイシン、バリン、システインおよびメチオニンを、特定された量、重量比またはその両方で含んでなる、低カロリー飲料または液などの組成物を開示する。該組成物は、糖耐性不全または糖尿病に罹患した個体の治療に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択されたアミノ酸混合物を含む組成物、および糖耐性不全または糖尿病に罹患した個体における該組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、インスリンの産生不全またはインスリンに対する感受性の低下により生じる炭水化物代謝障害である。糖尿病を有する者においては、身体の細胞の正常なグルコース利用能が抑制され、それにより血糖値が上昇する。より多量のグルコースが血中に蓄積するため、過剰なレベルの糖が尿中に排泄される。糖尿病の付随症状には、尿量増加、頻尿、渇き、空腹、体重減少および虚弱が含まれる。
【0003】
2つのタイプの糖尿病が存在する。1型糖尿病はインスリン依存型糖尿病であり、それに対してはインスリン投与が必要である。1型糖尿病の患者においては、膵臓からインスリンが分泌されず、したがって注射または吸入によりインスリンを摂取しなければならない。2型糖尿病は食事制限、経口抗過血糖剤および/またはインスリン投与により抑制される。2型糖尿病はインスリンの膵分泌遅延および標的組織へのインスリンの作用に対する感受性の低下により生じると考えられうる。
【0004】
糖尿病による合併症は、しばしば、心血管系に影響を及ぼし、そしてこれは糖尿病関連死の大多数の原因となる。他の重大な合併症には、糖尿病性網膜症、腎臓病、末梢性ニューロパシーおよび/または頻繁な感染が含まれる。
【0005】
体内でインスリンを産生し得ない糖尿病に罹患した個体の治療は、インスリンの定期的な注射または吸入による投与を含む。この目的には、ブタ、ヒツジおよびウシの膵臓抽出物に由来するインスリンが使用されうるが、現在では多数の個体は、組換えDNA技術により製造された合成ヒトインスリンを使用している。
【0006】
糖尿病の治療方法の1つは、正常体重への到達およびその維持を促進するよう意図された制限食を糖尿病罹患個体に摂取させることによるカロリーおよび炭水化物摂取の調節または制限を含む。カロリーおよび炭水化物の摂取の制限は、理論上は有効であるが、困難な場合が多く、したがってしばしば患者の遵守不良を招く。
【0007】
ある糖尿病個体においては、血糖値を許容目標範囲内に維持するのを補助するために、医薬も使用される。これらの医薬は、最も典型的には、膵臓によるインスリン放出を刺激し、身体のインスリン利用能を改善し、および/または肝臓によるグルコースの産生を低下させる。しかし、これらの医薬のそれぞれは、欠点となる副作用を有することがあり、それらはいずれも非糖尿病個体には不適当であり、種々の医薬は長期使用後の多数の個体において有効性を失うことが多いため、これらの投薬では不十分である。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、糖耐性不全または糖尿病に罹患した個体の治療のための組成物、および糖耐性不全または糖尿病に罹患した個体の治療におけるそれらの組成物の使用方法に関する。本発明は、所定の量および/または重量比の或るアミノ酸の組合せの投与が、炭水化物負荷に対する驚くべき血糖応答低下をもたらすという知見に基づくものである。
【0009】
本発明の1つの態様は、独立して少なくとも約10:1の、イソロイシン対ロイシン(すなわち、ロイシンに対するイソロイシンの比。以下同様)、イソロイシン対バリン、イソロイシン対システイン、およびイソロイシン対メチオニンの重量比で、イソロイシン、ロイシン、バリン、システインおよびメチオニンを含んでなる組成物を含む。
【0010】
本発明のもう1つの態様は、約1ないし約200mg/kg体重のイソロイシン、約0.001ないし約10mg/kg体重のロイシン、約0.001ないし約10mg/kg体重のバリン、約0.001ないし約10mg/kg体重のシステインおよび約0.001ないし約10mg/kg体重のメチオニンを含んでなり、イソロイシン対ロイシン、イソロイシン対バリン、イソロイシン対システイン、およびイソロイシン対メチオニンの重量比が、それぞれ独立して少なくとも約10:1である、糖耐性不全または糖尿病に罹患した個体の治療に使用する組成物を含む。
【0011】
本発明のもう1つの態様は、約10ないし約200mg/kg体重のイソロイシン、約0.01ないし約10mg/kg体重のロイシン、約0.01ないし約10mg/kg体重のバリン、約0.01ないし約10mg/kg体重のシステインおよび約0.01ないし約10mg/kg体重のメチオニンを含んでなる、糖耐性不全または糖尿病に罹患した個体の治療に使用する組成物を含む。
【0012】
本発明のもう1つの態様は、(A)マルチトール、エリトリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、グリセロール、イソルモルト(isolmalt)およびラクチトールの少なくとも1つを含む、全カロリーに対する割合として約2%ないし約98%の炭水化物、ならびに(B)本明細書に記載のいずれかのアミノ酸混合物(例えば、イソロイシン、ロイシン、バリン、システインおよびメチオニンを、それぞれ独立して少なくとも約10:1のイソロイシン対ロイシン、イソロイシン対バリン、イソロイシン対システイン、およびイソロイシン対メチオニンの重量比で含むもの)を含む、約2%ないし約98%のタンパク質源を含んでなる低カロリー飲料または他の液を含む。これらの飲料または液は、改良された香味を有し、糖耐性不全または糖尿病に罹患した個体の治療に特に有用である。
【0013】
本発明のもう1つの態様は、糖耐性不全または糖尿病に罹患した個体の治療方法であって、本明細書にの組成物の有効量をそのような個体に投与することを含んでなる方法に関する。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明の組成物および対応方法は、分枝アミノ酸および硫黄含有アミノ酸の選択された混合物を含有する組成物に関する。本発明の組成物および方法のこれらの及び他の必須の又は随意的な(すなわち、所望により用いうる)要素または限定を以下に詳細に説明する。
【0015】
本発明の組成物および方法は、本明細書に記載の本発明の必須の要素および限定ならびに本明細書に記載の又は栄養もしくは医薬用途において有用な任意の追加的または随意的な成分、要素または限定を含む、またはそれらからなる、またはそれらから実質的になる。
【0016】
