説明

組成物中の熱可塑性エラストマーの使用およびその組成物

【課題】活性剤、着色剤などを伝達するために耐久性、可撓性、耐水性および耐油性、耐摩耗性および剥がれ抵抗性のあるフィルムを生物学的基体上に提供する方法および組成物例えば化粧品、パーソナルケアおよび製薬組成物の提供。
【解決手段】電荷が中性である疎水性の熱可塑性エラストマーフィルム形成剤、粘着性付与樹脂またはその混合物、および揮発性溶媒またはその混合物からなる組成物であって、ただし該熱可塑性エラストマーフィルム形成剤は、ハードドメインとエラストマードメインとからなり、該組成物は水不溶性でありそして揮発性溶媒またはその混合物の消失後該熱可塑性エラストマーフィルム形成剤は物理的に架橋している組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、表面にフィルムを形成する組成物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品、パーソナルケア製品および製薬組成物(皮膚および爪並びに皮膚および爪上の着色剤の接着、永続する効果および保護するために生物学的表面に使用されることを目的とするフィルム形成性ポリマーを含む)は市販されている。石けんおよび水を使用して容易に除かれるフィルム形成剤として熱可塑性エラストマーのようなポリマーを含む化粧品処方物は、特許文献1および2に例示されている。このケースに示された特定の例は、ポリマーの少なくとも1つのブロックが水溶性であるかまたは親水性であって電荷を有するポリマーを含む。当業者は、望ましいフィルム形成性を付与するために化粧品の処方に熱可塑性エラストマーを使用することを論じているが、熱可塑性エラストマーコポリマーは、通常、水性またはアルコール性の溶媒に不溶であるかまたは溶解することが難しく、そのため、一般にポリマー性化粧品組成物について不適切と考えられている。
【0003】
特許文献3は、熱可塑性シリコーンブロックコポリマーの製法を記述している。
特許文献4および5は、化粧品組成物および樹脂組成物に化粧品用ボディー顔料を使用することを記述している。多数の他のポリマーのなかで、熱可塑性エラストマー樹脂が、顔料が分散される固体の樹脂として、それらの使用に関連して、これらの文献に引用されている。
【0004】
熱可塑性エラストマーは、一般に、溶融物が固体に転移する性質が重要ではない領域例えば履物、電線絶縁物、接着剤などで使用される。より詳細には、熱可塑性エラストマーは、典型的に、ポリマーがポリマーの高融点ドメインの融点より高く加熱される応用で使用される。ポリマーが冷えるにつれ、高融点ドメインは架橋を形成し、化学的な架橋よりむしろ物理的な架橋の網状構造を生ずる。これらの網状構造は、崩壊しそして温度の変化により改正される膨張可能なエラストマー構造を形成する。他のエラストマー構造は、一般に、例えば縮合または遊離基連鎖移動メカニズムにより、化学的な架橋により形成される。化学的架橋によるこれらの構造は、可逆的に形成されない。熱可塑性エラストマーは、一般に、従来技術が示唆しているように、高熱の使用に依存するため、化粧品およびスキンケア製品へのそれらの応用は、明らかではなくそして不適切である。
【0005】
特許文献6−12は、非揮発性または揮発性のシリコーン、非揮発性油、シリコーン油、シリコーン流体、シリコーンガム、シリコーンワックス、ワックス、シクロメチコンまたはゲルベ(guerbet)エステルの1つ以上と組み合わせたシリコーン樹脂、MQ樹脂の使用を記述している。
【0006】
性能を満足に発揮する組成物では、それらは、多数の望ましい性能を示さねばならない。生物学的基体にフィルムを施しそして望ましい性能を有する組成物は周知である。フィルム形成性組成物の望ましい特徴は、良好な適用、望ましい光沢の均一なフィルムの生成、良好な接着、或る量の可撓性およびフィルムのクラッキングおよび剥がれを避ける良好なフィルムの強さ、好ましくはフィルム形成性組成物が適用される皮膚、髪および/または爪の刺激のなさを含む。
【0007】
【特許文献1】米国特許公開2004/0223933A1
【特許文献2】ヨーロッパ特許144068033A1
【特許文献3】米国特許6824881B2
【特許文献4】米国特許公開2003/147819A1
【特許文献5】ヨーロッパ特許1329483A2
【特許文献6】米国特許5800816
【特許文献7】米国特許5911974
【特許文献8】米国特許6036947
【特許文献9】米国特許6274152
【特許文献10】米国特許6071503
【特許文献11】米国特許6139823
【特許文献12】米国特許6340466
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フィルム形成の方法および組成物における進歩にかかわらず、永続性、剥がれ抵抗性、快適さ、高可撓性、非付着性および防水性のフィルムを提供するフィルム形成性組成物が、当業者間で望まれている。
【0009】
そのため、活性剤、着色剤などを伝達するために耐久性、可撓性、耐水性および耐油性、耐摩耗性および剥がれ抵抗性のあるフィルムを生物学的基体上に提供する方法および組成物が望まれている。
【0010】
さらに、耐久性、可撓性、耐水性および耐油性、耐摩耗性および剥がれ抵抗性のフィルムを形成しそして活性剤、着色剤などを伝達する組成からなる化粧品、パーソナルケアおよび製薬組成物を提供するのが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書で詳述された前記の目的および他の目的に従って、本発明は、生物学的表面に物理的に架橋したフィルムを形成する、少なくとも熱可塑性エラストマー、粘着性付与樹脂および揮発性溶媒からなる組成物を、本発明の1つの態様において、提供することによって、従来技術に伴う欠点を克服する。
【0012】
1つの態様では、電荷が中性である疎水性の熱可塑性エラストマーフィルム形成剤、粘着性付与樹脂またはその混合物、および揮発性溶媒またはその混合物からなる本発明の組成物は、生物学的表面例えばケラチン性組織に適用されるとき、溶媒の消失後物理的に架橋したフィルムを形成し、そして水不溶性である。生物学的表面は、化粧品、パーソナルケア製品および製薬組成物が典型的に適用される任意の表面であって、例えば皮膚、唇、髪、爪などを含むが、これらに限定されない。ケラチン性表面に適用される組成物は、揮発性溶媒またはその混合物の蒸発または消失後、物理的架橋の形成を生じさせる。得られたフィルムは、耐久性、可撓性、耐水性および耐油性、耐摩耗性、剥がれ抵抗性および永続性を有する。
【0013】
本発明の1つの態様は、本発明の組成物をケラチン性組織に適用し、当業者に周知の手段例えば熱、物理的な摩擦(ただし、これらに限定されない)によりそしてpHのレベルを変えることにより組成物を活性化し、揮発性溶媒またはその混合物を消失させ、ケラチン性組織に物理的に架橋したフィルムを形成することによって、ケラチン性組織に可撓性、耐水性、耐油性、耐摩耗性および剥がれ抵抗性を付与する方法をもたらす。ケラチン性組織に局所的に適用される組成物は、ケラチン性組織に適用されるとき、耐久性、可撓性、耐水性、耐油性、耐摩耗性および剥がれ抵抗性のフィルムを形成する。
【0014】
他の態様は、ケラチン性表面を本発明の組成物と接触させることにより表面にフィルムを形成する方法を提供する。組成物は、電荷が中性である疎水性の熱可塑性エラストマーフィルム形成剤、粘着性付与樹脂またはその混合物、および揮発性溶媒またはその混合物からなり、ただし該熱可塑性エラストマーフィルム形成剤は、ハードドメインとエラストマードメインとからなる。一度組成物がケラチン性表面に適用されると、組成物は、熱、物理的摩擦によりまたはpHレベルを変えることにより活性化され、それにより揮発性溶媒またはその混合物を消失させ、そして得られるフィルムは物理的に架橋され、さらに耐久性、可撓性、耐水性、耐油性、耐摩耗性および剥がれ抵抗性を有する。
本発明のこれらの側面および他の側面は、例示の態様および実施例を含む本発明の以下の詳細な記述を読んだ後に、当業者に明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、熱可塑性エラストマーフィルム形成剤、粘着性付与樹脂またはその混合物および揮発性溶媒またはその混合物からなる組成物に関し、該組成物は、生物学的基体または表面に組成物を局所的に適用することにより活性成分、着色剤などを伝達する。組成物は、自由流動性から半固体の粘度におよびそして好ましくは水不溶性である、単一相の有機組成物、油中水エマルションまたは水中油エマルションである。組成物は、髪、皮膚および爪を含むがこれらに限定されないケラチン性組織に局所的に適用されて、耐久性すなわち永続性、可撓性、耐水性、耐油性、耐摩耗性および一般に剥がれ抵抗性のフィルムをケラチン性組織に形成する。局所組成物の例は、化粧品、毛髪用製品、製薬組成物、昆虫忌避剤および日焼け止め製品であるが、これらに限定されない。
【0016】
