説明

結合剤

本発明は、結合剤、その製造方法、ならびに配合物、表面被覆、ペイント、染料およびプラスチックにおけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合剤、その製造方法、ならびに配合物、表面被覆、インクおよびプラスチックまたはこれらの前駆体におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
主として、表面被覆の特性は、ナノ粒子の添加によって改良することができるが、凝集および一般的な表面被覆組成物との不適合が容易に起こるため、ナノ粒子の調製は困難を示す。さらに、追加の表面被覆原材料のさらなる導入は、不要な物流の(logistical)複雑性を招き、これはコストに関連する。
ナノ粒子を含む表面被覆の硬化(cure)中、ポリマーが共有結合を形成し、ナノ粒子と反応することが望ましい。この目的のために、ナノ粒子には、使用されるポリマーに対して反応性のある基が提供されなければならない。ナノ粒子の取り込みを伴うポリマーの硬化は、粘度が急速に上昇する状況下、それ故に反応物の自由度が減少する状況下で行われる。
【0003】
この環境によっておよび第1反応ポリマー鎖によるナノ粒子の立体スクリーニングによって、ナノ粒子のポリマーへの結合は通常不完全であり、所望の特性改良は、所望される理論的に達成可能な程度まで向上しないかまたは全く向上しない。
【0004】
不完全な結合によって、ポリマー鎖上ナノ粒子の可能な構造的影響もまた低減される。その大きな界面エネルギーによって、ナノ粒子は、これらのごく近傍のポリマー鎖を、秩序構造に強いる特性を有する。ナノ粒子のポリマー構造内への結合が不完全な場合、この所望の効果を、完全に形成させることはできない。
【0005】
従来技術に記載されている解決法は、上記不利点を全て克服することおよび前記特性を最近のアプリケーションシステムの単一要素に組み込むシステムを提供することができない。したがって、例えば、未公開の出願DE 102006012467.7から、再分散可能なナノ粒子は、硫黄架橋を介して結合したポリマーを供して製造され、そして表面被覆およびインクにおける添加剤として、1〜通常20重量%の範囲で用いることができる。これら表面被覆およびインクの主成分は、さらに従来の結合剤であり、これらは硬化中にナノ粒子と架橋することができ、従来の結合剤の全ての不利点を伴う。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明の課題は、上記不利点を克服するナノ粒子含有システムを適宜に提供することである。
【0007】
驚くべきことに、本発明の結合剤は複雑な必須プロフィールを満たすことが見出された。したがって、本発明は、まずオリゴマーおよび/またはポリマーと放射状に結合する直径>1nmの中心架橋点(以下コアと称する)を含む結合剤の提供に関する。オリゴマーおよび/またはポリマーは、好ましくはコア表面に共有結合で結合している。オリゴマーおよび/またはポリマーの結合剤に対する比率は40〜99重量%であり、好ましくは70〜90重量%、さらに好ましくは80〜95%である。比率は、熱重量分析(TGA)によって測定し、ここでは、乾燥した結合剤の強熱残分(コア留分)を測定する(装置:TGA V4.OD Dupont 2000、加熱速度:10K/min、温度範囲:空気中25−1000°C、プラチナるつぼ)
【0008】
一般的に、本発明の目的に対する用語「結合剤」は、被覆物質およびインク、例えば印刷インクにおいて、被膜形成に関与する化合物を意味する。ここで、被膜形成は、適用した被覆物質の液体または粉状(液相を介する遷移)から固体状態への遷移の総称である。
【0009】
塗料および表面被覆の場合、DIN EN 971-1: 1996-09 および DIN 55945: 1999-07にしたがって結合剤は、粒子およびフィラーを有しない不揮発性留分であるが、可塑剤、乾燥剤および他の不揮発性助剤を含み、これらは、いくつかの場合において溶融物から適用され(例えば、粒子被覆の場合)、または放射によって反応が引き起こされる。結合剤は、液体被覆材料中の溶液または分散体の状態であり、これらは、膜内での顔料およびフィラーの固着および被膜の基板への接着を確実にする。
【0010】
本発明の目的に対して、用語「放射状」は直鎖状または分岐状、好ましくは1点から開始するオリゴマーおよび/またはポリマーの直鎖配列を意味する。本発明において、コアはオリゴマーおよび/またはポリマーが実質的に架橋なしで配列する点を示す。
【0011】
本発明による結合剤において、優れた結合および架橋ならびにポリマー構造上の最大の効果を達成可能とするために、ナノサイズのコアが、被膜中またはバルク中において、3次元架橋の前であっても、共有結合を形成しながら、ポリマーと実質的に、完全に反応することが利点である。この前架橋は、好ましくは粒子表面との高い反応性およびポリマー鎖の好適な自由度が保証される条件下、前段階で行う。これは、様々な方法で達成することができる。ポリマー/オリゴマー鎖は、例えば、コア元素から離れて重合によって形成され得る。
本発明は、したがってさらに、直径>1nmを有するコアの溶媒または混合溶媒中への分散および有機モノマー存在下での高分子化に関し、ここでは形成されたオリゴマーおよび/またはポリマーは、コアに放射状に結合される。
【0012】
本発明による結合剤調製の別の方法は、対応する反応性修飾されたポリマー/オリゴマー鎖とコアとの反応である。この目的に好適なものは、好ましくは1つの末端が末端修飾されているポリマー/オリゴマー鎖、またはコア物質に対して反応性がある基を1つだけ含むポリマー/オリゴマー鎖である。
【0013】
したがって、本発明は、さらに本発明による結合剤の調製方法に関し、
a)コア物質b)に対する反応性基を有するオリゴマーおよび/またはポリマーの調製または供給、
b)a)のオリゴマー/ポリマーが少なくとも部分的に溶解できる溶媒または混合溶媒中への直径>1nmを有するコアの分散、
c)a)からのオリゴマーおよび/またはポリマーとb)からのコアとの反応、好ましくは化学反応、ここで、オリゴマーおよび/またはポリマーが、コアと放射状に結合される、
d)必要に応じた、蒸留、沈殿、溶媒交換、抽出またはクロマトグラフィーによる、本発明に従い調製した結合剤のワークアップ、
を含む。
【0014】
さらに、好適な反応(例えば、加水分解/重縮合)によって、対応する修飾されたオリゴマー/ポリマーからコアを製造することが可能である。本目的に好適なものは、好ましくは加水分解可能な末端が共有結合しているシリコン化合物、例えばトリメトキシ有機シランなどである。したがって、本発明はさらに、
a)加水分解可能および縮合可能な有機シリコンおよび/または有機金属基を含むオリゴマーおよび/またはポリマーの調製または供給、
b)好ましくは、好適な条件下(例えば、好適なコアの形成をもたらす好適な温度およびpHならびに任意に触媒下での好適な溶媒/反応混合物中)における、加水分解可能および縮合可能な有機シリコンおよび/または有機金属基の加水分解および縮合、ここでオリゴマーおよび/またはポリマーが結合したコアが生成し、ここでオリゴマーおよび/またはポリマーは生成したコアに、放射状に結合されている、
c)必要に応じた、蒸留、沈殿、溶媒交換、抽出またはクロマトグラフィーによる、本発明に従い調製した結合剤のワークアップ、
を含む、方法に関する。
【0015】
本方法で調製した結合剤は、ナノ粒子の最適な結合を有するポリマーナノ組成物を与える3次元架橋中に反応することができる非常に有利な星状構造を有する。星状構造によって、ナノハイブリッド結合剤の非常に良好な(positive)粘性挙動が達成される。ポリマー鎖は、中心リンク点(central linking point)によって共に保持されるため、従来のポリマー溶液における場合のような大きな、自由にほどけているポリマー鎖の形成が抑制される。そのため、同じ分子量の従来のポリマーと比較して、溶液中で低い粘性を有する非常に高分子量のポリマー節(knots)を製造することが可能である。
【0016】
溶媒の使用の制限は、低粘性で容易に処理可能な表面被覆を形成することを困難にしていたため、この特性は、非常に望ましく、特に表面被覆業界において望ましい。このため、今日では短鎖オリゴマーおよび反応性溶剤が通常用いられるが、これらは、知られているとおり、機械的および化学的耐性が低い表面被覆をもたらす。本発明に従って記載されているナノハイブリッド結合剤は、それらが、低粘性および低溶媒必要量である高分子量ポリマーの利点をもたらすため、有利な原料代替物をここに提供する。
【0017】
均一に包含されたナノ粒子によって、構造における改良だけではなく、機械的/化学的特性における改良も期待される。好適なナノ粒子を包含することによって、特性におけるさらなる改良、例えば、ナノサイズUV吸収剤またはナノサイズ顔料を介する耐候性インクによるUV安定性の向上が可能である。コアのサイズおよび屈折率の選択を介して、可視波長の透明性を維持しながら短波長光(UV)の散乱を達成することも特にまた可能である。
