説明

紫外線遮蔽用の複合粒子を配合した化粧料

【課題】 高い紫外線防御効果を有するとともに、紫外線遮蔽材料として無機粒子を多量に用いた場合でも使用感が良く、安定性、安全性にも優れた紫外線防御用化粧料を提供する。
【解決手段】 単一粒子中に、少なくともUV−AとUV−Bの両波長域の紫外線を遮蔽するための複数種の金属酸化物が分散形成されている複合粒子を化粧料中に配合することにより、UV−AとUV−Bの両波長域の紫外線をバランス良く遮蔽するとともに、使用感にも優れ、且つ皮膚に対する刺激も少なく安全性の高い化粧料となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線遮蔽能を有する金属酸化物を複合化して成る紫外線遮蔽用の複合粒子を配合したパウダー、クリーム、リキッド状等の各種形態の化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光には、大きく分けて波長域が780nm以上の赤外線と、波長域が400〜780nmの可視光線と、波長域が400nm以下の紫外線とが含まれている。このうち紫外線は、地球上に届く太陽光の5〜6%を占めており、さらに波長域が320〜400nmのUV−A、290〜320nmのUV−B、290nm以下のUV−Cに分類される。
【0003】
従来、紫外線照射による人体、特に皮膚への悪影響が知られている。紫外線のうちUV−Aは、強い作用を起こさない代わりに、肌の奥(深部)まで浸透して紅斑を伴った黒化現象を起こし、肌の老化の主原因になると言われている。一方、UV−Bは、皮膚がんやシワの形成に関与すると言われており、シミ、ソバカスや皮膚の乾燥の原因にもなる。なお、UV−Cはオゾン層で吸収されるため地表には届かない。
【0004】
ところで、この紫外線を吸収、遮蔽する種々の紫外線遮蔽材料が知られている。紫外線遮蔽材料は、大きく有機系の紫外線吸収剤と無機粒子とに分類される。有機系の紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン誘導体、メトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸誘導体等があり、無機材料に比べ安価で皮膚に塗布した時の使用感に優れるという利点がある。
【0005】
無機粒子は、紫外線を散乱若しくは吸収して皮膚への吸収を抑制するものであり、300nm付近の波長域に吸光度のピークを有するUV−B波長域遮蔽能に優れた酸化チタン(TiO2)、380nm付近の波長域に吸光度のピークを有するUV−A波長域遮蔽能に優れた酸化亜鉛(ZnO)、400nm付近の波長域に吸光度のピークを有するUV−A波長域遮蔽能に優れた酸化セリウム(CeO2)等の金属酸化物を複合させたものであり、有機系の紫外線吸収剤に比べて耐熱性や耐候性に優れるという利点がある。
【0006】
前述したような紫外線の悪影響から皮膚を保護するため、紫外線遮蔽材料を含有させた化粧料が開発されている。従来、紫外線防御効果の高い化粧料には、安価で使用感の優れた有機系の紫外線吸収剤が用いられていた。しかし、有機系の紫外線吸収剤は耐熱性や耐候性が不十分で経時的に変化し易い上、皮膚に接触させた場合に紫外線吸収剤自体若しくはその分解生成物による刺激性の問題があり、炎症等を引き起こした事例も多数報告されている。
【0007】
そこで、安定性、安全性に優れた無機粒子を配合した紫外線防御用化粧料が種々提案されており、例えば特許文献1には、酸化亜鉛に不定形シリカを複合させて得られるシリカ被覆酸化亜鉛を配合したパウダーファンデーションが開示されている。特許文献2には、シリカ担体に酸化チタンを含有させて成るチタン−シリカ複合体を配合した化粧料が開示されている。また、特許文献3には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどの金属酸化物粒子をシリカ粒子に対して互いに微分散するように複合させた金属酸化物シリカ複合体を配合した化粧料が開示されている。
【0008】
また、特許文献4には、紫外線吸収剤を含有する金属酸化物ゲルで粉体の表面を被覆して成る紫外線吸収剤含有複合粉体を配合した化粧料が開示されている。特許文献5には、酸化亜鉛を内包したシリカと、超微粒子酸化チタン及び超微粒子酸化チタンが付着したタルク、マイカ及び/又はセリサイトとから成る無機粉体が配合された化粧料が開示されている。さらに、特許文献6には、所定の白色度を有する微粒子金属酸化物・酸化セリウム複合体を配合した化粧料が、特許文献7には、酸化セリウムに他の金属元素イオンを固溶(ドープ)させた金属酸化物固溶酸化セリウムを配合した化粧料がそれぞれ開示されている。
