結晶化実験に使用するキット
【解決手段】 本発明は、概括的には、結晶化溶液の蒸発を防ぐために、穿刺可能なリザーバ(14)に結晶化溶液(16)を密封し、膨大な数の蒸気拡散結晶化の実験を行うために使用される事前充填されたマイクロプレート(10)を、作業場から別の作業場へ安全に移送/輸送し、また安全に保管できるようにすることに関している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は結晶学に関し、厳密には、利用前に移送し取り扱うため、マイクロプレートに析出溶液を事前充填することに関する。
【背景技術】
【0002】
結晶学は、科学者にとっては極めて有用な道具であり、従って大きな興味をそそる研究分野である。結晶学は、分子の三次元的構造の正確且つ詳細な説明を提供する強力な手段であり、分子の機能を理解する上で大いに役立つ。タンパク質のような分子の結晶学は、今日では、学術分野及び産業分野で広く使用されている。
【0003】
単純なたんぱく質の三次元構造は、結晶化を必要とする結晶学的方法により得られているが、高分子から結晶を得るのはいつも簡単というわけではない。例えば、所与の分子の結晶化の好ましい条件を求めるには、何千回とまではゆかなくとも数百回も試行が繰り返されることになる。その結果、非常に多くの試行を比較的迅速に実行するための手段と方法が開発されており、ハンギングドロップ法やシッティングドロップ法などがある。このような方法は、全て、結晶を得るために蒸気拡散の利点を利用している。
【0004】
蒸気拡散技法では、微量の高分子サンプルを概ね等量の結晶化溶液又は析出溶液と混合する。混合液の液滴を、リザーバ容積がそれよりもかなり大きい結晶化溶液のチャンバに封入する。液滴は、結晶化面から液滴をハンギングすることにより、又はリザーバ内の結晶化溶液の液面より上方のぺデスタルに液滴をシッティングさせることにより、結晶化溶液のリザーバから分離した状態に保つ。時間経過と共に、結晶化液滴と結晶化溶液は、揮発性化学種の蒸気拡散により平衡状態になる。蒸気拡散による平衡状態の保持は、高分子の過飽和が達成されるまで液滴とリザーバの間で行われ、その結果、液滴内に高分子サンプルの結晶が析出する。
【0005】
しかしながら、生物学的高分子結晶を成長させる工程は、試行錯誤的なやり方で様々な結晶化パラメータを変えて行う極めて経験的な工程である。普通、これらパラメータは、pH、温度、及び結晶化液滴内の塩濃度、結晶化対象の高分子の濃度、及び析出剤の濃度(何百種にも及ぶ)である。試行錯誤的なやり方で、上記パラメータを変更することによってできる限り多くの結晶化条件を試み(結晶化条件のスクリーニング)、良好な回折性の高分子結晶の成長を可能にする結晶化条件を得る確率を高めようとしている。数多くの様々な試行を行うのに必要な各種溶液の全てを調製する必要無しに、実験室の作業をより早く行うために、Hampton Researchのような会社は、大抵は10mlの各種結晶化溶液24管分から成る事前調製型スクリーンを導入した。市場におけるHampton Researchの行為に続いて、MDL、Emerald Biostructures、Jena Biosciencesのような他の会社も事前調製型結晶化スクリーンの導入を開始した。これら全ての結晶化溶液に付随する1つの問題は、結晶化の試行を行う際に、手動又は自動の何れかでそれら溶液を結晶化プレートに移す必要があるという点である。これは、長時間の骨の折れる作業を、資格を有する熟練した技術系職員が行わねばならない、ということである。
【0006】
また、結晶化溶液をマイクロプレートに移す作業は、一般的に、結晶化溶液の蒸発を避けるために迅速に行う必要がある。このような蒸発は溶液の組成を変えてしまい、結晶成長が起きる際の同じ条件を再現するのに問題を作り出す。通常、移送はマイクロピペットを使用して行われる。技術者は溶液の入った管を開けて、その溶液を結晶化リザーバにピペットで取らねばならない。SBS標準結晶化プレートで移送を迅速に行うには、多チャンネルマイクロピペットを、(96個のくぼみを備えた結晶化プレートを設定するため)96通りの各種結晶化条件で2mLまで事前充填されたSBS標準の深いくぼみブロックと共に使用することができる。この場合、研究者は、(シールを剥がす際にくぼみ同志の交雑汚染を防ぐため)ブロックを遠心分離機にかけ、ブロックを開封して、溶液の移送を開始する必要がある。1つの問題は、ブロックを開封するとすぐに蒸発が始まることであり、全手順の実行に数分を要することから、これは重要な問題である。別の問題は、研究者が全ての溶液を使用しない場合は、ブロックを再度密封する必要があるということである。全ての溶液を使用するには、研究者は、通常は3プレート分(温度当たり1プレート)で済む場合でも、最低10プレート分を事前充填する必要がある。また、何百という異なる溶液を取り扱う際のラベル付けと分注に伴うエラー、及び交雑汚染が発生し得ることに言及することも重要である。
【0007】
別の対処法として、Tecan、Gilson 又は Robodesignのような会社が開発した、精密自動液体取り扱いステーションを使用する方法がある。このステーションは、DNA操作に関わる日常的な分子生物学的実験を行う場合には、取り扱う溶液の個数が少なくて済み、蒸発もそれほど問題とはならないので有用である(たんぱく質はDNAに比べると時間と温度の変化に対し遙かに不安定である)。例えば、Gauz他に対して2002年11月21日に発行された米国特許第6,148,878号は、複数のマイクロプレートに充填するための自動化された機械を開示している。このシステムに伴う1つの問題は、このシステムは、事前充填された複数マイクロプレートで結晶化の試行を行うには、それらを使用する前に保存目的でマイクロプレートのくぼみを自動的且つ効率的に密封するために使用することのできる手段が何ら提供されていないので、適していないということである。
【0008】
要約すると、マイクロプレートのくぼみを結晶化溶液で充填するのは骨の折れる作業で、事前に設定された厳格な規範の下でうまく実行しないと、実験結果に望ましくない大きなばらつきが生じると共に、試行の反復性が台無しになってしまうという作業である。
【0009】
従って、プレートを事前充填するための方法を見い出そうと努力が払われてきた。1つの既知の方法は、結晶化マイクロプレートの上面をテープ又は加熱封止された箔で密封することを含んでいる。保存と移送の後、結晶化実験を設定する前に、シールを剥がして、通常は各くぼみの周囲にグリースが塗布されているプレートの上面へアクセスできるようにする必要がある。シールを剥がす際、プレートの移送又は温度変化が起きた場合の凝結によってシールに付着しているかもしれない液体を取り去って、リザーバに残った溶液の体積又は濃度が変化することにより、望ましくない実験上のばらつきが生じかねないという危険がある。密封手段に付着した液体を除去するために、研究者は使用に先立ってプレートを遠心分離機にかける必要があり、このせいで自動化が難しくなり、また余分な装備と余分な工程が必要となる。更に、マイクロプレートの上面の密封と溶液の遠心分離は、ハンギングドロップ式の結晶化プレートにしか適用できない。実際には、結晶化面が、プレートの上面及び上面密封手段の下のくぼみの中に在るようなシッティングドロッププレートの場合には、くぼみに入っている結晶化溶液は結晶化面に自由に接触できるので、これにより結晶化面が汚染される。更に、この場合には、もっと厄介なことに、遠心分離により結晶化溶液の一部が結晶化面に接触してしまうので、上面密封手段の下面から液体を除去するのに遠心分離は使用できない。
【0010】
出願人の知る限り、シッティングドロップ式の結晶化の実験を行う場合に使用されるプレート又はマイクロプレートを、移送/操作前に事前充填することは、これまで誰も実現できていない。これは、(結晶化する高分子を含んだ液滴が座する)結晶化面が、マイクロプレートが充填される場所と結晶化液滴の設定が行われる場所との間で操作/移送される際に、析出溶液で損なわれ/汚染される可能性が高いことによる。
【0011】
研究者らは、結晶化の際に使用されるたんぱく質の量を最小限にするために、蒸気拡散結晶化の実験を行う際には、常により小さな液滴を使用しようとしている。1ml未満の小さな液滴を使用する場合には、良好な結晶化条件に到達するには平衡に達するのが早過ぎることから、幾つかの問題が発生する。従って、非常に少量の溶液で蒸気拡散の実験を行う場合に、平衡化の過程を遅くするか又は制御するためのある種の手段を見い出す必要がある。液滴と元の液体(結晶化溶液)の間の完全な平衡化に必要な時間を制御/修正/変更するために様々な対策が試されている。蒸発過程を遅らせ/制御するために油の使用を試みた者もいる(D'Arcy他(1996年)J.Crystal Growth 168,175−180)。この対応策に伴う1つの欠点は、結晶化溶液を覆ってリザーバに油を分注するために余分な工程が必要となることである。更に、ハンギングドロップ結晶化の設定を準備するときに、顕微鏡下で観察される像の品質が油によって悪化する可能性がある。最後に、場合によっては、マイクロプレートのくぼみは十分な油を添加するには小さすぎる。
【0012】
要約すると、生物学的高分子結晶を成長させる過程は、極めて経験的な過程に留まっている。結晶化を何千回も試行することにより、結晶の成長に影響する数多くの変数の条件を試験することで、最終的には最適化された結晶化の条件に到る。必然的に、市場は、多くの再現可能な結晶化の試行を迅速且つ容易に生成するのを支援する発明を必要としている。従って、数多くの結晶化の試行の設定を容易にすると共に、そのような設定の間のエラーと交雑汚染のリスクを最小化する装置が必要とされている。別の重要な必要性は、マイクロプレートを結晶化溶液で充填する段階と結晶化液滴の設定段階との間の蒸発又は液体損失に起因する実験上の再現性を向上させる装置/方法を持つことである。最後に、研究者が数多くのマイクロプレートでの数多くの結晶化の試行の蒸気拡散平衡化の速度を制御することができるようにする装置が必要とされている。
【特許文献1】米国特許第6,148,878号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明の目的は、結晶化溶液を事前充填した結晶化プレートを提供することである。
本発明の別の目的は、事前充填されたシッティングドロップ結晶化プレートの移送と取り扱いの間に、結晶化面が結晶化反応体で汚染されることを防ぐことである。
【0014】
本発明の更に別の目的は、シッティングドロップ又はハンギングドロップ結晶化の実験における蒸気拡散の速度を制御するための手段を提供することである。
本発明の更に別の目的は、蒸気拡散技法によって結晶化の実験を行うために実行しなければならない操作を単純化することである。
【0015】
本発明の更に別の目的は、マイクロプレートを結晶化溶液で事前に充填するための方法を提供することである。
本発明の更に別の目的は、結晶化の実験を行うための新しい方法を提供することである。
【0016】
本発明の更に別の目的は、実験の準備を標準的なシッティングドロップの設定としてのみ提供し、ハンギングドロップ実験を行う場合にはプレートを逆にする、新しい結晶化プレートを提供することである。
【0017】
本発明の更に別の目的は、一体型のハンギングドロップサポートを有する新しいハンギングドロップ結晶化プレートを提供することである。
従って、本発明によれば、結晶化の実験を行う際に使用するためのキットにおいて、それぞれ結晶化溶液を受け入れるために上端が開口している複数のくぼみを有する事前充填された結晶化プレートと、くぼみの中の結晶化溶液を一時的に気密密封して、事前充填された結晶化プレートを利用前に安全に移送し取り扱うことができるようにするための、各くぼみにその上端から或る距離だけ下方に窪ませた個別のシールを含んでいる第1水準のシールと、前記個別のシールが破られた後で蒸気拡散が起きるようにすることを目的に、前記くぼみの前記第1水準のシールの上方を密封できるようにするための、前記プレート上の前記第1水準のシールの上方の密封面を含んでいる第2水準のシールと、を備えているキットが提供されている。
【0018】
本発明の別の一般的な態様によれば、結晶化の実験を行う際に使用するためのキットにおいて、複数の個別のカプセル内に封入された少なくとも1つの結晶化溶液と、前記カプセルを装填できるようになっている複数のくぼみを含んでいる少なくとも1つの結晶化プレートと、を備えているキットが提供されている。
【0019】
本発明の又別の一般的な態様によれば、蒸気拡散により結晶を成長させる際に使用するためのキットにおいて、結晶化溶液が事前充填された複数のくぼみを画定している結晶化プレートと、前記結晶化溶液が中に入った前記くぼみを別々に且つ個別に密封するための少なくとも1つのシールと、を備えており、前記シールは、蒸気拡散が起きるようにするためにシールに孔を開けることができるように穿刺可能な材料で作られている、キットが提供されている。
【0020】
本発明の更に別の一般的な態様によれば、事前充填された結晶化プレートを作るための方法において、結晶化溶液と複数のくぼみを備えた結晶化プレートとを提供する段階と、前記くぼみに入れられた複数のカプセルに結晶化溶液を封入する段階と、を備える方法が提供されている。
【0021】