【0018】
特に、ここで複数の特性の組み合わせ、例えば耐傷性およびUV防御などが、関心を集め得る。
直径>1nmを有するコアは、本発明による結合剤の中心に位置し、ここではコアは無機または有機成分もしくは無機および有機成分の混合物を含んでいてもよい。コアは好ましくは無機である。
【0019】
コアは、Malvern ZETASIZER(光子相関分光法、PCS)または透過型電子顕微鏡によって決定される、少なくとも1次元において1〜20nm、好ましくは2次元の最大における最大値が500nmである直径を有し、例えば、フィロケイ酸塩の場合が挙げられる。1〜25nm、特に1〜10nmの直径を有する実質的に円形のコアが、特に好ましい。本発明の目的において、実質的な円形は、楕円形および不規則なコアを含む。具体的には、同様に本発明の好ましい態様において、粒度分布は狭い。すなわち、変動許容範囲は、平均の100%より低く、さらに好ましくは平均の最大50%である。
【0020】
好適なコアは、当業者に周知なように、独立してまたは前段階で製造されたナノ粒子であってよく、例えば、SiO、ZrO、TiO、CeO、ZnOなどであるが、また3次元架橋オルガノシルセスキオキサン構造および金属酸化物/水酸化物、特にシルセスキオキサン構造(例えばハイブリッドプラスチックから商標名POSSTMで知られている)、またはヘテロポリシロキサン、特に立方体または他の3次元のこの等級の物質の代表的なものであってもよい。ナノ粒子およびシルセスキオキサン構造のハイブリッドが、コアとして同様に用いられてもよい。また、対応するサイズのフィロケイ酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、窒化物、リン酸塩および硫化物に基づくコアを原則として用いることができる。さらに好適なコア材料は、有機ポリマー/オリゴマーから選択されるコアを含み、特には有機ナノ粒子、例えばフリーラジカル重合されたモノマーである。デンドリマーまたはハイパーブランチポリマーが、コア材料として原則的に同様の働きをすることができる。
【0021】
コアはまた、好適なポリマー鎖からその場で(in situ)形成することができる。本目的に対して好ましく適するものは、末端反応性修飾ポリマーであり、これは結合段階でコアまたはコアの実質的な部分を形成する。特に、アルコキシシラン修飾ポリマー鎖、特に好ましくはトリアルコキシシラン修飾ポリマー鎖がこの目的に適している。これらポリマーの場合、コアの形成は、好ましくは球状構造の形成に好適な反応条件下で行われる。
【0022】
シラン修飾の場合、これらは、特に、基本的な反応条件であり、当業者には既知であるStoeber合成と同程度のものである。アルコキシシランの他に、他の好適な金属化合物、例えばTi、ZrまたはAlを用い、それぞれの種に好適な条件下で反応させることももちろん可能である。反応は、本発明の目的を達成するために、前形成テンプレート(核、ナノ粒子等)または他の反応物(シラン、金属アルコキシド)または塩の存在下でも行うことができる。
【0023】
好ましいコアは、アルカリ土類金属化合物の硫酸塩もしくは炭酸塩を、あるいは任意に例えばケイ素、ジルコニウム、チタン、もしくはアルミニウムの金属酸化物もしくは水酸化物で被覆されていてもよいケイ素、チタン、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、クロム、ニッケル、鉄、イットリウムもしくはジルコニウムの酸化物もしくは水酸化物またはこれらの混合物を、あるいは例えばケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムの金属酸化物または水酸化物で被覆された金属、例えばAg、Cu、Fe、Au、Pd、Ptまたは合金をベースとする親水性および疎水性、特に親水性ナノ粒子からなる群から選択される。個別の酸化物はまた、混合物の形態であってもよい。金属酸化物または水酸化物の金属は、好ましくはケイ素である。コアは、特に好ましくはSiO粒子から選択されるか、またはZnOもしくは酸化セリウム粒子もしくはTiO粒子から選択され、これは、任意に、例えばケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムの金属酸化物または水酸化物で被覆されていてもよい。
【0024】
ZnOまたは酸化セリウムがコアである場合において、本発明の結合剤を、酸化亜鉛または酸化セリウムの吸収特性により、紫外線吸収結合剤として用いることができる。3〜50nmの粒度を有する好適な酸化亜鉛粒子が、例えば、段階a)において、ZnOナノ粒子の1種または2種以上の前駆体を、有機溶媒中でナノ粒子に変換し、段階b)において、反応溶液のUV/VISスペクトルにおける吸収限界が所望の数値に達した際に、ナノ粒子の成長を、シリカの前駆体である少なくとも1種の修飾剤を加えることにより終了させる方法により、得られる。プロセスおよび好適な修飾剤およびプロセスパラメーターは、DE 10 2005 056622.7に記載されている。
【0025】
あるいはまた、段階a)において、ZnOナノ粒子の1種または2種以上の前駆体を、有機溶媒中でナノ粒子に変換し、段階b)において、反応溶液のUV/VISスペクトルにおける吸収限界が所望の数値に達した際に、ナノ粒子の成長を、疎水性ラジカルを含む少なくとも1種のモノマーおよび親水性ラジカルを含む少なくとも1種のモノマーを含む少なくとも1種のコポリマーを加えることにより終了させる方法により、好適な酸化亜鉛粒子を製造することができる。このプロセスおよび好適なコポリマー、モノマーおよびプロセスパラメーターは、DE 10 2005 056621.9に記載されている。
【0026】
また、例えばSuedchemieによりOptigel(登録商標)ブランドの下で、またはLaporteによりLaponite(登録商標)ブランドの下で市販されているナノヘクトライト(nanohectorites)を用いることも、可能である。極めて特に好ましいのは、また、イオン交換水ガラスから製造したシリカゾル(水中のSiO)であり、(例えばH.C.StarckのLevasile(商標登録))またはガス相から蒸着した粒子の分散体から調製され、例えば、DegussaからのAerosil(商標登録)またはSDCからのNanopure(商標登録)である。
【0027】
コアが高い反応性およびオリゴマー/ポリマーと共有結合を形成する可能性をいまだ有さない場合、接着促進剤または別の好適な表面修飾を適用するのが有利である。
したがって、本発明のさらなる態様において、コアの表面は少なくとも1種の表面修飾剤によって修飾されている。これらは、例えば、有機官能性シラン類、有機金属化合物であり、例えばジルコニウムテトラ−n−プロポキシドまたは混合物あるいはコア材料とオリゴマー/ポリマーが結合するのに最適化された反応性を有するポリ官能性有機分子である。
【0028】
表面修飾は好ましくは化学的であり、すなわち結合は水素結合、静電的相互作用、キレート結合または共有結合を介して行われる。表面修飾剤は、好ましくはコアの表面と共有結合で結合する。
少なくとも1種の表面修飾剤は、好ましくは、有機官能性シラン類、第四アンモニウム化合物、カルボン酸、ホスホン酸塩類、ホスホニウムおよびスルホニウム化合物ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。少なくとも1種の表面修飾剤は、さらに好ましくは、チオール、スルフィド、ジスルフィドおよびポリスルフィドからなる群から選択される官能基を少なくとも1種含む。
【0029】
表面が修飾されたナノ粒子を製造するための一般的な方法は、水性粒子分散体から開始し、これに、表面修飾剤を加える。しかし、表面修飾剤との反応をまた、有機溶媒中で、または溶媒混合物中で行うことができる。これは、特に、ZnOナノ粒子に該当する。好ましい溶媒は、アルコール類またはエーテル類であり、ここでメタノール、エタノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランおよび/またはジオキサンまたはこれらの混合物を用いるのが、特に好ましい。メタノールは、ここで特に好適な溶媒であることが、明らかになった。所望により、補助剤、例えば界面活性剤または保護コロイド(例えばヒドロキシプロピルセルロース)がまた、反応中に存在してもよい。
【0030】
表面修飾剤は、単独で、混合物として、またはさらに任意で非官能性表面修飾剤を混合して用いることができる。
記載した表面修飾剤の要求は、特に、本発明において、2または3以上の官能基を担持する接着促進剤により満足される。接着促進剤の1つの基は、ナノ粒子の酸化物表面と化学的に反応する。ここで特に好適なのは、アルコキシシリル基(例えばメトキシ、エトキシシラン類)、ハロシラン類(例えばクロロシラン類)またはリン酸エステルもしくはホスホン酸およびホスホン酸エステル類またはカルボン酸の酸性基である。
【0031】