【0009】
ここで、紫外線防御効果をより確実に発現させるためには、UV−A及びUV−Bの両方を遮蔽することが望ましい。しかしながら、上記特許文献1、2においては、UV−Aを遮蔽する酸化亜鉛若しくはUV−Bを遮蔽する酸化チタンのいずれか一方のみを配合しているため、紫外線防御効果が十分であるとは言えなかった。また、特許文献3に記載の複合粒子は、各金属酸化物粒子が凝集した構造であるため、紫外線遮蔽能が不均一になるおそれがあった。また、特許文献4に記載の複合粒子は、粉体表面をコーティング処理する工程が必要となる上、有機系の紫外線吸収剤を使用するため、耐熱性や耐候性の面で十分とはいえなかった。
【0010】
また、特許文献5に記載の化粧料では、酸化亜鉛を内包する酸化珪素粒子と微粒子酸化チタンを別々に配合するため、各粒子が凝集しないように均一に分散させるための取り扱いが難しくなり、紫外線遮蔽能が不均一になるおそれがあった。また、特許文献6、7に記載の複合粒子は、その製造法から考えて、いずれも単一粒子内に各金属酸化物成分が均一に分散したものではないため、UV−A及びUV−Bの両波長域の紫外線をバランス良く遮蔽するには、異なる複合粒子が凝集しないよう均一に分散させる必要が生じ、複合粒子の取り扱いが難しくなるとともに、全体として粒子材料の充填量、即ち使用量が増加するという不都合があった。
【0011】
さらに、上記特許文献に記載の化粧料は、無機の紫外線遮蔽材料である複合粒子が微粒子であるために活性が強く、また摩擦抵抗が大きくて感触が良くないので、多量に用いた場合、活性が更に強まり感触も悪くなることから、いずれも処方の安定性、使用感の点において更なる改良が求められていた。
【特許文献1】特開平11−193354号公報
【特許文献2】特開2000−344509号公報
【特許文献3】国際特許出願公開WO02/24153号公報
【特許文献4】特開2000−44450号公報
【特許文献5】特開平9−235217号公報
【特許文献6】特開2000−203835号公報
【特許文献7】特開2002−160920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑み、高い紫外線防御効果を有するとともに、紫外線遮蔽材料として無機粒子を用いた場合でも使用感が良く、安定性、安全性にも優れた紫外線防御用化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、少なくともUV−AとUV−Bの両波長域の紫外線を遮蔽する複数種の金属酸化物成分が単一粒子中に分散形成された複合粒子を配合して化粧料としたものである。
【0014】
また本発明の第2の構成は、上記構成の化粧料において、前記複合粒子が、UV−A波長域の紫外線遮蔽能に優れた金属酸化物成分として、酸化セリウムと酸化亜鉛のいずれか一方若しくは両方を含み、UV−B波長域の紫外線遮蔽能に優れた金属酸化物成分として酸化チタンを含み、さらに安定保護材成分として酸化珪素を含むことを特徴としている。
【0015】
また本発明の第3の構成は、上記構成の化粧料において、前記複合粒子中の各金属酸化物成分の含有割合は、酸化セリウムと酸化亜鉛の合計が40重量%以上90重量%以下、酸化チタンが5重量%以上20重量%以下、酸化珪素が5重量%以上40重量%以下の範囲にあることを特徴としている。
【0016】
また本発明の第4の構成は、上記構成の化粧料において、前記複合粒子の平均粒子径が10nm以上300nm以下であることを特徴としている。
【0017】
また本発明の第5の構成は、上記構成の化粧料において、前記複合粒子の配合割合が2重量%以上15重量%以下であることを特徴としている。
【0018】
また本発明の第6の構成は、上記構成の化粧料において、前記複合粒子の表面が疎水化処理されていることを特徴としている。
【0019】
また本発明の第7の構成は、上記構成の化粧料が、さらに、着色剤、タルク、マイカ、酸化チタン、及びオイル成分を含むパウダーファンデーションであることを特徴としている。
【0020】
また本発明の第8の構成は、上記構成の化粧料が、さらに、パラフィン、及びオイル成分を含むスキンクリームであることを特徴としている。
