説明

結合基板、電磁結合モジュール及び無線ICデバイス

【課題】インダクタンス素子の線路長を短くでき、かつ、結合を強くできる結合基板、電磁結合モジュール及び無線ICデバイスを得る。
【解決手段】高透磁率磁性体材料からなる高透磁率磁性体部26と、低透磁率磁性体材料からなる低透磁率磁性体部27とで積層体を形成し、高透磁率磁性体部26及び低透磁率磁性体部27にそれぞれ形成された導体44,45を螺旋状に接続したインダクタンス素子L1を備えた結合基板。高透磁率磁性体部26における導体44の幅が、低透磁率磁性体部27における導体45の幅よりも広く、低透磁率磁性体部27の一の平面における導体45の巻き数が、高透磁率磁性体部26の一の平面における導体44の巻き数よりも多い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合基板、特に、RFID(Radio Frequency Identification)システムに用いられる無線ICデバイス用の結合基板、該結合基板を備えた電磁結合モジュール、及び、該電磁結合モジュールを備えた無線ICデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の管理システムとして、電磁波を発生するリーダライタと物品や容器などに付された所定の情報を記憶した無線IC(ICタグ、無線ICデバイスなどと称する)とを非接触方式で通信し、情報を伝達するRFIDシステムが開発されている。無線ICはアンテナ(放射板)と結合されることによりリーダライタとの通信が可能になる。
【0003】
この種の無線ICとして、特許文献1には、無線ICチップと放射板とを結合させる給電回路基板の少なくとも一部に、高透磁率磁性体材料からなる高透磁率磁性体部が形成されており、インダクタンス素子の少なくとも一部は該高透磁率磁性体部に設けられていることが記載されている。この構成によって、インダクタンス素子のQ値を向上させることができる。一方、この種の給電回路基板においては、インダクタンス素子の線路長を短くして基板のコンパクト化を図るとともに、放射板との結合をより強くすることが求められている。しかし、このような課題に対して特許文献1では言及するところがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/138857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、インダクタンス素子の線路長を短くでき、かつ、結合を強くできる結合基板、電磁結合モジュール及び無線ICデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するため、本発明の第1の形態である結合基板は、
高透磁率磁性体材料からなる高透磁率磁性体部と、低透磁率磁性体材料からなる第1の低透磁率磁性体部とで積層体を形成し、
高透磁率磁性体部及び第1の低透磁率磁性体部にそれぞれ形成された導体を螺旋状に接続したインダクタンス素子を備え、
高透磁率磁性体部における前記導体の幅が、第1の低透磁率磁性体部における前記導体の幅よりも広く、
第1の低透磁率磁性体部の一の平面における前記導体の巻き数が、高透磁率磁性体部の一の平面における前記導体の巻き数よりも多いこと、
を特徴とする。
【0007】
本発明の第2の形態である電磁結合モジュールは、前記第1の形態である結合基板と、無線ICとを備え、インダクタンス素子と無線ICとが結合していることを特徴とする。
【0008】
本発明の第3の形態である無線ICデバイスは、前記第2の形態である電磁結合モジュールと、放射板とを備え、インダクタンス素子と放射板とが結合していることを特徴とする。
【0009】
前記結合基板において、低透磁率磁性体部においてはインダクタンス素子を形成する導体は電流密度が上がりにくいので、導体幅を狭くすることができ、低透磁率磁性体部において導体の一の平面での巻き数を多くすることができる。その結果、低透磁率磁性体部における磁界の放射量が多くなり、放射板との結合が強くなる。磁界の放射量を多くするには、積層体の全ての層を低透磁率磁性体とすることで可能になるが、これでは、必要なインダクタンス値を得るために導体の線路長が長くなってしまう。インダクタンス素子を形成する層の一部を高透磁率磁性体とすることで導体の線路長を短くすることができる。
【0010】
