説明

給紙装置及び画像形成装置

【課題】電源オン以降、重送検知センサーの異常に起因する重送誤検知を防止する。
【解決手段】用紙搬送路に沿って搬送される用紙Pの枚数に応じた物理量を検出する重送検知センサー47a、47bと、重送検知センサーの出力信号に基づいて重送発生の有無を判断する重送検知機能を有する制御部とを備えた給紙装置であって、制御部は、ジョブ実行中に連続して重送発生有りと判断した回数が第1規定回数に達した場合、現ジョブの実行中に重送検知機能を無効化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、コピー機やプリンター、複合機等の画像形成装置は、用紙収容部に収容されている用紙を1枚ずつ給紙する給紙装置を備えている。この給紙装置は、用紙束の最上面に圧接されて給紙方向に回転する給紙ローラー(ピックアップローラーともいう)によって、用紙束の一番上の用紙から1枚ずつ用紙搬送路に送り出す構成となっているが、複数枚の用紙が同時に用紙搬送路へ送り出されるという現象(以下、この現象を重送という)が発生することがある。
【0003】
また、一般的な給紙装置は、給紙ローラーの下流側に配置されて給紙方向に正回転する搬送ローラーと、この搬送ローラーに対向配置され、その回転軸にトルクリミッターが連結された捌きローラーとからなる重送防止機構を備えている場合が多い。このトルクリミッターは、搬送ローラーと捌きローラーとの間に挟持される用紙が1枚の時に、捌きローラーが搬送ローラーに従動する一方、用紙が複数枚の時に、捌きローラーが停止する(或いは逆回転トルクが付与されている場合には逆回転する)ように設定されている。
【0004】
このように、給紙ローラーによって用紙搬送路に送り出された用紙が1枚の時には、捌きローラーが搬送ローラーに従動することにより、給紙方向の下流側(用紙搬送路の下流側)へ用紙が正常に搬送される一方、用紙が複数枚の時には、捌きローラーが停止する(或いは逆回転する)ことにより、搬送ローラー側の1枚目の用紙は給紙方向の下流側へ正常に搬送され、捌きローラー側の2枚目以降の用紙はその位置で停止する(或いは給紙方向の上流側へ戻る)ので、重送を防止することができる。
【0005】
なお、上記のような重送防止機構を設けたとしても、重送の発生を100%防止できるわけではない。そこで、従来では、重送防止機構の下流側に用紙の厚さに関連する物理量を検出する重送検知センサーを設け、その出力信号から重送の発生を検知した場合に、紙詰まりエラーを発生させて、ユーザーに紙詰まりの対応処置を行うよう要求したり、或いは、強制的に排紙して画像形成動作を中断していた。
【0006】
下記特許文献1には、用紙の重送を検知するための超音波センサーを用紙搬送路に配置し、この超音波センサーの出力信号を基に用紙の重送を検出したとき、画像データの用紙への画像形成を中止し、代わりに重送発生を示す所定の画像を用紙に形成して排紙する技術が開示されている。また、この技術では、電源オン時に、超音波センサーの出力信号に基づいて当該超音波センサーの異常診断を行い、異常と判断された場合に超音波センサーのクリーニング処理を行う、或いは超音波センサーによる重送検知を中止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−4181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術では、電源オン時に超音波センサーの異常診断を行っているので、電源オン以降、画像形成装置の稼働中に超音波センサーに異常が発生しても異常診断を行うことができず、重送の発生を誤検知してしまう可能性がある。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、電源オン以降、継続して重送検知センサーの異常に起因する重送誤検知を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、給紙装置に係る第1の解決手段として、用紙搬送路に沿って搬送される用紙の枚数に応じた物理量を検出する重送検知センサーと、前記重送検知センサーの出力信号に基づいて重送発生の有無を判断する重送検知機能を有する制御部とを備えた給紙装置であって、前記制御部は、ジョブ実行中に連続して重送発生有りと判断した回数が第1規定回数に達した場合、現ジョブの実行中に前記重送検知機能を無効化することを特徴とする。
【0011】
また、本発明では、給紙装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記制御部は、前記重送検知機能を無効化したジョブの終了時に、前記用紙搬送路に沿って1枚の用紙を搬送させ、搬送時に得られる前記重送検知センサーの出力信号に基づいて前記重送検知センサーのキャリブレーションを行った後、前記重送検知機能を有効化することを特徴とする。
