説明

絶縁膜形成材料、絶縁膜及びその製造方法

【課題】 半導体の製造に有用な高い耐熱性及び極めて低い比誘電率を有するとともに、比誘電率のばらつきの少ない絶縁膜を形成しうる絶縁膜形成材料を得る。
【解決手段】 官能基間の反応により空孔構造を有するポリマーを形成可能な2つの化合物A及びBのうち少なくとも一方が、中心骨格として有橋脂環骨格又は芳香環骨格を有し、少なくとも一方が中心骨格と前記官能基との間に芳香環を含む2価の有機基からなる耐熱性骨格を有し、且つ少なくとも一方が分子内にアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の有機基からなるフレキシブルユニットを有しており、化合物Aの官能基と化合物Bの官能基が、互いに反応して複素環を形成しうる一対の官能基であるか、又はともに置換基を有していてもよいエチニル基を含む基であるという条件を満足する化合物A及びBを含む絶縁膜形成材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造等に用いる絶縁膜、特に耐熱性や機械的強度に優れ低い比誘電率を示す絶縁膜とその製造方法、該絶縁膜を得るために有用な重合性化合物、絶縁膜形成材料及び空孔構造を有するポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、回路パターンの微細化が進む半導体プロセスにおいて、層間絶縁膜の低誘電率化が求められている。層間絶縁膜の低誘電率化には空孔構造の構築が効果的であるとされており、酸化ケイ素系の層間絶縁膜では、発泡剤等を用いた空孔構造の導入が提案されている。しかし、この方法では、空孔の形成は可能なものの、空孔の結合(空孔の連続化)が避けがたいため、機械的強度、熱的安定性に難点があり、半導体の製造における配線プロセスにおいて、膜破壊が生じるなどの重大な問題を抱えていた。
【0003】
本発明者らは、多官能性の架橋性モノマーの重合により、分子レベルの空孔が形成された絶縁膜によれば、低誘電率化と高い機械的強度を両立しうることを見出した(例えば、特開2004−307804号公報参照)。しかし、前記の絶縁膜では、未反応末端が多く残存するため、誘電率がばらつきやすいという問題があった。また、半導体の高集積化が進行する現状においては、より一層の低比誘電率化が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−307804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、半導体の製造に有用な高い耐熱性及び極めて低い比誘電率を有するとともに、比誘電率のばらつきの少ない空孔構造を有するポリマー及び絶縁膜とその製造方法、これらを形成しうる絶縁膜形成材料及び重合性化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、互いに結合して複素環等を形成しうる2以上の官能基又は官能基群をそれぞれ有しており、該官能基又は官能基群の反応により空孔構造を有するポリマーを形成可能な2つの化合物であって、少なくとも一方が特定構造のフレキシブルユニットを有する2つの化合物を重合したり、或いは分子内に互いに反応して複素環等を形成しうる2以上の官能基又は官能基群を有しており、該官能基又は官能基群の反応により空孔構造を有するポリマーを形成可能な化合物であって、分子内に特定構造のフレキシブルユニットを有する化合物を重合すると、比誘電率が極めて低く且つ比誘電率のばらつきの少ない絶縁膜が効率よく得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、それぞれの化合物の分子内に2以上の官能基又は官能基群を有しており、一方の化合物の官能基又は官能基群と他方の化合物の官能基又は官能基群との結合により重合して空孔構造を有するポリマーを形成することが可能な2つの化合物A及びB、及び/又は、分子内に2以上の官能基又は官能基群を有しており、一の官能基又は官能基群と他の官能基又は官能基群との結合により重合して空孔構造を有するポリマーを形成することが可能な化合物Cを含む絶縁膜形成材料であって、前記化合物A、化合物B、化合物Cが下記の条件(i)又は(ii)を満たすことを特徴とする絶縁膜形成材料を提供する。
(i)化合物A及び化合物Bの少なくとも一方が、中心骨格として有橋脂環骨格又は芳香環骨格を有し、化合物A及び化合物Bの少なくとも一方が、中心骨格と前記官能基又は官能基群との間に芳香環を含む2価の有機基からなる耐熱性骨格を有し、且つ化合物A及び化合物Bの少なくとも一方が、分子内にアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の有機基からなるフレキシブルユニットを有しているとともに、化合物Aの官能基又は官能基群と化合物Bの官能基又は官能基群が、互いに反応して複素環を形成しうる一対の官能基又は官能基群であるか、又はともに置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である
(ii)化合物Cが、中心骨格として有橋脂環骨格又は芳香環骨格を有し、中心骨格と前記一の官能基又は官能基群との間及び/又は中心骨格と他の官能基又は官能基群との間に芳香環を含む2価の有機基からなる耐熱性骨格を有し、且つ中心骨格と前記一の官能基又は官能基群との間及び/又は中心骨格と他の官能基又は官能基群との間にアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の有機基からなるフレキシブルユニットを有しているとともに、化合物Cの一の官能基又は官能基群と他の官能基又は官能基群が、互いに反応して複素環を形成しうる一対の官能基又は官能基群であるか、又はともに置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である
【0008】
前記絶縁膜形成材料において、化合物A及び化合物Bの少なくとも一方、又は化合物Cが有する中心骨格としての有橋脂環骨格又は芳香環骨格に係る有橋脂環又は芳香環は、下記式から選ばれる環、又はこれらが2以上結合した環であるのが好ましい。
【化1】

(式中、rは0〜5の整数を示す)
【0009】
また、化合物A及び化合物Bの少なくとも一方、又は化合物Cが有する芳香環を含む2価の有機基からなる耐熱性骨格が、下記式から選ばれる基、又はこれらが2以上結合した基であるのが好ましい。
【化2】

(式中、sは0〜5の整数を示す)
【0010】
また、化合物A及び化合物Bの少なくとも一方、又は化合物Cが有するアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の有機基からなるフレキシブルユニットが下記式から選ばれる基からなるフレキシブルユニットであるのが好ましい。
【化3】

(式中、tは1〜19の整数を示し、uは1〜10の整数を示し、vは1〜3の整数を示し、wは1〜16の整数を示し、xは1〜14の整数を示す。y及びzは、それぞれ0〜6の整数を示す。但し、y及びzは同時に0となることはない)
【0011】
さらに、化合物Aの官能基又は官能基群と化合物Bの官能基又は官能基群が互いに反応して形成する複素環、又は化合物Cの一の官能基又は官能基群と他の官能基又は官能基群が互いに反応して形成する複素環は、例えば、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環又はベンズチアゾール環である。
【0012】
また、前記絶縁膜形成材料において、化合物A、化合物B、化合物Cが下記の条件(iii)又は(iv)を満たすのが好ましい。
(iii)化合物Aが下記式(1a)
【化4】

[式中、X1は2〜4価の有橋脂環式基又は芳香族環式基を示す。Y1a、Y1bは、同一又は異なって、単結合、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、又はこれらの基が2以上結合した2価の基を示す。W1はアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z1は下記式(2)におけるZ2と反応して複素環を形成しうる官能基若しくは官能基群、又は置換基を有していてもよいエチニル基を含む基(但し、式(2)におけるZ2が置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である場合に限る)を示す。R1は、水素原子又は炭化水素基を示す。n1は2〜4の整数を示し、n2は0〜2の整数を示す。n1+n2=2〜4である。分子内の複数のY1a、Y1b、W1、Z1、及び複数存在する場合のR1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい]
で表される化合物、又は下記式(1b)
【化5】

[式中、Y1は、単結合、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、又はこれらの基が2以上結合した2価の基を示す。Wはアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2〜4価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z1は下記式(2)におけるZ2と反応して複素環を形成しうる官能基若しくは官能基群、又は置換基を有していてもよいエチニル基を含む基(但し、式(2)におけるZ2が置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である場合に限る)を示す。nは2〜4の整数を示す。分子内の複数のY1、Z1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい]
で表される化合物であり、化合物Bが下記式(2)
【化6】

