結晶化を促進するデバイス及び方法
本発明は、タンパク質のような標的分子の結晶化を促進するマイクロ流体デバイスに関する。このデバイスは、上面及び反対側の底面を有し、かつ少なくとも一つの液体流路を有する固体構造を備える。液体流路は、標的分子溶液流入口(24)と、そして少なくとも2つの沈殿剤流入口(26)と、を含む。標的分子溶液流入口は、これらの沈殿剤流入口の各沈殿剤流入口と液体流路を介して液体連通する。液体流路は、標的分子溶液流入口に隣接する分岐流路セクション(27)と、該当する沈殿剤流入口に隣接する結晶化流路セクション(29)と、そして分岐流路セクション(27)と結晶化流路セクション群(29)の各結晶化流路セクションとの間に配置される流動遮断流路セクション(28)と、を含む。液体流路は、分岐流路セクション(27)において1〜X個に分岐し、Xは結晶化流路セクションの数であり、そして流動遮断流路セクション(28)は、該当する前記分岐流路セクションと結晶化流路セクションとの間の液体連通を遮断する機能を有する流動遮断機構(28a)を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的分子の結晶成長、特にタンパク質、核酸、及び/又は炭水化物のような高分子の成長を促進するマイクロ流体デバイスに関する。本発明はまた、前記デバイスを使用して結晶化を促進する方法に関する。本発明はまた、結晶化した高分子を簡単に取り出すマイクロ流体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
高分子のような分子の結晶化は生化学分野における重要な技術である。核酸、タンパク質、及び炭水化物のような生化学分子は予測不能な結晶構造を有し、そして多くの場合、結晶化した分子の3次元構造は、これらの分子の生物学的機能に関して重要な役割を果たす。タンパク質が機能する仕組みについての詳細情報を取得するためには、タンパク質の3次元構造を求めることが重要となるが、これは、3次元構造及び機能が非常に密接に結び付いているからである。生物学的プロセスを操作する必要がある場合、治療研究で観察される3次元構造が特に有用である。今日、市場における薬剤の90%超が、タンパク質と相互作用する小さいリガンドである。この相互作用を理解し、そして相互作用を新規の改良薬剤に利用するために、リガンド−タンパク質の複合体の3次元構造を求める必要がある。
【0003】
分子、例えばタンパク質のような高分子の結晶化は、標的化合物の溶液を調製し、そして溶解標的化合物の化学形態を変化させて、標的物質が溶解し難くなり、そして当該物質の結晶構造の固体状態に戻るようにすることにより行なわれる。化学形態のこの変化は通常、標的化合物が溶解し難くなるようにする沈殿剤を導入することにより生じさせる。
【0004】
特許文献1(米国特許第6,409,832号)には、タンパク質結晶成長を液体−液体拡散法を利用して促進するマイクロ流体デバイスが記載されている。このデバイスは、一つ以上の混合結晶化チャンバを備え、各チャンバは、タンパク質溶液用の流入口と、そして結晶化剤(沈殿剤)用の反対側の流入口と、を含む。タンパク質溶液は、タンパク質流入口を介して特定容積の充填チャンバに導入され、そして当該チャンバから、当該溶液が混合チャンバに流入する。結晶化剤を、結晶化剤流入口を介して混合チャンバに充填し、そして液体を、液体−液体拡散法を利用して混合する。
【0005】
特許文献2(米国特許出願公開第2003/61687号)には、標的材料の結晶化の高効率スクリーニングに使用される種々のマイクロ流体システムが開示されている。結晶化は、標的材料溶液をマイクロ加工流体デバイスの複数のチャンバに導入することにより行なわれる。次に、マイクロ加工流体デバイスを操作してチャンバ内の溶液状態を変化させることにより、非常に多くの結晶化形態を同時に提供する。マイクロ流体システムは、微細加工マイクロチャンバ(microfabricated chambers)を収容するエラストマーブロックを備える。
【0006】
標的材料を結晶化させるシステムは、多量の標的材料溶液を収容するように構成される微細加工マイクロチャンバを収容するエラストマーブロックと、そしてチャンバと流体連通する微細加工マイクロ流路と、を備え、この流体流路で多量の結晶化剤をチャンバに導入する。この構造を操作してチャンバ内の溶液状態を、エラストマー材料を変形させることにより変化させて、流体流を阻止する、または流体を流すために流路を開ける、或いは流体の量を計測する。
【0007】
結晶化システムは更に分離構造を備え、分離構造は、チャンバを流体流路から、流体流
路に多量の結晶化剤を流し込むときにエラストマー壁を変形させることにより選択的に分離し、次にチャンバを流体流路に接触するように配置してチャンバ内の溶液状態を変化させるように構成される。別の構成として、結晶化システムは更に、チャンバの上に設けられ、かつチャンバから膜によって分離される制御流路を備え、膜はチャンバに向かって変形することができるので、校正された量のサンプル溶液をチャンバから排出して、膜を緩めることによって、校正された量の結晶化剤がチャンバに引き込まれるようにする。更に別の構成として、結晶化システムは、標的材料と流体連通する複数の平行な第1流体流路と、そして平行な第1流体流路と直交し、かつ交差することにより複数の接合部を形成する複数の平行な第2流体流路と、を備え、第2流体流路が結晶化剤と流体連通することによって、アレイ状の溶液形態を接合部に形成することができる。
【0008】
特許文献3(国際公開番号 WO 2004/067174)には、マイクロ化学(原子レベルで界面化学を利用する)を利用する装置が開示されている。この装置は、供給導管を有する蒸気浸透性マイクロ流体チップ流路を備える。チップ構造は、第1及び第2対向端部と、そしてチップ構造内のバルブ機構と、を有し、これらの端部によって、第1及び第2流体材料を、第1及び第2流体材料を互いに向かって供給導管の反対側端部から流し込むことにより相互作用させることができ、バルブ機構は、供給導管を、供給導管の第1端部と第2端部との間に位置する中間位置で開き、そして閉じるように動作することができるので、チップ構造は充填状態と相互作用状態との間を連続的に移動することができ、充填状態では、中間位置を閉じることにより、流体材料を中間位置の両側の供給導管に自動的に充填することができ、相互作用状態では、中間位置を開くことにより流体材料を相互作用させることができる。装置は更に、蒸気形態をチップ構造の周りに形成して、相互作用状態のチップ構造の供給導管から蒸発する流体材料を補充する気化器を備える。
【0009】
特許文献4(米国特許出願公開第2005/0205005号)には、タンパク質結晶化の高効率スクリーニングに使用されるマイクロ流体構造が開示されている。マイクロ流体構造は、試薬の正確な計測を可能にして、非常に多くの潜在的な結晶化を迅速に行なう混合チップを備える。マイクロ流体構造は、流体流路を幾つかの層に持つことによりバルブ構造を提供するマイクロ加工エラストマー材料により作製される。
【特許文献1】米国特許第6,409,832号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/61687号明細書
【特許文献3】国際出願公開第WO2004/067174号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0205005号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、標的分子の結晶化を促進するデバイスを提供することにあり、このデバイスは、作製するのが簡単であり、かつ作製するためのコストが低く、更に動作が簡単である。
【0011】
本発明の目的はまた、デバイスを動作させる簡単な方法を提供することにある。
これらの目的は、請求項に規定されるように、本発明によって達成されている。更に、以下に説明するように、本発明、及び本発明の実施形態は、先行技術による結晶化デバイス及び方法と比べると、更に大きな利点をもたらす特性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0012】
標的分子の結晶化を促進する本発明のデバイスはこのようにして、先行技術によるデバイスと比べて非常に経済的であることを示している。この主たる理由は、本発明のデバイスが安価に作製され、そして同時に非常に簡単であり、かつ高速に動作し、更に使用上の信頼性が高いからである。
【0013】
「標的分子の結晶化を促進する」という表現は、第1結晶(結晶性細菌)を形成するだけでなく、結晶の成長を更に進行させることを意味する。或るテストでは、微小結晶を解析することが望ましく、他のテストでは、結晶成長を、大きな結晶が形成されるまで進行させることができることが望ましい。
【0014】
本発明のマイクロ流体デバイスは、上面及び反対側の底面を有し、かつ少なくとも一つの液体流路を有する固体構造を備える。上面及び底面は、例えば簡単にハンドリングするために、例えば手作業で、またはロボットによりハンドリングするためにほぼ平坦とし、そして任意であるが、平行とすることができる。液体流路は、標的分子溶液流入口と、そして少なくとも2つの沈殿剤流入口と、を含み、標的分子溶液流入口は、これらの沈殿剤流入口の各沈殿剤流入口と液体流路を介して液体連通する。標的分子流入口を開くことにより、または少なくとも外部から操作することにより、標的分子溶液を液体流路に、例えば膜を介して針を使用して、または例えば、以下の好適な実施形態に記載される上面の固体構造を貫通する開口部を介して充填する。
【0015】
液体流路は、前記標的分子溶液流入口に隣接する分岐流路セクションと、該当する前記沈殿剤流入口に隣接する結晶化流路セクションと、そして前記分岐流路セクションと前記結晶化流路セクション群の各結晶化流路セクションとの間に配置される流動遮断流路セクションと、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは更に、以下に詳細に説明するように、結晶化流路セクションと沈殿剤流入口との間に配置される流動遮断流路セクションを備える。
分岐流路セクションでは、液体流路は1〜X個に分岐し、Xは結晶化流路セクションの数である。Xは基本的に、いずれの整数とすることもできる。一の実施形態では、Xは、2〜400、4〜100、8〜48、8〜24のように、2〜1000である。
【0017】
流動遮断流路セクションは、該当する前記分岐流路セクションと結晶化流路セクションとの間の液体連通を遮断する機能を有する流動遮断機構を含む。
従ってこのデバイスによって、単に標的分子溶液を一つの標的分子溶液流入口に流し込みながら複数の結晶化テストを行なうことが可能になる。標的分子溶液は複数の結晶化流路セクションに流入することになり、これらの結晶化流路セクションでは、標的分子溶液を沈殿剤流入口からの沈殿剤と接触させることができる。同時に、種々の結晶化流路セクションの間のどのような流体連通も、分岐流路セクションと結晶化流路セクションとの間に配置される分岐流路セクションで遮断することができる。従って、ハンドリングが簡単であり、かつ複数の結晶化テストを同時に行なうことができる非常に簡単なデバイスが実現している。
【0018】
基本的に、流動遮断機構は、種々の結晶化流路セクションの間の流体連通を効果的に遮断することができる構造であればどのような構造によっても構成することができる。実際、効果的な流動遮断機構は、該当する流動遮断流路セクションにおける変位差の形態、またはa)分岐流路セクション、及びb)該当する前記流動遮断流路セクションに隣接する結晶化流路セクションの内の少なくとも一つから選択される前記流動遮断流路セクションを構成する固体構造における変位差の形態とすることができることが分かっている。
【0019】
好ましくは、流動遮断機構は、a)毛細管現象流動遮断部分、b)流路変位部分、及びc)弱化ライン流動遮断部分の内の少なくとも一つの部分の形態であり、a)毛細管現象流動遮断部分では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションが、隣接する前記結晶化流路セクションによって液体に作用する毛細管力よりも小さい毛細管力が前記流路の液体に
作用するように構成され、b)流路変位部分では、流動遮断流路の内の少なくとも一部分が、分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションに対して垂直方向に変位し、そしてc)弱化ライン流動遮断部分では、前記固体構造に、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの液体流路を横切る弱化ラインが設けられる。
【0020】
流路セクションの垂直方向変位は、デバイスの上面を基準にして観察する場合に、相対的に高い位置または相対的に低い位置への変位を意味する。
実際、標的分子溶液の特性は、最適なデバイスを設計する際に、特に上述のa)またはb)に従って動作する流動遮断流路セクションを備える実施形態に関して重要となる。これは、標的分子溶液の特性、特に表面張力が、溶液が毛細管吸引力の作用を受けるかどうかを決定するからである。マイクロ流体デバイスを設計する際、水を標的分子溶液の代わりに使用することができるが、或る用途では、マイクロ流体デバイスは、特定の標的分子溶液を使用する場合に関して更に最適化することもできる。以下に説明することであるが、標的分子溶液は、水溶液とする、例えば界面活性剤を含む水溶液とすることが好ましく、界面活性剤を含めることによって、当該水溶液の表面張力を水の表面張力とは異なるようにする。しかしながら、この技術分野の当業者であれば、設計パラメータを、当業者の通常の技量を行使することにより制御することができると思われる。
【0021】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションは、隣接する前記結晶化流路セクションによって液体に作用する毛細管力よりも小さい毛細管力が前記流路の液体に作用するように構成され、前記流動遮断流路セクションには、毛細管現象流動停止部分が設けられ、この流動停止部分は、当該セクションの幾何学的形状及び/又は当該部分の表面張力によって構成される。
【0022】
液体がマイクロ流体流路を、好ましくは毛細管力の作用を受けながら所定速度で流れているとき、相対的に小さい毛細管力が作用する、または毛細管力が作用しないセクションにおける流れは、液体が完全に減速されてしまうまで継続する。デバイスでは、この現象をこの実施形態において利用する。流路の種々のセクションは、標的分子溶液が分岐流路セクションを流れているときに、標的分子溶液が流動遮断流路セクションに、この流動遮断流路セクションが、隣接する結晶化流路セクションによって液体に作用する毛細管力よりも小さい毛細管力が液体に作用するように構成される場合でも流入し続けるように構成される。流れは、標的分子溶液が結晶化流路セクションに流入するまで継続し、この場合、標的分子溶液は毛細管力を受けるので、結晶化流路セクションに充填される。流れが、結晶化流路セクションが溶液で充填されることにより停止してしまうと、標的分子溶液は流動遮断流路セクションに逆流することはない、というのは、流動遮断流路セクションは、隣接する結晶化流路セクションによって液体に作用する、好ましくは分岐流路セクションによっても液体に作用する毛細管力よりも小さい毛細管力が標的分子溶液に作用するように構成されるからである。最終的に、流動遮断流路セクションから溶液が排出され、そして該当する結晶化流路セクション群の間の液体連通が遮断される。
【0023】
流動遮断流路セクションは、隣接する結晶化流路セクション/分岐流路セクションによって液体に作用する毛細管力よりも小さい毛細管力が液体に作用するように、いずれの機構によっても構成することができる。マイクロ流体デバイスの分野では、所望の毛細管特性を調整する複数の方法が知られており、そして当業者であれば、いずれの適切な機構も利用することができる。
【0024】
液体流路が壁表面を含み、壁表面が、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延びる構成の一の実施形態では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの壁表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも一部分において、隣接する結晶化流路セクションにおける隣接する壁表面の表面張力よりも小さい表面張力を有することにより、流動遮
断機構を構成する。この実施形態では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくともほぼ全てのように、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも主要部分において、隣接する結晶化流路セクションにおける隣接する壁表面の表面張力よりも小さい表面張力を有することにより、流動遮断機構を構成する。
【0025】
一の実施形態では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの壁表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも一部分において、隣接する結晶化流路セクション、及び隣接する分岐流路セクションの内の少なくとも一つのセクションにおける隣接する壁表面の表面張力よりも、少なくとも5ダイン(dynes)/cm、少なくとも10ダイン/cm、少なくとも20ダイン/cmのような大きさだけ大幅に小さい(接触角度測定を使用して測定される)表面張力を有し、好ましくは、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの壁表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも一部分において、60ダイン/cm未満、10〜55ダイン/cmの範囲のように、73ダイン/cm未満の表面張力を有する。
【0026】
表面張力は、例えば接触角度を使用して測定することができる。表面が73ダイン/cm未満の表面張力を有する場合、水/サンプルとの接触角度は、20℃の空気中で測定すると少なくとも90度である。全ての測定は、特に断らない限り、空気中で、かつ20℃で行なわれる。
【0027】
表面エネルギー及び表面張力は、表面の同じ特性を示唆する2つの項目であり、そして一般的に、これらの項目は同じ意味に使用される。表面の表面エネルギーは、SVT20のような張力計、DataPhysics Instruments GmbHが提供するスピン滴下法ビデオテープ張力計(Spinning drop video tensiometer)のような張力計を使用して測定することができる。本出願では、「表面張力」という用語は、巨視的表面エネルギーを指す、すなわち表面張力は、例えば当業者には公知のことであるが、水滴との接触角度によって測定することができる、表面と水との親和性に直接比例する。測定値を比較するに当たって、例えば2つの表面部分の内のいずれの表面部分が最大の表面エネルギーを有するかについて測定する場合、正確な表面エネルギーを求める必要はなく、単に、2つの表面の内のいずれの表面の方が、水との接触角度が小さいかについて比較するだけで十分である。
【0028】
一の実施形態では、流動遮断セクションを含む流体流路は非弾性材料から成る。従って、流路の形状及びサイズは高い信頼性で維持される。更に、エラストマーバルブ構造を回避することが好ましい、というのは、このようなエラストマーバルブ構造は普通、ハンドリングが難しく、かつ信頼性が高くないからである。更に、結晶化流路に隣接する液体流路を圧縮することによりエラストマーバルブを閉じる動作によって、沈殿剤が標的分子溶液に拡散する動きが阻害されるので、高分子の結晶化が阻害されることが判明している。従って、流動遮断流路セクションがほとんど圧縮することがない、すなわち流動遮断流路セクションを弾性圧縮することができない、好ましくは流動遮断流路セクションを弾性圧縮して流路を閉じるということができないことが望ましい。
【0029】
特定の液体の毛細管現象流動を流体流路において起こすために、流体流路壁の表面の少なくとも或る部分は、液体を順方向に送ることができる表面エネルギーを持つ必要がある。しかしながら、本発明の技術範囲を制限するように解釈されてはならない公知の理論によれば、毛細管現象流動は、流体流路壁の表面の少なくとも或る部分が、注目する液体との90°未満の接触角度を持つ場合にのみ起こり得る。基本的に、角度が小さくなると、流動が速くなる。この点に関して、周囲空気も、ヤングの方程式に従った液体と流体流路壁との間の接触角度に影響し、ヤングの方程式は、接触角度、液滴の液体−蒸気表面張力
、及び液体と接触する固体の表面張力を結び付ける。
【0030】
接触角度測定は、複数の固体の同じ程度の大きさの表面張力を測定する客観的、かつ簡単な方法として使用される。ヤングの方程式は、固体の表面張力が接触角度に直接比例することを示している。この方程式は以下の通りである:
g(sv)=g(lv)(cosq)+g(sl),
上の式では、g(sv)は固体−蒸気界面の張力であり、g(lv)は液体−蒸気界面の界面張力であり、g(sl)は固体と液体との間の界面張力であり、そして(q)は接触角度である。
【0031】
流路は基本的に、楕円形、半楕円形、四辺多角形、正方形、矩形、及び台形のように、いずれの断面形状を有することもできる。断面形状は変えることができる、または流路の長さに沿って一定不変とすることができる。一つの流路セクションは、例えば第1断面形状を持ち、そして同じ液体流路の別の断面は別の断面形状を持つことができる。
【0032】
前記液体流路が少なくとも、当該流路の流動遮断流路セクションにおいて、四辺多角形断面形状を有することにより、下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成するマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、好ましくは、少なくとも側部表面と、そして下部表面及び上部表面の内の一方の表面とは、60ダイン/cm未満、10〜55ダイン/cmの範囲のように、73ダイン/cm未満の表面張力を有する(水/サンプルとの接触角度が少なくとも90度)。
【0033】
前記液体流路が壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延びるマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションの前記壁表面は、当該セクションの外周の少なくとも一部分において、少なくとも73ダイン/cm、少なくとも75ダイン/cm、少なくとも80ダイン/cmのように、少なくとも60ダイン/cmの表面張力を有する。一の実施形態では、分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションの壁表面は、当該セクションの外周の少なくとも一部分において、水との、好ましくは標的分子溶液との90度未満の接触角度を有する。
【0034】
液体流路が壁表面を含み、壁表面が、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延びるマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションの液体流路は、四辺多角形断面形状を有することにより下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成し、好ましくは、少なくとも下部表面及び側部表面は、少なくとも73ダイン/cm、少なくとも75ダイン/cm、少なくとも80ダイン/cmのように、少なくとも60ダイン/cmの表面張力を有する、または例えば、水/標的分子溶液との90度未満の接触角度を有する。
【0035】
流動遮断流路セクションに、毛細管現象流動停止部分が設けられ、この流動停止部分が当該セクションの幾何学的形状によって少なくとも部分的に構成されるマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、流動遮断流路セクションに沿った流路の最小断面寸法は、隣接する分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションに沿った流路の最小断面寸法よりも大きい。
【0036】
流動遮断流路セクションに、毛細管現象流動停止部分が設けられ、この流動停止部分が当該セクションの幾何学的形状によって少なくとも部分的に構成されるマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、流動遮断流路セクションは、隣接する分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションの断面積よりも大きい断面積を有する。
【0037】
幾何学的に構成される流動停止部分は、結晶化流路セクションに液体が、上述のように液体が流速を持つことによって充填されるときに流れが停止することがないように構成する必要がある。しかしながら、結晶化流路セクションに液体が充填されると、液体が流動遮断流路セクションに逆流する現象は、流動停止部分が幾何学的に構成されているので防止される。当業者であれば、流動停止部分を、例えば流体流路セクション群の間のエッジの角度に適切な値を選択することにより設けることができる。
【0038】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、液体流路は、隣接する分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の一方のセクションまたは両方のセクションの直ぐ傍に隣接する流動遮断流路セクションにおける少なくとも一つの断面寸法の急激な変化を含む。
【0039】
当業者には公知のことであるが、このような鋭いエッジは、このエッジを通過する液体の流れを遅らせることができる、または停止させることもできる毛細管現象阻止部分(capillary barrier)となることができる。
【0040】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションは、隣接する結晶化流路セクションの断面積よりも大きい断面積を有する。液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延びる。この実施形態では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの相対的に大きな断面積の領域は、壁表面を、結晶化流路セクションの直ぐ傍に隣接する流動遮断流路セクションの流路の外周の主要部分に少なくとも沿って階段状に変位させることにより形成される。
【0041】
液体流路が、四辺多角形断面形状を有することにより下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成するマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの相対的に大きな前記断面積のこの領域は、流動遮断流路セクションの少なくとも下部表面及び側部表面を、隣接する結晶化流路セクションに対して階段状に変位させることにより形成される。
【0042】
隣接する流動遮断流路セクション及び結晶化流路セクションの流路の外周の主要部分に少なくとも沿うことが好ましいこの階段状の変位は、階段状に変化する変位部分として形成されることが好ましい。
【0043】
一の実施形態では、結晶化流路セクションの直ぐ傍に隣接する流動遮断流路セクションの流路の外周の主要部分に少なくとも沿うことが好ましい壁表面の階段状の前記変位によって、100度以下、90度以下、80度以下のように、120度以下の角度を有するエッジが形成される。
【0044】
エッジの角度は、固体構造を通って、結晶化流路のエッジ表面から、階段状の変位部分を形成する段のエッジ表面に達する最小角度として測定される。
流動遮断流路セクションの流路の外周の主要部分に少なくとも沿うことが好ましい壁表面の階段状のこのような変位により形成される少なくとも一つの流動遮断流路セクションの相対的に大きな断面積は、隣接する結晶化流路セクションの断面積よりも大きい、いずれのサイズを持つこともできる。少なくとも一つの流動遮断流路セクションの断面積は、隣接する結晶化流路セクションの断面積よりも、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%のように、少なくとも10%だけ大きいサイズを有することが好ましい。
【0045】
少なくとも一つの流動遮断流路セクションの断面積が、隣接する結晶化流路セクション
の断面積よりも500%以上だけ大きいように、ずっと大きい実施形態では、テストを行なうために必要な標的分子溶液の量は、結晶化流路セクションを効果的に充填してしまうために相対的に大きい値となる。
【0046】
少なくとも一つの流動遮断流路セクションの断面積がほんの少しだけ大きい実施形態では、標的分子溶液が結晶化流路セクションから逆流する危険が大きくなる可能性がある。当業者であれば、流路セクション群のサイズ比を、特定のテストタイプに関して好適な値に選択することができる。実際、最適な流路サイズ比は特に、標的分子の種類及び可用性、及び標的分子溶液の表面張力を含む特性によって変わる。
【0047】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、液体流路は、流路を変位させることにより形成される少なくとも一つの流動遮断流路セクションを含む。好ましくは、流動遮断流路セクションは、隣接する結晶化流路セクションよりも高い位置に変位させ、そして更に好ましくは、少なくとも一つの流動遮断流路セクションはまた、分岐流路セクションよりも高い位置に変位させる。相対的に高い位置は、デバイスの上面を基準として観察される。この実施形態では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションを結晶化流路セクションに対して、或る高さだけ変位させることにより、デバイスを水平面に保持しているときに、液体(水または標的分子サンプルのような)が結晶化セクションから分岐セクションに逆流する現象を防止することが望ましい。
【0048】
この実施形態では、流動遮断流路セクションはまた、当該流路セクションを変位させる他に、隣接する結晶化流路セクションよりも大きい断面積を有する、そして/または幾何学的に形成される、そして/または相対的に小さい毛細管力が水及び/又は標的分子溶液に作用する表面特性を持つように形成されることが望ましい。
【0049】
液体流路が、流路を変位させることにより形成される、そして/または流動遮断流路を、結晶化流路よりも小さい毛細管力を持つように構成することにより形成される少なくとも一つの流動遮断流路セクションを含むマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、マイクロ流体デバイスには排出開口部が配設され、排出開口部は、標的分子溶液が流し込まれている間に、例えば栓または排出栓によって閉じ、そして結晶化流路に溶液が充填された後に開くことにより、余剰量の標的分子溶液を排出すると同時に、流動遮断流路における流動遮断を可能にする、または流動遮断に関与する。
【0050】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、固体構造に、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの液体流路を横切る弱化ラインが設けられる。弱化ラインは好ましくは、デバイスのほぼ全体を横切り、例えば上面及び/又は底面のほぼ全てを横切る。弱化ラインは、流動遮断流路セクション群の全ての流動遮断流路セクションのように、2つ以上の流動遮断流路セクションを同時に横切る。
【0051】
弱化ラインは、固体構造において当該ラインを取り囲む構成要素よりも強度が低いラインであるので、曲げ力がデバイスに加わると、デバイスは前記弱化ラインに沿って破断する。デバイスが弱化ラインに沿って破断する場合、デバイスは、前記弱化ラインが横切る流動遮断流路セクションにおいても破断するので、液体流路に急峻な開口部がマイクロ流体デバイスの側部に沿って形成される。液体流路のサイズが小さいので、このような液体流路の内部の液体が流れ出すことがなく、流路内に毛細管力によって残留する。液体の蒸発を回避するために、流路の開口部は、例えば以下に説明するようなシーリング材で密閉することができる。
【0052】
スリットは基本的に、いずれの形態とすることもできる。スリットは、例えば長さ方向に途切れない連続スリットとすることができる、または点在させることができる。一の実
施形態では、弱化ラインは、デバイス全体を、上面及び底面の内の少なくとも一つの面で横切るスリットの形態であり、スリットは、V字形またはU字形の内の一方の形状に形成されることが好ましく、V字形/U字形は一の実施形態では、垂直軸に対して対称となるようにすることができ、そして別の実施形態では、垂直軸に対して対称となるようにしなくてもよい。
【0053】
スリットは、所望の弱化構造を構成することができるように十分に深くして、デバイスが曲げ力を受けるときに、前記スリットに沿って破断するようにする必要がある。一の実施形態では、スリットは、スリットに隣接するマイクロ流体デバイスの厚さの少なくとも15%、30〜90%の範囲、35〜80%の範囲のように、マイクロ流体デバイスの厚さの少なくとも10%の深さを有し、マイクロ流体デバイスの厚さは上面と、当該上面の反対側の底面との間の距離として定義される。
【0054】
標的分子溶液は標的分子溶液流入口に、例えば標的分子溶液流入口を、例えば2次デバイス、例えばウェルまたはテストチューブに、またはウェルまたはテストチューブの中に収容されるサンプルと、或いはピペットのような器具から吐出されるサンプルと接触させることにより直接流し込むことができる。一の実施形態では、本発明のマイクロ流体デバイスは、標的分子溶液を標的分子溶液流入口に供給する標的分子溶液流入口空洞を備える。標的分子溶液流入口空洞は、例えば固体構造の上面における凹部として形成することができ、この凹部は、標的分子溶液流入口に直接達する。
【0055】
一の実施形態では、標的分子溶液流入口空洞は、前記上面における空洞の形態であり、前記空洞は前記分岐流路セクションと前記標的分子溶液流入口を介して液体連通し、前記標的分子溶液流入口空洞は、上面から標的分子溶液流入口に達する円錐形を有する。
【0056】
標的分子溶液流入口空洞は、いずれの所望の容積を有することもできる。一の実施形態では、標的分子溶液流入口空洞は、結晶化流路セクション群の容積の少なくとも2倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.1倍のように、例えば0.05〜20μl、0.1〜10μl、0.2〜5μl、0.5〜3μlのように、結晶化流路セクション群の合計容積と少なくとも等しい容積を有する。
【0057】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、2つ以上の沈殿剤流入口の各沈殿剤流入口は沈殿剤空洞と液体連通するように構成される。デバイスは好ましくは、各沈殿剤流入口に対応する少なくとも一つの沈殿剤空洞を備えるが、一の実施形態では、2つ以上の沈殿剤流入口が同じ沈殿剤空洞と液体連通する。
【0058】
一の実施形態では、沈殿剤空洞は、沈殿剤空洞から沈殿剤流入口に達する開口部を除いて、デバイス内に封止される。この構造は半閉鎖空洞(semi−closed cavity)と表記される。この実施形態では、沈殿剤空洞に面する開口部のみが沈殿剤流入口を通過することが望ましい。別の構成として、沈殿剤は、沈殿剤空洞の壁領域の膜を介して供給することができる、または沈殿剤空洞には、固体構造の構成要素群を互いに対して固定する前に、沈殿剤を予め充填しておくことにより沈殿剤空洞を構成することができる。沈殿剤は、例えば沈殿剤が予め充填されている沈殿剤空洞において乾燥状態にすることができる。
【0059】
半閉鎖沈殿剤空洞を備える実施形態では、デバイスは、標的分子溶液をデバイスに供給して、標的分子溶液が結晶化流路セクションに流入することができる場合に、空気を逃がすことができる構造を備えることが好ましい。このような構造は、例えば沈殿剤流入口の近傍に配置されることが好ましい該当する結晶化流路セクションに達するデバイス内の空気穴、または沈殿剤空洞内に配置される空気穴の形態とすることができる。これらの空気
穴は、閉塞要素、例えばガラスプレートのようなプレートを含むことができ、プレートを当てることにより空気穴を、必要な場合に、かつ必要なときに塞ぐことができる。
【0060】
沈殿剤空洞は、例えば固体構造の上面における凹部として形成することができ、この凹部は沈殿剤流入口に直接達する。
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、沈殿剤空洞は、前記上面における流入口空洞の形態であり、前記空洞は、前記結晶化流路セクションと前記沈殿剤流入口を介して液体連通し、前記沈殿剤流入口空洞は、上部表面から標的分子溶液流入口に達する円錐形を有することが好ましい。
