説明

組換え乳酸桿菌およびその使用

本発明は、組換え乳酸桿菌、その使用および組換え乳酸桿菌を含む医薬組成物に関する。組換え乳酸桿菌は、異種核酸配列を含む。異種核酸配列は、ダニアレルゲンDer p 1、Der p 2またはBlo t 5の少なくとも免疫原性フラグメント、またはその免疫原性ホモログをコードする。Der p 1のそれぞれのフラグメントは、ダニアレルゲンのアミノ酸配列の少なくとも8%を含む。哺乳動物においてアレルゲンに対する免疫応答を調節する方法ならびに医薬組成物およびキットも開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換え乳酸桿菌およびその使用方法に関する。組換え乳酸桿菌は、ダニアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログをコードする異種核酸配列を含む。本発明はまた、哺乳動物においてアレルゲンに対する免疫応答を調節する方法ならびに医薬組成物およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
先進国では人口の25〜40%がアレルギー疾患に罹患していると考えられ、米国の人口の半数以上が1つまたはそれ以上のアレルゲンに感作している。アレルギーの割合は、特に小児の間で、急速に増加しており、英国では年間約5%の割合で増えつつある。アレルギー性鼻炎(枯草熱)、喘息およびじんま疹などのアレルギー反応は、免疫系応答の過敏性、すなわちそれぞれのアレルゲンに対する免疫系の病的応答である。敏感な人においては、花粉または塵埃などの通常は無害な物質が免疫応答の過剰反応を導くため、アレルゲンであるそれぞれの物質が脅威として認識され、攻撃される。ダニ、特に塵ダニのアレルゲンに対する感受性は、アレルギー性喘息、鼻炎およびアトピー性皮膚炎の発症に寄与する最も重要な因子の1つである。ダニアレルゲンに対するアレルギー反応はまた、くしゃみ、鼻水、眼のかゆみおよび流涙などの枯草熱の症状を引き起こし得る。ダニアレルギーは、衛生上および経済的な影響を伴う複雑な世界的問題となっている。米国における若年者の少なくとも45%およびドイツの一般人口の15%が塵ダニアレルゲンに対してアレルギー性であるが、ダニアレルギーはヒトの「室内」環境に限定されない。感作を誘導し得るはるかに多くのダニ種が見出されており、それらの症状は職業環境において認められる。
【0003】
アレルギー疾患は、免疫グロブリンE(IgE)として知られる抗体型を産生するBリンパ球の能力上昇を特徴とする。IgEが、たとえば喘息において主要な役割を果たすことを示唆する証拠がある。たとえば、IgGおよびIgG4免疫グロブリンのレベルは上昇するがIgEのレベルは上昇しないという、変化した形態で応答する小児または成人は、喘息の危険度が高くない。IgEの合成は、Tヘルパー細胞のサブセットであるCD4とB細胞の間の共作用の結果である。たとえばアトピー性皮膚炎における極めて重要な役割がT細胞によって担われており、2型ヘルパーT細胞(Th2)によって合成されるサイトカインは疾患の病因に有意に寄与する。「アレルギー促進性」Th2細胞と「感染抵抗性」Th1細胞の間のバランスのシフトがアレルギーの発症に関与し得ると主張されてきた。Th1細胞は、インターフェロン(IF)−γ、インターロイキン(IL)−2および腫瘍壊死因子(TNF)−βを生成し、一方Th2細胞は、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10およびIL−13を生成する。アレルギーに対するワクチン設計の現在の治療的および予防的戦略は、Th2エフェクター相を下方調節することができるTh1またはT調節(Tr)細胞の発現を促進することによる免疫調節の回復を対象としている。
【0004】
アレルギーを起こしやすい個人が初めてアレルゲンに曝露されたとき、個人の免疫系は大量の対応IgE抗体を産生する。これらのIgE分子は、マスト細胞(組織中)または好塩基球(循環中)の表面で高親和性Fc受容体(FcεRI)に結合する。その後のアレルゲンへの曝露は、これらのIgE分子へのアレルゲンの結合と架橋を引き起こし、それぞれの、たとえばマスト細胞の刺激を生じさせる。これは、中でも特に、ヒスタミン、およびプロスタグランジンやロイコトリエンなどの新たに形成されたメディエイターの迅速な放出を引き起こす。
【0005】
ヨーロッパとオーストラリアの両方で、ならびに世界中で、室内アレルゲンの供給源として最も重要なダニ種は、Dermatophagoides pteronyssinus(Der p)である。この種の主要アレルゲンは、Der p 1およびDer p 2タンパク質である。熱帯および亜熱帯地域では、最も関係のあるダニ種はBlomia tropicalis(Bt)である。これらの後者の地域では、Der p 1、Der p 2およびBlo t 5に対するダニ多重感作が高度に蔓延している。現在の治療は、症状軽減のためのステロイドの使用と粗ダニ抽出物を使用する免疫療法を含み、どちらも効果とコンプライアンスに関して問題がある。そのようなわけで、改善された有効な治療戦略が一貫して求められている。
【0006】
現在、ダニアレルギーの管理における最も重要な局面は、ダニへの曝露の低減である。これは、家庭内の温度および湿度レベルの低下、高度ろ過掃除機の使用、寝具類の頻繁な洗濯、壁掛け、カーペット、本等のような粉塵を集める傾向のあるものを避けることを含む。現在の治療は、ヒスタミンH受容体拮抗物質、うっ血除去薬、またはそれらの組合せの使用を含む。ヒスタミンH受容体、特にH受容体の拮抗薬および逆作動薬、いわゆる「抗ヒスタミン薬」は、ひとたびアレルゲンがマスト細胞および好塩基球の表面IgEに結合すると、マスト細胞および好塩基球から放出されるヒスタミンの作用を妨げる。しかし、抗ヒスタミン薬は、アレルゲン誘発の前に投与された場合にのみ有効である。
【0007】
うっ血除去薬は、鼻粘膜内層に供給する血管を狭くすることによって鼻粘膜の腫脹を軽減する。それらは、それゆえ、アレルギー反応の基礎となる機構には対処せずに、アレルギー(および風邪)に関連する症状の1つである鼻づまりを緩和する。局所鼻用ステロイドおよびクロモリンナトリウムなどの鼻スプレーも、アレルギー症状を治療するために使用できる。免疫療法(減感作法またはアレルギー注射法としても知られる)は、少量であるが漸増量のアレルゲンの規則正しい間隔での適用である。これは、それぞれのアレルゲンに対する免疫系の寛容性を高めると考えられている。免疫療法は様々な程度に有効と認められた。その有用性は、しかしながら、有害作用、特にアナフィラキシーの潜在的可能性、および入手可能なアレルゲン抽出物の比較的粗な性質によって制限されてきた。これらの問題を克服する試みにおいて、植物および樹木からの天然に生じるアイソフォームのアレルゲンは、アミノ酸の置換または欠失の結果としてIgEによって結合される能力が低いことが示された。
【0008】
加えて、アルルギーの発現に対する乳酸産生細菌の抑制作用が報告された。熱死滅L. paracasi 33およびアシドフィルス菌(L.acidophilus)は、アレルギー性鼻炎の症状を軽減することが認められた(Peng,G−C et al.,Pediatric Allergy and Immunology,(2005),16、433−438;Ishida,Y et al.,J.Dairy Sci.(2005),88,527−533)。L.paracasei GM−080の投与は、精製Der p 5を吸入したマウスにおいてIgEレベルを低下させることが報告された(特許文献1)。L.casei caseiとデキストランの併用適用は、花粉特異的IgE、活性化調節ケモカイン(TARC)およびインターフェロンγ(IFN−γ)レベルの上昇を予防し得るが、L casei casei単独では予防しないことが示唆された(Ogawa,T.et al.,FEMS Immunol.Med.Microbiol.(2006),doi:10.1111/j.l574−695X.2006.00046.x)。ムロオカらは、L.casei K95−5およびL.plantarum NCL21を、アレルゲンDer f 1およびDer f 7をコードするベクターで形質転換した(特許文献2)。Kruisselbrinkら(Clin.Exp.Immunol.[2001],126−128)は、Der p 1の免疫優性T細胞エピトープを発現する組換えL.plantarum 256のC57BL/6マウスへの鼻内投与の作用をさらに検討した。処置マウスにおいて、Th2サイトカインIL−5の減少に加えて、ある程度のTh1特性を有するペプチド特異的T細胞増殖の誘導が認められた。
【特許文献1】米国特許第6994848号明細書
【特許文献2】特開2002−281966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ダニアレルギーの現在の治療は、それゆえ満足できるものではなく、疾患の予防は不可能である。そこで、改善された有効な治療および予防戦略が一貫して求められている。
従って、ダニアレルギーにおいて免疫応答を調節するための適切な手段を提供することが本発明の1つの目的である。この目的は、添付の独立請求項の主題によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様では、本発明は組換え乳酸桿菌を提供する。組換え乳酸桿菌は、異種核酸配列を含む。この核酸配列は、Der p 1、Der p 2およびBlo t 5のいずれかのダニアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメント、またはその免疫原性ホモログをコードする。核酸配列は、それゆえ、ダニアレルゲン全体、またはそのそれぞれの免疫原性ホモログをコードし得る。組換え乳酸桿菌はまた、治療における使用のために提供される。
【0011】
さらなる態様では、本発明は医薬組成物を提供する。医薬組成物は、上述した組換え乳酸桿菌および医薬的に許容される担体または希釈剤を含む。
もう1つの態様では、本発明は医薬キットを提供する。医薬キットは、上述した組成物を含む。医薬キットは、アレルゲンまたはその免疫原性フラグメントをさらに含む。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、哺乳動物においてアレルゲンに対する免疫応答を調節する方法を提供する。前記方法は、上述した組成物を投与することを含む。
さらなる態様では、本発明は、医薬組成物およびアレルゲンに対する免疫応答を調節するための医薬キットの製造における、上述した組換え乳酸桿菌の使用方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、非限定的な実施例および以下のような添付の図面と合わせて考慮するとき、詳細な説明を参照してよりよく理解される。
本発明は組換え乳酸桿菌を提供する。乳酸桿菌は周知のグラム陽性細菌であって、長く細い桿状体から短い球桿菌まで形態的に異なり、しばしば鎖を形成する。本発明の組換え乳酸桿菌はいかなる乳酸桿菌でもよい。現在91種の乳酸桿菌属が知られている。それぞれの乳酸桿菌の例は、いくつか例を挙げると、Lactobacillus casei、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus pentosus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus sporogenes、Lactobacillus brevis、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus hilgardii、Lactobacillus lactis、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus leishmanis、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus sakei、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus cellobiosus、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus caucasicus、およびLactobacillus helveticusを含むが、これらに限定されない。Lactobacillus reuteri、Lactobacillus casei、Lactobacillus plantarumおよびLactobacillus acidophilusなどの多くの乳酸桿菌は、胃腸管でコロニー形成することができ、すなわち「移植可能」であるが、L.delbrueckii bulgaricusおよびL.lactisなどの一部の乳酸桿菌は、一過性で、非移植性細菌叢とみなされている。本発明は、移植可能であるか否かに関わらず、本発明の乳酸桿菌のいずれの菌株にも適用される。使用の都合上(下記参照)、一部の実施形態では移植できる菌株を選択することが望ましい場合がある。
【0014】
それぞれの乳酸桿菌のいかなる亜種および菌株も使用され得る。説明例として、L.casei亜種casei、L.casei亜種paracaseiなどの、L.caseiのいくつかの公知の亜種がある。Lactobacillus caseiの菌株の例は、L.casei KE99株、L.casei CRL 431株、L.casei BL155株、L.casei Shirota株、およびL.casei N19を含む。Lactobacillus rhamnosusの菌株の例は、L.rhamnosus MTCC 1408株、L.rhamnosus HN001株、L.rhamnosus Lcr35株およびL.rhamnosus GG株を含むが、これらに限定されない。Lactobacillus GG(Gorbachi & Goldini)としても知られるL.rhamnosus GGは、最初はL.acidophilusに分類された。L.caseiの菌株として分類することが示唆されてきたが、ユニーク種L.zeaeとして再分類することも提案されている。以下では、L.rhamnosus GGと称する。
【0015】
前記組換え乳酸桿菌は、ダニアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログをコードする異種核酸配列を含む。従って、それぞれの核酸配列はポリペプチドのアミノ酸配列に対応する。それゆえ、異種核酸配列によってコードされるダニアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントは、ポリペプチドを含むか、またはポリペプチドである。アレルゲンに関して「フラグメント」とは、それぞれのアレルゲンのポリペプチド内に存在する何らかのアミノ酸配列を意味する。一部の実施形態では、「フラグメント」という用語は、それぞれの天然に生じるアレルゲン中に存在する糖または糖鎖などの翻訳後修飾の不在を指す。そのような実施形態では、それぞれのアレルゲンフラグメントのアミノ酸配列は、アレルゲンの、変異体を含む何らかの天然に生じる形態の全長であるかまたは完全長配列の一部であるかに関わらず、いかなる長さであってもよい。他の実施形態では、「フラグメント」という用語は、アレルゲンの天然に生じる形態の完全長配列よりも短い、それぞれのアレルゲンのポリペプチド中に存在する何らかのアミノ酸配列を指す。それぞれのアレルゲンの天然に生じる形態は、典型的には前駆体タンパク質から誘導される成熟完全長タンパク質であると理解される。アレルゲンDer p 1の説明例として、DERP1_DERPTと称されるプレプロ酵素はインビボで存在することが知られており、UniProtKB/Swiss−Protアクセッション番号P08176(第二次アクセッション番号Q24616)およびNCBIアクセッション番号AAB60215の前駆体である。この前駆体は320アミノ酸であるが、NCBIアクセッション番号2AS8_Aおよび2AS8_Bの成熟・完全活性アレルゲンDer p 1は222アミノ酸である。ALL2_DERPTと称されるUniProtKB/Swiss−Protアクセッション番号P49278のアレルゲンDer p 2前駆体(Der p II)(DPX)のような、同様の前駆体は他のダニアレルゲンについても公知である。そのような実施形態では、それぞれの天然に生じるアレルゲン中で認められる翻訳後修飾が、あらゆる程度でフラグメント内に存在し得る。
【0016】
一部の実施形態では、本発明の乳酸桿菌に含まれる核酸配列は、それぞれのダニアレルゲンの天然に生じる形態、すなわち成熟完全長タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも8%を含むダニアレルゲンフラグメントをコードする。説明例として、組換え乳酸桿菌は、ダニアレルゲンDer p 1の少なくとも免疫原性フラグメント(または、そのそれぞれの免疫原性ホモログ)をコードする異種核酸配列を含み得る。フラグメントは、この場合、Der p 1のアミノ酸配列の少なくとも8%を含み得る。これらの実施形態の一部では、そのようなフラグメントは、それゆえ、天然に存在するダニアレルゲンの全長アミノ酸配列の8〜100%、たとえば10〜100%、たとえば15〜100%、たとえば25〜100%に相当するアミノ酸配列のあらゆる一つまたは複数の部分を含み得る。一部の実施形態では、そのようなフラグメントは、それゆえ、天然に存在するダニアレルゲンのアミノ酸配列のそれぞれの部分の免疫原性ホモログ(下記参照)である部分を含み得る。
【0017】
「異種」という用語は、核酸配列または分子に関して使用される場合、その中に核酸分子が導入されている(または導入されつつある)それぞれの桿菌または細胞において、天然では生じない核酸配列を意味する。異種核酸配列は、それゆえそれぞれの桿菌または細胞以外の供給源に由来し、天然または非天然に生じ得る。それぞれの異種核酸配列は、たとえば乳酸桿菌の染色体に、またはベクター(同じく下記参照)またはRNA分子などの、乳酸桿菌中に存在する何らかの他の核酸分子に組み込まれ得る。
【0018】
ダニアレルゲンは、それらの生化学的組成物、配列相同性および分子量に基づいて特定の群に分類される。特性決定されたアレルゲンについての表示は、属の最初の3文字、種名の最初の文字、および最後の数字である。最後の数字は、アレルゲンが単離された順序または相同な他の既に特性決定されたアレルゲンについての数を表わす。本発明の乳酸桿菌に含まれる異種核酸配列により、ダニアレルゲンのフラグメントとして、またはそれぞれの免疫原性ホモログの形態で完全にコードされるダニアレルゲンは、典型的にはDer p 1、Der p 2およびBlo t 5である。説明例として、組換え乳酸桿菌はLactobacillus caseiであり得、その中に含まれる異種核酸配列は、ダニアレルゲンDer p 2をコードし得る。
【0019】
既に上述したように、本発明の組換え乳酸桿菌に含まれる異種核酸配列は、ダニアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメント、またはその免疫原性ホモログをコードする。ここで使用する「アレルゲン」という用語は、個人または動物においてアレルギーを誘発することができる分子を指す。既に上述したように、アレルゲンは、免疫応答を誘導するため、すなわち抗体を産生するためまたはアレルゲンを直接攻撃するために、リンパ球を刺激することができる。従って、アレルゲンは免疫系によって認識される抗原であり、アレルギー反応を引き起こし得る。そのようなアレルギー反応は、摂取、たとえば摂食または飲用のようなアレルゲンとの何らかの形態の直接接触、吸入、またはたとえば皮膚を通しての直接接触によって引き起こされ得る。典型的には、アレルゲンを含む抗原は、タンパク質などのポリペプチドまたは多糖である。本発明に関して、抗原という用語は、糖または脂質などのあらゆる修飾を含み得る、あらゆるポリペプチドを指す。また、ハプテンとして知られる短いペプチドを指し、ハプテンは、一般的にハプテンより大きなサイズの担体分子、たとえばタンパク質、または細胞に結合している。
【0020】
ここで使用する「免疫原性」という用語は、免疫応答を惹起する物質の能力、すなわち免疫学的に活性であることを指す。従って、アレルゲンのフラグメントに関して使用されるとき、それぞれのフラグメントは、一部の実施形態では、たとえば個人または動物に投与されたとき、それ自体で免疫応答を生じさせ得る。しかし、アレルゲンの免疫原性フラグメントは、それ自体で免疫応答を惹起する能力を有している必要はないことに留意すべきである。免疫学的に活性であるその能力は、一部の実施形態では、むしろフラグメントが付加的な物質に結合していることに依存し得る。一部の実施形態では、付加的な物質へのこの結合は、たとえばインビボで、たとえばタンパク質に結合することによって起こり得る。それゆえ一部の実施形態では、アレルゲンの免疫原性フラグメントはハプテンを含んでいるか、またはハプテンであり、その免疫原性特性を発揮するために担体分子または細胞に結合することを必要とする。アレルゲンの免疫原性フラグメントが異種核酸配列内に含まれる場合は、それゆえ、得られる(インビトロ、エクスビボまたはインビボで転写され、翻訳された)ペプチドが、それ自体でまたは付加的な物質に結合したとき、免疫応答を惹起することができる限り、いかなる配列長または大きさであってもよい。典型的な実施形態では、ダニアレルゲンまたはそのフラグメントは、少なくとも1つのIgE抗体に結合することができる。それぞれの抗体は、たとえば塵ダニなどのダニに対してアレルギー性または敏感である個人または動物の抗体であり得る。一般に、アレルゲンのそれぞれのフラグメントは少なくとも1つのエピトープを含む。しかしながら、一部の実施形態では、アレルゲンの2つまたはそれ以上のフラグメントが、たとえば同じ担体分子に結合したとき、それぞれのエピトープを得るために結合される必要があるかもしれない。抗原決定基とも称されるエピトープは、抗体の抗原結合部位またはT細胞受容体によって認識され、結合され得る抗原分子(この場合はアレルゲン分子)の一部である。種々の抗体およびT細胞受容体は、抗原の種々のエピトープに結合する。たとえばDer p 2の2つのエピトープについて、アレルギー性鼻炎を有する日本人患者からのT細胞がそれらに結合できることが知られており、2つのさらなるエピトープは、同じ患者からのTヘルパー細胞によって結合されることが知られている。
【0021】
ここで使用する「免疫原性ホモログ」という用語は、ダニアレルゲンまたはその免疫原性フラグメントに関して使用するとき、それぞれの天然に存在するダニ抗原と高い相同性を有し、対応する天然に存在するダニ抗原に対して活性である少なくとも1つの抗体またはT細胞受容体によって特異的に認識され、結合され得るポリペプチドを意味する。典型的な実施形態では、そのようなフラグメントは、天然に存在するダニ抗原(その免疫原性フラグメントを含む)の対応するアミノ酸配列と少なくとも60%の配列同一性を有し得る。一部の実施形態では、それぞれのフラグメントは、天然に存在するダニ抗原の対応するアミノ酸配列と少なくとも80%、たとえば少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有する。「配列同一性」とは、配列の類似性または関連性を測る配列の性質を意味する。この用語は、あるアミノ酸配列または核酸配列の公知のダニ抗原について、それぞれ当該アミノ酸配列または核酸配列のホモロジーアラインメント後に得られるペアワイズ同一残基のパーセンテージを指し、パーセンテージの数字は2つの配列のうち長い方の配列内の残基の数を表わす。
【0022】
また、上記核酸配列に実質的に相補的な核酸配列も本発明に包含される。ここで使用する「実質的に相補的な」とは、所定の核酸配列が、もう別の核酸配列に対して少なくとも90%、たとえば少なくとも95%、一部の実施形態では100%相補的であるという事実を指す。「相補的な」または「相補体」という用語は、互いに多数の好ましい相互作用を形成し得る2つのヌクレオチドを指す。そのような好ましい相互作用は、ワトソン−クリックの塩基対合を含む。あるヌクレオチド配列は、第1の配列のヌクレオチド全部が第2の配列のヌクレオチド全部に相補的である場合、別のヌクレオチド配列の相補体である。
【0023】
一部の実施形態では、組換え乳酸桿菌はさらに、ダニアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはそのそれぞれの免疫原性ホモログを発現することができる。そのような実施形態では、アレルゲン、そのフラグメントまたは免疫原性ホモログをコードするそれぞれの配列は、宿主細胞において転写を開始させるのに有効なプロモーターに、作動可能に連結され得る。組換え核酸はまた、細胞において機能性の転写開始領域、キナーゼポリペプチドをコードするRNA配列に相補的な配列および細胞において機能性の転写終結領域を含み得る。1つの実施形態では、組換え乳酸桿菌は、ダニアレルゲン、そのフラグメントまたはそれぞれの免疫原性ホモログを発現する。
【0024】
組換え乳酸桿菌は、天然に生じる乳酸桿菌に異種核酸配列を導入することにより、天然に生じる乳酸桿菌から得られる。説明例として、ダニアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログをコードする配列が、異種ポリヌクレオチドなどの異種核酸分子内に含まれてもよい。本発明のアレルゲンをコードする核酸分子および作動可能に連結されたプロモーターは、非複製性DNAまたはRNA分子として乳酸桿菌に導入されてもよく、それらは線状分子または閉じた共有結合環状分子のいずれかであり得る。説明例として、DNA分子は乳酸桿菌の染色体に安定に組み込まれ得る。所望の遺伝子配列を乳酸桿菌染色体に組み込むことができるベクターを使用してもよい。説明例として、L−乳酸デヒドロゲナーゼの遺伝子を、D−乳酸デヒドロゲナーゼの遺伝子を置換することによって、Lactobacillus delbrueckiiの染色体に組み込むためのプラスミドpAMβ1の使用が米国特許第5747310号明細書に開示されている。所望の場合、導入されたDNAをその染色体内に安定に組み込んだ乳酸桿菌は、発現ベクターを含む宿主細胞の選択を可能にする1つまたはそれ以上のマーカーをさらに導入することによって選択され得る。
【0025】
