説明

組成物、位相差板、液晶表示装置および、位相差板の製造方法

【課題】 配向角度が低く、また重合温度により配向角度の変化のないまたは軽減された光学異方性層を安定的に作製するのに有用な組成物を提供する。
【解決手段】 少なくとも一種の液晶性化合物と、少なくとも一種の下記一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーを含有する組成物。


(一般式(A)中、Mpは3価の連結基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Xは置換もしくは無置換の単環構造官能基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性層の形成に有用な組成物およびそれを用いて作製された位相差板とその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、通常、液晶セルを挟んで第1の偏光板と第2の偏光板とが設けられ、液晶セルは一対の基板間に棒状液晶性化合物を含有する液晶層を有する。棒状液晶性化合物を用いた液晶セル内で生じる位相差を、ディスコティック液晶性化合物(円盤状液晶性化合物)(例えば、2,3,6,7,10,11−ヘキサ{4−(4−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)ベンゾイルオキシ}トリフェニレン等)から形成される光学異方性層を有する光学補償シート(例えば、特許文献1)によって相殺する場合、棒状液晶性化合物とディスコティック液晶性化合物との波長分散性が異なるために全ての光の波長について同時に位相差を相殺できず、変色(黒の色味が出ない等)が生じる場合がある。
【0003】
一方、ヘテロ環基による3置換ベンゼン化合物が報告されている(非特許文献1)。しかしながら、この化合物の使用によって低い波長分散性を達成することは容易でなく、より波長分散性の小さい(Re(短波長(例えば450nm))/Re(長波長(例えば650nm))の値が小さい)化合物が望まれている。
【0004】
また、位相差板のレターデーションRe(λ)は、補償しようとする液晶セルの光学的性質に応じて決定する必要がある。ここで、レターデーション(△nd)は、光学異方性層の屈折率異方性(△n)と光学異方性層の厚さ(d)との積であり、光学異方性層の屈折率異方性(△n)が大きければ、層の厚さ(d)が薄くても液晶セルを補償できる。また、液晶を配向固定化して作製された位相差板においては、配向した液晶の配向角度(チルト角、平均チルト角)によってレターデーションReが変化するため、その配向角度を制御する必要がある。
【0005】
しかしながら、ヘテロ環基の置換した3置換ベンゼン型のディスコティック液晶性化合物の場合、配向角度を制御するのが困難であり、特に、低いチルト角(例えば、40°以下)でハイブリッド配向させることが困難であった。そのため、ディスコティック液晶性化合物の配向角度を所望の角度に低下することができる配向制御剤が望まれていた。
【0006】
一方、液晶性化合物に、配向制御剤もしくは配向促進剤を添加する例が開示されているが、3置換ベンゼン型のディスコティック液晶性化合物に対する効果は明示されておらず、また従来の技術では配向角度を所望の角度に制御するのには不十分であった(特許文献2)。
【0007】
また、配向角度の制御に関し、特に、重合時の温度が変化しても配向角度の変化が小さいことが望まれているが、これまでは配向角度の温度依存性が大きく、その改善が望まれていた。
【0008】
【特許文献1】特開平8−50206号公報
【特許文献2】特開2002−129162号公報
【非特許文献1】Molecular Crystals and Liquid Crystals,2001年,370巻,391頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、液晶表示装置の光学補償に寄与する光学異方性層を安定的に作製するのに有用な組成物を提供することを課題とする。特に、ディスコティック液晶性化合物のハイブリッド配向によって発現された光学異方性を示す光学異方性層を、光学特性値のバラツキや配向不良等に起因する欠陥なく(または欠陥を軽減して)作製するのに有用な組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、液晶表示装置の光学補償に有用な位相差板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
(1)少なくとも一種の液晶性化合物と、少なくとも一種の下記一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーを含有する組成物。
【化1】

(一般式(A)中、Mpは3価の連結基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Xは置換もしくは無置換の単環構造官能基を表す。)
(2)前記一般式(A)中のXが、炭素原子数3〜20の置換または無置換の環状脂肪族基または炭素原子数6〜30の無置換もしくは置換のフェニル基である、(1)に記載の組成物。
(3)前記一般式(A)において、前記Mpが下記Mp−1またはMp−2を表し、前記Lが、−O−、−NRa11−(Ra11は、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す。)、−S−、−C(=O)−、−S(=O)2−、および、炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基、ならびに、これらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表す、(1)または(2)に記載の組成物。
【化2】

(*は、Lとの連結位置を示す。)
(4)前記少なくとも一種の前記一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーが、さらに、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位を含む、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の組成物。
(5)前記フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位が、下記一般式(B)で表される(4)に記載の組成物。
【化3】

(一般式(B)中、Mp'は3価の連結基を表し、L'は単結合または2価の連結基を表し、Rfは少なくとも一つのフッ素原子を含有する置換基を表す。)
(6)前記液晶性化合物が、ディスコティック液晶性化合物である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の組成物。
(7)前記液晶性化合物の少なくとも1種が、下記一般式(DI)で表される、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の組成物。
【化4】

(一般式(DI)中、Y11、Y12、Y13は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。L1、L2、L3は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。H1、H2、H3はそれぞれ独立に、下記一般式(DI−A)または下記一般式(DI−B)を表す。R1、R2、R3は、それぞれ独立に下記一般式(DI−R)を表す。)
【化5】

(一般式(DI−A)中、YA1、YA2は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。XAは酸素原子、硫黄原子、メチレン、またはイミノを表す。*はL1〜L3と結合する位置を表し、**はR1〜R3と結合する位置を表す。)
【化6】

(一般式(DI−B)中、YB1、YB2は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。XBは酸素原子、硫黄原子、メチレン、またはイミノを表す。*はL1〜L3と結合する位置を表し、**はR1〜R3と結合する位置を表す。)
一般式(DI−R)
*−(−L21−F1n1−L22−L23−Q1
(一般式(DI−R)中、*は一般式(DI)中のH1、H2またはH3に結合する位置を表す。F1は少なくとも1種類の環状構造を有する2価の連結基を表す。L21は単結合または2価の連結基を表す。n1は0〜4の整数を表す。L22は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−、−C=C−を表し、L23は−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−、−C=C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q1は重合性基または水素原子を表す。)
(8)前記液晶性化合物の少なくとも1種が、下記一般式(DII)で表される化合物または下記一般式(DIII)で表される化合物である、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の組成物。
【化7】

(一般式(DII)中、Y31、Y32、Y33はそれぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。R31、R32、R33はそれぞれ独立に下記一般式(DII−R)で表される。)
【化8】

(一般式(DII−R)中、A31、A32は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。X3は酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表す。F2は6員環状構造を有する2価の環状連結基を表す。n3は1〜3整数を表す。L31は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−、−C=C−を表し、L32は−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−、−C=C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q3は重合性基または水素原子を表す。)
【化9】

(一般式(DIII)中、Y41、Y42およびY43は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、R41、R42およびR43は、それぞれ独立に下記一般式(DIII−A)、下記一般式(DIII−B)、または下記一般式(DIII−C)を表す。)
【化10】

(一般式(DIII−A)中、A41、A42、A43、A44、A45、A46は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、X41は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、L41は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C=C−を表し、L42は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C=C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q4は、重合性基または水素原子を表す。)
【化11】

(一般式(DIII−B)中、A51、A52、A53、A54、A55、A56は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、X52は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、L51は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C=C−を表し、L52は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C=C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q5は重合性基または水素原子を表す。)
【化12】

(一般式(DIII−C)中、A61、A62、A63、A64、A65、A66は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、X63は、酸素原子、硫黄原子、メチンまたはイミノを表し、L61は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C=C−を表し、L62は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C=C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q6は重合性基または水素原子を表す。)
(9)前記一般式(DI)で表される化合物、前記一般式(DII)で表される化合物および前記一般式(DIII)で表される化合物の少なくとも1種と、他の液晶性化合物を少なくとも1種含む、(7)または(8)に記載の組成物。
(10)前記他の液晶性化合物が、下記一般式(T)で表される化合物である、(9)に記載の組成物。
【化13】

(一般式(T)中、Mは二価の連結基であり、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。Q7は重合性基または水素原子を表し、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。)
(11)(1)〜(10)のいずれか1項に記載の組成物を用いてなる光学異方性層を有する位相差板。
(12)(11)に記載の位相差板を有する、液晶表示装置。
(13)(1)〜(10)のいずれか1項に記載の組成物を用いて光学異方性層を形成することを含む位相差板の製造方法。
(14)下記一般式(A)で表される基と、下記一般式(B)で表される基とを構成単位として含むポリマー。
【化14】

(一般式(A)中、Mpは3価の連結基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Xは置換もしくは無置換の単環構造官能基を表す。)
【化15】

(一般式(B)中、Mp'は3価の連結基を表し、L'は単結合または2価の連結基を表し、Rfは少なくとも一つのフッ素原子を含有する置換基を表す。)
(15)下記一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーを有するチルト角制御剤。
【化16】

(一般式(A)中、Mpは3価の連結基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Xは置換もしくは無置換の単環構造官能基を表す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液晶表示装置の光学補償に寄与する光学異方性層を安定的に作製するのに有用な組成物を提供することができる。本発明によれば、特に、ハイブリッド配向したディスコティック液晶性化合物の平均チルト角度を10〜40°の範囲、さらには、10〜30°の範囲に精密に制御することができ、且つ配向温度の僅かな変動に起因する平均チルト角度のバラツキを軽減して作製するのに有用な組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、液晶表示装置の光学補償に有用な位相差板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
まず、本明細書における、Re(λ)、Rth(λ)、チルト角および平均チルト角の詳細について以下に記す。
本明細書において、「炭素原子数A〜Bの」なる表現における、AおよびBは、特に述べない限り、置換基の炭素原子の数を含めた数値を示している。また、本明細書における各種「基」は、特に述べない限り、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、置換基を有していてもよい。
【0013】
(Re、Rthの測定)
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基に、以下の式(1)および式(2)よりRthを算出することもできる。
【数1】

注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。
式(1)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnxおよびn7に直交する方向の屈折率を表す。
【0014】
Rth=((nx+ny)/2 − nz)xd −−− 式(2)
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)がさらに算出される。
【0015】
(チルト角の測定)
ディスコティック液晶性化合物や棒状液晶性化合物を配向させた光学異方性層において、光学異方性層の一方の面におけるチルト角(ディスコティック液晶性化合物または棒状液晶性化合物における物理的な対象軸が光学異方性層の界面となす角度をチルト角とする)θ1および他方の面のチルト角θ2を、直接的にかつ正確に測定することは困難である。そこで本明細書においては、θ1およびθ2は、以下の手法で算出する。本手法は本発明の実際の配向状態を正確に表現していないが、光学フィルムのもつ一部の光学特性の相対関係を表す手段として有効である。
本手法では算出を容易にすべく、下記の2点を仮定し、光学異方性層の2つの界面におけるチルト角とする。
1.光学異方性層はディスコティック液晶性化合物や棒状液晶性化合物を含む層で構成された多層体と仮定する。さらに、それを構成する最小単位の層(ディスコティック液晶性化合物または棒状液晶性化合物のチルト角は該層内において一様と仮定)は光学的に一軸と仮定する。
2.各層のチルト角は光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化すると仮定する。
具体的な算出法は下記のとおりである。
(1)各層のチルト角が光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化する面内で、光学異方性層への測定光の入射角を変化させ、3つ以上の測定角でレターデーション値を測定する。測定および計算を簡便にするためには、光学異方性層に対する法線方向を0°とし、−40°、0°、+40°の3つの測定角でレターデーション値を測定することが好ましい。このような測定は、KOBRA−21ADHおよびKOBRA−WR(王子計測器(株)製)、透過型のエリプソメーターAEP−100((株)島津製作所製)、M150およびM520(日本分光(株)製)、ABR10A(ユニオプト(株)製)で行うことができる。
(2)上記のモデルにおいて、各層の常光の屈折率をno、異常光の屈折率をne(neは各々すべての層において同じ値、noも同様とする)、および多層体全体の厚みをdとする。さらに各層におけるチルト方向とその層の一軸の光軸方向とは一致するとの仮定の元に、光学異方性層のレターデーション値の角度依存性の計算が測定値に一致するように、光学異方性層の一方の面におけるチルト角θ1および他方の面のチルト角θ2を変数としてフィッティングを行い、θ1およびθ2を算出する。
ここで、noおよびneは文献値、カタログ値等の既知の値を用いることができる。値が未知の場合はアッベ屈折計を用いて測定することもできる。光学異方性層の厚みは、光学干渉膜厚計、走査型電子顕微鏡の断面写真等により測定数することができる。
【0016】
以下、本発明の組成物、および、位相差板について順次説明する。
【0017】
本発明の組成物中には、少なくとも一種の液晶性化合物と、少なくとも一種の一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマー(以下、「本発明で用いるポリマー」ということがある)を含有する組成物が含有されている。以下に、本発明で用いるポリマー、および、好適に用いられる液晶性化合物について順次説明する。
【0018】
一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマー
(1)一般式(A)で表される基
【化17】