組成物により形成される得られるフィルムの望ましい特徴は、良好な適用、望ましい光沢の均一なフィルムの生成、急速な乾燥時間、良好な接着、ある量の可撓性およびフィルムのクラッキングおよび剥がれを避ける良好なフィルムの強さ、好ましくはフィルム形成性組成物が適用されたときの皮膚、髪および/または爪または他のケラチン性表面の刺激のなさを含む。
【0017】
本発明の1つの態様は、粘着性付与樹脂またはその混合物および揮発性溶媒またはその混合物と組み合わされた、フィルム形成剤として特に有用である熱可塑性エラストマーからなる組成物を含む。本発明の組成物中の熱可塑性エラストマーは、電荷が中性でありそして疎水性である。天然および合成のポリマーおよびその混合物は、化粧品組成物中のフィルム形成剤として有用であるが、電荷が中性の疎水性熱可塑性エラストマーは、可撓性、耐水性、耐油性、耐摩耗性および剥がれ抵抗性、非収縮性、不粘着性および快適さを有するフィルムを形成するのに特に有利である。熱可塑性エラストマーフィルム形成剤は、組成物の全重量に基づいて、約0.1重量%から約90重量%、好ましくは0.5重量%から約70重量%そしてさらに好ましくは約0.7重量%から30重量%で組成物に存在する。本発明の組成物の熱可塑性エラストマーは、組成物が適用されるケラチン性表面へ伝達され、それにより緊密な連続したフィルムを形成するために、有機分子例えば染料、紫外線吸収剤および医薬または活性剤とコンプレックスを形成する。
【0018】
一般に、熱可塑性エラストマーは、少なくとも1つの相が、室温では固いが加熱により流体になるかまたはより固くなくなる物質、すなわちハード相またはドメインを有する多相の組成物である。熱可塑性エラストマーの他の相は、室温でよりやわらかく、よりゴムに似ている物質、すなわちエラストマー相またはドメインである。熱可塑性エラストマーは、ブロックコポリマーでもある。本発明のブロックポリマーは、ジブロック、トリブロックおよびマルチブロックのコポリマーの任意の形を有する。局所の組成物は、好ましくは、A−B−Aトリブロックコポリマーの熱可塑性エラストマーを有する。例えば、A−Bジブロックコポリマーの形のハードドメインすなわちブロックA(高Tブロック)およびやわらかいエラストマードメインすなわちブロックB(低Tブロック)を有するブロックコポリマー;A−B−Aトリブロックコポリマー、例えばポリ(スチレン−b−エラストマー−b−スチレン)、スチレン−イソブチレン−スチレン(SIBS)、スチレン−シリコーン−スチレン;ならびにマルチブロックコポリマー構造(A−B)および(A−B)nx(ただし、xはn官能基結合である)を有する分枝したブロックコポリマー。熱可塑性エラストマーは、好ましくは、A−Bジブロックコポリマー、A−B−Aトリブロックコポリマー、(A−B)マルチブロックコポリマーおよびこれらの混合物。さらに詳細に、限定されない熱可塑性エラストマーは、ポリウレタン/エラストマーブロックコポリマー、ポリエステル/エラストマーコポリマー、ポリアミド/エラストマーブロックコポリマー、ポリエテリイミド/ポリシロキサンブロックコポリマーおよびこれらの任意の組み合わせを含む。
【0019】
好ましい態様では、熱可塑性エラストマーは、線状A−B−Aトリブロックタイプ、例えばスチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−エチレンブチレン−スチレンであるが、これらに限定されない。より詳細には、本発明の組成物中でフィルム形成剤として使用される熱可塑性エラストマーは、スチレン−イソブチレン−スチレン(SIBS)である。
【0020】
本発明において使用されるフィルム形成性熱可塑性エラストマーは、やわらかいそして弾性のあるフィルムを生成させる範囲内のガラス転移温度(T)を有する。ガラス転移温度は、ポリマーまたはそのフラグメントが固体の剛い状態からゴム状の液体状態に移動する点である。当業者により理解されるように、種々のポリマーのTは、テストによりそしてこの概念を理解しそして本発明で有用であると思われるポリマーまたはハードおよびエラストマー相の特別な組み合わせを同定するために、普通によく知られ使用されている文献(Polymer Handbook,J.Brandrupら編集、2巻セット、第4版、John Wiley and Sons,Inc.2003年6月;Introduction to Polymer Science and Technology,H.S.KaufmanおよびJ.J.Falcetta編集、John Wiley and Sons,Inc.1977年参照)に記載されているガラス転移点を参照することにより決定できる。
【0021】
さらなる態様では、任意の電荷が中性である非極性の疎水性熱可塑性エラストマーが、組成物でフィルム形成剤として使用でき、その場合、1つの相好ましくはハード相は、約40℃以上、好ましくは約50℃以上そしてなお好ましくは約60℃のガラス転移温度(T)を有し、そして他の相好ましくはエラストマー相は、約25℃より低い、好ましくは約10℃以下そしてより好ましくは約0℃以下のTを有する。さらなる態様は、2つの相のTの差が、約15℃、好ましくは約30℃そしてより好ましくは約50℃である熱可塑性エラストマーを含む。これらの特徴は、組成物を耐水性および耐油性にし、不粘着性、可撓性のある快適なフィルムの形で活性成分例えば着色剤、UV吸収剤、殺虫剤および医薬を伝達する手段として働く。
【0022】
ガラス転移温度に加えて、溶解度パラメーターは、材料例えば液体およびポリマー間の相互反応を予想する多数の方法を提供する。それらは、特定の応用についてポリマーの適合性を決定し、特定の目的について溶媒の混合物を処方するのに有用である。本発明のさらなる態様は、熱可塑性エラストマーの2つの相またはドメインの間、および/または相のそれぞれと揮発性溶媒またはその混合物との間の溶解度パラメーターに関する。当業者により理解されるように、熱可塑性エラストマー相および溶媒またはその混合物に関する溶解度パラメーターは、本発明の組成物を形成するために、普通に知られており使用されている文献(例えば、Allan F.M.Barton、Handbook of Solubility Parameters and Other Cohesion Parameters、第2版、CRC Prss,Boca Ratan,フロリダ、1991;Hansen,Charles M.「The Three Dimensional Solubility Parameter−Key to Paint Component Affinities:I.Solvents Plasticizers,Polymers,and Resins」Journal of Paint Technology,39巻、505号、1967年;Hansen,Charles M.「The Three Dimensional Solubility Parameter−Key to Paint Component Affinities:II.Dyes,Emulsifiers,Mutual Solubility and Compatibility、and Pigments」Journal of Paint Technology,39巻、511号、1967年;Hansen,Charles M.「The Three Dimensional Solubility Parameter−Key to Paint Component Affinities:III.Independent Calculations of the Parameter Components」Journal of Paint Technology,39巻、511号、1967年参照)を参照することにより決定できる。
【0023】
組成物の特に良好な性質を達成するのに特に好適であるさらなる態様では、熱可塑性エラストマーは、少なくとも0.5(cal/cc)1/2のハード相とエラストマー相との間の溶解度パラメーターの差を有する。他の態様の組成物は、熱可塑性エラストマー好ましくは熱可塑性エラストマーのハード相の約0.2(cal/cc)1/2以内の少なくとも1つの揮発性溶媒の溶解度パラメーターを有する。さらなる組成物では、揮発性溶媒の少なくとも1つは、熱可塑性エラストマー好ましくはエラストマー相の約0.2(cal/cc)1/2以内の溶解度パラメーターを有する。
【0024】
熱可塑性エラストマーの温度の上昇と同様に、揮発性溶媒またはその混合物中に熱可塑性エラストマーを溶解することは、強さの損失または物理的な架橋の崩壊を生ずる。理論により規定されるべきでないが、組成物中の溶媒が揮発するとき、組成物は、本質的に「死亡」し、そして物理的な架橋を形成することによってその初めの形を再び得る。本発明の熱可塑性エラストマーは、一般に、崩壊し再形成される物理的な架橋をへて網状構造を形成し、一方他の非熱可塑性エラストマーにより形成される化学的な架橋は、可逆的に形成できない。
【0025】