【0061】
沈殿剤空洞群は一の実施形態では、互いからの距離が、0.5〜5mm、1〜3mm、1.5〜2.5mmのように、少なくとも0.1mmの最小距離とすることができる。
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、少なくとも一つの結晶化流路セクションは、沈殿剤流入口の中に、または沈殿剤流入口に隣接して配置される毛細管現象流動停止部分を有し、この流動停止部分は、階段状に形成され、そして好ましくは結晶化流路セクションから沈殿剤空洞に向かって急激に広がる部分によって形成されることが好ましい。好ましくは、結晶化流路セクション群の全てが、これらの結晶化流路セクションに隣接する沈殿剤流入口の中に、または沈殿剤流入口に隣接して配置される毛細管現象流動停止部分を有する。
【0062】
従って、結晶化流路セクション群は、標的分子溶液流入口からの標的分子溶液で、毛細管力を利用して充填することができ、沈殿剤空洞が同時に充填されることはない。標的分子溶液の液前面の動きは、形成された毛細管現象流動停止部分で停止する。沈殿剤でその後、沈殿剤空洞が充填される場合、標的分子溶液及び沈殿剤が接触して拡散し、そして結晶化テストを実施することができる。
【0063】
結晶化流路セクションから沈殿剤空洞に向かって階段状に広がる部分は、100度以下、90度以下、80度以下のように、120度以下の角度を有するエッジを形成することが好ましい。
【0064】
エッジの角度は、固体構造を通って、結晶化流路のエッジ表面から、階段状の変位部分を形成する段のエッジ表面に達する最小角度として測定される。
沈殿剤空洞はいずれの所望の容積を有することもでき、例えば容積は、0.02〜5μl、0.5〜2μl、0.7〜1.3μlのように、0.01〜10μlである。
【0065】
マイクロ流体デバイスは単一部分で作製することができるが、一般的には、このような単一部分構造のマイクロ流体デバイスは作製が難しい。好ましくは、マイクロ流体デバイスは、同じ材料または異なる材料から成る2つ以上の部分により作製され、これらの部分は互いに接続されている。これらの部分は互いに、例えば接着法、溶接法、及び/又は機械的締め付け手段によって接続することができる。
【0066】
接合は、例えばイオン結合による接合及び共有結合による接合から選択される一つ以上の接合を含む化学的接合とすることができる。一の実施形態では、2つ以上の部品の間の接合は熱圧着接合及び超音波接合のように、溶接法によって行なわれる。
【0067】
マイクロ流体デバイスは、いずれの適切な材料によっても作製することができる。マイクロ流体デバイスの種々の部分は、同じ材料または異なる材料により構成することができる。一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、ガラス、セラミックス、金属、シリコン、ゲルマニウム、及び砒化ガリウムのような半導体材料、及びポリマーから成るグループから選択される材料により作製される少なくとも一つの部分を備える。
【0068】
半導体材料は、4個の電子を、材料を構成する原子の最外殻に有する(最外殻の半分が電子で満たされている)材料である。互いに結晶格子内で結合すると、原子群は電子を共有して、これらの原子がそれぞれ、8個の電子を最外殻に持つようになる。
【0069】
電子群は非常に緩く束縛されているので、これらの電子は電界が印加されている状態ではキャリアとなることができる。
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、ドープト多結晶シリコン、ドープト多結晶シリコンゲルマニウム(ポリSG)、ドープト単結晶シリコン、ドープト単結晶シリコンゲルマニウム(SG)、及びドープトIII−V族材料から成るグループから選択される半導体材料により作製される少なくとも一つの部分を備える。
【0070】
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、ポリマー材料、好ましくは射出成形可能なポリマーにより作製される少なくとも一つの部分を備え、ポリマー材料として、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレン(PE)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリサルフォン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン(PU)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリビニリデンクロライド(PVDC)、ポリビニリデンフッ化物、スチレン−アクリルコポリマー、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレン、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、シリコーン、エポキシ樹脂、ポリエーテルブロックアミド、ポリエステル、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリル系、セルロイド、セルロースアセテート、エチレン−ビニルアセテート(EVA)、エチレンビニルアルコール(EVAL)、フッ素樹脂(FEP,PFA,CTFE,ECTFE,ETFEを含むPTFE)、ポリアセタル(POM)、ポリアクリレート(アクリル系)、ポリアクリロニトリル(PAN)ポリアミド(PA)、ポリアミド−イミド(PAI)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)、ポリブタジエン(PBD)、ポリブチレン(PB)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリケトン(PK)、ポリエステル/ポリテン/ポリエテン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルサルフォン(PES)、塩素化ポリエチレン(PEC)、ポリイミド(PI)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、硫化ポリフェニレン(PPS)、ポリフタルアミド(PPA)、及び上に列挙した材料の混合物から成るグループから選択されるポリマーを挙げることができ、好ましくは、デバイスの少なくとも一部分が、光学検査を行なうことができる透明性を有する、方法。
【0071】
ポリマーを使用する場合、一の実施形態では、ポリマーは、少なくとも0.5GPa(ギガパスカル)、少なくとも1GPaのように、少なくとも0.2GPaのヤング率を有することが好ましい。これにより、材料は、結晶化を行なうために信頼性の高い剛性を有することになる。
【0072】
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、PET,Zeonorョ (ZEON
Corporationが販売する),Zeonexョ (ZEON Corporat
ionが販売する),及びTopasョ (Topas Advanced Polym
ers GmbHが販売する)のような環式オレフィンコポリマーにより作製される少なくとも一つの部分を備える。これらの材料は、以下に記載する取り外し可能な蓋(群)の作製に特に有用である。
【0073】
マイクロ流体デバイスが、互いに接続される少なくとも2つの部分により作製される一
の実施形態では、これらの部分の内の少なくとも一つの部分は、スリットの形態の弱化ラインを含む。
【0074】
本発明の一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、少なくとも下側部分(底面を構成する)及び上側部分(上面を構成する)により作製され、下側部分及び上側部分の内の少なくとも一つの部分は、液体流路を構成する溝を含む。溝は、底面及び上面のそれぞれとは反対側の表面に配置する必要がある。更に、下側部分及び上側部分の内の少なくとも一つの部分は、標的分子溶液流入口空洞、及び沈殿剤流入口空洞のための開口部を含み、前記下側部分及び前記上側部分は高い剛性を有することが好ましい。
【0075】
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、下側部分及び上側部分により作製され、これらの部分は互いに、接着法、溶接法、及び/又は機械的締め付け手段によって固定されることにより、液体流路をこれらの部分の間に形成する。
【0076】
一般的に、2つの部分を溶接で繋ぎ合わせる方法が最も簡単である。しかしながら、2つの部分を締め付け手段によって互いに固定する実施形態では、成長した結晶の取り出し作業は以下に開示するように非常に簡単になる。
【0077】
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、少なくとも下側部分、上側部分、及びシーリング層の形態のシーリング部分により作製される。上側部分は、上面とは反対の側に位置して液体流路を構成する溝と、そして任意であるが、標的分子溶液流入口空洞用の開口部と、そして沈殿剤空洞用の開口部/凹部と、を含む。シーリング部分は、上側部分と下側部分との間に挟まれてシーリング部分が前記溝及び前記開口部を覆い、そして下側部分が前記シーリング部分を支持するようになる。この実施形態では、下側部分は、ほぼ凹凸の無いプレートの形態であることが好ましく、好ましくはガラスまたはポリマーにより作製される。
【0078】
下側部分は好ましくは、シーリング層を、シーリング層が上側部分の前記溝を覆うことにより結晶化流路セクションを形成する領域において少なくとも支持する。前記上側部分は、結晶化流路セクションを横切る一つ以上の弱化ラインを含むことができ、前記弱化ラインは、上側部分の内、下側部分を超えて延びる部分とすることが好ましく、これによってデバイスを、前記弱化ラインに沿って下側層を破断することなく破断することができる。
【0079】
マイクロ流体デバイスが、少なくとも下側部分、及びシーリング層の形態のシーリング部分により作製される一の実施形態では、上側部分は液体流路を構成する溝と、そして任意であるが、標的分子溶液流入口空洞用の開口部と、そして沈殿剤空洞用の開口部/凹部と、を含む。シーリング部分を上側部分に接続して、シーリング部分が前記溝及び前記開口部を覆うようにする。これにより、液体流路を形成することができる。
【0080】
シーリング部分は、必要な気密度を保つことができる材料により作製されるように選択する必要がある、または別の構成として、シーリング材、例えばワックスを付着させてデバイスを気密封止する。一の実施形態では、シーリング部分は、20〜70shoreA(ショアA)のように、90shoreA以下の硬度を有するポリマー材料から成る。
【0081】
シーリング部分に好適なポリマー材料の例は、熱可塑性エラストマー及びゴムから成るグループから選択されることが一層好ましく、かつ上述の硬度を有するエラストマーとすることができる。シーリング部分に適する材料はPDMS(ポリジメチルシロキサン)である。
【0082】
シーリング部分は一の実施形態では、ほぼ凹凸の無いプレートの形態とすることが好ましい。
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは更に、好ましくは結晶化流路セクション群の全てを横切る弱化ラインを備えるので、デバイスを前記弱化ラインに沿って破断することができる。弱化ラインは、上述のように設けることができ、例えば弱化ラインは、マイクロ流体デバイスの上側部分に設けることができる。
【0083】
弱化ラインは好ましくは、前記構造内に配置されることにより、該当する前記沈殿剤流入口に隣接する前記結晶化流路セクションを横切ることができる。
マイクロ流体デバイスの作製及びハンドリングを簡単にするために、上面及び反対側の底面は一の実施形態では、流入口空洞と、そして任意であるが、沈殿剤空洞及び/又は弱化ラインと、を除いて、ほぼ平坦にすることができる。
【0084】
デバイスの毛細管現象特性は、当業者に公知になっている要素のような幾つかの要素によって変わる。毛細管現象は上述のように、表面張力、及び液体流路の構造及びサイズによって変わる。「毛細管現象を起こす寸法(capillary dimension)」という用語は、液体流路がこのような特性を有することによって、毛細管吸引力が、水及び/又は標的分子溶液である液体サンプルに発生することを意味する。
【0085】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、液体流路は、当該流路の長さの主要部分において、毛細管現象を起こす寸法を有し、好ましくは、前記液体流路は、少なくとも分岐流路セクション及び結晶化流路セクションにおいて、毛細管現象を起こす寸法を有する。
【0086】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、液体流路は、当該流路の長さの主要部分において、10μm〜250μm、20μm〜100μmのように、1000μm未満の少なくとも一つの断面寸法を有し、好ましくは、前記液体流路は、少なくとも分岐流路セクション及び結晶化流路セクションにおいて、10μm〜250μm、20μm〜100μmのように、1000μm未満の少なくとも一つの断面寸法を有する。
【0087】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、液体流路は、少なくとも前記結晶化流路セクションにおいて、好ましくは当該セクションの長さ全体において、下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成する四辺多角形断面形状を有し、前記四辺多角形断面形状は台形であることが好ましく、この場合の2つの側部表面は下部表面に対して、90〜110度、90〜100度、90〜95度のように、90度超〜120度の範囲の角度を有する。
【0088】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、液体流路は、少なくとも結晶化流路セクションにおいて、高さが、下部表面と上部表面との間の平均距離であり、そして幅が、2つの側部表面の間の平均距離であるような幅及び高さの断面形状を有し、幅及び高さは好ましくは、互いに依存することなく、10〜300μmである。
【0089】
分岐流路セクションは、1つの、2つの、3つ以上の分岐位置を含むことができる。各分岐位置では、流路は2つ以上の流路に分岐させることができる。
流動遮断流路セクションの最適な長さは、どのタイプの流動遮断が行なわれるかによって大きく変わる。一般的に、流動遮断流路セクションは、5〜5000μm、10〜1000μm、20〜200μmのように、1〜10000μmの長さを有する。
【0090】
前記流動遮断機構が、液体流路を横切る弱化ラインの形態であるマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、前記流動遮断流路セクションは、最大約4000μm、最大約3000μm、最大約1000μm、最大約100μm、1〜50μm、例えば少なくとも1
0μmのように、最大約5000μm長さを有し、これらの長さは、弱化ラインの幅が上面と同じ平面で測定される場合に弱化ラインが横切る液体流路の長さとして定義される。
【0091】
前記流動遮断機構が、液体流路における毛細管現象流動停止部分の形態であるマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、前記流動遮断流路セクションは、1〜10000μm、10〜5000μm、20〜2000μmのように、最大約10mmの長さを有する。
【0092】
結晶化流路セクションは好ましくはそれぞれ、20〜30000μm、40〜15000μm、100〜10000μmのように、10〜50000μmの長さを有することができる。
【0093】
構造を簡単にするために、前記結晶化流路セクション群は好ましくは、互いにほぼ平行になるように配置することができる。
本発明の一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、少なくとも一つの第1部分と、そして少なくとも一つの蓋部分と、を備え、第1部分は第1面と、そして少なくとも液体流路の結晶化流路セクションを構成する溝を持つ溝面と、を有し、蓋部分は、少なくとも部分的に取り外し可能な複数の蓋を構成し、各蓋は第2面と、そして溝面と、を有し、取り外し可能な前記蓋は、溝の上に取り付けられ、かつ溝に沿って密閉されて、少なくとも液体流路の結晶化流路セクションを構成する。
【0094】
一の実施形態では、第1部分の第1面は上面であり、そして蓋部分(群)の第2面または第2面群は底面を構成する。別の実施形態では、第1部分の第1面は底面であり、そして蓋部分(群)の第2面または第2面群は上面を構成する。
【0095】
第1部分は、例えば成形部品及び/又はマイクロ加工部品とすることができる。一の実施形態では、第1部分は、ほぼ平坦なプレートにより作製され、このプレートに、溝がレーザを使用して彫り込まれている。レーザを使用することにより、溝を非常に簡単に形成することができるので、実際、溝にどのような所望の形状も持たせることができる。
【0096】
一つ以上の蓋部分を溝の上に取り付けて液体流路を形成する。実際、蓋部分を一体化部材として取り付け、次に、取り付け中に、または取り付け後に、蓋部分に所望の切り込み部を設けて取り外し可能な蓋を構成することが望ましい。取り外し可能な蓋は、蓋を剥がすことによって取り外して、結晶化流路セクションの少なくとも一部分を露出させることができる、好ましくは少なくとも一つの結晶化流路セクションの主要部分を露出させることができるような蓋である。
【0097】
このような取り外し可能な蓋によって、結晶化した高分子を非常に簡単に取り出すことができる。更に、結晶化した所望の高分子を収容する結晶化流路セクションまたは結晶化流路セクション群を覆う蓋のみを剥がしてセクションを露出させて取り出しを行うだけで済み、そして残りの結晶化流路セクションは、更に時間を掛けることにより結晶化を進行させることができる。別の表現をすると、所望の結晶を取り出すまでに結晶化の進行がこれ以上期待できなくなるまで待機する必要がなくなる。
【0098】
標的分子溶液流入口は上述のように設けることができる。好ましくは、標的分子溶液流入口は、第1部分の一つの貫通開口部によって構成される。別の構成として、標的分子溶液流入口は、上述のように凹部によって構成される。
【0099】
沈殿剤流入口も上述のような構成とすることができる。一の実施形態では、第1部分は、液体流路への沈殿剤流入口を構成する少なくとも一つの貫通開口部を有する。別の構成として、沈殿剤流入口は、上述のように凹部によって構成される。
【0100】
貫通開口部の形態の流入口を第1部分に設けることにより、マイクロ流体デバイスを非常に簡単な方法で提供することができる。
取り外し可能な蓋は好ましくは、第1部分を超えて延びて、例えば取り外し可能な蓋が、該当する蓋を個々に取り外すためのフランジを構成するようになる。
【0101】
一の実施形態では、取り外し可能な複数の蓋はそれぞれフランジを含み、フランジは第1部分に接合されず、かつ前記フランジを剥がしてバラバラにすることにより、該当する蓋が該当する結晶化流路セクションから外れるように構成される。所望の結晶化流路セクションはこのようにして、取り出しを行なうために簡単かつ便利な方法で露出させることができる。
【0102】
取り外し可能な蓋は好ましくは、該当する溝に沿って第1部分の溝面に、接着法及び/又は溶接法によって密閉される。シーリングラインは、例えば2mm以下のように、0.5mm未満の相対的に幅の狭いラインとすることができ、この幅狭のラインは例えば同時に、隣接する蓋の間の部分切り込み部、または完全切り込み部を構成する。更に幅の広いシーリングラインも当然、使用することができるが、そのような状況では、切り込み部を隣接する取り外し可能な蓋の間に設けるために別の作業工程が必要になる、または個々の取り外し可能な蓋は個々に取り付けることができる。
【0103】
一の実施形態では、これらの取り外し可能な蓋は互いに対して、例えばシーリングラインに沿って剥離可能に接続される。隣接する取り外し可能な蓋の間のシーリングラインに沿った剥離可能な接続部は好ましくは、蓋が作製されるときに使用される原材料の固有強度の半分の強度、または固有強度よりも小さい強度のように、非常に低い強度を有するので、剥離可能な接続部は、剥がされると、蓋材料が剥がれる前に破断される。
【0104】
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは3つ以上の取り外し可能な蓋を備える。取り外し可能な蓋の数は、結晶化流路セクションの数に調整されることが好ましい。好ましくは、マイクロ流体デバイスは、一つの取り外し可能な蓋を前記結晶化流路セクション群の各セクションに対応して備える。
【0105】
マイクロ流体デバイスは、例えば上述の材料群の内のいずれかの材料によって作製することができる。一の実施形態では、第1部分は、ガラス、セラミックス、金属、及びシリコン、ゲルマニウム、及び砒化ガリウムのような半導体材料、及び少なくとも0.5GPa(ギガパスカル)、少なくとも1GPaのように、少なくとも0.2GPaのヤング率を有するポリマーから成るグループから選択される材料により作製される。第1部分は、ほぼ透明であることが好ましい。
【0106】
一つ以上の蓋部分(群)は好ましくは、ポリマー箔または金属箔のような箔により作製される。蓋部分(群)に望ましい材料は上に開示される。
一の実施形態では、蓋の箔を第1部分の溝面に貼り付け、溝に沿って溝面に接着させ、または溶接し、そして部分的に、または全てに切り込みを入れて複数の部分とすることにより、取り外し可能な複数の前記蓋を構成する。他の作製方法を当然、使用することもでき、そして当業者が利用することができる。
【0107】
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは更に、好ましくは該当する前記沈殿剤流入口に隣接する前記結晶化流路セクション群の内の少なくとも一つの結晶化流路セクションに組み込まれる膜を備える。
【0108】
膜によって、例えば結晶化流路セクションから沈殿剤流入口を介して移動してきて沈殿
剤に到達する標的分子の量を減らすことができる。多くの状況において、標的分子は沈殿剤よりも大きく、これは、沈殿剤が膜を通り抜けることができるが、標的分子は通り抜けることができないことを意味する。
【0109】
膜は、例えば標的分子が沈殿剤に、沈殿剤流入口と液体を介して接触するようにして拡散する現象を防止する濾過膜であり、前記膜は、メルトブローンされたガラス繊維、スパンボンドされた合成繊維(例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエーテルスルフォン)、半合成繊維、再生繊維、及び無機繊維、及び上に列挙した繊維の混合物のような繊維材料;及び発泡ポリマーから成るグループから選択される材料群の内の一つ以上の材料により作製される多孔質膜であることが好ましく、更に好ましくは、前記膜は多孔質ニトロセルロースである。
【0110】
一の実施形態では、膜は、標的分子溶液よりも沈殿剤の表面張力に近い表面張力を有することができる。
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは標的分子溶液と組み合わされる。標的分子溶液は、例えば本明細書に開示されるように、水溶液に調製することができる。水溶液は洗浄剤を含まないようにすることができる、または水溶液は任意であるが、一つ以上の洗浄剤を含むことができる。
【0111】
マイクロ流体デバイスは好ましくは、標的分子溶液を導入するために作製することができ、これは、液体流路内の所望の毛細管力を標的分子溶液について測定する必要があることを意味する。従って、一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、少なくとも一つの流動遮断流路セクションを備え、流動遮断流路セクションは、隣接する前記結晶化流路セクションによって標的分子溶液に作用する毛細管力よりも小さい毛細管力が前記流路の標的分子溶液に作用するように構成される。
【0112】
標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、前記液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの前記壁表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも一部分において、標的分子溶液の表面張力よりも小さい表面張力を有する。この実施形態では、または別の実施形態では、少なくとも一つの結晶化流路セクションの壁表面は、当該結晶化流路セクションの外周の少なくとも一部分において、標的分子溶液の表面張力よりも大きい表面張力を有することができる。
【0113】
標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、前記液体流路は少なくとも、一つの結晶化流路セクションにおいて、四辺多角形断面形状を有することにより下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成し、好ましくは、少なくとも下部表面及び側部表面は、標的分子溶液の表面張力よりも大きい表面張力を有する。
【0114】
標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、前記分岐流路セクションの前記壁表面は、当該分岐流路セクションの外周の少なくとも一部分において、標的分子溶液の表面張力よりも大きい表面張力を有する。
【0115】
標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、液体流路は、当該流路の長さの主要部分において、毛細管現象を起こす寸法を有し、好ましくは、前記液体流路は、少なくとも分岐流路セクション及び結晶化流路セクションにおいて、毛細管現象を起こす寸法を有し、毛細管現象を起こす寸法は、標的分子溶液に関して導出される。
【0116】
標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイスはまた、液体流路と、液体流路内を流れるように適合させた液体との間のいずれの関係も、標的分子溶液に関して測定される上に開示したような構成とすることができる。
【0117】
本発明はまた、標的分子溶液に溶解している標的分子の結晶化を、上に説明したマイクロ流体デバイスを使用して促進する方法に関する。
本発明の方法では:
i)標的分子溶液を調製し、標的分子溶液を標的分子溶液流入口に供給し、そして標的分子溶液で結晶化流路セクションを充填することができるようにし;
ii)少なくとも一つの沈殿剤を調製し、そして沈殿剤を、少なくとも一つの沈殿剤流入口と液体連通するように配置することにより、沈殿剤が標的分子溶液と接触するようになり;
iii)沈殿剤が結晶化流路セクションの標的分子溶液に拡散することができるようにし;そして
iv)該当する前記標的分子結晶化流路セクション群の間の液体連通を遮断する。
【0118】
ステップi)及びii)はいずれの順番でも行なうことができる。
ステップiv)は、ステップi)が終了した後のいずれの時点でも行なうことができる。
【0119】
標的分子は基本的に、結晶化することが望ましい、いずれの種類の分子とすることもできる。標的分子は、有機分子または無機分子とすることができる。ほとんどの場合において、分子は生体分子である、すなわち生物学的試料から抽出される分子、または人工的に調製され、かつ生物学的試料に類似する試料から抽出される分子である。好ましくは、標的分子溶液はタンパク質、核酸、核酸類似物、炭水化物、脂質から成るグループから選択される、更に好ましくは、500ダルトン以上のタンパク質、単鎖及び二本鎖のDNA,RNA,PNA,及びLNA,及び薬剤候補のグループから選択される少なくとも一つの種類の標的分子から成る溶液である。「タンパク質(protein)」という用語は、ペプチドだけでなく大型のタンパク質を指すために用いられる。
【0120】
好適な実施形態では、標的分子は、500ダルトン以上のタンパク質のグループから選択されるタンパク質である。
上に示したように、溶液は、例えば溶液を安定化させるための他の成分、例えばポリエチレングリコールのようなポリマー、及び洗浄剤を含む界面活性剤を含むことができる。
【0121】
種々の成分の濃度は大きく変えることができる。
洗浄剤及び濃度の例を表1に示す。普通、標的分子溶液は一つの種類の洗浄剤しか含まないが;複数の洗浄剤の組み合わせを適用することもできる。
MW:分子量
CMC:臨界ミセル濃度
Actual:使用される代表的な濃度
【0122】
【表1】
【0123】
【0124】
一の実施形態では、ゲル形成材料を標的分子溶液に溶解させることにより、溶液を少なくとも部分的に固化して不所望の逆流を防止することができる。有用なゲル形成材料の例として、アガロース及びアクリルアミドを挙げることができる。
【0125】
有用な沈殿剤、及び沈殿剤の組み合わせは、この技術分野において公知である。上に示したように、沈殿剤は乾燥状態で、または溶液として加えることができる。
沈殿剤溶液の例は、構造ゲノミクスにおけるショットガン結晶化法に見ることができる:ACTA CRYSTALLOGRAPHICA SECTION D−BIOLOGICAL CRYSTALLOGRAPHY 59:1028−1037 Part 6, JUN 2003に掲載された論文の著者であるPage R, Grzechnik SK, Canaves JM, Spraggon G, Kreusch A,
Kuhn P, Stevens RC, Lesley SAによる超好熱性真正細菌(Thermotoga maritima)のプロテオーム(細胞の活動に必要な全タンパク質をひとまとめにして捉えた概念)に対して最適化された2次元結晶化スクリーニング。
【0126】
当業者であれば、選択された標的分子溶液と組み合わせて使用される沈殿剤を見付け出し、そして選択する手法に通じていると考えられる。
標的分子溶液は一の実施形態では、標的分子溶液流入口に、例えばピペットのような器具を使用して直接供給することができる、または上に説明したように、標的分子溶液を標的分子溶液流入口空洞に流し込むことにより直接供給することができる。
【0127】
一の実施形態では、標的分子溶液を支持体に、例えば液滴として滴下し、標的分子溶液流入口は、毛細管流路に達する流入口の形状に作製され、そして標的分子溶液流入口が液滴に触れるようにすることにより、液滴がマイクロ流体デバイスに毛細管力によって直接吸い込まれる。
【0128】
安全性が高く、汚染されず、かつ測定される標的分子溶液を供給するために、マイクロ流体デバイスが標的分子溶液空洞を備え、そして標的分子溶液を前記標的分子溶液空洞に流し込むことが好ましい。
【0129】
マイクロ流体デバイスの液体流路の構造/表面特性に起因して、標的分子溶液が結晶化流路セクションに充填されることになる。
一の実施形態では、沈殿剤(群)が沈殿剤空洞に予め充填される。上に説明したように、沈殿剤はこの実施形態では、乾燥状態であることが好ましい。沈殿剤は、標的分子溶液が充填される前に、または充填された後に、例えば液体を沈殿剤空洞に、例えば膜を介して注入することにより再溶解させることができる。他の例が上に開示されている。
【0130】
一の実施形態では、沈殿剤(群)は、該当する沈殿剤流入口を、沈殿剤を収容するウェルに接続することにより、該当する沈殿剤流入口と液体連通するようになるように配置される。
【0131】
一の実施形態では、沈殿剤(群)は、沈殿剤をデバイスの沈殿剤空洞に供給することにより、該当する沈殿剤流入口と液体連通するようになるように配置される。この実施形態では、沈殿剤流入口は好ましくは、標的分子溶液が結晶化流路セクションに流入するが、沈殿剤空洞には流入することがないように配置することができる。この構成の特定の例が上に記載されている。この実施形態では、標的分子溶液を沈殿剤よりも早い時点で流し込む。
【0132】
別の実施形態では、沈殿剤が結晶化流路セクションに流入する現象を、例えば上述のように、膜または毛細管現象流動停止部分によって防止する。この例では、沈殿剤を標的分子溶液よりも早い時点で流し込むことが好ましい。
【0133】
本方法によれば、マイクロ流体デバイスは好ましくは、該当する前記標的分子結晶化流路セクション群の間の液体連通が、液体流路の内部毛細管力のために、または流動遮断流路セクションが上述のように変位するために自動的に遮断されるように構成される。
【0134】
一の実施形態では、該当する前記標的分子結晶化流路セクション群の間の液体連通は、デバイスを、流動遮断流路セクションを横切る弱化ラインに沿って破断することにより遮断される。デバイスが弱化ラインに沿って破断される場合、結晶化流路セクション内の液体は、毛細管力が結晶化流路セクション内に生じるので流出することがない。
【0135】
一の実施形態では、沈殿剤は標的分子結晶化流路セクションに所望の時間に亘って、例えば1時間以上に亘って拡散することができ、その後、沈殿剤と標的分子結晶化流路セクションとの間の液体連通が終了する。
【0136】
液体がシステムから蒸発する現象を防止するために、マイクロ流体デバイスを取り囲む雰囲気に曝される流路開口部を密閉することが望ましい。従って、本方法では好ましくは、結晶化流路セクションに通じる少なくとも一つの流入口、好ましくは全ての流入口を密閉して流入口からの蒸発を回避する。
【0137】
どのような密閉要素/材料も使用することができる。一の実施形態では、一つ以上の流入口は:
a)パラフィンワックスまたはポリエチレンワックスのようなワックスを塗って流入口(群)を密閉するステップ;及び
b)ポリマーまたはガラスにより作製される固着要素のような透明であることが好ましい固着要素、例えばポリマースライドまたはガラススライドを固定する(例えば、接着法、溶接法、または締め付け手段によって)ステップ、
の内の一つ以上のステップによって密閉される。
【0138】
本方法では更に、培養をマイクロ流体デバイスを用いて行ない、そして結晶の形成及び/又は成長を可能にする。培養時間は、標的分子溶液の種類によって変わる。一般的に、ほとんどの通常の培養時間は、24〜240時間のように、2〜580時間である。培養は通常、温度制御ボックス内で、例えば25度、16度、または4度の温度で行なわれる。温度は結晶化に影響し、そして或るテストでは、培養を種々の温度で行なうことができる。
【0139】
培養後、マイクロ流体デバイスを、例えば目視で、またはロボットによって分析することにより、全ての結晶形成を確認する。形成された結晶は、液体流路の中で、例えば透明な壁部分を介して分析することができる、または結晶は取り出すことにより詳細に分析することができる。
【0140】
一の実施形態では、本発明の方法では更に、形成/成長結晶を、結晶化流路セクション群の内の一つ以上のセクションから取り出し、結晶は好ましくは:
a)デバイスを破断して少なくとも2つの部分として、結晶化流路セクション群を構成している複数の部分を分離し、そして結晶を取り出すステップ;
b)選択した一つ以上の結晶化流路セクション(群)の下側部分または上側部分を選択的に取り外し(例えば、切り出す)、そして結晶を取り出すステップ;及び
c)結晶を結晶化流路セクション(群)から吸い上げる、または押し出すステップ;及びd)取り外し可能な蓋または複数の蓋を取り外して、所望の結晶化流路セクション(群)を露出させることにより結晶を取り出すことができるステップ、
の内の一つ以上のステップによって取り出される。
【0141】
第2の態様においては、本発明は、標的分子の結晶化を促進する別のマイクロ流体デバイスに関するものである。このマイクロ流体デバイスは、第1面及び反対側の第2面を有し、かつ少なくとも一つの液体流路を有する固体構造を備え、液体流路は、標的分子溶液流入口と、そして少なくとも一つの沈殿剤流入口と、を含む。別の表現をすると、このマイクロ流体デバイスでは、分岐セクション及び/又は流動遮断セクションを設ける必要がない。標的分子溶液流入口は、沈殿剤流入口と前記液体流路を介して液体連通し、そして液体流路は、前記沈殿剤流入口に隣接する結晶化流路セクションを含む。本発明のこの第2の態様のこのマイクロ流体デバイスは少なくとも一つの第1部分と、そして少なくとも一つの蓋部分と、を備え、第1部分は第1面と、少なくとも一つの溝を持つ溝面と、を有することにより前記結晶化流路セクションを構成し、蓋部分は、少なくとも部分的に取り外し可能な蓋を構成し、前記蓋は第2面及び溝面を有し、取り外し可能な前記蓋を前記溝の上に取り付け、そして液体流路の前記結晶化流路セクションに対して前記溝に沿って密閉する。
【0142】
一の実施形態では、第1部分の第1面は上面であり、そして蓋部分(群)の第2面または第2面群は底面を構成する。別の実施形態では、第1部分の第1面は底面であり、そして蓋部分(群)の第2面または第2面群は上面を構成する。