(一般式(A)中、Mpは3価の連結基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Xは置換もしくは無置換の単環状構造官能基を表す。)
【0019】
一般式(A)中、Mpは、3価の連結基であり、本発明で用いられるポリマーの主鎖を構成する。後述するとおり、これ以外の繰り返し単位を含んで主鎖を構成していてもよい。Mpは、好ましくは、炭素原子数2〜20(置換基の炭素原子数は含まない、以下、Mp中のものについて同じ)の置換もしくは無置換の長鎖または分岐のアルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等)、炭素原子数3〜10の置換もしくは無置換の環状アルキレン基(例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基等)、置換もしくは無置換のビニレン基、置換もしくは無置換の環状ビニレン基、置換もしくは無置換のフェニレン基、酸素原子を含む基(例えば、エーテル基、アセタール基、エステル基、カルボネート基等を含む基)、窒素原子を含む基(例えば、アミノ基、イミノ基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、イミド基、イミダゾール基、オキサゾール基、ピロール基、アニリド基、マレインイミド基等を含む基)、硫黄原子を含む基(例えば、スルフィド基、スルホン基、チオフェン基等を含む基)、リン原子を含む基(例えば、ホスフィン基、リン酸エステル基等を含む基)、珪素原子を含む基(例えば、シロキサン基等を含む基)の基、およびこれらの基を二つ以上連結して形成される基であって、該基に含まれる水素原子の1つが−L−X基によって置換されている基が好ましく、より好ましくは、置換もしくは無置換のエチレン基、置換もしくは無置換のメチルエチレン基、置換もしくは無置換のシクロヘキシレン基、置換もしくは無置換のビニレン基であって、該基に含まれる水素原子の1つが−L−X基によって置換されている基であり、さらに好ましくは、置換もしくは無置換のエチレン基、置換もしくは無置換のメチルエチレン基、置換もしくは無置換のビニレン基であって、該基に含まれる水素原子の1つが−L−X基によって置換されている基であり、特に好ましくは、置換もしくは無置換のエチレン基、置換もしくは無置換のメチルエチレン基であって、該基に含まれる水素原子の1つが−L−X基によって置換されている基であり、具体的には、後述する、Mp−1およびMp−2が好ましい。
【0020】
以下に、Mpの好ましい具体例を示すが、Mpはこれに限定されるものではない。また、Mp中の*で表される部位はLと連結する部位を表す。
【0021】
【化18】

【0022】
一般式(A)中のLで表される2価の連結基としては、好ましくは、置換もしくは無置換の炭素原子数1〜20のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソプロピレン基など)、炭素原子数2〜20のアルケニレン基(例えば、ビニレン基、ブテン基等)、−O−、−NRa1−、−S−、−PRa2−、−Si(Ra3)(Ra4)−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NRa5−、−OC(=O)O−、−OC(=O)NRa6−、−NRa7C(=O)NRa8−、−(−O)2CH−ならびに、これらを2個以上連結して形成される基から選択される2価の連結基である。
ここで、上記Ra1〜Ra8は置換可能な置換基を表し、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(1以上の環構造を含むモノシクロアルキル基、ビシクロアルキル基等のシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を除く)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられ、水素原子およびアルキル基が好ましい。
【0023】
一般式(A)中のLとしてより好ましくは、−O−、−NRa11−(但し、Ra11は水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す)、−S−、−C(=O)−、−S(=O)2−、および、炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基、ならびに、これらを2個以上連結して形成される基から選択される2価の連結基であり、特に、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)NH−、−NHC(=O)−、−C(=O)O(CH2mO−、ならびに、これらを2個以上連結して形成される基から選択される2価の連結基が好ましい。
ここで、mは1〜20の整数を表す。mは、Xの自由度を適切に調整するために、好ましくは1〜16、より好ましくは3〜12、さらに好ましくは3〜6である。Xの自由度を適切に調整することにより、配向させる液晶との相互作用が増し、かつ、Xの方位をより制御でき、より効果的にプレチルト角度を制御できる。
また、上記連結基を2つ以上連結させて形成される、以下に示すような連結基も好ましい。また、L中の*で表される部位はMpと連結する部位を表す。下記式中、mは1〜20の整数を表し、上記「m」と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0024】
【化19】

【0025】
さらに、一般式(A)中のMpが前記Mp−1またはMp−2を表す場合には、Lは、−O−、−NRa11−(Ra11は、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基)、−S−、−C(=O)−、−S(=O)2−、および、炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基、ならびに、これらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基であることが好ましく、−O−、−C(=O)O−、および、−C(=O)NH−、ならびに、これらの1以上とアルキレン基との組み合わせからなる2価の連結基から選択される基がより好ましい。例えば、前記L−1、L−2、および、L−3、L−7等である。
【0026】
一般式(A)中のXで表される置換もしくは無置換の単環構造官能基としては、炭素原子数3〜20の置換もしくは無置換の環状脂肪族基(例えば、無置換シクロプロピル基、無置換シクロブチル基、無置換シクロペンチル基、シクロへキシル基、ペンチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基等)、炭素原子数6〜30の置換もしくは無置換のフェニル基(例えば、無置換フェニル基、シアノフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、オクチルオキシフェニル基、ハロゲン原子置換したフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、パーフルオロヘキシルエチルオキシフェニル基、ヒドロキシブチルフェニル基、カルボキシフェニル基、スルホフェニル基等)、または、置換もしくは無置換のヘテロ環基(例えば、フラン基、チオフェン基、ピリジル基、ジメチルアミノピリジル基、N−メチルイミダゾリル基等)が挙げられる。
【0027】
一般式(A)中、Xとしてより好ましくは、炭素原子数6〜15の置換もしくは無置換のシクロヘキシル基、または、炭素原子数6〜20の置換もしくは無置換のフェニル基であり、さらに好ましくは、炭素原子数6〜15の置換もしくは無置換のフェニル基であり、特に好ましくは炭素原子数6〜10の置換のフェニル基である。
【0028】
一般式(A)中、Xとしては、Xのグループモーメントが、例えば2.0Deby以上、好ましくは3.0Deby以上、より好ましくは4.0Deby以上であるものが好ましい。このようなXとすることにより、広い温度範囲で有効に平均チルト角度を減少させることができる。Xにこのような大きなグループモーメントを付与するためには、環状置換基に、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)を置換基として結合させることが有効である。前記置換基の中でも、シアノ基、フッ素原子が特に好ましい。また、同じグループモーメントの値を有するXにおいてもグループモーメントの方向がメソゲン部の長軸方向と平行な方向に向くものは効果がより大きくなり、またチルト角度の温度依存性が良好であるため、それらの置換基の置換位置としては、p−位もしくはm−位が好ましく、より好ましくは、p−位であり、両方を置換したものがさらに好ましい。置換基の数としては、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。
【0029】
特に、Lが単結合または、−O−、−NRa11−(但し、Ra11は水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基)、−S−、−C(=O)−、および、−S(=O)2−、ならびに、これらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基の場合には、Xが置換もしくは無置換のフェニル基を表すことが好ましい。
【0030】
以下に、一般式(A)として好ましい構成単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
【化20】

【0032】
【化21】

【0033】
(2)一般式(A)で表される基以外に含まれても良い構成単位
本発明で用いるポリマーは、前記一般式(A)で表される基である構成単位のみからなるホモポリマーであってもよいが、他の構成単位との組み合わせからなるコポリマーであってもよい。このような他の構成単位としては、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位が好ましく、下記一般式(B)で表される基である構成単位がより好ましい。以下に一般式(B)で表される基についての詳細を記す。
【0034】
【化22】

(一般式(B)中、Mp'は3価の連結基を表し、L'は単結合または2価の連結基を表し、Rfは少なくとも一つのフッ素原子を含有する置換基を表す。)
【0035】
Mp'は、一般式(A)中のMpと同義であり、好ましい範囲も同義である。
L'は、好ましくは、−O−、−NRa11−(但し、Ra11は水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜20のアリール基を表す。)、−S−、−C(=O)−、−S(=O)2−、および、炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基、ならびに、これらを2個以上連結して形成される基から選択される2価の連結基である。
2個以上連結して形成される2価の連結基としては、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)NH−、−NHC(=O)−、−C(=O)O(CH2maO−(但し、maは1〜20の整数を表す)等が挙げられる。
【0036】
さらに、一般式(B)中のMp'が前記Mp−1またはMp−2を表す場合には、L'は、−O−、−NRa11−(Ra11は、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す。)、−S−、−C(=O)−、−S(=O)2−、および、炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基、ならびに、これらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基であることが好ましく、−O−、−C(=O)O−、および、−C(=O)NH−、ならびに、これらの1以上とアルキレン基との組み合わせからなる基から選択される2価の連結基(例えば、前記L−1、L−2、および、L−3等)がより好ましい。
【0037】
Rfは、少なくとも一つのフッ素原子が置換した炭素原子数1〜30の脂肪族炭化水素基(例えば、トリフルオロエチル基、パーフルオロヘキシルエチル基、パーフルオロヘキシルエトキシエチル基、パーフルオロヘキシルプロピル基、パーフルオロブチルエチル基、パーフルオロオクチルエチル基等)等が好ましい例として挙げられる。また、Rfは、末端に、CF3基またはCF2H基を有することが好ましく、CF3基を有することがより好ましい。
【0038】
Rfとしてより好ましくは、末端にCF3基を有するアルキル基または末端にCF2基を有するアルキル基である。末端にCF3基を有するアルキル基は、アルキル基に含まれる水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。末端にCF3基を有するアルキル基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されているアルキル基が好ましく、60%以上が置換されているアルキル基がより好ましく、70%以上が置換されているアルキル基が特に好ましい。残りの水素原子は、さらに後述の置換基群Dとして例示された置換基によって置換されていてもよい。
末端にCF2H基を有するアルキル基は、アルキル基に含まれる水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。末端にCF2H基を有するアルキル基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましく、70%以上が置換されているのが特に好ましい。残りの水素原子は、さらに後述の置換基群Dとして例示された置換基によって置換されていてもよい。
【0039】
置換基群D
アルキル基(好ましくは炭素原子数(該置換基が有する炭素原子数をいう、以下、置換基群Dについて同じ)1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜12、特に好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは炭素原子数2〜12、特に好ましくは炭素原子数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは炭素原子数2〜12、特に好ましくは炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは炭素原子数0〜10、特に好ましくは炭素原子数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などが挙げられる)、
【0040】
アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜12、特に好ましくは炭素原子数1〜8のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜16、特に好ましくは炭素原子数1〜12アシル基であり、例えば、アセチル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは炭素原子数2〜16、特に好ましくは炭素原子数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは炭素原子数2〜16、特に好ましくは炭素原子数2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基などが挙げられる)
【0041】
アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは炭素原子数2〜16、特に好ましくは炭素原子数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは炭素原子数2〜16、特に好ましくは炭素原子数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜16、特に好ましくは炭素原子数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは炭素原子数0〜16、特に好ましくは炭素原子数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基などが挙げられる)。
【0042】
アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜16、特に好ましくは炭素原子数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜16、特に好ましくは炭素原子数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜16、特に好ましくは炭素原子数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜16、特に好ましくは炭素原子数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜16、特に好ましくは炭素原子数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、シリル基(好ましくは、炭素原子数3〜40、より好ましくは炭素原子数3〜30、特に好ましくは、炭素原子数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい
【0043】
末端にCF3基を有するアルキル基または末端にCF2H基を有するアルキル基の例を以下に示す。
【0044】
R1:n−C817
R2:n−C613
R3:n−C49
R4:n−C817−(CH22
R5:n−C613−(CH22
R6:n−C49−(CH22
R7:H−(CF28
R8:H−(CF26
R9:H−(CF24
R10:H−(CF28−(CH2)−
R11:H−(CF26−(CH2)−
R12:H−(CF24−(CH2)−
R13:n−C49−(CH22−O−(CH23−O−
R14:n−C613−(CH22−O−
R15:n−C49−(CH22−O−
【0045】
以下に、本発明で用いられる、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0046】
【化23】

【0047】
【化24】

【0048】
また、本発明で用いるポリマーには、一般式(A)で表される構造を含有する構成単位、および、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位の他、これらの構成単位を形成するモノマーと共重合可能なモノマーより誘導される構成単位を含有してもよい。
共重合可能なモノマーとしては、本発明の趣旨を逸脱しない限り、特に制限はない。好ましいモノマーとしては、例えば、炭化水素系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリマレインイミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアニリド等)、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカルボナート、ポリアミド、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリウレタンおよびポリウレイドを構成するモノマーでなどが、溶媒への溶解度を向上させたり、ポリマーの凝集を防止する観点で好ましく用いることができる。
さらに、主鎖構造が、一般式(A)で表される基が構成するものと、同一となる構成単位が好ましい。
【0049】
以下に共重合可能な構成単位の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。特に、C−2、C−3、C−10、C−11、C−12が好ましく、C−2、C−11がさらに好ましい。
【0050】
【化25】