より詳細に、組成物中のフィルム形成剤として熱可塑性エラストマーを適用する1つの方法は、高いTおよび低いTの溶融ドメイン間の溶媒和自由エネルギーにおける差を利用することである。本発明の組成物の他の利点は、別個のストラクチャリング(structuring)剤を必要としないことである。特に、ミッドブロックコポリマー(例えばエラストマードメイン)の溶媒和エネルギーとは融和性があるがエンドブロックコポリマー(例えばハードドメイン)のそれとは融和性がない溶媒系は、主要なフィルム形成剤およびストラクチャリング剤を提供する。従って、ストラクチャリング剤の添加は不必要である。高いT溶融ドメインを選択的に溶媒和する溶媒好ましくは揮発性溶媒またはその混合物に熱可塑性エラストマーポリマーを曝すことにより、架橋したゲル構造が一時的に破壊される。この状態は、熱可塑性エラストマーフィルム形成剤組成物が低粘度の自由流動性の物質である貯蔵中に生成物の処方が維持される。例えば皮膚への適用により、物理的な架橋を破壊する揮発性溶媒は蒸発し、物理的な架橋の再形成と望ましいフィルム構造を残す。高いT溶融ドメインの融点は、本体の温度より遙かに高いので、それによりフィルムが破壊される唯一のメカニズムは、選択的溶媒和によってである。皮膚上の生成フィルムが遭遇することになると最も思われる化学的な攻撃は、高い疎水性(すなわち植物油)または親水性(すなわち水)の何れかである。これらのフィルムは、それらが表面エネルギーの低下に依存しそして結合された高いおよび低い親水性成分を有する分子からなるため、両性の物質例えば脂肪酸および界面活性剤によりこの攻撃に抵抗する。
【0026】
揮発性溶媒は、優れた耐水性、耐油性および耐摩耗性を示すフィルムを生成し、そして例えばネイルエナメルとして爪に適用される。揮発性の非極性溶媒は、線状、環状または分枝であり、通常の大気圧下で約250℃より低い沸点を有し、好ましくは約200℃より低い沸点、さらに好ましくは約175℃より低い沸点を有する。組成物は、単一相の有機組成物、油中水エマルションまたは水中油エマルションであり、自由流動の溶液から半固体のゲル様の形の粘度を有する。好ましい組成物は水不溶性である。本発明の組成物に含まれる揮発性の非極性の溶媒は、例えば、炭化水素、エステル、シリコーンまたはアミドに基づく有機溶媒である。溶媒またはその組み合わせは、好ましくは、組成物中の物理的な架橋の一時的破壊を促進するものである。理論に束縛されることを望まないが、揮発性溶媒またはその混合物が蒸発または消失するとき、一時的に破壊された熱可塑性エラストマーの物理的な架橋は、次に再形成され、ケラチン性組織と接触するとフィルムを形成する。本発明の組成物の独特な特徴をもたらすのは、このフィルムそれ自体およびそれと組成物の他の成分との組み合わせである。
【0027】
好ましい溶媒は、本発明で使用される特定の熱可塑性エラストマーに依存する。溶媒は、当業者に周知であるような、組成物に従来使用される追加の溶媒の1つ以上と関連して使用できる。特定の溶媒が選択され、そして熱可塑性エラストマーの物理的な架橋の一時的な破壊を助けそして揮発性溶媒またはその混合物が揮発したとき、物理的な架橋を再形成させる量で、組成物に存在するフィルム形成性熱可塑性エラストマーと相溶性があると考えられる。典型的には、本発明の局所組成物は、熱可塑性エラストマーフィルム形成剤および粘着性付与樹脂に加えて許容できる揮発性溶媒または揮発性溶媒の混合物からなり、組成物はそのゲル、液体または半固体の形を維持できる。
【0028】
熱可塑性エラストマー組成物中の溶媒部分に関する1つの態様では、熱可塑性エラストマーの低濃度例えば組成物中約5重量%以下で、組成物は、エラストマードメインと相溶性である揮発性溶媒またはその混合物を有しなければならない。この組成物は、所望により、また1つ以上の非揮発性溶媒を有してもよい。さらに、組成物は、所望により、またハードドメインと相溶性である溶媒またはその混合物を有してもよい。
【0029】
一方、熱可塑性エラストマーの高濃度例えば組成物中約5重量%以上では、組成物は、ハードドメインと相溶性の揮発性溶媒またはその混合物を有するべきである。この組成物は、所望により、ソフトドメインと相溶性の揮発性または非揮発性の溶媒またはその組み合わせを有してもよい。
【0030】
許容できる生成物の粘度(すなわち流出物なく適用が容易な)を確実にするのに必要な上記の溶媒混合物を含む溶媒の量は、溶媒の性質、並びに他の成分例えば特に熱可塑性エラストマーおよび他のフィルム形成性成分、可塑剤、濃厚化剤、固体などの性質および量に依存する。揮発性溶媒の量は、通常の実験により容易に決定できる。一般に、しかし、本発明の目的に適した1つ以上の溶媒の量は、組成物の約1重量%から約90重量%、好ましくは約5重量%から約80重量%、より好ましくは約10重量%から約70重量%の範囲に入る。
【0031】
本明細書に記載された組成物で有用な揮発性溶媒の例は、脂肪族、オレフィン性および芳香族の炭化水素、塩素化炭化水素、ケトン、アセテート、エーテル、クロロホルム、アルコール、エステル、シリコーンおよびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。これらの溶媒は、それらが組成物のケラチン性組織例えば皮膚、唇、髪および爪(これらに限定されない)への適用で直ぐに蒸発する点で揮発性である。
【0032】
当業者には理解されるだろうが、溶媒および溶解度の条件は、所望の性質を有する組成物を製造するために、変更できる。さらに、当業者には理解されると思われるが、溶解度パラメーターおよびガラス転移温度Tは、パラメーター例えば熱可塑性エラストマー、溶媒および他の成分および条件の数に応じて、当業者にとり周知の式により近づけることができる。
【0033】
当業者は、だれでも溶解度パラメーターを決定し、考えられる応用のために選ばれたブロックコポリマーに基づいて溶媒を選ぶことができる。特定のブロックコポリマーの処理に有用な溶解度パラメーターおよび溶媒に関するさらなる情報は、ブロックコポリマーの種々の製造者から入手できる。ポリマーの溶解度パラメーターの概念の追加の論文は、Encyclopedia of Chemical Technology,Supp.Vol.Interscience,ニューヨーク(1971)に提供されている。この記述は、本明細書において参考として引用される。
【0034】
他の態様では、粘着性付与樹脂は、長期にわたる使用に耐える性質において鍵となる最適の粘着/接着および凝集力を得ることによって、組成物の性能に影響する組成物の粘度および弾性の性質を改変するのに使用できる。熱可塑性エラストマー組成物の残存する粘着性は、粘着性付与樹脂の選択により有利に提供される。本明細書に記載された本発明の組成物は、典型的に、粘着性付与樹脂またはそのブレンドを含む。
【0035】
本発明の他の態様は、熱可塑性エラストマー、溶媒またはその混合物および粘着性付与樹脂またはその混合物(粘着性樹脂はシリコーン樹脂である)を有する組成物を含む。例えば、組成物は、シリコーン樹脂または非シリコーン樹脂である粘着性付与樹脂、またはシリコーン樹脂からなる粘着性付与樹脂の混合物、またはシリコーン樹脂および非シリコーン樹脂の混合物を含む。他の態様では、組成物は、シリコーンに基づく熱可塑性エラストマー、溶媒またはその混合物および粘着性付与樹脂またはその混合物(粘着性付与樹脂はシリコーン樹脂または非シリコーン樹脂である)を有する。
【0036】
熱可塑性エラストマーフィルム形成性組成物中のシリコーン樹脂は、活性剤、着色剤などを伝達するための、耐久性、可撓性、耐水性および耐油性、耐摩耗性および剥がれ抵抗性を有する本発明の組成物の快適さを損なうことなく、追加の剥がれ抵抗性をもたらす。さらに詳細には、組成物例えば化粧品化合物におけるトリブロックコポリマー、シリコーン樹脂および揮発性溶媒の使用は、快適な可撓性を維持しつつ、長期にわたる耐久性および剥がれ抵抗性を含む性質をもたらす。例えば、SIBS熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂および揮発性溶媒を有する組成物は、特に皮膚および唇上の快適さを失うことなく、水および油の剥がれ抵抗性を特に増加させる。シリコーン樹脂の例は、MQ、MT、Tおよびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。MQ樹脂は、一般式M(ただし、MはRSiO1/2であり、QはSiO4/2であり、RおよびRは独立してそれぞれまたは組み合わさってC1−30直鎖または分枝鎖のアルキルまたはフェニルまたはアルキルフルオロまたはアミノまたはこれらの組み合わせである)を有する。Qに対するM(yに対するx)の比は、約0.7から約2に及ぶ。MT樹脂は、一般式M(ただし、MはRSiO1/2であり、TはRSiO3/2であり、RおよびRは、アルキル、フェニル、アルキルフェニル、アルキルフルオロ、アミノおよびこれらの組み合わせであるが、これらに限定されない)を有する。Tに対するM(yに対するx)の比は、約0.7から約3であり、好ましくはTに対するMの比は約0.7から約3である。他のシリコーン樹脂は、RSiO3/2(ただし、Rはアルキル、フェニル、アルケニル、アルキルフェニル、アミノ、アルキルフルオロまたはアルキルホスフェートである)の一般式を有するT樹脂である。
