説明

糖鎖を有する標的指向性および腸管吸収制御性リポソームならびにそれを含む癌治療薬および診断薬

各種組織の細胞表面上に存在する各種のレクチン(糖鎖認識蛋白質)に対して特異的な結合活性を有する糖鎖を結合したリポソームであって、実際の生体内の細胞、組織を識別して薬剤あるいは遺伝子を効率的に輸送し得るリポソームを提供することを目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、医薬品、化粧品をはじめ医学・薬学分野において応用し得る、癌などの標的細胞・組織を認識し局所的に薬剤や遺伝子を患部に送り込むための治療用のドラッグデリバリーシステムや診断用の細胞・組織センシングプローブとして利用できるものであって、特に腸管吸収性に優れた糖鎖修飾リポソーム、およびこれに薬剤あるいは遺伝子等を封入したリポソーム製剤に関する。
【背景技術】
米国の国家ナノテク戦略(NNI)によって実現を目指す具体的目標の一例として、「癌細胞や標的組織を狙い撃ちする薬物や遺伝子送達システム(DDS:ドラッグデリバリーシステム)」を掲げた。日本の総合科学技術会議のナノテクノロジー・材料分野推進戦略でも、重点領域として「医療用極小システム・材料、生物のメカニズムを活用し制御するナノバイオロジー」があり、その5年間の研究開発目標の1つとして「健康寿命延伸のための生体機能材料・ピンポイント治療等技術の基本シーズ確立」が掲げられている。一方、高齢化社会となるに伴い癌の罹患率・死亡率は年々増えており、新規な治療材料である標的指向DDSの開発が待望されている。その他の病気においても副作用のない標的指向DDSナノ材料の重要性が注目されており、その市場規模は近い将来に10兆円を超えると予測されている。また、これらの材料は治療とともに診断への利用においても期待されている。
医薬品の治療効果は、薬物が特定の標的部位に到達し、そこで作用することにより発現される。その一方で、医薬品による副作用とは、薬物が不必要な部位に作用してしまうことである。従って、薬物を有効かつ安全に使用するためにもドラッグデリバリーシステムの開発が求められている。その中でも特に標的指向(ターゲティング)DDSとは、薬物を「体内の必要な部位に」、「必要な量を」、「必要な時間だけ」送り込むといった概念である。そのための代表的な材料としての微粒子性キャリアーであるリポソームが注目されている。この粒子に標的指向機能をもたせるために、リポソームの脂質の種類、組成比、粒子径、表面電荷を変化させるなどの受動的ターゲティング法が試みられているが、いまだ本法は不十分であり更なる改良が求められている。
一方、高機能のターゲティングを可能にするために、能動的ターゲティング法も試みられている。これは″ミサイルドラッグ”ともよばれ理想的なターゲティング法であるが、国内外においていまだ完成されたものはなく今後の発展が大いに期待されているものである。本法は、リポソーム膜面上にリガンドを結合させ、標的組織の細胞膜面上に存在するレセプターに特異的に認識させることによって、積極的にターゲティングを可能にさせる方法である。この能動的ターゲティング法での標的となる細胞膜面上に存在するレセプターのリガンドとしては、抗原、抗体、ペプチド、糖脂質や糖蛋白質などが考えられる。これらのうち、糖脂質や糖蛋白質の糖鎖は、生体組織の発生や形態形成、細胞の増殖や分化、生体防御や受精機構、癌化とその転移機構などの様々な細胞間コミュニケーションにおいて情報分子としての重要な役割を果たしていることが明らかにされつつある。
また、その標的となる各組織の細胞膜面上に存在するレセプターとしてのセレクチン、DC−SIGN、DC−SGNR、コレクチン、マンノース結合蛋白質等のC−タイプレクチン、シグレック等のIタイプレクチン、マンノース−6−リン酸受容体などのPタイプレクチン、Rタイプレクチン、Lタイプレクチン、Mタイプレクチン、ガレクチンなどの各種のレクチン(糖鎖認識蛋白質)についての研究も進んできたことから、各種の分子構造を有する糖鎖は新しいDDSリガンドとして注目されてきている(1)Yamazaki,N.,Kojima,S.,Bovin,N.V.,Andre,S.,Gabius,S.and Gabius,H.−J.(2000)Adv.Drug Delivery Rev.43,225−244.2)Yamazaki,N.,Jigami,Y.,Gabius,H.−J.,Kojima,S(2001)Trends in Glycoscience and Glycotechnology 13,319−329.http://www.gak.co.jp/TIGG/71PDF/yamazaki.pdf)。
外膜表面にリガンドを結合したリポソームについては、癌などの標的部位に選択的に薬物や遺伝子などを送達するためのDDS材料として多くの研究がなされてきた。しかしながら、それらは、生体外では標的細胞に結合するが、生体内では期待される標的細胞や組織にターゲティングされないものがほとんどである(1)Forssen,E.and Willis,M.(1998)Adv.Drug Delivery Rev.29,249−271.
2)高橋俊雄・橋田充編(1999)、今日のDDS・薬物送達システム、159−167頁、医薬ジャーナル社、大阪)。糖鎖の分子認識機能を利用したDDS材料の研究開発においても、糖鎖を有する糖脂質を導入したリポソームについて若干の研究が知られているが、それらの機能評価は生体外(in vitro)によるもののみであり、糖鎖を有する糖蛋白質を導入したリポソームの研究はほとんど進んでいない(1)DeFrees,S.A.,Phillips,L.,Guo,L.and Zalipsky,S.(1996)J.Am.Chem.Soc.118,6101−6104.2)Spevak,W.,Foxall,C.,Charych,D.H.,Dasqupta,F.and Nagy,J.O.(1996)J.Med.Chem.39,1018−1020.3)Stahn,R.,Schafer,H.,Kernchen,F.and Schreiber,J.(1998)Glycobiology8,311−319.4)Yamazaki,N.,Jigami,Y.,Gabius,H.−J.,Kojima,S(2001)Trends in Glycoscience and Glycotechnology 13,319−329.http://www.gak.co.jp/TIGG/71PDF/yamazaki.pdf)。したがって、糖脂質や糖蛋白質の多種多様な糖鎖を結合したリポソームについての調製法と生体内動態(in vivo)解析を含めた体系的な研究は、これまで未開発で今後の進展が期待される重要課題である。
白血病はその病態の解析及び治療法が最も進歩したガンのひとつである。その治療法は化学療法を主体としているが、寛解(治癒)の可能性があるだけにその化学療法は非常に強力に行われ、それによる副作用も非常に強い物があるのが現状である。
近年、高齢者の増加に伴い高齢者白血病患者の増加が報告されている。急性骨髄性白血病においては60歳以上の患者が50%を占める状態になっている。しかしながら近年の白血病治療の進歩は高齢者白血病患者の治療成績向上にはかならずしも貢献していなかった。これには以下の理由が考えられている。一つには高齢患者には染色体異常や薬剤耐性白血病細胞の出現など予後不良因子が高頻度にみられること。またもう一つには抗癌剤投与による感染合併、骨髄障害そして抗癌剤による臓器傷害に対する許容能の低下である。つまり高齢患者には若年者に対して施行される強力な化学療法が行われにくいのが現状である。
これらの解決には抗癌剤に対する感受性増進方法の開発、分子標的薬の開発等行われているが、理想的な薬剤分布をもたらすDrug Delivery System(以下DDS)の開発も大きな解決策のひとつと考えられる。DDSによる理想的薬剤分布は臓器傷害の程度を軽減し、かつ白血病細胞に対する細胞傷害性を高められる可能性があり、高齢白血病患者の治療成績を改善させ得るものである。
さらに新しいタイプのDDS材料研究として、投与が最も簡便・安価に行える経口投与で使用可能なDDS材料開発も重要課題である。たとえば、ペプチド性および蛋白質性医薬品などは一般的に水溶性で高分子量であり消化管の小腸粘膜透過性が低いため酵素分解を受けるなどにより経口投与してもほとんど腸管吸収されない。そこでこれらの高分子量の医薬品や遺伝子などを腸管から血液中へ送達するためのDDS材料としてリガンド結合リポソームの研究が注目されつつある(Lehr,C.−M.(2000)J.Controlled Release 65,19−29)。しかしながら、これらのリガンドとして糖鎖を用いた腸管吸収制御性リポソームの研究は未だ報告されていない。
本発明者等は、既に、糖鎖がリンカー蛋白質を介してリポソーム膜に結合されており、糖鎖が、ルイスX型三糖鎖、シアリルルイスX型四糖鎖、3’−シアリルラクトサミン三糖鎖、6’−シアリルラクトサミン三糖鎖から選ばれたものであり、リポソーム膜および/またはリンカー蛋白質にトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンが任意に結合しており親水性化されていることを特徴とする糖鎖修飾リポソームおよびラクトース2糖鎖、2’−フコシルラクトース三糖鎖、ジフコシルラクトース四糖類および3−フコシルラクトース三糖鎖から選ばれた糖鎖により修飾されたリポソームであって、糖鎖がリンカー蛋白質を介してリポソームに結合していてもよい、腸管吸収制御性リポソームについて特許出願を行っている。
【発明の開示】
本発明は、各種組織の細胞表面上に存在する各種のレクチン(糖鎖認識蛋白質)に対して特異的な結合活性を有する糖鎖を結合したリポソームであって、実際の生体内の細胞、組織を識別して薬剤あるいは遺伝子を効率的に輸送し得るリポソームを提供することを目的とする。さらに、本発明は、該リポソームを含む疾患治療剤の提供をも目的とする。さらに、本発明は安定性の高いリポソームの提供を目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明者等は、リポソームの組成について検討を行い、安定性の高いリポソームを得た。さらに、リポソームの表面に結合させる糖鎖の種類および結合密度、リンカー蛋白質、ならびにリポソームを親水化するための化合物等について種々の実験、検討を加え、糖鎖の構造により各組織への指向性を実際に制御できることに加え、リポソーム表面および/またはリンカー蛋白質を特定の親水性化合物により水和処理し、さらにリポソームに結合する糖鎖の密度を制御すれば、各組織に対するリポソームの移行量をさらに増大し得、これにより薬剤あるいは遺伝子を標的細胞、組織に効率的に輸送できることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
本発明者らは、さらにこのようにして得られたリポソームを実際に疾患の治療に用いることについて鋭意検討を行い、表面に結合させた糖鎖の種類に応じて種々の組織および器官の種々の疾患に適用できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明者らは、さらに毒性が問題となる抗癌剤ドキソルビシンをリポソームに包埋することにより毒性を軽減した。しかしこれだけでは薬剤の安全性は上がるものの白血病細胞に対しても細胞傷害性が低下してしまう。そこでリポソームに糖鎖を結合させ積極的に白血病細胞に集積させ得るDDSを完成させた。
すなわち、本発明は、以下の1〜79に係るものである。
1. 糖鎖がリポソーム膜に結合されている糖鎖修飾リポソーム。
2. リポソームの構成脂質が、フォスファチジルコリン類(モル比0〜70%)、フォスファチジルエタノールアミン類(モル比0〜30%)、フォスファチジン酸類、長鎖アルキルリン酸塩類およびジセチルリン酸類からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜30%)、ガングリオシド類、糖脂質類、フォスファチジルグリセロール類およびスフィンゴミエリン類からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜40%)、ならびにコレステロール類(モル比0〜70%)を含む、1記載の糖鎖修飾リポソーム。
3. ガングリオシド類、糖脂質類、フォスファチジルグリセロール類、スフィンゴミエリン類およびコレステロール類からなる群から選択される少なくとも1種の脂質がリポソーム表面上で集合しラフトを形成している2記載の糖鎖修飾リポソーム。
4. 糖鎖の種類および密度が制御されて結合されている、1から3のいずれかに記載の糖鎖修飾リポソーム。
5. リポソームの粒径が30〜500nmである、1から4のいずれかに記載の糖鎖修飾リポソーム。
6. リポソームの粒径が50〜350nmである、5記載の糖鎖修飾リポソーム。
7. リポソームのゼータ電位が−50〜10mVである、1から6のいずれかに記載の糖鎖修飾リポソーム。
8. リポソームのゼータ電位が−40〜0mVである、7記載の糖鎖修飾リポソーム。
9. リポソームのゼータ電位が−30〜−10mVである、8記載の糖鎖修飾リポソーム。
10. 糖鎖がリンカー蛋白質を介してリポソーム膜に結合されている、1から9のいずれかに記載の糖鎖修飾リポソーム。
11. リンカー蛋白質が生体由来蛋白質である10記載の糖鎖修飾リポソーム。
12. リンカー蛋白質がヒト由来蛋白質である11記載の糖鎖修飾リポソーム。
13. リンカー蛋白質がヒト由来血清蛋白質である12記載の糖鎖修飾リポソーム。
14. リンカー蛋白質がヒト血清アルブミンまたはウシ血清アルブミンである11記載の糖鎖修飾リポソーム。
15. リンカー蛋白質がリポソーム表面上に形成されているガングリオシド類、糖脂質類、フォスファチジルグリセロール類、スフィンゴミエリン類およびコレステロール類からなる群から選択される少なくとも1種の脂質からなるラフト上に結合している1から14のいずれかに記載の糖鎖修飾リポソーム。
16. リポソーム膜および/またはリンカー蛋白質に親水性化合物が結合することにより親水性化されている、1から15のいずれかに記載の糖鎖修飾リポソーム。
17. 親水性化合物が低分子物質である、16記載の糖鎖修飾リポソーム。
18. 親水性化合物が糖鎖に対する立体障害となりにくく標的細胞膜面上のレクチンによる糖鎖分子認識反応の進行を妨げない、16または17記載の糖鎖修飾リポソーム。
19. 親水性化合物が水酸基を有する16から18のいずれかに記載の糖鎖修飾リポソーム。
20. 親水性化合物がアミノアルコール類である16から19のいずれかに記載の糖鎖修飾リポソーム。
21. 親水性化合物がリポソーム膜表面に直接結合している項16から20のいずれかに記載の糖鎖修飾リポソーム。
22. 親水性化合物により親水性化され、該親水性化合物が、一般式(1)
X−R1(R2OH)n 式(1)
で示される16記載の糖鎖修飾リポソームであって、R1は、C1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、R2は存在しないかもしくはC1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、Xはリポソーム脂質またはリンカー蛋白質と直接または架橋用の二価試薬と結合する反応性官能基を示し、nは自然数を示す、糖鎖修飾リポソーム。
23. 親水性化合物により親水性化され、該親水性化合物が、一般式(2)
N−R3−(R4OH)n 式(2)
で示される16記載の糖鎖修飾リポソームであって、R3は、C1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、R4は存在しないかもしくはC1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、HNはリポソーム脂質またはリンカー蛋白質と直接または架橋用の二価試薬と結合する反応性官能基を示し、nは自然数を示す、糖鎖修飾リポソーム。
24. 親水性化合物により親水性化され、該親水性化合物が、一般式(3)
N−R5(OH)n 式(3)
で示される16記載の糖鎖修飾リポソームであって、R5は、C1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、HNはリポソーム脂質またはリンカー蛋白質と直接または架橋用の二価試薬と結合する反応性官能基を示し、nは自然数を示す、糖鎖修飾リポソーム。
25. リポソーム膜および/またはリンカー蛋白質にトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンである親水性化合物を共有結合により結合させることによりリポソーム膜および/またはリンカー蛋白質が親水性化されている、16記載の糖鎖修飾リポソーム。
26. リポソーム膜および/またはリンカー蛋白質にトリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノプロパンからなる群から選択される親水性化合物を共有結合により結合させることによりリポソーム膜および/またはリンカー蛋白質が親水性化されている、25記載の糖鎖修飾リポソーム。
27. 糖鎖修飾リポソームが、各組織の細胞膜面上に存在するレセプターとしてのセレクチン、DC−SIGN、DC−SGNR、コレクチンおよびマンノース結合レクチンを含むC−タイプレクチン、シグレックを含むIタイプレクチン、マンノース−6−リン酸受容体を含むPタイプレクチン、Rタイプレクチン、Lタイプレクチン、Mタイプレクチン、ガレクチンからなる群から選択されるレクチンを標的とする1から26のいずれかに記載の糖鎖修飾リポソーム。
28. 糖鎖修飾リポソームがE−セレクチン、P−セレクチンおよびL−セレクチンからなる群から選択されるセレクチンを標的とする28記載の糖鎖修飾リポソーム。
29. リポソームに結合した糖鎖の結合密度が、リンカー蛋白質を用いる場合は、リポソーム1粒子当り1〜30000個であり、リンカー蛋白質を用いない場合は、リポソーム1粒子当り最高1〜500000個である、1から28のいずれかに記載の糖鎖修飾リポソーム。
30. リポソームに結合した糖鎖の結合密度が、リポソームに結合させる蛋白質1分子当り1〜60個である、1から28のいずれかに記載の糖鎖修飾リポソーム。
31. リポソームが腸管吸収機能を有するものである1から30のいずれかに記載の糖鎖修飾リポソーム。
32. 血中、肝臓、脾臓、肺、脳、小腸、心臓、胸腺、腎臓、膵臓、筋肉、大腸、骨、骨髄、眼、癌組織、炎症組織およびリンパ節からなる群から選択される組織または器官に指向性の高い、1から31のいずれかに記載の糖鎖修飾リポソーム。
33. 糖鎖がリポソーム膜に結合されているものであって、糖鎖が、アルファ1,2マンノビオース二糖鎖、アルファ1,3マンノビオース二糖鎖、アルファ1,4マンノビオース二糖鎖、アルファ1,6マンノビオース二糖鎖、アルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖、オリゴマンノース3五糖鎖、オリゴマンノース4b六糖鎖、オリゴマンノース5七糖鎖、オリゴマンノース6八糖鎖、オリゴマンノース7九糖鎖、オリゴマンノース8十糖鎖、オリゴマンノース9十一糖鎖、3’−シアリルラクトース三糖鎖、6’−シアリルラクトース三糖鎖、3’−シアリルラクトサミン三糖鎖、6’−シアリルラクトサミン三糖鎖、ルイスX型三糖鎖、シアリルルイスX型四糖鎖、ラクトース二糖鎖、2’−フコシルラクトース三糖鎖、ジフコシルラクトース四糖鎖および3−フコシルラクトース三糖鎖からなる群から選択される、1から32のいずれかに記載の糖鎖修飾リポソーム。
34. 1から33のいずれかに記載のリポソームに薬剤または遺伝子を封入したリポソーム製剤。
35. 薬剤が、アルキル化系抗癌剤、代謝拮抗剤、植物由来抗癌剤、抗癌性抗生物質、BRM・サイトカイン類、白金錯体系抗癌剤、免疫療法剤、ホルモン系抗癌剤、モノクローナル抗体等の腫瘍用薬剤、中枢神経用薬剤、末梢神経系・感覚器官用薬剤、呼吸器疾患治療薬剤、循環器用薬剤、消化器官用薬剤、ホルモン系用薬剤、泌尿器・生殖器用薬剤、外用薬剤、ビタミン・滋養強壮剤、血液・体液用薬剤、代謝性医薬品、抗生物質・化学療法薬剤、検査用薬剤、抗炎症剤、眼疾患薬剤、中枢神経系薬剤、自己免疫系薬剤、循環器系薬剤、糖尿病、高脂血症等の生活習慣病薬剤または経口、経肺、経皮膚もしくは経粘膜のための各種薬剤、副腎皮質ホルモン、免疫抑制剤、抗菌薬、抗ウイルス薬、血管新生抑制剤、サイトカインやケモカイン、抗サイトカイン抗体や抗ケモカイン抗体、抗サイトカイン・ケモカイン受容体抗体、siRNA、miRNA、smRNA、アンチセンス ODNやDNAなどの遺伝子治療関連の核酸製剤、神経保護因子、抗体医薬からなる群から選択される34記載のリポソーム製剤。
36. 経口投与用製剤である、34または35に記載のリポソーム製剤。
37. 非経口投与用製剤である、34または35に記載のリポソーム製剤。
38. 糖鎖修飾リポソームが含む薬剤が、ドキソルビシンである35記載のリポソーム製剤。
39. 薬剤が腫瘍用薬剤である、35記載のリポソーム製剤を含む抗癌剤。
40. 経口投与用抗癌剤である、39記載の抗癌剤。
41. 非経口投与用抗癌剤である、39記載の抗癌剤。
42. リポソーム膜が親水性化されており、表面に糖鎖が結合していないリポソーム。
43. リポソームの構成脂質が、フォスファチジルコリン類(モル比0〜70%)、フォスファチジルエタノールアミン類(モル比0〜30%)、フォスファチジン酸類、長鎖アルキルリン酸塩類およびジセチルリン酸類からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜30%)、ガングリオシド類、糖脂質類、フォスファチジルグリセロール類およびスフィンゴミエリン類からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜40%)、ならびにコレステロール類(モル比0〜70%)を含む、42記載のリポソーム。
44. さらに、蛋白質を含む42または43に記載のリポソーム。
45. リポソーム膜に親水性化合物が結合することにより親水性化されている、42から44のいずれかに記載のリポソーム。
46. 親水性化合物が低分子物質である、45記載のリポソーム。
47. 親水性化合物が糖鎖に対する立体障害となりにくく標的細胞膜面上のレクチンによる糖鎖分子認識反応の進行を妨げない、45または46記載のリポソーム。
48. 親水性化合物が水酸基を有する45から47のいずれかに記載のリポソーム。
49. 親水性化合物がアミノアルコール類である45から48のいずれかに記載のリポソーム。
50. 親水性化合物がリポソーム膜表面に直接結合している45から49のいずれかに記載のリポソーム。
51. 低分子の親水性化合物が少なくとも1つのOH基を有する化合物である、45記載のリポソーム。
52. 親水性化合物が、一般式(1)
X−R1(R2OH)n 式(1)
で示される45記載のリポソームであって、R1は、C1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、R2は存在しないかもしくはC1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、Xはリポソーム脂質またはリンカー蛋白質と直接または架橋用の二価試薬と結合する反応性官能基を示し、nは自然数を示す、リポソーム。
53. 親水性化合物が、一般式(2)
N−R3−(R4OH)n 式(2)
で示される45記載のリポソームであって、R3は、C1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、R4は存在しないかもしくはC1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、HNはリポソーム脂質またはリンカー蛋白質と直接または架橋用の二価試薬と結合する反応性官能基を示し、nは自然数を示す、リポソーム。
54. 親水性化合物が、一般式(3)
N−R5(OH)n 式(3)
で示される45記載のリポソームであって、R5は、C1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、HNはリポソーム脂質またはリンカー蛋白質と直接または架橋用の二価試薬と結合する反応性官能基を示し、nは自然数を示す、リポソーム。
55. リポソーム膜および/またはリンカー蛋白質にトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンである親水性化合物を共有結合により結合させることによりリポソーム膜および/またはリンカー蛋白質が親水性化されている、45記載のリポソーム。
56. リポソーム膜にトリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノプロパンからなる群から選択される親水性化合物を共有結合により結合させることによりリポソーム膜が親水性化されている、55記載のリポソーム。
57. 42から56のいずれかに記載のリポソームに薬剤または遺伝子を封入したリポソーム製剤。
58. 薬剤が、アルキル化系抗癌剤、代謝拮抗剤、植物由来抗癌剤、抗癌性抗生物質、BRM・サイトカイン類、白金錯体系抗癌剤、免疫療法剤、ホルモン系抗癌剤、モノクローナル抗体等の腫瘍用薬剤、中枢神経用薬剤、末梢神経系・感覚器官用薬剤、呼吸器疾患治療薬剤、循環器用薬剤、消化器官用薬剤、ホルモン系用薬剤、泌尿器・生殖器用薬剤、外用薬剤、ビタミン・滋養強壮剤、血液・体液用薬剤、代謝性医薬品、抗生物質・化学療法薬剤、検査用薬剤、抗炎症剤、眼疾患薬剤、中枢神経系薬剤、自己免疫系薬剤、循環器系薬剤、糖尿病、高脂血症等の生活習慣病薬剤または経口、経肺、経皮膚もしくは経粘膜のための各種薬剤、副腎皮質ホルモン、免疫抑制剤、抗菌薬、抗ウイルス薬、血管新生抑制剤、サイトカインやケモカイン、抗サイトカイン抗体や抗ケモカイン抗体、抗サイトカイン・ケモカイン受容体抗体、siRNA、miRNA、smRNA、アンチセンス ODNやDNAなどの遺伝子治療関連の核酸製剤、神経保護因子、抗体医薬からなる群から選択される57記載のリポソーム製剤。
59. 経口投与用製剤である、57または58に記載のリポソーム製剤。
60. 非経口投与用製剤である、57または58に記載のリポソーム製剤。
61. 薬剤が腫瘍用薬剤である、58記載のリポソーム製剤を含む抗癌剤。
62. 糖鎖修飾リポソームが含む薬剤が、ドキソルビシンである61記載のリポソーム製剤。
63. 経口投与用抗癌剤である、61または62に記載の抗癌剤。
64. 非経口投与用抗癌剤である、61または62に記載の抗癌剤。
65. 1から33のいずれかに記載の糖鎖修飾リポソームに化粧品を封入したリポソーム製剤を含む化粧品組成物。
66. 経皮投与製剤である65記載の化粧品組成物。
67. 化粧品が、ビタミンAまたはビタミンEである65または66に記載の化粧品組成物。
68. 1から33のいずれかに記載の糖鎖修飾リポソームに食品を封入したリポソーム製剤を含む食品組成物。
69. 経口投与製剤である68記載の食品組成物。
70. 食品が栄養補助食品である68または69に記載の食品組成物。
71. 食品が、ビタミンAまたはビタミンEである69または70に記載の食品組成物。
72. 42から56のいずれかに記載のリポソームに化粧品を封入したリポソーム製剤を含む化粧品組成物。
73. 経皮投与製剤である72記載の化粧品組成物。
74. 化粧品が、ビタミンAまたはビタミンEである72または73に記載の化粧品組成物。
75. 42から56のいずれかに記載のリポソームに食品を封入したリポソーム製剤を含む食品組成物。
76. 経口投与製剤である75記載の食品組成物。
77. 食品が栄養補助食品である75または76に記載の食品組成物。
78. 食品が、ビタミンAまたはビタミンEである76または77に記載の食品組成物。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2003−285432、2004−093872号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
図1は、アルファ1,2マンノビオース二糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
図2は、アルファ1,3マンノビオース二糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
図3は、アルファ1,4マンノビオース二糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
図4は、アルファ1,6マンノビオース二糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
図5は、アルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
図6は、オリゴマンノース3五糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
図7は、オリゴマンノース4b六糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
図8は、オリゴマンノース5七糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
図9は、オリゴマンノース6八糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
図10は、オリゴマンノース7九糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
図11は、オリゴマンノース8十糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
図12は、オリゴマンノース9十一糖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
図13は、13種のリポソーム複合体の静脈内投与60分後の血中への分布量を示す図である。
図14は、13種のリポソーム複合体の静脈内投与60分後の肝臓への分布量を示す図である。
図15は、13種のリポソーム複合体の静脈内投与60分後の脾臓への分布量を示す図である。
図16は、13種のリポソーム複合体の静脈内投与60分後の肺への分布量を示す図である。
図17は、13種のリポソーム複合体の静脈内投与60分後の脳への分布量を示す図である。
図18は、13種のリポソーム複合体の静脈内投与60分後の癌組織への分布量を示す図である。
図19は、13種のリポソーム複合体の静脈内投与60分後のリンパ節への分布量を示す図である。
図20は、13種のリポソーム複合体の静脈内投与60分後の胸腺への分布量を示す図である。
図21は、13種のリポソーム複合体の静脈内投与60分後の心臓への分布量を示す図である。
図22は、13種のリポソーム複合体の静脈内投与60分後の小腸への分布量を示す図である。
図23は、3’−シアリルラクトース三糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
図24は、6’−シアリルラクトース三糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
図25は、3’−シアリルラクトサミン三糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
図26は、6’−シアリルラクトサミン三糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
図27は、4種のリポソーム複合体の腸管内投与10分後の血中への移行量を示す図である。
図28は、4種のリポソーム複合体の腸管内投与10分後の血中への移行量を示す図である。
図29は、4種のリポソーム複合体の腸管内投与10分後の血中への移行量を示す図である。
図30は、4種のリポソーム複合体の腸管内投与10分後の血中への移行量を示す図である。
図31は、4種のリポソーム複合体の腸管内投与10分後の血中への移行量を示す図である。
図32は、比較試料としてのtris(hydroxymethyl)aminomethaneを結合したリポソームの模式図である。