【0051】
【化26】

【0052】
本発明で用いるポリマーにおける、一般式(A)で表される基の含有率としては、1〜90質量%が好ましく、3〜80質量%がより好ましい。
本発明で用いるポリマーにおけるフルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される繰り返し単位(好ましくは、一般式(B)で表される基)の含有率としては、5〜90質量%が好ましく、10〜80%がより好ましい。
上記2種以外の構成単位の含有率としては、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0053】
また、これらの共重合体は、各構成単位が不規則的に導入されたランダム共重合体であっても、規則的に導入されたブロック共重合体であっても良く、ブロック共重合体である場合の各構成単位は、如何なる導入順序で合成されたものであっても良く、同一の構成成分を2度以上用いてもよい。
また、一般式(A)で表される基、一般式(B)で表される基等は、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってもよい。2種類以上の場合、上記含有率は、合計含有率である。
【0054】
さらに、本発明で用いるポリマーの分子量範囲は、数平均分子量(Mn)で、好ましくは1000〜100万であり、より好ましくは2000〜20万であり、さらに好ましくは3000〜10万である。また、本発明で用いるポリマーの分子量分布(Mw/Mn、Mwは重量平均分子量)は、1〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
【0055】
本発明で用いるポリマーの添加量範囲は、液晶性化合物に対して、好ましくは0.001〜10質量%であり、より好ましくは、0.01〜5.0質量%であり、さらに好ましくは、0.05〜2.0質量%である。
【0056】
本発明の組成物に含有されるポリマーとして好ましい具体例を以下の表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
本発明で用いるポリマーの合成は、既知の方法を適用して行うことができる。本発明で用いるポリマーは、付加、縮合および置換反応などのいずれかまたはこれを組み合わせて合成することができる。特に制限はないが、本発明で用いるポリマーがエチレン性の繰り返し単位を含有する場合は、該繰り返し単位に相当するエチレン性不飽和化合物のラジカル重合反応を利用して合成するのが簡便で好ましい。
【0059】
液晶性化合物
本発明で用いられる液晶性化合物は特に定めるものではないが、ディスコティック液晶性を示す化合物(ディスコティック液晶性化合物)であることが好ましく、ディスコティックネマチック相を示す化合物であることがより好ましい。
本発明で用いられる液晶性化合物としては、一般式(DI)で表されるものが例示される。
【0060】
[一般式(DI)で表される化合物]
本発明に用いられる一般式(DI)表される化合物は、ディスコティック液晶性を示すことが好ましく、特に、ディスコティックネマチック相を示すことが好ましい。
【化27】

(一般式(DI)中、Y11、Y12、Y13は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。L1、L2、L3は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。H1、H2、H3はそれぞれ独立に、下記一般式(DI−A)または下記一般式(DI−B)を表す。R1、R2、R3は、それぞれ独立に下記一般式(DI−R)を表す。)
【0061】
一般式(DI)中、Y11、Y12およびY13はそれぞれ独立に、メチンまたは窒素原子を表す。Y11、Y12およびY13がそれぞれメチンの場合、メチンが有する水素原子は置換基によって置換されていてもよい。メチンが有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子およびシアノ基を挙げることができる。これらの中では、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基がより好ましく、炭素原子数(置換基が有する炭素原子数をいう、以下、ディスコティック液晶性化合物が有していてもよい置換基について同じ)1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素原子数2〜12アルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜12アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基がさらに好ましい。
【0062】
11、Y12、Y13は、すべてメチンであることが好ましく、またメチンは無置換であることが好ましい。
【0063】
一般式(DI)中、L1、L2およびL3はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基である。前記2価の連結基は、−O−、−S−、−C(=O)−、−NR7−、−CH=CH−、−C≡C−、2価の環状基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基または水素原子であることがより好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0064】
1、L2、L3で表される2価の環状基は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがより好ましく、6員環であることがさらに好ましい。環状基に含まれる環は、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環の例には、ベンゼン環およびナフタレン環が含まれる。脂肪族環の例には、シクロヘキサン環が含まれる。複素環の例には、ピリジン環およびピリミジン環が含まれる。環状基は、芳香族環および複素環を含んでいるのが好ましい。
【0065】
前記2価の環状基のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイル基およびナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。
【0066】
1、L2またはL3で表される前記2価の環状基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数が1〜16のアルコキシ基、炭素原子数が2〜16のアシル基、炭素原子数が1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数が2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数が2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数が2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数が2〜16のアシルアミノ基が含まれる。
【0067】
1、L2およびL3としては、単結合、*−O−CO−、*−CO−O−、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−2価の環状基−、*−O−CO−2価の環状基−、*−CO−O−2価の環状基−、*−CH=CH−2価の環状基−、*−C≡C−2価の環状基−、*−2価の環状基−O−CO−、*−2価の環状基−CO−O−、*−2価の環状基−CH=CH−または*−2価の環状基−C≡C−が好ましい。特に、単結合、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−CH=CH−2価の環状基−または*−C≡C−2価の環状基−がより好ましく、単結合がさらに好ましい。ここで、*は一般式(I)中のY11、Y12およびY13を含む6員環に結合する位置を表す。
【0068】
一般式(DI)中、H1、H2およびH3はそれぞれ独立に、下記一般式(DI−A)もしくは下記一般式(DI−B)を表す。
【0069】
【化28】

【0070】
一般式(DI−A)中、YA1およびYA2はそれぞれ独立に、メチンまたは窒素原子を表す。YA1およびYA2は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、双方が窒素原子であることがより好ましい。XAは酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表す。XAは、酸素原子であることが好ましい。*はL1〜L3と結合する位置を表し、**はR1〜R3と結合する位置を表す。
【0071】
【化29】

【0072】
一般式(DI−B)中、YB1およびYB2は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。YB1およびYB2は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、双方が窒素原子であることがより好ましい。XBは酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表す。XBは、酸素原子であることが好ましい。*はL1〜L3と結合する位置を表し、**はR1〜R3と結合する位置を表す。
【0073】
1、R2、R3は、それぞれ独立に下記一般式(DI−R)を表す。
一般式(DI−R)
*−(−L21−F1n1−L22−L23−Q1
【0074】
一般式(DI−R)中、*は一般式(DI)中のH1、H2またはH3に結合する位置を表す。F1は少なくとも1種類の環状構造を有する2価の連結基を表す。L21は単結合または2価の連結基を表す。L21が2価の連結基の場合、−O−、−S−、−C(=O)−、−NR7−、−CH=CH−、−C≡C−、およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基または水素原子であることがより好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0075】
21は単結合、**−O−CO−、**−CO−O−、**−CH=CH−または**−C≡C−(ここで、**は一般式(DI−R)中のL21の左側を表す)が好ましい。特に、単結合が好ましい。
【0076】
一般式(DI−R)中のF1は少なくとも1種類の環状構造を有する2価の環状連結基を表す。環状構造は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがより好ましく、6員環であることがさらに好ましい。環状構造は、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環の例には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環が含まれる。脂肪族環の例には、シクロヘキサン環が含まれる。複素環の例には、ピリジン環およびピリミジン環が含まれる。
【0077】
1のうち、ベンゼン環を有するものとしては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有するものとしては、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−1,6−ジイル基、ナフタレン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイルナフタレン−2,7−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有するものとしては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有するものとしてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有するものとしては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。F1は、特に、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレンナフタレン−2,6−ジイル基および1,4−シクロへキシレン基が好ましい。
【0078】
1は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。該置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲン原子で置換されたアルキル基がより好ましく、特に、ハロゲン原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0079】
n1は0〜4整数を表す。n1としては、1〜3の整数が好ましく、1または2が好ましい。なお、n1が0の場合は、式(DI−R)中のL22が直接、前記一般式(D1)中のH1〜H3と結合する。n1が2以上の場合、それぞれの−L21−F1は同一でも異なっていてもよい。
【0080】
22は、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−を表す。好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−であり、より好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−または−CH2−である。
ここで、上記のうち水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。他の置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が含まれる。特に、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましい。
【0081】
23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−並びにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基である。ここで、−NH−、−CH2−、−CH=CH−の水素原子は、他の置換基に置き換えられていてもよい。他の置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が含まれる。特に、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましい。これらの置換基に置き換えられることにより、前記一般式(DI)で表される化合物の溶媒に対する溶解性を向上させることができ、容易に、塗布液として本発明の組成物を調製することができる。
【0082】
23は、−O−、−C(=O)−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−並びにこれらの組み合わせからなる群から選ばれる連結基であることが好ましい。L23は、炭素原子を1〜20個含有することが好ましく、炭素原子を2〜14個を含有することがより好ましい。さらに、L23は−CH2−を1〜16個含有することが好ましく、−CH2−を2〜12個含有することがより好ましい。
【0083】
1は重合性基または水素原子である。一般式(DI)で表される化合物を、光学補償フィルムのような位相差の大きさが熱により変化しないことを必要とする光学フィルム等の作製に用いる場合には、Q1は重合性基であることが好ましい。重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。言い換えると、重合性基は、付加重合反応または縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
【0084】
【化30】

【化31】

【0085】
さらに、重合性基は付加重合反応が可能な官能基であることが特に好ましい。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基または開環重合性基が好ましい。
【0086】
重合性エチレン性不飽和基の例としては、下記の式(M−1)〜(M−6)が挙げられる。
【0087】
【化32】

【0088】
式(M−3)、式(M−4)中、Rは水素原子またはアルキル基を表す。Rとしては、水素原子またはメチル基が好ましい。上記(M−1)〜(M−6)の中でも、(M−1)または(M−2)が好ましく、(M−1)がより好ましい。
【0089】
開環重合性基として好ましいのは、環状エーテル基であり、中でもエポキシ基またはオキセタニル基がより好ましく、エポキシ基が最も好ましい。
【0090】
また、本発明では、ディスコティック液晶性化合物として下記一般式(DII)で表される化合物または下記一般式(DIII)で表される化合物を用いることも好ましい。
【0091】
【化33】

(一般式(DII)中、Y31、Y32、Y33はそれぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。R31、R32、R33はそれぞれ独立に下記一般式(DII−R)で表される。)
【0092】
一般式(DII)中、Y31、Y32、Y33はそれぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。Y31、Y32およびY33は各々、一般式(DI)中のY11、Y12およびY13の定義とそれぞれ同一であり、好ましい範囲も同義である。
【0093】
31、R32、R33はそれぞれ独立に一般式(DII−R)で表される。
【化34】

【0094】
一般式(DII−R)中、A31、A32は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。A31およびA32としては、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、双方が窒素原子であることがより好ましい。
3は酸素原子、硫黄原子、メチレン、またはイミノを表す。X3としては、酸素原子であることが好ましい。
【0095】
一般式(DII−R)中、F2は6員環状構造を有する2価の環状連結基を表す。F2に含まれる6員環は、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。F2に含まれる6員環は、芳香族環、脂肪族環および複素環のいずれでもよい。芳香族環の例には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環およびフェナントレン環が含まれる。脂肪族環の例には、シクロヘキサン環が含まれる。複素環の例には、ピリジン環およびピリミジン環が含まれる。
【0096】
2価の環状基のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレン基および1,3−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−1,6−ジイル基、ナフタレン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基およびナフタレン−2,7−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。2価の環状基としては、特に、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基および1,4−シクロへキシレン基が好ましい。
【0097】
2は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。2価の環状基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基が好ましく、さらに、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲン原子で置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0098】
n3は、1〜3整数を表す。n3としては、1または2が好ましい。n3が2以上の場合、それぞれのF2は同一でも異なっていてもよい。
【0099】
31は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。L31の好ましい範囲は、一般式(DI−R)中のL22と同一である。
【0100】
32は−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。L32の好ましい範囲は、一般式(DI−R)中のL23と同一である。
【0101】
3は重合性基または水素原子を表し、好ましい範囲は、一般式(DI−R)中のQ1と同一である。
【0102】
次に、一般式(DIII)で表される化合物の詳細を記す。
【0103】
【化35】

【0104】
一般式(DIII)中、Y41、Y42およびY43は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、Y41、Y42およびY43がそれぞれメチンの場合、メチンが有する水素原子は、置換基によって置換されていてもよい。メチンが有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子およびシアノ基を好ましい例として挙げることができる。これらの置換基の中では、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基がさらに好ましく、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素原子数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜12のアシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基が特に好ましい。
41、Y42およびY43は、いずれもメチンであることがより好ましく、メチンは無置換であることがより好ましい。
【0105】
41、R42およびR43は、それぞれ独立に下記一般式(DIII−A)、または下記一般式(DIII−B)、または下記一般式(DIII−C)を表す。
波長分散性の小さい位相差板等を作製する場合は、R41、R42およびR43は、それぞれ、一般式(DIII−A)または一般式(DIII−C)で表されるものが好ましく、一般式(DIII−A)で表されるものがより好ましい。
【0106】
【化36】

【0107】
一般式(DIII−A)中、A41、A42、A43、A44、A45、A46は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。A41およびA42は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、双方が窒素原子であることがより好ましい。A43、A44、A45およびA46は、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、全てメチンであることがより好ましい。A43、A44、A45およびA46がそれぞれメチンの場合、メチンが有する水素原子は置換基によって置換されていてもよい。メチンが有する置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
41は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0108】
【化37】

【0109】
一般式(DIII−B)中、A51、A52、A53、A54、A55およびA56はそれぞれ独立に、メチンまたは窒素原子を表す。A51およびA52は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、双方が窒素原子であることがより好ましい。A53、A54、A55およびA56は、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、全てメチンであることがより好ましい。A53、A54、A55およびA56がそれぞれメチンの場合、メチンが有する水素原子は置換基によって置換されていてもよい。メチンが有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲン原子で置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
52は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0110】
【化38】