【0012】
また、本発明では、給紙装置に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記制御部は、前記キャリブレーションを行った以降のジョブ実行中において、前記用紙の給紙回数が第2規定回数に達する前に、連続して重送発生有りと判断した回数が前記第1規定回数に達した場合、前記重送検知機能の無効化を行うか否かの選択をユーザーに要求し、前記ユーザーの選択に従って前記重送検知機能の無効化を行うことを特徴とする。
【0013】
また、本発明では、給紙装置に係る第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、前記制御部は、前記用紙の給紙回数が前記第2規定回数に達した後に、連続して重送発生有りと判断した回数が前記第1規定回数に達した場合、現ジョブの実行中に前記重送検知機能を無効化し、現ジョブの終了時に、前記用紙搬送路に沿って1枚の用紙を搬送させ、搬送時に得られる前記重送検知センサーの出力信号に基づいて前記重送検知センサーのキャリブレーションを行った後、前記重送検知機能を有効化することを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明では、画像形成装置に係る解決手段として、上記第1〜第4のいずれか1つの解決手段を有する給紙装置と、前記給紙装置から給紙される用紙にトナー画像を転写するトナー画像転写部と、前記用紙に転写された前記トナー画像を定着させる定着部と、前記トナー画像を定着させた用紙を外部に排出する排紙部とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、重送検知センサーの出力信号に基づいて、ジョブ実行中に連続して重送発生有りと判断した回数が第1規定回数に達した場合(重送検知センサーの異常が疑われる場合)に、現ジョブの実行中に重送検知機能を無効化するので、電源オン以降、継続して重送検知センサーの異常に起因する重送誤検知を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合機Aの構成概略図である。
【図2】複合機Aが備える給紙装置の構成概略図である。
【図3】制御部6が実行する給紙動作の制御手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下では、本発明に係る画像形成装置として、コピー機、プリンター、スキャナー及びファクシミリ等の機能を併せ持つ複合機を例示して説明する。
図1は、本実施形態に係る複合機Aの構成概略図である。この図1に示すように、本複合機Aは、操作表示部1、画像読取部2、画像データ記憶部3、用紙搬送画像形成部4、通信部5及び制御部6から構成されている。
【0018】
操作表示部1は、操作キー及びタッチパネルを備えており、ユーザーと複合機Aとを関係付けるマンマシンインターフェイスとして機能する。この操作表示部1は、押下された操作キーまたはタッチパネルに表示された操作ボタンの操作指示を制御部6に出力すると共に、制御部6から入力される制御信号に基づいてタッチパネルに種々の画面を表示する。
【0019】
画像読取部2は、制御部6による制御の下、ADF(Auto document feeder)により自動給紙される原稿またはプラテンガラス上に載置された原稿の表面画像(原稿画像)をラインセンサーで読み取って原稿画像データに変換し、この原稿画像データを制御部6に出力する。なお、画像読取部2は、原稿画像データを制御部6に出力する一方、制御部6は、原稿画像データを画像データ記憶部3に記憶させる。
【0020】
画像データ記憶部3は、半導体メモリーまたはハードディスク装置などであり、制御部6から入力される制御信号に基づいて原稿画像データや、通信部5が外部のクライアントコンピューター(図示略)から受信するプリント画像データや、通信部5がファクシミリ装置から受信したファクシミリ画像データを記憶する。
【0021】
用紙搬送画像形成部4は、制御部6による制御の下、給紙カセット44内に収容された用紙束から用紙を1枚ずつ搬送し、画像データ記憶部3の画像データに基づいて用紙上に画像を形成するものである。このような用紙搬送画像形成部4は、図1に示すように、ブラック、イエロー、シアン、マゼンダの4色に対応するトナーからなる画像(以下、トナー画像と称す)を形成する画像形成ユニット41、中間転写ベルト42、1次転写ローラー43、給紙カセット44、給紙ローラー45、重送防止機構46、重送検知センサー47、レジストローラー48、2次転写ローラー49、定着ローラー50、排紙ローラー51及び排紙トレイ52から構成されている。