【0143】
第1部分または蓋部分(群)の内の少なくとも一つの部分は透明である。
本発明のこの第2の態様の第1部分は、上に開示した材料により作製することができ、そして同様の方法によって設けることができる。第1部分は、例えば成形部品及び/又はマイクロ加工部品とすることができる。一の実施形態では、第1部分は、ほぼ平坦なプレートにより作製され、このプレートに、溝がレーザを使用して彫り込まれている。レーザを使用することにより、溝を非常に簡単に形成することができるので、実際、溝にどのような所望の形状も持たせることができる。
【0144】
蓋部分を溝の上に取り付けて液体流路を形成する。実際、蓋部分を一体化部材として取り付け、次に、取り付け中に、または取り付け後に、蓋部分に所望の切り込み部を設けて、一つ以上の取り外し可能な蓋を構成することが望ましい。取り外し可能な蓋は、蓋を剥がすことによって取り外して、結晶化流路セクションの少なくとも一部分を露出させることができる、好ましくは少なくとも一つの結晶化流路セクションの主要部分を露出させることができるような蓋である。
【0145】
このような取り外し可能な蓋によって、結晶化した高分子を非常に簡単に取り出すことができる。更に、結晶化した所望の高分子を収容する結晶化流路セクションまたは結晶化流路セクション群を覆う蓋のみを剥がして当該セクションを露出させて取り出しを行なえばよく、そして残りの結晶化流路セクションは、更に時間を掛けることにより結晶化を進行させることができる。別の表現をすると、所望の結晶を取り出すまでに結晶化の進行がこれ以上期待できなくなるまで待機する必要がなくなる。
【0146】
標的分子流入口は上述のように設けることができる。好ましくは、標的分子流入口は、第1部分の一つの貫通開口部によって構成される。別の構成として、標的分子流入口は、上述のように凹部によって構成される。
【0147】
沈殿剤流入口も上述のような構成とすることができる。一の実施形態では、第1部分は、液体流路への沈殿剤流入口を構成する少なくとも一つの貫通開口部を有する。別の構成として、沈殿剤流入口は、上述のように凹部によって構成される。
【0148】
貫通開口部の形態の一つ以上の流入口を第1部分に設けることにより、マイクロ流体デバイスを非常に簡単な方法で提供することができる。
取り外し可能な蓋(群)は好ましくは、第1部分を超えて延びて、例えば一つ以上の取り外し可能な蓋が、該当する蓋を個々に取り外すためのフランジを構成するようになる。
【0149】
第2の態様の一の実施形態では、取り外し可能な蓋はフランジを含み、フランジは第1部分に接合されず、かつ前記フランジを剥がしてバラバラにすることにより、蓋が結晶化流路セクションから外れるように構成される。所望の結晶化流路セクション(群)はこのようにして、取り出しを行なうために簡単かつ便利な方法で露出させることができる。
【0150】
取り外し可能な蓋は好ましくは、該当する溝に沿って第1部分の溝面に、接着法及び/又は溶接法によって密閉される。シーリングラインは、例えば2mm以下のように、0.5mm未満の相対的に幅の狭いラインとすることができ、この幅狭のラインは例えば同時に、隣接する任意の取り外し可能な蓋の間の部分切り込み部、または完全切り込み部を構成する。更に幅の広いシーリングラインも当然、使用することができる。
【0151】
一の実施形態では、第2の態様のマイクロ流体デバイスは、2つ以上の液体流路を備え、これらの液体流路は結晶化流路セクションを含み、そして各液体流路は標的分子溶液流入口及び沈殿剤流入口に接続され、これらの前記結晶化流路セクションの各セクションは好ましくは、取り外し可能な蓋によって覆われ、これらの蓋は任意であるが、互いに剥離可能に接続される。
【0152】
取り外し可能な蓋が2つ以上設けられる場合、これらの蓋は上述のように構成することができる。一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、5個以上、10個以上のように、2つ以上の結晶化流路セクションを備えることができ、そして好ましくは、前記マイクロ流体デバイスは、一つの蓋を前記結晶化流路セクションの各々に対応して備える。
【0153】
第2の態様のマイクロ流体デバイスは、例えば上述の材料群の内のいずれの材料によっても作製することができる。一の実施形態では、第1部分は、ガラス、セラミックス、金属、及びシリコン、ゲルマニウム、及び砒化ガリウムのような半導体材料、及び少なくとも0.5GPa(ギガパスカル)、少なくとも1GPaのように、少なくとも0.2GPaのヤング率を有するポリマーから成るグループから選択される材料により作製される。第1部分は、ほぼ透明であることが好ましい。
【0154】
少なくとも一つの蓋部分は、ポリマー箔または金属箔のような箔により作製される。蓋部分(群)に望ましい材料は上に開示される。
第2の態様の一の実施形態では、蓋(群)の箔を第1部分の溝面に貼り付け、溝(群)に沿って溝面に接着させ、または溶接し、そして部分的に、または全てに切り込みを入れて複数の部分とすることにより、取り外し可能な複数の前記蓋を構成する。他の作製方法を当然、使用することもでき、そして当業者が利用することができる。
【0155】
第2の態様のマイクロ流体デバイスは更に、マイクロ流体デバイスが上に定義されるような少なくとも一つの取り外し可能な蓋を備える場合には、上に開示した特徴の内のいずれの特徴と組み合わせることもできる。
【0156】
本発明は図1に模式的に示され、図1は、液体流路2を備えるマイクロ流体デバイス1を示している。液体流路2は、流入口3と、そして標的分子溶液流入口空洞を任意に備える標的分子溶液流入口4と、を含む。液体流路2は更に、沈殿剤空洞6を任意に備える沈殿剤流入口5を含み、沈殿剤流入口5は、例えば上に説明した膜の形態の図示しない蓋によって任意に覆われる。
【0157】
液体流路2は3つのセクション、すなわち分岐流路セクション7、流動遮断流路セクシ
ョン8、及び結晶化流路セクション9を含む。図1には、結晶化流路セクションを2つしか示していないが、上に説明したように、マイクロ流体デバイスは必要な限り多くの結晶化流路セクションを有することができる。
【0158】
使用状態では、標的分子溶液は、標的分子溶液流入口3に、例えば標的分子溶液流入口空洞4を介して供給され、そして標的分子溶液は流路2に流入し、そして結晶化流路セクション9に充填される。沈殿剤は沈殿剤空洞6に、標的分子溶液が液体流路2に供給される前に、または供給された後に供給される。標的分子溶液がシステムに沈殿剤よりも早い時点で供給される場合、上に説明される機構を設けて、標的分子溶液が沈殿剤空洞に流入する現象を防止する。沈殿剤がシステムに、標的分子溶液よりも早い時点で供給される場合、上に説明した機構を形成して、沈殿剤が結晶化流路セクション9に充填される現象を防止する、例えば沈殿剤は乾燥状態で提供することができる。
【0159】
標的分子溶液及び沈殿剤の両方がシステムに供給される場合、標的分子溶液及び沈殿剤は互いに、沈殿剤流入口5で、または沈殿剤流入口5の近傍で接触するようになり、そして沈殿剤は標的分子溶液に拡散し、この標的分子溶液が最終的に培養されると、標的分子が結晶化される。
【0160】
標的分子溶液が結晶化流路セクション9に充填された後、分岐流路セクション7と結晶化流路セクション9との間の流体連通は、種々の沈殿剤が、隣接する結晶化流路セクション9に流入することができないように遮断される。流動遮断流路セクション8は流体連通を、当該セクションの構造、及び/又は表面特性に起因して自動的に遮断するように構成される、または図示しない弱化ラインを配設して、ユーザが簡単かつ安全にデバイスを、このような流動遮断ラインに沿って破断することにより、分岐流路セクション7と結晶化流路セクション9との間の流体連通を遮断することができるようにする。
【0161】
上に述べたように、結晶化流路セクション9から周囲空気に至るいずれの開口も、図示しないシーリング材を取り付けることにより封鎖することができる。
図1b及び1cは、流動遮断流路セクション8a,8bの例を示し、これらのセクションは、図1のA−A’に沿って切断したときの断面として示すことができる。
【0162】
図1bは、流動遮断流路セクション8aの断面図である。矢印は、標的分子溶液が標的分子溶液流入口3を介して供給されるときの標的分子溶液の流動方向を示している。流動遮断流路セクション8aは、流路が変位した形状として示され、この場合、流路は、隣接する分岐流路セクション7及び結晶化流路セクション9に対して垂直方向に変位している。標的分子溶液が分岐流路セクション7から流れてくると、この標的分子溶液は、液体の速度が大きいので、流動遮断流路セクション8aを容易に通過して結晶化流路セクション9に流入する。液体の流れが停止すると、流動遮断流路セクション8aに残留する液体は、流動遮断流路セクションが完全に充填されない(この状態は起きてはならない)場合には、分岐流路セクションに引き戻される。鋭いエッジ「a」(例えば、100度以下、90度以下、80度以下のように、120度以下の角度を有する)が、壁表面が階段状に変位することによって形成されるので、標的分子溶液は結晶化流路セクション9に残留するが、流動遮断流路セクション8aからはほとんどが排出される。
【0163】
図1cは、流動遮断流路セクション8bの断面図である。矢印は、標的分子溶液が標的分子溶液流入口3を介して供給されるときの標的分子溶液の流動方向を示している。流動遮断流路セクション8bは、流動遮断流路セクション8bを取り囲み、かつ当該セクション8bを構成する壁が変位した形状であり、この場合、流動遮断流路セクション8bの断面寸法は、流動遮断流路セクション8b内部での毛細管吸引力が、隣接する分岐流路セクション7及び結晶化流路セクション9における毛細管吸引力よりも小さくなるように大き
くしている。標的分子溶液が分岐流路セクション7から流れてくると、この標的分子溶液は、液体の速度が大きいので、流動遮断流路セクション8bを容易に通過して結晶化流路セクション9に流入する。液体の流れが停止すると、流動遮断流路セクション8bに残留する液体は、該当する流動遮断流路セクション及び分岐流路セクションにおける吸引力に差が生じるので、分岐流路セクションに引き戻される。鋭いエッジ「b」(例えば、100度以下、90度以下、80度以下のように、120度以下の角度を有する)が壁表面が階段状にこのように変位することによって形成されるので、標的分子溶液は結晶化流路セクション9に残留するが、流動遮断流路セクション8bからはほとんどが排出される。
【0164】
図2a及び2bは、本発明のマイクロ流体デバイスを示し、マイクロ流体デバイスは、分岐流路セクション27と結晶化流路セクション29との間の弱化ラインの形態の流動遮断流路セクション28を備える。図2bに示すように、デバイスは、3つの部分により構成される3つの層として提供される:
・上面21a’を持ち、かつ液体流路22を構成する溝と、該当する沈殿剤流入口25に隣接する沈殿剤空洞26用の開口部と、そして溶液流入口空洞24と、更に流動遮断流路セクション28の弱化ラインを構成するスリット28aと、を含む上側部分21a。
・ほとんど凹凸の無いプレート、例えばガラスプレートの形態の下側部分21c。
・上側部分21aと下側部分21cとの間に挟まれることにより、シーリング部分が前記溝22,26,24,28及び開口部を覆い、かつ下側部分が前記シーリング部分21bを支持するようなシーリング層の形態のシーリング部分21b。下側部分21cはシーリング部分21bを、シーリング部分が第1部分21aの溝22を、結晶化流路セクション29を構成する溝の部分で覆う場所で支持するが、下側部分21cは、スリット28aにより構成される流動遮断セクション28を超えて延びることはない。従って、マイクロ流体デバイスを弱化ラインの位置で、下側部分21cを分離する必要を全く生じることなく容易に破断することができる。
【0165】
図3a及び3bは、本発明の別のマイクロ流体デバイスを示している。このマイクロ流体デバイスは、図2a及び2bに示すマイクロ流体デバイスの変形であり、そして分岐流路セクション37と結晶化流路セクション39との間の弱化ラインの形態の流動遮断流路セクション38と、そして沈殿剤流入口35に位置する弱化ラインの形態の更に別の流動遮断流路セクション40と、を備える。デバイスは、3つの部分により構成される3つの層として提供される:
・上面31a’を持ち、かつ液体流路32を構成する溝と、該当する沈殿剤流入口35に隣接する沈殿剤空洞36用の開口部と、そして溶液流入口空洞34と、更に流動遮断セクション38の弱化ラインを構成するスリット38a及び沈殿剤流入口35に位置する弱化ラインを構成するスリット40aと、を含む上側部分31a。
・ほとんど凹凸の無いプレート、例えばガラスプレートの形態の下側部分31c。
・上側部分31aと下側部分31cとの間に挟まれることにより、シーリング部分が前記溝32,36,34,38,40及び開口部を覆い、かつ下側部分が前記シーリング部分31bを支持するようなシーリング層の形態のシーリング部分31b。下側部分31cはシーリング部分31bを、シーリング部分が第1部分31aの溝32を、結晶化流路セクション39を構成する溝の部分で覆う場所で支持するが、下側部分31cは、スリット38aにより構成される流動遮断セクション38、及びスリット40aにより構成される流動遮断セクション40を超えて延びることはない。従って、マイクロ流体デバイスを弱化ラインの位置で、下側部分31cを分離する必要を全く生じることなく容易に破断することができる。
【0166】
図4a〜4dは本発明の別のマイクロ流体デバイスを示している。このマイクロ流体デバイスは、図3a及び3bに示すマイクロ流体デバイスの変形であり、そしてマイクロ流体デバイスが2つの層として提供される点で、図3a及び3bに示すマイクロ流体デバイ
スとは異なっている:
・上面41a’を持ち、かつ液体流路42を構成する溝と、該当する沈殿剤流入口45に隣接する沈殿剤空洞46用の開口部と、そして溶液流入口空洞44と、更に流動遮断セクション48の弱化ラインを構成するスリット48a及び沈殿剤流入口45に位置する弱化ラインを構成するスリット50aと、を備える上側部分41a。
・下側部分も構成し、かつ前記溝42及び開口部46,44を覆うように貼着されるシーリング層の形態を呈するシーリング部分。
【0167】
使用状態では、標的分子溶液は図示しない標的分子溶液流入口に、標的分子溶液流入口空洞44を介して供給され、そして標的分子溶液は流路42に流入し、そして結晶化流路セクション49に充填される。結晶化流路セクション49から沈殿剤空洞46までが上に向かって段階状に広くなるので、標的分子溶液は沈殿剤空洞46に流入することはない。結晶化流路セクション49から沈殿剤空洞46までの段階状の広がり部分は、約90度の角度を持つエッジ「b」を構成する。この角度bは、別の大きさを持つことができるが、120度未満であることが好ましい。
【0168】
沈殿剤は沈殿剤空洞46に供給され、そして標的分子溶液及び沈殿剤が互いに沈殿剤流入口45で、または沈殿剤流入口45の近傍で接触するようになり、そして沈殿剤が標的分子溶液に拡散し、この標的分子溶液が最終的に培養されると、標的分子が結晶化する。
【0169】
標的分子溶液が結晶化流路セクション49に充填された後、図示しない分岐流路セクションと結晶化流路セクション49との液体連通は、デバイスを流動遮断流路セクション48の弱化ラインの位置で破断して、種々の沈殿剤が、隣接する結晶化流路セクション49に流入することができないようにすることにより遮断される。図4bでは、矢印A1は、デバイスの内、分岐流路セクションを含む部分を押圧してデバイスを弱化ラインに沿って破断する方向を示している。
【0170】
同時に、またはデバイスを流動遮断流路セクション48の弱化ラインに沿って破断した後、シーリング材51を図4a〜4dに示すように充填することができる。図示の実施形態では、シーリング層41bは可撓性であり、かつデバイスが弱化ラインに沿って破断されるときに破断することがない。従って、デバイスの内、分岐流路セクションを含む部分を使用してシーリング材51を液体流路42に向かって押し出すことにより、結晶化流路セクション49を分岐流路セクションから分離することができる。別の実施形態では、シーリング層も、デバイスを弱化ラインに沿って破断するときに破断される。
【0171】
デバイスで培養を、所望量の沈殿剤が結晶化流路セクションの標的分子溶液に拡散するために十分長い時間に亘って行なった後、それに応じる形で、デバイスの内、沈殿剤空洞46を含む部分を、流動遮断流路セクション50に設けられる弱化ラインに沿って破断し、沈殿剤がこれ以上、結晶化流路セクションに流入することができず、かつ同時に、標的分子がこれ以上、沈殿剤空洞の沈殿剤に流入することができないようにする。その後、培養を、標的分子を無駄にする危険を更に伴なうことなく継続することができる。
【0172】
デバイスの内、沈殿剤空洞46を含む部分は、デバイスの内、分岐流路セクションを含む部分が上に説明したように破断されるのと同じようにして破断される。図4bでは、矢印A2は、デバイスの内、沈殿剤空洞46を含む部分を押圧してデバイスを弱化ラインに沿って破断する方向を示している。シーリング材51は上に説明したように充填される。
【0173】
図5a,bは本発明の別のマイクロ流体デバイスを示している。このマイクロ流体デバイスは、図4a〜4dに示すマイクロ流体デバイスの変形であり、そして図4a〜4dに示すマイクロ流体デバイスとは、弱化ラインを構成するスリット58aが平坦な底面部分
を有する点が異なっている。デバイスは2つの層として提供される:
・液体流路を構成する溝52と、該当する沈殿剤流入口に隣接する図示しない沈殿剤空洞用の開口部と、そして溶液流入口空洞54と、更に流動遮断セクション58の弱化ラインを構成するスリット58aと、を含む上側部分51a。
・下側部分も構成し、かつ前記溝及び開口部54を覆うように貼着されるシーリング層の形態を呈するシーリング部分51b。
【0174】
図5bでは、デバイスは弱化ラインに沿って破断され、そしてシーリング材51で結晶化流路セクション59を、図示しない分岐流路セクションと連通しないように密閉している。
【0175】
図6aは、本発明のマイクロ流体デバイスの上側部分の写真を示している。図6bは写真6aの拡大部分である。上面部分は、標的分子溶液流入口64と、そして互いに、液体流路を構成するために設けられる溝67,68,69によって接続される4つの沈殿剤流入口66と、を含む。溝67,68,69は、これらの溝がそれぞれ、分岐流路セクション67、流動遮断流路セクション68、及び結晶化流路セクション69を構成するように設けられる。図から分かるように、分岐流路セクション用の溝67は、流動遮断流路セクション用の溝68よりも大きく、溝68も同じように、結晶化流路セクション用の溝69よりも大きい。このような構成は、結晶化流路セクションの数が相対的に少ない場合に特に望ましい、というのは、正確に少なく、かつ十分な量の標的分子溶液を、標的分子溶液流入口に流し込むことが困難であるからである。この構成によって、標的分子溶液は毛細管力に起因して、結晶化流路セクションに案内され、そして余剰量の標的分子溶液にとっては、十分大きなスペースが分岐流路セクションに確保されることになる。デバイスはまた、追加の余分のポケット63を備え、これらのポケットは、更に多くの量の標的分子溶液を回収するために使用することができる。
【0176】
図6a及び6bに示すマイクロ流体デバイスの上側部分は、図示しない下側部分、例えば簡易フィルムまたはプレートに固定されて、液体流路を構成することにより、マイクロ流体デバイス全体を構成することができる。
【0177】
図7a,bはそれぞれ、本発明のマイクロ流体デバイスの第1部分、及びマイクロ流体デバイスの完成部分である。
図7a,bのマイクロ流体デバイスは、マイクロ流体デバイスの第1部分71aを備え、この第1部分71aは、図示しない第1面、及び溝77,78,79を持つ反対側の溝面と、を有し、これらの溝77,78,79は、分岐流路セクション77、流動遮断流路セクション78、及び結晶化流路セクション79を構成する。溝面には更に、それぞれの結晶化流路セクション79の間の空洞73が設けられる。マイクロ流体デバイスは更に、蓋部分71bを備え、蓋部分71bは少なくとも部分的に取り外し可能な複数の蓋71cを含む。第1部分71aは更に、液体流路と連通する標的分子溶液流入口74を構成する貫通開口部と、そして液体流路と連通する沈殿剤入口76を構成する多数の貫通開口部と、を含む。蓋部分71bは第1部分71aの溝面に固定されて、該当する流入口74,76,及び該当する流路セクション77,78,79を構成する。
【0178】
取り外し可能な蓋71cは、溝79の上に取り付けられ、かつ溝79に沿って密閉されて、液体流路の結晶化流路セクション79を構成する。
取り外し可能な蓋71cは、第1部分71aを超えて延び出すことにより、該当する蓋71cを個々に取り外すためのフランジ71dを構成する。
【0179】
取り外し可能なこれらの蓋71cは互いに、ライン71eに沿って剥離可能に接続される。
図8は、本発明のマイクロ流体デバイスの模式図であり、流路セクション群、及びこれらの流路セクションの互いに対する関係を示している。マイクロ流体デバイスは、標的分子溶液流入口84と、そして更には、余剰量の標的分子溶液のための空気/ガス用開口部/標的分子溶液流出口84aと、を備える。基本的に、空気/ガス用開口部/標的分子溶液流出口84aは、標的分子溶液が流路セクション(群)に充填されているときの流路内の空気/ガスを逃がすことができる一つ以上の空気/ガス排出口に置き換えることができる。
【0180】
マイクロ流体デバイスは更に12個の沈殿剤流入口86を備え、これらの沈殿剤流入口は分子溶液流入口84と分岐流路セクション87、流動遮断流路セクション88、及び12個の結晶化流路セクション89を介して液体連通する。図から分かるように、流動遮断流路セクション88はまた、一つの流動遮断流路セクションを部分的に構成するが、この例では説明を分かり易くするために、流動遮断流路セクション88は単に、「流動遮断流路セクション(flow break channel section)」と表記される。空気/ガス用開口部/標的分子溶液流出口84aは流動遮断流路セクション88と接続流路セクション87aを介して液体連通する。流動遮断流路セクション88を結晶化流路セクション89に対して変位させて、結晶化流路セクション89に流入した標的分子溶液が流動遮断流路セクション88に逆流しないようにすることができるが、結晶化流路セクション89は、接続流路セクション87aよりも大きい毛細管吸引力で標的分子溶液を吸引して、標的分子溶液が主として結晶化流路セクション89に、これらの結晶化流路セクションに溶液が充填されるまで流入し、その後、余った量の標的分子溶液が接続流路セクション87aに流入するようにする必要がある。別の構成として、または変位と組み合わせて、流動遮断流路セクション88は結晶化流路よりも小さい毛細管力を持つように構成することができる。
【0181】
マイクロ流体デバイスは更に排出開口部81を備え、排出開口部81は、標的分子溶液を流し込んでいる間は、例えば栓または排出栓によって閉じ、そして結晶化流路に溶液が充填された後に開くことにより、余剰量の標的分子溶液を排出すると同時に、流動遮断流路88における流動遮断を可能にする動作に関与する。
【0182】
使用状態では、標的分子溶液を標的分子溶液流入口84に流し込み、そして沈殿剤(群)を沈殿剤流入口84aに流し込む。標的分子溶液は分岐流路セクション87に流入し、更に流動遮断流路セクション88に流入し、そして12個の結晶化流路セクション89に流入する。これらの結晶化流路セクション89に溶液が充填されてしまうと、余剰量の標的分子溶液は接続流路セクション87aに流入し、そして任意であるが、更に空気/ガス用開口部/標的分子溶液流出口84aに流入する。標的分子溶液がわずかでも流動遮断流路セクション88に残留しているとすると、この残留溶液は排出開口部81を介して排出する必要がある。
【0183】
図9は、本発明の第2の態様のマイクロ流体デバイスを示している。マイクロ流体デバイスは、マイクロ流体デバイスの第1部分91aを備え、第1部分91aには、図示しない第1面及び反対側の溝面が設けられ、更にそれぞれ標的分子溶液流入口94及び沈殿剤流入口94を構成するペア構成の貫通開口部が設けられる。ペア構成の流入口94は、結晶化流路セクション99によって接続され、これらの結晶化流路セクション99は、第1部分91aの内、蓋部分91bによって覆われる溝面の溝によって構成される。蓋部分91bは、少なくとも部分的に取り外し可能な複数の蓋91cを含む。蓋部分91bは第1部分91aの溝面に固定されて、該当する流入口94、及び該当する結晶化流路セクション99を構成する。
【0184】
取り外し可能な蓋91cは、溝99の上に取り付けられ、かつ溝99に沿って密閉され
て、液体流路の結晶化流路セクション99を構成する。取り外し可能な蓋91cは、第1部分91aを超えて延び出すことにより、該当する蓋91cを個々に取り外すためのフランジ91dを構成する。
【0185】
取り外し可能なこれらの蓋91cは互いに、ライン91eに沿って剥離可能に接続される。
図10は、本発明の別のマイクロ流体デバイスの上面図である。このマイクロ流体デバイスは、標的分子溶液流入口104と、分岐流路セクション107、図示しない流動遮断流路セクション、及び結晶化流路セクション109を含む液体流路と、を備える。各結晶化流路セクション109に対応するように、デバイスは沈殿剤流入口106を備える。図示しない流動遮断流路セクションは、溝109の内、溝107に隣接する部分によって少なくとも部分的に構成することができることが好ましい、例えばこれらの部分に、相対的に小さい毛細管力を持たせることにより、またはここに開示する他の手段によって構成することができることが好ましい。
【0186】
マイクロ流体デバイスは更に、例えば上に説明した構成とすることができる取り外し可能な蓋101cを備える。取り外し可能なこれらの蓋101cはそれぞれ、下地表面に接合しないフランジ101dを含むことができ、そして該当する蓋101cは、該当する前記フランジ101dを剥がすことにより取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1a】本発明によるマイクロ流体デバイスの模式図。
【図1b】流動遮断流路セクションの例を示す模式図。
【図1c】流動遮断流路セクションの例を示す模式図。
【図2a】流動遮断流路セクションを弱化ラインの形態で分岐流路セクションと結晶化流路セクションとの間に備える本発明のマイクロ流体デバイスの上面図。
【図2b】切断線A−A’に沿って切断したときの図aに示すマイクロ流体デバイスの側部断面図。
【図3a】流動遮断流路セクションを弱化ラインの形態で分岐流路セクションと結晶化流路セクションとの間に備え、そして更に別の流動遮断流路セクションを弱化ラインの形態で沈殿剤流入口に備える本発明のマイクロ流体デバイスの上面図。
【図3b】切断線A−A’に沿って切断したときの図aに示すマイクロ流体デバイスの側部断面図。
【図4a】使用中の種々の状態の本発明の別のマイクロ流体デバイスの側部断面図。
【図4b】使用中の種々の状態の本発明の別のマイクロ流体デバイスの側部断面図。
【図4c】使用中の種々の状態の本発明の別のマイクロ流体デバイスの側部断面図。
【図4d】使用中の種々の状態の本発明の別のマイクロ流体デバイスの側部断面図。
【図5a】使用中の種々の状態の本発明の別のマイクロ流体デバイスの或るセクションの側部断面図。
【図5b】使用中の種々の状態の本発明の別のマイクロ流体デバイスの或るセクションの側部断面図。
【図6a】本発明のマイクロ流体デバイスの上側部分を示す上面図。
【図6b】本発明のマイクロ流体デバイスの上側部分を示す上面図。
【図7a】本発明のマイクロ流体デバイスの第1部分、及びマイクロ流体デバイスの完成部分をそれぞれ示す上面図。
【図7b】本発明のマイクロ流体デバイスの第1部分、及びマイクロ流体デバイスの完成部分をそれぞれ示す上面図。
【図8】本発明のマイクロ流体デバイスの模式図。
【図9】本発明の第2の態様のマイクロ流体デバイスを示している斜視図。
【図10】本発明の別のマイクロ流体デバイスの上面図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的分子の結晶成長、特にタンパク質、核酸、及び/又は炭水化物のような高分子の成長を促進するマイクロ流体デバイスに関する。本発明はまた、前記デバイスを使用して結晶化を促進する方法に関する。本発明はまた、結晶化した高分子を簡単に取り出すマイクロ流体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
高分子のような分子の結晶化は生化学分野における重要な技術である。核酸、タンパク質、及び炭水化物のような生化学分子は予測不能な結晶構造を有し、そして多くの場合、結晶化した分子の3次元構造は、これらの分子の生物学的機能に関して重要な役割を果たす。タンパク質が機能する仕組みについての詳細情報を取得するためには、タンパク質の3次元構造を求めることが重要となるが、これは、3次元構造及び機能が非常に密接に結び付いているからである。生物学的プロセスを操作する必要がある場合、治療研究で観察される3次元構造が特に有用である。今日、市場における薬剤の90%超が、タンパク質と相互作用する小さいリガンドである。この相互作用を理解し、そして相互作用を新規の改良薬剤に利用するために、リガンド−タンパク質の複合体の3次元構造を求める必要がある。
【0003】
分子、例えばタンパク質のような高分子の結晶化は、標的化合物の溶液を調製し、そして溶解標的化合物の化学形態を変化させて、標的物質が溶解し難くなり、そして当該物質の結晶構造の固体状態に戻るようにすることにより行なわれる。化学形態のこの変化は通常、標的化合物が溶解し難くなるようにする沈殿剤を導入することにより生じさせる。
【0004】
特許文献1(米国特許第6,409,832号)には、タンパク質結晶成長を液体−液体拡散法を利用して促進するマイクロ流体デバイスが記載されている。このデバイスは、一つ以上の混合結晶化チャンバを備え、各チャンバは、タンパク質溶液用の流入口と、そして結晶化剤(沈殿剤)用の反対側の流入口と、を含む。タンパク質溶液は、タンパク質流入口を介して特定容積の充填チャンバに導入され、そして当該チャンバから、当該溶液が混合チャンバに流入する。結晶化剤を、結晶化剤流入口を介して混合チャンバに充填し、そして液体を、液体−液体拡散法を利用して混合する。
【0005】
特許文献2(米国特許出願公開第2003/61687号)には、標的材料の結晶化の高効率スクリーニングに使用される種々のマイクロ流体システムが開示されている。結晶化は、標的材料溶液をマイクロ加工流体デバイスの複数のチャンバに導入することにより行なわれる。次に、マイクロ加工流体デバイスを操作してチャンバ内の溶液状態を変化させることにより、非常に多くの結晶化形態を同時に提供する。マイクロ流体システムは、微細加工マイクロチャンバ(microfabricated chambers)を収容するエラストマーブロックを備える。
【0006】
標的材料を結晶化させるシステムは、多量の標的材料溶液を収容するように構成される微細加工マイクロチャンバを収容するエラストマーブロックと、そしてチャンバと流体連通する微細加工マイクロ流路と、を備え、この流体流路で多量の結晶化剤をチャンバに導入する。この構造を操作してチャンバ内の溶液状態を、エラストマー材料を変形させることにより変化させて、流体流を阻止する、または流体を流すために流路を開ける、或いは流体の量を計測する。
【0007】
結晶化システムは更に分離構造を備え、分離構造は、チャンバを流体流路から、流体流
路に多量の結晶化剤を流し込むときにエラストマー壁を変形させることにより選択的に分離し、次にチャンバを流体流路に接触するように配置してチャンバ内の溶液状態を変化させるように構成される。別の構成として、結晶化システムは更に、チャンバの上に設けられ、かつチャンバから膜によって分離される制御流路を備え、膜はチャンバに向かって変形することができるので、校正された量のサンプル溶液をチャンバから排出して、膜を緩めることによって、校正された量の結晶化剤がチャンバに引き込まれるようにする。更に別の構成として、結晶化システムは、標的材料と流体連通する複数の平行な第1流体流路と、そして平行な第1流体流路と直交し、かつ交差することにより複数の接合部を形成する複数の平行な第2流体流路と、を備え、第2流体流路が結晶化剤と流体連通することによって、アレイ状の溶液形態を接合部に形成することができる。
【0008】
特許文献3(国際公開番号 WO 2004/067174)には、マイクロ化学(原子レベルで界面化学を利用する)を利用する装置が開示されている。この装置は、供給導管を有する蒸気浸透性マイクロ流体チップ流路を備える。チップ構造は、第1及び第2対向端部と、そしてチップ構造内のバルブ機構と、を有し、これらの端部によって、第1及び第2流体材料を、第1及び第2流体材料を互いに向かって供給導管の反対側端部から流し込むことにより相互作用させることができ、バルブ機構は、供給導管を、供給導管の第1端部と第2端部との間に位置する中間位置で開き、そして閉じるように動作することができるので、チップ構造は充填状態と相互作用状態との間を連続的に移動することができ、充填状態では、中間位置を閉じることにより、流体材料を中間位置の両側の供給導管に自動的に充填することができ、相互作用状態では、中間位置を開くことにより流体材料を相互作用させることができる。装置は更に、蒸気形態をチップ構造の周りに形成して、相互作用状態のチップ構造の供給導管から蒸発する流体材料を補充する気化器を備える。
【0009】
特許文献4(米国特許出願公開第2005/0205005号)には、タンパク質結晶化の高効率スクリーニングに使用されるマイクロ流体構造が開示されている。マイクロ流体構造は、試薬の正確な計測を可能にして、非常に多くの潜在的な結晶化を迅速に行なう混合チップを備える。マイクロ流体構造は、流体流路を幾つかの層に持つことによりバルブ構造を提供するマイクロ加工エラストマー材料により作製される。
【特許文献1】米国特許第6,409,832号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/61687号明細書
【特許文献3】国際出願公開第WO2004/067174号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0205005号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、標的分子の結晶化を促進するデバイスを提供することにあり、このデバイスは、作製するのが簡単であり、かつ作製するためのコストが低く、更に動作が簡単である。
【0011】
本発明の目的はまた、デバイスを動作させる簡単な方法を提供することにある。
これらの目的は、請求項に規定されるように、本発明によって達成されている。更に、以下に説明するように、本発明、及び本発明の実施形態は、先行技術による結晶化デバイス及び方法と比べると、更に大きな利点をもたらす特性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0012】
標的分子の結晶化を促進する本発明のデバイスはこのようにして、先行技術によるデバイスと比べて非常に経済的であることを示している。この主たる理由は、本発明のデバイスが安価に作製され、そして同時に非常に簡単であり、かつ高速に動作し、更に使用上の信頼性が高いからである。
【0013】
「標的分子の結晶化を促進する」という表現は、第1結晶(結晶性細菌)を形成するだけでなく、結晶の成長を更に進行させることを意味する。或るテストでは、微小結晶を解析することが望ましく、他のテストでは、結晶成長を、大きな結晶が形成されるまで進行させることができることが望ましい。
【0014】
本発明のマイクロ流体デバイスは、上面及び反対側の底面を有し、かつ少なくとも一つの液体流路を有する固体構造を備える。上面及び底面は、例えば簡単にハンドリングするために、例えば手作業で、またはロボットによりハンドリングするためにほぼ平坦とし、そして任意であるが、平行とすることができる。液体流路は、標的分子溶液流入口と、そして少なくとも2つの沈殿剤流入口と、を含み、標的分子溶液流入口は、これらの沈殿剤流入口の各沈殿剤流入口と液体流路を介して液体連通する。標的分子流入口を開くことにより、または少なくとも外部から操作することにより、標的分子溶液を液体流路に、例えば膜を介して針を使用して、または例えば、以下の好適な実施形態に記載される上面の固体構造を貫通する開口部を介して充填する。
【0015】
液体流路は、前記標的分子溶液流入口に隣接する分岐流路セクションと、該当する前記沈殿剤流入口に隣接する結晶化流路セクションと、そして前記分岐流路セクションと前記結晶化流路セクション群の各結晶化流路セクションとの間に配置される流動遮断流路セクションと、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは更に、以下に詳細に説明するように、結晶化流路セクションと沈殿剤流入口との間に配置される流動遮断流路セクションを備える。
