説明

紫外線遮蔽性フィルム及びそれを用いた有機電子デバイス

【課題】紫外線カット性に優れ、かつ、耐傷性(以下、ハードコート性ともいう)の優れた紫外線遮蔽性フィルムを提供することにあり、さらには、極めて高いガスバリア性能、紫外線カット性に優れ、かつ、耐傷性(以下、ハードコート性ともいう)の優れたバリア性フィルムを提供すること、およびそれらフィルムを用いた有機光電変換素子や有機EL素子のような有機電子デバイスを提供することにある。
【解決手段】樹脂基板の少なくとも片面に有機化合物系の紫外線吸収剤と樹脂バインダーとを含む耐候層1を有し、該耐候層1の上に金属酸化物微粒子と樹脂バインダーとを含む耐候層2を有することを特徴とする紫外線遮蔽性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電子デバイス等のパッケージ、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)、液晶等のプラスチック基板といったディスプレイ材料、または有機光電変換素子(有機太陽電池)等に用いる、耐候性を有し紫外線遮蔽機能を有するフィルム、さらには、ガスバリア性をも持ち合わせたガスバリアフィルム、及びそれらの製造方法に関し、また、それらフィルムを有する有機光電変換素子、有機EL素子等の有機電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物の薄膜を形成したガスバリアフィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。
【0003】
また、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス(EL)基板等において使用されている。
【0004】
また、包装用途以外にも液晶表示素子、光電変換素子(太陽電池)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)基板等で使用されている。
【0005】
この様な分野での包装材料としてアルミ箔が広く用いられているが、使用後の廃棄処理が問題となっているほか、基本的には不透明であり、外から内容物を確認することができないという課題を抱えており、さらに、太陽電池用材料では透明性が求められており適用することができない。
【0006】
特に、液晶表示素子、有機EL素子、光電変換素子などへの応用が進んでいる透明基板には、近年、軽量化、大型化という要求に加え、ロール・トゥ・ロールでの生産が可能であること、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わり、重く割れ易すく大面積化が困難なガラス基板に代わって、透明プラスチック等のフィルム基板が採用され始めている。
【0007】
しかしながら、透明プラスチック等のフィルム基板はガラスに対しガスバリア性が劣るという問題がある。例えば、有機光電変換素子用の材料として用いた場合、ガスバリア性が劣る基板を用いると、水蒸気や空気が浸透して有機膜が劣化し、光電変換効率或いは耐久性等を損なう要因となる。
【0008】
また、電子デバイス用基板として高分子基板を用いた場合には、酸素や水分子が高分子基板を透過して電子デバイス内に浸透、拡散し、デバイスを劣化させてしまうことや、電子デバイス内で求められる真空度を維持出来ないといった問題を引き起こす。
【0009】
このような問題を解決するために、フィルム基板上に金属酸化物薄膜を形成してガスバリアフィルム基板とすることが知られている。最近では有機太陽電池、有機EL素子等の水分に弱い有機電子デバイスに用いるガスバリアフィルムとしては、水蒸気透過率が1×10−3g/(m・24h)を下回るようなガスバリア性能が求められている。
【0010】
特に太陽電池用の材料として用いた場合は、屋外で使用されるため、太陽光の紫外線による光劣化を防止するための紫外線カット機能、また風雨に曝され、特にゴミ等によるフィルムの傷を防止するための耐傷性を兼ね備えたものが求められている。
【0011】
このような問題を解決するために、1層目に金属酸化物粒子を含む耐光層、2層目に有機系紫外線吸収剤を含む耐候層を設けてなる耐候性樹脂フィルムが提案されているが(例えば、特許文献1)、ガスバリア層の記載はなく、金属酸化物粒子は限定的な量しか使用しておらず、紫外線カット効果は充分でない。また、水蒸気を透過させてしまい、フィルム基板を通過した水蒸気は、光電変換素子の劣化をも引き起こし、問題となる。さらに屋外で風雨に曝されるようなとき耐傷性にも問題がある。
【0012】
また、透明プラスチック基板上に1層目で無機蒸着膜を作成し、その上にバリア層を形成し、ガスバリア性を向上させているものがあるが(例えば、特許文献2)、バリア層の反対側は、金属酸化物粒子のみによる紫外線カット層であり、ガスバリア層の内部の光電変換素子(太陽電池)を守るための380nm付近の紫外線を遮蔽出来ていない。また、水蒸気透過率が有機光電変換素子用や有機EL素子等に、ガスバリアフィルムとして求められる1×10−3g/m・dayを下回るようなガスバリア性能が得られていない。
【0013】
また、同様に透明プラスチック基板上に、1層目にバリア層、その上に紫外線硬化ポリマーの層を形成し、ガスバリア性を向上させているものがある(例えば、特許文献3)。水蒸気透過率は、1×10−3g/m・dayを下回るようなガスバリア性能がえられているが、バリア層の反対側は、有機系紫外線吸収剤のみであり、長期に紫外線に曝されると、有機系紫外線吸収剤が分解し、紫外線カット機能がなくなる。さらに屋外で風雨に曝されるような場合、耐傷性にも問題がある。
【0014】
このように充分な紫外線カット機能と耐傷性のある機能層を有する耐候性フィルムがなく、さらには、紫外線カット機能とガスバリア性を同時に兼ね備え、かつ耐傷性のある機能層を有するガスバリアフィルムあるいは耐候性フィルムはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−326971号公報
【特許文献2】特開2004−338201号公報
【特許文献3】特開2006−297737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、紫外線カット性に優れ、かつ、耐傷性(以下、ハードコート性ともいう)の優れた紫外線遮蔽性フィルムを提供することにあり、さらには、極めて高いガスバリア性能、紫外線カット性に優れ、かつ、耐傷性(以下、ハードコート性ともいう)の優れたバリア性フィルムを提供すること、およびそれらフィルムを用いた有機光電変換素子や有機EL素子のような有機電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の上記目的は以下の手段により達成される。
【0018】
1.樹脂基板の少なくとも片面に有機化合物系の紫外線吸収剤と樹脂バインダーとを含む耐候層1を有し、該耐候層1の上に金属酸化物微粒子と樹脂バインダーとを含む耐候層2を有することを特徴とする紫外線遮蔽性フィルム。
【0019】
2.前記樹脂バインダーが活性光線硬化性樹脂を含んでいることを特徴とする前記1に記載の紫外線遮蔽性フィルム。
【0020】
3.前記耐候層は光安定剤(HALS剤)を、該有機化合物系の紫外線吸収剤又は該金属酸化物微粒子と樹脂バインダーの合計の質量を基準として、1質量%以上20質量%以下含有することを特徴とする前記1または2に記載の紫外線遮蔽性フィルム。
【0021】
4.樹脂基板の少なくとも片面に有機化合物系の紫外線吸収剤と樹脂バインダーとを含む耐候層1を有し、該耐候層1の上に金属酸化物微粒子と樹脂バインダーとを含む耐候層2を有し、前記樹脂基板の前記耐候層1及び2を設けた面と反対の面にガスバリア層を設けたことを特徴とする紫外線遮蔽性フィルム。
【0022】
5.前記樹脂バインダーが活性光線硬化性樹脂を含んでいることを特徴とする前記4に記載の紫外線遮蔽性フィルム。
【0023】
6.前記耐候層は光安定剤(HALS剤)を、該有機化合物系の紫外線吸収剤又は該金属酸化物微粒子と樹脂バインダーの合計の質量を基準として、1質量%以上20質量%以下含有することを特徴とする前記4または5に記載の紫外線遮蔽性フィルム。
【0024】
7.前記ガスバリア層が、ポリシラザン骨格を有する珪素化合物の溶液を塗布し、波長200nm以下の真空紫外光を照射して得られたことを特徴とする前記4〜6のいずれか1項に記載の紫外線遮蔽性フィルム。
【0025】
8.前記4〜7のいずれか1項に記載の紫外線遮蔽性フィルムを用いたことを特徴とする有機電子デバイス。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、紫外線カット性と耐傷性に優れる紫外線遮蔽性フィルムおよび極めて高いガスバリア性能、紫外線カット性と耐傷性に優れる紫外線遮蔽性ガスバリアフィルム、およびそれを用いた有機光電変換素子や有機EL素子のような有機電子デバイスを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】有機電子デバイスの基本的構成の例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明とその構成要素、および本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0029】
