説明

細長い形状の部材をタービンエンジンのケーシングに固定するための装置

電気ハーネスまたはダクトなどの細長い形状の部材(12)をタービンエンジンのケーシング(14)へと固定するための装置(10)であって、前記部材の周囲に取り付けられる管状部(16)を備えており、前記管状部が、ケーシングへの固定のための少なくとも1つのタブ(18)に固定されており、前記管状部が、熱収縮プラスチック材料で製作され、加熱されて部材へと収縮するように設計されている装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細長い形状の部材(例えば、電気ハーネスまたは流体ダクトなど)を機械の構造体(特に、タービンエンジンのケーシング)に固定するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気ハーネスは、通常は、ハーネスを囲む締め付けカラー(clamping collar)によってタービンエンジンのケーシングに固定され、そのような締め付けカラーが、ケーシングへの固定のためのタブを備えている。弾性リングが、ねじの締め付け時にハーネスを傷めることがないように、ハーネスとカラーとの間に介装される。
【0003】
また、電気ハーネスをケーシングに固定するための装置であって、ハーネスを囲む湾曲部を有しており、この湾曲部の両端がねじ/ナット式の手段によってケーシングへと固定されるタブにつながっているおおむね「Ω」形状の装置も知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の技術は、多数の欠点を呈する。各々の固定装置は、いずれかの特定の直径を有する電気ハーネスに係合してこれをケーシングに固定するために適しているため、固定装置について、タービンエンジンへと取り付けられる電気ハーネスの種々の直径と同数の異なるリファレンス(reference)を有する必要がある。
【0005】
さらには、知られている固定装置は比較的重く、取り付けに比較的長い時間を必要とする。また、このような固定装置は、ハーネスから独立しており、上述のねじの破断または緩みの場合に、ハーネスから分離してしまう可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、従来技術の上述の欠点を、簡単、効果的、かつ高価でない方法で改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的のため、本発明は、細長い形状の部材(例えば、電気ハーネスまたはダクトなど)を機械の構造体(特に、タービンエンジンのケーシング)へと固定するために、部材の周囲に取り付けられるクランプ部を備えており、このクランプ部が、ケーシングへの固定のための少なくとも1つのタブに固定されている装置であって、クランプ部が、管状であって熱収縮プラスチック材料で製作され、前記クランプ部が、最初は部材への取り付けが可能であるように部材の外径よりも大きい内径を有しており、加熱されて部材へと収縮するように設計されていることを特徴とする装置を提供する。
【0008】
固定されるべき部材へと締まる本発明の固定装置の管状部は、それ自体が熱収縮プラスチック材料で製作され、すなわち熱の作用のもとで収縮するように設計されたプラスチック材料で製作される。この材料は、従来の技術の装置に使用される金属材料と比べ、比較的軽量である。例として、熱収縮材料は、Viton(R)またはTeflon(R)などであってもよい。
【0009】
本発明の装置の管状部は、最初は比較的大きい内径を有しており、前記内径よりも小さい任意の直径を有してもよい固定対象の部材へと係合させることができる。このように、本発明の固定装置は、従来の技術と異なり、種々の直径の部材に適合することができる。
【0010】
管状部は、加熱されることによって収縮して部材へと締まるように設計される。ひとたび収縮すると、管状部は、もはや初期の形状へと戻ることができず、結果として装置がハーネスに恒久的に固定されることが保証され、装置の前記部材からの望ましくない分離が回避される。しかしながら、例えば刃を使用して装置の管状部を全長にわたって切断し、切断による長手縁を広げて離すことによって、装置を部材から取り除くことが可能である。
【0011】
本発明の別の特徴によれば、装置の管状部が、閉じた管状であり、すなわち特に長手方向の割れ目を有していないことで、管状部がこの部分の熱収縮によって部材へと堅固に固定されることが保証される。
【0012】
本発明の一実施形態においては、固定タブが熱収縮プラスチック材料で、管状部と一体に形成され、結果として本発明の装置の製造を容易にすることができる。
【0013】
一変種においては、固定タブが、一部分が管状部の熱収縮材料に埋め込まれた金属インサートによって構成される。固定タブの熱収縮材料に埋め込まれる部分が、この材料への固定のための手段を備えることができる。
【0014】
固定タブは、ねじを通すための少なくとも1つの開口を備えることができ、この開口が、横断方向に長円形または細長い形状であり、装置とケーシングとの間に存在しうるこの方向の組み立てのずれを許容する。
【0015】
例として、固定タブは、装置の管状部の長手軸に実質的に平行に延びている。
【0016】
さらに本発明は、タービンエンジン用の電気ハーネスまたはダクトであって、上述の形式の固定装置を保持することを特徴とするハーネスまたはダクトを提供する。
