説明

結晶性アルミノ珪酸塩ゼオライト組成物:UZM−4M

UZM-4Mとして特定される結晶性アルミノ珪酸塩ゼオライトが合成される。このゼオライトは、UZM-4ゼオライトをフルオロ珪酸塩で処理することによって得られ;実験式:M1an+ Al1-x Ex Siy Ozを有し、式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、ヒドロニウム・イオンまたはアンモニウム・イオンであり、Eはガリウム、鉄、ホウ素、インジウム及びそれらの混合物であることが可能であって、1.5〜10のSi/Al比を有しているゼオライトが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UZM-4と称される合成ゼオライトに由来するアルミノ珪酸塩ゼオライト(UZM-4M)に関するものである。UZM-4組成物は、構造的にはゼオライトQ(BPHトポロジー)に関連するものであるが、多くの場合、600℃の温度まで熱的に安定であり、そして、1.5〜4.0の範囲の、より高いSi/Al比を有する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、多孔性であって、角を共有するAlO2及びSiO2の四面体から形成される結晶性アルミノ珪酸塩組成物である。天然に生じるものと合成されるものの両方の数多くのゼオライトが種々の産業上のプロセスで用いられる。ゼオライトは、均一な大きさの細孔開口部を有すること、大きなイオン交換容量を有すること、そして、恒久的なゼオライト結晶構造を構成するいずれの原子をも大きく移動させずに、結晶の内部空隙全体にわたって分散される吸着相を可逆的に脱着する能力があることによって特徴づけられる。
【0003】
ゼオライトQと称される1つの特定のゼオライトは、米国特許第2,991,151号明細書に初めて開示された。ゼオライトQの一般式は、酸化物のモル比の形で表される以下の式:
0.95±0.05 M2/nO:Al2O3:2.2±0.05 SiO2:xH2O
によって表され、式中、Mは少なくとも1つの交換可能なカチオンであり、nはMの原子価であり、xは0〜5までの値を有する。上記特許の例では、Mはカリウムで調製される。ゼオライトQの合成は、25℃〜50℃で行なわれた。130℃で活性化された後、ゼオライトQは極性小分子を吸着することがわかった。
【0004】
John D. Shermanによる論文 "Identification and Characterization of Zeolites Synthesized in the K2O-Al2O3-SiO2-H2O System," Molecular Sieves II(102) 30, 1974において、Shermanは、上記特許第2,991,151のゼオライトQは、他の研究者によって報告されたゼオライトK-1と同一のゼオライトであると報告している。ゼオライトK-1は、S. P. Zhdanov及びM.E. OvsepyonによってDoklady Chemistry. Proc. Acad. Sci. USSR, 156,756 (1964)に初めて報告された。S. P. Zhdanov及びM.E. Ovsepyonは、さらにK-1ゼオライトに関してBull. Acad. Sci. USSR, Chem. Sci. 1,8 (1965). R. M. Barrer et al. in J. Chem. Soc. (A) 2475 (1968)に報告し、K-1が168℃で分解することを示した。Sherman及びその他の研究者によって、ゼオライトQは130℃を超えると不安定であり、200℃で完全に分解されることも報告された。この熱的不安定性のために、ゼオライトQは、殆ど産業上の関心を集めてこなかった。K. J. Andriesらは、Zeolites, 11, 124 (1991)で、ゼオライトQに対するBPHトポロジーを提案した。純粋な形状のゼオライトQの合成は、K. J. AndriesらによってZeolites, 11, 116 (1991)に報告された。最後に。米国特許第5,382,420号明細書には、部分的に希土類(La)で交換されたゼオライトQである、ECR-33と称される組成物が開示されている。上記報告のすべてにおいて、Si/Al比は1である。
【0005】
米国特許第6,419,895号明細書には、UZM-4と称されるゼオライトの合成が開示され、上記ゼオライトは、ゼオライトQのトポロジー、すなわちBPHと同様のトポロジーを有すると思われるが、かなり異なる特徴を有する。最大の違いは、UZM-4が、1.5という低い値から始まって高くなっていく、ゼオライトQよりも高いSi/Al比で合成されていることである。UZM-4の最も重要な特徴は、より高いSi/Al比に関連する、より大きな熱的安定性である。UZM-4は、その種々の形状において、少なくとも400℃まで、多くの場合600℃を超えても安定である。そのUZM-4のX線回折パターンは、ゼオライトQのものとは著しく異なっており、そして、UZM-4は、そのより高いSi/Al比に呼応して、セルの大きさがゼオライトQよりも小さい。
【0006】
本出願人は、UZM-4をフルオロ珪酸塩で処理して、オプションとして、その後蒸気処理、焼成、酸抽出、イオン交換ステップ、またはそれらの組み合わせを行なうことによって、UZM-4を修飾し、UZM-4Mを得た。Skeels及びBreckは、米国特許第4,610,856号明細書で、アンモニウム・ヘキサフルオロ珪酸後処理を用いた、アルミニウムとの珪素置換を介してより高いSi/Al比のゼオライトを産生するための方法を開示した。上記方法は、Alをゼオライト・フレームワークから抽出し、後でSiによって補充することができる欠陥を形成し、そして、(NH4) 3AlF6を溶解性副産物として産生するステップを含んでいる。フレームワークからのAlの抽出は、生じた欠陥へのSiの挿入よりも速い傾向があり、それによって、欠陥の数が多くなり過ぎる場合にゼオライトの構造が不安定になることが開示されているため、上記方法は、細心の注意を要するものである。この点において、最初のゼオライトの組成がきわめて重要である。K. J. Andriesらは、Zeolites, 11, 116 (1991)で、Skeels及びBreckの技術をゼオライトQに適用し、ゼオライトQのSi/Al比を1から、目標値である1.35、1.67及び3へ引き上げることを試みた。しかし、実験的に得られた値は、それぞれ1.26、1.32及びフレームワークの破壊であった。彼らの結論は、ゼオライトQのフレームワークはきわめて破壊されやすいということであった。
【発明の開示】
【0007】
UZM-4から始めて、本出願人は、フルオロ珪酸塩処理、及びオプションとして、蒸気処理、焼成及びイオン交換ステップ、またはそれらの組み合わせを用いて、BPHトポロジーを保持しながら、種々の孔及び触媒特性を有し、1.75〜500の範囲のSi/Al比を有する安定な物質のファミリーを産生することに成功し、それらのすべてがUZM-4Mと称される。
【0008】
(発明の概要)
述べられたように、本発明は、UZM-4Mと称される新規なアルミノ珪酸塩ゼオライトに関するものである。従って、本発明の1つの実施の形態は、少なくともAlO2とSiO2の4面体ユニットの3次元フレームワークと、そして、実験式:
M1an+ Al1-x Ex Siy Oz (I)
によって表される無水ベースの実験組成物とを有する微細孔結晶性ゼオライトであり、式中、M1はアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、ヒドロニウム・イオン、アンモニウム・イオン及びそれらの混合物で構成される群から選択される少なくとも1つの交換可能なカチオンであり、『a』はM1対(Al+E)のモル比であって0.15〜1.5まで変化し、『n』はM1の平均加重原子価であって1〜3までの値を有し、Eはガリウム、鉄、ホウ素、クロム、インジウム及びそれらの混合物で構成される群から選択される元素であり、『x』はEのモル分率であって0〜0.5までの値を有し、『y』はSi対(Al+E)のモル比であって1.75〜500まで変化し、『z』はO対(Al+E)のモル比であって方程式:
z=(a・n+3+4・y)/2
によって決定される値を有しており、表Aに示されるd間隔及び強度を少なくとも有するX線回折パターンを有することを特徴とする:
【0009】
【表A】