ここで使用する「核酸分子」という用語は、一本鎖、二本鎖またはそれらの組合せなどの、何らかの可能な立体配置の何らかの核酸を指す。核酸は、たとえばDNA分子(たとえばcDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(たとえばmRNA)、ヌクレオチド類似体を使用してまたは核酸化学を使用して生成されるDNAまたはRNAの類似体、およびPNA(タンパク質核酸)を含む。DNAまたはRNAは、ゲノム起源または合成起源であり得、一本鎖または二本鎖であり得る。本発明において、必ずしも必要ではないが、RNAまたはDNA分子は概ね組換え乳酸桿菌内に含まれる。そのような核酸分子は、たとえばmRNA、cRNA、合成RNA、ゲノムDNA、cDNA合成DNA、DNA及びRNAのコポリマー、オリゴヌクレオチド等であり得る。それぞれの核酸分子はさらに、非天然ヌクレオチド類似体を含み得、かつ/またはアフィニティータグまたは標識に連結され得る(上記参照)。
【0026】
多くのヌクレオチド類似体が公知であり、本発明の乳酸桿菌に含まれる核酸配列内に存在し得る。ヌクレオチド類似体は、たとえば塩基、糖またはリン酸部分に修飾を含むヌクレオチドである。説明例として、2’F、2’O−Meまたは2’H残基によるsiRNAの2’OH残基の置換は、それぞれのRNAのインビボでの安定性を改善することが知られている。塩基部分の修飾は、A、C、GおよびT/Uの天然および合成修飾、ウラシル−5−イル、ヒポキサンチン−9−イルおよび2−アミノアデニン−9−イルなどの種々のプリンまたはピリミジン塩基、ならびに非プリンまたは非ピリミジンヌクレオチド塩基を含む。他のヌクレオチド類似体はユニバーサル塩基として働く。ユニバーサル塩基は、3−ニトロピロールおよび5−ニトロインドールを含む。ユニバーサル塩基は、いかなる他の塩基とも塩基対を形成することができる。塩基修飾はしばしば、たとえば二本鎖の高い安定性などの独自の性質を達成するために、たとえば2’−O−メトキシエチルなどの糖修飾と組み合わされ得る。
【0027】
一部の実施形態では、異種核酸は、乳酸桿菌染色体に組み込まれない異種核酸分子、たとえばプラスミドまたはベクターに含まれ得る。従って、この場合組換え乳酸桿菌は、その染色体に加えて異種核酸分子を含む。それぞれのベクターは、プロモーター、エンハンサー、サイレンサーまたはターミネーター配列などの、1つまたはそれ以上の調節配列を含み得る。そのような調節配列は、ベクターの複製またはコードされる配列の転写および/または翻訳を促進するなどの制御を行い得る。それぞれのベクターの説明例は、発現ベクターである。一部の実施形態では、アレルゲンは誘導的プロモーターの制御下にあり得る。説明例として、抗菌ペプチド、ナイシンによって制御される発現系がLactobacillus plantarumにおいて使用された(Pavan,S.et al.,Applied and Environmental Microbiology(2000)66,4427−4432)。他の実施形態では、アレルゲンは構成的に活性な方法で発現され得る。説明例として、Lactobacillus johnsoniiにおける、Lactobacillus delbrueckei bulgaricusのPrtBプロモーターの制御下でのプロテイナーゼPrtBと破傷風毒素ミモトープの融合タンパク質の構成的発現が、Schepplerら(Vaccine[2002]20,2913−2920)によって開示された。
【0028】
「ベクター」という用語は、細胞に導入されて、たとえばトランスフェクションされて、細胞ゲノム内でまたは細胞ゲノムとは独立して複製され得る一本鎖または二本鎖環状核酸分子に関する。環状二本鎖核酸分子は、制限酵素での処理後に切断され、それによって線形化され得る。各種の核酸ベクター、制限酵素、および制限酵素によって切断されるヌクレオチド配列の知識は、当業者に容易に入手可能である。アレルゲンまたはそのフラグメントをコードする核酸分子は、ベクターを制限酵素で切断し、2つの断片を連結することによってベクターに挿入され得る。数多くのベクターが、たとえば乳酸産生細菌に由来する潜在プラスミドに基づいて開発された(概説についてはShareck et al.,Critical Reviews in Biotechnology(2004),24, 155−208参照)。潜在プラスミドは、それらの複製機能以外には、見かけ上の機能を持たない、すなわち認識できる表現型をコードしない染色体外DNAエレメントである。σ複製およびθ複製プラスミドは、乳酸産生細菌における最も一般的なプラスミドである。
【0029】
Lactobacillus plantarumに由来する潜在プラスミドの例は、pcaT、pAl、pLP1、p 8014−1、pC30il、pLB4、pLP2000、pLP9000、pLKL、pLKSおよびpMD5057を含むが、これらに限定されない。Lactobacillus fermentumに由来するベクターの例は、pLY2、pLY4、pLEM3、pLF1311およびpKC5bを含むが、これらに限定されない。Lactobacillus acidophilusに由来する潜在プラスミドの例は、p1、p3、pPM4、pLA103、pLA105およびpLJ106を含むが、これらに限定されない。他の乳酸桿菌属種からの数多くのさらなる潜在プラスミドが当技術分野において公知である(たとえば、上記Shareck et al.を参照)。上記プラスミドのいずれもが、本発明による乳酸桿菌を得るための、発現ベクターを含むベクターを作製するために使用され得る。Lactobacillus plantarumに由来する潜在プラスミドの例は、ほんの数例を挙げると、pcaT、pA1、pULP8、pULP9、pLP825、pLP82H、pLPC37、pPSC1、pPSC11、pPSC22、pLPV106、pLPIII、pLEM5、pLEM7およびpLFVM2を含むが、これらに限定されない。Lactobacillus fermentumに由来する潜在プラスミドの例は、pLY2、pLY4、pLEM5、pLEM7、pLFVM2およびpSP1を含むが、これらに限定されない。
【0030】
たとえば上記例の1つのような潜在プラスミドは、たとえば本発明の組換え乳酸桿菌を得るために使用できるシャトルベクターの構築に役立ち得る。説明例として、Lactobacillus caseiから単離される潜在プラスミドpLC494は、単離プラスミドpLC494と単離C.perfringens/大腸菌プラスミドpJIR418を使用する遺伝子操作技術によって乳酸桿菌/大腸菌シャトルベクター(pJLE4941)を構築するために使用された(An,H−Y,Miyamoto,T.,Plasmid(2006)55,128−134)。それぞれのシャトルベクターは、それぞれの宿主種、すなわち大腸菌と乳酸桿菌の両方で複製し得る。乳酸桿菌/大腸菌シャトルベクターのもう1つの説明例は、L.delbrueckii bulgaricusプラスミドpLB10と大腸菌プラスミドpBR328から構築されるプラスミドpLE16である。潜在プラスミドに由来する発現ベクターの2つのさらなる説明例は、2つのさらなる乳酸桿菌/大腸菌シャトルベクター、pLP400およびpLP500である。さらにもう1つの例として、大腸菌発現ベクターpLF22は、Lactobacillus fermentumからの潜在プラスミドpLF1311のレプリコンを含めることによって乳酸桿菌における使用方法に適合された。
【0031】
本発明による組換え乳酸桿菌を得ることの説明例として、ダニアレルゲン遺伝子Der p 2を遺伝子操作して、pL500乳酸桿菌/大腸菌シャトルベクター(図1および以下の実施例参照)または対応するベクターpL400にクローニングすることができる。pLP400およびpLP500シャトルベクターは乳酸桿菌DNA配列に由来する発現シグナルおよび複製エレメントを含む。Der p 2遺伝子を担持するこれらの組換えベクターpLP400およびpLP500を乳酸桿菌に導入することができる。形質転換、トランスフェクション、注入または電気穿孔法などの、核酸を桿菌に導入する様々な方法が当業者に公知である。それぞれのベクターを、たとえば、L.casei Shirota(Lc)またはL.rhamnosus gg(L.gg)などの乳酸桿菌に電気穿孔し得る。図5は、ウエスタン免疫ブロット法による、電気穿孔後のこれらの2つの菌株におけるDer p 2の細胞内発現の検出を示す(図5)。
【0032】
もう1つの説明例として、プラスミドpSIP300から得られるベクターである乳酸桿菌発現ベクターpSIP308、またはプラスミドpSIP401から得られるベクターである乳酸桿菌発現ベクターpSIP412を同様に遺伝子操作して、乳酸桿菌に導入し得る(図3および図4参照)。Sφrvigら(Microbiology(2005)151,2439−2449)は、最近、これらおよび他の関連発現ベクターの作製ならびにL.plantarumおよびL.sakeiにおけるそれらの使用を開示した。当業者は、たとえばL.caseiまたはL.fermentumなどの他の乳酸桿菌に関してこれらのベクターを使用するためには多少の修飾が必要であり得るという事実を認識する。
【0033】
典型的には、ダニアレルゲンはDer p 1、Der p 2またはBlo t 5 である(下記も参照)。アレルゲンDer p 1は、たとえばNCBIアクセッション番号U11695の1099塩基対配列によってコードされ得る。また、NCBIアクセッション番号AY947536の650塩基対配列またはNCBIアクセッション番号AF276239の591塩基対配列であるか、またはそれらを含む配列によってもコードされ得る。
【0034】
ダニアレルゲンがDer p 2である一部の実施形態では、このアレルゲンは配列番号1(図35参照)の配列によってコードされる。ダニアレルゲンがBlo t 5である一部の実施形態では、このアレルゲンは、NCBIアクセッション番号U59102の537塩基対配列であるかまたはそれを含む配列によってコードされる。ダニアレルゲンがBlo t 5である一部の実施形態では、ダニアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントは、配列番号2(図34参照)の配列によってコードされる。配列番号2の配列は、UniProtKB/Swiss−Protアクセッション番号O96870(第二次アクセッション番号Q17283;NCBIアクセッション番号O96870およびAAD10850に対応する)の134アミノ酸配列のうちの117アミノ酸のC末端フラグメントをコードする。1つの個別の実施形態では、異種核酸は、それぞれ配列番号1または配列番号2の配列を含む。他の実施形態では、異種核酸は、配列番号1または配列番号2の機能的等価物を含む。遺伝暗号の縮重は、同じアミノ酸を規定する他のコドンによる一定のコドンの置換を許容し、それゆえ同じタンパク質を生じさせる。メチオニンおよびトリプトファンを除き、公知のアミノ酸は2以上のコドンによってコードされ得るので、核酸配列は実質的に異なり得る。それゆえ、配列番号1または配列番号2の核酸配列から得られる部分または全長アミノ酸配列は、配列番号1または配列番号2に示されるものとはかなり異なる核酸配列によって転写され得る。それにもかかわらず、そのコードされるアミノ酸配列は保存される。
【0035】
加えて、核酸配列は、配列番号1および配列番号2の核酸配列の5’末端および/または3’末端への少なくとも1個のヌクレオチドの付加、欠失または置換から生じるヌクレオチド配列、またはその誘導体を含み得る。この点において、いかなるヌクレオチドまたはポリヌクレオチドも、その付加、欠失または置換がそれぞれの転写されたポリペプチドの免疫原性を排除しないことを条件に使用され得る。説明例として、ダニアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログをコードする核酸分子は、必要に応じて、その5’末端および/または3’末端に付加された制限エンドヌクレアーゼ認識部位を有し得る。
【0036】
一部の実施形態では、ダニアレルゲンはDer p 2であり、異種核酸配列はDer p 2の免疫原性ホモログをコードする。この異種核酸配列は、たとえば配列番号1の核酸配列(上記参照)に少なくとも80%同一の核酸配列を有し得る。これらの実施形態の一部では、異種核酸配列は、配列番号1の核酸配列に少なくとも90%同一の、たとえば少なくとも95%同一の核酸配列を有し得る。同様に、一部の実施形態では、ダニアレルゲンはBlo t 5であり、異種核酸配列はBlo t 5の免疫原性ホモログをコードする。この異種核酸配列は、たとえば配列番号2の核酸配列に少なくとも80%同一の核酸配列を有し得る。これらの実施形態の一部では、異種核酸配列は、配列番号2の核酸配列に少なくとも90%同一の、たとえば少なくとも95%同一の核酸配列を有し得る。
【0037】
本発明はまた、治療における使用のための上述した組換え乳酸桿菌を特徴とする。それぞれの治療の説明例は、以下で詳述するようなアレルゲンに対する免疫応答の調節である。治療における使用のための実施形態では、組換え乳酸桿菌は、生物、たとえばヒトなどの哺乳動物に投与されるのに適した形態で提供される。説明例として、組換え乳酸桿菌は食品に含まれて提供され得る。組換え乳酸桿菌を含む食品のそれぞれの形態の例は、ヨーグルト、ザワークラウト、ピクルス、キムチ、チーズ、バターミルクサワードウパンおよび貯蔵牧草を含むが、これらに限定されない。
【0038】
投与に適する各形態のさらなる例は医薬組成物である。本発明による医薬組成物は、上述した組換え乳酸桿菌を含む。組換え乳酸桿菌はいかなる活性状態であってもよい。組換え乳酸桿菌は、たとえば生菌であり、完全に活性で代謝性および複製性であり得る(図25および図26参照)。さらなる例として、組換え乳酸桿菌は、たとえば熱処理によって、少なくともある程度まで、不活性化されていてもよい。熱不活性化は、たとえば非耐熱性補体タンパク質を破壊するために望ましいと考えられる。一部の実施形態では、組換え乳酸桿菌は死菌であり得る。これらの実施形態の一部では、組換え乳酸桿菌は、生菌であるか死菌であるかにかかわらず、無傷であり得る。他の実施形態では、組換え乳酸桿菌は崩壊しつつあるかまたは崩壊していてもよい。組換え乳酸桿菌の構造は、たとえば、あらゆる程度の細胞デブリの存在を含めて、部分的にまたは完全に崩壊していてもよい。
【0039】
一部の実施形態では、医薬組成物は組換え乳酸桿菌の治療有効量を含有する。ここで使用するとき、「治療有効量」という語句は、必要な用量および期間で、所望の治療結果を達成する組換え乳酸桿菌の量を指す。治療有効量は、たとえば、投与されたときに、治療中のアレルギー状態の症状の1またはそれ以上を完全にまたは少なくともある程度まで軽減または緩和し得る。組換え乳酸桿菌の正確な治療有効量は、治療される被験者の疾患状態、年齢、性別および体重、それぞれのアレルゲンに対する被験者の敏感度、およびアレルギーの重症度、製剤の性質、および投与経路を含むがこれらに限定されない多くの因子に依存し、最終的には主治医または獣医の裁量である。用量レジメンは、最適治療応答を与えるように調節され得る。典型的には、組換え乳酸桿菌は、約10〜約1011CFU(コロニー形成単位)/受容者(動物)/日の範囲内、たとえば約5×1010CFU/日の範囲内で治療のために投与される。許容される1日用量は、たとえば約10CFU〜約1011CFU/受容者(動物)/日、特に約5×1010CFU〜約5×1011CFU/日であり得る。種々の量の医薬組成物が投与の有効量を達成するために投与され得ること、または適合された相対量の乳酸桿菌を含む医薬組成物が投与のために使用され得ることが理解される。説明例として、医薬組成物は、投与されたとき治療有効量として組換え乳酸桿菌の約5×1010CFU〜約5×1011CFUの1日用量を達成するために適切な範囲内の量を含有し得る。
【0040】
一部の実施形態では、医薬組成物は組換え乳酸桿菌の予防有効量を含有する。ここで使用するとき、「予防有効量」という語句は、必要な用量と期間で、投与されたときに、治療中のアレルギー状態の症状の1つまたはそれ以上を完全にまたは少なくともある程度まで予防するなどの、所望予防結果を達成する組換え乳酸桿菌の量を指す。予防有効量は、治療有効量に関して上述したように決定され得る。特定被験者に関して、詳細な用量レジメンは、個別の必要性および組成物を投与するまたは投与を監視する人の専門的判断に従って経時的に調節され得る。予防のために、組換え乳酸桿菌は、たとえば約10〜約1010CFU/受容者(動物)/日の範囲内、たとえば5×10CFU/日の範囲内で投与され得る。説明例として、医薬組成物は、投与されたとき、予防有効量として組換え乳酸桿菌の約10CFU〜約1010CFUの1日用量を達成するために適切な範囲内の量を含有し得る。
【0041】
医薬組成物は、医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤をさらに含有する。組換え乳酸桿菌の免疫調節活性を排除しないいかなる担体または希釈剤も使用され得る。所望の場合は、組換え乳酸桿菌の免疫調節活性に全く影響を及ぼさない担体または希釈剤を選択し得る。担体は、たとえば水(たとえば生理食塩水、カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液またはポリビニルピロリドン水溶液など)、エタノール、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなどのポリオル、それらの適切な混合物および植物油を含む溶媒または分散媒質であり得る。適切な担体の説明例はリポソームである。適切な賦形剤の例は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップおよびメチルセルロースを含むが、これらに限定されない。医薬組成物は、たとえば潤滑剤(滑石、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱物油など)、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、安息香酸メチルおよびヒドロキシ安息香酸プロピルなどの防腐剤、甘味料および香味料を付加的に含み得る。安定剤も医薬組成物に含まれ得る。適切な安定剤の例は、アルカリ金属リン酸水素塩、グルタミン酸塩、血清アルブミン、ゼラチンまたはカゼインを含むが、これらに限定されない。アジュバント、たとえばヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデシルアミノ酸エステル、リゾレシチン、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、メトキシヘキサデシルグリセロール、およびプルロニックポリオル、ピランなどのポリアミン、デキストラン硫酸、ポリIC、カルボポールなどの界面活性物質;ムラミルジペプチドなどのペプチド、ジメチルグリシン、タフトシン、油性乳剤、および水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムなどの無機ゲルも、医薬組成物に含まれ得る。アジュバントは、たとえばミョウバンまたは植物油、モノオレイン酸イソマンニドおよびモノステアリン酸アルミニウムを含む組成物であり得る。アジュバントのさらなる例は、生体適合性マトリックス材料の微粒子またはビーズを含む。医薬組成物は、抗菌薬および抗真菌薬、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸またはチメロサールなどの防腐剤をさらに含有し得る。
【0042】
医薬組成物は、たとえば錠剤または丸剤などの固体形態または液体形態であり得る。液体形態の説明例として、経口または注射による投与のための組換え乳酸桿菌を含む組成物は、水溶液、適切に風味づけられたシロップ、水性または油性懸濁液、もしくはゴマ油、ヤシ油、綿実油または落花生油などの食用油による着香乳剤、またはエリキシルであり得る。
【0043】
一部の実施形態では、医薬組成物は、コルチコステロイド、抗ヒスタミン薬、ロイコトリエン修飾剤、マスト細胞脱顆粒阻害剤(マスト細胞安定剤)、うっ血除去薬およびβ2アドレナリン受容体作動薬の少なくとも1つをさらに含む。
【0044】
コルチコステロイドは、一般にアレルギー性炎症を軽減または除去することができる。本発明の医薬組成物中にコルチコステロイドを含めることは、たとえば喘息における気道リモデリングの予防および正常な肺機能の達成を目標とし得る。適切なコルチコステロイドの例は、コルチソル、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、コルチコステロン、デキサメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、クロベタゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニカルベート、フルメタゾン、フルオシノロン、モメタゾン、ベタメタゾン、フルオコルトロン、フルオシノロン、アムシノイド、フルオシノイド、ハルシノイド、フルチカゾンおよびトリアムシノロンを含むが、これらに限定されない。
【0045】
−抗ヒスタミン薬、H−抗ヒスタミン薬またはH−抗ヒスタミン薬などの抗ヒスタミン薬は、ヒスタミン受容体に結合することによってヒスタミンの作用をブロックすることができる分子である。典型的には、ヒスタミンは、免疫応答の間に、たとえばマスト細胞から放出される。たとえばH−抗ヒスタミン薬、シメチジンおよびチオチジンなどの一部の分子は、逆作動薬(H受容体において)であることが認められた。しかし大部分の抗ヒスタミン薬は、現在のところ受容体拮抗物質であると考えられている。H−抗ヒスタミン薬の例は、メピラミン(ピリラミン)またはアンタゾリンなどのエチレンジアミン、ジフェンヒドラミン、カルビノキサミン、ドキシラミン、クレマスチンまたはジメンヒドリネートなどのエタノールアミン、フェニラミン、クロルフェナミン(クロルフェニラミン)、デクスクロルフェナミン、ブロムフェニラミンまたはトリプロリジンなどのアルキルアミン、シクリジン、ヒドロキシジンまたはメクリジンなどのピペラジン、およびプロメタジン、アリメマジン(トリメプラジン)、シプロヘプタジン、アザタジンまたはロラタジンなどの三環式H−抗ヒスタミン薬を含むが、これらに限定されない。H−抗ヒスタミン薬のさらなる例は、ジメチンデン、アクリバスチン、アステミゾール、セチリジン、レボセチリジン、ロラタジン、ミゾラスチン、テルフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン、フェキソフェナジン、アゼラスチン、レボカバスチンおよびオロパタジンを含むが、これらに限定されない。
【0046】
−抗ヒスタミン薬の例は、シメチジン、チオチジン、ラフチジン、ファモチジンおよびラニチジンを含む。H受容体拮抗物質と考えられるH−抗ヒスタミン薬の説明例は、チオペラミドである。
【0047】
ロイコトリエンは、アレルギー反応および炎症刺激物質に応答する組織中の血液炎症細胞によって放出される分子である。ロイコトリエン修飾剤(抗ロイコトリエン薬とも呼ばれる)は、それらの生合成またはそれぞれの受容体に干渉することによってロイコトリエンの作用を軽減する。ロイコトリエン修飾剤は気管支拡張作用および抗炎症作用を有する。適切なロイコトリエン受容体拮抗物質の例は、モンテルカストおよびザフィルルカストを含むが、これらに限定されない。ロイコトリエン生合成に干渉するロイコトリエン修飾剤の説明例は、リポキシゲナーゼ阻害剤、ジロイトンである。
【0048】
マスト細胞脱顆粒阻害剤は、マスト細胞からのヒスタミンおよび他のメディエイターの放出をブロックする。適切なマスト細胞阻害剤の2つの説明例は、クロモリンおよびネドクロミルである。
【0049】
うっ血除去薬(前出)の説明例は、たとえばカフェイン、テオフィリン、テオブロミン、アミノフィリン、ドキソフィリン、ペントキシフィリンなどのメチルキサンチン誘導体である。さらなる2つの説明例は、エフェドリンと偽エフェドリンである。
【0050】
β2アドレナリン受容体作動薬は強力な気管支拡張薬である。それらは喘息の治療において特に有用である。β2アドレナリン受容体作動薬の例は、テルブタリン、オルシプレナリン、ソプレナリン、フェノテロール、サルブタモールおよびホルモテロールを含むが、これらに限定されない。
【0051】
一部の実施形態では、医薬組成物は、以下でさらに詳述するように、アレルゲン、各々の免疫原性ホモログを含む、アレルゲンの免疫原性フラグメントをさらに含有する。それぞれのアレルゲンは、たとえば昆虫アレルゲン、ダニアレルゲン(貯蔵庫ダニアレルゲンを含む塵ダニアレルゲンなど)、植物アレルゲン、またはヒトを含む哺乳動物においてアレルギー反応を引き起こす何らかの他の化合物であり得る。一部の実施形態では、アレルゲンは、組換え乳酸桿菌の異種核酸配列によってコードされるダニアレルゲンと交差反応性である。典型的には、そのような交差反応性アレルゲンは、たとえば乳酸桿菌によって発現される、組換え乳酸桿菌に含まれるそれぞれの配列によってコードされるダニアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログと共通の少なくとも1つのエピトープを含む(下記も参照)。説明例として、ゴキブリアレルゲン、セイヨウシミ(Lepisma saccharina)およびユスリカアレルゲン、エビアレルゲンおよびカタツムリアレルゲンなどの、他の無脊椎動物の多くのアレルゲンがダニアレルゲンと交差反応性であることが知られている。
【0052】
本発明はさらに、上述した医薬組成物を含む医薬キットを特徴とする。本発明の組換え乳酸桿菌を含有する医薬組成物に加えて、医薬キットは、アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログを含む。典型的には、それぞれのアレルゲンまたはその免疫原性フラグメント(それぞれの免疫原性ホモログを含む)は、医薬キットに含まれるとき、医薬組成物中に含有される。アレルゲンまたはアレルゲンフラグメント(その免疫原性フラグメントを含む)および乳酸桿菌は、いかなる組合せで医薬キットに含まれてもよい。それらは、たとえば同じ医薬組成物の部分または同じ医薬キット内に含まれる2つの別々の医薬組成物の部分であり得る。
【0053】