[式中、X2は2〜4価の有橋脂環式基又は芳香族環式基を示す。Y2a、Y2bは、同一又は異なって、単結合、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、又はこれらの基が2以上結合した2価の基を示す。W2はアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z2は前記式(1a)又は(1b)におけるZ1と反応して複素環を形成しうる官能基若しくは官能基群、又は置換基を有していてもよいエチニル基を含む基(但し、式(1a)又は(1b)におけるZ1が置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である場合に限る)を示す。R2は、水素原子又は炭化水素基を示す。m1は2〜4の整数を示し、m2は0〜2の整数を示す。m1+m2=2〜4である。iは0又は1を示し、kは0又は1を示す。分子内の複数のY2a、Y2b、W2、Z2、及び複数存在する場合のR2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい]
で表される化合物である。
【0013】
(iv)化合物Cが下記式(3)
【化7】

[式中、X1は2〜4価の有橋脂環式基又は芳香族環式基を示す。Y1a、Y1b、Y2a、Y2bは、同一又は異なって、単結合、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、又はこれらの基が2以上結合した2価の基を示す。W1、W2は、同一又は異なって、アルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z1、Z2は、互いに反応して複素環を形成しうる対となる官能基若しくは官能基群であるか、又はZ1、Z2のいずれもが置換基を有していてもよいエチニル基を含む置換基を示す。R1は、水素原子又は炭化水素基を示す。kは0又は1を示す。p1、p2は、それぞれ1〜3の整数を示し、p3は0〜2の整数を示す。p1+p2+p3=2〜4である。分子内に複数存在する場合のY1a、Y1b、Y2a、Y2b、W1、W2、Z1、Z2、R1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい]
で表される化合物である。
【0014】
前記式(1a)、式(3)におけるX1は、例えば、2〜4価の芳香族又は非芳香族環式基である。
【0015】
前記2〜4価の芳香族又は非芳香族環式基に係る芳香族性又は非芳香族性環は、下記式から選ばれる環、又はこれらが2以上結合した環であるのが好ましい。
【化8】

(式中、rは0〜5の整数を示す)
【0016】
前記式(1a)、式(1b)、式(2)、式(3)におけるY1a、Y1b、Y1、Y2a、Y2bは、単結合、又は下記式から選ばれる基、若しくはこれらが2以上結合した基であるのが好ましい。
【化9】

(式中、sは0〜5の整数を示す)
【0017】
前記式(1a)、式(1b)、式(2)、式(3)におけるW1、W、W2としては、下記式から選ばれる基からなるフレキシブルユニットであるのが好ましい。
【化10】

(式中、tは1〜19の整数を示し、uは1〜10の整数を示し、vは1〜3の整数を示し、wは1〜16の整数を示し、xは1〜14の整数を示す。y及びzは、それぞれ0〜6の整数を示す。但し、y及びzは同時に0となることはない)
【0018】
前記式(1a)又は式(1b)におけるZ1と式(2)におけるZ2とで形成される複素環、式(3)におけるZ1と式(3)におけるZ2とで形成される複素環は、例えば、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環又はベンズチアゾール環である。
【0019】
前記式(1a)又は式(1b)におけるZ1と式(2)におけるZ2、又は式(3)におけるZ1と式(3)におけるZ2組合せとしては、一方がカルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ホルミル基、ハロホルミル基又は置換基を有していてもよいエチニル基を含む基であり、他方が3,4−ジアミノフェニル基、3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル基、3−アミノ−4−メルカプトフェニル基、4−アミノ−3−メルカプトフェニル基又は置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である(但し、一方が置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である場合には、他方も置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である)のが好ましい。
【0020】
前記絶縁膜形成材料には、化合物A及び化合物B、及び/又は化合物Cが有機溶媒に溶解した溶液が含まれる。
【0021】
本発明は、また、前記の絶縁膜形成材料を重合反応に付して得られる空孔構造を有するポリマーを提供する。
【0022】
本発明は、さらに、前記空孔構造を有するポリマーからなる絶縁膜を提供する。
【0023】
本発明は、さらにまた、前記絶縁膜形成材料を基材上に塗布した後、重合反応に付して空孔構造を有するポリマーからなる絶縁膜を形成することを特徴とする絶縁膜の製造方法を提供する。
【0024】
本発明は、また、下記式(7)
【化11】

[式中、X1は2〜4価の芳香族又は非芳香族環式基を示す。Y1a、Y1bは、同一又は異なって、単結合、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、又はこれらの基が2以上結合した2価の基を示す。但し、Y1a、Y1bのうち少なくとも一方は、2価の芳香族複素環式基、又は2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基を含む基である。W1は少なくともアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z1はカルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ホルミル基、ハロホルミル基、置換基を有していてもよいエチニル基を含む基、3,4−ジアミノフェニル基、3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル基、3−アミノ−4−メルカプトフェニル基又は4−アミノ−3−メルカプトフェニル基を示す。R1は、水素原子又は炭化水素基を示す。n1は2〜4の整数を示し、n2は0〜2の整数を示す。n1+n2=2〜4である。分子内の複数のY1a、Y1b、W1、Z1、及び複数存在する場合のR1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい]
で表される重合性化合物を提供する。
【0025】
前記Y1a、Y1bのうち少なくとも一方は、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環又はベンズチアゾール環を含む2価の芳香族複素環式基、又は前記2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基であるのが好ましい。
【0026】
本発明は、さらに、下記式(8)
【化12】

[式中、Y1は、2価の芳香族複素環式基、又は2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基を示す。Wはアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2〜4価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z1はカルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ホルミル基、ハロホルミル基、置換基を有していてもよいエチニル基を含む基、3,4−ジアミノフェニル基、3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル基、3−アミノ−4−メルカプトフェニル基又は4−アミノ−3−メルカプトフェニル基を示す。nは2〜4の整数を示す。分子内の複数のY1、Z1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい]
で表される重合性化合物を提供する。
【0027】
前記Y1は、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環又はベンズチアゾール環を含む2価の芳香族複素環式基、又は前記2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基であるのが好ましい。
【0028】
本発明は、さらにまた、下記式(9)
【化13】

