説明

紫外線照射装置

【課題】ランプ温度に影響を受ける紫外線ランプと冷却ユニットとの距離に制限を加えることで、高入力電力の場合での早期の失透や黒化等を抑制する。
【解決手段】紫外線透過性の石英ガラスで気密性を有する放電空間13を備えた発光管14内の軸方向に一対の放電用の電極15a,15bを対向して配置する。放電空間13内にアーク放電させた状態を維持するために十分な量の希ガス、水銀、ハロゲン、発光金属からなる封入物を封入することで紫外線ランプ100を構成し、点灯時に紫外光を発光させる。紫外線ランプ100は、内管21と外管22との間に紫外線ランプ100を冷却させる冷却液24を循環させ、紫外線を透過させる二重構造の冷却ユニット200の内管21内に収容する。紫外線ランプ100と冷却ユニット200の内管21との距離D[mm]と紫外線ランプ100の入力電力P[W/cm]は、D≦−0.2P+35の関係を満足するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紫外線ランプから照射される紫外線で光化学処理、光殺菌、光洗浄等に用いられる紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紫外線照射装置は、紫外線を照射させる紫外線照射用ランプの表面が高温となる。そのため破損を防止する冷却機構が必要となり、一般的には空冷による冷却方式が使用されている。空冷方式にはランプに直接気体を当て冷却する直接的手法とランプ外周方向に設置した透過容器を液体により冷却することで透過容器周囲の気体を冷却し、ランプを冷却する間接的手法がある。特に、被照射物の温度上昇の抑制またはランプ外周方向に被照射物である液体がある場合には後者の手法が用いられる。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−226806公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、ランプ入力電力を上昇させることで、被照射物に対する処理能力を向上させることができるものの、ランプ周囲の気体を冷却させることでランプを冷却する間接的手法では、冷却能力に限界があることから120W/cm以下の入力電力に制限される。一般にランプ表面温度が850℃以上で点灯し続けた場合、早期に失透、黒化等の不具合が生じる、という問題があった。
【0005】
この発明の目的は、ランプ温度に影響のある紫外線ランプと冷却ユニットとの距離に制限を加えることで、高入力電力による点灯でも長寿命化を図ることのできる紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、この発明の紫外線照射装置は、紫外線透過性の材料で気密性を有する放電空間を備えた発光管と、前記発光管の軸方向の該発光管に対向して配置された一対の放電用の電極と、前記放電空間内でアーク放電させた状態を維持するために十分な量の希ガス、水銀、ハロゲン、発光金属からなる封入物と、からなる紫外線ランプと、前記紫外線ランプを収容し、内管と外管との間に紫外線ランプを冷却させる冷却液を循環させるとともに、紫外線を透過させる構造の冷却ユニットと、を具備し、前記紫外線ランプと前記冷却ユニットの内管との距離D[mm]と前記紫外線ランプの入力電力P[W/cm]は、D≦−0.2P+35の関係を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、ランプ温度に影響のある紫外線ランプと冷却ユニットとの距離を制限したことにより、120W/cm以上の高入力電力による点灯でもランプの長寿命化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の紫外線照射装置に関する一実施形態について説明するためのシステム構造図である。
【図2】図1で用いる紫外線ランプについて説明するための構成図である。
【図3】図1のI−I’線断面図である。
【図4】紫外線ランプと冷却ユニットとの距離の関係について説明するための説明図である。
【図5】入力電力と紫外線ランプおよび冷却ユニット間距離との関係について説明するための説明図である。
【図6】この発明の紫外線照射装置に関する他の実施形態について説明するためのシステム構造図である。
【図7】図6で用いる紫外線ランプについて説明するための構成図である。
【図8】図6のII−II’線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1〜図3は、この発明の紫外線照射装置に関する一実施形態について説明するための、図1は基本的なシステム構造図、図2は図1に用いる紫外線ランプについて説明するための構成図、図3は図2のI−I’線断面図である。
【0011】
紫外線照射装置は、紫外線ランプ100と冷却ユニット200から構成される。紫外線ランプ100と冷却ユニット200は、紫外線ランプ100のソケット11a,11bに取り付けられたスペーサ12a,12bにより所定の間隔に位置決めされる。
【0012】