分岐流路セクションでは、液体流路は1〜X個に分岐し、Xは結晶化流路セクションの数である。Xは基本的に、いずれの整数とすることもできる。一の実施形態では、Xは、2〜400、4〜100、8〜48、8〜24のように、2〜1000である。
【0017】
流動遮断流路セクションは、該当する前記分岐流路セクションと結晶化流路セクションとの間の液体連通を遮断する機能を有する流動遮断機構を含む。
従ってこのデバイスによって、単に標的分子溶液を一つの標的分子溶液流入口に流し込みながら複数の結晶化テストを行なうことが可能になる。標的分子溶液は複数の結晶化流路セクションに流入することになり、これらの結晶化流路セクションでは、標的分子溶液を沈殿剤流入口からの沈殿剤と接触させることができる。同時に、種々の結晶化流路セクションの間のどのような流体連通も、分岐流路セクションと結晶化流路セクションとの間に配置される分岐流路セクションで遮断することができる。従って、ハンドリングが簡単であり、かつ複数の結晶化テストを同時に行なうことができる非常に簡単なデバイスが実現している。
【0018】
基本的に、流動遮断機構は、種々の結晶化流路セクションの間の流体連通を効果的に遮断することができる構造であればどのような構造によっても構成することができる。実際、効果的な流動遮断機構は、該当する流動遮断流路セクションにおける変位差の形態、またはa)分岐流路セクション、及びb)該当する前記流動遮断流路セクションに隣接する結晶化流路セクションの内の少なくとも一つから選択される前記流動遮断流路セクションを構成する固体構造における変位差の形態とすることができることが分かっている。
【0019】
好ましくは、流動遮断機構は、a)毛細管現象流動遮断部分、b)流路変位部分、及びc)弱化ライン流動遮断部分の内の少なくとも一つの部分の形態であり、a)毛細管現象流動遮断部分では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションが、隣接する前記結晶化流路セクションによって液体に作用する毛細管力よりも小さい毛細管力が前記流路の液体に
作用するように構成され、b)流路変位部分では、流動遮断流路の内の少なくとも一部分が、分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションに対して垂直方向に変位し、そしてc)弱化ライン流動遮断部分では、前記固体構造に、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの液体流路を横切る弱化ラインが設けられる。
【0020】
流路セクションの垂直方向変位は、デバイスの上面を基準にして観察する場合に、相対的に高い位置または相対的に低い位置への変位を意味する。
実際、標的分子溶液の特性は、最適なデバイスを設計する際に、特に上述のa)またはb)に従って動作する流動遮断流路セクションを備える実施形態に関して重要となる。これは、標的分子溶液の特性、特に表面張力が、溶液が毛細管吸引力の作用を受けるかどうかを決定するからである。マイクロ流体デバイスを設計する際、水を標的分子溶液の代わりに使用することができるが、或る用途では、マイクロ流体デバイスは、特定の標的分子溶液を使用する場合に関して更に最適化することもできる。以下に説明することであるが、標的分子溶液は、水溶液とする、例えば界面活性剤を含む水溶液とすることが好ましく、界面活性剤を含めることによって、当該水溶液の表面張力を水の表面張力とは異なるようにする。しかしながら、この技術分野の当業者であれば、設計パラメータを、当業者の通常の技量を行使することにより制御することができると思われる。
【0021】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションは、隣接する前記結晶化流路セクションによって液体に作用する毛細管力よりも小さい毛細管力が前記流路の液体に作用するように構成され、前記流動遮断流路セクションには、毛細管現象流動停止部分が設けられ、この流動停止部分は、当該セクションの幾何学的形状及び/又は当該部分の表面張力によって構成される。
【0022】
液体がマイクロ流体流路を、好ましくは毛細管力の作用を受けながら所定速度で流れているとき、相対的に小さい毛細管力が作用する、または毛細管力が作用しないセクションにおける流れは、液体が完全に減速されてしまうまで継続する。デバイスでは、この現象をこの実施形態において利用する。流路の種々のセクションは、標的分子溶液が分岐流路セクションを流れているときに、標的分子溶液が流動遮断流路セクションに、この流動遮断流路セクションが、隣接する結晶化流路セクションによって液体に作用する毛細管力よりも小さい毛細管力が液体に作用するように構成される場合でも流入し続けるように構成される。流れは、標的分子溶液が結晶化流路セクションに流入するまで継続し、この場合、標的分子溶液は毛細管力を受けるので、結晶化流路セクションに充填される。流れが、結晶化流路セクションが溶液で充填されることにより停止してしまうと、標的分子溶液は流動遮断流路セクションに逆流することはない、というのは、流動遮断流路セクションは、隣接する結晶化流路セクションによって液体に作用する、好ましくは分岐流路セクションによっても液体に作用する毛細管力よりも小さい毛細管力が標的分子溶液に作用するように構成されるからである。最終的に、流動遮断流路セクションから溶液が排出され、そして該当する結晶化流路セクション群の間の液体連通が遮断される。
【0023】
流動遮断流路セクションは、隣接する結晶化流路セクション/分岐流路セクションによって液体に作用する毛細管力よりも小さい毛細管力が液体に作用するように、いずれの機構によっても構成することができる。マイクロ流体デバイスの分野では、所望の毛細管特性を調整する複数の方法が知られており、そして当業者であれば、いずれの適切な機構も利用することができる。
【0024】
液体流路が壁表面を含み、壁表面が、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延びる構成の一の実施形態では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの壁表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも一部分において、隣接する結晶化流路セクションにおける隣接する壁表面の表面張力よりも小さい表面張力を有することにより、流動遮
断機構を構成する。この実施形態では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくともほぼ全てのように、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも主要部分において、隣接する結晶化流路セクションにおける隣接する壁表面の表面張力よりも小さい表面張力を有することにより、流動遮断機構を構成する。
【0025】
一の実施形態では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの壁表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも一部分において、隣接する結晶化流路セクション、及び隣接する分岐流路セクションの内の少なくとも一つのセクションにおける隣接する壁表面の表面張力よりも、少なくとも5ダイン(dynes)/cm、少なくとも10ダイン/cm、少なくとも20ダイン/cmのような大きさだけ大幅に小さい(接触角度測定を使用して測定される)表面張力を有し、好ましくは、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの壁表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも一部分において、60ダイン/cm未満、10〜55ダイン/cmの範囲のように、73ダイン/cm未満の表面張力を有する。
【0026】
表面張力は、例えば接触角度を使用して測定することができる。表面が73ダイン/cm未満の表面張力を有する場合、水/サンプルとの接触角度は、20℃の空気中で測定すると少なくとも90度である。全ての測定は、特に断らない限り、空気中で、かつ20℃で行なわれる。
【0027】
表面エネルギー及び表面張力は、表面の同じ特性を示唆する2つの項目であり、そして一般的に、これらの項目は同じ意味に使用される。表面の表面エネルギーは、SVT20のような張力計、DataPhysics Instruments GmbHが提供するスピン滴下法ビデオテープ張力計(Spinning drop video tensiometer)のような張力計を使用して測定することができる。本出願では、「表面張力」という用語は、巨視的表面エネルギーを指す、すなわち表面張力は、例えば当業者には公知のことであるが、水滴との接触角度によって測定することができる、表面と水との親和性に直接比例する。測定値を比較するに当たって、例えば2つの表面部分の内のいずれの表面部分が最大の表面エネルギーを有するかについて測定する場合、正確な表面エネルギーを求める必要はなく、単に、2つの表面の内のいずれの表面の方が、水との接触角度が小さいかについて比較するだけで十分である。
【0028】
一の実施形態では、流動遮断セクションを含む流体流路は非弾性材料から成る。従って、流路の形状及びサイズは高い信頼性で維持される。更に、エラストマーバルブ構造を回避することが好ましい、というのは、このようなエラストマーバルブ構造は普通、ハンドリングが難しく、かつ信頼性が高くないからである。更に、結晶化流路に隣接する液体流路を圧縮することによりエラストマーバルブを閉じる動作によって、沈殿剤が標的分子溶液に拡散する動きが阻害されるので、高分子の結晶化が阻害されることが判明している。従って、流動遮断流路セクションがほとんど圧縮することがない、すなわち流動遮断流路セクションを弾性圧縮することができない、好ましくは流動遮断流路セクションを弾性圧縮して流路を閉じるということができないことが望ましい。
【0029】
特定の液体の毛細管現象流動を流体流路において起こすために、流体流路壁の表面の少なくとも或る部分は、液体を順方向に送ることができる表面エネルギーを持つ必要がある。しかしながら、本発明の技術範囲を制限するように解釈されてはならない公知の理論によれば、毛細管現象流動は、流体流路壁の表面の少なくとも或る部分が、注目する液体との90°未満の接触角度を持つ場合にのみ起こり得る。基本的に、角度が小さくなると、流動が速くなる。この点に関して、周囲空気も、ヤングの方程式に従った液体と流体流路壁との間の接触角度に影響し、ヤングの方程式は、接触角度、液滴の液体−蒸気表面張力
、及び液体と接触する固体の表面張力を結び付ける。
【0030】
接触角度測定は、複数の固体の同じ程度の大きさの表面張力を測定する客観的、かつ簡単な方法として使用される。ヤングの方程式は、固体の表面張力が接触角度に直接比例することを示している。この方程式は以下の通りである:
g(sv)=g(lv)(cosq)+g(sl),
上の式では、g(sv)は固体−蒸気界面の張力であり、g(lv)は液体−蒸気界面の界面張力であり、g(sl)は固体と液体との間の界面張力であり、そして(q)は接触角度である。
【0031】
流路は基本的に、楕円形、半楕円形、四辺多角形、正方形、矩形、及び台形のように、いずれの断面形状を有することもできる。断面形状は変えることができる、または流路の長さに沿って一定不変とすることができる。一つの流路セクションは、例えば第1断面形状を持ち、そして同じ液体流路の別の断面は別の断面形状を持つことができる。
【0032】
前記液体流路が少なくとも、当該流路の流動遮断流路セクションにおいて、四辺多角形断面形状を有することにより、下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成するマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、好ましくは、少なくとも側部表面と、そして下部表面及び上部表面の内の一方の表面とは、60ダイン/cm未満、10〜55ダイン/cmの範囲のように、73ダイン/cm未満の表面張力を有する(水/サンプルとの接触角度が少なくとも90度)。
【0033】
前記液体流路が壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延びるマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションの前記壁表面は、当該セクションの外周の少なくとも一部分において、少なくとも73ダイン/cm、少なくとも75ダイン/cm、少なくとも80ダイン/cmのように、少なくとも60ダイン/cmの表面張力を有する。一の実施形態では、分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションの壁表面は、当該セクションの外周の少なくとも一部分において、水との、好ましくは標的分子溶液との90度未満の接触角度を有する。
【0034】
液体流路が壁表面を含み、壁表面が、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延びるマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションの液体流路は、四辺多角形断面形状を有することにより下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成し、好ましくは、少なくとも下部表面及び側部表面は、少なくとも73ダイン/cm、少なくとも75ダイン/cm、少なくとも80ダイン/cmのように、少なくとも60ダイン/cmの表面張力を有する、または例えば、水/標的分子溶液との90度未満の接触角度を有する。
【0035】
流動遮断流路セクションに、毛細管現象流動停止部分が設けられ、この流動停止部分が当該セクションの幾何学的形状によって少なくとも部分的に構成されるマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、流動遮断流路セクションに沿った流路の最小断面寸法は、隣接する分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションに沿った流路の最小断面寸法よりも大きい。
【0036】
流動遮断流路セクションに、毛細管現象流動停止部分が設けられ、この流動停止部分が当該セクションの幾何学的形状によって少なくとも部分的に構成されるマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、流動遮断流路セクションは、隣接する分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションの断面積よりも大きい断面積を有する。
【0037】
幾何学的に構成される流動停止部分は、結晶化流路セクションに液体が、上述のように液体が流速を持つことによって充填されるときに流れが停止することがないように構成する必要がある。しかしながら、結晶化流路セクションに液体が充填されると、液体が流動遮断流路セクションに逆流する現象は、流動停止部分が幾何学的に構成されているので防止される。当業者であれば、流動停止部分を、例えば流体流路セクション群の間のエッジの角度に適切な値を選択することにより設けることができる。
【0038】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、液体流路は、隣接する分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の一方のセクションまたは両方のセクションの直ぐ傍に隣接する流動遮断流路セクションにおける少なくとも一つの断面寸法の急激な変化を含む。
【0039】
当業者には公知のことであるが、このような鋭いエッジは、このエッジを通過する液体の流れを遅らせることができる、または停止させることもできる毛細管現象阻止部分(capillary barrier)となることができる。
【0040】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションは、隣接する結晶化流路セクションの断面積よりも大きい断面積を有する。液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延びる。この実施形態では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの相対的に大きな断面積の領域は、壁表面を、結晶化流路セクションの直ぐ傍に隣接する流動遮断流路セクションの流路の外周の主要部分に少なくとも沿って階段状に変位させることにより形成される。
【0041】
液体流路が、四辺多角形断面形状を有することにより下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成するマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの相対的に大きな前記断面積のこの領域は、流動遮断流路セクションの少なくとも下部表面及び側部表面を、隣接する結晶化流路セクションに対して階段状に変位させることにより形成される。
【0042】
隣接する流動遮断流路セクション及び結晶化流路セクションの流路の外周の主要部分に少なくとも沿うことが好ましいこの階段状の変位は、階段状に変化する変位部分として形成されることが好ましい。
【0043】
一の実施形態では、結晶化流路セクションの直ぐ傍に隣接する流動遮断流路セクションの流路の外周の主要部分に少なくとも沿うことが好ましい壁表面の階段状の前記変位によって、100度以下、90度以下、80度以下のように、120度以下の角度を有するエッジが形成される。
【0044】
エッジの角度は、固体構造を通って、結晶化流路のエッジ表面から、階段状の変位部分を形成する段のエッジ表面に達する最小角度として測定される。
流動遮断流路セクションの流路の外周の主要部分に少なくとも沿うことが好ましい壁表面の階段状のこのような変位により形成される少なくとも一つの流動遮断流路セクションの相対的に大きな断面積は、隣接する結晶化流路セクションの断面積よりも大きい、いずれのサイズを持つこともできる。少なくとも一つの流動遮断流路セクションの断面積は、隣接する結晶化流路セクションの断面積よりも、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%のように、少なくとも10%だけ大きいサイズを有することが好ましい。
【0045】
少なくとも一つの流動遮断流路セクションの断面積が、隣接する結晶化流路セクション
の断面積よりも500%以上だけ大きいように、ずっと大きい実施形態では、テストを行なうために必要な標的分子溶液の量は、結晶化流路セクションを効果的に充填してしまうために相対的に大きい値となる。
【0046】
少なくとも一つの流動遮断流路セクションの断面積がほんの少しだけ大きい実施形態では、標的分子溶液が結晶化流路セクションから逆流する危険が大きくなる可能性がある。当業者であれば、流路セクション群のサイズ比を、特定のテストタイプに関して好適な値に選択することができる。実際、最適な流路サイズ比は特に、標的分子の種類及び可用性、及び標的分子溶液の表面張力を含む特性によって変わる。
【0047】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、液体流路は、流路を変位させることにより形成される少なくとも一つの流動遮断流路セクションを含む。好ましくは、流動遮断流路セクションは、隣接する結晶化流路セクションよりも高い位置に変位させ、そして更に好ましくは、少なくとも一つの流動遮断流路セクションはまた、分岐流路セクションよりも高い位置に変位させる。相対的に高い位置は、デバイスの上面を基準として観察される。この実施形態では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションを結晶化流路セクションに対して、或る高さだけ変位させることにより、デバイスを水平面に保持しているときに、液体(水または標的分子サンプルのような)が結晶化セクションから分岐セクションに逆流する現象を防止することが望ましい。
【0048】
この実施形態では、流動遮断流路セクションはまた、当該流路セクションを変位させる他に、隣接する結晶化流路セクションよりも大きい断面積を有する、そして/または幾何学的に形成される、そして/または相対的に小さい毛細管力が水及び/又は標的分子溶液に作用する表面特性を持つように形成されることが望ましい。
【0049】
液体流路が、流路を変位させることにより形成される、そして/または流動遮断流路を、結晶化流路よりも小さい毛細管力を持つように構成することにより形成される少なくとも一つの流動遮断流路セクションを含むマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、マイクロ流体デバイスには排出開口部が配設され、排出開口部は、標的分子溶液が流し込まれている間に、例えば栓または排出栓によって閉じ、そして結晶化流路に溶液が充填された後に開くことにより、余剰量の標的分子溶液を排出すると同時に、流動遮断流路における流動遮断を可能にする、または流動遮断に関与する。
【0050】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、固体構造に、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの液体流路を横切る弱化ラインが設けられる。弱化ラインは好ましくは、デバイスのほぼ全体を横切り、例えば上面及び/又は底面のほぼ全てを横切る。弱化ラインは、流動遮断流路セクション群の全ての流動遮断流路セクションのように、2つ以上の流動遮断流路セクションを同時に横切る。
【0051】
弱化ラインは、固体構造において当該ラインを取り囲む構成要素よりも強度が低いラインであるので、曲げ力がデバイスに加わると、デバイスは前記弱化ラインに沿って破断する。デバイスが弱化ラインに沿って破断する場合、デバイスは、前記弱化ラインが横切る流動遮断流路セクションにおいても破断するので、液体流路に急峻な開口部がマイクロ流体デバイスの側部に沿って形成される。液体流路のサイズが小さいので、このような液体流路の内部の液体が流れ出すことがなく、流路内に毛細管力によって残留する。液体の蒸発を回避するために、流路の開口部は、例えば以下に説明するようなシーリング材で密閉することができる。
【0052】
スリットは基本的に、いずれの形態とすることもできる。スリットは、例えば長さ方向に途切れない連続スリットとすることができる、または点在させることができる。一の実
施形態では、弱化ラインは、デバイス全体を、上面及び底面の内の少なくとも一つの面で横切るスリットの形態であり、スリットは、V字形またはU字形の内の一方の形状に形成されることが好ましく、V字形/U字形は一の実施形態では、垂直軸に対して対称となるようにすることができ、そして別の実施形態では、垂直軸に対して対称となるようにしなくてもよい。
【0053】
スリットは、所望の弱化構造を構成することができるように十分に深くして、デバイスが曲げ力を受けるときに、前記スリットに沿って破断するようにする必要がある。一の実施形態では、スリットは、スリットに隣接するマイクロ流体デバイスの厚さの少なくとも15%、30〜90%の範囲、35〜80%の範囲のように、マイクロ流体デバイスの厚さの少なくとも10%の深さを有し、マイクロ流体デバイスの厚さは上面と、当該上面の反対側の底面との間の距離として定義される。
【0054】
標的分子溶液は標的分子溶液流入口に、例えば標的分子溶液流入口を、例えば2次デバイス、例えばウェルまたはテストチューブに、またはウェルまたはテストチューブの中に収容されるサンプルと、或いはピペットのような器具から吐出されるサンプルと接触させることにより直接流し込むことができる。一の実施形態では、本発明のマイクロ流体デバイスは、標的分子溶液を標的分子溶液流入口に供給する標的分子溶液流入口空洞を備える。標的分子溶液流入口空洞は、例えば固体構造の上面における凹部として形成することができ、この凹部は、標的分子溶液流入口に直接達する。
【0055】
一の実施形態では、標的分子溶液流入口空洞は、前記上面における空洞の形態であり、前記空洞は前記分岐流路セクションと前記標的分子溶液流入口を介して液体連通し、前記標的分子溶液流入口空洞は、上面から標的分子溶液流入口に達する円錐形を有する。
【0056】
標的分子溶液流入口空洞は、いずれの所望の容積を有することもできる。一の実施形態では、標的分子溶液流入口空洞は、結晶化流路セクション群の容積の少なくとも2倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.1倍のように、例えば0.05〜20μl、0.1〜10μl、0.2〜5μl、0.5〜3μlのように、結晶化流路セクション群の合計容積と少なくとも等しい容積を有する。
【0057】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、2つ以上の沈殿剤流入口の各沈殿剤流入口は沈殿剤空洞と液体連通するように構成される。デバイスは好ましくは、各沈殿剤流入口に対応する少なくとも一つの沈殿剤空洞を備えるが、一の実施形態では、2つ以上の沈殿剤流入口が同じ沈殿剤空洞と液体連通する。
【0058】
一の実施形態では、沈殿剤空洞は、沈殿剤空洞から沈殿剤流入口に達する開口部を除いて、デバイス内に封止される。この構造は半閉鎖空洞(semi−closed cavity)と表記される。この実施形態では、沈殿剤空洞に面する開口部のみが沈殿剤流入口を通過することが望ましい。別の構成として、沈殿剤は、沈殿剤空洞の壁領域の膜を介して供給することができる、または沈殿剤空洞には、固体構造の構成要素群を互いに対して固定する前に、沈殿剤を予め充填しておくことにより沈殿剤空洞を構成することができる。沈殿剤は、例えば沈殿剤が予め充填されている沈殿剤空洞において乾燥状態にすることができる。
【0059】
半閉鎖沈殿剤空洞を備える実施形態では、デバイスは、標的分子溶液をデバイスに供給して、標的分子溶液が結晶化流路セクションに流入することができる場合に、空気を逃がすことができる構造を備えることが好ましい。このような構造は、例えば沈殿剤流入口の近傍に配置されることが好ましい該当する結晶化流路セクションに達するデバイス内の空気穴、または沈殿剤空洞内に配置される空気穴の形態とすることができる。これらの空気
穴は、閉塞要素、例えばガラスプレートのようなプレートを含むことができ、プレートを当てることにより空気穴を、必要な場合に、かつ必要なときに塞ぐことができる。
【0060】
沈殿剤空洞は、例えば固体構造の上面における凹部として形成することができ、この凹部は沈殿剤流入口に直接達する。
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、沈殿剤空洞は、前記上面における流入口空洞の形態であり、前記空洞は、前記結晶化流路セクションと前記沈殿剤流入口を介して液体連通し、前記沈殿剤流入口空洞は、上部表面から標的分子溶液流入口に達する円錐形を有することが好ましい。
【0061】
沈殿剤空洞群は一の実施形態では、互いからの距離が、0.5〜5mm、1〜3mm、1.5〜2.5mmのように、少なくとも0.1mmの最小距離とすることができる。
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、少なくとも一つの結晶化流路セクションは、沈殿剤流入口の中に、または沈殿剤流入口に隣接して配置される毛細管現象流動停止部分を有し、この流動停止部分は、階段状に形成され、そして好ましくは結晶化流路セクションから沈殿剤空洞に向かって急激に広がる部分によって形成されることが好ましい。好ましくは、結晶化流路セクション群の全てが、これらの結晶化流路セクションに隣接する沈殿剤流入口の中に、または沈殿剤流入口に隣接して配置される毛細管現象流動停止部分を有する。
【0062】
従って、結晶化流路セクション群は、標的分子溶液流入口からの標的分子溶液で、毛細管力を利用して充填することができ、沈殿剤空洞が同時に充填されることはない。標的分子溶液の液前面の動きは、形成された毛細管現象流動停止部分で停止する。沈殿剤でその後、沈殿剤空洞が充填される場合、標的分子溶液及び沈殿剤が接触して拡散し、そして結晶化テストを実施することができる。
【0063】
結晶化流路セクションから沈殿剤空洞に向かって階段状に広がる部分は、100度以下、90度以下、80度以下のように、120度以下の角度を有するエッジを形成することが好ましい。
【0064】
エッジの角度は、固体構造を通って、結晶化流路のエッジ表面から、階段状の変位部分を形成する段のエッジ表面に達する最小角度として測定される。
沈殿剤空洞はいずれの所望の容積を有することもでき、例えば容積は、0.02〜5μl、0.5〜2μl、0.7〜1.3μlのように、0.01〜10μlである。
【0065】
マイクロ流体デバイスは単一部分で作製することができるが、一般的には、このような単一部分構造のマイクロ流体デバイスは作製が難しい。好ましくは、マイクロ流体デバイスは、同じ材料または異なる材料から成る2つ以上の部分により作製され、これらの部分は互いに接続されている。これらの部分は互いに、例えば接着法、溶接法、及び/又は機械的締め付け手段によって接続することができる。
【0066】
接合は、例えばイオン結合による接合及び共有結合による接合から選択される一つ以上の接合を含む化学的接合とすることができる。一の実施形態では、2つ以上の部品の間の接合は熱圧着接合及び超音波接合のように、溶接法によって行なわれる。
【0067】
マイクロ流体デバイスは、いずれの適切な材料によっても作製することができる。マイクロ流体デバイスの種々の部分は、同じ材料または異なる材料により構成することができる。一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、ガラス、セラミックス、金属、シリコン、ゲルマニウム、及び砒化ガリウムのような半導体材料、及びポリマーから成るグループから選択される材料により作製される少なくとも一つの部分を備える。
【0068】
半導体材料は、4個の電子を、材料を構成する原子の最外殻に有する(最外殻の半分が電子で満たされている)材料である。互いに結晶格子内で結合すると、原子群は電子を共有して、これらの原子がそれぞれ、8個の電子を最外殻に持つようになる。
【0069】
電子群は非常に緩く束縛されているので、これらの電子は電界が印加されている状態ではキャリアとなることができる。
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、ドープト多結晶シリコン、ドープト多結晶シリコンゲルマニウム(ポリSG)、ドープト単結晶シリコン、ドープト単結晶シリコンゲルマニウム(SG)、及びドープトIII−V族材料から成るグループから選択される半導体材料により作製される少なくとも一つの部分を備える。
【0070】
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、ポリマー材料、好ましくは射出成形可能なポリマーにより作製される少なくとも一つの部分を備え、ポリマー材料として、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレン(PE)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリサルフォン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン(PU)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリビニリデンクロライド(PVDC)、ポリビニリデンフッ化物、スチレン−アクリルコポリマー、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレン、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、シリコーン、エポキシ樹脂、ポリエーテルブロックアミド、ポリエステル、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリル系、セルロイド、セルロースアセテート、エチレン−ビニルアセテート(EVA)、エチレンビニルアルコール(EVAL)、フッ素樹脂(FEP,PFA,CTFE,ECTFE,ETFEを含むPTFE)、ポリアセタル(POM)、ポリアクリレート(アクリル系)、ポリアクリロニトリル(PAN)ポリアミド(PA)、ポリアミド−イミド(PAI)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)、ポリブタジエン(PBD)、ポリブチレン(PB)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリケトン(PK)、ポリエステル/ポリテン/ポリエテン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルサルフォン(PES)、塩素化ポリエチレン(PEC)、ポリイミド(PI)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、硫化ポリフェニレン(PPS)、ポリフタルアミド(PPA)、及び上に列挙した材料の混合物から成るグループから選択されるポリマーを挙げることができ、好ましくは、デバイスの少なくとも一部分が、光学検査を行なうことができる透明性を有する、方法。
【0071】
ポリマーを使用する場合、一の実施形態では、ポリマーは、少なくとも0.5GPa(ギガパスカル)、少なくとも1GPaのように、少なくとも0.2GPaのヤング率を有することが好ましい。これにより、材料は、結晶化を行なうために信頼性の高い剛性を有することになる。
【0072】
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、PET,Zeonorョ (ZEON
Corporationが販売する),Zeonexョ (ZEON Corporat
ionが販売する),及びTopasョ (Topas Advanced Polym
ers GmbHが販売する)のような環式オレフィンコポリマーにより作製される少なくとも一つの部分を備える。これらの材料は、以下に記載する取り外し可能な蓋(群)の作製に特に有用である。
【0073】
マイクロ流体デバイスが、互いに接続される少なくとも2つの部分により作製される一
の実施形態では、これらの部分の内の少なくとも一つの部分は、スリットの形態の弱化ラインを含む。
【0074】
本発明の一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、少なくとも下側部分(底面を構成する)及び上側部分(上面を構成する)により作製され、下側部分及び上側部分の内の少なくとも一つの部分は、液体流路を構成する溝を含む。溝は、底面及び上面のそれぞれとは反対側の表面に配置する必要がある。更に、下側部分及び上側部分の内の少なくとも一つの部分は、標的分子溶液流入口空洞、及び沈殿剤流入口空洞のための開口部を含み、前記下側部分及び前記上側部分は高い剛性を有することが好ましい。
【0075】
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、下側部分及び上側部分により作製され、これらの部分は互いに、接着法、溶接法、及び/又は機械的締め付け手段によって固定されることにより、液体流路をこれらの部分の間に形成する。
【0076】
一般的に、2つの部分を溶接で繋ぎ合わせる方法が最も簡単である。しかしながら、2つの部分を締め付け手段によって互いに固定する実施形態では、成長した結晶の取り出し作業は以下に開示するように非常に簡単になる。
【0077】
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、少なくとも下側部分、上側部分、及びシーリング層の形態のシーリング部分により作製される。上側部分は、上面とは反対の側に位置して液体流路を構成する溝と、そして任意であるが、標的分子溶液流入口空洞用の開口部と、そして沈殿剤空洞用の開口部/凹部と、を含む。シーリング部分は、上側部分と下側部分との間に挟まれてシーリング部分が前記溝及び前記開口部を覆い、そして下側部分が前記シーリング部分を支持するようになる。この実施形態では、下側部分は、ほぼ凹凸の無いプレートの形態であることが好ましく、好ましくはガラスまたはポリマーにより作製される。
【0078】
下側部分は好ましくは、シーリング層を、シーリング層が上側部分の前記溝を覆うことにより結晶化流路セクションを形成する領域において少なくとも支持する。前記上側部分は、結晶化流路セクションを横切る一つ以上の弱化ラインを含むことができ、前記弱化ラインは、上側部分の内、下側部分を超えて延びる部分とすることが好ましく、これによってデバイスを、前記弱化ラインに沿って下側層を破断することなく破断することができる。
【0079】
