説明

紫外線吸収剤及びそれを含有する皮膚外用剤並びに酸化防止剤

【課題】高い紫外線吸収効果を有し、安全性に優れた、水溶性の紫外線吸収剤及びそれを含有する皮膚外用剤並びに、安全性の高い素材を利用した酸化防止剤を提供する。
【解決手段】キチンオリゴ糖及び/又はキトサンオリゴ糖を紫外線吸収剤及び酸化防止剤の有効成分として用いる。前記キチンオリゴ糖及び/又はキトサンオリゴ糖は、その重合度が2〜10であることが好ましく、240〜320nmに最大吸収波長を有するものであることが好ましい。この紫外線吸収剤を皮膚外用剤に含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然成分由来の紫外線吸収剤及びそれを含有する皮膚外用剤並びに酸化防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン層の破壊による紫外線量の増加が懸念されている近年において、人体への紫外線照射が皮膚、毛髪、目等に悪影響を及ぼすことが明らかになりつつある。例えば、皮膚へ影響としては、そばかすや真皮層の繊維組織が破壊される事によるしわ、たるみの原因となる他、更には皮膚ガンへ繋がる危険性もあり、これら障害に紫外線照射により皮膚組織中に発生したフリーラジカルが関与する可能性が示唆されている。
【0003】
このフリーラジカルは、連鎖反応によって皮膚の要素を攻撃し、外皮レベルの有害な作用によって、細胞DNAの破壊及び結合組織(コラーゲン及びエラスチン)の浸食を引き起こし、皮膚の老化を促進させる。
【0004】
また、毛髪においても、メラニンの破壊による変色、キューティクルの損傷や枝毛、切れ毛等の原因となり、目への影響としては、視覚障害、視力低下、更に白内障の原因の一つとして考えられている。
【0005】
更に、紫外線は、酸化作用を増幅させ、食品等が酸化されやすくなり、食品の風味や食感が劣化したり、また、生体での酸化傷害から派生するガン、心疾患、脳疾患など各種疾患へ繋がる危険性もある。
【0006】
紫外線はUVA(長波長:320〜400nm)、UVB(中波長:290〜320nm)、UVC(短波長:200〜290nm)に分類され、波長が短いほど有害性は高く、これまではUVCと多くのUVBはオゾン層で吸収され、地表にはUVAと少量のUVBが照射していたが、UVBの照射量は年々増加し、UVCも届くようになってきている。
【0007】
このような背景のなか、紫外線を防衛する化粧品や点眼剤等が数多く開発され、それらの有効成分として、様々な紫外線吸収剤が検討されている。
【0008】
特開2004−67926号公報には、環状酸無水物基を繰り返し単位中に有するポリマーと、少なくとも1つの炭化水素基を有するアミンを、極性有機溶媒中、混合して得られる化合物からなる紫外線吸収剤、及びそれを含有する化粧料が記載されている。
【0009】
また、特開平10−167947号公報には、化学的処理及び機械的粉砕処理により製造された種々のシルク微粒子にアニオン型水溶性UV吸収剤を吸着してなるUV吸収材ならびにこれを用いた化粧料及び一次染毛料が記載されている。
【0010】
更に、食品の酸化防止剤については多くの素材があり各様に利用されている。
【特許文献1】特開2004−67926号
【特許文献2】特開平10−167947号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の紫外線吸収剤は、その多くが脂溶性の有機化合物であり、使用剤形が制限されてしまう。また、水溶性の紫外線吸収剤も提案されているが、前記脂溶性のものも含め、そのほとんどは化学合成品である。このような化学合成品の紫外線吸収剤は酸化され易く、変質して皮膚に悪影響を及ぼすなどの報告がされているものも多い。
【0012】
また、健全な食生活、あるいは生活習慣病の予防のためには抗酸化剤の摂取が必要であるが、化学合成品の酸化防止剤は、その安全性に問題があり、近年はその使用が控えられる傾向にある。
【0013】
このように、紫外線吸収効果を有し、皮膚に対する使用感にすぐれ、皮膚等に利用しても安全性が高く、これら全てを満足すべき物質は未だ知られていないのが現状である。
【0014】