本発明の更に別の一般的な態様によれば、結晶化の実験を行うための方法において、少なくとも1つの穿刺可能なシールにより個別にくぼみの中に密封された状態で結晶化溶液が事前充填された複数のくぼみを有する結晶化プレートを提供する段階と、選択されたくぼみと整列しているシールを穿刺して孔を開け、開封された選択されたくぼみに入っている結晶化溶液の一部をピペットで取る段階と、前記開封された選択されたくぼみについて、液滴サポート上で、ピペットにより取り出された結晶化溶液を高分子溶液と混ぜ合わせて溶液の液滴を得る段階と、くぼみの中の前記溶液の液滴を、前記溶液の液滴が前記くぼみの中に入っている前記結晶化溶液から分離された状態で、密封する段階と、から成り、前記シールの孔により、溶液の液滴と結晶化溶液の間に蒸気拡散が起きるようにした方法が提供されている。
【0022】
本発明の更に別の一般的な態様によれば、事前充填された結晶化プレートを作る方法において、複数のくぼみを有する結晶化プレートを提供する段階と、結晶化溶液をくぼみに分注する段階と、くぼみの中の結晶化溶液を、くぼみの中の結晶化溶液を覆って穿刺可能なシート材を加熱封止することによって個別に密封する段階と、を備える方法が提供されている。
【0023】
穿刺可能なリザーバ内に結晶化溶液を封入し、結晶化溶液の蒸発を防ぐことによって、数多くの蒸気拡散結晶化の実験を行うために使用される事前充填されたマイクロプレートを、作業場から別の作業場へ安全に移送/輸送し、安全に保管できるようになる。ピペットの先端でリザーバの穿刺を行うことができるので、本装置と方法は、研究機関で結晶化の試行を設定するために必要な工程の数を減らせる点でとりわけ有効である。本装置/方法の別の利点は、結晶化の実験の蒸気拡散速度の制御が容易になる点である。
【0024】
本発明の或る実施形態は、タンパク質及び他の分子、特に高分子を結晶化するのに有用な封入された結晶化溶液を提供する。或る好適な実施形態によれば、結晶化溶液の各カプセルは、マイクロプレートの結晶化溶液が入っているくぼみに挿入できるほどに小さい、望ましくはプラスチック製のリザーバと、保管に当たりそのようなリザーバの適切な密封性を保証するためにリザーバに接着することのできる穿刺可能なシールと、密封される前にリザーバに挿入される結晶化溶液と、を備えている。穿刺可能な材料は、このようなカプセルで蒸気拡散の実験が行えるように、一旦穿刺された開口孔を維持する材料で作る必要がある。
【0025】
本発明の更に別の一般的な特徴によれば、事前充填されたリザーバを安全に移送できるようにするため、穿刺可能なシートを使って、理想的には加熱封止を使って密封することのできる新しいリザーバが提供されている。このリザーバは、モールド成形され、充填され、(穿刺可能シートで)密封され、結晶化キャビティに挿入される。リザーバは、直接、結晶化くぼみにモールド成形され、充填され、次いで(穿刺可能シートで)密封される。本発明によって、結晶化の実験の設定前に結晶化面が汚染されるリスクなしに、事前充填された結晶化プレート又はマイクロプレートを安全に輸送できるようになる。本発明は、結晶化の実験が始まるときにシールを穿刺して開ける孔の大きさを変えることにより、蒸気拡散が起きる速度を制御することができるようにしている。
【0026】
本発明の更に別の態様によれば、シッティングドロップ式又はハンギングドロップ式の結晶化の試行に適した、マイクロプレートで使用されるこのような封入された結晶化溶液の製造方法が提供されている。カプセルは、モールド成形され、割当量の結晶化溶液が充填され、フィルム又は箔で密封され、次いでシッティングドロップ用又はハンギングドロップ用結晶化プレートのくぼみに挿入される。
【0027】
本発明の更に別の態様によれば、複数の封入された結晶化溶液と、望ましくは複数のくぼみを含んでいる少なくとも1つの結晶化マイクロプレートと、前記くぼみに入っている封入された結晶化溶液とを備えたキットが提供されている。
【0028】
本発明は、液滴設定の準備前に、結晶化溶液を開閉したり又は別の容器から結晶化溶液を移送する必要無しに、結晶化液滴設定ロボットに複数の結晶化溶液を装填することができるようにしている点で興味深い。
【0029】
本発明の更に別の一般的な態様によれば、複数のくぼみを備えている結晶化マイクロプレート板において、各くぼみは、析出溶液を入れるための析出溶液リザーバと、結晶化対象の高分子が入っている溶液の小滴を受けるための結晶化面を有する液滴チャンバとを含んでおり、前記液滴チャンバは、くぼみが密封された後で溶液の小滴と析出溶液の間に蒸気拡散が起きるように前記析出溶液リザーバと連通しており、ハンギングドロップ結晶化の実験を行うために、結晶化マイクロプレートが上下逆にされた場合に、析出溶液を析出溶液リザーバ内に保持するために、前記析出溶液リザーバに流量絞り弁が設けられている、結晶化マイクロプレート板が提供されている。
【0030】
本発明の更に別の一般的な態様によれば、ハンギングドロップ結晶化の実験を行うための方法において、一定量の析出溶液が入っている析出溶液リザーバと結晶化面を有する液滴チャンバとをそれぞれ備えている複数のくぼみを有する結晶化マイクロプレートを提供する段階と、結晶化対象の高分子が入っている溶液の小滴を前記結晶化面にシッティングする段階と、くぼみの中の溶液の小滴を、溶液の小滴がくぼみに入っている析出溶液から分離された状態で密封する段階と、前記析出溶液が前記析出溶液リザーバ内に保持されている状態で、溶液の小滴が前記結晶化面から懸垂するように、プレートを上下逆さにする段階とを備える方法が提供されている。
【0031】
本発明の更に別の一般的な態様によれば、結晶化溶液が入っているくぼみの上に逆さにすることができるようになっているハンギングドロップ結晶化サポートにおいて、析出溶液と結晶化対象の高分子が入っている溶液の小滴を入れるための少なくとも1つのキャビティを画定している下面を備えており、前記キャビティは底面を有し、結晶化溶液と溶液の小滴とが蒸気平衡状態に達したとき、キャビティの底面が溶液でなお完全に覆われているように、事前に設定された量の高分子溶液が入る大きさになっている、ハンギングドロップ結晶化サポートが提供されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以上、本発明の特徴を大まかに説明してきたが、これより本発明のこのような実施形態を例示的に示している添付図面を参照していく。
本発明は、研究室での使用に先立つ輸送と取り扱いのために、ハンギングドロップ・マイクロプレート又はシッティングドロップ・マイクロプレートの様な複数くぼみ結晶化プレートに、所望数の結晶化溶液又は析出溶液を事前充填するための方法を提供する。このやり方では、技術者は「使用準備が整った」プレートを受け取ることができるので、各くぼみに適当な結晶化溶液を充填するという時間のかかる作業を省くことができる。
【0033】
図1は、本発明の1つの可能な応用例を示している。具体的には、図1は、複数のくぼみ12を備えたシッティングドロップ結晶化プレート10を示している。各くぼみ12は、結晶化の実験中に結晶化対象の高分子を含む溶液が載置される結晶化面又は液滴サポート17を有する液滴チャンバと連通している中央リザーバ13を含んでいる(図4参照)。プレート10自体は、従来通りの作りであり、本発明の範囲を逸脱すること無く様々な構造とすることができる。
【0034】
結晶化溶液16(図3及び図4)の入ったカプセル14は、各くぼみ12の中央リザーバ13に締まり嵌めで入っている。代わりに、カプセル14は、隙間嵌めでくぼみ12に入れ接着剤でそこに保持してもよい。また、1つのくぼみ12当たり2つ以上のカプセル14を配置してもよい。図1及び図3に示すように、各カプセル14は、開口した上端部を有するポーションカップ18の形態をしたリザーバを備えており、この開口した上端部は、カップ18に望ましくは加熱封止されたシール19で閉じられている。ポーションカップ18は、ポリプロピレンの様な溶融した熱可塑性材料を、射出成形機のカプセル型のキャビティ金型(図示せず)に射出することにより成形されるのが望ましい。なお、カップ18を成形する材料は、中に入れる結晶化溶液に対して化学的に不活性でなくてはならない。また、結晶化対象の高分子を含む液滴が結晶化溶液上方に直接懸垂されるハンギングドロップ用途の場合には、カップ18は、液滴サポート上の結晶の成長が顕微鏡の下で観察監視できるようにするため、光が透過できるほど十分に清澄又は透明でなければならない。例示した例では、カップ18は、全体的には円錐台形状であるが、これが配置されるプレートのくぼみの形状に相補的であればどの様な形状でもよい。例示した実施形態では、各カップ18は、各中央リザーバ13に形成された、対応する軸方向に伸張する突起22を受け入れるように作られた、軸方向に伸張する半円形の窪みを有している。突起22が窪み20に係合することにより、カップ18がくぼみ12内で回転しないように固定される。
【0035】
シール19は、結晶化溶液を、結晶化対象の高分子を含む溶液と混ぜ合わせるために、ピペットで取り出すのに使用されるピペットの先端で刺すことによって、簡単に孔を開けることのできる、ポリプロピレン被覆アルミニウム箔の様な穿刺可能シート材又は膜の形態で提供されるのが望ましい。シール19に孔を開けるのに他の穿刺工具を使用することもできる。穿刺可能シール19を形成するために使用される材料は、穿刺器具をくぼみ12から引き抜いた後に、その形状が元に戻らないような材料でなければならない。次の段階で小滴26(図4)と結晶化溶液16の間で蒸気拡散ができるようにするために、器具はシール19に望ましい大きさの永久的な孔24(図4)を残さねばならない。孔24の大きさを変えることにより、好都合に、小滴26と結晶化溶液16の間の蒸気拡散の速度を制御することができる。穿刺可能なシールを使用すると、シールを除去しなくともよくなり、これに伴う余計な段階が不要となる点でも有利である。更に、これまで説明してきたように、シールを除去するのは、液体の一部がシールと共に取り去られる場合、リザーバ内の溶液の量又は濃度に変化が起きるため、望ましくない実験上のばらつきが発生しかねない点においても望ましくない。これにより、各くぼみのシールの下側に液が確実に残っていないようにするため、くぼみのシールを破る前に、プレートを遠心分離機に掛ける必要がなくなる。穿刺可能なシールを使用することで、各個々のシールを別々に剥がすのに要する余計な作業によりこれまで制限されてきたくぼみの個別密封を、かなり望ましい密封にすることもできるようになる。穿刺可能なシールの使用により、シールを物理的に剥がす必要はなく、シールは結晶化溶液16をピペットで取る動作の間に破られるので、2つの工程を1つにまとめることができる。
【0036】
図3に示すように、結晶化溶液をカプセル封入しているので、結晶化面17を結晶化溶液16から隔離して、事前充填されたプレート10を使用前に輸送し取り扱う間に結晶化面17が汚染されるのを避けることができ、好都合である。図3から容易に分かるように、リザーバ18の上面、従ってシール19は、プレート10の上面からくぼみ12の中へ或る距離だけ窪んでいる。この様に、プレートの上面は、図4に示すテープ30の様なカバーと密封係合させて、シール19により形成された第1水準のシールとは別の第2水準のシールを提供するのに利用することができる。第2水準のシールは、第1水準のシールが破られた後で結晶化溶液16と小滴26の間で蒸気拡散が起きるように、両者を雰囲気から気密密封するのに使用される。後で図6を見れば分かるように、シール19とプレートの上面の間の間隔は、ハンギングドロップ結晶化の設定において、結晶化溶液の上方に溶液の小滴を懸垂するのに必要な空間を形成している。これは、開けられた孔が小滴を受け入れる大きさでない場合には必要である。しかしながら、くぼみの一番上にシールを設けて、シールに形成された穿刺孔を通してハンギングの小滴が伸びるのに十分な大きさの孔を画定することが有利な場合もある。そうすると、シールの存在によって小滴の観察に妥協が生じることは確実になくなる。
【0037】
使用時、技術者は、図3に示すような結晶化溶液16が事前充填された結晶化プレート10を受け取る。次いで、選択された生物学的高分子液滴26(図4)が、所望の数のくぼみ12の結晶化面17上に分注される。次に、これらくぼみ12に入っている結晶化溶液16は、望ましくはピペットの先端を使って、くぼみ12のシール19に孔24を開けることによりピペットで取り出されるが、ピペットは下降してくぼみ12に入り所望量の結晶化溶液を各くぼみ12から吸引する。このとき、ピペットは、所与の物質を結晶化溶液に添加して、単一の結晶化溶液で事前充填された同一のプレート10で、異なる結晶化溶液を使って様々な実験を行うことができるようにするのに使用することもできる。各くぼみには異なる添加物を導入することができる。その後、ピペットで取り出された溶液は、各結晶化面17上の高分子液滴26と混ぜ合わされる。最後に、図4に示すように、個別のテープ30を下げて、このように調製されたくぼみ12を覆って閉鎖することにより、設定が完了する。なお、1つの長いテープで同時に2つ以上のくぼみを覆ってもよい。また、使用するカバーの種類は本発明にとって問題ではなく、高分子の小滴が注がれた後でくぼみ12を気密密封するのに様々な種類のカバーを使用することができる。例えば、PCT出願第PCT/CA00/00119号に記載されている様な個々のキャップを使用してもよく、同出願を、本願に参考文献として援用する。