本発明は、樹脂基板の少なくとも片面に紫外線カット層を2層備えた構成を有する耐傷性(ハードコート性)を備えた紫外線遮蔽性フィルム、また、樹脂基板の少なくとも片面に紫外線カット層を2層備え、反対側の面にガスバリア層を備えた、耐傷性(ハードコート性)を兼ね備えたフィルム構成を有する紫外線遮蔽性ガスバリアフィルムに関する。
【0030】
通常、酸化亜鉛や酸化チタンのような、金属酸化物系の紫外線吸収剤は、紫外線カット効率は有機系に比較して低いが(350nm以下の紫外線を遮蔽するものが多い)、長期に紫外線に曝されても劣化が少ない。
【0031】
それに対して、有機化合物系の紫外線吸収剤は、紫外線カット効率はよいが(400nm以下の紫外線を遮蔽する)、長期に紫外線に曝されると、自分自身が分解し、紫外線カットの機能がなくなってしまう。
【0032】
そのため1層目に有機化合物系の紫外線吸収剤の層を作成し、2層目(上層)に金属酸化物系の紫外線吸収剤の層を作成することで(最初に太陽光に当たる層を金属酸化物系の紫外線吸収剤にする)、1層目(下層)の有機化合物系の紫外線吸収剤の分解を減少させ、長期の紫外線カットを可能にした。また、耐候性層1、2の基板とは反対側のバリア層を硬化する際に使用する200nm以下の真空紫外光が透明プラスチック基材を通過して、反対側の耐候層1の有機化合物系の紫外線吸収剤まで届くことになる。そのとき、有機化合物系の紫外線吸収剤が該真空紫外光を吸収し、光エネルギーを熱エネルギーに変換することで、紫外線硬化に加え熱硬化作用を起こす。そのため透明プラスチック基材と有機化合物系の紫外線吸収剤を含む耐候層1層目の接着性が向上した。また驚くべきことに、耐候層の1層目、2層目がより硬化することで、耐候層1、2により強力な耐傷性(ハードコート性)を付与することができた。
【0033】
ガスバリア層の反対側に紫外線遮蔽性の耐候層を設けることで、バリア層への紫外線の透過を減少させバリア層の寿命を長くすることができる。
【0034】
〈紫外線遮蔽性(以下、紫外線カットともいう)とは〉
紫外線とは波長が10〜400nm、すなわち可視光線より短く軟X線より長い不可視光線の電磁波である。波長による分類法として、波長380〜200nmの近紫外線(near UV)、波長200〜10nmの遠紫外線もしくは真空紫外線(far UV(FUV)もしくはvacuum UV(VUV))、波長1〜10nmの極紫外線もしくは極端紫外線(extreme UV,EUVorXUV)に分けられる。また、人間の健康や環境への影響の観点から、UVA(400〜315nm)、UVB(315〜280nm)、UVC(280nm未満)に分けられることもある。本発明でいう紫外線遮蔽とは、該UVA、UVB、UVCの波長の光を透過させないことである。
【0035】
〈紫外線遮蔽性ガスバリアフィルム〉
本発明の紫外線遮蔽性ガスバリアフィルムは、樹脂基板の少なくとも片面にガスバリア層と、前記ガスバリア層を設けた面とは反対側の面に有機化合物系の紫外線吸収剤と樹脂バインダーとを含む耐候層1を有し、該耐候層1の上に金属酸化物微粒子と樹脂バインダーとを含む耐候層2を有する構成により得られる。
【0036】
本発明の紫外線遮蔽性ガスバリアフィルムのガスバリア性能としては、JIS K 7129B法に従って測定した水蒸気透過率(水蒸気透過度:25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、10−3g/(m・24h)以下であることが好ましく、更に好ましくは10−4g/(m・24h)以下であり、特に好ましくは10−5g/(m・24h)以下である。
【0037】
(紫外線遮蔽性ガスバリアフィルムの層構成)
本発明において、樹脂基板上の耐候層と反対の面に形成されるガスバリア層としては1層でもよく2層、3層を積層してもよい。またガスバリア層の間に応力緩和層を挟んでもよい。
【0038】
単層の場合でも積層した場合でも1つのガスバリア層の膜厚は、5nm〜1000nmが好ましく、更に好ましくは10nm〜500nm、特には30nm〜500nmである。30nm以上とすると膜厚均一性が良好となり、ガスバリア性能に優れる。1000nm以下にすると、屈曲によるクラックが急激に入ることが極めて少なくなり、欠陥の生成を防止可能とする。
【0039】
〈耐候層〉
屋外で使用される太陽電池等有機薄膜電子デバイスが、太陽光中の紫外線、また風雨に曝されることによる劣化を防止する(耐傷性)ための機能性層である。耐候層に求められる機能としては2つあり、太陽光中の紫外線をカットする紫外線カット機能、風雨、特に砂やゴミによるフィルム最表面のキズを防止するための耐傷性機能に分けられる。太陽光による紫外線、また、風雨に曝される実暴露試験を行った場合、耐久年数10年〜20年が求められる太陽電池の場合、実暴露で劣化性を評価することは不可能である。そこで実暴露の加速評価試験のため、紫外線カット評価としては、例えば、岩崎電気株式会社製アイスーパーUVテスターを用いて、紫外線照射試験を行い、劣化を評価する。
【0040】
本発明の耐候層に求められる紫外線カット機能としては、上記アイスーパーUVテスターを用いた紫外線照射試験(メタルハライド強制劣化テスト)において基材樹脂を劣化させ難い性能をもった層のことである。
【0041】
また耐傷性評価としては、一般にスチールウールテスト(以下SWテストともいう)が用いられる。SWテストは、ヘイドン社製の荷重変動型摩擦摩耗試験システムHHS2000を用いて荷重が500gになるように設定しスピード500mm/s、距離50mm、10往復を行い、傷がつかない層である。
【0042】
このように紫外線カット性と耐傷性を兼ね備えた層を本発明の耐候層とする。
【0043】
耐候層1は、有機化合物系の紫外線吸収剤とそれを固定する樹脂バインダーを有し、さらには光安定化剤(以下HALS剤ともいう)を含有してもよい。
【0044】
有機化合物系の紫外線吸収剤の含有率が多い方が紫外線遮蔽性は向上する。本発明では耐候層1に有機化合物系の紫外線吸収剤が、該有機化合物系の紫外線吸収剤と樹脂バインダーとの(合計の)質量を基準として1質量%以上30質量%以下含まれる。好ましくは、2質量%以上20質量%以下である。30質量%より多く含ませるとブリードアウトをおこし、1%以下だと紫外線遮蔽性が劣る。
【0045】
耐候層2は、金属酸化物微粒子とそれを固定する樹脂バインダーを有し、さらには光安定化剤(以下HALS剤ともいう)を含有してもよい。金属酸化物微粒子の含有率が多い方が、紫外線遮蔽性が向上する。本発明では耐候層2に、金属酸化物微粒子が該金属酸化物微粒子と樹脂バインダーとの(合計の)質量を基準として30質量%以上80質量%以下含まれる。80質量%より多く含ませると白濁し好ましくない。
【0046】
(耐候層の製造方法)
耐候層の形成方法は、有機化合物系の紫外線吸収剤又は金属酸化物微粒子を樹脂バインダー、例えば、活性光線硬化性樹脂に分散させた塗布液を作成、また樹脂バインダーが溶液でない場合、有機化合物系の紫外線吸収剤を溶媒に溶解させるか又は金属酸化物微粒子を溶媒に分散させた液に樹脂バインダーを溶解させ塗布液を作成し、それら塗布液を、樹脂基材に、塗布した後、活性光線硬化性樹脂に活性光線を照射し膜が形成される。塗布する方法には特に制限はなく、例えばバーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、スライド塗布法、ホッパー塗布法、リバースロール塗布法、グラビア塗布法、エクストリュージョン塗布法等の公知の方法を用いることができる。これらのうちより好ましくはスライド塗布法、エクストリュージョン塗布法である。
【0047】
各耐候層は、単層でもまた積層し形成されても良く、1つの耐候層の膜厚は、目的に応じ適量を選ぶことが好ましいが、乾燥後の膜厚で0.1μm以上100μm以下が好ましく、さらに好ましくは、0.5μm以上50μm以下が好ましい。
【0048】
なお、上記溶剤の含有量は塗布工程後の乾燥工程等における温度条件等の条件変化によって調整できる。
【0049】
前記耐候層は、熱硬化方法により樹脂を硬化させてもよく、活性光線による樹脂の硬化でも良い、しかしながら活性光線を遮断すれば不要な硬化を起こさないことから、特に活性光線が好ましく、活性光線として紫外線または電子線により硬化され、固定化されることが好ましい。前記、紫外線カット層(耐候層)塗布液に、必要に応じて、光重合開始剤、熱重合開始剤を添加し、樹脂基板上に塗布した後、紫外線または電子線を照射して樹脂基材へ固定化させればよい。
【0050】
ここで用いられる光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等の光ラジカル開始剤等が挙げられる。一方、樹脂基材へ熱硬化方法で固定化する場合は、必要に応じて前記、耐候層塗布液に熱ラジカル発生剤等の熱重合開始剤を添加すればよい。ここで用いられる熱重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1′−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物等が挙げられる。
【0051】
電子線を照射して耐候層を硬化させる場合、加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
【0052】
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
【0053】
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy、好ましくは10〜100kGy、さらには30〜70kGyの範囲で選定される。
【0054】
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