アレルゲンは、医薬組成物の部分であるかまたは別途に医薬キット中に含まれ得る。医薬キットは、たとえば、アレルゲンまたはアレルゲンフラグメント(それぞれの免疫原性ホモログを含む)が医薬組成物(本発明に従った組換え乳酸桿菌を含み得る)とは別に保持される、複数部分の医薬パックであり得る。アレルゲンまたはアレルゲンフラグメントは、その後、投与前に混合されてもよく、または医薬組成物とは別途に投与されるものであってもよい。アレルゲンは、アレルゲン性を有する何らかの物質、典型的にはタンパク質、ポリペプチドまたは多糖であり得る。通常、アレルゲンは、アレルギー疾患に関与するアレルゲンである。アレルギー疾患は、何らかの形態の免疫系の過敏性であり得る。アレルギー疾患は、かゆみ、皮膚発疹またはじんま疹、湿疹、皮膚炎(アトピー性皮膚炎または接触皮膚炎)、鼻または眼からの排液、洞圧、咽喉炎、ぜん鳴、咳、息切れ、口、唇または咽喉の腫脹、または消化障害などの症状として発現し得る。たとえば皮膚アレルギーまたは喘息などの呼吸器系アレルギーであり得る。アレルギー疾患は何らかの特異的アレルゲンに対する応答であり得る。一部の実施形態では、アレルギー疾患は、たとえば室内塵ダニアレルギーを含む、塵ダニアレルギーなどのダニアレルギーである。
【0054】
一部の実施形態では、医薬キットまたは上述した医薬組成物に含まれるアレルゲンは、治療有効量または予防有効量で含有される。組換え乳酸桿菌と同様に、組換え乳酸桿菌の正確な治療的または予防的に有効な量は、たとえばアレルゲンの種類および上記で示したような多くの因子に依存する。典型的には、アレルゲンの量は約1〜1000μgの範囲内である。一部の実施形態ではアレルゲンは週1回投与され、一部の実施形態では月1回投与されることが理解される。さらなる実施形態では、アレルゲンは、治療の開始時には週1回投与され、その後その投与は、維持のための月1回の投与まで漸減される。従って、アレルゲンの用量は送達の種類と様式に依存する。説明例として、注射に関しては、1日用量は約0.1〜約10μgの範囲内であり得る。舌下または経口送達については、1日用量は、たとえば約10〜約100μg/送達の範囲内であり得る。医薬キットは、たとえば、有効量として約1μg〜約100μgのアレルゲンの用量を達成するために適切な範囲内の用量を含有する医薬組成物を含み得る。
【0055】
一部の実施形態では、医薬キットに含まれるアレルゲンはダニアレルゲンである。一部の実施形態では、このダニアレルゲンは、室内ダニのアレルゲンである。一部の実施形態では、核酸配列は、たとえば室内塵ダニアレルゲンまたは貯蔵庫ダニアレルゲンなどの、塵ダニアレルゲンをコードする。ここで使用する「塵ダニ」という用語は、塵埃中に存在するダニを指す。従って、「室内塵ダニ」という用語は、室内塵埃中に存在するダニを指すと理解される。室内塵ダニは、それゆえ、コナダニ亜目(Astigmata)およびチリダニ科(Pyroglyphidae)を含むが、これらに限定されない。13のダニ種がこれまでに室内塵において同定されている。既に一部を上記で示したように、これらのうちの3つ、コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)、ヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)およびユーログリファス・マイネイ(Euroglyphus maynei)は、すべての温帯気候で認められ、世界中の家庭で一般的であり、ダニアレルゲンの主要な供給源である。熱帯気候における室内塵ダニの説明例は、貯蔵庫ダニ(Blomia tropicalis)(Echymyopodidae科)である。数多くの他の貯蔵庫ダニが家庭で認められ、アレルゲンの強力な供給源である。さらなる種の例は、ニクダニ科(Glycyphagidae)(Glycyphagus domesticusおよびLepidoglyphus destructor)、コナダニ科(Acaridae)(Tyrophagus putrescentiaeおよびAcarus siro)およびマルニクダニ科(Chortoglyphidae)(Chortoglyphus ancutatus)に含まれるが、これらに限定されない。サヤアシニクダニ(Lepidoglyphus destructor)は、たとえば、スウェーデンのゴットランド島の農場の塵埃(干し草塵および室内塵)において、最も重要なアレルゲンであると認められた。家庭内の塵埃中に存在し得るダニのさらなる例は、ツメダニ(predaceous mites)(たとえばCheyletus)および、ナミハダニ(2−spotted spider mites)を含む植物の寄生性太平洋ハダニ(parasitic pacific spider mites)(TetranychidaeおよびTarsonemidae)を含む。
【0056】
他の実施形態では、ダニは、たとえばほんの数例を挙げると、Hydrachnidiaeなどのミズダニ、ミミダニ(Otodectes cynotis)、イヌのニキビダニ(Demodex canis)、ミカンハダニ(Panonychus citri)、ハツカネズミダニ(house mouse mite)(Liponyssoides sanuineus)、イエダニ(Ornithonyssus bacoti)、ミナミトリサシダニ(Ornithonyssus bursa)、ニワトリダニ(Dermanyssus gallinae)、トリサシダニ(Ornithonyssus sylviarum)、ヒゼンダニ(Trixacarus caviae)、ヒツジキュウセンヒゼンダニ(Psoroptes ovis)、ムギシラミダニ(Pyemotes tritici)、カブリダニ(Stigmaeopsis longus)、リンゴハダニ(Panonychus ulmi)、チューリップサビダニ(Aceria tosichella)、ホモノハダニ(Petrobia latens)、バンクスグラスハダニ(Oligonychus pratensis)、イチゴハダニ(Tetranychus turkestani)、クローバーハダニ(Bryobia praetiosa Koch)またはミツバチのミツバチヘギイタダニ(Varroa jacobsoni)であり得る。これらのダニの多くが、たとえば、室内塵埃中にも存在し得る。医薬キットに含まれるダニアレルゲンはまた、ヒツジ、ブタおよびネコなどの家畜、たとえばウシに由来するダニのアレルゲンまたはその免疫原性フラグメントであり得る。例は、Chorioptes bovis、Psoroptes ovis、Sarcoptes suisおよびNotoedres catiを含むが、これらに限定されない。ダニアレルゲンは、ダニ、特にダニの身体またはダニの糞便に由来するタンパク質またはタンパク質の部分である。Dermatophagoidesの第1,3,4,6,8および9群アレルゲンは、たとえば酵素であり、一方、第10,11および13群アレルゲンは、それぞれトロポミオシン、パラミオシンおよび脂肪酸結合タンパク質であることが知られている。塵ダニアレルゲンを含む大部分のダニアレルゲンは、ダニの消化管に由来し、従ってダニの糞便中に高レベルで認められる。ダニアレルゲンの典型的な例は、ダニの消化管に由来する酵素である。説明例として、Dermatophagoides pteronyssinusからのアレルゲンDer p 6は、ダニキモトリプシンとして基質親和性に関して特性決定された。さらなる説明例として、Dermatophagoides pteronyssinusからのDer p 1はシステインプロテアーゼである。ダニアレルゲンのさらなる説明例は、ある生活段階からその後の段階へのダニの変化として起こる脱皮過程に関連する酵素である。説明例として、Dermatophagoides pteronyssinusからのDer p 2は、脱皮と一致して発現される蛾からのタンパク質、esr16と配列的に相同であることが認められた。ダニアレルゲンのさらにもう1つの説明例は、ダニが食べる食物基質上で環境に残されるダニの唾液の成分である。
【0057】
ダニアレルゲンの例は、Der p、1 proDer p 1、Der p 2、Der p 3、Der p 4、Der p 5、Der p 7、Der p 8、Der p 9、Der p 10、Der p 11、Der p 14、Der p 15、Der p 18、Der f 1、Der f 2、Der f 3、Der f 4、Der f 5、Der f 6、Der f 7、Der f 10、Der f 11、Der f 15、Der f 16、Der f 18、Der m 1、Eur m 1、Eur m 2、Her f 2、Blo t 1、Blo t 3、Blo t 5、Blo t 12、Fel d 1、Mag 1、Mag 3、Tyr p 2、Lep d 1、Lep d 2、Lep d 5、Lep d 7、Lep d 10およびLep d 13を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、医薬キットに含まれるダニアレルゲン(そのフラグメントまたはそれぞれのホモログを含む)は、組換え乳酸桿菌によって発現されるダニアレルゲン(そのフラグメントまたはそれぞれのホモログを含む)と共通の少なくとも1つのエピトープを含む(上記参照)。これに関して、一部のアレルゲンは異なるダニ種によって共有されるが、また別の抗原は選択ダニ種に固有であることに留意されたい。一例として、Dermatophagoides farinaeは、Dermatophagoides pteronyssinusおよびTyrophagus putrescentiaeといくつかのアレルゲンを共有する。いかなるダニアレルゲンも本発明全体を通して使用し得るが、それゆえ一部の実施形態では、たとえば対象とする種以外のダニ種とは、ほとんどまたは全く共有されない抗原を選択することが望ましいと考えられる。1つの実施形態では、ダニアレルゲンは、たとえば、組換え乳酸桿菌によって発現される、アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログと交差反応性であるダニアレルゲンである。もう1つの実施形態では、医薬キットに含まれるダニアレルゲンは、組換え乳酸桿菌によって発現されるダニアレルゲン、ダニアレルゲンフラグメントまたはそれぞれのホモログである。
【0058】
免疫原性ホモログを含むそれぞれのアレルゲンまたはそのフラグメントは、何らかの供給源から入手し得る。それは、たとえば天然供給源に由来し得るかまたは合成され得る。たとえばアレルゲンを含むことが既知であるか、または含むことが疑われる供給源から、濃縮、精製または単離され得る。塵ダニアレルゲンの場合、塵ダニ唾液またはダニ糞便は、たとえばそこからアレルゲンまたはアレルゲンフラグメントを濃縮、精製または単離するために収集され得る。アレルゲンまたはフラグメントはまた、天然にポリペプチドを生産する生物、組織または細胞から濃縮、精製または単離され得る。あるいは、アレルゲンまたはそのフラグメントは何らかの生物において、ポリペプチドとして、典型的には組換えまたはトランスジェニック形態で発現され得る。一部の実施形態では、アレルゲン(その免疫原性ホモログを含む)またはアレルゲンの免疫原性フラグメント(その免疫原性ホモログを含む)は、組換え微生物などの組換え生物から、濃縮、精製および単離のいずれかによって得られる。天然に生じるアレルゲン中に存在する翻訳後修飾を有するアレルゲンまたはフラグメントを得ることが望ましい場合、翻訳後修飾のために必要な酵素を発現する真核生物または原核生物の選択が有効であり得る。濃縮されたアレルゲンの説明例は、たとえば皮下、皮内または舌下投与用の滅菌溶液として供給されるそれぞれのアレルゲンの抽出物である。そのようなアレルゲン抽出物は市販のものが入手可能であり、たとえばHollister−Stier Laboratories社の「PMG Mite Mix/G33G3805」、Stallergenes社の「Staloral」(舌下送達用)、Greer社の「Allergenic Extract Standardized Mite」またはALK Abello社の「RX mix house dust mold inhalant injection」が市販されている。
【0059】
アレルゲンまたはアレルゲンフラグメントなどの分子に関して「濃縮」という用語は、特定分子が、正常細胞または疾患細胞または分子が採取された細胞におけるよりも、対象細胞または溶液中に存在するすべての分子の有意に高い分画(2〜5倍など)を構成することを意味する。有意にという用語は、ここでは上昇のレベルがそのような上昇を生じる人にとって有用であることを指示するために使用され、一般には他の物質、たとえばアミノ酸配列に比べて少なくとも約2倍、たとえば少なくとも5〜10倍またはそれ以上の上昇を意味する。この用語はまた、他の供給源からのアレルゲンの存在を排除しない。そのようなアレルゲンの他の供給源は、たとえば環境からのアレルゲンもしくは酵母または細菌ゲノムまたはクローニングベクターによってコードされるアレルゲンを含み得る。この用語は、ヒトが所望の物質、たとえば所望のアレルゲンの割合を上昇させるために介入した状況だけを含むことを意図されていることが理解される。
【0060】
濃縮は、たとえば、たとえば核分画、形質膜分画またはミクロソーム分画などの細胞抽出物から分画を得ることを含み得る。これは、遠心分離などの標準手法によって入手し得る。濃縮の他の手段の例はろ過または透析であり、それらは、たとえば一定分子量以下の分子の除去、または有機溶媒または硫酸アンモニウムを使用した沈殿を対象とし得る。アレルゲンなどの物質に関して「精製」という用語は、物質の元の環境と比較した相対的表示であり、それにより、たとえばアレルゲンまたはアレルゲンフラグメントが天然環境におけるよりも相対的に純粋であることの表示であると理解される。それゆえそれは、絶対純度(均一な製剤など)という意味での絶対値を表わさない。天然レベルと比較して、精製されたアレルゲンまたはアレルゲンフラグメントのレベルは少なくとも2〜5倍上回るべきである(たとえばμg/mlで)。少なくとも一桁分、たとえば2桁または3桁分の精製が明白に考慮される。精製アレルゲンまたはアレルゲンフラグメント(またはその免疫原性ホモログ)は、典型的には重複するまたは同様の免疫原性の活性(いわゆる交差反応性など)を示す夾雑物質を基本的に含まず、たとえば90%、95%または99%純粋である。
【0061】
精製は、たとえばクロマトグラフィー手法、たとえばゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティー精製、疎水性相互作用クロマトグラフィーまたは疎水性電荷誘導クロマトグラフィーを含み得る。精製はまた、複数のそのような手法の組合せまたはそのような手法と他の方法の組合せを含み得る。精製のもう1つの説明例は、分取キャピラリー電気泳動などの電気泳動手法である。単離は、同様の方法の組合せを含み得る。「単離」という用語は、天然に生じる物質または天然に生じる配列がその通常の細胞(たとえば細胞内)環境から取り出されたことを指示する。それゆえ、その物質または配列は、無細胞溶液または懸濁液等の中に存在し得るか、または異なる細胞環境に置かれ得る。この用語は、その物質または配列について、唯一その物質または配列のみが存在することを意味するのではなく、基本的には天然でそれに結合している他の物質を含まないこと(通常は少なくとも約90〜95%純粋)を意味する。
【0062】
アレルゲンまたはアレルゲンフラグメントは、当技術分野で周知の方法によって天然供給源から単離され得る。天然供給源は、たとえば哺乳動物(たとえばヒト)の、血液、精液または組織であり得る。一部の実施形態では、アレルゲンまたはアレルゲンフラグメントは、そのポリペプチドを発現するように変性された生物または細胞から入手し得る。当技術分野で広く確立されている遺伝子操作の技術によって、細胞または生物を、それが通常は生産しないか、または細胞が通常はより低いレベルで生産するタンパク質を生産するようにすることができる。説明例は、組換え真核または原核宿主細胞またはトランスジェニック生物である。
【0063】
もう1つの実施形態では、ポリペプチドは、たとえばアミノ酸から出発する化学的または酵素的方法によってインビトロで合成され得る。化学的方法は当技術分野において周知であり、関与するアミノ酸ならびに伸長するペプチド鎖の反応性官能基の保護、活性化、カップリングおよび選択的脱保護の連続工程を含む。酵素的戦略は、たとえば別途に生産した合成フラグメントのプロテアーゼによるブロック状カップリング(blockwise coupling)を含む。所望の場合は、市販の自動ポリペプチド合成装置を使用し得る。
【0064】
アレルゲン(そのフラグメントまたはそれぞれのホモログを含む)は、上述したような適切な担体および/または希釈剤と共に提供され得る。アレルゲンは、たとえば適切な輸送タンパク質に化学結合され得る。さらなる例として、リポソームに組み込まれ得るか、またはワクチン製剤における使用のために多糖および/または他のポリマーに複合され得る。
【0065】
本発明はさらに、哺乳動物においてアレルゲンに対する免疫応答の制御を含む調節方法を提供する。哺乳動物におけるアレルゲンに対する免疫応答の調節は、典型的にはアレルギー状態の症状の1つまたはそれ以上を完全にまたは少なくともある程度まで軽減または緩和するため、もしくはアレルギー状態の症状の1つまたはそれ以上を完全にまたは少なくともある程度まで予防するために実施される。哺乳動物は、たとえばマウス、ラット、ウサギ、ハムスター、イヌ、ネコ、マーモセット、類人猿、またはヒトであり得る。典型的な実施形態では、本発明の方法は、アレルギー疾患を治療する方法であるか、またはアレルギー疾患を治療する方法に含まれる。「治療する」および「治療」という用語は、ここで使用するとき、アレルギー状態の進行を少なくとも実質的にまたは一定の程度まで、緩和し、実質的に抑制し、軽減し、緩慢化し、排除しまたは逆転させること、アレルギー状態の臨床または感覚的症状を、少なくとも実質的にまたは一定の程度まで改善すること、そのような状態の臨床または感覚的症状の出現を予防すること、もしくは以前に罹患した被験者において状態の再発を、少なくともある程度まで予防しまたは遅延させることを含む。
【0066】
本発明の方法は、上述した組成物を投与することを含む。これに関して、本発明はまた、アレルゲンに対する免疫応答の制御を含む調節を行うための、医薬キットの製造における上述した組換え乳酸桿菌の使用方法に関する。これに関して本発明は、同様に、アレルゲンに対する免疫応答の調節におけるそれぞれの乳酸桿菌の使用方法に関する。前記使用ならびに方法は、たとえばアレルギーの治療において用いられ、前記アレルギーは、塵ダニアレルギー、たとえば室内塵ダニアレルギーなどのダニアレルギーであり得る。アレルゲンは、典型的にはダニアレルゲン、たとえば塵ダニアレルゲン(例については上記参照)、たとえば室内塵ダニアレルゲンである。一部の実施形態では、それに対する応答を調節するためにそれぞれの乳酸桿菌が使用されるダニアレルゲンは、組換え乳酸桿菌によって発現されるダニアレルゲンと共通の少なくとも1つのエピトープ(上記参照)を含む。1つの実施形態では、ダニアレルゲンは、組換え乳酸桿菌によって発現されるダニアレルゲンである。それぞれのアレルギーの例は、喘息、鼻炎(枯草熱)、アトピー性皮膚炎(湿疹)およびじんま疹を含むが(症状の例については上記も参照のこと)、これらに限定されない。それぞれのアレルギーはまた、咳、くしゃみ、鼻づまり、咽頭炎、後鼻漏、顔面紅潮、および吐き気などの症状に関連し得る。
【0067】
組換え乳酸桿菌は、その乳酸桿菌がアレルゲンに対する免疫応答を調節するために使用され得る限り、いかなる手段によって宿主に投与されてもよい。同様に、医薬キット全体がいかなる手段によって投与されてもよい。典型的には、組換え乳酸桿菌は、哺乳動物に投与されるとき、医薬組成物に含有される。これは一般に、医薬キットに含まれる場合の抗原にも当てはまる。また一般に、宿主に対して不必要に有害とならない投与形態を使用することが所望されるべきである。当業者は、それゆえ、本発明が、たとえば組換え乳酸桿菌の経口または舌下投与を許容することを認識する。一部の実施形態では、医薬キット全体が経口投与または舌下投与され得る。
【0068】
経口投与された乳酸桿菌を追跡することができるように、一部の実施形態では前記乳酸桿菌に標識するか、または同時に投与される対応乳酸桿菌に標識することが望ましい。説明例は、アレルゲンと同じベクターにおける増強緑色蛍光タンパク質(eGFP)の使用であり、アレルゲンを伴うか、または代わりの別個のベクターにおいての使用かは問わない。図6は、L.casei ShirotaにおけるpL500ベクター内のeGFPの発現およびマウスの胃腸管における経口投与された生組換え乳酸桿菌のモニタリングを示す。共焦点顕微鏡によって測定されるように、この例は、生組換えL.casei Shirota−eGFPが、マウスに経口投与されると小腸パイアー斑のT細胞およびB細胞領域の両方に転位できることを示す(図6参照)。これは、パイアー斑の単形および多形細胞の液胞内の無傷L.casei Shirota−eGFPを示す透過型電子顕微鏡によってさらに確認される(図7参照)。
【0069】
予防または治療目的のための乳酸桿菌の使用(下記も参照)はいくつかの利点を有する。第一に、乳製品における乳酸桿菌の伝統的使用は、「一般に安全と認められる(Generally Recognized as Safe)」(GRAS)状態である。それらは、ヨーグルト、チーズおよびバターミルクなどの指定標準食品において使用されている。乳酸桿菌の病原性の潜在的可能性は非常に低い。乳酸桿菌はまた、たとえば腸内感染を予防し、血清コレステロールレベルを低下させ、抗発癌作用を示す共生細菌である。「共生」という用語は、摂取されたとき健康に有益な作用を有する生存または不活性化生物を指す。第二に、種々の乳酸桿菌株が消費者食品キット(たとえば乳児用粉ミルク)において現在使用されており、組換え乳酸桿菌はそれ自体、安定で便利な食品グレードのキットに開発されることができる。たとえば食品グレードのワクチンキットの消費は、開発途上国における経済的で重要な多回投与および大規模/集団免疫の可能性に加えて、非経口経路(侵襲性で痛みがある)と比較したとき便利でコンプライアンスが高い。第三に、乳酸桿菌は低い内因性免疫原性を有するが、乳酸桿菌の細胞壁成分(たとえばペプチドグリカン)は、発現されたまたは細菌に結合された外来性抗原/アレルゲンにアジュバント特性を与えることができるだけでなく、免疫応答への免疫調節作用も付与することができる。乳酸桿菌などの、安全で非侵襲的な手段による小児および免疫無防備状態集団の粘膜関連リンパ系組織への抗原/アレルゲンの送達は、広く行き渡っているワクチン接種選択肢への極めて重要な改善となる。
【0070】
一部の実施形態では、本発明の方法は、医薬組成物または医薬組成物の反復投与のための医薬キット、またはその中に含まれる医薬組成物中で、それぞれの乳酸桿菌を反復投与することを含む。同様に、一部の実施形態では、組換え乳酸桿菌は、それぞれの乳酸桿菌の反復投与のための医薬組成物または医薬キット中で使用される。一部の実施形態では、医薬組成物または医薬キット全体が反復投与用である。
【0071】
アレルゲンに対する免疫応答の有効な制御または調節は、当技術分野で公知の何らかの手段によってモニタリングされ得る。説明例として、免疫応答に関与する因子、たとえばポリペプチドまたはタンパク質のレベル、特にアレルギー性免疫応答に関与する因子のレベルがモニタリングされ得る。添付の図面および実施例はそれぞれのモニタリング方法を例示する。たとえば図8は、L.casei Shirotaと共にインビトロで共培養したナイーブマウスの脾臓および腸間膜リンパ節からのT細胞が、調節性T細胞サイトカイン、TGF−βの分泌を媒介することを示す。Der p 2特異的T細胞プライミング(下記参照)は、組換えL.casei Shirota/Der p 2(Lc/Dp2)を給餌したマウスのパイアー斑からの細胞のDer p 2特異的増殖によって示され、NaHCOを与えたマウスではこの増殖はみられない(図9参照)。それぞれの図はさらに、L.casei/pLP500(Lc/V)またはLc/Dp2を4日間連続して経口投与したマウスでは、NaHCOを給餌したマウスと比較して腸間膜リンパ節(MLN)におけるCD3CD4D25T細胞のサブセットが上昇することを示す(図9B)。これは、共生細菌L.caseiを給餌したマウスにおけるTr細胞群の誘導を示唆する。
【0072】
本発明の方法はさらに、何らかの天然に生じる乳酸桿菌とアレルゲン(例については上記参照)の併用投与を特徴とする。一部の実施形態では、乳酸桿菌は、Lactobacillus casei、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus pentosus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus sporogenes、Lactobacillus brevis、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus hilgardii、Lactobacillus lactis、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus leishmanis、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus sakei、Lactobacillus cellobiosus、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus caucasicus、およびLactobacillus helveticusから成る群より選択される。一部の実施形態では、さらに天然に生じる乳酸桿菌が、本発明の組換え乳酸桿菌と組み合わせて投与される。これらの実施形態の一部では、天然に生じる乳酸桿菌は組換え乳酸桿菌と同じ種である。他の実施形態では、天然に生じる乳酸桿菌は、別の細菌、たとえば糞便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)、酪酸菌(Clostridium butyricum)またはBacillus mesentericusなどの別の共生細菌と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、それぞれの乳酸桿菌は、それぞれのアレルゲンと同じ医薬組成物に含まれ得る。他の実施形態では、乳酸桿菌とアレルゲンは別々に提供され得る。それらは、たとえば別々の医薬組成物に含まれ得る。そのような医薬組成物は、共通の医薬キットに含まれ得る。