【0037】
理論に束縛されたくはないが、シリコーン樹脂は、3次元(3−D)ケージまたははしご状の構造を形成し、それは、その特定の官能基に応じて、A−B−Aトリブロックコポリマー組成物のエラストマードメインまたはハードドメインの何れかに向かって移動しそこでそれ自体で組み立てられる。例えば、SIBS熱可塑性エラストマーおよびMQまたはT樹脂の何れか(ただしその官能基はフェニル基である)のシリコーン粘着性付与樹脂を有する組成物は、ハードドメインに沿う3−D構造の自己組み立てが観察される。他の例では、アルキルまたは分枝アルキルである官能基は、エラストマーミッドブロックドメインに向かう樹脂移動を生ずる。他の例では、フルオロまたはアルキルペルフルオロは、シリコーン樹脂の官能基として選ばれ、それは、追加の耐油性および/または耐水性をもたらす相分離ミクロドメインの形成を生ずる。さらに、他の望ましい性質は、アルキル−、フェニル−またはアミノ−置換MQまたはT樹脂により提供される高レベルの光沢を含む。理論により束縛されることを望まないが、シリコーン樹脂のTの変更は、快適さ、永続性、剥がれ防止性、高度の可撓性、不粘着性および防水性を有する組成物を生成するために、フィルムの性質をさらに改善するのに、これらの樹脂の組み合わせを使用することによって達成できる。
【0038】
本発明の他の態様は、前述のように選択された粘着性付与樹脂(ただし、粘着性付与樹脂は、全組成物の約0.1重量%から約50重量%、好ましくは約3重量%から約40重量%そしてより好ましくは約5重量%から30重量%の量で存在する)、または1対10の比好ましくは1対5の比の粘着性付与樹脂のブレンドを含む組成物に関する。
【0039】
当業者には理解されるように、室温および通常の大気圧での組成物の残存粘着性は、好適な粘着性付与樹脂またはその混合物を選ぶことによって調節できる。樹脂のTおよび相溶性は、ポリマー/樹脂の組み合わせの接着性をコントロールする主要なファクターである。Tは軟化点と関連し、そしてそれは処方する目的で粘着性付与樹脂の軟化点の値よりもTの値を知ることが、処方をくむものにとって、より有用である。例として、正確なT粘着性付与樹脂およびポリマー中の正当な樹脂濃度の使用が、望ましい性質をもたらす。好ましい粘着性付与樹脂またはその混合物は、約5℃と約250℃との間、より好ましくは約30℃と約200℃との間の軟化点を有する。一方、好ましい粘着性付与樹脂は、約−60℃から約200℃との間、好ましくは約−40℃から約170℃との間そして最も好ましくは約−30℃から約150℃との間のTを有する。
【0040】
1つの態様では、少なくとも1つの粘着性付与樹脂は、組成物中の熱可塑性エラストマーのエラストマー相のそれぞれの約1(cal/cc)1/2以内、好ましくは0.5(cal/cc)1/2以内、そしてより好ましくは約0.2(cal/cc)1/2以内の溶解度パラメーターを有する。他の態様では、少なくとも1つの粘着性付与樹脂は、組成物中の熱可塑性エラストマーのハード相のそれぞれの約1(cal/cc)1/2以内、好ましくは0.5(cal/cc)1/2以内、そしてより好ましくは約0.2(cal/cc)1/2以内の溶解度パラメーターを有する。
【0041】
増大した剥がれ抵抗性および永続する効果は、第二の粘着性付与樹脂例えばシリコーン樹脂の添加により達成できる。第二の樹脂のTは、好ましくは約−60℃から約250℃、好ましくは約−40℃から約200℃におよぶ。しかし、これらのパラメーターは、第二の粘着性付与樹脂がシリコーン樹脂であるときに、好ましく適用される。第二の粘着性付与樹脂のTに加えて、その溶解度パラメーターは、本発明の組成物において重要である。好ましくは、熱可塑性エラストマーと第二の粘着性付与樹脂との間の溶解度パラメーターの差は、少なくとも約1(cal/cc)1/2以上そして好ましくは少なくとも約1.5(cal/cc)1/2以上なければならない。
【0042】
好適な粘着性付与樹脂の例は、天然または変性樹脂の1つまたはその混合物例えばガム質ロジン、木質ロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水素化したロジン、二量体化したロジンおよび重合化したロジン;天然または変性ロジンのグリセロールおよびペンタエリスリトールエステル例えばペール木質ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合化ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのペンタエリスリトールエステルおよびロジンのフェノール変性ペンタエリスリトールエステル;天然テルペンのコポリマーおよびターポリマー例えばスチレン/テルペンおよびアルファメチルスチレン/テルペン;ポリテルペン樹脂またはテルペン炭化水素から得られるもの例えばピネンとして知られている二環モノテルペン、水素化ポリテルペン樹脂;フェノール変性テルペン樹脂およびその水素化誘導体例えば二環テルペン;脂肪族石油炭化水素;水素化脂肪族石油炭化水素樹脂;脂環族石油炭化水素樹脂およびその水素化誘導体;並びに脂肪族/芳香族または脂環族芳香族コポリマーおよびそれらの水素化誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0043】
好ましい粘着性付与樹脂の追加の例は、ロジンエステル、ロジネートエステル、石油のC5およびC9フラクションのオリゴマー化により得られた炭化水素樹脂例えばWingtack)(商標)10およびWingtack(商標)85(Sartomer Comp.Inc.Exton,PA)、脂肪族樹脂、テルペン樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ポリテルペン(例えば、Sylvagum(商標)TR90、Arizona Chemical;Jacksonville,Fl)、芳香族樹脂、合成C5−C9樹脂の合成C5樹脂混合物、クマロン−インデン樹脂、アルファ−メチルスチレンおよびビニルトルエンのコポリマー、並びにシリコーン樹脂例えばMQ樹脂(例えば、GE(商標)Silicones,Waterford,NYからのSR1000)、MT樹脂およびT樹脂(Dow Corning Corp.Midland,MIからのDow Corning(商標)2−2078 Fluid)およびその混合物を含む。
【0044】
本発明の好ましい態様では、本発明の組成物は、電荷が中性である疎水性の熱可塑性エラストマーフィルム形成剤、粘着性付与樹脂および揮発性溶媒またはその混合物からなる組成物に関し、それはこれらの不利な点を克服しそして良好な接着、安定性、可撓性、持ちのよさ、不接着性、良好な維持、剥がれ抵抗性、耐摩耗性および短い移行延長のような性質を有するフィルムを生成する。本発明の組成物は、上記のような望ましい性能を有し欠点のない連続するフィルムの形成を好ましくは可能にする速度で、揮発性溶媒またはその混合物が蒸発するとき、ケラチン性表面に物理的に架橋したフィルムをもたらす。
【0045】
本発明の組成物は、望ましい性質を得るのに必要な、熱可塑性エラストマー、粘着性付与樹脂またはその混合物および揮発性溶媒またはその混合物の有効な量からなる種々の化粧品、パーソナルケア製品および製薬処方物で使用できる。当業者は、適用並びに耐久性、可撓性、適用性、持ちのよさ、均一性、光沢、接着、耐水性および耐油性、剥がれ抵抗性および耐摩耗性、好ましくは刺激のなさの程度に応じて、望ましい熱可塑性エラストマーフィルム形成剤、粘着性付与樹脂またはその混合物および揮発性溶媒またはその混合物の有効な量およびタイプを決定できる。当業者は、また適用に応じて、熱可塑性エラストマーフィルム形成剤、粘着性付与樹脂またはその混合物および揮発性溶媒またはその混合物および安定な化粧品または医薬品を得るのに必要な追加の成分の量およびタイプを決定できる。安定な化粧品および医薬品は、化粧品または医薬品の有効な市販を可能にするのに十分な安定性のものである。
【0046】
他の態様において、本発明の組成物は、局所コーティング、活性剤および機能性成分を表面に保持または結合させるのに使用される。活性成分または機能性成分は、化粧品業界または製薬業界で周知の着色剤、顔料、紫外線フィルター、モイスチャーライジング剤、香料、殺虫剤、薬剤および他の活性成分または機能性成分を含む。
【0047】