【0017】
さらに本発明は、航空機のターボプロップまたはターボジェットなどのタービンエンジンであって、上述のとおりの装置を備えることを特徴とするタービンエンジンを提供する。
【0018】
さらに本発明は、細長い形状の部材(例えば、電気ハーネスまたは流体ダクトなど)を機械の構造体(特に、タービンエンジンのケーシング)へと固定する方法であって、上述の形式の固定装置を前記部材に係合させるステップと、前記装置の管状部を部材へと締まるまで収縮させるべく加熱するステップと、装置の固定タブをタブの開口を通過する少なくとも1つのねじによってケーシングへと固定するステップと、からなることを特徴とする方法を提供する。
【0019】
装置の管状部を、接着剤によっても部材に固定することができる。
【0020】
最後に、さらに本発明は、上述のとおりの固定装置を取り除く方法であって、装置の管状部を全長にわたって切断するステップと、装置の管状部を部材から引き離すステップと、からなることを特徴とする方法を提供する。
【0021】
あくまでも本発明を限定するものではない例として、添付の図面を参照しつつ行われる以下の説明を検討することで、本発明をよりよく理解することができ、本発明の他の詳細、特徴、および利点が、さらに明確に現れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】細長い形状の部材をタービンエンジンのケーシングへと固定するための本発明の装置の概略の斜視図である。
【図2】図1の装置および固定対象の部材の概略の断面図であり、装置を部材に取り付ける方法の段階を示している。
【図3】図1の装置および固定対象の部材の概略の断面図であり、装置を部材に取り付ける方法の段階を示している。
【図4】本発明の装置の一変種の実施形態の概略の斜視図である。
【図5】本発明の装置の別の変種の実施形態の概略の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
最初に図1を参照すると、細長い形状の部材12をタービンエンジン(航空機のターボプロップまたはターボジェットなど)のケーシング14へと固定するための本発明の装置10の実施形態が示されており、装置10が、部材12に係合して部材12へと留められる管状部16を備え、この管状部16が、ケーシング14への固定のためのタブ18へと固定され、管状部16は、本発明によれば、熱収縮プラスチック材料で作られている。
【0024】
部材12は、例えば、電気ハーネスまたは(空気、油、または燃料のための)流体ダクトであってもよい。
【0025】
固定タブ18は、この例では、一端が管状部16の熱収縮材料に埋め込まれた板または平坦な金属インサートによって形成されている。タブ18は、実質的に管状部16の円柱形の外表面に対する接線の方向に、管状部16の長手軸A(部材12の長手軸に一致する)に平行に延びている。
【0026】
タブ18は、軸Aに平行な方向において、実質的に管状部16の全長にわたって延びている。固定タブ18は、タブ18を覆うようにオーバーモールドされた管状部16の熱収縮材料にしっかりと固定されている。この目的のため、材料に埋め込まれるタブの端部26を、図2および図3に見て取ることができるように湾曲させ、もしくは折り曲げることができ、または材料に埋め込まれるタブの端部26に、オーバーモールドの際に熱収縮材料で満たされる開口を備えることができる。
【0027】
タブ18は、ねじまたはボルト22を通すための開口20を備えており、このねじまたはボルト22が、ケーシング14の該当の開口24に係合し、自由端においてナット(図示せず)を受け入れ、あるいはケーシングの開口24へと直接ねじ込まれる。
【0028】
タブ18の開口20は、好都合には長円形または細長い形状であり、その軸が、組み立ての際に装置10とケーシング14との間に生じうるずれの方向に平行に延びている。図示の例では、開口20が、軸Aに平行な方向に細長い形状であり、装置10のケーシングへの組み付けにおいて前記方向にずれが現れる可能性があることを意味している。換言すると、開口20の細長い形状または長円形が、最大で数ミリメートルであるそのようなずれを許容するように機能する。
【0029】
本発明の装置10を部材12に組み付ける方法は、図3および図4を参照して後述される。
【0030】
図2においては、装置10が、加熱による収縮の前の初期の状態に示されている。したがって、管状部16が、装置が取り付けられる部材12の外径よりも大きい内径Dを有している。この部位16は、(よりも大きい外径d’の部材12’によって図式的に表わされているように)任意の直径の部材に係合することができるが、この直径は、上述の直径Dよりも小さくなければならない。
【0031】
装置10が、部材12の端部に適用され、次いで固定タブ18が所定の位置に位置するまで軸Aに沿って動かされる。
【0032】
次いで、図3に見て取ることができるとおり、装置の管状部16が加熱されることで、管状部16が収縮して、部材12へと留められる。この収縮後の状態において、部位16の内径は、部材12の外径以下である。
【0033】
したがって、装置10が部材12上で移動することが、管状部16と前記部材との間の締め付け力によって防止される。部材への装置10の固定を、管状部16と部材との間の接着剤によってさらに強力にすることができ、接着剤は、部位16の円柱形の内表面と部材との間に位置し、上述の加熱の工程に先立って前記表面に配置される。
