説明

結束バンド及びその製造方法

【課題】
X線装置や金属センサー等で確実に検出することのできる結束バンド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
帯状体2と、帯状体2の先端部に形成した頭部3を有し、帯状体2の後端部を頭部3に形成した貫通孔4に貫通して固定し、帯状体2により形成した円弧の内部で被結束物6を結束する結束バンド1の製造方法において、磁石の粉体状の原料と合成樹脂原料を混合するステップと、混合した原料を加熱溶融して液状とした後に、金型に供給する射出ステップと、金型を冷却して、固化した結束バンド1を金型のキャビティーから排出する排出ステップと、成形した結束バンド1に着磁する着磁ステップを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ケーブルや配管等を結束する結束バンド及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気ケーブルや配管等を結束するために、樹脂製の結束バンドを使用している(例えば、特許文献1参照)。図4に結束バンド1Xの平面図の一例を、図5に結束バンドの断面図の一例を示す。結束バンド1Xは、帯状体2と、帯状体2の先端部に形成した頭部3を有している。この帯状体2は、ラチェット歯21を有している。頭部3は、このラチェット歯21と対応する止め爪20を、貫通孔4の内部に有している。
【0003】
次に、結束バンド1Xの使用方法について説明する。まず、結束バンド1Xを、被結束物に巻きつける。結束バンド1Xの帯状体2を、頭部3の貫通孔4に通して締め付ける。結束バンドを締め付けた後に、余剰となった帯状体2を切断し、この切断片を回収する。以上の手順で、支柱に電気ケーブルを固定したり、装置等の壁面に信号線を固定したりする。また、この結束バンド1Xで、工場で使用する原料等の袋の封止を行う場合もある。
【0004】
この結束バンド1Xの使用に際して、以下の問題点がある。第1に、結束作業の際に、切断片を紛失してしまうことがある。第2に、結束バンド自体が経年劣化し、脱落して、紛失してしまうことがある。第3に、原料等の袋の封止に結束バンドを使用している場合、開封時に結束バンドが原料中に混入してしまうことがある。
【0005】
上記の問題は、特に食品工場や医療品工場では深刻な問題となる。つまり、紛失した切断片や結束バンド自体が、製品に混入することを防止するため、生産ラインを停止して紛失物を探さなければならない。また、紛失物が製品に混入した場合は、全品回収及び処分等が必要となってくる。
【0006】
なお、工場における出荷前の検査では、X線装置や金属センサーを使用しているが、結束バンドは合成樹脂製であるため、検出は困難となっている。また、金属製の結束バンドの使用も考えられるが、現在は、作業性の悪さ及び安全性の低さから使用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平06−15862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、X線装置や金属センサー等で確実に検出することのできる結束バンド及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明に係る結束バンドの製造方法は、帯状体と、前記帯状体の先端部に形成した頭部を有し、前記帯状体の後端部を前記頭部に形成した貫通孔に貫通して固定し、前記帯状体により形成した円弧の内部で被結束物を結束する結束バンドの製造方法において、磁石の粉体状の原料と合成樹脂原料を混合する混合ステップと、混合した原料を加熱溶融して液状とした後に、金型に供給する射出ステップと、前記金型を
冷却して、固化した前記結束バンドを前記金型のキャビティーから排出する排出ステップと、成形した前記結束バンドに着磁する着磁ステップを有することを特徴とする。
【0010】
この構成により、結束バンドは磁石の性質を有するようになるため、X線装置、金属センサー等で確実に検出することができる。つまり、食品又は医療品工場で製造する製品は、通常は磁気を有さないため、結束バンドあるいはこのバンドの切断片と製品を確実に見分けることができる。
【0011】
また、磁気センサーを利用して、製品の通過に伴う磁界の強度の変化を検出し、結束バンドあるいはこれの切断片の存在を検出するように構成することもできる。更に、例えば食品や医療品工場等にて、食材や原料や製品等を搬送するコンベアに、磁石式の除鉄装置を設置し、原料や完成品に混入した結束バンド及びその切断片等を回収するように構成することもできる。
【0012】
上記の結束バンドの製造方法において、前記射出ステップの後で、前記金型を冷却する際に、前記金型に磁場を加える異方化ステップを有することを特徴とする。