図33は、ルイスX型三糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
図34は、シアリルルイスX型四糖鎖を結合したリポソームの構造例を示す模式図である。
図35は、ラクトース二糖鎖により修飾されたリポソームの構造例を示す模式図である。
図36は、2’−フコシルラクトース三糖鎖により修飾されたリポソームの構造例を示す模式図である。
図37は、ジフコシルラクトース四糖鎖により修飾されたリポソームの構造例を示す模式図である。
図38は、3−フコシルラクトース三糖鎖により修飾されたリポソームの構造例を示す模式図である。
図39は、アルファ1,6マンノビオース二糖鎖を結合したリポソームの尾静注投与での担癌マウスにおける制癌効果を示す図である。
図40は、アルファ1,6マンノビオース二糖鎖を結合したリポソームの尾静注投与での担癌マウスにおける制癌効果を示す写真である。
図41は、3−フコシルラクトース三糖鎖を結合したリポソームの経口投与での担癌マウスにおける制癌効果を示す図である。
図42は、3−フコシルラクトース三糖鎖を結合したリポソームの経口投与での担癌マウスにおける制癌効果を示す写真である。
図43は、インターフェロンαによるL−DoxとL−Dox−SLXの細胞傷害性増強試験の結果を示す図である。
図44は、L−セレクチン中和抗体によるIFN付加時L−Dox−SLXの細胞傷害性抑制試験の結果を示す図である。
図45は、担癌マウスにおける血中のドキソルビシン濃度の経時変化を示す図である。
図46は、担癌マウスにおける腫瘍中のドキソルビシン濃度の経時変化を示す図である。
図47は、担癌目薄の腫瘍組織及び細胞へのドキソルビシンの分布を示す顕微鏡写真である。
図48は、尾静注投与での担癌マウスにおける制癌効果を示す図である。
図49は、尾静注投与での担癌マウスにおける制癌効果を示す写真である。
図50は、尾静注投与での担癌マウスにおける制癌効果を示す各投与群の腫瘍重量を示す図である。
図51は、2種類の親水性化処理を行ったリポソームと未処理のリポソームの担癌マウス尾静注投与5分後の血中滞留性の比較結果を示す図である。
図52は、炎症を起こしたRAマウスの四肢の写真である。
図53は、RAマウスに対するプレドニゾロン包埋DDS静脈投与による治療の結果を示す図である。
図54は、RAマウスに対するプレドニゾロン包埋DDS経口投与による治療の結果を示す図である。
図55は、RAマウスに対する適切量のプレドニゾロン投与による治療の結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、表面に種々の糖鎖を有する標的指向性リポソームおよび腸管吸収制御性リポソームである。本発明において、標的指向性とは生体内に投与したときに特定の組織や器官または癌等の疾患部位等の標的部位に特異的に到達し取り込まれ得る性質をいう。また、腸管吸収制御性とは、腸管経由で生体内に取り込まれる性質、すなわち腸管吸収性であって、さらに取り込まれる速度、程度等を制御し得る性質をいう。
リポソームとは、通常、膜状に集合した脂質層および内部の水層から構成される閉鎖小胞を意味する。本発明のリポソームは、図1〜12、23〜26および32〜38に示されるように、その表面すなわち脂質層に糖鎖が、結合している、糖鎖は直接リポソームの脂質層に結合していてもよいし、ヒト血清アルブミン等のヒト由来蛋白質を含む生体蛋白質であるリンカー蛋白質を介して、共有結合していてもよい。糖鎖は、その種類と密度が制御されて結合している。
糖鎖は、本発明の腸管吸収制御性リポソームおよび本発明の標的指向性リポソームの標的組織や器官または癌などに応じて種々のものを用いることができる。
病変部の血管内皮細胞に発現するE−セレクチン、P−セレクチンと白血球の細胞膜上に発現している糖鎖であるシアリルルイスXが強く結合することが知られている。本リポソームはこのシアリルルイスX糖鎖またはこれと同様にE−セレクチン、P−セレクチン等のレクチン様の糖鎖結合部位を有する蛋白質に反応することができる糖鎖が糖鎖の種類と密度が制御されて結合しているリポソームであり、血管内皮細胞がE−セレクチン、P−セレクチン等を発現している癌等の病巣部位に特異的に集積すると考えられる。またE−セレクチン、P−セレクチン等を発現している部位は炎症や血管新生が生じている部位であり、そのような部位の血管は内皮細胞の細胞間隙が拡大しており、集積したリポソームがその隙間から病巣部位およびその周囲に拡散するものと考えられる。拡散したリポソームは病巣部位およびその周囲の各種細胞に取り込まれ(endocytosis)、細胞内で内包している薬剤を放出する。このようなメカニズムで炎症性疾患または癌などに効果を発揮する。
本発明のリポソームに結合させる糖鎖として、上述のようにE−セレクチン、P−セレクチン等のレクチン様の糖鎖結合部位を有する蛋白質に反応することができる糖鎖が挙げられる。ここで、E−セレクチン、P−セレクチン等とは、セレクチン、DC−SIGN、DC−SGNR、コレクチン、マンノース結合蛋白質等のC−タイプレクチン、シグレック等のIタイプレクチン、マンノース−6−リン酸受容体などのPタイプレクチン、Rタイプレクチン、Lタイプレクチン、Mタイプレクチン、ガレクチンなどの各種のレクチン(糖鎖認識蛋白質)をいう。本発明のリポソームが標的とする細胞は、細胞により発現するレクチン様の糖鎖結合部位を有する蛋白質の種類が異なるので、該蛋白質の種類に応じて糖鎖を選択することにより特定の細胞に特異的に指向性を有するリポソームを得ることができる。
例えば、腸管吸収制御性リポソームとして、3’−シアリルラクトース三糖鎖(図23に構造式を示す。以下、同様)、6’−シアリルラクトース三糖鎖(図24)、3’−シアリルラクトサミン糖鎖(図25)および6’−シアリルラクトサミン糖鎖(図26)が挙げられ、標的指向性リポソームとしてアルファ1,2マンノビオース二糖鎖(図1)、アルファ1,3マンノビオース二糖鎖(図2)、アルファ1,4マンノビオース二糖鎖(図3)、アルファ1,6マンノビオース二糖鎖(図4)、アルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖(図5)、オリゴマンノース3五糖鎖(図6)、オリゴマンノース4b六糖鎖(図7)、オリゴマンノース5七糖鎖(図8)、オリゴマンノース6八糖鎖(図9)、オリゴマンノース7九糖鎖(図10)、オリゴマンノース8十糖鎖(図11)、オリゴマンノース9十一糖鎖(図12)、ルイスX型三糖鎖(図33)、シアリルルイスX型四糖鎖(図34)、ラクトース二糖鎖(図35)、2’−フコシルラクトース三糖鎖(図36)、ジフコシルラクトース四糖鎖(図37)、3−フコシルラクトース三糖鎖(図38)が挙げられる。
本発明に用いられるリポソームについては、膜安定性をよくすること、封入される薬物や遺伝子などのもれをなくすこと、膜面の親水性化処理をできるようにすること、蛋白質を各種密度で結合できるようにすること、糖鎖を各種密度で結合できるようにすること、などを可能にするために、鋭意努力をして、以下のような各種の脂質と糖脂質などを構成成分とするリポソームを作製した。本発明のリポソームを構成する脂質としては、例えば、フォスファチジルコリン類、フォスファチジルエタノールアミン類、フォスファチジン酸類、長鎖アルキルリン酸塩類、ジセチルリン酸類、ガングリオシド類、糖脂質類、フォスファチジルグリセロール類、スフィンゴミエリン類、コレステロール類等が挙げられ、フォスファチジルコリン類としては、ジミリストイルフォスファチジルコリン、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、ジステアロイルフォスファチジルコリン等が、また、フォスファチジルエタノールアミン類としては、ジミリストイルフォスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン等が、フォスファチジン酸類もしくは長鎖アルキルリン酸塩類としては、ジミリストイルフォスファチジン酸、ジパルミトイルフォスファチジン酸、ジステアロイルフォスファチジン酸、ジセチルリン酸等が、ガングリオシド類としては、ガングリオシドGM1、ガングリオシドGD1a、ガングリオシドGT1b等が、糖脂質類としては、ガラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、ラクトシルセラミド、フォスファチド、グロボシド等が、フォスファチジルグリセロール類としては、ジミリストイルフォスファチジルグリセロール、ジパルミトイルフォスファチジルグリセロール、ジステアロイルフォスファチジルグリセロール等が好ましい。このうち、フォスファチジン酸類もしくは長鎖アルキルリン酸塩類、ガングリオシド類もしくは糖脂質類、コレステロール類はリポソームの安定性を上昇させる効果を有するので、構成脂質として添加するのが望ましい。
例えば、本発明のリポソームを構成する脂質として、フォスファチジルコリン類(モル比0〜70%)、フォスファチジルエタノールアミン類(モル比0〜30%)、フォスファチジン酸類、長鎖アルキルリン酸塩およびジセチルリン酸類からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜30%)、ガングリオシド類、糖脂質類、フォスファチジルグリセロール類およびスフィンゴミエリン類からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜40%)、ならびにコレステロール類(モル比0〜70%)を含むものが挙げられる。リポソーム自体は、周知の方法に従い製造することができるが、これには、薄膜法、逆層蒸発法、エタノール注入法、脱水−再水和法等を挙げることができる。
また、超音波照射法、エクストルージョン法、フレンチプレス法、ホモジナイゼーション法等を用いて、リポソームの粒子径を調節することも可能である。本発明のリポソーム自体の製法について、具体的に述べると、例えば、まず、フォスファチジルコリン類、コレステロール、フォスファチジルエタノールアミン類、フォスファチジン酸類、ガングリオシド類、糖脂質類もしくはフォスファチジルグリセロール類を配合成分とする脂質と界面活性剤コール酸ナトリウムとの混合ミセルを調製する。
とりわけ、フォスファチジン酸類もしくはジセチルホスフェート等の長鎖アルキルリン酸塩類の配合は、リポソームを負に荷電させるために必須であり、フォスファチジルエタノールアミン類の配合は親水性化反応部位として、ガングリオシド類または糖脂質類またはフォスファチジルグリセロール類の配合はリンカー蛋白質の結合部位として必須のものである。ガングリオシド類、糖脂質類、フォスファチジルグリセロール類、スフィンゴミエリン類およびコレステロール類からなる群から選択される少なくとも1種の脂質はリポソーム中で集合し、リンカー蛋白質を結合させる足場(ラフト)として機能する。本発明のリポソームは、このような蛋白質を結合させうるラフトが形成されることによりさらに安定化される。すなわち、本発明のリポソームは、リンカー蛋白質を結合させるためのガングリオシド、糖脂質、フォスファチジルグリセロール類、スフィンゴミエリン類およびコレステロール類からなる群から選択される少なくとも、1種の脂質のラフトが形成されたリポソームを含む。
そして、これにより得られる混合ミセルの限外濾過を行うことによりリポソームを作製する。
本発明において使用するリポソームは、通常のものでも使用できるが、その表面は親水性化されていることが望ましい。上述のようにしてリポソームを作製した後にリポソーム表面を親水性化する。リポソーム表面の親水性化は、リポソーム表面に親水性化合物を結合させることにより行う。親水性化に用いる化合物としては、低分子の親水性化合物、好ましくは少なくとも1つのOH基を有する低分子の親水性化合物、さらに好ましくは、少なくとも2つのOH基を有する低分子の親水性化合物が挙げられる。また、さらに少なくとも1つのアミノ基を有する低分子の親水性化合物、すなわち分子中に少なくとも1つのOH基と少なくとも1つのアミノ基を有する親水性化合物が挙げられる。親水性化合物は、低分子なので、糖鎖に対する立体障害となりにくく標的細胞膜面上のレクチンによる糖鎖分子認識反応の進行を妨げることはない。また、親水性化合物には、本発明の糖鎖修飾リポソームにおいて、レクチン等の特定の標的を指向するために用いられるレクチンが結合し得る糖鎖は含まれない。このような親水性化合物として、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどを含むトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカン等のアミノアルコール類等が挙げられ、さらに具体的には、トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノプロパン等が挙げられる。さらに、OH基を有する低分子化合物にアミノ基を導入した化合物も本発明の親水性化合物として用いることができる。該化合物は限定されないが、例えば、セロビオース等のレクチンが結合しない糖鎖にアミノ基を導入した化合物が挙げられる。例えば、リポソーム膜の脂質フォスファチジルエタノールアミン上に架橋用の2価試薬とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとを用いてリポソーム表面を親水性化する。親水性化合物の一般式は、下記式(1)、式(2)、式(3)等で示される。
X−R1(R2OH)n 式(1)
N−R3−(R4OH)n 式(2)
N−R5(OH)n 式(3)
ここで、R1、R3およびR5は、C1からC40、好ましくはC1からC20、さらに好ましくはC1からC10の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、R2、R4は存在しないかもしくはC1からC40、好ましくはC1からC20、さらに好ましくはC1からC10の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示す。Xはリポソーム脂質と直接または架橋用の二価試薬と結合する反応性官能基を示し、例えば、COOH、NH、NH、CHO、SH、NHS−エステル、マレイミド、イミドエステル、活性ハロゲン、EDC、ピリジルジスルフィド、アジドフェニル、ヒドラジド等が挙げられる。nは自然数を示す。
このような親水性化合物で親水性化を行ったリポソームの表面は、薄く親水性化合物で覆われている。但し、その親水性化合物の覆いの厚みは小さいので、リポソームに糖鎖を結合させた場合であっても、糖鎖等の反応性を抑制することはない。
リポソームの親水性化は、従来公知の方法、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体等を共有結合により結合させたリン脂質を用いてリポソームを作成する方法(特開2000−302685号)等の方法を採用することによっても行うことができる。
このうち、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いてリポソーム表面を親水性化することが特に好ましい。
本発明のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いる手法は、ポリエチレングリコールなどを用いる従来の親水性化方法と比較していくつかの点で好ましい。例えば、本発明のように糖鎖をリポソーム上に結合してその分子認識機能を標的指向性に利用するものでは、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンは低分子量物質であるので従来のポリエチレングリコールなどの高分子量物質を用いる方法に比べて、糖鎖に対する立体障害となりにくく標的細胞膜面上のレクチン(糖鎖認識蛋白質)による糖鎖分子認識反応の進行を妨げないので特に好ましい。
また、本発明によるリポソームは該親水化処理後においても粒径分布や成分組成、分散特性が良好であり、長時間の保存性や生体内安定性も優れているのでリポソーム製剤化して利用するために好ましい。
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いてリポソーム表面を親水性化するには、例えばジミリストイルフォスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン等の脂質を用いて、常法により得たリポソーム溶液にビススルフォスクシニミヂルスベラート、ジスクシニミヂルグルタレート、ジチオビススクシニミヂルプロピオネート、ジスクシニミヂルスベラート、3,3’−ジチオビススルフォスクシニミヂルプロピオネート、エチレングリコールビススクシニミヂルスクシネート、エチレングリコールビススルフォスクシニミヂルスクシネート等の2価試薬を加えて反応させることにより、リポソーム膜上のジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン等の脂質に2価試薬を結合させ、次いでトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを、該2価試薬の一方の結合手と反応させることにより、リポソーム表面にトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを結合せしめる。
このように、リポソームを親水性化処理したリポソームは、生体内で極めて安定であり、後述のように標的指向性を有する糖鎖を結合しなくても、生体内での半減期が長いためドラッグデリバリーシステムにおけるドラッグ担体として好適に用いることができる。本発明は、表面を低分子化合物で親水性化したリポソームをも包含する。
本発明は、上記の親水性化化合物を用いて親水性化した糖鎖の結合していないリポソームそのものをも包含する。このような親水性化したリポソームは、リポソーム自体の安定性が高まり、また糖鎖を結合したときに糖鎖の認識性が高まるという利点がある。
本発明のリポソームは、例えば、リポソームの構成脂質が、フォスファチジルコリン類(モル比0〜70%)、フォスファチジルエタノールアミン類、(モル比0〜30%)、フォスファチジン酸類、長鎖アルキルリン酸塩およびジセチルリン酸類からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜30%)、ガングリオシド類、糖脂質類、フォスファチジルグリセロール類およびスフィンゴミエリン類からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜40%)、ならびにコレステロール類(モル比0〜70%)を含む、リポソームである。
本発明は、さらにリポソームに上記に親水性化化合物を結合させて、リポソームを親水性化する方法をも包含する。また、糖鎖の結合していない親水性化したリポソームをも包含する。糖鎖の結合していないリポソームに糖鎖を結合することにより、本発明の標的指向性リポソームまたは腸管吸収性リポソームを製造することができる。
本発明においては、上記のようにして作製したリポソームに、上記の糖鎖のいずれかを直接結合させてもよいし、さらに、糖鎖をリンカー蛋白質を介して結合させてもよい。この際、リポソームに結合させる糖鎖の種類は1種類に限らず、複数の糖鎖を結合させてもよい。この場合の複数の糖鎖は同じ組織または器官の細胞表面に共通して存在する異なるレクチンに対して結合活性を有する複数の糖鎖であってもよいし、異なる組織または器官の細胞表面に存在する異なるレクチンに対して結合活性を有する糖鎖であってもよい。前者のような複数の糖鎖を選択することにより、特定の標的組織または器官を確実に指向することができ、後者のような複数の糖鎖を選択することにより、1種類のリポソームに複数の標的を指向させることができ、マルチパーパスな標的指向性リポソームを得ることができる。
なお、糖鎖をリポソームに結合させるには、リポソームの製造時にリンカー蛋白質および/または糖鎖を混合し、リポソームを製造させつつ糖鎖をその表面に結合させることも可能であるが、あらかじめリポソーム、リンカー蛋白質および糖鎖を別途準備し、製造が完了したリポソームにリンカー蛋白質および/または糖鎖を結合させたほうが望ましい。これは、リポソームにリンカー蛋白質および/または糖鎖を結合させることにより、結合させる糖鎖の密度を制御できるからである。
糖鎖のリポソームへの直接結合は、以下に述べるような方法で行うことができる。
糖鎖を糖脂質として混合してリポソームを製造するか、製造後のリポソームのリン脂質に糖鎖を結合するとともに糖鎖密度を制御する。
リンカー蛋白質を用いて糖鎖を結合させる場合、リンカー蛋白質としては、生体由来の蛋白質、特にヒト由来蛋白質を用いるのが好ましい。生体由来の蛋白質は限定されないが、アルブミン等の血液中に存在する蛋白質、その他生体に存在する生理活性物質等が挙げられる。例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)等の動物の血清アルブミンが挙げられるが、特にヒト血清アルブミンを使用する場合は、各組織に対する取り込みが多いことがマウスについての実験により確かめられている。
本発明のリポソームは、非常に安定であり、リポソームを形成した後に蛋白質を結合させたり、リンカー蛋白質を結合させたり、糖鎖を結合させるという後処理が可能である。従って、リポソームを大量に製造した後に、目的に応じてそれぞれ異なる蛋白質を結合させたり、リンカー蛋白質や糖鎖を結合させることにより、目的に応じた種々のリポソームを製造することが可能である。
本発明のリポソームには、糖鎖がリンカー蛋白質を介して、あるいはリポソームを構成する脂質に直接結合している。本発明のリポソームは、糖脂質や糖タンパク質等の複合糖質型リガンドを有し、低分子化合物で親水化処理されているリポソームである。
また、後述のように、本発明の標的指向性リポソームを医薬として用いる場合、該リポソームは医薬効果を有する化合物を含んでいる必要がある。該医薬効果を有する化合物は、リポソーム中に封入させるか、あるいはリポソーム表面に結合させればよいが、リンカー蛋白質として、医薬効果を有する蛋白質を用いてもよい。この場合、蛋白質がリポソームと糖鎖を結合させるためのリンカー蛋白質および医薬効果を有する蛋白質を兼ねることもある。薬効を有する蛋白質としては、生理活性蛋白質等が挙げられる。
糖鎖をリンカー蛋白質を介してリポソームへ結合させるには以下に述べる方法で行えばよい。
まずリポソーム表面に蛋白質を結合させる。リポソームを、NaIO、Pb(OCCH、NaBiO等の酸化剤で処理して、リポソーム膜面に存在するガングリオシドを酸化し、次いで、NaBHCN、NaBH等の試薬を用いて、リンカー蛋白質とリポソーム膜面上のガングリオシドを、還元的アミノ化反応により結合させる。このリンカー蛋白質も、親水性化するのが好ましく、これにはリンカー蛋白質にヒドロキシ基を有する化合物を結合させるが、例えば、ビススルフォスクシニミヂルスベラート、ジスクシニミヂルグルタレート、ジチオビススクシニミヂルプロピオネート、ジスクシニミヂルスベラート、3,3’−ジチオビススルフォスクシニミヂルプロピオネート、エチレングリコールビススクシニミヂルスクシネート、エチレングリコールビススルフォスクシニミヂルスクシネート等の2価試薬を用いて、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等の上述の親水性化に用いる化合物をリポソーム上のリンカー蛋白質と結合させればよい。
これを具体的に述べると、まず、リンカー蛋白質の全てのアミノ基に架橋用2価試薬の一端を結合する。そして、各種糖鎖の還元末端をグリコシルアミノ化反応して得られる糖鎖グリコシルアミン化合物を調製し、この糖鎖のアミノ基とリポソーム上の上記で結合された架橋2価試薬の一部分の他の未反応末端とを結合する。
糖鎖および/または親水性化合物とリポソームとの共有結合、または糖鎖および/または親水性化合物とリンカー蛋白質との共有結合は、リポソームが細胞内に取り込まれたときに切断することも可能である。例えば、リンカー蛋白質と糖鎖がジスルフィド結合を介して共有結合されている場合、細胞内で還元されて糖鎖が切断される。糖鎖が切断されることによりリポソーム表面が疎水性になり、生体膜と結合し膜安定性が乱れリポソーム中に含まれる薬剤が放出される。
次に、このようにして得られる糖鎖結合リポソーム膜面上蛋白質の表面に糖鎖が結合していない未反応で残っている大部分の2価試薬未反応末端を用いて親水性化処理を行う。つまり、このリポソーム上蛋白質に結合している2価試薬の未反応末端とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等の上述の親水性化に用いる化合物との結合反応を行い、リポソーム表面全体を親水性化する。
リポソーム表面およびリンカー蛋白質の親水性化は、各種組織への移行性、および血中における滞留性および各種組織への移行性を向上させる。これは、リポソーム表面およびリンカー蛋白質表面が親水性化されることによって、糖鎖以外の部分が、各組織等においてはあたかも生体内水分であるかのようにみえ、これにより、標的以外の組織等に認識されず、糖鎖のみがその標的組織のレクチン(糖鎖認識蛋白質)により認識されることに起因するものと思われる。
次いで、糖鎖をリポソーム上のリンカー蛋白質に結合させる。これには、糖鎖を構成する糖類の還元末端を、NHHCO、NHCOONH等のアンモニウム塩を用いてグリコシルアミノ化し、次いで、ビススルフォスクシニミヂルスベラート、ジスクシニミヂルグルタレート、ジチオビススクシニミヂルプロピオネート、ジスクシニミヂルスベラート、3,3’−ジチオビススルフォスクシニミヂルプロピオネート、エチレングリコールビススクシニミヂルスクシネート、エチレングリコールビススルフォスクシニミヂルスクシネート等の2価試薬を用いて、リポソーム膜面上に結合したリンカー蛋白質と、上記グリコシルアミノ化された糖類とを結合させ、図1〜12、23〜26および33〜38に示されるようなリポソームを得る。なお、これらの糖鎖は市販されている。
本発明のリポソーム、糖鎖等結合リポソームの粒径は、30〜500nm、好ましくは50〜350nmである。また、本発明のリポソームは、負に荷電していることが望ましい。負に荷電していることにより、生体中の負に荷電している細胞との相互作用を防ぐことができる。本発明のリポソーム表面のゼータ電位は、生理食塩水中において、37℃で、−50〜10mV、好ましくは−40〜0mV、さらに好ましくは−30〜−10mVである。
さらに、糖鎖を結合させた場合の糖鎖の結合密度は、リポソームに結合させるリンカー蛋白質1分子当り1〜60個、好ましくは1〜40個、さらに好ましくは1〜20個である。また、リポソーム1粒子当りは、リンカー蛋白質を用いる場合は、1〜30000個、好ましくは1〜20000個、さらに好ましくは1〜10000個、あるいは100〜30000個、好ましくは100〜20000個、さらに好ましくは100〜10000個、あるいは500〜30000個、好ましくは500〜20000個、さらに好ましくは500〜10000個である。リンカー蛋白質を用いない場合は、リポソーム1粒子当り最高1〜500000個、好ましくは1〜300000個、さらに好ましくは1〜100000個以上の糖鎖を結合させることができる。
本発明においては、使用する糖鎖の構造と糖鎖結合量を種々選択することにより、各標的細胞、組織に対する指向性を制御することができる。
また、糖鎖の種類と糖鎖結合量によっては腸管での吸収制御性を高めることもできる。腸管吸収制御性を高める糖鎖と特定の組織または器官への指向性を有する糖鎖の両方をリポソームに結合させることにより、特定組織または器官への指向性と腸管吸収制御性の両方の特性を併せ持ったリポソームを作製することができる。
上述のように、本発明の標的指向性リポソームは糖鎖の種類と糖鎖結合量により特異的に結合するレクチンが決まり、特定の組織または器官に特異的に到達する。また、糖鎖構造と糖鎖結合量を選択することにより癌組織等の疾患部位に到達させることも可能である。
本発明においては、使用する糖鎖の構造と糖鎖結合量を種々選択することにより、各標的細胞、組織に対する指向性を制御することができる。本発明のリポソームは、糖鎖により血中、肝臓、脾臓、肺、脳、小腸、心臓、胸腺、腎臓、膵臓、筋肉、大腸、骨、骨髄、癌組織、炎症組織およびリンパ節等の組織または器官を指向する。例えば、実施例における図13、16、17、18、21および22が示すように、アルファ1,2マンノビオース二糖鎖、アルファ1,3マンノビオース二糖鎖、アルファ1,4マンノビオース二糖鎖、アルファ1,6マンノビオース二糖鎖、アルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖、オリゴマンノース3五糖鎖、オリゴマンノース4b六糖鎖、オリゴマンノース5七糖鎖、オリゴマンノース6八糖鎖、オリゴマンノース7九糖鎖、オリゴマンノース8十糖鎖およびオリゴマンノース9十一糖鎖を結合したリポソームはすべて血中、肺、脳、癌組織、心臓および小腸への指向性が高い。また、図14が示すように、アルファ1,2マンノビオース二糖鎖、オリゴマンノース3五糖鎖、オリゴマンノース4b六糖鎖を結合したリポソームは肝臓への指向性が高い。また、図15が示すようにアルファ1,2マンノビオース二糖鎖、アルファ1,3マンノビオース二糖鎖、アルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖を結合したリポソームは脾臓への指向性が高い。また、図19が示すようにアルファ1,2マンノビオース二糖鎖、アルファ1,4マンノビオース二糖鎖、アルファ1,6マンノビオース二糖鎖を結合したリポソームはリンパ節への指向性が高い。さらに、オリゴマンノース6八糖鎖を結合したリポソームは胸腺への指向性が高い。
また、本発明の図23〜26に示されるリポソームは、全般的に腸管吸収性は極めて高いものの、さらに、リポソーム上の糖鎖の密度の調節を行うことにより、腸管吸収性を制御し、より効率的に標的部位へ薬剤を移行させることが可能となり、副作用の軽減化を図ることができる。例えば、実施例における図27〜30においては、上記4種の糖鎖修飾リポソームにおける糖鎖結合量を3段階に変更した場合における、腸管から血中への移行性(すなわち腸管吸収性)を示す。
なお、この糖鎖結合量の変更は、リンカー蛋白質結合リポソームに対して糖鎖を3段階の濃度で(1)50μg、2)200μg、3)1mg)で結合せしめることにより行ったものである。これによれば、6’−シアリルラクトース三糖鎖、6’−シアリルラクトサミン糖鎖の場合、糖鎖密度を高くするにつれ、腸管吸収性が順次低下するが、3’−シアリルラクトース三糖鎖、3’−シアリルラクトサミン糖鎖の場合は腸管吸収性が逆に上昇する。これらのことは、腸管吸収性は、リポソーム上の糖鎖の結合量により、糖鎖の種類毎に異なることを示す。したがって、糖鎖の種類毎にリポソーム上の糖鎖結合量を適宜設定することにより、腸管吸収性を制御することが可能となる。
本発明のリポソームに、医薬効果を有する化合物を含ませることにより、特定の組織または器官にリポソームが到達し、その組織または器官の細胞にリポソームが取り込まれ、医薬効果を有する化合物を放出し、医薬効果を奏する。糖鎖結合リポソームの場合は、糖鎖の有する標的指向性により特定の組織または器官にリポソームが到達する。また、糖鎖が結合していない場合であっても、リポソームは体内で非常に安定なため体内での半減期が長くなり、特定の組織または器官に到達し得る。
医薬効果を有する化合物は限定されず、公知の蛋白質、公知の医薬化合物を広く用いることが可能である。抗癌剤等の特定の疾患に対する医薬化合物等を含ませることにより、本発明のリポソームを特定の疾患の治療薬として用いることができる。さらに、本発明のリポソームに含める医薬効果を有する化合物としては、遺伝子治療用DNA、RNA、siRNA等が挙げられる。