換言すると、高透磁率磁性体材料からなる高透磁率磁性体部にあっては、そこに内蔵されたコイル導体にて発生する磁界は高透磁率磁性体部に閉じ込められて外部に放射されにくい。一方、低透磁率磁性体材料からなる低透磁率磁性体部にあっては、そこに内蔵されたコイル導体にて発生する磁界は外部に良好に放射される。従って、高透磁率磁性体部に低透磁率磁性体材料からなる低透磁率磁性体部を重ねることで、低透磁率磁性体部に内蔵されたコイル導体が、高透磁率磁性体部に内蔵されたコイル導体にて発生する磁界を外に放射されやすくする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、必要なインダクタンス値を得たうえでインダクタンス素子の線路長を短くすることができ、かつ、磁界の放射量を多くして結合を強くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施例である結合基板を示す断面図である。
【図2】第1実施例である結合基板の積層構造を示す平面図である。
【図3】第2実施例である結合基板を示す断面図である。
【図4】第2実施例である結合基板の積層構造を示す平面図である。
【図5】第3実施例である電磁結合モジュールを示す断面図である。
【図6】第4実施例である無線ICデバイスを示す断面図である。
【図7】第4実施例である無線ICデバイスの要部を示す斜視図である。
【図8】第4実施例である無線ICデバイスの結合用パターンを拡大して示す斜視図である。
【図9】第5実施例である無線ICデバイスの要部を示す斜視図である。
【図10】第5実施例である無線ICデバイスの結合用パターンを拡大して示す平面図である。
【図11】第4実施例を構成するアンテナの等価回路図である。
【図12】第5実施例を構成するアンテナの等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る結合基板、電磁結合モジュール及び無線ICデバイスの実施例について、添付図面を参照して説明する。なお、各図面において、同じ部材、部分には共通する符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
(第1実施例、図1及び図2参照)
第1実施例である結合基板25Aは、図1に示すように、高透磁率磁性体材料からなる高透磁率磁性体部26と、低透磁率磁性体材料からなる低透磁率磁性体部27とで積層体を形成し、高透磁率磁性体部26及び低透磁率磁性体部27にそれぞれ形成された導体44,45を螺旋状に接続したインダクタンス素子L1を備えている。また、積層体の上面には以下に説明する無線ICチップとの接続用電極42a,42bが形成されている。
【0015】
前記積層体において、高透磁率磁性体部26における導体44の幅は低透磁率磁性体部27における導体45の幅よりも広い。また、低透磁率磁性体部27の一の平面における導体45の巻き数は高透磁率磁性体部26の一の平面における導体44の巻き数よりも多い。
【0016】
なお、高透磁率磁性体材料や低透磁率磁性体材料は、相対的に透磁率差を有するものであればよい。あえて具体的に言えば、高透磁率磁性体部26は透磁率がおよそ20以上の材料、低透磁率磁性体部27は透磁率がおよそ2未満の材料をそれぞれ用いることができる。
【0017】
積層体は具体的には図2に示す積層構造を備えている。即ち、積層体は複数枚のシート41a〜41gを積層したもので、シート41a〜41dは高透磁率磁性体材料からなり、シート41e〜41gは低透磁率磁性体材料からなる。
【0018】
シート41aには電極42a〜42dとビアホール導体43a,43bが形成されている。シート41b,41c,41dには螺旋状の導体44とビアホール導体43c,43dが形成されている。シート41e,41fには螺旋状の導体45とビアホール導体43c,43dが形成されている。シート41gには螺旋状の導体45が形成されている。
【0019】
各シート41a〜41gを積層することにより、それぞれの導体44,45がビアホール導体43dを介して電気的に接続され、インダクタンス素子L1が形成される。インダクタンス素子L1の一端(シート41b上の導体44の一端44a)はビアホール導体43bを介してシート41a上の電極42bに接続される。インダクタンス素子L1の他端(シート41g上の導体45の一端45a)はビアホール導体43c,43aを介してシート41a上の電極42aに接続される。インダクタンス素子L1はそれ自身のインダクタンスと導体44,45の線間容量とで共振回路(給電回路)を形成し、所定の共振周波数で共振する。
【0020】