【0111】
一般式(DIII−C)中、A61、A62、A63、A64、A65およびA66はそれぞれ独立に、メチンまたは窒素原子を表す。A61およびA62は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、双方が窒素原子であることがより好ましい。A63、A64、A65およびA66は、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、全てメチンであることがより好ましい。A63、A64、A65およびA36がそれぞれメチンの場合、該メチンが有する水素原子は置換基によって置換されていてもよい。メチンが有していてもよい置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
63は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0112】
一般式(DIII−A)中のL41、一般式(DIII−B)中のL51、一般式(DIII−C)中のL61はそれぞれ独立して、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−を表す。好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−であり、より好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−または−CH2−である。上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。
このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0113】
一般式(DIII−A)中のL42、一般式(DIII−B)中のL52、一般式(DIII−C)中のL62はそれぞれ独立して、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表す。ここで、−NH−、−CH2−、−CH=CH−の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0114】
42、L52およびL62はそれぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基であることが好ましい。L42、L52、L62はそれぞれ独立して、炭素原子を1〜20個含有することが好ましく、炭素原子を2〜14個含有することがより好ましい。さらに、L42、L52、L62はそれぞれ独立して、−CH2−を1〜16個含有することが好ましく、−CH2−を2〜12個含有することがさらに好ましい。
【0115】
一般式(DIII−A)中のQ4、一般式(DIII−B)中のQ5および一般式(DIII−C)中のQ6は、それぞれ独立して、重合性基または水素原子を表す。これらの好ましい範囲は、一般式(DI−R)中のQ1と同一である。
【0116】
以下に、一般式(DI)、一般式(DII)および一般式(DIII)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0117】
【化39】

【0118】
【化40】

【0119】
【化41】

【0120】
【化42】

【0121】
以下一般式(DIII)で表される化合物を示す。
【0122】
【化43】

【0123】
本発明に用いられる上記一般式(DI)、一般式(DII)および一般式(DIII)で表される化合物の合成は、既知の方法を適用して合成することができる。
【0124】
本発明で用いる液晶性化合物は、上記一般式(DI)、一般式(DII)および一般式(DIII)で表される化合物の1種のみを使用してよいし、2種以上を使用してもよい。
さらに、一般式(DI)、一般式(DII)および一般式(DIII)で表される化合物と異なる構造を有する棒状液晶性化合物またはディスコティック液晶性化合物を少なくとも一種以上と併用してもよい。ディスコティック液晶性化合物との併用は特に好ましく、さらに下記一般式(T)で表される液晶性化合物との併用がより好ましい。
2種類以上のディスコティック液晶性化合物を併用することにより、空気界面のチルト角度を低減させることができる、また平均チルト角度の温度依存性を緩和されやすいという効果が得られる。
【0125】
【化44】

(一般式(T)中、Mは二価の連結基であり、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。Q7は重合性基または水素原子を表し、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。)
【0126】
前記式において、二価の連結基(M)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基(M)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−および−S−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた基であることがさらに好ましい。二価の連結基(M)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−および−O−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた基であることが最も好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、6〜10であることがさらに好ましい。アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基は、置換基(例えば、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ、アルコキシ基、アシルオキシ基)を有していてもよい。二価の連結基(M)の例を以下に示す。左側がトリフェニレン円盤状コア(TD)に結合し、右側が重合性基(Q)に結合する。ALはアルキレン基またはアルケニレン基を意味し、ARはアリーレン基を意味する。
【0127】
M1:−AL−CO−O−AL−
M2:−AL−CO−O−AL−O−
M3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
M4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
M5:−CO−AR−O−AL−
M6:−CO−AR−O−AL−O−
M7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
M8:−CO−NH−AL−
M9:−NH−AL−O−
M10:−NH−AL−O−CO−
M11:−O−AL−
M12:−O−AL−O−
M13:−O−AL−O−CO−
M14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
M15:−O−AL−S−AL−
M16:−O−CO−AL−AR−O−AL−O−CO−
M17:−O−CO−AR−O−AL−CO−
M18:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
M19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−C
M20:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
M21:−S−AL−
M22:−S−AL−O−
M23:−S−AL−O−CO−
M24:−S−AL−S−AL−
M25:−S−AR−AL−
【0128】
7は重合性基または水素原子を表し、好ましい範囲は、一般式(DI−R)中のQ1と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0129】
以下に、一般式(T)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0130】
【化45】