【0010】
本発明の別の実施の形態は、上に述べられた結晶性微細孔ゼオライトを調製するための方法である。上記方法は、出発微細孔結晶性ゼオライトを、pHが3〜7のフルオロ珪酸溶液またはスラリーで処理するステップで構成され、そこで、上記出発ゼオライトのフレームワーク・アルミニウム原子は除去され、外来のシリコン原子によって置換されて、修飾ゼオライトを生じさせ;上記出発ゼオライトは、無水ベースで実験式:
M'm'n+ Rr'p+ Al1-x Ex Siy Oz (III)
を有し、式中、『m’』はM対(Al+E)のモル比であって0〜1.5まで変化し、M’はアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、水素イオン、アンモニウム・イオン及びそれらの混合物で構成される群から選択される少なくとも1つの交換可能なカチオンであり、Rはプロトン化アミン、第4級アンモニウム・イオン、ジ-第4級アンモニウム・イオン、プロトン化アルカノールアミン及び第4級化アルカノールアンモニウム・イオンで構成される群から選択される少なくとも1つの有機カチオンであって、『r’』はR対(Al+E)のモル比であって0〜1.5までの値を有し、『p』はRの平均加重原子価であって1〜2までの値を有し、『y』はSi対(Al+E)の比であって1.5〜4.0まで変化し、Eはガリウム、鉄、クロム、インジウム、ホウ素及びそれらの混合物で構成される群から選択される元素であり、『x』はEのモル分率であって0〜0.5までの値を有し、『z』はO対(Al+E)のモル比であって方程式:
z=(m・n+r・p+3+4・y)/2
によって得られる。
【0011】
本発明のさらに別の実施の形態は、芳香族アルキル化のような炭化水素転換方法におけるUZM-4Mの利用である。
【0012】
これら及びその他の目的と実施の形態は、本発明の詳細な説明の後により明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
アルミノ珪酸塩ゼオライト(UZM-4M)、及び本発明によるその置換物は、Atlas of Zeolite Structure Types, W. H. Meier, D. H. Olson, and C. H. Baerlocher, editors, Elsevier, (1996), 68-69に述べられるようなBPHのトポロジー構造を有する。UZM-4Mは、UZM-4のトポロジーを有する出発ゼオライトをフルオロ珪酸塩で処理し、及びオプションとして、蒸気処理、焼成及びイオン交換のうち1つ以上の手順を行なうことによって得られる。UZM-4は米国特許第6,419,895号明細書に述べられており、そこで、UZM-4は、不斉合成された形状であって、無水ベースにおいて実験式:
Mmn+ Rrp+ Al1-x Ex Siy Oz (II)
で示される組成物を有し、式中、Mは少なくとも1つの交換可能なカチオンであってアルカリ及びアルカリ土類金属で構成される群から選択され、『m』はM対(Al+E)のモル比であって0.05〜0.95まで変化する。カチオンMの具体的な例には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びそれらの混合物などがある。Rは有機カチオンであり、プロトン化アミン、プロトン化ジアミン、第4級アンモニウム・イオン、ジ-第4級アンモニウム・イオン、プロトン化アルカノールアミン及び第4級化アルカノールアンモニウム・イオンで構成される群から選択される。『r』はR対(Al+E)のモル率であって0.05〜0.95まで変化する。Mの平均加重原子値である『n』の値は1〜2まで変化する。Rの平均加重原子値である『p』の値は1〜2まで変化する。Si対(Al+E)の比率は『y』で表され、『y』は1.5〜4.0まで変化する。Eは4面体として配位される元素であり、フレームワーク内に存在し、ガリウム、鉄、クロム、インジウム、ホウ素及びそれらの混合物で構成される群から選択される。Eのモル分率は『x』によって表されて0〜0.5までの値を有し、一方、『z』はO対(Al+E)のモル比であって方程式:
z=(m・n+r・p+3+4・y)/2
によって与えられ、式中、Mはただ1つの金属であり、その結果平均加重原子価は1つの金属の原子価、すなわち、+1または+2である。しかし、1より大きい数の金属Mが存在する場合、
Mmn+=Mm1(n1)++Mm2(n2)++Mm3(n3)++ …
の合計及び平均加重原子価『n』は方程式:
n=(m1・n1+m2・n2+m3・n3+ ---)/(m1+m2+m3+ ---)
によって与えられる。
【0014】
同様に、ただ1つの有機カチオンRが存在する場合、その平均加重原子価はただ1つのカチオンRの原子価、すなわち、+1または+2である。1より大きい数のカチオンMが存在する場合、Rの合計は方程式:
Rrp+=Rr1(p1)++Rr2(p2)++Rr3(p3)++ …
よって与えられ、そして、平均加重原子価『p』は方程式:
P=(p1・r1+p2・r2+p3・r3+ ---)/(r1+r2+r3+ ---)
によって与えられる。
【0015】
微細孔結晶性ゼオライトであるUZM-4は、M、R、アルミニウム、シリコン及びオプションとしてEの反応源を組み合わせることによって調製される反応混合物の水熱合成によって調製される。アルミニウムの供給源には、アルミニウム・アルコキシド、沈降アルミナ、アルミニウム金属、アルミニウム塩及びアルミナ・ゾルなどがある。アルミニウム・アルコキシドの具体的な例には、アルミニウム・オルト第2ブトキシド及びアルミニウム・オルト・イソプロポキシドなどがある。シリカの供給源には、テトラエチルオルト珪酸塩、コロイド状シリカ、沈降シリカ及びアルカリ珪酸塩などがある。元素Eの供給源には、アルカリ・ホウ酸塩、ホウ酸、オキシ水酸化沈降ガリウム、硫酸ガリウム、硫酸第2鉄、塩化第2鉄、硝酸クロム及び塩化インジウムなどがある。金属Mの供給源には、ハロゲン化物塩、硝酸塩、酢酸塩、及びアルカリまたはアルカリ土類金属のそれぞれの水酸化物などがある。Rが第4級アンモニウム・カチオンまたは第4級化アルカノールアンモニウム・カチオンである場合、その供給源には、水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物及びフッ化物化合物などがある。具体的な例には制限がなく、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、臭化ヘキサメトニウム、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム及び塩化コリンなどである。Rはアミン、ジアミンまたはアルカノールアミンとして導入されてもよい。具体的な例は、N,N,N',N'-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、トリエチルアミン及びトリエタノールアミンである
【0016】
望まれる成分の反応源を含んでいる反応混合物は、式:
aM2/nO:bR2/pO:1-cAl2O3:cE2O3:dSiO2:eH2O
による酸化物のモル比の形で表すことができ、式中、『a』は0.05〜1.5まで変化し、『b』は1.0〜15まで変化し、『c』は0〜0.5まで変化し、『d』は2.5〜15まで変化し、『e』は25〜2500まで変化する。アルコキシドが用いられる場合、蒸留または蒸発ステップを組み入れてアルコール加水分解生成物を除去することが好ましい。次に上記反応混合物は、85℃〜225℃、好ましくは125℃〜150℃の温度で、1日から2週間、好ましくは、2日から4日間、密封反応容器内で内発圧力下で反応させられる。結晶化が完了した後、その固体生成物は、濾過または遠心分離のような方法によって異成分混合物から単離され、その後脱イオン水で洗浄され、空気中で室温から100℃までの温度下で乾燥させられる。
【0017】
上に述べられた方法から得られるUZM-4アルミノ珪酸塩ゼオライトは、下の表Bに示されるd間隔及び相対強度を少なくとも有するX線回折パターンによって特徴づけられる。
【0018】
【表B】