したがって、本発明の目的は、高い紫外線吸収効果を有し、安全性に優れた、水溶性の紫外線吸収剤及びそれを含有する皮膚外用剤並びに、安全性の高い素材を利用した酸化防止剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決すべく、本発明者らが鋭意研究した結果、天然成分由来のN−アセチルグルコサミン、グルコサミンの重合体であるキチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖が優れた紫外線吸収能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明の紫外線吸収剤はキチンオリゴ糖及び/又はキトサンオリゴ糖を有効成分とする。本発明によれば、キチンオリゴ糖及びキトサンオリゴ糖を有効成分とすることにより、優れた紫外線吸収効果をもたらすと共に、それらは天然成分由来の物質であるので、安全性の高い紫外線吸収剤を提供することができる。
【0017】
なお、重合度が異なるだけでUV吸収性に大きな差異があることを見出したのは、本発明者らが最初であり、本発明者らはこれを「重合体機能(ポリマーファンクション)」と命名した。重合体機能の例として、例えばβ−1,4結合のセロオリゴ糖は、重合度によってもUV吸収はないが、α‐1,4結合のマルトオリゴ糖は、重合度4のマルトテトラオースで比較的大きなUV吸収を示す。グルコース、マルトースなどでは殆ど吸収は示さず、重合度5以上でも極めて吸収性は微弱になる。しかし、マルトテトラオースの強度は、キチンオリゴ糖に比較して1/10以下程度であり本発明の用途には使いがたい。
【0018】
本発明において、前記キチンオリゴ糖の重合度の範囲は2〜10であることが好ましい。キチンオリゴ糖及びキトサンオリゴ糖の重合度が上記範囲内にあるものは、より高い紫外線吸収効果を発揮することができる。
【0019】
また、本発明の紫外線吸収剤は240〜320nmに最大吸収波長を有するものであることが好ましい。これによれば、240〜320nmに最大吸収波長を有するので、皮膚に対して様々な障害をもたらす290〜320nmの波長である中波長UV(UV−B)に対して特に有効である。
【0020】
更に、本発明は、上記紫外線吸収剤を含有する皮膚外用剤を提供するものである。上記紫外線吸収剤を皮膚外用剤に含有させ、この皮膚外用剤を付与することにより、皮膚や毛髪、目を紫外線から保護することができる。
【0021】
一方、本発明の酸化防止剤は、キチンオリゴ糖及び/又はキトサンオリゴ糖を有効成分とする。本発明の酸化防止剤は、紫外線を吸収することによって、紫外線による酸化促進を抑制し、酸化防止効果をもたらすことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の紫外線吸収剤は、優れた紫外線吸収効果を有し、また、水溶性であることから、スキンケア用、ヘアケア用、アイケア用として、様々な形態の皮膚外用剤に幅広く配合することができ、紫外線照射に起因する皮膚、毛髪、目等への障害を防止することができるとともに、皮膚刺激作用等の悪影響の心配もない。
【0023】
また、キチンオリゴ糖及びキトサンオリゴ糖は、カニやエビの殻から精製したキチンを原料として、加水分解等の方法で製造される天然物より得られる安全性が高い物質であるので、皮膚等への悪影響を及ぼす心配がない。
【0024】
一方、本発明の酸化防止剤は、食品素材としても安全・安定であり、各種の飲食品に添加することによって、紫外線を吸収し、酸化防止効果をもたらすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の紫外線吸収剤は、キチンオリゴ糖及び/又はキトサンオリゴ糖を有効成分として含有する組成物であればよい。
【0026】
キチンオリゴ糖は、N−アセチルグルコサミンが直鎖状にβ‐1,4結合したオリゴ糖類であり、ビフィズス菌利用性、免疫賦活作用等の生理機能が見出されている。また、キトサンオリゴ糖はグルコサミンが直鎖状にβ‐1,4結合したオリゴ糖類であり、抗菌作用、肝機能改善効果、抗糖尿病作用等の生理機能が見出されている。
【0027】