本発明のさらなる態様は、化粧品、パーソナルケア製品、医薬または医用処方物、昆虫忌避剤、または日焼け止め製品である組成物、好ましくは局所用液体、ゲル、フォーム、クリーム、ローションまたは半固体に関しており、該組成物は、少なくとも熱可塑性エラストマーフィルム形成剤、粘着性付与樹脂またはその混合物および揮発性溶媒またはその混合物からなる。組成物は、耐水性、耐油性、摩耗または摩擦抵抗性および剥がれ抵抗性、可撓性、不粘着性、光沢、耐久性、接着性を有し、モイスチャーバリヤーをもたらし、そして1つ以上の活性成分例えば着色剤、染料、紫外線吸収剤、モイスチャーライザー、生物学的に活性な剤、殺虫剤/殺菌剤並びに有機または無機の活性剤(これらに限定されない)を結合および/または伝達できる。例えば、本発明の組成物は、汗抵抗性および処理された水泳プールの水、新鮮な水および海水を含む水に抵抗性を有する。組成物は、また汚れに抵抗性があり、そしてフレークにならない。組成物は、日焼けケア、スキンケア、着色化粧品、マスカラ、毛髪用製品(シャンプー、コンディショナー、ヘアスプレイ、ムースおよびダイ/染め剤)、マスカラ、ネイルエナメル、口紅製品、リップグロス、ファンデーション、アイメーキャップ、スキンケア製品、パーソナル衛生製品および局所用医薬または活性物伝達(これらに限定されない)のような製品に使用される。
【0048】
本発明は、組成物、特に剥がれ抵抗性、永続性および防水性を有する化粧品組成物に関する。組成物は、熱可塑性エラストマー特にジブロック、トリブロックまたはマルチブロックコポリマー、粘着性付与樹脂またはその混合物および揮発性溶媒またはその混合物からなり、そしてまたこの組成物を含む化粧品および医薬品に関する。
【0049】
顔料入り化粧品例えばファンデーション、コンシーラー、マスカラ、口紅および他の化粧品、昆虫忌避剤およびサンスクリーンローションを含む多くの化粧品組成物は、極めて容易にこすげ落とせるかまたは剥がすことのできる柔らかい油状のフィルムを残す。そのため、組成物は、或るもの例えばガラス、カップ、衣類または皮膚上への接触により、少なくとも一部付着するようにできる。付着すると、組成物は、そのものに印を残す。結果は、最適ではなくそして組成物の適用が規則的に繰り返されることを必要とする。
【0050】
当業者に周知のいくつかの剥がれ抵抗性の化粧品組成物が存在するが、これらの組成物の多くは、なお改良される余地がある。高い剥がれ抵抗性を有するものと当業者に知られているこれらのメーキャップ組成物は、一般に、脂肪性物質、揮発性油特に揮発性シリコーン油および/または揮発性炭化水素油を含む。さらに、これらの剥がれのない組成物の多くは、粘着性であり、そのため、組成物の適用および広がり易さは、化粧品として理想的ではない。
【0051】
剥がれ抵抗性の他に、組成物は安定性を維持しなければならない。しばしば、業界で使用されるフィルム形成剤は、濃厚化剤として機能する溶媒と混合される。しかし、生成する処方物は、もしこれらの濃厚化剤中の溶媒がゲルマトリックスに移行すると、処方物の不安定化を生ずるという問題を生ずる。そのため、望ましい性質例えば適用の容易さ、快適さ、可撓性、耐久性、適用中および適用後の不粘着性、耐摩耗性、耐油性および耐水性(これらに限定されない)も有する剥がれ抵抗性の安定な組成物が望まれる。
【0052】
本発明の組成物は、広範囲の適用において、優れた剥がれ抵抗性、耐久性、永続性および防水性をもたらす。これらの適用は、顔料入り化粧品(ファンデーション、コンシーラー、マスカラ、アイライナー、アイシャドウ、口紅、リップグロス、ブラッシュを含む)、ネイルエナメル、ヘアスプレイ、ゲルおよびムース、サンスクリーンローション、モイスチャーライジングローション、活性成分および香料を含むローションを含むが、これらに限定されない。本発明の製品は、ケラチン性表面に強く接着する可撓性のフィルムの形成に関する任意の化粧品、パーソナルケアまたは製薬の応用に特に有用である。
【0053】
好ましい態様では、本発明の熱可塑性エラストマーフィルム形成剤は、水不溶性であり、室温で処理でき、皮膚への良好な接着をもたらし、そして不粘着性である。熱可塑性エラストマーフィルム形成剤が、組成物中の他の成分と相溶性を有することも好ましい。
【0054】
本発明の組成物は、また耐水性をもたらすのに有効である。組成物は、それにより、日焼け止め製品およびマスカラで特に有用な活性成分または機能性成分を洗い流すことを最低にする。組成物は、また吸蔵性フィルムを形成し、特にモイスチャライザーにおいて表皮を通る水分の損失を低下させることによって皮膚の脱水を減少させる。
【0055】
1つの態様では、組成物は、皮膚と環境との間にフィルムバリヤーをもたらし、その場合、フィルムは、活性剤/機能性成分を含む。組成物により形成されるフィルムは、機能性成分の活性例えばSPFおよびUV光保護を増大させる、および/または湿度および環境の作用をブロックする。
【0056】
他の態様では、本発明の組成物は、さらに、滑らかさまたは延び、耐水性、耐油性、剥がれ抵抗性または当業者のだれでも望む他の化粧品または製薬上の性質を改善するために、考えられる領域において通常使用される任意の添加物、例えば抗酸化剤、香料、精油、安定剤、化粧品活性物質、モイスチャライザー、ビタミン、必須脂肪酸、親油性サンスクリーン、油溶性ポリマーおよび特に炭化水素ポリマー例えばポリアルキレンおよびポリアクリレートを含む。所望により添加される成分の例は、エモリエント、濃厚化剤例えば粘土または有機粘土、シリカ、セルロース誘導体、可塑剤、ゲル、油、ワックス、保存料、溶媒、界面活性剤;ヘクトライト;合成ポリマー例えばアクリルポリマーまたはポリウレタンタイプの結合ポリマー;ガム特にキサンタンガム;伸展剤;分散剤、保存料特に水溶性保存料;泡止め剤;湿潤剤;紫外線スクリーニング剤;香料;充填剤;化粧品または製薬活性剤;モイスチャライザー;ビタミンおよびその誘導体;および生物学的物質およびその誘導体を含むが、これらに限定されない。もし組成物の軟らかさおよび弾性がさらに増大される必要があるならば、化粧品材料に普通に添加される可塑剤を加えることができる。好適な物質は、低分子量および高分子量の両方の可塑剤(所望により使用され、可溶化されまたは共溶媒中に溶解される)を含む。
【0057】
沈殿防止剤および濃厚化剤は、典型的に、ワックス、シリカゲル、ガム、粘土、燻蒸シリカ、脂肪酸石けんおよび種々の炭化水素ゲルおよび処方物中に配合されるときケラチン性組織の表面に残る他の成分を含む。本発明の組成物で好ましくは使用できるエモリエントのような成分の例は、グリセリン、プロピレングリコール、シクロメチコン、ジメチコンおよびエモリエントおよび他の同様な成分(本明細書で参考として引用されるInternational Cosmetic Dictionary and Handbook,1および2巻、Wenninger,J.A.およびG.N.McEwen編集、Cosmetic,Toiletry and Fragrance Association,Washington DC、2000年に開示されている)を含むが、これらに限定されない。
【0058】
着色したまたは顔料を入れた製品について、熱可塑性エラストマーフィルム形成剤、粘着性付与樹脂、揮発性溶媒および追加の成分の比は、ケラチン性基体または表面への接着および耐水性、耐油性および剥がれ抵抗性を最大にするように調節できる。重要な考慮は、フィルム形成剤の量に対する顔料の比である。顔料は、無機または有機、白色または着色粒子を意味するものと理解すべきである。本発明の実施に使用できる着色剤は、顔料、レーキおよび染料(当業者に周知でありそしてその内容が本明細書に参考として引用されるCosmetic Ingredient Handbook,1版、J.M.Nikitakisら、Cosmetic,Toiletry and Fragrance Association,Washington DC、1988年に開示されている)を含むことができる。
【0059】
有機顔料の例は、FD&C染料、D&C染料(D&Cレッド、Nos.2,5,6,7,10,11,12,13,30および34,D&CイェローNo.5、ブルーNo.1,バイオレットNo.2を含む)含むが、これらに限定されない。無機顔料の例は、金属酸化物および金属水酸化物例えば酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化鉄(α−Fe、y−Fe、Fe、FeO)、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、水酸化鉄、二酸化チタン、酸化コバルト、酸化セシウム、酸化ニッケルおよび酸化亜鉛並びに複合酸化物および複合水酸化物例えばチタン酸鉄、チタン酸コバルトおよびアルミン酸コバルトを含むが、これらに限定されない。他の好適な着色剤は、ウルトラマリンブルー(すなわち硫黄を含む珪酸アルミニウムナトリウム)、プルシアンブルー、マンガンブルー、オキシ塩化ビスマス、タルク、雲母、セリサイト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムアルミニウム、シリカ、チタン酸雲母、酸化鉄チタネート雲母、オキシ塩化ビスマスおよび化粧品業界で周知の任意の他の顔料または処理された顔料を含む。
【0060】