【0021】
また本発明の第9の構成は、上記構成の化粧料が、さらに、着色剤、タルク、樹脂パウダー、セリサイト、マイカ、及びオイル成分を含むプレストパウダーであることを特徴としている。
【0022】
また本発明の第10の構成は、上記構成の化粧料が、さらに、着色剤、ベントナイト、及びオイル成分を含むリキッドファンデーションであることを特徴としている。
【0023】
また本発明の第11の構成は、上記構成の化粧料が、さらに、着色剤、ロウ、及びオイル成分を含む口紅であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明の第1の構成によれば、UV−AとUV−Bの両波長域の紫外線を遮蔽する複数種の金属酸化物成分が単一粒子中に均一に分散された複合粒子を配合するため、UV−AとUV−Bの両波長域の紫外線をバランス良く遮蔽するとともに、紫外線遮蔽能のバラツキが小さくて高い紫外線防御効果を有し、且つ使用感が良く、安定性及び安全性にも優れた紫外線遮蔽用化粧料が提供される。
【0025】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の化粧料において、複合粒子が、UV−A波長域の紫外線遮蔽能に優れた金属酸化物成分として、酸化セリウムと酸化亜鉛のいずれか一方若しくは両方を含み、UV−B波長域の紫外線遮蔽能に優れた金属酸化物成分として酸化チタンを含み、さらに安定保護材成分として酸化珪素を含むことにより、酸化セリウムや酸化亜鉛によってUV−A波長域の紫外線を効率良く遮蔽し、酸化チタンによってUV−B波長域の紫外線を効率良く遮蔽しながら、酸化珪素によって酸化セリウムや酸化亜鉛や酸化チタンの触媒活性作用を抑制して表面活性を低下させ、皮膚への悪影響を抑制して安全性をより高めることができる。
【0026】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第2の構成の化粧料において、複合粒子中の酸化セリウムと酸化亜鉛の合計を40重量%以上90重量%以下、酸化チタンを5重量%以上20重量%以下、酸化珪素を5重量%以上40重量%以下とすることにより、UV−AとUV−Bの両波長域の紫外線遮蔽効果と触媒活性抑制効果とを好ましい範囲に調整することができる。
【0027】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の化粧料において、複合粒子の平均粒子径を10nm以上300nm以下とすることにより、高い紫外線遮蔽効果と優れた使用感を兼ね備えた紫外線遮蔽用化粧料となる。
【0028】
また、本発明の第5の構成によれば、上記第1乃至第4のいずれかの構成の化粧料において、複合粒子の配合割合を2重量%以上15重量%以下とすることにより、複合粒子の摩擦抵抗によるきしみ感がなく使用感に優れ、且つ十分な紫外線防御効果を有する紫外線遮蔽用化粧料となる。
【0029】
また、本発明の第6の構成によれば、上記第1乃至第5のいずれかの構成の化粧料において、複合粒子の表面を疎水化処理することにより、複合粒子の表面活性を抑制するとともに、樹脂や油等の有機物系の化粧料原料と無機物である複合粒子との親和性を高め、化粧料中での複合粒子の分散性や安定性が向上する。
【0030】
また、本発明の第7乃至第11の構成によれば、上記第1乃至第6のいずれかの構成の化粧料が、パウダーファンデーション、スキンクリーム、プレストパウダー、リキッドファンデーション、若しくは口紅であることにより、剤型の異なる上記化粧料において、いずれも優れた使用感と顕著な紫外線遮蔽効果とを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明に用いられる紫外線遮蔽用の複合粒子は、単一粒子中に、少なくともUV−AとUV−Bの両波長域の紫外線を遮蔽するための複数種の金属酸化物が分散形成されている。具体的には、上記UV−A波長域の紫外線遮蔽能に優れた金属酸化物成分として、酸化セリウム(CeO2)と酸化亜鉛(ZnO)のいずれか一方若しくは両方を含み、UV−B波長域の紫外線遮蔽能に優れた金属酸化物成分として酸化チタン(TiO2)を含み、さらに安定保護材成分として酸化珪素(SiO2)を含む。
【0032】