図2に示すように、紫外線ランプ100は、紫外線透過性を有する石英ガラス製で放電空間13を形成する発光管14の長手方向両端の内部には、例えばタングステン材の電極15a,15bが配置される。発光管14は、例えば外径φが27.5mm、肉厚mが1.5mm、発光長Lが100mm程度の一重管で構成される。
【0013】
電極15a,15bは、それぞれインナーリード16a,16bを介してモリブデン箔17a,17bの一端に溶接される。モリブデン箔17a,17bの他端には、図示しないアウターリードの一端を溶接する。モリブデン箔17a,17bの部分は発光管14のインナーリード16a,16bからアウターリードの一端までの発光管14を加熱して封止する。
【0014】
モリブデン箔17a,17bは、発光管14を形成する石英ガラスの熱膨張率に近い材料であれば何でもよいが、この条件に適したものとしてモリブデンを使用する。モリブデン箔17a,17bに一端がそれぞれ接続されたアウターリードには、例えばセラミック製のソケット18a,18bの内部で電気的に接続された給電用のリード線19a,19bを絶縁封止するとともに図示しない電源回路に接続される。
【0015】
発光管14内には、アーク放電を維持させるための希ガスである十分な量のアルゴンガスが1.3kPaで、水銀それに紫外光を発光させるための金属である鉄、スズ、インジウム、ビスマス、タリウム、マンガンのうちの少なくとも1種とハロゲンが封入されている。
【0016】
冷却ユニット200は、円筒状の石英ガラス等の紫外線透過性の透明な材料よりなり、内管21とその外側に設けられた外管22を備え、二重管構造となっている。紫外線ランプ100は、内管21に内包されている。
【0017】
図3に示すように、冷却ユニット200の内管21は、例えば内径d1を32mm、外径d2を36mmとし、外管22は、例えば内径d3を66mm、外径d4を70mmとする。
【0018】
冷却ユニット200は外周端部に設けられた接続管23a,23bを通して外部から水などの冷却液24が循環される。冷却液24は、図1に示すように、接続管23aから温度の低いものを入水し、接続管23bから紫外線ランプ100の冷却を行い、暖められたものを出水する。暖められた出水は、冷却され再び接続管23aから入力するようにしてある。
【0019】
外管22の外表面には、金属酸化物膜が被着して形成されている。この金属酸化物としては、TiO,CeO,ZnO,SnO,ZrOの少なくとも1種により構成される。金属酸化物膜は、紫外線ランプ100から放射される光のうち、300nm以下の波長成分を吸収するように成分調整がなされている。
【0020】
そして、ランプ長が100cmのときにランプ電力を16kW(160W/cm)が供給され、紫外線ランプ100から紫外線を放射されると、外管22の外面に被着した金属酸化物膜が300nm以下の波長成分を吸収する。従って、樹脂の硬化に有効な300〜430nmの波長域の紫外線が冷却ユニット200を透過させ、紫外線硬化樹脂などの被照射物に照射させる。
【0021】
このとき、冷却ユニット200は冷却液24を循環させ、紫外線ランプ100の発光管14の温度が850℃を超えないように制御している。発光管14の表面温度は、850℃以上になると封入ガスと発光管14の材料である石英ガラスとの反応により黒化現象が生じることが知られている。
【0022】
ここで、上記した構成の紫外線ランプ100の発光管14と上記した構成の冷却ユニット200の内管21との距離をD[mm]とランプ入力電力P[W/cm]の関係について、図4、図5を参照しながら説明する。
【0023】
図4では、80,120,140,160,170W/cmの5種類の入力電力が紫外線ランプ100に供給された場合の850℃以下における良好な発光管14と冷却ユニット200の内管21との距離Dを示している。図4では、紫外線ランプ100と冷却ユニット200との接触の弊害を考え、1mmを最小値とした例をデータとしている。
【0024】
80W/cmでは、図4に示した15mmまでのいずれにおいても発光管14の表面温度が850℃を超えることはなく、ランプ寿命の点では良好である。しかし、この場合は入力電力が小さいことから所望の照度が得られないという問題がある。
【0025】
また、120W/cmでは約11mm以下の距離に、140W/cmでは約6.5mm以下の距離に、160W/cmでは約3mm以下の距離に、170W/cmでは約1.3mm以下の距離にそれぞれ設定した場合には、850℃以下で良好な照度を得つつ、封入物と発光管14との反応による黒化現象を防止できることからランプの長寿化を図ることができる。
【0026】
図5では、このときの入力電力[W/cm]と良好な発光管14と内管21との距離をD[mm]のプロットを取り、直線で結んだ特性を示している。この図5からもわかるように、ランプ表面温度が850℃となる入力に対する距離Dの関係から、D=−0.2P+35となる近似式が求めらる。このことから、D≦−0.2P+35の条件の場合、ランプ温度を850℃以下に制御することが可能となった。ただし、入力電力P(W/cm)は、120≦P≦170の条件下とする。
【0027】