【0038】
高分子液滴の分注と、くぼみ内の結晶化溶液のピペット取り出しは、手作業で行ってもよいし、市販の自動ピペット装置で行ってもよい。くぼみの第2水準の密封も、手動で行ってもよいし、自動化してもよい。
【0039】
結晶化溶液のカプセル封入を図7aから図7dに示している。ポーションカップ18は、熱可塑性材料をカプセル形状のキャビティ金型(図示せず)に射出して作るのが望ましい。金型内に射出した後、熱可塑性材料を冷却してカップ18を作る。次に、カップ18に、図7bに示すように結晶化溶液16を充填する。その後、図7c及び図7dに示すように、穿刺可能な材料の箔19を、各カップ18の一番上に望ましくは加熱封止する。図7aに示すように、各カップ18の上端は面取りされており、図7dに示すように、箔19とカップ18の上側リムの間の接着面を大きくしている。加熱封止時、カップの面取りされた上端は、溶けて、図7dに示す平坦なリムを形成する。最後に、カップ18をくぼみ12に挿入する。
【0040】
なお、カップ18は、プレート10のくぼみ12に直接モールド成形することによりくぼみ12と一体に形成して、プレートを事前充填するためにカップ18をくぼみ12に挿入するという追加の工程を省くこともできる。しかしながら、この場合、シール19を加熱封止するには加熱封止適合性を有する材料でプレート10を作らねばならず、この材料は必ずしも光学特性が最良でない、という欠点がある。
【0041】
図5と図6は、封入された結晶化溶液をハンギングドロップの実験の設定に使用する、本発明の可能な別の応用例を示している。同様の部品には同様の符号を付している。
ハンギングドロップの実験の場合、穿刺可能なシール19’に設けられた孔24’は、光を透過させて、液滴サポート17’を通して結晶の成長を観察できるようにするため、懸垂する高分子液滴26’と垂直に整列していることが重要である。このため、例えば、シール19’の上面に識別マーク32を設けて、孔24を開ける箇所を確認できるようにしてもよい。また、テープをガラスプレート30’に代えて、各くぼみのリム周りにグリースを配し、ガラスプレート30’とくぼみの間のシールとしてもよい。
【0042】
なお、カプセル14は、結晶化溶液を入れることのできる小さなポーチ又はその他の穿刺可能な密封容器の形態を採ってもよい。更に、図示していない本発明の別の実施形態によれば、結晶化溶液をくぼみに直接分注し、穿刺可能なシールをくぼみの上又は中に貼り付けて結晶化溶液を中に密封することもできる。内側の肩部は、くぼみの中で箔の加熱封止を施せるように、各くぼみに形成せねばならない。結晶化プレートの上面に穿刺可能シールを加熱封止する場合でも、選択されたくぼみのシールに個別孔を開けることにより、くぼみは、互いに別々に開封することができる。次に、穿刺可能なシールの、各個別の孔の周りに直にグリースなどを塗布して、開封されたくぼみと、裏返しにして載せるカバーガラス(ハンギングドロップサポート)の間に適切なシールを形成することができる。代わりに、グリースを、カバーガラス上の接着剤に代えてもよい。この場合、カバーガラスは、穿刺可能なシールに直に接触するように、結晶化プレートの上に置くだけである。
【0043】
結晶化溶液16の封入、即ち、液滴サポート17と、シッティングドロッププレート10のくぼみ12のメインリザーバ13に入っている或る量の結晶化溶液16との間に穿刺可能なシールを設けることは、これまでに開示したように、ハンギングドロップ結晶化の実験を行う場合に、シッティングドロッププレートを上下逆さにすることができるという利点を有している。これにより、シッティングドロッププレートでハンギングドロップ結晶化の実験を行うことができるようになる。これは、カバーガラスの様な別個のサポート上に、結晶化対象の高分子を含む溶液の小滴を分注し、次いでこれをマイクロプレートの対応するくぼみの上に反転し、それを密封することがもはや必要なくなる点で好都合である。既知の工具では結晶化プレート上に溶液26の小滴をセットしてプレート全体を逆さにすることができないので、ハンギングドロップ実験用にはこのような別のサポートがこれまで必要であった。析出溶液はリザーバ13から落下し、これによりプレート操作時の結晶化面又は液滴サポート17の汚染に備えている。
【0044】
本発明の特性によれば、実験的設定は、あたかも、シッティングドロップ結晶化の実験を行い、その後、結晶化対象の高分子を含む溶液の小滴26が各液滴サポート17からぶら下がるように(図10aから図10c)、シッティングドロップ結晶化プレート全体を反転させる(即ち、完全にひっくり返す)ことができるように、準備することができる。一旦プレートが反転すると、結晶化溶液16は、リザーバ13にはシール19が存在するため、メインリザーバ13から流出するのが防止される。シール19に開けられた孔24は、小滴26と結晶化溶液16の間で蒸気拡散が起きるだけ十分大きくなければならないが、溶液16の表面張力により結晶化溶液16が確実にリザーバ13内に留まるほど十分に小さくなければならない。
【0045】
図8aから図8cに示すように、これは、結晶化プレートの各メインリザーバ13に様々な他の型式の流量絞り弁を設けることによって行うこともできる。例えば、各くぼみ13は、図8aに示すように、リザーバ13の口から内側に突き出て口を部分的に閉じる内側環状リップ34と一体に製造してもよい。環状リップ34で画定された小さな開口36は、プレートを反転したときに、溶液16の表面張力により、確実に溶液がリザーバから落下しないようにすると同時に、図10aに示す様に、溶液16と小滴26の間に蒸気拡散が起きるようにする。開口36は、標準的なマイクロピペットの先端部と液体取り扱いロボット分注ヘッドが入る大きさであるのが望ましい。開口の形状は、結晶化溶液の保管を許容し、逆さにしたときに溶液を保持できものでなくてはならない。上下を逆さにしたときに、リザーバ内に液体を保持するため、充填後の溶液リザーバに、余分の閉鎖手段を付加してもよい。
【0046】
代わりに、流量絞り弁は、リザーバ16の開放端に設けられた微小多孔質ろ過膜の形態を採ってもよい。膜は、液体に対しては不透過性であるが気体に対しては透過性である。
図8b及び図8cに示す実施形態によれば、リザーバ13’と13”は、図10bと図10cに示すように、結晶化プレートが反転された際に、溶液16が毛管効果によりリザーバ13’と13”の内側に保持されるように十分に小さい内径を有している。通常、このような毛管リザーバの内径は3.5mmよりも小さい。
【0047】
毛管リザーバ13”は、内径が開口端に向かって徐々に小さくなっている点で毛管リザーバ13’とは異なっている。毛管リザーバ13”は、全体的には円錐台形状を有している。
【0048】
使用時、図9a、9b、及び9cに示すように、各結晶化プレートは、通常のシッティングドロッププレートと同じように、結晶化溶液をリザーバ13、13’及び13”に分注し、リザーバ13、13’及び13”内の結晶化溶液の一部をピペットで取り出し、ピペットで取り出された結晶化溶液を高分子溶液と結晶化面17、17’及び17”上で混ぜ合わせて溶液26の小滴を得ることにより、充填される。次に、各プレートの上面にシール38を貼り付けてくぼみ12、12’及び12”を密封する。次いで、ハンギングドロップ結晶化の実験を実施するために、図10a、10b、及び10cに示す結晶成長/監視位置まで、そのように調製された結晶化プレートを反転させる。
【0049】
標準的なシッティングドロッププレート上に見られる様な、一体的液滴サポートを有する結晶化プレートの結晶化リザーバに、流量絞り弁を追加することにより、シッティング又はハンギングドロップの結晶化の実験を行う際に選択的に使用することのできる万能結晶化プレートが形成される。
【0050】
本発明は、実験の設定時に、くぼみ/リザーバ上に、結晶化サポートを手動的/自動的に反転及び割り出しする必要無しに、多重ハンギングドロップ実験の設定ができるようになるので好都合である。本発明では、ユーザーは、結晶化プレート全体を、図9a9b、9cに示す装填/装填解除位置から、結晶成長/監視位置まで、単に上下ひっくり返せばよい。
【0051】
本発明は、一体となった結晶化面を有するハンギングドロップ・プレートを提供することによって、プレートの溜の上に個別の結晶化サポートを反転させる必要性を無くしている。従来のハンギングドロップの設定によれば、マイクロプレートのくぼみの列は、1回の操作で、対応するハンギングドロップ・サポートで覆われるわけではなく、或る生成物を別の生成物の上に反転させる場合のミラー効果のために、ハンギングドロップ・サポートは一度に1列ずつ反転させねばならない。本発明では、析出溶液リザーバと各くぼみの液滴サポートは、隣り合わせになっており、従ってプレートの高分子液滴は、プレートを単に反転させることにより1回の操作でハンギング状態に置くことができる。これにより、操作は格段に単純化する。
【0052】
なお、液滴サポート17は、必ずしも平坦でなくともよい。高分子の液滴の位置決めをやり易くするために、そしてその後の液滴の広がりを防ぐために、異なる構造にしてもよい。これは、液滴サポート又は他の型式のバリア又は液滴リテイナーに窪みを設けることにより行うこともできる。
【0053】
図11は、同じくぼみで複数の結晶化の実験をできるようにするため、結晶化プレートのくぼみの上にひっくり返して、くぼみを密封できるようになった多キャビティハンギングドロップ・サポート40を示している。
【0054】
ハンギングドロップ・サポート40は、くぼみ内の、又はくぼみの開口端に隣接するプレート上の、(図示しない)対応するキャップ係合手段と協働するようになっている(図示しない)くぼみ係合手段を有するキャップの形態で提供することもできる。図9に示すように、ハンギングドロップ・サポート40は、結晶化対象の高分子を含んでいる溶液のそれぞれの小滴を受けるために、その下面44に形成された複数の円形のキャビティ42a、42b...42f又は窪みによって特徴付けられる。キャビティ42a、42b...42fは、小滴の広がりを防止して、小滴が互いに接することのないようにしている。キャビティ42a、42b...42fは、ハンギングドロップ・サポート上の小滴を局限化して、結晶成長の観察をやり易くすることに寄与するのにも役立つ。
【0055】
各キャビティの寸法は、事前に設定された量の高分子溶液が入るように定められている。具体的には、所与のキャビティの寸法と溶液の量との関係は、キャビティ内に分注される最初の溶液の量が、キャビティの溶液量保持容量を超えず、且つ、くぼみに入っている結晶化溶液とサポート40から垂れている高分子溶液との間が蒸気平衡に達したときに、キャビティの底面が、なお高分子溶液の残量分で完全に覆われているようでなければならない。これは、形成された結晶の良好な視認性を提供すると同時に、実験の再現性を改良する点でも好都合である。一般に、キャビティの容積は、中に入れる予定の液滴の体積に略相当する。一旦キャビティ内に注がれた溶液の小滴は、小滴の広がりを避けるためにキャビティの境界を定める側壁に接することになる。
【0056】
キャビティ42a、42b...42fは、異なる量の高分子溶液を入れるために、様々な寸法であるのが望ましい。
多キャビティハンギングドロップ・サポート40は、良好な光学特性を有するプラスチック材料で製作されるのが望ましく、射出成形で得られるのが望ましい。液滴サポート40は、少なくとも結晶成長が観察できるキャビティ位置が透明でなければならない。各キャビティ42a、42b...42fの底面41は、平坦であるのが望ましい。更に、図12に示すように、底面41は、結晶の回収をやり易くするために、約45度の角度Θを成す傾斜した壁部分43を介して側壁と繋がっている。
【0057】
キャビティ42a、42b...42fの壁は、水密性、疎水性などの処理を施してもよい。
キャビティは、ハンギングドロップ・サポート上に形成される結晶を良好に視認できるようにする。キャビティは、良好な視認性のために液面水準を均一にすることができる。
【0058】
なお、ハンギングドロップ・サポート40には、その下面に単一の窪み又はキャビティを設けてもよい。それでも、先行技術のハンギングドロップ・サポートが、そこで形成される結晶の視認性を改良する手段を欠いているのに勝っており、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一の好適な実施形態による、封入された結晶化溶液で事前充填された結晶化プレートの斜視図である。
【図2】図1に示す事前充填された結晶化プレートを上から見た平面図である。
【図3】図2の3−3線に沿う断面図である。
【図4】プレートのくぼみに一体化された液滴サポート上に高分子の液滴が分注されている、事前充填された結晶化プレートの断面図であり、くぼみはテープで密封されていて、事前充填シールが破られると、結晶化溶液と液滴の間で蒸気拡散が起きるようになっている。
【図5】本発明の第2の実施形態による、ハンギングドロップ構成を上から見た平面図である。
【図6】図5の6−6線に沿う断面図である。
【図7a】本発明の一の好適な実施形態による、結晶化溶液カプセルの製造に関わる各工程を示している。
【図7b】本発明の一の好適な実施形態による、結晶化溶液カプセルの製造に関わる各工程を示している。
【図7c】本発明の一の好適な実施形態による、結晶化溶液カプセルの製造に関わる各工程を示している。
