説明

紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料と該積層材料を用いた包装体およびプレススルーパッケージ並びにシュリンクラベル

【課題】紫外線遮断性と可視光線遮断性を兼ね備え、内容物の視認が可能な透明性を有する積層材料と該積層材料を用いた包装体を提供すること。
【解決手段】少なくともフィルム基材層(11)とシーラント層(12)を有し、フィルム基材層とシーラント層の間に紫外線吸収剤が5%以上、30%以下の割合で均一に分散された紫外線吸収剤分散層(13)が設けられている。紫外線吸収剤はベンゾフェノン系紫外線吸収剤が良い。紫外線吸収剤分散層の上に透明な黄色、オレンジ色、赤色のいずれかの色から選ばれた着色インキ層(14)を設けても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や医薬品などの包装分野で使用される積層材料に関し、特に紫外線遮断性と短波長可視光線遮断性を兼ね備え、内容物の視認が可能な透明性を有する積層材料と該積層材料を用いた包装体およびプレススルーパッケージ(PTP)並びにシュリンクラベルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品等を包装する目的の一つに、内容物である食品や医薬品の保存性を向上させ、その保有する特性をできるだけ長期間保存させることがある。この目的を達成するための包装技法として光線(紫外線)遮断技法が知られている。この方法の一つは、プラスチックフィルムに紫外線吸収、遮断性インキ層からなる遮光層を設ける方法である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開2003−275280号公報。
【0004】
しかし、この遮光包装材料は波長500〜600nmで光線透過率が50〜60%以下しかないため、内容物を視認しにくいという問題がある。このため上述の先行技術文献においては、内容量を確認するための窓抜き部が設けられている。
【0005】
また、PTPにあっては、アルミニウム箔を積層したシートを用いたり、底材シートに赤色顔料などを添加して遮光層を設けて内容物に有害な波長の光線をカットしていた(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献2】特開2005−178829号公報。
【0007】
しかし、底材にアルミニウム箔構成シートを使用したものは充填後、内容物の確認ができない。アルミニウム箔構成フィルムで二次包装した場合には、開封後には光による劣化が生じてしまう。赤色顔料を添加したものは、内容物の視認性に劣る、といった問題がある。
【0008】
さらに、シュリンクラベルにおいては、シュリンクラベルに紫外線防止剤を練り込んだり、有害な波長の光線をカットする顔料を含むインキを全面に印刷し、内容物の光線による劣化を防いでいる(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。
【0009】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献3】特開2004−258115号公報。
【特許文献4】特開2005−206730号公報。
【特許文献5】特開2003−305772号公報。
【0010】
しかしシュリンクラベルに印刷を施すと、シュリンクラベルを装着した後の、最終出荷工程で内容物の検査ができないという問題がある。また、上述の先行技術文献においては、透明性については言及していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、遮光包装材料に関する以上のような問題を解決するためになされたもので、紫外線吸収剤と着色インキを併用することで紫外線遮断性と可視光線遮断性を兼ね備え、内容物の視認が可能な透明性を有する積層材料と該積層材料を用いた包装体を提供することにある。
【0012】
また、本発明は、500nm以下の光線波長をカットし、容器内容物の光による劣化を防止すると共に、内容物の視認性を確保したPTPを提供することにある。
【0013】
さらに、本発明は、500nm以下の光線波長をカットし、容器内容物の光による劣化を防止すると共に、内容物の視認性を確保したシュリンクフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1に係わる発明は、紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料であって、該積層材料は、少なくともフィルム基材層とシーラント層を有し、該フィルム基材層とシーラント層の間に紫外線吸収剤が5%以上、30%以下の割合で均一に分散された紫外線吸収剤分散層が設けられていることを特徴とする紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料である。
【0015】
請求項2に係わる発明は、請求項1の発明において、前記紫外線吸収剤分散層はポリウレタン系樹脂インキ層であり、ポリウレタン系樹脂95〜70重量%に対して、紫外線吸収剤が5〜30重量%配合された混合物からなることを特徴とする紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料である。