【0055】
紫外線を照射して耐候層を硬化させる場合、紫外線の波長は特に限定されるところではないが、紫外光の波長は100nm〜450nmが好ましく、100nm〜300nm程度の紫外光を照射することがより好ましい。
【0056】
光源は、低圧水銀灯、重水素ランプ、Xeエキシマランプ、メタルハライドランプ、エキシマレーザーなどを用いることができる。ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては100mW/cm〜100kW/cm、照射エネルギーとしては10mJ/cm〜5000mJ/cmが好ましく、100mJ/cm〜2000mJ/cmがより好ましい。また、紫外線照射の際の照度は1mW/cm〜10W/cmが好ましい。
【0057】
紫外線照射の中でもよりフォトンエネルギーが大きい200nm以下の波長成分を有する真空紫外線照射によって処理することがさらに好ましい。基材の劣化を最小限にとどめることができるからである。
【0058】
(有機化合物系の紫外線吸収剤)
本発明に用いる耐候層1は、200〜400nmの領域で光を吸収する有機化合物系の紫外線吸収剤を含有させることで金属酸化物微粒子だけの耐候層2のみより紫外線による劣化をさらに防止することができる。またこの有機化合物系の紫外線吸収剤の可視光領域の透過率は高いことが好ましい。
【0059】
本発明の耐候層1に好ましく含有させることのできる有機化合物系の紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系等が挙げられる。ベンゾトリアゾール系としては、例えば2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]]、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール等を挙げることができる。トリアジン系としては、例えば2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等を挙げることができる。
【0060】
市販品としては、チバ・ジャパン社製のTINUVINシリーズ、旭電化工業社製のアデカスタブシリーズなどの中から選ぶことができる。
【0061】
耐候層1中における有機化合物系の紫外線吸収剤の含有量は、有機化合物系の紫外線吸収剤と樹脂バインダーとの質量を基準として1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0062】
(金属酸化物微粒子)
本発明で用いる耐候層2には金属酸化物微粒子を含有する。金属酸化物微粒子とは、数平均一次粒子径が1〜100nmの範囲にあり紫外線防御効果も有するものを指し、例えば微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化鉄が挙げられる。これらの金属酸化物微粒子の1種以上、好ましくは2種以上を組み合わせてもよい。また、金属酸化物微粒子の形状としては、球状、針状、棒状、紡錘状、不定形状、板状など特に限定されず、さらに結晶形についてもアモルファス、ルチル型、アナターゼ型など特に限定されない。
【0063】
上記金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(日本電子製)により10000倍の拡大写真を撮影し、ランダムに300個の粒子をスキャナーにより取り込んだ写真画像(凝集粒子は除いた)を自動画像処理解析装置LUZEX AP((株)ニレコ)ソフトウエアバージョン Ver.1.32を使用して数平均一次粒径を算出した。
【0064】
さらに、これらの金属酸化物微粒子は、従来公知の表面処理、例えばフッ素化合物処理、シリコーン処理、シリコーン樹脂処理、ペンダント処理、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、油剤処理、N−アシル化リジン処理、ポリアクリル酸処理、金属石鹸処理、アミノ酸処理、無機化合物処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理などによって事前に表面処理されていることが好ましく、特にシリコーン、シラン、フッ素化合物、アミノ酸系化合物、金属石鹸から選ばれる一種以上の表面処理剤により撥水化処理されていることが好ましい。
【0065】
シリコーン処理の例としては、メチルヒドロゲンポリシロキサンの被覆・加熱処理が挙げられ、シランとしてはアルキルシラン処理が挙げられ、フッ素化合物としてはペルフルオロアルキルリン酸エステル、ペルフルオロポリエーテル、ペルフルオロアルキルシリコーン、ペルフルオロアルキル・ポリエーテル共変性シリコーン、ペルフルオロアルキルシランなどが挙げられ、アミノ酸系化合物としては、N−ラウロイル−L−リジンなどが挙げられ、さらに金属石鹸としてはステアリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0066】
金属酸化物微粒子の市販品としては、例えば、微粒子酸化亜鉛として、“FINEX−25”、“FINEX−50”、“FINEX−75”{以上、堺化学工業(株)};“MZ500”シリーズ、“MZ700”シリーズ{以上、テイカ(株)};“ZnO−350”、“スミファイン”シリーズ{以上、住友大阪セメント(株)};“TYN”シリーズ{以上、東洋インキ(株)}等が挙げられる。微粒子酸化チタンとしては、“TTO−55、51、S、M、D”シリーズ{以上、石原産業(株)};“JR”シリーズ、“JA”シリーズ{以上、テイカ(株)};“TYT”シリーズ{以上、東洋インキ(株)}等が挙げられる。また、微粒子酸化セリウムとしては、(株)ニッキ又はセイミケミカル(株)から販売されている高純度酸化セリウムが含まれる。このうち特に酸化チタン、酸化亜鉛であることが好ましい。
【0067】
耐候層2に金属酸化物微粒子が、該金属酸化物微粒子と樹脂バインダーとの(合計の)質量を基準として30質量%以上80質量%以下が好ましい。
【0068】
(光安定化剤)
耐候層中に光安定化剤を使用することもできる。HALS剤とは、紫外線や熱により劣化し生成したラジカルを捕捉することで周りの樹脂の劣化を防止するものである。HALS剤としては、ヒンダードアミン系等が使用できる。ヒンダードアミン系HALS剤としては、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミン・N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物等を挙げることができる。金属不活性剤としては、例えば2,3−ビス[[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド等を挙げることができる。
【0069】
市販品としては、チバ・ジャパン社製のTINUVINシリーズ、旭電化工業社製のアデカスタブシリーズなどの中から選ぶことができる。
【0070】
耐候層中における光安定化剤(HALS剤)の含有量は、有機化合物系の紫外線吸収剤又は金属酸化物微粒子と樹脂バインダーの質量を基準として1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0071】
(樹脂バインダー)
本発明の樹脂バインダーは、紫外線や電子線等の活性光線の照射を受けて硬化する活性光線硬化性樹脂が好ましい。当該活性光線硬化性樹脂としては例えば下記に列記したような種類の樹脂を好ましく使用することができる。
【0072】
(1.1)シリコーン樹脂
Si−O−Siを主鎖としたシロキサン結合を有するシリコーン樹脂を使用することができる。当該シリコーン樹脂として、所定量のポリオルガノシロキサン樹脂よりなるシリコーン系樹脂が使用可能である(例えば特開平6−9937号公報参照)。
【0073】
ポリオルガノシロキサン樹脂は、通常、トルエン、キシレン、石油系溶剤のような炭化水素系溶剤、またはこれらと極性溶剤との混合物に溶解して用いられる。また、相互に溶解しあう範囲で、組成の異なるものを配合して用いても良い。
【0074】
ポリオルガノシロキサン樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、オルガノハロゲノシランの一種または二種以上の混合物を加水分解ないしアルコリシスすることによって得ることができ、ポリオルガノシロキサン樹脂は、一般にシラノール基またはアルコキシ基等の加水分解性基を含有し、これらの基をシラノール基に換算して1〜10質量%含有する。
【0075】
これらの反応は、オルガノハロゲノシランを溶融しうる溶媒の存在下に行うのが一般的である。また、分子鎖末端に水酸基、アルコキシ基またはハロゲン原子を有する直鎖状のポリオルガノシロキサンを、オルガノトリクロロシランと共加水分解して、ブロック共重合体を合成する方法によっても得ることができる。このようにして得られるポリオルガノシロキサン樹脂は一般に残存するHClを含むが、本実施形態の組成物においては、保存安定性が良好なことから、10ppm以下、好ましくは1ppm以下のものを使用するのが良い。
【0076】
(1.2)エポキシ樹脂
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3′−4′−シクロヘキシルカルボキシレート等の脂環式エポキシ樹脂(国際公開第2004/031257号パンフレット参照)を使用することができ、その他、スピロ環を含有したエポキシ樹脂や鎖状脂肪族エポキシ樹脂等も使用することができる。