本発明のリポソームに含ませる医薬化合物としては、アルキル化系抗癌剤、代謝拮抗剤、植物由来抗癌剤、抗癌性抗生物質、BRM・サイトカイン類、白金錯体系抗癌剤、免疫療法剤、ホルモン系抗癌剤、モノクローナル抗体等の腫瘍用薬剤、中枢神経用薬剤、末梢神経系・感覚器官用薬剤、呼吸器疾患治療薬剤、循環器用薬剤、消化器官用薬剤、ホルモン系用薬剤、泌尿器・生殖器用薬剤、外用薬剤、ビタミン・滋養強壮剤、血液・体液用薬剤、代謝性医薬品、抗生物質・化学療法薬剤、検査用薬剤、抗炎症剤、眼疾患薬剤、中枢神経系薬剤、自己免疫系薬剤、循環器系薬剤、糖尿病。高脂血症等の生活習慣病薬剤または経口、経肺、経皮膚もしくは経粘膜のための各種薬剤、副腎皮質ホルモン、免疫抑制剤、抗菌薬、抗ウイルス薬、血管新生抑制剤、サイトカインやケモカイン、抗サイトカイン抗体や抗ケモカイン抗体、抗サイトカイン・ケモカイン受容体抗体、siRNA、miRNA、smRNA、アンチセンス ODNやDNAなどの遺伝子治療関連の核酸製剤、神経保護因子、種々の抗体医薬等が挙げられる。
例えば、腫瘍用薬剤として、塩酸ナイトロジェンマスタード−N−オキシド、シクロホスファミド、イホスファミド、ブルスファン、塩酸ニムスチン、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウムなどのアルキル化剤、メルカプトプリン、チオイノシン(メルカプトプリンリボシド)、メトトレキサート、エノシタビン、シタラビン、塩酸アンシタビン(塩酸サイクロシチジン)、フルオロウラシル、5−FU、テガフール、ドキシフルリジン、カルモフールなどの代謝拮抗剤、エトポシド、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、パクリタキセル、タキソール、塩酸イリノテカン、塩酸ノギテカンなどのアルカロイド等の植物由来抗癌剤、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸アクラルビシン(アクラシノマイシンA)、塩酸ピラルビシン、塩酸エピルビシン、ネオカルチノスタチンなどの抗癌性抗生物質、その他、塩酸ミトキサントロン、カルボプラチン、シスプラチン、L−アスパラギナーゼ、アセグラトン、塩酸プロカルバジン、クエン酸タモキシフェン、ウベニメクス、レンチナン、シゾフィラン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ホスフェストロール、メピチオスタン、エピチオスタノール等がある。本発明において、上述の薬剤にはその誘導体も包含される。
上述のような薬剤を含ませることにより、本発明のリポソームを、癌、炎症等の疾患の治療に用いることができる。ここで、癌は、腫瘍や白血病等のあらゆる新生物による疾患を含む。本発明の糖鎖修飾リポソームにこれらの薬剤を含ませて投与した場合、薬剤を単独で投与した場合に比較し、薬剤が癌、炎症部位に集積する。単独投与の場合に比べ、2倍以上、好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上、特に好ましくは50倍以上集積し得る。
なお、医薬効果を有する化合物は、リポソームの中に封入させてもよいし、リポソーム表面に結合させてもよい。例えば、蛋白質は上記のリンカー蛋白質の結合方法と同じ方法で表面に結合させることが可能であり、他の化合物もその化合物が有する官能基を利用することにより、公知の方法で、結合させることができる。また、リポソーム内部への封入は、以下の方法により行う。リポソームへ薬剤等を封入するには、周知の方法を用いればよく、例えば、薬剤等の含有溶液とフォスファチジルコリン類、フォスファチジルエタノールアミン類、フォスファチジン酸類もしくは長鎖アルキルリン酸塩類、ガングリオシド類、糖脂質類もしくはフォスファチジルグリセロール類およびコレステロール類を含む脂質を用いてリポソームを形成することにより、薬剤等はリポソーム内に封入される。
したがって、本発明のリポソームに、治療あるいは診断に供しうる薬剤あるいは遺伝子を封入することによって得られるリポソーム製剤は、ガン組織、炎症組織、各種組織への移行性が選択的に制御されたものであり、治療薬剤あるいは診断剤の標的細胞、組織への集中による効力の増強あるいは他の細胞、組織に対する薬剤の取り込みの減少による副作用の軽減化等を図れるものである。
本発明のリポソームまたは糖鎖修飾リポソームは、医薬組成物として、種々の形態で投与することができる。このような投与形態としては、点眼剤等による点眼投与、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与、あるいは注射剤、点滴剤、座薬などによる非経口投与を挙げることができる。かかる組成物は、公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤、賦形剤を含む。たとえば、錠剤用の担体、賦形剤としては、ゲル化剤、乳糖、ステアリン酸マグネシウムなどが使用される。注射剤は、本発明の糖鎖結合リポソームを通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが使用され、適当な溶解補助剤、たとえばアルコール、プロピレングリコールなどのポリアルコール、非イオン界面活性剤などと併用しても良い。油性液としては、ゴマ油、大豆油などが使用され、溶解補助剤としては安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用しても良い。
本発明の医薬組成物の投与経路は、限定されず、点眼、経口投与、静脈注射、筋肉注射等がある。投与量は、疾患の重篤度等により適宜決定できるが、本発明の組成物の医薬的に有効量を患者に投与する。ここで、「医薬的に有効量を投与する」とは、各種疾患を治療するのに適切なレベルの薬剤を患者に投与することをいう。本発明の医薬組成物の投与回数は適宜患者の症状に応じて選択される。
表面に糖鎖を有するリポソームは、非経口投与(静注投与)および経口投与に適し、投与量は、標的指向性を有さない従来のリポソーム製剤に対して、数分の1から数千分の1でよい。例えば、体重1kg当り、リポソームに含ませる薬剤の量で0.0001〜1000mg、好ましくは、0.0001〜10mg、さらに好ましくは、0.0001〜0.1mgでよい。また、本発明のリポソームは、標的指向性を有する糖鎖を含まず親水性化合物を結合させたリポソームも含むが、該リポソームの場合も親水性処理により生体内での安定性が高く、半減期も長いので、低用量で充分な効果を有する。
また、本発明の医薬組成物を診断用に用いる場合は、リポソームに蛍光色素、放射性化合物等の標識化合物を結合させる。該標識化合物結合リポソームが患部に結合し、標識化合物が患部細胞に取り込まれ、該標識化合物の存在を指標に疾患を検出・診断することができる。
さらに、本発明のリポソームに化粧品または香粧品を封入または結合させたものを化粧用組成物として用いることができる。ここで、化粧品とは、一般的に「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚もしくは毛髪をすこやかに保つために身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なもの」をいう。本発明のおいて「化粧品」という場合、上記の一般的な化粧品の他、「作用が緩和であり、疾病の治療または予防に使用せず、身体の構造、機能に影響を及ぼすような使用目的を併せもたないもの」と定義される医薬部外品も含む。化粧品には例えば、皮膚等の細胞に作用し、細胞を活性化させるもの等が含まれる。
化粧品としては、皮膚用、毛髪・頭髪・頭皮用化粧品を含む。
具体的には、リン酸−アスコルビン酸マグネシウム、コウジ酸、プランセンタキス、アルブチン、エラグ酸等の皮膚漂白剤(美白剤)、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類、エストロゲン、エストラジオール、エストロン、エチニルエストラジオール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン等のホルモン類、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、ミョウバン、アラントリンクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸亜鉛等の皮膚収斂剤、カンタリスチンキ、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、センブリエキス、ニンニクエキス、ヒノキチオール、塩化カルプロニウム、ペンタデカン酸グリセリド等の発毛促進剤、エラスチン、コラーゲン、カモミラエキス、カンゾウエキス、β−グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、γ−オリザノール、パントテン酸カルシウム、パントテニルエチルエーテル、アミノ酸等が化粧品として用い得る。その他、インターフェロン、インターロイキン、リゾチーム、ラクトフェリン、トランスフェリンなどの生理活性タンパク質等の細胞を活性化し得る化合物も化粧品として用い得る。
その他、例えば新化粧品学 第2版 光井武夫編 南山堂 2002年1月18日刊行、香粧品科学 −理論と実際− 第4版 田村健夫 廣田 博、著 フレグランスジャーナル社 2001年6月30日刊行 等に記載の化粧品を用いることができる。
本発明のリポソームに化粧品を封入または結合させた組成物は、皮膚表面に留まり、そこでリポソームに含まれる化粧品が放出され皮膚表面で効果を発揮する。また、リポソームごと経皮吸収され、角質層または角質層の下の組織に到達し、その組織の細胞にリポソームが取り込まれ、化粧品を放出し、医薬効果を奏する。
化粧用組成物に用いるリポソームは糖鎖が結合していなくてもよく、この場合リポソームは皮膚または皮膚下部の組織中に留まりそこで化粧品を放出する。また皮膚の炎症部を標的として炎症部に特異的に集積し得るよう糖鎖が結合していてもよい。
本発明の化粧組成物は、上記リポソームに加えて、通常化粧料として配合される水性成分、油性成分等を含んでいてもよい。水性成分としては、例えば保湿剤、増粘剤、アルコール等が挙げられ、保湿剤としてはグリセリン、プロピレングリコール、多価アルコール等が挙げられ、増粘剤としては、トラガントガム、ペクチン、アルギン酸塩等が挙げられ、アルコールとしては、エタノール、イsップロパノール等が挙げられる。油性成分としてオリーブ油、ツバキ油、ヒマシ油、ロウ、オレイン酸、固形パラフィン、セレシン、ワックス、ワセリン、流動パラフィン、シリコンオイル、合成エステル油、合成ポリエーテル等が挙げられる。
さらに、本発明のリポソームに機能性食品、栄養補助食品または健康補助食品を封入または結合させたものを食品組成物として用いることができる。本発明で用い得る機能性食品、栄養補助食品または健康補助食品に限定はなく、摂取されて食品機能を有効に発現するように設計され、加工変換された食品ならばいずれのものも含まれる。
例えば、イチョウ葉、エキナシア、ノコギリヤシ、セントジョーンズワート、バレリアン、ブラックコホッシュ、ミルクシスル、月見草、ブドウ種子エキス、ビルベリー、ナツシロギク、当帰、大豆、フランス海岸松、ガーリック、高麗ニンジン、茶、ショウガ、アガリクス、メシマコブ、紫イペ、AHCC、酵母ベータグルカン、マイタケ、プロポリス、ビール酵母、穀類、梅、クロレラ、大麦若葉、青汁、ビタミン類、コラーゲン、グルコサミン、桑葉、ルイボス茶、アミノ酸、ローヤルゼリー、シイタケ菌糸体エキス、スピルリナ、田七ニンジン、クレソン、植物発酵食品、DHA、EPA、ARA、昆布、キャベツ、アロエ、メグスリノ木、ホップ、カキ肉エキス、ピクジエノール、ゴマ等が本発明に用い得る機能性食品、栄養補助食品または健康補助食品として例示できる。これらは、そのままリポソームに含ませてもよいし、抽出物等の処理物を含ませてもよい。リポソームを含む食品組成物は、経口摂取される。用いるリポソームは、糖鎖が結合していなくてもよく、また腸管吸収を高める糖鎖または特定の組織もしくは器官を標的とした糖鎖が結合していてもよい。本発明のリポソームを食品組成物として投与する場合は、液体飲料、ゲル状食品、固形食品等の食品に加工すればよい。また、錠剤、顆粒等に加工してもよい。本発明の食品組成物は、リポソームが含む食品の種類に応じた機能性食品、栄養補助食品または健康補助食品として用いることができる。例えば、DHAを含むリポソームは、軽度老人性痴呆症や記憶改善に効果のある機能性食品、栄養補助食品または健康補助食品として用いることができる。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1 リポソームの調製
リポソームは既報の手法(Yamazaki,N.,Kodama,M.and Gabius,H.−J.(1994)Methods Enzymol.242,56−65)により、改良型コール酸透析法を用いて調製した。すなわち、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、コレステロール、ジセチルフォスフェート、ガングリオシド及びジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンをモル比でそれぞれ35:40:5:15:5の割合の合計脂質量45.6mgにコール酸ナトリウムを46.9mg添加し、クロロホルム/メタノール溶液3mlに溶解した。この溶液を蒸発させ、沈殿物を真空中で乾燥させることによって脂質膜を得た。得られた脂質膜をTAPS緩衝液(pH8.4)3mlに懸濁、超音波処理して、透明なミセル懸濁液を得た。さらに、ミセル懸濁液をPM10膜(Amicon Co.,USA)とPBS緩衝液(pH7.2)を用いた限外濾過にかけ均一リポソーム(平均粒径100nm)10mlを調製した。
実施例2 リポソーム脂質膜面上の親水性化処理
実施例1で調製したリポソーム溶液10mlをXM300膜(Amicon Co.,USA)とCBS緩衝液(pH8.5)を用いた限外濾過にかけ溶液のpHを8.5にした。次に、架橋試薬bis(sulfosuccinimidyl)suberate(BS3;Pierce Co.,USA)10mlを加え、25℃で2時間攪拌した。その後、更に7℃で一晩攪拌してリポソーム膜上の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンとBS3との化学結合反応を完結した。そして、このリポソーム液をXM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過にかけた。次に、CBS緩衝液(pH8.5)1mlに溶かしたtris(hydroxymethyl)aminomethane 40mgをリポソーム液10mlに加えて、25℃で2時間攪拌後、7℃で一晩攪拌してリポソーム膜上の脂質に結合したBS3とtris(hydroxymethyl)aminomethaneとの化学結合反応を完結した。これにより、リポソーム膜の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン上にtris(hydroxymethyl)aminomethaneの水酸基が配位して水和親水性化された。
実施例3 リポソーム膜面上へのヒト血清アルブミン(HSA)の結合
既報の手法(Yamazaki,N.,Kodama,M.and Gabius,H.−J.(1994)Methods Enzymol.242,56−65)により、カップリング反応法を用いて行った。すなわち、この反応は2段階化学反応で行い、まずはじめに、実施例2で得られた10mlのリポソーム膜面上に存在するガングリオシドを1mlのTAPS緩衝液(pH8.4)に溶かしたメタ過ヨウ素酸ナトリウム43mgを加えて室温で2時間攪拌して過ヨウ素酸酸化した後、XM300膜とPBS緩衝液(pH8.0)で限外濾過することにより酸化されたリポソーム10mlを得た。このリポソーム液に、20mgのヒト血清アルブミン(HSA)を加えて25℃で2時間攪拌し、次にPBS(pH8.0)に2M NaBHCN 100μlを加えて10℃で一晩攪拌してリポソーム上のガングリオシドとHSAとのカップリング反応でHSAを結合した。そして、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過をした後、HSA結合リポソーム液10mlを得た。
実施例4 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのアルファ1,2マンノビオース二糖鎖の結合
アルファ1,2マンノビオース二糖鎖(Calbiochem Co.,USA)50μgを0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してアルファ1,2マンノビオース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のアルファ1,2マンノビオース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにアルファ1,2マンノビオース二糖鎖の結合を行った。その結果、図1で示されるアルファ1,2マンノビオース二糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:A2)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
実施例5 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのアルファ1,3マンノビオース二糖鎖の結合
アルファ1,3マンノビオース二糖鎖(Calbiochem Co.,USA)50μgを0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してアルファ1,3マンノビオース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のアルファ1,3マンノビオース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにアルファ1,3マンノビオース二糖鎖の結合を行った。その結果、図2で示されるアルファ1,3マンノビオース二糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:A3)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
実施例6 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのアルファ1,4マンノビオース二糖鎖の結合
アルファ1,4マンノビオース二糖鎖(Calbiochem Co.,USA)50μgを0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してアルファ1,4マンノビオース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のアルファ1,4マンノビオース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにアルファ1,4マンノビオース二糖鎖の結合を行った。その結果、図3で示されるアルファ1,4マンノビオース二糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:A4)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
実施例7 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのアルファ1,6マンノビオース二糖鎖の結合
アルファ1,6マンノビオース二糖鎖(Calbiochem Co.,USA)50μgを0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してアルファ1,6マンノビオース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のアルファ1,6マンノビオース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにアルファ1,6マンノビオース二糖鎖の結合を行った。その結果、図4で示されるアルファ1,6マンノビオース二糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:A6)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
実施例8 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのアルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖の結合
アルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖(Calbiochem Co.,USA)50μgを0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してアルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のアルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにアルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖の結合を行った。その結果、図5で示されるアルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:A36)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
実施例9 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのオリゴマンノース3五糖鎖の結合
オリゴマンノース3五糖鎖(Calbiochem Co.,USA)50μgを0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してオリゴマンノース3五糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のオリゴマンノース3五糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにオリゴマンノース3五糖鎖の結合を行った。その結果、図6で示されるオリゴマンノース3五糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:Man3)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
実施例10 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのオリゴマンノース4b六糖鎖の結合
オリゴマンノース4b六糖鎖(Calbiochem Co.,USA)50μgを0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してオリゴマンノース4b六糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のオリゴマンノース4b六糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにオリゴマンノース4b六糖鎖の結合を行った。その結果、図7で示されるオリゴマンノース4b六糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:Man4b)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
実施例11 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのオリゴマンノース5七糖鎖の結合
オリゴマンノース5七糖鎖(Calbiochem Co.,USA)50μgを0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してオリゴマンノース5七糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のオリゴマンノース5七糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにオリゴマンノース5七糖鎖の結合を行った。その結果、図8で示されるオリゴマンノース5七糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:Man5)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
実施例12 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのオリゴマンノース6八糖鎖の結合
オリゴマンノース6八糖鎖(Calbiochem Co.,USA)50μgを0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してオリゴマンノース6八糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のオリゴマンノース6八糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにオリゴマンノース6八糖鎖の結合を行った。その結果、図9で示されるオリゴマンノース6八糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:Man6)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
実施例13 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのオリゴマンノース7九糖鎖の結合
オリゴマンノース7九糖鎖(Calbiochem Co.,USA)50μgを0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してオリゴマンノース7九糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のオリゴマンノース7九糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにオリゴマンノース7九糖鎖の結合を行った。その結果、図10で示されるオリゴマンノース7九糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:Man7)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
実施例14 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのオリゴマンノース8十鎖の結合
オリゴマンノース8十糖鎖(Calbiochem Co.,USA)50μgを0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してオリゴマンノース8十糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のオリゴマンノース8十糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにオリゴマンノース8十糖鎖の結合を行った。その結果、図11で示されるオリゴマンノース8十糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:Man8)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
実施例15 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのオリゴマンノース9十一糖鎖の結合
オリゴマンノース9十一糖鎖(Calbiochem Co.,USA)50μgを0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してオリゴマンノース9十一糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のオリゴマンノース9十一糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにオリゴマンノース9十一糖鎖の結合を行った。その結果、図12で示されるオリゴマンノース9十一糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:Man9)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
実施例16 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのtris(hydroxymethyl)aminomethaneの結合
比較試料としてのリポソームを調製するために、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液にtris(hydroxymethyl)aminomethane(Wako Co.,Japan)13mgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにtris(hydroxymethyl)aminomethaneの結合を行った。その結果、図31で示されるtris(hydroxymethyl)aminomethaneとヒト血清アルブミンとリポソームとが結合した比較試料としてのリポソーム(略称:TRIS)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
実施例17 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上の親水性化処理
実施例4〜15において調製された12種類の糖鎖が結合したリポソームについて、それぞれ別々に以下の手順によりリポソーム上のHSA蛋白質表面の水和性化処理を行った。12種の糖鎖結合リポソーム2mlに、別々に、tris(hydroxymethyl)aminomethane 13mgを加えて、25℃で2時間、その後7℃で一晩攪拌した後、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過し未反応物を除去して、最終産物である水和性化処理された12種類の糖鎖結合リポソーム複合体(略称: A2、A3、A4、A6、A36、Man3、Man4、Man5、Man6、Man7、Man8、Man9)を各2mlを得た。
実施例18 各種の糖鎖結合リポソーム複合体によるレクチン結合活性阻害効果の測定
実施例4〜15および実施例17で調製した12種の糖鎖結合リポソーム複合体のin vitroでのレクチン結合活性は、常法(Yamazaki,N.(1999)Drug Delivery System,14,498−505)に従いレクチン固定化マイクロプレートを用いた阻害実験で測定した。すなわち、レクチン(Con A;R&D Systems Co.,USA)を96穴マイクロプレートに固化定した。このレクチン固定化プレートに、比較リガンドであるビオチン化したフェチュイン0.1μgとともに、濃度の異なる各種の糖鎖結合リポソーム複合体(蛋白質量として、0.01μg、0.04μg、0.11μg、0.33μg、1μg)を加え、4℃で2時間インキュベートした。PBS(pH7.2)で3回洗浄した後、horseradish peroxidase(HRPO)結合ストレプトアビジンを添加し、さらに4℃で1時間インキュベート、PBS(pH7.2)で3回洗浄し、ペルオキシダーゼ基質を添加して室温で静置、405nmの吸光度をマイクロプレートリーダー(Molecular Devices Corp.,USA)で測定した。フェチュインのビオチン化は、sulfo−NHS−biotin reagent(Pierce Co.,USA)処理後、Centricon−30(Amicon Co.,USA)により精製した。HRPO結合ストレプトアビジンは、HRPOの酸化とNaBHCNを用いた還元アミノ化法によるストレプトアビジンの結合により調製した。この測定結果を表1に示す。
表1
標的指向性リポソーム