記載した基は、第2の官能基に、ある程度(more or less)の長さのスペーサーを介して結合している。このスペーサーは、非反応性アルキル鎖、シロキサン類、ポリエーテル類、チオエーテル類もしくはウレタン類または式(C,Si)(N,O,S)で表され、式中n=1〜50、m=2〜100およびx=0〜50であるこれらの基の組み合わせを含む。官能基は、好ましくはチオール、スルフィド、ポリスルフィド、特にテトラスルフィドまたはジスルフィド基である。
【0032】
チオール、スルフィド、ポリスルフィドまたはジスルフィド基に加えて、上記の接着促進剤は、他の官能基を含んでもよい。追加の官能基は、特に、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アミノ、シアノ、イソシアネート、エポキシド、カルボキシルまたは水酸基である。シランをベースとする表面修飾剤は、例えばDE 40 11 044 C2に記載されている。リン酸をベースとする表面修飾剤は、特に、LUBRIZOL(Langer&Co.)からのLubrizol(登録商標)2061および2063として得られる。好適なシランは、例えば、メルカプトプロピルトリメトキシシランである。このおよび他のシラン類は、例えば、ABCR GmbH & Co., Karlsruhe、またはDegussa、ドイツから商標名Dynasilan下で商業的に入手できる。メルカプトホスホン酸またはメルカプトホスホン酸ジエチルをまた、接着促進剤として本明細書中で述べることができる。
【0033】
あるいは、表面修飾剤は一般式(R)Si−S−Ahp−Bhbで表される両親媒性シランでもよく、式中、ラジカルRは同一であっても異なっていてもよく、加水分解で除去可能なラジカルを表し、Sは−O−または1〜18個のC原子を有する直鎖状もしくは分岐状アルキル、2〜18個のC原子および1つもしくは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分岐状アルケニル、2〜18個のC原子および1つもしくは2つ以上の三重結合を有する直鎖状もしくは分岐状アルキニル、3〜7のC原子を有する飽和、部分的もしくは完全に不飽和のシクロアルキルのいずれかを示し、これらは1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよく、Ahpは親水性ブロックを示し、Bhpは疎水性ブロックを示し、ここで少なくとも1つのチオール、スルフィドまたジスルフィドがAhpおよび/またはBhpと結合を形成している。両親媒性シラン類を用いることにより、極性溶媒と無極性溶媒との両方中で特に良好に再分散し得るナノ粒子が生じる。
【0034】
両親媒性シラン類は、頭部基(R)Siを含み、ここでラジカルRは、同一であっても異なっていてもよく、加水分解で除去可能なラジカルを表す。ラジカルRは好ましくは同一である。
好適な加水分解で除去可能なラジカルは、例えば、1〜10個のC原子を有する、好ましくは1〜6個のC原子を有するアルコキシ基、ハロゲン、水素、2〜10個のC原子を有する、および特に2〜6個のC原子を有するアシルオキシ基、またはNR’であり、ここでラジカルR’は同一であっても異なっていてもよく、水素および1〜10個のC原子を有する、特に1〜6個のC原子を有するアルキル基から選択される。好適なアルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシまたはブトキシ基である。好適なハロゲンは、特に、BrおよびClである。アシルオキシ基の例は、アセトキシおよびプロポキシ基である。さらにまた好適な加水分解で除去可能なラジカルはオキシム類である。オキシム類は、ここでは、水素またはすべての所望のラジカルにより置換されていてもよい。ラジカルRは好ましくはアルコキシ基、特にメトキシまたはエトキシ基である。
【0035】
スペーサーSは、前述の頭部基に共有結合し、Si頭部基と親水性ブロックAhpとの間の連結要素として機能し、本発明の目的のために架橋機能を呈する。基Sは、−O−、または1〜18個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル、2〜18個のC原子および1つもしくは2つ以上の二重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルケニル、2〜18個のC原子および1つもしくは2つ以上の三重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルキニル、3〜7個のC原子を有する飽和、部分的もしくは完全に不飽和のシクロアルキルのいずれかであり、これらは、1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい。
【0036】
のC〜C18アルキル基は、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチルもしくはtert−ブチル、さらにまたペンチル、1−、2−もしくは3−メチルブチル、1,1−、1,2−もしくは2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシルまたはテトラデシル基である。これは、任意に、例えばジフルオロメチル、テトラフルオロエチル、ヘキサフルオロプロピルまたはオクタフルオロブチル基のようにパーフルオロ化されていてもよい。
複数の二重結合がまた存在し得る、2〜18個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルケニルは、例えば、ビニル、アリル、2−または3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、さらに4−ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、−C16、−C1018〜−C1834、好ましくはアリル、2−または3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、さらに好ましくは4−ペンテニル、イソペンテニルまたはヘキセニルである。
【0037】
複数の三重結合がまた存在し得る、2〜18個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキニルは、例えば、エチニル、1−または2−プロピニル、2−または3−ブチニル、さらに4−ペンチニル、3−ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、−C14、−C1016〜−C1832、好ましくはエチニル、1−または2−プロピニル、2−または3−ブチニル、4−ペンチニル、3−ペンチニルまたはヘキシニルである。
3〜7個のC原子を有する、非置換の、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロペンタ−1,3−ジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサ−1,3−ジエニル、シクロヘキサ−1,4−ジエニル、フェニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタ−1,3−ジエニル、シクロヘプタ−1,4−ジエニルまたはシクロヘプタ−1,5−ジエニル基であってもよく、これらは、C〜Cアルキル基により置換されている。
【0038】
スペーサーSPは、親水性ブロックAhpに続く。後者は、非イオン系、カチオン系、アニオン系および両性イオン系親水性ポリマー、オリゴマーおよび基から選択することができる。最も単純な態様において、親水性ブロックは、アンモニウム、スルホニウムまたはホスホニウム基、カルボキシルを含むアルキル鎖、サルフェートおよびホスフェート側鎖を含んでもよく、ここでこれらはまた、対応する塩、遊離酸または塩の基を含む部分的にエステル化された無水物、少なくとも1つのOH基を含むOH置換アルキルまたはシクロアルキル鎖(例えば糖)、NH−およびSH−で置換されたアルキルもしくはシクロアルキル鎖、またはモノ、ジ、トリもしくはオリゴエチレングリコール基の形態であってもよい。対応するアルキル鎖の長さは、1〜20個のC原子、好ましくは1〜6個のC原子であってもよい。
【0039】
非イオン系、カチオン系、アニオン系または両性イオン系親水性ポリマー、オリゴマーまたは基は、ここで、対応するモノマーから当業者に一般的に知られている方法による重合により調製することができる。好適な親水性モノマーは、ここでは、以下のものからなる群からの少なくとも1つの分散官能基を含む。
(i)中和剤によりアニオンに変換することができる官能基、およびアニオン基、および/または
(ii)中和剤および/または四級化剤によりカチオンに変換することができる官能基、およびカチオン基、および/または
(iii)非イオン系親水性基。
【0040】