以上の構造を備えた結合基板25Aは、以下に説明するように、無線ICチップ及び放射板に結合することにより無線ICデバイスを構成し、RFIDシステムに用いられる。
【0021】
前記結合基板25Aにおいて、低透磁率磁性体部27においてインダクタンス素子L1を形成する導体45は電流密度が上がりにくいので、導体幅を狭くすることができ、低透磁率磁性体部27において導体45の一の平面での巻き数を多くすることができる。その結果、低透磁率磁性体部27における磁界の放射量が多くなり、放射板との結合が強くなる。磁界の放射量を多くするには、積層体の全ての層を低透磁率磁性体とすることで可能になるが、これでは、必要なインダクタンス値を得るために導体45の線路長が長くなってしまう。インダクタンス素子L1を形成する層の一部を高透磁率磁性体とすることで導体44の線路長を短くすることができる。
【0022】
換言すると、高透磁率磁性体材料からなる高透磁率磁性体部26にあっては、そこに内蔵されたコイル導体44にて発生する磁界は高透磁率磁性体部26に閉じ込められて外部に放射されにくい。一方、低透磁率磁性体材料からなる低透磁率磁性体部27にあっては、そこに内蔵されたコイル導体45にて発生する磁界は外部に良好に放射される。従って、高透磁率磁性体部26に低透磁率磁性体部27を重ねることで、低透磁率磁性体部27に内蔵されたコイル導体45が、高透磁率磁性体部26に内蔵されたコイル導体44にて発生する磁界を外に放射されやすくする。
【0023】
また、低透磁率磁性体部27と高透磁率磁性体部26とが接する界面において、低透磁率磁性体部27に形成された導体45の巻き数は、高透磁率磁性体部26に形成された導体44の巻き数よりも多い。これにて、高透磁率磁性体部26で発生した磁界を低透磁率磁性体部27から放射する磁界に効率的に結合させることができる。
【0024】
さらに、前記インダクタンス素子L1のコイル軸は積層体の積層方向と一致している。これにて、インダクタンス素子L1を通常の積層工法によって容易に製造することができる。
【0025】
(第2実施例、図3及び図4参照)
第2実施例である結合基板25Bは、図3に示すように、高透磁率磁性体材料からなる高透磁率磁性体部26と、低透磁率磁性体材料からなる低透磁率磁性体部27と、同じく低透磁率磁性体材料からなるいま一つの低透磁率磁性体部28とで、高透磁率磁性体部26を低透磁率磁性体部27,28で挟み込んだ状態の積層体を形成し、高透磁率磁性体部26及び低透磁率磁性体部27,28にそれぞれ形成された導体54,55,56を螺旋状に接続したインダクタンス素子L2を備えている。また、積層体の上面には以下に説明する無線ICチップとの接続用電極52a,52bが形成されている。
【0026】
前記積層体において、高透磁率磁性体部26における導体54の幅は低透磁率磁性体部27における導体55の幅よりも広い。また、低透磁率磁性体部27の一の平面における導体55の巻き数は高透磁率磁性体部26の一の平面における導体54の巻き数よりも多い。いま一つの低透磁率磁性体部28の導体56の巻き数は低透磁率磁性体部27の一の平面における導体55の巻き数よりも少ない。
【0027】
積層体は具体的には図4に示す積層構造を備えている。即ち、積層体は複数枚のシート51a〜51hを積層したもので、シート51a,51bは低透磁率磁性体材料からなり、シート51c〜51eは高透磁率磁性体材料からなり、シート51f〜51hは低透磁率磁性体材料からなる。
【0028】
シート51aには電極52a〜52dとビアホール導体53a,53bが形成されている。シート51bには導体56,57とビアホール導体53c,53dが形成されている。シート51c〜51eには螺旋状の導体54とビアホール導体53c,53dが形成されている。シート51f,51gには螺旋状の導体55とビアホール導体53c,53dが形成されている。シート51hには螺旋状の導体55が形成されている。
【0029】
各シート51a〜51hを積層することにより、それぞれの導体54〜56がビアホール導体53dを介して電気的に接続され、インダクタンス素子L2が形成される。インダクタンス素子L2の一端(シート51b上の導体56の一端56a)はビアホール導体53bを介してシート51a上の電極52bに接続される。インダクタンス素子L2の他端(シート51h上の導体55の一端55a)はビアホール導体53c、導体57、ビアホール導体53aを介してシート51a上の電極52aに接続される。インダクタンス素子L2はそれ自身のインダクタンスと導体54〜56の線間容量とで共振回路(給電回路)を形成し、所定の共振周波数で共振する。