【0022】
各画像形成ユニット41は、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色に対応するトナー画像を形成するものであり、複合機Aの正面から視て水平方向に所定間隔で各色に対応して4つ設けられている。このような画像形成ユニット41は、図1に示すように、トナー画像が周面に形成される感光体ドラム41aを備えている。
【0023】
中間転写ベルト42は、各感光体ドラム41aに接するように設けられた無端ベルトであり、各感光体ドラム41aの周面に形成されたトナー画像が各感光体ドラム41aから1次転写されるものである。1次転写ローラー43は、中間転写ベルト42を挟むように各感光体ドラム41aに対向配置されており、回転しながら1次転写電圧を中間転写ベルト42に印加することにより各感光体ドラム41aから中間転写ベルト42にトナー画像を1次転写させるローラーである。
【0024】
給紙カセット44は、A4サイズやB5サイズ等、所定サイズの用紙束PSを収容する容器であり、少なくとも用紙束PSの最上面を露出させるための開口部を有している。給紙ローラー45は、図2に示すように、給紙カセット44上において用紙束PSの最上面に圧接されながら給紙方向に正回転することにより、用紙束PSの最上部から用紙Pを1枚ずつ用紙搬送路Lへ送り出すローラーである。ここで、給紙方向とは、用紙搬送路Lに沿って用紙Pが搬送される方向(図中の矢印の方向)を指す。
【0025】
なお、給紙ローラー45の回転軸には、不図示の回転駆動機構(モーターや減速用ギア等)が連結されており、この給紙ローラー45の正回転動作(正回転の開始タイミングや停止タイミング、回転速度等)は制御部6による回転駆動機構の制御(特にモーター制御による正回転トルクの付与)によって制御される。
【0026】
重送防止機構46は、用紙搬送路L上における給紙ローラー45の下流側(給紙方向の下流側)に配置されており、給紙ローラー45によって複数枚の用紙Pが同時に用紙搬送路Lへ送り出された場合、つまり重送が発生した場合に、1枚目と2枚目以降の用紙Pを分離して重送を防止するものである。
【0027】
詳細には、この重送防止機構46は、図2に示すように、給紙方向に正回転する搬送ローラー46aと、この搬送ローラー46aに対向配置されていると共に、搬送ローラー46aに圧接されながら不図示のトルクリミッターを介して逆給紙方向に逆回転する捌きローラー46bとから構成されている。搬送ローラー46aの回転軸には、不図示の回転駆動機構(モーターや減速用ギア等)が連結されており、この搬送ローラー46aの正回転動作(正回転の開始タイミングや停止タイミング、回転速度等)は制御部6による回転駆動機構の制御(特にモーター制御による正回転トルクの付与)によって制御される。なお、給紙ローラー45の回転力をベルトによって搬送ローラー46aの回転軸に伝達する構成を採用しても良い。
【0028】
一方、捌きローラー46bの回転軸には、不図示のトルクリミッターを介して回転駆動機構(モーターや減速用ギア等)が連結されており、この捌きローラー46bの逆回転動作(逆回転の開始タイミングや停止タイミング、回転速度等)は制御部6による回転駆動機構の制御(特にモーター制御による逆回転トルクの付与)によって制御される。ここで、捌きローラー46bのトルクリミッターは、搬送ローラー46aと捌きローラー46bとの間に挟持される用紙Pが1枚(或いは0枚)の時に、捌きローラー46bが搬送ローラー46aに従動し(図2(a)参照)、用紙Pが複数枚の時に、捌きローラー46bが逆回転するように設定されている(図2(b)参照)。
【0029】
用紙搬送路L上における重送防止機構46の下流側には、用紙Pの枚数に応じた物理量を検出する重送検知センサー47が配置されている。この重送検知センサー47は、用紙搬送路Lを上下に挟むように対向配置された超音波送信部47aと超音波受信部47bとから構成されている。超音波送信部47aは、用紙搬送路Lの下方から超音波受信部47bへ向けて超音波Sを送信する。超音波受信部47bは、超音波送信部47aから送信された超音波Sを受信し、その受信強度に応じた電圧信号を制御部6へ出力する。
【0030】
超音波受信部47bによる超音波Sの受信強度は、重送防止機構46の下流側を移動する用紙Pの枚数が0枚(紙無し状態)の時に最も大きく、用紙Pの枚数が増えるほど小さくなる。つまり、超音波Sの受信強度は、重送防止機構46の下流側を移動する用紙Pの枚数に応じて変化する物理量である。従って、制御部6は、重送検知センサー47(超音波受信部47b)の出力信号に基づいて、重送防止機構46の下流側を移動する用紙Pの状態が0枚状態(紙無し状態)なのか、1枚状態なのか、或いは複数枚状態なのかを検知することができる。