[式中、X1は2〜4価の有機基を示す。Y1a、Y1b、Y2a、Y2bは、同一又は異なって、単結合、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、又はこれらの基が2以上結合した2価の基を示す。但し、Y1a、Y1bのうち少なくとも一方は、2価の芳香族複素環式基、又は2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基を含む基である。W1、W2は、同一又は異なって、アルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z1、Z2は、それぞれ、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ホルミル基、ハロホルミル基、置換基を有していてもよいエチニル基を含む基、3,4−ジアミノフェニル基、3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル基、3−アミノ−4−メルカプトフェニル基又は4−アミノ−3−メルカプトフェニル基を示す。R1は、水素原子又は炭化水素基を示す。kは0又は1を示す。p1、p2は、それぞれ1〜3の整数を示し、p3は0〜2の整数を示す。p1+p2+p3=2〜4である。分子内に複数存在する場合のY1a、Y1b、Y2a、Y2b、W1、W2、Z1、Z2、R1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい]
で表される重合性化合物を提供する。
【0029】
前記Y1a、Y1bのうち少なくとも一方は、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環又はベンズチアゾール環を含む2価の芳香族複素環式基、又は前記2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基であるのが好ましい。
【0030】
また、前記Y2a、Y2bのうち少なくとも一方は、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環又はベンズチアゾール環を含む2価の芳香族複素環式基、又は前記2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の絶縁膜形成材料は、空孔構造を有するポリマーを形成しうる2つの化合物のうち少なくとも一方の化合物が、或いは空孔構造を有するポリマーを形成しうる1つの化合物が特定構造のフレキシブルユニットを有しているので分子鎖が動きやすく、重合の際、官能基又は官能基群同士の反応が確実に起こるため、誘電率が低くしかも誘電率のばらつきが少ない空孔構造を有するポリマー及び絶縁膜を得ることができる。こうして得られる絶縁膜は、また、高い耐熱性と機械的強度を有する。本発明の重合性化合物はこのように優れた特性を有する絶縁膜形成材料の構成成分(モノマー成分)として使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の絶縁膜形成材料は、それぞれの化合物の分子内に2以上の官能基又は官能基群を有しており、一方の化合物の官能基又は官能基群と他方の化合物の官能基又は官能基群との結合により重合して空孔構造を有するポリマーを形成することが可能な2つの化合物A及びB、及び/又は、分子内に2以上の官能基又は官能基群を有しており、一の官能基又は官能基群と他の官能基又は官能基群との結合により重合して空孔構造を有するポリマーを形成することが可能な化合物Cを含む絶縁膜形成材料であって、前記化合物A、化合物B、化合物Cが下記の条件(i)又は(ii)を満たすことを特徴とする。
(i)化合物A及び化合物Bの少なくとも一方が、中心骨格として有橋脂環骨格又は芳香環骨格を有し、化合物A及び化合物Bの少なくとも一方が、中心骨格と前記官能基又は官能基群との間に芳香環を含む2価の有機基からなる耐熱性骨格を有し、且つ化合物A及び化合物Bの少なくとも一方が、分子内にアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の有機基からなるフレキシブルユニットを有しているとともに、化合物Aの官能基又は官能基群と化合物Bの官能基又は官能基群が、互いに反応して複素環を形成しうる一対の官能基又は官能基群であるか、又はともに置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である
(ii)化合物Cが、中心骨格として有橋脂環骨格又は芳香環骨格を有し、中心骨格と前記一の官能基又は官能基群との間及び/又は中心骨格と他の官能基又は官能基群との間に芳香環を含む2価の有機基からなる耐熱性骨格を有し、且つ中心骨格と前記一の官能基又は官能基群との間及び/又は中心骨格と他の官能基又は官能基群との間にアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の有機基からなるフレキシブルユニットを有しているとともに、化合物Cの一の官能基又は官能基群と他の官能基又は官能基群が、互いに反応して複素環を形成しうる一対の官能基又は官能基群であるか、又はともに置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である
【0033】
なお、本明細書では、重合に関与する官能基又は官能基群を2つ有する場合を「2官能」、3つ有する場合を「3官能」、4つ有する場合を「4官能」と称することがある。
【0034】
一般に、空孔構造を有するポリマー(高分子量重合体)を2種の化合物X及びYにより形成する場合、該化合物XとYの組み合わせとしては、例えば、中心骨格に結合した複数(例えば2〜4個)の官能基又は官能基群が2次元構造又は3次元構造をなす化合物Xと、中心骨格に結合した複数(例えば2〜4個、好ましくは2個)の官能基又は官能基群が1次元構造(直線状)又は2次元構造(角度を有する直鎖状)をなす化合物Yとの組み合わせが挙げられる。この場合、化合物Xはポリマーの結節点又は架橋点(頂点)を形成し、化合物Yは該結節点又は架橋点をつなぐ連結部(辺)を形成する。いくつかの結節点又は架橋点といくつかの連結部に囲まれた部位に空孔が形成される。前記ポリマーは分岐構造(特に多分岐構造)を有する重合体(高分子架橋体)であってもよく、分岐を持たない鎖状のポリマー分子からなる重合体であってもよい。分岐を持たない鎖状のポリマー分子からなる重合体であっても、ポリマー分子鎖中のセグメント間の排除体積効果により、1ポリマー分子が存在する領域への他の分子鎖の貫通が抑制され、その結果、比較的疎な充填構造が形成される。このような構造も空孔構造に含まれる。
【0035】
本発明においては、前記化合物A及び化合物Bのうち少なくとも一方の化合物、及び化合物Cは中心骨格として有橋脂環骨格又は芳香環骨格を有している。
【0036】
中心骨格としての有橋脂環骨格又は芳香環骨格に係る有橋脂環又は芳香環の代表的な例として、前記式(4a)〜(4o)で表される環、又はこれらが2以上(例えば2〜3個)結合した環が挙げられる。式(4j)中、rは0〜5の整数であり、好ましくは0〜2の整数である。
【0037】
前記中心骨格としての有橋脂環骨格又は芳香環骨格の好ましい例としては、アダマンタン骨格、ビアダマンタン骨格、テトラフェニルアダマンタン骨格、ノルボルナン骨格、テトラメチルノルボルナン骨格、ノルボルネン骨格、テトラメチルノルボルネン骨格等の有橋脂環骨格;テトラフェニルメタン骨格、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、ビフェニル骨格等の芳香環を含む芳香環骨格などが挙げられる。中心骨格部分の分子量は、例えば40〜1460、好ましくは60〜500程度である。
【0038】
官能基としては、反応性を有するものであれば特に限定されないが、代表的な例として、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ホルミル基、シラノール基、ハロゲン原子、カーボアニオン、置換基を有していてもよいエチニル基又はこれらを含有する基などが挙げられる。なお、これらの基は反応性の基に誘導体化されていてもよく、保護基で保護されていてもよい。反応性の基としては、例えばカルボキシル基においては、ハロホルミル基、酸無水物基(保護基で保護されたカルボキシル基としても分類できる)などが挙げられる。保護基としては有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。例えば、保護基で保護されたカルボキシル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基などの置換オキシカルボニル基などが挙げられる。保護基で保護されたアミノ基としては、例えば、アセチルアミノ基等のアシルアミノ基、アルキリデン基やシクロアルキリデン基、ベンジリデン基等で保護されたアミノ基(イミン誘導体)、アルコキシカルボニル基やアラルキルカルボキシル基で保護されたアミノ基(カルバミン酸エステル誘導体)などが挙げられる。アミノ基の2つの水素原子のうち1つはメチル基等のアルキル基やフェニル基で置換されたモノ置換アミノ基であってもよい。保護基で保護されたヒドロキシル基としては、アセチルオキシ基等のアシルオキシ基、アルデヒドで保護されたヒドロキシル基(アセタール、ヘミアセタール誘導体)などが挙げられる。
【0039】
互いに反応して化学結合を形成する官能基又は官能基群の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基とアミノ基との組み合わせ(アミド結合の形成)、カルボキシル基とヒドロキシル基との組み合わせ(エステル結合の形成)、カルボキシル基とメルカプト基との組み合わせ(チオエステル結合の形成)、ヒドロキシル基とヒドロキシル基との組み合わせ(エーテル結合の形成)、ヒドロキシル基とメルカプト基との組み合わせ(チオエーテル結合の形成)、炭素−炭素結合を形成可能な2つの官能基の組み合わせ、炭素−窒素結合を形成可能な2つの官能基の組み合わせ;1個のカルボキシル基と1,2位又は1,3位の炭素原子に結合した2個のアミノ基との組み合わせ(イミダゾール環等の2つの窒素原子を有する5員又は6員環の形成)、1個のホルミル基と1,2位又は1,3位の炭素原子に結合した2個のアミノ基との組み合わせ(酸素雰囲気等の酸化条件下で、イミダゾール環等の2つの窒素原子を有する5員又は6員環の形成)、1個のカルボキシル基と1,2位又は1,3位の炭素原子に結合したアミノ基及びヒドロキシル基との組み合わせ(オキサゾール環等の1つの窒素原子と1つの酸素原子を有する5員又は6員環の形成)、1個のカルボキシル基と1,2位又は1,3位の炭素原子に結合した1個のアミノ基及び1個のメルカプト基との組み合わせ(チアゾール環等の1つの窒素原子と1つのイオウ原子を有する5員又は6員環の形成)、1,2位又は1,3位の炭素原子に結合した2個のカルボキシル基と1個のアミノ基との組み合わせ(5員又は6員のイミド環の形成)、置換基を有していてもよいエチニル基同士の組合せなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本発明では、化合物Aの官能基又は官能基群と化合物Bの官能基又は官能基群は、互いに反応して複素環を形成しうる一対の官能基又は官能基群であるか、又はともに置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である。また、化合物Cの一の官能基又は官能基群と他の官能基又は官能基群が、互いに反応して複素環を形成しうる一対の官能基又は官能基群であるか、又はともに置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である。
【0041】
前記複素環の好ましい例として、例えば、ベンズイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズチアゾール環が挙げられる。これらの中でも、ベンズイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環が好ましい。また、前記複素環を形成しうる一対の官能基又は官能基群の好ましい組合せとして、一方がカルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ホルミル基又はハロホルミル基であり、他方が3,4−ジアミノフェニル基、3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル基、3−アミノ−4−メルカプトフェニル基又は4−アミノ−3−メルカプトフェニル基である組合せが挙げられる。置換オキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等のC1-6アルコキシ−カルボニル基等が挙げられる。
【0042】
前記置換基を有していてもよいエチニル基を含む基としては、エチニル基、エチニルフェニル基などが挙げられる。前記ともに置換基を有していてもよいエチニル基の組合せとしては、エチニル基とエチニルフェニル基との組合せが特に好ましい。
【0043】
本発明では、化合物A及び化合物Bの少なくとも一方は、中心骨格と前記官能基又は官能基群との間に芳香環を含む2価の有機基からなる耐熱性骨格を有している。また、化合物Cは、中心骨格と前記一の官能基又は官能基群との間及び/又は中心骨格と他の官能基又は官能基群との間に芳香環を含む2価の有機基からなる耐熱性骨格を有している。このように、絶縁膜形成材料を構成するモノマー成分が耐熱性骨格を有するので、耐熱性の高い絶縁膜を得ることができる。
【0044】
化合物A及び化合物Bの少なくとも一方が有する芳香環を含む2価の有機基からなる耐熱性骨格、化合物Cが有する芳香環を含む2価の有機基からなる耐熱性骨格の代表的な例として、前記式(5a)〜(5p)で表される基、又はこれらが複数(例えば2〜3個)結合した基が挙げられる。式中、sは0〜5の整数であり、好ましくは0〜2の整数である。また、これらのうちベンゼン環にヒドロキシル基が結合した基については、該ヒドロキシル基をメルカプト基に置き換えた基も好ましい。
【0045】
本発明では、化合物A及び化合物Bの少なくとも一方は、分子内にアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の有機基からなるフレキシブルユニットを有している。また、化合物Cは、中心骨格と前記一の官能基又は官能基群との間及び/又は中心骨格と他の官能基又は官能基群との間にアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の有機基からなるフレキシブルユニットを有している。このように、絶縁膜形成材料を構成するモノマー成分が反応時(重合時)に動きやすいフレキシブルユニットを有しているので、官能基又は官能基群が確実に反応し、未反応の官能基が残存しにくいため、比誘電率の値をより低下できるとともに、比誘電率のばらつきを低減することができる。
【0046】
化合物A及び化合物Bの少なくとも一方、又は化合物Cが有するアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の有機基からなるフレキシブルユニットの代表的な例としては、前記式(6a)〜(6j)で表される基からなるフレキシブルユニットが挙げられる。式中、tは1〜19の整数であり、好ましくは1〜10の整数である。uは1〜10の整数であり、好ましくは1〜5の整数である。vは1〜3の整数であり、好ましくは1〜2の整数である。wは1〜16の整数であり、好ましくは1〜8の整数である。xは1〜14の整数であり、好ましくは1〜7の整数である。y及びzは、それぞれ0〜6の整数であり、好ましくは0〜4の整数である。但し、y及びzは同時に0となることはない。
【0047】
本発明の絶縁膜形成材料においては、化合物A、化合物B、化合物Cが下記の条件(iii)又は(iv)を満たすのが好ましい。すなわち、(iii)化合物Aが前記式(1a)で表される化合物又は前記式(1b)で表される化合物であり、化合物Bが前記式(2)で表される化合物であるか、又は(iv)化合物Cが前記式(3)で表される化合物であるのが好適である。
【0048】
式(1a)中、X1は2〜4価の有橋脂環式基又は芳香族環式基を示す。Y1a、Y1bは、同一又は異なって、単結合、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、又はこれらの基が2以上結合した2価の基を示す。W1はアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z1は下記式(2)におけるZ2と反応して複素環を形成しうる官能基若しくは官能基群、又は置換基を有していてもよいエチニル基を含む基(但し、式(2)におけるZ2が置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である場合に限る)を示す。R1は、水素原子又は炭化水素基を示す。n1は2〜4の整数を示し、n2は0〜2の整数を示す。n1+n2=2〜4である。分子内の複数のY1a、Y1b、W1、Z1、及び複数存在する場合のR1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0049】
1における2〜4価の有橋脂環式基又は芳香族環式基に係る有橋脂環又は芳香環としては、前記化合物A及びBの少なくとも一方、及び化合物Cの中心骨格としての有橋脂環式基又は芳香族環式基に係る有橋脂環又は芳香環として例示した式(4a)〜(4p)で表される環などが挙げられる。これらの中でも、有橋脂環、特にアダマンタン環[式(4a)で表される環]又はビアダマンタン環が好ましい。X1の価数としては、3価又は4価、特に4価が好ましい。
【0050】
1a、Y1bにおける2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。2価の芳香族複素環式基に係る芳香族複素環としては、例えば、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環などが挙げられる。2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基としては、閉環により芳香族複素環式基を形成するような基が挙げられる。例えば、ベンズイミダゾール環の前駆体に相当する環としてアミノ基とアシルアミノ基とがベンゼン環の互いにオルトの位置に結合している環が挙げられる。また、ベンズオキサゾール環の前駆体に相当する環として、ヒドロキシル基とアシルアミノ基とがベンゼン環の互いにオルトの位置に結合している環が挙げられる。さらに、ベンズチアゾール環の前駆体に相当する環として、メルカプト基とアシルアミノ基とがベンゼン環の互いにオルトの位置に結合している環が挙げられる。
【0051】
1a、Y1bとしては、単結合のほか、前記化合物A及びBの少なくとも一方、及び化合物Cが有する芳香環を含む2価の有機基からなる耐熱性骨格の代表的な例として記載した前記式(5a)〜(5p)で表される基が挙げられる。式中、sは0〜5の整数であり、好ましくは0〜2の整数である。また、これらのうちベンゼン環にヒドロキシル基が結合した基については、該ヒドロキシル基をメルカプト基に置き換えた基も好ましい。
【0052】
1におけるアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットとしては、前記化合物A及びBの少なくとも一方、及び化合物Cが有するアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の有機基からなるフレキシブルユニットの代表的な例として記載した前記式(6a)〜(6j)で表される基からなるフレキシブルユニットが挙げられる。式中、tは1〜19の整数であり、好ましくは1〜10の整数である。uは1〜10の整数であり、好ましくは1〜5の整数である。vは1〜3の整数であり、好ましくは1〜2の整数である。wは1〜16の整数であり、好ましくは1〜8の整数である。xは1〜14の整数であり、好ましくは1〜7の整数である。y及びzは、それぞれ0〜6の整数であり、好ましくは0〜4の整数である。但し、y及びzは同時に0となることはない。
【0053】
1におけるZ2と反応して複素環を形成しうる官能基若しくは官能基群としては、Z2と反応してベンズイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズチアゾール環等を形成しうる官能基若しくは官能基群、例えば、Z2がカルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ホルミル基又はハロホルミル基である場合には、3,4−ジアミノフェニル基、3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル基、3−アミノ−4−メルカプトフェニル基又は4−アミノ−3−メルカプトフェニル基等が例示され、Z2が3,4−ジアミノフェニル基、3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル基、3−アミノ−4−メルカプトフェニル基又は4−アミノ−3−メルカプトフェニル基である場合には、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ホルミル基又はハロホルミル基などが挙げられる。置換オキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等のC1-6アルコキシ−カルボニル基等が挙げられる。
【0054】
1における置換基を有していてもよいエチニル基を含む基としては、エチニル基、エチニルフェニル基などが挙げられる。なお、Z2がエチニル基の場合は、Z1はエチニルフェニル基が好ましく、Z2がエチニルフェニル基の場合は、Z1はエチニル基が好ましい。
【0055】
1における炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した基などが含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6)程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル、3−メチル−4−ペンテニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜5)程度の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基;エチニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜5)程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキニル基などが挙げられる。
【0056】
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは3〜12員)程度のシクロアルキル基、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは3〜10員)程度のシクロアルケニル基などの単環の脂環式炭化水素基;アダマンタン環、パーヒドロインデン環、デカリン環、パーヒドロフルオレン環、パーヒドロアントラセン環、パーヒドロフェナントレン環、トリシクロデカン環、トリシクロウンデカン環、テトラシクロドデカン環、パーヒドロアセナフテン環、パーヒドロフェナレン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環など2〜4環程度の有橋脂環などを有する有橋脂環式炭化水素基(橋かけ環炭化水素基)などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜20(好ましくは6〜14)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0057】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)が含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。
【0058】
前記脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した基は、置換基を有していてもよい。置換基としては反応や高分子架橋体の物性を損なわないものであれば特に限定されない。
【0059】
式(1a)で表される化合物の中でも、前記式(7)で表される化合物が重要である。式(7)中、X1は2〜4価の芳香族又は非芳香族環式基を示す。Y1a、Y1bは、同一又は異なって、単結合、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、又はこれらの基が2以上結合した2価の基を示す。但し、Y1a、Y1bのうち少なくとも一方は、2価の芳香族複素環式基、又は2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基を含む基である。W1は少なくともアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z1はカルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ホルミル基、ハロホルミル基、置換基を有していてもよいエチニル基を含む基、3,4−ジアミノフェニル基、3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル基、3−アミノ−4−メルカプトフェニル基又は4−アミノ−3−メルカプトフェニル基を示す。R1は、水素原子又は炭化水素基を示す。n1は2〜4の整数を示し、n2は0〜2の整数を示す。n1+n2=2〜4である。分子内の複数のY1a、Y1b、W1、Z1、及び複数存在する場合のR1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。前記Y1a、Y1bのうち少なくとも一方が、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環又はベンズチアゾール環を含む2価の芳香族複素環式基、又は前記2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基であるのが好ましい。
【0060】
式(7)で表される化合物は、公知化合物を出発原料として、縮合反応、置換反応、付加反応、酸化反応、環化反応等の公知の反応を利用して合成できる。
【0061】
式(1a)で表される化合物の代表的な例として、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0062】
【化14】