【0013】
この構成により、溶解した合成樹脂材料中の磁石の原料を異方化することができ、結束バンドの磁性特性を向上することができる。つまり、結束バンドの頭部と帯状体の後端部が、N極及びS極となるように異方化することもでき、又は、結束バンドの表面と裏面(例えば図5の上方を表面、下方を裏面とする)をN極及びS極となるように異方化することもできる。
【0014】
上記の結束バンドの製造方法において、前記磁石の粉体状の原料が、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、又はプラセオジム磁石の原料であることを特徴とする。
【0015】
この構成により、結束バンドが有する磁力が強力になるため、検査装置による検出精度を向上することができる。また、鉄粉等を混入したのみで製造した結束バンドに比べ、X線遮蔽率が高くなるため、X線装置による検出精度が向上する。これは、希土類の原子番号が大きいためである。
【0016】
上記の結束バンドの製造方法において、前記磁石の粉体状の原料が、アルニコ磁石、又はフェライト磁石の原料であることを特徴とする。
【0017】
アルニコ磁石の原料を利用する構成により、結束バンドは高いキュリー温度(約850度)を有することができるため、食品又は医療品工場等で、高温での加熱工程がある場合、この工程を通過した後であっても、検査装置で検知することができる。
【0018】
また、フェライト磁石の原料を利用する構成により、安価に保磁力の高い結束バンドを提供することができる。フェライト磁石は、スピネルフェライト(マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライト等)、六方晶フェライト(バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等)等を利用することができる。
【0019】
上記の目的を達成するための本発明に係る結束バンドは、上記の製造方法のいずれかに記載の方法で製造したことを特徴とする。この構成により、前述の作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0020】
上記の結束バンドにおいて、前記結束バンドが、総重量に対して10〜40重量%の磁石を含有していることを特徴とする。この構成により、従来の樹脂製結束バンドが有する柔軟性を有しながら、更に磁気を帯びた結束バンドを提供することができる。
【0021】
上記の目的を達成するための本発明に係る保持クランプは、多角形の保持部と、前記保持部の下端に形成した嵌合部を有し、前記保持部の多角形の内部で被保持物を保持し、前記嵌合部を基板に固定する保持クランプの製造方法において、磁石の粉体状の原料と合成樹脂原料を混合する混合ステップと、混合した原料を加熱溶融して液状とした後に、金型に供給する射出ステップと、前記金型を冷却して、固化した前記保持クランプを前記金型のキャビティーから排出する排出ステップと、成形した前記保持クランプに着磁する着磁ステップを有することを特徴とする。この構成により、前述の結束バンドと同様の作用効果を得ることができる。また、被保持物を保持する際に、切断片が発生しないため、食品及び医療品等の製品内に、保持クランプが混入する可能性を低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る結束バンド及びその製造方法によれば、X線装置や金属センサー等で確実に検出することのできる結束バンド及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る実施の形態の結束バンドの使用状態を示した図である。
【図2】本発明に係る異なる実施の形態の結束バンドの使用状態を示した図である。
【図3】本発明に係る異なる実施の形態の保持クランプの使用状態を示した図である。
【図4】従来の結束バンドを示した平面図である。
【図5】従来の結束バンドを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態の結束バンドの製造方法を説明する。最初に、ネオジム磁石を含有した結束バンドの製造方法を説明する。まず、ネオジム磁石の各原料を配合する。この配合した原料を、溶解炉にて高温で溶解して合金を作成する。この溶解はアルゴンガス中で行う。次に、作成した合金を粉砕して微粉末にする。微粉末の直径は3〜5μm程度とする。この微粉末と合成樹脂材料を混合し、加熱溶融した後、金型のキャビティに射出する。このとき、結束バンドの磁性を強くするために、金型に磁場を加えることが望ましい。そして金型を冷却して結束バンドを成形し、これを金型より取り出す。次の工程で着磁コイル等で磁場を作用させ、所定の磁石の状態として完成する。同様に、例えばサマリウムコバルト磁石又はプラセオジム磁石等の希土類磁石を原料として、結束バンドを製造することができる。