特に示さない限り、本明細書中で用いるすべての割合(%)、部および比は、全組成物の重量に基づくものである。特に示さない限り、挙げられている成分に関するすべてのそのような重量は活性レベルに基づくものであり、したがって、商業的に入手可能な物質に含まれうる溶媒または副産物を含まない。
【0017】
特に示さない限り、本明細書中で用いるすべての数値範囲は、明示された「約」なる語が先行するかどうかにかかわらず、その語が先行すると意図され理解される。
【0018】
特に示さない限り、あるいは言及されている文脈に明らかに矛盾すると示唆されない限り、本発明の単数形の特徴または限定に対する全ての言及は、対応する複数形の特徴または限定を含むものとし、その逆も成立する。
【0019】
特に示さない限り、あるいは言及されている組合せがなされる状況に明らかに矛盾すると示唆されない限り、本明細書中で用いる方法またはプロセス工程の全ての組合せは任意の順序で実施されうる。
【0020】
本発明の組成物および方法は、本明細書に記載のいずれの随意的成分をも実質的に含有しないことも可能である。この場合、「実質的に含有しない」なる語は、選択された組成物が該随意的成分を機能量未満しか含有しないこと(例えば、そのような随意的成分を0重量%含有すること)を意味する。
【0021】
製品形態
本発明の組成物は、経口または非経口投与のための任意の公知の又は適当な製品(産物)形態で製剤化されうる。経口製品形態が好ましく、本発明での使用に適した任意の固体、液体または粉末製剤を包含する。ただし、そのような製剤は、選択された製品形態からの必須成分および他の選択された成分の安全かつ有効な経口運搬を可能にするものでなければならない。
【0022】
本発明での使用に適した固体栄養製品形態の非限定的な具体例には、スナックおよび食事代替品、例えばバー、スティック、クッキーまたはパンまたは他の焼いた物、凍結液、キャンディー、朝食シリアル、粉末または顆粒化固体または他の粒状物、スナックチップまたは軽食、冷凍またはレトルト食品などが含まれる。
【0023】
本発明での使用に適した液体製品形態の非限定的な具体例には、スナックおよび食事代替製品、暖かい又は冷たい飲料、炭酸または非炭酸の飲料、ジュースまたは他の酸性化飲料、ミルク(乳)またはダイズに基づく飲料、シェイク(shake)、コーヒー、茶、経腸栄養組成物などが含まれる。これらの液体組成物は、最も典型的には、懸濁液または乳濁液として製剤化されるが、溶液、液体ゲルなどのような任意の他の適当な形態にも製剤化されうる。
【0024】
適当な経口製品形態の他の非限定的な具体例には、半固体または半液体組成物(例えば、プリン、ゲル)、およびより通常の製品形態、例えばカプセル、錠剤、丸剤などが含まれる。意図される消費者に所定のアミノ酸混合物の有効量を提供するための組成物の量は、1つ又は複数の個別の剤形(例えば、1個の錠剤または複数個の錠剤)中に含有されうる。
【0025】
ロゼンジ、錠剤(例えば、噛み砕き可能な錠剤、被覆錠剤など)、パスタ剤またはゲル剤のような製品形態の場合、アミノ酸混合物は、最も典型的には、製品形態に対して約5ないし約50重量%、例えば約15ないし約33重量%、そしてまた例えば約15ないし約25重量%の範囲の濃度で製剤化されうる(すべて、賦形剤、または炭水化物、酸味料、香料および着色剤のような他の成分と一緒にされた場合)。これらの製品形態中の炭水化物は、好ましくは、該炭水化物に対して約5ないし100重量%の濃度範囲の非還元糖を含有する。これらの実施形態における酸味料の非限定的な具体例には、唾液分泌を促進しアミノ酸の苦味または出し汁の臭気を隠すための、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸またはそれらの組合せが含まれる。
【0026】
アミノ酸混合物
本発明の組成物は、分枝アミノ酸および硫黄含有アミノ酸の選択された混合物を含み、前者にはバリン(VAL)、ロイシン(LEU)およびイソロイシン(ILE)が含まれ、後者にはシステイン(CYS)およびメチオニン(MET)が含まれる。
【0027】
したがって、本発明の組成物は、少なくともイソロイシン、ロイシン、バリン、システインおよびメチオニンのアミノ酸混合物を含み、その量は、糖耐性不全または糖尿病の少なくとも1つの有効な治療をもたらすのに十分なものであるべきである。
【0028】
本発明の1つの実施形態においては、該組成物は、約1.0ないし約200mg/kg体重のイソロイシン、約0.001ないし約10mg/kg体重のロイシン、約0.001ないし約10mg/kg体重のバリン、約0.001ないし約10mg/kg体重のシステイン、および約0.001ないし約10mg/kg体重のメチオニンを含有する。体重は、該組成物を投与する対象または患者の体重を意味する。
【0029】
本発明のもう1つの実施形態においては、該組成物は、約120ないし約180mg/kg体重のイソロイシン、約0.25ないし約7.5mg/kg体重のロイシン、約0.25ないし約7.5mg/kg体重のバリン、約0.25ないし約7.5mg/kg体重のシステイン、および約0.2ないし約5mg/kg体重のメチオニンを含有する。
【0030】
本発明のもう1つの実施形態においては、該組成物は、約130ないし約170mg/kg体重のイソロイシン、約0.5ないし約5mg/kg体重のロイシン、約0.5ないし約5mg/kg体重のバリン、約0.5ないし約5mg/kg体重のシステイン、および約0.3ないし約3mg/kg体重のメチオニンを含有する。
【0031】
選択された混合物において使用するアミノ酸の量は、少なくとも約10:1、例えば少なくとも約50:1、そしてまた例えば少なくとも約100:1、そしてまた例えば500:1ないし10:1の、硫黄含有アミノ酸に対する分枝アミノ酸の重量比(分枝アミノ酸:硫黄含有アミノ酸)としても特徴づけられうる。
【0032】
選択された混合物において使用するアミノ酸の量は、糖耐性不全または糖尿病の少なくとも1つを治療する効力に最終的に寄与するアミノ酸の他の所定の重量比によっても特徴づけられうる。
【0033】
本発明の1つのそのような実施形態においては、該組成物は、それぞれ独立して少なくとも約10:1である、イソロイシン対ロイシン、イソロイシン対バリン、イソロイシン対システイン、およびイソロイシン対メチオニンの重量比を有する。
【0034】
もう1つの実施形態においては、イソロイシン対ロイシン、イソロイシン対バリン、イソロイシン対システイン、イソロイシン対メチオニンの少なくとも1つの(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、および全て)重量比は少なくとも約50:1、例えば少なくとも約100:1、そしてまた例えば約50:1ないし約500:1である。
【0035】