つまり、本発明に用いられる複合粒子は、少なくともUV−AとUV−Bの両波長域の紫外線を遮蔽するための、複数種の金属酸化物それぞれの分子或いは分子集合体が単一粒子中に分散して存在し、ある組成比で構成されたものである。具体的には、酸化セリウムと酸化亜鉛の少なくとも一方、酸化チタン及び酸化珪素のそれぞれの分子或いは分子集合体が単一粒子中に分散して存在している。
【0033】
これにより、複合粒子を化粧料に配合したとき、UV−AとUV−Bの両波長域の紫外線がバランス良く遮蔽される。また、単一粒子であるので、各粒子が凝集しないよう均一に分散させるための取り扱いが容易であり、仮に凝集が起こったとしても、UV−A用とUV−B用の別々の紫外線遮蔽用粒子を混合させた場合に比較して、各波長域の紫外線遮蔽効果のばらつきが小さくなる。その結果、全体として複合粒子の使用量を減少させることができる。
【0034】
また、酸化セリウム、酸化亜鉛、及び酸化チタンは触媒活性作用を有するため、この触媒活性作用による皮膚や基材等の劣化を防止、抑制する必要がある。本発明では安定保護材成分として酸化珪素を配合し、酸化セリウム、酸化亜鉛、及び酸化チタンの表面活性を抑制した複合粒子を用いることにより、皮膚に対する刺激が少なく安全性の高い化粧料としている。
【0035】
複合粒子中の上記金属酸化物成分の含有割合は、遮蔽の対象とする紫外線の主波長域や、化粧料に要求される使用感等によって適宜設定することができるが、酸化セリウムと酸化亜鉛の合計が40重量%より少ないと、UV−A波長域の紫外線を効果的に遮蔽できず、酸化チタンが5重量%より少ないと、UV−B波長域の紫外線を効果的に遮蔽できない。一方、酸化チタンが20重量%を超えると、表面活性により化粧料を使用した時のきしみ感が増加する。また、酸化珪素が5重量%より少ないと、酸化セリウム、酸化亜鉛、及び酸化チタンの触媒活性作用を十分に抑制できず、化粧料の使用感が悪くなる。
【0036】
従って、酸化セリウムと酸化亜鉛の合計が40重量%以上90重量%以下、酸化チタンが5重量%以上20重量%以下、酸化珪素が5重量%以上40重量%以下の範囲にあることが好ましい。即ち、上記配合割合にすることにより、UV−A及びUV−B波長域の紫外線をバランス良く遮蔽するとともに表面活性も効果的に抑制することができ、従来の無機粒子では遮蔽することが比較的困難であったUV−A波長域の遮蔽能に優れ、且つ化粧料中に配合した時の使用感にも優れた複合粒子となる。
【0037】
なお、複合粒子中のUV−A波長域の紫外線を遮蔽する金属酸化物成分として、酸化セリウムや酸化亜鉛以外の金属酸化物を含むようにしても良く、UV−B波長域の紫外線を遮蔽する金属酸化物成分として酸化チタン以外の金属酸化物を含むようにしても良い。また、安定保護材成分として酸化珪素以外の金属酸化物を含むようにしても良い。
【0038】
本発明に用いられる複合粒子は、例えば気相反応法や燃焼噴霧法等の従来公知の製造方法を用いて製造することができる。気相反応法による複合粒子の製造方法について概要を説明すると、反応後の金属酸化物が所定の組成比となるように、各金属成分を含む原料液を調合する。次に、反応気体(酸素ガス)と共に噴霧ノズルを使用して、例えば高温プラズマにより発生させた高温雰囲気の反応空間に原料液を噴霧し、反応気体流で覆われた原料液の液滴流を生成するとともに、液滴の蒸発気化による粒子核形成と粒子成長を行わせた後、周囲の冷却ガスで急速冷却して所定サイズの複合粒子を製造する。
【0039】
原料液は、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート等の有機チタン化合物、2−エチルヘキサン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物、2−エチルヘキサン酸セリウム等の有機セリウム化合物、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の有機珪素化合物を石油系炭化水素(ミネラルスピリット)中に溶解して調製される。
【0040】
このようにして製造された複合粒子の平均粒子径は、複合粒子単位重量当たりの表面積(BET値)を実測し、BET値からBET換算径を計算することにより求められる。複合粒子の平均粒子径が300nmを超えると、紫外線遮蔽効果が低下するとともに、きしみ感が増加して使用感が悪くなる。一方、複合粒子の平均粒子径が10nmよりも小さくなると、粒子が凝集し易くなり、取り扱いが困難となる。従って、平均粒子径が10nm以上300nm以下の複合粒子を用いることが好ましく、特に100nm以下の複合粒子を用いた場合、より高い紫外線遮蔽効果と優れた使用感を兼ね備えた化粧料が得られる。