【0077】
(1.3)アリルエステル化合物を含有する樹脂
芳香環を含まない臭素含有(メタ)アリルエステル(特開2003−66201号公報参照)、アリル(メタ)アクリレート(特開平5−286896号公報参照)、アリルエステル樹脂(特開平5−286896号公報、特開2003−66201号公報参照)、アクリル酸エステルとエポキシ基含有不飽和化合物の共重合化合物(特開2003−128725号公報参照)、アクリレート化合物(特開2003−147072号公報参照)、アクリルエステル化合物(特開2005−2064号公報参照)等を好ましく用いることができる。
【0078】
(1.4)アクリレート系樹脂
本発明において用いられるアクリレート系樹脂としては、例えば不飽和二重結合が一つの樹脂として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なものを挙げることができる。
【0079】
また、不飽和二重結合を2個以上持つ樹脂として、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、イソボニルアクリレート等を挙げることができる。
【0080】
紫外線硬化樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(以上、株式会社ADEKA製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上、広栄化学株式会社製);セイカビームPHC2210(S)、PHCX−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上、大日精化工業株式会社製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上、ダイセル・ユーシービー株式会社製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上、大日本インキ化学工業株式会社製);フォルシード461C、オーレックスNo.340クリヤ(以上、中国塗料株式会社製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(以上、三洋化成工業株式会社製);SP−1509、SP−1507(以上、昭和高分子株式会社製);RCC−15C(以上、グレース・ジャパン株式会社製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成株式会社製);NKハードB−420、B−500(以上、新中村化学工業株式会社製)、UV1700B、UV7600B(以上、日本合成化学工業株式会社製)等を適宜選択して利用できる。
【0081】
また、エポキシ樹脂の硬化剤としては、特に限定されるものではないが、酸無水物硬化剤やフェノール硬化剤等を例示することができる。
【0082】
酸無水物硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、あるいは3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸と4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸等を挙げることができる。
【0083】
また、重合開始剤は、アクリル系モノマーの重合であり、ラジカルを発生する開始剤であることが好ましく、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤を用いることができる。
【0084】
油溶性の過酸化物系あるいはアゾ系開始剤が好ましく、一例を挙げると、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メメチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メチキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4′−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート等がある。
【0085】
特に、ターシャリイソブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物類、過酸化水素等がこのましい。
【0086】
これら重合開始剤は、重合性単量体に対して、0.01〜20質量%、特に、0.1〜10質量%使用されるのが好ましい。
【0087】
また、必要に応じて硬化促進剤が含有される。硬化促進剤としては、硬化性が良好で、着色がないものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製2E4MZ)等のイミダゾール類、3級アミン、4級アンモニウム塩、ジアザビシクロウンデセン等の双環式アミジン類とその誘導体、ホスフィン、ホスホニウム塩等を用いることができ、これらを1種、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0088】
なお、本発明の樹脂バインダー中、本発明の効果が損なわれない範囲で、活性光線硬化性樹脂以外の他の樹脂バインダーが含まれても良い。
【0089】
(有機化合物系の紫外線吸収剤又は金属酸化物微粒子と樹脂バインダーの混合方法)
本発明で用いられる有機化合物系の紫外線吸収剤又は金属酸化物微粒子は、樹脂バインダーに公知の技術で混合される。通常は、樹脂バインダーを溶液とし、この溶液に攪拌機を用いて攪拌しながら、有機化合物系の紫外線吸収剤又は金属酸化物微粒子は混合される。攪拌時に添加されてもよい分散剤、その他の添加剤は、必要に応じて、有機化合物系の紫外線吸収剤又は金属酸化物微粒子の投入の前後または同時に添加されて攪拌される。樹脂バインダーが、粘度が高い場合や固体状の場合などは、適宜、溶媒を添加してもよい。また分散が容易でない場合は、有機化合物系の紫外線吸収剤又は金属酸化物微粒子と樹脂バインダーと溶媒を加え、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどの高剪断力混合機を用いて均一に混合する。
【0090】
溶媒としては特に限定されるものではなく、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類などを例示することができる。特にトルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、ジクロロメタン、四塩化炭素などの塩素系溶媒、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒等の樹脂バインダーを溶解、膨潤する溶媒を用いる。
【0091】
(ガスバリア層の製造方法)
本発明の紫外線遮蔽性ガスバリアフィルムの製造方法は、耐候層の、樹脂基板とは反対側に、ポリシラザン化合物を含有する塗布液を塗布乾燥後、酸素及び水蒸気を含む窒素雰囲気下で紫外線照射により酸化処理し、ガスバリア層を製造する。
【0092】
ポリシラザン化合物の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
【0093】
本発明で用いられる「ポリシラザン」は一般式(1)で表され、珪素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Siおよび両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体ポリマーである。
【0094】
【化1】

【0095】
式中、R、R、およびRのそれぞれは、独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基などを表す。
【0096】
本発明では、得られるガスバリア膜としての緻密性の観点からは、R、RおよびRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
【0097】
一方、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地基板との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より(平均)膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
【0098】
パーヒドロポリシラザンは直鎖構造と6および8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体または固体の物質であり、分子量により異なる。これらは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。
【0099】
低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、上記一般式1のポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
【0100】
ポリシラザンを含有する液体を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは好ましくない。具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターペン等の炭化水素、塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度、等目的にあわせて選択し、複数の溶剤を混合しても良い。