【0073】
一部の実施形態では、本発明の方法は、アレルゲンまたはアレルゲンの免疫原性ホモログと本発明の組換え乳酸桿菌の併用投与(下記参照)を含む。一部の実施形態では、組換え乳酸桿菌は、アレルゲンの免疫原性フラグメントまたは免疫原性ホモログと組み合わせて投与され得る。このダニアレルゲン、その免疫原性フラグメントまたはそれぞれの免疫原性ホモログは、上記で説明したように、たとえば組換え生物からの濃縮、精製および単離のいずれかによって入手し得る。一部の実施形態では、組換え乳酸桿菌は、アレルゲンまたはそのホモログと一緒に、たとえば同時に投与され得る。説明例として、乳酸桿菌は、アレルゲンを共に含む医薬キットの製造において使用され得る。乳酸桿菌は、それゆえ、アレルゲンと共に医薬キットの一部であり得る。乳酸桿菌とアレルゲンは、たとえば医薬キットに含まれる医薬組成物の一部であり得る。他の実施形態では、乳酸桿菌は医薬組成物の一部であり、一方アレルゲンは別の成分であるか、または医薬キットの別の成分、たとえばさらなる医薬組成物中に含まれる。
【0074】
乳酸桿菌を含む医薬キットまたは医薬組成物に含まれるそれぞれのアレルゲン、アレルゲンフラグメントまたはそれぞれのホモログは、典型的にはダニアレルゲン、たとえば室内塵ダニアレルゲンなどの塵ダニアレルゲン(例については上記参照)である。一部の実施形態では、ダニアレルゲンに対する応答を調節するためにそれぞれの乳酸桿菌が使用されるそのダニアレルゲンは、組換え乳酸桿菌によって発現されるダニアレルゲン、ダニアレルゲンフラグメントまたはそれぞれのホモログと共通の少なくとも1つのエピトープ(上記参照)を含む。ダニアレルゲン(そのフラグメントまたはそれぞれのホモログを含む)は、たとえば乳酸桿菌によって発現されるアレルゲン(そのフラグメントまたはそれぞれのホモログを含む)と交差反応性であり得る。1つの実施形態では、ダニアレルゲン、そのフラグメントまたはそれぞれのホモログは、組換え乳酸桿菌によって発現されるダニアレルゲン、そのフラグメントまたはそれぞれのホモログである。アレルゲンの適用は何らかの経路と方法によって実施され得る。アレルゲン(そのフラグメントまたはそれぞれのホモログを含む)は、たとえば舌下的、皮下的、皮内的、経皮的、経上皮的に、またはそれらのあらゆる組合せによって適用され得る。説明例として、アレルゲンまたはアレルゲンフラグメントまたはその免疫原性ホモログ(たとえば医薬組成物に含まれる)は経皮投与されてもよく、乳酸桿菌(たとえば医薬組成物に含まれる)は経口投与されてもよい。乳酸桿菌と同様に、アレルゲンまたはアレルゲンフラグメントは、1回または数回、たとえば選択された時間間隔で投与され得る。一部の実施形態では、アレルゲンまたはアレルゲンフラグメントは反復投与され得る。
【0075】
当業者は、乳酸桿菌を使用する利点(前出)だけでなく、同じく以下の実施例で説明されるところの、乳酸桿菌とそれぞれのアレルゲンの併用投与がアレルギーの治療と予防のための相乗作用を生じさせるという、驚くべき本発明者らの所見も理解するであろう。1つの態様では、本発明は、それゆえまた、アレルギーの有効な治療および予防戦略のための二重方式アプローチを提供する。
【0076】
乳酸桿菌とアレルゲン、アレルゲンフラグメントまたはそれぞれのホモログは、独立した用量で互いに独立して投与され得る。従って、乳酸桿菌とアレルゲン(ホモログを含む)またはそのフラグメントの適用は、たとえば同時にまたは経時的に連続して何度でも実施され得る。従って乳酸桿菌は、たとえばアレルゲンと同時に投与されたとき、免疫応答を、たとえば増強などの調節を行うことができるアジュバントとして使用され得る。一部の実施形態では、乳酸桿菌とアレルゲン、アレルゲンフラグメントまたはそれぞれのホモログは連続的に使用される。たとえば投与レジメンにおける選択された時間間隔の間、アレルゲン(そのフラグメントまたはそれぞれのホモログを含む)のみ、乳酸桿菌のみまたはアレルゲンのみが投与され得る。説明例として、乳酸桿菌が数回投与される場合、アレルゲンは、事前に、乳酸桿菌の2回の適用の間に、または乳酸桿菌の最後の適用後に投与されてもよく、逆もまた同様である。一部の実施形態では、乳酸桿菌は反復的に、たとえば1日1回投与される。アレルゲンは、その後一定期間にわたって乳酸桿菌の1回またはそれ以上の適用後に投与される。その後、乳酸桿菌だけがさらに反復投与される。そのような場合、乳酸桿菌および/またはアレルゲンの投与の形態が、たとえば図10または図16に示すように、変化してもよいことが理解される。一部の実施形態では、乳酸桿菌が最初に、たとえば以下で述べるように適用され得る。他の実施形態では、アレルゲンが最初に、たとえば図22に示すように適用され得る。
【0077】
従って、アレルゲン(そのフラグメントまたはそれぞれのホモログを含む)および乳酸桿菌の投与は、いわゆる「プライムブースト」レジメンあるいは予防的または治療的な方法などの、1つまたはそれ以上の独立した個別投与の形態で実施され得る。そのようなレジメン(または方法)において、乳酸桿菌は、たとえば「プライミング」段階で送達され、その後アレルゲンは「ブースティング」段階で送達されてもよく、逆もまた同様である。たとえば乳酸桿菌が最初に投与される場合、それは「プライマー」と称され、その後投与されるアレルゲンは「ブースター」と呼ばれることもある。「プライミング」および「ブースティング」という用語は、それらが投与される順序ではなく宿主生物への抗原および乳酸桿菌の作用を指すことが理解される。それゆえプライマーは、ブースターの前に、ブースターと同時にまたはブースターの後に投与され得る。ブースティング組成物より後の投与は、たとえばブースティング組成物が作用するのにより長い時間を要すると予想される場合に望ましいと考えられる。
【0078】
そのような「プライムブースト」レジメンは、たとえば予防のために、すなわちアレルゲンに対する免疫応答を前もって軽減し、低下させ、または予防するために使用され得る。そのような場合、対応するアレルゲンに対する宿主の免疫系の過敏性の作用を軽減または予防することも望ましいと考えられる。そのような実施形態では、「プライミング」はまた、1回目の(たとえば抗原の)投与が、同じ抗原による2回目の(たとえば乳酸桿菌の)投与時に免疫応答の生成を許容する免疫付与であり、2回目の免疫応答は、1回目の免疫付与が提供されない場合にもたらされる免疫応答よりも大きいものであるその投与の方法を指すこともある。一部の実施形態では、それぞれの予防レジメンは、アレルゲン感作に対して動物または個人を保護するために使用され得る。
【0079】
一部の実施形態では、哺乳動物(たとえばヒト)においてアレルゲンに対する免疫応答を制御する方法は、
(a)本発明による組換え乳酸桿菌または上述したような組換え乳酸桿菌を含有する医薬組成物を提供すること、
(b)本発明による組換え乳酸桿菌または組換え乳酸桿菌を含有する医薬組成物を投与すること、
(c)アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメント(またはそのそれぞれの免疫原性ホモログ)、もしくは上述したようなアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメント(またはそのそれぞれの免疫原性ホモログ)を含有する医薬組成物を提供すること、および、
(d)アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメント(またはそのそれぞれの免疫原性ホモログ)、もしくはアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメント(またはそのそれぞれの免疫原性ホモログ)を含有する医薬組成物を投与することを含む。
【0080】
説明例として、前記方法は、以下の工程を含んでもよい。
a)本発明による組換え乳酸桿菌または本発明による医薬組成物の治療有効量で哺乳動物をプライムする工程、
b)任意で1日後から約1週間後までの間に、工程a)を1〜3回反復する工程、
c)アレルゲンの治療有効量で動物をブーストする工程、および、
d)任意でその後約1週間から約1ヶ月の期間の経過後に、工程c)を1〜5回反復する工程。
【0081】
上記で指摘したように、アレルゲンは、一部の実施形態では本発明による組換え乳酸桿菌によって発現されるアレルゲンであるか、またはそのアレルゲンに相当し得るものである。
【0082】
従って、一部の実施形態では、乳酸桿菌の投与はプライミングにおいて役割を果たし、抗原(そのフラグメントまたはそれぞれのホモログを含む)の投与はブースティングにおいて役割を果たす。それぞれの例は図10に示されている。この例では、経口投与したDer p 2を発現する組換えL.casei Shirotaを、予防レジメンでのDer p 2の皮下ブースティングと組み合わせて使用した。乳酸桿菌の代わりに効果のないNaHCOを使用した場合との比較では、Der p 2を発現する組換えL.casei Shirota単独の投与が、気道抗原刺激後でもIgE生成を抑制することを示す(図11参照)。それに対し、Der p 2特異的血清IgG1のレベルは影響を受けなかった。同様に、Tリンパ球によるTh2サイトカインおよびプロ炎症性サイトカインの生成は下方調節された(図12)。
【0083】
この例では、Der p 2を発現する組換えL.casei Shirotaの投与は、Th2およびDer p 2 特異的Tr細胞の混合物に対してプライミングした(下記も参照)。これらのDer p 2 特異的Tr細胞は、TGF−β1などの調節性サイトカインを通して既存のTh2細胞に阻害または寛容原性作用を及ぼし得る。さらに、気道抗原刺激後に得られたDer p 2を発現する組換えL.casei Shirotaをあらかじめ投与しておいたマウスの血清中の循環インターロイキン10(IL−10)サイトカインレベルは、対照群と比較して有意に低いことが認められた。IL−10は、Th2細胞またはT調節型リンパ球によって生成される多面発現性サイトカインである。アトピー性アレルギーおよび喘息では、インターロイキン10の発現上昇が以前から認められていた。T調節性細胞によって産生されるIL−10は抗炎症性であり、Th1型サイトカインおよび/またはTh2産生を調節することができる。Th2サイトカインはさらに低下する。エオタキシンのレベルも低下した。エオタキシンはアレルギー炎症を調節する重要なケモカインであり、エオタキシンの血清濃度は、たとえば喘息において高いことがこれまでに認められている。トランスフォーミング増殖因子β1(TGF−β1)のレベルの有意な低下も認められた(図14参照)。Tr細胞の生存と機能のための一般的に公知のサイトカイン、TGF−β1は、肺において好酸球によって産生され、Th2サイトカイン誘導性エオタキシン放出を調節することが知られている。TGF−β1はまた、線維芽細胞のための増殖因子としての役割も果たし、それゆえ肺の粘膜関連リンパ系組織におけるTGF−β1の上昇は、気道リモデリングを増大または悪化させることが報告されている。
【0084】
同時に、これらのマウスはまた、気管支肺胞洗浄液(BALF)において低い細胞数を示し(図15A)、Ac群、すなわちアレルゲンとエアロゾル抗原刺激でそれぞれ処置されただけのマウスの群と同様のレベルである。抗原に対する炎症応答の一部であり、IgE受容体によって活性化されることが知られる好中球の数も、Der p 2を発現する組換えL.casei Shirotaをあらかじめ投与されていたマウスにおいて有意に低かった(図15B)。アレルギー疾患において増加することが知られている好酸球の数は低かった。気道抗原刺激の24時間後に採取した肺切片の組織学的分析は、陰性対照(ダニアレルゲンをコードしないベクターとNaHCOまたは乳酸桿菌)を投与されていたマウスにおいて種々の程度(軽度から重度)の気道病変を示した。さらに、炎症性浸潤物がこれらのマウスの気管支肺胞腔を取り囲んでいた。それに対し、Der p 2を発現する組換えL.casei Shirotaを投与されていたマウスの肺切片は、肺炎症の実質的な低下を示し、Acマウスと同様のプロフィールを有していた(図15C参照)。この例から推測できるように、アレルゲンによるブースティングと組み合わせた組換え乳酸桿菌でのプライミングは、アレルギー応答を下方調節する上で有効である。
【0085】
さらなる例として、アレルゲンに対するアレルギー性免疫応答の治療または予防は免疫療法であり得る。免疫療法におけるアレルゲンと免疫との併用を、たとえば治療のための乳酸桿菌の投与と組み合わせてもよい(下記の実施例参照)。そのような組合せは、効果を実質的に改善し、同時に免疫療法のために必要な期間を短縮することができる。抗原特異的IgEの血清レベルは、たとえば、有意に低下する(図17Aおよび図23A参照)。それぞれの抗原だけを使用する従来の免疫療法に基づいてそのような作用を達成するためには、たとえば図25および図26に示すように、高用量の抗原を必要とする。抗原50μgの皮下用量(すなわち高用量)だけがIgEレベルを低下させ、抗原10μgの用量、すなわち低用量はIgEレベルの上昇を生じさせた(図26A参照)。それゆえ、乳酸桿菌とそれぞれの抗原の組合せは、従来の免疫療法の不都合を軽減し、その治療の頻度と期間を低下させるため、アナフィラキシーの危険度を低減して効果を改善する可能性が高い。アレルギー疾患の予防と治療の両方に対する食品ベースの介入戦略の開発のための、プライムブースト法における本発明の組換え乳酸桿菌の潜在能力と効果も、付属の実施例によって明らかにされる。
【0086】
上記から明白であるように、本発明による組換え乳酸桿菌の使用方法は、アレルギー治療およびアレルギー予防の両方のために、現在の方法と比較して有益である。さらに、たとえば免疫療法におけるそれぞれの乳酸桿菌と抗原の併用適用は、組換えアレルゲンに基づく免疫療法の効果を大きく増強する。それぞれの二重方式アプローチは、アレルギー疾患の有効な処置のための相乗作用を生み出す。これに関して、ワクチン接種によるアレルギー予防は、同様に本発明の組換え乳酸桿菌とアレルゲンの併用適用によって実施され得る。アレルゲンまたはそのフラグメントを発現する組換え乳酸桿菌は、たとえば免疫系をプライムし、その後アレルゲンタンパク質の投与からのブースティング作用を伴う食品ベースの抗原特異的予防ワクチンとして使用することができる。やはり、この二重方式アプローチは、その後のアレルギー感作の予防のための相乗作用を生じさせる。
【0087】
本発明が容易に理解され、実施されるために、特定実施形態を以下の例示的実施形態および非限定的実施例によってここで説明する。
(例示的実施形態)
本発明の組換え乳酸桿菌、本発明の医薬キットおよびそれらの使用の例示的実施形態を添付の図面に示す。
【0088】
図1Aは、ダニアレルゲン(HDM)遺伝子の発現のために使用される従来の乳酸桿菌/大腸菌シャトルベクターpL500を図式的に示す。制限酵素についての部位が指示されている。BamHIとNheI部位によって規定されるセグメントを、Der p 2抗原をコードする配列(下記参照)によって置換した。「ldh」は乳酸デヒドロゲナーゼを表わし、「Pldh」はL.caseiのldh遺伝子のプロモーター配列を表わす。「Tcbh」はL.plantarumのcbh遺伝子の転写終結配列を表わす。
【0089】
図1Bは、乳酸桿菌におけるDer p 2/ダニアレルゲン発現構築物の作製のために使用される中間体pTUATベクターを図式的に示す。制限酵素についての部位が指示されている。
【0090】
図1Cは、構成的乳酸デヒドロゲナーゼ(ldh)プロモーターの制御下のpLP500−HDM発現構築物を図式的に示す。「Pldh」は、L.caseiのldh遺伝子のプロモーター配列を表わす。「アンカー」は、L.caseiのアンカー配列である117アミノ酸のペプチドをコードするセグメントを表わす。
【0091】
図2は、同様にダニアレルゲン(HDM)遺伝子の発現のために使用されるもう1つの従来の乳酸桿菌/大腸菌シャトルベクターpL400を図式的に示す。制限酵素についての部位が指示されている。BamHIとNheI部位(下線を付している)によって規定されるセグメントが、Blo t 5抗原をコードする配列(下記参照)によって置換された。
【0092】
図3は、本発明の組換え乳酸桿菌に含まれ得るベクターのさらなる例である乳酸桿菌発現ベクターpSIP308を図式的に示す。それぞれの制限酵素を用いてダニアレルゲンまたはそのフラグメントをコードする配列を含めるために、レポーター遺伝子が使用されてもよい。
【0093】
図4は、本発明の組換え乳酸桿菌に含まれ得るベクターのさらにもう1つの例である乳酸桿菌発現ベクターpSIP412を図式的に示す。ダニアレルゲンまたはそのフラグメントをコードする配列は、やはりレポーター遺伝子の部位に導入され得る。
【0094】
図5は、ウエスタン免疫ブロット法による、乳酸桿菌L.casei ShirotaおよびL.rhamnosus ggの2つの菌株におけるDer p 2の異種発現の検出を示す。合計3×10細胞が超音波処理によって溶解緩衝液1mLに溶解された。細胞溶解産物(10μL)は10%トリス−トリシンSDS−PAGEゲルで分離され、ウエスタン免疫ブロットアッセイに供された。Der p 2に対するモノクローナル免疫グロブリン(1:10,000希釈)、ビオチニル化抗マウス免疫グロブリン(1:10,000希釈)、およびペルオキシダーゼ結合ExtrAvidin(Sigma社、1:5,000希釈)が用いられた。Superignal(登録商標)West Pico化学発光基質においてシグナルを発現させた。レーンは、「M」:染色前/ビオチンタンパク質分子量マーカー(BioRad社)、(1)L.gg/pL500からの全溶解産物、(2)L.gg/Der p 2からの全溶解産物、(3)Lcasei/pL500からの全溶解産物、(4)L.casei/Der p 2からの全溶解産物、およびレーン(5)酵母(200ng)において産生された組換えDer p 2タンパク質である。矢印は、Der p 2−アンカー融合タンパク質の位置を示す。前記タンパク質は、組換えL.casei ShirotaおよびL.rhamnosus gg中には存在するが、対照として使用した野生型には存在しない。
【0095】
図6は、L.casei Shirota−eGFPがパイアー斑のT細胞およびB細胞領域にどのように転位するかを示す。写真は共焦点顕微鏡下の画像を示す。連続4日間L.casei Shirota−eGFPを給餌したマウスからのパイアー斑の(A)生存L.casei Shirota−eGFPおよび(B)クリオスタット切片が示されている。左側は、それぞれパイアー斑切片における(B)内のL.casei Shirota−eGFP細菌の位置を示す。3色全部が重ね合わさる、同じ視野のAPC結合抗マウスTHY−1.2およびPE結合抗マウスCD−19(それぞれT細胞およびB細胞領域を染色する)の組合せによる免疫組織化学染色が右側に示されており、T細胞およびB細胞領域における細菌の位置を指示する。共焦点顕微鏡分析は、T細胞およびB細胞領域(右側の画像参照)、特に領域接合部におけるL.casei Shirota−eGFP(左側)の分布を示した。
【0096】
図7は、透過型電子顕微鏡によるパイアー斑内の単形(A)および多形(B)細胞の液胞への無傷L.casei Shirota−eGFPのトランスロケーションを示す。矢印は、L.casei Shirota−eGFPの位置を指示する。
【0097】
図8は、L.casei Shirotaとインビトロで共培養したT細胞におけるTGF−β産生の誘導を示す。(A)1:0.5の割合でL.caseiと共培養したナイーブマウスからの全腸間膜リンパ節(MLN)細胞または脾細胞は、細胞単独の対照と比較してTGF−βサイトカイン産生の有意な上昇を示した。(B)1:0.5または1:1の割合でL.caseiと共培養したナイーブマウスの脾臓から選別されたCD3T細胞も、TGF−β産生の上方調節を誘導した。
【0098】
図9は、組換えLc/Dp2を給餌したマウスにおけるDer p 2特異的T細胞増殖および調節性CD4CD25T細胞の増加を示す。(A)C56BL/6マウスに、1×10cfu/マウスの組換えLc/Dp2または野生型L.c/VまたはNaHCO対照を1ヶ月間(1週につき連続3日間)経口投与した。給餌の終了時にマウスを屠殺し、5μg/mlまたは10μg/mlの組換え酵母Der p 2の不在下または存在下でのH標識チミジンの組込みを利用した増殖アッセイのために、パイアー斑からT細胞を単離した。(B)Lc/Dp2(n=5)、野生型Lc/V(n=5)またはNaHCO(n=6)を給餌したマウスの腸間膜リンパ節からの細胞のFACS分析である。示されているように、腸間膜リンパ節におけるCD4CD25細胞のサブセットは、NaHCO群と比較してLc/Dp2およびLc/Vの両群において有意に高かった。
【0099】
図10は、使用した予防レジメンを示す。実験中、NaHCO緩衝液、熱死滅Lc/VまたはLc/Dp2のいずれかを給餌したC57BL/6マウス(各群につきn=5)から成る、C57BL/6マウスの3つの群を設定した。給餌は、時間線の下の黒い三角「▲」によって示している。給餌は、1週につき連続3日間、1日1回実施した。11日目と18日目に、すべてのマウスを組換えDer p 2(50μg/マウス)の皮下免疫付与によってブーストした。その後、すべてのマウスを経上皮パッチ適用によって3回感作し(22、36および50日目)、Der p 2のエアロゾルによって2回抗原刺激した。最後の抗原刺激の約24時間後にマウスを屠殺し、分画細胞数算定およびサイトカイン分析のために気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取し、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色のために肺を採取した。加えて、一次および二次T細胞培養およびサイトカイン分析のために、腸間膜リンパ節(MLN)および脾臓からの細胞を得た。
【0100】
図11は、Der p 2特異的免疫グロブリン応答を示す。Der p 2による皮下ブーストを受けたマウスについてのDer p 2特異的血清IgEの動態は、3つの群に関して有意差を示さなかったが、皮下ブーストを受けず、Lc/Dp2を給餌されたマウスは、NaHCO(p=0.042)およびLc/V(p=0.004)と比較してIgEの有意な減少を示した。85日目、すなわち最後のエアロゾル抗原刺激後のIgE力価(図11の右側参照)では、NaHCO適用(▲対△参照)およびLc/V適用(■対□)について、皮下ブーストを受けなかったマウスと比較して皮下ブーストを受けたマウスに関してIgEレベルが有意に低いことが明らかである。Lc/Dp2給餌マウス(●対○)だけが同等のレベルを示す。この結果は、マウスへのLc/Dp2の給餌が皮下ブーストの有無に関わらず、IgE産生を低減させ得ることを示す。
【0101】
図12は、脾T細胞のサイトカインプロフィールを示す。脾細胞をDer p 2(10μg/ml)の存在下で3日間培養し、その後IL−2の存在下でさらに4日間培養した。培養の9日目に、T細胞をフィコール密度勾配遠心分離によって精製した。約1×10細胞/ウェルを、3×10APC/ウェルおよびDer p 2(10μg/ml)の存在下で48時間培養した。対照ウェルは、Der p 2不在下の細胞から成る。ELISAによるサイトカインプロファイリングのために培地を収集した。Lc/Dp2給餌マウスからのDer p 2特異的脾T細胞は、NaHCOおよびLc/Vと比較すると、より低レベルのTh2(IL−4、IL−5、IL−13)およびプロ炎症性サイトカイン(TNF−α、IFN−γ)を生産した。しかし、Lc/Dp2給餌マウスは、Lc/V群と比較すると、より高いレベルのT調節性サイトカイン(TGF−βおよびIL−10)を生産した(図24も参照)。
【0102】
図13は、MLN細胞のサイトカインプロフィールを示す。マウスのMLNからの全細胞を、抗CD3およびCD28の存在下で96ウェルプレート(3×10細胞/ウェル)において48時間培養した。示されているように、Lc/VおよびLc/Dp2群は、NaHCO対照群と比較して有意に低いレベルのIL−13を生産し、IL−4、IL−5、IFN−γおよびIL−10の有意でない低下(Acマウスと同様のレベル)を生じた(A、B、CおよびD)。加えて、Lc/Dp2給餌マウスからのMLN細胞は、対照群と比較して高いレベルのTGF−βを生産した(D)。
【0103】
図14は、BALFのサイトカインのプロフィールを示す。Lc/VまたはLc/Derp2のいずれかを給餌されたマウスのBALFサイトカインプロフィールは、NaHCO対照と比較すると、エフェクターTh2サイトカイン(IL−13、IL−5)、プロ炎症性サイトカイン(TNF−α)、TGF−βおよびケモカインであるエオタキシンの低下を指示した。
【0104】
図15は、BALF分析および肺組織学検査を示す。BALFと肺を、分析および組織学的H&E染色のために、エアロゾル抗原刺激の24時間後に採取した。NaHCOおよびLc/Vの対照群と比較すると、Lc/Dp2群は、エアロゾル抗原刺激(Ac)だけを受けたマウスと同様に、BALF細胞数の減少を示した(A)。加えて、Lc/Dp2給餌マウスだけが好中球動員の低下を示した(B)。すべての群が、BALF中のマクロファージ、単球および好酸球の同様のパーセンテージを示した。各群の2匹の代表マウスからの肺組織を示した。2匹のエアロゾル対照マウスからの肺切片のH&E染色(GおよびH)は、細気管支腔内のごくわずかな炎症性浸潤物および肺実質における極微の気道炎症のバックグラウンドを示した。しかし、NaHCO(AとB)およびLc/V(CとD)群からのマウスの肺組織は、気道および細気管支腔を取り囲む種々の程度(軽度から重度)の気道浸潤炎症細胞を示した。比較すると、Lc/Dp2給餌マウス(EとF)は炎症性浸潤物のより大きな減少を示し、Ac群と同様のプロフィールを有していた。
【0105】