【0030】
以上の構造を備えた結合基板25Bは、以下に説明するように、無線ICチップ及び放射板に結合することにより無線ICデバイスを構成し、RFIDシステムに用いられる。
【0031】
前記結合基板25Bの作用効果は前記第1実施例と基本的には同様である。特に、第2実施例においては、高透磁率磁性体部26の低透磁率磁性体部27が配置された面とは反対側の面に、低透磁率磁性体材料からなるいま一つの低透磁率磁性体部28が配置されているため、高透磁率磁性体部26と低透磁率磁性体部27との熱膨張率の差により反りの発生を、低透磁率磁性体部28によって抑制することができる。
【0032】
また、いま一つの低透磁率磁性体部28に形成された導体56の一の平面における巻き数が、低透磁率磁性体部27における導体55の巻き数よりも少ないため、いま一つの低透磁率磁性体部28からの磁界の放射を防ぐことができる。
【0033】
(第3実施例、図5参照)
第3実施例である電磁結合モジュール20は、図5に示すように、前記第2実施例として示した結合基板25Bと、無線ICチップ21とを備えたものであり、前記インダクタンス素子L2と無線ICチップ21とが結合している。
【0034】
無線ICチップ21は、従来から知られているように、クロック回路、ロジック回路、メモリ回路などを含み、必要な情報がメモリされており、入出力端子電極21a,21b、及び図示されていない実装用の端子電極が設けられている。入出力端子電極21a,21bが結合基板25Bの前記電極52a,52bと半田バンプ22などによって接続されている。
【0035】
この電磁結合モジュール20は以下の第4及び第5実施例として説明するように放射板と組み合わせて無線ICデバイスとして使用される。なお、結合基板としては前記第1実施例として示した結合基板25Aであってもよいことは勿論である。また、電磁結合モジュール20としては、無線ICとインダクタンス素子とが結合基板に一体的に内蔵されたものであってもよい。
【0036】
(第4実施例、図6〜図8及び図11参照)
第4実施例である無線ICデバイス1Aは、図6及び図7に示すように、基板10と第3実施例として示した電磁結合モジュール20とアンテナ(放射板)30とで構成されている。アンテナ30は、コイルパターン31と、該コイルパターン31の両端部に形成され、かつ、互いに対向して配置されているスパイラル状の結合用パターン32a,32bとからなる。
【0037】
基板10はPETフィルムなどの誘電体からなる。コイルパターン31は、基板10の表面に図7に示すようにコイル状に形成されており、一方の端部にはスパイラル状の結合用パターン32aが形成されている。基板10の裏面にはスパイラル状の結合用パターン32bが前記結合用パターン32aと対向して配置されており、この結合用パターン32bの端部32cはビアホール導体33を介してコイルパターン31の他方の端部31cと電気的に接続されている。そして、結合基板に内蔵されたインダクタンス素子は結合用パターン32a,32bと磁気的に結合している。なお、結合用コイルパターン32a,32bの詳細は図8に示されている。
【0038】
以上の構成からなる無線ICデバイス1Aにおいて、リーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯やHF周波数帯)をコイルパターン31で受信し、結合用パターン32a,32bと磁気的に結合しているインダクタンス素子L2からなる共振回路を共振させ、所定の周波数の受信信号のみを無線ICチップ21に供給する。無線ICチップ21は受信信号から所定のエネルギーを取り出し、このエネルギーを駆動源としてメモリされている情報を読み出し、インダクタンス素子L2からなる共振回路にて所定の周波数に整合させた後、結合用パターン32a,32bを介して送信信号としてコイルパターン31から放射し、リーダライタに送信する。
【0039】
コイルパターン31は開放型であり、コイルパターン31の両端に位置する結合用パターン32a,32bが近接し、結合用パターン32a,32bでLC共振器を形成している(図11参照)。即ち、対向して配置されたスパイラル状の結合用パターン32a,32b間に容量Cが形成され、この容量Cとスパイラル状の結合用パターン32a,32bで形成されるインダクタンスL11,L12によってLC共振する。このLC共振によってインピーダンスが無限大となり、結合用パターン32a,32bにエネルギーが集中する。この結果、アンテナ30とそれに搭載される無線ICチップ21とのエネルギーの伝達効率が向上する。