【0101】
ポリシラザン含有塗布液中のポリシラザン濃度は目的とするシリカ膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度である。
【0102】
有機ポリシラザンは、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体であってもよい。アルキル基、特にもっとも分子量の少ないメチル基を有することにより下地基板との接着性が改善され、かつ硬くてもろいシリカ膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる。
【0103】
酸化珪素化合物への転化を促進するために、アミンや金属の触媒を添加することもできる。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカNAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140などが挙げられる。なかでも、触媒を含有しないパーヒドロポリシラザンからなる、NN120、NN110を用いることが、さらに緻密でバリア性の高いガスバリア層を形成する上で最も好ましい。
【0104】
また、塗布された膜は溶媒が除去された均一な乾燥膜を得る上で、アニールする態様が好ましい。アニール温度は、好ましくは60℃〜200℃、更に好ましくは70℃〜160℃である。アニール時間は、好ましくは5秒〜24時間程度、更に好ましくは10秒〜2時間程度である。
【0105】
このように、次工程に続く転化処理前に、前述した範囲でアニールを行うことにより、均一な塗布膜を安定に得ることができる。
【0106】
尚、アニールは、一定温度で行ってもよく、段階的に温度を変化させてもよく、連続的に温度を変化(昇温および/または降温)させてもよい。アニールの際には、反応を安定化するために湿度を調節することが好ましく、通常30%RHから90%RH、より好ましくは40%RHから80%RHである。
【0107】
〈改質処理〉
改質処理とは、セラミック前駆体無機ポリマーであるポリシラザン化合物を含有する塗布膜に、紫外線などの照射、水蒸気酸化あるいは加熱処理(乾燥処理を含む)などにより、二酸化珪素等の珪素酸化物または酸化窒化珪素等の酸化窒化珪素化合物に転化する処理をいう。
【0108】
本発明で好ましく用いられる改質処理は紫外線照射処理である。酸素の存在下で紫外光を照射することで活性酸素やオゾンが発生し、転化反応をより進行させることができる。
【0109】
この活性酸素やオゾンは非常に反応性が高く、ポリシラザンの場合、珪素酸化物の前駆体であるポリシラザン塗布膜は、シラノールを経由することなく直接酸化されることで、より高密度で欠陥の少ない珪素酸化物膜が形成される。
【0110】
更に反応性オゾンの不足分を光照射部とは異なる部分で、放電法などの公知の方法により酸素からオゾンを生成し、紫外線照射部に導入しても良い。
【0111】
このときに照射する紫外線の波長は特に限定されるところではないが、紫外光の波長は100nm〜450nmが好ましく、100nm〜300nm程度の紫外光を照射することがより好ましい。
【0112】
光源は、低圧水銀灯、重水素ランプ、Xeエキシマランプ、メタルハライドランプ、エキシマレーザーなどを用いることができる。ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては100mW/cm〜100kW/cm、照射エネルギーとしては10mJ/cm〜5000mJ/cmが好ましく、100mJ/cm〜2000mJ/cmがより好ましい。また、紫外線照射の際の照度は1mW/cm〜10W/cmが好ましい。ポリシラザン塗布膜に酸化性ガス雰囲気下で紫外線を照射することにより、ポリシラザンが高密度の珪素酸化物膜、すなわち高密度シリカ膜に転化するが、該シリカ膜の膜厚や密度は紫外線の強度、照射時間、波長(光のエネルギー密度)により制御が可能であり、所望の膜構造を得るためにランプの種類を使い分ける等、適宜選択することが可能である。また、連続的に照射するだけでなく複数回の照射を行ってもよく、複数回の照射が短時間ないわゆるパルス照射で有っても良い。
【0113】
また、紫外線照射と同時に該塗膜を加熱することも、反応(酸化反応、転化処理ともいう)を促進するために好ましく用いられる。加熱の方法は、ヒートブロック等の発熱体に基板を接触させ熱伝導により塗膜を加熱する方法、抵抗線等による外部ヒーターにより雰囲気を加熱する方法、IRヒーターの様な赤外領域の光を用いた方法等が挙げられるが、特に限定はされない。塗膜の平滑性を維持できる方法を適宜選択してよい。
【0114】
加熱する温度としては、50℃〜200℃の範囲が好ましく、更に好ましくは80℃〜150℃の範囲であり、加熱時間としては1秒〜10時間の範囲が好ましく、更に好ましくは10秒〜1時間の範囲で加熱することである。
【0115】
紫外線照射の中でもよりフォトンエネルギーが大きい200nm以下の波長成分を有する真空紫外線照射によって処理することがさらに好ましい。エネルギーが小さいとポリシラザンの改質の効果が不十分となりバリア性が低くなる為である。
【0116】
〈200nm以下の波長成分を有する真空紫外線照射〉
本発明において、好ましい方法として、真空紫外線照射による改質処理が挙げられる。真空紫外線照射による処理は、化合物内の原子間結合力より大きい100〜200nmの光エネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみによる作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温で、膜の形成を行う方法である。なかでもエキシマ光が特に好ましい。
【0117】
特に、本発明の好ましい方法であるポリシラザン膜の処理において、単層を塗布してから、雰囲気を一定に保ってエキシマ照射処理を行なうとポリシラザン層の膜厚方向に組成の異なる2層の改質膜が形成される。機構は明確にはなっていないが、表面に近い改質層の密度が高いこと、処理時間によって表面に近い改質層の膜厚が変化する等のことから、本発明者らは光エネルギーによるシラザン化合物の直接切断と、気相で生成する活性酸素やオゾンによる表面酸化反応が同時に進行し、改質処理の表面側と内側で改質速度差が生じ、その結果連続する2層の改質層が形成されるものと推定している。
【0118】
これに必要な真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
【0119】
Xe、Kr、Ar、Neなどの希ガスの原子は化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電などによりエネルギーを得た希ガスの原子(励起原子)は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には、
e+Xe→e+Xe
Xe+Xe+Xe→Xe+Xe
となり、励起されたエキシマ分子であるXeが基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。加えて発光効率が他の希ガスよりも高いことや大面積へ照射するためのランプを石英ガラスで作製できることからXeエキシマランプを好ましく使用することが出来る。
【0120】
エネルギーの観点だけからだとArエキシマ光(波長126nm)が最も高く、高いポリシラザン層の改質効果が期待される。しかし、Arエキシマ光は石英ガラスでの吸収が無視できないほど大きくなるため、二酸化珪素ガラスではなく炭酸カルシウムガラスを用いる必要がある。しかし、炭酸カルシウムガラスは非常に割れやすく大面積を照射するランプとしては製造が困難であるのが実情である。
【0121】
Xeエキシマランプは波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。また、有機物の結合を解離させる波長の短い172nmの光のエネルギーは能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン膜の改質を実現できる。したがって、波長185nm、254nmの発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べて高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板などへの照射を可能としている。
【0122】
本発明者らの検討によれば、エキシマ照射処理時の環境としては酸素濃度が0.001〜5%であると好ましい。さらには0.01〜3%であると性能が安定して好ましい。酸素濃度が5%を超えると結合の切断よりも活性酸素等を発生させる方にエネルギーを使用してしまい、0.001%以下に下げてもエキシマ光の照射効率は殆ど変化せず、改質効率および膜の組成制御性も変化しないため、雰囲気の置換時間を余計に要するため生産性の向上が見込みにくい。また、ステージ温度については熱をかけるとより反応が進み好ましい。その場合の温度は50℃以上、基板のTg+80℃以下の温度が好ましく、基板Tg+30℃以下が基板を痛めずに反応性が良好になるために更に好ましい。
【0123】
各層の膜厚は透過型電子顕微鏡による断面観察により、各層が画像濃度の違いとして検出することが可能であるため、この画像から計測する。また、各層内の酸素原子と窒素原子の比率は、Arスパッタにより膜面から深さ方向へガスバリア性の膜を削りながらX線光電子分光法(XPS)により深さ方向の組成比プロファイルのデータから算出が可能である。