この実施形態では、入力電力が120W/cm〜170W/cmの間において、発光管14と内管21との距離D[mm]が、D≦−0.2P+35の近似式を満足する条件であれば、所望の照度が得られつつ、黒化現象を抑えることが可能となり長寿命化を図ることができる。
【0028】
図6〜図8は、この発明の紫外線照射装置に関する他の実施形態について説明するための、図6は基本的なシステム構造図、図7は図6に用いる紫外線ランプについて説明するための構成図、図8は図7のII−II’線断面図である。なお、上記した実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付してここでの説明は省略する。
【0029】
この実施形態は、紫外線ランプ100の発光管14の長手方向の中間部の外表面に、先端が尖塔あるいは丸みを帯びた形状とした突起61を、一体的に形成したものである。
【0030】
突起61は、希ガス等の封入物を発光管14内に封入させるためのチップとも言われる排気管痕とは区別され、設けた突起61の発光管14の外周面からの高さは、排気管痕より高さとなっている。なお、排気管痕は、発光管14の封止する部分を利用することにより、必ずしも必要なものではなく、なくすことも可能である。
【0031】
突起61の高さHは、入力電力が120W/cm〜170W/cmの間において、発光管14と内管21との距離D[mm]が、D≦−0.2P+35の近似式を満足する値よりも低い(H<D)関係とする。この条件下において、突起61の高さをどの値にするかは、入力電力値の関係や同じ入力電力でも得たい照度との兼ね合いで適宜決定されるものである。
【0032】
この実施形態では、発光管長手方向の中間付近に、紫外線ランプの発光管と冷却ユニットの内管との距離Dより低い突起を一体形成させた。これにより、距離D以内として長寿命を確保することができる。これに加え、長尺化した発光管の長手方向の中間部分が自重や熱ストレス等が原因の経時変化により曲がって冷却ユニットに直接触れ、接触部分にランプ内の水銀が集まり蒸気圧が低下し、ランプ電圧が低下してしまうことの防止にも寄与する。
【0033】
なお、この実施形態の突起61は、発光管14の外周面に少なくとも1個で構わないが、図8に示すように周面方向に複数箇所形成しても構わない。この場合、図8に示すように必ずしも同一周回上ではなく、同一周回からズレた位置であっても構わない。さらに、突起61が複数箇所に形成される場合は、軸方向に同一線上になくても良い。
【符号の説明】
【0034】
100 紫外線ランプ
13 放電空間
14 発光管
15a,15b 電極
200 冷却ユニット
21 内管
22 外管
24 冷却液
61 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線透過性の材料で気密性を有する放電空間を備えた発光管と、
前記発光管の軸方向の該発光管に対向して配置された一対の放電用の電極と、
前記放電空間内でアーク放電させた状態を維持するために十分な量の希ガス、水銀、ハロゲン、発光金属からなる封入物と、からなる紫外線ランプと、
前記紫外線ランプを収容し、内管と外管との間に紫外線ランプを冷却させる冷却液を循環させるとともに、紫外線を透過させる構造の冷却ユニットと、を具備し、
前記紫外線ランプと前記冷却ユニットの内管との距離D[mm]と前記紫外線ランプの入力電力P[W/cm]は、D≦−0.2P+35の関係を満足することを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記ランプ入力電力P[W/cm]は、120W/cm〜170W/cmの範囲内であることを特徴とする請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記発光管の長手方向の中間部外表面に、前記距離Dよりも高さの低い突起を一体形成したことを特徴とする請求項1または2記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記突起は、前記発光管の長手方向の外表面に少なくとも1箇所設けることたことを特徴とする請求項3記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記突起は、前記発光管側は太く、先端は細くしたことを特徴とする請求項3または4記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記突起の先端は、尖塔あるいは丸み形状としたことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の紫外線照射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−257877(P2010−257877A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109280(P2009−109280)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】