【0031】
具体的には、制御部6は、用紙Pが1枚の時の超音波Sの受信強度を比較用の基準強度として予め記憶しており、重送検知センサー47(超音波受信部47b)の出力信号から把握した受信強度(実測値)と上記基準強度とを比較して、両方が一致すれば、用紙Pが1枚だと判断し、受信強度(実測値)が上記基準強度より大きければ、紙無しと判断し、受信強度(実測値)が上記基準強度より小さければ、用紙Pが複数枚(重送)と判断する。
なお、用紙Pの枚数に応じた物理量を検出するものであれば、超音波式、光学式を問わず、各種のセンサーを重送検知センサー47として使用しても良い。
【0032】
図1に戻り、用紙搬送路L上における重送検知センサー47の下流側には、重送防止機構46から搬送される用紙Pの2次転写ローラー49への搬送タイミングを調節するための一対のレジストローラー48が配置されている。この一対のレジストローラー48は、互いに対向配置されて、圧接されながら給紙方向に正回転する2本のローラーから構成されている。
【0033】
なお、レジストローラー48の一方のローラーの回転軸に、不図示の回転駆動機構(モーターや減速用ギア等)が連結されており、他方のローラーは空転するようになっている。つまり、一方のローラーの正回転動作(正回転の開始タイミングや停止タイミング、回転速度等)は制御部6による回転駆動機構の制御(特にモーター制御による正回転トルクの付与)によって制御され、他方のローラーは一方のローラーに従動するようになっている。
【0034】
2次転写ローラー49は、対抗配置された対向ローラーとの間に中間転写ベルト42を挟むように配置され、中間転写ベルト42との間で2次転写ニップを形成するローラーであり、中間転写ベルト42上のトナー画像を用紙Pに2次転写させるものである。すなわち、2次転写ローラー49は、2次転写ニップにおいて中間転写ベルト42と用紙Pとを挟んだ状態で2次転写電圧を印加することにより、中間転写ベルト42上のトナー画像を用紙Pに2次転写させる。
【0035】
定着ローラー50は、内部にヒーターを備えた加熱ローラーと、この加熱ローラーに圧接される加圧ローラーとから構成され、上記2次転写ローラー49でトナー画像が2次転写された用紙Pを挟持することにより、用紙Pを加熱及び加圧してトナー画像を用紙P上に定着させる。排紙ローラー51は、定着ローラー50から搬送される用紙Pを排紙トレイ52に排出する。排紙トレイ52は、排紙ローラー51によって排出された用紙Pを収容する受け皿である。
【0036】
通信部5は、制御部6から入力される制御信号に基づいて電話回線を介して外部の複合機あるいはファクシミリ装置、またローカルエリアネットワークを介してクライアントコンピューターなどと通信を行うものである。すなわち、この通信部5は、イーサネット(登録商標)などのLAN規格に準拠した通信機能と、G3などのファクシミリ規格に準拠した通信機能とを兼ね備えたものである。通信部5は、例えば、電子メールの送信またはファクシミリの送受信を行う。
【0037】
制御部6は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び上述した各部と各種信号の送受信を行うインターフェイス回路などから構成されており、上記ROMに記憶された制御プログラムに基づいて複合機Aの全体動作を制御する。この制御部6は、重送検知センサー47(超音波受信部47b)の出力信号に基づいて、重送発生の有無を判断する重送検知機能を有している。
【0038】
以上が本複合機Aの全体構成であるが、上記の構成要素の内、制御部6、給紙カセット44、給紙ローラー45、重送防止機構46及び重送検知センサー47は、本実施形態における給紙装置を構成するものである。また、画像形成ユニット41、中間転写ベルト42、1次転写ローラー43及び2次転写ローラー49は、給紙装置から給紙される用紙Pにトナー画像を転写するトナー画像転写部として機能し、定着ローラー50は、用紙Pに転写されたトナー画像を定着させる定着部として機能し、排紙ローラー51及び排紙トレイ52は、トナー画像を定着させた用紙Pを外部に排出する排紙部として機能する。
【0039】
次に、上記のように構成された本複合機Aの動作について説明する。