本発明において、キチンオリゴ糖、及びキトサンオリゴ糖はその由来を問わず使用することができ、例えば、キチンオリゴ糖であれば、エビやカニ等の甲殻類の殻に含まれるキチンを酸や酵素を用いて部分加水分解することにより得ることができる。具体的には、酸を用いる場合には、特公平5−86399号公報に記載されているように、キチンを酸により部分加水分解して、アルカリにより中和してキチンオリゴ糖を生成させ、該中和液から副生塩をイオン交換膜電気透析により分離除去する方法や、酵素を用いる場合には、特公平7−102100号公報に記載されているように、キチンにストレプトミセス属に属する微生物由来のキチン分解酵素を作用させる方法が例示できる。上記の方法で得られたキチンオリゴ糖は、更にイオン交換樹脂を用いて、脱アセチル化物を除去したり、活性炭等の吸着剤を充填したカラムクロマトグラフィーにより重合度別に分画するなどの精製を行ってもよい。
【0028】
また、キチンオリゴ糖は、キトサンオリゴ糖をアセチル化することによっても得ることができる。この場合、種々の重合度の混合物であるキトサンオリゴ糖、及び重合度別に精製されたキトサンオリゴ糖のいずれをアセチル化してもよい。このようにして、アセチル化により得られたキチンオリゴ糖は、反応に使用した試薬の残存等、安全性が若干心配されるため、本発明においてはキチンを部分加水分解して得られたキチンオリゴ糖がより好ましく用いられる。
【0029】
なお、キチンオリゴ糖は重合度の増加と共に溶解度が低下するが、部分的にアセチル基を水解により外して(脱アセチル化)溶解性を改良することもできる。完全脱アセチル化すればキトサンになり、溶解性は極めて優れたものになるが、食品素材として用いる場合は味質に影響するので、脱アセチル化度は70%以下に抑えることが望ましい。なお、脱アセチル化法には酵素法、アルカリ法などが挙げられるが、用いる手法に制限はない。
【0030】
一方、キトサンオリゴ糖については、キチンを脱アセチル化して得られたキトサンを酸や酵素を用いて部分加水分解することにより得られる。部分加水分解によって得られたキトサンオリゴ糖は、更にイオン交換樹脂によるカラムクロマトグラフィーにより重合度別に分画するなどの精製を行ってもよい。
【0031】
本発明に用いられるキチンオリゴ糖及びキトサンオリゴ糖は、重合度別に分離精製したものを用いてもよく、また複数の重合度の混合物を用いてもよい。本発明に用いられるキチンオリゴ糖及びキトサンオリゴ糖の重合度は、2〜10であることが好ましく、より好ましくは4〜7である。キチンオリゴ糖及びキトサンオリゴ糖の重合度が2〜10を外れる場合、紫外線吸収効果が低下する傾向がある。なお、微弱な効果でも使える場合は、重合度10以上のものであってもよい。
【0032】
また、複数の重合度のキチンオリゴ糖の混合物を用いる場合は、重合度2〜10のものが好ましくは10%以上、より好ましくは50%以上含むことが好ましい。
【0033】
なお、その他のポリマー素材についても、部分加水分解によりUV吸収性が発現するものがあり、例えば増粘多糖の部分加水分解物、寒天、グルコマンナン、ペクチン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、デキストリンや、蛋白質、コラーゲン、その他アミノ酸のポリマーなどを挙げることができる。本発明においては、上記のようなポリマーの部分加水分解物であって、特定の重合度でUV吸収性があるものを併用することもできる。
【0034】
本発明の紫外線吸収剤は240〜320nmに極大吸収波長を有し、地表へ照射される有害性の高いUVBに特に有効であり、皮膚外用剤に添加することにより紫外線からの皮膚や毛髪、目の保護に用いられるほか、食品への混合により食品の紫外線による酸化防止等に利用できる。
【0035】
また、本発明の紫外線吸収剤は、UB−A領域に吸収をもつ素材、例えば、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、セラミド等を更に含有していてもよく、こうすることで、UV−A領域、UV‐B領域の紫外線を効果的に吸収することができる。
【0036】