【0019】
UZM-4ゼオライトは、少なくとも400℃まで、好ましくは600℃の温度まで熱的に安定である。UZM-4ゼオライトは、ゼオライトQよりも小さいユニット・セルを有することも分かっており、Si/Al比がより高いことを示唆する。すなわち、代表的なUZM-4は、a=13.269Å、c=13.209Åの六方晶のユニット・セルを有するのに対して、ゼオライトQのユニット・セルは、a=13.501Å、c=13.403Åである。
【0020】
出発UZM-4ゼオライトのカチオンの数は、フレームワーク・アルミニウムの代わりの珪素の置換が関係する範囲において、本方法の重要な要素ではない。従って、UZM-4は合成されて用いることが可能であり、あるいは、イオン交換されて異なるカチオン型を提供することが可能である。この点に関して、出発ゼオライトは、実験式:
M'm'n+ Rr'p+ Al1-x Ex Siy Oz (III)
によって表すことが可能であり、式中、R、『n』、『p』、『x』、『y』、『z』及びEは上に述べられたとおりであり、『m』は1〜1.5の値を有し、『r'』は0〜1.5の値を有し、M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、水素イオン、アンモニウム・イオン及びそれらの混合物で構成される群から選択されるカチオンである。UZM-4という名称は、ゼオライトの不斉合成及びイオン交換された形状の両方の組成物を含んでいることが理解される式(III)によって表されるゼオライトについて言及するために用いられる。
【0021】
用いることができるカチオン型のうち、好ましいカチオンは、リチウム、カリウム、アンモニウム及び水素・カチオンのうち少なくとも1つであり、アンモニウム及び水素・カチオンが特に好ましい。これらのカチオンは、ゼオライト細孔から容易に除去することができる可溶性塩を修飾プロセス(以下を参照)の間に形成するので、好ましい。UZM-4の全アンモニウム型は最も好ましい。
【0022】
あるカチオンを別のカチオンと交換するために用いられる方法は本技術分野で十分周知であり、微細孔性組成物を、望まれるカチオンを(過剰モルで)含んでいる溶液に交換条件下で接触させるステップを含んでいる。交換条件には、15℃〜100℃までの温度及び20分から50時間までの時間などがある。それが好ましいというわけではないが、上記有機カチオンは、制御された条件下で過熱することによって初めに除去することができる。
【0023】
好ましい場合において、UZM-4は、それを硝酸アンモニウムに15℃〜100℃までの温度で接触させ、その後水で洗うことによって、アンモニウム型に転換される。この手順を数回繰り返して、元のカチオンをアンモニウム・カチオンへ可能な限り完全に交換することが達成できる。最後に、アンモニウム交換UZM-4ゼオライトは110℃で乾燥させられる。
【0024】
本発明によるUZM-4Mは、上に述べられたUZM-4組成物を、フルオロ珪酸塩で20℃〜90℃までの温度で処理することによって調製される。上記フルオロ珪酸塩は、2つの目的に役立つ。上記フルオロ珪酸塩は、アンモニウム原子をフレームワークから除去し、フレームワークへ挿入する(アンモニウムを交換する)ことが可能な外来の珪素の供給源を提供する。用いることができる上記フルオロ珪酸塩は、一般式:
A2/n Si F6
によって表されるものであり、式中、『n』はAの原子価であり、Aは、NH4+、H+、Mg+2、Li+、Na+、K+、Ba+2、Cd+2、Cu+、Cu+2、Ca+2、Cs+、Fe+2、Ca+2、Pb+2、Mn+2、Rb+、Ag+、Sr+2、Tl+及びZn+2で構成される群から選択されるカチオンである。アンモニウム・フルオロ珪酸塩は、水に対するかなりのその溶解性という理由から、そして、それが、ゼオライト、すなわち(NH4)3AlF6との反応の際に水溶性副生成物塩を形成するという理由から、最も好ましい。
【0025】
フルオロ珪酸塩は、UZM-4ゼオライトに水溶液またはスラリーの形状で3〜7の範囲のpHで接触させられる。この水溶液は、漸増的または連続的のいずれかで、除去されるフレームワーク・アルミニウム原子のうち十分な比率が珪素原子によって置換されて、出発UZM-4ゼオライトのフレームワーク(結晶性)構造の少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%が保持されるようなゆっくりした速度で、上記ゼオライトに接触させられる。本発明の方法を実施するために必要なフルオロ珪酸の量はかなり変化することが可能であるが、100 gの出発ゼオライト当たり少なくとも0.0075モルの量のフルオロ珪酸塩であるべきである。いったん反応が完了すると、上記生成物ゼオライトUZM-4Mは、濾過のような従来の技術によって単離される。
【0026】
いずれか1つの特定の理論に縛られることを望むものではないが、アルミニウムを除去し、珪素を挿入する上記プロセスは、2つのステップで進行すると思われ、アルミニウム抽出ステップは、制御されない限り、きわめて迅速に進行し、一方で珪素挿入は相対的に速度が遅い。脱アルミニウムが、珪素の置換なしに過度に広がっている場合、その結晶構造は深刻な程度に劣化し、最終的に崩壊する。一般に、アルミニウム抽出の速度は、ゼオライトと接触するフルオロ珪酸溶液のpHが3〜7の範囲内で増加するにつれて、そして、反応系のフルオロ珪酸の濃度が低下するにつれて、低下する。pHの値が3より小さい場合、結晶劣化は一般に極度に深刻であるとみなされ、一方、pHの値が7より大きい場合、珪素挿入は極度に速度が遅い。また、反応温度の上昇によって、珪素置換速度は増加する傾向がある。反応温度の上昇は、溶液のpHよりも、脱アルミニウムへの影響が小さいことがわかっている。従って、pHは脱アルミニウムを制御する手段と考えることができ、一方、温度は置換速度を制御する手段と考えることができる。
【0027】
理論的には、当然のことながら、上記溶液のpHが、フルオロ珪酸との意図された反応は別として、UZM-4ゼオライト構造に対する過度の破壊的酸性作用を避けるために十分高いという条件であれば、用いられる水溶液中のフルオロ珪酸塩の濃度に下限はない。フルオロ珪酸塩の添加を遅い速度で行なうことによって、その結果生じる結晶構造の崩壊を伴う過剰なアルミニウム抽出が発生する前に、珪素をフレームワークへ挿入するのに十分な時間が許されることを確実にする。一般に、効果的な反応温度は10℃から99℃、好ましくは20℃と95℃の間であるが、125℃以上、及び0℃という低い温度も用いることができる。
【0028】
用いられる水溶液中のフルオロ珪酸塩の最大濃度は、当然のことながら、温度及びpH要因、そして、ゼオライトと溶液の間の接触時間、及びゼオライトとフルオロ珪酸塩の相対的比率にも相互に関連する。濃度が溶液1リットル当たり10-3モルとその溶液の飽和状態までの間であるフルオロ珪酸塩を有する溶液を用いることができるが、溶液1リットル当たり0.05と2.0モルの間の範囲の濃度を用いることが好ましい。さらに、下に検討されるように、フルオロ珪酸塩のスラリーを用いることができる。前述の濃度の値は、真溶液に関するものであり、水の中の塩のスラリー中のフルオロ珪酸塩の総量に適用する意図はない。ごくわずかに水溶性であるフルオロ珪酸塩でさえも水でスラリーにされ、試薬として用いることが可能であり、溶解されない固形物は、反応で消費される溶解分子種をゼオライトと交換するために容易に利用できる。添加されるフルオロ塩の量の最小値は、好ましくは、少なくともゼオライトから除去されるアルミニウムの最小モル分率に等しい。