本発明の組成物および方法において使用する個々のアミノ酸は、アミノ酸エステルまたはアシル化誘導体、無機もしくは有機塩基と塩形成したアミノ酸を含む任意の公知または通常のアミノ酸源から誘導または供給されうる。該エステル化形態は、しばしば、直鎖状または分枝アルコールから誘導され、該塩形成形態は、しばしば、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩などを包含する。
【0036】
本発明のアミノ酸混合物において使用する個々のアミノ酸には、いずれのタンパク質または他のポリペプチド構造にも結合していない化学的に独立したアミノ酸が含まれる。それほど好ましいわけではないが、該アミノ酸は、所定の混合物におけるアミノ酸の必要な量および/または重量比を与える合成ポリペプチドによっても供給されうる。該組成物は更に、天然または無傷のタンパク質、更にはそれらのポリペプチド断片を含みうるが、そのようなタンパク質または断片におけるアミノ酸は、本明細書に記載のアミノ酸混合物における量および/または重量比を含む、必要なアミノ酸の選択の決定においては考慮されない。
【0037】
所定の混合物におけるアミノ酸は、LもしくはRの立体配置またはそれらの混合体のものでありうるが、該製剤において使用するほとんどのアミノ酸は、典型的には、L配置のものである。本発明において用いるアミノ酸は、3050 Spruce Street,St.Louis,Missouriに営業所を有するSigma−Aldrich Corporationなどの多種多様な原料供給業者から商業的に入手可能である。
【0038】
本発明の組成物が液体形態(最も典型的には経口液体または飲料)である場合、あるいは粉末実施形態物を還元(reconstitute)して経口液体組成物を得る場合、該液体組成物のpHは対象への適当な投与(例えば、経口投与)に適したものである。1つのそのような液体実施形態においては、該組成物は約2.5ないし約8.0、例えば約2.7ないし約7.0、そしてまた例えば約3.0ないし約5.5、そしてまた例えば約3.0ないし約5.0のpHを有する。
【0039】
本発明の組成物は更に1以上の補足アミノ酸を含むことが可能であり、それらの非限定的な具体例には、アスパラギン酸(ASP)、トレオニン(THR)、セリン(SER)、グルタミン酸(GLU)、プロリン(PRO)、グリシン(GLY)、アラニン(ALA)、チロシン(TYR)、ヒスチジン(HIS)、リシン(LYS)、アルギニン(ARG)、メチオニン(MET)、トリプトファン(TRY)、フェニルアラニン(PHE)およびそれらの組合せが含まれる。該組成物は、糖耐性不全または糖尿病の少なくとも1つの治療をもたらす1以上の(例えば、少なくとも約2またはそれ以上、および少なくとも約5またはそれ以上)の補足アミノ酸の十分な量を含有しうる。
【0040】
本発明の1つの実施形態においては、該組成物は、アスパラギン酸およびグルタミン酸のそれぞれの約0.01ないし約30mg/kg体重(例えば約1ないし約30mg/kg体重、そしてまた例えば約5ないし約20mg/kg体重);トレオニン、セリン、プロリン、ヒスチジンおよびリシンのそれぞれの約0.001ないし約10mg/kg体重(例えば約0.1ないし約10mg/kg体重、そしてまた例えば約0.5ないし約5mg/kg体重);ならびにグリシン、アラニン、チロシン、アルギニンおよびトリプトファンのそれぞれの約0.001ないし約20mg/kg(例えば約0.1ないし約20mg/kg体重、そしてまた例えば約1ないし約10mg/kg体重)の1以上を含有しうる。
【0041】
いくつかの場合には、本発明の組成物はフェニルアラニンをほとんど又は全く含有しない。例えば、該組成物はフェニルアラニンを約10mg/kg体重未満または約5重量%未満しか含有しない。もう1つの実施形態においては、該組成物は、約5mg/kg体重のフェニルアラニンを含有する。さらにもう1つの実施形態においては、該組成物はフェニルアラニンを全く含有しないか、または1mg/kg体重未満のフェニルアラニンを含有する。
【0042】
主要栄養素
本発明の組成物は更に、脂肪源、炭水化物源およびタンパク質源を含む1以上の他の多量栄養素を(すべて、本明細書に記載のアミノ酸混合物に加えて)含みうる。
【0043】
随意的な多量栄養素は、その他の必須または添加成分と共に、1杯(serving)または1用量当たり、好ましくは非分割の1杯または1用量当たり、約1000kcalまで、例えば約25kcalないし約900kcal、そしてまた例えば約75kcalないし約700kcal、そしてまた例えば約100kcalないし約500kcal、そしてまた例えば約150kcalないし約400kcal、そしてまた例えば約200kcalないし約300kcalのエネルギーを供給しうる。
【0044】
タンパク質、脂質およびタンパク質の多種多様な起源およびタイプが公知であり、本明細書に記載の種々の製品において使用されうる。ただし、選択される多量栄養素は経口投与の場合に安全かつ有効であり、必須成分および他の添加成分に適合しうるものでなければならない。
【0045】
本発明の組成物における使用に適した炭水化物は単純体、複合体またはそれらの変形体もしくは組合せ体でありうる。適当な炭水化物の非限定的な具体例には、加水分解または修飾されたデンプンまたはコーンスターチ、マルトデキストリン、グルコース重合体、スクロース、コーンシロップ、コーンシロップ固体、コメ由来炭水化物グルコース、フルクトース、ラクトース、高フルクトースコーンシロップ、消化不能なオリゴ糖(例えば、フルクトオリゴ糖)、可溶性または不溶性繊維、ハチミツ、糖アルコール(例えば、マンニトール、エリトリトール、ソルビトール)およびそれらの組合せが含まれる。
【0046】
本発明の組成物における使用に適したタンパク質には、本明細書に記載のアミノ酸混合物成分に加えて、加水分解、部分加水分解または非加水分解タンパク質またはタンパク質源が含まれ、これらは、任意の公知の又は適当なタンパク質源、例えばミルク(乳)(例えば、カゼイン、ホエー)、動物(例えば、肉、魚)、穀類(例えば、コメ、トウモロコシ)、野菜(例えば、ダイズ)またはそれらの組合せから誘導されうる。
【0047】
本発明の組成物における使用に適した脂肪には、ヤシ油、分画ヤシ油、ダイズ油、トウモロコシ油、オリーブ油、サフラワー油、高オレイン酸サフラワー油、MCT油(中鎖トリグリセリド)、ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、パーム油およびパーム核油、オパームオレイン、カノラ油、水産油脂、綿実油およびそれらの組合せが含まれる。
【0048】