【0025】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、希土類磁石は磁性が強いため、金属センサー及び磁気センサーの検出精度を向上することができる。第2に、X線装置による検出精度を向上することができる。これは、例えば鉄粉等を混入したのみで製造した結束バンドに比べ、原子番号の大きい希土類磁石を混入した結束バンドは、X線遮蔽率が高くなり、映像が鮮明となり、バンドの切断片も画像で検出できるためである。
【0026】
第3に、金型に磁場を加える構成により、結束バンドの磁性を強化することができる。このとき、結束バンドの表面と裏面(例えば、図5の上方を表面、下方を裏面とする)をN極及びS極となるように異方化すると、X線装置、金属センサー又は磁気センサー等(以下、検査装置と言う)による検出精度を向上することができる。
【0027】
なお、各希土類磁石のキュリー温度は、ネオジム磁石が約310度、サマリウムコバルト磁石が約700〜800度となっている。また、合成樹脂は、従来結束バンドに使用していたものを使用することができる。具体的には、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン
46、ナイロン66、ポリプロピレン、ポリエチレン等である。なお、ナイロン11は、塩化亜鉛及び塩化カルシウム等に対して高い耐腐食性を有する。また、ナイロン46は、高い耐熱性を有する。工場等の環境により、最適な合成樹脂材料を適宜選択することができる。
【0028】
次に、アルニコ磁石を含有した結束バンドの製造方法を説明する。まず、アルニコ磁石の各原料を配合する。この配合した原料を、溶解炉にて高温で溶解して合金を作成する。次に、作成した合金を粉砕して微粉末にする。この微粉末と合成樹脂材料を混合し、加熱して、金型に流し込む。この金型を冷まし、金型取り出した結束バンドに着磁して製造を完了する。
【0029】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、アルニコ磁石は磁性が前述の希土類磁石と同程度であるため、検査装置の検出精度を向上することができる。第2に、製造工程に加熱工程を有する食品又は医療品工場で使用することができる。これは、キュリー温度が高く(約850度)、混入した結束バンドを加熱した場合であっても、減磁する可能性が低いためである。
【0030】
ここで、アルニコ磁石は、保磁力が低いため、長期間におよぶ工場等の配管の結束には向かない。望ましくは、食品又は医療品原料等を運搬するための袋の封止に使用する。
【0031】
次に、フェライト磁石を含有した結束バンドの製造方法を説明する。まず、フェライト磁石の各原料を配合する。この配合した原料を、仮焼成する。次に、仮焼成したフェライトを微粉末にする。微粉末の直径は1μm程度とする。この微粉末と合成樹脂材料を混合し、加熱して、金型に流し込む。このとき、結束バンドの磁性を強くするために、金型に磁場を加えることが望ましい。この金型を冷まし、金型取り出した結束バンドに着磁して製造を完了する。
【0032】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、フェライト磁石は保持力が高いため、工場等の配管の結束に使用することができる。第2に、安価な結束バンドを提供することができる。なお、フェライト磁石のキュリー温度は約460度である。
【0033】
次に、前述の製造方法により得た結束バンドについて、図面を参照しながら説明する。図1に、被結束物である支柱6aに電源ケーブル6bを結束した結束バンド1を示す。結束バンド1は、帯状体2と、帯状体2の先端部に形成した頭部3を有し、帯状体2の後端部を頭部3に形成した貫通孔に貫通して固定している。この帯状体2により形成した円弧の内部で被結束物6a、6bを結束している。結束バンド1は、結束作業の後に、余剰分をはさみ等で切断し、切断片5を回収するように構成している。
【0034】
ここで、ラチェット歯21は、帯状体2の表面に形成することが望ましい。つまり、電源ケーブル6b等を結束する際に、ラチェット歯21が電源ケーブル6bに接触しない、外周方向となるように形成する。これは、ラチェット歯21でケーブル6b等を傷つけないようにするためである。特に、磁石の材料の混合量が多い場合は、結束バンド1の硬度が若干高くなるため、ラチェット歯21が外周方向を向くように構成することが望ましい。
【0035】