【図7d】本発明の一の好適な実施形態による、結晶化溶液カプセルの製造に関わる各工程を示している。
【図8】図8a、図8b、図8cは、結晶化プレートを標準的なシッティングドロッププレートとして準備して、その後逆さにしてハンギングドロップ結晶化の実験を行うことができるようにするための、液滴サポートと結晶化維持手段とが設けられたくぼみの概略側面図である。
【図9】図9aは、結晶化プレートの装填動作を示している、図8aに示したくぼみの概略側面図である。図9bは、結晶化プレートの装填動作を示している、図8bに示したくぼみの概略側面図である。図9cは、結晶化プレートの装填動作を示している、図8cに示したくぼみの概略側面図である。
【図10】図10aは、結晶化プレートが装填され、更にハンギングドロップ結晶化の実験が実施できるように結晶成長/監視位置まで逆さにされた状態の、図8aに示したくぼみの概略側面図である。図10bは、結晶化プレートが装填され、更にハンギングドロップ結晶化の実験が実施できるように結晶成長/監視位置まで逆さにされた状態の、図8bに示したくぼみの概略側面図である。図10cは、結晶化プレートが装填され、更にハンギングドロップ結晶化の実験が実施できるように結晶成長/監視位置まで逆さにされた状態の、図8cに示したくぼみの概略側面図である。
【図11】本発明の他の態様による、多キャビティ・ハンギングドロップサポートの下面の平面図である。
【図12】図11に示す多キャビティ・ハンギングドロップサポートのキャビティの1つを示す概略立面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は結晶学に関し、厳密には、利用前に移送し取り扱うため、マイクロプレートに析出溶液を事前充填することに関する。
【背景技術】
【0002】
結晶学は、科学者にとっては極めて有用な道具であり、従って大きな興味をそそる研究分野である。結晶学は、分子の三次元的構造の正確且つ詳細な説明を提供する強力な手段であり、分子の機能を理解する上で大いに役立つ。タンパク質のような分子の結晶学は、今日では、学術分野及び産業分野で広く使用されている。
【0003】
単純なたんぱく質の三次元構造は、結晶化を必要とする結晶学的方法により得られているが、高分子から結晶を得るのはいつも簡単というわけではない。例えば、所与の分子の結晶化の好ましい条件を求めるには、何千回とまではゆかなくとも数百回も試行が繰り返されることになる。その結果、非常に多くの試行を比較的迅速に実行するための手段と方法が開発されており、ハンギングドロップ法やシッティングドロップ法などがある。このような方法は、全て、結晶を得るために蒸気拡散の利点を利用している。
【0004】
蒸気拡散技法では、微量の高分子サンプルを概ね等量の結晶化溶液又は析出溶液と混合する。混合液の液滴を、リザーバ容積がそれよりもかなり大きい結晶化溶液のチャンバに封入する。液滴は、結晶化面から液滴をハンギングすることにより、又はリザーバ内の結晶化溶液の液面より上方のぺデスタルに液滴をシッティングさせることにより、結晶化溶液のリザーバから分離した状態に保つ。時間経過と共に、結晶化液滴と結晶化溶液は、揮発性化学種の蒸気拡散により平衡状態になる。蒸気拡散による平衡状態の保持は、高分子の過飽和が達成されるまで液滴とリザーバの間で行われ、その結果、液滴内に高分子サンプルの結晶が析出する。
【0005】
しかしながら、生物学的高分子結晶を成長させる工程は、試行錯誤的なやり方で様々な結晶化パラメータを変えて行う極めて経験的な工程である。普通、これらパラメータは、pH、温度、及び結晶化液滴内の塩濃度、結晶化対象の高分子の濃度、及び析出剤の濃度(何百種にも及ぶ)である。試行錯誤的なやり方で、上記パラメータを変更することによってできる限り多くの結晶化条件を試み(結晶化条件のスクリーニング)、良好な回折性の高分子結晶の成長を可能にする結晶化条件を得る確率を高めようとしている。数多くの様々な試行を行うのに必要な各種溶液の全てを調製する必要無しに、実験室の作業をより早く行うために、Hampton Researchのような会社は、大抵は10mlの各種結晶化溶液24管分から成る事前調製型スクリーンを導入した。市場におけるHampton Researchの行為に続いて、MDL、Emerald Biostructures、Jena Biosciencesのような他の会社も事前調製型結晶化スクリーンの導入を開始した。これら全ての結晶化溶液に付随する1つの問題は、結晶化の試行を行う際に、手動又は自動の何れかでそれら溶液を結晶化プレートに移す必要があるという点である。これは、長時間の骨の折れる作業を、資格を有する熟練した技術系職員が行わねばならない、ということである。
【0006】
また、結晶化溶液をマイクロプレートに移す作業は、一般的に、結晶化溶液の蒸発を避けるために迅速に行う必要がある。このような蒸発は溶液の組成を変えてしまい、結晶成長が起きる際の同じ条件を再現するのに問題を作り出す。通常、移送はマイクロピペットを使用して行われる。技術者は溶液の入った管を開けて、その溶液を結晶化リザーバにピペットで取らねばならない。SBS標準結晶化プレートで移送を迅速に行うには、多チャンネルマイクロピペットを、(96個のくぼみを備えた結晶化プレートを設定するため)96通りの各種結晶化条件で2mLまで事前充填されたSBS標準の深いくぼみブロックと共に使用することができる。この場合、研究者は、(シールを剥がす際にくぼみ同志の交雑汚染を防ぐため)ブロックを遠心分離機にかけ、ブロックを開封して、溶液の移送を開始する必要がある。1つの問題は、ブロックを開封するとすぐに蒸発が始まることであり、全手順の実行に数分を要することから、これは重要な問題である。別の問題は、研究者が全ての溶液を使用しない場合は、ブロックを再度密封する必要があるということである。全ての溶液を使用するには、研究者は、通常は3プレート分(温度当たり1プレート)で済む場合でも、最低10プレート分を事前充填する必要がある。また、何百という異なる溶液を取り扱う際のラベル付けと分注に伴うエラー、及び交雑汚染が発生し得ることに言及することも重要である。
【0007】
別の対処法として、Tecan、Gilson 又は Robodesignのような会社が開発した、精密自動液体取り扱いステーションを使用する方法がある。このステーションは、DNA操作に関わる日常的な分子生物学的実験を行う場合には、取り扱う溶液の個数が少なくて済み、蒸発もそれほど問題とはならないので有用である(たんぱく質はDNAに比べると時間と温度の変化に対し遙かに不安定である)。例えば、Gauz他に対して2002年11月21日に発行された米国特許第6,148,878号は、複数のマイクロプレートに充填するための自動化された機械を開示している。このシステムに伴う1つの問題は、このシステムは、事前充填された複数マイクロプレートで結晶化の試行を行うには、それらを使用する前に保存目的でマイクロプレートのくぼみを自動的且つ効率的に密封するために使用することのできる手段が何ら提供されていないので、適していないということである。
【0008】
要約すると、マイクロプレートのくぼみを結晶化溶液で充填するのは骨の折れる作業で、事前に設定された厳格な規範の下でうまく実行しないと、実験結果に望ましくない大きなばらつきが生じると共に、試行の反復性が台無しになってしまうという作業である。
【0009】
従って、プレートを事前充填するための方法を見い出そうと努力が払われてきた。1つの既知の方法は、結晶化マイクロプレートの上面をテープ又は加熱封止された箔で密封することを含んでいる。保存と移送の後、結晶化実験を設定する前に、シールを剥がして、通常は各くぼみの周囲にグリースが塗布されているプレートの上面へアクセスできるようにする必要がある。シールを剥がす際、プレートの移送又は温度変化が起きた場合の凝結によってシールに付着しているかもしれない液体を取り去って、リザーバに残った溶液の体積又は濃度が変化することにより、望ましくない実験上のばらつきが生じかねないという危険がある。密封手段に付着した液体を除去するために、研究者は使用に先立ってプレートを遠心分離機にかける必要があり、このせいで自動化が難しくなり、また余分な装備と余分な工程が必要となる。更に、マイクロプレートの上面の密封と溶液の遠心分離は、ハンギングドロップ式の結晶化プレートにしか適用できない。実際には、結晶化面が、プレートの上面及び上面密封手段の下のくぼみの中に在るようなシッティングドロッププレートの場合には、くぼみに入っている結晶化溶液は結晶化面に自由に接触できるので、これにより結晶化面が汚染される。更に、この場合には、もっと厄介なことに、遠心分離により結晶化溶液の一部が結晶化面に接触してしまうので、上面密封手段の下面から液体を除去するのに遠心分離は使用できない。
【0010】
出願人の知る限り、シッティングドロップ式の結晶化の実験を行う場合に使用されるプレート又はマイクロプレートを、移送/操作前に事前充填することは、これまで誰も実現できていない。これは、(結晶化する高分子を含んだ液滴が座する)結晶化面が、マイクロプレートが充填される場所と結晶化液滴の設定が行われる場所との間で操作/移送される際に、析出溶液で損なわれ/汚染される可能性が高いことによる。
【0011】
研究者らは、結晶化の際に使用されるたんぱく質の量を最小限にするために、蒸気拡散結晶化の実験を行う際には、常により小さな液滴を使用しようとしている。1ml未満の小さな液滴を使用する場合には、良好な結晶化条件に到達するには平衡に達するのが早過ぎることから、幾つかの問題が発生する。従って、非常に少量の溶液で蒸気拡散の実験を行う場合に、平衡化の過程を遅くするか又は制御するためのある種の手段を見い出す必要がある。液滴と元の液体(結晶化溶液)の間の完全な平衡化に必要な時間を制御/修正/変更するために様々な対策が試されている。蒸発過程を遅らせ/制御するために油の使用を試みた者もいる(D'Arcy他(1996年)J.Crystal Growth 168,175−180)。この対応策に伴う1つの欠点は、結晶化溶液を覆ってリザーバに油を分注するために余分な工程が必要となることである。更に、ハンギングドロップ結晶化の設定を準備するときに、顕微鏡下で観察される像の品質が油によって悪化する可能性がある。最後に、場合によっては、マイクロプレートのくぼみは十分な油を添加するには小さすぎる。
【0012】
要約すると、生物学的高分子結晶を成長させる過程は、極めて経験的な過程に留まっている。結晶化を何千回も試行することにより、結晶の成長に影響する数多くの変数の条件を試験することで、最終的には最適化された結晶化の条件に到る。必然的に、市場は、多くの再現可能な結晶化の試行を迅速且つ容易に生成するのを支援する発明を必要としている。従って、数多くの結晶化の試行の設定を容易にすると共に、そのような設定の間のエラーと交雑汚染のリスクを最小化する装置が必要とされている。別の重要な必要性は、マイクロプレートを結晶化溶液で充填する段階と結晶化液滴の設定段階との間の蒸発又は液体損失に起因する実験上の再現性を向上させる装置/方法を持つことである。最後に、研究者が数多くのマイクロプレートでの数多くの結晶化の試行の蒸気拡散平衡化の速度を制御することができるようにする装置が必要とされている。
【特許文献1】米国特許第6,148,878号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明の目的は、結晶化溶液を事前充填した結晶化プレートを提供することである。
本発明の別の目的は、事前充填されたシッティングドロップ結晶化プレートの移送と取り扱いの間に、結晶化面が結晶化反応体で汚染されることを防ぐことである。
【0014】
本発明の更に別の目的は、シッティングドロップ又はハンギングドロップ結晶化の実験における蒸気拡散の速度を制御するための手段を提供することである。
本発明の更に別の目的は、蒸気拡散技法によって結晶化の実験を行うために実行しなければならない操作を単純化することである。
【0015】
本発明の更に別の目的は、マイクロプレートを結晶化溶液で事前に充填するための方法を提供することである。
本発明の更に別の目的は、結晶化の実験を行うための新しい方法を提供することである。
【0016】
本発明の更に別の目的は、実験の準備を標準的なシッティングドロップの設定としてのみ提供し、ハンギングドロップ実験を行う場合にはプレートを逆にする、新しい結晶化プレートを提供することである。
【0017】
本発明の更に別の目的は、一体型のハンギングドロップサポートを有する新しいハンギングドロップ結晶化プレートを提供することである。
従って、本発明によれば、結晶化の実験を行う際に使用するためのキットにおいて、それぞれ結晶化溶液を受け入れるために上端が開口している複数のくぼみを有する事前充填された結晶化プレートと、くぼみの中の結晶化溶液を一時的に気密密封して、事前充填された結晶化プレートを利用前に安全に移送し取り扱うことができるようにするための、各くぼみにその上端から或る距離だけ下方に窪ませた個別のシールを含んでいる第1水準のシールと、前記個別のシールが破られた後で蒸気拡散が起きるようにすることを目的に、前記くぼみの前記第1水準のシールの上方を密封できるようにするための、前記プレート上の前記第1水準のシールの上方の密封面を含んでいる第2水準のシールと、を備えているキットが提供されている。
【0018】