本発明の組成物中の脂肪、タンパク質および炭水化物の濃度または量は、個々の製品形態(例えば、固体、液体、粉末)ならびに種々の他の製剤および意図される食事需要によって相当異なりうる。これらの多量栄養素は、最も典型的には、以下の表に示すカロリー範囲(実施形態AないしD)のいずれかで製剤化される。
【0049】
【表1】

【0050】
他の随意的成分
本発明の組成物は更に、該製品の物理的、化学的、美的もしくは加工特性を修飾し又は標的集団において使用された場合に医薬もしくは追加的な栄養成分として機能しうる他の随意的成分を含みうる。多数のそのような随意的成分は公知であるか、または医療用食品または他の栄養製品もしくは医薬剤形における使用に適しており、本発明における組成物においても使用されうる。ただし、そのような随意的成分は経口投与の場合に安全であり、選択された製品形態における必須成分および他の成分に適合しうるものでなければならない。
【0051】
そのような随意的成分の非限定的な具体例には、保存剤、抗酸化剤、乳化剤、バッファー、医薬活性物、本明細書に記載の追加的な栄養素、着色剤、香料、増粘剤および安定剤、乳化剤、滑沢剤などが含まれうる。
【0052】
本発明の組成物は更に、甘味料、好ましくは、例えば少なくとも1つの糖アルコール、例えばマンニトール、エリトリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、イソルモルト(isolmalt)およびラクチトール(lactitol)、そしてまた好ましくは例えば少なくとも1つの人工または強力甘味料、例えばアセスルファムK、アスパルテーム、スクラロース、サッカリン、ステビアおよびタガトースを含みうる。これらの甘味料、特に、糖アルコールと人工甘味料との組合せは、望ましい有利なプロファイルを有する本発明の液体飲料実施形態の製剤化に特に有用である。これらの甘味料の組合せは、液体飲料へのアミノ酸の添加に伴うことがある望ましくない香味を隠すのに特に有効である。該飲料中の随意的な糖アルコールの濃度は該飲料に対して少なくとも約0.01重量%、例えば0.1重量%ないし約10重量%、そしてまた例えば約1重量%ないし約6重量%の範囲でありうる。随意的な人工甘味料の濃度は該飲料に対して約0.01重量%、例えば約0.05重量%ないし約5重量%、そしてまた例えば約0.1重量%ないし約1.0重量%の範囲でありうる。
【0053】
本発明の組成物は更に、種々の他のビタミンまたは関連栄養素のいずれかを含みうる。それらの非限定的な具体例には、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、血アミン、リボフラビン、ピリドキシン、ビタミンB12、カロテノイド(例えば、ベータ−カロテン、ゼアキサンチン、ルテイン、リコペン)、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC、コリン、イノシトール、それらの塩および誘導体ならびにそれらの組合せが含まれる。
【0054】
該組成物は更に、種々の他の追加的なミネラルのいずれかを含みうる。それらの非限定的な具体例には、カルシウム、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、銅、ナトリウム、カリウム、モリブデン、クロム、クロリドおよびそれらの組合せが含まれる。
【0055】
低カロリー飲料または液
本発明の組成物には、本明細書に記載のアミノ酸混合物に伴う望ましくない香味を隠し又は最小限に抑えるように製剤化された低カロリー飲料または他の液体が含まれる。
【0056】
これらの低カロリー飲料または液には、全カロリーに対する割合(%)として約2%ないし約98%のタンパク質源、例えば本明細書に記載のアミノ酸混合物のいずれか、例えばイソロイシン、ロイシン、バリン、システインおよびメチオニンをそれぞれ独立して少なくとも約10:1のイソロイシン対ロイシン、イソロイシン対バリン、イソロイシン対システイン、およびイソロイシン対メチオニンの重量比で含むアミノ酸混合物;ならびに全カロリーに対する割合(%)として約2%ないし約98%の炭水化物、例えばマンニトール、エリトリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、グリセロール、イソルモルト(isolmalt)およびラクチトールの少なくとも1つを含む実施形態が含まれ、この場合、該栄養液は、約2.5ないし約8.0、好ましくは約2.5ないし4.6のpH、および約8.1kcal/100mlないし約40kcal/100ml、例えば約16kcal/100mlないし約32kcal/100mlのカロリー密度を有する。
【0057】
これらの低カロリー飲料または液は、好ましくは、エリトリトールを含み、その濃度は該飲料または液に対して約0.1ないし約10重量%、例えば約1ないし約5重量%、そしてまた例えば約1.5ないし約3重量%の範囲でありうる。
【0058】
これらの低カロリー飲料または液は、好ましくは、少なくとも1つの追加的な甘味料を含み、その幾つかの非限定的な具体例には、アセスルファムK、アスパルテーム、スクラロース、サッカリン、ステビアおよびタガトースが含まれる。
【0059】
これらの低カロリー飲料または液は更に、本明細書に記載のその他の随意的な又は他の成分の任意の1以上を含みうる。
【0060】
製造
本発明の組成物は、選択された製品形態を製造するための任意の公知の又は有効な製造技術により製造されうる。栄養液または栄養バーのような任意の与えられた製品形態に関する多数のそのような技術が公知であり、本明細書に記載の栄養製品に当業者により容易に適用されうる。
【0061】
同様に、本発明の組成物は、種々の医薬製品形態を製造するための任意の公知の又は有効な製造技術により製造されうる。カプセル剤、錠剤、液剤などのような任意の与えられた医薬製品形態に関する多数のそのような技術が公知であり、本明細書にの組成物に当業者により容易に適用されうる。
【0062】
基本的な液体製剤としての本発明の組成物は、選択されたアミノ酸のそれぞれを水または希薄酸溶液に溶解し次いでそれらの異なるアミノ酸溶液を一緒にして本発明の液体実施形態を得ることにより製造されうる。
【0063】
基本的な固体製剤としての本発明の組成物は、異なる粉末形態の選択されたアミノ酸を任意の錠剤形成材または他の賦形剤と一緒にし次いで該粉末を乾式混合(ドライブレンド(dry blend))し次いでそれを所望の固体製造形態(例えば、錠剤、カプセル剤、カプレットなど)に加工することにより製造されうる。
【0064】