例えば、本複合機Aによって原稿をコピーしようとするユーザーは、画像読取部2に原稿をセットし、操作表示部1のコピースタートキーを押下することにより、本複合機Aにコピー動作を開始させる。制御部6は、操作表示部1のコピースタートキーがユーザーによって押下されると、画像読取部2に原稿画像を読み取らせ、画像読取部2から得られる原稿画像データを画像データ記憶部3に記憶させる。
【0040】
そして、制御部6は、画像データ記憶部3に記憶された原稿画像データを基に各画像形成ユニット41を制御して、各感光体ドラム41aの表面に各色のトナー画像を形成(現像)すると共に、中間転写ベルト42を回走させながら各1次転写ローラー43に順次1次転写電圧を発生させることにより、中間転写ベルト42上に各色のトナー画像を順次重ねて転写させる。
【0041】
また、制御部6は、上記のようなトナー画像の1次転写動作の制御と並行して、給紙装置による用紙Pの給紙動作を制御する。以下では、図3に示すフローチャートを参照しながら、制御部6が実行する給紙動作の制御手順について詳細に説明する。なお、制御部6は、ジョブ単位で図3のフローチャートに従って給紙動作の制御を行う。また、本実施形態では、コピースタートキーがユーザーに押されてから、全ての原稿画像が必要枚数の用紙Pに印刷(形成)されて出力される(排紙される)までを1ジョブとする。
【0042】
図3に示すように、制御部6は、まず、給紙回数C1のカウントアップ(給紙回数C1のカウント値のインクリメント)を行った後(ステップS1)、給紙ローラー45、搬送ローラー46a及び捌きローラー46bを制御して用紙Pを1枚ずつ搬送する(ステップS2)。具体的には、制御部6は、給紙ローラー45及び搬送ローラー46aの回転駆動機構を制御して正回転トルクを発生させて、給紙ローラー45及び搬送ローラー46aを正回転させると共に、捌きローラー46bの回転駆動機構を制御して逆回転トルクを発生させる。
【0043】
ここで、図2(a)に示すように、給紙ローラー45によって、給紙カセット44にセットされた用紙束PSから1枚の用紙Pが用紙搬送路Lへ送り出された場合、捌きローラー46bは搬送ローラー46aに従動して回転するため、1枚の用紙Pは正常に重送防止機構46の下流側へ搬送される。
【0044】
一方、図2(b)に示すように、給紙ローラー45によって、給紙カセット44にセットされた用紙束PSから複数枚(ここでは2枚)の用紙P(P1、P2)が用紙搬送路Lへ送り出された場合、捌きローラー46bが、トルクリミッターの働きによって搬送ローラー46aに従動せずに逆回転すれば、搬送ローラー46a側の1枚目の用紙P1は、搬送ローラー46aの回転によって給紙方向の下流側へ搬送され、捌きローラー46b側の2枚目の用紙P2は、給紙方向の上流側へ戻るので、1枚目の用紙P1と2枚目の用紙P2を分離することができる(重送を防止することができる)。
【0045】
しかしながら、捌きローラー46bと2枚目の用紙P2との摩擦力より、1枚目の用紙P1と2枚目の用紙P2との摩擦力が大きい場合には、搬送ローラー46aと捌きローラー46bとの間に2枚の用紙P1、P2が挟まれているにも関わらず、捌きローラー46bが搬送ローラー46aに従動してしまい、2枚の用紙P1、P2が重送防止機構46の下流側へ搬送されてしまう可能性がある。
【0046】
そこで、制御部6は、重送検知機能(重送検知センサー47(超音波受信部47b)の出力信号に基づいて重送発生の有無を判断する機能)が有効か否かを判定し(ステップS3)、「Yes」の場合には、重送検知センサー47(超音波受信部47b)の出力信号に基づいて、重送防止機構46の下流側へ搬送される用紙Pが重送状態か否かを判定する(ステップS4)。なお、上記ステップS3にて「No」の場合、つまり重送検知機能が無効となっている場合、制御部6は、後述のステップS9の処理へ移行する。
【0047】
制御部6は、上記ステップS4にて「Yes」の場合、つまり重送防止機構46で防止しきれなかった重送が発生したと判断した場合、連続重送発生回数C2のカウントアップ(連続重送発生回数C2のカウント値のインクリメント)を行った後、後述のステップS7の処理へ移行する(ステップS5)。
【0048】
一方、制御部6は、上記ステップS4にて「No」の場合、つまり重送防止機構46で防止しきれなかった重送が発生しなかったと判断した場合、連続重送発生回数C2のリセット(連続重送発生回数C2のカウント値を「0」にする)を行った後、後述のステップS7の処理へ移行する(ステップS6)。
【0049】
制御部6は、上記ステップS5或いはS6の終了後、連続重送発生回数C2が第1規定回数C2_thと等しいか否かを判定し(ステップS7)、「Yes」の場合には、重送検知機能を無効化して後述のステップS9へ移行し(ステップS8)、「No」の場合には、直接ステップS9へ移行する。
【0050】