【0040】
そして、インダクタンス素子L2からなる共振回路の共振周波数は送受信信号の共振周波数に実質的に相当している。即ち、共振回路の共振周波数で無線ICデバイス1Aとしての共振周波数を決定している。従って、コイルパターン31の共振周波数とは関係なく共振回路の共振周波数による通信が可能であり、1種類のアンテナ30に対して種々の共振周波数の結合基板を組み合わせることができる。また、他からの影響で共振回路の共振周波数が変化することはないので、リーダライタとの通信は安定している。
【0041】
コイルパターン31の共振周波数は結合基板に含まれる共振回路の共振周波数よりも高く設定されていることが好ましい。例えば、共振回路の共振周波数が13.56MHzの場合、コイルパターン31の共振周波数は14MHzに設定する。これにて、共振回路とコイルパターン31とが常に磁界結合することになる。アンテナ30単体で見れば、その共振周波数が共振回路の共振周波数と近接すると通信距離が長くなる。しかし、他の無線ICデバイスと近接したり、人間の手などの誘電体が近接した場合の通信障害を考慮すると、コイルパターン31の共振周波数は高周波側に設定することが好ましい。
【0042】
また、結合用パターン32a,32bは結合基板25Bから放射される磁場の直下に配置され、結合基板25B内のインダクタンス素子L2は結合用パターン32a,32bと同方向に電流が流れるようにスパイラル状に形成されているため(図4にインダクタンス素子L2に流れる電流の方向Aを示し、図8に結合用パターン32a,32bに流れる電流の方向Bを示す)、より効率的にエネルギーを伝達することができる。
【0043】
無線ICチップ21と結合基板25Bとは電気的に接続されているが、結合基板25Bとアンテナ30とは絶縁性の接着剤で接合するだけでよい。接合の向きも任意であり、結合用パターン32a,32bの面積は結合基板25Bの面積よりも大きいので、電磁結合モジュール20を結合用パターン32a上に実装する場合の位置合わせは極めて容易である。
【0044】
特に、前記結合基板25Bは、結合用パターン32aへの搭載面側の層(低透磁率磁性体部27)の透磁率が低いため、結合基板25Bの搭載面側に磁界が出やすく、結合用パターン32a,32bとのみ結合が強くなり、他からの干渉にも強くなる。
【0045】
(第5実施例、図9、図10及び図12参照)
第5実施例である無線ICデバイス1Bは、図示しない基板(第4実施例で示した基板10と同じ)と、第3実施例として示した電磁結合モジュール20と、図9に示すアンテナ(放射板)60とで構成されている。アンテナ60は、基板の表裏面に互いに対向して配置された二つのコイルパターン61a,61bと、コイルパターン61a,61bの一端部にそれぞれ形成され、かつ、互いに対向して配置されているスパイラル状の結合用パターン62a,62bとからなる。電磁結合モジュール20は結合用パターン62a上に搭載(接着)される。本無線ICデバイス1Bとリーダライタとの通信形態は第4実施例と同様である。なお、結合用コイルパターン62a,62bの詳細は図10に示されている。
【0046】
本第5実施例である無線ICデバイス1Bにおいても、コイルパターン61a,61bは開放型であり、対向して配置されたコイルパターン61a,61b間及びスパイラル状の結合用パターン62a,62b間に容量Cが形成され、この容量Cと二つのコイルパターン61a,61b及び結合用パターン62a,62bで全体的に形成されるインダクタンスL11,L12によってLC共振する(図12参照)。このLC共振によってインピーダンスが無限大となり、コイルパターン61a,61b及び結合用パターン62a,62bにエネルギーが集中する。この結果、アンテナ60とそれに搭載される無線ICチップ21とのエネルギーの伝達効率が向上する。また、コイルパターン61a,61bが2層配置されているので、磁界をより多く発生させることができる。さらに、それぞれ二つずつ配置されているコイルパターン61a,61b同士、結合用パターン62a,62b同士が結合しているので、複数の無線ICデバイスが近接したり、人間の手などの誘電体が近接してもパターン間に浮遊容量が生じることが抑制され、共振周波数の変動が防止される。その他の作用効果は前記第4実施例と同様である。
【0047】