さらにもう1つの実施形態においては、本発明の組成物は、選択されたアミノ酸混合物を含む栄養液、例えばジュースまたはミルク(乳)、またはダイズに基づく液体として製剤化されうる。そのような実施形態は、まず、すべての製剤化用油、任意の乳化剤、繊維および脂溶性ビタミンを含有する油および繊維混合物を形成させることにより製造されうる。炭水化物およびミネラル、および該タンパク質を水中で混合することにより、追加的なスラリー(典型的には炭水化物および2つのタンパク質スラリー)を別々に製造する。ついで該スラリーを該油混合物と混合する。得られた混合物を均一化し、加熱処理し、任意の水溶性ビタミンで標準化(standardize)し、香味づけし、該液体を最終的に滅菌し又は無菌的に充填し又は乾燥させて粉末を得る。
【0065】
栄養バーのような他の製品形態は、例えば、バー製造の分野において公知であり一般的に記載されている低温押出(cold extrusion)技術を用いて製造されうる。そのような組成物を製造するためには、典型的には、該粉末成分のすべてを一緒に乾式混合する。それらは典型的には、アミノ酸混合物および任意のタンパク質、ビタミンプレミックス、ある炭水化物などを含む。ついで該脂溶性成分を一緒に混合し、任意の粉末化プレミックスと混合する。ついで、最後に、任意の液体成分を該組成物中に混合して、プラスチック状の組成物またはドウを形成させる。ついで、得られたプラスチック塊を、物理的または化学的変化を更に生じさせることなく、低温形成または押出により成型することが可能である。この場合、所望の形状を付与するダイにより、該プラスチック塊を比較的低い圧力で押しつける。ついで、生じた滲出物を適当な位置で切断して、所望の重量の産物を得る。所望により、ついで該固体産物を、嗜好性を向上させるためにコーティングし、配給のために包装する。
【0066】
本発明の固体栄養実施形態は、シリアル、クッキー、クラッカーおよび同様の他の製品形態のような固体製品形態を製造するために焼いたり又は加熱押出を行うことによっても製造されうる。栄養製品の製造分野の当業者は、所望の最終製品を製造するための多数の公知の又は利用可能な製造プロセスの1つを選択することが可能である。
【0067】
勿論、本発明の組成物は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書中に具体的に記載されていない他の公知の又は適当な技術により製造されうる。したがって、本実施形態は、あらゆる点において、例示的であり、限定的ではないとみなされるべきであり、すべての変更および均等物も本発明の説明に含まれるとみなされるべきである。後記の非限定的な実施例は、本発明の組成物および方法を更に詳しく例示するものである。
【0068】
使用方法
本発明の組成物は、糖耐性不全または糖尿病に罹患した又はそれらの発生のリスクを有する個体において使用されうる。しかし、これらの組成物は、栄養源として、任意の個体において、特に血糖応答低下が望ましい個体において投与されうる。
【0069】
本発明の組成物および方法は、ヒトおよび他の哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、げっ歯類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウマおよび他の有蹄動物などを含む任意の個体を対象としうる。2型糖尿病のリスクを有する健常個体にも該組成物を投与することが可能である。
【0070】
本発明の組成物は、糖耐性を改善し血糖応答を減少させるために炭水化物摂取(例えば、食事、飲物または間食(スナック)からのもの)の前、途中または後に投与されうる。1つの実施形態においては、該アミノ酸組成物の投与は対象による炭水化物摂取の約1時間以内に行われる。もう1つの実施形態においては、該アミノ酸組成物の投与は対象による炭水化物摂取の約30分以内に行われる。
【0071】
本発明の組成物は、糖耐性、糖尿病、肥満ならびに/または糖耐性、糖尿病および肥満の症状および副作用を治療するために使用されうる。特に、該組成物は、2型糖尿病、2型糖尿病および/またはそのいずれかの症状を治療するために使用されうる。糖尿病の症状および副作用には、高血糖値、不眠症のような睡眠癖、嗜眠のような全身エネルギーレベル、強度、体重/食欲の不良または亢進、逆流、不規則性、胃ニューロパシー、腎不全、心臓病、卒中および視力低下の1以上が含まれる。
【0072】
本発明の1つの態様においては、本発明の組成物の投与を要する対象に炭水化物摂取の後、途中または前に該組成物を投与すると、本発明の組成物の投与を伴わない炭水化物摂取と比較して血糖値が低下する。血糖値は、全血、血漿または血清を使用して測定されうる。特に示さない限り、血糖値は全血の分析値を意味する。該アミノ酸組成物の投与は、(該アミノ酸組成物の投与を伴わない炭水化物摂取の後の血糖値と比較して)炭水化物摂取の後の血糖値を、炭水化物摂取後の約30分、炭水化物摂取後の約60分、炭水化物摂取後の約90分および炭水化物摂取後の約120分の少なくとも1つのうちに低下させる。
【0073】
本発明のもう1つの態様においては、炭水化物摂取の前、途中または後に本発明の組成物を個体に投与すると、本発明の組成物の投与を伴わない同じ炭水化物摂取と比較して、炭水化物摂取後の約30分、炭水化物摂取後の約60分、炭水化物摂取後の約90分および炭水化物摂取後の約120分の少なくとも1つのうちに、少なくとも約5%、血糖値が低下する。
【0074】
本発明の更にもう1つの態様においては、炭水化物摂取の前、途中または後に本発明の組成物を対象に投与すると、本発明の組成物の投与を伴わない同じ炭水化物摂取と比較して、炭水化物摂取後の約30分、炭水化物摂取後の約60分、炭水化物摂取後の約90分および炭水化物摂取後の約120分の少なくとも1つのうちに、少なくとも約10%、血糖値が低下する。
【0075】
本発明の更にもう1つの態様においては、炭水化物摂取の前、途中または後に本発明の組成物を対象に投与すると、本発明の組成物の投与を伴わない同じ炭水化物摂取と比較して、炭水化物摂取後の約30分、炭水化物摂取後の約60分、炭水化物摂取後の約90分および炭水化物摂取後の約120分の少なくとも1つのうちに、少なくとも約20%、血糖値が低下する。
【実施例】
【0076】
以下の実施例は、本発明の組成物を製造するための幾つかの適当な技術を含む、本発明の組成物および方法の具体的な実施形態を例示するものである。これらの実施例は専ら例示目的で記載されており、本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明の多数の変更が可能であるため、該実施例は本発明を限定するものではないと解釈されるべきである。
【0077】
実施例1ないし3
実施例1ないし3は本発明の栄養液実施形態を例示する。また、本発明の方法に従い該組成物を使用する対応方法も含まれる。各例示組成物の成分を以下の表に示す。特に示さない限り、すべての成分量は産物の1000kgバッチ当たりのkgとして示されている。
【0078】