【0029】
大量の珪素原子が置換される、すなわち、SiO2/Al2O3比が100%を超えて増加する場合、結晶劣化を最小限にするために上記プロセスを複数のステップで実施することが好ましい。フレームワークに置換される珪素の量が十分に増加すると(100%を超える増加)、結晶構造の過度の劣化を防ぐため2つ以上のステップで上記プロセスを実施することが実際に必要である。すなわち、フルオロ珪酸塩との接触は、望まれる量の珪素を1つのステップで交換するために必要とされる濃度よりも低い濃度のフルオロ珪酸塩を用いて、2つ以上のステップで実施される。それぞれのフルオロ珪酸処理の後、上記生成物を洗浄してフッ化物及びアルミニウムを除去する。上記処理の間にゼオライトの50℃での乾燥を行なって、湿ったゼオライト生成物の取り扱いを容易にすることもできる。
【0030】
上に調製されたような(または下に交換されたような)UZM-4Mは、無水ベースの実験式:
M1an+ Al1-x Ex Siy Oz
によって表され、式中、M1はアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、水素イオン、アンモニウム・イオン及びそれらの混合物で構成される群から選択される少なくとも1つの交換可能なカチオンであり、『a』はM1対(Al+E)のモル比であって0.15〜1.5まで変化し、『n』はM1の平均加重原子価であって1〜3までの値を有し、Eはガリウム、鉄、ホウ素、クロム、インジウム及びそれらの混合物で構成される群から選択される元素であり、『x』はEのモル分率であって0〜0.5までの値を有し、『y』はSi対(Al+E)のモル比であって1.75〜500まで変化し、『z』はO対(Al+E)のモル比であって方程式:
z=(a・n+r・p+3+4・y)/2
によって決定される値を有する。
【0031】
本明細書においてゼオライト出発物質の比率またはゼオライト生成物の吸着特性などを明確に述べるにあたって、ゼオライトの『脱水状態』が、特に明記されない限り、意図されることになる。『脱水状態』という用語は、物理的に吸着及び化学的に吸着された水の両方を実質的に欠いている物質に言及するために本明細書で用いられる。
【0032】
効果的なプロセス条件に関して、ゼオライト結晶構造の完全性がプロセス全体を通して実質的に維持されること、そして、格子に挿入される珪素原子を有することに加えて、上記ゼオライトが、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%の上記ゼオライトの当初の結晶性を保持することが望ましいことが前述の事項から明らかである。出発物質の結晶性と比較した、生成物の結晶性を評価するための簡便な技術は、それらの各X線粉末回折パターンのd間隔の相対強度の比較である。出発物質のピーク強度の合計は、バックグラウンドを超える任意のユニットに関して、基準として用いられ、上記生成物の対応するピーク強度と比較される。例えば、分子篩生成物のピーク強度の数値の合計が、出発ゼオライトのピーク高さの合計値の85%である場合、結晶性の85%が保持されたことになる。実際には、この目的のためにピークの一部のみ、例えば、最強のピークのうち5または6個を用いることが一般的である。結晶性保持を示すその他のものは、表面積及び吸着能である。これらのテストは、置換された金属が、試料によるX線の吸着を著しく変化させる、例えば増加させる場合に好ましい。
【0033】
上に述べられたようなAFS処理を受けた後、UZM-4Mは、通例乾燥させられ、下に検討されるような種々のプロセスで用いることができる。本出願人は、UZM-4Mの特性が、1つ以上の追加的な処理によってさらに修飾できることを発見した。これらの処理には、蒸気処理、焼成またはイオン交換などであり、個別的またはいずれかの組み合わせで実施することが可能である。これらの組み合わせの一部には、以下のものなどがある:
蒸気 → 焼成 → イオン交換;
焼成 → 蒸気 → イオン交換;
イオン交換 → 蒸気 → 焼成;
イオン交換 → 焼成 → 蒸気;
蒸気 → 焼成;
焼成 → 蒸気など。
【0034】
蒸気処理は、UZM-4Mを蒸気に1重量%から100重量%の濃度で400℃から850℃の温度で10分から4時間;好ましくは、5〜50重量%の蒸気濃度で500℃〜600℃の温度で1〜2時間接触させることによって実施される。
【0035】
焼成条件は、400℃〜600℃の温度で0.5時間〜24時間の時間で構成される。イオン交換条件は上に述べられたのと同じ、すなわち、15℃〜100℃の温度及び20分から50時間の時間である。イオン交換は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、水素イオン、アンモニウム・イオン及びそれらの混合物で構成される群から選択されるカチオン(M1')から成る溶液で実施することができる。このイオン交換を実施することによって、カチオンM1は、第2の、そして普通は異なったM1'カチオンと交換される。好ましい実施の形態で、蒸気処理及び/又は焼成ステップ(任意の順序で)の後のUZM-4M組成物は、アンモニウム塩で構成されるイオン交換溶液と接触させられる。アンモニウム塩の例には、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、酢酸アンモニウムなどがある。溶液を含んでいるアンモニウム・イオンは、オプションとして、硝酸、塩酸、硫酸及びそれらの混合物のような無機酸を含むことができる。無機酸の濃度はH+対NH4+の比が0対1になるように変化することができる。このアンモニウム・イオン交換は、蒸気及び/又は焼成処理後の細孔中のいずれの残渣でも除去する上で役立つ。
【0036】
注目すべきは、処理、例えばAFS、蒸気処理、焼成などの特定の手順を必要に応じて何度でも繰り返して、望まれる特性を得ることができるということである。当然のことながら、例えば、蒸気処理または焼成などを実施する前に、AFS処理を2回以上繰り返すなど、他の処理を繰り返さずに1つの処理のみを繰り返すことも可能である。最後に、処理の手順及び/又は繰り返しによって、最終的なUZM-4M組成物の特性が決定されることになる。
【0037】
上に述べられた1つ以上の処理後に得られるUZM-4Mゼオライトは、UZM-4のものとは異なる(従って、独特な)X線回折パターンを有する。UZM-4M物質の回折パターンの特徴は、ユニット・セルが六方晶で、a及びbが13.40Å−12.93Åの範囲にあり、cが13.30Å−12.93Åの範囲にあることである。すべてのUZM-4M物質に共通する主要なピークの一覧表を表Aに示す。
【0038】
【表A】