【0041】
また、本発明の化粧料の剤型としては、乳液、化粧水、スキンクリーム等のスキンケア化粧料、パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、口紅等のメイクアップ化粧料、頭髪用化粧料等が挙げられるが、例えばスキンケア化粧料のように透明性を確保する必要のある場合、複合粒子の粒子径を小さくするとともに、複合粒子の屈折率と後述するような他の配合材料の屈折率との差を小さくする必要がある。複合粒子の屈折率は、屈折率が1.5と小さい酸化珪素の含有率が多くなるほど小さくなるため、酸化珪素の含有割合によりある程度は調整可能である。
【0042】
化粧料中への複合粒子の配合割合は、要求される紫外線遮蔽効果や化粧料の剤型等に応じて任意に設定することができるが、複合粒子の配合割合が2重量%以下の場合、十分な紫外線遮蔽効果を得られない。また、配合割合が15重量%以上の場合、粒子の摩擦抵抗によるきしみ感が増加するとともに、剤型によっては成形性が悪くなる。即ち、上記方法により得られた複合粒子を2重量%以上15重量%以下の割合で化粧料中に配合すれば、摩擦抵抗によるきしみ感がなく使用感に優れ、有機系の紫外線吸収剤を配合せずに高い紫外線防御効果を有する化粧料を得ることができる。
【0043】
なお、複合粒子を化粧料に配合する場合、さらにシリコン処理、アミノ酸処理、レシチン処理、コラーゲン処理、ジアルキルリン酸処理、パーフルオロアルキル基を有する化合物によるフッ素化処理等の表面処理をしたものを用いても良い。中でも、シリコン処理により粒子表面を疎水化処理した場合、複合粒子の表面活性を抑制するとともに、樹脂や油等の有機物と無機物である複合粒子との親和性を高め、化粧料中での分散性や安定性を向上させることが可能となる。
【0044】
シリコン処理に用いられるシリコン化合物としては、メチコン、ジメチコン、(ジメチコン/メチコン)コポリマー等が挙げられる。なお、シリコン化合物中の水素原子がフッ素原子に置換されたフッ素変性シリコンやフッ素化処理剤を用いて表面処理を行った場合、複合粒子に撥水性に加えて撥油性を付与することができる。フッ素化処理剤としては、パーフルオロアルキルリン酸DEA等が挙げられる。
【0045】
本発明の化粧料には、タルク、マイカ、セリサイト、酸化チタン、無水珪酸、カオリン、酸化亜鉛、雲母チタン、酸化鉄等の無機粉末、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル酸樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ジビニルベンゼン、スチレン共重合体等の各種樹脂粉体或いはそれらの2種以上から成る共重合樹脂粉体、アセチルセルロース、多糖類、タンパク質等の有機粉末、赤色202号、赤色226号、黄色205号、黄色401号、青色1号、青色204号、青色404号等の顔料粉末、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛等の金属石鹸、ジメチコン、メチコン、シクロメチコン、ポリエーテル変性シリコン、フッ素変性シリコン等のシリコン化合物、トリオクタノイン、ジカプリル酸ネオペンチルグリコール、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、イソステアリン酸水添ヒマシ油等のエステル油、ミネラルオイル、ワセリン、ポリブテン等の鉱物油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ等のロウ、ホホバ油、オリーブ油、アロエ、ベニバナ等の天然系原料、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンK、ビタミンP、ビタミンU、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−α−トコフェロール、コハク酸−α−トコフェロール等のビタミンまたはビタミン誘導体等の、任意の無機又は有機原料、或いは通常化粧料に配合される任意の成分、例えばエタノールや多価アルコール等のアルコール類、界面活性剤、保湿剤、着色料、香料、防腐剤等を、本発明の効果を妨げない範囲で配合することができる。
【0046】