【0063】
式(1b)中、Y1は、単結合、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、又はこれらの基が2以上結合した2価の基を示す。Wはアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2〜4価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z1は下記式(2)におけるZ2と反応して複素環を形成しうる官能基若しくは官能基群、又は置換基を有していてもよいエチニル基を含む基(但し、式(2)におけるZ2が置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である場合に限る)を示す。nは2〜4の整数を示す。分子内の複数のY1、Z1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0064】
1における2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基は、前記Y1a、Y1bにおける2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基と同様である。
【0065】
Wにおけるアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2〜4価の基からなるフレキシブルユニットは、前記W1におけるアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットと同様である。Z1は前記と同様である。
【0066】
式(1b)で表される化合物の中でも、前記式(8)で表される化合物が重要である。式(8)中、Y1は、2価の芳香族複素環式基、又は2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基を示す。Wはアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2〜4価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z1はカルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ホルミル基、ハロホルミル基、置換基を有していてもよいエチニル基を含む基、3,4−ジアミノフェニル基、3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル基、3−アミノ−4−メルカプトフェニル基又は4−アミノ−3−メルカプトフェニル基を示す。nは2〜4の整数を示す。分子内の複数のY1、Z1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。前記Y1は、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環又はベンズチアゾール環を含む2価の芳香族複素環式基、又は前記2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基であるのが好ましい。
【0067】
式(8)で表される化合物は、公知化合物を出発原料として、縮合反応、置換反応、付加反応、酸化反応、環化反応等の公知の反応を利用して合成できる。
【0068】
式(1b)で表される化合物の代表的な例として、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0069】
【化15】