そして、制御部6は、給紙回数C1が実行中の現ジョブでの必要給紙回数Nと等しいか否か、つまり現ジョブで必要な枚数の用紙Pの給紙を完了したか否かを判定し(ステップS9)、「No」の場合には、上記ステップS1の処理に戻り、「Yes」の場合には、後述のステップS10の処理に移行する。
【0051】
制御部6は、上記ステップS9にて「Yes」の場合、つまり現ジョブで必要な枚数の用紙Pの給紙を完了した場合、重送検知機能が無効か否かを判定し(ステップS10)、「No」の場合には、給紙動作の制御を終了する一方、「Yes」の場合には、重送検知センサー47のキャリブレーション処理を行う(ステップS11)。
【0052】
具体的には、制御部6は、キャリブレーション処理として、操作表示部1を制御して、ユーザーに対して重送検知センサー47のキャリブレーションを行うことを知らせるための画面を表示した後、給紙ローラー45、搬送ローラー46a及び捌きローラー46b等の各ローラーを制御して、用紙搬送路Lに沿って1枚の用紙Pを搬送させ、その時に得られた重送検知センサー47(超音波受信部47b)の出力信号に基づいて、重送検知センサー47のキャリブレーションを行う。
【0053】
上述したように、制御部6は、用紙Pが1枚の時の超音波Sの受信強度を比較用の基準強度として予め記憶しており、重送検知センサー47(超音波受信部47b)の出力信号から把握した受信強度(実測値)と上記基準強度とを比較して、両方が一致すれば、用紙Pが1枚だと判断し、受信強度(実測値)が上記基準強度より大きければ、紙無しと判断し、受信強度(実測値)が上記基準強度より小さければ、用紙Pが複数枚(重送)と判断する。
【0054】
従って、搬送される用紙Pが1枚の時に、本来ならば重送検知センサー47(超音波受信部47b)の出力信号から把握した受信強度(実測値)が基準強度と等しくならなければならないが、重送検知センサー47の異常によって、受信強度(実測値)が基準強度に対してずれてしまうと、実際には重送が発生していないにも関わらず、制御部6は重送が発生したと誤判断してしまうことになる。つまり、キャリブレーションとは、搬送される用紙Pが1枚の時の、受信強度(実測値)と基準強度とのズレ量を求め、このズレ量がキャンセルされるように基準強度を補正することを指す。
【0055】
制御部6は、上記のようなキャリブレーション処理の終了後、重送検知機能を再度有効化して給紙動作の制御を終了する(ステップS12)。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、重送検知センサー47(超音波受信部47b)の出力信号に基づいて、ジョブ実行中に連続して重送発生有りと判断した回数(連続重送発生回数C2)が第1規定回数C2_thに達した場合(重送検知センサー47の異常が疑われる場合)に、現ジョブの実行中に重送検知機能を無効化するので、電源オン以降、継続して重送検知センサー47の異常に起因する重送誤検知を防止することができる。
【0057】
また、重送検知センサー47の異常は、重送検知センサー47のキャリブレーションを行うことで改善される可能性があるので、重送検知機能を無効化したジョブの終了時に、用紙搬送路Lに沿って1枚の用紙Pを搬送させ、搬送時に得られる重送検知センサー47(超音波受信部47b)の出力信号に基づいて、重送検知センサー47のキャリブレーションを行った後、重送検知機能を再度有効化することにより、次回のジョブから正常に重送検知を行える可能性を高めることができる。
【0058】
一方、重送検知センサー47のキャリブレーションを行っても改善が見られない可能性もあり得る。そこで、キャリブレーションを行った以降のジョブ実行中において、用紙Pの給紙回数C1が第2規定回数C1_thに達する前に、連続して重送発生有りと判断した回数(連続重送発生回数C2)が第1規定回数C2_thに達した場合を、重送検知センサー47のキャリブレーションを行っても改善が見られない場合と判断して、重送検知機能の無効化を行うか否かの選択をユーザーに要求し、以降はユーザーの選択に従って重送検知機能の無効化を行う機能を制御部6に持たせることが望ましい。
【0059】
このように、ユーザーの選択に従って重送検知機能の無効化を行う場合、ユーザーによって所定の操作が為されるまで、重送検知機能の無効状態を継続させることが望ましい。また、重送検知機能の無効化を行うか否かの選択をユーザーに要求するには、重送検知機能の無効化を行うか否かの選択画面を操作表示部1に表示させればよい。
【0060】