【0131】
本発明に用いられる一般式(T)で表される化合物の合成は、既知の方法を適用して合成することができる。
【0132】
本発明で用いる液晶性化合物は、 上記一般式(T)で表される化合物の添加範囲は、一般式(DI)、一般式(DII)および一般式(DIII)で表される化合物に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは、3〜15質量%であり、さらに好ましくは、5〜10質量%である。
【0133】
本発明の液晶性化合物が発現する液晶相としては、カラムナー相およびディスコティックネマチック相(ND相)を挙げることができる。これらの液晶相の中では、良好なモノドメイン性を示すディスコティックネマチック相(ND相)が好ましい。
【0134】
本発明の液晶性化合物は、液晶相を20℃〜300℃の範囲で発現することが好ましく、40℃〜280℃の範囲で発現することがより好ましく、60℃〜250℃の範囲で発現することがさらに好ましい。ここで20℃〜300℃で液晶相を発現するとは、液晶温度範囲が20℃をまたぐ場合(具体的に例えば、10℃〜22℃)や、300℃をまたぐ場合(具体的に例えば、298℃〜310℃)も含む。40℃〜280℃と60℃〜250℃に関しても同様である。
【0135】
[位相差板]
本発明の位相差板は、本発明の組成物からなる光学異方性層を有することを特徴とする。本発明の位相差板の一態様は、支持体と、該支持体上に形成された配向膜と、該配向膜によって配向制御され、且つその配向状態に固定された本発明の組成物からなる光学異方性層とを有する態様である。
以下に、光学異方性層(第1の光学異方性層とも呼ぶ)、配向膜および支持体(第2の光学異方性層とも呼ぶ)について順次詳細に説明する。
【0136】
(1)光学異方性層(第1の光学異方性層とも呼ぶ)
本発明の光学異方性層は、液晶性化合物および一般式(A)で表される構造を含むポリマーを含む組成物からなる。前記光学異方性層は、この他にも所望により重合開始剤や他の添加剤を含む。これらを含む塗布液を、例えば支持体上に形成された本発明の配向膜の表面に塗布し、液晶性化合物を配向、固定化することで形成することができる。液晶性化合物を配向および固定化した後は、支持体を剥離してもよい。
【0137】
(1)−a 形成方法
前記光学異方性層は、液晶性化合物や一般式(A)で表される構造を含むポリマーを可溶できる溶媒に溶解して調製した塗布液を、支持体上に形成され、且つ、配向性が付与された配向膜上に塗布することによって作製することができる。また、可能であれば蒸着による形成でもよいが、塗布による形成が好適に用いられる。塗布方法としてはカーテンコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、スロットコーティング法、ロールコーティング法、スライドコーテティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、ワイヤーバー法等の公知の塗布方法が挙げられる。次いで、25℃〜130℃において用いた溶媒を乾燥すると同時に、前記液晶性化合物の分子を配向させ、さらに、紫外線照射等によって固定化することによって、光学異方性層が形成される。重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100mJ/cm2〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。このようにして形成された光学異方性層の厚さは、光学補償等の用途によって、最適なレターデーションの値によって異なるが、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましい。
【0138】
前記液晶性化合物の分子は、光学異方性層中では、実質的に均一に配向していることが好ましく、実質的に均一に配向している状態で固定されていることがさらに好ましく、重合反応により液晶性化合物が固定されていることが最も好ましい。
【0139】
前記光学異方性層を占める、一般式(DI)で表される化合物または一般式(DI)で表される化合物から得られる重合物の割合は、10〜100質量%であることが好ましく、30〜99質量%であることがさらに好ましく、50〜99質量%であることが最も好ましい。
【0140】
(1)−b 光学異方性層の形成に用いられるその他の材料
液晶性化合物は、配向状態を維持して固定することが好ましく、固定化は、液晶性化合物に導入した重合性基の重合反応によることが好ましい。そのためには、前記塗布液中には、重合開始剤を含有させるのが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応、および電子線を用いるEB硬化が含まれる。このうち、光重合反応(光硬化)およびEB硬化が好ましい。光の作用によりラジカルを発生させる重合開始剤の例としては、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物等が好ましい。アセトフェノン系化合物としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシメチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4'−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、p−ジメチルアミノアセトン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノン等が挙げられる。ベンジル系化合物としては、例えば、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラーズケトン、4,4'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン等が挙げられる。チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。このような芳香族ケトン類からなる感光性ラジカル重合開始剤の中でも、アセトフェノン系化合物およびベンジル系化合物が、硬化特性、保存安定性、臭気等の面で特に好ましい。これらの芳香族ケトン類からなる感光性ラジカル重合開始剤は、1種または2種以上のものを所望の性能に応じて配合して使用することができる。また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、およびチオキサントン等が含まれる。
【0141】
光重合開始剤は複数種を組み合わせてもよく、使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。
【0142】
光学異方性層形成用の塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、トルエン、ヘキサン)アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)などが含まれる。この中でアルキルハライド、ケトンが好ましい。2種類以上の有機溶剤を併用してもよい。
【0143】
本発明の組成物中の液晶性化合物、一般式(A)で表される構成単位を含むポリマーおよびその他の添加剤の固形分濃度としては、0.1質量%〜60質量%が好ましく、0.5質量%〜50質量%がより好ましく、2質量%〜40質量%がさらに好ましい。
【0144】
(1)−c 配向状態
本発明の組成物により形成されてなる光学異方性層は、TN(Twisted Nematic)のような液晶表示モードの位相差板として使用する場合においては、ディスコティックネマチック相がハイブリッド配向した状態を固定化することが好ましい。ここで、ハイブリッド配向とは、膜厚方向で液晶性化合物のチルト角が連続的に変化している状態を表す。
【0145】
本発明の組成物が支持体上(さらに好ましくは配向膜上)に塗布された後、例えば、加熱することで液晶相を発現するため、液晶性化合物は支持体側の界面では支持体面または塗布膜界面(配向膜を設けた場合には配向膜界面)のチルト角(例えば、ディスコティック液晶性化合物を用いる場合、支持体面の方向と液晶性化合物の円盤面方向のなす角)で配向し、空気との界面では空気界面のチルト角で配向することとなる。
本発明において、光学異方性層の平均チルト角(例えば、支持体面の方向とディスコティック液晶性化合物の円盤面方向のなす角)は、10〜40°が好ましく、25〜35°がより好ましい。
【0146】
(2)配向膜
本発明の位相差板の作製には配向膜を用いてもよい。配向膜は、化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
【0147】
配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性化合物を配向させる機能のある分子構造を有する。本発明では、液晶性化合物を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例えば、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、または、液晶性化合物を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーまたは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができし、これらの組み合わせを複数使用することができる。
【0148】
ポリマーの例には、例えば、特開平8−338913号公報の段落番号[0022]に記載のメタクリレート系重合体、スチレン系重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがより好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。
【0149】
ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
【0150】
液晶性化合物を配向させる機能を有する側鎖は、一般に疎水性基を官能基として有する。具体的な官能基の種類は、液晶性化合物の種類および必要とする配向状態に応じて決定する。
例えば、変性ポリビニルアルコールの変性基としては、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素原子数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ基、ジアルコキシ基、モノアルコキシ基)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば、特開2000−155216号公報の段落番号[0022]〜[0145]、特開2002−62426号公報の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
【0151】
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性化合物を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、位相差板の強度を著しく改善することができる。
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報の段落番号[0080]〜[0100]に記載のもの等が挙げられる。
【0152】
配向膜ポリマーは、上記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。
架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。2種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
【0153】
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、または、高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、よりレチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。
【0154】
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤を含む支持体上に塗布した後、加熱乾燥して架橋させ、必要であればラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、支持体上に塗布した後、任意の時期に行なってもよい。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例えば、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で、水:メタノールが0より大きく99以下:100未満1以上が好ましく、0より大きく91以下:100未満9以上であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、さらには光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少させることができる。
【0155】
配向膜形成時に利用する塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、例えば、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、80℃〜100℃がより好ましい。乾燥時間は、例えば、1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5が好ましく、5がより好ましい。
【0156】
配向膜は、支持体上または上記下塗層上に設けられる。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、必要であれば表面をラビング処理することにより得ることができる。
【0157】
ラビング法では、液晶表示装置の液晶配向処理工程として広く採用されているラビング処理方法を応用することができる。すなわち、膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維を用いて一定方向に擦ることにより配向を得る。一般には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布を用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。ロール自身の真円度、円筒度、振れ(偏芯)がいずれも30μm以下であるラビングロールを用いて実施することが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1〜90゜が好ましい。ただし、例えば、特開平8−160430号公報に記載されているように、360°以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。長尺フィルムをラビング処理する場合は、フィルムを搬送装置により一定張力の状態で1〜100m/minの速度で搬送することが好ましい。 ラビングロールは、任意のラビング角度設定のためフィルム進行方向に対し水平方向に回転自在とされることが好ましい。0〜60°の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40〜50°が好ましく、45°が更に好ましい。
【0158】
配向膜上で液晶性化合物を配向させた後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させてもよい。配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。前記配向膜用ポリマーを溶媒に溶解して調製した塗布液を、支持体表面に塗布し、25℃〜140℃で塗布液中に含まれる溶媒を乾燥除去することで作製することができる。また、可能であれば蒸着によって形成することもできるが、塗布による形成がより好ましい。このようにして形成された配向膜の厚さは、0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。
【0159】
前記配向膜形成用塗布液の調製に用いられる溶媒としては、例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド等)、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル等が挙げられ、好ましくは、水、アルコール類およびこれらの混合溶媒である。前記塗布液中の配向膜用ポリマーの濃度は、0.1質量%〜40質量%であるのが好ましく、0.5質量%〜20質量%であるのがより好ましく、2質量%〜10質量%であるのがさらに好ましい。前記塗布液の粘度は、0.1cp〜100cpであるのが好ましく、0.5cp〜50cpであるのがより好ましい。
【0160】
前記塗布液中には、前記配向膜用ポリマー以外にも、適宜添加剤を添加してもよい。例えば、前記配向膜用ポリマーが水溶性の溶媒に溶解し難い場合は、塩基性化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、トリエチルアミンなど)や、酸性化合物(例えば、塩酸、酢酸、コハク酸等)を添加して溶解を促進してもよい。
上記方法によって形成された配向膜は、その表面がラビング処理され、液晶配向性が付与されているのが好ましい。ラビング処理としてはポリマー塗布層の表面を、紙や布で一定方向(通常は長手方向)に、数回こすることにより実施することができる。また、ラビング以外の方法としては、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により液晶配向性を付与することもできる。液晶配向性を付与する方法としては、ポリマーのラビング処理により形成する配向膜が特に好ましい。
【0161】
(3)支持体(第2の光学異方性層)
本発明の光学補償フィルムは、第1の光学異方性層の他に、光学異方性を呈する第2の光学異方性層を有する。
この第2の光学異方性層は、第1の光学異方性層の支持体として機能するとともに、光学補償フィルムとしての光学特性の制御幅を広げ、液晶表示装置の表示特性を向上させる機能を有する。すなわち、本発明の第2の光学異方性層は、光学異方性を持たせた前述の「支持体」とみなすこともできる。
本発明における第2の光学異方性層は、少なくとも1枚のポリマーフィルムからなる。ここで、ポリマーフィルムからなるとは、ポリマーのみから構成されているものの他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の物質を含んでいてもよい。すなわち、ポリマーを主成分とするフィルムを含む趣旨である。
第2の光学異方性層は、具体的には、波長550nmの光で測定したRth値が、100〜300nmの範囲であることが好ましく、150〜200nmであることが更に好ましい。
また、第2の光学異方性層のRe値は、30〜60nmであることが好ましく、35〜50nmであることが更に好ましい。このようなRth値、及びRe値のものを採用することにより、液晶表示装置としての視野角特性などの表示特性が向上するという利点がある。 第2の光学異方性層を構成するポリマーフィルムは、1枚であっても、2枚以上でもよい。但し、上記Re値及びRth値は、1枚のポリマーフィルムで実現することが可能である。従って、第2の光学異方性層は、1枚のポリマーフィルムからなることが好ましい。
【0162】
第2の光学異方性層に採用されるポリマーは、セルロース系ポリマーが好ましく、セルロースエステルがより好ましく、セルロースアシレートがより好ましい。セルロースアシレートを採用することにより、上記のような光学特性の制御が可能となるという利点がある。
特に、セルロースの低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数が2〜4のセルロースアシレートが好ましく、セルロースアセテートが更に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。
【0163】
セルロースアセテートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることが更に好ましい。また、セルロースアセテートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値は、1.00〜1.70であることが好ましく、1.30〜1.65であることがより好ましく、1.40〜1.60であることが特に好ましい。
【0164】
セルロースアセテートの酢化度は、55.0〜62.5%が好ましく、57.0〜62.0%が更に好ましい。酢化度は、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定及び計算によって求められる。
セルロースアセテートでは、セルロースの2位、3位、6位のヒドロキシルが均等に置換されるのではなく、6位の置換度が小さくなる傾向がある。第2の光学異方性層におけるセルロースアセテートでは、セルロースの6位置換度が、2位、3位に比べて同程度又は多い方が好ましい。
2位、3位、6位の置換度の合計に対する、6位の置換度の割合は、30〜40%であることが好ましく、31〜40%であることがより好ましく、32〜40%であることがさらに好ましい。6位の置換度は、0.88以上であることが好ましい。
セルロースアシレート及びその合成方法は、例えば、発明協会公開技報(公技番号2001−1745号、9頁、2001年3月15日発行、発明協会)に記載されている方法を採用できる。
【0165】
セルロースアセテートのレターデーションを調整するためには、延伸のような外力を与える方法を一例として挙げることができる。レターデーション上昇剤を、光学異方性を調節するために添加してもよい。レターデーション上昇剤は、芳香族環を少なくとも2つ有する芳香族化合物が好ましい。芳香族化合物は、ポリマー100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用することが好ましい。また、2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
レターデーション上昇剤については、欧州特許出願公開第0911656号明細書、特開2000−111914号公報、特開2000−275434号公報に記載のレターデーション上昇剤を好ましく採用できる。
【0166】
セルロースアセテートフィルムの吸湿膨張係数は、30×10-5/%RH以下が好ましく、15×10-5/%RH以下がより好ましく、10×10-5/%RH以下が更に好ましい。
吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値になる。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。吸湿膨張係数を調節することで、光学補償フィルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇(歪みによる光漏れ)を防止することができる。
吸湿膨張係数の測定では、まず、ポリマーフィルムから幅5mm、長さ20mmの試料を切り出し、片方の端を固定して25℃、20%RH(R0)の雰囲気下にぶら下げる。他方の端に0.5gの重りをぶら下げて、10分間放置し、長さ(L0)を測定する。次に、温度は25℃のまま、湿度を80%RH(R1)にして、長さ(L1)を測定する。吸湿膨張係数は下記式により算出する。測定は同一試料につき10サンプルで行い、平均値を採用する。
[式]
吸湿膨張係数[/%RH]={(L1−L0)/L0}/(R1−R0
【0167】
セルロースアセテートフィルムの吸湿による寸度変化を小さくするには、疎水性化合物を添加することが好ましい。疎水性化合物は、微粒子の状態であってもよい。
疎水性化合物は、可塑剤又は劣化防止剤から選択して用いることが好ましい。疎水性化合物は、疎水性基として炭化水素基(脂肪族基、芳香族基)を有することが好ましい。
疎水性化合物の添加量は、調製するポリマー溶液(ドープ)の0.01〜10質量%が好ましい。
ポリマーフィルムの吸湿による寸度変化を小さくするには、ポリマーフィルム中の自由体積を小さくする方法も有効である。例えば、後述するソルベントキャスト法における残留溶剤量を少なくすると、自由体積が小さくなる。ポリマーフィルムに対する残留溶剤量が0.01〜1.00質量%となる条件で、ポリマーフィルムを乾燥することが好ましい。
【0168】
ポリマーフィルムの添加剤の例には、紫外線防止剤、剥離剤、帯電防止剤、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)、赤外吸収剤が含まれる。
ポリマーフィルムが多層から形成される場合、各層における添加剤の種類や添加量が異なってもよい。添加剤については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745号、16〜22頁、2001年3月15日発行、発明協会)に記載がある。添加剤の使用量は、一般に、ポリマーフィルムの0.001〜25質量%の範囲である。
【0169】
セルロースアセテートフィルムは、ソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、ポリマー材料を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。
有機溶剤は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル及び炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。エーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−、及びCOO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。
有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0170】
炭素原子数が、3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール、及びフェネトールが含まれる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが含まれる。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテートが含まれる。
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール、及び2−ブトキシエタノールが含まれる。ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75mol%であることが好ましく、30〜70mol%であることがより好ましく、35〜65mol%であることが更に好ましく、40〜60mol%であることが特に好ましい。メチレンクロライドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。2種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0171】
一般的な方法でセルロースアセテート溶液を調製できる。一般的な方法では、例えば、処理温度は、0℃以上の温度(常温又は高温)である。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法及び装置を用いて実施することができる。
なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特に、メチレンクロライド)を用いることが好ましい。セルロースアセテートの量は、得られる溶液中に10〜40質量%含まれるように調整する。セルロースアセテートの量は、10〜30質量%であることが更に好ましい。
有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。溶液は、常温(例えば、0〜40℃)でセルロースアセテートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧及び加熱条件下で攪拌してもよい。
具体的には、セルロースアセテートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、例えば、40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、更に好ましくは80〜110℃である。
【0172】
各成分は、予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。また、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
【0173】
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にもセルロースアセテートを溶解させることができる。
なお、通常の溶解方法でセルロースアセテートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られる利点がある。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアセテートを撹拌しながら徐々に添加する。セルロースアセテートの量は、この混合物中に10〜40質量%含まれるように調整することが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0174】
次に、混合物を、例えば、−100〜−10℃(好ましくは−80〜−10℃、より好ましくは−50〜−20℃、更に好ましくは−50〜−30℃)に冷却する。
冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。
このように冷却すると、セルロースアセテートと有機溶媒の混合物は固化する。冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがより好ましく、12℃/分以上であることが更に好ましい。
冷却速度は、速いほど好ましいが、10,000℃/秒が理論的な上限であり、1,000℃/秒が技術的な上限であり、そして、100℃/秒が実用的な上限である。
なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を、冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
【0175】
更に、前記混合物を、例えば、0〜200℃(好ましくは0〜150℃、より好ましくは0〜120℃、更に好ましくは0〜50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアセテートが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよく、温浴中で加温してもよい。加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがより好ましく、12℃/分以上であることが更に好ましい。
一方、加温速度は、速いほど好ましいが、10,000℃/秒が理論的な上限であり、1,000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。
なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を、加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却及び加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察することで判断できる。
【0176】
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、溶解時間を短縮することができる。
加圧及び減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量測定(DSC)によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。
したがって、この溶液は、例えば、疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保する必要がある。
ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
【0177】
調製したセルロースアセテート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフィルムを製造する。
前記ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。前記ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
ソルベントキャスト法における流延及び乾燥方法については、例えば、米国特許第2336310号明細書、米国特許第2367603号明細書、米国特許第2492078号明細書、米国特許第2492977号明細書、米国特許第2492978号明細書、米国特許第2607704号明細書、米国特許第2739069号明細書、米国特許第2739070号明細書、英国特許第640731号明細書、英国特許第736892号明細書、特公昭45−4554号公報、特公昭49−5614号公報、特開昭60−176834号公報、特開昭60−203430号公報、特開昭62−115035号公報に記載のものを採用できる。
前記ドープは、表面温度が10℃以下のドラム、又はバンド上に流延することが好ましく、流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。
また、得られたフィルムをドラム又はバンドから剥ぎ取り、更に100〜160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。
以上の方法は、例えば、特公平5−17844号公報に記載の方法に従って行うことができる。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。また、この方法を実施するためには、流延時のドラム又はバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0178】
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)を用いて2層以上の流延でフィルム化することもできる。この場合、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製することが好ましい。ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10〜40%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
【0179】
2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延する場合、複数のセルロースアシレート溶液を流延することが可能で、支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば、特開昭61−158414号公報、特開平1−122419号公報、及び特開平11−198285号公報に記載の方法が適応できる。
また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってフィルム化することもでき、例えば、特公昭60−27562号公報、特開昭61−94724号公報、特開昭61−947245号公報、特開昭61−104813号公報、特開昭61−158413号公報、及び特開平6−134933号公報に記載の方法で実施できる。
また、例えば、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高・低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法を採用してもよい。
【0180】
また、2個の流延口を用いて、第一の流延口により支持体に成型したフィルムを剥ぎ取り、支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フィルムを作製してもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。
流延するセルロースアシレート溶液は、同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。
更に、前記セルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することもできる。
【0181】
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押出すことが必要であり、その場合、セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。
この解決策として、例えば、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に支持体上に押出すことができ、平面性も良化し、優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。
【0182】
セルロースアセテートフィルムには、機械的物性を改良するため、又は乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。
前記可塑剤としては、リン酸エステル、又はカルボン酸エステルが用いられる。
前記リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)及びトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。
フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。
クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)及びO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。
その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
これらの中でも、フタル酸エステル系可塑剤(例えば、DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく、DEP及びDPPがより好ましい。
前記可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、3〜15質量%であることが更に好ましい。
【0183】
セルロースアセテートフィルムには、表面処理を施すことが好ましい。
前記表面処理の例には、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、鹸化処理(好ましくは、アルカリ鹸化処理)及び紫外線照射処理が含まれる。
前記表面処理は、例えば、発明協会公開技報(公技番号2001−1745号、30〜32頁、2001年3月15日発行、発明協会)に記載の方法を採用できる。
【0184】
アルカリ鹸化処理は、セルロースアセテートフィルムを鹸化液中に浸漬するか、鹸化液をセルロースアセテートフィルムに塗布することにより実施する。これらの中でも、塗布による方法が好ましい。
塗布方法には、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法、E型塗布法がある。
アルカリは、アルカリ金属(例えば、カリウム、ナトリウム)の水酸化物が好ましい。すなわち、アルカリ処理液は、アルカリ金属の水酸化物の溶液であることが好ましい。溶液中の水酸化イオンの規定濃度は、0.1〜3.0Nであることが好ましい。
アルカリ処理液には、フィルムに対する濡れ性が良好な溶媒に溶解したり、界面活性剤、湿潤剤(例えば、ジオール、グリセリン)を添加したりして、アルカリ処理液の第2の光学異方性層に対する濡れ性や処理液の安定性を改善できる。
フィルムに対する濡れ性が良好な溶媒としては、例えば、アルコール(例えば、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、メタノール、エタノール)である。
アルカリ処理液の添加剤としては、例えば、特開2002−82226号公報、国際公開WO02/46809号パンフレットに記載の方法を採用できる。
【0185】
表面処理に代えて、又は表面処理に加えて、下塗り層を設けてもよい。
前記下塗り層は、例えば、特開平7−333433号公報に記載の方法により設けることができる。
また、前記下塗り層は複数層としてもよい。例えば、疎水性基と親水性基との両方を含有するポリマー層を第1下塗り層として設け、その上に配向膜とよく密着する親水性のポリマー層を第2下塗り層として設けることもできる。この場合、例えば、特開平11−248940号公報に記載の方法を採用できる。
【0186】
[偏光板]
第2の光学異方性層と第1の光学異方性層は、偏光膜と貼り合せて偏光板として使用する。
偏光膜は、配向型偏光膜又は塗布型偏光膜(Optiva Inc.製)を含む。配向型偏光膜は、バインダーとヨウ素もしくは二色性色素とからなる。ヨウ素及び二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。ヨウ素及び二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。
市販の配向型偏光膜は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素、もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されている。
また、市販の偏光膜は、ポリマー表面から4μm程度(両側合わせて8μm程度)に、ヨウ素もしくは二色性色素が分布しており、充分な偏光性能を得るためには、少なくとも10μmの厚みが必要である。浸透度は、ヨウ素、もしくは二色性色素の溶液濃度、浴槽温度及び浸漬時間により制御することができる。
偏光膜の厚みは、現在市販の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下が特に好ましい。20μm以下とすることにより、光漏れ現象が、17インチの液晶表示装置では全く観察されなくなり、より好ましい。
【0187】
偏光膜のバインダーは、架橋していてもよい。また、偏光膜のバインダーとしては、それ自体架橋可能なポリマーを用いてもよい。官能基を有するポリマー、又はポリマーに官能基を導入して得られたポリマーに、光、熱あるいはpH変化を与えて、官能基を反応させてポリマー間を架橋させ、偏光膜を形成することができる。また、架橋剤によりポリマーに架橋構造を導入してもよい。反応活性の高い化合物である架橋剤を用いて、バインダー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、バインダー間を架橋することにより形成することができる。
架橋は一般に、架橋可能なポリマー、又はポリマーと架橋剤との混合物を含む塗布液を、支持体(好ましくは、透明支持体)上に塗布した後、加熱することにより実施できる。最終商品の段階で耐久性が確保できればよいため、架橋させる処理は、偏光板を最終的に得るまでのいずれの段階で行なってもよい。
【0188】
偏光膜のバインダーとして、それ自体架橋可能なポリマー、あるいは架橋剤により架橋されるポリマーを使用してもよい。
このようなポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルトルエン、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、塩素化ポリオレフィン(例えば、ポリ塩化ビニル)、ポリエステル、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びそれらのコポリマー(例えば、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体)が挙げられ、シランカップリング剤をポリマーとして用いてもよい。
前記ポリマーとしては、水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、及び変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコール、及び変性ポリビニルアルコールがより好ましく、ポリビニルアルコール、及び変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0189】
ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がより好ましく、95〜100%が特に好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5,000が好ましい。
変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールに対して、共重合変性、連鎖移動変性あるいはブロック重合変性により変性基を導入して得られる。共重合で導入する変性基の例は、−COONa、−Si(OX)3(Xは、水素原子又はアルキル基)、−N(CH33・Cl、−C919、−COO、−SO3Na、−C1225を含む。連鎖移動で導入する変性基の例は、−COONa、−SH、−SC1225を含む。変性ポリビニルアルコールの重合度は、100〜3,000が好ましい。変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平8−338913号公報、特開平9−152509号公報、及び特開平9−316127号公報に記載のものを採用できる。これらの中でも、鹸化度が85〜95%の未変性ポリビニルアルコール、及びアルキルチオ変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。なお、ポリビニルアルコール、及び変性ポリビニルアルコールは、二種以上を併用してもよい。
【0190】
架橋剤については、例えば、米国再発行特許第23297号明細書に記載のものを採用できる。ホウ素化合物(例えば、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。
バインダーの架橋剤は、多く添加すると、偏光膜の耐湿熱性を向上させることができる。ただし、バインダーに対して架橋剤を50質量%以上添加すると、ヨウ素、又は二色性色素の配向性が低下する。架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%が更に好ましい。
バインダーは、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤をある程度含んでいる。ただし、残存する架橋剤の量は、バインダー中に1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。1.0質量%以下とすることにより、耐久性がより向上する傾向にある。すなわち、架橋剤の残留量を少なくすることにより、偏光膜を液晶表示装置に組み込み、長期使用又は高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合にも、偏光度が低下しにくくなる傾向にある。
【0191】
二色性色素は、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素を含む。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。
二色性色素は、親水性置換基(例えば、スルホ基、アミノ基、ヒドロキシル基)を有することが好ましい。
二色性色素の例としては、C.I.ダイレクト・イエロー12、C.I.ダイレクト・オレンジ39、C.I.ダイレクト・オレンジ72、C.I.ダイレクト・レッド39、C.I.ダイレクト・レッド79、C.I.ダイレクト・レッド81、C.I.ダイレクト・レッド83、C.I.ダイレクト・レッド89、C.I.ダイレクト・バイオレット48、C.I.ダイレクト・ブルー67、C.I.ダイレクト・ブルー90、C.I.ダイレクト・グリーン59、C.I.アシッド・レッド37が含まれる。
二色性色素については、特開平1−161202号公報、特開平1−172906号公報、特開平1−172907号公報、特開平1−183602号公報、特開平1−248105号公報、特開平1−265205号公報、特開平7−261024号公報に記載があり、本発明においては、これらに記載された二色性色素を採用することができる。
【0192】
二色性色素は、遊離酸、又は塩(例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、又はアミン塩)として用いられる。また、二種類以上の二色性色素を配合することにより、各種の色相を有する偏光膜を製造することができる。
偏光軸を直交させた時に黒色を呈する化合物(色素)を用いた偏光膜、又は黒色を呈するように各種の二色性分子を配合した偏光膜は、単板透過率、及び偏光率が優れている。
【0193】
偏光膜は、バインダーを偏光膜の長手方向(MD方向)に対して延伸する(延伸法)。あるいは、ラビングした後に、ヨウ素、二色性染料で染色する(ラビング法)。
延伸法の場合、延伸倍率は2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍が更に好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0〜10.0倍が好ましい。延伸工程は、数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。延伸前に、横あるいは縦に若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度)を行ってもよい。
【0194】
偏光膜を延伸する際には、歩留まりの観点から、長手方向に対して10〜80°傾斜して延伸することが好ましい。その場合、延伸は、二軸延伸におけるテンター延伸を左右異なる工程で行うことによって実施できる。
上記二軸延伸は、通常のフィルム製膜において行われている延伸方法と同様である。
二軸延伸では、左右異なる速度によって延伸されるため、延伸前のバインダーフィルムの厚みが左右で異なるようにする必要がある。流延製膜では、ダイにテーパーを付けることにより、バインダー溶液の流量に左右の差をつけることができる。
前記延伸の際の傾斜角度は、液晶表示装置を構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦又は横方向のなす角度にあわせるように設定されることが好ましい。通常の傾斜角度は45°である。しかし、最近は、透過型、反射型及び半透過型液晶表示装置において必ずしも45°でない装置が開発されており、延伸方向は液晶表示装置の設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
以上のように、偏光膜のMD方向に対して10〜80°斜め延伸されたバインダーフィルムが製造される。
【0195】
偏光膜の両面には、保護フィルムを配置するのが好ましく、一方の面の保護フィルムとして、ロール状光学補償フィルムの一部を用いるのが好ましい。例えば、保護フィルム/偏光膜/第2の光学異方性層/第1の光学異方性層、又は保護フィルム/偏光膜/第2の光学異方性層/配向膜/第1の光学異方性層の順に積層された積層体が好ましい。偏光膜と、第1の光学異方性層の表面側とを貼りあわせてもよい。貼り合せには接着剤を用いることができ、該接着剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基による変性ポリビニルアルコールを含む)やホウ素化合物水溶液が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。
接着剤層の厚みは、乾燥後に0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜5μmであることが更に好ましい。
偏光板の表面には、光拡散フィルム、又は防眩性フィルムを貼り合わせてもよい。
【0196】
<光拡散フィルム、及び防眩性フィルム>
図1は、光拡散フィルムの代表的な形態を示す断面模式図である。
図1に示す光拡散フィルム101は、透明基材フィルム102と、透光性樹脂140中に、例えば、第1の透光性微粒子141、及び第2の透光性微粒子142とを含む光拡散層103とを積層してなる。ここでは、屈折率が異なる2種類の2つの粒子サイズ分布のピークを有する透光性微粒子にて説明するが、同じ種類(屈折率が同じ)で、2つの粒子サイズ分布線のピークを有する透光性微粒子を用いてもよいし、1種類の透光性微粒子を用いてもよい。
【0197】
第1の透光性微粒子141は、透光性樹脂、例えばシリカ微粒子(平均粒径1.0μm、屈折率1.51)から構成され、第2の透光性微粒子142は、透光性樹脂、例えばスチレンビーズ(平均粒子径3.5μm、屈折率1.61)から構成されている。
光拡散機能は、透光性微粒子141,142と、透光性樹脂140との屈折率の差によって得られる。屈折率の差は、0.02〜0.15であることが好ましい。屈折率差を0.02以上とすることにより、光拡散がより効果的である。
また、屈折率差を0.15以下とすることにより、光拡散性が高くなりすぎず、フィルム全体の白化をより抑止できる傾向にある。屈折率差は、0.03〜0.13がより好ましく、0.04〜0.10が更に好ましい。
【0198】
偏光膜を液晶表示装置に用いる場合、視認側表面に反射防止層を設置するのが好ましい。反射防止層を偏光膜の視認側の保護層と兼用してもよい。
液晶表示装置の視角による色味変化抑制の観点から、反射防止層の内部ヘイズを50%以上にすることが好ましい。反射防止層は、例えば、特開2001−33783号公報、特開2001−343646号公報、及び特開2002−328228号公報に記載のものを採用できる。
【0199】
位相差板は、偏光膜と組み合わせて楕円偏光板の用途に供することができる。さらに、透過型、反射型、および半透過型液晶表示装置に、偏光膜と組み合わせて適用することにより、視野角の拡大に寄与する。以下に、位相差板を利用した楕円偏光板および液晶表示装置について説明する。
【0200】
[楕円偏光板]
位相差板と偏光膜を積層することによって楕円偏光板を作製することができる。位相差板を利用することにより、液晶表示装置の視野角を拡大し得る楕円偏光板を提供することができる。前記偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光膜の偏光軸は、フィルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。
【0201】
偏光膜は、位相差板の光学異方性層側に積層する。偏光膜の位相差板を積層した側と反対側の面に保護膜を形成することが好ましい。保護膜は、光透過率が80%以上の透明保護膜が好ましい。透明保護膜としては、一般にセルロースエステルフィルム、好ましくはトリアセチルセルロースフィルムが用いられる。セルロースエステルフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。保護膜の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。
【0202】
[液晶表示装置]
本発明の位相差板は、液晶表示装置の視野角の拡大に寄与する。液晶表示装置は、通常、液晶セル、偏光素子および位相差板(光学補償シート)を有する。前記偏光素子は、一般に偏光膜と保護膜からなり、偏光膜と保護膜については、上記楕円偏光で説明したものを用いることができる。TNモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特開平6−214116号公報、米国特許第5583679号、同5646703号、ドイツ特許公報第3911620A1号の各明細書に記載がある。また、IPSモードまたはFDCモードの液晶セル用位相差板は、特開平10−54982号公報に記載がある。さらに、OCBモードまたはHANモードの液晶セル用位相差板は、米国特許第5805253号明細書および国際公開WO96/37804号パンフレットに記載がある。さらにまた、STNモードの液晶セル用位相差板は、特開平9−26572号公報に記載がある。そして、VAモードの液晶セル用位相差板は、特許登録第2866372号公報に記載がある。
【0203】
本発明において、前記記載の公報を参考にして各種のモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)を作製することができる。位相差板は、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−PDane Switching)、FDC(FerroeDectric Diquid CrystaD)、OCB(OpticaDDy Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(VerticaDDy ADigned)およびHAN(Hybrid ADigned Nematic)モードのような様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。位相差板は、TN(Twisted Nematic)、OCB(OpticaDDy Compensatory Bend)モードの液晶表示装置の光学補償に特に効果がある。
【実施例】
【0204】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0205】
合成例1[D3−12の合成]
下記スキーム1に従って合成した。
【化46】