本発明の別の一般的な態様によれば、結晶化の実験を行う際に使用するためのキットにおいて、複数の個別のカプセル内に封入された少なくとも1つの結晶化溶液と、前記カプセルを装填できるようになっている複数のくぼみを含んでいる少なくとも1つの結晶化プレートと、を備えているキットが提供されている。
【0019】
本発明の又別の一般的な態様によれば、蒸気拡散により結晶を成長させる際に使用するためのキットにおいて、結晶化溶液が事前充填された複数のくぼみを画定している結晶化プレートと、前記結晶化溶液が中に入った前記くぼみを別々に且つ個別に密封するための少なくとも1つのシールと、を備えており、前記シールは、蒸気拡散が起きるようにするためにシールに孔を開けることができるように穿刺可能な材料で作られている、キットが提供されている。
【0020】
本発明の更に別の一般的な態様によれば、事前充填された結晶化プレートを作るための方法において、結晶化溶液と複数のくぼみを備えた結晶化プレートとを提供する段階と、前記くぼみに入れられた複数のカプセルに結晶化溶液を封入する段階と、を備える方法が提供されている。
【0021】
本発明の更に別の一般的な態様によれば、結晶化の実験を行うための方法において、少なくとも1つの穿刺可能なシールにより個別にくぼみの中に密封された状態で結晶化溶液が事前充填された複数のくぼみを有する結晶化プレートを提供する段階と、選択されたくぼみと整列しているシールを穿刺して孔を開け、開封された選択されたくぼみに入っている結晶化溶液の一部をピペットで取る段階と、前記開封された選択されたくぼみについて、液滴サポート上で、ピペットにより取り出された結晶化溶液を高分子溶液と混ぜ合わせて溶液の液滴を得る段階と、くぼみの中の前記溶液の液滴を、前記溶液の液滴が前記くぼみの中に入っている前記結晶化溶液から分離された状態で、密封する段階と、から成り、前記シールの孔により、溶液の液滴と結晶化溶液の間に蒸気拡散が起きるようにした方法が提供されている。
【0022】
本発明の更に別の一般的な態様によれば、事前充填された結晶化プレートを作る方法において、複数のくぼみを有する結晶化プレートを提供する段階と、結晶化溶液をくぼみに分注する段階と、くぼみの中の結晶化溶液を、くぼみの中の結晶化溶液を覆って穿刺可能なシート材を加熱封止することによって個別に密封する段階と、を備える方法が提供されている。
【0023】
穿刺可能なリザーバ内に結晶化溶液を封入し、結晶化溶液の蒸発を防ぐことによって、数多くの蒸気拡散結晶化の実験を行うために使用される事前充填されたマイクロプレートを、作業場から別の作業場へ安全に移送/輸送し、安全に保管できるようになる。ピペットの先端でリザーバの穿刺を行うことができるので、本装置と方法は、研究機関で結晶化の試行を設定するために必要な工程の数を減らせる点でとりわけ有効である。本装置/方法の別の利点は、結晶化の実験の蒸気拡散速度の制御が容易になる点である。
【0024】
本発明の或る実施形態は、タンパク質及び他の分子、特に高分子を結晶化するのに有用な封入された結晶化溶液を提供する。或る好適な実施形態によれば、結晶化溶液の各カプセルは、マイクロプレートの結晶化溶液が入っているくぼみに挿入できるほどに小さい、望ましくはプラスチック製のリザーバと、保管に当たりそのようなリザーバの適切な密封性を保証するためにリザーバに接着することのできる穿刺可能なシールと、密封される前にリザーバに挿入される結晶化溶液と、を備えている。穿刺可能な材料は、このようなカプセルで蒸気拡散の実験が行えるように、一旦穿刺された開口孔を維持する材料で作る必要がある。
【0025】
本発明の更に別の一般的な特徴によれば、事前充填されたリザーバを安全に移送できるようにするため、穿刺可能なシートを使って、理想的には加熱封止を使って密封することのできる新しいリザーバが提供されている。このリザーバは、モールド成形され、充填され、(穿刺可能シートで)密封され、結晶化キャビティに挿入される。リザーバは、直接、結晶化くぼみにモールド成形され、充填され、次いで(穿刺可能シートで)密封される。本発明によって、結晶化の実験の設定前に結晶化面が汚染されるリスクなしに、事前充填された結晶化プレート又はマイクロプレートを安全に輸送できるようになる。本発明は、結晶化の実験が始まるときにシールを穿刺して開ける孔の大きさを変えることにより、蒸気拡散が起きる速度を制御することができるようにしている。
【0026】
本発明の更に別の態様によれば、シッティングドロップ式又はハンギングドロップ式の結晶化の試行に適した、マイクロプレートで使用されるこのような封入された結晶化溶液の製造方法が提供されている。カプセルは、モールド成形され、割当量の結晶化溶液が充填され、フィルム又は箔で密封され、次いでシッティングドロップ用又はハンギングドロップ用結晶化プレートのくぼみに挿入される。
【0027】
本発明の更に別の態様によれば、複数の封入された結晶化溶液と、望ましくは複数のくぼみを含んでいる少なくとも1つの結晶化マイクロプレートと、前記くぼみに入っている封入された結晶化溶液とを備えたキットが提供されている。
【0028】
本発明は、液滴設定の準備前に、結晶化溶液を開閉したり又は別の容器から結晶化溶液を移送する必要無しに、結晶化液滴設定ロボットに複数の結晶化溶液を装填することができるようにしている点で興味深い。
【0029】
本発明の更に別の一般的な態様によれば、複数のくぼみを備えている結晶化マイクロプレート板において、各くぼみは、析出溶液を入れるための析出溶液リザーバと、結晶化対象の高分子が入っている溶液の小滴を受けるための結晶化面を有する液滴チャンバとを含んでおり、前記液滴チャンバは、くぼみが密封された後で溶液の小滴と析出溶液の間に蒸気拡散が起きるように前記析出溶液リザーバと連通しており、ハンギングドロップ結晶化の実験を行うために、結晶化マイクロプレートが上下逆にされた場合に、析出溶液を析出溶液リザーバ内に保持するために、前記析出溶液リザーバに流量絞り弁が設けられている、結晶化マイクロプレート板が提供されている。
【0030】
本発明の更に別の一般的な態様によれば、ハンギングドロップ結晶化の実験を行うための方法において、一定量の析出溶液が入っている析出溶液リザーバと結晶化面を有する液滴チャンバとをそれぞれ備えている複数のくぼみを有する結晶化マイクロプレートを提供する段階と、結晶化対象の高分子が入っている溶液の小滴を前記結晶化面にシッティングする段階と、くぼみの中の溶液の小滴を、溶液の小滴がくぼみに入っている析出溶液から分離された状態で密封する段階と、前記析出溶液が前記析出溶液リザーバ内に保持されている状態で、溶液の小滴が前記結晶化面から懸垂するように、プレートを上下逆さにする段階とを備える方法が提供されている。
【0031】
本発明の更に別の一般的な態様によれば、結晶化溶液が入っているくぼみの上に逆さにすることができるようになっているハンギングドロップ結晶化サポートにおいて、析出溶液と結晶化対象の高分子が入っている溶液の小滴を入れるための少なくとも1つのキャビティを画定している下面を備えており、前記キャビティは底面を有し、結晶化溶液と溶液の小滴とが蒸気平衡状態に達したとき、キャビティの底面が溶液でなお完全に覆われているように、事前に設定された量の高分子溶液が入る大きさになっている、ハンギングドロップ結晶化サポートが提供されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以上、本発明の特徴を大まかに説明してきたが、これより本発明のこのような実施形態を例示的に示している添付図面を参照していく。
本発明は、研究室での使用に先立つ輸送と取り扱いのために、ハンギングドロップ・マイクロプレート又はシッティングドロップ・マイクロプレートの様な複数くぼみ結晶化プレートに、所望数の結晶化溶液又は析出溶液を事前充填するための方法を提供する。このやり方では、技術者は「使用準備が整った」プレートを受け取ることができるので、各くぼみに適当な結晶化溶液を充填するという時間のかかる作業を省くことができる。
【0033】
図1は、本発明の1つの可能な応用例を示している。具体的には、図1は、複数のくぼみ12を備えたシッティングドロップ結晶化プレート10を示している。各くぼみ12は、結晶化の実験中に結晶化対象の高分子を含む溶液が載置される結晶化面又は液滴サポート17を有する液滴チャンバと連通している中央リザーバ13を含んでいる(図4参照)。プレート10自体は、従来通りの作りであり、本発明の範囲を逸脱すること無く様々な構造とすることができる。
【0034】
結晶化溶液16(図3及び図4)の入ったカプセル14は、各くぼみ12の中央リザーバ13に締まり嵌めで入っている。代わりに、カプセル14は、隙間嵌めでくぼみ12に入れ接着剤でそこに保持してもよい。また、1つのくぼみ12当たり2つ以上のカプセル14を配置してもよい。図1及び図3に示すように、各カプセル14は、開口した上端部を有するポーションカップ18の形態をしたリザーバを備えており、この開口した上端部は、カップ18に望ましくは加熱封止されたシール19で閉じられている。ポーションカップ18は、ポリプロピレンの様な溶融した熱可塑性材料を、射出成形機のカプセル型のキャビティ金型(図示せず)に射出することにより成形されるのが望ましい。なお、カップ18を成形する材料は、中に入れる結晶化溶液に対して化学的に不活性でなくてはならない。また、結晶化対象の高分子を含む液滴が結晶化溶液上方に直接懸垂されるハンギングドロップ用途の場合には、カップ18は、液滴サポート上の結晶の成長が顕微鏡の下で観察監視できるようにするため、光が透過できるほど十分に清澄又は透明でなければならない。例示した例では、カップ18は、全体的には円錐台形状であるが、これが配置されるプレートのくぼみの形状に相補的であればどの様な形状でもよい。例示した実施形態では、各カップ18は、各中央リザーバ13に形成された、対応する軸方向に伸張する突起22を受け入れるように作られた、軸方向に伸張する半円形の窪みを有している。突起22が窪み20に係合することにより、カップ18がくぼみ12内で回転しないように固定される。
【0035】
シール19は、結晶化溶液を、結晶化対象の高分子を含む溶液と混ぜ合わせるために、ピペットで取り出すのに使用されるピペットの先端で刺すことによって、簡単に孔を開けることのできる、ポリプロピレン被覆アルミニウム箔の様な穿刺可能シート材又は膜の形態で提供されるのが望ましい。シール19に孔を開けるのに他の穿刺工具を使用することもできる。穿刺可能シール19を形成するために使用される材料は、穿刺器具をくぼみ12から引き抜いた後に、その形状が元に戻らないような材料でなければならない。次の段階で小滴26(図4)と結晶化溶液16の間で蒸気拡散ができるようにするために、器具はシール19に望ましい大きさの永久的な孔24(図4)を残さねばならない。孔24の大きさを変えることにより、好都合に、小滴26と結晶化溶液16の間の蒸気拡散の速度を制御することができる。穿刺可能なシールを使用すると、シールを除去しなくともよくなり、これに伴う余計な段階が不要となる点でも有利である。更に、これまで説明してきたように、シールを除去するのは、液体の一部がシールと共に取り去られる場合、リザーバ内の溶液の量又は濃度に変化が起きるため、望ましくない実験上のばらつきが発生しかねない点においても望ましくない。これにより、各くぼみのシールの下側に液が確実に残っていないようにするため、くぼみのシールを破る前に、プレートを遠心分離機に掛ける必要がなくなる。穿刺可能なシールを使用することで、各個々のシールを別々に剥がすのに要する余計な作業によりこれまで制限されてきたくぼみの個別密封を、かなり望ましい密封にすることもできるようになる。穿刺可能なシールの使用により、シールを物理的に剥がす必要はなく、シールは結晶化溶液16をピペットで取る動作の間に破られるので、2つの工程を1つにまとめることができる。
【0036】
図3に示すように、結晶化溶液をカプセル封入しているので、結晶化面17を結晶化溶液16から隔離して、事前充填されたプレート10を使用前に輸送し取り扱う間に結晶化面17が汚染されるのを避けることができ、好都合である。図3から容易に分かるように、リザーバ18の上面、従ってシール19は、プレート10の上面からくぼみ12の中へ或る距離だけ窪んでいる。この様に、プレートの上面は、図4に示すテープ30の様なカバーと密封係合させて、シール19により形成された第1水準のシールとは別の第2水準のシールを提供するのに利用することができる。第2水準のシールは、第1水準のシールが破られた後で結晶化溶液16と小滴26の間で蒸気拡散が起きるように、両者を雰囲気から気密密封するのに使用される。後で図6を見れば分かるように、シール19とプレートの上面の間の間隔は、ハンギングドロップ結晶化の設定において、結晶化溶液の上方に溶液の小滴を懸垂するのに必要な空間を形成している。これは、開けられた孔が小滴を受け入れる大きさでない場合には必要である。しかしながら、くぼみの一番上にシールを設けて、シールに形成された穿刺孔を通してハンギングの小滴が伸びるのに十分な大きさの孔を画定することが有利な場合もある。そうすると、シールの存在によって小滴の観察に妥協が生じることは確実になくなる。
【0037】