【0039】
本発明による結晶性UZM-4Mゼオライトは、分子種の混合物を分離し、イオン交換を通じて汚染物質を除去し、そして、種々の炭化水素転換プロセスに触媒作用を及ぼすために用いることができる。分子種の分離は、分子の大きさ(動力学的直径)または分子種の極性の程度のいずれかに基づくことができる。
【0040】
本発明によるUZM-4Mゼオライトは、種々の炭化水素転換プロセスで触媒または触媒担体として用いることもできる。炭化水素転換プロセスは本技術分野で十分周知であり、熱分解、水素化分解、芳香族化合物とイソパラフィンの両方のアルキル化、パラフィン及び、例えばキシレンなど芳香族化合物の異性化、パラフィンの水素異性化、重合、改質、水素付加、脱水素化、芳香族化合物のトランスアルキル化、芳香族化合物の不均化、脱アルキル化、水和、脱水、水素化処理、水素脱窒、水素脱硫、メタン生成及び合成ガス・シフト・プロセスなどがある。これらのプロセスで用いることができる具体的な反応条件及び供給原料のタイプは、本技術分野で十分周知である。好ましい炭化水素転換プロセスは、水素化分解及び水素異性化、芳香族化合物の異性化、芳香族化合物の不均化/トランスアルキル化、及び芳香族化合物のアルキル化である。
【0041】
水素化分解条件は、通常400°〜1200°F(204℃〜649℃)の範囲、好ましくは600°〜950°F(316℃〜510℃)の間の温度などである。反応圧力は、大気圧から3,500 psig(24,132 kPa g)の範囲、好ましくは200〜3000 psig(1379〜20,685 kPa g)の間である。接触時間は通例0.1時間-1から15時間-1の範囲、好ましくは0.2時間-1から3時間-1の間の1時間当たり液空間速度(LHSV)に対応する。水素循環速度は、供給量1バレル当たり1,000〜50,000標準立法フィート(scf)(178〜8,888 標準m3/m3)の範囲、好ましくは供給量1バレル当たり2,000から30,000 scf(355〜5,333 標準m3/m3)の間である。適切な水素化処理条件は、一般に、上に設定された水素化分解条件の広い範囲内にある。
【0042】
反応ゾーン処理液は通常触媒床から除去され、分縮及び気液分離にかけられ、その後分画されて、その種々の成分が回収される。水素、そして、転換されない、より重い物質の一部またはすべてが必要な場合には、反応器へ再循環される。あるいは、2段階フローを用いて、転換されない物質を第2の反応器へ送り込むことができる。本発明による触媒は、そうしたプロセスの1つの段階だけで用いてもよく、両方の反応器の段階に用いてもよい。
【0043】
接触分解プロセスは、好ましくは、軽油、ヘビー・ナフサ、脱瀝原油残渣などのような供給原料を用いてUZM-4M組成物と共に実施され、望まれる主要生成物はガソリンである。850°〜1100°Fの温度条件、0.5〜10のLHSV値、及び0〜50 psigの圧力条件が好適である。
【0044】
芳香族化合物のアルキル化は、通常芳香族化合物、特にベンゼンをモノオレフィンまたはアルコール(C2〜C12)と反応させ、線状アルキル置換芳香族化合物を産生するステップを含んでいる。上記プロセスは、芳香族化合物:オレフィン(例えば、ベンゼン:オレフィン)の比が1:1から30:1の間、LHSVが0.3〜6時間-1、温度が100℃〜450℃、圧力が200〜1000 pisgで実施される。装置に関するさらなる詳細は、引用によって組み込まれる許出願第4,870,222号明細書に見ることができる。
【0045】
モーター燃料成分として好適なアルキレートを産生するためのイソパラフィンのオレフィンとのアルキル化は、温度が−30℃〜40℃、圧力が大気圧〜6894 kPa g(1000 psig)、そして、1時間当たり重量空間速度(WHSV)が0.1〜120で実施される。パラフィンのアルキル化に関する詳細は、引用によって組み込まれる米国特許第5,157,196号明細書及び米国特許第5,157,197号明細書に見ることができる。
【0046】
以下の実施例及び表A及び表Bに示されるX線回折パターンを、標準X線粉末回折技術を用いて得た。放射線源は、45 kV及び35 maで作動される高強度X線管であった。銅K-アルファ放射線からの回折パターンを、コンピュータを利用した適切な技術によって得た。平たく圧縮した粉末試料を2o〜70 o(2θ)で連続走査した。オングストローム単位の格子面間隔(d)を、θで表される回折ピークの位置から得て、その位置で、θはデジタル化されたデータから観察されるようにブラッグ角である。強度は、最も強い線またはピークの強度であるバックグラウンド『I0』を差し引いた後の回折ピークの統合された領域から判定され、『I』はその他の各ピークの強度である。
【0047】