官能基(i)は、好ましくは、カルボキシル、スルホニルおよびホスホニル基、酸性の硫酸およびリン酸エステル基、ならびにカルボキシレート、スルホネート、ホスホネート、硫酸エステル基およびリン酸エステル基からなる群から選択され、官能基(ii)は、好ましくは、第一級、第二級および第三級アミノ基、第一級、第二級、第三級および第四級アンモニウム基、第四級ホスホニウム基および第三級スルホニウム基からなる群から選択され、官能基(iii)は、好ましくはオメガ−ヒドロキシおよびオメガ−アルコキシポリ(アルキレンオキシド)−1−イル基からなる群から選択される。
【0041】
中和されない場合には、第一級および第二級アミノ基はまた、イソシアネート反応性官能基として作用し得る。
官能基(i)を含む非常に好適な親水性モノマーの例は、アクリル酸、メタクリル酸、ベータ−カルボキシエチルアクリレート、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸;オレフィン的に不飽和のスルホン酸およびホスホン酸およびこれらの部分エステル;ならびにマレイン酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルおよびフタル酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチル、特にアクリル酸およびメタクリル酸である。
官能基(ii)を含む非常に好適な親水性モノマーの例は、2−アミノエチルアクリレートおよびメタクリレートならびにアリルアミンである。
【0042】
官能基(iii)を含む非常に好適な親水性モノマーの例は、オメガ−ヒドロキシおよびオメガ−メトキシポリ(エチレンオキシド)−1−イル、オメガ−メトキシポリ(プロピレンオキシド)−1−イル、ならびにオメガ−メトキシポリ(エチレンオキシド−コ−ポリプロピレンオキシド)−1−イルアクリレートおよびメタクリレート、ならびにヒドロキシル置換エチレン類、アクリレート類およびメタクリレート類、例えばメタクリル酸ヒドロキシエチルである。
【0043】
両性イオン系親水性ポリマーの生成に適するモノマーの例は、ベタイン構造が側鎖中に起こるものである。側鎖は、好ましくは、−(CH−(N(CH)−(CH−SO、−(CH−(N(CH)−(CH−PO2−、−(CH−(N(CH)−(CH−O−PO2−および−(CH−(P(CH)−(CH−SOから選択され、ここでmは、1〜30の範囲の整数、好ましくは1〜6の範囲の整数、特に好ましくは2を表し、nは、1〜30の範囲の整数、好ましくは1〜8の範囲の整数、特に好ましくは3を表す。ここで、特に好ましいのは、親水性ブロックの少なくとも1つの構造単位がホスホニウムまたはスルホニウムラジカルを含むことであり得る。
【0044】
親水性モノマーを選択する際には、官能基(i)を含む親水性モノマーおよび官能基(ii)を含む親水性モノマーを、好ましくは、不溶性塩または複合体が生成しないように互いに混ぜ合わせることを、確実にすべきである。対照的に、官能基(i)を含む、または官能基(ii)を含む親水性モノマーを、所望により、官能基(iii)を含む親水性モノマーと混ぜ合わせることができる。
上記の親水性モノマーの中で、官能基(i)を含むモノマーを、特に好ましく用いる。
【0045】
アニオンに変換することができる官能基(i)についての中和剤は、好ましくは、ここで、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、トリフェニルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、2−アミノメチルプロパノール、ジメチルイソプロピルアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラミンからなる群から選択され、カチオンに変換することができる官能基(ii)についての中和剤は、好ましくは、硫酸、塩酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、ジメチロールプロピオン酸およびクエン酸からなる群から選択される。
【0046】
親水性ブロックは、極めて特に好ましくはモノ、ジおよびトリエチレングリコール構造単位から選択される。
疎水性ブロックBhbは、親水性ブロックAhpに結合して続く。ブロックBhbは、疎水性基をベースとするか、または親水性ブロックと同様に、重合に適する疎水性モノマーをベースとする。
【0047】
好適な疎水性基の例は、1〜18個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、2〜18個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル、2〜18個のC原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル、3〜7個のC原子を有する飽和、部分的または完全に不飽和のシクロアルキルであり、これらは、1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい。このような基の例は、上記ですでに述べた。さらに、2個よりも多いC原子を有するアリール、ポリアリール、アリール−C〜Cアルキルまたはエステル類が、好適である。上記の基は、さらにまた、特にハロゲンにより置換されていてもよく、ここでパーフルオロ化されている基が、特に好適である。
【0048】
アリール−C〜Cアルキルは、例えば、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、フェニルペンチルまたはフェニルヘキシルを示し、ここでフェニル環およびまたアルキレン鎖の両方は、上記のようにFにより部分的または完全に置換されていてもよく、特に好ましくはベンジルまたはフェニルプロピルである。
疎水性ブロックBhbに適する疎水性のオレフィン的に不飽和のモノマーの例は、以下のものである。
【0049】
(1)オレフィン的に不飽和の酸で本質的に酸性基を有しないエステル、例えばアルキルラジカル中に20個までの炭素原子を有する(メタ)アクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、ビニルホスホン酸またはビニルスルホン酸のアルキルまたはシクロアルキルエステル類、特に、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ヘキシル、エチルヘキシル、ステアリルまたはラウリルアクリレート、メタクリレート、クロトネート、エタクリレートまたはビニルホスホネートもしくはビニルスルホネート;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、エタクリル酸、ビニルホスホン酸またはビニルスルホン酸の脂環式エステル類、特に、シクロヘキシル、イソボルニル、ジシクロペンタジエニル、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンメタノールまたはtert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、クロトネート、エタクリレート、ビニルホスホネートまたはビニルスルホネート。
【0050】
これらは、少量の(メタ)アクリル酸、クロトン酸またはエタクリル酸の多官能アルキルまたはシクロアルキルエステル類、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンジメタノールまたはシクロヘキサン−1,2−、−1,3−もしくは−1,4−ジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートまたはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートならびに類似するエタクリレート類またはクロトネート類を含んでいてもよい。本発明の目的のために、少量の多官能モノマー(1)は、ポリマーの架橋またはゲル化をもたらさない量を意味するものと、解釈される。
【0051】
(2)分子あたり少なくとも1つの水酸基またはヒドロキシメチルアミノ基を担持しており、酸性基を本質的に有しないモノマー、例えば
− アルファ、ベータ−オレフィン的に不飽和のカルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、例えばアクリル酸、メタクリル酸およびエタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルであって、ここで、ヒドロキシアルキル基が20個までの炭素原子を含み、例えば、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メタクリレートもしくはエタクリレート;1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンジメタノールもしくはメチルプロパンジオールモノアクリレート、モノメタクリレート、モノエタクリレートもしくはモノクロトネート;または環式エステル、例えばエプシロン−カプロラクトンおよびこれらのヒドロキシアルキルエステル類の反応の生成物;