【0070】
式(2)中、X2は2〜4価の有橋脂環式基又は芳香族環式基を示す。Y2a、Y2bは、同一又は異なって、単結合、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、又はこれらの基が2以上結合した2価の基を示す。W2はアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z2は前記式(1a)又は(1b)におけるZ1と反応して複素環を形成しうる官能基若しくは官能基群、又は置換基を有していてもよいエチニル基を含む基(但し、式(1a)又は(1b)におけるZ1が置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である場合に限る)を示す。R2は、水素原子又は炭化水素基を示す。m1は2〜4の整数を示し、m2は0〜2の整数を示す。m1+m2=2〜4である。iは0又は1を示し、kは0又は1を示す。分子内の複数のY2a、Y2b、W2、Z2、及び複数存在する場合のR2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0071】
2における2〜4価の有橋脂環式基、芳香族環式基は、前記X1における2〜4価の有橋脂環式基、芳香族環式基と同様である。Y2a、Y2bにおける2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基は、前記Y1a、Y1bにおける2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基と同様である。W2におけるアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットは、前記W1におけるアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットと同様である。
【0072】
2におけるZ1と反応して複素環を形成しうる官能基若しくは官能基群としては、Z1と反応してベンズイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズチアゾール環等を形成しうる官能基若しくは官能基群、例えば、Z1がカルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ホルミル基又はハロホルミル基である場合には、3,4−ジアミノフェニル基、3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル基、3−アミノ−4−メルカプトフェニル基又は4−アミノ−3−メルカプトフェニル基等が例示され、Z1が3,4−ジアミノフェニル基、3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル基、3−アミノ−4−メルカプトフェニル基又は4−アミノ−3−メルカプトフェニル基である場合には、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ホルミル基又はハロホルミル基などが挙げられる。置換オキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等のC1-6アルコキシ−カルボニル基等が挙げられる。
【0073】
2における置換基を有していてもよいエチニル基を含む基としては、エチニル基、エチニルフェニル基などが挙げられる。なお、Z1がエチニル基の場合は、Z2はエチニルフェニル基が好ましく、Z1がエチニルフェニル基の場合は、Z2はエチニル基が好ましい。
【0074】
2における炭化水素基はR1における炭化水素基と同様である。
【0075】
式(2)で表される化合物の中でも、式(9)で表される化合物が重要である。式(9)中、X1は2〜4価の有機基を示す。Y1a、Y1b、Y2a、Y2bは、同一又は異なって、単結合、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、又はこれらの基が2以上結合した2価の基を示す。但し、Y1a、Y1bのうち少なくとも一方は、2価の芳香族複素環式基、又は2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基を含む基である。W1、W2は、同一又は異なって、アルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z1、Z2は、それぞれ、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ホルミル基、ハロホルミル基、置換基を有していてもよいエチニル基を含む基、3,4−ジアミノフェニル基、3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル基、3−アミノ−4−メルカプトフェニル基又は4−アミノ−3−メルカプトフェニル基を示す。R1は、水素原子又は炭化水素基を示す。kは0又は1を示す。p1、p2は、それぞれ1〜3の整数を示し、p3は0〜2の整数を示す。p1+p2+p3=2〜4である。分子内に複数存在する場合のY1a、Y1b、Y2a、Y2b、W1、W2、Z1、Z2、R1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。前記Y1a、Y1bのうち少なくとも一方が、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環又はベンズチアゾール環を含む2価の芳香族複素環式基、又は前記2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基であるのが好ましい。また、Y2a、Y2bのうち少なくとも一方が、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環又はベンズチアゾール環を含む2価の芳香族複素環式基、又は前記2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基であるのが好ましい。
【0076】
式(9)で表される化合物は、公知化合物を出発原料として、縮合反応、置換反応、付加反応、酸化反応、環化反応等の公知の反応を利用して合成できる。
【0077】
式(2)で表される化合物の代表的な例として、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0078】
【化16】