マイクロ流体デバイスが、少なくとも下側部分、及びシーリング層の形態のシーリング部分により作製される一の実施形態では、上側部分は液体流路を構成する溝と、そして任意であるが、標的分子溶液流入口空洞用の開口部と、そして沈殿剤空洞用の開口部/凹部と、を含む。シーリング部分を上側部分に接続して、シーリング部分が前記溝及び前記開口部を覆うようにする。これにより、液体流路を形成することができる。
【0080】
シーリング部分は、必要な気密度を保つことができる材料により作製されるように選択する必要がある、または別の構成として、シーリング材、例えばワックスを付着させてデバイスを気密封止する。一の実施形態では、シーリング部分は、20〜70shoreA(ショアA)のように、90shoreA以下の硬度を有するポリマー材料から成る。
【0081】
シーリング部分に好適なポリマー材料の例は、熱可塑性エラストマー及びゴムから成るグループから選択されることが一層好ましく、かつ上述の硬度を有するエラストマーとすることができる。シーリング部分に適する材料はPDMS(ポリジメチルシロキサン)である。
【0082】
シーリング部分は一の実施形態では、ほぼ凹凸の無いプレートの形態とすることが好ましい。
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは更に、好ましくは結晶化流路セクション群の全てを横切る弱化ラインを備えるので、デバイスを前記弱化ラインに沿って破断することができる。弱化ラインは、上述のように設けることができ、例えば弱化ラインは、マイクロ流体デバイスの上側部分に設けることができる。
【0083】
弱化ラインは好ましくは、前記構造内に配置されることにより、該当する前記沈殿剤流入口に隣接する前記結晶化流路セクションを横切ることができる。
マイクロ流体デバイスの作製及びハンドリングを簡単にするために、上面及び反対側の底面は一の実施形態では、流入口空洞と、そして任意であるが、沈殿剤空洞及び/又は弱化ラインと、を除いて、ほぼ平坦にすることができる。
【0084】
デバイスの毛細管現象特性は、当業者に公知になっている要素のような幾つかの要素によって変わる。毛細管現象は上述のように、表面張力、及び液体流路の構造及びサイズによって変わる。「毛細管現象を起こす寸法(capillary dimension)」という用語は、液体流路がこのような特性を有することによって、毛細管吸引力が、水及び/又は標的分子溶液である液体サンプルに発生することを意味する。
【0085】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、液体流路は、当該流路の長さの主要部分において、毛細管現象を起こす寸法を有し、好ましくは、前記液体流路は、少なくとも分岐流路セクション及び結晶化流路セクションにおいて、毛細管現象を起こす寸法を有する。
【0086】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、液体流路は、当該流路の長さの主要部分において、10μm〜250μm、20μm〜100μmのように、1000μm未満の少なくとも一つの断面寸法を有し、好ましくは、前記液体流路は、少なくとも分岐流路セクション及び結晶化流路セクションにおいて、10μm〜250μm、20μm〜100μmのように、1000μm未満の少なくとも一つの断面寸法を有する。
【0087】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、液体流路は、少なくとも前記結晶化流路セクションにおいて、好ましくは当該セクションの長さ全体において、下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成する四辺多角形断面形状を有し、前記四辺多角形断面形状は台形であることが好ましく、この場合の2つの側部表面は下部表面に対して、90〜110度、90〜100度、90〜95度のように、90度超〜120度の範囲の角度を有する。
【0088】
マイクロ流体デバイスの一の実施形態では、液体流路は、少なくとも結晶化流路セクションにおいて、高さが、下部表面と上部表面との間の平均距離であり、そして幅が、2つの側部表面の間の平均距離であるような幅及び高さの断面形状を有し、幅及び高さは好ましくは、互いに依存することなく、10〜300μmである。
【0089】
分岐流路セクションは、1つの、2つの、3つ以上の分岐位置を含むことができる。各分岐位置では、流路は2つ以上の流路に分岐させることができる。
流動遮断流路セクションの最適な長さは、どのタイプの流動遮断が行なわれるかによって大きく変わる。一般的に、流動遮断流路セクションは、5〜5000μm、10〜1000μm、20〜200μmのように、1〜10000μmの長さを有する。
【0090】
前記流動遮断機構が、液体流路を横切る弱化ラインの形態であるマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、前記流動遮断流路セクションは、最大約4000μm、最大約3000μm、最大約1000μm、最大約100μm、1〜50μm、例えば少なくとも1
0μmのように、最大約5000μm長さを有し、これらの長さは、弱化ラインの幅が上面と同じ平面で測定される場合に弱化ラインが横切る液体流路の長さとして定義される。
【0091】
前記流動遮断機構が、液体流路における毛細管現象流動停止部分の形態であるマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、前記流動遮断流路セクションは、1〜10000μm、10〜5000μm、20〜2000μmのように、最大約10mmの長さを有する。
【0092】
結晶化流路セクションは好ましくはそれぞれ、20〜30000μm、40〜15000μm、100〜10000μmのように、10〜50000μmの長さを有することができる。
【0093】
構造を簡単にするために、前記結晶化流路セクション群は好ましくは、互いにほぼ平行になるように配置することができる。
本発明の一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、少なくとも一つの第1部分と、そして少なくとも一つの蓋部分と、を備え、第1部分は第1面と、そして少なくとも液体流路の結晶化流路セクションを構成する溝を持つ溝面と、を有し、蓋部分は、少なくとも部分的に取り外し可能な複数の蓋を構成し、各蓋は第2面と、そして溝面と、を有し、取り外し可能な前記蓋は、溝の上に取り付けられ、かつ溝に沿って密閉されて、少なくとも液体流路の結晶化流路セクションを構成する。
【0094】
一の実施形態では、第1部分の第1面は上面であり、そして蓋部分(群)の第2面または第2面群は底面を構成する。別の実施形態では、第1部分の第1面は底面であり、そして蓋部分(群)の第2面または第2面群は上面を構成する。
【0095】
第1部分は、例えば成形部品及び/又はマイクロ加工部品とすることができる。一の実施形態では、第1部分は、ほぼ平坦なプレートにより作製され、このプレートに、溝がレーザを使用して彫り込まれている。レーザを使用することにより、溝を非常に簡単に形成することができるので、実際、溝にどのような所望の形状も持たせることができる。
【0096】
一つ以上の蓋部分を溝の上に取り付けて液体流路を形成する。実際、蓋部分を一体化部材として取り付け、次に、取り付け中に、または取り付け後に、蓋部分に所望の切り込み部を設けて取り外し可能な蓋を構成することが望ましい。取り外し可能な蓋は、蓋を剥がすことによって取り外して、結晶化流路セクションの少なくとも一部分を露出させることができる、好ましくは少なくとも一つの結晶化流路セクションの主要部分を露出させることができるような蓋である。
【0097】
このような取り外し可能な蓋によって、結晶化した高分子を非常に簡単に取り出すことができる。更に、結晶化した所望の高分子を収容する結晶化流路セクションまたは結晶化流路セクション群を覆う蓋のみを剥がしてセクションを露出させて取り出しを行うだけで済み、そして残りの結晶化流路セクションは、更に時間を掛けることにより結晶化を進行させることができる。別の表現をすると、所望の結晶を取り出すまでに結晶化の進行がこれ以上期待できなくなるまで待機する必要がなくなる。
【0098】
標的分子溶液流入口は上述のように設けることができる。好ましくは、標的分子溶液流入口は、第1部分の一つの貫通開口部によって構成される。別の構成として、標的分子溶液流入口は、上述のように凹部によって構成される。
【0099】
沈殿剤流入口も上述のような構成とすることができる。一の実施形態では、第1部分は、液体流路への沈殿剤流入口を構成する少なくとも一つの貫通開口部を有する。別の構成として、沈殿剤流入口は、上述のように凹部によって構成される。
【0100】
貫通開口部の形態の流入口を第1部分に設けることにより、マイクロ流体デバイスを非常に簡単な方法で提供することができる。
取り外し可能な蓋は好ましくは、第1部分を超えて延びて、例えば取り外し可能な蓋が、該当する蓋を個々に取り外すためのフランジを構成するようになる。
【0101】
一の実施形態では、取り外し可能な複数の蓋はそれぞれフランジを含み、フランジは第1部分に接合されず、かつ前記フランジを剥がしてバラバラにすることにより、該当する蓋が該当する結晶化流路セクションから外れるように構成される。所望の結晶化流路セクションはこのようにして、取り出しを行なうために簡単かつ便利な方法で露出させることができる。
【0102】
取り外し可能な蓋は好ましくは、該当する溝に沿って第1部分の溝面に、接着法及び/又は溶接法によって密閉される。シーリングラインは、例えば2mm以下のように、0.5mm未満の相対的に幅の狭いラインとすることができ、この幅狭のラインは例えば同時に、隣接する蓋の間の部分切り込み部、または完全切り込み部を構成する。更に幅の広いシーリングラインも当然、使用することができるが、そのような状況では、切り込み部を隣接する取り外し可能な蓋の間に設けるために別の作業工程が必要になる、または個々の取り外し可能な蓋は個々に取り付けることができる。
【0103】
一の実施形態では、これらの取り外し可能な蓋は互いに対して、例えばシーリングラインに沿って剥離可能に接続される。隣接する取り外し可能な蓋の間のシーリングラインに沿った剥離可能な接続部は好ましくは、蓋が作製されるときに使用される原材料の固有強度の半分の強度、または固有強度よりも小さい強度のように、非常に低い強度を有するので、剥離可能な接続部は、剥がされると、蓋材料が剥がれる前に破断される。
【0104】
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは3つ以上の取り外し可能な蓋を備える。取り外し可能な蓋の数は、結晶化流路セクションの数に調整されることが好ましい。好ましくは、マイクロ流体デバイスは、一つの取り外し可能な蓋を前記結晶化流路セクション群の各セクションに対応して備える。
【0105】
マイクロ流体デバイスは、例えば上述の材料群の内のいずれかの材料によって作製することができる。一の実施形態では、第1部分は、ガラス、セラミックス、金属、及びシリコン、ゲルマニウム、及び砒化ガリウムのような半導体材料、及び少なくとも0.5GPa(ギガパスカル)、少なくとも1GPaのように、少なくとも0.2GPaのヤング率を有するポリマーから成るグループから選択される材料により作製される。第1部分は、ほぼ透明であることが好ましい。
【0106】
一つ以上の蓋部分(群)は好ましくは、ポリマー箔または金属箔のような箔により作製される。蓋部分(群)に望ましい材料は上に開示される。
一の実施形態では、蓋の箔を第1部分の溝面に貼り付け、溝に沿って溝面に接着させ、または溶接し、そして部分的に、または全てに切り込みを入れて複数の部分とすることにより、取り外し可能な複数の前記蓋を構成する。他の作製方法を当然、使用することもでき、そして当業者が利用することができる。
【0107】
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは更に、好ましくは該当する前記沈殿剤流入口に隣接する前記結晶化流路セクション群の内の少なくとも一つの結晶化流路セクションに組み込まれる膜を備える。
【0108】
膜によって、例えば結晶化流路セクションから沈殿剤流入口を介して移動してきて沈殿
剤に到達する標的分子の量を減らすことができる。多くの状況において、標的分子は沈殿剤よりも大きく、これは、沈殿剤が膜を通り抜けることができるが、標的分子は通り抜けることができないことを意味する。
【0109】
膜は、例えば標的分子が沈殿剤に、沈殿剤流入口と液体を介して接触するようにして拡散する現象を防止する濾過膜であり、前記膜は、メルトブローンされたガラス繊維、スパンボンドされた合成繊維(例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエーテルスルフォン)、半合成繊維、再生繊維、及び無機繊維、及び上に列挙した繊維の混合物のような繊維材料;及び発泡ポリマーから成るグループから選択される材料群の内の一つ以上の材料により作製される多孔質膜であることが好ましく、更に好ましくは、前記膜は多孔質ニトロセルロースである。
【0110】
一の実施形態では、膜は、標的分子溶液よりも沈殿剤の表面張力に近い表面張力を有することができる。
一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは標的分子溶液と組み合わされる。標的分子溶液は、例えば本明細書に開示されるように、水溶液に調製することができる。水溶液は洗浄剤を含まないようにすることができる、または水溶液は任意であるが、一つ以上の洗浄剤を含むことができる。
【0111】
マイクロ流体デバイスは好ましくは、標的分子溶液を導入するために作製することができ、これは、液体流路内の所望の毛細管力を標的分子溶液について測定する必要があることを意味する。従って、一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、少なくとも一つの流動遮断流路セクションを備え、流動遮断流路セクションは、隣接する前記結晶化流路セクションによって標的分子溶液に作用する毛細管力よりも小さい毛細管力が前記流路の標的分子溶液に作用するように構成される。
【0112】
標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、前記液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの前記壁表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも一部分において、標的分子溶液の表面張力よりも小さい表面張力を有する。この実施形態では、または別の実施形態では、少なくとも一つの結晶化流路セクションの壁表面は、当該結晶化流路セクションの外周の少なくとも一部分において、標的分子溶液の表面張力よりも大きい表面張力を有することができる。
【0113】
標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、前記液体流路は少なくとも、一つの結晶化流路セクションにおいて、四辺多角形断面形状を有することにより下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成し、好ましくは、少なくとも下部表面及び側部表面は、標的分子溶液の表面張力よりも大きい表面張力を有する。
【0114】
標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、前記分岐流路セクションの前記壁表面は、当該分岐流路セクションの外周の少なくとも一部分において、標的分子溶液の表面張力よりも大きい表面張力を有する。
【0115】
標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイスの一の実施形態では、液体流路は、当該流路の長さの主要部分において、毛細管現象を起こす寸法を有し、好ましくは、前記液体流路は、少なくとも分岐流路セクション及び結晶化流路セクションにおいて、毛細管現象を起こす寸法を有し、毛細管現象を起こす寸法は、標的分子溶液に関して導出される。
【0116】
標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイスはまた、液体流路と、液体流路内を流れるように適合させた液体との間のいずれの関係も、標的分子溶液に関して測定される上に開示したような構成とすることができる。
【0117】
本発明はまた、標的分子溶液に溶解している標的分子の結晶化を、上に説明したマイクロ流体デバイスを使用して促進する方法に関する。
本発明の方法では:
i)標的分子溶液を調製し、標的分子溶液を標的分子溶液流入口に供給し、そして標的分子溶液で結晶化流路セクションを充填することができるようにし;
ii)少なくとも一つの沈殿剤を調製し、そして沈殿剤を、少なくとも一つの沈殿剤流入口と液体連通するように配置することにより、沈殿剤が標的分子溶液と接触するようになり;
iii)沈殿剤が結晶化流路セクションの標的分子溶液に拡散することができるようにし;そして
iv)該当する前記標的分子結晶化流路セクション群の間の液体連通を遮断する。
【0118】
ステップi)及びii)はいずれの順番でも行なうことができる。
ステップiv)は、ステップi)が終了した後のいずれの時点でも行なうことができる。
【0119】
標的分子は基本的に、結晶化することが望ましい、いずれの種類の分子とすることもできる。標的分子は、有機分子または無機分子とすることができる。ほとんどの場合において、分子は生体分子である、すなわち生物学的試料から抽出される分子、または人工的に調製され、かつ生物学的試料に類似する試料から抽出される分子である。好ましくは、標的分子溶液はタンパク質、核酸、核酸類似物、炭水化物、脂質から成るグループから選択される、更に好ましくは、500ダルトン以上のタンパク質、単鎖及び二本鎖のDNA,RNA,PNA,及びLNA,及び薬剤候補のグループから選択される少なくとも一つの種類の標的分子から成る溶液である。「タンパク質(protein)」という用語は、ペプチドだけでなく大型のタンパク質を指すために用いられる。
【0120】
好適な実施形態では、標的分子は、500ダルトン以上のタンパク質のグループから選択されるタンパク質である。
上に示したように、溶液は、例えば溶液を安定化させるための他の成分、例えばポリエチレングリコールのようなポリマー、及び洗浄剤を含む界面活性剤を含むことができる。
【0121】
種々の成分の濃度は大きく変えることができる。
洗浄剤及び濃度の例を表1に示す。普通、標的分子溶液は一つの種類の洗浄剤しか含まないが;複数の洗浄剤の組み合わせを適用することもできる。
MW:分子量
CMC:臨界ミセル濃度
Actual:使用される代表的な濃度
【0122】
【表1】
【0123】
【0124】
一の実施形態では、ゲル形成材料を標的分子溶液に溶解させることにより、溶液を少なくとも部分的に固化して不所望の逆流を防止することができる。有用なゲル形成材料の例として、アガロース及びアクリルアミドを挙げることができる。
【0125】
有用な沈殿剤、及び沈殿剤の組み合わせは、この技術分野において公知である。上に示したように、沈殿剤は乾燥状態で、または溶液として加えることができる。
沈殿剤溶液の例は、構造ゲノミクスにおけるショットガン結晶化法に見ることができる:ACTA CRYSTALLOGRAPHICA SECTION D−BIOLOGICAL CRYSTALLOGRAPHY 59:1028−1037 Part 6, JUN 2003に掲載された論文の著者であるPage R, Grzechnik SK, Canaves JM, Spraggon G, Kreusch A,
Kuhn P, Stevens RC, Lesley SAによる超好熱性真正細菌(Thermotoga maritima)のプロテオーム(細胞の活動に必要な全タンパク質をひとまとめにして捉えた概念)に対して最適化された2次元結晶化スクリーニング。
【0126】
当業者であれば、選択された標的分子溶液と組み合わせて使用される沈殿剤を見付け出し、そして選択する手法に通じていると考えられる。
標的分子溶液は一の実施形態では、標的分子溶液流入口に、例えばピペットのような器具を使用して直接供給することができる、または上に説明したように、標的分子溶液を標的分子溶液流入口空洞に流し込むことにより直接供給することができる。
【0127】
一の実施形態では、標的分子溶液を支持体に、例えば液滴として滴下し、標的分子溶液流入口は、毛細管流路に達する流入口の形状に作製され、そして標的分子溶液流入口が液滴に触れるようにすることにより、液滴がマイクロ流体デバイスに毛細管力によって直接吸い込まれる。
【0128】
安全性が高く、汚染されず、かつ測定される標的分子溶液を供給するために、マイクロ流体デバイスが標的分子溶液空洞を備え、そして標的分子溶液を前記標的分子溶液空洞に流し込むことが好ましい。
【0129】
マイクロ流体デバイスの液体流路の構造/表面特性に起因して、標的分子溶液が結晶化流路セクションに充填されることになる。
一の実施形態では、沈殿剤(群)が沈殿剤空洞に予め充填される。上に説明したように、沈殿剤はこの実施形態では、乾燥状態であることが好ましい。沈殿剤は、標的分子溶液が充填される前に、または充填された後に、例えば液体を沈殿剤空洞に、例えば膜を介して注入することにより再溶解させることができる。他の例が上に開示されている。
【0130】
一の実施形態では、沈殿剤(群)は、該当する沈殿剤流入口を、沈殿剤を収容するウェルに接続することにより、該当する沈殿剤流入口と液体連通するようになるように配置される。
【0131】
一の実施形態では、沈殿剤(群)は、沈殿剤をデバイスの沈殿剤空洞に供給することにより、該当する沈殿剤流入口と液体連通するようになるように配置される。この実施形態では、沈殿剤流入口は好ましくは、標的分子溶液が結晶化流路セクションに流入するが、沈殿剤空洞には流入することがないように配置することができる。この構成の特定の例が上に記載されている。この実施形態では、標的分子溶液を沈殿剤よりも早い時点で流し込む。
【0132】
別の実施形態では、沈殿剤が結晶化流路セクションに流入する現象を、例えば上述のように、膜または毛細管現象流動停止部分によって防止する。この例では、沈殿剤を標的分子溶液よりも早い時点で流し込むことが好ましい。
【0133】
本方法によれば、マイクロ流体デバイスは好ましくは、該当する前記標的分子結晶化流路セクション群の間の液体連通が、液体流路の内部毛細管力のために、または流動遮断流路セクションが上述のように変位するために自動的に遮断されるように構成される。
【0134】
一の実施形態では、該当する前記標的分子結晶化流路セクション群の間の液体連通は、デバイスを、流動遮断流路セクションを横切る弱化ラインに沿って破断することにより遮断される。デバイスが弱化ラインに沿って破断される場合、結晶化流路セクション内の液体は、毛細管力が結晶化流路セクション内に生じるので流出することがない。
【0135】
一の実施形態では、沈殿剤は標的分子結晶化流路セクションに所望の時間に亘って、例えば1時間以上に亘って拡散することができ、その後、沈殿剤と標的分子結晶化流路セクションとの間の液体連通が終了する。
【0136】
液体がシステムから蒸発する現象を防止するために、マイクロ流体デバイスを取り囲む雰囲気に曝される流路開口部を密閉することが望ましい。従って、本方法では好ましくは、結晶化流路セクションに通じる少なくとも一つの流入口、好ましくは全ての流入口を密閉して流入口からの蒸発を回避する。
【0137】
どのような密閉要素/材料も使用することができる。一の実施形態では、一つ以上の流入口は:
a)パラフィンワックスまたはポリエチレンワックスのようなワックスを塗って流入口(群)を密閉するステップ;及び
b)ポリマーまたはガラスにより作製される固着要素のような透明であることが好ましい固着要素、例えばポリマースライドまたはガラススライドを固定する(例えば、接着法、溶接法、または締め付け手段によって)ステップ、
の内の一つ以上のステップによって密閉される。
【0138】
本方法では更に、培養をマイクロ流体デバイスを用いて行ない、そして結晶の形成及び/又は成長を可能にする。培養時間は、標的分子溶液の種類によって変わる。一般的に、ほとんどの通常の培養時間は、24〜240時間のように、2〜580時間である。培養は通常、温度制御ボックス内で、例えば25度、16度、または4度の温度で行なわれる。温度は結晶化に影響し、そして或るテストでは、培養を種々の温度で行なうことができる。
【0139】
培養後、マイクロ流体デバイスを、例えば目視で、またはロボットによって分析することにより、全ての結晶形成を確認する。形成された結晶は、液体流路の中で、例えば透明な壁部分を介して分析することができる、または結晶は取り出すことにより詳細に分析することができる。
【0140】
一の実施形態では、本発明の方法では更に、形成/成長結晶を、結晶化流路セクション群の内の一つ以上のセクションから取り出し、結晶は好ましくは:
a)デバイスを破断して少なくとも2つの部分として、結晶化流路セクション群を構成している複数の部分を分離し、そして結晶を取り出すステップ;
b)選択した一つ以上の結晶化流路セクション(群)の下側部分または上側部分を選択的に取り外し(例えば、切り出す)、そして結晶を取り出すステップ;及び
c)結晶を結晶化流路セクション(群)から吸い上げる、または押し出すステップ;及びd)取り外し可能な蓋または複数の蓋を取り外して、所望の結晶化流路セクション(群)を露出させることにより結晶を取り出すことができるステップ、
の内の一つ以上のステップによって取り出される。
【0141】
第2の態様においては、本発明は、標的分子の結晶化を促進する別のマイクロ流体デバイスに関するものである。このマイクロ流体デバイスは、第1面及び反対側の第2面を有し、かつ少なくとも一つの液体流路を有する固体構造を備え、液体流路は、標的分子溶液流入口と、そして少なくとも一つの沈殿剤流入口と、を含む。別の表現をすると、このマイクロ流体デバイスでは、分岐セクション及び/又は流動遮断セクションを設ける必要がない。標的分子溶液流入口は、沈殿剤流入口と前記液体流路を介して液体連通し、そして液体流路は、前記沈殿剤流入口に隣接する結晶化流路セクションを含む。本発明のこの第2の態様のこのマイクロ流体デバイスは少なくとも一つの第1部分と、そして少なくとも一つの蓋部分と、を備え、第1部分は第1面と、少なくとも一つの溝を持つ溝面と、を有することにより前記結晶化流路セクションを構成し、蓋部分は、少なくとも部分的に取り外し可能な蓋を構成し、前記蓋は第2面及び溝面を有し、取り外し可能な前記蓋を前記溝の上に取り付け、そして液体流路の前記結晶化流路セクションに対して前記溝に沿って密閉する。
【0142】
一の実施形態では、第1部分の第1面は上面であり、そして蓋部分(群)の第2面または第2面群は底面を構成する。別の実施形態では、第1部分の第1面は底面であり、そして蓋部分(群)の第2面または第2面群は上面を構成する。
【0143】
第1部分または蓋部分(群)の内の少なくとも一つの部分は透明である。
本発明のこの第2の態様の第1部分は、上に開示した材料により作製することができ、そして同様の方法によって設けることができる。第1部分は、例えば成形部品及び/又はマイクロ加工部品とすることができる。一の実施形態では、第1部分は、ほぼ平坦なプレートにより作製され、このプレートに、溝がレーザを使用して彫り込まれている。レーザを使用することにより、溝を非常に簡単に形成することができるので、実際、溝にどのような所望の形状も持たせることができる。
【0144】
蓋部分を溝の上に取り付けて液体流路を形成する。実際、蓋部分を一体化部材として取り付け、次に、取り付け中に、または取り付け後に、蓋部分に所望の切り込み部を設けて、一つ以上の取り外し可能な蓋を構成することが望ましい。取り外し可能な蓋は、蓋を剥がすことによって取り外して、結晶化流路セクションの少なくとも一部分を露出させることができる、好ましくは少なくとも一つの結晶化流路セクションの主要部分を露出させることができるような蓋である。
【0145】
このような取り外し可能な蓋によって、結晶化した高分子を非常に簡単に取り出すことができる。更に、結晶化した所望の高分子を収容する結晶化流路セクションまたは結晶化流路セクション群を覆う蓋のみを剥がして当該セクションを露出させて取り出しを行なえばよく、そして残りの結晶化流路セクションは、更に時間を掛けることにより結晶化を進行させることができる。別の表現をすると、所望の結晶を取り出すまでに結晶化の進行がこれ以上期待できなくなるまで待機する必要がなくなる。
【0146】
標的分子流入口は上述のように設けることができる。好ましくは、標的分子流入口は、第1部分の一つの貫通開口部によって構成される。別の構成として、標的分子流入口は、上述のように凹部によって構成される。
【0147】
沈殿剤流入口も上述のような構成とすることができる。一の実施形態では、第1部分は、液体流路への沈殿剤流入口を構成する少なくとも一つの貫通開口部を有する。別の構成として、沈殿剤流入口は、上述のように凹部によって構成される。
【0148】
貫通開口部の形態の一つ以上の流入口を第1部分に設けることにより、マイクロ流体デバイスを非常に簡単な方法で提供することができる。
取り外し可能な蓋(群)は好ましくは、第1部分を超えて延びて、例えば一つ以上の取り外し可能な蓋が、該当する蓋を個々に取り外すためのフランジを構成するようになる。
【0149】
第2の態様の一の実施形態では、取り外し可能な蓋はフランジを含み、フランジは第1部分に接合されず、かつ前記フランジを剥がしてバラバラにすることにより、蓋が結晶化流路セクションから外れるように構成される。所望の結晶化流路セクション(群)はこのようにして、取り出しを行なうために簡単かつ便利な方法で露出させることができる。
【0150】
取り外し可能な蓋は好ましくは、該当する溝に沿って第1部分の溝面に、接着法及び/又は溶接法によって密閉される。シーリングラインは、例えば2mm以下のように、0.5mm未満の相対的に幅の狭いラインとすることができ、この幅狭のラインは例えば同時に、隣接する任意の取り外し可能な蓋の間の部分切り込み部、または完全切り込み部を構成する。更に幅の広いシーリングラインも当然、使用することができる。
【0151】
一の実施形態では、第2の態様のマイクロ流体デバイスは、2つ以上の液体流路を備え、これらの液体流路は結晶化流路セクションを含み、そして各液体流路は標的分子溶液流入口及び沈殿剤流入口に接続され、これらの前記結晶化流路セクションの各セクションは好ましくは、取り外し可能な蓋によって覆われ、これらの蓋は任意であるが、互いに剥離可能に接続される。
【0152】
取り外し可能な蓋が2つ以上設けられる場合、これらの蓋は上述のように構成することができる。一の実施形態では、マイクロ流体デバイスは、5個以上、10個以上のように、2つ以上の結晶化流路セクションを備えることができ、そして好ましくは、前記マイクロ流体デバイスは、一つの蓋を前記結晶化流路セクションの各々に対応して備える。
【0153】
第2の態様のマイクロ流体デバイスは、例えば上述の材料群の内のいずれの材料によっても作製することができる。一の実施形態では、第1部分は、ガラス、セラミックス、金属、及びシリコン、ゲルマニウム、及び砒化ガリウムのような半導体材料、及び少なくとも0.5GPa(ギガパスカル)、少なくとも1GPaのように、少なくとも0.2GPaのヤング率を有するポリマーから成るグループから選択される材料により作製される。第1部分は、ほぼ透明であることが好ましい。
【0154】
少なくとも一つの蓋部分は、ポリマー箔または金属箔のような箔により作製される。蓋部分(群)に望ましい材料は上に開示される。
第2の態様の一の実施形態では、蓋(群)の箔を第1部分の溝面に貼り付け、溝(群)に沿って溝面に接着させ、または溶接し、そして部分的に、または全てに切り込みを入れて複数の部分とすることにより、取り外し可能な複数の前記蓋を構成する。他の作製方法を当然、使用することもでき、そして当業者が利用することができる。
【0155】
第2の態様のマイクロ流体デバイスは更に、マイクロ流体デバイスが上に定義されるような少なくとも一つの取り外し可能な蓋を備える場合には、上に開示した特徴の内のいずれの特徴と組み合わせることもできる。
【0156】
本発明は図1に模式的に示され、図1は、液体流路2を備えるマイクロ流体デバイス1を示している。液体流路2は、流入口3と、そして標的分子溶液流入口空洞を任意に備える標的分子溶液流入口4と、を含む。液体流路2は更に、沈殿剤空洞6を任意に備える沈殿剤流入口5を含み、沈殿剤流入口5は、例えば上に説明した膜の形態の図示しない蓋によって任意に覆われる。
【0157】
液体流路2は3つのセクション、すなわち分岐流路セクション7、流動遮断流路セクシ
ョン8、及び結晶化流路セクション9を含む。図1には、結晶化流路セクションを2つしか示していないが、上に説明したように、マイクロ流体デバイスは必要な限り多くの結晶化流路セクションを有することができる。
【0158】
使用状態では、標的分子溶液は、標的分子溶液流入口3に、例えば標的分子溶液流入口空洞4を介して供給され、そして標的分子溶液は流路2に流入し、そして結晶化流路セクション9に充填される。沈殿剤は沈殿剤空洞6に、標的分子溶液が液体流路2に供給される前に、または供給された後に供給される。標的分子溶液がシステムに沈殿剤よりも早い時点で供給される場合、上に説明される機構を設けて、標的分子溶液が沈殿剤空洞に流入する現象を防止する。沈殿剤がシステムに、標的分子溶液よりも早い時点で供給される場合、上に説明した機構を形成して、沈殿剤が結晶化流路セクション9に充填される現象を防止する、例えば沈殿剤は乾燥状態で提供することができる。
【0159】
標的分子溶液及び沈殿剤の両方がシステムに供給される場合、標的分子溶液及び沈殿剤は互いに、沈殿剤流入口5で、または沈殿剤流入口5の近傍で接触するようになり、そして沈殿剤は標的分子溶液に拡散し、この標的分子溶液が最終的に培養されると、標的分子が結晶化される。
【0160】
標的分子溶液が結晶化流路セクション9に充填された後、分岐流路セクション7と結晶化流路セクション9との間の流体連通は、種々の沈殿剤が、隣接する結晶化流路セクション9に流入することができないように遮断される。流動遮断流路セクション8は流体連通を、当該セクションの構造、及び/又は表面特性に起因して自動的に遮断するように構成される、または図示しない弱化ラインを配設して、ユーザが簡単かつ安全にデバイスを、このような流動遮断ラインに沿って破断することにより、分岐流路セクション7と結晶化流路セクション9との間の流体連通を遮断することができるようにする。
【0161】
上に述べたように、結晶化流路セクション9から周囲空気に至るいずれの開口も、図示しないシーリング材を取り付けることにより封鎖することができる。
図1b及び1cは、流動遮断流路セクション8a,8bの例を示し、これらのセクションは、図1のA−A’に沿って切断したときの断面として示すことができる。
【0162】
図1bは、流動遮断流路セクション8aの断面図である。矢印は、標的分子溶液が標的分子溶液流入口3を介して供給されるときの標的分子溶液の流動方向を示している。流動遮断流路セクション8aは、流路が変位した形状として示され、この場合、流路は、隣接する分岐流路セクション7及び結晶化流路セクション9に対して垂直方向に変位している。標的分子溶液が分岐流路セクション7から流れてくると、この標的分子溶液は、液体の速度が大きいので、流動遮断流路セクション8aを容易に通過して結晶化流路セクション9に流入する。液体の流れが停止すると、流動遮断流路セクション8aに残留する液体は、流動遮断流路セクションが完全に充填されない(この状態は起きてはならない)場合には、分岐流路セクションに引き戻される。鋭いエッジ「a」(例えば、100度以下、90度以下、80度以下のように、120度以下の角度を有する)が、壁表面が階段状に変位することによって形成されるので、標的分子溶液は結晶化流路セクション9に残留するが、流動遮断流路セクション8aからはほとんどが排出される。
【0163】
図1cは、流動遮断流路セクション8bの断面図である。矢印は、標的分子溶液が標的分子溶液流入口3を介して供給されるときの標的分子溶液の流動方向を示している。流動遮断流路セクション8bは、流動遮断流路セクション8bを取り囲み、かつ当該セクション8bを構成する壁が変位した形状であり、この場合、流動遮断流路セクション8bの断面寸法は、流動遮断流路セクション8b内部での毛細管吸引力が、隣接する分岐流路セクション7及び結晶化流路セクション9における毛細管吸引力よりも小さくなるように大き
くしている。標的分子溶液が分岐流路セクション7から流れてくると、この標的分子溶液は、液体の速度が大きいので、流動遮断流路セクション8bを容易に通過して結晶化流路セクション9に流入する。液体の流れが停止すると、流動遮断流路セクション8bに残留する液体は、該当する流動遮断流路セクション及び分岐流路セクションにおける吸引力に差が生じるので、分岐流路セクションに引き戻される。鋭いエッジ「b」(例えば、100度以下、90度以下、80度以下のように、120度以下の角度を有する)が壁表面が階段状にこのように変位することによって形成されるので、標的分子溶液は結晶化流路セクション9に残留するが、流動遮断流路セクション8bからはほとんどが排出される。