充填剤および真珠層も該処方物に添加されて組成物のテクスチャーおよび不透明/光沢の外観を改変する。充填剤は、ラメラまたは非ラメラ、無機または合成、無色または白色の粒子を意味するものと理解すべきである。真珠層は、特にそれらの貝殻の或る貝類により生成されたかまたはそれ以外で合成された真珠光沢の粒子を意味するものと理解すべきである。本発明の実施で使用できる真珠光沢剤は、雲母、酸化鉄、二酸化チタンおよび化粧品の技術において周知の任意の他の真珠光沢剤を含む。
【0061】
これらの材料のいくつかは、いくつかのエステルおよび有機サンスクリーンについて観察されるように、油状の感触および増大した延びを含むが、本発明の組成物全体は、剥がれ抵抗性、耐摩耗性、耐水性および耐油性、耐久性、可撓性、適用可能性、持ちのよさ、均一性、光沢、乾燥時間、接着、好ましくは刺激のなさというその望まれる性質を維持する。当業者は、もちろん、本発明による組成物の有利な性質が、考えられる添加により損なわれられないまたは実質的に損なわれられない方法で、所望の追加の化合物および/またはそれらの量を選ぶのに注意するだろう。しかし、製品の延びおよびエモリエンスを増強するために本発明の処方物にこれらの物質が添加される態様では、上記の物質が、その望ましい性質を維持するのに十分に低い濃度で存在することが好ましい。これらの成分は、望ましい性質例えばコンシステンシーまたはテクスチャーを有する組成物を製造するために当業者によりいろいろ選ばれる。熱可塑性エラストマーフィルム形成剤、追加の成分およびそれらの濃度の選択は、また所望の性質を変化するために調節される。
【0062】
この技術および本発明の組成物は、口紅、リップグロス、ファンデーション、サンスクリーン、昆虫忌避剤、ネイルエナメル、並びにスキンケア製品例えばマスク、サンスクリーンおよび昆虫忌避剤を含むがこれらに限定されない広範囲の製品に適用できる。特に、本発明の組成物は、化粧品処方物を含む。本発明の1つの態様は、化粧品ファンデーション(化粧品ファンデーションの処方物が、本発明の組成物に加えて、適用範囲をもたらしそして他の望ましい性質を達成する量の追加の濃厚化剤およびエモリエントを含む)に関する。
【0063】
本発明の他の態様はマスカラであり、それは、本発明の組成物を用いそして増大した安定性およびケラチン性表面例えばまつげへの接着を生ずる。本発明の組成物を用いるマスカラは、またより大きな持ちのよさ、改善された耐水性および改善された美容効果をもたらす。
【0064】
本発明のさらなる態様は、日焼け止めローションまたは日焼けブロックのようなローションを含む。本発明の組成物を用いるローションは、増加した剥がれ抵抗性および耐水性をもたらす。組成物を使用するローションは、また大きな持ちのよさをもたらす。
【0065】
本発明の他の態様は、アイライナー製品を含む。本発明の組成物を用いるアイライナーは、増大した安定性およびまぶた組織への接着をもたらす。本発明の組成物を用いるアイライナーは、また大きな耐水性および改善された美容効果をもたらす。
【0066】
他の態様は、軽いテクスチャーを有しそして1日中つけて快適さを維持する均質なフィルムをもたらす本発明の組成物を使用する唇用のメーキャップ組成物である。好ましい唇のメーキャップは、粘着性を有することがないか、またはそれは剥がれ、移動または汚すことがないばかりか、永続し、柔らかく、しなやかで、弾性があり、可撓性でそして皮膚上で快適である。
【0067】
本発明の態様のための包装および適用器具は、当業者の一般的な知識に基づいてかれらによって選ばれそして製造され、そして包装される組成物の性質に従って適合される。さらに、使用されるべき器具のタイプは、特に組成物のコンシステンシーに関連づけられ、特にその粘度に関連づけられ;それは、また組成物に存在する成分の性質例えば揮発性化合物の存在に依存する。
【0068】
さらなる態様では、ケラチン性組織へ耐久性、可撓性、耐油性、耐水性、耐摩耗性、剥がれ抵抗性を伝達する方法は、少なくとも電荷が中性である疎水性の熱可塑性エラストマーフィルム形成剤、粘着性付与樹脂またはその混合物および揮発性溶媒またはその混合物を有する本発明の組成物をケラチン性組織例えば皮膚、髪および爪(これらに限定されない)に適用し;例えば熱、物理的な摩擦によりまたはpHにより局所組成物を活性化し;揮発性溶媒を消失させ;そして組成物がケラチン性組織に適用されるとき、フィルムを形成することにより、耐久性、可撓性、耐油性、耐水性、耐摩耗性および剥がれ抵抗性を伝達するのに有効な量で物理的な架橋を形成することからなる。
【0069】
本明細書で引用されたすべての特許、特許出願、公開されたPCT出願および論文、書籍、参考文献、参考マニュアルおよびアブストラクトの内容は、本発明が関係する技術の状態をさらに十分に記述するために、それらの全体を参考として本明細書に引用する。
【0070】
本発明の範囲および趣旨から離れることなく、上記の主題において、種々の変化が行われることができることから、上述に含まれたまたは請求の範囲に規定されたすべての主題が、本発明の例示として解釈されることを目的とする。本発明の多くの改変および変化は、上記の教示から可能である。
【0071】
(実施例)
以下の実施例は、本発明の範囲内の態様をさらに記述し立証している。実施例は、説明のためにのみ示され、その多くの変化が本発明の趣旨および範囲から離れることなく可能であるので、本発明を制限するものとして考えてはならない。
【実施例1】
【0072】
(口紅組成物プロトタイプ)
表1は、熱可塑性エラストマー組成物に基づく口紅組成物プロトタイプを示す。簡単に、口紅組成物は、イソドデカン中の7%のスチレン−イソブチレン−スチレン(SIBS)を、均質になるまで、105℃で15分間攪拌加熱することにより製造した、混合物をまた徐々に約25℃に冷却する間攪拌した。得られる柔らかいゲル構造物を次に化粧品処方物で典型的に使用される追加の成分を加えることによってプロトタイプを製造するのに使用した。
【0073】
SIBSの予め形成された柔らかいゲルを、7重量%のイソドデカンと混合し、そして約60℃に加熱し、次に均質になるまで顔料およびSylvagumを添加した。混合物を次に一定の攪拌をしつつ徐々に室温に冷却した。
【0074】
【表1】

【実施例2】
【0075】
(口紅組成物の剥がれ抵抗性)
実施例1に記載した口紅組成物の剥がれ抵抗性は、米国特許6074654(その記述は本明細書において参考として引用する)の剥がれ抵抗性テストプロトコールの変法を使用して、市販の口紅製品Lipfinity(商標)(Procter & Gamble,Cincinatti,OH)およびLip polish(商標)(Maybelline,New York,NY)と比較して調べられた。ここで使用されるテストプロトコールは、以下に記述される。
【0076】
(剥がれ抵抗性のテスト法)
この方法は、化粧品フィルムの水および油による剥がれ抵抗性ならびに接着性を調べるのに使用された。このテストは、皮膚と接触する対象物への色の剥がれに抵抗する化粧品フィルムの能力を予測した。このような対象物は、衣類、ハンカチーフまたはティッシュ、ナプキンおよび器具例えばカップ、グラスおよびテーブルウエア並びに油のついた指または油状の食品のような対象物を含む。
【0077】
化粧品組成物により形成されるフィルムは、フィルムの硬さおよび溶媒抵抗性に正比例する度合の剥がれ抵抗性を示す。硬さおよび溶媒抵抗性は、以下に記載される汚れおよび摩擦テストの関数として表される。標準の安全性は、このテストを行うとき観察されるべきである。
【0078】
(用具)(1)ガラス板。(2)コラーゲンソーセージケーシング例えばNippi Casing Fグレード。(3)相対湿度95%に調節した一定湿度チェンバー。(4)万能ナイフ。(5)定規。(6)片面接着テープ。(7)両面接着テープ。(8)厚さ25ミクロンのスロットドローダウンバー。(9)白色Styrofoamディナープレート例えばAmoco Selectables(商標)プラスティックDLテーブルウエア。(10)直径1.5インチの円形金属パンチ。(11)1kgのおもり。(12)植物油。(13)先端がブラッシュの化粧用アプリケーター。(14)リントを含まないタオル例えばKimwipes(商標)EX−L。
【0079】
(方法)(1)少なくとも24時間相対湿度90%のチェンバー中で水和することによりコラーゲンソーセージケーシングの3×4インチのシートを用意した。
(2)コラーゲンシートを取り出して周囲条件におき、そして直ぐにそれをガラス板のまわりに緊密に包んだ。接着テープを使用してガラスにコラーゲンシートを付着させた。コラーゲンの表面は、平らであって皺があってはならなかった。
(3)24時間かけてコラーゲンで覆った面を周囲条件に平衡させた。
(4)コラーゲンの表面に、化粧品処方物の薄い(1ミル)の均一なフィルムを適用した。
(5)コラーゲン上の化粧品サンプルを1時間周囲条件においた。
【0080】
(6)ピペットを使用して、3滴の植物油をフィルムの右面上に落とした。他のピペットを使用して、3滴の水をフィルムの左面上に落とした。
(7)油の部分と水の部分とを別々に、油および水を、化粧用ブラッシュアプリケーターにより、軽くブラシュイングしつつ、フィルムの表面に均一に分布させた。