実施例19 クロラミンT法による各種糖鎖結合リポソームの125I標識
クロラミンT(Wako Pure Chemical Co.,Japan)溶液並びに二亜硫酸ナトリウム溶液をそれぞれ3mg/ml並びに5mg/mlとなるように用事調製して用いた。実施例4から16において調製した12種の糖鎖結合リポソーム並びにtris(hydroxymethyl)aminomethane結合リポソームとを50μlずつ別々にエッペンチューブに入れ、続いて125I−NaI(NEN Life Science Product,Inc.USA)を15μl、クロラミンT溶液を10μl加え反応させた。5分ごとにクロラミンT溶液10μlを加え、この操作を2回繰り返した後15分後に還元剤として二亜硫酸ナトリウム100μl加え、反応を停止させた。次に、Sephadex G−50(Phramacia Biotech.Sweden)カラムクロマト上に乗せ、PBSで溶出、標識体を精製した。最後に、非標識−リポソーム複合体を添加して比活性(4x10Bq/mg protein)を調整して13種類の125I標識リポソーム液を得た。
実施例20 各種の糖鎖結合リポソーム複合体の担癌マウスでの各組織への分布量の測定
Ehrlich ascites tumor(EAT)細胞(約2×10個)を雄性ddYマウス(7週齢)大腿部皮下に移植し、癌組織が0.3〜0.6gに発育(6〜8日後)したものを本実験に用いた。この担癌マウスに実施例19により125I標識した12種の糖鎖並びにtris(hydroxymethyl)aminomethane結合リポソーム複合体0.2mlを蛋白質量として3μg/一匹の割合となるように尾静脈に注入投与し、60分後に組織(血液、肝臓、脾臓、肺、脳、癌組織、癌の周囲の炎症組織、リンパ節)を摘出、各組織の放射能をガンマカウンタ(Aloka ARC 300)で測定した。なお、各組織への放射能分布量は、投与全放射能に対する各組織1g当たりの放射能の割合(%投与量/g組織)で表示した。この結果を図13〜図22に示す。
実施例21 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上への3’−シアリルラクトース三糖鎖の結合(糖鎖結合量が異なるもの3種類)
3’−シアリルラクトース三糖鎖(Wako Pure Chemical Co.,Japan)(1)50μg、又は、2)200μg、又は、3)1mg)を0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結して3’−シアリルラクトース三糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記の3’−シアリルラクトース三糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPに3’−シアリルラクトース三糖鎖の結合を行った。その結果、糖鎖結合量が異なるもの3種類の図22で示される3’−シアリルラクトース三糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:1)3SL−1、2)3SL−2,3)3SL−3)各2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
実施例22 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上への6’−シアリルラクトース三糖鎖の結合(糖鎖結合量が異なるもの3種類)
6’−シアリルラクトース三糖鎖(Wako Pure Chemical Co.,Japan)(1)50μg、又は、2)200μg、又は、3)1mg)を0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結して6’−シアリルラクトース三糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記の6’−シアリルラクトース三糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPに6’−シアリルラクトース三糖鎖の結合を行った。その結果、糖鎖結合量が異なるもの3種類の図23で示される6’−シアリルラクトース三糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:1)6SL−1、2)6SL−2,3)6SL−3)各2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
実施例23 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上への3’−シアリルラクトサミン糖鎖の結合(糖鎖結合量が異なるもの3種類)
3’−シアリルラクトサミン糖鎖(Wako Pure Chemical Co.,Japan)(1)50μg、又は、2)200μg、又は、3)1mg)を0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結して3’−シアリルラクトサミン糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例3で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記の3’−シアリルラクトサミン糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPに3’−シアリルラクトサミン糖鎖の結合を行った。その結果、糖鎖結合量が異なるもの3種類の図24で示される3’−シアリルラクトサミン糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:1)3SLN−1、2)3SLN−2,3)3SLN−3)各2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
実施例24 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上への6’−シアリルラクトサミン糖鎖の結合(糖鎖結合量が異なるもの3種類)
6’−シアリルラクトサミン糖鎖(Wako Pure Chemical Co.,Japan)(1)50μg、又は、2)200μg、又は、3)1mg)を0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結して6’−シアリルラクトサミン糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、(実施例3)で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記の6’−シアリルラクトサミン糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPに6’−シアリルラクトサミン糖鎖の結合を行った。その結果、糖鎖結合量が異なるもの3種類の図25で示される6’−シアリルラクトサミン糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリポソーム(略称:1)6SLN−1、2)6SLN−2,3)6SLN−3)各2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)が得られた。
実施例25 リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上の親水性化処理
実施例21〜24の手段により調整された各12種類の糖鎖が結合したリポソームについて、それぞれ別々に以下の手順によりリポソーム上のHSA蛋白質表面の親水性化処理を行った。12種の糖鎖結合リポソーム2mlに、別々に、tris(hydroxymethyl)aminomethane 13mgを加えて、25℃で2時間、その後7℃で一晩攪拌した後、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過し未反応物を除去して、最終産物である親水性化処理された12種類の糖鎖結合リポソーム複合体(略称: 3SL−2、3SL−2、3SL−3、6SL−1、6SL−2、6SL−3、3SLN−1、3SLN−2、3SLN−3、6SLN−1、6SLN−2、6SLN−3)各2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg、平均粒径100nm)を得た。
実施例26 各種の糖鎖結合リポソーム複合体によるレクチン結合活性阻害効果の測定
実施例21〜24および実施例16の手段により調製した各12種の糖鎖結合リポソーム複合体のin vitroでのレクチン結合活性は、常法(Yamazaki,N.(1999)Drug Delivery System,14,498−505)に従いレクチン固定化マイクロプレートを用いた阻害実験で測定した。すなわち、レクチン(E−selectin;R&D Systems Co.,USA)を96穴マイクロプレートに固化定した。このレクチン固定化プレートに、比較リガンドであるビオチン化したフコシル化フェチュイン0.1μgとともに、濃度の異なる各種の糖鎖結合リポソーム複合体(蛋白質量として、0.01μg、0.04μg、0.11μg、0.33μg、1μg)を加え、4℃で2時間インキュベートした。PBS(pH7.2)で3回洗浄した後、horseradish peroxidase(HRPO)結合ストレプトアビジンを添加し、さらに4℃で1時間インキュベート、PBS(pH7.2)で3回洗浄し、ペルオキシダーゼ基質を添加して室温で静置、405nmの吸光度をマイクロプレートリーダー(Molecular Devices Corp.,USA)で測定した。フコシル化フェチュインのビオチン化は、sulfo−NHS−biotin reagent(Pierce Co.,USA)処理後、Centricon−30(Amicon Co.,USA)により精製した。HRPO結合ストレプトアビジンは、HRPOの酸化とNaBHCNを用いた還元アミノ化法によるストレプトアビジンの結合により調製した。この測定結果を表2に示す。
表2
腸管吸収制御性リポソーム