【表2】

【0079】
前記表に示されている本発明の例示実施形態のそれぞれは、例えば、以下のバッチ化(batching)および加工の説明に従い製造されうる。
【0080】
該アミノ酸混合物は、特定されたアミノ酸のそれぞれを含む粉末として、通常の方法により製造される。該アミノ酸粉末を、特定された量の水を含有する鍋に、攪拌しながらゆっくりと加える。該アミノ酸が完全に分散したら、80%リン酸溶液を使用して溶液のpHを2.4に減少させ、ついで45%KOH溶液を使用して3.2に増加させる。
【0081】
該pH調整混合物に、特定された量のプレミックス香料混合物、クエン酸、エリトリトール、粉末化マルチトール、10%アセスルファムカリウム溶液および液体スクラロースを加え、完全に混合させる。ついで、得られた混合物を最小均一化圧、104℃で5秒間のUHT(超高温)加工およびそれに続く、88ないし99℃の温度での適当な容器内への加熱無菌充填に付す。最終産物のpHは約3.2である。
【0082】
各例示飲料は、少なくとも約10:1のイソロイシン対ロイシン、イソロイシン対バリン、イソロイシン対システイン、およびイソロイシン対メチオニンの重量比を有する。
【0083】
該例示飲料のそれぞれは、糖耐性不全に罹患した個体を治療するために使用される。それぞれは、1ないし200mg/kg体重のイソロイシン、0.001ないし10mg/kg体重のロイシン、0.001ないし10mg/kg体重のバリン、0.001ないし10mg/kg体重のシステイン、および0.001ないし10mg/kg体重のメチオニンとなるのに必要な度合で、炭水化物含有食または他の炭水化物での負荷(攻撃)の1時間以内に、そのような個体に投与される。
【0084】
炭水化物含有食または他の炭水化物での負荷の後のこれらの個体における血糖値は、該飲料の投与を伴わない血糖値と比較して、炭水化物摂取後の約30分、炭水化物摂取後の約60分、炭水化物摂取後の約90分および炭水化物摂取後の約120分の少なくとも1つのうちに、少なくとも5ないし10%低下する。
【0085】
実施例4ないし6
実施例4ないし6は、本発明の可能な錠剤実施形態の幾つかを例示する。また、本発明の方法に従い該錠剤を使用する対応方法も含まれる。該錠剤は、製剤分野でよく知られた方法により製造される。
【0086】
【表3】

【0087】
各例示錠剤は、少なくとも約10:1のイソロイシン対ロイシン、イソロイシン対バリン、イソロイシン対システイン、およびイソロイシン対メチオニンの重量比を有する。
【0088】
該例示錠剤のそれぞれは、糖耐性不全に罹患した個体を治療するために使用される。それぞれは、単一または複数の錠剤として、1ないし200mg/kg体重のイソロイシン、0.001ないし10mg/kg体重のロイシン、0.001ないし10mg/kg体重のバリン、0.001ないし10mg/kg体重のシステイン、および0.001ないし10mg/kg体重のメチオニンとなるのに必要な度合で、炭水化物含有食または他の炭水化物での負荷(攻撃)の1時間以内に、そのような個体に投与される。典型的な用量は、分割量で経口投与される1日25錠剤である。これらの錠剤は全体として嚥下されたり又は咀嚼(噛み砕く)されうるが、最も典型的には咀嚼される。
【0089】
炭水化物含有食または他の炭水化物での負荷の後のこれらの個体における血糖値は、該飲料の投与を伴わない血糖値と比較して、炭水化物摂取後の約30分、炭水化物摂取後の約60分、炭水化物摂取後の約90分および炭水化物摂取後の約120分の少なくとも1つのうちに、少なくとも5ないし10%低下する。
【0090】
実験例
以下の実験は本発明の組成物に関するものであり、糖耐性不全を有するラット(ファティー・ズッカー(Fatty Zucker)ラット)または2型糖尿病を有するラット(ズッカー糖尿病脂肪性(Zucker Diabetic Fatty)ラット)へのこれらの組成物の投与、ならびにそれに続く、各動物における血糖応答の評価を含む。
【0091】
実験1
アミノ酸試験製剤および対照を調製する。該対照は22.5%グルコース溶液である。該アミノ酸試験製剤は、別々のチューブにおいて以下のアミノ酸のそれぞれを秤量し溶解することにより調製する。ASP(66.55mg)を1.0mlの1N HCLに溶解する。THR(7.21mg)を1.0mlの水に溶解する。SER(7.97mg)を1.0mlの水に溶解する。GLU(102.3mg)を1.0mlの1N HCLに溶解する。PRO(8.6mg)を1.0mlの水に溶解する。GLY(29.15mg)を1.0mlの1N HCLに溶解する。ALA(33.27mg)を1.0mlの水に溶解する。CYS(5.28mg)を1.0mlの1N HCLに溶解する。VAL(6.68mg)を1.0mlの水に溶解する。MET(3.36mg)を1.0mlの水に溶解する。ILE(7.34mg)を1.0mlの1N HCLに溶解する。LEU(6.58mg)を1.0mlの1N HCLに溶解する。TRY(33.55mg)を1.0mlの1N HCLに溶解する。PHE(20.8mg)を1.0mlの1N HCLに溶解する。HIS(6.9mg)を1.0mlの1N HCLに溶解する。LYS(11.8mg)を1.0mlの水に溶解する。ARG(34.38mg)を1.0mlの水に溶解する。TRP(9.46mg)を1.0mlの1N HCLに溶解する。各アミノ酸添加物をそれ自身の別々のチューブ内に加え、透明な溶液が生じるまでそのチューブ内で混合する。
【0092】
ついで、得られた異なるアミノ酸溶液のうち、HCLと共に溶解させたものを50mlビーカー内で一緒にし、ついで937.5mgのILEを該ビーカーに加え、溶解するまで混合する。ついで、ILEが溶解したら、水に溶解したすべてのアミノ酸溶液を該ビーカーに加え、ついで25mlの45%グルコース溶液を加える。得られたグルコース含有混合物を、十分に混合されるまで攪拌し、ついでそのpHを50%水酸化ナトリウム溶液で7.0+/−1.0に調整する(pHを安定化させるためにバッファーを加えてもよい)。該pH調整混合物を50mlの容積測定フラスコに移し、蒸留水で目的容量にする。該混合物を、攪拌棒を備えたビーカーに移し、シリンジに満たしながら攪拌を続ける。
【0093】
試験の少なくとも1週間前に、Fatty Zuckerラットを動物施設において受け取る。それぞれを実験前日に秤量し、ついで、体重に関して釣り合わされた2群のうちの1つに割り付ける。少なくとも300gmの体重のラットのみを該研究で使用する。一晩の絶食の後、各ラットを再び秤量し、ついで8ml/kg体重の該対照または該アミノ酸試験溶液を投与する(経口ガバージュ)。ついで、該ガバージュの30、60、90および120分後、各動物の尾の先端から、血糖濃度(血中グルコース濃度)を測定する。