ちなみに、本第5実施例では、アンテナ60の全体が所定周波数で共振する。よって、アンテナ60の一部である結合用パターン62a,62b上に電磁結合モジュール20を搭載すると、アンテナ60と電磁結合モジュール20とは所定周波数で磁界によってのみ結合する。アンテナ60とリーダライタとは電磁界結合である。
【0048】
(他の実施例)
なお、本発明に係る結合基板、電磁結合モジュール及び無線ICデバイスは前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明は、RFIDシステムに用いる無線ICデバイスに有用であり、特に、結合基板のインダクタンス素子の線路長を短くでき、かつ、結合を強くできる点で優れている。
【符号の説明】
【0050】
1A,1B…無線ICデバイス
20…電磁結合モジュール
21…無線ICチップ
25A,25B…結合基板
26…高透磁率磁性体部
27,28…低透磁率磁性体部
30…アンテナ
31…コイルパターン
32a,32b…結合用パターン
44,45,54,55,56,57…導体
60…アンテナ
61a,61b…コイルパターン
62a,62b…結合用パターン
L1,L2…インダクタンス素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高透磁率磁性体材料からなる高透磁率磁性体部と、低透磁率磁性体材料からなる第1の低透磁率磁性体部とで積層体を形成し、
高透磁率磁性体部及び第1の低透磁率磁性体部にそれぞれ形成された導体を螺旋状に接続したインダクタンス素子を備え、
高透磁率磁性体部における前記導体の幅が、第1の低透磁率磁性体部における前記導体の幅よりも広く、
第1の低透磁率磁性体部の一の平面における前記導体の巻き数が、高透磁率磁性体部の一の平面における前記導体の巻き数よりも多いこと、
を特徴とする結合基板。
【請求項2】
高透磁率磁性体部の、第1の低透磁率磁性体部が配置された面とは反対側の面に、低透磁率磁性体材料からなる第2の低透磁率磁性体部が配置されていること、を特徴とする請求項1に記載の結合基板。
【請求項3】
第2の低透磁率磁性体部に形成された前記インダクタンス素子を構成する導体の一の平面における巻き数が、第1の低透磁率磁性体部における前記導体の巻き数よりも少ないこと、を特徴とする請求項2に記載の結合基板。
【請求項4】
第1の低透磁率磁性体部と高透磁率磁性体部とが接する界面において、第1の低透磁率磁性体部に形成された導体の巻き数が、高透磁率磁性体部に形成された導体の巻き数よりも多いこと、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の結合基板。
【請求項5】
前記インダクタンス素子のコイル軸は積層体の積層方向と一致していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の結合基板。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の結合基板と、無線ICとを備え、
前記インダクタンス素子と前記無線ICとが結合していること、
を特徴とする電磁結合モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載の電磁結合モジュールと、放射板とを備え、
前記インダクタンス素子と前記放射板とが結合していること、
を特徴とする無線ICデバイス。
【請求項8】
前記第1の低透磁率磁性体部と前記放射板とが対向していることを特徴とする請求項7に記載の無線ICデバイス。
【請求項9】
前記放射板は、コイルパターンと、該コイルパターンの両端部に形成され、かつ、互いに対向して配置されているスパイラル状の結合用パターンとを備えていること、を特徴とする請求項7又は請求項8に記載の無線ICデバイス。
【請求項10】
前記放射板は、互いに対向して配置されている二つのコイルパターンと、該二つのコイルパターンの両端部に形成され、かつ、互いに対向して配置されているスパイラル状の結合用パターンとを備えていること、を特徴とする請求項7又は請求項8に記載の無線ICデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−258913(P2010−258913A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108471(P2009−108471)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】