【0124】
〈高照射強度処理と最大照射強度〉
照射強度が高ければ、光子とポリシラザン内の化学結合が衝突する確率が増え、改質反応を短時間化することができる。また、内部まで侵入する光子の数も増加するため改質膜厚も増加および/または膜質の良化(高密度化)が可能である。但し、照射時間を長くしすぎると平面性の劣化やバリア性フィルムの他の材料にダメージを与える場合がある。一般的には、照射強度と照射時間の積で表される積算光量で反応進行具合を考えるが、酸化珪素の様に組成は同一でも、様々な構造形態をとる材料に於いては、照射強度の絶対値が重要になる場合もある。
【0125】
従って、本発明では真空紫外線照射工程において、少なくとも1回は100〜200mW/cmの最大照射強度を与える改質処理を行うことが好ましい。100mW/cm以上とすることにより、急激に改質効率が劣化することなく、処理時間を短期間にでき、200mW/cm以下とすることにより、ガスバリア性能を効率よく持たせることができ(200mW/cmを超えて照射してもガスバリア性の上昇は鈍化する)、基板へのダメージばかりでなく、ランプやランプユニットのその他の部材へのダメージも抑えることができ、ランプ自体の寿命も長期化できる。
【0126】
〈真空紫外線の照射時間〉
照射時間は、任意に設定可能であるが、基板ダメージや膜欠陥生成の観点およびガスバリア性能のバラつき低減の観点から高照度工程での照射時間は0.1秒〜3分間が好ましい。より好ましくは0.5秒〜1分である。
【0127】
〈真空紫外光照射時の酸素濃度〉
本発明における、真空紫外光照射時の酸素濃度は10ppm〜50000ppm(5%)とすることが好ましい。より好ましくは、1000ppm〜30000ppm(3%)である。前記の濃度範囲より酸素濃度が高いと、酸素過多のガスバリア膜となり、ガスバリア性が劣化する。また前記範囲より低い酸素濃度の場合、大気との置換時間が長くなり生産性を落とすのと同時に、ロール・トゥ・ロールの様な連続生産を行う場合はウエッブ搬送によって真空紫外光照射庫内に巻き込む空気量(酸素を含む)が多くなり、多大な流量のガスを流さないと酸素濃度を調整できなくなってくる。
【0128】
発明者らの検討によると、ポリシラザン含有塗膜中には、塗布時に酸素および微量の水分が混入し、更には塗膜以外の支持体にも吸着酸素や吸着水があり、照射庫内に敢えて酸素を導入しなくとも改質反応に要する酸素を供給する酸素源は十分にあることが分かった。むしろ、酸素ガスが多く(5〜10%レベル)含まれる雰囲気で真空紫外光を照射した場合、改質後のガスバリア膜が酸素過多の構造となり、ガスバリア性が劣化する。また、前述した様に172nmの真空紫外光が酸素により吸収され膜面に到達する172nmの光量が減少してしまい、光による処理の効率を低下することになる。すなわち、真空紫外光照射時には、できるだけ酸素濃度の低い状態で、真空紫外光が効率良く塗膜まで到達する状態で改質処理することが好ましい。
【0129】
真空紫外光照射時にこれら酸素以外のガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
【0130】
(樹脂基板)
樹脂基板は、ガスバリア層、耐候層を保持することができる有機材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。
【0131】
例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース(DAC)、セロースアセテートプロピオネート(CAP)等の各樹脂基板、またはフッ素系樹脂、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、更には前記プラスチックを2層以上積層してなる樹脂基板等を挙げることができる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられ、また、光学的透明性、耐熱性、無機層との密着性の点においては、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムが好ましく用いることができる。基板の厚みは5〜500μm程度が好ましく、更に好ましくは25〜250μmである。
【0132】
本発明のバリア性フィルムは発光素子として使用する場合に鑑みて、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上であることが好ましい。また、熱収縮率も低いことが好ましい。
【0133】
さらに、本発明に係る樹脂基板は透明であることが好ましい。基板が透明であり、基板上に形成する層も透明であることにより、透明なバリア性フィルムとすることが可能となるため、光電変換素子(太陽電池)や有機EL素子等の透明基板とすることも可能となるからである。
【0134】
また、上記に挙げたプラスチック等を用いた樹脂基板は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
【0135】
本発明に用いられる樹脂基板は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となるプラスチックを押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基板を製造することができる。また、未延伸の基板を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基板の流れ(縦軸)方向、または基板の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基板を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基板の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
【0136】
〈紫外線遮蔽性ガスバリアフィルムの用途〉
本発明の紫外線遮蔽性ガスバリアフィルムは、種々の封止用材料、支持体フィルムとして用いることができる。
【0137】
本発明の紫外線遮蔽性ガスバリアフィルムは、有機電子デバイスとして光電変換素子、有機EL素子に特に有用に用いることができる。本発明の紫外線遮蔽性ガスバリアフィルムが透明であると、このフィルムを支持体として光電変換素子に用いた場合、この側から太陽光の受光を行うように構成でき、有機EL素子に用いた場合、素子からの発光を妨げないため発光効率を劣化させない。
【0138】
(有機電子デバイスの構成)
本発明の有機電子デバイスの基本的構成の例を図1に示す。
【0139】
有機電子デバイス1は、基材6の上に第二電極5を有し第二電極5の上に有機機能層4を有し、有機機能層4の上に第一電極3を有し、第一電極3の上に本発明の紫外線遮蔽性ガスバリアフィルム2を有する。
【0140】
有機機能層4としては、有機発光層、有機光電変換層、液晶ポリマー層など特に限定無く挙げることができるが、本発明は、機能層が薄膜でかつ電流駆動系のデバイスである有機発光層、有機光電変換層を含む層である場合において、特に有効である。
【0141】
即ち、本発明のバリア性フィルムは、有機電子デバイスの中でも最もバリア性が必要である有機EL素子、または、有機光電変換素子に適用することが好ましい。
【0142】
(封止)
本発明のバリア性フィルムを、有機電子デバイスに適用する場合について説明する。
【0143】
まず、例えば、有機EL素子の場合、陽極層/正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層/陰極層等、各種の有機化合物からなる機能層を作製する。
【0144】
得られた有機EL素子の全体若しくは上部を封止する。
【0145】
封止部材としては、本発明のバリア性フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル、フッ素系樹脂等のプラスチック、およびこれらの複合物、ガラス等が挙げられ、必要に応じて、特に樹脂フィルムの場合には、樹脂基板と同様、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素等のガスバリア層を積層したものを用いることができる。ガスバリア層は、封止部材成形前に封止部材の両面若しくは片面にスパッタリング、蒸着等により形成することもできるし、封止後に封止部材の両面若しくは片面に同様な方法で形成してもよい。これについても、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、10−3g/(m・24h)以下のものであることが好ましい。
【0146】
〈包装形態〉
本発明の紫外線遮蔽性フィルムは、連続生産しロール形態に巻き取ることが出来る(いわゆるロール・トゥ・ロール生産)。その際、ガスバリア層を形成した面に保護シートを貼合して巻き取ることが好ましい。特に有機薄膜デバイスの封止材として用いる場合、表面に付着したゴミ(パーティクル)が原因で欠陥となる場合が多く、クリーン度の高い場所で保護シートを貼合してゴミの付着を防止することは非常に有効である。併せて、巻取り時に入るガスバリア層表面への傷の防止に有効である。
【0147】
保護シートとしては、特に限定するものではないが、膜厚100μm以下程度の樹脂基板に弱粘着性の接着層を付与した構成の一般的な「保護シート」、「剥離シート」を用いることが出来る。
【0148】
上記の各測定方法および下述の実施例で用いた測定方法などを以下に記す。