【0206】
(D3−12Aの合成)
3−シアノ安息香酸クロライド2.5gをテトラヒドロフラン(THF)20mlに溶解させ、5−クロロ−1−ペンタノール5.7g、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)3.0mlを添加後、室温で1時間撹拌した。反応液に水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を減圧濃縮した。残渣をメタノール(MeOH)100mlに溶解させ、50%ヒドロキシルアミン溶液2.8mlを添加後、40°で1時間撹拌した。冷却後、反応液に水を加え、析出した結晶を濾別、乾燥し、D3−12Aを3.7g得た。
【0207】
(D3−12Bの合成)
3.7gのD3−12Aをジメチルアセトアミド(DMAc)10mlに溶解させ、ピリジン(Pyridine)1.2ml、トリメシン酸クロライド1.1gを添加後、120°で1時間撹拌した。冷却後、メタノールを添加し、析出した結晶を濾取、乾燥し、D3−12Bを3.9g得た。
【0208】
(D3−12の合成)
3.9gのD3−12Bをジメチルアセトアミド(DMAc)50mlに溶解させ、炭酸カリウム3.7g、ヨウ化ナトリウム2.0g、アクリル酸1.9mlを添加後、100°で3時間撹拌した。反応液に水を加え、析出した結晶をろ過により濾取した。カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、D3−12を3.0g得た。得られたD3−12のNMRスペクトルは以下の通りである。
【0209】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.60(6H、m)、1.80−1.90(12H、m)、4.25(6H、t)、4.45(6H、t)、5.80(3H、dd)、6.15(3H、dd)、6.40(3H、dd)、7.65(3H、t)、8.25(3H、d)、8.45(3H、d)、8.90(3H、s)、9.30(3H、s)。
【0210】
得られたD3−12の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって行ったところ、温度を上げていき86°付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、142°を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D3−12は86°から142°の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分った。
【0211】
合成例2 モノマー A−1'
下記スキーム2に従って合成した。
【化47】