【0164】
図2a及び2bは、本発明のマイクロ流体デバイスを示し、マイクロ流体デバイスは、分岐流路セクション27と結晶化流路セクション29との間の弱化ラインの形態の流動遮断流路セクション28を備える。図2bに示すように、デバイスは、3つの部分により構成される3つの層として提供される:
・上面21a’を持ち、かつ液体流路22を構成する溝と、該当する沈殿剤流入口25に隣接する沈殿剤空洞26用の開口部と、そして溶液流入口空洞24と、更に流動遮断流路セクション28の弱化ラインを構成するスリット28aと、を含む上側部分21a。
・ほとんど凹凸の無いプレート、例えばガラスプレートの形態の下側部分21c。
・上側部分21aと下側部分21cとの間に挟まれることにより、シーリング部分が前記溝22,26,24,28及び開口部を覆い、かつ下側部分が前記シーリング部分21bを支持するようなシーリング層の形態のシーリング部分21b。下側部分21cはシーリング部分21bを、シーリング部分が第1部分21aの溝22を、結晶化流路セクション29を構成する溝の部分で覆う場所で支持するが、下側部分21cは、スリット28aにより構成される流動遮断セクション28を超えて延びることはない。従って、マイクロ流体デバイスを弱化ラインの位置で、下側部分21cを分離する必要を全く生じることなく容易に破断することができる。
【0165】
図3a及び3bは、本発明の別のマイクロ流体デバイスを示している。このマイクロ流体デバイスは、図2a及び2bに示すマイクロ流体デバイスの変形であり、そして分岐流路セクション37と結晶化流路セクション39との間の弱化ラインの形態の流動遮断流路セクション38と、そして沈殿剤流入口35に位置する弱化ラインの形態の更に別の流動遮断流路セクション40と、を備える。デバイスは、3つの部分により構成される3つの層として提供される:
・上面31a’を持ち、かつ液体流路32を構成する溝と、該当する沈殿剤流入口35に隣接する沈殿剤空洞36用の開口部と、そして溶液流入口空洞34と、更に流動遮断セクション38の弱化ラインを構成するスリット38a及び沈殿剤流入口35に位置する弱化ラインを構成するスリット40aと、を含む上側部分31a。
・ほとんど凹凸の無いプレート、例えばガラスプレートの形態の下側部分31c。
・上側部分31aと下側部分31cとの間に挟まれることにより、シーリング部分が前記溝32,36,34,38,40及び開口部を覆い、かつ下側部分が前記シーリング部分31bを支持するようなシーリング層の形態のシーリング部分31b。下側部分31cはシーリング部分31bを、シーリング部分が第1部分31aの溝32を、結晶化流路セクション39を構成する溝の部分で覆う場所で支持するが、下側部分31cは、スリット38aにより構成される流動遮断セクション38、及びスリット40aにより構成される流動遮断セクション40を超えて延びることはない。従って、マイクロ流体デバイスを弱化ラインの位置で、下側部分31cを分離する必要を全く生じることなく容易に破断することができる。
【0166】
図4a〜4dは本発明の別のマイクロ流体デバイスを示している。このマイクロ流体デバイスは、図3a及び3bに示すマイクロ流体デバイスの変形であり、そしてマイクロ流体デバイスが2つの層として提供される点で、図3a及び3bに示すマイクロ流体デバイ
スとは異なっている:
・上面41a’を持ち、かつ液体流路42を構成する溝と、該当する沈殿剤流入口45に隣接する沈殿剤空洞46用の開口部と、そして溶液流入口空洞44と、更に流動遮断セクション48の弱化ラインを構成するスリット48a及び沈殿剤流入口45に位置する弱化ラインを構成するスリット50aと、を備える上側部分41a。
・下側部分も構成し、かつ前記溝42及び開口部46,44を覆うように貼着されるシーリング層の形態を呈するシーリング部分。
【0167】
使用状態では、標的分子溶液は図示しない標的分子溶液流入口に、標的分子溶液流入口空洞44を介して供給され、そして標的分子溶液は流路42に流入し、そして結晶化流路セクション49に充填される。結晶化流路セクション49から沈殿剤空洞46までが上に向かって段階状に広くなるので、標的分子溶液は沈殿剤空洞46に流入することはない。結晶化流路セクション49から沈殿剤空洞46までの段階状の広がり部分は、約90度の角度を持つエッジ「b」を構成する。この角度bは、別の大きさを持つことができるが、120度未満であることが好ましい。
【0168】
沈殿剤は沈殿剤空洞46に供給され、そして標的分子溶液及び沈殿剤が互いに沈殿剤流入口45で、または沈殿剤流入口45の近傍で接触するようになり、そして沈殿剤が標的分子溶液に拡散し、この標的分子溶液が最終的に培養されると、標的分子が結晶化する。
【0169】
標的分子溶液が結晶化流路セクション49に充填された後、図示しない分岐流路セクションと結晶化流路セクション49との液体連通は、デバイスを流動遮断流路セクション48の弱化ラインの位置で破断して、種々の沈殿剤が、隣接する結晶化流路セクション49に流入することができないようにすることにより遮断される。図4bでは、矢印A1は、デバイスの内、分岐流路セクションを含む部分を押圧してデバイスを弱化ラインに沿って破断する方向を示している。
【0170】
同時に、またはデバイスを流動遮断流路セクション48の弱化ラインに沿って破断した後、シーリング材51を図4a〜4dに示すように充填することができる。図示の実施形態では、シーリング層41bは可撓性であり、かつデバイスが弱化ラインに沿って破断されるときに破断することがない。従って、デバイスの内、分岐流路セクションを含む部分を使用してシーリング材51を液体流路42に向かって押し出すことにより、結晶化流路セクション49を分岐流路セクションから分離することができる。別の実施形態では、シーリング層も、デバイスを弱化ラインに沿って破断するときに破断される。
【0171】
デバイスで培養を、所望量の沈殿剤が結晶化流路セクションの標的分子溶液に拡散するために十分長い時間に亘って行なった後、それに応じる形で、デバイスの内、沈殿剤空洞46を含む部分を、流動遮断流路セクション50に設けられる弱化ラインに沿って破断し、沈殿剤がこれ以上、結晶化流路セクションに流入することができず、かつ同時に、標的分子がこれ以上、沈殿剤空洞の沈殿剤に流入することができないようにする。その後、培養を、標的分子を無駄にする危険を更に伴なうことなく継続することができる。
【0172】
デバイスの内、沈殿剤空洞46を含む部分は、デバイスの内、分岐流路セクションを含む部分が上に説明したように破断されるのと同じようにして破断される。図4bでは、矢印A2は、デバイスの内、沈殿剤空洞46を含む部分を押圧してデバイスを弱化ラインに沿って破断する方向を示している。シーリング材51は上に説明したように充填される。
【0173】
図5a,bは本発明の別のマイクロ流体デバイスを示している。このマイクロ流体デバイスは、図4a〜4dに示すマイクロ流体デバイスの変形であり、そして図4a〜4dに示すマイクロ流体デバイスとは、弱化ラインを構成するスリット58aが平坦な底面部分
を有する点が異なっている。デバイスは2つの層として提供される:
・液体流路を構成する溝52と、該当する沈殿剤流入口に隣接する図示しない沈殿剤空洞用の開口部と、そして溶液流入口空洞54と、更に流動遮断セクション58の弱化ラインを構成するスリット58aと、を含む上側部分51a。
・下側部分も構成し、かつ前記溝及び開口部54を覆うように貼着されるシーリング層の形態を呈するシーリング部分51b。
【0174】
図5bでは、デバイスは弱化ラインに沿って破断され、そしてシーリング材51で結晶化流路セクション59を、図示しない分岐流路セクションと連通しないように密閉している。
【0175】
図6aは、本発明のマイクロ流体デバイスの上側部分の写真を示している。図6bは写真6aの拡大部分である。上面部分は、標的分子溶液流入口64と、そして互いに、液体流路を構成するために設けられる溝67,68,69によって接続される4つの沈殿剤流入口66と、を含む。溝67,68,69は、これらの溝がそれぞれ、分岐流路セクション67、流動遮断流路セクション68、及び結晶化流路セクション69を構成するように設けられる。図から分かるように、分岐流路セクション用の溝67は、流動遮断流路セクション用の溝68よりも大きく、溝68も同じように、結晶化流路セクション用の溝69よりも大きい。このような構成は、結晶化流路セクションの数が相対的に少ない場合に特に望ましい、というのは、正確に少なく、かつ十分な量の標的分子溶液を、標的分子溶液流入口に流し込むことが困難であるからである。この構成によって、標的分子溶液は毛細管力に起因して、結晶化流路セクションに案内され、そして余剰量の標的分子溶液にとっては、十分大きなスペースが分岐流路セクションに確保されることになる。デバイスはまた、追加の余分のポケット63を備え、これらのポケットは、更に多くの量の標的分子溶液を回収するために使用することができる。
【0176】
図6a及び6bに示すマイクロ流体デバイスの上側部分は、図示しない下側部分、例えば簡易フィルムまたはプレートに固定されて、液体流路を構成することにより、マイクロ流体デバイス全体を構成することができる。
【0177】
図7a,bはそれぞれ、本発明のマイクロ流体デバイスの第1部分、及びマイクロ流体デバイスの完成部分である。
図7a,bのマイクロ流体デバイスは、マイクロ流体デバイスの第1部分71aを備え、この第1部分71aは、図示しない第1面、及び溝77,78,79を持つ反対側の溝面と、を有し、これらの溝77,78,79は、分岐流路セクション77、流動遮断流路セクション78、及び結晶化流路セクション79を構成する。溝面には更に、それぞれの結晶化流路セクション79の間の空洞73が設けられる。マイクロ流体デバイスは更に、蓋部分71bを備え、蓋部分71bは少なくとも部分的に取り外し可能な複数の蓋71cを含む。第1部分71aは更に、液体流路と連通する標的分子溶液流入口74を構成する貫通開口部と、そして液体流路と連通する沈殿剤入口76を構成する多数の貫通開口部と、を含む。蓋部分71bは第1部分71aの溝面に固定されて、該当する流入口74,76,及び該当する流路セクション77,78,79を構成する。
【0178】
取り外し可能な蓋71cは、溝79の上に取り付けられ、かつ溝79に沿って密閉されて、液体流路の結晶化流路セクション79を構成する。
取り外し可能な蓋71cは、第1部分71aを超えて延び出すことにより、該当する蓋71cを個々に取り外すためのフランジ71dを構成する。
【0179】
取り外し可能なこれらの蓋71cは互いに、ライン71eに沿って剥離可能に接続される。
図8は、本発明のマイクロ流体デバイスの模式図であり、流路セクション群、及びこれらの流路セクションの互いに対する関係を示している。マイクロ流体デバイスは、標的分子溶液流入口84と、そして更には、余剰量の標的分子溶液のための空気/ガス用開口部/標的分子溶液流出口84aと、を備える。基本的に、空気/ガス用開口部/標的分子溶液流出口84aは、標的分子溶液が流路セクション(群)に充填されているときの流路内の空気/ガスを逃がすことができる一つ以上の空気/ガス排出口に置き換えることができる。
【0180】
マイクロ流体デバイスは更に12個の沈殿剤流入口86を備え、これらの沈殿剤流入口は分子溶液流入口84と分岐流路セクション87、流動遮断流路セクション88、及び12個の結晶化流路セクション89を介して液体連通する。図から分かるように、流動遮断流路セクション88はまた、一つの流動遮断流路セクションを部分的に構成するが、この例では説明を分かり易くするために、流動遮断流路セクション88は単に、「流動遮断流路セクション(flow break channel section)」と表記される。空気/ガス用開口部/標的分子溶液流出口84aは流動遮断流路セクション88と接続流路セクション87aを介して液体連通する。流動遮断流路セクション88を結晶化流路セクション89に対して変位させて、結晶化流路セクション89に流入した標的分子溶液が流動遮断流路セクション88に逆流しないようにすることができるが、結晶化流路セクション89は、接続流路セクション87aよりも大きい毛細管吸引力で標的分子溶液を吸引して、標的分子溶液が主として結晶化流路セクション89に、これらの結晶化流路セクションに溶液が充填されるまで流入し、その後、余った量の標的分子溶液が接続流路セクション87aに流入するようにする必要がある。別の構成として、または変位と組み合わせて、流動遮断流路セクション88は結晶化流路よりも小さい毛細管力を持つように構成することができる。
【0181】
マイクロ流体デバイスは更に排出開口部81を備え、排出開口部81は、標的分子溶液を流し込んでいる間は、例えば栓または排出栓によって閉じ、そして結晶化流路に溶液が充填された後に開くことにより、余剰量の標的分子溶液を排出すると同時に、流動遮断流路88における流動遮断を可能にする動作に関与する。
【0182】
使用状態では、標的分子溶液を標的分子溶液流入口84に流し込み、そして沈殿剤(群)を沈殿剤流入口84aに流し込む。標的分子溶液は分岐流路セクション87に流入し、更に流動遮断流路セクション88に流入し、そして12個の結晶化流路セクション89に流入する。これらの結晶化流路セクション89に溶液が充填されてしまうと、余剰量の標的分子溶液は接続流路セクション87aに流入し、そして任意であるが、更に空気/ガス用開口部/標的分子溶液流出口84aに流入する。標的分子溶液がわずかでも流動遮断流路セクション88に残留しているとすると、この残留溶液は排出開口部81を介して排出する必要がある。
【0183】
図9は、本発明の第2の態様のマイクロ流体デバイスを示している。マイクロ流体デバイスは、マイクロ流体デバイスの第1部分91aを備え、第1部分91aには、図示しない第1面及び反対側の溝面が設けられ、更にそれぞれ標的分子溶液流入口94及び沈殿剤流入口94を構成するペア構成の貫通開口部が設けられる。ペア構成の流入口94は、結晶化流路セクション99によって接続され、これらの結晶化流路セクション99は、第1部分91aの内、蓋部分91bによって覆われる溝面の溝によって構成される。蓋部分91bは、少なくとも部分的に取り外し可能な複数の蓋91cを含む。蓋部分91bは第1部分91aの溝面に固定されて、該当する流入口94、及び該当する結晶化流路セクション99を構成する。
【0184】
取り外し可能な蓋91cは、溝99の上に取り付けられ、かつ溝99に沿って密閉され
て、液体流路の結晶化流路セクション99を構成する。取り外し可能な蓋91cは、第1部分91aを超えて延び出すことにより、該当する蓋91cを個々に取り外すためのフランジ91dを構成する。
【0185】
取り外し可能なこれらの蓋91cは互いに、ライン91eに沿って剥離可能に接続される。
図10は、本発明の別のマイクロ流体デバイスの上面図である。このマイクロ流体デバイスは、標的分子溶液流入口104と、分岐流路セクション107、図示しない流動遮断流路セクション、及び結晶化流路セクション109を含む液体流路と、を備える。各結晶化流路セクション109に対応するように、デバイスは沈殿剤流入口106を備える。図示しない流動遮断流路セクションは、溝109の内、溝107に隣接する部分によって少なくとも部分的に構成することができることが好ましい、例えばこれらの部分に、相対的に小さい毛細管力を持たせることにより、またはここに開示する他の手段によって構成することができることが好ましい。
【0186】
マイクロ流体デバイスは更に、例えば上に説明した構成とすることができる取り外し可能な蓋101cを備える。取り外し可能なこれらの蓋101cはそれぞれ、下地表面に接合しないフランジ101dを含むことができ、そして該当する蓋101cは、該当する前記フランジ101dを剥がすことにより取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1a】本発明によるマイクロ流体デバイスの模式図。
【図1b】流動遮断流路セクションの例を示す模式図。
【図1c】流動遮断流路セクションの例を示す模式図。
【図2a】流動遮断流路セクションを弱化ラインの形態で分岐流路セクションと結晶化流路セクションとの間に備える本発明のマイクロ流体デバイスの上面図。
【図2b】切断線A−A’に沿って切断したときの図aに示すマイクロ流体デバイスの側部断面図。
【図3a】流動遮断流路セクションを弱化ラインの形態で分岐流路セクションと結晶化流路セクションとの間に備え、そして更に別の流動遮断流路セクションを弱化ラインの形態で沈殿剤流入口に備える本発明のマイクロ流体デバイスの上面図。
【図3b】切断線A−A’に沿って切断したときの図aに示すマイクロ流体デバイスの側部断面図。
【図4a】使用中の種々の状態の本発明の別のマイクロ流体デバイスの側部断面図。
【図4b】使用中の種々の状態の本発明の別のマイクロ流体デバイスの側部断面図。
【図4c】使用中の種々の状態の本発明の別のマイクロ流体デバイスの側部断面図。
【図4d】使用中の種々の状態の本発明の別のマイクロ流体デバイスの側部断面図。
【図5a】使用中の種々の状態の本発明の別のマイクロ流体デバイスの或るセクションの側部断面図。
【図5b】使用中の種々の状態の本発明の別のマイクロ流体デバイスの或るセクションの側部断面図。
【図6a】本発明のマイクロ流体デバイスの上側部分を示す上面図。
【図6b】本発明のマイクロ流体デバイスの上側部分を示す上面図。
【図7a】本発明のマイクロ流体デバイスの第1部分、及びマイクロ流体デバイスの完成部分をそれぞれ示す上面図。
【図7b】本発明のマイクロ流体デバイスの第1部分、及びマイクロ流体デバイスの完成部分をそれぞれ示す上面図。
【図8】本発明のマイクロ流体デバイスの模式図。
【図9】本発明の第2の態様のマイクロ流体デバイスを示している斜視図。
【図10】本発明の別のマイクロ流体デバイスの上面図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的分子の結晶化を促進するマイクロ流体デバイスであって、前記デバイスは、上面及び反対側の底面を有し、かつ少なくとも一つの液体流路を有する固体構造を備え、前記液体流路は、標的分子溶液流入口と、そして少なくとも2つの沈殿剤流入口とを備え、前記標的分子溶液流入口は、これらの沈殿剤流入口の各沈殿剤流入口と前記液体流路を介して液体連通し、前記液体流路は、前記標的分子溶液流入口に隣接する分岐流路セクションと、該当する前記沈殿剤流入口に隣接する結晶化流路セクションと、前記分岐流路セクションと前記結晶化流路セクション群の各結晶化流路セクションとの間に配置される流動遮断流路セクションとを備え、前記液体流路は、前記分岐流路セクションにおいて1〜X個に分岐し、Xは結晶化流路セクションの数であり、そして前記流動遮断流路セクションは、該当する前記分岐流路セクションと結晶化流路セクションとの間の液体連通を遮断する機能を有する流動遮断機構を備えている、マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
前記流動遮断機構は、該当する流動遮断流路セクションにおける変位差の形態、またはa)分岐流路セクション、及びb)該当する前記流動遮断流路セクションに隣接する結晶化流路セクションの内の少なくとも一つから選択される前記流動遮断流路セクションを構成する固体構造における変位差の形態である、請求項1記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
前記流動遮断機構は、a)毛細管現象流動遮断部分、b)流路変位部分、及びc)弱化ライン流動遮断部分の内の少なくとも一つの部分の形態であり、a)毛細管現象流動遮断部分では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションが、隣接する前記結晶化流路セクションによって液体に作用する毛細管力よりも小さい毛細管力が前記流路の液体に作用するように構成され、b)流路変位部分では、流動遮断流路の内の少なくとも一部分が、分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションに対して垂直方向に変位し、そしてc)弱化ライン流動遮断部分では、前記固体構造に、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの液体流路を横切る弱化ラインが設けられる、請求項1及び2のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記少なくとも一つの流動遮断流路セクションは、隣接する前記結晶化流路セクションによって液体に作用する毛細管力よりも小さい毛細管力が前記流路の液体に作用するように構成され、前記流動遮断流路セクションには、毛細管現象流動停止部分が設けられ、この流動停止部分は、当該セクションの幾何学的形状及び/又は当該部分の表面張力によって構成される、請求項3記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前記液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの前記壁表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも一部分において、隣接する結晶化流路セクションにおける隣接する壁表面の表面張力よりも小さい表面張力を有することにより、流動遮断機構を構成する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
少なくとも一つの流動遮断流路セクションの前記壁表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくともほぼ全てのように、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも主要部分において、隣接する結晶化流路セクションにおける隣接する壁表面の表面張力よりも小さい表面張力を有することにより、流動遮断機構を構成する、請求項5記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
少なくとも一つの流動遮断流路セクションの前記壁表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも一部分において、隣接する結晶化流路セクション、及び隣接する分岐流路セクションの内の少なくとも一つのセクションにおける隣接する壁表面の表面張力よ
りも、少なくとも5ダイン(dynes)/cm、少なくとも10ダイン/cm、少なくとも20ダイン/cmのような大きさだけ大幅に小さい表面張力を有し、好ましくは、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの壁表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも一部分において、60ダイン/cm未満、10〜55ダイン/cmの範囲のように、73ダイン/cm未満の表面張力を有する、請求項5及び6のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
前記液体流路は少なくとも、当該流路の流動遮断流路セクションにおいて、四辺多角形断面形状を有することにより下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成し、好ましくは、少なくとも側部表面と、そして下部表面及び上部表面の内の一方の表面とは、60ダイン/cm未満、10〜55ダイン/cmの範囲のように、73ダイン/cm未満の表面張力を有する、請求項5乃至7のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
前記液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションの前記壁表面は、当該セクションの外周の少なくとも一部分において、少なくとも73ダイン/cm、少なくとも75ダイン/cm、少なくとも80ダイン/cmのように、少なくとも60ダイン/cmの表面張力を有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
前記液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションの前記液体流路は、四辺多角形断面形状を有することにより下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成し、好ましくは、少なくとも下部表面及び側部表面は、少なくとも73ダイン/cm、少なくとも75ダイン/cm、少なくとも80ダイン/cmのように、少なくとも60ダイン/cmの表面張力を有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
前記流動遮断流路セクションには、毛細管現象流動停止部分が設けられ、この流動停止部分は、当該セクションの幾何学的形状によって構成され、流動遮断流路セクションに沿った流路の最小断面寸法は、隣接する分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションに沿った流路の最小断面寸法よりも大きい、請求項4記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
流動遮断流路セクションは、隣接する分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションの断面積よりも大きい断面積を有する、請求項4乃至11のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項13】
液体流路は、少なくとも一つの断面寸法を有する急激な変化部分を、隣接する分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の一方のセクション、または両方のセクションの直ぐ傍に隣接する流動遮断流路セクションに含む、請求項11及び12のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項14】
少なくとも一つの流動遮断流路セクションは、隣接する結晶化流路セクションの断面積よりも大きい断面積を有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項15】
前記液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの相対的に大きな前記断面積の領域は、壁表面を、結晶化流路セクションの直ぐ傍に隣接する前記流動遮断流路セクションの流路の外周の主要部分に少なくとも沿って階段状に変位させることにより形成される、請求項14
記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項16】
前記液体流路は、四辺多角形断面形状を有することにより下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成し、好ましくは、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの相対的に大きな前記断面積の領域は、流動遮断流路セクションの少なくとも下部表面及び側部表面を、隣接する結晶化流路セクションに対して階段状に変位させることにより形成される、請求項14及び15のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項17】
隣接する流動遮断流路セクション及び結晶化流路セクションの流路の外周の主要部分に少なくとも沿った壁表面の階段状の前記変位によって、急峻に変化する変位部分が形成される、請求項14乃至16のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項18】
結晶化流路セクションの直ぐ傍に隣接する流動遮断流路セクションの流路の外周の主要部分に少なくとも沿った壁表面の階段状の前記変位によって、100度以下、90度以下、80度以下のように、120度以下の角度を有するエッジが形成される、請求項14乃至17のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項19】
流動遮断流路セクションの流路の外周の主要部分に少なくとも沿った壁表面の階段状の変位により形成される少なくとも一つの流動遮断流路セクションの相対的に大きな断面積は、隣接する結晶化流路セクションの断面積よりも少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%のように、少なくとも10%だけ大きい、請求項15乃至18のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項20】
少なくとも一つの流動遮断流路セクションは流路を変位させることにより形成され、流動遮断流路セクションを、隣接する結晶化流路セクションよりも少なくとも、そして好ましくは更に、分岐流路セクションの少なくとも一部分よりも少なくとも、相対的に高い位置に変位させ、相対的に高い位置は、デバイスの上面を基準として観測され、更に好ましくは、少なくとも一つの流動遮断流路セクションを、結晶化流路セクションを基準にして或る高さまで変位させることにより、デバイスが水平面に保持されている場合に、液体が結晶化流路セクションから分岐流路セクションに向かって逆流する現象を防止する、請求項3記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項21】
前記固体構造に、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの液体流路を横切る弱化ラインが設けられ、前記弱化ラインはデバイス全体を横切り、好ましくは前記弱化ラインは、流動遮断流路セクション群の全ての流動遮断流路セクションのように、2つ以上の流動遮断流路セクションを同時に横切る、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項22】
前記弱化ラインは、デバイス全体を、上面及び底面の内の少なくとも一つの面で横切るスリットの形態であり、スリットは、V字形またはU字形の内の一方の形状に形成されることが好ましい、請求項21記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項23】
前記スリットは、スリットに隣接するマイクロ流体デバイスの厚さの少なくとも15%、30〜90%の範囲、35〜80%の範囲のように、マイクロ流体デバイスの厚さの少なくとも10%の深さを有し、マイクロ流体デバイスの厚さは上面と、当該上面の反対側の底面との間の距離として定義される、請求項22記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項24】
前記2つ以上の沈殿剤流入口の各沈殿剤流入口は沈殿剤空洞と液体連通するように構成され、デバイスは好ましくは、各沈殿剤流入口に対応する少なくとも一つの沈殿剤空洞を備
える、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項25】
デバイスは、標的分子溶液を標的分子溶液流入口に供給する標的分子溶液流入口空洞を備える、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項26】
マイクロ流体デバイスは、同じ材料または異なる材料から成る2つ以上の部分により作製され、これらの部分は互いに、好ましくは接着法、溶接法、及び/又は機械的締め付け手段によって接続されている、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項27】
マイクロ流体デバイスは、少なくとも一つの第1部分と、そして少なくとも一つの蓋部分と、を備え、第1部分は第1面と、そして少なくとも液体流路の結晶化流路セクションを構成する溝を持つ溝面と、を有し、蓋部分は、少なくとも部分的に取り外し可能な複数の蓋を構成し、各蓋は第2面と、そして溝面と、を有し、取り外し可能な前記蓋は、溝の上に取り付けられ、かつ溝に沿って密閉されて、少なくとも液体流路の結晶化流路セクションを構成する、請求項26記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項28】
第1部分は、標的分子溶液を液体流路に供給する少なくとも一つの貫通開口部または凹部を有する、請求項27記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項29】
第1部分は、液体流路への沈殿剤流入口を構成する少なくとも一つの貫通開口部または凹部を有する、請求項27及び28のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項30】
取り外し可能な前記蓋は第1部分を超えて延び、取り外し可能な前記蓋は好ましくは、第1部分を超えて延びることにより、該当する蓋を個々に取り外すためのフランジを構成する、請求項27乃至29のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項31】
取り外し可能な複数の前記蓋はそれぞれフランジを含み、フランジは第1部分に接合されず、かつ前記フランジを剥がしてバラバラにすることにより、該当する蓋が該当する結晶化流路セクションから外れるように構成される、請求項27乃至30のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項32】
取り外し可能な複数の前記蓋は、該当する溝に沿って第1部分の溝面に、接着法及び/又は溶接法によって密閉される、請求項27乃至31のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項33】
取り外し可能な複数の前記蓋は互いに対して剥離可能に接続される、請求項27乃至32のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項34】
マイクロ流体デバイスは3つ以上の取り外し可能な蓋を備え、好ましくは、前記マイクロ流体デバイスは、前記結晶化流路セクション群の各セクションを覆う取り外し可能な蓋を備える、請求項27乃至33のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項35】
前記第1部分は、ガラス、セラミックス、金属、及びシリコン、ゲルマニウム、及び砒化ガリウムのような半導体材料、及び少なくとも0.5GPa(ギガパスカル)、少なくとも1GPaのように、少なくとも0.2GPaのヤング率を有するポリマーから成るグループから選択される材料により作製され、前記第1部分は、ほぼ透明であることが好ましい、請求項27乃至34のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項36】
前記少なくとも一つの蓋部分は、ポリマー箔または金属箔のような箔により作製される、請求項27乃至35のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項37】
前記箔を第1部分の溝面に貼り付け、溝に沿って溝面に接着させ、または溶接し、そして部分的に、または全てに切り込みを入れて複数の部分とすることにより、取り外し可能な複数の前記蓋を構成する、請求項36記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項38】
マイクロ流体デバイスは、ガラス、セラミックス、金属、及びシリコン、ゲルマニウム、及び砒化ガリウムのような半導体材料、及びポリマーから成るグループから選択される材料により作製される少なくとも一つの部分を備える、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項39】