本発明の紫外線吸収剤は、水溶性であり、水溶液(25℃)中、好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは5質量%以上の溶解度を有する。
【0037】
本発明の紫外線吸収剤は、熱や酸化による劣化もないので様々な皮膚外用剤に添加することができる。
【0038】
皮膚外用剤の形態としては、スキンケア用としては、化粧水、乳液、ローション、ジェル、ファンデーション、クリーム、洗顔料、身体洗浄料等など皮膚用化粧品が挙げられ、その他、ヘアケア用のシャンプー、リンス、ヘアクリーム、ヘアフォーム、ヘアジェル、ヘアローション等や、アイケア用の点眼剤等が挙げられる。
【0039】
本発明の紫外線吸収剤を上記皮膚外用剤に添加する場合の配合量は、その使用する形態により異なるが、0.0001〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.001〜5質量%である。なお十分に溶解しない場合は懸濁状またはゲル状で用いることができる。
【0040】
また、上記有効成分の他に、通常の皮膚外用剤に用いられる水溶性成分、粉末、界面活性剤、油剤、保湿剤、アルコール類、pH調整剤、防腐剤、色素、酸化防止剤、増粘剤、香料等を適宜配合することができる。
【0041】
本発明の紫外線吸収剤を、例えば皮膚用化粧品として用いる場合、水、アルコール等の溶剤;アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、アルキルアミドプロピルベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤;感触向上剤として、グリセライド等のポリオール類、ジメチルポリシロキサン又はその乳化物、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル又はアルコキシ変性シリコーン等のシリコーン類、C〜C24の直鎖又は分岐脂肪酸のC〜C24の直鎖又は分岐アルキルエステル等のエステル類、スクワラン、イソパラフィン等の炭化水素、高級脂肪酸等の油剤;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、変性セルロース類等の水溶性高分子;ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン、セルロース等の高分子粉体;酸化チタン、タルク等の無機粉体;グリセリン等の保湿剤;殺菌剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;抗炎症剤;防腐剤;ビタミン類;pH調整剤;キレート剤;香料;色素等を本発明の効果を損なわない範囲で任意に添加することができる。
【0042】
また、本発明の紫外線吸収剤を点眼剤として用いる場合、本発明の効果に影響を与えない範囲で、必要に応じて、医薬上許容される他の成分を配合することができる。そのような成分としては、例えば、マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸プロメタジン、メキタジン等の抗ヒスタミン成分、クロモグリク酸及びその塩(ナトリウム塩など)、トラニラスト等のケミカルメディエーター遊離抑制成分、アズレンスルホン酸ナトリウム、アラントイン、塩化ベルベリン、イプシロンアミノカプロン酸等の消炎成分、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン等の充血除去成分、グルタミン酸、タウリン、アスパラギン酸マグネシウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のアミノ酸類、塩酸ピリドキシン、シアノコバラミン、フラビンアデニンジヌクレオチド等のビタミン類、メチル硫酸ネオスチグミン等の眼機能を調節する成分、硫酸亜鉛等の収斂成分を配合することができる。更には、メントール、ボルネオール、カンフル等の清涼化剤、クロロブタノール、デヒドロ酢酸ナトリウム、フェネチルアルコール、パラオキシ安息香酸エステル類、ソルビン酸カリウム等の保存剤、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、プロピレングリコール等の等張化剤、エデト酸ナトリウム、シクロデキストリン、亜硫酸水素ナトリウム等の安定化剤、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等の粘稠剤、塩酸、クエン酸またはその塩、ホウ酸またはその塩、リン酸またはその塩、酢酸またはその塩、酒石酸またはその塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤などを配合することができる。
【0043】
本発明の点眼剤の用量については、症状や年齢等により異なり、一概に限定されるものではないが、通常1日1〜5回、1回あたり1〜5滴が点眼される。
【0044】
一方、本発明の酸化防止剤は、キチンオリゴ糖及び/又はキトサンオリゴ糖を有効成分として含有する組成物であればよい。
【0045】
キチンオリゴ糖及びキトサンオリゴ糖は、上述のように高い紫外線吸収効果を有することから、紫外線の影響を抑えて、酸化を抑制する作用をもたらす。また、人体に対して安全・安定であることから、特に飲食品用の酸化防止剤として好適であり、様々な飲食品に適用することができる。
【0046】
本発明の酸化防止剤において、キチンオリゴ糖及びキトサンオリゴ糖としては、上記紫外線防止剤で用いたものと同様のものが利用できる。
【0047】
また、キチンオリゴ糖及び/又はキトサンオリゴ糖の含有量は、1〜99質量%であることが好ましく、50〜99質量%であることがより好ましい。
【0048】
本発明の酸化防止剤は、更にビタミンCやその他各種ビタミン類、ポリフェノール類、カテキン類、アスタキサンチン、不飽和脂肪酸等の酸化防止剤と併用してもよい。
【0049】
そして、本発明の酸化防止剤を飲食品用の酸化防止剤として使用する場合において、対象となる食品としては特に限定されるものではないが、例えば、(1)揚物製品:例えば豆腐の油揚類、揚かまぼこ類、コロッケ類、トンカツ類、てんぷら類、調理冷凍食品類、ドーナツ類、揚あられ類、油菓類、ポテトチップおよびフレンチ・フライポテト類、フライビーンズ類、珍味フライ類及び即席麺類等、(2)乳製品:例えば牛乳、加工乳、煉乳、粉乳、バター、バタークリーム、ホイップクリーム、サンドクリーム、生クリーム、コーヒーホワイトナー、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等、(3)菓子:例えばクッキー、ビスケット、パン類、焼菓子類、カステラ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、ケーキミックス、チーズケーキ、キャラメル、トフィー、ファッジ、ヌガー、グミキャンディーなどのキャンディー類、ゼリー菓子類、チューイングガム類、その他の飴菓子類、チョコレート菓子、冷菓及び洋生菓子用チョコレートコーティング、チョコレートスプレット、ココアドリンク、その他のチョコレート類、アイスクリーム、ソフトクリームミックス等、(4)調味料:例えばドレッシング、マヨネーズ、たれ類、みそ、粉末みそ、醤油、粉末醤油、もろみ、魚醤、等、(5)飲料:例えばコーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶、ドリンクヨーグルト、果汁飲料、スポーツドリンク及び炭酸飲料、その他の嗜好飲料、酒類、洋酒類、ビール類、ワイン類等、(6)その他の食料品:例えばハム、ソーセージなどの畜肉加工品、魚肉ソーセージ、蒲鉾、竹輪などの水産煉製品、煮干し、丸干し、塩干し、レトルトカレー、レトルトハンバーグ、レトルトスープ、レトルトたれ及び具類、果実、野菜、水畜産物、ウニ、イカの塩辛、スルメ、魚のみりん干、貝の干物、鱈の干物、鮭などの燻製品、さきいかなどの各種珍味類、のり、小魚、貝類、するめ、山菜、茸、昆布その他の佃煮類、奈良漬、福神漬、千枚漬、沢庵漬、はりはり漬、つぼ漬、かうし漬、塩漬、たまり漬その他の漬物類等、が挙げられ、特に紫外線による酸化に対して不安定な油脂や色素を含む食品に添加することが効果的である。
【0050】