【0052】
− オレフィン的に不飽和のアルコール類、例えばアリルアルコール
− ポリオール類のアリルエーテル類、例えばトリメチロールプロパンモノアリルエーテルまたはペンタエリスリトールモノ、ジもしくはトリアリルエーテル。多官能モノマーは、一般的に、少量で用いるに過ぎない。本発明の目的のために、少量の多官能モノマーは、ポリマーの架橋またはゲル化をもたらさない量を意味するものと、解釈される、
【0053】
− アルファ、ベータ−オレフィン的に不飽和のカルボン酸と、分子中に5〜18個の炭素原子を有するアルファ−分枝状モノカルボン酸のグリシジルエステル類との反応の生成物。アクリル酸またはメタクリル酸と、第三級アルファ−炭素原子を含むカルボン酸のグリシジルエステルとの反応は、重合反応の前、間または後に起こり得る。用いるモノマー(2)は、好ましくは、アクリル酸および/またはメタクリル酸と、Versatic(登録商標)酸のグリシジルエステルとの反応の生成物である。グリシジルエステルは、Cardura(登録商標)E10の名称の下で、市販で入手できる。さらに、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben [Roempp's Lexicon of Surface Coatings and Printing Inks], Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, .1998、605および606頁を参照する;
【0054】
− アルファ、ベータ−オレフィン的に不飽和のカルボン酸類の、およびアルファ、ベータ−不飽和カルボキサミド類のアミノアルキルエステル類のホルムアルデヒド付加物、例えばN−メチロールおよびN,N−ジメチロールアミノエチルアクリレート、−アミノエチルメタクリレート、−アクリルアミドおよび−メタクリルアミド;ならびに
− アクリルオキシシラン基および水酸基を含むオレフィン的に不飽和のモノマー。これは、ヒドロキシ官能性シラン類とエピクロルヒドリン30との反応、およびその後の、中間体とアルファ、ベータ−オレフィン的に不飽和のカルボン酸、特にアクリル酸およびメタクリル酸、あるいはこれらのヒドロキシアルキルエステル類とのその後の反応により、調製することができる。
【0055】
(3)分子中に5〜18個の炭素原子を有するアルファ−分枝状モノカルボン酸のビニルエステル類、例えばVeoVa(登録商標)ブランドの下で市販されているVersatic(登録商標)酸のビニルエステル;
(4)環式および/または非環式オレフィン類、例えばエチレン、プロピレン、ブト−1−エン、ペント−1−エン、ヘクス−1−エン、シクロヘキセン、シクロペンテン、ノルボルネン、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエン;
【0056】
(5)アルファ、ベータ−オレフィン的に不飽和のカルボン酸のアミド類、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチル−、N,N−ジメチル−、N−エチル−、N,N−ジエチル−、N−プロピル−、N,N−ジプロピル−、N−ブチル−、N,N−ジブチル−および/またはN,N−シクロヘキシルメチル(メタ)アクリルアミド;
(6)エポキシド基を含むモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸および/またはイタコン酸のグリシジルエステル類;
【0057】
(7)ビニル芳香族(vinylaromatic)炭化水素、例えばスチレン、ビニルトルエンまたはアルファ−アルキルスチレン類、特にアルファ−メチルスチレン;
(8)ニトリル類、例えばアクリロニトリルまたはメタクリロニトリル;
(9)以下からなる群から選択されたビニル化合物;ハロゲン化ビニル類、例えば塩化ビニル、フッ化ビニル、二塩化ビニリデン、二フッ化ビニリデン;ビニルアミド類、例えばN−ビニルピロリドン;ビニルエーテル類、例えばエチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルおよびビニルシクロヘキシルエーテル;ならびにビニルエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよび酪酸ビニル;
【0058】
(10)アリルエーテル類およびエステル類からなる群から選択されたアリル化合物、例えばプロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテルまたは酢酸アリルもしくはプロピオン酸アリル;多官能性モノマーに関して、上記のものが同様に該当する;
【0059】
(11)シロキサンまたはポリシロキサンモノマー。これは、上記ですでに述べた飽和、不飽和、直鎖状もしくは分枝状アルキル基または他の疎水性基により置換されていてもよい。また好適なのは、1000〜40,000の数平均分子量Mnを有し、分子あたり平均で0.5〜2.5のエチレン的に不飽和の二重結合を含むポリシロキサンマクロモノマー、特に2000〜20,000、特に好ましくは2500〜10,000、および特に3000〜7000の数平均分子量Mnを有し、分子あたり平均で0.5〜2.5、好ましくは0.5〜1.5のエチレン的に不飽和の二重結合を含むポリシロキサンマクロモノマーであり、これは、DE 38 07 571 A1、5〜7頁、DE 37 06 095 A1、3〜7欄、EP 0 358 153 B1、3〜6頁、US 4,754,014 A1、5〜9欄、DE 44 21 823 A1または国際特許出願WO 92/22615、12頁18行〜18頁10行に記載されている通りである;ならびに
【0060】
(12)カルバメートまたはアロファナート基を含むモノマー、例えばアクリロイルオキシ−またはメタクリロイルオキシエチル、−プロピルまたは−ブチルカルバメートまたはアロファナート;カルバメート基を含む好適なモノマーのさらなる例は、特許明細書US 3,479,328 A1、US 3,674,838 A1、US 4,126,747 A1、US 4,279,833 A1またはUS 4,340,497 A1に記載されている。
【0061】
前述のモノマーの重合を、当業者に知られているすべての方法で、例えば重付加またはカチオン性、アニオン性もしくはフリーラジカル重合により、行うことができる。この関連においては重付加が好ましい。その理由は、異なるタイプのモノマー、例えばエポキシド類をジカルボン酸類と、またはイソシアネート類をジオール類と、このようにして簡単な方法で互いに組み合わせることができるからである。
【0062】
それぞれの親水性および疎水性ブロックを、原則的に、任意の所望の方式で互いに組合わせることができる。本発明の両親媒性シラン類は、好ましくは、2〜19の範囲内、好ましくは4〜15の範囲内のHLB値を有する。HLB値は、ここでは、
【数1】

として定義され、シランが一層親水性の挙動を有するか、または疎水性の挙動を有するか、即ち、2つのブロックAhpとBhbとのいずれが本発明によるシランの特性を支配するかを示す。HLB値は、理論的に計算され、親水性および疎水性基の質量分率から生じる。0のHLB値は、親油性化合物を示し、20のHLB値を有する化合物は、親水性留分のみを有する。
【0063】
好適な両親媒性シラン類はさらに、少なくとも1つのチオール、スルフィドまたはジスルフィド基がAhpおよび/またはBhbに有利に結合しているという事実により、際立つ。反応性官能基は、好ましくは、疎水性ブロックBhb上に位置しており、ここでこれは、特に好ましくは、疎水性ブロックの末端に結合している。好ましい態様において、頭部基(R)Siとチオール、スルフィドまたはジスルフィド基とは、可能な最大の距離を有する。これにより、例えば周囲の媒体とのチオール、スルフィドまたはジスルフィド基の可能な反応性を顕著に制限せずに、ブロックAhpおよびBhbの鎖長を特に柔軟に設定することが、可能になる。
【0064】
さらに、チオール、スルフィド、ポリスルフィドまたはジスルフィド基に加えて、特に加水分解で除去可能なラジカル、OH、カルボキシル、NHおよびSH基、ハロゲンまたは二重結合を含む反応性基、例えばアクリレートまたはビニル基を含むシリル基から選択されたさらなる反応性官能基が、存在してもよい。加水分解で除去可能なラジカルを含む好適なシリル基は、すでに頭部基(R)Siの説明において前に記載した。追加の反応性基は、好ましくはOH基である。
【0065】
本発明による結合剤において、オリゴマーおよび/またはポリマーはコアと放射状に結合している。ポリマーまたはオリゴマー鎖は、好ましくは少なくとも1つの共有結合を形成するために、当業者に知られている方法によって、コア材料との反応をもたらすことができる。