【0016】
このように請求項1あるいは請求項2の発明によれば、積層材料には、紫外線吸収剤が5%以上、30%以下の割合で均一に分散された紫外線吸収剤分散層が設けられ、前記紫外線吸収剤分散層はポリウレタン系樹脂インキ層であり、ポリウレタン系樹脂95〜70重量%に対して、紫外線吸収剤が5〜30重量%配合された混合物からなるので、紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料とすることができる。
【0017】
請求項3に係わる発明は、請求項1又は2の発明において、前記紫外線吸収剤がベンゾフェノン系紫外線吸収剤であることを特徴とする紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料である。
【0018】
請求項4に係わる発明は、請求項1又は2の発明において、前記紫外線吸収剤が酸化亜鉛であることを特徴とする紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料である。
【0019】
請求項5に係わる発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の発明において、前記積層材料は、紫外線吸収剤分散層の上に、透明な黄色、オレンジ色、赤色のいずれかの色から選ばれる着色インキ層が積層されてなることを特徴とする紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料である。
【0020】
請求項6に係わる発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の発明において、前記
積層材料は、波長500nm以下における光線透過率が5%以下であり、かつ、波長600nm以上における光線透過率が70%以上であることを特徴とする紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料である。
【0021】
請求項7に係わる発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料を用いて作製した包装体である。
【0022】
請求項8に係わる発明は、請求項7記載の発明において、前記包装体は、輸液バッグ、輸液ボトル、アンプル、又はプレフィルドシリンジのいずれか一つである。
【0023】
請求項9に係わる発明は、収納部を有する本体と、この本体を封止する底材シートからなり、底材シートを破断して収納物を取り出すPTPにおいて、前記PTPは、多層の積層材料からなり、該積層材料には少なくともベンゾフェノン系紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層と透明黄着色層が設けられていることを特徴とする紫外線を吸収し可視光線を透過するPTPである。
【0024】
請求項10に係わる発明は、請求項9記載の発明において、前記PTPの波長380nmにおける全光線透過率が1%以下であり、波長500nmにおける全光線透過率が5%以下であり、波長600nmにおける全光線透過率が70%以上であることを特徴とする紫外線を吸収し可視光線を透過するPTPである。
【0025】
請求項11に係わる発明は、請求項9又は10記載の発明において、前記、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が2、2’、4、4’テトラヒドロキシベンゾフェノンであることを特徴とする紫外線を吸収し可視光線を透過するPTPである。
【0026】
請求項12に係わる発明は、、ガラスびんやプラスチックボトル等に装着されるシュリンクラベルであって、前記シュリンクラベルに、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層と透明黄着色層が設けられていることを特徴とする紫外線を吸収し可視光線を透過するシュリンクラベルである。
【0027】
請求項13に係わる発明は、請求項12記載の発明において、前記シュリンクラベルの波長380nmにおける全光線透過率が1%以下であり、波長500nmにおける全光線透過率が5%以下であり、波長600nmにおける全光線透過率が70%以上であることを特徴とする紫外線を吸収し可視光線を透過するシュリンクラベルである。
【0028】
請求項14に係わる発明は、請求項12又は13記載の発明において、前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が2、2’、4、4’テトラヒドロキシベンゾフェノンであることを特徴とする紫外線を吸収し可視光線を透過するシュリンクラベルである。
【発明の効果】
【0029】
本発明の紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料は、380nmで全光線透過率が1%以下、450nmで全光線透過率が80%以上を実現できる。よって内容物に有害な紫外線をほぼ完全にカットし、高い透明性を持ち内容物を十分視認できる包装体を提供することができる。
【0030】