また、更にビタミンCやその他各種ビタミン類、ポリフェノール類、カテキン類、アスタキサンチン、不飽和脂肪酸等の酸化防止剤は自身が酸化に対して不安定な素材が多く、このような成分やこれら成分を含む食品素材にキチンオリゴ糖及び/又はキトサンオリゴ糖を添加することにより、これら成分・素材に対する酸化抑制効果が安定に期待できる。
【0051】
本発明の酸化防止剤を、上記食品素材や、加工食品に配合することにより、これらの品質・鮮度保持をすることができ、同時に、酸化防止剤自身を健康食品素材として摂取することにより、身体の酸化がもたらす、生活習慣病等の予防にも役立つ。
【実施例】
【0052】
(試験例1)
<キチンオリゴ糖のUV吸収スペクトルの測定>
キチンを塩酸分解し、中和脱塩後、活性炭を充填したカラムにより精製することにより、43質量%のキチン2糖及び56質量%のキチン3糖からなる組成の試料A、70質量%のキチン4糖及び30質量%のキチン5糖からなる組成の試料B、22質量%のキチン5糖、58質量%のキチン6糖及び20質量%のキチン7糖からなる組成の試料Cを調製した。
【0053】
こうして得られた3種類の試料A、B、Cを用いて、それぞれ水溶液を調製し、紫外線吸収スペクトルを測定した。なお、試料A、Bについては80mg/mlとなるように、また試料Cについては10mg/mlとなるように水に溶解させた。こうして得られた試料A、B、Cの各水溶液の紫外線吸収スペクトルを、図1(試料A)、図2(試料B)、図3(試料C)に示す。
【0054】
図1、2、3に示されるように、240〜320nmにおける紫外線吸収ピークは、試料Cが最も高く、試料Bがその次に高く、試料Aが最も低かった。この結果から、キチンオリゴ糖の重合度が4〜7において、より優れた紫外線吸収効果が得られることがわかる。
【0055】
(試験例2)
<キトサンオリゴ糖のUV吸収スペクトルの測定>
市販されているキトサンオリゴ糖(生化学工業株式会社)についてUV吸収スペクトルの測定を行った。測定は、キトサン2糖、キトサン3糖、キトサン4糖、キトサン5糖、キトサン6糖についてそれぞれ行い、各試料は18mg/mlとなるように水に溶解させた。こうして得られた各水溶液の紫外線吸収スペクトルを、図4(キトサン2糖)、図5(キトサン3糖)、図6(キトサン4糖)、図7(キトサン5糖)、図8(キトサン6糖)に示す。
【0056】
図4、5、6、7、8に示されるように、キトサンオリゴ糖の重合度が増すごとに、240〜320nmにおける紫外線の吸収ピークが高くなる結果となった。
【0057】
(比較例1)
<多糖類、ムコ多糖のUV吸収スペクトルの測定>
市販のキトサン、キチン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸についてUV吸収スペクトルの測定を行った。キトサンについては、キトサンと同量の塩酸を添加し、1mg/mlとなるように水に溶解させ、キチンについては脱アセチル化度45%の部分脱アセチル化水溶性キチンを使用し1mg/mlとなるように水に溶解させ、コンドロイチン硫酸は5mg/mlとなるように水に溶解させ、ヒアルロン酸は1mg/mlとなるように水に溶解させた。こうして得られた各水溶液の紫外線吸収スペクトルを、図9(キトサン)、図10(キチン)、図11(コンドロイチン硫酸)、図12(ヒアルロン酸)に示す。
【0058】
図9、10、11、12に示されるように、キトサン、キチン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸は、いずれも紫外線吸収波長が240〜320nmの範囲になく、UV−B(中波長:290〜320nm)範囲の紫外線吸収がみられなかった。
【0059】
(実施例1)
<化粧水>
下記表1、2に示した配合により化粧水を常法で調整した。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
(実施例2)
<乳液>
下記表3、4に示した配合により乳液を常法で調整した。
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
(実施例3)
<皮膚用クリーム>
下記表5、6に示した配合により皮膚用クリームを常法で調整した。
【0066】
【表5】

