細胞の発生および機能に対する効果を有する分子
本発明は、実質細胞の機能を安定化および/または改善するための方法に関する。遺伝子発現プロファイリングにより肝安定化因子を同定するための、バイオリアクター微小環境において使用される肝細胞安定化非実質細胞の共培養の系も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2004年8月5日付け出願の米国仮特許出願第60/599,402号(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
米国政府により支援された研究に関する陳述
本発明は、部分的には米国国立衛生研究所からの資金(助成金番号DK065152)を用いてなされた。米国政府は本発明における一定の権利を有しうる。
【0003】
技術分野
本発明は、実質細胞および幹細胞(限定的なものではないが肝細胞、肝細胞様細胞および前駆細胞を含む)の機能を安定化および/または改善するための方法および組成物に関する。バイオリアクター微小環境において使用される肝細胞安定化非実質細胞の共培養の系、ならびに遺伝子発現プロファイリングにより実質細胞安定化因子を同定するために使用する方法および系も提供する。
【背景技術】
【0004】
背景
組織の発生および機能は、分化、増殖および遊走をモジュレーションする、非実質細胞と実質細胞との間の相互作用に左右される。特に、実質-非実質細胞相互作用は生理学、病態生理学、癌、発生において、および「組織工学(tissue engineering)」により組織機能を置換するための試みにおいて重要である。そのような細胞間相互作用の機能的重要性は多数の系において十分に確認されているが、根底をなす分子メカニズムは、多くの場合、依然として不明のままである。実質細胞は細胞外マトリックス物質、非実質細胞および可溶性シグナルと相互作用して、実質細胞の機能を適切に分化させ維持する。実質組織の発生および維持において役割を果たす細胞外マトリックス物質の同定のために、多くの研究が精力的に行われている。そのような研究は実質細胞の維持および発生における一定の因子の役割を明らかにしてはいるが、組織の発生、組織の維持および組織の成長における可溶性因子および膜の非実質細胞との結合相互作用の役割に関する多数の未解明の疑問点が依然として存在する。
【0005】
幹細胞培養および多数の組織型(皮膚、肝臓、膵臓、筋肉など)の培養において「フィーダーレイヤー(支持細胞層)」効果が広く用いられている。血清が細胞培養のための一般的添加物であるのと同様に、これは、しばしば、分化(または自己再生)細胞の一般的支持体として用いられる。その因子(可溶性または不溶性)の同定は研究用途および治療用途に重要であろう。
【0006】
肝臓は体内で最も重い腺であり、平均的な成人で約1.4kg(約3 lb)の重量を有し、皮膚に次いで最も大きな器官である。肝臓の葉は、小葉と称される多数の機能単位よりなる。各小葉は、血液が通る中央静脈(シヌソイド)の周囲の不規則で枝分かれした相互連結された板状物として配置された肝細胞(すなわち、実質細胞)と称される専門化された上皮細胞よりなる。
【0007】
肝臓の主要機能は、血液中の特定の物質のレベルを制御することである。例えば、肝臓は、ホルモンであるインスリンの影響下、血液からグルコースを取り出しそれをグリコーゲンとして貯蔵することにより炭水化物代謝において主要な役割を果たしている。血中グルコースレベルが低下すると、ホルモンであるグルカゴンが肝臓にグリコーゲンの分解および血中へのグルコースの放出を引き起こさせる。肝臓はタンパク質代謝においても重要な役割を果たしており、これは主としてアミノ酸の脱アミノ化および生じた毒性アンモニアから尿素への変換によるものであり、尿素は腎臓により排泄されうる。また、肝臓は多数の薬物およびホルモンを解毒する。さらに、肝臓は、トリグリセリドを貯蔵し脂肪酸を分解しリポタンパク質を合成することにより脂質代謝に関与している。また、肝臓は胆汁を分泌し、これは脂肪、コレステロール、リン脂質およびリポタンパク質の消化を助け、また、ビタミン(A、B12、D、EおよびK)およびミネラル(鉄および銅)を貯蔵する。さらに、肝臓のクッパー細胞は、古くなった赤血球および白血球ならびに一部の細菌を貪食する。ヘムの分解産物であるビリルビンは肝臓により胆管内に排泄され、胆管を通って腸管内へ送られる。
【0008】
肝障害の原因は多種多様である。肝臓の炎症である肝炎は、一般には、アルコール中毒もしくは他の毒物の摂取またはウイルスもしくは他の寄生生物による感染によって生じる。肝硬変は実質細胞の破壊およびそれらの結合組織による置換により特徴づけられる。例えばC型肝炎ウイルスによる感染から生じる肝炎は、しばしば、硬変へと進行する。一方、B型肝炎ウイルス感染は、多くの場合、肝癌(ヘパトーマ)を引き起こす、と強く信じられている。ヘパトーマは、例えば発癌物質への曝露による、内因性癌遺伝子の活性化によっても引き起こされうる。
【0009】
これらの障害の重篤な形態は慢性または急性肝不全を引き起こしうる。劇症肝炎(FHP)は肝細胞の大規模な壊死およびそれに伴う急激で重篤な肝代謝不全に関連づけられる。重要な肝機能の一時的または永久的な不全の場合には、部分的または全体的な肝臓置換が必要である。
【0010】
肝臓は顕著な再生能力を有する。例えば、ラットでは、70%肝切除肝臓は約7日後にはその元の質量を再生するであろう。しかし、肝臓は非常に多くの重要な生化学的機能を行っているため、重篤な肝臓損傷または肝臓の欠失は急速に致死性となる。したがって、肝再生過程に関与する分子的因子を同定するために、いくつかの努力がなされている。
【0011】
従来のほとんどの研究は、術後の最初の数時間(例えば、1〜6時間)に生じる事象に焦点を合わせたものである。肝細胞の運命および機能(すなわち、増殖および分化)を調節する遺伝子の同定は非常に困難である。1つの研究において、in vivo再生モデルにおける肝細胞増殖が調べられた。これに関して、Hagiyaら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 9:8142-8146ではALR (肝再生の促進因子)をラットからクローニングし、Hsuら, 1992, Mol. Cell Biol. 12:4654-4665では、肝再生因子1(LRF-1)と称される新規ロイシン-ジッパー含有タンパク質をコードする遺伝子を同定し、Mohnら, 1991, Mol. Cell Biol. 11:381-390では41個の新規な極初期部分的DNA配列を同定した。これらの遺伝子は、部分肝切除後の早期の時期(例えば、1〜6時間)における発現を調べることにより単離された。再生のこの初期段階においては、急性期炎症タンパク質の発現がかなり高く、それにより、肝再生に特異的な発現を有さないためそれほど有用ではない遺伝子の誘導された発現の「バックグラウンド」を与える。このアプローチは以下のいくつかの理由により制限される:(i)そのアプローチは因果関係を示すものではなく、肝細胞の運命との関係(すなわち、再生促進性または抗再生性)を確認するために遺伝子をフィルターにかける方法が存在しない、(ii)遺伝子発現における変化が肝臓中の全ての細胞型(肝細胞と肝臓の33%を構成するその他の細胞)について混合されてしまう、(iii)動物間で大きなばらつきが存在する。この特異性の欠如を克服することが、肝障害の早期診断および肝臓の特異な再生能を利用する治療の改良のために緊急に必要とされているツールを得る上で決定要因となりうる。
【発明の開示】
【0012】
概要
本開示は、細胞間相互作用の研究を促進するための遺伝子発現プロファイリング法を提供する。該非実質性遺伝子発現データは、例えば、非実質性フィーダーレイヤー上の胚幹細胞の自己再生および繊維芽細胞上のケラチノサイトの分化のような多様な領域において候補遺伝子を同定するためにも用いられうる。
【0013】
本発明は、実質細胞集団に関する機能プロファイルを規定する分子メディエーターを同定する方法を提供する。その方法は、(a)実質細胞集団と第1非実質細胞集団との共培養の第1プロファイルを得る工程であって、該実質細胞の組織特異的機能を測定し、該組織特異的機能を第1非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることを含む工程、(b)該実質細胞集団と第2非実質細胞集団との共培養の第2プロファイルを得る工程であって、該実質細胞の組織特異的機能を測定し、該組織特異的機能を第2非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることを含む工程、(c)機能プロファイルを作成する工程であって、(i)該組織特異的機能における変化を特定し、(ii)第1遺伝子発現プロファイルと第2遺伝子発現プロファイルとを比較して1以上の遺伝子発現の相違を特定し、(iii)それらの1以上の遺伝子を該組織特異的機能における変化と相関させることを含む工程、を含み、ここで、該機能プロファイルは候補分子メディエーターのアイデンティティ(identity)を含む。
【0014】
本発明はまた、本明細書に記載の方法から得られた機能プロファイルのコンピューター読取り可能リストを含んでなるデータベースを提供する。
【0015】
本発明はまた、実質細胞機能に対する影響について化合物をスクリーニングする方法を提供する。該方法は、実質細胞培養系を試験化合物または物質と接触させ、被検実質細胞型について機能プロファイルに記載の1以上の分子メディエーターの発現を測定することを含む。
【0016】
本発明はまた、本発明の方法により同定された分子メディエーターまたは分子メディエーターの産生を促進する物質を投与することを含んでなる、肝疾患または障害を有する患者の治療方法であって、該分子メディエーターが肝細胞機能に対して正の効果を及ぼす、治療方法を提供する。1つの態様においては、該分子メディエーターはT-カドヘリンである。
【0017】
本発明は更に、本発明の方法により同定された分子メディエーターのインヒビターを投与することを含んでなる、肝障害を有する患者の治療方法であって、該分子メディエーターが肝細胞機能に対して負の効果を及ぼす、治療方法を提供する。
【0018】
また、本発明は肝細胞の培養方法も提供する。該方法は、肝細胞を、本発明の方法により同定された遺伝子または遺伝子産物(例えば、表1に記載のもの)と接触させることを含む。
【0019】
本発明は、実質細胞集団と支持細胞集団とを含んでなる共培養物であって、該支持細胞集団が、本発明の方法により同定された分子メディエーターをコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトまたは形質転換されており、該分子メディエーターが実質細胞機能に対して正の効果を及ぼす、共培養物を提供する。
【0020】
本発明は更に、分子メディエーターの発現を促進する物質と共に肝細胞を培養することを含んでなる、肝細胞機能を促進する方法であって、該分子メディエーターが本発明の方法により同定され、該分子メディエーターが肝細胞機能に対して正の効果を及ぼす、方法を提供する。
【0021】
本発明の1以上の実施形態の詳細は添付図面および後記の説明において記載されている。本発明の他の特徴、目的および利点は該説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
詳細な説明
組織の発生および機能は、分化、増殖および遊走をモジュレーションする、非実質細胞と実質細胞との間の相互作用に左右される。特に、実質-非実質細胞相互作用は生理学、病態生理学、癌、発生において、および「組織工学(tissue engineering)」により組織機能を置換するための試みにおいて重要である。そのような細胞間相互作用の機能的重要性は十分に確認されているが、根底をなす分子メカニズムは依然として不明のままである。これらの現象の研究は更に、器官において見出される支持細胞型(例えば、ストロマ/非実質細胞)の多様性により妨げられている。例えば、繊維芽細胞は、それらの形態、間葉マーカーおよび組織培養プラスチックへの接着性に基づいて一緒に分類されることが多いが、単一器官内の繊維芽細胞でさえも、それらの転写プロファイルにおいて有意に異なりうる。非実質細胞におけるそのような劇的な転写上のばらつきが周辺実質細胞とのそれらの相互作用に影響を及ぼすと予想される場合でさえ、実質細胞機能との非実質遺伝子発現の相関は体系的には検討されていない。そのような相関データは、所定の組織における細胞間相互作用の根底をなすメカニズムに対する洞察をもたらす。
【0023】
ゲノム医学の時代においては、生物医学的現象は、個々の分子種の研究によってではなく包括的分析によって研究されうる。このシステムレベルのアプローチは、臨床試験を階層化し腫瘍の転移能を予想するために用いられている。本開示は、実質/非実質細胞相互作用における細胞間コミュニケーションのメカニズムを調べるための機能的ゲノムアプローチを提供する。種々の生物学的現象の研究に対して一般化されうる方法で、機能的結果を評価し、遺伝子発現のパターンと相関させた。初代実質細胞を種々の非実質細胞系(NPC)と共培養して、組織/実質特異的機能の変動的な誘導をもたらした。機能プロファイルと正(すなわち、促進的)および負(すなわち、抑制的)に相関する発現を示す非実質遺伝子をカタログ化した。このアプローチを用いて、本発明の肝モデルにおいて、多数の機能的に特徴づけされた候補物を同定した。該候補物は、関連する細胞間コミュニケーションカテゴリー(細胞表面、マトリックス、分泌因子)に含まれるものであった。本開示の方法を用いて、データベースを作成した。これは、肝細胞を安定化する非実質微環境の最初の包括的分子的定義を提供するものである。したがって、本開示は、実質細胞機能(例えば、肝特異的機能)の誘導において役割を果たす候補分子メディエーターの方法、系および有用なデータを提供する。これらの情報は、in vitroおよびin vivoにおける安定化組織/実質特異的機能において使用されうる方法および組成物を提供する。
【0024】
例えば、in vivo肝発生は内胚葉肝芽と周辺間葉との相互作用を必要とし、初期発生には可溶性シグナルFGF-2およびBMP-4が不可欠である。しかし、更なる肝発生のためには、未知メディエーターを介した細胞間接触も必要である。種々の種および器官からの過剰の別個の非実質細胞型との初代肝細胞のin vitro共培養は、肝器官形成によく似た様態で分化肝細胞機能を支持することが示されている。これらの肝細胞共培養は、肝臓の生理学および病態生理学、例えば脂質代謝および急性期応答の誘導の種々の態様を研究するために用いられている。この研究分野は肝組織工学と医薬スクリーニング用のin vitroモデルの開発との両方に関連しているため、この研究分野には特に大きな関心が寄せられている。
【0025】
細胞間相互作用のメカニズムを研究するための通常のアプローチは馴らし培地およびトランスウェル(transwell)培養を含むものである。最近では、肝細胞共培養においては、これらの技術は、細胞-細胞コミュニケーションのメカニズムに対する更なる洞察をもたらす微小加工に基づくパターン形成ツールで補完されている。そのような実質-非実質相互作用を研究するための利用可能な技術の進歩にもかかわらず、肝細胞共培養における潜在的分子メディエーターの研究は一般には、個々の候補物を順次研究することによって進展している。機能ゲノミクスの時代においては今や、遺伝子発現の全体的パターンを、細胞間相互作用から生じる機能的応答と相関付ける機会が存在する。バイオインフォマティクスツールと共にDNAマイクロアレイを使用することにより、遺伝子発現の定量的並行測定を行うことが可能となっている。
【0026】
相当な研究にもかかわらず、実質-非実質相互作用の分子メディエーターの全体像は入手できていない。例えば、非実質細胞との肝細胞共培養における分子メディエーターは入手できていない。本発明の方法は、多数の分子メディエーターを同定する能力をもたらした。例えば、本発明の方法を用いて、繊維芽細胞との肝細胞の共培養において、有望な候補分子メディエーターを同定した。少数のメディエーターには、例えばE-カドヘリン、T-カドヘリンおよび肝調節性タンパク質(LRP)が含まれる。しかし、E-カドヘリンおよびLRPを欠く非実質細胞は、肝機能を支持する能力を保持しており、このことは、いずれもが「共培養効果」の唯一のメディエーターではないことを示唆している。実際、いくつかの異なるメカニズムが協働して共培養において実質細胞(例えば、肝細胞)機能をモジュレーションしていると思われる。それでも、これらの多因子メカニズムの少なくともいくつかは哺乳動物において高度に保存されているようである。
【0027】
そのような分子メディエーターは種々の生物種(すなわち、ヒト、ラット、マウス、ブタ)からの初代肝細胞機能において役割を果たしており、種々の種、組織または発生学的器官(上皮または間充織)からの非実質細胞により種々の度合で安定化される。したがって、実質細胞(例えば、肝細胞)の分化を支持する一連の非実質細胞由来シグナルの同定は広範な基本的および技術的関連性を示すであろう。
【0028】
本発明は、実質細胞の機能、維持および/または分化の分子メディエーターの同定のための方法および系を提供する。本発明はまた、実質細胞(例えば、肝細胞または肝細胞様細胞)の機能を改善する一連の分子メディエーター(例えば、遺伝子およびポリペプチド)、および実質細胞(例えば、肝細胞または肝細胞様細胞)の機能を抑制する一連の分子メディエーター(例えば、遺伝子およびポリペプチド)を提供する。一連のそのような分子メディエーターは本明細書中では機能プロファイルと称される。そのような分子メディエーターは実質細胞型の活性プロファイルを変化させるように機能する。
【0029】
本発明の1つの態様においては、本発明のモデル系において、肝細胞機能の促進性物質またはインヒビターとして、ポリヌクレオチドおよびそのコード化ポリペプチド産物(総称的および個別的に分子メディエーター)を同定した。該ポリペプチドは次のような多数の実施形態において有用である:(i)細胞に基づく治療法 - 該ポリペプチドは、組織工学で作製された肝臓、生体人工肝臓デバイスなどのための肝細胞を安定化するために使用されうる;(ii)in vitroモデルにおいて - これらのポリペプチドは薬物試験、抗ウイルス療法の開発のためのまたは環境毒性に関するin vitro肝モデルの機能を改善しうる;(iii)臨床療法において - これらのポリペプチドは、損傷した肝臓の回復を改善するための「肝臓保護物質」として作用しうる(臨床用肝臓保護物質の場合、これらのポリペプチドおよびポリヌクレオチドは潜在的療法の新規セットを提供し、その他のものはほとんどは実験的に決定されており(例えば、IL-6)またはトランスジェニック動物において研究されている);(iv)幹細胞分化において - これらのポリペプチドは、in vitroまたはin vivoにおける胚性または成体幹細胞を、肝細胞系列に沿って、より効率的に分化させるよう作用しうる;(v)細胞系維持において - これらの分子は、商業的に入手可能な不死化細胞系の機能を改善するよう作用しうる。例えば、これらのポリペプチドは、組織工学で作製された装置または生体人工肝臓における別の細胞型との共培養の必要性に代わるものとなりうる;(vi)細胞機能測定 - 該ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは肝機能ならびに関連疾患および障害の指標として使用されうる。
【0030】
「非実質」細胞には、限定的なものではないが内皮細胞、周皮細胞、マクロファージ、単球、形質細胞、マスト細胞、脂肪細胞などを含む、疎性結合組織において見出される他の細胞および/または要素を伴うまたは伴わないストロマ細胞(例えば、繊維芽細胞)が含まれる。ストロマ細胞は一般的には組織特異的細胞の支持を形成する。通常は、ストロマ細胞は組織特異的ではなく、むしろ、体内のすべての組織に遍在する。最も一般的なタイプのストロマ細胞は繊維芽細胞である。組織培養においては、ストロマ細胞は、しばしば、「フィーダーレイヤー」と称される。一般的に使用される繊維芽細胞系の例には、3T3-J2、NIH-3T3およびマウス胚繊維芽細胞が含まれる。例えば、一般的にはマウス胚繊維芽細胞(MEF)がフィーダーレイヤーとして使用される。共培養の前に、MEFに照射(35〜50グレイのレベル)を行って、代謝機能を損なうことなく細胞増殖を低減させることが可能である(Shamblottら 1998, Proc Natl Acad Sci USA 95:13726-13731; Amitら 2000, Dev Biol 227:271-278)。一方、種々の化学物質/薬物(例えば、化学療法薬)が同様の結果を達成しうる。ついで実質細胞をMEFフィーダーレイヤー培養物上にプレーティングする(Reubinoffら 2000, Nature Biotechnology 18:399-404; Thomsonら 1998, Science 282:1145-1147)。
【0031】
組織特異的または実質細胞は、その支持骨格からは区別される器官の不可欠かつ特徴的な組織を形成する細胞を含む。本発明で使用する実質細胞型は、培養すべき組織(これは、限定的なものではないが少数ながら挙げると骨髄、皮膚、肝臓、膵臓、腎臓、神経組織および副腎を含みうる)に依存する。本発明は、肝細胞の具体例を使用して説明されているが、本発明の方法および組成物は、身体の種々の組織に由来する他の実質細胞型に適用可能である。
【0032】
本発明は、実質細胞機能をモジュレーションしうる非実質遺伝子を同定するための遺伝子発現プロファイリングアプローチを提供する。細胞間相互作用の「機能プロファイル」は、実質(例えば、肝)機能の高インデューサー、中インデューサーまたは低インデューサーとして評価される少なくとも2つの非実質細胞(例えば、いくつかの密接に関連したマウス繊維芽細胞)との共培養の際の実質細胞(例えば、肝細胞)における実質特異的機能の測定により確立される。遺伝子発現プロファイルは各非実質細胞型に関して得られ、実質細胞の機能測定結果(例えば、実質細胞特異的活性)に相関づけられる。該実質細胞特異的活性は各非実質細胞型によって異なるであろう。ついで、各非実質細胞型からのプロファイルの比較により、機能プロファイルを得る。1つの態様においては、遺伝子発現プロファイリングのために使用する非実質細胞は、実質細胞型(例えば、肝細胞)と共培養を行った非実質細胞である。しかし、実質細胞機能の誘導に関与する候補遺伝子の同定においては、純粋な繊維芽細胞培養を使用することが可能である。実験的証拠は、生存不能な非実質性フィーダーレイヤー(照射、乾燥、固定、マイトマイシンC処理されたもの)が、生存可能な非実質細胞に匹敵する応答を惹起することを示唆しており、このことは、少なくともいくつかの非実質由来シグナルは相互シグナリングを必要としないという考えを裏付けるものである。もう1つの態様においては、該機能的結果に関与する一連の候補物を得るために、共培養環境の他の態様を可能な限り近似して模倣するように純粋な非実質細胞培養を処理する(例えば、培地製剤およびマトリックスコーティングで処理する)。本発明の方法において使用する非実質細胞型の数は少なくとも2つの非実質細胞型を含む。通常は、それらの非実質細胞型は、それぞれ高いおよび低い実質細胞特異的活性を誘導するであろう。しかし、該相違は高-高、中-高、中-中、低-中、および低-低でありうる。典型的には、非実質細胞との共培養の際の実質細胞活性における相違は、測定可能な相違を要するに過ぎない。
【0033】
したがって、本発明は、実質細胞集団と第1非実質細胞集団との共培養の第1遺伝子プロファイルを、該実質細胞の組織特異的機能を測定し該組織特異的機能を第1非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることにより得ることを含んでなる、組織の発生およびモジュレーションの分子メディエーターを同定する方法を提供する。少なくとも2つの非実質細胞型を使用し、すなわち、該方法は、該実質細胞集団と第2非実質細胞集団との共培養の第2遺伝子プロファイルを、該実質細胞の組織特異的機能を測定し該組織特異的機能を第2非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることにより得ることを含む。該組織特異的機能における変化を特定し第1遺伝子発現プロファイルと第2遺伝子発現プロファイルとを比較して1以上の遺伝子発現の相違を特定し、それらの1以上の遺伝子を該組織特異的機能における変化と相関させることにより、機能プロファイルを作成するが、ここで、該機能プロファイルは候補分子メディエーターのアイデンティティ(identity)を含む。
【0034】
もう1つの態様においては、本発明は、肝特異的機能の誘導に関与する非実質細胞の分子メディエーターを同定するために遺伝子発現プロファイリングを利用する機能的ゲノムアプローチを提供する。遺伝子チップマイクロアレイを使用して得た繊維芽細胞遺伝子発現プロファイルと、機能的応答を相関させる。遺伝子発現プロファイルのマイクロアレイデータ解析は、肝機能の誘導に関与する細胞間コミュニケーションカテゴリー(例えば、細胞表面、細胞外マトリックス、分泌因子)における候補遺伝子を特定する。種々のデータベース(例えば、PubMed、GenBank)を使用する更なる解析は機能的特徴づけのための候補物の優先順位付け(prioritization)を容易にする。
【0035】
機能プロファイルは、実質細胞集団と第1非実質細胞集団との共培養からの第1遺伝子プロファイルを、該実質細胞の組織特異的機能を測定し該組織特異的機能を第1非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることにより得て、また該実質細胞集団と第2非実質細胞集団との共培養の第2遺伝子プロファイルを、該実質細胞の組織特異的機能を測定し該組織特異的機能を第2非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることによって得ることにより、作成する。該組織特異的機能における変化を特定し第1遺伝子発現プロファイルと第2遺伝子発現プロファイルとを比較して1以上の遺伝子発現の相違を特定し、それらの1以上の遺伝子を該組織特異的機能における変化と相関させることにより、機能プロファイルを得るが、ここで、該機能プロファイルは候補分子メディエーターのアイデンティティ(identity)を含む。
【0036】
本発明の方法において使用する非実質細胞の選択は、使用する実質細胞型によって決まるであろう。例えば、種々の肝由来非実質細胞および非肝由来非実質細胞の両方が共培養において肝機能を誘導することが報告されている。さらに、初代肝細胞とは異なる種に由来する非実質細胞(初代および不死化の両方)による誘導が報告されており、これは、根底をなすメカニズムの、考えられうる保存を示唆している。不死化マウス繊維芽細胞の入手容易性および培養容易性は、組織工学およびバイオリアクター(限定的なものではないが生体人工肝臓デバイスを含む)の開発における用途について実質細胞(例えば、肝細胞)機能に及ぼすそれらの影響における関心を呼び戻している。
【0037】
本開示は、同一および異なる種からの実質および非実質細胞の共培養媒介性安定化を実証している。例えば、本開示は、繊維芽細胞と同一の種(マウス)および別の種(ヒト)からの肝細胞の共培養安定性を実証している。また、他の器官系における支持フィーダーレイヤーとして3T3および初代マウス胚繊維芽細胞が一般的に使用されるため、得られた遺伝子発現データは多数の他の用途において有用である。したがって、肝臓の非実質細胞(例えば、シヌソイド内皮細胞)におけるマウス繊維芽細胞系において明らかにされた候補遺伝子の役割を知ることが可能である。
【0038】
繊維芽細胞遺伝子発現プロファイルは多数の方法により得られうるが、典型的には、それは遺伝子チップ(例えば、Affymetrix GeneChips(商標))により得られ、実質細胞の機能的活性と相関付けられる。本発明の1つの態様においては、遺伝子チップデータのデータ解析を用いて機能プロファイルを得る。例えば、重複する遺伝子を排除し、重複しない遺伝子または異なるレベルで発現される遺伝子に集中することにより、該非実質細胞発現プロファイルを縮減することが可能である。そのような方法を用いて、肝細胞共培養から得られた非実質遺伝子プロファイルを、約12000個の繊維芽細胞遺伝子および発現配列タグから、共培養において肝細胞機能をモジュレーションする少数の候補遺伝子に縮減した。実施例として試験するための候補物を選択した。ついで、それらは本発明のモデル系における実質/非実質相互作用において役割を果たしていることが示され、それにより該アプローチが検証される。最終的には、本明細書に記載の機能的ゲノムアプローチは、例えば組織工学、幹細胞生物学および癌のような多様な領域における細胞間相互作用のメカニズム研究を促進する一般的手段として役立ちうる。
【0039】