当業者によって理解されるように、パラメータ2θの判定は人為的及び機械的エラーの両方に左右され、両者を併せると2θの各報告値に対して±0.4oの不確実性がもたらされる可能性がある。この不確実性は、当然のことながら、2θの値から算出されるd間隔の報告値にも現れる。この不確実性は本技術分野全体を通じて一般的なものであり、本発明による結晶性物質に関して相互に、そして、先行技術による組成物から識別することを妨げるほどではない。報告されたX線パターンの一部において、d間隔の相対強度は、それぞれ、非常に強い、強い、普通、弱い、を表す記号、vs、s、m及びwによって示される。100% x I/I0に関して、上の記号表示は:
w=0〜15、m=15〜60、s=60〜80及びvs=80〜100
と定義される。
【0048】
特定の例において、合成された生成物の純度を、そのX線粉末回折パターンを参照して評価することができる。従って、例えば、ある試料が純粋であると述べられている場合、その試料のX線パターンは結晶性不純物に起因する線を持たないということのみを意味し、非晶質が存在しないということは意味しない。
【0049】
本発明をより完全に説明するため、以下の実施例が述べられる。尚、実施例は説明のためだけのものであり、添付請求項に述べられるような本発明の広い範囲を不当に制限するものとしては意図されていない。以下に続く実施例で、修飾された生成物のSi/Al比の値は括弧に入れて示される。従って、UZM-4M(2.7)は、Si/Al=2.7であるUZM-4M組成物を表す。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
UZM-4の合成
ビーカー内で1305.6gの水溶性35重量%水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)を75.6gの水酸化アルミニウムと混合し、溶解するまで撹拌した。この溶液に331.2 gの脱イオン(DI)水を加え、その後287.6gのLudoxTM AS-40をゆっくりと加えた。その反応混合物を2時間室温で攪拌し、1リットルのTeflonボトルに入れ、95℃のオーブンに24時間置き、その後室温まで冷ましてアルミノ珪酸塩反応混合物を産生した。
【0051】
小さいビーカー内で13.3gの塩化リチウム固形物と68.0gの塩化テトラエチルアンモニウム固形物(TMACl)を混合し、十分なDI水を加えて、均質な溶液を生成した。その後、この水溶液を激しく混合しながら、1600gの上記アルミノ珪酸塩反応混合物へゆっくり滴下した。上記添加の完了後、得られた混合物をさらに2時間室温で均質化した。2リットルのステンレス鋼反応器で1400gのこの反応混合物を静止状態で72時間125℃で消化させ、その後室温まで冷ました。上記生成物を遠心分離によって単離した。単離された生成物を3回脱イオン水で洗浄し、その後95℃で16時間乾燥させた。X線回折データによってそれが純粋なUZM-4であることが示された。
【0052】
(実施例2)
UZM-4の交換
ガラス製ビーカー内で1.0gのNH4NO3に対して5.7gの脱イオン水の比率でNH3NO3と脱イオン水を混合することによって、NH4NO3交換溶液を調製した。実施例1のUZM-4をこの溶液に、1gのUZM-4に対して、上記溶液に用いられる硝酸アンモニウム1gの比率で加えた。そのスラリーを80℃で1時間加熱し、その後濾過して、温かい(50℃)脱イオン水で洗浄した。この交換手順を2回以上繰り返した。3回目の交換後、UZM-4生成物を脱イオン水で洗浄し、50℃で16時間乾燥させ、周囲条件で24時間水和した。その化学分析によって、リチウム含有量が5.40重量%(Li2O重量%無揮発性)〜0.19重量%に変化したことが示された。炭素の量も8.90重量%〜0.39重量%へ減少し、有機テンプレートの除去を示した。
【0053】
(実施例3)
UZM-4のAFS処理
ビーカー内で、6.0g(発火ベース)の実施例2からのNH4 UZM-4を、37.8gの3.4 M酢酸アンモニウムでスラリーにした。このスラリーを攪拌して85℃に過熱し、そのスラリーに、31.2gの脱イオン水に溶解した1.6gの(NH4)2SiF6(AFS)を含んでいる溶液を加えた。AFS溶液添加が完了した後、上記スラリーを85℃でさらに1時間加熱し、熱いうちに濾過し、その生成物を温かい(50℃)脱イオン水で洗浄した。その後、上記生成物を温かい(50℃)脱イオン水で再びスラリーにし、濾過した。このプロセスをさらに2回繰り返した。濾過した生成物を、85℃で16時間乾燥し、その後周囲条件下で水和し、UZM-4M(2.7)と称することにする。出発物質(UZM-4)とUZM-4M(2.7)生成物のX線回折粉末パターンの比較を表1に示す。観察されたデータは、結晶性の保持と一致しており、Alに代わるSiの置換に一致するユニット・セルの収縮を示す(表2)。
【0054】
【表1】