さらに、本発明の紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料を用いたPTPは、アルミニウム製の従来のPTPと同等の保存性を有しているばかりでなく、視認性にも優れている。また、アルミニウムを使用していないので視認性を有し、充填後の検査が可能であるばかりでなく廃棄性にも優れている。
【0031】
さらに本発明の紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料を用いたシュリンクラベルは、従来のガラスびんと同等の保存性を有しているばかりでなく、視認性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の実施の形態を以下に説明する。
【0033】
本発明の紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料は、例えば、図1に示すように、該積層材料(10)は、少なくともフィルム基材層(11)とシーラント層(12)を有し、該フィルム基材層とシーラント層の間に紫外線吸収剤が5%以上、30%以下の割合で均一に分散された紫外線吸収剤分散層(13)が設けられていることを特徴とするものである。
【0034】
フィルム基材層(11)は、積層材料の印刷基材となるフィルム層で、透明な二軸延伸ポリエステルフィルム、透明な二軸延伸ポリプロピレンフィルム等、透明な二軸延伸プラスチックフィルムが好ましく使用できる。
【0035】
シーラント層(12)は、積層材料にヒートシール性を付与する層で、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム、低密度ポリエチレンフィルム、未延伸ポリプロピレンフィルム等一般的に公知のヒートシール性を有するポリオレフィン系フィルムが使用できる。
【0036】
また、図示してないが、必要に応じて、フィルム基材層(11)とシーラント層(12)の間に中間層を設けることができる。
【0037】
フィルム基材層(11)とシーラント層(12)の間に設ける紫外線吸収剤分散層(13)は、ポリウレタン系樹脂インキ層であり、ポリウレタン系樹脂95〜70重量%に対して、紫外線吸収剤が5〜30重量%配合された混合物からなる。
そして、紫外線吸収剤はベンゾフェノン系紫外線吸収剤あるいは酸化亜鉛であることが好ましい。
【0038】
積層材料(10)は、紫外線吸収剤分散層(13)の上に、透明な黄色、オレンジ色、赤色の何れかの色から選ばれる着色インキ層(14)を重ねた構成としても良い(図2参照)。
【0039】
これらの積層材料(10)は、波長500nm以下における光線透過率が5%以下であり、かつ、波長600nm以上における光線透過率が70%以上である。また、ヘイズ値(曇度)は25%以下である。
【0040】
このような積層材料を用いて包装体(20)を作製することができる。包装体(20)は特に輸液バッグ、輸液ボトル、アンプル、プレフィルドシリンジにおいて効果がある。
【0041】
つぎに、第2の実施の形態である紫外線を吸収し可視光線を透過するPTPは、例えば図3に示すように、収納部を有する本体(31)と、この本体を封止する底材シート(32)からなり、底材シートを破断して収納物(35)を取り出すPTP(30)において、前記PTP(30)は多層の積層材料からなり、該積層材料には少なくともベンゾフェノン系紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層(33)と、透明黄着色層(34)が設けられていることを特徴とするものである。
【0042】
PTP(30)を構成する本体(31)や底材シート(32)の材質は特に限定されるものではないが、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、環状
ポリオレフィン等のプラスチック樹脂が使用可能で、コスト、防湿性等を考慮するとポリプロピレン樹脂が好ましく使用できる。
【0043】
このPTP(30)の波長380nmにおける全光線透過率は1%以下であり、波長500nmにおける全光線透過率は5%以下であり、波長600nmにおける全光線透過率は70%以上である。
【0044】
本体(31)や底材シート(32)に紫外線吸収層(33)を設ける方法は、紫外線吸収剤を本体や底材シートを構成するプラスチック樹脂に直接添加(練り込み)しても良いが、経済性等を考慮すると、紫外線吸収剤を分散させたコート液を作製し、本体や底材シートにコーティングする方が良い。
同様に、透明な黄色からなる着色層(34)はグラビア印刷法により作製することができる。
なお、紫外線吸収層(33)を先に設け、その上に透明黄着色層(34)を形成させても良いし、透明黄着色層(34)を先に設け、その上に紫外線吸収層(33)を形成させても良い。
【0045】
また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2、2’、4、4’テトラヒドロキシベンゾフェノンが好ましく使用できる。
【0046】
つぎに、本発明の第3の実施の形態である紫外線を吸収し可視光線を透過するシュリンクラベルは、例えば、図5に示すように、ガラスびんやプラスチックボトル等に装着されるシュリンクラベル(40)であって、前記シュリンクラベルを構成するシュリンクラベル基材(41)に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層(42)と透明黄着色層(43)が設けられていることを特徴とするものである。