本発明は、したがって、さらに本発明による結合剤の調製のための方法に関し、溶媒または混合溶媒における直径>1nmを有するコアの分散および有機モノマー存在下の重合を含み、ここで形成されたオリゴマーおよび/またはポリマーは、好ましくはコアと放射状に結合する。
【0066】
ここでは、オリゴマー/ポリマーは、オリゴマー/ポリマー鎖当り1つの反応中心によってのみコア物質と反応することが望ましく、この反応中心がポリマー鎖の末端に位置することが特に好ましい。前段階または外部反応で形成されたポリマー/オリゴマーとコア物質およびまた共有結合中にその場(in situ)で形成されたポリマー/オリゴマーの両方を使用することができる。これは、例えば、コア物質存在下、不飽和モノマーによるフリーラジカル重合中が当てはまり、ここでは好ましくは、対応して(SH)表面修飾される。
【0067】
ポリマー/オリゴマーの互いの立体障害のため、一般的にポリマーは、後でコアに結合するのではなく、コア物質から開始して形成されてもよい。所望であれば、コアから離れた重合は、ポリマーによるコア物質の本質的に完全および高密度の被覆を確実にすることができる。ポリマー鎖の形成は、当業者に知られている種々の連鎖成長反応を介して行うことができる。ここでは、イオン重合(エポキシド官能基またはハロゲン化芳香族化合物から開始する)およびフリーラジカル重合が例として挙げられ、ここでは、後者が、水溶液環境下でも行うことができるため、好ましい。
【0068】
ポリマーおよび/またはオリゴマーの合成は、当業者に知られている連鎖成長反応によって行うことができ、ここで鎖は、粒子表面と反応することができる反応性基によって、開始またはまたは停止される。ここでは、アニオン性重合ならびに制御およびフリーラジカル重合が例として挙げられる。
【0069】
さらに好ましい場合において、コア物質が、ポリマー/オリゴマー鎖の共有結合中に形成される。この目的のためには、加水分解性/凝縮性の有機シランまたは有機金属化合物によって末端修飾され、また加水分解および重合中(さらなる有機シリコンおよび有機金属化合物の存在下においても)コア材料を与えるために反応するポリマー/オリゴマーの使用が好ましい。
【0070】
本発明による典型的なオリゴマー/ポリマーは、例えば:トリアルコキシリルメルカプトプロピル末端ポリアクリレートであり、これは例えば、1種または2種以上不飽和化合物と連鎖移動剤としてのメルカプトプロピルトリアルコキシシランまたは開始剤としてのビス[3−トリメトキシシリルプロピル]ジスルフィドとのフリーラジカル重合によって、得ることができる。さらに、末端OH−修飾ポリエステル類またはポリエーテル類とイソシアネートアルキルトリアルコキシシランとの反応の生成物の使用もまた好ましい。
【0071】
あるいは、ポリマー鎖中に加水分解性シリル化合物を含むポリマーを用いることも可能であり、これはその後接続元素を介して2種のオリゴマー/ポリマー鎖の接続を達成する。この種のオリゴマー/ポリマーは、例えばメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランの存在下、不飽和化合物のフリーラジカル重合によって得ることができる。
【0072】
有機シリルおよび有機金属反応中心以外に、例えばアミン、エポキシド、ヒドロキシル、メルカプト、イソシアネート、カルボキシレート、アリルまたはビニル基など、コア材料側の好適な反応物との反応のための好適な有機反応中心を用いることもまた可能である。例えば、エポキシド官能性コア材料は、アミノ官能性ポリマーと反応することができ、またはアミン修飾コア材料は、イソシアネート官能性ポリマー/オリゴマーと反応することができる。
ポリマー/オリゴマーは既知のポリマー物質群の全てまたはそれらの混合物からなることができる。特に、オリゴマーおよび/またはポリマーは、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、シリコーン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドおよび混合物およびそれらの混成物からなる群から選択される。
【0073】
官能基を含む対応するオリゴマーおよび/またはポリマー形成のための非常に好適なモノマーの例は、アクリル酸、メタクリル酸、ベータ−カルボキシエチルアクリレート、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸;オレフィン的に不飽和のスルホン酸もしくはホスホン酸またはこれらの部分エステル;ならびにマレイン酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチル、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルおよびフタル酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチル、特にアクリル酸およびメタクリル酸である。
官能基を含む非常に好適なモノマーのさらなる例は、2−アミノエチルアクリレートおよびメタクリレートまたはアリルアミンである。
【0074】
官能基を含むさらなる好適なモノマーは、オメガ−ヒドロキシおよびオメガ−メトキシポリ(エチレンオキシド)−1−イル、オメガ−メトキシポリ(プロピレンオキシド)−1−イル、ならびにオメガ−メトキシポリ(エチレンオキシド−コ−ポリプロピレンオキシド)−1−イルアクリレートおよびメタクリレート、ならびにヒドロキシル置換エチレン類、アクリレート類およびメタクリレート類、例えばメタクリル酸ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸ヒドロキシプロピルである。
【0075】
両性イオン性親水性ポリマー形成のための好適なモノマーの例は、側鎖においてベタイン構造が生じるものである。側鎖基好ましくは、(CH−(N(CH)−(CH−SO−、(CH−(N(CH)−(CH−PO2−、(CH−(N(CH)−(CH−O−PO2−および(CH−(P(CH)−(CH−SO、ここでmは1〜30の範囲からの整数、好ましくは1〜6の範囲から、特に好ましくは2を表し、nは、1〜30の範囲からの整数、好ましくは1〜8の範囲から、特に好ましくは3を表す。
【0076】
少なくとも3および特に好ましくは少なくとも6のポリマー/オリゴマー鎖がコアごとに共有結合される。コアに結合するポリマー/オリゴマー鎖の最大数は技術的実現可能性および調製能力によってのみ制限される。
ポリマーは、モノマーまたは(好ましくは)モノマー混合物からなる。
モノマーは、好ましくは、側鎖に、例えばヒドロキシル、エポキシド、アリル、ブロックイソシアネート等などの反応性基を保有することもできる。
【0077】
また、側鎖はさらに官能基を有してもよく、例えば、紫外線吸収剤または蛍光染料としてヒドロキシベンゾフェノン、ベンゾトリアゾールであり、これはアクリレート官能基を介してポリマー中に取り込まれる。
ポリマー/オリゴマーシース(seath)は、好ましくはさらなる表面被膜成分、例えば、架橋剤など(特にイソシアネートまたはメラミン架橋剤)に対して反応するか、または例えばブロックイソシアネート存在下によって、エネルギー(例えば紫外光、電子線硬化または熱)の入力により硬化可能であることが好ましい。
【0078】
この目的のために、コア物質に結合されたポリマーが、実質的に3次元架橋ポリマーを与える反応ができるさらなる反応性基を含むことが望ましい。これらは、例えば、アクリルもしくはビニルなどの不飽和基、または例えばエポキシド基、NH、COOH、アルコキシリルもしくはOH基などの外部架橋剤と反応できる基であってよく、これらはイソシアネートと架橋接続されてもよい。官能基は特にはOH基である。
【0079】
本発明の好ましい態様において、コアの表面は、チオール、スルフィド、ジスルフィドおよびポリスルフィドからなる群から選択される少なくとも1種の官能基を含む少なくとも1種の表面修飾剤によって被覆される。この方法によって修飾されたコアを、その後第2段階で有機モノマーの存在下フリーラジカル重合で反応させ、ここで第1段階で適用された表面修飾剤は、フリーラジカル連鎖移動剤として機能する。フリーラジカルによって成長したポリマー鎖は、例えば、SH基から水素を引き抜き、これにより硫黄上に新しいフリーラジカルを生成し、これが新しいポリマー鎖を作ることができる。
【0080】
コアの表面に結合される表面修飾剤を含む好ましい結合剤の調製のための方法は以下の段階、
a)少なくとも1種の表面修飾剤の溶媒に分散されたコアへの適用、ここで少なくとも1種の表面修飾剤は少なくとも1種の官能基を含む、および
b)有機モノマー存在下でのフリーラジカル重合、ここでは表面修飾剤はa)段階で適用されフリーラジカル連鎖移動剤として機能する少なくとも1種の官能基を含む
c)d)必要に応じた、蒸留、沈殿、溶媒交換、抽出またはクロマトグラフィーによる、本発明に従い調製した結合剤のワークアップ、
を含む。
【0081】
本発明による方法で用いられる表面修飾剤は、特に好ましくはチオール、スルフィド、ジスルフィドおよびポリスルフィドからなる群から選択される官能基を少なくとも1種含む。