【0055】
出発UZM-4ゼオライト(実施例2)と生成物UZM-4M(2.7)の化学的及び物理的特性の比較が表2に示され、Alに代わるSiのフレームワーク組み込みに一致している。
【0056】
【表2】

【0057】
(実施例4)
UZM-4M(3.5)の調製
AFS溶液が、50.0 gの脱イオン水あたり2.6 gのAFSを含んでいたことを除いて、実施例3のプロセスを用いて別のAFS処理ゼオライトを調製した。この生成物をUZM-4M(3.5)として特定した。X線回折パターン及び化学的及び物理的特性の比較をそれぞれ表3及び表4に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
(実施例5)
UZM-4M(5.2)の調製
実施例2で調製されたUZM-4を、3.9 gのAFSを74.4 gの脱イオン水に溶かした溶液が用いられたことを除いて、実施例3におけるように処理した。この試料をUZM-4M(5.2)と称した。X線回折パターン及び化学的特性の比較をそれぞれ表5及び表6に示す。
【0061】
【表5】

【0062】
【表6】

【0063】
(実施例6)
実施例2〜5からの試料を以下のように熱分解の活性についてテストした。各試料250 mgを電熱反応器に入れ、各試料を30分間200℃で、続いて60分間550℃で流動する水素の中で前処理した。テストの間、反応器の温度を450℃、500℃及び550℃へ段階的に上げ、活性を各温度で判定した。各試料をテストするために用いた供給ストリームは、ヘプタンで0℃で大気圧で飽和した水素から成る。上記供給ストリームを試料へ125 cc/分の一定流速で導入した。流出気体ストリームをガス・クロマトグラフを使って分析した。ヘプタンの転換総量、及び種々の生成物、すなわち熱分解生成物、異性化生成物、芳香族生成物、及びナフテンへのヘプテンの転換を表7に示す。
【0064】
【表7】

【0065】
(実施例7〜42)
AFS物質の後処理
AFSで処理されたUZM-4をさらに修飾し、多孔性、炭化水素転換活性、吸着特性及び水熱安定性のような物質特性を変えることができる。これらの物質は、UZM-4Mファミリー物質の一部でもある。用いられる修飾の1つのタイプはイオン交換であった。アンモニウム及びナトリウム・イオン交換は、実施例2の条件を用いて実施された。アンモニウム・イオン交換が酸の存在下で実施される場合、0.2 gの70%のHNO3/gゼオライトが、ゼオライトの添加の前に硝酸アンモニウム溶液に添加されることを除いて、上記手順に同じ条件を用いた。修飾の別のタイプは焼成である。焼成は、乾燥大気中で1時間550℃で実施した。修飾の第3のタイプは蒸気処理である。蒸気処理は、7%の蒸気または18%の蒸気で550℃で1時間、あるいは95%の蒸気の場合には600℃で1時間実施した。下の表8に、親物質及び、親物質上で行なわれた修飾を挙げる。修飾が行なわれた順序は、表中の番号によって示し、使われた交換または蒸気のレベルにおいて用いた具体的なイオンは括弧内に示す。
【0066】
【表8】

【0067】
(実施例43)
UZM-4及びUZM-4M組成物の蒸気処理
水熱安定性は、作用条件下の触媒にとって望ましく、多くの場合必要な特性である。蒸気処理によって、いずれかの物質の水熱安定性が改善されたかを判定するために種々の試料の蒸気処理を実施した。実施例1から5までの生成物の試料を炉内で600℃で95%の蒸気で1時間蒸気に当て、炉内に1晩乾燥空気パージ下で放置し、その後、それらを周囲条件で24時間水和した。得られた蒸気処理物質を、それぞれ実施例41、42、9、20及び31に表す。図1は、これらの試料のX線回折パターンを示し、それぞれが同じ強度スケールで示されるが、明確に示すため並置する。X線回折粉末パターンの比較によって、非AFS処理試料である実施例41及び42からの試料(図中、それぞれパターンa及びb)は、大きな構造的損傷を受けたが、実施例9、20及び31からのAFS処理試料(それぞれc、d及びe)は、良好な構造の保持を示したことが明らかになった。従って、蒸気処理と組み合わされたAFS処理は、水熱的に安定な物質を産生した。
【0068】
(実施例44)
種々の試料の水熱安定性と熱安定性を、ホット・ステージX線回折を介して種々の温度及び水和条件で試料の結晶性をモニターすることによって判定した。この試験のために、固体検出器を備えたSiemens回折計、及び試料を保持、加熱するためのPtストリップ・ヒーターを用いて、X線回折(xrd)パターンを得た。
【0069】
上記物質のxrdを室温で周囲空気中にて取得し、その後物質を流動する乾燥空気内で加熱し、温度を100℃から500℃まで上げてxrdパターンを得た。これらのデータにより、熱安定性の情報がもたらされる。その後上記試料を室温まで冷まし、1晩周囲空気中で室温で水和し、その後それらのxrdパターンを再度得た。次に物質を100℃及び500℃に再加熱し、各温度でxrdパターンを得た。最後に、物質を室温まで冷まし、1晩周囲空気中で水和し、その後xrdパターンを収集した。これらの水和後のデータにより、熱水和安定性の情報がもたらされる。
【0070】
表9に、上記試料が、上に述べられた処理後に『安定である』か『不安定である』かを詳述する。『安定である』とは、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の結晶性、すなわち構造的完全性が保持されたことを意味し、一方『不安定である』とは、80%未満の結晶性が保持されたことを意味する。アンモニウム及びナトリウム逆交換UZM-4物質(実施例2及び7)は、それらが乾燥空気内で分解されるので熱的に安定でない。AFS処理ナトリウム逆交換Si/Al=2.7及び3.5(実施例8および9)は水熱的に安定であり、一方、これら同じ物質のアンモニウム型(実施例3及び4)は熱的に安定であるが、水熱的に安定ではない。このことにより、これら2つの物質が水熱的に安定になるためには実施例43のような蒸気処理ステップが必要であることが示唆される。対照的に、AFS処理Si/Al=5.2及び5.5(実施例5および5*)はそのままで水熱的に安定であり、蒸気処理ステップを必要としない。
【0071】
【表9】

【0072】
(実施例45)
McBain吸着の特徴づけ
標準McBain-Bakr重量吸着装置を用いた吸着能を、アンモニウム型の不斉合成されたUZM-4、アンモニウム型のいくつかのAFS処理試料、及びいくつかのナトリウム逆交換AFS処理試料について測定した。すべての試料をペレットに圧縮し、事前に外部で焼成せずにMcBain装置内へ入れた。すべての試料を初めに1晩上記装置内で400℃で真空活性化した。いくつかの気体−イソブタン(iC4)、2,2-ジメチルブタン(2,2-DMB)、酸素(O2)、n-ブタン(nC4)、水(H2O)、及び再度イソブタン(iC4)の順−について平衡吸着能を測定し、各気体の後に1晩350〜375℃で再活性化した。そのデータを表10に示す。
【0073】
【表10】