請求項38記載のデバイスを利用する方法であって、マイクロ流体デバイスは、ポリマー材料、好ましくは射出成型可能なポリマーにより作製される少なくとも一つの部分を備え、ポリマー材料として、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレン(PE)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリサルフォン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン(PU)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリビニリデンクロライド(PVDC)、ポリビニリデンフッ化物、スチレン−アクリルコポリマー、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレン、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、シリコーン、エポキシ樹脂、ポリエーテルブロックアミド、ポリエステル、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリル系、セルロイド、セルロースアセテート、エチレン−ビニルアセテート(EVA)、エチレンビニルアルコール(EVAL)、フッ素樹脂(FEP,PFA,CTFE,ECTFE,ETFEを含むPTFE)、ポリアセタル(POM)、ポリアクリレート(アクリル系)、ポリアクリロニトリル(PAN)ポリアミド(PA)、ポリアミド−イミド(PAI)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)、ポリブタジエン(PBD)、ポリブチレン(PB)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリケトン(PK)、ポリエステル/ポリテン/ポリエテン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルサルフォン(PES)、塩素化ポリエチレン(PEC)、ポリイミド(PI)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、硫化ポリフェニレン(PPS)、ポリフタルアミド(PPA)、及び上に列挙した材料の混合物から成るグループから選択されるポリマーを挙げることができ、好ましくは、デバイスの少なくとも一部分が、光学検査を行なうことができる透明性を有する、方法。
【請求項40】
これらの部分の内の少なくとも一つの部分がスリットの形態の弱化ラインを含む、請求項26乃至39のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項41】
マイクロ流体デバイスは、少なくとも下側部分及び上側部分により作製され、下側部分及び上側部分の内の少なくとも一つの部分は、液体流路を構成する溝を含み、そして下側部分及び上側部分の内の少なくとも一つの部分は、標的分子溶液流入口空洞用の開口部と、そして沈殿剤空洞用の開口部/凹部と、を含み、前記下側部分及び前記上側部分は高い剛性を示すことが好ましい、請求項26乃至39のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項42】
マイクロ流体デバイスは、下側部分及び上側部分により作製され、下側部分及び上側部分は互いに対して、接着法、溶接法、及び/又は機械的締め付け手段によって固定されることにより、液体流路をこれらの部分の間に形成する、請求項41記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項43】
マイクロ流体デバイスは、少なくとも下側部分、上側部分、及びシーリング層の形態のシーリング部分により作製され、上側部分は液体流路を構成する溝と、そして任意であるが、標的分子溶液流入口空洞用の開口部と、そして沈殿剤空洞用の開口部/凹部と、を含み、シーリング部分は、上側部分と下側部分との間に挟まれてシーリング部分が前記溝及び前記開口部を覆い、そして下側部分が前記シーリング部分を支持するようになる、請求項41記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項44】
前記下側部分は、ほぼ凹凸の無いプレートの形態であり、好ましくはガラスまたはポリマーにより作製される、請求項41乃至43のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項45】
前記下側部分は、シーリング層を、シーリング層が上側部分の溝を覆うことにより、結晶化流路セクションを形成する領域において少なくとも支持し、好ましくは前記上側部分は、結晶化流路セクションを横切る弱化ラインを含み、前記弱化ラインは、上側部分の内、下側部分を超えて延びる部分に位置することが好ましく、これによってデバイスを、前記弱化ラインに沿って下側層を破断することなく破断することができる、請求項43乃至44のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項46】
マイクロ流体デバイスは、少なくとも下側部分、及びシーリング層の形態のシーリング部分により作製され、上側部分は液体流路を構成する溝と、そして標的分子溶液流入口空洞及び沈殿剤空洞に対応する開口部と、を含み、シーリング部分を前記上側部分に接続して、シーリング部分が前記溝及び前記開口部を覆うようにする、請求項26乃至39のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項47】
前記上側部分は、結晶化流路セクションを横切る弱化ラインを含み、これによってデバイスを、前記弱化ラインに沿って破断することができる、請求項46記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項48】
シーリング部分は、20〜70shoreA(ショアA)のように、90shoreA以下の硬度を有する、請求項43乃至47のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項49】
シーリング部分は、ポリマー材料、好ましくはエラストマーから成り、更に好ましくは熱可塑性エラストマー及びゴムから成るグループから選択される材料から成る、請求項34乃至48のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項50】
シーリング部分は、ほぼ凹凸の無いプレートの形態である、請求項43乃至48のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項51】
前記標的分子溶液流入口空洞は前記上面における空洞の形態であり、前記空洞は、前記分岐流路セクションと前記標的分子溶液流入口を介して液体連通し、前記標的分子溶液流入口空洞は好ましくは、上部表面から標的分子溶液流入口に達する円錐形を有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項52】
前記標的分子溶液流入口空洞は、結晶化流路セクション群の容積の少なくとも2倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.1倍のように、例えば0.05〜20μl、0.1〜10μl、0.2〜5μl、0.5〜3μlのように、結晶化流路セクション群の少なくとも合計容積となる容積を有する、請求項51記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項53】
前記沈殿剤空洞群の内の少なくとも一つの沈殿剤空洞は、部分的に閉じた空洞の形態であ
り、部分的に閉じた空洞は、沈殿剤で予め充填されていることが好ましい、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項54】
前記沈殿剤空洞群の内の少なくとも一つの沈殿剤空洞は、前記上面における流入口空洞の形態であり、前記空洞は、前記結晶化流路セクションと前記沈殿剤流入口を介して液体連通し、前記沈殿剤流入口空洞は、上部表面から標的分子溶液流入口に達する円錐形を有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項55】
少なくとも一つの結晶化流路セクションは、沈殿剤流入口の中に、または沈殿剤流入口に隣接して配置される毛細管現象流動停止部分を有し、毛細管現象流動停止部分は、階段状に、かつ好ましくは結晶化流路セクションから沈殿剤空洞に向かって急激に広がる部分によって形成されることが好ましく、好ましくは結晶化流路セクション群の全てが、これらの結晶化流路セクションに隣接する沈殿剤流入口の中に、または沈殿剤流入口に隣接して配置される毛細管現象流動停止部分を有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項56】
結晶化流路セクションから沈殿剤空洞に向かって階段状に広がる部分は、100度以下、90度以下、80度以下のように、120度以下の角度を有するエッジを形成する、請求項51記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項57】
前記沈殿剤空洞は、0.02〜5μl、0.5〜2μl、0.7〜1.3μlのように、0.01〜10μlの容積を有する、請求項24、及び請求項53乃至56のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項58】
上面、及び反対側の底面は、流入口空洞と、そして任意であるが、沈殿剤空洞と、そして/または弱化ラインと、を除いて、ほぼ平坦である、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項59】
前記液体流路はX個の結晶化流路セクションを含み、Xは、2〜400、4〜100、8〜48、8〜24のように、2〜1000の値である、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項60】
前記液体流路は、当該流路の長さの主要部分において、毛細管現象を起こす寸法を有し、好ましくは、前記液体流路は、少なくとも分岐流路セクション及び結晶化流路セクションにおいて、毛細管現象を起こす寸法を有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項61】
前記液体流路は、当該流路の長さの主要部分において、10μm〜250μm、20μm〜100μmのように、1000μm未満の少なくとも一つの断面寸法を有し、好ましくは、前記液体流路は、少なくとも分岐流路セクション及び結晶化流路セクションにおいて、10μm〜250μm、20μm〜100μmのように、1000μm未満の少なくとも一つの断面寸法を有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項62】
前記液体流路は、少なくとも前記結晶化流路セクションにおいて、好ましくは当該セクションの長さ全体において、下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成する四辺多角形断面形状を有し、前記四辺多角形断面形状は台形であることが好ましく、この場合の2つの側部表面は下部表面に対して、90〜110度、90〜100度、90〜95度のように、90度超〜120度の範囲の角度を有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項63】
前記液体流路は、少なくとも結晶化流路セクションにおいて、高さが、下部表面と上部表面との間の平均距離であり、そして幅が、2つの側部表面の間の平均距離であるような幅及び高さの断面形状を有し、幅及び高さは好ましくは、互いに依存することなく、10〜300μmである、請求項62記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項64】
前記分岐流路セクションは2つ以上の分岐位置を含む、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項65】
前記流動遮断流路セクションは、5〜5000μm、10〜1000μm、20〜200μmのように、1〜10000μmの長さを有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項66】
前記流動遮断流路セクションは、液体流路を横切る弱化ラインの形態であり、前記流動遮断流路セクションは、最大約4000μm、最大約3000μm、最大約1000μm、最大約100μm、1〜50μmのように、最大約10000μm長さを有し、これらの長さは、弱化ラインの幅が上面と同じ平面で測定される場合に弱化ラインが横切る液体流路の長さとして定義される、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項67】
前記流動遮断機構は、液体流路における毛細管現象流動停止部分の形態であり、前記流動遮断流路セクションは、1〜10000μm、10〜5000μm、20〜2000μmのように、最大約10mmの長さを有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項68】
前記結晶化流路セクションは、20〜30000μm、40〜15000μm、100〜10000μmのように、10〜50000μmの長さを有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項69】
前記結晶化流路セクション群は、互いにほぼ平行である、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項70】
前記沈殿剤空洞群は互いからの距離が、0.5〜5mm、1〜3mm、1.5〜2.5mmのように、少なくとも0.1mmの最小距離である、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項71】
前記デバイスは更に、前記固体構造に配置されて、該当する前記沈殿剤流入口に隣接する前記結晶化流路セクションを横切る弱化ラインを備える、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項72】
前記デバイスは更に、好ましくは前記沈殿剤流入口に隣接する前記結晶化流路セクション群の内の少なくとも一つのセクションに組み込まれる膜を備える、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項73】
前記膜は、標的分子が沈殿剤に、沈殿剤流入口と液体を介して接触するようにして拡散する現象を防止する濾過膜であり、前記膜は、メルトブローンされたガラス繊維、スパンボンドされた合成繊維(例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエーテルスルフォン)、半合成繊維、再生繊維、及び無機繊維、及び上に列挙した繊維の混合物のような繊維材料;及び発泡ポリマーから成るグループから選択される材料群の内の一つ以上の材料により作製される多孔質膜であることが好ましく、更に好ましくは、前記膜は多孔質ニトロセルロースである、請求項72記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項74】
水溶液中の前記標的分子溶液が任意であるが、一つ以上の洗浄剤を含む、標的分子溶液と組み合わせた前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項75】
前記流動遮断機構は毛細管現象流動遮断部の形態であり、毛細管現象流動遮断機構では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションは、隣接する前記結晶化流路セクションによって標的分子溶液に作用する毛細管力よりも小さい毛細管力が前記流路の標的分子溶液に作用するように構成される、請求項74記載の標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイス。
【請求項76】
前記液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの前記壁表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも一部分において、標的分子溶液の表面張力よりも小さい表面張力を有する、請求項74及び75のいずれか一項に記載の標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイス。
【請求項77】
前記液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、少なくとも一つの結晶化流路セクションの前記壁表面は、当該結晶化流路セクションの外周の少なくとも一部分において、標的分子溶液の表面張力よりも大きい表面張力を有する、請求項74乃至76のいずれか一項に記載の標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイス。
【請求項78】
前記液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、前記液体流路は少なくとも、一つの結晶化流路セクションにおいて、四辺多角形断面形状を有することにより下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成し、好ましくは、少なくとも下部表面及び側部表面は、標的分子溶液の表面張力よりも大きい表面張力を有する、請求項74乃至77のいずれか一項に記載の標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイス。
【請求項79】
前記液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、前記分岐流路セクションの前記壁表面は、当該分岐流路セクションの外周の少なくとも一部分において、標的分子溶液の表面張力よりも大きい表面張力を有する、請求項74乃至78のいずれか一項に記載の標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイス。
【請求項80】
前記液体流路は、当該流路の長さの主要部分において、毛細管現象を起こす寸法を有し、好ましくは、前記液体流路は、少なくとも分岐流路セクション及び結晶化流路セクションにおいて、毛細管現象を起こす寸法を有し、毛細管現象を起こす寸法は、標的分子溶液に関して導出される、請求項74乃至79のいずれか一項に記載の標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイス。
【請求項81】
標的分子溶液に溶解している標的分子の結晶化を、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイスを使用して促進する方法であって、前記方法では:
v)標的分子溶液を調製し、標的分子溶液を標的分子溶液流入口に供給し、そして標的分子溶液で結晶化流路セクションを充填することができるようにし;
vi)少なくとも一つの沈殿剤を調製し、そして沈殿剤を、少なくとも一つの沈殿剤流入口と液体連通するように配置し;
vii)沈殿剤が結晶化流路セクションの標的分子溶液に拡散することができるようにし;そして
viii)該当する前記標的分子結晶化流路セクション群の間の液体連通を遮断する、
方法。
【請求項82】
標的分子溶液は、タンパク質、核酸、核酸類似物、炭水化物、脂質から成るグループから選択される、更に好ましくは、500ダルトン以上のタンパク質、単鎖及び二本鎖のDNA,RNA,PNA,及びLNA,及び薬剤候補から成るグループから選択される少なくとも一つの種類の標的分子から成る溶液である、請求項81記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項83】
標的分子溶液は標的分子溶液流入口に直接供給される、または標的分子溶液を標的分子溶液流入口空洞に流し込むことにより直接供給される、請求項81及び82のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項84】
沈殿剤(群)が予め沈殿剤空洞に充填される、請求項81乃至83のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項85】
沈殿剤(群)は、該当する沈殿剤流入口を、沈殿剤を収容するウェルに接続することにより、該当する沈殿剤流入口と液体連通するようになるように配置される、請求項81乃至83のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項86】
沈殿剤(群)は、沈殿剤をデバイスの沈殿剤空洞に供給することにより、該当する沈殿剤流入口と液体連通するようになるように配置される、請求項81乃至83のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項87】
該当する前記標的分子結晶化流路セクション群の間の液体連通は、液体流路の毛細管吸引力によって、または流動遮断流路セクション群の変位によって自動的に遮断される、請求項81乃至86のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項88】
該当する前記標的分子結晶化流路セクション群の間の液体連通は、デバイスを、流動遮断流路セクションを横切る弱化ラインに沿って破断することにより遮断される、請求項81乃至87のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項89】
沈殿剤を標的分子結晶化流路セクションに所望時間に亘って拡散させることができるようにし、その後、沈殿剤と標的分子結晶化流路セクションとの間の液体連通が終了する、請求項81乃至88のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項90】
更に、結晶化流路セクションに通じる少なくとも一つの流入口、好ましくは全ての流入口を密閉して流入口からの蒸発を防止する、請求項81乃至89のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項91】
一つ以上の流入口は:
a)パラフィンワックスまたはポリエチレンワックスのようなワックスを塗って流入口(群)を密閉するステップ;及び
b)ポリマーまたはガラスにより作製される固着要素のような透明であることが好ましい固着要素、例えばポリマースライドまたはガラススライドを固定するステップ、
の内の一つ以上のステップによって密閉される、請求項90記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項92】
更に、培養をマイクロ流体デバイスを用いて行ない、そして結晶の形成及び/又は成長を可能にする、請求項81乃至91のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項93】
更に、形成/成長結晶を、結晶化流路セクション群の内の一つ以上のセクションから取り出し、結晶は好ましくは:
a)デバイスを破断して少なくとも2つの部分として、結晶化流路セクション群を構成している部分を分離し、そして結晶を取り出すステップ;
b)選択した一つ以上の結晶化流路セクション(群)の下側部分または上側部分を選択的に取り外し、そして結晶を取り出すステップ;及び
c)結晶を結晶化流路セクション(群)から吸い上げる、または押し出すステップ、
の内の一つ以上のステップによって取り出される、請求項81乃至92のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項94】
標的分子の結晶化を促進するマイクロ流体デバイスであって、前記デバイスは、第1面及び反対側の第2面を有し、かつ少なくとも一つの液体流路を有する固体構造を備え、前記液体流路は、標的分子溶液流入口と、そして少なくとも一つの沈殿剤流入口と、を含み、標的分子溶液流入口は、前記沈殿剤流入口と前記液体流路を介して液体連通し、前記液体流路は、前記沈殿剤流入口に隣接する結晶化流路セクションを含み、前記マイクロ流体デバイスは少なくとも一つの第1部分と、そして少なくとも一つの蓋部分と、を備え、第1部分は第1面と、少なくとも一つの溝を持つ溝面と、を有することにより前記結晶化流路セクションを構成し、蓋部分は少なくとも部分的に取り外し可能な蓋を構成し、前記蓋は第2面及び溝面を有し、取り外し可能な前記蓋を前記溝の上に取り付け、そして液体流路の前記結晶化流路セクションに対して前記溝に沿って密閉する、マイクロ流体デバイス。
【請求項95】
第1部分は、液体流路への標的分子溶液流入口を構成する少なくとも一つの貫通開口部または凹部を有する、請求項94記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項96】
第1部分は、液体流路への沈殿剤流入口を構成する少なくとも一つの貫通開口部または凹部を有する、請求項94及び95のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項97】
取り外し可能な前記蓋は第1部分を超えて延び、取り外し可能な前記蓋は好ましくは、第1部分を超えて延びることにより、前記蓋を取り外すためのフランジを構成する、請求項94乃至96のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項98】
取り外し可能な前記蓋はフランジを含み、フランジは第1部分に接合されず、かつ前記フランジを剥がしてバラバラにすることにより、蓋が結晶化流路セクションから外れるように構成される、請求項94乃至97のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項99】
取り外し可能な前記蓋は、溝に沿って第1部分の溝面に、接着法及び/又は溶接法によって密閉される、請求項94乃至98のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項100】
前記マイクロ流体デバイスは2つ以上の液体流路を備え、これらの液体流路は結晶化流路セクションを含み、かつ各液体流路は標的分子溶液流入口及び沈殿剤流入口に接続され、前記結晶化流路セクション群の各セクションは取り外し可能な蓋で覆われることが好ましく、これらの蓋は任意であるが、互いに対して剥離可能に接続される、請求項94乃至99のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項101】
前記マイクロ流体デバイスは3つ以上の取り外し可能な蓋を備える、請求項94乃至100のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項102】
前記第1部分は、ガラス、セラミックス、金属、及びシリコン、ゲルマニウム、及び砒化ガリウムのような半導体材料、及び少なくとも0.5GPa(ギガパスカル)、少なくとも1GPaのように、少なくとも0.2GPaのヤング率を有するポリマーから成るグル
ープから選択される材料により作製され、前記第1部分は、ほぼ透明であることが好ましい、請求項94乃至101のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項103】
前記少なくとも一つの蓋部分は、ポリマー箔または金属箔のような箔により作製される、請求項94乃至102のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項104】
前記箔を第1部分の溝面に貼り付け、溝(群)に沿って溝面に接着させ、または溶接し、そして部分的に、または全てに切り込みを入れて複数の部分とすることにより、取り外し可能な複数の前記蓋を構成する、請求項103記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項1】
標的分子の結晶化を促進するマイクロ流体デバイスであって、前記デバイスは、上面及び反対側の底面を有し、かつ少なくとも一つの液体流路を有する固体構造を備え、前記液体流路は、標的分子溶液流入口と、そして少なくとも2つの沈殿剤流入口とを備え、前記標的分子溶液流入口は、これらの沈殿剤流入口の各沈殿剤流入口と前記液体流路を介して液体連通し、前記液体流路は、前記標的分子溶液流入口に隣接する分岐流路セクションと、該当する前記沈殿剤流入口に隣接する結晶化流路セクションと、前記分岐流路セクションと前記結晶化流路セクション群の各結晶化流路セクションとの間に配置される流動遮断流路セクションとを備え、前記液体流路は、前記分岐流路セクションにおいて1〜X個に分岐し、Xは結晶化流路セクションの数であり、そして前記流動遮断流路セクションは、該当する前記分岐流路セクションと結晶化流路セクションとの間の液体連通を遮断する機能を有する流動遮断機構を備えている、マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
前記流動遮断機構は、該当する流動遮断流路セクションにおける変位差の形態、またはa)分岐流路セクション、及びb)該当する前記流動遮断流路セクションに隣接する結晶化流路セクションの内の少なくとも一つから選択される前記流動遮断流路セクションを構成する固体構造における変位差の形態である、請求項1記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
前記流動遮断機構は、a)毛細管現象流動遮断部分、b)流路変位部分、及びc)弱化ライン流動遮断部分の内の少なくとも一つの部分の形態であり、a)毛細管現象流動遮断部分では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションが、隣接する前記結晶化流路セクションによって液体に作用する毛細管力よりも小さい毛細管力が前記流路の液体に作用するように構成され、b)流路変位部分では、流動遮断流路の内の少なくとも一部分が、分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションに対して垂直方向に変位し、そしてc)弱化ライン流動遮断部分では、前記固体構造に、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの液体流路を横切る弱化ラインが設けられる、請求項1及び2のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記少なくとも一つの流動遮断流路セクションは、隣接する前記結晶化流路セクションによって液体に作用する毛細管力よりも小さい毛細管力が前記流路の液体に作用するように構成され、前記流動遮断流路セクションには、毛細管現象流動停止部分が設けられ、この流動停止部分は、当該セクションの幾何学的形状及び/又は当該部分の表面張力によって構成される、請求項3記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前記液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの前記壁表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも一部分において、隣接する結晶化流路セクションにおける隣接する壁表面の表面張力よりも小さい表面張力を有することにより、流動遮断機構を構成する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
少なくとも一つの流動遮断流路セクションの前記壁表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくともほぼ全てのように、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも主要部分において、隣接する結晶化流路セクションにおける隣接する壁表面の表面張力よりも小さい表面張力を有することにより、流動遮断機構を構成する、請求項5記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
少なくとも一つの流動遮断流路セクションの前記壁表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも一部分において、隣接する結晶化流路セクション、及び隣接する分岐流路セクションの内の少なくとも一つのセクションにおける隣接する壁表面の表面張力よ
りも、少なくとも5ダイン(dynes)/cm、少なくとも10ダイン/cm、少なくとも20ダイン/cmのような大きさだけ大幅に小さい表面張力を有し、好ましくは、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの壁表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも一部分において、60ダイン/cm未満、10〜55ダイン/cmの範囲のように、73ダイン/cm未満の表面張力を有する、請求項5及び6のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
前記液体流路は少なくとも、当該流路の流動遮断流路セクションにおいて、四辺多角形断面形状を有することにより下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成し、好ましくは、少なくとも側部表面と、そして下部表面及び上部表面の内の一方の表面とは、60ダイン/cm未満、10〜55ダイン/cmの範囲のように、73ダイン/cm未満の表面張力を有する、請求項5乃至7のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
前記液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションの前記壁表面は、当該セクションの外周の少なくとも一部分において、少なくとも73ダイン/cm、少なくとも75ダイン/cm、少なくとも80ダイン/cmのように、少なくとも60ダイン/cmの表面張力を有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
前記液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションの前記液体流路は、四辺多角形断面形状を有することにより下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成し、好ましくは、少なくとも下部表面及び側部表面は、少なくとも73ダイン/cm、少なくとも75ダイン/cm、少なくとも80ダイン/cmのように、少なくとも60ダイン/cmの表面張力を有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
前記流動遮断流路セクションには、毛細管現象流動停止部分が設けられ、この流動停止部分は、当該セクションの幾何学的形状によって構成され、流動遮断流路セクションに沿った流路の最小断面寸法は、隣接する分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションに沿った流路の最小断面寸法よりも大きい、請求項4記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
流動遮断流路セクションは、隣接する分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の少なくとも一つのセクションの断面積よりも大きい断面積を有する、請求項4乃至11のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項13】
液体流路は、少なくとも一つの断面寸法を有する急激な変化部分を、隣接する分岐流路セクション及び結晶化流路セクションの内の一方のセクション、または両方のセクションの直ぐ傍に隣接する流動遮断流路セクションに含む、請求項11及び12のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項14】
少なくとも一つの流動遮断流路セクションは、隣接する結晶化流路セクションの断面積よりも大きい断面積を有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項15】
前記液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの相対的に大きな前記断面積の領域は、壁表面を、結晶化流路セクションの直ぐ傍に隣接する前記流動遮断流路セクションの流路の外周の主要部分に少なくとも沿って階段状に変位させることにより形成される、請求項14
記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項16】
前記液体流路は、四辺多角形断面形状を有することにより下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成し、好ましくは、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの相対的に大きな前記断面積の領域は、流動遮断流路セクションの少なくとも下部表面及び側部表面を、隣接する結晶化流路セクションに対して階段状に変位させることにより形成される、請求項14及び15のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項17】
隣接する流動遮断流路セクション及び結晶化流路セクションの流路の外周の主要部分に少なくとも沿った壁表面の階段状の前記変位によって、急峻に変化する変位部分が形成される、請求項14乃至16のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項18】