【0094】
この実験からのデータを図1に要約する。これは、該アミノ酸試験混合物が、該ラットに投与された場合に、ガバージュの60分後、該対照と比較して血糖濃度を有意に低下させることを示している。
【0095】
実験2
実験1に記載の対照製剤(22.5%グルコース溶液)およびアミノ酸試験製剤を調製し、ついで、後記のイソロイシン混合物と共にこの第2実験において使用する。
【0096】
この第2実験においては、50mlビーカーにL−イソロイシン(1338.7g)、ついで10mlの1N HCLを加えることにより、高用量イソロイシン混合物を調製する。該ビーカー内容物を、溶解するまで混合し、ついで攪拌下、それに25mlの45%グルコース溶液を加える。得られた混合物のpHを50%水酸化ナトリウム溶液で7.0(+/−1.0)に調整する(pHを安定化させるためにバッファーを加えてもよい)。該pH調整混合物を50mlの容積測定フラスコに移し、蒸留水で目的容量にする。該混合物を、攪拌棒を備えたビーカーに移し、シリンジに満たしながら攪拌を続ける。
【0097】
試験の少なくとも1週間前に、2型糖尿病モデルであるZucker Diabetic Fattyラットを動物施設において受け取る。それぞれを実験前日に秤量し、ついで、体重に関して釣り合わされた2群のうちの1つに割り付ける。一晩の絶食の後、各ラットを秤量し、ついで8ml/kg体重の該グルコース対照、該アミノ酸試験混合物または該イソロイシン溶液を投与する(経口ガバージュ)。ついで、該ガバージュの30、60、90および120分後、各動物の尾の先端から、血糖濃度を測定する。
【0098】
この実験からのデータを図2に要約する。図示されているデータに示されているとおり、高用量イソロイシン(イソロイシンのみ)は、該対照と比較して血糖濃度に有意な影響を及ぼさず、一方、該アミノ酸試験混合物は、ガバージュの60分後、該対照と比較して血糖濃度を有意に低下させる。
【0099】
実験3
血糖症を改善するのに必要な最小アミノ酸溶液を決定するために、アミノ酸混合物を以下のように調製する(各アミノ酸を秤量し、それをそれ自身の別々のチューブ内に入れる)。CYS(5.28mg)を1.0mlの1N HCLに溶解する。VAL(6.68mg)を1.0mlの水に溶解する。MET(3.36mg)を1.0mlの水に溶解する。LEU(6.58mg)を1.0mlの1N HCLに溶解する。透明な溶液が得られるまで、各チューブを混合する。50mlビーカー内で、ILE(927.5mg)を10ml HCLを溶解する。酸に溶解した全てのアミノ酸のチューブを50mlビーカーに加え(ピペットを使用して移す)、攪拌する。ついで、水に溶解したアミノ酸の全てを該ビーカーに加え(ピペットを介して移す)、ついで25mlの45%グルコース溶液を加える。得られた混合物を、十分に混合するまで攪拌する。該混合物のpHを50%水酸化ナトリウム溶液で約7に調整する。pHを安定化させるためにバッファーを加えてもよい。ついで該混合物を50mlの容積測定フラスコに移し、蒸留水で目的容量にする。得られた混合物を、以下の実験において、22.5%の対照溶液と比較する。
【0100】
試験の少なくとも1週間前に、Fatty Zuckerラットを動物施設において受け取る。それぞれを実験前日に秤量し、ついで、体重に関して釣り合わされた2群のうちの1つに割り付ける。少なくとも300gmの体重のラットのみを該研究で使用する。一晩の絶食の後、各ラットを秤量し、8ml/kg体重の該対照または該アミノ酸試験溶液を投与する(経口ガバージュ)。ついで、該ガバージュの30、60、90および120分後、各動物の尾の先端から、血糖濃度を測定する。
【0101】
この実験からのデータを図3に要約する。これは、該アミノ酸試験混合物(5つのアミノ酸の組合せ)が、ガバージュの60分後、該対照と比較して血糖濃度を有意に低下させることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1は、対照(グルコース)溶液または本発明の1つの態様のアミノ酸試験溶液(グルコース含有)の経口投与後のファティー・ズッカー(Fatty Zucker)ラット(グルコース耐性不全のモデル)における血糖濃度の経時変化を示すグラフである。
【図2】図2は、対照(グルコース)溶液、イソロイシン溶液(グルコース含有)または本発明の1つの態様のアミノ酸試験溶液(グルコース含有)の経口投与後のズッカー糖尿病脂肪性(Zucker Diabetic Fatty)ラット(2型糖尿病を有するモデル)における血糖濃度の経時変化を示すグラフである。
【図3】図3は、対照(グルコース)溶液または本発明の1つの態様のアミノ酸試験溶液(グルコース含有)の経口投与後のファティー・ズッカー(Fatty Zucker)ラット(グルコース耐性不全のモデル)における血糖濃度の経時変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約1ないし約200mg/kg体重のイソロイシン、
約0.001ないし約10mg/kg体重のロイシン、
約0.001ないし約10mg/kg体重のバリン、
約0.001ないし約10mg/kg体重のシステイン、および
約0.001ないし約10mg/kg体重のメチオニンを含んでなり、
イソロイシン対ロイシン、イソロイシン対バリン、イソロイシン対システイン、およびイソロイシン対メチオニンの重量比が、独立して少なくとも約10:1である、糖尿病または糖耐性不全に罹患した個体を治療するための組成物。
【請求項2】
約0.01ないし約30mg/kg体重のアスパラギン酸、
約0.001ないし約10mg/kg体重のトレオニン、
約0.001ないし約10mg/kg体重のセリン、
約0.01ないし約30mg/kg体重のグルタミン酸、
約0.001ないし約10mg/kg体重のプロリン、
約0.001ないし約20mg/kg体重のグリシン、
約0.001ないし約20mg/kg体重のアラニン、
約0.001ないし約20mg/kg体重のチロシン、
約0.001ないし約10mg/kg体重のヒスチジン、
約0.001ないし約10mg/kg体重のリシン、
約0.001ないし約20mg/kg体重のアルギニン、および
約0.001ないし約20mg/kg体重のトリプトファン
の少なくとも1つを更に含む、請求項1の組成物。
【請求項3】
イソロイシン対ロイシン、イソロイシン対バリン、イソロイシン対システイン、およびイソロイシン対メチオニンの少なくとも1つの重量比が少なくとも約100:1である、請求項1の組成物。
【請求項4】
約10mg/kg体重未満のフェニルアラニンを含む、請求項1の組成物。
【請求項5】
ビタミン、ミネラル、炭水化物および脂肪の少なくとも1つを更に含む、請求項1の組成物。
【請求項6】