【0047】
そして、シュリンクラベル(40)の波長380nmにおける全光線透過率は1%以下であり、波長500nmにおける全光線透過率は5%以下であり、波長600nmにおける全光線透過率は70%以上である。
【0048】
シュリンクラベル基材(41)に紫外線吸収層(42)を設ける方法は、紫外線吸収剤をシュリンクラベル基材を構成するプラスチック樹脂に直接添加(練り込み)しても良いが、経済性等を考慮すると、紫外線吸収剤を分散させたコート液を作製し、シュリンクラベル基材にコーティングする方が良い。
同様に、透明な黄色からなる着色層(43)はグラビア印刷法により作製することができる。
なお、紫外線吸収層(42)を先に設け、その上に透明黄着色層(43)を形成させても良いし、透明黄着色層(43)を先に設け、その上に紫外線吸収層(42)を形成させても良い。
【0049】
さらに、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤は2、2’、4、4’テトラヒドロキシベンゾフェノンが好適に使用できる。
【0050】
シュリンクラベル基材(41)の材質は、特に限定されるものではないが、延伸ポリエステルフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、延伸ポリ塩化ビニルフィルム等が使用でき、近年では延伸ポリスチレンフィルムが多く使用されている。
【0051】
以下、本発明の紫外線を吸収し、可視光線を透過する積層材料を具体的な実施例に基づいて説明する。
・インキ〜紫外線吸収剤分散層用〜の調整。
【0052】
ポリウレタン系樹脂とベンゾフェノン系紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製、商品名:Uvinul)とを質量比で85/15に配合した混合物を酢酸エチル溶媒で溶解し、固形分50質量%の混合溶液を準備し、さらに酢酸エチルで希釈して総固形分15質量%のインキ溶液を作製した。
【実施例1】
【0053】
透明なフィルム基材層(11)として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製、商品名:東洋紡エステルフィルムET5200)を準備した。また、シーラント層(12)として、厚さ40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ株式会社製、商品名:T.U.X−FCX)をそれぞれ準備した。
【0054】
まず、この二軸延伸ポリエステルフィルム(11)に、グラビア印刷機を用いて上記インキを印刷し、紫外線吸収剤分散層(13)を形成した。
【0055】
この二軸延伸ポリエステルフィルム(11)の紫外線吸収剤分散層(13)形成面に、ポリエステル樹脂系の二液反応型接着剤を介して先に準備した厚さ40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(12)を積層し、実施例1の紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料(10)を作製した。
【実施例2】
【0056】
紫外線吸収剤分散層(13)として、無機系紫外線吸収剤コート剤(大日本インキ工業株式会社製、商品名:UVカットメジューム)を用いた以外は実施例1と同じ材料、方法を用いて積層材料を作製し、実施例2の紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料(10)とした。
【実施例3】
【0057】
実施例1と同様に、透明なフィルム基材層(11)として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製、商品名:東洋紡エステルフィルムET5200)を準備した。また、シーラント層(12)として、厚さ40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ株式会社製、商品名:T.U.X−FCX)をそれぞれ準備した。
【0058】
二軸延伸ポリエステルフィルム(11)に、グラビア印刷機を用いて遮光インキ(東洋インキ製造株式会社製、商品名:マルチセットVコンク黄)を印刷し、遮光インキ層を形成した。
【0059】
この二軸延伸ポリエステルフィルム(11)の遮光インキ層形成面に、ポリエステル樹脂系の二液反応型接着剤を介して先に準備した厚さ40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(12)を積層し、比較例となる実施例3の積層材料を作製した。
【実施例4】
【0060】
遮光インキを、商品名:マルチセットVコンク黄(東洋インキ製造株式会社製)から商品名:マルチセットV茶(東洋インキ製造株式会社製)に代えた以外は実施例3と同様の材料、方法を用いて比較例となる実施例4の積層材料を作製した。
【実施例5】
【0061】