なお、本発明は上述した実施形態及び後述する各実施例に限定されるものではなく、課題を解決するための手段の項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態及び実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例1】
【0047】
原料として、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート9重量%、2−エチルヘキサン酸亜鉛65%溶液20重量%、2−エチルヘキサン酸セリウム49%溶液40重量%、及びオクタメチルシクロテトラシロキサン2重量%をミネラルスピリット29重量%に混合して原料液を調製した。次に、この原料液を酸素ガスと共に噴霧ノズルを用いて高温プラズマにより発生させた約3,000℃の反応空間に噴霧し、酸素ガスで覆われた液滴流を生成するとともに、液滴の蒸発気化による粒子核形成と粒子成長を行わせた後、周囲の冷却ガスで急速冷却して、組成比が10重量%TiO2−30重量%ZnO−50重量%CeO2−10重量%SiO2である紫外線遮蔽用複合粒子を得た。
【0048】
得られた複合粒子についてBET値を実測すると23m2/gであり、BET換算径を計算すると44nmであった。この複合粒子をさらにメチコンで疎水化処理することにより、表面が疎水化処理された紫外線遮蔽用複合粒子を得た。
【実施例2】
【0049】
原料として、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート40重量%、2−エチルヘキサン酸亜鉛65%溶液30重量%、及びオクタメチルシクロテトラシロキサン2重量%をミネラルスピリット28重量%に混合して原料液を調製した。次に、この原料液を用いて実施例1と同様の方法により、組成比が45重量%TiO2−45重量%ZnO−10重量%SiO2である紫外線遮蔽用複合粒子を製造した。
【0050】
得られた複合粒子についてBET値を実測すると31m2/gであり、BET換算径を計算すると42nmであった。この複合粒子をさらにメチコンで疎水化処理することにより、表面が疎水化処理された紫外線遮蔽用複合粒子を得た。
【実施例3】
【0051】
実施例1で得られた複合粒子及び表1に示す成分を用いて、下記製造方法によりパウダーファンデーションを製造した。なお、表1中のメチコン処理の材料は、メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆原料である。
【0052】
【表1】

【0053】
表1のAに記載の粉体成分をヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製)にて攪拌混合し、表1のBに記載の成分の加熱混合物を加えて更に混合し、均一にした。これをアトマイザーで処理し、ふるいを通した後、金皿中に圧縮成型してパウダーファンデーションを得た。
【実施例4】
【0054】
実施例2で得られた複合粒子及び表1に示す成分(但し、実施例1で得られた複合粒子を除く)を用いて、実施例3の製造方法と同一条件にてパウダーファンデーションを製造した。
【比較例1】
【0055】
実施例3、4の比較として、複合粒子の代わりにメチコン処理タルクを5.0重量%増量配合(合計で11.2重量%になる)し、実施例3の製造方法と同一条件にてパウダーファンデーションを製造した。
【実施例5】
【0056】
実施例1で得られた複合粒子及び表2に示す成分を用いて、下記製造方法によりスキンクリームを製造した。
【0057】
【表2】

【0058】
表2のA及びBに記載の成分を、それぞれ80℃で加熱混合した。Aに記載の成分の加熱混合物に、Bに記載の成分の加熱混合物を加え、ホモミキサー(ホモミキサーマークシリーズ;(株)特殊機化製)で攪拌しながら30℃まで徐々に冷却してスキンクリームを得た。
【実施例6】
【0059】
実施例1で得られた複合粒子及び表3に示す成分を用いて、下記製造方法によりプレストパウダーを製造した。
【0060】
【表3】

【0061】
表3のAに記載の成分をヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製)で約10分間混合した。混合物にBに記載の成分を加えて約10分間混合し、さらにCに記載の成分を加えて1分間混合した。得られた混合物をふるいにかけ粒度を揃えた後、成型してプレストパウダーを得た。