実施例27 クロラミンT法による各種糖鎖結合リポソームの125I標識
クロラミンT(Wako Pure Chemical Co.,Japan)溶液並びに二亜硫酸ナトリウム溶液をそれぞれ3mg/ml並びに5mg/mlとなるように用事調製して用いた。実施例21から24および実施例16により調製した13種の糖鎖結合リポソーム並びにtris(hydroxymethyl)aminomethane結合リポソームとを50μlずつ別々にエッペンチューブに入れ、続いて125I−NaI(NEN Life Science Product,Inc.USA)を15μl、クロラミンT溶液を10μl加え反応させた。5分ごとにクロラミンT溶液10μlを加え、この操作を2回繰り返した後15分後に還元剤として二亜硫酸ナトリウム100μl加え、反応を停止させた。次に、Sephadex G−50(Phramacia Biotech.Sweden)カラムクロマト上に乗せ、PBSで溶出、標識体を精製した。最後に、非標識−リポソーム複合体を添加して比活性(4x10Bq/mg protein)を調整して13種類の125I標識リポソーム液を得た。
実施例28 各種の糖鎖結合リポソーム複合体のマウスでの腸管から血中への移行量の測定
一昼夜水分以外絶食した雄性ddYマウス(7週齢)に、実施例27により125I標識された13種の糖鎖結合並びにtris(hydroxymethyl)aminomethane結合リポソーム複合体0.2mlを蛋白質量として3μg/一匹の割合になるように、マウス用経口ゾンデで腸管内に強制投与した後、10分後にネンブタール麻酔下で下大動脈より血液1mlを採血した。そして、血中の125I放射能をガンマーカウンター(Alola ARC300)で測定した。さらに、各種のリポソーム複合体の生体内安定性を調べる目的で、各血液の血清をSephadex G−50で再クロマトしたが、いずれも大半の放射能が高分子量のボイドフラクションにみられ、各種のリポソーム複合体は生体内においても安定性を有していた。なお、腸管から血中への放射能移行量は、投与全放射能に対する血液1ml当たりの放射能の割合(%投与量/ml血液)で表示した。この結果を図27から図31に示す。
実施例29 抗癌剤ドキソルビシン封入リポソームの調製
リポソームはコール酸透析法を用いて調製した。すなわち、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、コレステロール、ジセチルフォスフェート、ガングリオシド及びジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンをモル比でそれぞれ35:40:5:15:5の割合で合計脂質量45.6mgになるように混合し、コール酸ナトリウム46.9mg添加し、クロロホルム/メタノール溶液3mlに溶解した。この溶液を蒸発させ、沈殿物を真空中で乾燥させることによって脂質膜を得た。得られた脂質膜をTAPS緩衝生理食塩液(pH8.4)10mlに懸濁、超音波処理し、透明なミセル懸濁液10mlを得た。このミセル懸濁液にTAPS緩衝液(pH8.4)で3mg/1mlになるよう完全に溶解した抗癌剤ドキソルビシンを攪拌しながらゆっくりと滴下して均一に混合した後、このドキソルビシン入りミセル懸濁液をPM10膜(AmiconCo.,USA)とTAPS緩衝生理食塩液(pH8.4)を用いた限外濾過にかけ均一な抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム粒子懸濁液10mlを調製した。得られた生理食塩懸濁液中(37℃)の抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム粒子の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd.,UK)により測定した結果、粒子径は50〜350nm、ゼータ電位は−30〜−10mVであった。
実施例30 抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム脂質膜面上の親水性化処理
実施例29で調製した抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム溶液10mlをXM300膜(Amicon Co.,USA)とCBS緩衝液(pH8.5)を用いた限外濾過にかけ溶液のpHを8.5にした。次に、架橋試薬bis(sulfosuccinimidyl)suberate(BS3;Pierce Co.,USA)10mlを加え、25℃で2時間攪拌した。その後、更に7℃で一晩攪拌してリポソーム膜上の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンとBS3との化学結合反応を完結した。そして、このリポソーム液をXM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過にかけた。次に、CBS緩衝液(pH8.5)1mlに溶かしたtris(hydroxymethyl)aminomethane 40mgをリポソーム液10mlに加えて、25℃で2時間攪拌後、7℃で一晩攪拌してリポソーム膜上の脂質に結合したBS3とtris(hydroxymethyl)aminomethaneとの化学結合反応を完結した。これにより、抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム膜の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン上にtris(hydroxymethyl)aminomethaneの水酸基が配位して水和親水性化された。
実施例31 抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム膜面上へのヒト血清アルブミン(HSA)の結合
既報の手法(Yamazaki,N.,Kodama,M.and Gabius,H.−J.(1994)Methods Enzymol.242,56−65)により、カップリング反応法を用いて行った。すなわち、この反応は2段階化学反応で行い、まずはじめに、実施例2で得られた10mlのリポソーム膜面上に存在するガングリオシドを1mlのTAPS緩衝液(pH8.4)に溶かしたメタ過ヨウ素酸ナトリウム43mgを加えて室温で2時間攪拌して過ヨウ素酸酸化した後、XM300膜とPBS緩衝液(pH8.0)で限外濾過することにより酸化されたリポソーム10mlを得た。このリポソーム液に、20mgのヒト血清アルブミン(HSA)を加えて25℃で2時間攪拌し、次にPBS(pH8.0)に2M NaBHCN 100μlを加えて10℃で一晩攪拌してリポソーム上のガングリオシドとHSAとのカップリング反応でHSAを結合した。そして、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過をした後、HSA結合抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム液10mlを得た。
実施例32 抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのアルファ1,6マンノビオース二糖鎖の結合とリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理
アルファ1,6マンノビオース二糖鎖(Calbiochem Co.,USA)50μgを0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してアルファ1,6マンノビオース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例31で得た抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のアルファ1,6マンノビオース二糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにアルファ1,6マンノビオース二糖鎖の結合を行った。次に、このリポソーム液にtris(hydroxymethyl)aminomethane(Wako Co.,Japan)13mgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにtris(hydroxymethyl)aminomethaneの結合を行った。その結果、図32で示されるtris(hydroxymethyl)aminomethaneとヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理をしたリポソームを得た。その結果、図4で示されるアルファ1,6マンノビオース二糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理をした抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム(略称:DX−A6)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg)が得られた。得られた生理食塩懸濁液中(37℃)の抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム粒子の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd.,UK)により測定した結果、粒子径は50〜350nm、ゼータ電位は−30〜−10mVであった。
実施例33 抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上への3−フコシルラクトース三糖鎖の結合とリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理
3−フコシルラクトース三糖鎖(Calbiochem Co.,USA)50μgを0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結して3−フコシルラクトース三糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、実施例31で得た抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記の3−フコシルラクトース三糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPに3−フコシルラクトース三糖鎖の結合を行った。次に、このリポソーム液にtris(hydroxymethyl)aminomethane(Wako Co.,Japan)13mgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにtris(hydroxymethyl)aminomethaneの結合を行った。その結果、図32で示されるtris(hydroxymethyl)aminomethaneとヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理をしたリポソームを得た。その結果、図38で示される3−フコシルラクトース三糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理をした抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム(略称:DX−3FL)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg)が得られた。得られた生理食塩懸濁液中(37℃)の抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム粒子の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd.,UK)により測定した結果、粒子径は50〜350nm、ゼータ電位は−30〜−10mVであった。
実施例34 抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのtris(hydroxymethyl)aminomethaneの結合によるリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理
比較試料としての抗癌剤ドキソルビシン封入リポソームを調製するために、実施例31で得た抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理リポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液にtris(hydroxymethyl)aminomethane(Wako Co.,Japan)13mgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにtris(hydroxymethyl)aminomethaneの結合を行った。その結果、図32で示されるtris(hydroxymethyl)aminomethaneとヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理をした比較試料としての抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム(略称:DX−TRIS)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg)が得られた。得られた生理食塩懸濁液中(37℃)の抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム粒子の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd.,UK)により測定した結果、粒子径は50〜350nm、ゼータ電位は−30〜−10mVであった。
実施例35 各種の糖鎖結合リポソーム複合体の尾静注投与による担癌マウスでの制癌効果の測定
Ehrlich ascites tumor(EAT)細胞(約2×10個)を雄性ddYマウス(7週齢)の右大腿部皮下に移植し、癌組織が50〜100立方ミリメートルに発育(6〜8日後)したもの約40匹を本実験に用いた。この担癌マウス10匹づつを4群に分けてそれぞれの群に、実施例32と実施例34で調製した糖鎖結合抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム液または糖鎖なし抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム液または生理食塩水またはフリーのドキソルビシン液を0.2ml、3〜4日置きに4回(癌細胞移植後、7日、11日、14日、18日)、尾静注投与した。腫瘍体積は、移植腫瘍の長径(L)および短径(S)をノギスで測定し、次の式により算出した。腫瘍体積(立方ミリメートル)= 1/2xLxSxS この結果を図39または図40に示す。図に示すように、本発明のリポソームにドキソルビシンを封入したものを用いた場合に腫瘍の体積の上昇は抑制され、腫瘍抑制効果が認められた。
実施例36 各種の糖鎖結合リポソーム複合体の経口投与による担癌マウスでの制癌効果の測定
Ehrlich ascites tumor(EAT)細胞(約2×10個)を雄性ddYマウス(7週齢)の右大腿部皮下に移植し、癌組織が50〜100立方ミリメートルに発育(6〜8日後)したもの約30匹を本実験に用いた。この担癌マウス10匹づつを3群に分けてそれぞれの群に、実施例33と実施例34で調製した糖鎖結合抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム液または糖鎖なし抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム液または生理食塩水を0.6ml、3〜4日置きに4回(癌細胞移植後、7日、11日、14日、18日)、経口投与した。腫瘍体積は、移植腫瘍の長径(L)および短径(S)をノギスで測定し、次の式により算出した。腫瘍体積(立方ミリメートル)= 1/2xLxSxS この結果を図41または図42に示す。図に示すように、本発明のリポソームにドキソルビシンを封入したものを用いた場合に腫瘍の体積の上昇は抑制され、腫瘍抑制効果が認められた。
実施例37 白血病治療用標的指向性リポソームの調製
(1) ドキソルビシン封入リポソームの調製と封入薬物定量と保存安定性
リポソームはコール酸透析法を用いて調製した。すなわち、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、コレステロール、ジセチルフォスフェート、ガングリオシド及びジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンをモル比でそれぞれ35:40:5:15:5の割合で合計脂質量45.6mgになるように混合し、コール酸ナトリウム46.9mg添加し、クロロホルム/メタノール溶液3mlに溶解した。この溶液を蒸発させ、沈殿物を真空中で乾燥させることによって脂質膜を得た。得られた脂質膜をTAPS緩衝液(pH8.4)3mlに懸濁、超音波処理し、透明なミセル懸濁液3mlを得た。このミセル懸濁液にPBS緩衝液(pH7.2)を加えて10mlにしてから、更にTAPS緩衝液(pH8.4)で3mg/1mlになるよう完全に溶解したドキソルビシンを攪拌しながらゆっくりと滴下して均一に混合した後、このドキソルビシン入りミセル懸濁液をPM10膜(AmiconCo.,USA)とTAPS緩衝液(pH8.4)を用いた限外濾過にかけ均一なドキソルビシン封入リポソーム粒子懸濁液10mlを調製した。得られた生理食塩懸濁液中(37℃)の抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム粒子の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd.,UK)により測定した結果、平均粒子径は50〜350nm、平均ゼータ電位は−30〜−10mVであった。このリポソームの封入薬物量を吸光度485nmで測定するとおよそ110μg/mlの濃度でドキソルビシンが封入されていることがわかった。このドキソルビシン封入リポソームは、冷蔵庫中に1年間保存し後にも沈殿や凝集を起こすことなく安定であった。
(2) 抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム脂質膜面上の親水性化処理
(1)で調製した抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム溶液10mlをXM300膜(Amicon Co.,USA)とCBS緩衝液(pH8.5)を用いた限外濾過にかけ溶液のpHを8.5にした。次に、架橋試薬bis(sulfosuccinimidyl)suberate(BS3;Pierce Co.,USA)10mlを加え、25℃で2時間攪拌した。その後、更に7℃で一晩攪拌してリポソーム膜上の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンとBS3との化学結合反応を完結した。そして、このリポソーム液をXM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過にかけた。次に、CBS緩衝液(pH8.5)1mlに溶かしたtris(hydroxymethyl)aminomethane 40mgをリポソーム液10mlに加えて、25℃で2時間攪拌後、7℃で一晩攪拌してリポソーム膜上の脂質に結合したBS3とtris(hydroxymethyl)aminomethaneとの化学結合反応を完結した。これにより、抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム膜の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン上にtris(hydroxymethyl)aminomethaneの水酸基が配位して水和親水性化された。
(3) 抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム膜面上へのヒト血清アルブミン(HSA)の結合
既報の手法(Yamazaki,N.,Kodama,M.and Gabius,H.−J.(1994)Methods Enzymol.242,56−65)により、カップリング反応法を用いて行った。すなわち、この反応は2段階化学反応で行い、まずはじめに、実施例2で得られた10mlのリポソーム膜面上に存在するガングリオシドを1mlのTAPS緩衝液(pH8.4)に溶かしたメタ過ヨウ素酸ナトリウム43mgを加えて室温で2時間攪拌して過ヨウ素酸酸化した後、XM300膜とPBS緩衝液(pH8.0)で限外濾過することにより酸化されたリポソーム10mlを得た。このリポソーム液に、20mgのヒト血清アルブミン(HSA)を加えて25℃で2時間攪拌し、次にPBS(pH8.0)に2M NaBHCN 100μlを加えて10℃で一晩攪拌してリポソーム上のガングリオシドとHSAとのカップリング反応でHSAを結合した。そして、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過をした後、HSA結合抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム液10mlを得た。
(4) 抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのシアリルルイスX型四糖鎖の結合とリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理
シアリルルイスX型四糖鎖(Calbiochem Co.,USA)50μgを0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してシアリルルイスX四糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、(3)で得た抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のシアリルルイスX型四糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにシアリルルイスX型四糖鎖の結合を行った。次に、このリポソーム液にtris(hydroxymethyl)aminomethane(Wako Co.,Japan)13mgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにtris(hydroxymethyl)aminomethaneの結合を行った。その結果、tris(hydroxymethyl)aminomethaneとヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理をしたリポソームを得た。その結果、シアリルルイスX型四糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理をしたシアリルルイスX型四糖鎖付き抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg)が得られた。得られた生理食塩懸濁液中(37℃)のシアリルルイスX型四糖鎖付き抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム粒子の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd.,UK)により測定した結果、粒子径は50〜350nm、ゼータ電位は−30〜−10mVであった。
(5) 抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのtris(hydroxymethyl)aminomethaneの結合によるリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理
比較試料としての抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム(糖鎖の付いてないもの)を調製するために、(3)で得た抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理リポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液にtris(hydroxymethyl)aminomethane(Wako Co.,Japan)13mgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにtris(hydroxymethyl)aminomethaneの結合を行った。その結果、図32で示されるtris(hydroxymethyl)aminomethaneとヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理をした比較試料としての抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム(糖鎖の付いてないもの)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg)が得られた。得られた生理食塩懸濁液中(37℃)の抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム粒子(糖鎖の付いてないもの)の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd.,UK)により測定した結果、粒子径は50〜350nm、ゼータ電位は−30〜−10mVであった。
本実施例で製造したリポソームは、実施例38で用いた。
実施例38 標的指向性リポソームによる白血病治療の検討
(1)リポソーム化塩酸ドキソルビシンの細胞傷害性の実験
ヒト白血病細胞として急性骨髄性白血病患者の白血病細胞から樹立されたKG−1a細胞を使用し、この細胞に対しては10%牛胎児血清(fetal bovine serum以下 FBS)を含むRPMI 1640培地で培養した。またヒト正常細胞として正常繊維芽細胞から樹立されたMRC5細胞を使用し、この細胞に対しては10%FBSを含むMEM培地で培養した。これら細胞で10個/mlの細胞浮遊液を作成し、96−ウェル培養プレート上に10個/wellを播き培養した。24時間後リポソーム化していない遊離の塩酸ドキソルビシン(以下free Dox)、リポソーム化した塩酸ドキソルビシンで糖鎖を結合させていないもの(以下L−Dox)そしてリポソーム化した塩酸ドキソルビシンでシアリルルイスX糖鎖を結合させたもの(以下L−Dox−SLX)をそれぞれ適当な濃度でそれぞれのウェルへ投与した。このときFBS等の濃度はそれぞれのウェルで同じ条件になるように調整された。抗癌剤を投与後72時間培養し、生き残った細胞を定量化、殺活性(Killing Activities)を計算して、50%阻害薬剤濃度(50% growth inhibition concentration以下IC50)を求めた。細胞の定量化は抗癌剤を含んだ培地を除いた後10% WST−8、10% FBSを含んだ100μlのRPMI 1640培地又はMEM培地に置換し、3時間培養後485nmの吸光度を測定した(550nmの吸光度を参照値とした)。殺活性(%)=100−(注目ウェルの485nm吸光度−同じウェルの550nm吸光度)/(無処置ウェルの485nm吸光度−無処置ウェルの550nm吸光度)X100、以上の式から殺活性(%)(以下KA)を求めた。
以下の結果が得られた。
KG−1a細胞に対するfree DoxのIC50は0.18μMであり、L−Doxでは21.9μM、L−Dox−SLXでは5.9μMであった。MRC5細胞に対するfree DoxのIC50は8.4μM、L−Doxは520μM、L−Dox−SLXは802μMであった(表3)。