(8)15分間油および水をフィルムの上に分布させることなく放置した。
(9)リントを含まないタオルを使用して、過剰の油および水を注意深くフィルムの表面から拭き取った。この段階中、可能な限り圧力をかけなかった。
(10)直径1.5インチの円形のパンチを使用して、清潔な白色のStyrofoamディナープレートから2枚の円板を切り取った。
【0081】
(11)段階(10)からの円板を、1kgのおもりの底面に両面接着テープにより一度に1つずつ別々に確実に付着させた。
(12)1番目の円板がフィルムの油の部分と接触し2番目の円板がフィルムの水の部分と接触するように、段階(5)のコラーゲンの表面に適用された化粧品サンプルの表面に、おもりをおいた。1kgを超える過剰の力が適用されないように、おもりを静かに配置することが重要であった。
(13)1kgのおもりの頂部を掴み、フィルムに1kgの力を維持しつつ、円板を注意深く360度回転させた。おもりへの回転運動中おもりを上げたりまたはフィルム中に押しつけたりしてはならなかった。360度の回転は、すべて3秒から5秒の間隔内に完了させた。
(14)おもりをフィルムからまっすぐに持ち上げ、そして円板への損傷をさけつつ、円板を注意深くおもりから取り出した。
(15)個々の円板への色の剥がれは、正および負のベンチマークとして市販の製品と比較して円板の肉眼による評価に基づいた。使用した正のコントロールは、Lipfinity(商標)(ベースコート)であり、一方使用した負のコントロールは、Lip Polish(商標)製品であった。
(16)剥がれの度合を測定するための「星印等級付けシステム」に使用される基準は、表2で説明される。
【0082】
【表2】

【0083】
上記の耐水性および耐油性のテストの結果は、熱可塑性エラストマーを含む実施例1のリップグロス処方物が、正のコントロール(Lipfinity(商標)ベースコート)に等しいかまたはそれより良い耐水性を示したことを明らかにする。しかし、油による剥がれについては、実施例1のリップグロス処方物は、負のコントロール(Lip Polish(商標))より劣るか、等しいかまたは僅かに良かった。注目に値することは、耐水性のテストにおいて、コントロールの製品よりも実施例1の処方物が、Styrofoam円板へ移る顔料が少なかった。処方物のいくつかは、油による剥がれ抵抗性について満足できるベンチマークの最低である負のコントロールよりも油による剥がれ抵抗性を生じる。結果は、表3に示されるように、星印等級付けシステムに基づいて定量化される。
【0084】
【表3】

【実施例3】
【0085】
実施例1のリップグロス処方物の可撓性は、その内容が本明細書において参考として引用される米国特許6074654に記載された可撓性テストプロトコールの変法を使用して調べられた。化粧品フィルムの可撓性は、化粧品の耐久性(永続性)および快適さの両者にとり重要である。
【0086】
可撓性は、ラテックス引張りテストにより測定された。このテストは、通常の日常における皮膚の運動によって、適用後の不十分さのタイプの指標である剥がれに抵抗する着色フィルムの能力を予測する。可撓性ラテックス引張りテストは、ラテックス引張りの前後の重量損失測定に基づく。
【0087】
(用具)
(1)Ansellの工業技術者用の裏のない手袋(長さ12インチ、17ミル)。USDA承認、No.390、サイズ9。(2)Avon Products,Inc.からの斜めのアイシャドウブラッシュ。(3)分析用はかり(少数点以下4位まで)および(4)定規。
【0088】
(方法)
(1)幅1インチのバンドを手袋の手首部分から切り取り、ゴム編みと親指とを避けた。
(2)1×1インチのブロックをバンドの滑らかな面の中心で区別し、浮き出した数字を避けた。
(3)ラテックスのバンドの重量を計りそして重量を記録し、以下Aとした。
(4)20mgの重量の乾燥したフィルムを生成するために、バンドに適用されるべき化粧品の最初の重量を測定した。これは、化粧品に存在する非揮発性物質の重量%で20mgを除することにより決定された。50%の非揮発性含量の化粧品40mgが、20mgの乾燥したフィルムを生成するために、バンドに適用されなければならない。
(5)清潔なアイシャドウブラッシュを使用して、段階(2)でマークしたバンドの1×1インチの領域にわたって、段階(4)で決定された化粧品の量を均一に適用した。
【0089】
(6)ラテックスバンドと適用された化粧品との合計重量を計りそして記録した。ラテックスバンドを有する湿潤フィルムの重量をBとした。
(7)段階(6)からのラテックスバンドのサンプルを24時間周囲室内条件においた。最適なテスト条件は、このテストを、乾燥フィルムに要求される組成物の物理的特性に信頼できるように相関された。それを乾燥することにより、化粧品組成物の揮発性担体の少なくとも90%が蒸発したことを意味する。
(8)ラテックスバンドAと適用された化粧品フィルムとの組み合わせの重量を計り、記録し、以下Cとした。CからAを減じて、乾燥したフィルムの重量Dを得た(D=C−A)。この重量は、20±2mgでなければならない。
(9)マークされたフィルムの長さを1.00インチから1.75インチに変化するように、ラテックスバンドを徐々に引っ張った。
(10)ラテックスバンド上の緩んだフィルム片を認めて、フィルムの表面を清潔なアイシャドウブラッシュで強く拭くことにより、フィルム片をラテックスバンドから取り出した。垂直方向に10回拭き、水平方向に10回拭いた。
【0090】
(11)ラテックスバンドを、ほぼその最初の形状に注意深く戻した。
(12)ラテックスバンド(残った化粧品とともに)の重量を記録し、以下Eとした。
(13)%重量損失(「PWL」)に基づいて「星印等級付けシステム」を使用して、以下の表4においてフィルムの可撓性を等級付けした。
【0091】
【表4】

【0092】
いくつかの非常に可撓性のフィルムについて、%重量損失は、無視できるものである。そのため、いくつかのケースでは、ブラッシュから移る或る量の塵により、PWL値は、負になる(重量増加)。
【0093】
段階(1)−(12)は、テストされたそれぞれの化粧品処方物について3回繰り返された。3つのPWL値の平均を求め、ここで平均%重量損失(「APWL」)とする。低いAPWL値(すなわち0−5%)は、フィルムの望ましい接着と凝集とのバランスを有する可撓性のフィルムに相当した。
【0094】
サンプル間の統計的な差をテストするために、少なくとも20の繰り返された測定を、それぞれのサンプルについて行った。スチューデントTテストを行って、サンプル間に有意差があるかどうかを計算した。実施例1のリップグロス処方物に関する可撓性のテストの結果は、表5に示されるように星印等級付けシステムにより定量化された。
上記の可撓性テストの結果は、熱可塑性エラストマーを含む実施例1のリップグロス処方物が優れた可撓性を示したことを明らかにする。
【0095】
【表5】

【実施例4】
【0096】
(熱可塑性エラストマー組成物)
ポリマーの低溶融域を選択的に溶媒和する溶媒(イソドデカン)によりゲル化された熱可塑性エラストマーの追加の例を、表6および7に示される他の成分により製造した。一般に、高溶融ドメインを溶媒和する溶媒は、高溶融ブロックの1.0(cal/cc)1/2以内でなければならない。この実施例では、高溶融ブロックは、8.9−9.0(cal/cc)1/2の溶解度パラメーターを有するスチレンである(Cosmet. & Toiletries.103:47−69,1988参照)。酢酸ブチルは、8.93の溶解度パラメーターを有する。低溶融域であるポリイソブテンは、7.9−8.0の溶解度パラメーターを有する(Polymer Handbook、4版、J.Brandrup、E.H.Immergut,E.A.Grulke編集、J.Wiley and Sons Inc.NY.1999、pp704)。
【0097】
【表6】

【0098】
【表7】

【実施例5】
【0099】
(シリコーン樹脂を含む熱可塑性エラストマー組成物)
シリコーン樹脂を含むSIBS熱可塑性エラストマーおよび粘着性付与樹脂の混合物を有する組成物の例を、表8および9に示されるように他の成分とともに製造した。これらの処方物は、熱可塑性エラストマーとしてSIBS、溶媒としてイソドデカンそして非シリコーン樹脂の粘着性付与樹脂混合物としてSylvagum(商標)TR90およびKoboguard(商標)5400、そしてシリコーン樹脂としてGE(商標)SR1000(MQ樹脂)およびDow Corning(商標)2−2078Fluid(T樹脂)を有する。
【0100】
【表8】

【0101】
【表9】

【実施例6】
【0102】
(シリコーン樹脂を含む熱可塑性エラストマー組成物の剥がれ抵抗性)