図2に、前述の結束バンド1と同様の製造方法で製造したリユースバンド10を示す。このリユースバンド10は、基盤7に電源ケーブル6b等を固定するための結束バンドである。リユースバンド10は、帯状体2と頭部3に加え、操作レバー12、突っ張り片13、嵌合部14を有している。このリユースバンド10は、操作レバー12をリユースバンド10の中心軸に向かって押込むと、嵌合部14が収縮し、基盤7から外れるように構
成している。また、突っ張り片13は、基盤7に対してリユースバンド10が安定するように支持する作用を有している。
【0036】
この構成により、結束バンドが食品、医療品等の製品に混入する可能性を抑制することができる。つまり、結束バンドを交換する際に、刃物等による切断作業が不要となるため、結束バンド自体及び切断片等が製品に混入する可能性を抑制することができる。そして、万が一、製品に混入した場合であっても、出荷前の検査で容易に発見することが可能となる。
【0037】
図3に、磁石の粉体状の原料と合成樹脂原料の混合物を射出成形し、得られた射出成形品を着磁コイルで着磁して得られたリユースクランプ(保持クランプ)11を示す。このリユースクランプ11は、図2に示す帯状体2の代わりに多角形の保持部15を有している。この保持部15は、係止爪16を有している。この係止爪16を端部として保持部15を開くことができ、内部に被結束物6である信号線6c等を保持することができる。この構成により、リユースクランプ11は、基盤7等に複数の信号線6c等を固定することができる。
【0038】
前述の結束バンド1、リユースバンド10、及びリユースクランプ11は、工場内の配管、電源ケーブルのみならず、工場内に設置する製造装置にも使用することができる。以上より、工場内に持ち込む全ての物品に対して利用可能で、製品への混入を確実に検出することができる結束バンド1、リユースバンド10、及びリユースクランプ11を提供することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 結束バンド
2 帯状体
3 頭部
4 貫通孔
5 切断片
6 被結束物
6a 支柱
6b 電源ケーブル
6c 信号線
7 基盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状体と、前記帯状体の先端部に形成した頭部を有し、前記帯状体の後端部を前記頭部に形成した貫通孔に貫通して固定し、前記帯状体により形成した円弧の内部で被結束物を結束する結束バンドの製造方法において、
磁石の粉体状の原料と合成樹脂原料を混合する混合ステップと、
混合した原料を加熱溶融して液状とした後に、金型に供給する射出ステップと、
前記金型を冷却して、固化した前記結束バンドを前記金型のキャビティーから排出する排出ステップと、
成形した前記結束バンドに着磁する着磁ステップを有することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記射出ステップの後で、前記金型を冷却する際に、前記金型に磁場を加える異方化ステップを有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記磁石の粉体状の原料が、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、又はプラセオジム磁石の原料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記磁石の粉体状の原料が、アルニコ磁石、又はフェライト磁石の原料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法で製造したことを特徴とする結束バンド。
【請求項6】
前記結束バンドが、総重量に対して10〜40重量%の磁石を含有していることを特徴とする請求項5に記載の結束バンド。
【請求項7】
枠体である保持部と、前記保持部の下端に形成した嵌合部を有し、前記保持部の枠体の内部で被結束物を結束し、前記嵌合部を基板に固定する保持クランプの製造方法において、
磁石の粉体状の原料と合成樹脂原料を混合する混合ステップと、
混合した原料を加熱溶融して液状とした後に、金型に供給する射出ステップと、
前記金型を冷却して、固化した前記保持クランプを前記金型のキャビティーから排出する排出ステップと、
成形した前記保持クランプに着磁する着磁ステップを有することを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−178416(P2011−178416A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42943(P2010−42943)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000127938)株式会社エスケイ工機 (20)
【Fターム(参考)】