本発明の方法および系を用いて、肝機能の誘導に関与する細胞コミュニケーションカテゴリー(細胞表面、細胞外マトリックス、分泌因子)における多数の機能的に特徴づけられる候補遺伝子および遺伝子産物(すなわち、ポリペプチド)を同定した。例えば、細胞表面タンパク質であるN-カドヘリンを肝細胞繊維芽細胞境界に局在化し、一方、吸着デコリンは純粋培養においてならびに低誘導性繊維芽細胞との共培養において肝機能をアップレギュレーションした。T-カドヘリンも肝細胞機能において役割(例えば、アルブミン生成)を果たしていることが示された。
【0040】
本明細書に記載の遺伝子発現プロファイリングアプローチを用いて、本開示は、3T3繊維芽細胞における末端切断型カドヘリン(T-cad)の発現が肝細胞を安定化することを実証している。カドヘリンは全身の組織における細胞間相互作用を媒介する。カドヘリンは多数の身体組織において一般的に発現される。例えば、神経-カドヘリン(N-カドヘリン)、上皮-カドヘリン(E-カドヘリン)および肝臓-腸-カドヘリンはすべて、発生中の肝臓および成体の肝臓において発現される。シヌソイド内皮細胞は血管内皮カドヘリンを発現し、胆管細胞(胆道細胞)はE-カドヘリンを発現する。肝細胞/非実質共培養におけるカドヘリンの役割は大部分は見出されていないが、L929繊維芽細胞におけるE-カドヘリン発現は肝細胞機能と正に相関することを証拠は示している。T-cadは細胞内ドメインを欠き、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)部分を介して細胞膜に連結されている。後記実施例に記載されているとおり、T-カドヘリンは、単独でまたは支持細胞内にトランスフェクトされた場合に、肝細胞特異的活性を刺激する。
【0041】
「低インデューサー」繊維芽細胞は実際には肝細胞機能を能動的に抑制しうるという前提に基づき、機能プロファイルは、通常は、候補遺伝子/分子メディエーターを2つのグループ(誘導プロファイルとの正または負の相関)にカテゴリー化する。本開示の方法を用いて得られる細胞間コミュニケーションカテゴリーにおける機能的に特徴づけられた候補物のうち、3つの候補物を実験的に検証した。細胞外マトリックスプロテオグリカンであるデコリンの遺伝子発現は誘導活性と正の相関を示した。実験により、デコリンは実際に、「低」誘導活性を有する繊維芽細胞と肝細胞との共培養および純粋肝細胞培養の両方において、肝機能を誘導した(例えば、図5を参照されたい)。デコリンの誘導能にもかかわらず、いずれの培養も、デコリンのみの添加によっては(3T3-J2の場合と同様に)肝マーカーの最大生成速度を達成しなかった。これらのデータは、該遺伝子発現プロファイリングアプローチを検証し、細胞間相互作用が多因性でありうるという仮定を確認するのに役立つ。カドヘリン経路の解析は候補物としてのプラコグロビン(γ-カテニン)の同定からもたらされた。また、N-カドヘリン、β-カテニン、発現プロファイルは誘導活性と負の相関を示した。ヘテロ型(繊維芽細胞/肝細胞)連結部におけるN-カドヘリンおよびβ-カテニンの局在化は、免疫蛍光を用いて確認された(例えば、図4を参照されたい)。これは該細胞型間の機能的コミュニケーションの最初の証拠を提供するものである。これとは対照的に、他のグループはE-カドヘリンに対する正の誘導性役割を示している。N-カドヘリン経路とE-カドヘリン経路との間の相互作用も報告されている。
【0042】
また、実質細胞は、限定的なものではないが肝臓、皮膚、膵臓、神経組織、筋肉などを含む種々の起源から得られうる。そのような実質細胞は生検によりまたは死体から得られうる。例えば、肝細胞のin vitro培養物がヒトおよび実験動物から調製されている。酵素漏出、代謝および細胞膜に対する潜在的毒素の効果を研究するために、ラット肝細胞の初代培養が広く使用されている(Grisham, 1979, Int. Rev. Exp. Pathol. 20:123-210; AcostaおよびMitchell, 1981, Biochem. Pharmacol. 30:3225-3230)。
【0043】
肝細胞は、ヒト肝臓生検または剖検材料に適合化されうる通常の方法(BerryおよびFriend, 1969, J. Cell Biol. 43:506-520)により単離されうる。簡潔に説明すると、カニューレを門脈または門枝(portal branch)内に導入し、組織が青ざめるまで肝臓をカルシウム不含またはマグネシウム不含バッファーで潅流する。ついで該器官をタンパク質分解酵素(例えば、コラゲナーゼ溶液)で適当な流速で潅流する。これは結合組織骨格を消化するはずである。ついで肝臓をバッファー中で洗浄し、該細胞を分散させる。該細胞懸濁液を70μmナイロンメッシュを通して濾過して残渣を除去することが可能である。2または3回の分画遠心分離により該細胞懸濁液から肝細胞を選択することが可能である。
【0044】
ヒト肝細胞の単離のためには、HEPESバッファーを使用して切除ヒト肝臓の個々の葉の潅流を行ってもよい。HEPESバッファー中のコラゲナーゼの潅流は約30ml/分の速度で行うことが可能である。コラゲナーゼと共に更に37℃で15〜20分間インキュベートすることにより、単細胞懸濁液を得る(Guguen-GuillouzoおよびGuillouzo編, 1986, "Isolated and Culture Hepatocytes" Paris, INSERM, ならびにLondon, John Libbey Eurotext, pp.1-12; 1982, Cell Biol. Int. Rep. 6:625-628)。
【0045】
ついで、非実質細胞(例えば、CHO細胞、繊維芽細胞など)との共培養において、単離された肝細胞を使用することが可能である。そのような共培養は、肝特異的代謝活性の発現および/または肝細胞増殖に適した微環境を含む。肝細胞の機能的活性は、例えばアルブミン、フィブリノーゲン、トランスフェリンおよび他のタンパク質の合成を測定することにより調べることが可能であり、TCDD誘導性cP450活性を示す。ついでそのような活性を、共培養において使用した非実質細胞の遺伝子プロファイルと相関させる。前記のとおり、本発明の方法においては少なくとも2つの非実質細胞型(例えば、2つの繊維芽細胞系)を使用する。典型的には、1つの非実質細胞型は、より高レベルの実質細胞(例えば、肝細胞)の機能的活性を促進するであろう。
【0046】
細胞増殖は細胞計数によりおよび通常の顕微鏡検査により測定されうる。実質細胞増殖は、共培養組織にわたる組織学的切片において明らかである。そのような実質細胞は共培養の最大細胞として同定されうる。該実質細胞は、不規則な形状で枝分かれした細胞であるストロマ細胞とは異なり、典型的には円形である。該実質細胞は組織特異的マーカー(例えば、肝臓においては、そのような組織特異的タンパク質にはアルブミン、フィブリノーゲン、トランスフェリンおよびサイトケラチン19が含まれる)に関して陽性染色される。該実質細胞の機能的活性は非実質細胞のタイプによって様々となろう。例えば、共培養内の肝細胞によるアルブミンの発現の量および速度は、共培養において使用する繊維芽細胞系のタイプ間で様々となろう。
【0047】
薬物の25%もが、不測のヒト肝毒性により失敗に終わっているように、薬物誘発性肝疾患は製薬業にとって大きな経済的問題である。動物モデルは、種によるばらつき、および実験条件当たり5〜10の動物実験を必要とする動物個体間変動性のため、ヒト毒性の、限られた状況を表すに過ぎない。薬物発見/開発過程にin vitro肝モデルを加えることは以下の幾つかの利点をもたらしうる:開発パイプラインから潜在的に毒性の薬をより早期に排除できること、動物当たり何百もの実験を可能にすることによる変動性の減少、および患者の曝露を伴わないヒト肝組織のモデル。しかし、現在のin vitro肝モデルは、典型的には、長期表現型肝細胞(初代肝細胞)安定性を欠き、したがって、肝機能に対する生体異物および環境毒素の慢性的効果は一般的にはin vitroで検査されない。さらに、肝臓の機能および健康状態を評価するためには特定のマーカーが日常的に使用されているが、そのようなマーカーは、そのような薬剤の根本をなす長期的作用の分析においては、いくらか限定的である。本開示の方法により同定され提供されるマーカーの分子分析は、肝機能、肝細胞健康状態、および非実質細胞との肝細胞相互作用(適切な肝機能のための必要な属性)を評価するために用いられうる。
【0048】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、処理されている実質細胞に関する「機能プロファイル」において同定された遺伝子のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現を測定することにより、用量制限および細胞毒性肝効果に関して薬物をスクリーニングする方法を提供する。
【0049】
本発明はまた、実質細胞機能に対する影響について試験物質をスクリーニングする方法を提供する。該方法は、実質(例えば、肝)培養系を該物質と接触させ、使用している実質細胞型に関する機能プロファイルにおける1以上の遺伝子の発現を測定することを含む。本発明の方法においては、例えば細胞毒性物質、増殖/調節因子、医薬物質などのような多種多様な物質をスクリーニングすることが可能である。例えば、そのような物質には、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模擬体および小分子が含まれうる。この目的のためには、共培養をin vitroで維持し、被検物質にさらす。細胞毒性物質の効果は、培養されている特定の実質細胞型に関する機能プロファイルにおける1以上の遺伝子をモジュレーションするその能力により測定されうる。そのような遺伝子発現の変化は、核酸プローブ、PCR技術、ノーザンブロット、サザンブロット、ポリペプチドの測定(例えば、ウエスタンブロットなど)により測定されうる。そのような物質の効果は実質細胞活性に対する該効果の測定によりもたらされうると認識されるが、そのような測定は、適切な組織機能に必要な共培養遺伝子発現における根本をなす変化を特定しない。
【0050】
したがって、本明細書に記載のとおりに機能プロファイルを得、分子メディエーターを含む機能プロファイルにおける変化を、共培養との該物質の接触の前および後で測定する。簡潔に説明すると、実質細胞の組織特異的機能を測定し該組織特異的機能を第1非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることにより、実質細胞集団と第1非実質細胞集団との共培養から、第1遺伝子プロファイルを得、そして実質細胞の組織特異的機能を測定し該組織特異的機能を第2非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることにより、実質細胞集団と第2非実質細胞集団との共培養の第2遺伝子プロファイルを得る。該組織特異的機能における変化を特定し、第1遺伝子発現プロファイルと第2遺伝子発現プロファイルとを比較して1以上の遺伝子発現の相違を特定し、それらの1以上の遺伝子を該組織特異的機能における変化と相関させることにより、機能プロファイルを作成するが、ここで、該機能プロファイルは候補分子メディエーターのアイデンティティ(identity)を含む。実質細胞集団と第1および/または第2非実質細胞集団との共培養を、被検物質が該細胞と相互作用する条件下で被検物質と接触させ、ついで該共培養を、該機能プロファイルを含む1以上の分子メディエーターの発現における変化に関してアッセイする。そのような分子メディエーターの発現における変化は、組織機能をモジュレーションする物質を示す。本明細書に記載されているとおり、分子メディエーターの発現における変化は、限定的なものではないがPCR、ノーザン/サザン/ウエスタンブロットなどを含む一般的な分子生物学的および/またはタンパク質アッセイ技術を用いて得られうる。
【0051】
1つの態様においては、医薬、抗腫瘍剤、発癌物質、食品添加物および他の物質の肝細胞(例えば、ヒト肝細胞)に対する細胞毒性を、本発明の肝培養系、ならびに表1および2において同定された肝細胞に関する機能プロファイルを使用して試験することができる。
【0052】
例えば、安定な増殖性肝共培養物が一旦確立されたら、該培養物を種々の濃度の被検物質にさらす。被検物質とのインキュベーションの後、該培養物を位相差顕微鏡検査により検査して、最高許容用量(形態学的異常が最も早く出現する被検物質濃度)を決定することが可能である。細胞毒性試験は、当業者に公知の技術を用いて、培養物中の細胞生存度を評価するための種々の超生体色素を用いて行うことが可能である。表1および2において同定されているような機能プロフィールに挙げられた分子メディエーターを測定し、発現に対する被検物質の効果を判定することが可能である。該遺伝子および遺伝子産物の測定は、例えばおよび遺伝子または遺伝子産物とそれぞれ特異的にハイブリダイズまたは相互作用するPCRおよび抗体を使用する公知技術により行うことが可能である。
【0053】
同様に、薬物の有益な効果を、共培養を使用して評価することができる。例えば、増殖因子、ホルモン、薬物(肝細胞の形成または活性を促進する疑いのあるもの)を試験することが可能である。この場合、安定的培養物を被検物質にさらしてもよい。インキュベーション後、被検物質の効力の指標として、生存度、増殖、形態、細胞型などに関して該培養を検査することが可能である。また、特異的実質細胞に関して得られた機能プロフィールにおいて挙げられている遺伝子および遺伝子産物(例えば、表1および2において同定されているもの)の発現を判定することが可能である。種々の濃度の薬物を試験して用量応答曲線を導き出すことが可能である。
【0054】
別の態様においては、本開示は、細胞間相互作用のメカニズムを研究し培養モデルにおける候補ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの役割を検証するための遺伝子発現プロファイリング系を提供する。測定すべきポリヌクレオチド発現プロファイルおよびポリペプチドの量は、表1および2に記載のポリヌクレオチドおよびポリペプチドのものを含む。これは生体染色技術、ELISAアッセイ、免疫組織化学などにより容易に評価することが可能である。該肝培養系内で培養された正常細胞に対する種々の薬物の効果を評価することが可能である。
【0055】
薬物の発見および開発におけるそれらの使用に加えて、細胞に基づく治療法のための肝細胞への幹細胞(胚幹細胞、成体前駆体)の分化を促進するために、肝細胞機能をアップレギュレーションし安定化する分子を使用することが可能である。肝細胞への幹細胞の変換は、非実質因子、細胞外マトリックス分子および細胞-細胞接触の適切なバランスが得られない限り肝細胞が脱分化(肝特異的機能が低下)するin vitro肝モデルから利益を受けうる活発な研究分野である。
【0056】
肝疾患に対する細胞に基づく治療法(例えば、生体人工肝臓デバイス)は現在のところ、初代肝細胞に基づくもの、または初代肝細胞もしくは肝癌から誘導された細胞系に基づくものである。そのような治療法が広範な用途および臨床的有効性を獲得するためには、肝細胞を、それらの肝特異的機能の決定的に重要なサブセットを維持またはアップレギュレーションする微環境中に配置する必要がある。表1および/または2において同定された遺伝子をアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションする化合物または遺伝子または遺伝子産物の投与により、生体人工肝臓および培養系におけるそのような肝機能を改善することが可能である。
【0057】
したがって、本発明はまた、実質細胞(例えば、肝細胞)の共培養のin vitro維持を補助するための方法および組成物を提供する。例えば、細胞外マトリックス、培地添加物または非実質/ストロマ細胞(例えば、繊維芽細胞)との共培養を用いて肝細胞の微環境を改変しない限り、肝細胞は肝特異的遺伝子発現および機能(すなわち、アルブミン分泌)をin vitroで急速に喪失することが十分に確認されている。本発明の方法を用いて同定された分子メディエーターの適当な用量および組合せでのin vitro微環境の改変は、薬剤開発において一般に使用される種々の生物種(ラット、マウス、ヒト、サル、イヌ)からの肝細胞の肝特異的機能の維持またはアップレギュレーションを補助しうる。本開示は、ラット、マウスおよびヒト肝細胞の肝特異的機能が、肝細胞および非実質細胞相互作用においてアップレギュレーションされる候補分子メディエーターが同定された由来である繊維芽細胞(およびそれらの分泌タンパク質産物)との共培養の際にアップレギュレーションされることを示している。
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
本発明の方法により得られた機能プロファイルは、実質細胞の増殖、分化および活性において役割を果たす一連の分子メディエーターを規定する。これらの分子メディエーターは幹細胞(例えば、全能性および多能性前駆体を含む組織前駆体)の分化および維持において役割を果たしうる。さらに、本発明の方法を用いて幹細胞の機能プロファイルを得ることが可能である。この態様においては、実質細胞を幹細胞により置換し、該方法を本明細書に記載のとおりに行う。
【0060】
ほとんどの幹細胞は、適切な維持および培養のためには「フィーダーレイヤー」を必要とする(例えば、開示を参照により本明細書に組み入れる米国特許第6,090,622号を参照にされたい)。例えば、胚生殖細胞(EG)または胚幹細胞(ES)および特定のEC(胚性癌)細胞系は、繊維芽細胞(例えば、マウスSTO細胞、例えばMartin, G. R.およびEvans, M. J. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 72: 1441-1445, 1975)のフィーダーレイヤー上で培養された場合にのみ、in vitroで幹細胞表現型を保有するであろう。フィーダー細胞または馴らし培地の非存在下では、ESまたはEGは自然的に多種多様な細胞型に分化し、胚発生中または成体動物において見出されるものに類似したものとなる。因子の適当な組合せにより、ESおよびEGはin vitroで造血系列の細胞(Keller, G.ら, Mol. Cell. Biol. 13: 473-486, 1993; Palacios, R., E. GolunskiおよびJ. Samaridis, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 7530-7534, 1995; Rich, T., Blood 86: 463-472, 1995)、ニューロン(Bain, G.ら, Developmental Biology 168: 342-357, 1995; Fraichard, A.ら, J. Cell Science 108: 3161-3188, 1995)、心筋細胞(Klug, M., M. SoonpaaおよびL. Field, Am. J. Physiol. 269: H1913-H1921, 1995)、骨格筋細胞(Rohwedel, J.ら, Dev. Biol. 164: 87-101, 1994)および血管細胞(Wang, R., R. ClarkおよびV. Bautch, Development 114: 303-316, 1992)を生成することが示されている。ESおよびEGの多能性の維持をもたらす因子は未だ十分には特徴づけられておらず、しばしば、該細胞を採取した生物種に依存する。本発明の方法はこれらの因子の同定および特徴づけを可能にする。
【0061】
本発明は、特定の系列に沿った幹細胞の分化を補助するのに使用しうる種々の実質細胞の機能プロファイルを提供する。例えば、肝細胞実質細胞の機能プロファイルは、細胞の機能、維持および成長において役割を果たしている多数の分子メディエーターを同定するであろう。該機能プロファイルの情報を用いて、該機能プロファイルにおいて同定されている分子メディエーターを使用して、肝細胞系列に沿って分化するよう幹細胞を誘導することが可能である。同様に、所望の系列に沿って幹細胞を分化させるために、他の実質細胞型由来の機能プロファイルを使用することが可能である。
【0062】
さらにもう1つの態様においては、2つの異なるフィーダーレイヤー(すなわち、未分化状態を維持するものおよび分化を誘導するもの)上の幹細胞の培養から得られた機能プロファイルを使用して、未分化状態の幹細胞の維持を助ける分子メディエーターを同定することが可能である。
【0063】
当技術分野で公知の多数の多能性幹細胞が存在する。したがって、幹細胞なる語は、完全には分化していない細胞型を意味する。いくつかの場合には、幹細胞は特定の細胞系列に沿って部分的に分化していてもよく、さらに他の態様においては、幹細胞は、それが多数の異なる細胞型に分化しうるという点で多能性または全能性であってもよい。
【0064】
肝損傷/アポトーシスを最低限に抑えるだけでなく、適当な組合せおよび用量で投与されると肝細胞の成長および維持、肝臓内の幹細胞(すなわち、卵形細胞)の分化を促進し、肝機能をアップレギュレーションし、肝細胞増殖を引き起こす分子が必要とされている。in vitro肝モデル(例えば、本明細書に記載のもの)は、そのような肝臓保護物質を見出すために使用することができ、また既に使用されている。表1に挙げた分子メディエーター、および表2中のメディエーターをダウンレギュレーションするインヒビターは、in vivoでの肝臓保護物質として役立ちうる。本明細書に示されているとおり、表1のそのような分子メディエーターはin vitroで、肝臓の最も豊富かつ機能的な細胞である初代肝細胞の生存性を維持し機能を安定化しうる。同様のアプローチが腎系において有用であることが証明されており、この場合、in vitroで腎上皮細胞を安定化することが示された分子は腎臓の治癒/再生の促進のためのin vivoでの生物活性を有する。
【0065】
したがって、さらにもう1つの態様において、肝細胞損傷および/または肝疾患もしくは障害を有するまたは有するおそれのある患者の治療方法を提供する。該方法は、遺伝子の発現もしくは活性をモジュレーションする物質を投与すること、または表1および/もしくは2においてアクセッション番号により特定された遺伝子もしくは遺伝子産物を投与することを含む。例えば、該方法は、表1においてアクセッション番号により特定されたポリペプチドもしくはポリヌクレオチド、または表2において特定されたポリヌクレオチドもしくはその産物の発現を抑制するポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを、治療を要する患者に投与することを含む。
【0066】
治療的有効量の前記の物質、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドおよび製薬上許容される担体物質は共に、該化合物を必要とする患者への投与(例えば、経口、静脈内、経皮、肺内、膣内、皮下、鼻腔内、イオントホレシスまたは気管内)のための治療用組成物(例えば、丸剤、錠剤、カプセル剤または液剤)を構成する。丸剤、錠剤またはカプセル剤は、該化合物が未消化のまま患者の小腸内へ移行するのを可能にするのに十分な時間にわたり患者の胃内の胃酸または腸酵素から該組成物を保護しうる物質でコーティングされうる。また、該治療用組成物は皮下または筋肉内投与のための生分解性または非生分解性徐放製剤の形態でありうる。該治療用組成物を投与するために、移植可能なまたは外的なポンプを使用して、連続的投与を行うことも可能である。
【0067】
肝疾患または障害を治療するための本発明のペプチドまたは治療用組成物の用量は投与方法、患者の年齢および体重ならびに治療すべき患者の状態によって様々であるが、最終的には担当医師または獣医により決定される。担当医師または獣医により決定された該物質または治療用組成物のそのような量は本明細書中では「治療的有効量」と称される。
【0068】
また、実質組織に関する機能プロファイルを含んでなるデータベースを提供する。1つの態様においては、該データベースは、コンピューターが該データベースを見つけ出し処理しうるようコンピューター読取り可能媒体上に存在する。もう1つの態様においては、該データベースはコンピューター読取り可能媒体上に表1および/または表2を含む。
【0069】
「遺伝子」は、動物または細胞内に天然に存在する上流および下流配列に5'および3'末端において連結された、動物または細胞のゲノム内の配列を含むポリヌクレオチドを意味する。遺伝子は、ポリペプチド鎖の産生に関与するDNAのセグメントを含む。それは、コード領域の前および後の領域(リーダーおよびトレーラー)、ならびに個々のコードセグメント(エキソン)の間の介在配列(イントロン)を含みうる。いくつかの態様においては、本明細書中で特定されているアクセッション番号は参照分子に関する遺伝子配列を含み、他の態様においては、そのアクセッション番号は、イントロン、上流および/または下流非コード領域を欠くポリヌクレオチド配列を含む。「ポリヌクレオチド」はヌクレオチドの重合形態を意味する。いくつかの場合には、ポリヌクレオチドは、それが由来する生物の天然に存在するゲノム内では(1つは5'末端において、1つは3'末端において)直に隣接しているコード配列のいずれに対しても直には隣接していないヌクレオチドの重合体を意味する。したがって、この用語は、例えば、ベクター内、自律複製性プラスミドもしくはウイルス内または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA内に組込まれた、あるいは他の配列から独立して別々の分子(例えば、cDNAまたはmRNA)として存在する組換えDNAを包含する。該ヌクレオチドはリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはいずれかのヌクレオチドの修飾形態でありうる。本明細書中で用いるポリヌクレオチドは、とりわけ、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、ならびに一本鎖および二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖またはより典型的には二本鎖または一本鎖および二本鎖領域の混合物でありうるDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子を意味する。
【0070】
ポリヌクレオチドに関連して用いられている「単離(された)」なる語は、その天然状態から「人間の手により」変更されていることを意味する。すなわち、それが天然に存在するものの場合には、それはその元の環境から取り出されているまたは変化しているまたはそれらの両方に付されている。例えば、生きた動物、生物学的サンプルまたは環境サンプル内にその天然状態で元来的に存在する、天然に存在するポリヌクレオチドは、「単離」されていないが、その天然状態の共存物質から分離された同じポリヌクレオチドは、本明細書中での該用語の用法においては「単離」されている。ポリヌクレオチドが培養中のまたは生物全体の宿主細胞内に導入された場合、それはその天然に存在する形態または環境中にはないため、本明細書中での該用語の用法においては該ポリヌクレオチドは尚も単離されていることになる。同様に、該ポリヌクレオチドは、例えば培地製剤(例えば細胞内へのポリヌクレオチドの導入のための溶液、または化学反応もしくは酵素反応のための組成物もしくは溶液)のような組成物中に見出されうる。「単離(された)」なる語は、他の物質から100%単離されていることを必ずしも意味するわけではなく、ある実質的な程度の単離が行われていることを意味する。例えば、実質的に単離されたポリヌクレオチドは、それが天然で付随している物質の20%またはそれ以上を含まないポリヌクレオチドを包含する。表1および/または2において同定されているかまたは本発明の方法を用いて同定される他の機能プロファイルにおいて同定される遺伝子またはポリヌクレオチドにハイブリダイズさせるためのプローブおよびプライマーとして役立つように、単離ポリヌクレオチド(またはオリゴヌクレオチド)断片を、分子生物学における技術を用いて操作することが可能である。
【0071】
ポリペプチドは、アミド結合により連結された少なくとも2つ、典型的には10以上のアミノ酸を含む。ポリペプチドは任意のアミノ酸配列を含み、例えば糖タンパク質のような修飾配列を包含する。
【0072】
本発明を例示するために実施例を記載するが、これは本発明を限定するものではない。これらの実施例において使用する科学的方法の種々のパラメーターは後記に詳しく説明されており、本発明を実施するための一般的指針となる。
【実施例】
【0073】