使用時、技術者は、図3に示すような結晶化溶液16が事前充填された結晶化プレート10を受け取る。次いで、選択された生物学的高分子液滴26(図4)が、所望の数のくぼみ12の結晶化面17上に分注される。次に、これらくぼみ12に入っている結晶化溶液16は、望ましくはピペットの先端を使って、くぼみ12のシール19に孔24を開けることによりピペットで取り出されるが、ピペットは下降してくぼみ12に入り所望量の結晶化溶液を各くぼみ12から吸引する。このとき、ピペットは、所与の物質を結晶化溶液に添加して、単一の結晶化溶液で事前充填された同一のプレート10で、異なる結晶化溶液を使って様々な実験を行うことができるようにするのに使用することもできる。各くぼみには異なる添加物を導入することができる。その後、ピペットで取り出された溶液は、各結晶化面17上の高分子液滴26と混ぜ合わされる。最後に、図4に示すように、個別のテープ30を下げて、このように調製されたくぼみ12を覆って閉鎖することにより、設定が完了する。なお、1つの長いテープで同時に2つ以上のくぼみを覆ってもよい。また、使用するカバーの種類は本発明にとって問題ではなく、高分子の小滴が注がれた後でくぼみ12を気密密封するのに様々な種類のカバーを使用することができる。例えば、PCT出願第PCT/CA00/00119号に記載されている様な個々のキャップを使用してもよく、同出願を、本願に参考文献として援用する。
【0038】
高分子液滴の分注と、くぼみ内の結晶化溶液のピペット取り出しは、手作業で行ってもよいし、市販の自動ピペット装置で行ってもよい。くぼみの第2水準の密封も、手動で行ってもよいし、自動化してもよい。
【0039】
結晶化溶液のカプセル封入を図7aから図7dに示している。ポーションカップ18は、熱可塑性材料をカプセル形状のキャビティ金型(図示せず)に射出して作るのが望ましい。金型内に射出した後、熱可塑性材料を冷却してカップ18を作る。次に、カップ18に、図7bに示すように結晶化溶液16を充填する。その後、図7c及び図7dに示すように、穿刺可能な材料の箔19を、各カップ18の一番上に望ましくは加熱封止する。図7aに示すように、各カップ18の上端は面取りされており、図7dに示すように、箔19とカップ18の上側リムの間の接着面を大きくしている。加熱封止時、カップの面取りされた上端は、溶けて、図7dに示す平坦なリムを形成する。最後に、カップ18をくぼみ12に挿入する。
【0040】
なお、カップ18は、プレート10のくぼみ12に直接モールド成形することによりくぼみ12と一体に形成して、プレートを事前充填するためにカップ18をくぼみ12に挿入するという追加の工程を省くこともできる。しかしながら、この場合、シール19を加熱封止するには加熱封止適合性を有する材料でプレート10を作らねばならず、この材料は必ずしも光学特性が最良でない、という欠点がある。
【0041】
図5と図6は、封入された結晶化溶液をハンギングドロップの実験の設定に使用する、本発明の可能な別の応用例を示している。同様の部品には同様の符号を付している。
ハンギングドロップの実験の場合、穿刺可能なシール19’に設けられた孔24’は、光を透過させて、液滴サポート17’を通して結晶の成長を観察できるようにするため、懸垂する高分子液滴26’と垂直に整列していることが重要である。このため、例えば、シール19’の上面に識別マーク32を設けて、孔24を開ける箇所を確認できるようにしてもよい。また、テープをガラスプレート30’に代えて、各くぼみのリム周りにグリースを配し、ガラスプレート30’とくぼみの間のシールとしてもよい。
【0042】
なお、カプセル14は、結晶化溶液を入れることのできる小さなポーチ又はその他の穿刺可能な密封容器の形態を採ってもよい。更に、図示していない本発明の別の実施形態によれば、結晶化溶液をくぼみに直接分注し、穿刺可能なシールをくぼみの上又は中に貼り付けて結晶化溶液を中に密封することもできる。内側の肩部は、くぼみの中で箔の加熱封止を施せるように、各くぼみに形成せねばならない。結晶化プレートの上面に穿刺可能シールを加熱封止する場合でも、選択されたくぼみのシールに個別孔を開けることにより、くぼみは、互いに別々に開封することができる。次に、穿刺可能なシールの、各個別の孔の周りに直にグリースなどを塗布して、開封されたくぼみと、裏返しにして載せるカバーガラス(ハンギングドロップサポート)の間に適切なシールを形成することができる。代わりに、グリースを、カバーガラス上の接着剤に代えてもよい。この場合、カバーガラスは、穿刺可能なシールに直に接触するように、結晶化プレートの上に置くだけである。
【0043】
結晶化溶液16の封入、即ち、液滴サポート17と、シッティングドロッププレート10のくぼみ12のメインリザーバ13に入っている或る量の結晶化溶液16との間に穿刺可能なシールを設けることは、これまでに開示したように、ハンギングドロップ結晶化の実験を行う場合に、シッティングドロッププレートを上下逆さにすることができるという利点を有している。これにより、シッティングドロッププレートでハンギングドロップ結晶化の実験を行うことができるようになる。これは、カバーガラスの様な別個のサポート上に、結晶化対象の高分子を含む溶液の小滴を分注し、次いでこれをマイクロプレートの対応するくぼみの上に反転し、それを密封することがもはや必要なくなる点で好都合である。既知の工具では結晶化プレート上に溶液26の小滴をセットしてプレート全体を逆さにすることができないので、ハンギングドロップ実験用にはこのような別のサポートがこれまで必要であった。析出溶液はリザーバ13から落下し、これによりプレート操作時の結晶化面又は液滴サポート17の汚染に備えている。
【0044】
本発明の特性によれば、実験的設定は、あたかも、シッティングドロップ結晶化の実験を行い、その後、結晶化対象の高分子を含む溶液の小滴26が各液滴サポート17からぶら下がるように(図10aから図10c)、シッティングドロップ結晶化プレート全体を反転させる(即ち、完全にひっくり返す)ことができるように、準備することができる。一旦プレートが反転すると、結晶化溶液16は、リザーバ13にはシール19が存在するため、メインリザーバ13から流出するのが防止される。シール19に開けられた孔24は、小滴26と結晶化溶液16の間で蒸気拡散が起きるだけ十分大きくなければならないが、溶液16の表面張力により結晶化溶液16が確実にリザーバ13内に留まるほど十分に小さくなければならない。
【0045】
図8aから図8cに示すように、これは、結晶化プレートの各メインリザーバ13に様々な他の型式の流量絞り弁を設けることによって行うこともできる。例えば、各くぼみ13は、図8aに示すように、リザーバ13の口から内側に突き出て口を部分的に閉じる内側環状リップ34と一体に製造してもよい。環状リップ34で画定された小さな開口36は、プレートを反転したときに、溶液16の表面張力により、確実に溶液がリザーバから落下しないようにすると同時に、図10aに示す様に、溶液16と小滴26の間に蒸気拡散が起きるようにする。開口36は、標準的なマイクロピペットの先端部と液体取り扱いロボット分注ヘッドが入る大きさであるのが望ましい。開口の形状は、結晶化溶液の保管を許容し、逆さにしたときに溶液を保持できものでなくてはならない。上下を逆さにしたときに、リザーバ内に液体を保持するため、充填後の溶液リザーバに、余分の閉鎖手段を付加してもよい。
【0046】
代わりに、流量絞り弁は、リザーバ16の開放端に設けられた微小多孔質ろ過膜の形態を採ってもよい。膜は、液体に対しては不透過性であるが気体に対しては透過性である。
図8b及び図8cに示す実施形態によれば、リザーバ13’と13”は、図10bと図10cに示すように、結晶化プレートが反転された際に、溶液16が毛管効果によりリザーバ13’と13”の内側に保持されるように十分に小さい内径を有している。通常、このような毛管リザーバの内径は3.5mmよりも小さい。
【0047】
毛管リザーバ13”は、内径が開口端に向かって徐々に小さくなっている点で毛管リザーバ13’とは異なっている。毛管リザーバ13”は、全体的には円錐台形状を有している。
【0048】
使用時、図9a、9b、及び9cに示すように、各結晶化プレートは、通常のシッティングドロッププレートと同じように、結晶化溶液をリザーバ13、13’及び13”に分注し、リザーバ13、13’及び13”内の結晶化溶液の一部をピペットで取り出し、ピペットで取り出された結晶化溶液を高分子溶液と結晶化面17、17’及び17”上で混ぜ合わせて溶液26の小滴を得ることにより、充填される。次に、各プレートの上面にシール38を貼り付けてくぼみ12、12’及び12”を密封する。次いで、ハンギングドロップ結晶化の実験を実施するために、図10a、10b、及び10cに示す結晶成長/監視位置まで、そのように調製された結晶化プレートを反転させる。
【0049】
標準的なシッティングドロッププレート上に見られる様な、一体的液滴サポートを有する結晶化プレートの結晶化リザーバに、流量絞り弁を追加することにより、シッティング又はハンギングドロップの結晶化の実験を行う際に選択的に使用することのできる万能結晶化プレートが形成される。
【0050】
本発明は、実験の設定時に、くぼみ/リザーバ上に、結晶化サポートを手動的/自動的に反転及び割り出しする必要無しに、多重ハンギングドロップ実験の設定ができるようになるので好都合である。本発明では、ユーザーは、結晶化プレート全体を、図9a9b、9cに示す装填/装填解除位置から、結晶成長/監視位置まで、単に上下ひっくり返せばよい。
【0051】
本発明は、一体となった結晶化面を有するハンギングドロップ・プレートを提供することによって、プレートの溜の上に個別の結晶化サポートを反転させる必要性を無くしている。従来のハンギングドロップの設定によれば、マイクロプレートのくぼみの列は、1回の操作で、対応するハンギングドロップ・サポートで覆われるわけではなく、或る生成物を別の生成物の上に反転させる場合のミラー効果のために、ハンギングドロップ・サポートは一度に1列ずつ反転させねばならない。本発明では、析出溶液リザーバと各くぼみの液滴サポートは、隣り合わせになっており、従ってプレートの高分子液滴は、プレートを単に反転させることにより1回の操作でハンギング状態に置くことができる。これにより、操作は格段に単純化する。
【0052】
なお、液滴サポート17は、必ずしも平坦でなくともよい。高分子の液滴の位置決めをやり易くするために、そしてその後の液滴の広がりを防ぐために、異なる構造にしてもよい。これは、液滴サポート又は他の型式のバリア又は液滴リテイナーに窪みを設けることにより行うこともできる。
【0053】
図11は、同じくぼみで複数の結晶化の実験をできるようにするため、結晶化プレートのくぼみの上にひっくり返して、くぼみを密封できるようになった多キャビティハンギングドロップ・サポート40を示している。
【0054】
ハンギングドロップ・サポート40は、くぼみ内の、又はくぼみの開口端に隣接するプレート上の、(図示しない)対応するキャップ係合手段と協働するようになっている(図示しない)くぼみ係合手段を有するキャップの形態で提供することもできる。図9に示すように、ハンギングドロップ・サポート40は、結晶化対象の高分子を含んでいる溶液のそれぞれの小滴を受けるために、その下面44に形成された複数の円形のキャビティ42a、42b...42f又は窪みによって特徴付けられる。キャビティ42a、42b...42fは、小滴の広がりを防止して、小滴が互いに接することのないようにしている。キャビティ42a、42b...42fは、ハンギングドロップ・サポート上の小滴を局限化して、結晶成長の観察をやり易くすることに寄与するのにも役立つ。
【0055】
各キャビティの寸法は、事前に設定された量の高分子溶液が入るように定められている。具体的には、所与のキャビティの寸法と溶液の量との関係は、キャビティ内に分注される最初の溶液の量が、キャビティの溶液量保持容量を超えず、且つ、くぼみに入っている結晶化溶液とサポート40から垂れている高分子溶液との間が蒸気平衡に達したときに、キャビティの底面が、なお高分子溶液の残量分で完全に覆われているようでなければならない。これは、形成された結晶の良好な視認性を提供すると同時に、実験の再現性を改良する点でも好都合である。一般に、キャビティの容積は、中に入れる予定の液滴の体積に略相当する。一旦キャビティ内に注がれた溶液の小滴は、小滴の広がりを避けるためにキャビティの境界を定める側壁に接することになる。
【0056】
キャビティ42a、42b...42fは、異なる量の高分子溶液を入れるために、様々な寸法であるのが望ましい。
多キャビティハンギングドロップ・サポート40は、良好な光学特性を有するプラスチック材料で製作されるのが望ましく、射出成形で得られるのが望ましい。液滴サポート40は、少なくとも結晶成長が観察できるキャビティ位置が透明でなければならない。各キャビティ42a、42b...42fの底面41は、平坦であるのが望ましい。更に、図12に示すように、底面41は、結晶の回収をやり易くするために、約45度の角度Θを成す傾斜した壁部分43を介して側壁と繋がっている。
【0057】
キャビティ42a、42b...42fの壁は、水密性、疎水性などの処理を施してもよい。
キャビティは、ハンギングドロップ・サポート上に形成される結晶を良好に視認できるようにする。キャビティは、良好な視認性のために液面水準を均一にすることができる。
【0058】