【0212】
4−ヒドロキシブチルアクリレート(東京化成品)21.6g(0.15mol)、トリエチルアミン(Et3N)22ml(0.16mol)および重合禁止剤ニトロベンゼン適量を酢酸エチル300mlに溶解させ、氷水浴下、メタンスルホニルクロライド(MsCl)12.2ml(0.16mol)を加え3時間攪拌した。反応終了後、反応液に水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を除去し、オイル状生成物を得られた(34.13g、粗収率99%)。
上記の生成物を精製せずに、250mlのN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)中に溶解させて、さらに、無水炭酸カリウム35g(0.25mol)と4−ヒドロキシベンゾニトリル(東京化成品)14.9g(0.125mol)を加えて溶解させて、反応溶液を90°で加熱して4時間攪拌した。反応終了後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製後、ヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒から再結晶を行い、4−(4−アクリロイルオキシブドキシ)ベンゾニトリルを得た。以下、A−1'と略す(24g、収率78%)。NMRスペクトルは以下の通りである。
【0213】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.90(4H、m)、4.05(2H、t)、4.25(2H、t)、5.85(1H、dd)、6.15(1H、dd)、6.42(1H、dd)、6.92(2H、d)、7.60(2H、d)。
【化48】

【0214】
合成例3 モノマー A−2'
合成例2において、4−ヒドロキシブチルアクリレートの代わりに2−ヒドロキシエチルアクリレート(東京化成)を同量使用し、他は合成例2と同様にして4−(2' −アクリロイルオキシエトキシ) ベンゾニトリル24gを得た。以下、A−2'と略す(総収率70%)。NMRスペクトルは以下の通りである。
【0215】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):4.15(2H、t)、4.52(2H、t)、5.86(1H、dd)、6.15(1H、dd)、6.45(1H、dd)、6.96(2H、d)、7.60(2H、d)。
【化49】

【0216】
合成例4 モノマー A−5'
合成例2において、4−ヒドロキシベンゾニトリルの代わりに4−クロロフェノール(東京化成)を使用した他の合成例2と同様にして1−クロロ−4−(4' −アクリロイルオキシブドキシ) ベンゼン20gを得た。以下、A−5'と略す。(総収率75%)。NMRスペクトルは以下の通りである。
【0217】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.88(4H、m)、3.95(2H、t)、4.22(2H、t)、5.82(1H、dd)、6.12(1H、dd)、6.40(1H、dd)、6.80(2H、d)、7.22(2H、d)。
【化50】

【0218】
合成例5 モノマー A−6'
下記スキーム3に従って合成した。
【化51】

【0219】
2−(2−クロロエトキシ)エタノール(和光製薬)37.4g(0.3mol)、トリエチルアミン(以下、Et3Nと略す)128ml(0.9mol)および重合禁止剤ニトロベンゼン1gを400mlのテトラヒドロフラン(THF)中に溶解させ、氷水浴下、アクリル酸クロリド27ml(0.33mol)を加え3時間攪拌した。反応終了後、反応液に水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を除去し、オイル状生成物を得られた(52g、粗収率97%)。
上記の生成物を精製せずに、200mlのN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)中に溶解させて、さらに、無水炭酸カリウム61g(0.44mol)と4−ヒドロキシベンゾニトリル(東京化成品)26.2g(0.22mol)を加えて溶解させて、反応溶液を90°で加熱して4時間攪拌した。反応終了後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製後、ヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒から再結晶を行い、A−6'を得た(51g、収率89%)。得られたA−6'のNMRスペクトルは以下の通りである。
【0220】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):3.80(2H、t)、3.85(2H,t)、4.15(2H、t)、4.35(2H、t)、5.85(1H、dd)、6.15(1H、dd)、6.40(1H、dd)、6.95(2H、d)、7.70(2H、d)。
【化52】

【0221】
合成例6 モノマー A−12'
合成例2において、4−ヒドロキシベンゾニトリルの代わりに2−フルオロ−4−ヒドロキシベンゾニトリル(東京化成)を同量使用し、他は合成例2と同様にして2−フルオロ−4−(4'−アクリロイルオキシブドキシ) ベンゾニトリル22gを得た。以下、A−12'と略す(総収率64%)。NMRスペクトルは以下の通りである。
【0222】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.90(4H、m)、4.05(2H、t)、4.25(2H、t)、5.83(1H、dd)、6.12(1H、dd)、6.40(1H、dd)、6.70(2H、m)、7.52(1H、t)。
【化53】

【0223】
合成例7 モノマー A−15'
下記スキーム4に従って合成した。
【化54】

【0224】
4−ヒドロキシブチルアクリレート(東京化成品)を酢酸エチル中、トリホスゲン(東京化成品)およびジエチルアニリン(PhNEt2)(和光純薬品)によってクロロホルメート化した後、4−シアノフェノール(東京化成品)とテトラヒドロフラン(THF)中、トリエチルアミン(Et3N)により縮合し、4−(4−シアノフェニルオキシカルボニルオキシ)ブチルアクリレート(A−15'と略す)を28g、全収率79%で得た。
【0225】
NMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.85(4H、m)、4.25(2H、t)、4.35(2H、t)、5.85(1H、dd)、6.15(1H、dd)、6.40(1H、dd)、7.35(2H、d)、7.70(2H、d)
【化55】

【0226】
合成例8 モノマー A−8'
合成例2において、4−ヒドロキシベンゾニトリルの代わりに4−フルオロフェノール(東京化成)を同量使用し、他は合成例2と同様にして1−フルオロ−4−(4'―アクリロイルオキシブドキシ) ベンゼン23gを得た。以下、A−8'と略す。(総収率63%)。NMRスペクトルは以下の通りである。
【0227】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.85(4H、m)、3.95(2H、t)、4.25(2H、t)、5.82(1H、dd)、6.12(1H、dd)、6.40(1H、dd)、6.80(2H、m)、6.95(2H、t)。
【化56】

【0228】
合成例9 モノマー A−9'
合成例2において、4−ヒドロキシベンゾニトリルの代わりに4−ブロモフェノール(東京化成)を同量使用し、他は合成例2と同様にして1−ブロモ−4−(4'―アクリロイルオキシブドキシ) ベンゼン27gを得た。以下、A−9'と略す。(総収率60%)。NMRスペクトルは以下の通りである。
【0229】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.88(4H、m)、3.95(2H、t)、4.23(2H、t)、5.82(1H、dd)、6.12(1H、dd)、6.40(1H、dd)、6.76(2H、d)、7.38(2H、d)。
【化57】

【0230】
合成例10 モノマー A−10'
合成例2において、4−ヒドロキシベンゾニトリルの代わりに4−トリフルオロメチルフェノール(東京化成)を同量使用し、他の合成例2と同様にして1−トリフルオロメチル−4−(4'―アクリロイルオキシブドキシ) ベンゼン20gを得た。以下、A−10'と略す。(総収率62%)。NMRスペクトルは以下の通りである。
【0231】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.90(4H、m)、4.12(2H、t)、4.25(2H、t)、5.82(1H、dd)、6.12(1H、dd)、6.40(1H、dd)、6.95(2H、d)、7.54(2H、d)。
【化58】

【0232】
合成例11 ポリマーAD−1の合成例
以下のスキームに従って、ポリマーAD−1を合成した。
【化59】

【0233】
100mLの三口フラスコにMEK5gを入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、A−1'(1.6g)、B−3'(6.4g)、C−11'(日本油脂製、ブンレンマーAP−400、8g)、重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601、600mg)のMEK8gを3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌されたメタノール−水混合溶液(800mL)中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを遠心分離によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明に用いるポリマー(AD−1)を10.5g得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=11000、Mw/Mn=2.45であった。尚、スキーム中のポリマーAD−1の各構成単位は、質量%で表している(以下、本願実施例で合成するポリマーについて同じ)。
【0234】
合成例12 ポリマー AD−2
以下のスキームに従って、ポリマーAD−2を合成した。
【化60】

【0235】
100mLの三口フラスコにMEK4gを入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、A−5'(4.8g)、B−3'(6.4g)、C−11'(日本油脂製、ブンレンマーAP−400、4.8g)、重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601、600mg)のMEK8g溶液を3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌された800mLのメタノール−水混合溶液(10/90体積比)中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを遠心分離によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明に用いるポリマー(AD−2)を13.0g得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=9500、Mw/Mn=2.40であった。
【0236】
合成例13 ポリマー AD−3
以下のスキームに従って、ポリマーAD−3を合成した。
【化61】

【0237】
100mLの三口フラスコにMEK4gを入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、A−1'(0.8g)、B−3'(6.4g)、A−22'(新中村化学工業、NKエステル、AMP−20G、4.8g)、重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601、600mg)のMEK8g溶液を3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌された800mLのメタノール−水混合溶液(10/90体積比)中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを遠心分離によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明に用いるポリマー(AD−3)を13.7g得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=9000、Mw/Mn=2.35であった。
【0238】
合成例14 ポリマー AD−4
以下のスキームに従って、ポリマーAD−4を合成した。
【化62】

【0239】
100mLの三口フラスコにMEK4gを入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、A−12'(0.8g)、B−3'(6.4g)、A−22'(新中村化学工業、NKエステル、AMP−20G、4.8g)、重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601、600mg)のMEK8g溶液を3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌された800mLのメタノール−水混合溶液(10/90体積比)中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを遠心分離によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明に用いるポリマー(AD−4)を12.5g得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=10500、Mw/Mn=2.45であった。
【0240】
合成例15 ポリマー AD−5
以下のスキームに従って、ポリマーAD−5を合成した。
【化63】

【0241】
100mLの三口フラスコにMEK4gを入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、A−12'(0.8g)、B−3'(6.4g)、C−11'(日本油脂製、ブンレンマーAP−400、8.8g)、重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601、600mg)のMEK8g溶液を3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌された800mLのメタノール−水混合溶液(10/90体積比)中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを遠心分離によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明に用いるポリマー(AD−5)を13.8g得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=8500、Mw/Mn=2.35であった。
【0242】
合成例16 ポリマー AD−6
以下のスキームに従って、ポリマーAD−6を合成した。
【化64】

【0243】
100mLの三口フラスコにMEK4gを入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、A−15'(6.4g)、B−3'(4.8g)、C−11'( 日本油脂製、ブンレンマーAP−400、4.8g)、重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601、600mg)のMEK8g溶液を3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌された800mLのメタノール−水混合溶液(10/90体積比)中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを遠心分離によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明に用いるポリマー(AD−6)を12.7g得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=10000、Mw/Mn=2.32であった。
【0244】
合成例17 ポリマー AD−7
以下のスキームに従って、ポリマーAD−7を合成した。
【化65】

【0245】
100mLの三口フラスコにMEK4gを入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、A−6'(2.4g)、B−3'(6.4g)、C−2'( 東京化成,7.2g)、重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601、600mg)のMEK8g溶液を3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌された800mLのメタノール−水混合溶液(10/90体積比)中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを遠心分離によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明に用いるポリマー(AD−7)を12.7g得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=9700、Mw/Mn=2.55であった。
【0246】
合成例18 ポリマー AD−8
以下のスキームに従って、ポリマーAD−8を合成した。
【化66】

【0247】
100mLの三口フラスコにMEK4gを入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、A−6'(2.4g)、B−3'(6.4g)、C−11'( 日本油脂製、ブンレンマーAP−400、7.2g)、重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601、600mg)のMEK(8g)溶液を3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌された800mLのメタノール−水混合溶液(10/90体積比)中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを遠心分離によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明に用いるポリマー(AD−8)を12.9g得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=12000、Mw/Mn=2.35であった。
【0248】
合成例19 ポリマーAD−9
以下のスキームに従って、ポリマーAD−9を合成した。
【化67】