【実施例7】
【0062】
実施例1で得られた複合粒子及び表4に示す成分を用いて、下記製造方法によりリキッドファンデーションを製造した。
【0063】
【表4】

【0064】
表4のA、B、及びCに記載の成分を、それぞれ80℃で加熱混合した。Aに記載の成分の加熱混合物にBに記載の成分の加熱混合物を加え、次いでCに記載の成分の加熱混合物を加え、さらにDに記載の成分を加えた後、40℃まで徐々に冷却した。得られた混合物をホモミキサー(ホモミキサーマークシリーズ;(株)特殊機化製)を用いて5分間攪拌した後、30℃まで冷却してリキッドファンデーションを得た。
【実施例8】
【0065】
実施例1で得られた複合粒子及び表5に示す成分を用いて、下記製造方法により口紅を製造した。
【0066】
【表5】

【0067】
表5のA及びBに記載の成分を、それぞれ80℃で加熱混合した。加熱混合物を混合し、ロールを用いて混練した後、さらに加熱溶解した。得られた溶解物を減圧化で脱泡した後、成型して口紅を得た。
【実施例9】
【0068】
パネラー20名により実施例3及び比較例1で得られたパウダーファンデーションの使用テストを行い、皮膚に対するのび、つき、しっとり感について官能評価を行い、以下の基準で判定した。結果を表6に示す。
(判定基準)
◎:15名以上が良好と判断
○:10名以上、15名未満が良好と判断
△:5名以上、10名未満が良好と判断
【0069】
【表6】

【0070】
表6に示すように、実施例3のパウダーファンデーションを使用した場合、皮膚に対するのび、つきについては20名中15名以上が良好と判断し、しっとり感についても10名以上15名未満が良好と判断し、使用感に優れた結果が得られた。一方、比較例1のパウダーファンデーションを使用した場合は、のび、つき、しっとり感のいずれについても、良好と判断したのは20名中10名以上15名未満であった。
【0071】
この結果より、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、及び酸化珪素を単一粒子中に分散させた複合粒子を配合した本発明のパウダーファンデーションは、酸化珪素及び疎水化処理により複合粒子の表面活性が抑制されるとともに、摩擦抵抗によるきしみ感がなく使用感に優れることが確認された。なお、ここでは記載しないが、酸化亜鉛、酸化チタン、及び酸化珪素を単一粒子中に分散させた複合粒子を用いて製造した実施例4のパウダーファンデーションについても、実施例3と同等の効果が確認されている。
【実施例10】
【0072】
実施例3、4及び比較例1で得られたパウダーファンデーションのSPF(Sun Protection Factor)値及びPA(Protection grade of UVA)値を測定した。結果を表7に示す。
【0073】
【表7】

【0074】
表7に示すように、実施例3のパウダーファンデーションでは、SPF値は31、PA値は+++であった。また、実施例4のパウダーファンデーションでは、SPF値は29、PA値は++であった。一方、比較例1のパウダーファンデーションでは、SPF値は25、PA値は++であった。
【0075】
この結果より、本発明のパウダーファンデーションは、UV−Bに対する防御効果を表すSPF値、及びUV−Aに対する防御効果を表すPA値が、比較例に比べていずれも同等若しくは高い値を示し、UV−AとUV−Bの両波長域の紫外線を効果的に遮蔽することが確認された。
【0076】
即ち、実施例9及び10の結果から、本発明によりUV−A及びUV−Bの両波長域の紫外線遮蔽効果がともに高く、且つUV−AとUV−Bに対する遮蔽効果を任意に調整できるとともに、なめらかでのびが良く、使用感にも優れた化粧料を提供することができた。なお、ここでは記載しないが、酸化セリウム、酸化チタン、及び酸化珪素を単一粒子中に分散させた複合粒子を用いて製造したパウダーファンデーションについても、実施例4と同等の効果が確認されている。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の化粧料は、UV−AとUV−Bの両波長域の紫外線を遮蔽する成分が単一粒子中に均一に分散された複合粒子を配合するため、UV−AとUV−Bの両波長域の紫外線をバランス良く遮蔽するとともに、紫外線遮蔽能のバラツキを抑制し、且つ安全性も高めることができる。特に、UV−A波長域の紫外線遮蔽成分として、酸化セリウムと酸化亜鉛のいずれか一方若しくは両方を含み、UV−B波長域の紫外線遮蔽成分として酸化チタンを含み、さらに安定保護材成分として酸化珪素を含む複合粒子用いた場合、高い紫外線遮蔽効果と共に優れた使用感が得られる。