結晶化流路セクションの直ぐ傍に隣接する流動遮断流路セクションの流路の外周の主要部分に少なくとも沿った壁表面の階段状の前記変位によって、100度以下、90度以下、80度以下のように、120度以下の角度を有するエッジが形成される、請求項14乃至17のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項19】
流動遮断流路セクションの流路の外周の主要部分に少なくとも沿った壁表面の階段状の変位により形成される少なくとも一つの流動遮断流路セクションの相対的に大きな断面積は、隣接する結晶化流路セクションの断面積よりも少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%のように、少なくとも10%だけ大きい、請求項15乃至18のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項20】
少なくとも一つの流動遮断流路セクションは流路を変位させることにより形成され、流動遮断流路セクションを、隣接する結晶化流路セクションよりも少なくとも、そして好ましくは更に、分岐流路セクションの少なくとも一部分よりも少なくとも、相対的に高い位置に変位させ、相対的に高い位置は、デバイスの上面を基準として観測され、更に好ましくは、少なくとも一つの流動遮断流路セクションを、結晶化流路セクションを基準にして或る高さまで変位させることにより、デバイスが水平面に保持されている場合に、液体が結晶化流路セクションから分岐流路セクションに向かって逆流する現象を防止する、請求項3記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項21】
前記固体構造に、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの液体流路を横切る弱化ラインが設けられ、前記弱化ラインはデバイス全体を横切り、好ましくは前記弱化ラインは、流動遮断流路セクション群の全ての流動遮断流路セクションのように、2つ以上の流動遮断流路セクションを同時に横切る、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項22】
前記弱化ラインは、デバイス全体を、上面及び底面の内の少なくとも一つの面で横切るスリットの形態であり、スリットは、V字形またはU字形の内の一方の形状に形成されることが好ましい、請求項21記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項23】
前記スリットは、スリットに隣接するマイクロ流体デバイスの厚さの少なくとも15%、30〜90%の範囲、35〜80%の範囲のように、マイクロ流体デバイスの厚さの少なくとも10%の深さを有し、マイクロ流体デバイスの厚さは上面と、当該上面の反対側の底面との間の距離として定義される、請求項22記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項24】
前記2つ以上の沈殿剤流入口の各沈殿剤流入口は沈殿剤空洞と液体連通するように構成され、デバイスは好ましくは、各沈殿剤流入口に対応する少なくとも一つの沈殿剤空洞を備
える、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項25】
デバイスは、標的分子溶液を標的分子溶液流入口に供給する標的分子溶液流入口空洞を備える、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項26】
マイクロ流体デバイスは、同じ材料または異なる材料から成る2つ以上の部分により作製され、これらの部分は互いに、好ましくは接着法、溶接法、及び/又は機械的締め付け手段によって接続されている、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項27】
マイクロ流体デバイスは、少なくとも一つの第1部分と、そして少なくとも一つの蓋部分と、を備え、第1部分は第1面と、そして少なくとも液体流路の結晶化流路セクションを構成する溝を持つ溝面と、を有し、蓋部分は、少なくとも部分的に取り外し可能な複数の蓋を構成し、各蓋は第2面と、そして溝面と、を有し、取り外し可能な前記蓋は、溝の上に取り付けられ、かつ溝に沿って密閉されて、少なくとも液体流路の結晶化流路セクションを構成する、請求項26記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項28】
第1部分は、標的分子溶液を液体流路に供給する少なくとも一つの貫通開口部または凹部を有する、請求項27記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項29】
第1部分は、液体流路への沈殿剤流入口を構成する少なくとも一つの貫通開口部または凹部を有する、請求項27及び28のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項30】
取り外し可能な前記蓋は第1部分を超えて延び、取り外し可能な前記蓋は好ましくは、第1部分を超えて延びることにより、該当する蓋を個々に取り外すためのフランジを構成する、請求項27乃至29のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項31】
取り外し可能な複数の前記蓋はそれぞれフランジを含み、フランジは第1部分に接合されず、かつ前記フランジを剥がしてバラバラにすることにより、該当する蓋が該当する結晶化流路セクションから外れるように構成される、請求項27乃至30のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項32】
取り外し可能な複数の前記蓋は、該当する溝に沿って第1部分の溝面に、接着法及び/又は溶接法によって密閉される、請求項27乃至31のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項33】
取り外し可能な複数の前記蓋は互いに対して剥離可能に接続される、請求項27乃至32のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項34】
マイクロ流体デバイスは3つ以上の取り外し可能な蓋を備え、好ましくは、前記マイクロ流体デバイスは、前記結晶化流路セクション群の各セクションを覆う取り外し可能な蓋を備える、請求項27乃至33のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項35】
前記第1部分は、ガラス、セラミックス、金属、及びシリコン、ゲルマニウム、及び砒化ガリウムのような半導体材料、及び少なくとも0.5GPa(ギガパスカル)、少なくとも1GPaのように、少なくとも0.2GPaのヤング率を有するポリマーから成るグループから選択される材料により作製され、前記第1部分は、ほぼ透明であることが好ましい、請求項27乃至34のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項36】
前記少なくとも一つの蓋部分は、ポリマー箔または金属箔のような箔により作製される、請求項27乃至35のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項37】
前記箔を第1部分の溝面に貼り付け、溝に沿って溝面に接着させ、または溶接し、そして部分的に、または全てに切り込みを入れて複数の部分とすることにより、取り外し可能な複数の前記蓋を構成する、請求項36記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項38】
マイクロ流体デバイスは、ガラス、セラミックス、金属、及びシリコン、ゲルマニウム、及び砒化ガリウムのような半導体材料、及びポリマーから成るグループから選択される材料により作製される少なくとも一つの部分を備える、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項39】
請求項38記載のデバイスを利用する方法であって、マイクロ流体デバイスは、ポリマー材料、好ましくは射出成型可能なポリマーにより作製される少なくとも一つの部分を備え、ポリマー材料として、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレン(PE)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリサルフォン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン(PU)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリビニリデンクロライド(PVDC)、ポリビニリデンフッ化物、スチレン−アクリルコポリマー、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレン、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)、シリコーン、エポキシ樹脂、ポリエーテルブロックアミド、ポリエステル、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリル系、セルロイド、セルロースアセテート、エチレン−ビニルアセテート(EVA)、エチレンビニルアルコール(EVAL)、フッ素樹脂(FEP,PFA,CTFE,ECTFE,ETFEを含むPTFE)、ポリアセタル(POM)、ポリアクリレート(アクリル系)、ポリアクリロニトリル(PAN)ポリアミド(PA)、ポリアミド−イミド(PAI)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)、ポリブタジエン(PBD)、ポリブチレン(PB)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリケトン(PK)、ポリエステル/ポリテン/ポリエテン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルサルフォン(PES)、塩素化ポリエチレン(PEC)、ポリイミド(PI)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、硫化ポリフェニレン(PPS)、ポリフタルアミド(PPA)、及び上に列挙した材料の混合物から成るグループから選択されるポリマーを挙げることができ、好ましくは、デバイスの少なくとも一部分が、光学検査を行なうことができる透明性を有する、方法。
【請求項40】
これらの部分の内の少なくとも一つの部分がスリットの形態の弱化ラインを含む、請求項26乃至39のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項41】
マイクロ流体デバイスは、少なくとも下側部分及び上側部分により作製され、下側部分及び上側部分の内の少なくとも一つの部分は、液体流路を構成する溝を含み、そして下側部分及び上側部分の内の少なくとも一つの部分は、標的分子溶液流入口空洞用の開口部と、そして沈殿剤空洞用の開口部/凹部と、を含み、前記下側部分及び前記上側部分は高い剛性を示すことが好ましい、請求項26乃至39のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項42】
マイクロ流体デバイスは、下側部分及び上側部分により作製され、下側部分及び上側部分は互いに対して、接着法、溶接法、及び/又は機械的締め付け手段によって固定されることにより、液体流路をこれらの部分の間に形成する、請求項41記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項43】
マイクロ流体デバイスは、少なくとも下側部分、上側部分、及びシーリング層の形態のシーリング部分により作製され、上側部分は液体流路を構成する溝と、そして任意であるが、標的分子溶液流入口空洞用の開口部と、そして沈殿剤空洞用の開口部/凹部と、を含み、シーリング部分は、上側部分と下側部分との間に挟まれてシーリング部分が前記溝及び前記開口部を覆い、そして下側部分が前記シーリング部分を支持するようになる、請求項41記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項44】
前記下側部分は、ほぼ凹凸の無いプレートの形態であり、好ましくはガラスまたはポリマーにより作製される、請求項41乃至43のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項45】
前記下側部分は、シーリング層を、シーリング層が上側部分の溝を覆うことにより、結晶化流路セクションを形成する領域において少なくとも支持し、好ましくは前記上側部分は、結晶化流路セクションを横切る弱化ラインを含み、前記弱化ラインは、上側部分の内、下側部分を超えて延びる部分に位置することが好ましく、これによってデバイスを、前記弱化ラインに沿って下側層を破断することなく破断することができる、請求項43乃至44のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項46】
マイクロ流体デバイスは、少なくとも下側部分、及びシーリング層の形態のシーリング部分により作製され、上側部分は液体流路を構成する溝と、そして標的分子溶液流入口空洞及び沈殿剤空洞に対応する開口部と、を含み、シーリング部分を前記上側部分に接続して、シーリング部分が前記溝及び前記開口部を覆うようにする、請求項26乃至39のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項47】
前記上側部分は、結晶化流路セクションを横切る弱化ラインを含み、これによってデバイスを、前記弱化ラインに沿って破断することができる、請求項46記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項48】
シーリング部分は、20〜70shoreA(ショアA)のように、90shoreA以下の硬度を有する、請求項43乃至47のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項49】
シーリング部分は、ポリマー材料、好ましくはエラストマーから成り、更に好ましくは熱可塑性エラストマー及びゴムから成るグループから選択される材料から成る、請求項34乃至48のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項50】
シーリング部分は、ほぼ凹凸の無いプレートの形態である、請求項43乃至48のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項51】
前記標的分子溶液流入口空洞は前記上面における空洞の形態であり、前記空洞は、前記分岐流路セクションと前記標的分子溶液流入口を介して液体連通し、前記標的分子溶液流入口空洞は好ましくは、上部表面から標的分子溶液流入口に達する円錐形を有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項52】
前記標的分子溶液流入口空洞は、結晶化流路セクション群の容積の少なくとも2倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.1倍のように、例えば0.05〜20μl、0.1〜10μl、0.2〜5μl、0.5〜3μlのように、結晶化流路セクション群の少なくとも合計容積となる容積を有する、請求項51記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項53】
前記沈殿剤空洞群の内の少なくとも一つの沈殿剤空洞は、部分的に閉じた空洞の形態であ
り、部分的に閉じた空洞は、沈殿剤で予め充填されていることが好ましい、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項54】
前記沈殿剤空洞群の内の少なくとも一つの沈殿剤空洞は、前記上面における流入口空洞の形態であり、前記空洞は、前記結晶化流路セクションと前記沈殿剤流入口を介して液体連通し、前記沈殿剤流入口空洞は、上部表面から標的分子溶液流入口に達する円錐形を有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項55】
少なくとも一つの結晶化流路セクションは、沈殿剤流入口の中に、または沈殿剤流入口に隣接して配置される毛細管現象流動停止部分を有し、毛細管現象流動停止部分は、階段状に、かつ好ましくは結晶化流路セクションから沈殿剤空洞に向かって急激に広がる部分によって形成されることが好ましく、好ましくは結晶化流路セクション群の全てが、これらの結晶化流路セクションに隣接する沈殿剤流入口の中に、または沈殿剤流入口に隣接して配置される毛細管現象流動停止部分を有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項56】
結晶化流路セクションから沈殿剤空洞に向かって階段状に広がる部分は、100度以下、90度以下、80度以下のように、120度以下の角度を有するエッジを形成する、請求項51記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項57】
前記沈殿剤空洞は、0.02〜5μl、0.5〜2μl、0.7〜1.3μlのように、0.01〜10μlの容積を有する、請求項24、及び請求項53乃至56のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項58】
上面、及び反対側の底面は、流入口空洞と、そして任意であるが、沈殿剤空洞と、そして/または弱化ラインと、を除いて、ほぼ平坦である、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項59】
前記液体流路はX個の結晶化流路セクションを含み、Xは、2〜400、4〜100、8〜48、8〜24のように、2〜1000の値である、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項60】
前記液体流路は、当該流路の長さの主要部分において、毛細管現象を起こす寸法を有し、好ましくは、前記液体流路は、少なくとも分岐流路セクション及び結晶化流路セクションにおいて、毛細管現象を起こす寸法を有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項61】
前記液体流路は、当該流路の長さの主要部分において、10μm〜250μm、20μm〜100μmのように、1000μm未満の少なくとも一つの断面寸法を有し、好ましくは、前記液体流路は、少なくとも分岐流路セクション及び結晶化流路セクションにおいて、10μm〜250μm、20μm〜100μmのように、1000μm未満の少なくとも一つの断面寸法を有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項62】
前記液体流路は、少なくとも前記結晶化流路セクションにおいて、好ましくは当該セクションの長さ全体において、下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成する四辺多角形断面形状を有し、前記四辺多角形断面形状は台形であることが好ましく、この場合の2つの側部表面は下部表面に対して、90〜110度、90〜100度、90〜95度のように、90度超〜120度の範囲の角度を有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項63】
前記液体流路は、少なくとも結晶化流路セクションにおいて、高さが、下部表面と上部表面との間の平均距離であり、そして幅が、2つの側部表面の間の平均距離であるような幅及び高さの断面形状を有し、幅及び高さは好ましくは、互いに依存することなく、10〜300μmである、請求項62記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項64】
前記分岐流路セクションは2つ以上の分岐位置を含む、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項65】
前記流動遮断流路セクションは、5〜5000μm、10〜1000μm、20〜200μmのように、1〜10000μmの長さを有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項66】
前記流動遮断流路セクションは、液体流路を横切る弱化ラインの形態であり、前記流動遮断流路セクションは、最大約4000μm、最大約3000μm、最大約1000μm、最大約100μm、1〜50μmのように、最大約10000μm長さを有し、これらの長さは、弱化ラインの幅が上面と同じ平面で測定される場合に弱化ラインが横切る液体流路の長さとして定義される、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項67】
前記流動遮断機構は、液体流路における毛細管現象流動停止部分の形態であり、前記流動遮断流路セクションは、1〜10000μm、10〜5000μm、20〜2000μmのように、最大約10mmの長さを有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項68】
前記結晶化流路セクションは、20〜30000μm、40〜15000μm、100〜10000μmのように、10〜50000μmの長さを有する、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項69】
前記結晶化流路セクション群は、互いにほぼ平行である、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項70】
前記沈殿剤空洞群は互いからの距離が、0.5〜5mm、1〜3mm、1.5〜2.5mmのように、少なくとも0.1mmの最小距離である、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項71】
前記デバイスは更に、前記固体構造に配置されて、該当する前記沈殿剤流入口に隣接する前記結晶化流路セクションを横切る弱化ラインを備える、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項72】
前記デバイスは更に、好ましくは前記沈殿剤流入口に隣接する前記結晶化流路セクション群の内の少なくとも一つのセクションに組み込まれる膜を備える、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項73】
前記膜は、標的分子が沈殿剤に、沈殿剤流入口と液体を介して接触するようにして拡散する現象を防止する濾過膜であり、前記膜は、メルトブローンされたガラス繊維、スパンボンドされた合成繊維(例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエーテルスルフォン)、半合成繊維、再生繊維、及び無機繊維、及び上に列挙した繊維の混合物のような繊維材料;及び発泡ポリマーから成るグループから選択される材料群の内の一つ以上の材料により作製される多孔質膜であることが好ましく、更に好ましくは、前記膜は多孔質ニトロセルロースである、請求項72記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項74】
水溶液中の前記標的分子溶液が任意であるが、一つ以上の洗浄剤を含む、標的分子溶液と組み合わせた前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項75】
前記流動遮断機構は毛細管現象流動遮断部の形態であり、毛細管現象流動遮断機構では、少なくとも一つの流動遮断流路セクションは、隣接する前記結晶化流路セクションによって標的分子溶液に作用する毛細管力よりも小さい毛細管力が前記流路の標的分子溶液に作用するように構成される、請求項74記載の標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイス。
【請求項76】
前記液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、少なくとも一つの流動遮断流路セクションの前記壁表面は、当該流動遮断流路セクションの外周の少なくとも一部分において、標的分子溶液の表面張力よりも小さい表面張力を有する、請求項74及び75のいずれか一項に記載の標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイス。
【請求項77】
前記液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、少なくとも一つの結晶化流路セクションの前記壁表面は、当該結晶化流路セクションの外周の少なくとも一部分において、標的分子溶液の表面張力よりも大きい表面張力を有する、請求項74乃至76のいずれか一項に記載の標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイス。
【請求項78】
前記液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、前記液体流路は少なくとも、一つの結晶化流路セクションにおいて、四辺多角形断面形状を有することにより下部表面、対向する上部表面、及び2つの側部表面を構成し、好ましくは、少なくとも下部表面及び側部表面は、標的分子溶液の表面張力よりも大きい表面張力を有する、請求項74乃至77のいずれか一項に記載の標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイス。
【請求項79】
前記液体流路は壁表面を含み、壁表面は、流路の外周に沿って、かつ流路の長さだけ延び、前記分岐流路セクションの前記壁表面は、当該分岐流路セクションの外周の少なくとも一部分において、標的分子溶液の表面張力よりも大きい表面張力を有する、請求項74乃至78のいずれか一項に記載の標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイス。
【請求項80】
前記液体流路は、当該流路の長さの主要部分において、毛細管現象を起こす寸法を有し、好ましくは、前記液体流路は、少なくとも分岐流路セクション及び結晶化流路セクションにおいて、毛細管現象を起こす寸法を有し、毛細管現象を起こす寸法は、標的分子溶液に関して導出される、請求項74乃至79のいずれか一項に記載の標的分子溶液と組み合わせたマイクロ流体デバイス。
【請求項81】
標的分子溶液に溶解している標的分子の結晶化を、前の請求項のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイスを使用して促進する方法であって、前記方法では:
v)標的分子溶液を調製し、標的分子溶液を標的分子溶液流入口に供給し、そして標的分子溶液で結晶化流路セクションを充填することができるようにし;
vi)少なくとも一つの沈殿剤を調製し、そして沈殿剤を、少なくとも一つの沈殿剤流入口と液体連通するように配置し;
vii)沈殿剤が結晶化流路セクションの標的分子溶液に拡散することができるようにし;そして
viii)該当する前記標的分子結晶化流路セクション群の間の液体連通を遮断する、
方法。
【請求項82】
標的分子溶液は、タンパク質、核酸、核酸類似物、炭水化物、脂質から成るグループから選択される、更に好ましくは、500ダルトン以上のタンパク質、単鎖及び二本鎖のDNA,RNA,PNA,及びLNA,及び薬剤候補から成るグループから選択される少なくとも一つの種類の標的分子から成る溶液である、請求項81記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項83】
標的分子溶液は標的分子溶液流入口に直接供給される、または標的分子溶液を標的分子溶液流入口空洞に流し込むことにより直接供給される、請求項81及び82のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項84】
沈殿剤(群)が予め沈殿剤空洞に充填される、請求項81乃至83のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項85】
沈殿剤(群)は、該当する沈殿剤流入口を、沈殿剤を収容するウェルに接続することにより、該当する沈殿剤流入口と液体連通するようになるように配置される、請求項81乃至83のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項86】
沈殿剤(群)は、沈殿剤をデバイスの沈殿剤空洞に供給することにより、該当する沈殿剤流入口と液体連通するようになるように配置される、請求項81乃至83のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項87】
該当する前記標的分子結晶化流路セクション群の間の液体連通は、液体流路の毛細管吸引力によって、または流動遮断流路セクション群の変位によって自動的に遮断される、請求項81乃至86のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項88】
該当する前記標的分子結晶化流路セクション群の間の液体連通は、デバイスを、流動遮断流路セクションを横切る弱化ラインに沿って破断することにより遮断される、請求項81乃至87のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項89】
沈殿剤を標的分子結晶化流路セクションに所望時間に亘って拡散させることができるようにし、その後、沈殿剤と標的分子結晶化流路セクションとの間の液体連通が終了する、請求項81乃至88のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項90】
更に、結晶化流路セクションに通じる少なくとも一つの流入口、好ましくは全ての流入口を密閉して流入口からの蒸発を防止する、請求項81乃至89のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項91】
一つ以上の流入口は:
a)パラフィンワックスまたはポリエチレンワックスのようなワックスを塗って流入口(群)を密閉するステップ;及び
b)ポリマーまたはガラスにより作製される固着要素のような透明であることが好ましい固着要素、例えばポリマースライドまたはガラススライドを固定するステップ、
の内の一つ以上のステップによって密閉される、請求項90記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項92】
更に、培養をマイクロ流体デバイスを用いて行ない、そして結晶の形成及び/又は成長を可能にする、請求項81乃至91のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項93】
更に、形成/成長結晶を、結晶化流路セクション群の内の一つ以上のセクションから取り出し、結晶は好ましくは:
a)デバイスを破断して少なくとも2つの部分として、結晶化流路セクション群を構成している部分を分離し、そして結晶を取り出すステップ;
b)選択した一つ以上の結晶化流路セクション(群)の下側部分または上側部分を選択的に取り外し、そして結晶を取り出すステップ;及び
c)結晶を結晶化流路セクション(群)から吸い上げる、または押し出すステップ、
の内の一つ以上のステップによって取り出される、請求項81乃至92のいずれか一項に記載の標的分子の結晶化を促進する方法。
【請求項94】
標的分子の結晶化を促進するマイクロ流体デバイスであって、前記デバイスは、第1面及び反対側の第2面を有し、かつ少なくとも一つの液体流路を有する固体構造を備え、前記液体流路は、標的分子溶液流入口と、そして少なくとも一つの沈殿剤流入口と、を含み、標的分子溶液流入口は、前記沈殿剤流入口と前記液体流路を介して液体連通し、前記液体流路は、前記沈殿剤流入口に隣接する結晶化流路セクションを含み、前記マイクロ流体デバイスは少なくとも一つの第1部分と、そして少なくとも一つの蓋部分と、を備え、第1部分は第1面と、少なくとも一つの溝を持つ溝面と、を有することにより前記結晶化流路セクションを構成し、蓋部分は少なくとも部分的に取り外し可能な蓋を構成し、前記蓋は第2面及び溝面を有し、取り外し可能な前記蓋を前記溝の上に取り付け、そして液体流路の前記結晶化流路セクションに対して前記溝に沿って密閉する、マイクロ流体デバイス。
【請求項95】
第1部分は、液体流路への標的分子溶液流入口を構成する少なくとも一つの貫通開口部または凹部を有する、請求項94記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項96】
第1部分は、液体流路への沈殿剤流入口を構成する少なくとも一つの貫通開口部または凹部を有する、請求項94及び95のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項97】
取り外し可能な前記蓋は第1部分を超えて延び、取り外し可能な前記蓋は好ましくは、第1部分を超えて延びることにより、前記蓋を取り外すためのフランジを構成する、請求項94乃至96のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項98】
取り外し可能な前記蓋はフランジを含み、フランジは第1部分に接合されず、かつ前記フランジを剥がしてバラバラにすることにより、蓋が結晶化流路セクションから外れるように構成される、請求項94乃至97のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項99】
取り外し可能な前記蓋は、溝に沿って第1部分の溝面に、接着法及び/又は溶接法によって密閉される、請求項94乃至98のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項100】
前記マイクロ流体デバイスは2つ以上の液体流路を備え、これらの液体流路は結晶化流路セクションを含み、かつ各液体流路は標的分子溶液流入口及び沈殿剤流入口に接続され、前記結晶化流路セクション群の各セクションは取り外し可能な蓋で覆われることが好ましく、これらの蓋は任意であるが、互いに対して剥離可能に接続される、請求項94乃至99のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項101】
前記マイクロ流体デバイスは3つ以上の取り外し可能な蓋を備える、請求項94乃至100のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項102】
前記第1部分は、ガラス、セラミックス、金属、及びシリコン、ゲルマニウム、及び砒化ガリウムのような半導体材料、及び少なくとも0.5GPa(ギガパスカル)、少なくとも1GPaのように、少なくとも0.2GPaのヤング率を有するポリマーから成るグル
ープから選択される材料により作製され、前記第1部分は、ほぼ透明であることが好ましい、請求項94乃至101のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項103】
前記少なくとも一つの蓋部分は、ポリマー箔または金属箔のような箔により作製される、請求項94乃至102のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項104】
前記箔を第1部分の溝面に貼り付け、溝(群)に沿って溝面に接着させ、または溶接し、そして部分的に、または全てに切り込みを入れて複数の部分とすることにより、取り外し可能な複数の前記蓋を構成する、請求項103記載のマイクロ流体デバイス。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−541037(P2009−541037A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516905(P2009−516905)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国際出願番号】PCT/DK2007/050078
【国際公開番号】WO2008/000276
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(508375505)
【氏名又は名称原語表記】MICROLYTIC APS
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国際出願番号】PCT/DK2007/050078
【国際公開番号】WO2008/000276
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(508375505)
【氏名又は名称原語表記】MICROLYTIC APS
【Fターム(参考)】
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