体重180〜200gの2〜3月齢の成体雌ルイス(Lewis)ラット(Charles River Laboratories, Wilmington, MA)から、Seglenの変法により肝細胞を単離した。肝細胞の単離および精製のための詳細な方法は公知である。通常通り、2億〜3億個の細胞を、トリパンブルー排除による判定で85%〜95%の生存度で単離した。サイズ(直径10μm未満)および形態学的特徴(非多角形)により判定した非実質細胞は1%未満であった。肝細胞培地は、高グルコース、10% (v/v)ウシ胎児血清、0.5 U/mL インスリン、7 ng/mL グルカゴン、7.5 μg/mL ヒドロコルチゾンおよび1% (v/v) ペニシリン-ストレプトマイシンを加えたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)よりなるものであった。
【0074】
繊維芽細胞培養
3T3-J2繊維芽細胞はHoward Green (Harvard Medical School)からの供与物であった。マウス胚繊維芽細胞(MEF)はJames Thomson (University of Wisconsin-Madison)からの供与物であり、NIH-3T3細胞はAmerican Type Culture Collectionから購入した。3T3繊維芽細胞培地は、高グルコース、10% ウシ胎児血清および1% ペニシリン-ストレプトマイシンを加えたDMEMよりなるものであった。MEF培地は仔ウシ血清の代わりに10% ウシ胎児血清を含有し、1% (v/v) 非必須アミノ酸を補充したものであった。
【0075】
肝細胞-繊維芽細胞共培養
6ウェルプレートを水中、37℃で1時間にわたり、0.13 mg/mL コラーゲン-Iの吸着によりコーティングした。ラット尾腱からのコラーゲンの精製は公知である。簡潔に説明すると、ラット尾腱を酢酸中で変性させ、塩沈殿させ、HClに対して透析し、クロロホルムで殺菌した。デコリン上での純粋な肝培養および共培養は0.13 mg/mL コラーゲン-Iおよび種々の濃度のウシデコリン (Sigma)の共吸着を用いるものであった。タンパク質コート化培養皿に1mLの肝細胞培地中、125,000個の肝細胞を播いた。24時間後、125,000個の繊維芽細胞を1mLの繊維芽細胞培地に加えた。3つの異なる細胞型を使用する共培養実験では、繊維芽細胞をマイトマイシン-C (Sigma)補充培地 (10 μg/mL)での37℃で2時間のインキュベーションにより増殖停止させた。ついで該繊維芽細胞型のそれぞれを、そのそれぞれの培地1mL当たり細胞350,000個ずつ肝細胞培養に加えた。すべての共培養について、繊維芽細胞播種の24時間後に該培地を肝細胞培地に交換し、その後は毎日交換した。
【0076】
分析アッセイ
使用済み培地を-20℃で保存した。酸および加熱と共にジアセチルモノキシムを使用する比色エンドポイントアッセイ(Stanbio Labs, Boerne, TX)を用いて、尿素濃度をアッセイした。基質としてのo-フェニレンジアミン (Sigma)およびホースラディッシュペルオキシダーゼ検出による酵素結合免疫吸着アッセイ(ICN-Cappel)を用いて、アルブミン含量を測定した。
【0077】
顕微鏡検査
SPOTデジタルカメラ (SPOT Diagnostic Equipment, Sterling Heights, MI)を備えたNikon Diaphot顕微鏡およびデジタル画像収集のためのMetaMorph Image Analysis System (Universal Imaging, Westchester, PA)を使用して、試料を観察し記録した。
【0078】
遺伝子発現プロファイリング
繊維芽細胞RNA単離およびマイクロアレイハイブリダイゼーション
純粋な繊維芽細胞培養物をコラーゲンコート化ポリスチレン上、それらのそれぞれの培地で2つ重複して24時間増殖させ、ついで培地を、可能な程度まで共培養条件を模倣するために肝細胞培地に交換した。さらに24時間後、TRIzol-LS (Gibco)を使用して、繊維芽細胞RNAを約80%の前コンフルエンシー(preconfluency)で抽出した。2つ重複した繊維芽細胞RNAサンプルのそれぞれ1つを標識し、Affymetrix MG-U74Av2マイクロアレイにハイブリダイズさせ、スキャンした。T7-(dt)24プライマー (Oligo)および逆転写 (Gibco)を使用して二本鎖cDNAを合成し、ついでcDNAをPhase Lock Gel中でフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールで精製し、酢酸アンモニウムで抽出し、エタノールを使用して沈殿させた。ビオチン標識cRNAを、BioArray(商標) HighYield(商標) RNA Transcript Labeling Kitを使用して合成し、RNeasyカラム (Qiagen)上で精製し溶出し、ついで断片化した。発現データの量を、低バックグラウンド値および3'/5'アクチンおよびGAPDH (グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ)比(2未満)のような基準を含む該製造業者の説明により評価した。該遺伝子発現データは公の資源として"http:-//mtel.ucsd.edu/gene_expression/fibroblasts"において入手可能となった。
【0079】
すべての発現データを、細胞当たり約3〜5個の転写物に対応する200の標的強度に対して調整した(Affymetrix MAS 4.0 software)。6つのマイクロアレイ実験を行ったが、それらは、二つずつ重複して調製しハイブリダイズさせた3つの繊維芽細胞系を含んでいた。これらのデータを使用して、各細胞型組合せに関するペアワイズ比較ファイルを作成した(すなわち、3T3-J2複製物-1 対 NIH-3T3複製物-1、合計12ファイル)。ついでこれらの比較ファイルを、BullFrogフィルタリングソフトウェアを使用してフィルタリングし、同じように示差的発現される遺伝子を検出した。フィルタリングに用いた基準は、1%未満の偽陽性率(複製物における示差的発現された遺伝子の数/全遺伝子)を与えるそれらの能力に基づいて選択した。これらの基準は、12個の比較のうち少なくとも10個において合致するように設定した。
【0080】
マイクロアレイデータ解析
フィルタリングしたデータをGeneSpringソフトウェア(Silicon Genetics)へ転送し、ベクトル-角距離計測による階層型クラスタリングを用いて、特異的発現プロファイルのクラスターを作成した。他の教師無し(統計的に行われる)解析法(自己組織化マップおよびk平均クラスタリング)は、階層型クラスタリングを用いて得られたものに類似した結果を与えた。平均発現プロファイルが肝細胞機能プロファイル(すなわち、高-中-低アルブミンおよび尿素分泌)と相関したクラスターを、更なる解析のための候補遺伝子として選択した。その解析は、GenbankおよびSwissprotのような種々の公共データベースからの情報を統合するNetAffx解析ポータル(Affymetrix)による機能的アノテーションを含んだ。
【0081】
ウエスタンブロッティングおよび免疫蛍光
肝細胞培地中、コラーゲンコート化表面上で増殖させた繊維芽細胞を、プロテアーゼインヒビターカクテル (Roche)を含有するRIPAバッファー (Upstate biotech)中で細胞溶解した。ライセートをポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、PVDFメンブレン上に転写し、ブロッキングし、一次抗体 (Santa Cruz Biotech)およびホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体 (Sigma)と共にインキュベートし、化学発光 (Pierce SuperSignal)により可視化した。間接免疫蛍光のために、サンプルをパラホルムアルデヒドで固定し、Triton-X100で浸透化し、一次抗体およびフルオレセインイソチオシアナート (FITC)結合二次抗体 (Santa Cruz Biotech)で染色し、Hoechstで対比染色した。
【0082】
統計解析
各条件につき二つまたは三つ重複したサンプルで実験を2〜3回繰返した。機能アッセイに関して、1つの代表的な結果を示しているが、複数重複した試行において同じ傾向が認められた。一元配置ANOVA(分散分析)またはスチューデントt検定およびTukey事後検定(Prism (GraphPad, CA)上)を用いて、統計的有意性を求めた。
【0083】
T-カドヘリン融合タンパク質の作製
マウスT-カドヘリンcDNAを、開始コドンに設定したフォワードプライマーセットおよび唯一のHindIII部位から100bp上流に設定したFLAG-His6タグ付きリバースプライマーセットを使用するPCR(鋳型としてPBS中のmTcadを使用)により増幅した。得られたPCR産物をpCEP4哺乳類ベクター (Invitrogen)内に連結し、Polyfectトランスフェクト試薬を製造業者の操作手順 (Qiagen)に従い使用してそれを293細胞内にトランスフェクトした。T-カドヘリン融合タンパク質発現細胞を選択し、300μg/ml ハイグロマイシンを含有する培地内で増殖させた。無血清培地上清をAmicon濃縮器で濃縮し、細胞残渣を超遠心分離により除去し、融合タンパク質をニッケルカラム上で製造業者のプロトコール (Qiagen)に従い精製し、その純度を電気泳動および銀染色 (Daiichi Pure Chemicals Co.)により調べた。
【0084】
T-カドヘリン融合タンパク質の固定化および肝細胞の培養
組織培養プレート(ポリスチレン)を1mM 酢酸中の5% 3-アミノプロピルトリメトキシシラン (Sigma #26300)で10分間コーティングした。水中で2〜3回洗浄した後、プレートをPBS (pH 7.4)中の0.5% グルタルアルデヒド中で30分間インキュベートし、ついでPBS (pH 7.9) (Qiagen #34491)中の3〜4 μg/ml NTA(ニトリロ三酢酸)リガンドで20分間コーティングした。100mM NiSO4の溶液を使用して、該プレートをニッケルで官能化した(20分間)。ついでプレートをPBS (1mM Ca2+添加)(pH 7.4)中の該融合タンパク質(1〜50μg/ml)で1〜2時間処理した。ついで肝細胞の付着のためにコラーゲン-I (PBS中、1μg/mL)をT-カドヘリンコート化表面に吸着させた。前記の節に記載されているようにして、肝細胞のみの培養および共培養を行った。
【0085】
共培養におけるラット肝細胞との相互作用後のマウス3T3-J2繊維芽細胞の遺伝子発現プロファイリング
I型コラーゲン(水中、0.1mg/mL、37℃で1時間)で予めコーティングされた6ウェルプレートの1ウェル当たり肝細胞培地1mL当たり細胞50万個の密度でラット肝細胞をプレーティングした。一晩にわたり肝細胞を付着させ広がらせた後、翌日、各ウェルの繊維芽細胞培地内に50万個の3T3-J2繊維芽細胞を播いて共培養物を調製した。共培養の第4日(第1日は繊維芽細胞を播いた日)およびその後第9日(新鮮な共培養物を含む)に、選択的トリプシン処理を行って該繊維芽細胞を除去した。簡潔に説明すると、該共培養物をリン酸緩衝食塩水中で5分間インキュベートして、残留している微量の血清を除去した。ついでこれらの共培養物を、EDTAを含有する0.25% トリプシンと共に3分間インキュベートして繊維芽細胞を解離させ、一方、該基材に付着した肝細胞のほとんどを残存させた。該トリプシン/繊維芽細胞懸濁液を、血清を含有する等量の肝細胞培地と混合し、1000rpmで5分間遠心分離した。該上清を吸引して、細胞ペレットを該チューブの底に無傷のまま残した。この過程を更に2回繰返し、ついでトリゾール試薬(Invitrogen)を使用して(細胞100万個当たり1mL)、該繊維芽細胞ペレットを細胞溶解しホモジナイズした。対照として、肝細胞培地内のコラーゲン上の純粋な繊維芽細胞を、前記で共培養に関して記載されているのと同じプロトコールに付した。QiagenのRNeasyキットを使用して全RNAを精製し、これを更なる加工およびマウス430 2.0 GeneChip全ゲノムアレイへのハイブリダイゼーションのためにUC-San DiegoのGenechip Coreに移した。UCSD Coreにより用いられたプロトコールは、本出願の前記節に記載のものに類似していた。
【0086】
低バックグラウンド値ならびに2未満の3'/5'アクチンおよびGAPDH(グリセロアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ)比のような基準を含む該製造業者の説明に従い、遺伝子発現データの質を評価した。チップ対チップの比較を可能にするために、GeneChip Operating Software (GCOS v1.2)を使用して、すべてのマイクロアレイデータを2500の標的強度に対して調整した。GCOSを更に使用して、共培養されたJ2および純粋培養(すなわち、共培養からの3T3-J2の第4日または第9日 対 純粋培養からの3T3-J2の第4日または第9日)からのデータに関する比較ファイルを作成した。該比較ファイルからのデータをMicrosoft Excelに転送し、以下の基準に基づいてフィルタリングした:共培養J2 対 純粋J2における転写レベルに関する「増加」または「減少」の判定、2を超える変化倍率、比較している2つのファイルの少なくとも1つにおける「存在」の判定、および第4日および第9日の両方の比較における合致した変化の判定(すなわち、増加)。そのようなフィルタリングは、純粋J2と比較して共培養J2においてアップレギュレーションされた32個の候補(4個の発現配列タグ)、および純粋J2と比較して共培養J2においてダウンレギュレーションされた5個の候補遺伝子を与えた。アップレギュレーションされている遺伝子は直接的または間接的に肝機能を誘導しうる。一方、ダウンレギュレーションされている遺伝子は共培養において肝機能を抑制しうる。
【0087】
CHO細胞培養および共培養
既に記載されている(参照により本明細書に組み入れるVestalら, J Cell Biol 119(2): 451-61, 1992)pcD-Tcad(T-カドヘリンのコード領域を含有するプラスミド)およびpSV2neo(ネオマイシン耐性を有するプラスミド、American Type Tissue Culture, Rockville, MD)を使用して、リン酸カルシウム共沈法により、CHO-DG44細胞をトランスフェクトした。CHO細胞を、10% ウシ胎児血清、1×HT補充物(Sigma Chemicals)、L-グルタミン、ピルビン酸ナトリウムおよび非必須アミノ酸を含有するMEM(Gibco Laboratories)内で増殖させた。共培養研究のために、750K CHO細胞(T-cad+またはヌルクローン)を肝細胞培養上のCHO培地(DMEM)内に播いた。翌日、該培地を肝細胞培地に交換し、その後は毎日交換した。
【0088】
T-cadトランスフェクトCHOを、T-カドヘリン(CDH 13としても知られる)mRNA配列(アクセッション番号NM_019707)に対して標的化される50nM siRNA(siGENOME SMARTpool試薬M-049465, Dharmacon)で処理した。カチオニックリポソームトランスフェクション試薬(Lipofectamine 2000, Invitrogen)を製造業者のプロトコールに従い使用して、siRNAを送達した。簡潔に説明すると、100pmolのリポソーム試薬を1×DMEMで250μlに希釈し、室温で15分間インキュベートした。ついで、同様に1×DMEMで250μlに希釈された50nM siRNAをリポソーム希釈液と混合し、さらに15分間インキュベートした。細胞を1mLの全無血清培地中で該リポソーム-siRNA複合体と共にインキュベートした。トランスフェクションの6時間後、無血清培地を完全培地に交換した。トランスフェクションの8〜96時間後、タンパク質を該繊維芽細胞から抽出し、SDS-PAGEにより分離し、PVDFメンブレンに転写し、一次抗体ウサギ抗T-カドヘリン、二次抗体HRP結合ヤギ抗ウサギIgG(Santa Cruz Biotechnology)と共にインキュベートし、化学発光(Pierce SuperSignal)により可視化し、デンシトメトリーにより定量した。
【0089】
siRNA T-カドヘリンアッセイ
T-cadトランスフェクトCHOを、T-カドヘリン(CDH 13としても知られる)mRNA配列(参照により本明細書に組み入れるアクセッション番号NM_019707)に対して標的化される50nM siRNA(siGENOME SMARTpool試薬M-049465, Dharmacon)で処理した。カチオニックリポソームトランスフェクション試薬(Lipofectamine 2000, Invitrogen)を製造業者のプロトコールに従い使用して、siRNAを送達した。簡潔に説明すると、100pmolのリポソーム試薬を1×DMEMで250μlに希釈し、室温で15分間インキュベートした。ついで、同様に1×DMEMで250μlに希釈された50nM siRNAをリポソーム希釈液と混合し、さらに15分間インキュベートした。細胞を1mLの全無血清培地中で該リポソーム-siRNA複合体と共にインキュベートした。トランスフェクションの6時間後、無血清培地を完全培地に交換した。トランスフェクションの8〜96時間後、タンパク質を該繊維芽細胞から抽出し、SDS-PAGEにより分離し、PVDFメンブレンに転写し、一次抗体ウサギ抗T-カドヘリン、二次抗体HRP結合ヤギ抗ウサギIgG(Santa Cruz Biotechnology)と共にインキュベートし、化学発光(Pierce SuperSignal)により可視化し、デンシトメトリーにより定量した。
【0090】
マウス繊維芽細胞による肝細胞における肝特異的機能の示差的誘導
肝機能を誘導する能力により非実質細胞をカテゴリー化するために、初代ラット肝細胞を3つの密接に関連したマウス繊維芽細胞(3T3-J2およびNIH-3T3細胞系ならびに初代マウス胚繊維芽細胞(MEF))と共培養した。肝代謝および合成機能のマーカーとしてのそれぞれ尿素およびアルブミン合成の測定により、肝機能の誘導を評価した。図1Aは、3つの共培養における肝細胞の機能を純粋培養における肝細胞と比較している。肝機能は3T3-J2共培養において最高であり、NIH-3T3共培養、MEF共培養が後に続き、肝細胞単独培養においては検出不能であった。これらの傾向は多くの日数にわたって認められた。したがって繊維芽細胞の誘導能は以下のとおりに評価された:3T3-J2 > NIH-3T3 > マウス胚繊維芽細胞。さらに、肝細胞の形態は純粋培養においては劣化したが、すべての共培養物では、明瞭な核および明るい細胞間境界を有する多角形の肝細胞が含まれていた(図1B)。したがって、3T3-J2細胞は肝機能の「高インデューサー」、NIH-3T3細胞は「中インデューサー」、MEFは「低インデューサー」と評価された。
【0091】
低誘導性の繊維芽細胞(MEF)が肝機能を抑制しうるのかどうかを調べるために、肝細胞を高誘導性繊維芽細胞(3T3-J2)と低誘導性の繊維芽細胞(MEF)との1:1混合物と共培養した。両方の繊維芽細胞集団の増殖の共同創出効果を阻止するために、繊維芽細胞をマイトマイシンCで増殖停止させた。結果(図2)は、低誘導性の繊維芽細胞が高誘導培養において肝細胞の機能を有意に低下させることはないことを示した。
【0092】
繊維芽細胞の遺伝子発現プロファイリング
肝細胞共培養における上皮非実質細胞相互作用の潜在的メディエーターを調べるために、遺伝子発現プロファイリングを用いた。この方法の一部として(図3A)、Affymetrix GeneChips(商標)を使用して、可能な程度まで共培養条件を模擬するように、まず、肝細胞培地内のI型コラーゲン上で増殖した純粋繊維芽細胞培養物におけるメッセンジャーRNAレベルを定量した(図3B)。ついで該データをフィルタリングして、繊維芽細胞系全体にわたって合致して示差的発現される遺伝子を検出した。ついで、階層型クラスタリングを用いて(図3C)、発現プロファイルが、観察される肝細胞誘導のパターンと正(高-中-低)および負(低-中-高)に相関する遺伝子を得た。また、NetAffx解析ポータルを用いて、すべての候補遺伝子を機能的にアノテーションした。更なる分析の実施においては、細胞表面タンパク質、細胞外マトリックスおよび分泌因子を含む、細胞間コミュニケーションに関与しうる繊維芽細胞上またはその周囲で見出されるタンパク質に焦点を絞った。
【0093】
細胞表面タンパク質
いくつかの研究は、細胞表面タンパク質を、肝細胞共培養における上皮非実質細胞相互作用と関連づけた。遺伝子発現プロファイリングは、肝細胞において機能を誘導する繊維芽細胞の能力と発現プロファイルが正(すなわち、高-中-低)に相関するDlk-1(デルタ様ホモログ)を与えた。Dlk-1は、Notch受容体およびそのホモログのようなタンパク質を含むEGF様ホメオティックタンパク質ファミリーに属する。Dlk-1はマウス胎児肝臓における肝芽において強く発現され、いくつかの非肝細胞型の分化に関連づけられており、このことは、それが、肝細胞共培養において機能的役割を果たしうることを示唆している。
【0094】
プラコグロビン(γ-カテニン)の更なる分析は、細胞接着分子のカドヘリンスーパーファミリーからのその相互作用パートナーの多くが負の発現プロファイルをも有することを明らかにした(図4A)。古典的カドヘリンは、カテニンのような調節性分子を介してアクチン細胞骨格に結合した膜貫通タンパク質であり(図4B)、分化およびヘテロ型細胞間相互作用において役割を果たしうる。肝臓では、カドヘリンは、生理的条件下および病態生理的条件下の両方において、肝細胞および周辺非実質組織の両方において発現される。肝細胞とL-929シャペロン細胞との共培養においては、E-カドヘリン発現は、誘導される肝細胞機能と正の相関を示したが、発生中の肝臓におけるE-カドヘリンの過剰発現は正常な肝臓発生を妨げる。共培養において、タンパク質発現、ならびにホモ型およびヘテロ型結合部におけるN-カドヘリンおよびβ-カテニンの局在化が、免疫蛍光を用いて示された(図4C)。
【0095】
細胞外マトリックス
マトリックスの沈着およびリモデリングは肝細胞共培養の重要な特徴として関連づけられている。コラーゲンVIIIの遺伝子発現は繊維芽細胞の誘導能と負の相関を示した。この非繊維状短鎖マトリックスタンパク質は正常な肝臓の細動脈および細静脈に存在し、他の細胞型の分化において指令的役割を果たしうる。肝機能に対するコラーゲンVIIIの効果がたとえ研究されていないが、他のコラーゲン(コラーゲンI)は肝細胞表現型における劇的な変化の原因となる。メタロプロテイナーゼおよびそれらのインヒビター(メタロプロテイナーゼの組織インヒビター;TIMP)を介したマトリックスリモデリングは肝細胞共培養の重要な特徴でありうる。本明細書に記載の系においては、TIMP-2の発現は繊維芽細胞の誘導能と負に相関したが、このことは、マトリックスリモデリングにおける不安定性も、MEF共培養において見出される肝機能不全の根底にありうることを示唆している。
【0096】
繊維芽細胞の誘導能と正に相関した発現プロファイルを有するマトリックスタンパク質はデコリンであった。デコリンは、コラーゲンに結合するコンドロイチン硫酸-デルマタン硫酸プロテオグリカンである。デコリンは、部分的肝切除後の肝再生中に早期に強いアップレギュレーションを示す主要な肝プロテオグリカンである。機能的ゲノムアプローチを検証するために、in vitroでの肝細胞機能に対するデコリンの効果を調べる予備研究を行った。デコリンはコラーゲン結合活性を有するため、コラーゲン上の肝細胞機能を、コラーゲンとデコリンとが共吸着した表面の場合と比較した。純粋肝細胞培養においては、デコリン上で、アルブミン生成は122%アップレギュレーションされ、尿素分泌は36%アップレギュレーションされた(図5A)。肝細胞とMEF(「低インデューサー」)との共培養においては、吸着デコリン上では、コラーゲンのみの場合と比較して、肝機能は用量依存的にアップレギュレーションされ、「高インデューサー」との共培養において見られるアルブミン分泌速度の40%までに達した(図5B)。
【0097】
分泌因子
肝細胞共培養モデルにおける可溶性因子の役割を評価する研究は様々な結果を与えている。例えば、非実質細胞により「馴化された」培地での肝細胞の処理は典型的には効果が無い。それでも、不安定なまたはマトリックス内に局所的に隔離された分泌因子は細胞間相互作用において何らかの役割を果たしうる。本発明での分析においては、血管内皮増殖因子D(VEGF-D)の遺伝子発現プロファイルは肝特異的機能の誘導と正に相関していた。血管新生におけるそれらの役割に加えて、VEGFは肝再生において保護的役割を果たしており(VEGF-A)、発生中の肝臓においてはダイナミックなパターンの発現を示す(VEGF-D)。VEGF-Dのほかには、Dickkopf(ディッコフ)ホモログ3が負の発現プロファイルを示した。主として間葉系列において見出されるのであるが、Dickkopf(dkk)は、誘導性上皮-間葉細胞相互作用のモジュレーションに関連づけられている分泌タンパク質である。
【0098】
図6に示すとおり、2つの異なる繊維芽細胞型(3T3-J2細胞およびMEF細胞)との共培養における肝細胞によるアルブミンおよび尿素生成の速度は機能的に異なる。それらの2つの非実質細胞系の遺伝子プロファイルの比較により得られた機能プロファイルは、高肝機能誘導性3T3 J2繊維芽細胞はT-カドヘリンに関して陽性であったが低誘導性マウス胚繊維芽細胞(MEF)は陰性であったことを示している。
【0099】
マウスT-カドヘリントランスフェクトCHO細胞(T-cad CHO)は、ヌル野生型共培養よりも、共培養において肝細胞機能をアップレギュレーションする。例えば、図7は代表的な日を示しているが、2週間の実験期間にわたる複数の日について同様の傾向が観察された。共培養の免疫染色は、トランスフェクトCHOが肝共培養においてT-cadタンパク質の発現を維持することを示した。また、肝細胞はT-カドヘリンタンパク質発現に関して陰性であることが判明した。
【0100】
T-cad CHOを、リポフェクタミン(対照)で、またはマウスT-カドヘリンに特異的な短い干渉性RNA(siRNA)と複合体化されたリポフェクタミン(Dharmaconから購入)で処理した。ウエスタンブロット法によりアッセイしたところ、CHOにおけるT-cadのサイレンシングは24時間から72時間まで持続する(図8を参照されたい)。各列における上側のバンドはT-cad処理前ペプチドである。ついで、siRNAで処理されたT-cad CHOをラット肝細胞と共培養した。そのような共培養は、模擬トランスフェクト化(リポフェクタミンのみ)対照と比較して肝機能の有意なダウンレギュレーションを示した(図9を参照されたい)。図9は代表的な日を示しているが、長期(例えば、2週間)にわたって同様の傾向が見られた。実験時間の経過と共に、siRNA処理CHO肝細胞共培養においては、対照と比較して、全アルブミン生成において36%の減少が生じた。
【0101】
共吸着したコラーゲン(1μg/ml)および種々の濃度の精製ヒスチジンタグ化T-カドヘリン融合タンパク質の基層上に肝細胞をプレーティングした。使用したT-カドヘリンの濃度はその基板に対する肝細胞の付着に影響を及ぼさなかった。肝細胞機能(アルブミン分泌、尿素合成およびシトクロムP450 1A1活性)はT-カドヘリンにより用量依存的に変動した(図10を参照されたい)。CYP1A1活性は肝臓の解毒能のマーカーであり、これを、CYP1A1による蛍光性レゾルフィンへのエトキシ-レゾルフィンの脱アルキル化を介してアッセイした。
【0102】
マウス胚繊維芽細胞(T-カドヘリン発現を欠損)と肝細胞との共培養物を、共吸着されたコラーゲン(1μg/ml)および精製T-カドヘリンタンパク質(4μg/ml)上で調製した。T-cad培養においては、コラーゲン単独の場合と比較して、機能アップレギュレーションが見られた(図11を参照されたい)。
【0103】
前記の実験は、機能プロファイルを特定するための本発明の機能的ゲノムアプローチの使用が、実質細胞機能において役割を果たす分子メディエーターを特定しうることを示している。例えば、本発明は、T-カドヘリンが肝細胞機能において役割を果たすことを示している。該データは、T-カドヘリンでトランスフェクトされたCHO細胞が共培養において、ヌル野生型対照よりも、ラット肝細胞機能をアップレギュレーションしたことを示している。さらに、共培養の開始前のRNA干渉を用いるトランスフェクトCHOにおけるT-カドヘリンのノックダウンは、長期(2週間)にわたる肝特異的機能のダウンレギュレーションを引き起こす。共吸着されたコラーゲンおよび精製T-カドヘリン融合タンパク質上の肝細胞の培養は純粋培養および共培養(この場合、非実質細胞は内因性T-カドヘリン発現を欠損していた)において肝特異的機能を用量依存的にアップレギュレーションした。