実施例1と同様に、透明なフィルム基材層(11)として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製、商品名:東洋紡エステルフィルムET5200)を準備した。また、シーラント層(12)として、厚さ40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ株式会社製、商品名:T.U.X−FCX)をそれぞれ準備した。
【0062】
実施例3と同様に、二軸延伸ポリエステルフィルム(11)に、グラビア印刷機を用いて遮光インキ(東洋インキ製造株式会社製、商品名:マルチセットVコンク黄)を印刷し、遮光インキ層を形成した。
【0063】
ついで、遮光インキ層の上に、グラビア印刷機を用いて遮光インキ(東洋インキ製造株式会社製、商品名:マルチセットV茶)を印刷し、遮光インキ層を重ね刷りした。
この二軸延伸ポリエステルフィルム(11)の遮光インキ層の重ね刷り形成面に、ポリエステル樹脂系の二液反応型接着剤を介して先に準備した厚さ40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(12)を積層し、比較例となる実施例5の積層材料を作製した。なお、窓部を縦34cm、横縦25cmの長方形の袋両面に、窓の中央よりやや左側に幅3cmの帯状に設けた。
【実施例6】
【0064】
実施例1で準備した透明なフィルム基材層(11)である厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製、商品名:東洋紡エステルフィルムET5200)と、シーラント層(12)である厚さ40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ株式会社製、商品名:T.U.X−FCX)とを、実施例1と同様にポリエステル樹脂系の二液反応型接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせ、比較例となる実施例6の積層材料を作製した。
【0065】
こうして作製した実施例1から実施例6の積層材料について、下記する方法により全光線透過率とビタミンCの残存率を下記する方法にしたがって測定した。その結果を表1、表2、表3に示す。
【0066】
・全光線透過率 … 実施例1から実施例4および実施例6の積層材料について測定した(N=3)。全光線透過率測定機:UV−3100(株式会社島津製作所製)、測定条件:サンプリングピッチ;0.5nm、波長;200nm〜800nm、スリット幅;8nm、照射スポット:2mm×16mm(このエリア内の平均値が測定値となる)。
・ビタミンCの残存率 … 実施例1、実施例2および実施例5の積層材料を用いて三方シール袋を作製した。この三方シール袋を遮光カバーとして、ビタミンCを含有する輸液900ミリリットルを充填した輸液容器に被せ、24時間後のビタミンCの残存率を測定した。残存量の測定にはインドフェノール滴定法を使用した。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

表1、表2の結果から実施例1、実施例2の積層材料は実施例3、実施例4の積層材料に比べて、500nmで全光線透過率5%以下、600nmで全光線透過率70%以上を実現できる。よって内容物に有害な紫外線をほぼ完全にカットし、高い透明性を有し、内容物を十分視認できる包装体を提供することができる。
【0070】
表3の結果から実施例1や実施例2は実施例5に比べて輸液の液面と容器の液線が各方面から十分に視認することができた。またビタミンCの残存率は、実施例1、実施例2は実施例5に比べて同等以上であった。
【0071】
つぎに本発明の第2の実施の形態である紫外線を吸収し可視光線を透過するPTPを具体的な実施例に基づいて説明する。
【0072】
厚さ50μmの未延伸ポリスチレンフィルムに透明黄色インキをグラビア印刷法により印刷して、塗布量が1.8g/m2(dry)の透明黄着色層(33)を形成させた。
【0073】
別に、ポリプロピレン系バインダー樹脂15重量部に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤である2、2‘、4、4’テトラヒドロキシベンゾフェノン15重量部を分散させ、ついでこの分散液を溶媒であるメタノール70重量部に溶解したコート液を作製した。
【0074】
このコート液を、先に作製した透明黄着色層(33)を形成させた未延伸ポリスチレンフィルムの透明着色層(33)の上に、グラビアコート法により塗布量が1.5g/m2(dry)になるように塗布して紫外線吸収層(34)を形成させた。
【0075】
出来上がった未延伸ポリスチレンフィルムの紫外線吸収層(34)面に、厚さ200μmの未延伸ポリプロピレンシートをポリプロピレン樹脂を用いた溶融押し出し法により貼り合わせ、未延伸ポリプロピレン(200μm)/ポリプロピレン(30μm)/(紫外線吸収層)・(透明黄着色層)・未延伸ポリスチレンフィルム(50μm)の層構成からなるPTP用の積層材料を得た。
【0076】
この積層材料の全光線透過率を、第1の実施の形態である紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料の具体的な実施例の説明の際に述べたのと同じ方法で測定した。その結果を図4に示す。
【0077】
図4に示すように、380nmにおける全光線透過率が1%以下、500nmにおける全光線透過率が5%以下、600nmにおける全光線透過率が70%以上であることが確認された。