【0149】
《測定方法》
〈各層の膜厚〉
透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により、画像の濃淡および電子線ダメージの度合いから各層の膜厚を測定した。
【0150】
(膜厚方向の断面のTEM画像)
断面TEM観察
観察試料を以下のFIB加工装置により薄片作成後、TEM観察を行う。このとき試料に電子線を照射し続けると電子線ダメージを受ける部分とそうでない部分にコントラスト差が現れるため、その領域を測定することで算出できる。改質処理側で密度が高い領域は電子線ダメージを受けにくいが、そうでない部分は電子線ダメージを受け変質が確認される。
【0151】
(FIB加工)
装置:SII製SMI2050
加工イオン:(Ga 30kV)
試料厚み:100nm〜200nm
(TEM観察)
装置:日本電子製JEM2000FX(加速電圧:200kV)
電子線照射時間:5秒から60秒
〈水蒸気透過率(WVTR)の測定〉
前述のJIS K 7129B法に従って水蒸気透過率を測定するには種々の方法が提案されている。例えば、カップ法、乾湿センサー法(Lassy法)、赤外線センサー法(mocon法)が代表として上げられるが、ガスバリア性が向上するに伴って、これらの方法では測定限界に達してしまう場合があり、以下に示す方法も提案されている。水蒸気透過率の測定方法は特に限定するところではないが、本発明に於いてはCa法による評価を行った。
【0152】
(前記以外の水蒸気透過率測定法)
HTO法(米General Atomics社)
三重水素を用いて水蒸気透過率を算出する方法。
【0153】
A−Star(シンガポール)の提案する方法(WO05/95924)
水蒸気または酸素により電気抵抗が変化する材料(例えばCa、Mg)をセンサーに用いて電気抵抗変化とそれに内在する1/f揺らぎ成分から水蒸気透過率を算出する方法。
【0154】
〈本発明評価に用いたCa法〉
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
水蒸気バリア性評価用セルの作製
ガスバリアフィルム試料のガスバリア層面に、真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のガスバリアフィルム試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。
【0155】
その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製、)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。また、屈曲前後のガスバリア性の変化を確認するために、上記屈曲の処理を行わなかったガスバリアフィルムについても同様に、水蒸気バリア性評価用セルを作製した。
【0156】
得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で3000時間保存し、特開2005−283561号公報に記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐蝕量からセル内に透過した水分量を計算した。
【0157】
なお、ガスバリアフィルム面から以外の水蒸気の透過が無いことを確認するために、比較試料としてガスバリアフィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な60℃、90%RHの高温高湿下保存を行い3000時間経過後でも金属カルシウム腐蝕が発生しないことを確認した。
【0158】
〈フィルムの透過率測定〉
分光光度計UV−2500PC:島津製作所製を用いて可視光線の入射光量に対する全透過光量を測定した。その550nm、380nm、360nmの測定結果を下記表1に示す。
【0159】
〈耐候性の評価〉
(破断伸度)
紫外線遮蔽性を下記の劣化テストを行い、破断伸度を測定することで評価した。
【0160】
紫外線遮蔽性の評価として岩崎電気株式会社製アイスーパーUVテスター(SUV−W151)を用いて、各ガスバリアフィルム試験片のメタルハライド強制劣化テスト(温度:63℃、湿度:50%、照射強度:100mW/cm、連続200時間投入)をおこなった。耐候層側から照射をおこなった。
【0161】
メタルハライド強制劣化テスト後の各試験片、及びテスト前の各試験片を用いて、以下のようにして、破断伸度を測定した。
【0162】
温度可変式引張試験機(「島津オートグラフAGS−100D」;島津製作所製)を用い、幅10mmに切り取ったガスバリアフィルム試験片を、23℃、チャック間距離50mm、引張速度50mm/分の条件で引っ張って、破断に至るまでの伸び率を以下の式により求めた。
【0163】
伸び率(%)=〔(破断時の長さ−元の長さ)/元の長さ〕×100
(黄変色の評価)
黄変色の評価は、ガスバリアフィルム試験片を、岩崎電気株式会社製アイスーパーUVテスター(SUV−W151)を用いてメタルハライド強制劣化テスト(温度:63℃、湿度:50%、照射強度:100mW/cm、連続200時間投入)後、紫外線による劣化を目視で確認して行った。
【0164】
下記の基準で評価した。
【0165】
◎:劣化前同等の透明性がある
○:ほとんど透明である
△:やや黄色みを帯びている
×:黄色である
〈耐傷性の評価〉
スチールウールテスト(以下SWテストともいう)が用いられる。SWテストは、耐候層面に、ヘイドン社製の荷重変動型摩擦摩耗試験システムHHS2000を用いて500gの荷重になるように設定しスピード500mm/ms、距離50mm、10往復を行い、傷を目視で評価した。スチールウール#0000番を使用した。
【0166】
下記の基準で評価した。
【0167】
◎:キズがない
○:わずかにキズがる
△:黒紙の上でキズがはっきりわかる
×:キズがすぐにわかる。
【実施例】
【0168】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0169】
〈実施例1:ガスバリアフィルムでの比較〉
〈試料1−1の作成〉
(樹脂基板)
樹脂基板として、両面に易接着加工された50μmの厚さのポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製、A4300)の基板を用いた。
【0170】
(耐候層1の形成)
チバ・ジャパン株式会社製Tinuvin477(有機系の紫外線吸収剤)を含有率10質量%となるように中国塗料株式会社製フォルシード461C(アクリル樹脂)と混合し、乾燥後の(平均)膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件;80℃、1分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;400mJ/cmで硬化を行い、耐候層の第一層目を形成した。
【0171】
(耐候層2の形成)
上記樹脂基板の耐候層1を形成した上に、東洋インキ株式会社製、UV硬化型ハードコート剤、リオデュラスTYT65−01(TiO、アクリル樹脂込み)を塗布、乾燥後の(平均)膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件;80℃、1分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;400mJ/cmで硬化を行い、耐候層2を形成した。
【0172】
(ガスバリア層1の形成)
上記樹脂基板の耐候層1、2を形成した反対側の面にSAMCO社製UVオゾンクリーナー Model UV−1を用いて照射時の雰囲気を窒素置換しながら、オゾン濃度を300ppmとなるように調整して、80℃5分間の表面処理を行った。
【0173】
前記樹脂基板の耐候層の反対面に、ケイ素化合物含有液としてパーヒドロポリシラザンの10質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、アクアミカNN−120−10、無触媒タイプ)を用い、スピンコート(5000rpm、60秒)にて塗布後、80℃にて10分間乾燥し、ケイ素化合物を含有する膜を形成した。
【0174】
その後、MDエキシマ社製のステージ可動型キセノンエキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200を用いて、照射庫内の雰囲気を窒素と酸素を用いて下記のように制御しながら、ステージの移動速度を5mm/秒の速さで試料を往復搬送させて、合計5往復照射した後、試料を取りだし試料1−1とした。本装置は有効照射幅10mmのXeエキシマランプが1本装着されており、ステージ搬送速度10mm/secで搬送した場合、1秒処理/パスに相当する。尚、改質処理後のガスバリア層1の膜厚は60nmであった。
【0175】
(条件)
エキシマ光強度:60mW/cm(172nm)
試料と光源の距離:1mm
ステージ加熱温度:100℃
(試料1−1の雰囲気条件)
1〜3往復目:酸素濃度0.05%
4〜5往復目:酸素濃度1.5%
〈試料1−2〜1−26の作成〉
試料1−1と同様にして、但し試料1−1の耐候層の塗布液を作成する際に、表1記載の粒子種類、含有率、有機化合物系の紫外線吸収剤(以下UVAともいう)種、UVA含有率、HALS剤種、HALS剤の含有率になるよう調整して乾燥後の(平均)膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件;80℃、1分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;400mJ/cmで硬化を行い、耐候層を形成した。