【0104】
本発明の多数の実施形態を説明した。しかし、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の改変が施されうると理解されるであろう。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1A〜Bは、マウス繊維芽細胞と共に共培養した際のラット肝細胞における肝特異的機能の示差的誘導を示す。A.3つの異なるマウス繊維芽細胞との共培養の第10日における肝細胞によるアルブミンおよび尿素の生成速度。B.すべての共培養においては肝細胞は多角形の形態(矢印)、明瞭な核および視認しうる毛細胆管を示したが、純粋培養においては肝細胞の形態が劣化した。* p < 0.05, ** p < 0.01, *** p < 0.001(一元配置分散分析およびTukey事後検定)。エラー・バーは平均値の標準誤差を示す(n = 4)。
【図2】図2は、高誘導性3T3-J2共培養における肝機能に対する低誘導性のマウス胚繊維芽細胞(MEF)の効果を示す。これらの実験は、高機能性共培養を能動的に抑制するMEFの能力を調べるために行った。マウス胚繊維芽細胞と3T3-J2繊維芽細胞との混合物の存在下の共培養の第9日における肝細胞によるアルブミンおよび尿素の生成速度。
【図3A】図3A〜Cは繊維芽細胞の遺伝子発現プロファイリングを示す。A.細胞間相互作用に関与する候補遺伝子を得るためのDNAマイクロアレイの使用を示すフローチャート。繊維芽細胞(3T3-J2、NIH-3T3、マウス胚繊維芽細胞)の全RNAを集め、標識し、Affymetrix GeneChips(商標)にハイブリダイズさせた。発現データを正規化し、フィルタリングし、分析し、機能的アノテーションを行って、候補遺伝子を得た。
【図3B】図3A〜Cは繊維芽細胞の遺伝子発現プロファイリングを示す。B.肝細胞培地内のコラーゲンコート化ポリスチレン上の繊維芽細胞(マウス胚繊維芽細胞)の形態を示す位相差顕微鏡像。
【図3C】図3A〜Cは繊維芽細胞の遺伝子発現プロファイリングを示す。C.ベクトル-角距離計測による階層型クラスタリングを用いて得られたクラステログラム(Clusterogram)を示す。ここで、行は遺伝子発現値であり、列は種々の繊維芽細胞型を表す。条件全体で類似した発現プロファイルを有する遺伝子を一緒にクラスター化する。誘導性(inductive)プロファイル(インセットとして示されている)と正および負に相関する特異的クラスターの平均発現プロファイルを該クラステログラムの右に示す。
【図4】図4A〜Cは、肝細胞機能との負の相関を示唆するカドヘリン経路の分析を示す。カドヘリンと相互作用するプラコグロビン(PG)の発現プロファイルは教師無し解析において繊維芽細胞の誘導能と負に相関したため、カドヘリン経路の他の構成要素の発現プロファイルを調べたところ、それはPGのものに類似していることが判明した。値は、200の強度に対して調整された2つの重複サンプルの平均値を示す。B.古典的カドヘリンは膜貫通型タンパク質であり、その細胞質ドメインは、例えばβ-カテニン、プラコグロビン(γ-カテニン)およびα-カテニンのような種々のシグナリング分子との相互作用によりアクチン細胞骨格に固定されている。C.N-カドヘリン(上)およびβ-カテニン(下)の免疫蛍光染色は、肝細胞共培養におけるホモ型およびヘテロ型の両方の細胞-細胞結合部におけるタンパク質発現および局在化を示している。代表的な染色が3T3(培地インデューサー)共培養に関して示されているが、すべての共培養においてタンパク質局在化が見られた。
【図5】図5A〜Bは、細胞外マトリックスであるデコリンの、細胞間相互作用の潜在的メディエーターとしての検証を示す。A.吸着デコリン上に単独でプレーティングされた肝細胞における全尿素およびアルブミン生成のアップレギュレーション(第5日〜第9日にわたって加重)。B.吸着デコリン上での肝細胞と低機能誘導性マウス胚繊維芽細胞との共培養における全肝機能の用量依存的アップレギュレーション(第2日〜第12日にわたって加重)。* p < 0.05(両側スチューデントt検定)。エラー・バーは平均の標準誤差を表す(n = 3)。
【図6】図6は、マウス胚J2-3T3繊維芽細胞との肝細胞の共培養を示す。グラフは、繊維芽細胞系と肝細胞との共培養と比較した場合の、純粋な肝細胞におけるアルブミン生成を示す。
【図7】図7は、T-カドヘリンを発現する形質転換CHO細胞と肝細胞との共培養、および共培養における肝細胞によるアルブミン生成の誘導を示すグラフである。
【図8】図8は、50nM siRNAの存在下のT-カドヘリン発現を示すウエスタンブロットを示す。
【図9】図9は、siRNAの存在下および非存在下でのT-カドヘリンをトランスフェクトしたCHO細胞との共培養における肝細胞によるアルブミン生成を示すグラフである。
【図10】図10は、肝細胞によるアルブミン発現および尿素生成にT-カドヘリンが及ぼす効果を示すグラフである。用量依存的効果が示されている。
【図11】図11は、肝細胞とMEFとの共培養におけるT-カドヘリンの効果を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2004年8月5日付け出願の米国仮特許出願第60/599,402号(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
米国政府により支援された研究に関する陳述
本発明は、部分的には米国国立衛生研究所からの資金(助成金番号DK065152)を用いてなされた。米国政府は本発明における一定の権利を有しうる。
【0003】
技術分野
本発明は、実質細胞および幹細胞(限定的なものではないが肝細胞、肝細胞様細胞および前駆細胞を含む)の機能を安定化および/または改善するための方法および組成物に関する。バイオリアクター微小環境において使用される肝細胞安定化非実質細胞の共培養の系、ならびに遺伝子発現プロファイリングにより実質細胞安定化因子を同定するために使用する方法および系も提供する。
【背景技術】
【0004】
背景
組織の発生および機能は、分化、増殖および遊走をモジュレーションする、非実質細胞と実質細胞との間の相互作用に左右される。特に、実質-非実質細胞相互作用は生理学、病態生理学、癌、発生において、および「組織工学(tissue engineering)」により組織機能を置換するための試みにおいて重要である。そのような細胞間相互作用の機能的重要性は多数の系において十分に確認されているが、根底をなす分子メカニズムは、多くの場合、依然として不明のままである。実質細胞は細胞外マトリックス物質、非実質細胞および可溶性シグナルと相互作用して、実質細胞の機能を適切に分化させ維持する。実質組織の発生および維持において役割を果たす細胞外マトリックス物質の同定のために、多くの研究が精力的に行われている。そのような研究は実質細胞の維持および発生における一定の因子の役割を明らかにしてはいるが、組織の発生、組織の維持および組織の成長における可溶性因子および膜の非実質細胞との結合相互作用の役割に関する多数の未解明の疑問点が依然として存在する。
【0005】
幹細胞培養および多数の組織型(皮膚、肝臓、膵臓、筋肉など)の培養において「フィーダーレイヤー(支持細胞層)」効果が広く用いられている。血清が細胞培養のための一般的添加物であるのと同様に、これは、しばしば、分化(または自己再生)細胞の一般的支持体として用いられる。その因子(可溶性または不溶性)の同定は研究用途および治療用途に重要であろう。
【0006】
肝臓は体内で最も重い腺であり、平均的な成人で約1.4kg(約3 lb)の重量を有し、皮膚に次いで最も大きな器官である。肝臓の葉は、小葉と称される多数の機能単位よりなる。各小葉は、血液が通る中央静脈(シヌソイド)の周囲の不規則で枝分かれした相互連結された板状物として配置された肝細胞(すなわち、実質細胞)と称される専門化された上皮細胞よりなる。
【0007】
肝臓の主要機能は、血液中の特定の物質のレベルを制御することである。例えば、肝臓は、ホルモンであるインスリンの影響下、血液からグルコースを取り出しそれをグリコーゲンとして貯蔵することにより炭水化物代謝において主要な役割を果たしている。血中グルコースレベルが低下すると、ホルモンであるグルカゴンが肝臓にグリコーゲンの分解および血中へのグルコースの放出を引き起こさせる。肝臓はタンパク質代謝においても重要な役割を果たしており、これは主としてアミノ酸の脱アミノ化および生じた毒性アンモニアから尿素への変換によるものであり、尿素は腎臓により排泄されうる。また、肝臓は多数の薬物およびホルモンを解毒する。さらに、肝臓は、トリグリセリドを貯蔵し脂肪酸を分解しリポタンパク質を合成することにより脂質代謝に関与している。また、肝臓は胆汁を分泌し、これは脂肪、コレステロール、リン脂質およびリポタンパク質の消化を助け、また、ビタミン(A、B12、D、EおよびK)およびミネラル(鉄および銅)を貯蔵する。さらに、肝臓のクッパー細胞は、古くなった赤血球および白血球ならびに一部の細菌を貪食する。ヘムの分解産物であるビリルビンは肝臓により胆管内に排泄され、胆管を通って腸管内へ送られる。
【0008】
肝障害の原因は多種多様である。肝臓の炎症である肝炎は、一般には、アルコール中毒もしくは他の毒物の摂取またはウイルスもしくは他の寄生生物による感染によって生じる。肝硬変は実質細胞の破壊およびそれらの結合組織による置換により特徴づけられる。例えばC型肝炎ウイルスによる感染から生じる肝炎は、しばしば、硬変へと進行する。一方、B型肝炎ウイルス感染は、多くの場合、肝癌(ヘパトーマ)を引き起こす、と強く信じられている。ヘパトーマは、例えば発癌物質への曝露による、内因性癌遺伝子の活性化によっても引き起こされうる。
【0009】
これらの障害の重篤な形態は慢性または急性肝不全を引き起こしうる。劇症肝炎(FHP)は肝細胞の大規模な壊死およびそれに伴う急激で重篤な肝代謝不全に関連づけられる。重要な肝機能の一時的または永久的な不全の場合には、部分的または全体的な肝臓置換が必要である。
【0010】
肝臓は顕著な再生能力を有する。例えば、ラットでは、70%肝切除肝臓は約7日後にはその元の質量を再生するであろう。しかし、肝臓は非常に多くの重要な生化学的機能を行っているため、重篤な肝臓損傷または肝臓の欠失は急速に致死性となる。したがって、肝再生過程に関与する分子的因子を同定するために、いくつかの努力がなされている。
【0011】
従来のほとんどの研究は、術後の最初の数時間(例えば、1〜6時間)に生じる事象に焦点を合わせたものである。肝細胞の運命および機能(すなわち、増殖および分化)を調節する遺伝子の同定は非常に困難である。1つの研究において、in vivo再生モデルにおける肝細胞増殖が調べられた。これに関して、Hagiyaら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 9:8142-8146ではALR (肝再生の促進因子)をラットからクローニングし、Hsuら, 1992, Mol. Cell Biol. 12:4654-4665では、肝再生因子1(LRF-1)と称される新規ロイシン-ジッパー含有タンパク質をコードする遺伝子を同定し、Mohnら, 1991, Mol. Cell Biol. 11:381-390では41個の新規な極初期部分的DNA配列を同定した。これらの遺伝子は、部分肝切除後の早期の時期(例えば、1〜6時間)における発現を調べることにより単離された。再生のこの初期段階においては、急性期炎症タンパク質の発現がかなり高く、それにより、肝再生に特異的な発現を有さないためそれほど有用ではない遺伝子の誘導された発現の「バックグラウンド」を与える。このアプローチは以下のいくつかの理由により制限される:(i)そのアプローチは因果関係を示すものではなく、肝細胞の運命との関係(すなわち、再生促進性または抗再生性)を確認するために遺伝子をフィルターにかける方法が存在しない、(ii)遺伝子発現における変化が肝臓中の全ての細胞型(肝細胞と肝臓の33%を構成するその他の細胞)について混合されてしまう、(iii)動物間で大きなばらつきが存在する。この特異性の欠如を克服することが、肝障害の早期診断および肝臓の特異な再生能を利用する治療の改良のために緊急に必要とされているツールを得る上で決定要因となりうる。
【発明の開示】
【0012】
概要
本開示は、細胞間相互作用の研究を促進するための遺伝子発現プロファイリング法を提供する。該非実質性遺伝子発現データは、例えば、非実質性フィーダーレイヤー上の胚幹細胞の自己再生および繊維芽細胞上のケラチノサイトの分化のような多様な領域において候補遺伝子を同定するためにも用いられうる。
【0013】
本発明は、実質細胞集団に関する機能プロファイルを規定する分子メディエーターを同定する方法を提供する。その方法は、(a)実質細胞集団と第1非実質細胞集団との共培養の第1プロファイルを得る工程であって、該実質細胞の組織特異的機能を測定し、該組織特異的機能を第1非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることを含む工程、(b)該実質細胞集団と第2非実質細胞集団との共培養の第2プロファイルを得る工程であって、該実質細胞の組織特異的機能を測定し、該組織特異的機能を第2非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることを含む工程、(c)機能プロファイルを作成する工程であって、(i)該組織特異的機能における変化を特定し、(ii)第1遺伝子発現プロファイルと第2遺伝子発現プロファイルとを比較して1以上の遺伝子発現の相違を特定し、(iii)それらの1以上の遺伝子を該組織特異的機能における変化と相関させることを含む工程、を含み、ここで、該機能プロファイルは候補分子メディエーターのアイデンティティ(identity)を含む。
【0014】
本発明はまた、本明細書に記載の方法から得られた機能プロファイルのコンピューター読取り可能リストを含んでなるデータベースを提供する。
【0015】
本発明はまた、実質細胞機能に対する影響について化合物をスクリーニングする方法を提供する。該方法は、実質細胞培養系を試験化合物または物質と接触させ、被検実質細胞型について機能プロファイルに記載の1以上の分子メディエーターの発現を測定することを含む。
【0016】
本発明はまた、本発明の方法により同定された分子メディエーターまたは分子メディエーターの産生を促進する物質を投与することを含んでなる、肝疾患または障害を有する患者の治療方法であって、該分子メディエーターが肝細胞機能に対して正の効果を及ぼす、治療方法を提供する。1つの態様においては、該分子メディエーターはT-カドヘリンである。
【0017】
本発明は更に、本発明の方法により同定された分子メディエーターのインヒビターを投与することを含んでなる、肝障害を有する患者の治療方法であって、該分子メディエーターが肝細胞機能に対して負の効果を及ぼす、治療方法を提供する。
【0018】
また、本発明は肝細胞の培養方法も提供する。該方法は、肝細胞を、本発明の方法により同定された遺伝子または遺伝子産物(例えば、表1に記載のもの)と接触させることを含む。
【0019】
本発明は、実質細胞集団と支持細胞集団とを含んでなる共培養物であって、該支持細胞集団が、本発明の方法により同定された分子メディエーターをコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトまたは形質転換されており、該分子メディエーターが実質細胞機能に対して正の効果を及ぼす、共培養物を提供する。
【0020】
本発明は更に、分子メディエーターの発現を促進する物質と共に肝細胞を培養することを含んでなる、肝細胞機能を促進する方法であって、該分子メディエーターが本発明の方法により同定され、該分子メディエーターが肝細胞機能に対して正の効果を及ぼす、方法を提供する。
【0021】
本発明の1以上の実施形態の詳細は添付図面および後記の説明において記載されている。本発明の他の特徴、目的および利点は該説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
詳細な説明
組織の発生および機能は、分化、増殖および遊走をモジュレーションする、非実質細胞と実質細胞との間の相互作用に左右される。特に、実質-非実質細胞相互作用は生理学、病態生理学、癌、発生において、および「組織工学(tissue engineering)」により組織機能を置換するための試みにおいて重要である。そのような細胞間相互作用の機能的重要性は十分に確認されているが、根底をなす分子メカニズムは依然として不明のままである。これらの現象の研究は更に、器官において見出される支持細胞型(例えば、ストロマ/非実質細胞)の多様性により妨げられている。例えば、繊維芽細胞は、それらの形態、間葉マーカーおよび組織培養プラスチックへの接着性に基づいて一緒に分類されることが多いが、単一器官内の繊維芽細胞でさえも、それらの転写プロファイルにおいて有意に異なりうる。非実質細胞におけるそのような劇的な転写上のばらつきが周辺実質細胞とのそれらの相互作用に影響を及ぼすと予想される場合でさえ、実質細胞機能との非実質遺伝子発現の相関は体系的には検討されていない。そのような相関データは、所定の組織における細胞間相互作用の根底をなすメカニズムに対する洞察をもたらす。
【0023】
ゲノム医学の時代においては、生物医学的現象は、個々の分子種の研究によってではなく包括的分析によって研究されうる。このシステムレベルのアプローチは、臨床試験を階層化し腫瘍の転移能を予想するために用いられている。本開示は、実質/非実質細胞相互作用における細胞間コミュニケーションのメカニズムを調べるための機能的ゲノムアプローチを提供する。種々の生物学的現象の研究に対して一般化されうる方法で、機能的結果を評価し、遺伝子発現のパターンと相関させた。初代実質細胞を種々の非実質細胞系(NPC)と共培養して、組織/実質特異的機能の変動的な誘導をもたらした。機能プロファイルと正(すなわち、促進的)および負(すなわち、抑制的)に相関する発現を示す非実質遺伝子をカタログ化した。このアプローチを用いて、本発明の肝モデルにおいて、多数の機能的に特徴づけされた候補物を同定した。該候補物は、関連する細胞間コミュニケーションカテゴリー(細胞表面、マトリックス、分泌因子)に含まれるものであった。本開示の方法を用いて、データベースを作成した。これは、肝細胞を安定化する非実質微環境の最初の包括的分子的定義を提供するものである。したがって、本開示は、実質細胞機能(例えば、肝特異的機能)の誘導において役割を果たす候補分子メディエーターの方法、系および有用なデータを提供する。これらの情報は、in vitroおよびin vivoにおける安定化組織/実質特異的機能において使用されうる方法および組成物を提供する。
【0024】
例えば、in vivo肝発生は内胚葉肝芽と周辺間葉との相互作用を必要とし、初期発生には可溶性シグナルFGF-2およびBMP-4が不可欠である。しかし、更なる肝発生のためには、未知メディエーターを介した細胞間接触も必要である。種々の種および器官からの過剰の別個の非実質細胞型との初代肝細胞のin vitro共培養は、肝器官形成によく似た様態で分化肝細胞機能を支持することが示されている。これらの肝細胞共培養は、肝臓の生理学および病態生理学、例えば脂質代謝および急性期応答の誘導の種々の態様を研究するために用いられている。この研究分野は肝組織工学と医薬スクリーニング用のin vitroモデルの開発との両方に関連しているため、この研究分野には特に大きな関心が寄せられている。
【0025】
細胞間相互作用のメカニズムを研究するための通常のアプローチは馴らし培地およびトランスウェル(transwell)培養を含むものである。最近では、肝細胞共培養においては、これらの技術は、細胞-細胞コミュニケーションのメカニズムに対する更なる洞察をもたらす微小加工に基づくパターン形成ツールで補完されている。そのような実質-非実質相互作用を研究するための利用可能な技術の進歩にもかかわらず、肝細胞共培養における潜在的分子メディエーターの研究は一般には、個々の候補物を順次研究することによって進展している。機能ゲノミクスの時代においては今や、遺伝子発現の全体的パターンを、細胞間相互作用から生じる機能的応答と相関付ける機会が存在する。バイオインフォマティクスツールと共にDNAマイクロアレイを使用することにより、遺伝子発現の定量的並行測定を行うことが可能となっている。
【0026】
相当な研究にもかかわらず、実質-非実質相互作用の分子メディエーターの全体像は入手できていない。例えば、非実質細胞との肝細胞共培養における分子メディエーターは入手できていない。本発明の方法は、多数の分子メディエーターを同定する能力をもたらした。例えば、本発明の方法を用いて、繊維芽細胞との肝細胞の共培養において、有望な候補分子メディエーターを同定した。少数のメディエーターには、例えばE-カドヘリン、T-カドヘリンおよび肝調節性タンパク質(LRP)が含まれる。しかし、E-カドヘリンおよびLRPを欠く非実質細胞は、肝機能を支持する能力を保持しており、このことは、いずれもが「共培養効果」の唯一のメディエーターではないことを示唆している。実際、いくつかの異なるメカニズムが協働して共培養において実質細胞(例えば、肝細胞)機能をモジュレーションしていると思われる。それでも、これらの多因子メカニズムの少なくともいくつかは哺乳動物において高度に保存されているようである。
【0027】
そのような分子メディエーターは種々の生物種(すなわち、ヒト、ラット、マウス、ブタ)からの初代肝細胞機能において役割を果たしており、種々の種、組織または発生学的器官(上皮または間充織)からの非実質細胞により種々の度合で安定化される。したがって、実質細胞(例えば、肝細胞)の分化を支持する一連の非実質細胞由来シグナルの同定は広範な基本的および技術的関連性を示すであろう。
【0028】
本発明は、実質細胞の機能、維持および/または分化の分子メディエーターの同定のための方法および系を提供する。本発明はまた、実質細胞(例えば、肝細胞または肝細胞様細胞)の機能を改善する一連の分子メディエーター(例えば、遺伝子およびポリペプチド)、および実質細胞(例えば、肝細胞または肝細胞様細胞)の機能を抑制する一連の分子メディエーター(例えば、遺伝子およびポリペプチド)を提供する。一連のそのような分子メディエーターは本明細書中では機能プロファイルと称される。そのような分子メディエーターは実質細胞型の活性プロファイルを変化させるように機能する。
【0029】
本発明の1つの態様においては、本発明のモデル系において、肝細胞機能の促進性物質またはインヒビターとして、ポリヌクレオチドおよびそのコード化ポリペプチド産物(総称的および個別的に分子メディエーター)を同定した。該ポリペプチドは次のような多数の実施形態において有用である:(i)細胞に基づく治療法 - 該ポリペプチドは、組織工学で作製された肝臓、生体人工肝臓デバイスなどのための肝細胞を安定化するために使用されうる;(ii)in vitroモデルにおいて - これらのポリペプチドは薬物試験、抗ウイルス療法の開発のためのまたは環境毒性に関するin vitro肝モデルの機能を改善しうる;(iii)臨床療法において - これらのポリペプチドは、損傷した肝臓の回復を改善するための「肝臓保護物質」として作用しうる(臨床用肝臓保護物質の場合、これらのポリペプチドおよびポリヌクレオチドは潜在的療法の新規セットを提供し、その他のものはほとんどは実験的に決定されており(例えば、IL-6)またはトランスジェニック動物において研究されている);(iv)幹細胞分化において - これらのポリペプチドは、in vitroまたはin vivoにおける胚性または成体幹細胞を、肝細胞系列に沿って、より効率的に分化させるよう作用しうる;(v)細胞系維持において - これらの分子は、商業的に入手可能な不死化細胞系の機能を改善するよう作用しうる。例えば、これらのポリペプチドは、組織工学で作製された装置または生体人工肝臓における別の細胞型との共培養の必要性に代わるものとなりうる;(vi)細胞機能測定 - 該ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは肝機能ならびに関連疾患および障害の指標として使用されうる。
【0030】
「非実質」細胞には、限定的なものではないが内皮細胞、周皮細胞、マクロファージ、単球、形質細胞、マスト細胞、脂肪細胞などを含む、疎性結合組織において見出される他の細胞および/または要素を伴うまたは伴わないストロマ細胞(例えば、繊維芽細胞)が含まれる。ストロマ細胞は一般的には組織特異的細胞の支持を形成する。通常は、ストロマ細胞は組織特異的ではなく、むしろ、体内のすべての組織に遍在する。最も一般的なタイプのストロマ細胞は繊維芽細胞である。組織培養においては、ストロマ細胞は、しばしば、「フィーダーレイヤー」と称される。一般的に使用される繊維芽細胞系の例には、3T3-J2、NIH-3T3およびマウス胚繊維芽細胞が含まれる。例えば、一般的にはマウス胚繊維芽細胞(MEF)がフィーダーレイヤーとして使用される。共培養の前に、MEFに照射(35〜50グレイのレベル)を行って、代謝機能を損なうことなく細胞増殖を低減させることが可能である(Shamblottら 1998, Proc Natl Acad Sci USA 95:13726-13731; Amitら 2000, Dev Biol 227:271-278)。一方、種々の化学物質/薬物(例えば、化学療法薬)が同様の結果を達成しうる。ついで実質細胞をMEFフィーダーレイヤー培養物上にプレーティングする(Reubinoffら 2000, Nature Biotechnology 18:399-404; Thomsonら 1998, Science 282:1145-1147)。
【0031】
組織特異的または実質細胞は、その支持骨格からは区別される器官の不可欠かつ特徴的な組織を形成する細胞を含む。本発明で使用する実質細胞型は、培養すべき組織(これは、限定的なものではないが少数ながら挙げると骨髄、皮膚、肝臓、膵臓、腎臓、神経組織および副腎を含みうる)に依存する。本発明は、肝細胞の具体例を使用して説明されているが、本発明の方法および組成物は、身体の種々の組織に由来する他の実質細胞型に適用可能である。
【0032】
本発明は、実質細胞機能をモジュレーションしうる非実質遺伝子を同定するための遺伝子発現プロファイリングアプローチを提供する。細胞間相互作用の「機能プロファイル」は、実質(例えば、肝)機能の高インデューサー、中インデューサーまたは低インデューサーとして評価される少なくとも2つの非実質細胞(例えば、いくつかの密接に関連したマウス繊維芽細胞)との共培養の際の実質細胞(例えば、肝細胞)における実質特異的機能の測定により確立される。遺伝子発現プロファイルは各非実質細胞型に関して得られ、実質細胞の機能測定結果(例えば、実質細胞特異的活性)に相関づけられる。該実質細胞特異的活性は各非実質細胞型によって異なるであろう。ついで、各非実質細胞型からのプロファイルの比較により、機能プロファイルを得る。1つの態様においては、遺伝子発現プロファイリングのために使用する非実質細胞は、実質細胞型(例えば、肝細胞)と共培養を行った非実質細胞である。しかし、実質細胞機能の誘導に関与する候補遺伝子の同定においては、純粋な繊維芽細胞培養を使用することが可能である。実験的証拠は、生存不能な非実質性フィーダーレイヤー(照射、乾燥、固定、マイトマイシンC処理されたもの)が、生存可能な非実質細胞に匹敵する応答を惹起することを示唆しており、このことは、少なくともいくつかの非実質由来シグナルは相互シグナリングを必要としないという考えを裏付けるものである。もう1つの態様においては、該機能的結果に関与する一連の候補物を得るために、共培養環境の他の態様を可能な限り近似して模倣するように純粋な非実質細胞培養を処理する(例えば、培地製剤およびマトリックスコーティングで処理する)。本発明の方法において使用する非実質細胞型の数は少なくとも2つの非実質細胞型を含む。通常は、それらの非実質細胞型は、それぞれ高いおよび低い実質細胞特異的活性を誘導するであろう。しかし、該相違は高-高、中-高、中-中、低-中、および低-低でありうる。典型的には、非実質細胞との共培養の際の実質細胞活性における相違は、測定可能な相違を要するに過ぎない。
【0033】
したがって、本発明は、実質細胞集団と第1非実質細胞集団との共培養の第1遺伝子プロファイルを、該実質細胞の組織特異的機能を測定し該組織特異的機能を第1非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることにより得ることを含んでなる、組織の発生およびモジュレーションの分子メディエーターを同定する方法を提供する。少なくとも2つの非実質細胞型を使用し、すなわち、該方法は、該実質細胞集団と第2非実質細胞集団との共培養の第2遺伝子プロファイルを、該実質細胞の組織特異的機能を測定し該組織特異的機能を第2非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることにより得ることを含む。該組織特異的機能における変化を特定し第1遺伝子発現プロファイルと第2遺伝子発現プロファイルとを比較して1以上の遺伝子発現の相違を特定し、それらの1以上の遺伝子を該組織特異的機能における変化と相関させることにより、機能プロファイルを作成するが、ここで、該機能プロファイルは候補分子メディエーターのアイデンティティ(identity)を含む。