この結果より以下のことが判明した。
塩酸ドキソルビシンのリポソーム化によりその正常細胞に対する毒性はL−Doxで約62分の一へ、L−Dox−SLXで約95分の一へ低下した。これはリポソーム化により抗癌剤の毒性が非常に低下したことを示している。現在臨床で用いられている塩酸ドキソルビシンの投与量は一日0.4−0.6mg/Kg(0.67−1uM)を数日間という治療計画が多いことを考えると、正常細胞に対するIC50値が500μM以上というのは非常に安全性が高いと考えられる。
しかしリポソーム化により白血病細胞に対する細胞傷害性も低下しており、KG−1a細胞に対するL−DoxのIC50は21.9μM、free DoxのIC50は0.18μMで約120分の一へ低下していた。実際の生体内投与ではfree Doxの血中滞留性に対してリポソーム化製剤の血中滞留性は向上しているので、KG−1a細胞に対するfree DoxとL−Doxの生体内における薬効の差はこれほど大きくはならないと思われるが、L−Doxの生体内薬効はfree Doxと比較して低下している可能性があると考えられた。
そこで我々の糖鎖による指向性リポソームの機能を検討した。KG−1a細胞に対するL−Dox−SLXのIC50は5.9μMで、L−Doxに比して細胞傷害性の低下はあまり大きくなっておらず、約30分の一程度にとどまっていた。これは近年KG−1a細胞を含む白血病細胞にL−セレクチンの発現が確認されており、そのリガンドとしてリポソームに結合させたシアリルルイスX糖鎖が白血病細胞に結合した可能性があると思われた。そしてMRC5細胞に対するL−DoxとL−Dox−SLXのIC50は差がなかった。これはL−セレクチンの発現の無いMRC5細胞に対してはL−Dox−SLXの積極的集積は無く、L−Doxと同程度の集積しかないことを示していると考えられた。このシリアルルイスX糖鎖の効果によりリポソームに指向性がもたらされ、またリポソーム化により低下した細胞傷害性の回復も期待できると考えられた。
L−Dox−SLXはリポソーム化により高い血中滞留性と正常細胞に対する低い細胞傷害性がもたらされており、しかも結合された糖鎖により白血病細胞に対して積極的に集積する理想的な指向性DDSであると思われた。
(2)リポソーム化塩酸ドキソルビシンの細胞傷害性の増強と抑制に関する実験
ヒト白血病細胞KG−1aを用いた。培養条件は実験1)に同じであった。初めにヒトインターフェロンα(以下IFN)のKG−1a細胞に対する細胞傷害性を求めた。KAの求め方は(1)に同じであった。次に培地にIFNを付加した状態または付加していない状態でL−DoxとL−Dox−SLXのKAを求め、IFNによるKAの増強を観察した。そしてさらにL−セレクチンの糖鎖結合中和抗体(クローン:DREG56)によってIFN付加時のL−Dox−SLXのKAが抑制されるか否かを観察した。また中和抗体自体のKAも測定した。
以下の結果が得られた。
IFN自体のKG−1a細胞に対するKAはIFNを培地へ100U/ml入れた状態で9.4%±7.34あった。
培地へIFNを100U/ml付加した状態でL−DoxとL−Dox−SLXのKAを比較した(図43)。L−DoxとL−Dox−SLX中の塩酸ドキソルビシン濃度は17.8μMであった。L−DoxのKAはIFNがない状態では10%±10.5、IFN付加状態で19.2%±7.99に増強されただけであった。IFN自体のKAが9.4%であることを考えるとL−DoxのIFN付加による増強は単純に相加的であった。これに対してL−Dox−SLXのKAはIFNがない状態では6.3%±11.6、IFN付加状態で44.1%±3.76まで増強された。この増強効果は非常に大きく相乗的であった。
L−セレクチンに対する中和抗体を0.3μg/mlの濃度で培地に入れ、抗体単独でのKAを測定した。抗体は0.3μg/mlの濃度で16.3%±25.8のKAを持っていた。
IFN付加状態でのL−Dox−SLX(塩酸ドキソルビシン濃度は17.8μM)のKAは47.2%±3.71であったが、この状態に中和抗体を入れるとKAは23.2%±12.7に抑制された(図44)。中和抗体自体のKAを考えるとIFN付加時L−Dox−SLXのKAはそのほとんどが抑制されたと思われた。
この結果より、以下のことが判明した。
IFNそしてインターフェロンγ等は白血球上のセレクチン発現を亢進させることが報告されている。我々が用いたヒト白血病細胞KG−1aでもセレクチンの発現亢進が起きれば、L−Dox−SLXのKG−1a細胞に対する集積性が向上し細胞傷害性が上がることが予測された。実験結果では糖鎖の無いL−DoxのKAが単純にL−DoxのKAとIFN単独でのKAの相加的値になっているのと比して、L−Dox−SLXではIFNによってそのKAは相乗的に増強された。このことは上記予測が正しいことを示唆していると思われた。
またL−セレクチン中和抗体による抑制実験では抗体により約47%のKAが約23%まで低下した。中和抗体自体が持っているKAが約16%であり、L−Dox−SLXのKAは一桁台まで抑制された可能性が高い。これはL−Dox−SLXの細胞傷害性の発現にL−セレクチンが関与していることを示唆していると思われる。すなわちリポソームに結合させたシアリルルイスX糖鎖が白血病細胞上のL−セレクチンへ結合して、L−Dox−SLXの細胞傷害性が発現していると考えられた。
以上の結果は我々のDDSがヒト白血病細胞上のセレクチンを認識し集積するという指向性を持っていることを示唆しており、リポソームに結合させた糖鎖が機能していると考えられた。しかもIFN等の付加によるL−Dox−SLXの細胞傷害性の増強は臨床応用を考えると興味深い現象であり、このDDSの臨床的なポテンシャルをさらに高めるものと思われた。
実施例39 担癌マウスでの薬物動態と制癌効果に関する検討
(1) 糖脂質型糖鎖を有するドキソルビシン封入リポソームの調製と封入薬物定量と保存安定性
リポソームはコール酸透析法を用いて調製した。すなわち、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、コレステロール、ジセチルフォスフェート、ガングリオシド(糖脂質糖鎖としてGM1:13%、GD1a:38%、GD1b:9%、GT1b:16%を含むもの)をモル比でそれぞれ35:45:5:15の割合で合計脂質量45.6mgになるように混合し、コール酸ナトリウム46.9mg添加し、クロロホルム/メタノール溶液3mlに溶解した。この溶液を蒸発させ、沈殿物を真空中で乾燥させることによって脂質膜を得た。得られた脂質膜をTAPS緩衝液(pH8.4)3mlに懸濁、超音波処理し、透明なミセル懸濁液3mlを得た。このミセル懸濁液にPBS緩衝液(pH7.2)を加えて10mlにしてから、更にTAPS緩衝液(pH8.4)で3mg/1mlになるよう完全に溶解したドキソルビシンを攪拌しながらゆっくりと滴下して均一に混合した後、このドキソルビシン入りミセル懸濁液をPM10膜(AmiconCo.,USA)とTAPS緩衝液(pH8.4)を用いた限外濾過にかけ均一な糖脂質型糖鎖を有するドキソルビシン封入リポソーム粒子懸濁液10mlを調製した。得られた生理食塩懸濁液中(37℃)の糖脂質型糖鎖を有する抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム粒子の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd.,UK)により測定した結果、粒子径は50〜350nm、ゼータ電位は−30〜−10mVであった。このリポソームの封入薬物量を吸光度485nmで測定するとおよそ71μg/mlの濃度でドキソルビシンが封入されていることがわかった。このドキソルビシン封入リポソームは、冷蔵庫中に1年間保存し後にも沈殿や凝集を起こすことなく安定であった。
(2) 糖脂質型糖鎖を有するドキソルビシン封入リポソームの尾静注投与による担癌マウスでの薬物動態の測定
Ehrlich ascites tumor(EAT)細胞(約2×10個)を雄性ddYマウス(7週齢)の右大腿部皮下に移植し、癌組織が50〜100立方ミリメートルに発育(6〜8日後)したもの約50匹を本実験に用いた。この担癌マウス25匹づつを2群に分けてそれぞれの群に癌細胞移植後、糖脂質型糖鎖を有するドキソルビシン封入リポソーム液またはフリーのドキソルビシン液を0.2ml尾静注投与した。その後、経時的に各群5匹の血中または腫瘍組織中のドキソルビシン濃度を蛍光法(470nm)で測定した。また、薬物血中濃度の時間曲線下面積(AUC)、腫瘍組織及び細胞へのドキソルビシンの分布を蛍光顕微鏡で観察した。表4と図45から50のグラフと写真に示すように、従来のフリーのドキソルビシンに比較して、本発明のリポソームにドキソルビシンを封入したものを用いた場合にドキソルビシンの血中滞留性は約百倍高くなり、腫瘍組織及び癌細胞へのドキソルビシンの集積効果も約数十倍高くなることが明らかとなった。
(3) 糖脂質型糖鎖を有するドキソルビシン封入リポソームの尾静注投与による担癌マウスでの制癌効果の測定
Ehrlich ascites tumor(EAT)細胞(約2×10個)を雄性ddYマウス(7週齢)の右大腿部皮下に移植し、癌組織が50〜100立方ミリメートルに発育(6〜8日後)したもの約30匹を本実験に用いた。この担癌マウス10匹づつを3群に分けてそれぞれの群に癌細胞移植後、糖脂質型糖鎖を有するドキソルビシン封入リポソーム液またはフリーのドキソルビシン液または生理食塩水を0.2ml、3〜4日置きに6回尾静注投与した。腫瘍体積は、移植腫瘍の長径(L)および短径(S)をノギスで測定し、次の式により算出した。腫瘍体積(立方ミリメートル)= 1/2xLxSxS 図45から50のグラフと写真に示すように、従来のフリーのドキソルビシンに比較して、本発明のリポソームにドキソルビシンを封入したものを用いた場合に腫瘍の体積の上昇は低濃度投与でも数倍強く抑制され、顕著な制癌効果が認められた。