100mLの三口フラスコにMEK5gを入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、A−1'(6.4g)、B−3'(4.8g)、C−11'(日本油脂製、ブンレンマーAP−400、4.8g)、重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601、600mg)のMEK(8g)を3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌されたメタノール−水混合溶液(800mL)中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを遠心分離によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明に用いるポリマー(AD−9)を11.7g得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=13000、Mw/Mn=2.50であった。
【0249】
[実施例1:本発明の組成物(LM−1)の調製]
以下に示した組成の割合で、液晶性化合物(1)(D3−12)、液晶性化合物(2)(T−8)、本発明で用いるポリマー(AD−1)、光重合開始剤のイルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株))、および、光増感剤のジエチルチオキサントンをそれぞれ秤量し、メチルエチルケトンに溶解することによって、本発明の組成物(LM−1)を調製した。
【0250】
組成物(LM−1)の組成
・液晶性化合物(1):D3−12 92質量部
・液晶性化合物(2):T−8 8質量部
・本発明で用いるポリマー:AD−1 1.0質量部
・イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・メチルエチルケトン 250質量部
【0251】
[実施例2:本発明の組成物(LM−2〜LM−8)の調製]
実施例1において、液晶性化合物(1)(D3−12)と円盤状液晶添加物(2)(T−8)に、ポリマー(AD−1)を下記表2に記載のポリマーにそれぞれ変更し、他は同様にして、本発明の組成物(LM−2)〜(LM−8)を調製した。
【0252】
[実施例3:本発明の組成物(LM−9〜LM−13)の調製
実施例1において、下記界面活性剤(W−1)を0.5質量部添加した本発明の組成物(LM−9)を調整した。また、該(LM−9)において、ポリマー(AD−1)を下記表2に記載のポリマーにそれぞれ変更し、他は同様にして本発明の組成物(LM−10〜LM−13)を調整した。
【0253】
[実施例4:本発明の組成物(LM−14)の調製]
以下に示した組成の割合で、液晶性化合物(D3−12)、本発明で用いるポリマー(AD−9)、光重合開始剤のイルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株))、および、光増感剤のジエチルチオキサントンをそれぞれ秤量し、メチルエチルケトンに溶解することによって、本発明の組成物(LM−14)を調製した。
【0254】
組成物(LM−14)の組成
・液晶性化合物(1):D3−12 100質量部
・本発明で用いるポリマー:AD−9 1.0質量部
・イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・メチルエチルケトン 250質量部
【0255】
【化68】

【0256】
[比較例1:比較用組成物LH−1、LH−2の調製]
ポリマー(AD−1)を添加しなかった以外は、実施例1の組成物(LM−1)と全て同様にして、比較用組成物(LH−1)を調製した。また、ポリマー(AD−1)を添加しなかった以外は、実施例3の組成物(LM−9)とすべて同じにして、比較用組成物(LH−2)を調製した。
【0257】
【表2】

【0258】
[実施例5:本発明の位相差板(RM−1)の作製]
第2の光学異方性層(透明支持体)の作製
下記の成分をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
[セルロースアセテート溶液組成]
・酢化度60.9%のセルロースアセテート・・・・・・・・・・・・・・100質量部
・トリフェニルフォスフェート・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7.8質量部
・ビフェニルジフェニルホスフェート・・・・・・・・・・・・・・・・・3.9質量部
・メチレンクロライド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・300質量部
・メタノール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45質量部
【0259】
レターデーション上昇剤溶液の調製
別のミキシングタンクに、酢化度60.9%のセルロースアセテート(リンター)4質量部、下記一般式(A)に示すレターデーション上昇剤25質量部、シリカ微粒子(平均粒子サイズ:20nm)0.5質量部、メチレンクロライド80質量部、及びメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
【化69】

【0260】
上記セルロースアセテート溶液470質量部に、レターデーション上昇剤溶液18.5質量部を混合し、十分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤のセルロースアセテートに対する質量比は3.5質量%であった。
その後、残留溶剤量が35質量%のフィルムをバンドから剥離した後、140℃の温度で、フィルムのテンターを用いて38%の延伸倍率で横延伸した後、クリップを外して130℃で45秒間乾燥させ、第2の光学異方性層としてのセルロースアセテートフィルムを製造した。製造された第2の光学異方性層の残留溶剤量は0.2質量%であり、膜厚は88μmであった。
【0261】
<第2の光学異方性層の鹸化処理>
作製した第2の光学異方性層の一方の面に、1.5Nの水酸化カリウムのイソプロピルアルコール溶液を25mL/m2塗布し、25℃で5秒間放置した後、流水で10秒洗浄し、25℃の空気を吹き付けることでフィルムの表面を乾燥した。このようにして、第2の光学異方性層の一方の表面のみを鹸化した。
【0262】
配向膜の形成
第2の光学異方性層の鹸化処理した面に、下記の組成の配向膜塗布液を#18のワイヤーバーコーターで31mL/m2塗布した。100℃の温風で120秒乾燥した。
次に、第2の光学異方性層の延伸方向(遅相軸とほぼ垂直)と45゜の方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。得られた配向膜の膜厚は0.5μmであった。配向膜のラビング方向は、透明支持体の流延方向と平行であった。
【0263】
[配向膜塗布液組成]

・下記一般式(B)に示す変性ポリビニルアルコール・・・・・・・・・・・10質量部
・水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・371質量部
・メタノール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・119質量部
・グルタルアルデヒド(架橋剤)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.5質量部
【0264】
【化70】

【0265】
(光学異方性層の形成)
前記で作製した配向膜のラビング処理面上に、実施例1で調製した本発明の組成物(LM−1)の塗布液を、ワイヤーバーを用いて塗布した。上記の光学異方性層を塗布したフィルムを、120℃の恒温槽中にて配向させ、その温度で200mJ/cm2の紫外線を照射して光学異方性層の配向状態を固定した。室温まで放冷して、本発明の位相差板(RM−1)を作製した。形成した光学異方性層の厚さは約1.0μmであった。
【0266】
[実施例6:本発明の位相差板(RM−2〜RM−13)の作製]
実施例5において、組成物(LM−1)を、組成物(LM−2)〜(LM−13)に変更したこと以外は全て同様にして、位相差板(RM−2)〜(RM−13)を作製した。
【0267】
[実施例7:本発明の位相差板(RM−14)の作製]
実施例4において、組成物(LM−14)を使用し、位相差板(RM−14)を作製した。
【0268】
[比較例2:比較用位相差板(RH−1、RH−2)の作製]
実施例4において、組成物(LM−1)を、組成物(LH−1)および(LH−2)に変更したこと以外は全て同様にして、比較用の位相差板(RH−1)および(RH−2)を作製した。
【表3】

【0269】
[位相差板の評価]
平均チルト角の測定
[実施例8:位相差板RM−1〜RM−14の評価]
実施例5、実施例6および実施例7で得られた位相差板RM1〜RM−14のRe(589nm)値は、まずKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長589nmの光をフィルム法線方向に入射させて測定した。次に、面内の遅相軸を傾斜軸として、フィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長589nmの光を入射させて測定し、さらに、フィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長589nmの光を入射させて測定した。上記の光学異方性層のレターデーション値の角度依存性の計算が測定値に一致するように、光学異方性層の一方の面におけるチルト角θ1および他方の面のチルト角θ2を変数としてフィッティングを行い、θ1およびθ2を算出した。
この値の平均値((θ1+θ2)/2)から平均チルト角を求めた。
【0270】
[比較例3:比較用位相差板RH−1〜RH−2の評価]
上記と同様な方法で位相差板RH−1〜RH−2の平均チルト角を求めた。
【0271】
また、実施例8および比較例3で得られた位相差板の断面の超薄切片を、マイクロトームを用いて作製し、その切片を偏光顕微鏡で観察した。本発明の位相差板RM−1〜RM−14および比較例3のRH−1、2の光学異方性層がハイブリッド配向していることが確認できた。
【0272】
(平均チルト角の温度依存性)
光学異方性層の形成において、配向後に100℃まで降温した後、紫外線により配向状態を硬化した以外は同様にして位相差版を作成した後平均チルト角の測定を行い、120℃の時と100℃で配向固定化した時の平均チルト角の差を平均チルト角温度依存性として以下の表4に記載した。
【0273】
【表4】

【0274】
表3の結果から、本発明の位相差板(RM−1)〜(RM−14)は、比較例の位相差板(RH−1)および(RH−2)と比較して、平均チルト角が10〜40°の範囲に制御できることが判った。かつ、その中間の平均チルト角は温度依存性が少ないことが確認された。
これらの結果から、本発明の一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーを含有した組成物から作製した位相差板では、温度依存性が少ない状態でディスコティック液晶性化合物をハイブリッド配向させた位相差板を得ることができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0275】
【図1】図1は、光拡散フィルムの代表的な形態を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0276】
101 光拡散フィルム
102 透明基材フィルム
103 光拡散層
104 透光性樹脂
140 透光性樹脂
141 第1の透光性微粒子
142 第2の透光性微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の液晶性化合物と、少なくとも一種の下記一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーを含有する組成物。
【化1】

(一般式(A)中、Mpは3価の連結基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Xは置換もしくは無置換の単環構造官能基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(A)中のXが、炭素原子数3〜20の置換または無置換の環状脂肪族基または炭素原子数6〜30の無置換もしくは置換のフェニル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記一般式(A)において、前記Mpが下記Mp−1またはMp−2を表し、前記Lが、−O−、−NRa11−(Ra11は、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す。)、−S−、−C(=O)−、−S(=O)2−、および、炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基、ならびに、これらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表す、請求項1または2に記載の組成物。
【化2】

(*は、Lとの連結位置を示す。)
【請求項4】
前記少なくとも一種の前記一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーが、さらに、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位が、下記一般式(B)で表される請求項4に記載の組成物。
【化3】

(一般式(B)中、Mp'は3価の連結基を表し、L'は単結合または2価の連結基を表し、Rfは少なくとも一つのフッ素原子を含有する置換基を表す。)
【請求項6】
前記液晶性化合物が、ディスコティック液晶性化合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記液晶性化合物の少なくとも1種が、下記一般式(DI)で表される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【化4】


(一般式(DI)中、Y11、Y12、Y13は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。L1、L2、L3は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。H1、H2、H3はそれぞれ独立に、下記一般式(DI−A)または下記一般式(DI−B)を表す。R1、R2、R3は、それぞれ独立に下記一般式(DI−R)を表す。)
【化5】

(一般式(DI−A)中、YA1、YA2は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。XAは酸素原子、硫黄原子、メチレン、またはイミノを表す。*はL1〜L3と結合する位置を表し、**はR1〜R3と結合する位置を表す。)
【化6】

(一般式(DI−B)中、YB1、YB2は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。XBは酸素原子、硫黄原子、メチレン、またはイミノを表す。*はL1〜L3と結合する位置を表し、**はR1〜R3と結合する位置を表す。)
一般式(DI−R)
*−(−L21−F1n1−L22−L23−Q1
(一般式(DI−R)中、*は一般式(DI)中のH1、H2またはH3に結合する位置を表す。F1は少なくとも1種類の環状構造を有する2価の連結基を表す。L21は単結合または2価の連結基を表す。n1は0〜4の整数を表す。L22は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−、−C=C−を表し、L23は−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−、−C=C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q1は重合性基または水素原子を表す。)
【請求項8】
前記液晶性化合物の少なくとも1種が、下記一般式(DII)で表される化合物または下記一般式(DIII)で表される化合物である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【化7】

(一般式(DII)中、Y31、Y32、Y33はそれぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。R31、R32、R33はそれぞれ独立に下記一般式(DII−R)で表される。)
【化8】

(一般式(DII−R)中、A31、A32は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。X3は酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表す。F2は6員環状構造を有する2価の環状連結基を表す。n3は1〜3整数を表す。L31は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−、−C=C−を表し、L32は−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−、−C=C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q3は重合性基または水素原子を表す。)
【化9】

(一般式(DIII)中、Y41、Y42およびY43は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、R41、R42およびR43は、それぞれ独立に下記一般式(DIII−A)、下記一般式(DIII−B)、または下記一般式(DIII−C)を表す。)
【化10】

(一般式(DIII−A)中、A41、A42、A43、A44、A45、A46は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、X41は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、L41は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C=C−を表し、L42は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C=C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q4は、重合性基または水素原子を表す。)
【化11】

(一般式(DIII−B)中、A51、A52、A53、A54、A55、A56は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、X52は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、L51は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C=C−を表し、L52は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C=C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q5は重合性基または水素原子を表す。)
【化12】

(一般式(DIII−C)中、A61、A62、A63、A64、A65、A66は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、X63は、酸素原子、硫黄原子、メチンまたはイミノを表し、L61は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C=C−を表し、L62は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C=C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q6は重合性基または水素原子を表す。)
【請求項9】
前記一般式(DI)で表される化合物、前記一般式(DII)で表される化合物および前記一般式(DIII)で表される化合物の少なくとも1種と、他の液晶性化合物を少なくとも1種含む、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
前記他の液晶性化合物が、下記一般式(T)で表される化合物である、請求項9に記載の組成物。
【化13】

(一般式(T)中、Mは二価の連結基であり、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。Q7は重合性基または水素原子を表し、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物を用いてなる光学異方性層を有する位相差板。
【請求項12】
請求項11に記載の位相差板を有する、液晶表示装置。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物を用いて光学異方性層を形成することを含む位相差板の製造方法。
【請求項14】
下記一般式(A)で表される基と、下記一般式(B)で表される基とを構成単位として含むポリマー。
【化14】

(一般式(A)中、Mpは3価の連結基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Xは置換もしくは無置換の単環構造官能基を表す。)
【化15】

(一般式(B)中、Mp'は3価の連結基を表し、L'は単結合または2価の連結基を表し、Rfは少なくとも一つのフッ素原子を含有する置換基を表す。)
【請求項15】
下記一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーを有するチルト角制御剤。
【化16】

(一般式(A)中、Mpは3価の連結基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Xは置換もしくは無置換の単環構造官能基を表す。)

【図1】
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【公開番号】特開2008−111110(P2008−111110A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252676(P2007−252676)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】