図16は、治療レジメンを示す。治療レジメンでは、C57BL/6マウスを、0、14および28日目にDer p 2アレルゲンの経上皮パッチ適用によって前感作した。33日目に、すべてのマウスについてDerp2特異的血清IgEおよびIgG1のレベルをELISAによって測定し、その後IgEレベルに基づいてマウスを3つの群に分けた(n=6)。35日目に、マウスにNaHCO緩衝液、Lc/VまたはLc/Dp2のいずれかを、1週につき連続3日間、1日1回5週間にわたって経口的に給餌した。55日目と62日目に、マウスにDer p 2(50μg/マウス)の2回の皮下免疫付与を実施し、1週間後、Der p 2(PBS 10ml中1mg)のエアロゾルによってマウスを2回抗原刺激した。給餌は、時間線の下の黒い三角「▲」によって示している。最後の抗原刺激の約24時間後に、マウスを屠殺し、分画細胞数算定およびサイトカイン分析のためにBALFを採取し、H&E染色のために肺を採取した。加えて、一次および二次T細胞培養およびサイトカイン分析のために、腸間膜リンパ節(MLN)および脾臓からの細胞を得た。
【0106】
図17は、Der p 2特異的免疫グロブリン応答を示す。3群すべてのマウスについてのDer p 2特異的血清IgE、IgG1およびIgG2aの動態は、図17(A、CおよびE)に示されるとおりである。3群すべてのマウスが、給餌開始の1週間後にDer p 2特異的IgEの低下を示した(A)。IgEレベルは、対照マウスと比較すると、Lc/VおよびLc/Dp2給餌マウスでは2回の連続的エアロゾル抗原刺激(69日目と77日目)の前後で有意に低下した(B)。Der p 2特異的血清IgG1は、対照マウスと比較すると、これら2つの群では62日目と69日目に有意に上昇し、気道抗原刺激後も変化しないままであった(CとD)。
【0107】
図18は、脾T細胞の選択サイトカインのプロフィールを示す。脾細胞をDer p 2(10μg/ml)の存在下で3日間培養し、その後IL−2の存在下でさらに4日間培養した。培養の9日目に、T細胞をフィコール密度勾配遠心分離によって精製し、約1×10細胞/ウェルを3×10APC/ウェルおよびDer p 2アレルゲン(10μg/ml)の存在下で48時間培養した。対照ウェルは、Der p 2不在下の細胞から成る。ELISAによるサイトカインプロファイリングのために培地を収集した。Lc/Dp2およびLc/V群は、NaHCO群と比較すると、Th2サイトカイン(IL−5、IL−13、IL−10)産生の有意な低下とIL−4およびTNF−αの有意でない低下を示した(A〜E)。TGF−β1産生も低下した(F)。IFN−γの産生は3つの群すべてにおいて検出されなかった。
【0108】
図19は、腸間膜リンパ節細胞の選択サイトカインプロフィールを示す。腸間膜リンパ節(MLN)からの全細胞を、抗CD3およびCD28の存在下で96ウェルプレート(3×10細胞/ウェル)において48時間培養した。Lc/Dp2およびLc/Vの両群からのMLN細胞は、サイトカインプロフィールが示されたNaHCO群と比較すると、Th2およびプロ炎症性サイトカイン(IL−5、IL−4、IL−13、IL−10およびTNF−α)の有意でない低下を示した(A〜E)。加えて、TGF−β1産生は、対照群と比較すると、Lc/Dp2およびLc/Vの両群からの細胞において高かった。
【0109】
図20は、BALFのサイトカインプロフィールを示す。最後のエアロゾル抗原刺激の約24時間後にマウスを屠殺し、サイトカイン分析のためにBALFを採取した。NaHCO群と比較すると、Lc/VおよびLc/Dp2の両群では、Th2およびプロ炎症性サイトカイン(IL−5、IL−13、IL−4、IFN−γ、TNF−α、TGF−β)およびケモカイン(エオタキシン)の有意でない低下が生じる。両群は、Ac対照群と同様のレベルを有する。
【0110】
図21は、肺における病態生理学的変化および気管支肺胞洗浄液分析を示す。BALFの分析は、Lc/VおよびLc/Dp2の両方がエアロゾル対照群(Ac)と同様の総浸潤細胞数を有し、NaHCO群で認められるよりも有意でなく低いことを示唆した(A)。分画細胞分析は、これらの群の両方について好中球および好酸球の減少を示し、リンパ球およびマクロファージの数には変化がなかった(B)。Lc/Dp2群だけが、その他の群と比較するとBALF中の単球数のわずかな減少を示した。各群の2匹の代表マウスからの肺組織を示した。2匹のエアロゾル対照マウスからの肺切片のH&E染色(GとH)は、細気管支腔内のごくわずかな炎症性浸潤物と肺実質における極微の気道炎症のバックグラウンドを示した。しかし、NaHCO群からのマウスの肺組織は、気道および細気管支腔を取り囲む種々の程度(軽度から重度)の気道浸潤炎症細胞を示した(AとB)。比較すると、Lc/V(CとD)およびLc/Dp2(EとF)給餌マウスは、どちらも炎症性浸潤物のより大きな減少を示し、Acマウスと同様のプロフィールを有していた。
【0111】
図22は、生組換え乳酸桿菌を使用する治療レジメンを示す。治療レジメンでは、C57BL/6マウスの2つの群を、1,14および28日目に経上皮パッチ適用によって組換え酵母由来Der p 2アレルゲンで前感作した。14日間の休息後、IgE応答マウスだけを治療試験のために等しく2つの群(Lb対緩衝液、n=6)に分けた。生組換えDer p 2(Lc/Drp2)をLb群に給餌した。マウスは、42日目から70日目まで合計4週間にわたって毎日給餌された。80日目に両群をDer p 2(PBS 10ml中1mg)のエアロゾルによって抗原刺激した。気管支収縮の指標である肺気流抵抗の測定(pEnh)には、約24時間を要した。一次および二次T細胞培養のため、82日目にマウスを屠殺した。
【0112】
図23は、全身的免疫グロブリン応答を示す。能動的給餌の7日後、Der p 2特異的血清IgE(A)の41%の減少がL.casei Shirota/Dp2群で認められたのに比して、NaHCO対照群では27%だけであった。加えて、Der p 2特異的血清IgG1(B)は、能動的給餌の14日後、L.casei/Dp2群において有意に減少し、一方、NaHCO対照群は給餌の21日後にIgG1の減少を示しただけであった。(C)の二次培養からの脾サイトカインのプロフィールにおいて、白い棒は5匹の対照マウスからのデータの平均値を示す。黒い棒は、6匹の給餌マウスのプール細胞から得たデータの平均値を示す。緩衝液給餌マウスおよび組換え乳酸桿菌給餌マウスのプール細胞(プール細胞は低い増殖を示し、これはT調節性細胞のマーカーである)からの脾T細胞のサイトカインプロフィールは、TH1(IFNγ)およびTH2(IL−5およびIL−13)サイトカイン形成において差を示さなかった。しかし、L.casei Shirota/Dp2を給餌されたマウスは、T調節性サイトカイン(IL−10およびTGF−β)産生の上昇を示した。緩衝液給餌マウス(n=6)対組換え乳酸桿菌給餌マウスのプール細胞。
【0113】
図24は、治療モデル仮説を示すが、これは、いかなる意味においても本発明の方法の基礎となる作用に関し、またはその作用を拘束することを意図しないものと理解される。経上皮パッチ適用は、TH2細胞からのIL−5のレベル低下を生じさせ得る。しかし、組換え乳酸桿菌は、Tr細胞のサイトカインのレベル上昇を引き起こし得る。
【0114】
図25は、マウスへの皮下プライミングの作用の分析のための実験プロトコールの概要を示す。マウスを、0,4,8日目にDer p 2の低用量(LD、10μg)または高用量(HD、50μg)の皮下注射によってプライミングし、その後28日目にDer p 2でブーストした。マウスを、56,58,60および62日目に30分間、PBS中0.1mg/mlのDer p 2のエアロゾル吸入に供し、64日目にT細胞サイトカイン分析のために屠殺した。対照マウスはエアロゾル吸入だけに供した。
【0115】
図26は、マウスにおけるDer p 2特異的体液性応答の動態を示す。マウスをDer p 2の低用量(白い四角、10μg)または高用量(黒い四角、50μg)の皮下注射によってプライミングし、その後Der p 2の低用量およびエアロゾル吸入でブーストした。Der p 2の低用量または高用量でプライミングしたマウスのDer p 2特異的IgE(A)、IgG1(B)およびIgG2a(C)力価をELISAによって測定した。データは平均±標準誤差(n=8)として表わしている。:p<0.05、独立標本についての両側スチューデントt検定。
【0116】
図27は、脾CD4T細胞のサイトカインプロフィールに関するRT−PCR分析を示す(表1も参照のこと)。Der p 2の低用量(LD、図の上部参照)および高用量(HD)でプライミングしたマウスおよび対照マウス(C)を、64日目にエアロゾル化Der p 2曝露に供し、屠殺した。脾細胞をDer p 2と共に10日間培養した。Der p 2培養脾細胞の精製CD4T細胞を抗CD3および抗CD28で24時間刺激し、全RNAをサイトカイン発現の分析のために単離した。比較のために、年齢を適合させたナイーブマウス(N)からの精製CD4T細胞が含められた。各々のバンドは、8匹のマウスのプールした脾からの増幅サイトカイン一式を示す。(:実施せず)
図28は、培養下のリンパ節のサイトカインプロフィールを示す。マウスを、0,4,8日目にrDer p 2タンパク質の低用量(LD、10μg)または高用量(HD、50μg)、またはPBSでプライミングし、10日目に屠殺した。リンパ節を採取し、rDer p 2タンパク質の存在下で3〜5日間培養した。培養上清を収集し、IFN−γ(A)、IL−4(B)、IL−9(C)、IL−10(D)およびTGF−β(E)形成に関してELISAによって分析した。示されている結果は2回の独立した実験を代表する。平均±標準誤差(n=4)。 PBSとの比較、# HDとの比較、p<0.05、独立標本についての両側スチューデントt検定。
【0117】
図29は、SP培養物のサイトカインプロフィールを示す。マウスを、0,4および8日目に皮下注射によってDer p 2の低用量(LD、10μg)または高用量(HD、50μg)、またはPBSでプライミングした。SPを10日目に採取し、rDer p 2タンパク質10μg/mlと共に培養した。上清を3〜5日目に収集し、IFN−γ(A)、IL−4(B)、IL−9(C)、IL−10(D)、IL−13(E)およびTGF−β(F)形成に関してELISAによって分析した。示されている結果は2回の独立した実験を代表し、平均±標準誤差(n=4)である。 PBSとの比較でp<0.05、# HDとの比較でp<0.05、両側スチューデントt検定。
【0118】
図30は、CD4CD25細胞と共培養したときの抗原特異的TH2細胞の増殖とサイトカイン応答を示す。抗原特異的TH2細胞は、rDer p 2タンパク質50μgをパッチ適用したマウスの脾細胞培養物から得られた。TH2細胞を、rDer p 2タンパク質のLD(LD+TH2)またはHD(HD+TH2)でプライミングしたマウスの脾CD4CD25T細胞と共に、またはrDer p 2タンパク質の存在下において単独(TH2単独)で5日間培養し、増殖応答に関して検定した。増殖率は、TH2細胞単独の指数として表わされている(a)。上清をt=72時間に採集し、IL−4、IL−5およびIL−13産生に関して検定した(b、c、d)。結果は3回の独立した実験の平均を示し、平均±標準誤差である。 HDとの比較、# TH2単独との比較。スチューデントt検定、p<0.05。
【0119】
図31は、Blo t 5アレルゲンを発現する組換えL.casei Shirotaに関する動物試験で使用したレジメンを示す。Balbc/Jマウスの3つの群、NaHCO(n=4)、L.casei/pL400(n=4)およびL.casei Shirota/Blo t 5(L.casei/Bt 5;n=4)を検査した。1週につき連続4日間(矢印で示す)毎日1×10cfu/マウスをマウスに給餌した。各々のマウスが摂取した総食餌量は、1×10cfuの20回用量であった。マウスを7週目まで毎週1回採血し、Blo t 5特異的血清免疫グロブリンをELISAによって検定した。マウスを198日目に屠殺し、サイトカイン分析のために、パイアー斑および脾臓からのT細胞を得た。
【0120】
図32は、ELISAによって得られたBlo t 5特異的血清免疫グロブリンのデータを示す。有意のレベルのBlo t 5特異的IgG1が検出されたが、有意のレベルのIgEおよびIgG2aは検出されなかった。
【0121】
図33は、屠殺したマウスのサイトカイン分析を示す(図34参照)。L.casei Shirota/Blo t 5を給餌したマウスのパイアー斑からのT細胞においてのみ、有意のレベルの調節性サイトカインTGF−βが検出され、生組換えL.casei Shirota/Blo t 5がパイアー斑中のT細胞によるT調節性サイトカインの産生を積極的に誘導したことを示している。
【0122】
図34は、発現ベクターpLP400において、本発明を説明する実施例で使用されたアレルゲンBlo t 5の核酸配列(上の列)およびアミノ酸配列(下の列、1文字コード)を示す。5’末端の付加的な塩基「A」(逆方向)が、ベクターの固有の開始コドンと共にインフレームで遺伝子をシフトするために導入された。
【0123】
図35は、発現ベクターpLP500において、本発明を説明する実施例で使用されたアレルゲンDer p 2の核酸配列(上の列)およびアミノ酸配列(下の列、1文字コード)を示す。5’末端の付加的な塩基「A」(逆方向)が、ベクターの固有の開始コドンと共にインフレームで遺伝子をシフトするために導入された。配列は、L.caseiのアンカー配列(「アンカー」)を含んだ。
【0124】
【表1】

表Iは、リアルタイムPCRによる脾CD4T細胞のTH2サイトカインプロフィールを示す。Der p 2の低用量および高用量でプライミングしたマウス、および対照マウスを、64日目にエアロゾル化Der p 2曝露に供し、屠殺した。脾細胞をDer p 2と共に10日間培養した。Der p 2培養脾細胞の精製CD4T細胞を抗CD3および抗CD28で24時間刺激し、全RNAをサイトカイン発現の分析のために単離した。比較のために、年齢を適合させたナイーブマウス(N)からの精製CD4T細胞が含められた。2回の実験の代表的データが示されている。:サイトカイン比率は、実験群(標本)のサイトカイン/HPRTの値をナイーブ群(較正群)で除することによって測定された。
【0125】
(実施例)
以下の例示的な実施例において使用されたマウスは、シンガポール国立大学のアニマル・ホールディング・ユニットより購入した3〜4週齢のC57BL/6マウスであり、前記施設で飼育された。動物保護に関するIACUCは、本試験に使用したすべての動物プロトコールを承認した。以下の実施例において使用された野生型および組換えL.casei Shirota系統またはL.rhamnosus GGの株は、50%グリセロールを含むアリコートとして保持され、−70℃で保存された。
【0126】
統計比較は、スチューデントt検定を使用した平均値の分析によって実施された。すべての値は、平均±標準偏差(SD)として示されている。p<0.05の値が有意とみなされた。
【実施例1】
【0127】
増強緑色蛍光タンパク質(eGFP)を発現する組換えL.caseiの構築
eGFP遺伝子を、Expand High fidelity DNAポリメラーゼ(Boehringer社)および合成プライマーBamHI−eGFP/f[5’−CCC CCG GAT CCA gtg agc aag ggc gag gag ctg−3’、配列番号3]およびeGFP−xhoSac/r[5’−CCC CCC ctc gag CTT GTA CAG CTC GTC CAT GCC GAG−3’、配列番号4]を使用してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。5’末端にBamHI部位および3’末端にXhoI/SacI部位を含む、生じたPCRキットを、その後、pTUATのBamHIおよびSacI部位にサブクローニングした(図1参照)。eGFP−uidA−Tbchを含むBamHI/NheIフラグメントを、pLP500の発現−分泌ベクターのBamHI/NheIフラグメントと交換した(図1参照)。
【0128】
次に、uidA遺伝子をXhoIでの消化によって除去し、発現構築物pLP500−eGFPを作製した。
【実施例2】
【0129】
乳酸桿菌/大腸菌シャトルベクターへのDer p 2遺伝子およびBlo t 5遺伝子のクローニング
Der p 2 cDNAの441bpフラグメントを、Expand High fidelity DNAポリメラーゼ(Boehringer社)および合成プライマー、Dp2Bam/f[5’−CCCCCGGATCCAGATCAAGTCGATGTCAAAGATTGTGC−3’、配列番号5]およびDp2xhoSac/r[5’−CCCCCCGAGCTCCTCGAGATCGCGGATTTTAGCATGAGTAGC−3’、配列番号6]を使用してPCRによって増幅した。5’末端および3’末端にそれぞれBamHI部位およびXhoI/SacI部位を含む、生じたDer p 2遺伝子のPCRキットは、配列:5’−GGATCC A GAT CAA GTC GAT GTC AAA GAT TGT GCC AAT CAT GAA ATC AAA AAA GTT TTG GTA CCA GGA TGC CAT GGT TCA GAA CCA TGT ATC ATT CAT CGT GGT AAA CCA TTC CAA TTG GAA GCC GTT TTC GAA GCC AAC CAA AAC ACA AAA ACC GCT AAA ATT GAA ATC AAA GCC TCA ATC GAT GGT TTA GAA GTT GAT GTT CCC CGT ATC GAT CCA AAT GCA TGC CAT TAC ATG AAA TGC CCA TTG GTT AAA GGA CAA CAA TAT GAT ATT AAA TAT ACA TGG AAT GTT CCG AAA ATT GCA CCA AAA TCT GAA AAT GTT GTC GTC ACT GTT AAA GTT ATG GGT GAT GAT GGT GTT TTG GCC TGT GCT ATT GCT ACT CAT GCT AAA ATC CGC GAT CTC GAG(配列番号1)を有していた。PCRキットを、中間体pTUATベクターのBamHIおよびSacI部位にサブクローニングした(図1B)。その後、Der p 2−uidA−アンカー−Tbchを含むBamHI/NheIフラグメントを、乳酸桿菌/大腸菌シャトルベクターpLP500のBamHI/NheIフラグメントと交換した(図1A)。次に、uidA遺伝子をXhoIでの消化によって除去し、再連結して、pLP500/Dp2−アンカー発現構築物を作製し、その後ヌクレオチド配列決定によって確認した。
【0130】
当技術分野で公知の適切な材料によって同じ遺伝子操作技術を使用した対応するアプローチを、乳酸桿菌/大腸菌シャトルベクターpLP400を用いてBlo t 5に関して実施した。17個のN末端アミノ酸を欠くBlo t 5タンパク質をコードするベクターpLP400内の、Blo t 5遺伝子のそれぞれの配列は、5’−GGATCC A CAA GAG CAC AAG CCA AAG AAG GAT GAT TTC CGA AAC GAA TTC GAT CAC TTG TTG ATC GAA CAG GCA AAC CAT GCT ATC GAA AAG GGA GAA CAT CAA TTG CTT TAC TTG CAA CAC CAA CTC GAC GAA TTG AAT GAA AAC AAG AGC AAG GAA TTG CAA GAG AAA ATC ATT CGA GAA CTT GAT GTT GTT TGC GCC ATG ATC GAA GGA GCC CAA GGA GCT TTG GAA CGT GAA TTG AAG CGA ACT GAT CTT AAC ATT TTG GAA CGA TTC AAC TAC GAA GAG GCT CAA ACT CTC AGC AAG ATC TTG CTT AAG GAT TTG AAG GAA ACC GAA CAA AAA GTG AAG GAT ATT CAA ACC CAA CTC GAG(配列番号2)であった。PCRフラグメントを、中間体pTUATベクターのBamHIおよびSacI部位にサブクローニングした(図1B)。その後、Blo t 5−uidA−Tbchを含むBamHI/NheIフラグメントを、乳酸桿菌/大腸菌シャトルベクターpLP400のBamHI/NheIフラグメントと交換した(図2)。次に、uidA遺伝子をXhoIでの消化によって除去し、再連結して、pLP400/Bt5−アンカー発現構築物を作製し、その後ヌクレオチド配列決定によって確認した。
【0131】
すべてのプラスミドDNAおよび構築物を大腸菌宿主細胞において保持し、増殖させた。
【実施例3】
【0132】
L.casei Shirota−eGFPの共焦点分析
pL500−eGFP構築物を含むL.casei Shirota細胞(L.casei Shirota−eGFP)およびpL500ベクターを、37℃の5.0%COインキュベーターにおいて、5μg/mlエリスロマイシンを含むMRS培地(Difco Laboratories Detroit)でそれぞれ培養した。培養物が0.6および1.8のOD690nmに達したとき、合計0.5mlを採集し、PBS(pH7.4)で2回洗浄した。細胞をPBS1mlに再懸濁し、共焦点顕微鏡下で分析した。pL500ベクターを含むL.casei Shirotaを陰性対照として使用した。
【実施例4】
【0133】
マウスパイアー斑におけるL.casei Shirota−eGFPのトランスロケーション
マウスにおけるL.casei Shirota−eGFPのパイアー斑へのインビボでのトランスロケーションを調べるため、6週齢のBalbc/Jマウスに、各マウスにつき1×10コロニー形成単位(cfu)のL.casei Shirota−GFPまたはL.casei Shirota−pLP500を連続4日間経口投与した。5日目にマウスを屠殺し、免疫組織化学および透過型電子顕微鏡検査用のクリオスタット組織切片のために個々のマウスのパイアー斑組織を得た。
【0134】
パイアー斑をOCTに包埋し、液体窒素中で急速凍結した。厚さ2μmのクリオスタット組織切片をシラン化処理スライドガラス上に置き、4℃で10分間、100%アセトン(+0.02%H)中で固定した。切片を空気乾燥し、その後PBST(0.05%Tween20)中で3回洗浄した。固定した切片を、次に、室温で5分間、Ultra V Block(Lab Vision社、米国、カリフォルニア州 フレモント)中でブロックした。ブロッキング溶液を除去し、1%BSAを含むPBST中で1:100希釈したそれぞれの抗体または抗体の組合せ[APC結合抗マウスTHY−1.2、フィコエリトリン(PE)結合抗マウスCD19(BD Biosciences社)]を添加して、湿室において4℃で一晩インキュベートした。翌日、切片をPBST中で3回洗浄した(各々5〜10分間)。スライドガラスをFluorSave(登録商標)試薬(Calbiochem社)に封入し、共焦点顕微鏡下で観察した。
【実施例5】
【0135】
透過型電子顕微鏡検査(TEM)
eGFPタンパク質ではなく、無傷L.casei Shirotaのトランスロケーションを示すため、経口投与したマウスからのパイアー斑組織のTEMを実施した。簡単に述べると、L.casei Shirota−eGFPを給餌(4日間にわたって4回)したマウスからのパイアー斑の組織切片を、4℃で一晩、2.5%グルタルアルデヒド中で固定した。これらの試料を室温にてカコジル酸緩衝液中の1%四酸化オスミウムで後固定し、漸増濃度のエタノール中で段階的に脱水し、その後100%プロピレンオキシド中で最終的に脱水した。試料を、プロピレンオキシド:エポキシ樹脂が1:1の混合物中でインキュベートし、最後にエポキシ樹脂に包埋した。超薄切片を銅グリッドに固定化し、酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛で染色して、透過型電子顕微鏡で観察した。
【実施例6】
【0136】
電気穿孔およびL.casei ShirotaにおけるDer p 2の異種発現
最初に、L.casei Shirotaを、37℃の5.0%COインキュベーターにおいて、MRS培地(Difco Laboratories社、デトロイト)で培養した。L.caseiのコンピテント細胞を対数増殖中期(OD690nm=0.6)の細胞から調製し、あらかじめ冷却しておいた洗浄緩衝液(50mM KHPO−KHPO (pH7.4);0.3Mスクロース、1mM MgCl)中で洗浄して、冷却電気穿孔緩衝液(952mMスクロース、3.5mM MgCl)に再懸濁した。プラスミドDNA pLP500またはpLP500/Dp2−アンカー(1μg)を細胞懸濁液100μlに添加し、Gene Pulser II、BioRad社を使用した電気穿孔のため、0.2cmキュベットに移した(条件:電位2.5kV、容量25μF、抵抗200Ω)。パルス後、MRS培地900μlを添加し、細胞を3時間インキュベートした後、エリスロマイシン(5μg/ml)を含むMRS寒天に塗布した。
【0137】
形質転換したL.casei ShirotaからのプラスミドDNAの抽出および構成的プロモーター下でのL−(+)−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のL.casei Shirotaにおける異種発現を、Maassenら(Vaccine.(1999)17,17,2117−2128)によって以前に述べられたように実施した。合計5mlの形質転換細菌培養物を採集し、ペレットをPBS(pH7.4)中で1回洗浄した。細菌ペレットを、氷上にて1時間、リゾチーム(Sigma社)を含むPBS緩衝液中で消化し、その後、Wizard DNA Miniprepキット(Promega社)を使用してDNAプラスミド抽出を実施した。
【0138】
異種発現試験のため、Lc/Dp2またはLc/Vの一晩培養物を用い、50mlファルコン試験管中の5μg/mlエリスロマイシンおよび1%グルコース(w/v)を含むMRSブロス(1:700希釈)に接種した。培養物を一晩増殖させ、OD690nmが1.0を超える状態で細胞を採集し、PBS中で1回洗浄した。細胞を溶解緩衝液(1%Tween20および1mM PMSFを含むPBS)に再懸濁し、超音波処理して(10振幅ミクロン、30秒オン/30秒オフ、2分間)、可溶性分画を、Der p 2モノクローナル抗体を使用するウエスタン免疫ブロットアッセイでの検出のためにSDS−PAGEで分離した。
【実施例7】
【0139】