【0034】
もう1つの態様においては、本発明は、肝特異的機能の誘導に関与する非実質細胞の分子メディエーターを同定するために遺伝子発現プロファイリングを利用する機能的ゲノムアプローチを提供する。遺伝子チップマイクロアレイを使用して得た繊維芽細胞遺伝子発現プロファイルと、機能的応答を相関させる。遺伝子発現プロファイルのマイクロアレイデータ解析は、肝機能の誘導に関与する細胞間コミュニケーションカテゴリー(例えば、細胞表面、細胞外マトリックス、分泌因子)における候補遺伝子を特定する。種々のデータベース(例えば、PubMed、GenBank)を使用する更なる解析は機能的特徴づけのための候補物の優先順位付け(prioritization)を容易にする。
【0035】
機能プロファイルは、実質細胞集団と第1非実質細胞集団との共培養からの第1遺伝子プロファイルを、該実質細胞の組織特異的機能を測定し該組織特異的機能を第1非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることにより得て、また該実質細胞集団と第2非実質細胞集団との共培養の第2遺伝子プロファイルを、該実質細胞の組織特異的機能を測定し該組織特異的機能を第2非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることによって得ることにより、作成する。該組織特異的機能における変化を特定し第1遺伝子発現プロファイルと第2遺伝子発現プロファイルとを比較して1以上の遺伝子発現の相違を特定し、それらの1以上の遺伝子を該組織特異的機能における変化と相関させることにより、機能プロファイルを得るが、ここで、該機能プロファイルは候補分子メディエーターのアイデンティティ(identity)を含む。
【0036】
本発明の方法において使用する非実質細胞の選択は、使用する実質細胞型によって決まるであろう。例えば、種々の肝由来非実質細胞および非肝由来非実質細胞の両方が共培養において肝機能を誘導することが報告されている。さらに、初代肝細胞とは異なる種に由来する非実質細胞(初代および不死化の両方)による誘導が報告されており、これは、根底をなすメカニズムの、考えられうる保存を示唆している。不死化マウス繊維芽細胞の入手容易性および培養容易性は、組織工学およびバイオリアクター(限定的なものではないが生体人工肝臓デバイスを含む)の開発における用途について実質細胞(例えば、肝細胞)機能に及ぼすそれらの影響における関心を呼び戻している。
【0037】
本開示は、同一および異なる種からの実質および非実質細胞の共培養媒介性安定化を実証している。例えば、本開示は、繊維芽細胞と同一の種(マウス)および別の種(ヒト)からの肝細胞の共培養安定性を実証している。また、他の器官系における支持フィーダーレイヤーとして3T3および初代マウス胚繊維芽細胞が一般的に使用されるため、得られた遺伝子発現データは多数の他の用途において有用である。したがって、肝臓の非実質細胞(例えば、シヌソイド内皮細胞)におけるマウス繊維芽細胞系において明らかにされた候補遺伝子の役割を知ることが可能である。
【0038】
繊維芽細胞遺伝子発現プロファイルは多数の方法により得られうるが、典型的には、それは遺伝子チップ(例えば、Affymetrix GeneChips(商標))により得られ、実質細胞の機能的活性と相関付けられる。本発明の1つの態様においては、遺伝子チップデータのデータ解析を用いて機能プロファイルを得る。例えば、重複する遺伝子を排除し、重複しない遺伝子または異なるレベルで発現される遺伝子に集中することにより、該非実質細胞発現プロファイルを縮減することが可能である。そのような方法を用いて、肝細胞共培養から得られた非実質遺伝子プロファイルを、約12000個の繊維芽細胞遺伝子および発現配列タグから、共培養において肝細胞機能をモジュレーションする少数の候補遺伝子に縮減した。実施例として試験するための候補物を選択した。ついで、それらは本発明のモデル系における実質/非実質相互作用において役割を果たしていることが示され、それにより該アプローチが検証される。最終的には、本明細書に記載の機能的ゲノムアプローチは、例えば組織工学、幹細胞生物学および癌のような多様な領域における細胞間相互作用のメカニズム研究を促進する一般的手段として役立ちうる。
【0039】
本発明の方法および系を用いて、肝機能の誘導に関与する細胞コミュニケーションカテゴリー(細胞表面、細胞外マトリックス、分泌因子)における多数の機能的に特徴づけられる候補遺伝子および遺伝子産物(すなわち、ポリペプチド)を同定した。例えば、細胞表面タンパク質であるN-カドヘリンを肝細胞繊維芽細胞境界に局在化し、一方、吸着デコリンは純粋培養においてならびに低誘導性繊維芽細胞との共培養において肝機能をアップレギュレーションした。T-カドヘリンも肝細胞機能において役割(例えば、アルブミン生成)を果たしていることが示された。
【0040】
本明細書に記載の遺伝子発現プロファイリングアプローチを用いて、本開示は、3T3繊維芽細胞における末端切断型カドヘリン(T-cad)の発現が肝細胞を安定化することを実証している。カドヘリンは全身の組織における細胞間相互作用を媒介する。カドヘリンは多数の身体組織において一般的に発現される。例えば、神経-カドヘリン(N-カドヘリン)、上皮-カドヘリン(E-カドヘリン)および肝臓-腸-カドヘリンはすべて、発生中の肝臓および成体の肝臓において発現される。シヌソイド内皮細胞は血管内皮カドヘリンを発現し、胆管細胞(胆道細胞)はE-カドヘリンを発現する。肝細胞/非実質共培養におけるカドヘリンの役割は大部分は見出されていないが、L929繊維芽細胞におけるE-カドヘリン発現は肝細胞機能と正に相関することを証拠は示している。T-cadは細胞内ドメインを欠き、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)部分を介して細胞膜に連結されている。後記実施例に記載されているとおり、T-カドヘリンは、単独でまたは支持細胞内にトランスフェクトされた場合に、肝細胞特異的活性を刺激する。
【0041】
「低インデューサー」繊維芽細胞は実際には肝細胞機能を能動的に抑制しうるという前提に基づき、機能プロファイルは、通常は、候補遺伝子/分子メディエーターを2つのグループ(誘導プロファイルとの正または負の相関)にカテゴリー化する。本開示の方法を用いて得られる細胞間コミュニケーションカテゴリーにおける機能的に特徴づけられた候補物のうち、3つの候補物を実験的に検証した。細胞外マトリックスプロテオグリカンであるデコリンの遺伝子発現は誘導活性と正の相関を示した。実験により、デコリンは実際に、「低」誘導活性を有する繊維芽細胞と肝細胞との共培養および純粋肝細胞培養の両方において、肝機能を誘導した(例えば、図5を参照されたい)。デコリンの誘導能にもかかわらず、いずれの培養も、デコリンのみの添加によっては(3T3-J2の場合と同様に)肝マーカーの最大生成速度を達成しなかった。これらのデータは、該遺伝子発現プロファイリングアプローチを検証し、細胞間相互作用が多因性でありうるという仮定を確認するのに役立つ。カドヘリン経路の解析は候補物としてのプラコグロビン(γ-カテニン)の同定からもたらされた。また、N-カドヘリン、β-カテニン、発現プロファイルは誘導活性と負の相関を示した。ヘテロ型(繊維芽細胞/肝細胞)連結部におけるN-カドヘリンおよびβ-カテニンの局在化は、免疫蛍光を用いて確認された(例えば、図4を参照されたい)。これは該細胞型間の機能的コミュニケーションの最初の証拠を提供するものである。これとは対照的に、他のグループはE-カドヘリンに対する正の誘導性役割を示している。N-カドヘリン経路とE-カドヘリン経路との間の相互作用も報告されている。
【0042】
また、実質細胞は、限定的なものではないが肝臓、皮膚、膵臓、神経組織、筋肉などを含む種々の起源から得られうる。そのような実質細胞は生検によりまたは死体から得られうる。例えば、肝細胞のin vitro培養物がヒトおよび実験動物から調製されている。酵素漏出、代謝および細胞膜に対する潜在的毒素の効果を研究するために、ラット肝細胞の初代培養が広く使用されている(Grisham, 1979, Int. Rev. Exp. Pathol. 20:123-210; AcostaおよびMitchell, 1981, Biochem. Pharmacol. 30:3225-3230)。
【0043】
肝細胞は、ヒト肝臓生検または剖検材料に適合化されうる通常の方法(BerryおよびFriend, 1969, J. Cell Biol. 43:506-520)により単離されうる。簡潔に説明すると、カニューレを門脈または門枝(portal branch)内に導入し、組織が青ざめるまで肝臓をカルシウム不含またはマグネシウム不含バッファーで潅流する。ついで該器官をタンパク質分解酵素(例えば、コラゲナーゼ溶液)で適当な流速で潅流する。これは結合組織骨格を消化するはずである。ついで肝臓をバッファー中で洗浄し、該細胞を分散させる。該細胞懸濁液を70μmナイロンメッシュを通して濾過して残渣を除去することが可能である。2または3回の分画遠心分離により該細胞懸濁液から肝細胞を選択することが可能である。
【0044】
ヒト肝細胞の単離のためには、HEPESバッファーを使用して切除ヒト肝臓の個々の葉の潅流を行ってもよい。HEPESバッファー中のコラゲナーゼの潅流は約30ml/分の速度で行うことが可能である。コラゲナーゼと共に更に37℃で15〜20分間インキュベートすることにより、単細胞懸濁液を得る(Guguen-GuillouzoおよびGuillouzo編, 1986, "Isolated and Culture Hepatocytes" Paris, INSERM, ならびにLondon, John Libbey Eurotext, pp.1-12; 1982, Cell Biol. Int. Rep. 6:625-628)。
【0045】
ついで、非実質細胞(例えば、CHO細胞、繊維芽細胞など)との共培養において、単離された肝細胞を使用することが可能である。そのような共培養は、肝特異的代謝活性の発現および/または肝細胞増殖に適した微環境を含む。肝細胞の機能的活性は、例えばアルブミン、フィブリノーゲン、トランスフェリンおよび他のタンパク質の合成を測定することにより調べることが可能であり、TCDD誘導性cP450活性を示す。ついでそのような活性を、共培養において使用した非実質細胞の遺伝子プロファイルと相関させる。前記のとおり、本発明の方法においては少なくとも2つの非実質細胞型(例えば、2つの繊維芽細胞系)を使用する。典型的には、1つの非実質細胞型は、より高レベルの実質細胞(例えば、肝細胞)の機能的活性を促進するであろう。
【0046】
細胞増殖は細胞計数によりおよび通常の顕微鏡検査により測定されうる。実質細胞増殖は、共培養組織にわたる組織学的切片において明らかである。そのような実質細胞は共培養の最大細胞として同定されうる。該実質細胞は、不規則な形状で枝分かれした細胞であるストロマ細胞とは異なり、典型的には円形である。該実質細胞は組織特異的マーカー(例えば、肝臓においては、そのような組織特異的タンパク質にはアルブミン、フィブリノーゲン、トランスフェリンおよびサイトケラチン19が含まれる)に関して陽性染色される。該実質細胞の機能的活性は非実質細胞のタイプによって様々となろう。例えば、共培養内の肝細胞によるアルブミンの発現の量および速度は、共培養において使用する繊維芽細胞系のタイプ間で様々となろう。
【0047】
薬物の25%もが、不測のヒト肝毒性により失敗に終わっているように、薬物誘発性肝疾患は製薬業にとって大きな経済的問題である。動物モデルは、種によるばらつき、および実験条件当たり5〜10の動物実験を必要とする動物個体間変動性のため、ヒト毒性の、限られた状況を表すに過ぎない。薬物発見/開発過程にin vitro肝モデルを加えることは以下の幾つかの利点をもたらしうる:開発パイプラインから潜在的に毒性の薬をより早期に排除できること、動物当たり何百もの実験を可能にすることによる変動性の減少、および患者の曝露を伴わないヒト肝組織のモデル。しかし、現在のin vitro肝モデルは、典型的には、長期表現型肝細胞(初代肝細胞)安定性を欠き、したがって、肝機能に対する生体異物および環境毒素の慢性的効果は一般的にはin vitroで検査されない。さらに、肝臓の機能および健康状態を評価するためには特定のマーカーが日常的に使用されているが、そのようなマーカーは、そのような薬剤の根本をなす長期的作用の分析においては、いくらか限定的である。本開示の方法により同定され提供されるマーカーの分子分析は、肝機能、肝細胞健康状態、および非実質細胞との肝細胞相互作用(適切な肝機能のための必要な属性)を評価するために用いられうる。
【0048】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、処理されている実質細胞に関する「機能プロファイル」において同定された遺伝子のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現を測定することにより、用量制限および細胞毒性肝効果に関して薬物をスクリーニングする方法を提供する。
【0049】
本発明はまた、実質細胞機能に対する影響について試験物質をスクリーニングする方法を提供する。該方法は、実質(例えば、肝)培養系を該物質と接触させ、使用している実質細胞型に関する機能プロファイルにおける1以上の遺伝子の発現を測定することを含む。本発明の方法においては、例えば細胞毒性物質、増殖/調節因子、医薬物質などのような多種多様な物質をスクリーニングすることが可能である。例えば、そのような物質には、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模擬体および小分子が含まれうる。この目的のためには、共培養をin vitroで維持し、被検物質にさらす。細胞毒性物質の効果は、培養されている特定の実質細胞型に関する機能プロファイルにおける1以上の遺伝子をモジュレーションするその能力により測定されうる。そのような遺伝子発現の変化は、核酸プローブ、PCR技術、ノーザンブロット、サザンブロット、ポリペプチドの測定(例えば、ウエスタンブロットなど)により測定されうる。そのような物質の効果は実質細胞活性に対する該効果の測定によりもたらされうると認識されるが、そのような測定は、適切な組織機能に必要な共培養遺伝子発現における根本をなす変化を特定しない。
【0050】
したがって、本明細書に記載のとおりに機能プロファイルを得、分子メディエーターを含む機能プロファイルにおける変化を、共培養との該物質の接触の前および後で測定する。簡潔に説明すると、実質細胞の組織特異的機能を測定し該組織特異的機能を第1非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることにより、実質細胞集団と第1非実質細胞集団との共培養から、第1遺伝子プロファイルを得、そして実質細胞の組織特異的機能を測定し該組織特異的機能を第2非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることにより、実質細胞集団と第2非実質細胞集団との共培養の第2遺伝子プロファイルを得る。該組織特異的機能における変化を特定し、第1遺伝子発現プロファイルと第2遺伝子発現プロファイルとを比較して1以上の遺伝子発現の相違を特定し、それらの1以上の遺伝子を該組織特異的機能における変化と相関させることにより、機能プロファイルを作成するが、ここで、該機能プロファイルは候補分子メディエーターのアイデンティティ(identity)を含む。実質細胞集団と第1および/または第2非実質細胞集団との共培養を、被検物質が該細胞と相互作用する条件下で被検物質と接触させ、ついで該共培養を、該機能プロファイルを含む1以上の分子メディエーターの発現における変化に関してアッセイする。そのような分子メディエーターの発現における変化は、組織機能をモジュレーションする物質を示す。本明細書に記載されているとおり、分子メディエーターの発現における変化は、限定的なものではないがPCR、ノーザン/サザン/ウエスタンブロットなどを含む一般的な分子生物学的および/またはタンパク質アッセイ技術を用いて得られうる。
【0051】
1つの態様においては、医薬、抗腫瘍剤、発癌物質、食品添加物および他の物質の肝細胞(例えば、ヒト肝細胞)に対する細胞毒性を、本発明の肝培養系、ならびに表1および2において同定された肝細胞に関する機能プロファイルを使用して試験することができる。
【0052】
例えば、安定な増殖性肝共培養物が一旦確立されたら、該培養物を種々の濃度の被検物質にさらす。被検物質とのインキュベーションの後、該培養物を位相差顕微鏡検査により検査して、最高許容用量(形態学的異常が最も早く出現する被検物質濃度)を決定することが可能である。細胞毒性試験は、当業者に公知の技術を用いて、培養物中の細胞生存度を評価するための種々の超生体色素を用いて行うことが可能である。表1および2において同定されているような機能プロフィールに挙げられた分子メディエーターを測定し、発現に対する被検物質の効果を判定することが可能である。該遺伝子および遺伝子産物の測定は、例えばおよび遺伝子または遺伝子産物とそれぞれ特異的にハイブリダイズまたは相互作用するPCRおよび抗体を使用する公知技術により行うことが可能である。
【0053】
同様に、薬物の有益な効果を、共培養を使用して評価することができる。例えば、増殖因子、ホルモン、薬物(肝細胞の形成または活性を促進する疑いのあるもの)を試験することが可能である。この場合、安定的培養物を被検物質にさらしてもよい。インキュベーション後、被検物質の効力の指標として、生存度、増殖、形態、細胞型などに関して該培養を検査することが可能である。また、特異的実質細胞に関して得られた機能プロフィールにおいて挙げられている遺伝子および遺伝子産物(例えば、表1および2において同定されているもの)の発現を判定することが可能である。種々の濃度の薬物を試験して用量応答曲線を導き出すことが可能である。
【0054】
別の態様においては、本開示は、細胞間相互作用のメカニズムを研究し培養モデルにおける候補ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの役割を検証するための遺伝子発現プロファイリング系を提供する。測定すべきポリヌクレオチド発現プロファイルおよびポリペプチドの量は、表1および2に記載のポリヌクレオチドおよびポリペプチドのものを含む。これは生体染色技術、ELISAアッセイ、免疫組織化学などにより容易に評価することが可能である。該肝培養系内で培養された正常細胞に対する種々の薬物の効果を評価することが可能である。
【0055】
薬物の発見および開発におけるそれらの使用に加えて、細胞に基づく治療法のための肝細胞への幹細胞(胚幹細胞、成体前駆体)の分化を促進するために、肝細胞機能をアップレギュレーションし安定化する分子を使用することが可能である。肝細胞への幹細胞の変換は、非実質因子、細胞外マトリックス分子および細胞-細胞接触の適切なバランスが得られない限り肝細胞が脱分化(肝特異的機能が低下)するin vitro肝モデルから利益を受けうる活発な研究分野である。
【0056】
肝疾患に対する細胞に基づく治療法(例えば、生体人工肝臓デバイス)は現在のところ、初代肝細胞に基づくもの、または初代肝細胞もしくは肝癌から誘導された細胞系に基づくものである。そのような治療法が広範な用途および臨床的有効性を獲得するためには、肝細胞を、それらの肝特異的機能の決定的に重要なサブセットを維持またはアップレギュレーションする微環境中に配置する必要がある。表1および/または2において同定された遺伝子をアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションする化合物または遺伝子または遺伝子産物の投与により、生体人工肝臓および培養系におけるそのような肝機能を改善することが可能である。
【0057】
したがって、本発明はまた、実質細胞(例えば、肝細胞)の共培養のin vitro維持を補助するための方法および組成物を提供する。例えば、細胞外マトリックス、培地添加物または非実質/ストロマ細胞(例えば、繊維芽細胞)との共培養を用いて肝細胞の微環境を改変しない限り、肝細胞は肝特異的遺伝子発現および機能(すなわち、アルブミン分泌)をin vitroで急速に喪失することが十分に確認されている。本発明の方法を用いて同定された分子メディエーターの適当な用量および組合せでのin vitro微環境の改変は、薬剤開発において一般に使用される種々の生物種(ラット、マウス、ヒト、サル、イヌ)からの肝細胞の肝特異的機能の維持またはアップレギュレーションを補助しうる。本開示は、ラット、マウスおよびヒト肝細胞の肝特異的機能が、肝細胞および非実質細胞相互作用においてアップレギュレーションされる候補分子メディエーターが同定された由来である繊維芽細胞(およびそれらの分泌タンパク質産物)との共培養の際にアップレギュレーションされることを示している。
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
本発明の方法により得られた機能プロファイルは、実質細胞の増殖、分化および活性において役割を果たす一連の分子メディエーターを規定する。これらの分子メディエーターは幹細胞(例えば、全能性および多能性前駆体を含む組織前駆体)の分化および維持において役割を果たしうる。さらに、本発明の方法を用いて幹細胞の機能プロファイルを得ることが可能である。この態様においては、実質細胞を幹細胞により置換し、該方法を本明細書に記載のとおりに行う。
【0060】
ほとんどの幹細胞は、適切な維持および培養のためには「フィーダーレイヤー」を必要とする(例えば、開示を参照により本明細書に組み入れる米国特許第6,090,622号を参照にされたい)。例えば、胚生殖細胞(EG)または胚幹細胞(ES)および特定のEC(胚性癌)細胞系は、繊維芽細胞(例えば、マウスSTO細胞、例えばMartin, G. R.およびEvans, M. J. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 72: 1441-1445, 1975)のフィーダーレイヤー上で培養された場合にのみ、in vitroで幹細胞表現型を保有するであろう。フィーダー細胞または馴らし培地の非存在下では、ESまたはEGは自然的に多種多様な細胞型に分化し、胚発生中または成体動物において見出されるものに類似したものとなる。因子の適当な組合せにより、ESおよびEGはin vitroで造血系列の細胞(Keller, G.ら, Mol. Cell. Biol. 13: 473-486, 1993; Palacios, R., E. GolunskiおよびJ. Samaridis, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 7530-7534, 1995; Rich, T., Blood 86: 463-472, 1995)、ニューロン(Bain, G.ら, Developmental Biology 168: 342-357, 1995; Fraichard, A.ら, J. Cell Science 108: 3161-3188, 1995)、心筋細胞(Klug, M., M. SoonpaaおよびL. Field, Am. J. Physiol. 269: H1913-H1921, 1995)、骨格筋細胞(Rohwedel, J.ら, Dev. Biol. 164: 87-101, 1994)および血管細胞(Wang, R., R. ClarkおよびV. Bautch, Development 114: 303-316, 1992)を生成することが示されている。ESおよびEGの多能性の維持をもたらす因子は未だ十分には特徴づけられておらず、しばしば、該細胞を採取した生物種に依存する。本発明の方法はこれらの因子の同定および特徴づけを可能にする。
【0061】
本発明は、特定の系列に沿った幹細胞の分化を補助するのに使用しうる種々の実質細胞の機能プロファイルを提供する。例えば、肝細胞実質細胞の機能プロファイルは、細胞の機能、維持および成長において役割を果たしている多数の分子メディエーターを同定するであろう。該機能プロファイルの情報を用いて、該機能プロファイルにおいて同定されている分子メディエーターを使用して、肝細胞系列に沿って分化するよう幹細胞を誘導することが可能である。同様に、所望の系列に沿って幹細胞を分化させるために、他の実質細胞型由来の機能プロファイルを使用することが可能である。
【0062】
さらにもう1つの態様においては、2つの異なるフィーダーレイヤー(すなわち、未分化状態を維持するものおよび分化を誘導するもの)上の幹細胞の培養から得られた機能プロファイルを使用して、未分化状態の幹細胞の維持を助ける分子メディエーターを同定することが可能である。
【0063】
当技術分野で公知の多数の多能性幹細胞が存在する。したがって、幹細胞なる語は、完全には分化していない細胞型を意味する。いくつかの場合には、幹細胞は特定の細胞系列に沿って部分的に分化していてもよく、さらに他の態様においては、幹細胞は、それが多数の異なる細胞型に分化しうるという点で多能性または全能性であってもよい。
【0064】
肝損傷/アポトーシスを最低限に抑えるだけでなく、適当な組合せおよび用量で投与されると肝細胞の成長および維持、肝臓内の幹細胞(すなわち、卵形細胞)の分化を促進し、肝機能をアップレギュレーションし、肝細胞増殖を引き起こす分子が必要とされている。in vitro肝モデル(例えば、本明細書に記載のもの)は、そのような肝臓保護物質を見出すために使用することができ、また既に使用されている。表1に挙げた分子メディエーター、および表2中のメディエーターをダウンレギュレーションするインヒビターは、in vivoでの肝臓保護物質として役立ちうる。本明細書に示されているとおり、表1のそのような分子メディエーターはin vitroで、肝臓の最も豊富かつ機能的な細胞である初代肝細胞の生存性を維持し機能を安定化しうる。同様のアプローチが腎系において有用であることが証明されており、この場合、in vitroで腎上皮細胞を安定化することが示された分子は腎臓の治癒/再生の促進のためのin vivoでの生物活性を有する。
【0065】
したがって、さらにもう1つの態様において、肝細胞損傷および/または肝疾患もしくは障害を有するまたは有するおそれのある患者の治療方法を提供する。該方法は、遺伝子の発現もしくは活性をモジュレーションする物質を投与すること、または表1および/もしくは2においてアクセッション番号により特定された遺伝子もしくは遺伝子産物を投与することを含む。例えば、該方法は、表1においてアクセッション番号により特定されたポリペプチドもしくはポリヌクレオチド、または表2において特定されたポリヌクレオチドもしくはその産物の発現を抑制するポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを、治療を要する患者に投与することを含む。
【0066】
治療的有効量の前記の物質、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドおよび製薬上許容される担体物質は共に、該化合物を必要とする患者への投与(例えば、経口、静脈内、経皮、肺内、膣内、皮下、鼻腔内、イオントホレシスまたは気管内)のための治療用組成物(例えば、丸剤、錠剤、カプセル剤または液剤)を構成する。丸剤、錠剤またはカプセル剤は、該化合物が未消化のまま患者の小腸内へ移行するのを可能にするのに十分な時間にわたり患者の胃内の胃酸または腸酵素から該組成物を保護しうる物質でコーティングされうる。また、該治療用組成物は皮下または筋肉内投与のための生分解性または非生分解性徐放製剤の形態でありうる。該治療用組成物を投与するために、移植可能なまたは外的なポンプを使用して、連続的投与を行うことも可能である。
【0067】
肝疾患または障害を治療するための本発明のペプチドまたは治療用組成物の用量は投与方法、患者の年齢および体重ならびに治療すべき患者の状態によって様々であるが、最終的には担当医師または獣医により決定される。担当医師または獣医により決定された該物質または治療用組成物のそのような量は本明細書中では「治療的有効量」と称される。
【0068】
また、実質組織に関する機能プロファイルを含んでなるデータベースを提供する。1つの態様においては、該データベースは、コンピューターが該データベースを見つけ出し処理しうるようコンピューター読取り可能媒体上に存在する。もう1つの態様においては、該データベースはコンピューター読取り可能媒体上に表1および/または表2を含む。