原則として、当業者に知られているフリーラジカル重合の開始方法の全ての方法が、好適である。フリーラジカル重合は、好ましくはAIBNまたはAIBN誘導体を用いる当業者に知られている方法で開始される。
【0082】
当業者に知られている全ての方法の種類が、重合を行うために同様に好適である。例えば、モノマーおよびフリーラジカル開始剤を1段階で添加することができ、これは好ましい態様である。また、モノマーおよびフリーラジカル開始剤は段階的に添加することもでき、例えば開始後およびモノマーの部分添加である。また重合過程で、段階的にモノマー組成物を変更することもでき、例えば、最初に親水性モノマー、その後疎水性モノマーまたはその逆という時間制御による添加である。これは、特に、当業者に知られている制御フリーラジカル重合方法において可能である。
【0083】
上述した溶媒または混合溶媒は水、有機溶媒およびそれらの混合物から選択される。混合溶媒およびモノマーが、モノマーは溶解することができるが、ポリマーがそれらから形成されるように選択された場合、しかしながら、ある鎖長からは溶解せず、反応混合物から本発明による結合剤が沈殿する。
【0084】
沈殿した結合剤は、反応媒体中の遊離ポリマーからまたは未反応表面修飾剤から分離することができる。これは、当業者に知られている標準的な方法で行うことができる。好ましい態様において、重合はモノマーが溶解できるが、形成されたポリマーはある鎖長からは溶解しない溶媒または混合溶媒中で行われる。結合剤は、したがって反応溶液から沈殿する。コアの製造またはそれらの機能化または副生成物の溶解中、依然と残留するモノマーおよびどんな未反応試薬も簡単に、例えばろ過によって、分離することができる。
【0085】
別の方法において、外部要因によってある時点で相分離を誘導してもよく、例えば温度の変化、塩の添加または非溶剤の添加などである。結合剤合成は、例えば表面被覆率を制御するために、こうして所望の時点で中断することができる。
本発明による結合剤は、単独または遊離ポリマーとの混合物として用いることができる。
【0086】
上述した方法から得ることができるオリゴマーおよび/またはポリマーがラジカル結合されたコアは、上述したとおり、特に結合剤として好適である。本発明は、本発明による結合剤の配合物、表面被覆類(好ましくはワニス)、インク、発泡体、接着剤、カプセル化材料およびプラスチックまたはそれらの前駆体における使用に同様に関する。表面コーティングを含む溶媒および水、ならびに粉末コーティングにおける、表面被覆原料としての使用が特に好ましい。前記用途において、例えば、ワニス(例えば商業的に入手できる粉末コーティング、紫外線硬化表面コーティング、二重硬化表面コーティングにおける)およびプラスチック、例えばポリカルボネートまたはPMMAなどの耐引っかき性および耐薬品性の改善を達成することができる。
【0087】
他の用途は、例えば、機能性ナノ粒子を含む表面コーティングおよびプラスチックの透明な対候的防護または透明な着色に関する。
前記使用において、本発明による結合剤は、従来の結合剤の代替品として働く。結合剤としての特性においては、これらは既に知られているナノ添加剤の利点を組み込む。
【0088】
新規の結合剤は、従来の結合剤とは外観において大いに異なる。使用の際、これらは例えば標準的な表面被覆溶媒を用いて溶解させることができ、また不可逆の架橋が生じることなく再乾燥させることができる。また、本発明による結合剤の取り扱いおよび加工(processing)は、従来の結合剤のそれらに対応する。従来技術(分散への努力、粉末の取り扱い)に基づくナノ組成物の調製に存在する困難が生じない。
【0089】
本発明による結合剤の粘性は、1つの長い鎖の代わりに複数のより短い鎖が中心点から広がっているため、同じ分子量の従来の結合剤と比較して顕著に低減される。これは、特に高固体の形成の場合、特に超固体表面コーティングの場合に有利であり、ここでは超低溶媒量で行う必要がある。従来のポリマーの場合、機械的特性を損なう短鎖ポリマーおよび反応性溶剤をここでは用いなければならない。新しい種類の結合剤は、このように反応溶剤の使用を減らすことができる。
【0090】
本発明による結合剤の場合に見られる低粘性は、以下の例示的比較によって明確に示すことができ:
a)30モノマー単位を有するポリマーの従来の結合剤の図表示
【化1】

【0091】
b)30モノマー単位を有し、コアに放射状に結合している本発明による結合剤の図表示
【化2】

【0092】
30モノマー単位(平均分子量約3000〜4000g/molに相当する)を有するポリマーと同様に30モノマー単位を有する本発明によるコア架橋ナノ混成結合剤間の直接比較の図表示は、長い直鎖状のポリマー鎖が、ニュートン挙動を示し得る本発明による結合剤のほぼ球状形状よりも高い粘性を持つことを示している。
【0093】
本発明による結合剤は、特にワニスまたは接着剤での使用に好適である。ナノ粒子に結合される結合剤は、また特に粉末コーティングの分野でも用いることができる。減少された粘性は流動性をよりよくすることができ、そのため、よりよい表面品質が可能となる。
【0094】
この代替結合剤アプローチにおける重要な副次的効果は、ナノ粒子コアによって表面コーティングマトリックスへの、さらなる機能の組み込みの可能性である。したがって、電磁波に影響させることができ(UV吸収、IR吸収)、触媒効果を与えることができ、無機着色ナノ顔料が利用でき、または、例えばナノ蛍光体を無機コアとして使うことができる。したがって、本発明は同様に、インク、発泡体、接着剤、カプセル化材料およびプラスチックまたはそれらの前駆体における短波長放射線に対する乳白剤としての本発明による結合剤の使用に関する。
【0095】
前記使用において、本発明による結合剤は、直径<1μmを有する表面修飾粒子を共存させることができ、これは均一に分散されるかまたは
硬化被覆物質中に勾配形成している。
本発明は同様に、本発明による結合剤を含む配合物、表面コーティング、インク、発泡体、接着剤、カプセル化材料およびプラスチック類に関する。
【0096】
以下の例は、単に本発明を、保護の範囲を制限せずに例示する。特に、他の箇所に述べない限り、関連性のある例が基づく定義された化合物の当該箇所に記載した特徴、特性および利点をまた、詳細に述べていないが特許請求の範囲の保護の範囲内にある他の物質および化合物にも適用することができる。
【実施例】
【0097】
例1:
a)シリル末端ポリアクリレートの調製
メチルメタクリレート130ml、n−ブチルアクリレート170ml、2−ヒドロキシエチルメタクリレート32.5mlおよび3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン38mlをTHF1.5lに完全に溶解する。アゾビスイソブチロニトリル5gを混合物に加え、これを60℃で6時間温める。溶媒をロータリーエバポレータで除去し、無色生成物として反応性シリル末端基を含むポリマーを得る。
【0098】
b)結合剤を与えるアルカリ触媒縮合
a)で調製されたポリマー100gをトルエン500mlに溶解する。25%アンモニア水溶液50mlを添加する。混合物を強力に撹拌しながら60℃で4時間温める。
水およびトルエンをロータリーエバポレータで除去し、また残留物をブチルアセテート500mlに吸収させ、ブチルアセテート中に、無色、透明の結合剤溶液を得る。
【0099】
例2:末端シリル修飾ポリアクリレートポリオールの調製
イソプロパノール250mlを、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)からなるモノマー混合物に添加する。連鎖移動剤3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の添加後、10分間反応混合物に窒素を流す。その後混合物を60℃で16時間加熱する。反応時間後、重合バッチは室温まで冷やされ、そしてロータリーエバポレーターおよびその後の適した真空下で終夜乾燥させる。下記のバッチはこの手順で行われる:
【0100】
【表1】

【0101】
例3:グラフト(grafting-to)方法による例2からのシラン末端ポリマーを用いるSiOナノ粒子の修飾
イソプロパノール(HIGHLINK, Clariant)中5重量%SiOナノ粒子分散体から開始し、1で調製したポリマーを表2に従って表面修飾のために用いる。反応混合物を還流下ここで16時間加熱する。
【0102】
【表2】

冷却後、イソプロパノールをロータリーエバポレータで除去し、そして残った固体を表面コーティング溶媒に分散させる(例えばブチルアセテート)。
【0103】
例4:結合剤合成
末端シリル修飾ポリマーは例2の合成方法によって調製され、省略した最終段階(真空中での溶媒の除去)の違いを伴う。代わりに、それぞれの場合で、NH溶液(20重量%)10gを反応混合物に添加し、それらは60度に温められたままであり、そして連続して60℃でさらに2時間撹拌する。ブチルアセテート250gをその後添加し、ブチルアセテート中の結合剤が30重量%になるまで溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。