【0078】
また、配合される複合粒子の平均粒子径を10nm以上300nm以下とし、化粧料中への配合割合を2重量%以上15重量%以下としたので、複合粒子の摩擦抵抗によるきしみ感を抑えつつ、十分な紫外線遮蔽効果を得ることができる。
【0079】
また、複合粒子の表面をシリコン化合物等により疎水化処理しておけば、酸化珪素による表面活性の低下に加えて複合粒子の表面活性をさらに抑制するとともに、樹脂や油等の有機物系の化粧料原料と無機物である複合粒子との親和性を高め、化粧料中での複合粒子の分散性や安定性を一層向上させる。
【0080】
本発明によれば、パウダーファンデーション、スキンクリーム、プレストパウダー、リキッドファンデーション、口紅等、化粧料の剤型に関係なく、優れた使用感と顕著な紫外線遮蔽効果とを兼ね備えた紫外線遮蔽用化粧料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともUV−AとUV−Bの両波長域の紫外線を遮蔽する複数種の金属酸化物成分が単一粒子中に分散形成された複合粒子を配合して成る化粧料。
【請求項2】
前記複合粒子が、UV−A波長域の紫外線遮蔽能に優れた金属酸化物成分として、酸化セリウムと酸化亜鉛のいずれか一方若しくは両方を含み、UV−B波長域の紫外線遮蔽能に優れた金属酸化物成分として酸化チタンを含み、さらに安定保護材成分として酸化珪素を含むことを特徴とする請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記複合粒子中の各金属酸化物成分の含有割合は、酸化セリウムと酸化亜鉛の合計が40重量%以上90重量%以下、酸化チタンが5重量%以上20重量%以下、酸化珪素が5重量%以上40重量%以下の範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記複合粒子の平均粒子径が10nm以上300nm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の化粧料。
【請求項5】
前記複合粒子の配合割合が2重量%以上15重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の化粧料。
【請求項6】
前記複合粒子の表面が疎水化処理されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の化粧料。
【請求項7】
さらに、着色剤、タルク、マイカ、酸化チタン、及びオイル成分を含むパウダーファンデーションであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の化粧料。
【請求項8】
さらに、パラフィン、及びオイル成分を含むスキンクリームであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の化粧料。
【請求項9】
さらに、着色剤、タルク、樹脂パウダー、セリサイト、マイカ、及びオイル成分を含むプレストパウダーであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の化粧料。
【請求項10】
さらに、着色剤、ベントナイト、及びオイル成分を含むリキッドファンデーションであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の化粧料。
【請求項11】
さらに、着色剤、ロウ、及びオイル成分を含む口紅であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の化粧料。

【公開番号】特開2007−55944(P2007−55944A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243572(P2005−243572)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(502360363)株式会社ホソカワ粉体技術研究所 (59)
【出願人】(502063213)株式会社クロバーコスメイク (2)
【Fターム(参考)】