【0079】
【化17】

【0080】
式(3)中、X1は2〜4価の有橋脂環式基又は芳香族環式基を示す。Y1a、Y1b、Y2a、Y2bは、同一又は異なって、単結合、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、又はこれらの基が2以上結合した2価の基を示す。W1、W2は、同一又は異なって、アルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z1、Z2は、互いに反応して複素環を形成しうる対となる官能基若しくは官能基群であるか、又はZ1、Z2のいずれもが置換基を有していてもよいエチニル基を含む置換基を示す。R1は、水素原子又は炭化水素基を示す。kは0又は1を示す。p1、p2は、それぞれ1〜3の整数を示し、p3は0〜2の整数を示す。p1+p2+p3=2〜4である。分子内に複数存在する場合のY1a、Y1b、Y2a、Y2b、W1、W2、Z1、Z2、R1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0081】
1における2〜4価の有橋脂環式基、芳香族環式基、Y1a、Y1b、Y2a、Y2bにおける2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、W1、W2におけるアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニット、Z1、Z2、R1は前記に同じである。
【0082】
式(3)で表される化合物は、公知化合物を出発原料として、縮合反応、置換反応、付加反応、酸化反応、環化反応等の公知の反応を利用して合成できる。
【0083】
式(3)で表される化合物の代表的な例として、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0084】
【化18】