【0176】
なお試料No.1−17、1−19においてはガスバリア層1の代わりに下記ガスバリア層2を形成した。
【0177】
(ガスバリア層2の形成)
耐候層の反対側の基材表面に、電子線加熱方式の連続巻き取り式真空蒸着機を用い、ケイ素と二酸化ケイ素とフッ化マグネシウムの混合物(混合比46モル%:46モル%:8モル%)を原料として加熱真空蒸着し透明蒸着層を得た。(透明蒸着層の厚みは約10nm)
(評価)
前記した測定方法で、水蒸気透過率、フィルムの光線透過率、破断伸度、黄変色、スチールウール耐性を評価した。
【0178】
試料1−1〜1−26の評価結果を表1、表2に示す。
【0179】
【表1】

【0180】
【表2】

【0181】
フォルシード461C:中国塗料株式会社(UV硬化樹脂)
フォルシード460:中国塗料株式会社(UV硬化樹脂)
EXP100419:DIC株式会社(熱硬化樹脂)
Tinuvin477:チバ・ジャパン株式会社(有機化合物系の紫外線吸収剤)
Tinuvin292:チバ・ジャパン株式会社(HALS剤)
TYT65−01:東洋インキ製造株式会社リオデュラスTYT65−01(TiO、アクリル樹脂バインダー込み)
表1から明らかなように本発明のガスバリアフィルムはガスバリア性が良好で、紫外線のカット率が高いと同時に、劣化テスト後の破断伸度(耐水性、紫外線カット性)、及び黄変色の結果から、紫外線による劣化が少ないことが分かる。
【0182】
〈実施例2:有機薄膜デバイスの評価〉
実施例1で作成した試料1−1〜1−26のガスバリアフィルムをそれぞれ準備し、有機光電変換素子を作成して、有機薄膜素子の性能劣化具合を評価した。
【0183】
〈有機光電変換素子の作成方法〉
ガスバリアフィルムに、インジウム・スズ酸化物(ITO)の透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗10Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィー技術と湿式エッチングとを用いて2mm幅にパターニングし第1の電極を作成した。
【0184】
パターン形成した第一の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0185】
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を膜厚が30nmになるように塗布乾燥した後、150℃で30分間熱処理させ正孔輸送層を成膜した。
【0186】
これ以降は、基板を窒素チャンバー中に持ち込み、窒素雰囲気下で作成した。
【0187】
まず、窒素雰囲気下で上記基板を150℃で10分間加熱処理した。次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクトロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)とPCBM(フロンティアカーボン社製:[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:0.8で混合した液を調製し、フィルタで濾過しながら膜厚が100nmになるように塗布を行い、室温で放置して乾燥させた。続けて、150℃で15分間加熱処理を行い、光電変換層を成膜した。
【0188】
次に、上記一連の機能層を成膜した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、1×10−4Pa以下まで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.01nm/秒でフッ化リチウムを0.6nm積層し、さらに続けて2mm幅のシャドウマスクを通して(受光部が2×2mmになるように直交させて蒸着)、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで第二の電極を形成した。
【0189】
得られた各々の有機光電変換素子窒素チャンバーに移動し、封止用キャップとUV硬化樹脂を用いて封止を行って、受光部が2×2mmサイズの有機光電変換素子を作成した。
【0190】
(封止用のガスバリアフィルム試料の作成および有機光電変換素子の封止)
窒素ガス(不活性ガス)によりパージされた環境下で、ガスバリアフィルム二枚を用い、ガスバリア層を設けた面に、シール材としてエポキシ系光硬化型接着剤を塗布したものを、封止用フィルムとして作成した。
【0191】
次いで、上記の有機光電変換素子を、上記接着剤を塗布した二枚のガスバリアフィルム試料の接着剤塗布面の間に挟み込んで密着させた後、片側の基板側からUV光を照射して硬化させ、有機光電変換素子の封止を行った。
【0192】
〈有機光電変換素子の評価〉
評価は以下の基準で各素子をランク付けした。実用可能範囲は○以上である。
【0193】
〈有機光電変換素子のランク〉
ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、IV特性を評価することで、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)及びフィルファクターFF(%)を、同素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、下記式1に従って求めたエネルギー変換効率PCE(%)の4点平均値を見積もった。
【0194】
(式1) PCE(%)=
〔Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF(%)〕/100mW/cm
岩崎電気株式会社製アイスーパーUVテスター(SUV−W151)を用いてメタルハライド強制劣化テスト(温度:63℃、湿度:50%、照射強度:100mW/cm、連続200時間投入)を行い、劣化前に対する劣化後の変換効率維持率を算出し以下の様にランク付けを行った。
【0195】
変換効率維持率=メタルハライド強制劣化テスト済みフィルムを用いた素子の変換効率/劣化無しのフィルムを用いた素子の変換効率×100(%)
◎:90%以上
○:60%以上、90%未満
△:20%以上、60%未満
×:20%未満
実施例2で作成した有機光電変換素子の変換効率維持率を評価した。前記表2に結果を示した。
【0196】
本発明のガスバリアフィルム1−1〜1−19、1−26に対応する有機光電変換素子すべてが60%以上であったが、比較例のガスバリアフィルム1−21〜1−25に対応する有機光電変換素子は全て20%未満であった。本発明のガスバリアフィルムを用いた素子は有機薄膜デバイスの性能が殆ど変化しない。すなわち、高いガスバリア性と紫外線遮蔽性を両立していることが分かる。
【符号の説明】
【0197】
1 有機電子デバイス
2 ガスバリアフィルム
3 第一電極
4 有機機能層
5 第二電極
6 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板の少なくとも片面に有機化合物系の紫外線吸収剤と樹脂バインダーとを含む耐候層1を有し、該耐候層1の上に金属酸化物微粒子と樹脂バインダーとを含む耐候層2を有することを特徴とする紫外線遮蔽性フィルム。
【請求項2】
前記樹脂バインダーが活性光線硬化性樹脂を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の紫外線遮蔽性フィルム。
【請求項3】
前記耐候層は光安定剤(HALS剤)を、該有機化合物系の紫外線吸収剤又は該金属酸化物微粒子と樹脂バインダーの合計の質量を基準として、1質量%以上20質量%以下含有することを特徴とする請求項1または2に記載の紫外線遮蔽性フィルム。
【請求項4】
樹脂基板の少なくとも片面に有機化合物系の紫外線吸収剤と樹脂バインダーとを含む耐候層1を有し、該耐候層1の上に金属酸化物微粒子と樹脂バインダーとを含む耐候層2を有し、前記樹脂基板の前記耐候層1及び2を設けた面と反対の面にガスバリア層を設けたことを特徴とする紫外線遮蔽性フィルム。
【請求項5】
前記樹脂バインダーが活性光線硬化性樹脂を含んでいることを特徴とする請求項4に記載の紫外線遮蔽性フィルム。
【請求項6】
前記耐候層は光安定剤(HALS剤)を、該有機化合物系の紫外線吸収剤又は該金属酸化物微粒子と樹脂バインダーの合計の質量を基準として、1質量%以上20質量%以下含有することを特徴とする請求項4または5に記載の紫外線遮蔽性フィルム。
【請求項7】
前記ガスバリア層が、ポリシラザン骨格を有する珪素化合物の溶液を塗布し、波長200nm以下の真空紫外光を照射して得られたことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の紫外線遮蔽性フィルム。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか1項に記載の紫外線遮蔽性フィルムを用いたことを特徴とする有機電子デバイス。

【図1】
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【公開番号】特開2012−76386(P2012−76386A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224583(P2010−224583)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】