実施例40 2種類の親水性化処理を行ったリポソームの血中滞留性の検討
(1) リポソームの調製
リポソームはコール酸透析法を用いて調製した。すなわち、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、コレステロール、ジセチルフォスフェート、ガングリオシド及びジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンをモル比でそれぞれ35:40:5:15:5の割合で合計脂質量45.6mgになるように混合し、コール酸ナトリウム46.9mg添加し、クロロホルム/メタノール溶液3mlに溶解した。この溶液を蒸発させ、沈殿物を真空中で乾燥させることによって脂質膜を得た。得られた脂質膜をTAPS緩衝液(pH8.4)3mlに懸濁、超音波処理し、透明なミセル懸濁液3mlを得た。このミセル懸濁液にPBS緩衝液(pH7.2)を加えて5mlにしてから、更にTAPS緩衝液(pH8.4)で2250mg/6mlになるよう完全に溶解したリン酸プレドニゾロンを攪拌しながらゆっくりと滴下して均一に混合した後、このリン酸プレドニゾロン入りミセル懸濁液をPM10膜(AmiconCo.,USA)とTAPS緩衝液(pH8.4)を用いた限外濾過にかけ均一なリポソーム10mlを調製した。得られた生理食塩懸濁液中(37℃)のリポソーム粒子の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd.,UK)により測定した結果、粒子径は50〜350nm、ゼータ電位は−30〜−10mVであった。
(2) リポソーム脂質膜面上のtris(hydroxymethyl)aminomethaneによる親水性化処理
(1)で調製したリポソーム溶液10mlをXM300膜(Amicon Co.,USA)とCBS緩衝液(pH8.5)を用いた限外濾過にかけ溶液のpHを8.5にした。次に、架橋試薬bis(sulfosuccinimidyl)suberate (BS3;PierceCo.,USA)10mlを加え、25℃で2時間攪拌した。その後、更に7℃で一晩攪拌してリポソーム膜上の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンとBS3との化学結合反応を完結した。そして、このリポソーム液をXM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過にかけた。次に、CBS緩衝液(pH8.5)1mlに溶かしたtris(hydroxymethyl)aminomethane 40mgをリポソーム液10mlに加えて、25℃で2時間攪拌後、7℃で一晩攪拌してリポソーム膜上の脂質に結合したBS3とtris(hydroxymethyl)aminomethaneとの化学結合反応を完結した。これにより、リポソーム膜の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン上にtris(hydroxymethyl)aminomethaneの水酸基が配位して水和親水性化された。
(3) リポソーム脂質膜面上のセロビオースによる親水性化処理
(1)で調製したリポソーム溶液10mlをXM300膜(Amicon Co.,USA)とCBS緩衝液(pH8.5)を用いた限外濾過にかけ溶液のpHを8.5にした。次に、架橋試薬bis(sulfosuccinimidyl)suberate (BS3;Pierce Co.,USA)10mlを加え、25℃で2時間攪拌した。その後、更に7℃で一晩攪拌してリポソーム膜上の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンとBS3との化学結合反応を完結した。そして、このリポソーム液をXM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過にかけた。次に、CBS緩衝液(pH8.5)1mlに溶かしたセロビオース50mgをリポソーム液10mlに加えて、25℃で2時間攪拌後、7℃で一晩攪拌してリポソーム膜上の脂質に結合したBS3とセロビオースとの化学結合反応を完結した。これにより、リポソーム膜の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン上にセロビオースの水酸基が配位して水和親水性化された。
(4) tris(hydroxymethyl)aminomethane結合リポソーム膜面上へのヒト血清アルブミン(HSA)の結合
既報の手法(Yamazaki,N.,Kodama,M.and Gabius,H.−J.(1994)Methods Enzymol.242,56−65)により、カップリング反応法を用いて行った。すなわち、この反応は2段階化学反応で行い、まずはじめに、(2)で得られた10mlのリポソーム膜面上に存在するガングリオシドを1mlのTAPS緩衝液(pH8.4)に溶かしたメタ過ヨウ素酸ナトリウム43mgを加えて室温で2時間攪拌して過ヨウ素酸酸化した後、XM300膜とPBS緩衝液(pH8.0)で限外濾過することにより酸化されたリポソーム10mlを得た。このリポソーム液に、20mgのヒト血清アルブミン(HSA)を加えて25℃で2時間攪拌し、次にPBS(pH8.0)に2M NaBHCN 100μlを加えて10℃で一晩攪拌してリポソーム上のガングリオシドとHSAとのカップリング反応でHSAを結合した。そして、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過をした後、HSA結合リポソーム液10mlを得た。
(5) セロビオース結合リポソーム膜面上へのヒト血清アルブミン(HSA)の結合
既報の手法(Yamazaki,N.,Kodama,M.and Gabius,H.−J.(1994)Methods Enzymol.242,56−65)により、カップリング反応法を用いて行った。すなわち、この反応は2段階化学反応で行い、まずはじめに、実施例3で得られた10mlのリポソーム膜面上に存在するガングリオシドを1mlのTAPS緩衝液(pH8.4)に溶かしたメタ過ヨウ素酸ナトリウム43mgを加えて室温で2時間攪拌して過ヨウ素酸酸化した後、XM300膜とPBS緩衝液(pH8.0)で限外濾過することにより酸化されたリポソーム10mlを得た。このリポソーム液に、20mgのヒト血清アルブミン(HSA)を加えて25℃で2時間攪拌し、次にPBS(pH8.0)に2M NaBHCN 100μlを加えて10℃で一晩攪拌してリポソーム上のガングリオシドとHSAとのカップリング反応でHSAを結合した。そして、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過をした後、HSA結合リポソーム液10mlを得た。
(6) リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのtris(hydroxymethyl)aminomethaneの結合によるリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理
親水性化試料の一つとしてのリポソームを調製するために、(4)で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理リポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液にtris(hydroxymethyl)aminomethane(Wako Co.,Japan)13mgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにtris(hydroxymethyl)aminomethaneの結合を行った。その結果、tris(hydroxymethyl)aminomethaneとヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理をした比較試料としてのリポソー2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg)が得られた。得られた生理食塩懸濁液中(37℃)のリポソーム粒子の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd.,UK)により測定した結果、粒子径は50〜350nm、ゼータ電位は−30〜−10mVであった。
(7) リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのセロビオースの結合によるリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理
親水性化試料の一つとしてのリポソームを調製するために、(5)で得たリポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理リポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液セロビオース30mgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにセロビオースの結合を行った。その結果、セロビオースとヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理をした親水性化試料の一つとしてのリポソーム2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg)が得られた。得られた生理食塩懸濁液中(37℃)のリポソーム粒子の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd.,UK)により測定した結果、粒子径は50〜350nm、ゼータ電位は−30〜−10mVであった。
(8) 親水性化処理をしてないリポソームの調製
リポソームはコール酸透析法を用いて調製した。すなわち、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、コレステロール、ジセチルフォスフェート、ガングリオシド(糖脂質糖鎖としてGT1bを100%含むもの)をモル比でそれぞれ35:45:5:15の割合で合計脂質量45.6mgになるように混合し、コール酸ナトリウム46.9mg添加し、クロロホルム/メタノール溶液3mlに溶解した。この溶液を蒸発させ、沈殿物を真空中で乾燥させることによって脂質膜を得た。得られた脂質膜をTAPS緩衝液(pH8.4)3mlに懸濁、超音波処理し、透明なミセル懸濁液3mlを得た。このミセル懸濁液にPBS緩衝液(pH7.2)を加えて10mlにしてから、更にTAPS緩衝液(pH8.4)で3mg/1mlになるよう完全に溶解したドキソルビシンを攪拌しながらゆっくりと滴下して均一に混合した後、このドキソルビシン入りミセル懸濁液をPM10膜(AmiconCo.,USA)とTAPS緩衝液(pH8.4)を用いた限外濾過にかけ均一な親水性化処理をしてないリポソーム粒子懸濁液10mlを調製した。得られた生理食塩懸濁液中(37℃)の親水性化処理をしてないリポソーム粒子の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd.,UK)により測定した結果、粒子径は50〜350nm、ゼータ電位は−30〜−10mVであった。
(9) クロラミンT法によるリポソームの125I標識
クロラミンT(Wako Pure Chemical Co.,Japan)溶液並びに二亜硫酸ナトリウム溶液をそれぞれ3mg/ml並びに5mg/mlとなるように用事調製して用いた。実施例6から8において調製した3種のリポソームとを50μlずつ別々にエッペンチューブに入れ、続いて125I−NaI(NEN Life Science Product,Inc.USA)を15μl、クロラミンT溶液を10μl加え反応させた。5分ごとにクロラミンT溶液10μlを加え、この操作を2回繰り返した後15分後に還元剤として二亜硫酸ナトリウム100μl加え、反応を停止させた。次に、Sephadex G−50(Phramacia Biotech.Sweden)カラムクロマト上に乗せ、PBSで溶出、標識体を精製した。最後に、非標識−リポソーム複合体を添加して比活性(4x10Bq/mg protein)を調整して3種類の125I標識リポソーム液を得た。
(10) 各種のリポソームの担癌マウスでの血中濃度の測定
Ehrlich ascites tumor(EAT)細胞(約2×10個)を雄性ddYマウス(7週齢)大腿部皮下に移植し、癌組織が0.3〜0.6gに発育(6〜8日後)したものを本実験に用いた。この担癌マウスに(9)により125I標識した3種のリポソーム複合体0.2mlを脂質量として30μg/一匹の割合となるように尾静脈に注入投与し、5分後に血液を採取し、その放射能をガンマカウンタ(Aloka ARC 300)で測定した。なお、血液への放射能分布量は、投与全放射能に対する血液1ml当たりの放射能の割合(%投与量/ml血液)で表示した。図51に示すとおり、2種類の親水性化処理により血中滞留性が向上するが、とりわけトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンにより親水性化処理をしたリポソームの血中滞留性の向上が顕著であった。
実施例41 ビタミンA封入リポソームの調製と保存安定性
リポソームはコール酸透析法を用いて調製した。すなわち、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、コレステロール、ジセチルフォスフェート、ガングリオシド、スフィンゴミエリン及びジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンをモル比でそれぞれ35:40:5:5:10:5の割合で合計脂質量45.6mgになるように混合し、コール酸ナトリウム46.9mg添加し、クロロホルム/メタノール溶液3mlに溶解した。この溶液を蒸発させ、沈殿物を真空中で乾燥させることによって脂質膜を得た。得られた脂質膜をPBS緩衝液(pH7.2)3mlに懸濁、超音波処理し、透明なミセル懸濁液3mlを得た。このミセル懸濁液にPBS緩衝液(pH7.2)を加えて10mlにしてから、更にエタノール0.3mlとPBS緩衝液(pH7.2)0.7mlを加えて完全に溶解したビタミンA 6mgを攪拌しながらゆっくりと滴下して均一に混合した後、このビタミンA入りミセル懸濁液をPM10膜(AmiconCo.,USA)とPBS緩衝液(pH7.2)を用いた限外濾過にかけ均一なビタミンA封入リポソーム(平均粒径100nm)10mlを調製した。このビタミンA封入リポソームは、冷蔵庫中に1年間保存した後にも沈殿や凝集を起こすことなく安定であった。
実施例42 ビタミンE封入リポソームの調製と保存安定性
リポソームはコール酸透析法を用いて調製した。すなわち、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、コレステロール、ジセチルフォスフェート、ガングリオシド、スフィンゴミエリン及びジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンをモル比でそれぞれ35:40:5:5:10:5の割合で合計脂質量45.6mgになるように混合し、コール酸ナトリウム46.9mgを添加、さらにビタミンE6mgも添加し、クロロホルム/メタノール溶液3mlに溶解した。この溶液を蒸発させ、沈殿物を真空中で乾燥させることによって脂質膜を得た。得られた脂質膜をPBS緩衝液(pH7.2)3mlに懸濁、超音波処理し、透明なミセル懸濁液3mlを得た。このミセル懸濁液にPBS緩衝液(pH7.2)を加えて10mlにしてから、このビタミンA入りミセル懸濁液をPM10膜(AmiconCo.,USA)とPBS緩衝液(pH7.2)を用いた限外濾過にかけ均一なビタミンA封入リポソーム(平均粒径100nm)10mlを調製した。このビタミンE封入リポソームは、冷蔵庫中に1年間保存した後にも沈殿や凝集を起こすことなく安定であった。
実施例42 リン酸プレドニゾロン封入リポソームの調製
(1) リン酸プレドニゾロン封入リポソームの調製と封入薬物定量と保存安定性
リポソームはコール酸透析法を用いて調製した。すなわち、ジパルミトイルフォスファチジルコリン、コレステロール、ジセチルフォスフェート、ガングリオシド及びジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンをモル比でそれぞれ35:40:5:15:5の割合で合計脂質量45.6mgになるように混合し、コール酸ナトリウム46.9mg添加し、クロロホルム/メタノール溶液3mlに溶解した。この溶液を蒸発させ、沈殿物を真空中で乾燥させることによって脂質膜を得た。得られた脂質膜をTAPS緩衝液(pH8.4)3mlに懸濁、超音波処理し、透明なミセル懸濁液3mlを得た。このミセル懸濁液にPBS緩衝液(pH7.2)を加えて5mlにしてから、更にTAPS緩衝液(pH8.4)で2250mg/6mlになるよう完全に溶解したリン酸プレドニゾロンを攪拌しながらゆっくりと滴下して均一に混合した後、このリン酸プレドニゾロン入りミセル懸濁液をPM10膜(AmiconCo.,USA)とTAPS緩衝液(pH8.4)を用いた限外濾過にかけ均一なリン酸プレドニゾロン封入リポソーム10mlを調製した。得られた生理食塩懸濁液中(37℃)のリン酸プレドニゾロン封入リポソーム粒子の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd.,UK)により測定した結果、粒子径は50〜350nm、ゼータ電位は−30〜−10mVであった。このリポソームの封入薬物量を吸光度260nmで測定するとおよそ280μg/mlの濃度でリン酸プレドニゾロンが封入されていることがわかった。このリン酸プレドニゾロン封入リポソームは、冷蔵庫中に1年間保存した後にも沈殿や凝集を起こすことなく安定であった。
(2) リン酸プレドニゾロン封入リポソーム脂質膜面上の親水性化処理
(1)で調製したリン酸プレドニゾロン封入リポソーム溶液10mlをXM300膜(Amicon Co.,USA)とCBS緩衝液(pH8.5)を用いた限外濾過にかけ溶液のpHを8.5にした。次に、架橋試薬bis(sulfosuccinimidyl)suberate (BS3;Pierce Co.,USA)10mlを加え、25℃で2時間攪拌した。その後、更に7℃で一晩攪拌してリポソーム膜上の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミンとBS3との化学結合反応を完結した。そして、このリポソーム液をXM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過にかけた。次に、CBS緩衝液(pH8.5)1mlに溶かしたtris(hydroxymethyl)aminomethane 40mgをリポソーム液10mlに加えて、25℃で2時間攪拌後、7℃で一晩攪拌してリポソーム膜上の脂質に結合したBS3とtris(hydroxymethyl)aminomethaneとの化学結合反応を完結した。これにより、抗癌剤ドキソルビシン封入リポソーム膜の脂質ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン上にtris(hydroxymethyl)aminomethaneの水酸基が配位して水和親水性化された。
(3) リン酸プレドニゾロン封入リポソーム膜面上へのヒト血清アルブミン(HSA)の結合
既報の手法(Yamazaki,N.,Kodama,M.and Gabius,H.−J.(1994)Methods Enzymol.242,56−65)により、カップリング反応法を用いて行った。すなわち、この反応は2段階化学反応で行い、まずはじめに、(2)で得られた10mlのリポソーム膜面上に存在するガングリオシドを1mlのTAPS緩衝液(pH8.4)に溶かしたメタ過ヨウ素酸ナトリウム43mgを加えて室温で2時間攪拌して過ヨウ素酸酸化した後、XM300膜とPBS緩衝液(pH8.0)で限外濾過することにより酸化されたリポソーム10mlを得た。このリポソーム液に、20mgのヒト血清アルブミン(HSA)を加えて25℃で2時間攪拌し、次にPBS(pH8.0)に2M NaBHCN 100μlを加えて10℃で一晩攪拌してリポソーム上のガングリオシドとHSAとのカップリング反応でHSAを結合した。そして、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過をした後、HSA結合リン酸プレドニゾロン封入リポソーム液10mlを得た。
(4) リン酸プレドニゾロン封入リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのシアリルルイスX型四糖鎖の結合とリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理
シアリルルイスX型四糖鎖(Calbiochem Co.,USA)50μgを0.25gのNHHCOを溶かした0.5ml水溶液に加え、37℃で3日間攪拌した後、0.45μmのフィルターで濾過して糖鎖の還元末端のアミノ化反応を完結してシアリルルイスX型四糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを得た。次に、(3)で得たリン酸プレドニゾロン封入リポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液に上記のシアリルルイスX型四糖鎖のグリコシルアミン化合物50μgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにシアリルルイスX型四糖鎖の結合を行った。次に、このリポソーム液にtris(hydroxymethyl)aminomethane(Wako Co.,Japan)13mgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにtris(hydroxymethyl)aminomethaneの結合を行った。その結果、tris(hydroxymethyl)aminomethaneとヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理をしたリポソームを得た。その結果、シアリルルイスX型四糖鎖とヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理をしたリン酸プレドニゾロンン封入リポソーム2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg)が得られた。得られた生理食塩懸濁液中(37℃)のリン酸プレドニゾロン封入リポソーム粒子の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd.,UK)により測定した結果、粒子径は50〜350nm、ゼータ電位は−30〜−10mVであった。
(5) リン酸プレドニゾロン封入リポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン(HSA)上へのtris(hydroxymethyl)aminomethaneの結合によるリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理
比較試料としてのリン酸プレドニゾロン封入リポソーム(糖鎖を付けないもの)を調製するために、(3)で得たリン酸プレドニゾロン封入リポソーム液の一部分1mlに架橋試薬3,3’−dithiobis(sulfosuccinimidyl)propionate(DTSSP;Pierce Co.,USA)1mgを加えて25℃で2時間、続いて7℃で一晩攪拌し、XM300膜とCBS緩衝液(pH8.5)で限外濾過してDTSSPがリポソーム上のHSAに結合したリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理リポソーム1mlを得た。次に、このリポソーム液にtris(hydroxymethyl)aminomethane(Wako Co.,Japan)13mgを加えて、25℃で2時間攪拌し、その後7℃で一晩攪拌し、XM300膜とPBS緩衝液(pH7.2)で限外濾過してリポソーム膜面結合ヒト血清アルブミン上のDTSSPにtris(hydroxymethyl)aminomethaneの結合を行った。その結果、tris(hydroxymethyl)aminomethaneとヒト血清アルブミンとリポソームとが結合したリンカー蛋白質(HSA)の親水性化処理をした比較試料としてのリン酸プレドニゾロン封入リポソーム(糖鎖を付けないもの)2ml(総脂質量2mg、総蛋白量200μg)が得られた。得られた生理食塩懸濁液中(37℃)のリン酸プレドニゾロン封入リポソーム粒子(糖鎖を付けないもの)の粒子径とゼータ電位をゼータ電位・粒子径・分子量測定装置(Model Nano ZS,Malvern Instruments Ltd.,UK)により測定した結果、粒子径は50〜350nm、ゼータ電位は−30〜−10mVであった。
本実施例で作製したリポソームを以下の実施例15および16の検討に用いた。
実施例43 標的指向性リポゾームによるリュウマチ性関節炎の治療の検討
(1)RAモデルマウスの作成
RAマウスモデルとしてタイプIIコラーゲン誘導関節炎(Collagen type II induced arthritis以下CIA)モデルを作成した。用いたマウス、試薬類は以下の通りである。
実験動物:DBA/1Jマウス(8週齢、雄)
接種抗原:牛コラーゲン タイプII
アジュヴァント:結核死菌(H37Ra,2mg/ml)含有complete Freund’s adjuvant(CFA),結核死菌を含まないincomplete Freund’s adjuvant(IFA)
コラーゲン水溶液とCFAを容積比2:1で混和し、100μLにコラーゲンを200μg含有する乳濁液を調整、これをマウスの尾底部皮下へ注射した(Day 0)。処置21日後(Day 21)コラーゲン水溶液とIFAを容積比2:1で混和し、100μLにコラーゲンを200μg含有する乳濁液を調整し、再度マウス尾底部皮下へ注射した。
処置後3回/週の頻度でマウスの四肢を観察、以下の基準によりポイント化して炎症の定量化をした。それぞれの肢において、正常:0ポイント、軽度炎症又は発赤:1ポイント、重度発赤、腫脹又は使用の抑制:2ポイント、手掌、足底部及び関節部の変形:3ポイント(最低は0ポイント、最高で12ポイントとなる。)このポイントを以下の式で処理してInflammatory Activity(以下IA)を求めた。
Inflammatory Activity(%)=四肢の全てのポイント数/12x100
以下の結果が得られた。
Day 21から数日で後肢指に発赤が確認できるマウスが増加してきた。Day 28でマウスのIAは16.7%に、Day 39で50%に達した。図52に炎症を起こしたマウスの四肢の写真を提示する。CIAマウス関節炎の所見は以下の通りである。A:後肢指間関節の腫脹(第二指、矢印)、B:後肢指間関節の腫脹(第四指、矢印)、C:後肢指間関節の発赤(矢印)、D:正常後肢、E:前肢手関節の腫脹(矢印)、F:正常前肢
このように、上記方法によりRAマウスモデルとしてCIAマウスが作成できた。
(2)RAマウスをDDSの静脈内投与により治療する実験
関節炎を起こしているマウスに治療薬を尾静脈から注射して治療が施行された。静脈注射はDay 28からDay 46の期間で週2回の頻度であった。
Day 28で炎症所見のあるマウスを選び、それぞれの群の炎症ポイントの平均が同じになるように4群に分けた。それぞれの群は1)Control:無治療群、2)free Pred:リン酸プレドニゾロンを生理食塩に溶かした水溶液を使用し、リン酸プレドニゾロンの量が一回100μg、週200μg静脈注射した群、3)L−Pred:リン酸プレドニゾロンをリポゾームに包埋、糖鎖を付けないものを使用、リン酸プレドニゾロンの量が一回10μg、週20μg静脈注射した群、4)L−Pred−SLX:リン酸プレドニゾロンをリポゾームに包埋、シアリルルイスX糖鎖を結合させたものを使用、リン酸プレドニゾロンの量が一回10μg、週20μg静脈注射した群、の4群であった。
この4群のマウスの数はControl:6匹、free Pred:7匹、L−Pred:8匹、L−Pred−SLX:8匹であった。
以下の結果が得られた。 Controlでは経時的にIAが上昇し、Day 46の時点で60%を突破した。free PredではDay 37でIAが約50%に達した後平衡状態で推移した。L−PredではDay 32からIAが上昇し始めDay 46では約40%であった。L−Pred−SLXではIAの大きな上昇は観察されず、全経過を通して20%以下であった(図53)。
この結果より以下のことが判明した。
free Pred群では静脈注射されたリン酸プレドニゾロン量100μg/injectionでは炎症をコントロールするには不十分であり、Control群と比してIAは明らかな差は観られなかった。L−Pred群では静注されたリン酸プレドニゾロン量はfree Pred群の十分の一の10μg/injectionであったが、IAはfree Pred群と同等かそれ以下であった。これはリン酸プレドニゾロンのリポゾーム化が薬剤の血中滞留性を向上させたことにより、薬効が向上した可能性があると思われた。L−Pred−SLX群ではリン酸プレドニゾロン量は同様にfree Pred群の十分の一の10μg/injectionであったが、IAは全く上昇せず炎症の進行は有意に抑制された。これはL−PredとL−Pred−SLXの差、シアリルルイスX糖鎖の有無によってもたらされた効果と考えられた。つまりシアリルルイスX糖鎖によってリポゾームが効果的に炎症部位へ集積した可能性を示していると思われた。
当DDSは炎症部位へ極めて有効に治療薬を分配できる能力があることが証明された。これは炎症疾患の治療において病巣部に治療薬を集中させることにより、治療薬の持つ副作用を抑制または治療薬の薬効を増大せしめる可能性が示唆されたものである。
(3)RAマウスをDDSの経口投与により治療する実験
関節炎を起こしているマウスに治療薬を経口投与して治療が施行された。投与はDay 28からDay 39の期間で週3回の頻度であった。
Day 28で炎症所見のあるマウスを選び、それぞれの群の炎症ポイントの平均がほぼ同じになるように4群に分けた。それぞれの群は1)Control:無治療群、2)free Pred:リン酸プレドニゾロンを生理食塩に溶かした水溶液を使用し、リン酸プレドニゾロンの量が一回100μg、週300μg経口投与した群、3)L−Pred:リン酸プレドニゾロンをリポゾームに包埋、糖鎖を付けないものを使用、リン酸プレドニゾロンの量が一回10μg、週30μg経口投与した群、4)L−Pred−SLX:リン酸プレドニゾロンをリポゾームに包埋、シアリルルイスX糖鎖を結合させたものを使用、リン酸プレドニゾロンの量が一回10μg、週30μg経口投与した群、の4群であった。
この4群のマウスの数はControl:2匹、free Pred:3匹、L−Pred:3匹、L−Pred−SLX:4匹であった。
以下の結果が得られた。
free Pred群はfeeding needleによる胃穿孔で死亡したためDay 32で実験中止された。Control群、free Pred群(Day 32まで)、L−Pred群ではIAに有意な差は観られなかった。L−Pred−SLX群は炎症の進行を抑えることはできなかったがDay 39でL−Predに比してIAは有意に低かった(図54)。
この結果より以下のことが判明した。
Control、free PredそしてL−Predの3群では有意な差がみられていない。これはfree Pred群では経口投与されたリン酸プレドニゾロン300μg/weekの量が炎症の進行を抑制するのに不十分であったと推測された。またL−Pred群ではリポゾームが腸管で吸収されなかったか、吸収されても経口投与されたリン酸プレドニゾロンの量が30μg/weekであったことを考えると不十分な量であった可能性が高いと思われた。これに対してL−Pred−SLX群ではIAが抑制されていた。これはリポゾームが腸管で吸収され、しかも経口投与リン酸プレドニゾロン量が30μg/weekであることを考えればリン酸プレドニゾロンが糖鎖付きリポゾームのまま炎症部位へ運ばれた可能性を示唆していると思われた。
この結果は当DDSが静脈内投与だけでなく、経口投与でも有効に機能することを示している。さらにリポゾームに包埋されれば、従来では経口吸収が不可能な薬物からでも経口投与可能な製剤がつくれる可能性を示唆するものである。
(4)RAマウス治療においてリン酸プレドニゾロンの適量を求める実験
関節炎を起こしているマウスに治療薬を尾静脈から注射して治療が行われた。静脈注射はDay 28からDay 46の期間で週2回の頻度であった。
Day 28で炎症所見のあるマウスを選び、それぞれの群の炎症ポイントの平均がほぼ同じになるように3群に分けた。それぞれの群は1)Control:無治療群、2)250μg:リン酸プレドニゾロンを生理食塩に溶かした水溶液を使用、リン酸プレドニゾロンの量が一回250μg、週500μg静脈注射した群、3)500μg:リン酸プレドニゾロンを生理食塩に溶かした水溶液を使用、リン酸プレドニゾロンの量が一回500μg、週1000μg静脈注射した群、の3群であった。
この3群のマウスの数はControl:2匹、250μg:2匹、500μg:2匹であった。
以下の結果が得られた。
Control群と250μg群では有意な差は観られなかった。500μg群ではIAの上昇が観られず、炎症の進行は抑制されていた(図55)。
この結果より、以下のことが判明した。当RAマウスモデルで炎症の進行を抑制するためには最低500μg/weekより多く、1000μg/weekまでのリン酸プレドニゾロン量が要求されることが判明した。静脈注射による治療実験ではL−Pred−SLX群が一回10μg、週20μgのリン酸プレドニゾロン量で炎症の進行を抑制したことを考えると、当DDSでは最大50分の一の薬物量で従来の治療効果と同様の効果を得ることができる可能性があると考えられた。
これは病巣部での薬剤濃度を維持しながら、全身への投与薬剤量を減らすことが可能で薬剤による副作用を減らすことができるし、また副作用が出現しない濃度まで薬剤の全身投与量を上げれば病巣部の薬剤濃度を上げることができ、さらに高い薬効をえることができる可能性を示している。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
産業上の利用の可能性
リポソームを構成する組成の種類および量を調節することにより、安定性の高いリポソームを得ることができた。さらに、特定の親水性化合物でリポソームを親水性化することにより、従来のリポソームより優れた安定性等の特性を有するリポソームを得ることができた。
本発明の実施例に示したように、各種糖鎖とヒト血清アルブミン等のヒト由来蛋白質を含む生体由来蛋白質(リンカー)とリポソームとが結合したリポソームを作製し、マウスでの各種組織への体内動態、特に癌組織への取込についてエールリッヒ固形癌担癌マウスを用いて解析した結果、糖鎖の分子構造の差を利用することによって、実際の生体においてリポソームの各種組織への体内動態を促進あるいは抑制して制御することができ、これに基づく効率の良い癌組織をはじめとする目的組織(血中、肝臓、脾臓、肺、脳、小腸、心臓、胸腺、腎臓、膵臓、筋肉、大腸、骨、骨髄、眼、癌組織、炎症組織、リンパ節)へのターゲティング機能をDDS材料に付与することができることが明らかとなった。このように、本発明により、医学・薬学分野において極めて有用な、標的指向性を制御し得るリポソームを提供することができた。また、この際リポソーム表面に結合させる糖鎖密度を制御することにより、より標的指向性の高い糖鎖結合リポソームを得ることができた。
また、本発明の上記糖鎖修飾リポソームは腸管吸収性に優れ、腸管を経由するという、従来のリポソーム使用製剤にはみられない新たな投与形態で投与可能なものであるという点で画期的なものである。さらに、腸管吸収性並びに各種組織(血中、肝臓、脾臓、肺、脳、小腸、心臓、胸腺、腎臓、膵臓、筋肉、大腸、骨、骨髄、眼、癌組織、炎症組織、リンパ節)への体内動態は、リポソームに対する糖鎖結合量の設定と、糖鎖の選択によって制御することができ、これにより、効率的、かつ副作用がなく安全に、薬剤あるいは遺伝子等を腸管そして血中経由で生体組織に移行することが可能となり、医学、薬学分野において特に有用なものである。
さらに、本発明の糖鎖修飾親水性化リポソームおよび糖鎖非修飾親水性化リポソームに、抗癌剤を封入し癌を担持する被験体に経口または非経口で投与した場合、癌組織に標的指向的に集積し、癌の成長を抑制することができる。
本発明の標的指向性リポソームは、適切な医薬効果を有する化合物を封入することにより、体内でリポソーム表面に結合している糖鎖が認識・結合し得るレクチンを発現している組織・器官に到達し細胞に取り込まれ、そこで医薬効果を有する化合物がその効果を発揮し、治療薬および診断薬として用いることができる。特に抗癌剤を封入し、癌治療薬として用いることができる。また、本発明の腸管吸収制御性リポソームは腸管から容易に吸収され、その後標的指向性リポソームと同様に体内で封入された医薬効果を有する物質がその効果を迅速に発揮し得る。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】