なお、ハンギングドロップ・サポート40には、その下面に単一の窪み又はキャビティを設けてもよい。それでも、先行技術のハンギングドロップ・サポートが、そこで形成される結晶の視認性を改良する手段を欠いているのに勝っており、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一の好適な実施形態による、封入された結晶化溶液で事前充填された結晶化プレートの斜視図である。
【図2】図1に示す事前充填された結晶化プレートを上から見た平面図である。
【図3】図2の3−3線に沿う断面図である。
【図4】プレートのくぼみに一体化された液滴サポート上に高分子の液滴が分注されている、事前充填された結晶化プレートの断面図であり、くぼみはテープで密封されていて、事前充填シールが破られると、結晶化溶液と液滴の間で蒸気拡散が起きるようになっている。
【図5】本発明の第2の実施形態による、ハンギングドロップ構成を上から見た平面図である。
【図6】図5の6−6線に沿う断面図である。
【図7a】本発明の一の好適な実施形態による、結晶化溶液カプセルの製造に関わる各工程を示している。
【図7b】本発明の一の好適な実施形態による、結晶化溶液カプセルの製造に関わる各工程を示している。
【図7c】本発明の一の好適な実施形態による、結晶化溶液カプセルの製造に関わる各工程を示している。
【図7d】本発明の一の好適な実施形態による、結晶化溶液カプセルの製造に関わる各工程を示している。
【図8】図8a、図8b、図8cは、結晶化プレートを標準的なシッティングドロッププレートとして準備して、その後逆さにしてハンギングドロップ結晶化の実験を行うことができるようにするための、液滴サポートと結晶化維持手段とが設けられたくぼみの概略側面図である。
【図9】図9aは、結晶化プレートの装填動作を示している、図8aに示したくぼみの概略側面図である。図9bは、結晶化プレートの装填動作を示している、図8bに示したくぼみの概略側面図である。図9cは、結晶化プレートの装填動作を示している、図8cに示したくぼみの概略側面図である。
【図10】図10aは、結晶化プレートが装填され、更にハンギングドロップ結晶化の実験が実施できるように結晶成長/監視位置まで逆さにされた状態の、図8aに示したくぼみの概略側面図である。図10bは、結晶化プレートが装填され、更にハンギングドロップ結晶化の実験が実施できるように結晶成長/監視位置まで逆さにされた状態の、図8bに示したくぼみの概略側面図である。図10cは、結晶化プレートが装填され、更にハンギングドロップ結晶化の実験が実施できるように結晶成長/監視位置まで逆さにされた状態の、図8cに示したくぼみの概略側面図である。
【図11】本発明の他の態様による、多キャビティ・ハンギングドロップサポートの下面の平面図である。
【図12】図11に示す多キャビティ・ハンギングドロップサポートのキャビティの1つを示す概略立面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶化の実験を行う際に使用するためのキットにおいて、
それぞれ結晶化溶液を受け入れるために上端が開口している複数のくぼみを有する事前充填された結晶化プレートと、
前記くぼみの中の前記結晶化溶液を一時的に気密密封して、前記事前充填された結晶化プレートを利用前に安全に移送し取り扱うことができるようにするための、前記各くぼみにその上端から或る距離だけ下方に窪ませた個別のシールを含んでいる第1水準のシールと、
前記個別のシールが破られた後で蒸気拡散が起きるようにすることを目的に、前記くぼみの前記第1水準のシールの上方を密封できるようにするための、前記プレート上の前記第1水準のシールの上方の密封面を含んでいる第2水準のシールと、を備えているキット。
【請求項2】
前記第2水準のシールは、前記密封面と密封係合することのできるカバー手段を更に含んでいる、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記カバー手段は、前記くぼみを別々に密封して覆うための複数の個別のカバー部材を含んでいる、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
前記個別のシールは、各ポーションカップに個別に貼り付けられ、前記結晶化溶液が入った複数の気密密封されたカプセルを提供しており、前記カプセルは前記くぼみの中に個別に配置されている、請求項1に記載のキット。
【請求項5】
前記ポーションカップは、結晶成長の検査と観察ができる程度に透明である、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
前記個別のシールは、永久的な孔を形成できる穿刺可能な材料で作られている、請求項4に記載のキット。
【請求項7】
前記個別のシールは、それぞれ、前記複数のくぼみの内の関係付けられたくぼみの、その底面から或る距離だけ離れた箇所に、加熱封止された箔を含んでいる、請求項1に記載のキット。
【請求項8】
前記箔は、蒸気拡散が起きる速度を制御するために、そこに様々な大きさの永久的な孔を形成できるようにする穿刺可能な材料で作られている、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
前記事前充填された結晶化プレートは、シッティングドロップ結晶化プレートであり、前記くぼみは、その前記底面から或る距離だけ離れた箇所にそれぞれの結晶化面を含んでおり、前記結晶化面は、輸送の間は、前記個別のシールで結晶化溶液から隔離されている、請求項1に記載のキット。
【請求項10】
結晶成長の検査と観察ができるようにするために、前記個別のシールのどこを穿刺するのかを示す視覚的表示を提供するための識別マークを更に備えている、請求項8に記載のキット。
【請求項11】
結晶化の実験を行う際に使用するためのキットにおいて、
複数の個別のカプセル内に封入された少なくとも1つの結晶化溶液と、
前記カプセルを装填できるようになっている複数のくぼみを含んでいる少なくとも1つの結晶化プレートと、を備えているキット。
【請求項12】
前記カプセルは、異なる大きさの孔を前記カプセルに永久的に形成できるようにするため穿刺可能になっており、前記各孔の大きさによって、結晶化の実験を開始した場合の蒸気拡散速度が決まる、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記カプセルは、それぞれ、前記結晶化溶液が充填され、穿刺可能なシールで閉じられたポーションカップを含んでいる、請求項11に記載のキット。
【請求項14】
前記シールは、前記リザーバに、その開口した上端を閉じるために加熱封止されたシート材の形態で設けられている、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
蒸気拡散により結晶を成長させる際に使用するためのキットにおいて、
結晶化溶液が事前充填された複数のくぼみを画定している結晶化プレートと、
前記結晶化溶液が中に入った前記くぼみを密封するための少なくとも1つのシールと、を備えており、
前記シールは穿刺可能な材料で作られ、前記各くぼみごとに別々に蒸気拡散が起きるようにするため前記穿刺可能な材料に個別の孔を形成できるようになっている、キット。
【請求項16】
前記くぼみに関して前記シールのどこを穿刺するのかを示す視覚表示を提供する複数の識別マークを更に含んでいる、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記少なくとも1つの穿刺可能なシールは、前記プレートの上面に前記くぼみを覆って加熱封止されている、請求項15に記載のキット。
【請求項18】
前記シールは、前記くぼみそれぞれの中の窪んだ位置に配置された個別の穿刺可能な箔の形態で設けられている、請求項15に記載のキット。
【請求項19】
前記穿刺可能な箔は、前記結晶化溶液が充填され、前記くぼみに装着された、各ポーションカップに加熱封止されている、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
事前充填された結晶化プレートを作るための方法において、
結晶化溶液と、複数のくぼみを有する結晶化プレートとを提供する段階と、
前記くぼみに入れられた複数のカプセルに前記結晶化溶液を封入する段階と、を備える方法。
【請求項21】
前記結晶化溶液を封入する段階は、前記カプセルをモールド成形する段階と、前記カプセルに前記結晶化溶液を充填する段階と、前記各カプセルを穿刺可能なシート材で密封する段階とを含んでいる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記カプセルを前記くぼみに挿入する段階を更に含んでいる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記カプセルを前記結晶化プレートの前記くぼみに直接モールド成形する段階を含んでいる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記結晶化プレートと前記カプセルは、溶融した熱可塑性材料を、封入用のキャビティを組み込んだマイクロプレートの形状をしたキャビティ金型内に射出することにより同時にモールド成形される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記穿刺可能なシート材は、前記各カプセルに加熱封止される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記穿刺可能な材料は、個別の箔の形態で設けられ、前記箔に永久的な孔を開けられるようになっている、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
結晶化の実験を行うための方法において、
少なくとも1つの穿刺可能なシールにより個別にくぼみの中に密封された状態で結晶化溶液が事前充填された複数のくぼみを有する結晶化プレートを提供する段階と、
選択されたくぼみと整列している前記シールを穿刺して孔を開け、前記選択されたくぼみに入っている前記結晶化溶液の一部をピペットで取る段階と、
前記選択されたくぼみについて、液滴サポート上で、前記ピペットにより取り出された結晶化溶液を高分子溶液と混ぜ合わせて溶液の液滴を得る段階と、
前記選択されたくぼみの中の前記溶液の液滴を、前記溶液の液滴が前記くぼみに入っている前記結晶化溶液から分離された状態で、密封する段階と、から成り、
前記シールの孔により、前記溶液の液滴と前記結晶化溶液の間に蒸気拡散が起きるようにした方法。
【請求項28】
前記選択されたくぼみの中の前記溶液の液滴を密封する段階は、前記孔の周りの前記シールに直接グリースを塗布する段階を含んでいる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
事前充填された結晶化プレートを作る方法において、
複数のくぼみを有する結晶化プレートを提供する段階と、
結晶化溶液を前記くぼみに分注する段階と、
前記くぼみの中の前記結晶化溶液を、前記くぼみの中の結晶化溶液を覆って穿刺可能な箔を加熱封止することによって個別に密封する段階と、を備える方法。
【請求項30】
複数のくぼみを備えている結晶化マイクロプレートにおいて、前記各くぼみは、析出溶液を入れるための析出溶液リザーバと、結晶化対象の高分子が入った溶液の小滴を受けるための結晶化面を有する液滴チャンバとを含んでおり、前記液滴チャンバは、前記くぼみが密封された後で前記溶液の小滴と前記析出溶液の間に蒸気拡散が起きるように前記析出溶液リザーバと連通しており、ハンギングドロップ結晶化の実験を行うために、結晶化マイクロプレートが上下逆にされた場合に、前記析出溶液を前記析出溶液リザーバ内に維持するために、前記析出溶液リザーバに流量絞り弁が設けられている、結晶化マイクロプレート。
【請求項31】
ハンギングドロップ結晶化の実験を行うための方法において、
一定量の析出溶液が入っている析出溶液リザーバと結晶化面を有する液滴チャンバとをそれぞれ備えている複数のくぼみを有する結晶化マイクロプレートを提供する段階と、
結晶化対象の高分子が入っている溶液の小滴を前記結晶化面上にシッティングする段階と、
前記くぼみの中の溶液の小滴を、前記溶液の小滴が前記くぼみの中に入っている前記析出溶液から分離された状態で密封する段階と、
前記析出溶液が前記析出溶液リザーバ内に保持されている状態で、前記溶液の小滴が前記結晶化面から懸垂するように、プレートを上下逆さにする段階と、を備える方法。
【請求項32】
結晶化溶液が入っているくぼみの上に逆さにすることができるようになっているハンギングドロップ結晶化サポートにおいて、析出溶液と結晶化対象の高分子が入っている溶液の小滴を閉じ込めるための少なくとも1つのキャビティを画定している下面を備えており、前記キャビティは底面を有し、前記結晶化溶液と前記溶液の小滴とが蒸気平衡状態に達したとき、前記キャビティの前記底面が前記溶液でなお完全に覆われているように、事前に設定された量の高分子溶液を入る大きさになっている、ハンギングドロップ結晶化サポート。
【請求項33】
複数のキャビティが、高分子溶液の各小滴を受けるために前記下面に設けられ、同じくぼみの中で幾つかの結晶化の実験を行えるようになっている、請求項32に記載のハンギングドロップ結晶化サポート。
【請求項34】
前記キャビティは、少なくとも2つの異なる量の高分子溶液を個々に入れるため、少なくとも2つの異なる大きさのキャビティになっている、請求項33に記載のハンギングドロップ結晶化サポート。