【0034】
図4に示されている本発明の装置110の変種の実施形態は、固定タブ118が管状部116と一体に形成され、したがってやはり熱収縮プラスチック材料で作られている点で、上述の装置10から相違する。
【0035】
タブ118は、実質的に平坦であり、管状部116の長手軸A(部材112の軸に一致する)に平行に延びている。タブ118も、装置をケーシング14に固定するためのねじ22を通す長円形の開口120を有している。
【0036】
図5に示されている別の変種の実施形態においては、管状部216が、部位216の各側において管状部の軸に実質的に平行な共通の平面内を延びている2つのタブ218と一体であり、結果として固定装置が実質的にΩ形である。各々のタブ218が、タービンエンジンのケーシングへの固定のためのねじを通す開口220を有している。
【0037】
本発明の装置10、110、および210を、管状部16、116、および216の全長にわたって軸Aに平行な方向にカッターなどの刃を使用して管状部16、116、および216を切り離すことによって、部材12、112、および212から取り除くことができる。次いで、管状部の切断された長手縁を部材の直径よりも大きい距離だけ広げて離し、装置を部材から引き離せば充分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
例えば電気ハーネスまたはダクトなどの細長い形状の部材(12)を、機械の構造体、特にタービンエンジンのケーシング(14)へと固定するために、部材の周囲に取り付けられるクランプ部(16)を備えており、前記クランプ部が、ケーシングへの固定のための少なくとも1つのタブ(18)に固定されている装置(10)であって、
クランプ部が、管状であって熱収縮プラスチック材料で製作され、前記クランプ部が、最初は部材への取り付けが可能であるように部材の外径()よりも大きい内径(D)を有しており、加熱されて部材へと収縮するように設計されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
固定タブ(118、218)が、熱収縮プラスチック材料で、管状部(116、216)と一体に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
固定タブ(18)が、一部分(26)が管状部(16)の熱収縮材料に埋め込まれた金属インサートによって構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
固定タブ(18)の熱収縮材料に埋め込まれた部分(26)が、前記材料への固定のための手段を備えていることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
固定タブ(18)が、ねじ(22)を通すための少なくとも1つの開口(20)を備えており、開口が、横断方向に長円形または細長い形状であり、装置とケーシング(14)との間に存在しうるこの方向の組み立てのずれを許容することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
管状部が、長手方向の割れ目を有していないことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
タービンエンジン用の電気ハーネスまたは流体ダクトなどの細長い形状の部材であって、請求項1から6のいずれか一項に記載の固定装置(10)を保持することを特徴とする部材。
【請求項8】
航空機のターボプロップまたはターボジェットなどのタービンエンジンであって、、請求項1から6のいずれか一項に記載の少なくとも1つの固定装置(10)を備えることを特徴とするタービンエンジン。
【請求項9】
例えば電気ハーネスまたは流体ダクトなどの細長い形状の部材(12)を、機械の構造体、特にタービンエンジンのケーシング(14)へと固定する方法であって、
請求項1から6のいずれか一項に記載の固定装置(10)を前記部材に係合させるステップと、
前記装置の管状部(16)を、部材へと締まるまで収縮させるべく加熱するステップと、
装置の固定タブ(18)を、タブの開口(20)を通過する少なくとも1つのねじ(22)によってケーシングへと固定するステップと、からなることを特徴とする方法。
【請求項10】
装置の管状部(16)が、接着剤によっても部材(12)に固定されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか一項に記載の固定装置を細長い形状の部材から取り除く方法であって、
装置の管状部(16)を全長にわたって切断するステップと、
装置の管状部(16)を部材(12)から引き離すステップと、からなることを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−506073(P2013−506073A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530312(P2012−530312)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051933
【国際公開番号】WO2011/036381
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】