野生型L.casei Shirotaと脾臓および腸間膜リンパ節からのマウスT細胞の共培養
野生型L.casei Shirotaと共培養した後のマウスT細胞に関してサイトカインプロフィールを測定した。約1×10(腸間膜または脾臓からの選別されたCD3細胞)または3×10(全脾臓)を共培養のために各々のウェルに添加した。L.casei Shirotaの新鮮培養物を、OD690nmが0.6に達するまで、0.5%COインキュベーター中37℃にてMRSブロス(Difco社)で増殖させた。培養物のアリコートをPBS中で2回、RPMI 1640中で1回洗浄し、最後にT細胞培養培地に再懸濁した。96ウェル培養プレートの2つずつのウェル2組において(最終容量200μl/ウェルで)、1:0,1:0.5,1:1,1:2,1:5のT細胞:L.casei Shirota比で、共培養を実施した。共培養の16時間後および24時間後に培養上清を採集し、ELISAを使用してTGF−βサイトカインレベルに関して検査した。
【実施例8】
【0140】
給餌のためのLc/VおよびLc/Dp2の調製
給餌実験全体のために必要な熱死滅Lc/VおよびLc/Dp2のストックを調製した。Lc/VまたはLc/Dp2の新鮮培養物を、37℃の0.5%COインキュベーターにおいてMRSブロス(Difco社)で増殖させ、5×10cfu/ml培養物に等しい690nmでの光学密度(OD)1.0に基づき、分光光度計で定量した。必要量のLc/VまたはLc/Dp2培養物を3,500rpmで10〜15分間遠心分離し、細胞ペレットをPBS(pH7.0)中で2回洗浄し、次いで0.2M NaHCO(pH8.4)中で最終洗浄した。その後細胞を0.2M NaHCO(pH8.4)緩衝液に109cfu/100μlの最終濃度まで再懸濁し、マイクロ反応管(Eppendorf社)につき400μlのアリコートに分けた。次に細菌をThermomixer(Eppendorf社)において95℃で30分間熱死滅させ、その後さらなる使用時まで−70℃で凍結保存した。細胞の生存能力を、MRSプレートで培養することによって試験した。
【実施例9】
【0141】
Der p 2特異的免疫グロブリン応答の検出
Der p 2特異的IgEおよびIgG1のレベルをELISAによって測定した。簡単に述べると、二組のマウス血清を、Der p 2(2μg/ml)で被覆したウェルと共に4℃で一晩インキュベートした。検出のためにビオチン結合モノクローナルラット抗マウスIgE(R19−15)および抗マウスIgG1(G1−1.5)を使用し、その後ExtrAvidin−アルカリホスファターゼを添加した。p−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)基質の添加によってシグナルを発現させた。ELISA指数単位は、同じプレートで抗マウスIgκを捕獲抗体として使用したサンドイッチELISA法における1ng/mlの精製マウスIgEまたはIgG1の測定値に相当するOD405nm測定値とした。使用したすべての抗体はPharmingen(Pharmingen社、カリフォルニア州 サンディエゴ)より購入した。
【実施例10】
【0142】
T細胞サイトカインプロファイリングおよび増殖アッセイ
T細胞培養を、10%熱不活性化ウシ胎仔血清(StemCell Technologies社)、2mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(Hyclone Laboratories社、ユタ州 ローガン)および5.5×10−2mM 2−メルカプトエタノール(Life technology社、ニューヨーク州 グランドアイランド)を添加したRPMI 1640培地で実施した。
【0143】
簡単に述べると、脾臓から単細胞懸濁液を調製し、赤血球溶解を実施した。脾細胞(30×10細胞/ウェル)を、10μg/mlのDer p 2の存在下において、添加RPMI 1640 10mlを含む6ウェルプレートで3日間培養した。3日目に、各ウェルからの培地5mlを、IL−2(10U/ml)を含む新鮮培地と交換し、合計9日間の培養中2日ごとに培地を交換して、細胞をそのまま保持した。9日目に、Der p 2特異的T細胞をフィコールによって精製し、細胞を96ウェル丸底プレート(Costar社、ニューヨーク州 コーニング)において2回再活性化し、各々のウェルは、最終容量200μl/ウェル中に1×10精製T細胞、3×10マイトマイシン処理APCおよび10μg/ml Der p 2を含んだ。培養の48時間後、上清を収集し、−20℃で保存した。腸間膜リンパ節(MLN)細胞を、5μg/mlの抗CD3(クローン:145 2C11)および抗CD28(クローン:37AE51)(どちらのクローンもBD Pharmingen社、英国、オックスフォードより)で被覆したウェルにおいて培養した。72時間後、上清を収集し、−20℃で保存した。IL−4、IL−5、IL−13、TNF−α、TGF−βおよびIL−10サイトカインの存在に関して検定するため、抗体対(Pharmingen社)を使用してELISAによってサイトカインプロファイリングを2回実施した。マウスIL−4、IL−5、IL−10、IL−13、TNF−αおよびTGF−β抗体に対する精製抗体を2μg/mlで96ウェルプレートに被覆した。それぞれのマウスIL−4、IL−5、IL−10、IL−13、TNF−αおよびTGF−β抗体に対するビオチニル化ポリクローナル抗体を供給者によって推奨されるように使用した。組換えマウスサイトカインをELISAアッセイにおける標準品として使用した。すべての抗体および組換えサイトカインは、特に記述されない限り、BD Biosciences PharMingen社(カリフォルニア州、サンディエゴ)からであった。
【0144】
T細胞増殖アッセイを、5μg/mlまたは10μg/mlのrDer p 2の存在下または不在下でAPC(3×10細胞/ウェル)と72時間共培養したパイアー斑細胞(1×10細胞/ウェル)を使用して実施した。採集の約18時間前に、細胞を[3H]チミジン(NEN Life Science社、マサチューセッツ州 ボストン)1μCiでパルスした。細胞をガラス繊維フィルター(Skatron instruments AS社、ノルウェー国、Lier)に採集した。シンチレーション液(Amersham Biosciences社)の添加後、液体シンチレーション計数器(Beckman Coulter社、カリフォルニア州 フラトン)によって増殖を測定した。増殖指数は、rDer p 2の存在下での細胞によるチミジンの取り込みと不在下での取り込みの比として表わされている。
【実施例11】
【0145】
BALF分析と肺組織学
マウスに、1.25mg/mlミダゾラム、2.5mg/mlフルアニゾンおよび0.079mg/mlクエン酸フェンタニルを含む混合物の致死量を腹腔内注射した。気管を露出させ、気管切開術によってカニューレ挿入して(20Gカニューレ)、肺を氷冷ハンクス平衡塩類溶液(カルシウムおよびマグネシウムを含まないHBSS)0.8mlで3回洗浄し、洗浄液をプールした。BALFの分画細胞数算定のために総細胞数算定および2回のサイトスピンを実施した。簡単に述べると、BAL試料の容量を測定し、試料を遠心分離して(室温にて700gで5分間)、100μl(PBS/10%FCS)中1×10細胞で再懸濁し、ポリ(l−リシン)被覆スライドガラス(Cytospin 5 Thermo Shandon社、ペンシルバニア州 ピッツバーグ)への集細胞遠心(cytocentrifugation)(300gで3分間)によってサイトスピンを作製した。スライドガラスを空気乾燥し、メタノールで固定して、標準手順(Merck社、英国)を用いて染色した。分画細胞数算定を、各々の試料からの500細胞に対して被覆スライドガラス上で2回実施した。IL−5、IL−13、TNF−α、TGF−βおよびエオタキシンのレベルをELISAによって測定した。
【0146】
肺を切除し、PBSで洗浄して、10%ホルマリンで固定した。肺をパラフィンに包埋し、切片(厚さ2μm)を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)を使用して全般的形態および細胞浸潤に関して評価した。
【実施例12】
【0147】
喘息マウスモデルにおける予防レジメン
本実施例は、予防レジメンにおける、Der p 2を発現する経口投与される熱死滅組換えL.casei Shirota(Lc/Dp2)の、Der p 2の皮下ブースティングと組み合わされた使用方法を説明する(図10参照)。本実施例は、Der p 2の皮膚パッチ適用およびエアロゾル抗原刺激による感作を通して作製された、Der p 2誘発性実験的喘息マウスモデルを使用するプライム−ブースト戦略に基づく。本実施例はまた、プライム−ブースト戦略における、Der p 2の皮下ブースティングと組み合わせたDer p 2を発現する経口投与熱死滅組換えL.casei Shirotaの効果が、Der p 2誘発性喘息モデルへの予防レジメンを使用してどのように評価することができるかを説明する(図10参照)。対照群は、NaHCO緩衝液または熱死滅Lc/Vのいずれかを給餌されたマウスから成る。本実施例では、乳酸桿菌調製の容易さのために、および生存遺伝子操作生物(GMO)の使用に関する安全性必要条件を満たすために、生組換え乳酸桿菌ではなく熱死滅乳酸桿菌が使用された。しかしながら、乳酸桿菌はいかなる所望の活性であってもよいことに留意されるべきである(上記も参照のこと)。
【0148】
経口給餌は、加圧滅菌した強制飼養ニードル(Popper & sons社、ニューヨーク州)を使用して実施した。実施例8で述べられた凍結熱死滅Lc/VまたはLc/Dp2のアリコートを室温に解凍し、各々のマウスは、試験期間全体にわたって1週間につき連続3日間、1日につき109の熱死滅Lc/VまたはLc/Dp2を含む100μlの1回用量またはNaHCO緩衝液100μlを摂取した。11日目と18日目に、すべてのマウスをDer p 2(50μg/マウス)で皮下的に免疫した。次にすべてのマウスを経上皮パッチ適用によって3回(22,36および50日目)感作した。簡単に述べると、各マウスの包皮を、Der p 2アレルゲン50μgを含むガーゼの小さなパッチで経上皮的に連続3日間曝露した。3回目の感作の1ヵ月後に、マウスをDer p 2(1mg/10ml PBS)のエアロゾルによって2回抗原刺激した。抗原刺激の約24時間後、分画細胞数算定およびサイトカイン分析のために気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取し、組織学的分析のために肺を採取した。細胞培養のために脾臓および腸間膜リンパ節(MLN)を得た。0日目および週に1回採取した血液試料を2000gで遠心分離し、血清を収集して、抗体レベルの測定のために−20℃で保存した。
【0149】
Lc/Dp2給餌マウスにおけるDer p 2特異的血清IgEレベルの動態は、NaHCOおよびLc/V給餌マウスよりも低く、Lc/Dp2単独の給餌が気道抗原刺激後でさえもIgE産生を抑制し得ることを示している(図11)。3つの群全てに関してDer p 2特異的血清IgG1レベルには有意差がなかった。動物試験の場合、Lc/Dp2給餌動物、たとえばマウスにおけるTリンパ球によるTh2サイトカイン産生の同時下方調節もみられた。この目的のために、Der p 2または抗CD3/CD28の存在下でのそれぞれの培養のために、脾臓および腸間膜リンパ節(MLN)細胞を得た。図12に示すように、皮下免疫したLc/Dp2給餌マウスからの脾T細胞は、対照群と比較すると、より低いレベルのTh2(IL−4、IL−5、IL−13)およびプロ炎症性サイトカイン(TNF−α)を産生し、TGF−βの同時上昇およびDer p 2特異的T細胞増殖の低下を伴った。MLN細胞の分析は、Lc/vおよびLc/Dp2給餌マウスの両方で、NaHCO対照群と比較して、IL−13の有意に低いレベル、IL−4、IL−5およびIL−10の有意でない低下(Ac対照マウスと同様のレベル)およびTGF−βのレベル上昇が生じたことを示す(図13参照)。
【0150】
Lc/Dp2の給餌は、Th2およびDer p 2特異的Tr細胞の混合物に対してプライミングし、その後さらに2回の高用量皮下免疫によって増強されたという仮説が立てられる。これらのDer p 2特異的Tr細胞は、TGF−β1などの調節性サイトカインを通して既存のTh2細胞に阻害または寛容原性作用を及ぼし得る。本発明者らは、気道抗原刺激後に得られたLc/Dp2給餌マウスの血清中のTh2型循環IL−10サイトカインレベルが対照群と比較して有意に低いことを確認した。Lc/Dp2給餌マウスからのBALFのサイトカインプロフィールは、IL−13、IL−5、TNF−α、エオタキシン(好酸球についてのケモカイン)の低下およびTGF−β1の有意の低下を示した(図14)。同時に、これらのマウスはまた、BALF細胞数の減少を示し(図15A)、そのレベルはAc群と同様であった。加えて、Lc/Dp2給餌マウスだけが好中球数の有意な減少を示した(図15B参照)。Lc/Dp2給餌マウスからのBALFにおけるリンパ球数の有意でない増加を除き、好酸球数は少なく、すべての群について同様であった。
【0151】
NaHCOまたはLc/V群からのマウスの肺組織は、種々の程度(軽度から重度)の気道病変および気管支肺胞腔を取り囲む炎症性浸潤物を示した(図15C)。それに対し、Lc/Dp2給餌マウスからの肺切片は、肺炎症の実質的な低下を示し、Acマウスと同様のプロフィールを有していた(図15C参照)。
【0152】
Der p 2タンパク質による2回の皮下ブースティングと組み合わせたLc/Dp2の経口投与によってプライミングしたマウスは、アレルギー応答の全体的下方調節を示し、それゆえ有効な予防レジメンである。このプライム−ブーストレジメンは、気道ならびにBおよびT細胞レベルにおいて、寛容示し、かつ/またはTh2調節因子を下方調節する抗原特異的Tr細胞のサブセットを誘導することができ、それにより、このマウスモデルにおいてアレルギー性喘息および気道リモデリングの病因を効率的にブロックし得る。CD25CD4、Tr1およびTh3などのマウスTr細胞が、喘息およびアレルギーの下方調節において極めて重要な役割を果たすことが報告されている。Tr細胞および関与する調節性サイトカインの誘導の機構および役割をさらに説明する。
【実施例13】
【0153】
喘息マウスモデルにおける治療レジメン
本実施例は、Der p 2誘発性喘息マウスモデルへのDer p 2タンパク質の皮下免疫による免疫療法と組み合わせた、治療レジメンにおける経口投与熱死滅組換えLc/Dp2または野生型Lc/Vの効果を示す(図16)。示されているデータに用いられた対照群は、NaHCO緩衝液を給餌したマウスから成る。このレジメンでは、マウスを経上皮パッチ適用によって前感作し、その後連続5週間にわたって熱死滅Lc/VまたはLc/Dp2を給餌した。すべてのマウスが、給餌の最後の2週間に2回の皮下免疫付与を受けており、したがって免疫療法で採用される皮下免疫を模倣している。
【0154】
簡単に述べると、実施例12で述べられたように、C57BL/6マウスをDer p 2(50μg/マウス)の経上皮パッチ適用によって前感作した(0、14および28日目)。33日目に、Der p 2特異的血清IgEおよびIgG1のプロフィールをELISAによって測定し、IgEレベルに基づき、マウスをその後各々6匹ずつの3つの群に分けた。マウスに、NaHCO緩衝液、熱死滅L.casei Shirota/pLP500(Lc/V、野生型対照)またはL.casei Shirota/Derp2(Lc/Dp2)のいずれかを経口的に給餌した。経口給餌は、加圧滅菌した強制飼養ニードル(Popper & sons社、ニューヨーク州)を使用して実施した。上述した凍結熱死滅Lc/VまたはLc/Dp2のアリコートを室温に解凍し、各々のマウスは、35日目から開始して1週間につき連続3日間ずつ5週間にわたって、1日につき109の熱死滅Lc/VまたはLc/Dp2を含む100μlの1回用量またはNaHCO緩衝液100μlを摂取した。55日目と62日目に、マウスをDer p 2(50μg/マウス)の2回の皮下注射で免疫し、その後Der p 2アレルゲン(1mg/10ml PBS)のエアロゾルによって2回抗原刺激した。最後の抗原刺激の約24時間後、分画細胞数算定およびサイトカイン分析のためにBALFを採取し、組織学的試験のために肺を得た。
【0155】
図17が示すように、3つの群すべてのマウスが、給餌の開始から1週間後にDer p 2特異的IgEの低下を示した。IgEレベルは、62日目の高用量Der p 2アレルゲンによる1回目の皮下免疫後に上昇したが、2回の連続的エアロゾル抗原刺激(69および77日目)の前後に、Lc/VおよびLc/Dp2給餌マウスについては対照マウスと比較してIgEレベルが有意に低下した(図17B参照)。これに対し、Der p 2特異的血清IgG1は、皮下免疫後、対照マウスと比較すると62および69日目にこれら2つの群に関して有意に高く、気道抗原刺激後も不変のままであった(図17Cおよび図17D)。
【0156】
対照群と比較して、Lc/VおよびLc/Dp2給餌マウスにおいてTリンパ球によるTh2サイトカイン産生の下方調節が存在するかどうかを判定するため、それぞれDer p 2または抗CD3/CD28の存在下での培養のために脾T細胞および腸間膜リンパ節細胞を得た。Lc/Dp2およびLc/V給餌マウスの両方からのDer p 2特異的脾T細胞は、NaHCO群と比較してTh2サイトカイン(IL−5、IL−13、IL−10)の有意な低下およびIL−4とTNF−αの有意でない低下を示した(図18)。興味深いことに、TGF−β1産生において、両群で有意でない低下が生じた。脾T細胞と同様に、Lc/Dp2およびLc/Vの両群からの腸間膜リンパ節(MLN)細胞は、Th2およびプロ炎症性サイトカイン(IL−5、IL−4、IL−13、IL−10およびTNF−α)産生において有意でない低下を示した(図19)。これに対し、MLN細胞におけるTGF−β1産生は、NaHCO群と比較してLc/Dp2およびLc/V群の両方に関して高かった(図19F)。
【0157】
NaHCO群と比較すると、Lc/VおよびLc/Dp2の両群からのBALFのサイトカインプロフィールは、Th2とプロ炎症性サイトカイン(IL−5、IL−13、IL−4、IFN−γ、TNF−α、TGF−β)、および好酸球動員のためのサイトカインであるエオタキシンの両方で有意でない低下を示した。両群は、エアロゾル(Ac)対照群と同様のレベルを有する(図20参照)。Lc/VおよびLc/Dp2の両群は、Ac対照群と比較して同様の数の総浸潤細胞を示し、NaHCO群で認められたよりも有意でなく低かった(図21参照)。分画細胞分析は、これらの群の両方について好中球および好酸球の減少を示し、一方、リンパ球およびマクロファージの数は影響を受けなかった。Lc/Dp2群だけが、他の群と比較して気管支肺胞洗浄液(BALF)中の単球数のわずかな減少を示している。
【0158】
各群の6匹のうち2匹の代表的マウスからの肺組織を示した(図21参照)。2匹のエアロゾル対照マウスからの肺切片のヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色(GおよびH)は、細気管支腔内のごくわずかな炎症性浸潤物および肺実質における極微の気道炎症のバックグラウンドを示した。しかし、NaHCO群からのマウスの肺組織は、気道および細気管支腔を取り囲む種々の程度(軽度から重度)の気道炎症浸潤細胞を示した(AおよびB)。比較すると、Lc/V(c−d)およびLc/Dp2(E−F)給餌マウスの両方が、炎症性浸潤物のより大きな減少を示し、Acマウスと同様のプロフィールを有していた。
【実施例14】
【0159】
Der p 2で前感作したマウスへの生L.casei Shirota/Dp2の経口投与の作用
前記実施例が熱不活性化乳酸桿菌の代わりに生組換え乳酸桿菌を使用して同様に実施され得ることは理解されるが、本実施例は、Der p 2を発現する生組換えL.casei Shirotaの使用方法を説明する。
【0160】
Der p 2特異的IgEおよびIgG1力価を測定するために、C57/B6マウスから週に1回採血した。すべてのアッセイはELISAによって測定された(図32参照)。マウスに、PBS100μl中の組換え酵母由来Der p 2アレルゲン50μgを経上皮的に3日間パッチ適用した。マウスに1日目、14日目および28日目に3回パッチ適用した。14日間の休息後、IgE応答マウスだけを治療試験のために等しく2つの群(Lb対緩衝液)に分けた。
【0161】
重炭酸緩衝液50μl中約10細胞の生組換えDer p 2(Lc/Drp2)をLb群の6匹のマウスの各々に給餌した。給餌の前に細胞を重炭酸緩衝液で2回洗浄した。対照マウスには重炭酸ナトリウム緩衝液だけを与えた。給餌は毎日実施し、合計4週間継続した。
【0162】
最後の給餌の10日後に両群を抗原刺激した(エアロゾル)。同じ群からのマウスを1つのチャンバーに入れた。PBS10ml中の組換え酵母由来Der p 2 1mgをチャンバー内に噴霧し、30分間マウスに吸入させた。
【0163】
0,14および28日目に、C57BL/6マウスをDer p 2アレルゲン(50μg/マウス)の経上皮パッチ適用によって感作した。42日目にDer p 2特異的IgEレベルを測定し、応答マウスをそれぞれのIgE力価に従って2つの群(n=6)に分けた。経口給餌を1ヶ月間毎日実施し、1つの群にはNaHCO対照を給餌し、他方の群には組換えL.casei Shirota/Dp2の1回用量(1×10cfu)/マウスを給餌した。80日目にマウスを1回エアロゾル抗原刺激した後、82日目に屠殺し、T細胞培養のために脾臓を採取した(図22参照)。
【0164】
2つの群のマウスの免疫応答を全身的IgG1およびIgE産生および脾T細胞のサイトカインプロフィールに基づいて分析した。前感作したマウスは、L.casei Shirota/Dp2を給餌したとき、Der p 2特異的血清IgEおよびIgG1レベルを効率的に低下させることができる。図23に示されるように、L.casei Shirota/Dp2給餌マウスは給餌後の約7日目にDer p 2特異的血清IgEの41%の減少を示したのに比べ、NaHCO対照群はIgEの27%だけの減少を示した(図23A参照)。加えて、Der p 2特異的血清IgG1は、NaHCO対照群に比べ、L.casei Shirota/Dp2給餌マウスにおいて有意に減少した(図23B参照)。
【0165】
しかし、L.casei Shirota/Dp2給餌群の脾T細胞プロフィールは、TH1およびTH2サイトカイン産生に関してNaHCO対照群と同様であった(図24参照)。加えて、L.casei Shirota/Dp2を給餌したマウスは、T調節性サイトカイン(IL−10およびTGF−β)産生の上昇を示した(図23C参照)。この治療モデルでは、これらのマウスにおける気道炎症のプロフィールは検査しなかった。
【実施例15】
【0166】
高用量Der p 2の皮下プライミングはDer p 2で抗原刺激したマウスにおいてIgEおよびTr関連サイトカイン産生の減少を導いた
この実施例は、マウスにおけるアジュバントの適用なしでの抗体産生の調節におけるDer p 2アレルゲンの投与効果の測定を説明する。
【0167】
8匹の雌性マウス(6〜8週齢)の群に、酵母組換えDer p 2タンパク質の低用量(LD)[10μg/マウス]または高用量(HD)[50μg/マウス]を皮下注射によって4日の間隔で3回投与した(図1参照)。Der p 2のLDによるブーストを28日目に免疫マウスに与えた。エアロゾル抗原刺激では、マウスを拘束せずにデシケーター室に保持し、超音波ネブライザ(UltraNEB 99型、DeVilbiss Health Care社、ペンシルバニア州 サマセット)によって生成したエアロゾルDer p 2の連続流を与えた。PBS中のDer p 2 0.1mg/mlの4回の投与を2日の間隔で30分間実施した。対照マウスは、エアロゾルDer p 2の吸入だけに供した。血清を収集し、Der p 2特異的抗体に関して分析した(図28参照)。
【0168】
(a)Der p 2特異的抗体に関するELISA
Der p 2特異的IgG1、IgEおよびIgG2a抗体のレベルをELISAによって測定した。ELISAプレート(Costar社、米国、ニューヨーク州 コーニング)を、被覆緩衝液(0.1M NaHCO、pH8.3)中5μg/mlの組換えDer p 2と共に4℃で一晩インキュベートした。すべての試薬は、特に記述されない限り、50μl/ウェルの用量で使用した。インキュベーション後、プレートをPBS/0.05%Tween20で3回洗浄し、ブロッキング緩衝液(PBS/0.05%Tween20中1%BSA)100μlで、室温で1時間ブロックした。プレートを連続希釈血清と共に4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄し、250μg/mlのビオチニル化モノクローナルラット抗マウスIgG1(G1−1.5)、IgG2a(R35−92)またはIgE(R19−15)(Serotec社、英国、オックスフォード)と共に室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、アルカリホスファターゼ結合ExtrAvidin(Sigma Chemical 社、ミズーリ州 セントルイス)(1:2000希釈)と共にインキュベートした。プレートを6回洗浄し、Sigma Fast pニトロフェニルホスファターゼ基質を用いて展開した。1時間のインキュベーション後、ELISAプレートリーダー(Tecan G.m.b.H社、オーストリア国)を使用して405nmで吸収を測定した。同様のプロトコールを、以下の変更を除いて、標準曲線を作成するために使用した。抗マウスIgκ軽鎖Ab(187.1)(Pharmingen社、カリフォルニア州 サンディエゴ)を2つのウェルに被覆し、マウス組換えIgG1(107.3)、IgG2a(G155−178)またはIgE(C38.2)(Pharmingen社)を、50ng/mlから開始して2倍ずつ連続希釈した。抗体力価を標準品と比較した。ELISA単位(EU)は、同じプレートで抗マウスIgκを捕獲抗体として使用するサンドイッチELISA法における検出抗体1ng/mlの測定値に相当するOD405nm測定値とした。
【0169】