【請求項35】
前記底面は、透明な材料で作られている、請求項31に記載のハンギングドロップ結晶化サポート。
【請求項36】
前記サポートは、プラスチック材料で作られている、請求項31に記載のハンギングドロップ結晶化サポート。
【請求項37】
前記サポートは、射出成形されたプラスチック材料で作られている、請求項36に記載のハンギングドロップ結晶化サポート。
【請求項38】
前記底面は平坦である、請求項32に記載のハンギングドロップ結晶化サポート。
【請求項39】
前記各キャビティは壁で境界が定められており、前記底面は、約45度の角度Θを成す傾斜壁部分を介して前記壁に繋がっている、請求項39に記載のハンギングドロップ結晶化サポート。
【請求項1】
結晶化の実験を行う際に使用するためのキットにおいて、
それぞれ結晶化溶液を受け入れるために上端が開口している複数のくぼみを有する事前充填された結晶化プレートと、
前記くぼみの中の前記結晶化溶液を一時的に気密密封して、前記事前充填された結晶化プレートを利用前に安全に移送し取り扱うことができるようにするための、前記各くぼみにその上端から或る距離だけ下方に窪ませた個別のシールを含んでいる第1水準のシールと、
前記個別のシールが破られた後で蒸気拡散が起きるようにすることを目的に、前記くぼみの前記第1水準のシールの上方を密封できるようにするための、前記プレート上の前記第1水準のシールの上方の密封面を含んでいる第2水準のシールと、を備えているキット。
【請求項2】
前記第2水準のシールは、前記密封面と密封係合することのできるカバー手段を更に含んでいる、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記カバー手段は、前記くぼみを別々に密封して覆うための複数の個別のカバー部材を含んでいる、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
前記個別のシールは、各ポーションカップに個別に貼り付けられ、前記結晶化溶液が入った複数の気密密封されたカプセルを提供しており、前記カプセルは前記くぼみの中に個別に配置されている、請求項1に記載のキット。
【請求項5】
前記ポーションカップは、結晶成長の検査と観察ができる程度に透明である、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
前記個別のシールは、永久的な孔を形成できる穿刺可能な材料で作られている、請求項4に記載のキット。
【請求項7】
前記個別のシールは、それぞれ、前記複数のくぼみの内の関係付けられたくぼみの、その底面から或る距離だけ離れた箇所に、加熱封止された箔を含んでいる、請求項1に記載のキット。
【請求項8】
前記箔は、蒸気拡散が起きる速度を制御するために、そこに様々な大きさの永久的な孔を形成できるようにする穿刺可能な材料で作られている、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
前記事前充填された結晶化プレートは、シッティングドロップ結晶化プレートであり、前記くぼみは、その前記底面から或る距離だけ離れた箇所にそれぞれの結晶化面を含んでおり、前記結晶化面は、輸送の間は、前記個別のシールで結晶化溶液から隔離されている、請求項1に記載のキット。
【請求項10】
結晶成長の検査と観察ができるようにするために、前記個別のシールのどこを穿刺するのかを示す視覚的表示を提供するための識別マークを更に備えている、請求項8に記載のキット。
【請求項11】
結晶化の実験を行う際に使用するためのキットにおいて、
複数の個別のカプセル内に封入された少なくとも1つの結晶化溶液と、
前記カプセルを装填できるようになっている複数のくぼみを含んでいる少なくとも1つの結晶化プレートと、を備えているキット。
【請求項12】
前記カプセルは、異なる大きさの孔を前記カプセルに永久的に形成できるようにするため穿刺可能になっており、前記各孔の大きさによって、結晶化の実験を開始した場合の蒸気拡散速度が決まる、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記カプセルは、それぞれ、前記結晶化溶液が充填され、穿刺可能なシールで閉じられたポーションカップを含んでいる、請求項11に記載のキット。
【請求項14】
前記シールは、前記リザーバに、その開口した上端を閉じるために加熱封止されたシート材の形態で設けられている、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
蒸気拡散により結晶を成長させる際に使用するためのキットにおいて、
結晶化溶液が事前充填された複数のくぼみを画定している結晶化プレートと、
前記結晶化溶液が中に入った前記くぼみを密封するための少なくとも1つのシールと、を備えており、
前記シールは穿刺可能な材料で作られ、前記各くぼみごとに別々に蒸気拡散が起きるようにするため前記穿刺可能な材料に個別の孔を形成できるようになっている、キット。
【請求項16】
前記くぼみに関して前記シールのどこを穿刺するのかを示す視覚表示を提供する複数の識別マークを更に含んでいる、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記少なくとも1つの穿刺可能なシールは、前記プレートの上面に前記くぼみを覆って加熱封止されている、請求項15に記載のキット。
【請求項18】
前記シールは、前記くぼみそれぞれの中の窪んだ位置に配置された個別の穿刺可能な箔の形態で設けられている、請求項15に記載のキット。
【請求項19】
前記穿刺可能な箔は、前記結晶化溶液が充填され、前記くぼみに装着された、各ポーションカップに加熱封止されている、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
事前充填された結晶化プレートを作るための方法において、
結晶化溶液と、複数のくぼみを有する結晶化プレートとを提供する段階と、
前記くぼみに入れられた複数のカプセルに前記結晶化溶液を封入する段階と、を備える方法。
【請求項21】
前記結晶化溶液を封入する段階は、前記カプセルをモールド成形する段階と、前記カプセルに前記結晶化溶液を充填する段階と、前記各カプセルを穿刺可能なシート材で密封する段階とを含んでいる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記カプセルを前記くぼみに挿入する段階を更に含んでいる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記カプセルを前記結晶化プレートの前記くぼみに直接モールド成形する段階を含んでいる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記結晶化プレートと前記カプセルは、溶融した熱可塑性材料を、封入用のキャビティを組み込んだマイクロプレートの形状をしたキャビティ金型内に射出することにより同時にモールド成形される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記穿刺可能なシート材は、前記各カプセルに加熱封止される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記穿刺可能な材料は、個別の箔の形態で設けられ、前記箔に永久的な孔を開けられるようになっている、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
結晶化の実験を行うための方法において、
少なくとも1つの穿刺可能なシールにより個別にくぼみの中に密封された状態で結晶化溶液が事前充填された複数のくぼみを有する結晶化プレートを提供する段階と、
選択されたくぼみと整列している前記シールを穿刺して孔を開け、前記選択されたくぼみに入っている前記結晶化溶液の一部をピペットで取る段階と、
前記選択されたくぼみについて、液滴サポート上で、前記ピペットにより取り出された結晶化溶液を高分子溶液と混ぜ合わせて溶液の液滴を得る段階と、
前記選択されたくぼみの中の前記溶液の液滴を、前記溶液の液滴が前記くぼみに入っている前記結晶化溶液から分離された状態で、密封する段階と、から成り、
前記シールの孔により、前記溶液の液滴と前記結晶化溶液の間に蒸気拡散が起きるようにした方法。
【請求項28】
前記選択されたくぼみの中の前記溶液の液滴を密封する段階は、前記孔の周りの前記シールに直接グリースを塗布する段階を含んでいる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
事前充填された結晶化プレートを作る方法において、
複数のくぼみを有する結晶化プレートを提供する段階と、
結晶化溶液を前記くぼみに分注する段階と、
前記くぼみの中の前記結晶化溶液を、前記くぼみの中の結晶化溶液を覆って穿刺可能な箔を加熱封止することによって個別に密封する段階と、を備える方法。
【請求項30】
複数のくぼみを備えている結晶化マイクロプレートにおいて、前記各くぼみは、析出溶液を入れるための析出溶液リザーバと、結晶化対象の高分子が入った溶液の小滴を受けるための結晶化面を有する液滴チャンバとを含んでおり、前記液滴チャンバは、前記くぼみが密封された後で前記溶液の小滴と前記析出溶液の間に蒸気拡散が起きるように前記析出溶液リザーバと連通しており、ハンギングドロップ結晶化の実験を行うために、結晶化マイクロプレートが上下逆にされた場合に、前記析出溶液を前記析出溶液リザーバ内に維持するために、前記析出溶液リザーバに流量絞り弁が設けられている、結晶化マイクロプレート。
【請求項31】
ハンギングドロップ結晶化の実験を行うための方法において、
一定量の析出溶液が入っている析出溶液リザーバと結晶化面を有する液滴チャンバとをそれぞれ備えている複数のくぼみを有する結晶化マイクロプレートを提供する段階と、
結晶化対象の高分子が入っている溶液の小滴を前記結晶化面上にシッティングする段階と、
前記くぼみの中の溶液の小滴を、前記溶液の小滴が前記くぼみの中に入っている前記析出溶液から分離された状態で密封する段階と、
前記析出溶液が前記析出溶液リザーバ内に保持されている状態で、前記溶液の小滴が前記結晶化面から懸垂するように、プレートを上下逆さにする段階と、を備える方法。
【請求項32】
結晶化溶液が入っているくぼみの上に逆さにすることができるようになっているハンギングドロップ結晶化サポートにおいて、析出溶液と結晶化対象の高分子が入っている溶液の小滴を閉じ込めるための少なくとも1つのキャビティを画定している下面を備えており、前記キャビティは底面を有し、前記結晶化溶液と前記溶液の小滴とが蒸気平衡状態に達したとき、前記キャビティの前記底面が前記溶液でなお完全に覆われているように、事前に設定された量の高分子溶液を入る大きさになっている、ハンギングドロップ結晶化サポート。
【請求項33】
複数のキャビティが、高分子溶液の各小滴を受けるために前記下面に設けられ、同じくぼみの中で幾つかの結晶化の実験を行えるようになっている、請求項32に記載のハンギングドロップ結晶化サポート。
【請求項34】
前記キャビティは、少なくとも2つの異なる量の高分子溶液を個々に入れるため、少なくとも2つの異なる大きさのキャビティになっている、請求項33に記載のハンギングドロップ結晶化サポート。
【請求項35】
前記底面は、透明な材料で作られている、請求項31に記載のハンギングドロップ結晶化サポート。
【請求項36】
前記サポートは、プラスチック材料で作られている、請求項31に記載のハンギングドロップ結晶化サポート。
【請求項37】
前記サポートは、射出成形されたプラスチック材料で作られている、請求項36に記載のハンギングドロップ結晶化サポート。
【請求項38】
前記底面は平坦である、請求項32に記載のハンギングドロップ結晶化サポート。
【請求項39】
前記各キャビティは壁で境界が定められており、前記底面は、約45度の角度Θを成す傾斜壁部分を介して前記壁に繋がっている、請求項39に記載のハンギングドロップ結晶化サポート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2006−525864(P2006−525864A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500438(P2006−500438)
【出願日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000070
【国際公開番号】WO2004/064976
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(505265779)ネクスタル・バイオテクノロジー・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000070
【国際公開番号】WO2004/064976
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(505265779)ネクスタル・バイオテクノロジー・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
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