【0085】
本発明の絶縁膜形成材料において、化合物Aと化合物Bとを含む場合、その割合(モル比)は、例えば、前者/後者=1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは20/80〜80/20程度であり、当量で用いることもできる。化合物A、化合物B、化合物Cは、それぞれ、単独で又は2以上組み合わせて使用できる。
【0086】
本発明の絶縁膜形成材料は、前記化合物A及び化合物B、及び/又は化合物Cが有機溶媒に溶解した溶液として用いることができる。
【0087】
有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;ジメチルイミダゾリジン、ジメチルイミダゾリジノン(ジメチルイミダゾリジン−ジオン)等の環状アミノアセタール類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;スルホン類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、安息香酸エステル、乳酸エチル、γ―ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのエステル類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)などのエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロメタンなどのニトロ化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;これらの混合溶媒などが挙げられる。
【0088】
本発明の絶縁膜形成材料は、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。このような成分として、化合物A、化合物B、化合物Cの合成に用いた原料成分などが挙げられる。また、他の添加成分として、重合や環化反応等を促進するための触媒を用いることもできる。触媒の代表的な例として、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の酸触媒、塩基触媒などが挙げられる。触媒の使用量は、化合物A、化合物B、化合物Cの総量に対して、例えば0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%程度である。
【0089】
本発明の絶縁膜形成材料には、塗布性を改善するため、溶液の粘性を高める増粘剤を添加してもよい。増粘剤の代表的な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのアルキレングリコール類やポリアルキレングリコール類などが挙げられる。増粘剤の使用量は、絶縁膜形成材料全体に対して、例えば0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%程度である。さらに、本発明の絶縁膜形成材料には、重合後の分子量を調整するためのモノカルボン酸類、及び/又は重合後の架橋度を調整するためのジカルボン酸類を添加してもよい。モノカルボン酸類の代表的な例としては、アダマンタンカルボン酸、安息香酸などのモノカルボン酸;アダマンタンカルボン酸メチルエステル、安息香酸メチルエステルなどのモノカルボン酸誘導体などが挙げられ、ジカルボン酸類の代表的な例としては、テレフタル酸などのジカルボン酸;テレフタル酸ジメチルエステルなどのジカルボン酸誘導体などが挙げられる。モノカルボン酸類の使用量は、絶縁膜形成材料を構成するモノマー成分(化合物A、化合物B、化合物C)の総量に対して、例えば0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%程度であり、ジカルボン酸類の使用量は、絶縁膜形成材料を構成するモノマー成分(化合物A、化合物B、化合物C)の総量に対して、例えば0〜100モル%、好ましくは0〜50モル%程度である。
【0090】
本発明の絶縁膜形成材料には、基板上に形成される絶縁被膜の基板密着性を高めるための密着促進剤を添加してもよい。密着促進剤の代表的な例としては、トリメトキシビニルシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレートなどが挙げられる。密着促進剤の使用量は、絶縁膜形成材料を構成するモノマー成分(化合物A、化合物B、化合物C)の総量に対して、例えば0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%程度である。
【0091】
モノマー成分(化合物A、化合物B、化合物C)及びその他の成分の有機溶媒への溶解は、モノマー成分等が酸化されない限度において、例えば空気雰囲気下で行ってもよいが、好ましくは窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行われる。モノマー成分等を溶解させる温度は、特に限定されず、モノマー成分等の溶解性や安定性、溶媒の沸点等に応じて加熱してもよく、例えば、0〜200℃、好ましくは10〜150℃程度である。
【0092】
絶縁膜形成材料中のモノマー成分(化合物A、化合物B、化合物C)の濃度は、モノマー成分の溶解性、塗布性、作業性等を考慮して適宜選択でき、例えば5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%程度である。
【0093】
本発明の空孔構造を有するポリマー及び絶縁膜は、例えば、上記の絶縁膜形成材料を塗布液として基材上に塗布した後、さらに反応に付すことにより、より具体的には、例えば加熱(焼成)等により重合や環化反応させることにより得られる。前記基材としては、例えば、シリコンウェハー、金属基板、セラミック基板などが挙げられる。塗布方法としては、特に限定されず、スピンコート法、ディップコート法、スプレー法などの慣用の方法を用いることができる。
【0094】
加熱温度は、モノマー成分を高分子量重合体に転化できる温度であれば特に制限されないが、一般には25〜500℃(例えば100〜500℃)、好ましくは25〜450℃(例えば150〜450℃)程度である。加熱は一定温度で行ってもよく、段階的温度勾配を付けて行ってもよい。加熱操作は、形成される薄膜の性能に影響がない限り、例えば空気雰囲気下で行われてもよいが、好ましくは不活性ガス(窒素、アルゴンなど)雰囲気下、又は真空雰囲気下で行われる。
【0095】
加熱によりモノマー成分が重縮合等により高分子量化して対応するポリマー(高分子量重合体)が生成する。また、モノマー成分が最終構造の前駆構造を有する化合物である場合には、通常モノマー成分の高分子量化とともに、環化反応等が進行して、所望の構造を有するポリマー(高分子量重合体)が生成する。モノマー成分が保護基を有する場合には、通常、保護基の脱離を伴って高分子量化や環化反応が進行する。環化反応により、それぞれの前駆構造から、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環などが形成される。
【0096】
例えば、モノマー成分として4官能化合物を用いた場合には、中心骨格(例えば、アダマンタン骨格)を頂点(架橋点)として4方向に架橋した構造(3つの6角形が互いに2辺を共有してなるユニット)を持ち多数の空孔を有する網目状の高分子膜を形成することができる。モノマー成分として3官能化合物を用いた場合には、中心骨格(例えば、アダマンタン骨格)を頂点(架橋点)として3方向に架橋した構造(3つの6角形が互いに2頂点又は2辺を共有してなるユニット)を持ち多数の空孔を有する高架橋型高分子膜が形成される。モノマー成分として2官能化合物を用いた場合には、ポリマー分子鎖中のセグメント間の排除体積効果により、1ポリマー分子が存在する領域への他の分子鎖の貫通が制限されるため、モノマー混合物から直接高分子量重合体を得る場合と比べて疎な充填構造を有する空孔率の高い高分子膜を形成することができる。
【0097】
また、モノマー成分として、4官能化合物又は3官能化合物と2官能化合物とを組み合わせて用いた場合には、隣接する架橋点(又は結節点)同士の距離(辺)が長く大きい空孔が形成され、結果として極めて低い誘電率を達成することができる。より詳細には、4官能化合物は4方向へ分岐した3次元構造を有する架橋点を、3官能化合物は3方向へ分岐した3次元構造を有する架橋点をそれぞれ形成することにより、4官能化合物及び/又は3官能化合物と2官能化合物とが結合して疎な空孔構造からなるポリマーを生成することができる。なお、4官能化合物(3官能化合物)単独では、重合時に架橋点が多く形成されるため高密度化し、また、分子の自由度が減少するため未架橋点を生じ、比誘電率を上昇させる場合がある。このため、4官能化合物と3官能化合物とを組み合わせて用いることにより、互いに立体的な障害を生じて、2官能化合物との結合による重合反応により形成される空隙が大きく、低密度の疎な空孔構造を有するポリマーとなる点で有利ある。
【0098】
また、モノマー成分として互いに反応する官能基を有する2種の3又は4官能化合物を用いた場合には、モノマー成分同士の立体障害により重合反応時に密度の低下を防ぐことができるため、巨大分子レベルの空孔構造を有するポリマーを得ることができる。すなわち、モノマー成分に用いる3又は4官能化合物は、中心骨格(例えば、アダマンタン骨格)を中心とする四面体(ほぼ正四面体)であって、立体的に嵩高い構造(容積の大きい構造)を有する大きな分子である。これらをモノマー成分とする重合反応においては、2つの四面体が、極めて大きい立体障害により互いの四面体構造の空間内部への貫入を防ぎ、さらに、伸長中のオリゴマー、ポリマー等の侵入も制限される。このため、両モノマー成分が本来有する四面体構造が保持され、これらの四面体の容積に対応するサイズの空孔が規則正しく配置された密度の低い構造を有するポリマーを形成することができる。
【0099】
このように形成されたポリマーからなる絶縁膜は内部に多数の分子レベルの空孔を均一に分散して有するため、空孔率が高く、それゆえ比誘電率が低い。また、架橋により十分な耐熱性及び機械的強度を有する上、配線からの銅の拡散が極めて少ないという利点を有する。また、少なくとも1つのモノマー成分がフレキシブルユニットを有しているため、官能基が動きやすく、官能基同士の反応が確実に行われる。そのため、未反応部位が減少し、アミノ基やカルボキシル基等による吸水性を低減でき、比誘電率(K値)のばらつきがなくなるとともに、絶縁性が向上する。また、誘電率測定において膜に交流電場を印加すると、電場の振動に応じて膜内の可動部位が電場に応答して動くことで、電場エネルギーを吸収する現象である誘電緩和が生じるとされている。従来の剛直な骨格のみからなる膜においては、未反応極性基が多く残存するため、誘電緩和の程度が大きく、同一膜内における比誘電率の測定値のバラツキが顕著であるが、本発明のフレキシブル部位を導入した膜においては、未反応の極性の高い部位の割合が低下することで、誘電緩和の程度がより抑制されて、比誘電率の測定値にばらつきの少ない均質な膜が得られる。
【0100】
加熱により形成される絶縁膜の膜厚は、用途に応じて適宜設定できるが、一般には50nm以上(50〜2000nm程度)、好ましくは100nm以上(100〜2000nm程度)、さらに好ましくは300nm以上(300〜2000nm程度)である。膜厚が50nm未満では、リーク電流が発生するなどの電気的特性に悪影響を及ぼしたり、半導体製造工程における化学的機械研磨(CMP)による膜の平坦化が困難となるなどの問題が生じやすいため、特に層間絶縁膜用途としては適さない。
【0101】
本発明の絶縁膜は、低誘電率且つ高耐熱性を示すため、例えば、半導体装置等の電子材料部品における絶縁被膜として使用することができ、特に層間絶縁膜として有用である。
【実施例】
【0102】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。高分子膜の膜厚はエリプソメーターを用いて測定した。また、高分子膜の密度は、X線反射率測定の解析により求め、高分子膜の比誘電率は膜の表面にAl電極を形成して測定した。赤外線吸収スペクトルの測定はうす膜による透過法を採用した。赤外線吸収スペクトルデータにおける「s」、「m」、「w」は、それぞれ、「強い」吸収、「中程度の」吸収、「弱い」吸収を示す。重量平均分子量はポリスチレン換算の値である。密度は25℃の値である。
【0103】
製造例1
式(2-1)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体の合成
【0104】
【化19】

【0105】
反応容器(3つ口フラスコ)に、上記式(2-4)で表される3,3’−ジアミノベンジジン77.68g(0.362mol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)307gを加えて溶解させた後、氷浴で0℃以下に保った。この反応容器へ、上記式(A)で表されるアダマンタンテトラキスベンズアルデヒド10.1g(0.018mol)をDMAc501gに溶解させた溶液を、滴下ロートを用いて6ml/minの速度で滴下した。滴下中、反応溶液内の液温が0℃を超えないように注意した。滴下終了後、滴下ロートをDMAc105gで洗浄し、これも反応容器内に滴下した。反応液に、テフロン(登録商標)チューブを用いて酸素濃度5モル%の酸素窒素混合ガスを導入しながら、反応容器をオイルバスにより加熱して液温を90℃に保ち、9時間反応させた。反応終了後、反応液を、別の容器中の水9.13kgへ滴下し、沈殿と上澄みからなるスラリーを、滴下終了後から約1時間撹拌した。撹拌中、反応液は、アミンの酸化を防止するため窒素をバブリングさせた。生成した沈殿物を濾別し、反応容器に再度移し、水1.83kgを加えて窒素雰囲気下、加熱還流を30分施して熱水洗浄を施した。温度が下がらないうちに沈殿物を濾別した後、得られた濾過物を真空乾燥機で乾燥させた。
乾燥終了後、得られた沈殿を還流管を備えた反応容器へ移し、テトラヒドロフラン(THF)1.83kgを加え、窒素雰囲気下で加熱還流することによりTHF洗浄を施した。再度固形分を濾別し、真空乾燥機で乾燥した生成物のNMRスペクトル、赤外線吸収スペクトルを測定したところ、図1に示されるNMRスペクトルデータ及び図2に示される赤外線吸収スペクトルデータにより、上記式(2-4)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体が形成されていることを確認した。アミノ基含有アダマンタン誘導体の収量は24.5g、収率は90%であった。
[NMRスペクトルデータ]
1H−NMR(DMSO−d6) δ(ppm):2.32(12H<−CH2−>), 4.60(16H<−NH2>),6.62−6.97(12H<芳香環プロトン>), 7.53−7.78(12H<芳香環プロトン>),7.87(8H),8.24(8H) 12.85(4H)
[赤外線吸収スペクトルデータ(cm-1)]
3419(N−H<伸縮振動>),2933(−CH2−のC−H<伸縮振動>),1623(−C=N−<伸縮振動>),1420−1520(芳香環<面内振動>),1280(芳香族−NH2<伸縮振動>)
【0106】
製造例2
式(1a-1)で表されるエトキシカルボニルブチル基含有アダマンタン誘導体の合成
【0107】
【化20】