全カロリーに対する割合として、約10%ないし約75%の炭水化物、約20ないし約85%の脂肪、および約5%ないし約70%のタンパク質を含む、請求項5の組成物。
【請求項7】
組成物が経口錠剤である、請求項1の組成物。
【請求項8】
組成物が経口液体である、請求項1の組成物。
【請求項9】
イソロイシン、ロイシン、バリン、システインおよびメチオニンを含んでなり、独立して少なくとも約10:1の、イソロイシン対ロイシン、イソロイシン対バリン、イソロイシン対システイン、およびイソロイシン対メチオニンの重量比を有する、糖尿病または糖耐性不全に罹患した個体を治療するための組成物。
【請求項10】
イソロイシン対ロイシン、イソロイシン対バリン、イソロイシン対システイン、およびイソロイシン対メチオニンの重量比が、独立して少なくとも約100:1である、請求項9の組成物。
【請求項11】
少なくとも約50:1の、分枝鎖アミノ酸対硫黄含有アミノ酸の重量比を有する、請求項9の組成物。
【請求項12】
約5重量%未満のフェニルアラニンを含む、請求項9の組成物。
【請求項13】
ビタミン、ミネラル、炭水化物および脂肪の少なくとも1つを更に含む、請求項9の組成物。
【請求項14】
全カロリーに対する割合として、約10%ないし約75%の炭水化物、約20%ないし約85%の脂肪、および約5%ないし約70%のタンパク質を含む、請求項13の組成物。
【請求項15】
組成物が経口錠剤である、請求項9の組成物。
【請求項16】
組成物が経口液体である、請求項9の組成物。
【請求項17】
約10ないし約200mg/kg体重のイソロイシン、
約0.01ないし約10mg/kg体重のロイシン、
約0.01ないし約10mg/kg体重のバリン、
約0.01ないし約10mg/kg体重のシステイン、および
約0.01ないし約10mg/kg体重のメチオニンを含んでなる、糖尿病または糖耐性不全に罹患した個体を治療するための組成物。
【請求項18】
イソロイシン対ロイシン、イソロイシン対バリン、イソロイシン対システイン、およびイソロイシン対メチオニンの重量比が、独立して少なくとも約10:1である、請求項17の組成物。
【請求項19】
イソロイシン対ロイシン、イソロイシン対バリン、イソロイシン対システイン、およびイソロイシン対メチオニンの少なくとも1つの重量比が少なくとも約100:1である、請求項17の組成物。
【請求項20】
約10mg/kg体重未満のフェニルアラニンを含む、請求項17の組成物。
【請求項21】
ビタミン、ミネラル、炭水化物および脂肪の少なくとも1つを更に含む、請求項17の組成物。
【請求項22】
全カロリーに対する割合として、約10%ないし約75%の炭水化物、約20%ないし約85%の脂肪、および約5%ないし約70%のタンパク質を含む、請求項17の組成物。
【請求項23】
組成物が経口錠剤である、請求項17の組成物。
【請求項24】
組成物が経口液体である、請求項17の組成物。
【請求項25】
糖耐性不全または糖尿病に罹患した個体を治療するための方法であって、約1.0ないし約200mg/kg体重のイソロイシン、約0.001ないし約10mg/kg体重のロイシン、約0.001ないし約10mg/kg体重のバリン、約0.001ないし約10mg/kg体重のシステイン、および約0.001ないし約10mg/kg体重のメチオニンを含む組成物の有効量を該個体に投与することを含んでなる方法。
【請求項26】
組成物を経口投与する、請求項25の方法。
【請求項27】
個体による炭水化物摂取の約1時間以内に組成物を投与する、請求項25の方法。
【請求項28】
対象への組成物の投与が、炭水化物摂取後の約30分、炭水化物摂取後の約60分、炭水化物摂取後の約90分および炭水化物摂取後の約120分の少なくとも1つのうちに、該組成物の投与を伴わない血糖値と比較して血糖値を少なくとも約5%低下させる、請求項27の方法。
【請求項29】
対象への組成物の投与が、炭水化物摂取後の約60分のうちに、該組成物の投与を伴わない血糖値と比較して血糖値を少なくとも約10%低下させる、請求項27の方法。
【請求項30】
組成物が、独立して少なくとも約10:1の、イソロイシン対ロイシン、イソロイシン対バリン、イソロイシン対システイン、およびイソロイシン対メチオニンの重量比を有する、請求項27の方法。
【請求項31】
(A)独立して少なくとも約10:1の、イソロイシン対ロイシン、イソロイシン対バリン、イソロイシン対システイン、およびイソロイシン対メチオニンの重量比で、イソロイシン、ロイシン、バリン、システインおよびメチオニンを含むアミノ酸混合物を含む、全カロリーに対する割合として約2%ないし約98%のタンパク質源、ならびに
(B)マルチトール、エリトリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、グリセロール、イソルモルト(isolmalt)およびラクチトールの少なくとも1つを含む、全カロリーに対する割合として約2%ないし約98%の炭水化物、
を含んでなり、約2.5ないし約8.0のpHおよび約8.1kcal/100mlないし約40kcal/100mlのカロリー密度を有する栄養液。
【請求項32】
該pHが約2.5ないし約4.6の範囲である、請求項31の栄養液。
【請求項33】
該カロリー密度が約16kcal/100mlないし約32kcal/100mlの範囲である、請求項31の栄養液。
【請求項34】
脂肪、ミネラルおよびビタミンの少なくとも1つを更に含む、請求項31の栄養液。
【請求項35】
液が、全カロリーに対する割合として、約10%ないし約75%の炭水化物、約20ないし約85%の脂肪、およびアミノ酸混合物を含む約5%ないし約70%のタンパク質源を含む、請求項34の栄養液。
【請求項36】
液がアセスルファムK、アスパルテーム、スクラロース、サッカリン、ステビアおよびタガトースの少なくとも1つを更に含む、請求項31の栄養液。
【請求項37】
液がエリトリトールを含む、請求項31の栄養液。
【請求項38】
液が約1重量%ないし約10重量%のエリトリトールを含む、請求項37の栄養液。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−533208(P2008−533208A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503149(P2008−503149)
【出願日】平成18年3月21日(2006.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/010468
【国際公開番号】WO2006/102451
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】