【0069】
「遺伝子」は、動物または細胞内に天然に存在する上流および下流配列に5'および3'末端において連結された、動物または細胞のゲノム内の配列を含むポリヌクレオチドを意味する。遺伝子は、ポリペプチド鎖の産生に関与するDNAのセグメントを含む。それは、コード領域の前および後の領域(リーダーおよびトレーラー)、ならびに個々のコードセグメント(エキソン)の間の介在配列(イントロン)を含みうる。いくつかの態様においては、本明細書中で特定されているアクセッション番号は参照分子に関する遺伝子配列を含み、他の態様においては、そのアクセッション番号は、イントロン、上流および/または下流非コード領域を欠くポリヌクレオチド配列を含む。「ポリヌクレオチド」はヌクレオチドの重合形態を意味する。いくつかの場合には、ポリヌクレオチドは、それが由来する生物の天然に存在するゲノム内では(1つは5'末端において、1つは3'末端において)直に隣接しているコード配列のいずれに対しても直には隣接していないヌクレオチドの重合体を意味する。したがって、この用語は、例えば、ベクター内、自律複製性プラスミドもしくはウイルス内または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA内に組込まれた、あるいは他の配列から独立して別々の分子(例えば、cDNAまたはmRNA)として存在する組換えDNAを包含する。該ヌクレオチドはリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはいずれかのヌクレオチドの修飾形態でありうる。本明細書中で用いるポリヌクレオチドは、とりわけ、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、ならびに一本鎖および二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖またはより典型的には二本鎖または一本鎖および二本鎖領域の混合物でありうるDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子を意味する。
【0070】
ポリヌクレオチドに関連して用いられている「単離(された)」なる語は、その天然状態から「人間の手により」変更されていることを意味する。すなわち、それが天然に存在するものの場合には、それはその元の環境から取り出されているまたは変化しているまたはそれらの両方に付されている。例えば、生きた動物、生物学的サンプルまたは環境サンプル内にその天然状態で元来的に存在する、天然に存在するポリヌクレオチドは、「単離」されていないが、その天然状態の共存物質から分離された同じポリヌクレオチドは、本明細書中での該用語の用法においては「単離」されている。ポリヌクレオチドが培養中のまたは生物全体の宿主細胞内に導入された場合、それはその天然に存在する形態または環境中にはないため、本明細書中での該用語の用法においては該ポリヌクレオチドは尚も単離されていることになる。同様に、該ポリヌクレオチドは、例えば培地製剤(例えば細胞内へのポリヌクレオチドの導入のための溶液、または化学反応もしくは酵素反応のための組成物もしくは溶液)のような組成物中に見出されうる。「単離(された)」なる語は、他の物質から100%単離されていることを必ずしも意味するわけではなく、ある実質的な程度の単離が行われていることを意味する。例えば、実質的に単離されたポリヌクレオチドは、それが天然で付随している物質の20%またはそれ以上を含まないポリヌクレオチドを包含する。表1および/または2において同定されているかまたは本発明の方法を用いて同定される他の機能プロファイルにおいて同定される遺伝子またはポリヌクレオチドにハイブリダイズさせるためのプローブおよびプライマーとして役立つように、単離ポリヌクレオチド(またはオリゴヌクレオチド)断片を、分子生物学における技術を用いて操作することが可能である。
【0071】
ポリペプチドは、アミド結合により連結された少なくとも2つ、典型的には10以上のアミノ酸を含む。ポリペプチドは任意のアミノ酸配列を含み、例えば糖タンパク質のような修飾配列を包含する。
【0072】
本発明を例示するために実施例を記載するが、これは本発明を限定するものではない。これらの実施例において使用する科学的方法の種々のパラメーターは後記に詳しく説明されており、本発明を実施するための一般的指針となる。
【実施例】
【0073】
体重180〜200gの2〜3月齢の成体雌ルイス(Lewis)ラット(Charles River Laboratories, Wilmington, MA)から、Seglenの変法により肝細胞を単離した。肝細胞の単離および精製のための詳細な方法は公知である。通常通り、2億〜3億個の細胞を、トリパンブルー排除による判定で85%〜95%の生存度で単離した。サイズ(直径10μm未満)および形態学的特徴(非多角形)により判定した非実質細胞は1%未満であった。肝細胞培地は、高グルコース、10% (v/v)ウシ胎児血清、0.5 U/mL インスリン、7 ng/mL グルカゴン、7.5 μg/mL ヒドロコルチゾンおよび1% (v/v) ペニシリン-ストレプトマイシンを加えたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)よりなるものであった。
【0074】
繊維芽細胞培養
3T3-J2繊維芽細胞はHoward Green (Harvard Medical School)からの供与物であった。マウス胚繊維芽細胞(MEF)はJames Thomson (University of Wisconsin-Madison)からの供与物であり、NIH-3T3細胞はAmerican Type Culture Collectionから購入した。3T3繊維芽細胞培地は、高グルコース、10% ウシ胎児血清および1% ペニシリン-ストレプトマイシンを加えたDMEMよりなるものであった。MEF培地は仔ウシ血清の代わりに10% ウシ胎児血清を含有し、1% (v/v) 非必須アミノ酸を補充したものであった。
【0075】
肝細胞-繊維芽細胞共培養
6ウェルプレートを水中、37℃で1時間にわたり、0.13 mg/mL コラーゲン-Iの吸着によりコーティングした。ラット尾腱からのコラーゲンの精製は公知である。簡潔に説明すると、ラット尾腱を酢酸中で変性させ、塩沈殿させ、HClに対して透析し、クロロホルムで殺菌した。デコリン上での純粋な肝培養および共培養は0.13 mg/mL コラーゲン-Iおよび種々の濃度のウシデコリン (Sigma)の共吸着を用いるものであった。タンパク質コート化培養皿に1mLの肝細胞培地中、125,000個の肝細胞を播いた。24時間後、125,000個の繊維芽細胞を1mLの繊維芽細胞培地に加えた。3つの異なる細胞型を使用する共培養実験では、繊維芽細胞をマイトマイシン-C (Sigma)補充培地 (10 μg/mL)での37℃で2時間のインキュベーションにより増殖停止させた。ついで該繊維芽細胞型のそれぞれを、そのそれぞれの培地1mL当たり細胞350,000個ずつ肝細胞培養に加えた。すべての共培養について、繊維芽細胞播種の24時間後に該培地を肝細胞培地に交換し、その後は毎日交換した。
【0076】
分析アッセイ
使用済み培地を-20℃で保存した。酸および加熱と共にジアセチルモノキシムを使用する比色エンドポイントアッセイ(Stanbio Labs, Boerne, TX)を用いて、尿素濃度をアッセイした。基質としてのo-フェニレンジアミン (Sigma)およびホースラディッシュペルオキシダーゼ検出による酵素結合免疫吸着アッセイ(ICN-Cappel)を用いて、アルブミン含量を測定した。
【0077】
顕微鏡検査
SPOTデジタルカメラ (SPOT Diagnostic Equipment, Sterling Heights, MI)を備えたNikon Diaphot顕微鏡およびデジタル画像収集のためのMetaMorph Image Analysis System (Universal Imaging, Westchester, PA)を使用して、試料を観察し記録した。
【0078】
遺伝子発現プロファイリング
繊維芽細胞RNA単離およびマイクロアレイハイブリダイゼーション
純粋な繊維芽細胞培養物をコラーゲンコート化ポリスチレン上、それらのそれぞれの培地で2つ重複して24時間増殖させ、ついで培地を、可能な程度まで共培養条件を模倣するために肝細胞培地に交換した。さらに24時間後、TRIzol-LS (Gibco)を使用して、繊維芽細胞RNAを約80%の前コンフルエンシー(preconfluency)で抽出した。2つ重複した繊維芽細胞RNAサンプルのそれぞれ1つを標識し、Affymetrix MG-U74Av2マイクロアレイにハイブリダイズさせ、スキャンした。T7-(dt)24プライマー (Oligo)および逆転写 (Gibco)を使用して二本鎖cDNAを合成し、ついでcDNAをPhase Lock Gel中でフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールで精製し、酢酸アンモニウムで抽出し、エタノールを使用して沈殿させた。ビオチン標識cRNAを、BioArray(商標) HighYield(商標) RNA Transcript Labeling Kitを使用して合成し、RNeasyカラム (Qiagen)上で精製し溶出し、ついで断片化した。発現データの量を、低バックグラウンド値および3'/5'アクチンおよびGAPDH (グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ)比(2未満)のような基準を含む該製造業者の説明により評価した。該遺伝子発現データは公の資源として"http:-//mtel.ucsd.edu/gene_expression/fibroblasts"において入手可能となった。
【0079】
すべての発現データを、細胞当たり約3〜5個の転写物に対応する200の標的強度に対して調整した(Affymetrix MAS 4.0 software)。6つのマイクロアレイ実験を行ったが、それらは、二つずつ重複して調製しハイブリダイズさせた3つの繊維芽細胞系を含んでいた。これらのデータを使用して、各細胞型組合せに関するペアワイズ比較ファイルを作成した(すなわち、3T3-J2複製物-1 対 NIH-3T3複製物-1、合計12ファイル)。ついでこれらの比較ファイルを、BullFrogフィルタリングソフトウェアを使用してフィルタリングし、同じように示差的発現される遺伝子を検出した。フィルタリングに用いた基準は、1%未満の偽陽性率(複製物における示差的発現された遺伝子の数/全遺伝子)を与えるそれらの能力に基づいて選択した。これらの基準は、12個の比較のうち少なくとも10個において合致するように設定した。
【0080】
マイクロアレイデータ解析
フィルタリングしたデータをGeneSpringソフトウェア(Silicon Genetics)へ転送し、ベクトル-角距離計測による階層型クラスタリングを用いて、特異的発現プロファイルのクラスターを作成した。他の教師無し(統計的に行われる)解析法(自己組織化マップおよびk平均クラスタリング)は、階層型クラスタリングを用いて得られたものに類似した結果を与えた。平均発現プロファイルが肝細胞機能プロファイル(すなわち、高-中-低アルブミンおよび尿素分泌)と相関したクラスターを、更なる解析のための候補遺伝子として選択した。その解析は、GenbankおよびSwissprotのような種々の公共データベースからの情報を統合するNetAffx解析ポータル(Affymetrix)による機能的アノテーションを含んだ。
【0081】
ウエスタンブロッティングおよび免疫蛍光
肝細胞培地中、コラーゲンコート化表面上で増殖させた繊維芽細胞を、プロテアーゼインヒビターカクテル (Roche)を含有するRIPAバッファー (Upstate biotech)中で細胞溶解した。ライセートをポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、PVDFメンブレン上に転写し、ブロッキングし、一次抗体 (Santa Cruz Biotech)およびホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体 (Sigma)と共にインキュベートし、化学発光 (Pierce SuperSignal)により可視化した。間接免疫蛍光のために、サンプルをパラホルムアルデヒドで固定し、Triton-X100で浸透化し、一次抗体およびフルオレセインイソチオシアナート (FITC)結合二次抗体 (Santa Cruz Biotech)で染色し、Hoechstで対比染色した。
【0082】
統計解析
各条件につき二つまたは三つ重複したサンプルで実験を2〜3回繰返した。機能アッセイに関して、1つの代表的な結果を示しているが、複数重複した試行において同じ傾向が認められた。一元配置ANOVA(分散分析)またはスチューデントt検定およびTukey事後検定(Prism (GraphPad, CA)上)を用いて、統計的有意性を求めた。
【0083】
T-カドヘリン融合タンパク質の作製
マウスT-カドヘリンcDNAを、開始コドンに設定したフォワードプライマーセットおよび唯一のHindIII部位から100bp上流に設定したFLAG-His6タグ付きリバースプライマーセットを使用するPCR(鋳型としてPBS中のmTcadを使用)により増幅した。得られたPCR産物をpCEP4哺乳類ベクター (Invitrogen)内に連結し、Polyfectトランスフェクト試薬を製造業者の操作手順 (Qiagen)に従い使用してそれを293細胞内にトランスフェクトした。T-カドヘリン融合タンパク質発現細胞を選択し、300μg/ml ハイグロマイシンを含有する培地内で増殖させた。無血清培地上清をAmicon濃縮器で濃縮し、細胞残渣を超遠心分離により除去し、融合タンパク質をニッケルカラム上で製造業者のプロトコール (Qiagen)に従い精製し、その純度を電気泳動および銀染色 (Daiichi Pure Chemicals Co.)により調べた。
【0084】
T-カドヘリン融合タンパク質の固定化および肝細胞の培養
組織培養プレート(ポリスチレン)を1mM 酢酸中の5% 3-アミノプロピルトリメトキシシラン (Sigma #26300)で10分間コーティングした。水中で2〜3回洗浄した後、プレートをPBS (pH 7.4)中の0.5% グルタルアルデヒド中で30分間インキュベートし、ついでPBS (pH 7.9) (Qiagen #34491)中の3〜4 μg/ml NTA(ニトリロ三酢酸)リガンドで20分間コーティングした。100mM NiSO4の溶液を使用して、該プレートをニッケルで官能化した(20分間)。ついでプレートをPBS (1mM Ca2+添加)(pH 7.4)中の該融合タンパク質(1〜50μg/ml)で1〜2時間処理した。ついで肝細胞の付着のためにコラーゲン-I (PBS中、1μg/mL)をT-カドヘリンコート化表面に吸着させた。前記の節に記載されているようにして、肝細胞のみの培養および共培養を行った。
【0085】
共培養におけるラット肝細胞との相互作用後のマウス3T3-J2繊維芽細胞の遺伝子発現プロファイリング
I型コラーゲン(水中、0.1mg/mL、37℃で1時間)で予めコーティングされた6ウェルプレートの1ウェル当たり肝細胞培地1mL当たり細胞50万個の密度でラット肝細胞をプレーティングした。一晩にわたり肝細胞を付着させ広がらせた後、翌日、各ウェルの繊維芽細胞培地内に50万個の3T3-J2繊維芽細胞を播いて共培養物を調製した。共培養の第4日(第1日は繊維芽細胞を播いた日)およびその後第9日(新鮮な共培養物を含む)に、選択的トリプシン処理を行って該繊維芽細胞を除去した。簡潔に説明すると、該共培養物をリン酸緩衝食塩水中で5分間インキュベートして、残留している微量の血清を除去した。ついでこれらの共培養物を、EDTAを含有する0.25% トリプシンと共に3分間インキュベートして繊維芽細胞を解離させ、一方、該基材に付着した肝細胞のほとんどを残存させた。該トリプシン/繊維芽細胞懸濁液を、血清を含有する等量の肝細胞培地と混合し、1000rpmで5分間遠心分離した。該上清を吸引して、細胞ペレットを該チューブの底に無傷のまま残した。この過程を更に2回繰返し、ついでトリゾール試薬(Invitrogen)を使用して(細胞100万個当たり1mL)、該繊維芽細胞ペレットを細胞溶解しホモジナイズした。対照として、肝細胞培地内のコラーゲン上の純粋な繊維芽細胞を、前記で共培養に関して記載されているのと同じプロトコールに付した。QiagenのRNeasyキットを使用して全RNAを精製し、これを更なる加工およびマウス430 2.0 GeneChip全ゲノムアレイへのハイブリダイゼーションのためにUC-San DiegoのGenechip Coreに移した。UCSD Coreにより用いられたプロトコールは、本出願の前記節に記載のものに類似していた。
【0086】
低バックグラウンド値ならびに2未満の3'/5'アクチンおよびGAPDH(グリセロアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ)比のような基準を含む該製造業者の説明に従い、遺伝子発現データの質を評価した。チップ対チップの比較を可能にするために、GeneChip Operating Software (GCOS v1.2)を使用して、すべてのマイクロアレイデータを2500の標的強度に対して調整した。GCOSを更に使用して、共培養されたJ2および純粋培養(すなわち、共培養からの3T3-J2の第4日または第9日 対 純粋培養からの3T3-J2の第4日または第9日)からのデータに関する比較ファイルを作成した。該比較ファイルからのデータをMicrosoft Excelに転送し、以下の基準に基づいてフィルタリングした:共培養J2 対 純粋J2における転写レベルに関する「増加」または「減少」の判定、2を超える変化倍率、比較している2つのファイルの少なくとも1つにおける「存在」の判定、および第4日および第9日の両方の比較における合致した変化の判定(すなわち、増加)。そのようなフィルタリングは、純粋J2と比較して共培養J2においてアップレギュレーションされた32個の候補(4個の発現配列タグ)、および純粋J2と比較して共培養J2においてダウンレギュレーションされた5個の候補遺伝子を与えた。アップレギュレーションされている遺伝子は直接的または間接的に肝機能を誘導しうる。一方、ダウンレギュレーションされている遺伝子は共培養において肝機能を抑制しうる。
【0087】
CHO細胞培養および共培養
既に記載されている(参照により本明細書に組み入れるVestalら, J Cell Biol 119(2): 451-61, 1992)pcD-Tcad(T-カドヘリンのコード領域を含有するプラスミド)およびpSV2neo(ネオマイシン耐性を有するプラスミド、American Type Tissue Culture, Rockville, MD)を使用して、リン酸カルシウム共沈法により、CHO-DG44細胞をトランスフェクトした。CHO細胞を、10% ウシ胎児血清、1×HT補充物(Sigma Chemicals)、L-グルタミン、ピルビン酸ナトリウムおよび非必須アミノ酸を含有するMEM(Gibco Laboratories)内で増殖させた。共培養研究のために、750K CHO細胞(T-cad+またはヌルクローン)を肝細胞培養上のCHO培地(DMEM)内に播いた。翌日、該培地を肝細胞培地に交換し、その後は毎日交換した。
【0088】
T-cadトランスフェクトCHOを、T-カドヘリン(CDH 13としても知られる)mRNA配列(アクセッション番号NM_019707)に対して標的化される50nM siRNA(siGENOME SMARTpool試薬M-049465, Dharmacon)で処理した。カチオニックリポソームトランスフェクション試薬(Lipofectamine 2000, Invitrogen)を製造業者のプロトコールに従い使用して、siRNAを送達した。簡潔に説明すると、100pmolのリポソーム試薬を1×DMEMで250μlに希釈し、室温で15分間インキュベートした。ついで、同様に1×DMEMで250μlに希釈された50nM siRNAをリポソーム希釈液と混合し、さらに15分間インキュベートした。細胞を1mLの全無血清培地中で該リポソーム-siRNA複合体と共にインキュベートした。トランスフェクションの6時間後、無血清培地を完全培地に交換した。トランスフェクションの8〜96時間後、タンパク質を該繊維芽細胞から抽出し、SDS-PAGEにより分離し、PVDFメンブレンに転写し、一次抗体ウサギ抗T-カドヘリン、二次抗体HRP結合ヤギ抗ウサギIgG(Santa Cruz Biotechnology)と共にインキュベートし、化学発光(Pierce SuperSignal)により可視化し、デンシトメトリーにより定量した。
【0089】
siRNA T-カドヘリンアッセイ
T-cadトランスフェクトCHOを、T-カドヘリン(CDH 13としても知られる)mRNA配列(参照により本明細書に組み入れるアクセッション番号NM_019707)に対して標的化される50nM siRNA(siGENOME SMARTpool試薬M-049465, Dharmacon)で処理した。カチオニックリポソームトランスフェクション試薬(Lipofectamine 2000, Invitrogen)を製造業者のプロトコールに従い使用して、siRNAを送達した。簡潔に説明すると、100pmolのリポソーム試薬を1×DMEMで250μlに希釈し、室温で15分間インキュベートした。ついで、同様に1×DMEMで250μlに希釈された50nM siRNAをリポソーム希釈液と混合し、さらに15分間インキュベートした。細胞を1mLの全無血清培地中で該リポソーム-siRNA複合体と共にインキュベートした。トランスフェクションの6時間後、無血清培地を完全培地に交換した。トランスフェクションの8〜96時間後、タンパク質を該繊維芽細胞から抽出し、SDS-PAGEにより分離し、PVDFメンブレンに転写し、一次抗体ウサギ抗T-カドヘリン、二次抗体HRP結合ヤギ抗ウサギIgG(Santa Cruz Biotechnology)と共にインキュベートし、化学発光(Pierce SuperSignal)により可視化し、デンシトメトリーにより定量した。
【0090】
マウス繊維芽細胞による肝細胞における肝特異的機能の示差的誘導
肝機能を誘導する能力により非実質細胞をカテゴリー化するために、初代ラット肝細胞を3つの密接に関連したマウス繊維芽細胞(3T3-J2およびNIH-3T3細胞系ならびに初代マウス胚繊維芽細胞(MEF))と共培養した。肝代謝および合成機能のマーカーとしてのそれぞれ尿素およびアルブミン合成の測定により、肝機能の誘導を評価した。図1Aは、3つの共培養における肝細胞の機能を純粋培養における肝細胞と比較している。肝機能は3T3-J2共培養において最高であり、NIH-3T3共培養、MEF共培養が後に続き、肝細胞単独培養においては検出不能であった。これらの傾向は多くの日数にわたって認められた。したがって繊維芽細胞の誘導能は以下のとおりに評価された:3T3-J2 > NIH-3T3 > マウス胚繊維芽細胞。さらに、肝細胞の形態は純粋培養においては劣化したが、すべての共培養物では、明瞭な核および明るい細胞間境界を有する多角形の肝細胞が含まれていた(図1B)。したがって、3T3-J2細胞は肝機能の「高インデューサー」、NIH-3T3細胞は「中インデューサー」、MEFは「低インデューサー」と評価された。
【0091】
低誘導性の繊維芽細胞(MEF)が肝機能を抑制しうるのかどうかを調べるために、肝細胞を高誘導性繊維芽細胞(3T3-J2)と低誘導性の繊維芽細胞(MEF)との1:1混合物と共培養した。両方の繊維芽細胞集団の増殖の共同創出効果を阻止するために、繊維芽細胞をマイトマイシンCで増殖停止させた。結果(図2)は、低誘導性の繊維芽細胞が高誘導培養において肝細胞の機能を有意に低下させることはないことを示した。
【0092】
繊維芽細胞の遺伝子発現プロファイリング
肝細胞共培養における上皮非実質細胞相互作用の潜在的メディエーターを調べるために、遺伝子発現プロファイリングを用いた。この方法の一部として(図3A)、Affymetrix GeneChips(商標)を使用して、可能な程度まで共培養条件を模擬するように、まず、肝細胞培地内のI型コラーゲン上で増殖した純粋繊維芽細胞培養物におけるメッセンジャーRNAレベルを定量した(図3B)。ついで該データをフィルタリングして、繊維芽細胞系全体にわたって合致して示差的発現される遺伝子を検出した。ついで、階層型クラスタリングを用いて(図3C)、発現プロファイルが、観察される肝細胞誘導のパターンと正(高-中-低)および負(低-中-高)に相関する遺伝子を得た。また、NetAffx解析ポータルを用いて、すべての候補遺伝子を機能的にアノテーションした。更なる分析の実施においては、細胞表面タンパク質、細胞外マトリックスおよび分泌因子を含む、細胞間コミュニケーションに関与しうる繊維芽細胞上またはその周囲で見出されるタンパク質に焦点を絞った。
【0093】
細胞表面タンパク質
いくつかの研究は、細胞表面タンパク質を、肝細胞共培養における上皮非実質細胞相互作用と関連づけた。遺伝子発現プロファイリングは、肝細胞において機能を誘導する繊維芽細胞の能力と発現プロファイルが正(すなわち、高-中-低)に相関するDlk-1(デルタ様ホモログ)を与えた。Dlk-1は、Notch受容体およびそのホモログのようなタンパク質を含むEGF様ホメオティックタンパク質ファミリーに属する。Dlk-1はマウス胎児肝臓における肝芽において強く発現され、いくつかの非肝細胞型の分化に関連づけられており、このことは、それが、肝細胞共培養において機能的役割を果たしうることを示唆している。
【0094】
プラコグロビン(γ-カテニン)の更なる分析は、細胞接着分子のカドヘリンスーパーファミリーからのその相互作用パートナーの多くが負の発現プロファイルをも有することを明らかにした(図4A)。古典的カドヘリンは、カテニンのような調節性分子を介してアクチン細胞骨格に結合した膜貫通タンパク質であり(図4B)、分化およびヘテロ型細胞間相互作用において役割を果たしうる。肝臓では、カドヘリンは、生理的条件下および病態生理的条件下の両方において、肝細胞および周辺非実質組織の両方において発現される。肝細胞とL-929シャペロン細胞との共培養においては、E-カドヘリン発現は、誘導される肝細胞機能と正の相関を示したが、発生中の肝臓におけるE-カドヘリンの過剰発現は正常な肝臓発生を妨げる。共培養において、タンパク質発現、ならびにホモ型およびヘテロ型結合部におけるN-カドヘリンおよびβ-カテニンの局在化が、免疫蛍光を用いて示された(図4C)。
【0095】
細胞外マトリックス
マトリックスの沈着およびリモデリングは肝細胞共培養の重要な特徴として関連づけられている。コラーゲンVIIIの遺伝子発現は繊維芽細胞の誘導能と負の相関を示した。この非繊維状短鎖マトリックスタンパク質は正常な肝臓の細動脈および細静脈に存在し、他の細胞型の分化において指令的役割を果たしうる。肝機能に対するコラーゲンVIIIの効果がたとえ研究されていないが、他のコラーゲン(コラーゲンI)は肝細胞表現型における劇的な変化の原因となる。メタロプロテイナーゼおよびそれらのインヒビター(メタロプロテイナーゼの組織インヒビター;TIMP)を介したマトリックスリモデリングは肝細胞共培養の重要な特徴でありうる。本明細書に記載の系においては、TIMP-2の発現は繊維芽細胞の誘導能と負に相関したが、このことは、マトリックスリモデリングにおける不安定性も、MEF共培養において見出される肝機能不全の根底にありうることを示唆している。
【0096】
繊維芽細胞の誘導能と正に相関した発現プロファイルを有するマトリックスタンパク質はデコリンであった。デコリンは、コラーゲンに結合するコンドロイチン硫酸-デルマタン硫酸プロテオグリカンである。デコリンは、部分的肝切除後の肝再生中に早期に強いアップレギュレーションを示す主要な肝プロテオグリカンである。機能的ゲノムアプローチを検証するために、in vitroでの肝細胞機能に対するデコリンの効果を調べる予備研究を行った。デコリンはコラーゲン結合活性を有するため、コラーゲン上の肝細胞機能を、コラーゲンとデコリンとが共吸着した表面の場合と比較した。純粋肝細胞培養においては、デコリン上で、アルブミン生成は122%アップレギュレーションされ、尿素分泌は36%アップレギュレーションされた(図5A)。肝細胞とMEF(「低インデューサー」)との共培養においては、吸着デコリン上では、コラーゲンのみの場合と比較して、肝機能は用量依存的にアップレギュレーションされ、「高インデューサー」との共培養において見られるアルブミン分泌速度の40%までに達した(図5B)。