また、用紙Pの給紙回数C1が第2規定回数C1_thに達した後に、連続して重送発生有りと判断した回数(連続重送発生回数C2)が第1規定回数C1_thに達した場合は、ある程度のキャリブレーションの効果があったと考えられるので、図3のステップS8〜S12と同様に、現ジョブの実行中に重送検知機能を無効化し、現ジョブの終了時に、用紙搬送路Lに沿って1枚の用紙Pを搬送させ、搬送時に得られる重送検知センサー47(超音波受信部47b)の出力信号に基づいて、重送検知センサー47のキャリブレーションを行った後、重送検知機能を再度有効化する機能を制御部6に持たせることが望ましい。
【0061】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、以下のような変形例が挙げられる。
上記実施形態では、本給紙装置を備えた画像形成装置として複合機Aを参照しながら説明したが、本給紙装置は、コピー機、プリンター、スキャナー及びファクシミリ等の他の画像形成装置に適用することができる。
また、上記実施形態では、本給紙装置として、給紙カセット44に収容された用紙束PSから用紙Pを給紙する給紙装置を例示したが、読み取り対象である原稿用紙を1枚ずつ給紙する自動給紙装置(ADF)にも本発明を適用することが可能である。
さらに、上記実施形態では、重送防止機構46を搭載する給紙装置を例示したが、重送防止機構46(特に捌きローラー46b)が設置されていないタイプの給紙装置であっても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
A…複合機、1…操作表示部、2…画像読取部、3…画像データ記憶部、4…用紙搬送画像形成部、5…通信部、6…制御部、41…画像形成ユニット、42…中間転写ベルト、43…1次転写ローラー、44…給紙カセット、45…給紙ローラー、46…重送防止機構、47…重送検知センサー、47a…超音波送信部、47b…超音波受信部、48…レジストローラー、49…2次転写ローラー、50…定着ローラー、51…排紙ローラー、52…排紙トレイ、P…用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記用紙搬送路に沿って搬送される用紙の枚数に応じた物理量を検出する重送検知センサーと、前記重送検知センサーの出力信号に基づいて重送発生の有無を判断する重送検知機能を有する制御部とを備えた給紙装置であって、
前記制御部は、ジョブ実行中に連続して重送発生有りと判断した回数が第1規定回数に達した場合、現ジョブの実行中に前記重送検知機能を無効化することを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記重送検知機能を無効化したジョブの終了時に、前記用紙搬送路に沿って1枚の用紙を搬送させ、搬送時に得られる前記重送検知センサーの出力信号に基づいて前記重送検知センサーのキャリブレーションを行った後、前記重送検知機能を有効化することを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記キャリブレーションを行った以降のジョブ実行中において、前記用紙の給紙回数が第2規定回数に達する前に、連続して重送発生有りと判断した回数が前記第1規定回数に達した場合、前記重送検知機能の無効化を行うか否かの選択をユーザーに要求し、前記ユーザーの選択に従って前記重送検知機能の無効化を行うことを特徴とする請求項2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記用紙の給紙回数が前記第2規定回数に達した後に、連続して重送発生有りと判断した回数が前記第1規定回数に達した場合、現ジョブの実行中に前記重送検知機能を無効化し、現ジョブの終了時に、前記用紙搬送路に沿って1枚の用紙を搬送させ、搬送時に得られる前記重送検知センサーの出力信号に基づいて前記重送検知センサーのキャリブレーションを行った後、前記重送検知機能を有効化することを特徴とする請求項3に記載の給紙装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の給紙装置と、
前記給紙装置から給紙される用紙にトナー画像を転写するトナー画像転写部と、
前記用紙に転写された前記トナー画像を定着させる定着部と、
前記トナー画像を定着させた用紙を外部に排出する排紙部と、
を具備することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−10599(P2013−10599A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144105(P2011−144105)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】