低用量(LD)Der p 2アレルゲンによる反復皮下注射は、高いIgE産生(4.0±0.7EU)を刺激することが認められ、IgE産生はブースティングの1週間後に劇的に上昇(>4倍)した(図26A、白い四角)。IgG1産生は、64日目までは一貫して低いままであった(3280±550EU)が、64日目に、おそらくエアロゾル化Der p 2への曝露を原因として上昇が起こった(図26B、白い四角)。IgG2aレベルは低いままであった(104±67EU、図26C、白い四角)。反対に、高用量(HD)のDer p 2アレルゲンで初回抗原刺激したマウスは、低い基線IgEレベルを有していた(1.30±0.33EU、図26A、黒い四角)。この群のマウスは一貫してより高いIgG1産生(8130±1000EU、図26B、黒い四角)を示し、ブースティング後にIgG1産生が大きく上昇した(44800±4250EU)。それらのIgG2aレベルも、特にブースティング後または吸入抗原刺激後に(340±260EU、図26C、黒い四角)、LDでプライミングしたマウスにおけるよりも高かった。
【0170】
(b)脾T細胞培養
処置したマウスを64日目に頸部脱臼によって屠殺した。脾臓をマウスから切除し、RBC溶解緩衝液(0.53%塩化アンモニウム)を使用することによって赤血球を除去した。細胞を、37℃の5%COインキュベーターにおいて、10%熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS)[Hyclone Laboratories社、ユタ州 ローガン]、2mM L−グルタミン(Hyclone Laboratories社)、1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco BRL社)、5.5×10−2mMのβ−mercaptoethanol(Life Technology社、ニューヨーク州 グランドアイランド)、抗生物質(100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン)(Hyclone Laboratories社)を添加したRPMI−1640培地中2×10細胞/mlで、Der p 2アレルゲン10μg/mlと共に培養した。マウス組換えIL−2(R & D systems社、米国、ミネソタ州 ミネアポリス)は、10U/mlで3、5、7日目に添加した。10日目にフィコール勾配遠心分離(Ficoll pague plus、Pharmacia社)を使用して生育可能細胞を回収した。
【0171】
(c)CD4T細胞の濃縮と刺激
CD4T細胞を、抗マウスCD4ビオチン結合抗体(GKl.5)およびストレプトアビジン結合マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社)を使用し、製造者の指示に従ってAutoMacs(Miltenyi Biotec社、独国、ベルギッヒ グラヂバッハ)によって濃縮した。濃縮プロトコールを実施する前に、ナイーブマウスの脾細胞を5%FCS/PBSおよび抗マウスFcγIII/II受容体(CD16/CD32)[2.4G2]でブロックし、抗Pan NKビオチン結合Ab(DX5)、抗CD11cマイクロビーズおよびストレプトアビジン結合マイクロビーズを使用することにより、ナチュラルキラー細胞および樹状細胞を除去した。細胞純度を、FACScanフローサイトメトリーおよびCellQuestソフトウエア(Becton Dickinson社)を使用したフローサイトメトリー分析によって測定した。すべての群について、細胞の少なくとも95%がCD4T細胞であった。精製CD4T細胞を3×10細胞/200μlにて96ウェルプレートで培養し、抗マウスCD3ε Ab(5μg/ml、145−2C11)および抗マウスCD28 Ab(2μg/ml、37.51)で24時間刺激した。
【0172】
(d)cDNAの作製、増幅およびリアルタイムPCR
細胞を溶解し、RNeasy Mini Kit(Qiagen社、カリフォルニア州)を製造者の指示に従って使用して全RNAを単離した。15量体のポリd(T)オリゴヌクレオチド1μgおよびモロニーマウス白血病ウイルス(M−MVL)逆転写酵素(Promega社、米国、マディソン)20単位を推奨されるように使用して、全RNA2μgからcDNAを作製した。
【0173】
各々のPCRにおいて使用したcDNA試料の量を標準化するため、HPRTを各試料において基準化した。cDNAを、10×PCR緩衝液、サイトカインプライマー10pmol、0.5mM dNTPおよびTaq DNAポリメラーゼ2.5単位を含む反応混合物に添加した。最終容量25μlの各々の試料をDNAサーマルサイクラー(Perkin Elmer Gene Amp PCR system 9700,PE applied biosystems社、米国)において合計30サイクル、インキュベートした。各サイクルは、94℃で30秒間、58℃で30秒間および72℃で1分間から成る。94℃で5分間のインキュベーションの始動および72℃で10分間の最終伸長を各々の反応に含めた。
【0174】
LightCyclerにおいてSYBR Green技術を使用したリアルタイムPCRを実施し、cDNA試料、陰性対照(水)および一連の希釈標準を増幅した。ナイーブマウス試料を、各サイトカインに関する適合係数ファイルを作成するための標準として使用した。反応は、Fast start DNA Master SYBR Green I(Roche Diagnostics社、スイス国)を製造者の指示に従って使用して実施した。増幅プログラムは次の通りであった。95℃で10分間の変性、95℃で5秒間、58℃で5秒間および72℃で12秒間の40サイクルの定量、58℃で15秒間の融解、40℃で30秒間の冷却。サイトカインの相対比率を、Relative Quantification Software(Roche Molecular Biochemicals社、独国)によって自動的に実施される非線形回帰適合に基づく効率補正によって算定した。
【0175】
以下のオリゴヌクレオチドをPCR分析のために使用した:
HPRT:センス 5’GTTGGATACAGGCCAGACTTTGTTG 3’(配列番号7)、
アンチセンス 5’GAGGGTAGGCTGGCCTATGGG 3’(配列番号8)、
IFN−γ:センス 5’CATTGAAAGCCTAGAAAAGTCTG 3’(配列番号9)、
アンチセンス 5’CTCATGAATGCATCCTTTTTCG 3’(配列番号10)、
IL−4:センス 5’CATCGGCATTTTGAACGAGGTCA 3’(配列番号11)、
アンチセンス 5’CTTATCGATGAATCCAGGCATCG 3’(配列番号12)、
IL−5:センス 5’GAAAGAGACCTTGACACAGCTG 3’(配列番号13)、
アンチセンス 5’GAACTCTTGCAGGTAATCCAGG 3’(配列番号14)、
IL−9:センス 5’ATGTTGGTGACATACATCCTTGC 3’(配列番号15)、
アンチセンス 5’CGGCTTTTCTGCCTTTGCATCTC(配列番号16)、
IL−10:センス 5’CCAGTTTTACCTGGTAGAAGTGATG 3’(配列番号17)、
アンチセンス 5’TGTCTAGGGTCCTGGAGTCCAGCAGACT 3’(配列番号18)、
IL−12:センス 5’ATGGCCATGTGGGAGCTGGAG 3’(配列番号19)、
アンチセンス 5’TTTGGTGCTTCACACTTCAGG 3’(配列番号20)、
IL−13:センス 5’ATGGCCATGTGGGAGCTGGAG 3’(配列番号21)、
アンチセンス 5’TTTGGTGCTTCACACTTCAGG 3’(配列番号22)。
【0176】
(e)CD4CD25調節性T細胞の試験のための免疫付与レジメン
マウスを、0,4および8日目に酵母組換えDer p 2タンパク質(rDer p 2)の低用量(LD)[10μg/マウス]または高用量(HD)[50μg/マウス]の皮下注射によってプライミングした。Der p 2のLDによるブーストを28日目に与え、Der p 2特異的免疫応答をELISAによって検定した。もう1つの試験では、rDer p 2でプライミングしたマウスを21日目に屠殺した。リンパ節および脾臓をT細胞培養物のサイトカインプロファイリングのために採取した。対照マウスにはPBS100μlを皮下注射した。rDer p 2を経上皮的にパッチしたマウスを上述したように作製した(Wang LFら、1996)。簡単に述べると、最初にPBS100μl中のrDer p 2 50μgをパッチの1cmガーゼに適用し、次にそれを毛刈りした皮膚に適用して、弾性包帯で固定した。パッチ適用は0日目と14日目に実施した。各々のパッチを4日間適用して除去した。21日目にマウスを屠殺し、抗原特異的TH2細胞を確立した。
【0177】
Der p 2によるエアロゾル抗原刺激だけを受けた対照マウスは、Ag特異的TH2サイトカイン、特にIL−5、IL−10およびIL−13の高発現レベルを示した。しかし、HDでプライミングしたマウスは、LDでプライミングしたマウスまたは対照群と比較すると、IL−13、IL−5およびIL−10発現の有意な抑制を示した。加えて、LDプライミングしたマウスは、HDプライミングしたマウスおよび対照と比較して、もっぱらIL−9の高発現を有していた。それゆえ、初期HDプライミングはTH2関連サイトカインの発現を抑制することによってDer p 2吸入の作用を改善した。
【0178】
(f)CD4CD25調節性T細胞の濃縮
CD4CD25調節性T細胞単離キット(Miltenyi Biotec社、独国、ベルギッヒ グラヂバッハ)を使用することによって脾調節性T細胞を濃縮し、AutoMacs(Becton Dickinson社)を製造者の指示に従って使用して選別した。単離細胞の一部を、純度確認のためにFITC結合抗マウスCD4抗体、Per−CP結合抗マウスCD3ε抗体、およびPE結合抗マウスCD25と共にインキュベートした。細胞純度を、FACScanフローサイトメトリーおよびCellQuestソフトウエア(Becton Dickinson社)を用いたフローサイトメトリー分析によって測定すると、単離細胞の少なくとも95%がCD4CD25T細胞であった。
【0179】
(g)脾細胞培養および抗原提示細胞(APC)の作製
脾細胞を、10%熱不活性化ウシ胎仔血清(StemCell Technologies社)、1mMピルビン酸ナトリウム(Hyclone Laboratories社)、2mM L−グルタミン、抗生物質(100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン)、5.5×10−2mM 2−βメルカプトエタノール(Life Technology社)を添加した完全RPMI−1640培地で培養し、5%COインキュベーターにおいて37℃で保持した。脾細胞を96ウェルプレートにおいて(4×10細胞/ウェル)10μg/mlのDer p 2タンパク質と共に3〜5日間培養し、採集した上清を−20℃で凍結した。抗原特異的TH2細胞を、rDer p 2と共に6ウェルプレート(2×10細胞/ウェル)で脾細胞を培養することによって経上皮パッチ適用マウスから樹立した。細胞に、3,5および7日目に10U/mlの組換えマウスIL−2(rIL−2)(R & D systems社)を含む新鮮培地を添加した。10日目に、TH2細胞を採集し、Ficoll−Pague plus(Amersham Biosciences社)遠心分離によって精製した。APCは、ナイーブマウスのマイトマイシンC処理脾細胞に由来した。簡単に述べると、マイトマイシンC(Roche Diagnostic GmbH社、独国、マンハイム)を50μg/mlの最終濃度で細胞に添加し、暗所にて37℃で20分間インキュベートした。細胞を1×HBSS30mlで3回洗浄し、RPMI−1640培地に懸濁した。
【0180】
(h)サイトカインプロファイリングおよび細胞増殖アッセイ
抗原特異的TH2細胞およびCD4CD25T細胞を、1×10細胞/ウェルで、10μg/mlのrDer p 2と共に、またはrDer p 2なしで培養した。APCは3×10細胞/ウェルで使用した。上清を3日目に採集し、IL−4、IL−5およびIL−13産生に関して検定した。増殖試験では、細胞を5日間インキュベートし、最後の18時間目に[H]チミジン(NEN Life Science社、マサチューセッツ州 ボストン)1μCiでパルスした。細胞をガラス繊維フィルター(Skatron instruments AS社、ノルウェー国、Lier)に採集した。シンチレーション液(Amersham Biosciences社)の添加後、液体シンチレーション計数器(Beckman Coulter社、カリフォルニア州 フラトン)によって増殖を測定した。増殖指数は、TH2細胞単独の比として表わされている。
【0181】
(i)サイトカインELISA
マウスIFN−γ(RA−6A2)、IL−4(BVD4−1D11)、IL−5(TRFK5)、IL−9(D8402E8)、IL−10(JES052A5)(R & D systems社、米国、ミネソタ州 ミネアポリス)、IL−13(38213)(R & D systems社)およびTGF−β(A75−2.1)抗体に対する精製抗体を2μg/mlで96ウェルプレートに被覆した。マウスIFN−γ(XMG1.2)、IL−4 (BVD6−24G2)、IL−5(TRFK4)、IL−9(D9302C12)、IL−10(R & D systems社)、IL−13(R & D systems社)およびTGF−β(A75−3.1)抗体に対するビオチニル化ポリクローナル抗体を推奨されているように使用した。組換えマウスサイトカインをELISAアッセイにおける標準品として使用した。すべての抗体および組換えサイトカインは、特に記述されない限り、BD Biosciences PharMingen社(カリフォルニア州、サンディエゴ)より入手した。
【0182】
図27は、Der p 2でプライミングし、エアロゾル化Der p 2で抗原刺激したマウスにおけるサイトカインmRNA発現の定量を示す。IL−12は検出されず、マウスの群間でIL−4およびIFN−γの発現レベルには差がなかった。しかし、他のTH2サイトカイン、特にエフェクターサイトカインの発現には差があった。
【0183】
これらのサイトカインの発現レベルを、リアルタイムPCRを使用してさらに評価した(リアルタイムPCRによって測定した脾CD4T細胞のTH2サイトカインプロフィールを示す表I参照)。各々の増幅したセットの融解曲線分析は、水対照では認められなかった特徴的な鋭いピークを示した(データは示されていない)。表Iは、較正物質(未処置)基準化増幅サイトカインセット/HPRT比を示す。マウスのすべての群においてIL−4発現に特徴的な相違は存在しなかった。エアロゾルDer p 2吸入に供した対照マウスは、Ag特異的TH2サイトカイン、特にIL−5、IL−10およびIL−13の高発現レベルを示した。HDでプライミングしたマウスは、LDでプライミングしたマウスまたは対照群と比較すると、IL−13発現(少なくとも100倍低い)、IL−5およびIL−10発現(〜7倍低い)の有意な抑制を示した。これは、初期HDプライミングがTH2関連サイトカインの発現を抑制することによってDer p 2吸入の作用を改善したことを示唆する。LDプライミングしたマウスは、HDプライミングマウスおよび対照と比較して、もっぱらIL−9の高発現(>100倍)を有していた。従って、TH2サイトカインはアレルゲン投与免疫付与に関連する。
【0184】
図27および28は、高用量または低用量のrDer p 2タンパク質でプライミングしたマウスからのリンパ節および脾臓のサイトカインプロフィールを示す。マウスを、0,4,8日目にrDer p 2タンパク質の低用量(LD、10μg)または高用量(HD、50μg)、またはPBSでプライミングし、10日目に屠殺した(前出)。リンパ節および脾臓を採取し、rDer p 2タンパク質の存在下で3〜5日間培養した。低用量でプライミングしたマウスからのリンパ節および脾臓のいずれもが、高用量プライミングマウスと比較して、TH2サイトカイン(IL−4、IL−13およびIL−9)産生の上昇およびTH1サイトカイン(IFN−γ)産生の低下を示した。他方で、高用量プライミングマウスは、リンパ節および脾臓の両方においてより高いTGF−β産生を示した。
【0185】
図30は、高用量のrDer p 2タンパク質でプライミングしたマウスからのCD4CD25調節性T細胞の抑制作用を示す。LDまたはHD rDer p 2タンパク質でプライミングしたマウスの脾CD4CD25T細胞を、rDer p 2タンパク質の存在下で5日間、抗原特異的TH2細胞と共培養し、増殖とサイトカイン応答の両方を検定した。図30(A〜D)に示されるように、HD rDer p 2タンパク質でプライミングしたマウスからの脾CD4CD25T細胞は、TH2細胞の増殖およびTH2サイトカイン、IL−4、IL−5およびIL−13の産生の両方に対して抑制作用を及ぼすことができた。LD rDer p 2タンパク質でプライミングしたマウスからの脾CD4CD25T細胞は、同様の抑制作用を及ぼすことができなかった。
【実施例16】
【0186】
マウスにおける組換えL.casei Shirota/Blo t 5によって初回抗原刺激した免疫応答の試験
1週につき連続4日間毎日1×10cfu/マウスをマウスに給餌した(図31)。各々のマウスが摂取した総食餌量は、1×10cfuの20回用量であった。マウスを7週目まで毎週1回採血し、Blo t 5特異的血清免疫グロブリンをELISAによって検定した。有意のレベルのBlo t 5特異的IgG1が検出されたが、有意のレベルのIgEおよびIgG2aは検出されなかった(図32)。マウスを198日目に屠殺し、サイトカイン分析のためにパイアー斑および脾臓からのT細胞を得た。L.casei Shirota/Blo t 5を給餌したマウスのパイアー斑からのT細胞においてのみ、有意のレベルの調節性サイトカインTGF−βが検出され、生組換えL.casei Shirota/Blo t 5がパイアー斑中のT細胞によるT調節性サイトカインの産生を積極的に誘導したことを示している(図33参照)。
【0187】
本明細書の中での、先に公開された資料の列挙および考察は、必ずしもその資料が従来技術の一部であること、または一般的知識であることの容認と解釈されるべきではない。列挙されるすべての資料は参照によりここに組み込まれる。
【0188】
ここで説明的に述べられた本発明は、ここで特定して開示されていない何らかの要素または限定の不在下で適切に実施され得る。それゆえ、たとえば「含む」、「包含する」、「含有する」等の用語は、広く、および限定を伴わずに読み取られるべきである。加えて、ここで使用される用語および表現は、限定ではなく説明の表現として使用されており、示されるおよび記述される特徴の何らかの等価物またはその一部を排除するそのような用語および表現の使用は意図されていないが、特許請求される本発明の範囲内で様々な変更例が可能であることが認識される。それゆえ、本発明を好ましい実施形態によって具体的に開示したが、ここで開示される本発明の変更例および変形例が当業者によって行われ得ること、およびそのような変更例および変形例が本発明の範囲内であるとみなされることが理解されるべきである。
【0189】
本発明は、ここで広くおよび包括的に説明された。一般的開示に含まれる、より狭い種概念および亜属の概念分類の各々も本発明の一部を形成する。これは、削除されている物質がここで明確に列挙されているか否かに関わらず、属概念から何らかの特定事項を除去する条件または消極的な限定を伴う本発明の包括的な説明を包含する。
【0190】
他の実施形態は本特許請求の範囲に含まれる。加えて、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群で述べられる場合、当業者は、本発明がそれによってマーカッシュ群のあらゆる個々の構成要素または構成要素のあらゆる小群でも述べられることを認識する。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】塵ダニアレルゲン発現構築物を作製するために使用される乳酸桿菌/大腸菌シャトルベクター(A)および中間ベクターを図式的に示す。
【図2】さらなる乳酸桿菌/大腸菌シャトルベクターを図式的に示す。
【図3】本発明の組換え乳酸桿菌に含めることができるさらなる発現ベクターを示す。
【図4】本発明の組換え乳酸桿菌に含めることができるもう1つの発現ベクターを示す。
【図5】乳酸桿菌L.casei ShirotaおよびL.rhamnosus ggの2つの菌株におけるDer p 2の異種発現のウエスタン免疫ブロット法による検出を示す。
【図6】パイアー斑のT細胞およびB細胞領域へのL.casei Shirota−eGFPのトランスロケーションを示す。
【図7】透過型電子顕微鏡によるパイアー斑内の単形および多形細胞の液胞への無傷L.casei Shirota−eGFPのトランスロケーションを示す。
【図8】インビトロでL.casei Shirotaと共培養したT細胞におけるTGF−β産生の誘導を示す。
【図9】組換えLc/Dp2を給餌したマウスにおけるDer p 2特異的T細胞増殖および調節性CD4CD25T細胞の増加を示す。
【図10】動物試験において使用した予防レジメンを示す。
【図11】Der p 2特異的免疫グロブリン応答を示す。
【図12】脾T細胞のサイトカインプロフィールを示す。
【図13】腸間膜リンパ節(MLN)細胞のサイトカインプロフィールを示す。
【図14】マウスにおける気管支肺胞洗浄液(BALF)のサイトカインのプロフィールを示す。
【図15】マウスにおけるBALF分析および肺組織学検査を示す。
【図16】動物試験において使用した治療レジメンを示す。
【図17】マウスにおけるDer p 2特異的免疫グロブリン応答を示す。
【図18】脾T細胞における選択サイトカインのプロフィールを示す。
【図19】腸間膜リンパ節細胞における選択サイトカインプロフィールを示す。
【図20】肺における病態生理学的変化および気管支肺胞洗浄液分析を示す。
【図21】BALFのサイトカインプロフィールを示す。
【図22】Der p 2アレルゲンで前感作したマウスの治療モデルを示す。
【図23】全身的免疫グロブリン応答およびT細胞サイトカインを示す。
【図24】治療モデル仮説を示す。
【図25】マウスへの皮下プライミングの作用の分析のための実験プロトコールの概要を示す(アジュバントの適用なし)。
【図26】マウスにおけるDer p 2特異的体液性応答の動態を示す。
【図27】脾CD4T細胞のサイトカインプロフィールに関するRT−PCR分析を示す。
【図28】培養下のリンパ節のサイトカインプロフィールを示す。
【図29】SP培養物のサイトカインプロフィールを示す。
【図30】CD4CD25細胞と共培養したときの抗原特異的TH2細胞の増殖とサイトカイン応答を示す。
【図31】Blo t 5アレルゲンを発現する組換えL.casei Shirotaに関する動物試験で使用したレジメンを示す。
【図32】ELISAによるBlo t 5特異的血清免疫グロブリンの分析を示す(図31も参照)。
【図33】図34に示すレジメンにおいて屠殺したマウスのサイトカイン分析を示す。
【図34】発現ベクターpLP400内のアレルゲンBlo t 5の核酸配列およびアミノ酸配列を示す。
【図35】発現ベクターpLP500内のアレルゲンDer p 2の核酸配列およびアミノ酸配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダニアレルゲンDer p 2またはBlo t 5の少なくとも免疫原性フラグメント、またはその免疫原性ホモログをコードする異種核酸配列を含む組換え乳酸桿菌。
【請求項2】
ダニアレルゲンDer p 1の少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログをコードする異種核酸配列を含み、
前記フラグメントがDer p 1の成熟完全長タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも8%を含む、組換え乳酸桿菌。
【請求項3】
前記乳酸桿菌が、Lactobacillus casei、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus pentosus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus sporogenes、Lactobacillus brevis、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus hilgardii、Lactobacillus lactis、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus leishmanis、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus sakei、Lactobacillus cellobiosus、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus caucasicus、およびLactobacillus helveticusから成る群より選択される、請求項1または請求項2に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項4】
前記乳酸桿菌が、Lactobacillus rhamnosus GGまたはLactobacillus casei Shirotaである、請求項3に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項5】
前記異種核酸配列によってコードされる前記免疫原性ホモログが、少なくとも前記ダニアレルゲンのそれぞれの免疫原性フラグメントのアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項6】
前記ダニアレルゲンがDer p 2またはBlo t 5であり、前記乳酸桿菌がLactobacillus casei Shirotaである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項7】