【実施例7】
【0078】
こうして作製したPTP用の積層材料を通常のPTP包装機で成形し、アスコルビン酸(ビタミンC)を200mg、リボフラミンを20mg含有する錠剤を充填し、アルミニウム箔(厚さ17μm)/ヒートシールラッカーからなる底材シートでヒートシールし密封した、実施例7のPTPとした。
【実施例8】
【0079】
本体を通常のPTP用ポリプロピレンシート(厚さ280μm)に代えた以外は実施例7と同じ材料、方法を用いて比較例となる実施例8のPTPを作製した。
【実施例9】
【0080】
本体をアルミニウム箔に代えた以外は実施例7と同じ材料、方法を用いて比較例となる実施例9のPTPを作製した。
【0081】
このようにして作製した実施例7から実施例9までの3種類のPTPにD65ランプおよび近紫外線ランプを光源とする光を照射(積算光量:120万Lx・hr)し、アスコルビン酸およびリボフラミンの残存量を測定した。その結果を表4に示す。
【0082】
【表4】

表4から分かるように、本発明のPTPはアルミニウム箔製のPTPと同等の保存性を有しているばかりでなく、視認性にも優れている。また、アルミニウム箔を使用していないので視認性を有し、充填後の検査が可能なばかりでなく、廃棄製にも優れている。
【0083】
つぎに本発明の第3の実施の形態である紫外線を吸収し可視光線を透過するシュリンクラベルを具体的な実施例に基づいて説明する。
【0084】
シュリンクラベル基材(41)となる厚さ50μmの延伸ポリスチレンフィルムに透明黄色インキをグラビア印刷法により印刷して、塗布量が1.8g/m2(dry)の透明黄着色層(43)を形成させた。
【0085】
別に、ウレタン系バインダー樹脂15重量部に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤である2,2’,4,4’テトラヒドロキシベンゾフェノン15重量部を分散させ、ついでこの分散液を溶媒であるメタノール70重量部に溶解したコート液を作製した。
【0086】
このコート液を、先に作製した透明黄着色層(43)を形成させた延伸ポリスチレンフィルムの透明黄着色層(43)の上に、グラビアコート法により塗布量が1.5g/m2(dry)になるように塗布して紫外線吸収層(42)を形成させ、シュリンクフィルム用積層材料とした。
【0087】
このシュリンクフィルム用積層材料の全光線透過率を、第1の実施の形態である紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料の具体的な実施例の説明の際に述べたのと同じ方法で測定した。その結果を図6に示す。
【0088】
図6に示すように、380nmにおける全光線透過率が1%以下、500nmにおける全光線透過率が5%以下、600nmにおける全光線透過率が70%以上であることが確認された。
【0089】
得られたシュリンクフィルム用積層材料をスリーブ状にヒートシールし、さらに切断してシュリンクラベルとした。このラベルをCVD法により内面にSiOxが蒸着されたPETボトル(内容量500ミリリットル)に被せ、加熱し、シュリンクラベル付きPETボトルを作製した。なお、ラベルはボトル側面の全てを覆うようにした(フルシュリンク)。
【実施例10】
【0090】
このシュリンクラベル付きPETボトルにビールを無菌的に充填しキャップで密封し、実施例10のボトルとした。
【実施例11】
【0091】
シュリンクラベルを施さないCVD法により内面にSiOxが蒸着されたPETボトル(内容量500ミリリットル)を準備し、これにも同様にビールを無菌的に充填しキャップで密封し、比較例となる実施例11のボトルとした。
【実施例12】
【0092】
これに加えてビールが充填された通常の茶褐色ビールびんを準備し、比較例となる実施例12のボトルとした。
【0093】
このようにして作製した実施例10から実施例12までの3種類のボトルにD65ランプおよび近紫外線ランプを光源とする光を照射(積算光量:120万Lx・hr)し、日光臭原因物質といわれている3−メチル−2−ブテン−1−チオール(MTB)の量を測定した。また、官能による評価を行った。その結果を表5に示す。
【0094】
【表5】

表5から分かるように本発明のシュリンクラベルを施したPETボトルは、ガラス製ビールびんと同等の保存性を有しているばかりでなく、視認性にも優れている。
また、シュリンクラベルを除去した後のPETボトルは通常のリサイクルルートでの再生が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料の層構成の一実施例を示す断面説明図である。
【図2】本発明の紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料の層構成の別の実施例を示す断面説明図である。
【図3】本発明の紫外線を吸収し可視光線を透過するPTPの、(a)は層構成の一実施例を示す断面説明図であり、(b)は(a)の本体又は底材シートの詳細な層構成の一実施例を示す断面説明図である。
【図4】本発明の紫外線を吸収し可視光線を透過するPTP用に作製した積層材料の250nmから750nmにおける光線透過率を示す折れ線グラフである。