【0067】
【表6】

【0068】
(実施例4)
<身体洗浄料>
下記表7、8に示した配合により身体洗浄料を常法で調整した。
【0069】
【表7】

【0070】
【表8】

【0071】
(実施例5)
<シャンプー>
下記表9、10に示した配合によりシャンプーを常法で調整した。
【0072】
【表9】

【0073】
【表10】

【0074】
(実施例6)
<リンス>
下記表11、12に示した配合によりリンスを常法で調整した。
【0075】
【表11】

【0076】
【表12】

【0077】
(実施例7)
<ヘアクリーム>
下記表13、14に示した配合によりヘアクリームを常法で調整した。
【0078】
【表13】

【0079】
【表14】

【0080】
(実施例8)
<点眼剤>
下記表15、16に示した配合により点眼剤を常法で調整した。
【0081】
【表15】

【0082】
【表16】

【0083】
(試験例3)
<キチンオリゴ糖の油脂に対する抗酸化試験>
市販の粉末油脂にキチンオリゴ糖(キチンオリゴ糖(重合度5)22質量%、キチンオリゴ糖(重合度6)58質量%、キチンオリゴ糖(重合度7)20質量%)を10質量%混合した後、波長254nmのUVを照射し、粉末油脂を強制酸化させた。酸化の指標として、ESR装置「JES−FR30(日本電子株式会社製)」を用いて、経時的に脂質ラジカル(ROO・)のシグナル強度を測定し、脂質ラジカルの増加率(=I/I−1、I:各時間における脂質ラジカルのシグナル強度、I:UV照射前の脂質ラジカルのシグナル強度)を算出した。また、対照として、粉末油脂のみに対して、同様の試験を行った。結果を図13に示す。キチンオリゴ糖を添加した粉末油脂は、何も添加しない粉末油脂と比較して、紫外線による酸化が約60%抑制され、キチンオリゴ糖の酸化防止効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の紫外線吸収剤は、主にUV−B領域における紫外線吸収能を有し、水溶性の天然成分由来の物質を原料としているので、多種多様の皮膚外用剤、食品等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】43質量%のキチンオリゴ糖(重合度2)及び56質量%のキチンオリゴ糖(重合度3)の混合物からなるキチンオリゴ糖を水に80mg/ml溶解させた紫外線吸収スペクトルを示す図表である。
【図2】70質量%のキチンオリゴ糖(重合度4)及び30質量%のキチンオリゴ糖(重合度5)の混合物からなるキチンオリゴ糖を水に80mg/ml溶解させた紫外線吸収スペクトルを示す図表である。
【図3】22質量%のキチンオリゴ糖(重合度5)、58質量%のキチンオリゴ糖(重合度6)及び20質量%のキチンオリゴ糖(重合度7)の混合物からなるキチンオリゴ糖を水に10mg/ml溶解させた紫外線吸収スペクトルを示す図表である。
【図4】キトサンオリゴ糖(重合度2)の水溶液の紫外線吸収スペクトルを示す図表である。
【図5】キトサンオリゴ糖(重合度3)の水溶液の紫外線吸収スペクトルを示す図表である。
【図6】キトサンオリゴ糖(重合度4)の水溶液の紫外線吸収スペクトルを示す図表である。
【図7】キトサンオリゴ糖(重合度5)の水溶液の紫外線吸収スペクトルを示す図表である。
【図8】キトサンオリゴ糖(重合度6)の水溶液の紫外線吸収スペクトルを示す図表である。
【図9】キトサンの水溶液の紫外線吸収スペクトルを示す図表である。
【図10】キチンの水溶液の紫外線吸収スペクトルを示す図表である。
【図11】コンドロイチン硫酸の水溶液の紫外線吸収スペクトルを示す図表である。
【図12】ヒアルロン酸の水溶液の紫外線吸収スペクトルを示す図表である。
【図13】UV照射時間と粉末油脂中の脂質ラジカルの増加率との関係を示す図表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キチンオリゴ糖及び/又はキトサンオリゴ糖を有効成分とする紫外線吸収剤。
【請求項2】
前記キチンオリゴ糖及び/又はキトサンオリゴ糖の重合度の範囲が2〜10である請求項1記載の紫外線吸収剤。
【請求項3】
240〜320nmに最大吸収波長を有する請求項1又は2記載の紫外線吸収剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の紫外線吸収剤を含有する皮膚外用剤。
【請求項5】
キチンオリゴ糖及び/又はキトサンオリゴ糖を有効成分とする酸化防止剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−217304(P2007−217304A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37019(P2006−37019)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(390033145)焼津水産化学工業株式会社 (80)
【Fターム(参考)】