実施例5に記載されたシリコーン樹脂を含む熱可塑性エラストマー組成物の剥がれ抵抗性を、実施例2に記載されたように調べそしてテストした。結果は、表2に示された基準に基づく。水による剥がれ抵抗性および油による剥がれ抵抗性のテストの結果は、シリコーン樹脂を含む熱可塑性エラストマー組成物について表10に示される。これらの処方物のほとんどは、水による剥がれ抵抗性を立証する。粘着性付与樹脂の1つとしてシリコーン樹脂を有する処方物は、油による剥がれ抵抗性を改善するために添加される。
【0103】
【表10】

【0104】
本明細書に引用されたすべての特許、特許出願、発表された論文、アブストラクト、書籍、参考マニュアルおよびアブストラクトは、本発明が関係する技術の状態をさらに十分に記述するために、それらの全体を参考として本明細書に引用する。
【0105】
前記の記述が、本発明の例示に過ぎないことを理解すべきである。種々の代替および改変は、本発明から離れることなく当業者により考えだせるものである。従って、本発明は、請求の範囲の範囲内に入るすべてのこのような代替、改変および変化を包含することを目的とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷が中性である疎水性の熱可塑性エラストマーフィルム形成剤、粘着性付与樹脂またはその混合物および揮発性溶媒またはその混合物からなる組成物であって、ただし該熱可塑性エラストマーフィルム形成剤は、ハードドメインとエラストマードメインとからなり、該組成物は水不溶性であり、そして揮発性溶媒またはその混合物の消失後該熱可塑性エラストマーフィルム形成剤は物理的に架橋していることを特徴とする組成物。
【請求項2】
熱可塑性エラストマーフィルム形成剤がブロックコポリマーである請求項1の組成物。
【請求項3】
ブロックコポリマーが少なくとも2つのブロックを有する請求項1の組成物。
【請求項4】
ブロックポリマーが少なくとも3つのブロックを有する請求項1の組成物。
【請求項5】
熱可塑性エラストマーフィルム形成剤がA−B−Aトリブロックコポリマーである請求項1の組成物。
【請求項6】
A−B−Aトリブロックコポリマーがスチレン−イソブチレン−スチレンである請求項5の組成物。
【請求項7】
ハードドメインが、約40℃以上のTを有し、そしてエラストマードメインが、約25℃より低いTを有する請求項1の組成物。
【請求項8】
ハードドメインが、約50℃より高いTを有し、そしてエラストマードメインが、約10℃より低いTを有する請求項1の組成物。
【請求項9】
ハードドメインが、約60℃以上のTを有し、そしてエラストマードメインが、約0℃より低いTを有する請求項1の組成物。
【請求項10】
ハードドメインとエラストマードメインとのTの差が約50℃である請求項1の組成物。
【請求項11】
ハードドメインおよびエラストマードメインが少なくとも約0.5(cal/cc)1/2の溶解度パラメーターの差を有する請求項1の組成物。
【請求項12】
電荷が中性である疎水性熱可塑性エラストマーフィルム形成剤が、組成物の全重量に基づいて約0.1重量%から約90重量%で存在する請求項1の組成物。
【請求項13】
電荷が中性である疎水性の熱可塑性エラストマーフィルム形成剤が、ポリ(スチレン−b−エラストマー−b−スチレン)ブロックコポリマー、スチレン−シリコーン−スチレンブロックコポリマー、ポリウレタン/エラストマーブロックコポリマー、ポリエステル/エラストマーブロックコポリマー、ポリアミド/エラストマーブロックコポリマー、ポリエテリイミド/ポリシロキサンブロックコポリマー、スチレンコポリマーまたはこれらの任意の組み合わせである請求項1の組成物。
【請求項14】
粘着性付与樹脂が約5℃と約250℃との間の軟化点を有する請求項1の組成物。
【請求項15】
粘着性付与樹脂が、約−60℃と約200℃との間のTを有する請求項1の組成物。
【請求項16】
粘着性付与樹脂の少なくとも1つが、エラストマードメインのそれぞれの約0.2(cal/cc)1/2以内の溶解度パラメーターを有する請求項1の組成物。
【請求項17】
粘着性付与樹脂の少なくとも1つが、ハードドメインのそれぞれの約0.2(cal/cc)1/2以内の溶解度パラメーターを有する請求項1の組成物。
【請求項18】
粘着性付与樹脂またはその混合物が、シリコーン樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン、ポリテルペン、石油のC5およびC9フラクションのオリゴ重合により得られる炭化水素樹脂、クマロン−インデン樹脂、アルファ−メチルスチレンとビニルトルエンとのコポリマーまたはこれらの任意の組み合わせである請求項1の組成物。
【請求項19】
粘着性付与樹脂またはその混合物が第二の粘着性付与樹脂からなる請求項18の組成物。
【請求項20】
第二の粘着性付与樹脂がシリコーン樹脂である請求項19の組成物。
【請求項21】
シリコーン樹脂がMQ樹脂、MT樹脂またはT樹脂である請求項20の組成物。
【請求項22】
第二の粘着性付与樹脂が約−60℃から約250℃のTを有する請求項19の組成物。
【請求項23】
第二の粘着性付与樹脂が約1(cal/cc)1/2以上の溶解度パラメーターを有する請求項19の組成物。
【請求項24】
揮発性溶媒の少なくとも1つが、大気圧で約250℃より低い沸点を有する請求項1の組成物。
【請求項25】
揮発性溶媒またはその混合物が、熱可塑性エラストマーのハードドメインおよびエラストマードメインのそれぞれを選択的に溶媒和する請求項1の組成物。
【請求項26】
揮発性溶媒の少なくとも1つが、エラストマードメインのそれぞれの約0.2(cal/cc)1/2以内の溶解度パラメーターを有する請求項1の組成物。
【請求項27】
揮発性溶媒の少なくとも1つが、ハードドメインのそれぞれの約0.2(cal/cc)1/2以内の溶解度パラメーターを有する請求項1の組成物。
【請求項28】
電荷が中性である疎水性の熱可塑性エラストマーフィルム形成剤が、組成物の全重量の約5重量%以下であり、そして揮発性溶媒またはその混合物がエラストマードメインと相溶性である請求項1の組成物。
【請求項29】
電荷が中性である疎水性の熱可塑性エラストマーフィルム形成剤が、組成物の全重量の約5重量%以上であり、そして揮発性溶媒またはその混合物がハードドメインと相溶性である請求項1の組成物。
【請求項30】
揮発性溶媒が、脂肪族炭化水素、オレフィン性炭化水素、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素、ケトン、アセテート、エーテル、クロロホルム、アルコール、エスエル、シリコーンまたはこれらの組み合わせである請求項1の組成物。
【請求項31】
組成物が、化粧品、医薬品、昆虫忌避剤またはサンスクリーンである請求項1の組成物。
【請求項32】
化粧品が、マスカラ、ネイルエナメル、口紅製品、リップグロス、ファンデーション、アイメーキャップ、スキンケア製品またはパーソナル衛生製品である請求項31の組成物。
【請求項33】
着色剤、サンスクリーン、モイスチャライザー、生物学的に活性な剤、殺虫剤、有機または無機の活性剤である成分をさらに含む請求項1の組成物。
【請求項34】
組成物が液体、ゲル、フォーム、クリーム、ローションまたは半固体である請求項1の組成物。
【請求項35】
組成物が、耐久性、可撓性、耐水性、耐油性、耐摩耗性および剥がれ抵抗性を有する請求項1の組成物。
【請求項36】
a)請求項1の組成物をケラチン性組織に適用し、
b)揮発性溶媒またはその混合物を消失させ、そして
c)物理的に架橋したフィルムを形成し、
それにより、組成物がケラチン性組織に適用されたとき、可撓性、耐水性、耐油性、耐摩耗性および剥がれ抵抗性を付与することからなることを特徴とする耐久性、快適さ、可撓性、耐水性、耐油性、耐摩耗性および剥がれ抵抗性をケラチン性組織に付与する方法。
【請求項37】
a)ケラチン性表面に、
(i)電荷が中性である疎水性の熱可塑性エラストマーフィルム形成剤、
(ii)粘着性付与樹脂またはその混合物および
(iii)揮発性溶媒またはその混合物
からなる組成物を接触させ、ただし熱可塑性エラストマーフィルム形成剤はハードドメインおよびエラストマードメインからなり、
b)組成物から揮発性溶媒またはその混合物を消失させ、そして
c)熱可塑性エラストマーフィルム形成剤中に物理的な架橋を形成し、
それにより可撓性、耐水性、耐油性、耐摩耗性および剥がれ抵抗性を有するフィルムをケラチン性表面に形成することからなることを特徴とするケラチン性表面にフィルムを形成する方法。

【公表番号】特表2009−521549(P2009−521549A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547329(P2008−547329)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/047706
【国際公開番号】WO2007/078825
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(399130393)エイボン プロダクツ インコーポレーテッド (75)
【Fターム(参考)】