【0097】
分泌因子
肝細胞共培養モデルにおける可溶性因子の役割を評価する研究は様々な結果を与えている。例えば、非実質細胞により「馴化された」培地での肝細胞の処理は典型的には効果が無い。それでも、不安定なまたはマトリックス内に局所的に隔離された分泌因子は細胞間相互作用において何らかの役割を果たしうる。本発明での分析においては、血管内皮増殖因子D(VEGF-D)の遺伝子発現プロファイルは肝特異的機能の誘導と正に相関していた。血管新生におけるそれらの役割に加えて、VEGFは肝再生において保護的役割を果たしており(VEGF-A)、発生中の肝臓においてはダイナミックなパターンの発現を示す(VEGF-D)。VEGF-Dのほかには、Dickkopf(ディッコフ)ホモログ3が負の発現プロファイルを示した。主として間葉系列において見出されるのであるが、Dickkopf(dkk)は、誘導性上皮-間葉細胞相互作用のモジュレーションに関連づけられている分泌タンパク質である。
【0098】
図6に示すとおり、2つの異なる繊維芽細胞型(3T3-J2細胞およびMEF細胞)との共培養における肝細胞によるアルブミンおよび尿素生成の速度は機能的に異なる。それらの2つの非実質細胞系の遺伝子プロファイルの比較により得られた機能プロファイルは、高肝機能誘導性3T3 J2繊維芽細胞はT-カドヘリンに関して陽性であったが低誘導性マウス胚繊維芽細胞(MEF)は陰性であったことを示している。
【0099】
マウスT-カドヘリントランスフェクトCHO細胞(T-cad CHO)は、ヌル野生型共培養よりも、共培養において肝細胞機能をアップレギュレーションする。例えば、図7は代表的な日を示しているが、2週間の実験期間にわたる複数の日について同様の傾向が観察された。共培養の免疫染色は、トランスフェクトCHOが肝共培養においてT-cadタンパク質の発現を維持することを示した。また、肝細胞はT-カドヘリンタンパク質発現に関して陰性であることが判明した。
【0100】
T-cad CHOを、リポフェクタミン(対照)で、またはマウスT-カドヘリンに特異的な短い干渉性RNA(siRNA)と複合体化されたリポフェクタミン(Dharmaconから購入)で処理した。ウエスタンブロット法によりアッセイしたところ、CHOにおけるT-cadのサイレンシングは24時間から72時間まで持続する(図8を参照されたい)。各列における上側のバンドはT-cad処理前ペプチドである。ついで、siRNAで処理されたT-cad CHOをラット肝細胞と共培養した。そのような共培養は、模擬トランスフェクト化(リポフェクタミンのみ)対照と比較して肝機能の有意なダウンレギュレーションを示した(図9を参照されたい)。図9は代表的な日を示しているが、長期(例えば、2週間)にわたって同様の傾向が見られた。実験時間の経過と共に、siRNA処理CHO肝細胞共培養においては、対照と比較して、全アルブミン生成において36%の減少が生じた。
【0101】
共吸着したコラーゲン(1μg/ml)および種々の濃度の精製ヒスチジンタグ化T-カドヘリン融合タンパク質の基層上に肝細胞をプレーティングした。使用したT-カドヘリンの濃度はその基板に対する肝細胞の付着に影響を及ぼさなかった。肝細胞機能(アルブミン分泌、尿素合成およびシトクロムP450 1A1活性)はT-カドヘリンにより用量依存的に変動した(図10を参照されたい)。CYP1A1活性は肝臓の解毒能のマーカーであり、これを、CYP1A1による蛍光性レゾルフィンへのエトキシ-レゾルフィンの脱アルキル化を介してアッセイした。
【0102】
マウス胚繊維芽細胞(T-カドヘリン発現を欠損)と肝細胞との共培養物を、共吸着されたコラーゲン(1μg/ml)および精製T-カドヘリンタンパク質(4μg/ml)上で調製した。T-cad培養においては、コラーゲン単独の場合と比較して、機能アップレギュレーションが見られた(図11を参照されたい)。
【0103】
前記の実験は、機能プロファイルを特定するための本発明の機能的ゲノムアプローチの使用が、実質細胞機能において役割を果たす分子メディエーターを特定しうることを示している。例えば、本発明は、T-カドヘリンが肝細胞機能において役割を果たすことを示している。該データは、T-カドヘリンでトランスフェクトされたCHO細胞が共培養において、ヌル野生型対照よりも、ラット肝細胞機能をアップレギュレーションしたことを示している。さらに、共培養の開始前のRNA干渉を用いるトランスフェクトCHOにおけるT-カドヘリンのノックダウンは、長期(2週間)にわたる肝特異的機能のダウンレギュレーションを引き起こす。共吸着されたコラーゲンおよび精製T-カドヘリン融合タンパク質上の肝細胞の培養は純粋培養および共培養(この場合、非実質細胞は内因性T-カドヘリン発現を欠損していた)において肝特異的機能を用量依存的にアップレギュレーションした。
【0104】
本発明の多数の実施形態を説明した。しかし、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の改変が施されうると理解されるであろう。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1A〜Bは、マウス繊維芽細胞と共に共培養した際のラット肝細胞における肝特異的機能の示差的誘導を示す。A.3つの異なるマウス繊維芽細胞との共培養の第10日における肝細胞によるアルブミンおよび尿素の生成速度。B.すべての共培養においては肝細胞は多角形の形態(矢印)、明瞭な核および視認しうる毛細胆管を示したが、純粋培養においては肝細胞の形態が劣化した。* p < 0.05, ** p < 0.01, *** p < 0.001(一元配置分散分析およびTukey事後検定)。エラー・バーは平均値の標準誤差を示す(n = 4)。
【図2】図2は、高誘導性3T3-J2共培養における肝機能に対する低誘導性のマウス胚繊維芽細胞(MEF)の効果を示す。これらの実験は、高機能性共培養を能動的に抑制するMEFの能力を調べるために行った。マウス胚繊維芽細胞と3T3-J2繊維芽細胞との混合物の存在下の共培養の第9日における肝細胞によるアルブミンおよび尿素の生成速度。
【図3A】図3A〜Cは繊維芽細胞の遺伝子発現プロファイリングを示す。A.細胞間相互作用に関与する候補遺伝子を得るためのDNAマイクロアレイの使用を示すフローチャート。繊維芽細胞(3T3-J2、NIH-3T3、マウス胚繊維芽細胞)の全RNAを集め、標識し、Affymetrix GeneChips(商標)にハイブリダイズさせた。発現データを正規化し、フィルタリングし、分析し、機能的アノテーションを行って、候補遺伝子を得た。
【図3B】図3A〜Cは繊維芽細胞の遺伝子発現プロファイリングを示す。B.肝細胞培地内のコラーゲンコート化ポリスチレン上の繊維芽細胞(マウス胚繊維芽細胞)の形態を示す位相差顕微鏡像。
【図3C】図3A〜Cは繊維芽細胞の遺伝子発現プロファイリングを示す。C.ベクトル-角距離計測による階層型クラスタリングを用いて得られたクラステログラム(Clusterogram)を示す。ここで、行は遺伝子発現値であり、列は種々の繊維芽細胞型を表す。条件全体で類似した発現プロファイルを有する遺伝子を一緒にクラスター化する。誘導性(inductive)プロファイル(インセットとして示されている)と正および負に相関する特異的クラスターの平均発現プロファイルを該クラステログラムの右に示す。
【図4】図4A〜Cは、肝細胞機能との負の相関を示唆するカドヘリン経路の分析を示す。カドヘリンと相互作用するプラコグロビン(PG)の発現プロファイルは教師無し解析において繊維芽細胞の誘導能と負に相関したため、カドヘリン経路の他の構成要素の発現プロファイルを調べたところ、それはPGのものに類似していることが判明した。値は、200の強度に対して調整された2つの重複サンプルの平均値を示す。B.古典的カドヘリンは膜貫通型タンパク質であり、その細胞質ドメインは、例えばβ-カテニン、プラコグロビン(γ-カテニン)およびα-カテニンのような種々のシグナリング分子との相互作用によりアクチン細胞骨格に固定されている。C.N-カドヘリン(上)およびβ-カテニン(下)の免疫蛍光染色は、肝細胞共培養におけるホモ型およびヘテロ型の両方の細胞-細胞結合部におけるタンパク質発現および局在化を示している。代表的な染色が3T3(培地インデューサー)共培養に関して示されているが、すべての共培養においてタンパク質局在化が見られた。
【図5】図5A〜Bは、細胞外マトリックスであるデコリンの、細胞間相互作用の潜在的メディエーターとしての検証を示す。A.吸着デコリン上に単独でプレーティングされた肝細胞における全尿素およびアルブミン生成のアップレギュレーション(第5日〜第9日にわたって加重)。B.吸着デコリン上での肝細胞と低機能誘導性マウス胚繊維芽細胞との共培養における全肝機能の用量依存的アップレギュレーション(第2日〜第12日にわたって加重)。* p < 0.05(両側スチューデントt検定)。エラー・バーは平均の標準誤差を表す(n = 3)。
【図6】図6は、マウス胚J2-3T3繊維芽細胞との肝細胞の共培養を示す。グラフは、繊維芽細胞系と肝細胞との共培養と比較した場合の、純粋な肝細胞におけるアルブミン生成を示す。
【図7】図7は、T-カドヘリンを発現する形質転換CHO細胞と肝細胞との共培養、および共培養における肝細胞によるアルブミン生成の誘導を示すグラフである。
【図8】図8は、50nM siRNAの存在下のT-カドヘリン発現を示すウエスタンブロットを示す。
【図9】図9は、siRNAの存在下および非存在下でのT-カドヘリンをトランスフェクトしたCHO細胞との共培養における肝細胞によるアルブミン生成を示すグラフである。
【図10】図10は、肝細胞によるアルブミン発現および尿素生成にT-カドヘリンが及ぼす効果を示すグラフである。用量依存的効果が示されている。
【図11】図11は、肝細胞とMEFとの共培養におけるT-カドヘリンの効果を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質細胞および非実質細胞の相互作用の分子メディエーターを同定する方法であって、以下の工程:
(a)実質細胞集団と第1非実質細胞集団との共培養の第1プロファイルを得る工程であって、該実質細胞の組織特異的機能を測定し、該組織特異的機能を第1非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることを含む工程、
(b)該実質細胞集団と第2非実質細胞集団との共培養の第2プロファイルを得る工程であって、該実質細胞の組織特異的機能を測定し、該組織特異的機能を第2非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることを含む工程、
(c)機能プロファイルを作成する工程であって、
(i)該組織特異的機能における変化を特定し、
(ii)第1遺伝子発現プロファイルと第2遺伝子発現プロファイルとを比較して1以上の遺伝子発現の相違を特定し、
(iii)それらの1以上の遺伝子を該組織特異的機能における変化と相関させることを含む工程、
を含み、ここで、該機能プロファイルは候補分子メディエーターのアイデンティティーを含む、前記方法。
【請求項2】
非実質細胞がストロマ細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ストロマ細胞が繊維芽細胞である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
繊維芽細胞が、3T3-J2繊維芽細胞、マウス胚繊維芽細胞およびNIH-3T3繊維芽細胞よりなる群から選ばれる細胞系を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
実質細胞集団が、肝臓細胞、骨髄細胞、皮膚細胞、膵臓細胞、腎臓細胞、神経細胞および副腎細胞よりなる群から選ばれる細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
肝臓細胞が肝細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
組織特異的機能が、アルブミン生成、フィブリノーゲン生成、TCDD誘導性cP450活性および尿素生成よりなる群から選ばれる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
機能プロファイルが、デルタ様1ホモログ;内皮分化、スフィンゴ脂質Gタンパク質共役受容体3;アクアポリン1;T-カドヘリン (Cdh13);血管カドヘリン-2;タイトジャンクションタンパク質2;インスリン様増殖因子II (IGF-II);結合組織増殖因子;フォリスタチン;分泌リンタンパク質1;C-fos誘導性増殖因子 (VEGF-D);小誘導性サイトカインA9;セルロプラスミン;アディポネクチン (Acrp30);繊維芽細胞誘導性分泌タンパク質;骨芽細胞特異的因子2 (ファスシクリンI様);マウスインスリン様増殖因子II (IGF-II);Tnf受容体結合因子4 (Traf4);アポリポタンパク質D;ハプトグロビン;フォリスタチン;インターロイキン6;結合組織増殖因子;小誘導性サイトカインBサブファミリーメンバー5 (Scyb5);デコリン;ラミニンα4鎖;Jun-B癌遺伝子;初期増殖応答1;Notch遺伝子ホモログ1 (Drosophila);FBJ骨肉腫癌遺伝子;インターフェロン調節因子1;204インターフェロン活性化タンパク質;スプライシング因子、アルギニン/セリンリッチ3;ヘテロ核リボ核タンパク質D様タンパク質JKTBP;自己抗原la (ss-b);高移動度グループボックス1;DNAポリメラーゼδ小サブユニット (pold2);Eskキナーゼ;マウスジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子: 3'末端;Pm1タンパク質;B細胞トランスロケーション遺伝子2;チミジンキナーゼ1;Shc SH2ドメイン結合タンパク質1;グアニル酸ヌクレオチド結合タンパク質4;インターフェロン誘導性タンパク質44;紡錘極体成分25ホモログ;バキュロウイルスIAPリピート含有5;オーロラキナーゼA;溶質担体ファミリー1 (グリア高アフィニティーグルタミン酸輸送体), メンバー3;ロイシンリッチリピート含有17;インターフェロンα誘導性タンパク質;ミニ染色体維持不全5, 細胞分裂周期46;システインリッチタンパク質61;アポリポタンパク質D;テトラトリコペプチドリピート3を有するインターフェロン誘導性タンパク質;テトラトリコペプチドリピート1を有するインターフェロン誘導性タンパク質;2'-5'オリゴアデニル酸シンターゼ様2;フィドゲチン(fidgetin)様1;Rac gtpアーゼ活性化タンパク質1;およびミトコンドリア内膜8ホモログaのトランスロカーゼよりなる群から選ばれる遺伝子を含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
機能プロファイルが、トロンビン受容体 (PAR-1);ヒアルロン酸受容体 (CD44);結合プラコグロビン(カドヘリン結合性);N-カドヘリン;β-カテニン;α-カテニン1;BH-プロトカドヘリン-a (Pcdh7);プロトカドヘリン-13;カテニンsrc;カテニン (カドヘリン結合性タンパク質), δ2 (神経プラコフィリン関連アーム-リピートタンパク質);内在性膜糖タンパク質;ストマチン;トランスフォーミング増殖因子β受容体1(Tgfbr1);ギャップ結合膜チャネルタンパク質α1;トロンボスポンジン2;メソテリン(Mesothelin);ディッコフ(Dickkopf)ホモログ3;インヒビンβA;FISP-12タンパク質;アドレノメジュリン;プロコラーゲンVIII型α1;メタロプロテイナーゼ2の組織インヒビター;マトリックスメタロプロテイナーゼ14;アクチンα1, 骨格筋;Rho関連コイルド-コイル形成キナーゼ2;Rho相互作用性タンパク質2;ミオシンVa;サイクリン依存性キナーゼインヒビター1A (P21);ネクジン;一般転写因子IIH, ポリペプチド1;クルッペル(Kruppel)様因子9;バソヌクリン;Srcホモロジー2ドメイン含有トランスフォーミングタンパク質C1; PDZおよびLIMドメイン1 (elfin);SH3ドメインタンパク質5;LIMおよびSH3タンパク質1;ジヒドロピリミジナーゼ様3;母系発現遺伝子3;4.5 LIMドメイン1;プロテアーゼ, セリン, 11 (Igf結合);トランスリン関連因子X;DEADボックスポリペプチド, Y染色体;プロテアーゼインヒビター15;トロンボスポンジン2;細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質2α;メソテリン(Mesothelin);Sec23aホモログ;アトロジン(Atrogin)1;オロソムコイド3;カルパイン6;マウス高分子量成長ホルモン受容体結合タンパク質;ポルキュピンDおよびシトクロムb-245, αポリペプチドよりなる群から選ばれる遺伝子を含む、請求項6記載の方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法から得られた機能プロファイルのコンピューター読取り可能なリストを含んでなるデータベース。
【請求項11】
実質細胞培養系を化合物と接触させ、請求項1記載の機能プロファイルを含む1以上の遺伝子の発現を測定することを含んでなる、実質細胞機能に対する影響について化合物をスクリーニングする方法。
【請求項12】
該測定が、前記の1以上の遺伝子を含むポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするプライマーを使用するPCRによるものである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
該測定が、前記の1以上の遺伝子によりコードされるポリペプチドの量を測定することによるものである、請求項11記載の方法。
【請求項14】
培養系が実質細胞と非実質細胞との共培養を含む、請求項11記載の方法。
【請求項15】
機能プロファイルが、
(a)肝臓実質細胞集団と第1非実質細胞集団との共培養の第1プロファイルを得る工程であって、該実質細胞の組織特異的機能を測定し、該組織特異的機能を第1非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることを含む工程、
(b)該肝臓実質細胞集団と第2非実質細胞集団との共培養の第2プロファイルを得る工程であって、該実質細胞の組織特異的機能を測定し、該組織特異的機能を第2非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることを含む工程、および
(c)機能プロファイルを作成する工程であって、
(i)該組織特異的機能における変化を特定し、
(ii)第1遺伝子発現プロファイルと第2遺伝子発現プロファイルとを比較して1以上の遺伝子発現の相違を特定し、
(iii)それらの1以上の遺伝子を該組織特異的機能における変化と相関させることを含む工程、
により同定された1以上の遺伝子を含み、ここで、該機能プロファイルは候補分子メディエーターのアイデンティティーを含む、請求項11記載の方法。
【請求項16】
機能プロファイルが、デルタ様1ホモログ;内皮分化、スフィンゴ脂質Gタンパク質共役受容体3;アクアポリン1;T-カドヘリン (Cdh13);血管カドヘリン-2;タイトジャンクションタンパク質2;インスリン様増殖因子II (IGF-II);結合組織増殖因子;フォリスタチン;分泌リンタンパク質1;C-fos誘導性増殖因子 (VEGF-D);小誘導性サイトカインA9;セルロプラスミン;アディポネクチン (Acrp30);繊維芽細胞誘導性分泌タンパク質;骨芽細胞特異的因子2 (ファスシクリンI様);マウスインスリン様増殖因子II (IGF-II);Tnf受容体結合因子4 (Traf4);アポリポタンパク質D;ハプトグロビン;フォリスタチン;インターロイキン6;結合組織増殖因子;小誘導性サイトカインBサブファミリーメンバー5 (Scyb5);デコリン;ラミニンα4鎖;Jun-B癌遺伝子;初期増殖応答1;Notch遺伝子ホモログ1 (Drosophila);FBJ骨肉腫癌遺伝子;インターフェロン調節因子1;204インターフェロン活性化タンパク質;スプライシング因子、アルギニン/セリンリッチ3;ヘテロ核リボ核タンパク質D様タンパク質JKTBP;自己抗原la (ss-b);高移動度グループボックス1;DNAポリメラーゼδ小サブユニット (pold2);Eskキナーゼ;マウスジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子: 3'末端;Pm1タンパク質;B細胞トランスロケーション遺伝子2;チミジンキナーゼ1;Shc SH2ドメイン結合タンパク質1;グアニル酸ヌクレオチド結合タンパク質4;インターフェロン誘導性タンパク質44;紡錘極体成分25ホモログ;バキュロウイルスIAPリピート含有5;オーロラキナーゼA;溶質担体ファミリー1 (グリア高アフィニティーグルタミン酸輸送体), メンバー3;ロイシンリッチリピート含有17;インターフェロンα誘導性タンパク質;ミニ染色体維持不全5, 細胞分裂周期46;システインリッチタンパク質61;アポリポタンパク質D;テトラトリコペプチドリピート3を有するインターフェロン誘導性タンパク質;テトラトリコペプチドリピート1を有するインターフェロン誘導性タンパク質;2'-5'オリゴアデニル酸シンターゼ様2;フィドゲチン(fidgetin)様1;Rac gtpアーゼ活性化タンパク質1;およびミトコンドリア内膜8ホモログaのトランスロカーゼよりなる群から選ばれる遺伝子を含む、請求項11記載の方法。
【請求項17】
機能プロファイルが、トロンビン受容体 (PAR-1);ヒアルロン酸受容体 (CD44);結合プラコグロビン(カドヘリン結合性);N-カドヘリン;β-カテニン;α-カテニン1;BH-プロトカドヘリン-a (Pcdh7);プロトカドヘリン-13;カテニンsrc;カテニン (カドヘリン結合性タンパク質), δ2 (神経プラコフィリン関連アーム-リピートタンパク質);内在性膜糖タンパク質;ストマチン;トランスフォーミング増殖因子β受容体1(Tgfbr1);ギャップ結合膜チャネルタンパク質α1;トロンボスポンジン2;メソテリン(Mesothelin);ディッコフ(Dickkopf)ホモログ3;インヒビンβA;FISP-12タンパク質;アドレノメジュリン;プロコラーゲンVIII型α1;メタロプロテイナーゼ2の組織インヒビター;マトリックスメタロプロテイナーゼ14;アクチンα1, 骨格筋;Rho関連コイルド-コイル形成キナーゼ2;Rho相互作用性タンパク質2;ミオシンVa;サイクリン依存性キナーゼインヒビター1A (P21);ネクジン;一般転写因子IIH, ポリペプチド1;クルッペル(Kruppel)様因子9;バソヌクリン;Srcホモロジー2ドメイン含有トランスフォーミングタンパク質C1; PDZおよびLIMドメイン1 (elfin);SH3ドメインタンパク質5;LIMおよびSH3タンパク質1;ジヒドロピリミジナーゼ様3;母系発現遺伝子3;4.5 LIMドメイン1;プロテアーゼ, セリン, 11 (Igf結合);トランスリン関連因子X;DEADボックスポリペプチド, Y染色体;プロテアーゼインヒビター15;トロンボスポンジン2;細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質2α;メソテリン(Mesothelin);Sec23aホモログ;アトロジン(Atrogin)1;オロソムコイド3;カルパイン6;マウス高分子量成長ホルモン受容体結合タンパク質;ポルキュピンDおよびシトクロムb-245, αポリペプチドよりなる群から選ばれる遺伝子を含む、請求項11記載の方法。
【請求項18】
肝疾患または肝障害を有する患者の治療方法であって、請求項1記載の方法により同定された分子メディエーターまたは分子メディエーターの産生を促進する物質を投与することを含み、かつ該分子メディエーターが肝細胞機能に対して正の効果を及ぼす、前記方法。
【請求項19】
分子メディエーターが、デルタ様1ホモログ;内皮分化、スフィンゴ脂質Gタンパク質共役受容体3;アクアポリン1;T-カドヘリン (Cdh13);血管カドヘリン-2;タイトジャンクションタンパク質2;インスリン様増殖因子II (IGF-II);結合組織増殖因子;フォリスタチン;分泌リンタンパク質1;C-fos誘導性増殖因子 (VEGF-D);小誘導性サイトカインA9;セルロプラスミン;アディポネクチン (Acrp30);繊維芽細胞誘導性分泌タンパク質;骨芽細胞特異的因子 2 (ファスシクリンI様);マウスインスリン様増殖因子II (IGF-II);Tnf受容体結合因子4 (Traf4);アポリポタンパク質D;ハプトグロビン;フォリスタチン;インターロイキン6;結合組織増殖因子;小誘導性サイトカインBサブファミリーメンバー5 (Scyb5);デコリン;ラミニンα4鎖;Jun-B癌遺伝子;初期増殖応答1;Notch遺伝子ホモログ1 (Drosophila);FBJ骨肉腫癌遺伝子;インターフェロン調節因子1;204インターフェロン活性化タンパク質;スプライシング因子、アルギニン/セリンリッチ3;ヘテロ核リボ核タンパク質D様タンパク質JKTBP;自己抗原la (ss-b);高移動度グループボックス1;DNAポリメラーゼδ小サブユニット (pold2);Eskキナーゼ;マウスジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子: 3'末端;Pm1タンパク質;B細胞トランスロケーション遺伝子2;チミジンキナーゼ1;Shc SH2ドメイン結合タンパク質1;グアニル酸ヌクレオチド結合タンパク質4;インターフェロン誘導性タンパク質44;紡錘極体成分25ホモログ;バキュロウイルスIAPリピート含有5;オーロラキナーゼA;溶質担体ファミリー1 (グリア高アフィニティーグルタミン酸輸送体), メンバー3;ロイシンリッチリピート含有17;インターフェロンα誘導性タンパク質;ミニ染色体維持不全5, 細胞分裂周期46;システインリッチタンパク質61;アポリポタンパク質D;テトラトリコペプチドリピート3を有するインターフェロン誘導性タンパク質;テトラトリコペプチドリピート1を有するインターフェロン誘導性タンパク質;2'-5'オリゴアデニル酸シンターゼ様2;フィドゲチン(fidgetin)様1;Rac gtpアーゼ活性化タンパク質1;およびミトコンドリア内膜8ホモログaのトランスロカーゼよりなる群から選ばれる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
分子メディエーターがT-カドヘリンである、請求項18記載の方法。
【請求項21】
肝障害を有する患者の治療方法であって、請求項1記載の方法により同定された分子メディエーターのインヒビターを投与することを含み、かつ該分子メディエーターが肝細胞機能に対して負の効果を及ぼす、前記方法。
【請求項22】
分子メディエーターが、トロンビン受容体 (PAR-1);ヒアルロン酸受容体 (CD44);結合プラコグロビン(カドヘリン結合性);N-カドヘリン;β-カテニン;α-カテニン1;BH-プロトカドヘリン-a (Pcdh7);プロトカドヘリン-13;カテニンsrc;カテニン (カドヘリン結合性タンパク質), δ2 (神経プラコフィリン関連アーム-リピートタンパク質);内在性膜糖タンパク質;ストマチン;トランスフォーミング増殖因子β受容体1(Tgfbr1);ギャップ結合膜チャネルタンパク質α1;トロンボスポンジン2;メソテリン(Mesothelin);ディッコフ(Dickkopf)ホモログ3;インヒビンβA;FISP-12タンパク質;アドレノメジュリン;プロコラーゲンVIII型α1;メタロプロテイナーゼ2の組織インヒビター;マトリックスメタロプロテイナーゼ14;アクチンα1, 骨格筋;Rho関連コイルド-コイル形成キナーゼ2;Rho相互作用性タンパク質2;ミオシンVa;サイクリン依存性キナーゼインヒビター1A (P21);ネクジン;一般転写因子IIH, ポリペプチド1;クルッペル(Kruppel)様因子9;バソヌクリン;Srcホモロジー2ドメイン含有トランスフォーミングタンパク質C1; PDZおよびLIMドメイン1 (elfin);SH3ドメインタンパク質5;LIMおよびSH3タンパク質1;ジヒドロピリミジナーゼ様3;母系発現遺伝子3;4.5 LIMドメイン1;プロテアーゼ, セリン, 11 (Igf結合);トランスリン関連因子X;DEADボックスポリペプチド, Y染色体;プロテアーゼインヒビター15;トロンボスポンジン2;細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質2α;メソテリン(Mesothelin);Sec23aホモログ;アトロジン(Atrogin)1;オロソムコイド3;カルパイン6;マウス高分子量成長ホルモン受容体結合タンパク質;ポルキュピンDおよびシトクロムb-245, αポリペプチドよりなる群から選ばれる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