【図5】本発明の紫外線を吸収し可視光線を透過するシュリンクラベルの層構成の一実施例を示す断面説明図である。
【図6】本発明の紫外線を吸収し可視光線を透過するシュリンクラベル用に作製した積層材料の300nmから800nmにおける光線透過率を示す折れ線グラフである。
【符号の説明】
【0096】
10‥‥積層材料
11‥‥フィルム基材層
12‥‥シーラント層
13‥‥紫外線吸収剤分散層
14‥‥着色インキ層
20‥‥包装体
30‥‥PTP
31‥‥本体
32‥‥底材シート
33‥‥紫外線吸収層
34‥‥透明黄着色層
35‥‥収納物、錠剤
40‥‥シュリンクラベル
41‥‥シュリンクラベル基材
42‥‥紫外線吸収層
43‥‥透明黄着色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料であって、
該積層材料は、少なくともフィルム基材層とシーラント層を有し、該フィルム基材層とシーラント層の間に紫外線吸収剤が5%以上、30%以下の割合で均一に分散された紫外線吸収剤分散層が設けられていることを特徴とする紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料。
【請求項2】
前記紫外線吸収剤分散層はポリウレタン系樹脂インキ層であり、ポリウレタン系樹脂95〜70重量%に対して、紫外線吸収剤が5〜30重量%配合された混合物からなることを特徴とする請求項1に記載の紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料。
【請求項3】
前記紫外線吸収剤がベンゾフェノン系紫外線吸収剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料。
【請求項4】
前記紫外線吸収剤が酸化亜鉛であることを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料。
【請求項5】
前記積層材料は、紫外線吸収剤分散層の上に、透明な黄色、オレンジ色、赤色のいずれかの色から選ばれる着色インキ層が積層されてなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料。
【請求項6】
前記積層材料は、波長500nm以下における光線透過率が5%以下であり、かつ、波長600nm以上における光線透過率が70%以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の紫外線を吸収し可視光線を透過する積層材料を用いて作製した包装体。
【請求項8】
前記包装体は、輸液バッグ、輸液ボトル、アンプル、又はプレフィルドシリンジのいずれか一つであることを特徴とする請求項7に記載の包装体。
【請求項9】
収納部を有する本体と、この本体を封止する底材シートからなり、底材シートを破断して収納物を取り出すプレススルーパッケージ(PTP)において、
前記プレススルーパッケージは、多層の積層材料からなり、該積層材料には少なくともベンゾフェノン系紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層と、透明黄着色層が設けられていることを特徴とする紫外線を吸収し可視光線を透過するプレススルーパッケージ。
【請求項10】
前記プレススルーパッケージの波長380nmにおける全光線透過度が1%以下であり、波長500nmにおける全光線透過度が5%以下であり、波長600nmにおける全光線透過度が70%以上であることを特徴とする請求項9に記載の紫外線を吸収し可視光線を透過するプレススルーパッケージ。
【請求項11】
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が2、2’、4、4’テトラヒドロキシベンゾフェノンであることを特徴とする請求項9又は10に記載の紫外線を吸収し可視光線を透過するプレススルーパッケージ。
【請求項12】
ガラスびんやプラスチックボトル等に装着されるシュリンクラベルであって、
前記シュリンクラベルに、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層と透明黄着色層が設けられていることを特徴とする紫外線を吸収し可視光線を透過するシュリ
ンクラベル。
【請求項13】
前記シュリンクラベルの波長380nmにおける全光線透過度が1%以下であり、波長500nmにおける全光線透過度が5%以下であり、波長600nmにおける全光線透過度が70%以上であることを特徴とする請求項12に記載の紫外線を吸収し可視光線を透過するシュリンクラベル。
【請求項14】
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が2、2’、4、4’テトラヒドロキシベンゾフェノンであることを特徴とする請求項12又は13に記載の紫外線を吸収し可視光線を透過するシュリンクラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−23100(P2009−23100A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185393(P2007−185393)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】