【0104】
例5:結合剤合成
イオン交換シリカゾル166.66g(Levasil 300−30%、SiO50.0gに相当)を、イソプロパノール833.34gを用いて5重量%SiOとなるよう溶解し(全バッチ=1000g)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.91gを添加する。12時間撹拌後、下記を混合物に加える:
HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート):25g
MMA(メチルメタクリレート):125g
BuMA(ブチルアクリレート):150g
AIBN(アゾビスイソブチロニトリル):7g
【0105】
反応混合物を70度で12時間撹拌する。その後ブチルアセテート300gを添加し、イソプロパノール、水およびブチルアセテートを、ブチルアセテート中、50重量%結合剤個体分散体になるまで、減圧蒸留する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径>1nmを有し、オリゴマーおよび/またはポリマーと放射状に結合しているコアを含む結合剤。
【請求項2】
オリゴマーおよび/またはポリマーがコアの表面と共有結合していることを特徴とする、請求項1に記載の結合剤。
【請求項3】
結合剤におけるオリゴマーおよび/またはポリマーの割合が、結合剤に対して40〜99重量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の結合剤。
【請求項4】
コアが、無機物または有機物であるか、または無機および有機成分の混合物を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の結合剤。
【請求項5】
コアが、アルカリ土類金属化合物の硫酸塩もしくは炭酸塩を、あるいは任意に金属酸化物もしくは水酸化物で被覆されていてもよいケイ素、チタン、亜鉛、アルミニウム、セリウム、コバルト、クロム、ニッケル、鉄、イットリウムもしくはジルコニウムの酸化物もしくは水酸化物またはこれらの混合物を、あるいは金属酸化物または水酸化物で被覆された金属、例えばAg、Cu、Fe、Au、Pd、Ptまたは合金をベースとすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の結合剤。
【請求項6】
コアがSiO粒子から選択されるか、あるいはZnOもしくは酸化セリウム粒子またはTiO粒子から選択され、これらが任意に金属酸化物または水酸化物に被覆されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の結合剤。
【請求項7】
コアが、3次元架橋オルガノシルセスキオキサン構造および金属酸化物/水酸化物から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の結合剤。
【請求項8】
コアが有機ポリマー/オリゴマーから選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の結合剤。
【請求項9】
コアが、光子相関分光法または透過型電子顕微鏡によって決定される、少なくとも1次元において1〜20nm、好ましくは2次元の最大における最大値が500nmである直径を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の結合剤。
【請求項10】
コアの表面が少なくとも1種の表面修飾剤によって修飾されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の結合剤。
【請求項11】
少なくとも1種の表面修飾剤が、チオール、スルフィド、ジスルフィドおよびポリスルフィドからなる群から選択される少なくとも1種の官能基を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の結合剤。
【請求項12】
表面修飾剤が、有機官能性シラン、第四アンモニウム化合物、カルボン酸、ホスホネート、ホスホニウムおよびスルホニウム化合物ならびにそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10または11に記載の結合剤。
【請求項13】
オリゴマーおよび/またはポリマーが、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア、シリコーン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドならびにそれらの混合物および混成物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の結合剤。
【請求項14】
直径>1nmを有するコアの溶媒または混合溶媒中の分散および有機モノマー存在下での重合を含み、ここで、形成されたオリゴマーおよび/またはポリマーがコアと放射状に結合される、請求項1〜13のいずれかに記載の結合剤の調製方法。
【請求項15】
以下の段階、
a)少なくとも1種の表面修飾剤の溶媒に分散されたコアへの適用、ここで少なくとも1種の表面修飾剤は少なくとも1種の官能基を含む、および
b)有機モノマー存在下でのフリーラジカル重合、ここでa)段階において適用された少なくとも1種の官能基を含む表面修飾剤は、フリーラジカル連鎖移動剤として機能する、
c)必要に応じて、蒸留、沈殿、溶媒交換、抽出またはクロマトグラフィーによる、本発明に従い調製した結合剤のワークアップ
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
官能基が、チオール、スルフィド、ジスルフィドおよびポリスルフィドからなる群から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
a)コア材料b)に対して反応性のある基を有するオリゴマーおよび/またはポリマーの調製または供給、
b)a)からのオリゴマー/ポリマーが少なくとも部分的に溶解できる溶媒または混合溶媒中への直径>1nmを有するコアの分散、
c)a)からのオリゴマーおよび/またはポリマーとb)からのコアとの反応、ここで、オリゴマーおよび/またはポリマーがコアと放射状に結合する、
d)必要に応じて、蒸留、沈殿、溶媒交換、抽出またはクロマトグラフィーによる、本発明に従い調製した結合剤の必要に応じたワークアップ、
を含む、請求項1〜13のいずれかに記載の結合剤の調製方法。
【請求項18】
a)加水分解可能および縮合可能な有機シリコンおよび/または有機金属基を含むオリゴマーおよび/またはポリマーの調製または供給、
b)加水分解可能および縮合可能な有機シリコンおよび/または有機金属基を含むオリゴマーおよび/またはポリマーの加水分解および縮合、ここでオリゴマーおよび/またはポリマーが結合したコアが生成し、ここでオリゴマーおよび/またはポリマーは形成されたコアに、放射状に結合されている、
c)必要に応じて、蒸留、沈殿、溶媒交換、抽出またはクロマトグラフィーによる、本発明に従い調製した結合剤のワークアップ、
を含む、請求項1〜13のいずれかに記載の結合剤の調製方法。
【請求項19】
溶媒または混合溶媒が、水、有機溶媒およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項14〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
配合物、表面被覆、インク、発泡体、接着剤、カプセル化材料およびプラスチックまたはそれらの前駆体における、請求項1〜13のいずれかに記載の結合剤の使用。
【請求項21】
インク、発泡体、接着剤、カプセル化材料およびプラスチックまたはそれらの前駆体における短波長放射線に対する乳白剤としての、請求項1〜13に記載の結合剤の使用。
【請求項22】
結合剤が、直径<1μmを有する表面修飾粒子を共存させることができ、これは均一に分散されるかまたは
硬化被覆物質中に勾配形成している、ことを特徴とする、請求項21または22に記載の使用。
【請求項23】
請求項1〜13のいずれかに記載の結合剤を含む配合物、表面被覆、インク、発泡体、接着剤、カプセル化材料およびプラスチック。

【公表番号】特表2010−519355(P2010−519355A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550223(P2009−550223)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000532
【国際公開番号】WO2008/101581
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】