【0074】
NH4またはNa交換出発物質を除いて、初めに活性化されたすべての試料による、大きな2,2-DMBなどすべての吸着物の大量の吸着は、AFS処理に起因する熱活性安定性の改善を示す。実施例5、8及び19の生成物に対するH2O吸着後の実質的に保持されたiC4の能力によって、これらの修飾が、活性化後の再水和の安定性をさらに大きく改善することが示される。
【0075】
下の表11に、推定される液体吸着容積(吸着物の液体濃度で割った吸着重量%)として表される各吸着物の最も比較に適した結果を示す。各処理試料に関して、分子の大きさに関わらず、各吸着物の同様な容積の取り込みは、大きな微細孔の開放状態を示す。
【0076】
【表11】

【0077】
(実施例46)
AFS処理UZM-4種のさらなる処理によって、下に示されるような、広範な特性を有するUZM-4M物質のファミリーが拡張される。調整することが可能な特性には、微細孔容積、表面積及びSi/Al比などがあり、Si/Al比は、物質の交換能及び酸性度に影響を及ぼす。表8及び、実施例7〜42の調製について述べた実施例43に示されるように、実施例3、4及び5からのAFS処理物質は、最初に4つの方法のうちの1つによって処理される:550℃で乾燥空気で1時間の焼成、7%または18%の蒸気で550℃で、または95%の蒸気で600℃で1時間の蒸気処理。これらの物質の多くを、やはり実施例7〜42の調製について述べた上記の項に従って、NH4+またはNH4+/H+イオン交換を介してさらに処理した。ヘプタンの結果は、実施例6の方法によって得た。選択された物質の特性を下の表12に示す。
【0078】
【表12】

【0079】
温和な蒸気(<50%蒸気)処理は、良好な低温触媒活性を有するUZM-4M物質を調製する上で焼成よりも好ましいことがヘプタン転化のデータから容易に理解される。AFS処理後の焼成及び温和な蒸気(<50%蒸気)処理は、UZM-4M物質の大きな表面積及び微細孔容積を安定化させる上で、過酷な蒸気処理(>50%蒸気)よりも好ましいことも理解される。さらに、アンモニウム・イオン交換または酸性アンモニウム・イオン交換から成る後処理によって、焼成または蒸気処理ステップのみで得られるよりも、Si/Al比を上げることができることが理解される。従って、処理及び連続する処理を注意深く選択することによって、UZM-4Mの特性を仕様に合わせて変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】それぞれaからeと付されている実施例24、42、9、21及び31からの組成物のX線回折パターンを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともAlO2とSiO2の4面体ユニットの3次元フレームワークと、そして、下記実験式によって表される無水ベースの実験組成物とを有する微細孔結晶性ゼオライト(UZM-4M)であって、
M1an+ Al1-x Ex Siy Oz
前記式中、M1はアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、水素イオン、アンモニウム・イオン及びそれらの混合物で構成される群から選択される少なくとも1つの交換可能なカチオンであり、『a』はM1対(Al+E)のモル比であって0.15〜1.5まで変化し、『n』はM1の平均加重原子価であって1〜3までの値を有し、Eはガリウム、鉄、ホウ素、クロム、インジウム及びそれらの混合物で構成される群から選択される元素であり、『x』はEのモル分率であって0〜0.5までの値を有し、『y』はSi対(Al+E)のモル比であって1.75〜500まで変化し、『z』はO対(Al+E)のモル比であって方程式:
z=(a・n+3+4・y)/2
によって決定される値を有しており、表Aに示されるd間隔及び強度を少なくとも有するX線回折パターンを有することを特徴とする微細孔結晶性ゼオライト。
【表A】

【請求項2】
前記ゼオライトが、少なくとも400℃の温度まで熱的に安定であることを特徴とする請求項1記載のゼオライト。
【請求項3】
前記M1が、リチウム、ナトリウム、セシウム、ストロンチウム、バリウム、水素イオン、アンモニウム・イオン及びそれらの混合物で構成される群から選択されることを特徴とする請求項1または2記載のゼオライト。
【請求項4】
前記M1が、希土類金属及び水素イオンの混合物であることを特徴とする請求項1または2記載のゼオライト。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の微細孔結晶性ゼオライト(UZM-4M)を調製するための方法であって、前記方法が、出発微細孔結晶性ゼオライトを、pHが3〜7のフルオロ珪酸溶液またはスラリーで処理して、微細孔結晶性ゼオライト(UZM-4M)を生じさせるステップで構成され;前記出発ゼオライトが、無水ベースで実験式:
M'm'n+ Rr'p+ Al1-x Ex Siy Oz (III)
を有し、前記式中、『m’』はM対(Al+E)のモル比であって0〜1.5まで変化し、M’はアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、水素イオン及びアンモニウム・イオンで構成される群から選択される少なくとも1つの交換可能なカチオンであり、Rはプロトン化アミン、第4級アンモニウム・イオン、ジ-第4級アンモニウム・イオン、プロトン化アルカノールアミン及び第4級化アルカノールアンモニウム・イオンで構成される群から選択される少なくとも1つの有機カチオンであって、『r'』はR対(Al+E)のモル比であって0〜1.5までの値を有し、『p』はRの平均加重原子価であって1〜2までの値を有し、Eはガリウム、鉄、ホウ素、クロム、インジウム及びそれらの混合物で構成される群から選択される元素であり、『x』はEのモル分率であって0〜0.5までの値を有し、『y』はSi対(Al+E)の比であって1.5〜10.0まで変化し、『z』はO対(Al+E)のモル比であって方程式:
z=(m・n+r・p+3+4・y)/2
によって決定される値を有することを特徴とする方法。
【請求項6】
前記修飾されたゼオライトが、蒸気処理、焼成及びイオン交換から選択される1つ以上の方法によってさらに処理され、前記方法が任意の順序で実施されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
炭化水素転換方法であって、前記方法が、炭化水素を触媒組成物に炭化水素転換条件で接触させて、転換された生成物を生じさせるステップで構成され、前記触媒組成物が請求項1〜4のいずれか1項に記載の微細孔結晶性ゼオライトで構成されることを特徴とする方法。
【請求項8】
前記炭化水素転換方法が、水素化分解、パラフィンの水素異性化、キシレンの異性化、芳香族化合物のトランスアルキル化、芳香族化合物の不均化、芳香族化合物のアルキル化及びパラフィンの異性化で構成される群から選択されることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
分子種の混合物を分離するための方法であって、前記方法が、前記混合物を、請求項1〜4のいずれか1項に記載の微細孔結晶性ゼオライト(UZM-4M)に接触させ、それによって、少なくとも1つの種を前記混合物から分離するステップで構成される方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−502075(P2006−502075A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548261(P2004−548261)
【出願日】平成15年5月8日(2003.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2003/014564
【国際公開番号】WO2004/039725
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
TEFLON
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】