【図35】

【図36】

【図37】

【図38】

【図39】

【図40】

【図41】

【図42】

【図43】

【図44】

【図45】

【図46】

【図47】

【図48】

【図49】

【図50】

【図51】

【図52】

【図53】

【図54】

【図55】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖鎖がリポソーム膜に結合されている糖鎖修飾リポソーム。
【請求項2】
リポソームの構成脂質が、フォスファチジルコリン類(モル比0〜70%)、フォスファチジルエタノールアミン類(モル比0〜30%)、フォスファチジン酸類、長鎖アルキルリン酸塩類およびジセチルリン酸類からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜30%)、ガングリオシド類、糖脂質類、フォスファチジルグリセロール類およびスフィンゴミエリン類からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜40%)、ならびにコレステロール類(モル比0〜70%)を含む、請求項1記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項3】
ガングリオシド類、糖脂質類、フォスファチジルグリセロール類、スフィンゴミエリン類およびコレステロール類からなる群から選択される少なくとも1種の脂質がリポソーム表面上で集合しラフトを形成している請求項2記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項4】
糖鎖の種類および密度が制御されて結合されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項5】
リポソームの粒径が30〜500nmである、請求項1から4のいずれか1項に記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項6】
リポソームの粒径が50〜350nmである、請求項5記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項7】
リポソームのゼータ電位が−50〜10mVである、請求項1から6のいずれか1項に記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項8】
リポソームのゼータ電位が−40〜0mVである、請求項7記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項9】
リポソームのゼータ電位が−30〜−10mVである、請求項8記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項10】
糖鎖がリンカー蛋白質を介してリポソーム膜に結合されている、請求項1から9のいずれか1項に記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項11】
リンカー蛋白質が生体由来蛋白質である請求項10記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項12】
リンカー蛋白質がヒト由来蛋白質である請求項11記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項13】
リンカー蛋白質がヒト由来血清蛋白質である請求項12記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項14】
リンカー蛋白質がヒト血清アルブミンまたはウシ血清アルブミンである請求項11記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項15】
リンカー蛋白質がリポソーム表面上に形成されているガングリオシド類、糖脂質類、フォスファチジルグリセロール類、スフィンゴミエリン類およびコレステロール類からなる群から選択される少なくとも1種の脂質からなるラフト上に結合している請求項1から14のいずれか1項に記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項16】
リポソーム膜および/またはリンカー蛋白質に親水性化合物が結合することにより親水性化されている、請求項1から15のいずれか1項に記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項17】
親水性化合物が低分子物質である、請求項16記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項18】
親水性化合物が糖鎖に対する立体障害となりにくく標的細胞膜面上のレクチンによる糖鎖分子認識反応の進行を妨げない、請求項16または17記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項19】
親水性化合物が水酸基を有する請求項16から18のいずれか1項に記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項20】
親水性化合物がアミノアルコール類である請求項16から19のいずれか1項に記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項21】
親水性化合物がリポソーム膜表面に直接結合している請求項項16から20のいずれか1項に記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項22】
親水性化合物により親水性化され、該親水性化合物が、一般式(1)
X−R1(R2OH)n 式(1)
で示される請求項16記載の糖鎖修飾リポソームであって、R1は、C1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、R2は存在しないかもしくはC1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、Xはリポソーム脂質またはリンカー蛋白質と直接または架橋用の二価試薬と結合する反応性官能基を示し、nは自然数を示す、糖鎖修飾リポソーム。
【請求項23】
親水性化合物により親水性化され、該親水性化合物が、一般式(2)
N−R3−(R4OH)n 式(2)
で示される請求項16記載の糖鎖修飾リポソームであって、R3は、C1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、R4は存在しないかもしくはC1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、HNはリポソーム脂質またはリンカー蛋白質と直接または架橋用の二価試薬と結合する反応性官能基を示し、nは自然数を示す、糖鎖修飾リポソーム。
【請求項24】
親水性化合物により親水性化され、該親水性化合物が、一般式(3)
N−R5(OH)n 式(3)
で示される請求項16記載の糖鎖修飾リポソームであって、R5は、C1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、HNはリポソーム脂質またはリンカー蛋白質と直接または架橋用の二価試薬と結合する反応性官能基を示し、nは自然数を示す、糖鎖修飾リポソーム。
【請求項25】
リポソーム膜および/またはリンカー蛋白質にトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンである親水性化合物を共有結合により結合させることによりリポソーム膜および/またはリンカー蛋白質が親水性化されている、請求項16記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項26】
リポソーム膜および/またはリンカー蛋白質にトリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノプロパンからなる群から選択される親水性化合物を共有結合により結合させることによりリポソーム膜および/またはリンカー蛋白質が親水性化されている、請求項25記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項27】
糖鎖修飾リポソームが、各組織の細胞膜面上に存在するレセプターとしてのセレクチン、DC−SIGN、DC−SGNR、コレクチンおよびマンノース結合レクチンを含むC−タイプレクチン、シグレックを含むIタイプレクチン、マンノース−6−リン酸受容体を含むPタイプレクチン、Rタイプレクチン、Lタイプレクチン、Mタイプレクチン、ガレクチンからなる群から選択されるレクチンを標的とする請求項1から26のいずれか1項に記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項28】
糖鎖修飾リポソームがE−セレクチン、P−セレクチンおよびL−セレクチンからなる群から選択されるセレクチンを標的とする請求項28記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項29】
リポソームに結合した糖鎖の結合密度が、リンカー蛋白質を用いる場合は、リポソーム1粒子当り1〜30000個であり、リンカー蛋白質を用いない場合は、リポソーム1粒子当り最高1〜500000個である、請求項1から28のいずれか1項に記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項30】
リポソームに結合した糖鎖の結合密度が、リポソームに結合させる蛋白質1分子当り1〜60個である、請求項1から28のいずれか1項に記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項31】
リポソームが腸管吸収機能を有するものである請求項1から30のいずれか1項に記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項32】
血中、肝臓、脾臓、肺、脳、小腸、心臓、胸腺、腎臓、膵臓、筋肉、大腸、骨、骨髄、眼、癌組織、炎症組織およびリンパ節からなる群から選択される組織または器官に指向性の高い、請求項1から31のいずれか1項に記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項33】
糖鎖がリポソーム膜に結合されているものであって、糖鎖が、アルファ1,2マンノビオース二糖鎖、アルファ1,3マンノビオース二糖鎖、アルファ1,4マンノビオース二糖鎖、アルファ1,6マンノビオース二糖鎖、アルファ1,3アルファ1,6マンノトリオース三糖鎖、オリゴマンノース3五糖鎖、オリゴマンノース4b六糖鎖、オリゴマンノース5七糖鎖、オリゴマンノース6八糖鎖、オリゴマンノース7九糖鎖、オリゴマンノース8十糖鎖、オリゴマンノース9十一糖鎖、3’−シアリルラクトース三糖鎖、6’−シアリルラクトース三糖鎖、3’−シアリルラクトサミン三糖鎖、6’−シアリルラクトサミン三糖鎖、ルイスX型三糖鎖、シアリルルイスX型四糖鎖、ラクトース二糖鎖、2’−フコシルラクトース三糖鎖、ジフコシルラクトース四糖鎖および3−フコシルラクトース三糖鎖からなる群から選択される、請求項1から32のいずれか1項に記載の糖鎖修飾リポソーム。
【請求項34】
請求項1から33のいずれか1項に記載のリポソームに薬剤または遺伝子を封入したリポソーム製剤。
【請求項35】
薬剤が、アルキル化系抗癌剤、代謝拮抗剤、植物由来抗癌剤、抗癌性抗生物質、BRM・サイトカイン類、白金錯体系抗癌剤、免疫療法剤、ホルモン系抗癌剤、モノクローナル抗体等の腫瘍用薬剤、中枢神経用薬剤、末梢神経系・感覚器官用薬剤、呼吸器疾患治療薬剤、循環器用薬剤、消化器官用薬剤、ホルモン系用薬剤、泌尿器・生殖器用薬剤、外用薬剤、ビタミン・滋養強壮剤、血液・体液用薬剤、代謝性医薬品、抗生物質・化学療法薬剤、検査用薬剤、抗炎症剤、眼疾患薬剤、中枢神経系薬剤、自己免疫系薬剤、循環器系薬剤、糖尿病、高脂血症等の生活習慣病薬剤または経口、経肺、経皮膚もしくは経粘膜のための各種薬剤、副腎皮質ホルモン、免疫抑制剤、抗菌薬、抗ウイルス薬、血管新生抑制剤、サイトカインやケモカイン、抗サイトカイン抗体や抗ケモカイン抗体、抗サイトカイン・ケモカイン受容体抗体、siRNA、miRNA、smRNA、アンチセンスODNやDNAなどの遺伝子治療関連の核酸製剤、神経保護因子、抗体医薬からなる群から選択される請求項34記載のリポソーム製剤。
【請求項36】
経口投与用製剤である、請求項34または35に記載のリポソーム製剤。
【請求項37】
非経口投与用製剤である、請求項34または35に記載のリポソーム製剤。
【請求項38】
糖鎖修飾リポソームが含む薬剤が、ドキソルビシンである請求項35記載のリポソーム製剤。
【請求項39】
薬剤が腫瘍用薬剤である、請求項35記載のリポソーム製剤を含む抗癌剤。
【請求項40】
経口投与用抗癌剤である、請求項39記載の抗癌剤。
【請求項41】
非経口投与用抗癌剤である、請求項39記載の抗癌剤。
【請求項42】
リポソーム膜が親水性化されており、表面に糖鎖が結合していないリポソーム。
【請求項43】
リポソームの構成脂質が、フォスファチジルコリン類(モル比0〜70%)、フォスファチジルエタノールアミン類(モル比0〜30%)、フォスファチジン酸類、長鎖アルキルリン酸塩類およびジセチルリン酸類からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜30%)、ガングリオシド類、糖脂質類、フォスファチジルグリセロール類およびスフィンゴミエリン類からなる群から選択される1種以上の脂質(モル比0〜40%)、ならびにコレステロール類(モル比0〜70%)を含む、請求項42記載のリポソーム。
【請求項44】
さらに、蛋白質を含む請求項42または43に記載のリポソーム。
【請求項45】
リポソーム膜および/またはリンカー蛋白質に親水性化合物が結合することにより親水性化されている、請求項42から44のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項46】
親水性化合物が低分子物質である、請求項45記載のリポソーム。
【請求項47】
親水性化合物が糖鎖に対する立体障害となりにくく標的細胞膜面上のレクチンによる糖鎖分子認識反応の進行を妨げない、請求項45または46記載のリポソーム。
【請求項48】
親水性化合物が水酸基を有する請求項45から47のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項49】
親水性化合物がアミノアルコール類である請求項45から48のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項50】
親水性化合物がリポソーム膜表面に直接結合している請求項45から49のいずれか1項に記載のリポソーム。
【請求項51】
低分子の親水性化合物が少なくとも1つのOH基を有する化合物である、請求項45記載のリポソーム。
【請求項52】
親水性化合物が、一般式(1)
X−R1(R2OH)n 式(1)
で示される請求項45記載のリポソームであって、R1は、C1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、R2は存在しないかもしくはC1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、Xはリポソーム脂質またはリンカー蛋白質と直接または架橋用の二価試薬と結合する反応性官能基を示し、nは自然数を示す、リポソーム。
【請求項53】
親水性化合物が、一般式(2)
N−R3−(R4OH)n 式(2)
で示される請求項45記載のリポソームであって、R3は、C1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、R4は存在しないかもしくはC1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、HNはリポソーム脂質またはリンカー蛋白質と直接または架橋用の二価試薬と結合する反応性官能基を示し、nは自然数を示す、リポソーム。
【請求項54】
親水性化合物が、一般式(3)
N−R5(OH)n 式(3)
で示される請求項45記載のリポソームであって、R5は、C1からC40の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を示し、HNはリポソーム脂質またはリンカー蛋白質と直接または架橋用の二価試薬と結合する反応性官能基を示し、nは自然数を示す、リポソーム。
【請求項55】
リポソーム膜および/またはリンカー蛋白質にトリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンである親水性化合物を共有結合により結合させることによりリポソーム膜および/またはリンカー蛋白質が親水性化されている、請求項45記載のリポソーム。
【請求項56】
リポソーム膜にトリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノエタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)アミノプロパン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミノプロパンからなる群から選択される親水性化合物を共有結合により結合させることによりリポソーム膜が親水性化されている、請求項55記載のリポソーム。
【請求項57】
請求項42から56のいずれか1項に記載のリポソームに薬剤または遺伝子を封入したリポソーム製剤。
【請求項58】
薬剤が、アルキル化系抗癌剤、代謝拮抗剤、植物由来抗癌剤、抗癌性抗生物質、BRM・サイトカイン類、白金錯体系抗癌剤、免疫療法剤、ホルモン系抗癌剤、モノクローナル抗体等の腫瘍用薬剤、中枢神経用薬剤、末梢神経系・感覚器官用薬剤、呼吸器疾患治療薬剤、循環器用薬剤、消化器官用薬剤、ホルモン系用薬剤、泌尿器・生殖器用薬剤、外用薬剤、ビタミン・滋養強壮剤、血液・体液用薬剤、代謝性医薬品、抗生物質・化学療法薬剤、検査用薬剤、抗炎症剤、眼疾患薬剤、中枢神経系薬剤、自己免疫系薬剤、循環器系薬剤、糖尿病、高脂血症等の生活習慣病薬剤または経口、経肺、経皮膚もしくは経粘膜のための各種薬剤、副腎皮質ホルモン、免疫抑制剤、抗菌薬、抗ウイルス薬、血管新生抑制剤、サイトカインやケモカイン、抗サイトカイン抗体や抗ケモカイン抗体、抗サイトカイン・ケモカイン受容体抗体、siRNA、miRNA、smRNA、アンチセンスODNやDNAなどの遺伝子治療関連の核酸製剤、神経保護因子、抗体医薬からなる群から選択される請求項57記載のリポソーム製剤。
【請求項59】
経口投与用製剤である、請求項57または58に記載のリポソーム製剤。
【請求項60】
非経口投与用製剤である、請求項57または58に記載のリポソーム製剤。
【請求項61】
薬剤が腫瘍用薬剤である、請求項58記載のリポソーム製剤を含む抗癌剤。
【請求項62】
糖鎖修飾リポソームが含む薬剤が、ドキソルビシンである請求項61記載のリポソーム製剤。
【請求項63】
経口投与用抗癌剤である、請求項61または62に記載の抗癌剤。
【請求項64】
非経口投与用抗癌剤である、請求項61または62に記載の抗癌剤。
【請求項65】
請求項1から33のいずれか1項に記載の糖鎖修飾リポソームに化粧品を封入したリポソーム製剤を含む化粧品組成物。
【請求項66】
経皮投与製剤である請求項65記載の化粧品組成物。
【請求項67】
化粧品が、ビタミンAまたはビタミンEである請求項65または66に記載の化粧品組成物。
【請求項68】
請求項1から33のいずれか1項に記載の糖鎖修飾リポソームに食品を封入したリポソーム製剤を含む食品組成物。
【請求項69】
経口投与製剤である請求項68記載の食品組成物。
【請求項70】
食品が栄養補助食品である請求項68または69に記載の食品組成物。
【請求項71】
食品が、ビタミンAまたはビタミンEである請求項69または70に記載の食品組成物。
【請求項72】
請求項42から56のいずれか1項に記載のリポソームに化粧品を封入したリポソーム製剤を含む化粧品組成物。
【請求項73】
経皮投与製剤である請求項72記載の化粧品組成物。
【請求項74】
化粧品が、ビタミンAまたはビタミンEである請求項72または73に記載の化粧品組成物。
【請求項75】
請求項42から56のいずれか1項に記載のリポソームに食品を封入したリポソーム製剤を含む食品組成物。
【請求項76】
経口投与製剤である請求項75記載の食品組成物。
【請求項77】
食品が栄養補助食品である請求項75または76に記載の食品組成物。
【請求項78】
食品が、ビタミンAまたはビタミンEである請求項76または77に記載の食品組成物。

【国際公開番号】WO2005/011632
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【発行日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512589(P2005−512589)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011291
【国際出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】