前記ダニアレルゲンがDer p 2であり、前記ダニアレルゲンが配列番号1の配列によってコードされる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項8】
前記ダニアレルゲンがDer p 2であり、前記異種核酸配列がDer p 2の免疫原性ホモログまたはその免疫原性フラグメントをコードし、免疫原性ホモログが、配列番号1の核酸配列に少なくとも70%同一の核酸配列を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項9】
前記ダニアレルゲンがBlo t 5であり、前記ダニアレルゲンの少なくとも前記免疫原性フラグメントが配列番号2の配列によってコードされる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項10】
前記ダニアレルゲンがBlo t 5であり、前記異種核酸配列がBlo t 5の免疫原性ホモログまたはその免疫原性フラグメントをコードし、免疫原性ホモログが、配列番号2の核酸配列に少なくとも70%同一の核酸配列を有する、請求項1〜6または請求項9のいずれか一項に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項11】
前記ダニアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログをコードする前記配列が異種核酸分子内に含まれる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項12】
前記異種核酸分子が発現ベクターである、請求項11に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項13】
前記発現ベクターが、pLP400、pLP500、pSIP308およびpSIP412から成る群より選択される、請求項12に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の組換え乳酸桿菌を含む医薬組成物。
【請求項15】
医薬的に許容される担体または希釈剤をさらに含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
コルチコステロイド、抗ヒスタミン薬、ロイコトリエン修飾剤、マスト細胞安定剤、うっ血除去薬およびβ2アドレナリン受容体作動薬の少なくとも1つをさらに含む、請求項14または15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログをさらに含む、請求項14〜16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記アレルゲンがダニアレルゲンである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
ダニアレルゲンが塵ダニ(dust mite)アレルゲンである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記ダニアレルゲンが、Der p 1、proDer p 1、Der p 2、Der p 3、Der p 4、Der p 5、Der p 7、Der p 8、Der p 9、Der p 10、Der p 11、Der p 14、Der p 15、Der p 18、Der f 1、Der f 2、Der f 3、Der f 4、Der f 5、Der f 6、Der f 7、Der f 10、Der f 11、Der f 15、Der f 16、Der f 18、Der m 1、Eur m 1、Eur m 2、Her f 2、Blo t 1、Blo t 3、Blo t 5、Blo t 12、Fel d 1、Mag 1、Mag 3、Tyr p 2、Lep d 1、Lep d 2、Lep d 5、Lep d 7、Lep d 10、およびLep d 13から成る群より選択される、請求項18または19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記ダニアレルゲンが、前記組換え乳酸桿菌によって発現されるダニアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログと共通の少なくとも1つのエピトープを含む、請求項18〜20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
ダニアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログが、前記組換え乳酸桿菌によって発現されるダニアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログである、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
(a)請求項14〜16のいずれか一項で定義される医薬組成物と、
(b)アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログを含有する医薬組成物と、
を含む、医薬キット。
【請求項24】
前記(b)の医薬組成物に含有されるアレルゲンがダニアレルゲンである、請求項23に記載の医薬キット。
【請求項25】
前記(b)の医薬組成物に含有されるダニアレルゲンが塵ダニアレルゲンである、請求項24に記載の医薬キット。
【請求項26】
前記(b)の医薬組成物に含有される前記ダニアレルゲンが、Der p 1、proDer p 1、Der p 2、Der p 3、Der p 4、Der p 5、Der p 7、Der p 8、Der p 9、Der p 10、Der p 11、Der p 14、Der p 15、Der p 18、Der f 1、Der f 2、Der f 3、Der f 4、Der f 5、Der f 6、Der f 7、Der f 10、Der f 11、Der f 15、Der f 16、Der f 18、Der m 1、Eur m 1、Eur m 2、Her f 2、Blo t 1、Blo t 3、Blo t 5、Blo t 12、Fel d 1、Mag 1、Mag 3、Tyr p 2、Lep d 1、Lep d 2、Lep d 5、Lep d 7、Lep d 10、およびLep d 13から成る群より選択される、請求項24または25に記載の医薬キット。
【請求項27】
前記(b)の医薬組成物に含有されるダニアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログが、前記(a)の医薬組成物に含有される前記組換え乳酸桿菌によって発現されるダニアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログと共通の少なくとも1つのエピトープを含む、請求項24〜26のいずれか一項に記載の医薬キット。
【請求項28】
前記(b)の医薬組成物に含有されるダニアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログが、前記(a)の医薬組成物に含有される前記組換え乳酸桿菌によって発現されるダニアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログである、請求項27に記載の医薬キット。
【請求項29】
前記(b)の医薬組成物に含有されるアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログが、組換え生物からの濃縮、精製および単離のいずれかによって得られる、請求項23〜28のいずれか一項に記載の医薬キット。
【請求項30】
治療における使用のための、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項31】
前記治療が、アレルゲンに対する免疫応答を調節することである、請求項30に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項32】
経口投与のための、請求項30または31に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項33】
アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログとの併用投与のための、請求項30〜32のいずれか一項に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項34】
アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログの舌下、皮下、皮内、経皮または経上皮投与のための、請求項33に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項35】
前記アレルゲンがダニアレルゲンである、請求項33または34に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項36】
前記組換え乳酸桿菌がキットに含まれ、前記キットが、アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログをさらに含む、請求項30〜35のいずれか一項に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項37】
組換え乳酸桿菌と、アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログの連続投与のための、請求項33〜36のいずれか一項に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項38】
前記連続投与が、アレルゲンの少なくとも前記免疫原性フラグメントを投与する第1の工程と、前記組換え乳酸桿菌を投与する第2の工程とを含む、請求項37に記載の組換え乳酸桿菌。
【請求項39】
請求項14に記載の医薬組成物を投与することからなる、哺乳動物においてアレルゲンに対する免疫応答を調節する方法。
【請求項40】
前記哺乳動物がヒトである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記アレルゲンがダニアレルゲンである、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記ダニアレルゲンが塵ダニアレルゲンである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
アレルギー疾患の治療における、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記アレルギー疾患がダニアレルギーである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記アレルギー疾患が、喘息、鼻炎、アトピー性皮膚炎およびじんま疹から成る群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
アレルギー疾患の予防における、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記アレルギー疾患がダニアレルギーである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記アレルギー疾患が、喘息、鼻炎、アトピー性皮膚炎およびじんま疹から成る群より選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
請求項14に記載の医薬組成物が経口的または舌下的に投与される、請求項39に記載の方法。
【請求項50】
組換え乳酸桿菌を含有する前記医薬組成物を反復投与することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項51】
前記医薬組成物が、アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログをさらに含有する、請求項39に記載の方法。
【請求項52】
アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログを含有する医薬組成物を投与することをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項53】
組換え乳酸桿菌を含有する前記医薬組成物、およびアレルゲンの少なくとも前記免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログを含有する前記医薬組成物が医薬キット中に含まれる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログが前記医薬組成物中に含有され、前記アレルゲンがダニアレルゲンである、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
アレルゲンの少なくとも前記免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログが、前記組換え乳酸桿菌によって発現されるアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログと共通の少なくとも1つのエピトープを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
アレルゲンの少なくとも前記免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログが、前記組換え乳酸桿菌によって発現されるアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
アレルゲンの少なくとも前記免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログが、組換え生物からの濃縮、精製および単離のいずれかによって得られる、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
アレルゲンの少なくとも前記免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログを含有する前記医薬組成物が、舌下的、皮下的、皮内的、経皮的、経上皮的およびそれらのあらゆる組合せから成る群より選択される方法で投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログを含有する前記医薬組成物が皮下的に投与され、かつ請求項14に記載の医薬組成物が経口的に投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項60】
前記組換え乳酸桿菌を含有する前記医薬組成物、およびアレルゲンの少なくとも前記免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログを含有する前記医薬組成物が連続的に投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項61】
(a)請求項14に記載の医薬組成物を提供する工程と、
(b)請求項14に記載の前記医薬組成物を投与する工程と、
(c)アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログを含有する医薬組成物を提供する工程と、
(d)アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログを含有する前記医薬組成物を投与する工程と、
からなる、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントを含有する前記医薬組成物を最初に投与し、請求項14に記載の医薬組成物をその後に投与する、請求項52に記載の方法。
【請求項63】
前記方法が免疫療法である、請求項52に記載の方法。
【請求項64】
アレルゲンの少なくとも前記免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログを含有する前記医薬組成物を反復投与する、請求項52に記載の方法。
【請求項65】
アレルゲンに対する免疫応答を調節するための医薬組成物の製造における、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組換え乳酸桿菌の使用方法。
【請求項66】
前記アレルゲンがダニアレルゲンである、請求項65に記載の使用方法。
【請求項67】
前記ダニアレルゲンが塵ダニアレルゲンである、請求項66に記載の使用方法。
【請求項68】
アレルギーの治療または予防における、請求項65〜67のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項69】
前記アレルギーがダニアレルギーである、請求項68に記載の使用方法。
【請求項70】
前記組換え乳酸桿菌の経口または舌下投与のための、請求項65〜69のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項71】
前記組換え乳酸桿菌の反復投与のための、請求項65〜70のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項72】
前記医薬組成物が、コルチコステロイド、抗ヒスタミン薬、ロイコトリエン修飾剤、マスト細胞安定剤、うっ血除去薬およびβ2アドレナリン受容体作動薬の少なくとも1つをさらに含む、請求項65〜71のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項73】
アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログとの併用投与のための、請求項65〜72のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項74】
前記医薬組成物が、アレルゲンの少なくとも前記免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログを含有する、請求項73に記載の使用方法。
【請求項75】
アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログを含有する医薬組成物をさらに含む医薬キットの製造における、請求項65〜73のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項76】
前記アレルゲンがダニアレルゲンである、請求項73〜75のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項77】
アレルゲンの少なくとも前記免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログが、前記組換え乳酸桿菌によって発現されるアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログと共通の少なくとも1つのエピトープを含む、請求項73〜76のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項78】
アレルゲンの少なくとも前記免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログが、前記組換え乳酸桿菌によって発現されるアレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログである、請求項77に記載の使用方法。
【請求項79】
アレルゲンの少なくとも前記免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログが、組換え生物からの濃縮、精製および単離のいずれかによって得られる、請求項73〜78のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項80】
前記組換え乳酸桿菌、およびアレルゲンの少なくとも前記免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログの連続投与のための、請求項73〜79のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項81】
免疫療法における、請求項80に記載の使用方法。
【請求項82】
アレルゲンの少なくとも前記免疫原性フラグメントを最初に投与し、アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログをその後に投与する、請求項80または81に記載の使用方法。
【請求項83】
アレルゲンの少なくとも前記免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログが、舌下的、皮下的、皮内的、経皮的、経上皮的およびそれらのあらゆる組合せから成る群より選択される方法で投与される、請求項73〜82のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項84】
前記組換え乳酸桿菌が経口的に投与され、アレルゲンの少なくとも免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログを含有する前記医薬組成物が皮下的に投与される、請求項83に記載の使用方法。
【請求項85】
アレルゲンの少なくとも前記免疫原性フラグメントまたはその免疫原性ホモログが反復投与される、請求項73〜84のいずれか一項に記載の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図14E】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図18D】
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【図18E】
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【図18F】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図19E】
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【図19F】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図20D】
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【図20E】
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【図20F】
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【図20G】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【図24】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【図27】
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【図28A】
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【図28B】
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【図28C】
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【図28D】
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【図28E】
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【図29A】
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【図29B】
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【図29C】
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【図29D】
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【図29E】
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【図29F】
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【図30A】
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【図30B】
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【図30C】
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【図30D】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公表番号】特表2009−534029(P2009−534029A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506452(P2009−506452)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【国際出願番号】PCT/SG2007/000090
【国際公開番号】WO2007/123488
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(508312360)ナショナル ユニバーシティ オブ シンガポール (2)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL UNIVERSITY OF SINGAPORE
【Fターム(参考)】