肝細胞を、請求項1記載の方法により同定された遺伝子または遺伝子産物と接触させることを含んでなる、肝細胞の培養方法。
【請求項24】
実質細胞集団と支持細胞集団とを含んでなる共培養物であって、該支持細胞集団が、請求項1記載の方法により同定された分子メディエーターをコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトまたは形質転換されており、該分子メディエーターが実質細胞機能に対して正の効果を及ぼす、前記共培養物。
【請求項25】
実質細胞集団が、肝臓細胞、骨髄細胞、皮膚細胞、膵臓細胞、腎臓細胞、神経細胞および副腎細胞よりなる群から選ばれる、請求項24記載の共培養物。
【請求項26】
肝臓細胞が肝細胞である、請求項25記載の共培養物。
【請求項27】
組織特異的機能が、アルブミン生成、フィブリノーゲン生成、TCDD誘導性cP450活性および尿素生成よりなる群から選ばれる、請求項26記載の共培養物。
【請求項28】
分子メディエーターが、デルタ様1ホモログ;内皮分化、スフィンゴ脂質Gタンパク質共役受容体3;アクアポリン1;T-カドヘリン (Cdh13);血管カドヘリン-2;タイトジャンクションタンパク質2;インスリン様増殖因子II (IGF-II);結合組織増殖因子;フォリスタチン;分泌リンタンパク質1;C-fos誘導性増殖因子 (VEGF-D);小誘導性サイトカインA9;セルロプラスミン;アディポネクチン (Acrp30);繊維芽細胞誘導性分泌タンパク質;骨芽細胞特異的因子 2 (ファスシクリンI様);マウスインスリン様増殖因子II (IGF-II);Tnf受容体結合因子4 (Traf4);アポリポタンパク質D;ハプトグロビン;フォリスタチン;インターロイキン6;結合組織増殖因子;小誘導性サイトカインBサブファミリーメンバー5 (Scyb5);デコリン;ラミニンα4鎖;Jun-B癌遺伝子;初期増殖応答1;Notch遺伝子ホモログ1 (Drosophila);FBJ骨肉腫癌遺伝子;インターフェロン調節因子1;204インターフェロン活性化タンパク質;スプライシング因子、アルギニン/セリンリッチ3;ヘテロ核リボ核タンパク質D様タンパク質JKTBP;自己抗原la (ss-b);高移動度グループボックス1;DNAポリメラーゼδ小サブユニット (pold2);Eskキナーゼ;マウスジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子: 3'末端;Pm1タンパク質;B細胞トランスロケーション遺伝子2;チミジンキナーゼ1;Shc SH2ドメイン結合タンパク質1;グアニル酸ヌクレオチド結合タンパク質4;インターフェロン誘導性タンパク質44;紡錘極体成分25ホモログ;バキュロウイルスIAPリピート含有5;オーロラキナーゼA;溶質担体ファミリー1 (グリア高アフィニティーグルタミン酸輸送体), メンバー3;ロイシンリッチリピート含有17;インターフェロンα誘導性タンパク質;ミニ染色体維持不全5, 細胞分裂周期46;システインリッチタンパク質61;アポリポタンパク質D;テトラトリコペプチドリピート3を有するインターフェロン誘導性タンパク質;テトラトリコペプチドリピート1を有するインターフェロン誘導性タンパク質;2'-5'オリゴアデニル酸シンターゼ様2;フィドゲチン(fidgetin)様1;Rac gtpアーゼ活性化タンパク質1;およびミトコンドリア内膜8ホモログaのトランスロカーゼよりなる群から選ばれる、請求項24記載の共培養物。
【請求項29】
支持細胞集団がストロマ細胞を含む、請求項24記載の共培養物。
【請求項30】
ストロマ細胞が繊維芽細胞である、請求項29記載の共培養物。
【請求項31】
繊維芽細胞が、3T3-J2繊維芽細胞、マウス胚繊維芽細胞およびNIH-3T3繊維芽細胞よりなる群から選ばれる細胞系を含む、請求項30記載の共培養物。
【請求項32】
支持細胞がCHO細胞を含む、請求項24記載の共培養物。
【請求項33】
肝細胞機能を促進する方法であって、分子メディエーターの発現を促進する物質と共に肝細胞を培養することを含み、かつ該分子メディエーターが請求項1記載の方法により同定され、該分子メディエーターが肝細胞機能に対して正の効果を及ぼす、前記方法。
【請求項1】
実質細胞および非実質細胞の相互作用の分子メディエーターを同定する方法であって、以下の工程:
(a)実質細胞集団と第1非実質細胞集団との共培養の第1プロファイルを得る工程であって、該実質細胞の組織特異的機能を測定し、該組織特異的機能を第1非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることを含む工程、
(b)該実質細胞集団と第2非実質細胞集団との共培養の第2プロファイルを得る工程であって、該実質細胞の組織特異的機能を測定し、該組織特異的機能を第2非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることを含む工程、
(c)機能プロファイルを作成する工程であって、
(i)該組織特異的機能における変化を特定し、
(ii)第1遺伝子発現プロファイルと第2遺伝子発現プロファイルとを比較して1以上の遺伝子発現の相違を特定し、
(iii)それらの1以上の遺伝子を該組織特異的機能における変化と相関させることを含む工程、
を含み、ここで、該機能プロファイルは候補分子メディエーターのアイデンティティーを含む、前記方法。
【請求項2】
非実質細胞がストロマ細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ストロマ細胞が繊維芽細胞である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
繊維芽細胞が、3T3-J2繊維芽細胞、マウス胚繊維芽細胞およびNIH-3T3繊維芽細胞よりなる群から選ばれる細胞系を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
実質細胞集団が、肝臓細胞、骨髄細胞、皮膚細胞、膵臓細胞、腎臓細胞、神経細胞および副腎細胞よりなる群から選ばれる細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
肝臓細胞が肝細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
組織特異的機能が、アルブミン生成、フィブリノーゲン生成、TCDD誘導性cP450活性および尿素生成よりなる群から選ばれる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
機能プロファイルが、デルタ様1ホモログ;内皮分化、スフィンゴ脂質Gタンパク質共役受容体3;アクアポリン1;T-カドヘリン (Cdh13);血管カドヘリン-2;タイトジャンクションタンパク質2;インスリン様増殖因子II (IGF-II);結合組織増殖因子;フォリスタチン;分泌リンタンパク質1;C-fos誘導性増殖因子 (VEGF-D);小誘導性サイトカインA9;セルロプラスミン;アディポネクチン (Acrp30);繊維芽細胞誘導性分泌タンパク質;骨芽細胞特異的因子2 (ファスシクリンI様);マウスインスリン様増殖因子II (IGF-II);Tnf受容体結合因子4 (Traf4);アポリポタンパク質D;ハプトグロビン;フォリスタチン;インターロイキン6;結合組織増殖因子;小誘導性サイトカインBサブファミリーメンバー5 (Scyb5);デコリン;ラミニンα4鎖;Jun-B癌遺伝子;初期増殖応答1;Notch遺伝子ホモログ1 (Drosophila);FBJ骨肉腫癌遺伝子;インターフェロン調節因子1;204インターフェロン活性化タンパク質;スプライシング因子、アルギニン/セリンリッチ3;ヘテロ核リボ核タンパク質D様タンパク質JKTBP;自己抗原la (ss-b);高移動度グループボックス1;DNAポリメラーゼδ小サブユニット (pold2);Eskキナーゼ;マウスジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子: 3'末端;Pm1タンパク質;B細胞トランスロケーション遺伝子2;チミジンキナーゼ1;Shc SH2ドメイン結合タンパク質1;グアニル酸ヌクレオチド結合タンパク質4;インターフェロン誘導性タンパク質44;紡錘極体成分25ホモログ;バキュロウイルスIAPリピート含有5;オーロラキナーゼA;溶質担体ファミリー1 (グリア高アフィニティーグルタミン酸輸送体), メンバー3;ロイシンリッチリピート含有17;インターフェロンα誘導性タンパク質;ミニ染色体維持不全5, 細胞分裂周期46;システインリッチタンパク質61;アポリポタンパク質D;テトラトリコペプチドリピート3を有するインターフェロン誘導性タンパク質;テトラトリコペプチドリピート1を有するインターフェロン誘導性タンパク質;2'-5'オリゴアデニル酸シンターゼ様2;フィドゲチン(fidgetin)様1;Rac gtpアーゼ活性化タンパク質1;およびミトコンドリア内膜8ホモログaのトランスロカーゼよりなる群から選ばれる遺伝子を含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
機能プロファイルが、トロンビン受容体 (PAR-1);ヒアルロン酸受容体 (CD44);結合プラコグロビン(カドヘリン結合性);N-カドヘリン;β-カテニン;α-カテニン1;BH-プロトカドヘリン-a (Pcdh7);プロトカドヘリン-13;カテニンsrc;カテニン (カドヘリン結合性タンパク質), δ2 (神経プラコフィリン関連アーム-リピートタンパク質);内在性膜糖タンパク質;ストマチン;トランスフォーミング増殖因子β受容体1(Tgfbr1);ギャップ結合膜チャネルタンパク質α1;トロンボスポンジン2;メソテリン(Mesothelin);ディッコフ(Dickkopf)ホモログ3;インヒビンβA;FISP-12タンパク質;アドレノメジュリン;プロコラーゲンVIII型α1;メタロプロテイナーゼ2の組織インヒビター;マトリックスメタロプロテイナーゼ14;アクチンα1, 骨格筋;Rho関連コイルド-コイル形成キナーゼ2;Rho相互作用性タンパク質2;ミオシンVa;サイクリン依存性キナーゼインヒビター1A (P21);ネクジン;一般転写因子IIH, ポリペプチド1;クルッペル(Kruppel)様因子9;バソヌクリン;Srcホモロジー2ドメイン含有トランスフォーミングタンパク質C1; PDZおよびLIMドメイン1 (elfin);SH3ドメインタンパク質5;LIMおよびSH3タンパク質1;ジヒドロピリミジナーゼ様3;母系発現遺伝子3;4.5 LIMドメイン1;プロテアーゼ, セリン, 11 (Igf結合);トランスリン関連因子X;DEADボックスポリペプチド, Y染色体;プロテアーゼインヒビター15;トロンボスポンジン2;細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質2α;メソテリン(Mesothelin);Sec23aホモログ;アトロジン(Atrogin)1;オロソムコイド3;カルパイン6;マウス高分子量成長ホルモン受容体結合タンパク質;ポルキュピンDおよびシトクロムb-245, αポリペプチドよりなる群から選ばれる遺伝子を含む、請求項6記載の方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法から得られた機能プロファイルのコンピューター読取り可能なリストを含んでなるデータベース。
【請求項11】
実質細胞培養系を化合物と接触させ、請求項1記載の機能プロファイルを含む1以上の遺伝子の発現を測定することを含んでなる、実質細胞機能に対する影響について化合物をスクリーニングする方法。
【請求項12】
該測定が、前記の1以上の遺伝子を含むポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするプライマーを使用するPCRによるものである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
該測定が、前記の1以上の遺伝子によりコードされるポリペプチドの量を測定することによるものである、請求項11記載の方法。
【請求項14】
培養系が実質細胞と非実質細胞との共培養を含む、請求項11記載の方法。
【請求項15】
機能プロファイルが、
(a)肝臓実質細胞集団と第1非実質細胞集団との共培養の第1プロファイルを得る工程であって、該実質細胞の組織特異的機能を測定し、該組織特異的機能を第1非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることを含む工程、
(b)該肝臓実質細胞集団と第2非実質細胞集団との共培養の第2プロファイルを得る工程であって、該実質細胞の組織特異的機能を測定し、該組織特異的機能を第2非実質細胞集団の遺伝子発現プロファイルと相関させることを含む工程、および
(c)機能プロファイルを作成する工程であって、
(i)該組織特異的機能における変化を特定し、
(ii)第1遺伝子発現プロファイルと第2遺伝子発現プロファイルとを比較して1以上の遺伝子発現の相違を特定し、
(iii)それらの1以上の遺伝子を該組織特異的機能における変化と相関させることを含む工程、
により同定された1以上の遺伝子を含み、ここで、該機能プロファイルは候補分子メディエーターのアイデンティティーを含む、請求項11記載の方法。
【請求項16】
機能プロファイルが、デルタ様1ホモログ;内皮分化、スフィンゴ脂質Gタンパク質共役受容体3;アクアポリン1;T-カドヘリン (Cdh13);血管カドヘリン-2;タイトジャンクションタンパク質2;インスリン様増殖因子II (IGF-II);結合組織増殖因子;フォリスタチン;分泌リンタンパク質1;C-fos誘導性増殖因子 (VEGF-D);小誘導性サイトカインA9;セルロプラスミン;アディポネクチン (Acrp30);繊維芽細胞誘導性分泌タンパク質;骨芽細胞特異的因子2 (ファスシクリンI様);マウスインスリン様増殖因子II (IGF-II);Tnf受容体結合因子4 (Traf4);アポリポタンパク質D;ハプトグロビン;フォリスタチン;インターロイキン6;結合組織増殖因子;小誘導性サイトカインBサブファミリーメンバー5 (Scyb5);デコリン;ラミニンα4鎖;Jun-B癌遺伝子;初期増殖応答1;Notch遺伝子ホモログ1 (Drosophila);FBJ骨肉腫癌遺伝子;インターフェロン調節因子1;204インターフェロン活性化タンパク質;スプライシング因子、アルギニン/セリンリッチ3;ヘテロ核リボ核タンパク質D様タンパク質JKTBP;自己抗原la (ss-b);高移動度グループボックス1;DNAポリメラーゼδ小サブユニット (pold2);Eskキナーゼ;マウスジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子: 3'末端;Pm1タンパク質;B細胞トランスロケーション遺伝子2;チミジンキナーゼ1;Shc SH2ドメイン結合タンパク質1;グアニル酸ヌクレオチド結合タンパク質4;インターフェロン誘導性タンパク質44;紡錘極体成分25ホモログ;バキュロウイルスIAPリピート含有5;オーロラキナーゼA;溶質担体ファミリー1 (グリア高アフィニティーグルタミン酸輸送体), メンバー3;ロイシンリッチリピート含有17;インターフェロンα誘導性タンパク質;ミニ染色体維持不全5, 細胞分裂周期46;システインリッチタンパク質61;アポリポタンパク質D;テトラトリコペプチドリピート3を有するインターフェロン誘導性タンパク質;テトラトリコペプチドリピート1を有するインターフェロン誘導性タンパク質;2'-5'オリゴアデニル酸シンターゼ様2;フィドゲチン(fidgetin)様1;Rac gtpアーゼ活性化タンパク質1;およびミトコンドリア内膜8ホモログaのトランスロカーゼよりなる群から選ばれる遺伝子を含む、請求項11記載の方法。
【請求項17】
機能プロファイルが、トロンビン受容体 (PAR-1);ヒアルロン酸受容体 (CD44);結合プラコグロビン(カドヘリン結合性);N-カドヘリン;β-カテニン;α-カテニン1;BH-プロトカドヘリン-a (Pcdh7);プロトカドヘリン-13;カテニンsrc;カテニン (カドヘリン結合性タンパク質), δ2 (神経プラコフィリン関連アーム-リピートタンパク質);内在性膜糖タンパク質;ストマチン;トランスフォーミング増殖因子β受容体1(Tgfbr1);ギャップ結合膜チャネルタンパク質α1;トロンボスポンジン2;メソテリン(Mesothelin);ディッコフ(Dickkopf)ホモログ3;インヒビンβA;FISP-12タンパク質;アドレノメジュリン;プロコラーゲンVIII型α1;メタロプロテイナーゼ2の組織インヒビター;マトリックスメタロプロテイナーゼ14;アクチンα1, 骨格筋;Rho関連コイルド-コイル形成キナーゼ2;Rho相互作用性タンパク質2;ミオシンVa;サイクリン依存性キナーゼインヒビター1A (P21);ネクジン;一般転写因子IIH, ポリペプチド1;クルッペル(Kruppel)様因子9;バソヌクリン;Srcホモロジー2ドメイン含有トランスフォーミングタンパク質C1; PDZおよびLIMドメイン1 (elfin);SH3ドメインタンパク質5;LIMおよびSH3タンパク質1;ジヒドロピリミジナーゼ様3;母系発現遺伝子3;4.5 LIMドメイン1;プロテアーゼ, セリン, 11 (Igf結合);トランスリン関連因子X;DEADボックスポリペプチド, Y染色体;プロテアーゼインヒビター15;トロンボスポンジン2;細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質2α;メソテリン(Mesothelin);Sec23aホモログ;アトロジン(Atrogin)1;オロソムコイド3;カルパイン6;マウス高分子量成長ホルモン受容体結合タンパク質;ポルキュピンDおよびシトクロムb-245, αポリペプチドよりなる群から選ばれる遺伝子を含む、請求項11記載の方法。
【請求項18】
肝疾患または肝障害を有する患者の治療方法であって、請求項1記載の方法により同定された分子メディエーターまたは分子メディエーターの産生を促進する物質を投与することを含み、かつ該分子メディエーターが肝細胞機能に対して正の効果を及ぼす、前記方法。
【請求項19】
分子メディエーターが、デルタ様1ホモログ;内皮分化、スフィンゴ脂質Gタンパク質共役受容体3;アクアポリン1;T-カドヘリン (Cdh13);血管カドヘリン-2;タイトジャンクションタンパク質2;インスリン様増殖因子II (IGF-II);結合組織増殖因子;フォリスタチン;分泌リンタンパク質1;C-fos誘導性増殖因子 (VEGF-D);小誘導性サイトカインA9;セルロプラスミン;アディポネクチン (Acrp30);繊維芽細胞誘導性分泌タンパク質;骨芽細胞特異的因子 2 (ファスシクリンI様);マウスインスリン様増殖因子II (IGF-II);Tnf受容体結合因子4 (Traf4);アポリポタンパク質D;ハプトグロビン;フォリスタチン;インターロイキン6;結合組織増殖因子;小誘導性サイトカインBサブファミリーメンバー5 (Scyb5);デコリン;ラミニンα4鎖;Jun-B癌遺伝子;初期増殖応答1;Notch遺伝子ホモログ1 (Drosophila);FBJ骨肉腫癌遺伝子;インターフェロン調節因子1;204インターフェロン活性化タンパク質;スプライシング因子、アルギニン/セリンリッチ3;ヘテロ核リボ核タンパク質D様タンパク質JKTBP;自己抗原la (ss-b);高移動度グループボックス1;DNAポリメラーゼδ小サブユニット (pold2);Eskキナーゼ;マウスジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子: 3'末端;Pm1タンパク質;B細胞トランスロケーション遺伝子2;チミジンキナーゼ1;Shc SH2ドメイン結合タンパク質1;グアニル酸ヌクレオチド結合タンパク質4;インターフェロン誘導性タンパク質44;紡錘極体成分25ホモログ;バキュロウイルスIAPリピート含有5;オーロラキナーゼA;溶質担体ファミリー1 (グリア高アフィニティーグルタミン酸輸送体), メンバー3;ロイシンリッチリピート含有17;インターフェロンα誘導性タンパク質;ミニ染色体維持不全5, 細胞分裂周期46;システインリッチタンパク質61;アポリポタンパク質D;テトラトリコペプチドリピート3を有するインターフェロン誘導性タンパク質;テトラトリコペプチドリピート1を有するインターフェロン誘導性タンパク質;2'-5'オリゴアデニル酸シンターゼ様2;フィドゲチン(fidgetin)様1;Rac gtpアーゼ活性化タンパク質1;およびミトコンドリア内膜8ホモログaのトランスロカーゼよりなる群から選ばれる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
分子メディエーターがT-カドヘリンである、請求項18記載の方法。
【請求項21】
肝障害を有する患者の治療方法であって、請求項1記載の方法により同定された分子メディエーターのインヒビターを投与することを含み、かつ該分子メディエーターが肝細胞機能に対して負の効果を及ぼす、前記方法。
【請求項22】
分子メディエーターが、トロンビン受容体 (PAR-1);ヒアルロン酸受容体 (CD44);結合プラコグロビン(カドヘリン結合性);N-カドヘリン;β-カテニン;α-カテニン1;BH-プロトカドヘリン-a (Pcdh7);プロトカドヘリン-13;カテニンsrc;カテニン (カドヘリン結合性タンパク質), δ2 (神経プラコフィリン関連アーム-リピートタンパク質);内在性膜糖タンパク質;ストマチン;トランスフォーミング増殖因子β受容体1(Tgfbr1);ギャップ結合膜チャネルタンパク質α1;トロンボスポンジン2;メソテリン(Mesothelin);ディッコフ(Dickkopf)ホモログ3;インヒビンβA;FISP-12タンパク質;アドレノメジュリン;プロコラーゲンVIII型α1;メタロプロテイナーゼ2の組織インヒビター;マトリックスメタロプロテイナーゼ14;アクチンα1, 骨格筋;Rho関連コイルド-コイル形成キナーゼ2;Rho相互作用性タンパク質2;ミオシンVa;サイクリン依存性キナーゼインヒビター1A (P21);ネクジン;一般転写因子IIH, ポリペプチド1;クルッペル(Kruppel)様因子9;バソヌクリン;Srcホモロジー2ドメイン含有トランスフォーミングタンパク質C1; PDZおよびLIMドメイン1 (elfin);SH3ドメインタンパク質5;LIMおよびSH3タンパク質1;ジヒドロピリミジナーゼ様3;母系発現遺伝子3;4.5 LIMドメイン1;プロテアーゼ, セリン, 11 (Igf結合);トランスリン関連因子X;DEADボックスポリペプチド, Y染色体;プロテアーゼインヒビター15;トロンボスポンジン2;細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質2α;メソテリン(Mesothelin);Sec23aホモログ;アトロジン(Atrogin)1;オロソムコイド3;カルパイン6;マウス高分子量成長ホルモン受容体結合タンパク質;ポルキュピンDおよびシトクロムb-245, αポリペプチドよりなる群から選ばれる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
肝細胞を、請求項1記載の方法により同定された遺伝子または遺伝子産物と接触させることを含んでなる、肝細胞の培養方法。
【請求項24】
実質細胞集団と支持細胞集団とを含んでなる共培養物であって、該支持細胞集団が、請求項1記載の方法により同定された分子メディエーターをコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトまたは形質転換されており、該分子メディエーターが実質細胞機能に対して正の効果を及ぼす、前記共培養物。
【請求項25】
実質細胞集団が、肝臓細胞、骨髄細胞、皮膚細胞、膵臓細胞、腎臓細胞、神経細胞および副腎細胞よりなる群から選ばれる、請求項24記載の共培養物。
【請求項26】
肝臓細胞が肝細胞である、請求項25記載の共培養物。
【請求項27】
組織特異的機能が、アルブミン生成、フィブリノーゲン生成、TCDD誘導性cP450活性および尿素生成よりなる群から選ばれる、請求項26記載の共培養物。
【請求項28】
分子メディエーターが、デルタ様1ホモログ;内皮分化、スフィンゴ脂質Gタンパク質共役受容体3;アクアポリン1;T-カドヘリン (Cdh13);血管カドヘリン-2;タイトジャンクションタンパク質2;インスリン様増殖因子II (IGF-II);結合組織増殖因子;フォリスタチン;分泌リンタンパク質1;C-fos誘導性増殖因子 (VEGF-D);小誘導性サイトカインA9;セルロプラスミン;アディポネクチン (Acrp30);繊維芽細胞誘導性分泌タンパク質;骨芽細胞特異的因子 2 (ファスシクリンI様);マウスインスリン様増殖因子II (IGF-II);Tnf受容体結合因子4 (Traf4);アポリポタンパク質D;ハプトグロビン;フォリスタチン;インターロイキン6;結合組織増殖因子;小誘導性サイトカインBサブファミリーメンバー5 (Scyb5);デコリン;ラミニンα4鎖;Jun-B癌遺伝子;初期増殖応答1;Notch遺伝子ホモログ1 (Drosophila);FBJ骨肉腫癌遺伝子;インターフェロン調節因子1;204インターフェロン活性化タンパク質;スプライシング因子、アルギニン/セリンリッチ3;ヘテロ核リボ核タンパク質D様タンパク質JKTBP;自己抗原la (ss-b);高移動度グループボックス1;DNAポリメラーゼδ小サブユニット (pold2);Eskキナーゼ;マウスジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子: 3'末端;Pm1タンパク質;B細胞トランスロケーション遺伝子2;チミジンキナーゼ1;Shc SH2ドメイン結合タンパク質1;グアニル酸ヌクレオチド結合タンパク質4;インターフェロン誘導性タンパク質44;紡錘極体成分25ホモログ;バキュロウイルスIAPリピート含有5;オーロラキナーゼA;溶質担体ファミリー1 (グリア高アフィニティーグルタミン酸輸送体), メンバー3;ロイシンリッチリピート含有17;インターフェロンα誘導性タンパク質;ミニ染色体維持不全5, 細胞分裂周期46;システインリッチタンパク質61;アポリポタンパク質D;テトラトリコペプチドリピート3を有するインターフェロン誘導性タンパク質;テトラトリコペプチドリピート1を有するインターフェロン誘導性タンパク質;2'-5'オリゴアデニル酸シンターゼ様2;フィドゲチン(fidgetin)様1;Rac gtpアーゼ活性化タンパク質1;およびミトコンドリア内膜8ホモログaのトランスロカーゼよりなる群から選ばれる、請求項24記載の共培養物。
【請求項29】
支持細胞集団がストロマ細胞を含む、請求項24記載の共培養物。
【請求項30】
ストロマ細胞が繊維芽細胞である、請求項29記載の共培養物。
【請求項31】
繊維芽細胞が、3T3-J2繊維芽細胞、マウス胚繊維芽細胞およびNIH-3T3繊維芽細胞よりなる群から選ばれる細胞系を含む、請求項30記載の共培養物。
【請求項32】
支持細胞がCHO細胞を含む、請求項24記載の共培養物。
【請求項33】
肝細胞機能を促進する方法であって、分子メディエーターの発現を促進する物質と共に肝細胞を培養することを含み、かつ該分子メディエーターが請求項1記載の方法により同定され、該分子メディエーターが肝細胞機能に対して正の効果を及ぼす、前記方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−508878(P2008−508878A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524952(P2007−524952)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/027604
【国際公開番号】WO2006/015368
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(592130699)ザ・レジェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/027604
【国際公開番号】WO2006/015368
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(592130699)ザ・レジェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
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