【0108】
反応容器(3つ口フラスコ)に、上記式(2-1)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体1.51g(1.13mmol)と上記式(B)で表されるアルデヒド化合物1.07g(6.77mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)13.5gを加えて溶解させた後、反応液に、テフロン(登録商標)チューブを用いて空気を導入しながら、反応容器をオイルバスにより加熱して液温を90℃に保ち、6時間反応させた。別の容器中の水150mlへ滴下し、沈殿と上澄みからなるスラリーを、滴下終了後から約1時間撹拌した。生成した沈殿物を濾別し、反応容器に再度移し、酢酸エチルで洗浄し、沈殿物を濾別し得られた濾過物を、真空乾燥機で乾燥させた。
真空乾燥機で乾燥した生成物のNMRスペクトルを測定したところ、NMRスペクトルデータより、上記式(1a-1)で表される化合物が形成されていることを確認した。
[NMRスペクトルデータ]
1H−NMR(DMSO−d6) δ(ppm):1.17(12H<−CH3>),1.63(8H<−CH2−>),1.83(8H<−CH2−>),2.35−2.37(20H<−CH2−>),2.85(8H<−CH2−>),4.06(8H<−NH2>),7.48−8.27(40H<芳香環プロトン>),12.26−12.98(8H<−NH−>)
【0109】
製造例3
式(3-1)で表されるエトキシカルボニルブチル基及びアミノ基含有アダマンタン誘導体の合成
【0110】
【化21】

【0111】
反応容器(1つ口フラスコ)に、上記式(2-1)で表される化合物1.42g(1.053mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)12.7gを加えて溶解させた後、氷浴で0℃以下に保った。この反応容器へ、上記式(B)で表されるエチル=5−ホルミルペンタンカルボキシラート0.37g(2.11mmol)をDMAc0.799gに溶解させた溶液を、シリンジを用いて滴下した。滴下中、反応溶液内の液温が0℃を超えないように注意した。滴下終了後、反応液に、テフロン(登録商標)チューブを用いて空気を導入しながら、室温で4.5時間反応後、反応容器をオイルバスにより加熱して液温を90℃に保ち、2.5時間反応させた。反応終了後、反応液を、5回窒素置換し、アルミホイルで遮光し、式(3-1)で表されるエトキシカルボニルブチル基及びアミノ基含有アダマンタン誘導体の溶液を得た。
【0112】
製造例4
式(1b-3)で表されるアミノ基含有化合物の合成
【0113】
【化22】

【0114】
反応容器(3つ口フラスコ)に、上記式(2-4)で表される3,3’−ジアミノベンジジン35.8g(167mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)143.0gを加えて溶解させた後、氷浴で0℃以下に保った。この反応容器へ、オクタンジアルデヒド1.0g(6.68mmol)をDMAc50.4gに溶解させた溶液を、滴下ロートを用いて2.5ml/minの速度で滴下した。滴下中、反応溶液内の液温が0℃を超えないように注意した。滴下終了後、滴下ロートをDMAc10mlで洗浄し、これも反応容器内に滴下した。滴下終了後、反応液に、テフロン(登録商標)チューブを用いて空気を導入しながら、反応容器をオイルバスにより加熱して液温を60℃に保ち、4時間反応させた。反応終了後、別の容器中の水2000mlへ滴下し、沈殿と上澄みからなるスラリーを、滴下終了後から約1時間撹拌した。撹拌中、反応液は、アミンの酸化を防止するため窒素雰囲気下にした。生成した沈殿物を濾別し、反応容器に再度移し、水700mlを加えて窒素雰囲気下、加熱還流を30分施して熱水洗浄を施した。温度が下がらないうちに沈殿物を濾別した。この操作を7回繰り返した。その後、沈殿物を濾別し得られた濾過物を、反応容器に再度移し、メタノールを加えて溶解し、別の容器中の水へ滴下し、沈殿と上澄みからなるスラリーを、窒素雰囲気下、約1時間撹拌した。沈殿物を濾別し得られた濾過物を、真空乾燥機で乾燥させた。
真空乾燥機で乾燥した生成物のNMRスペクトルを測定したところ、NMRスペクトルデータより、上記式(1b-3)で表される化合物が形成されていることを確認した。上記式(1b-3)で表される化合物の収量は2.0g、収率は54%であった。
[NMRスペクトルデータ]
1H−NMR(DMSO−d6) δ(ppm):1.22(4H<−CH2−>),1.39(4H<−CH2−>),1.77(4H<−CH2−>),2.49(8H<−CH2−>),2.79(2H<−CH2−>),4.50(4H<−NH2>),6.56(2H<芳香環プロトン>),6.69(2H<芳香環プロトン>),6.84(2H<芳香環プロトン>),7.24(2H<芳香環プロトン>),7.35−7.54(4H<芳香環プロトン>),12.09(4H<−NH−>)
【0115】
製造例5
式(1b-4)で表されるアミノ基含有化合物の合成
【0116】
【化23】

【0117】
反応容器(3つ口フラスコ)に、上記式(2-4)で表される3,3’−ジアミノベンジジン62.3g(290mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)100mlを加えて溶解させた後、氷浴で0℃以下に保った。この反応容器へ、スクシンアルデヒド(Succinaldehyde)1.26g(14.5mmol)をDMAc100mlに溶解させた溶液を、滴下ロートを用いて2ml/minの速度で滴下した。滴下中、反応溶液内の液温が0℃を超えないように注意した。滴下終了後、滴下ロートをDMAc10mlで洗浄し、これも反応容器内に滴下した。滴下終了後、反応液に、テフロン(登録商標)チューブを用いて空気を導入しながら、反応容器をオイルバスにより加熱して液温を60℃に保ち、4時間反応させた。反応終了後、エバポレータで、反応液からDMAc100mlを留去した。別の容器中の水1000mlへ滴下し、沈殿と上澄みからなるスラリーを、滴下終了後から約1時間撹拌した。撹拌中、反応液は、アミンの酸化を防止するため窒素雰囲気下にした。生成した沈殿物を濾別し、反応容器に再度移し、水700mlを加えて窒素雰囲気下、加熱還流を30分施して熱水洗浄を施した。温度が下がらないうちに沈殿物を濾別した。この操作を7回繰り返した。その後、沈殿物を濾別し得られた濾過物を、反応容器に再度移し、メタノールを加えて溶解し、別の容器中の水へ滴下し、沈殿と上澄みからなるスラリーを、窒素雰囲気下、約1時間撹拌した。沈殿物を濾別し得られた濾過物を、真空乾燥機で乾燥させた。
真空乾燥機で乾燥した生成物のNMRスペクトルを測定したところ、NMRスペクトルデータより、上記式(1b-4)で表される化合物が形成されていることを確認した。上記式1b-4)で表される化合物の収量は801.2mg、収率は46%であった。
[NMRスペクトルデータ]
1H−NMR(DMSO−d6) δ(ppm):2.80(4H<−CH2−>),4.51(8H<−NH2>),6.57(2H<芳香環プロトン>),6.70(2H<芳香環プロトン>),6.85(2H<芳香環プロトン>),7.24(2H<芳香環プロトン>),7.35−7.55(4H<芳香環プロトン>),12.08(2H<−NH−>)
【0118】
製造例6
式(1b-5)で表されるアミノ基及びヒドロキシル基含有化合物の合成
【0119】
【化24】

【0120】
容器(三角フラスコ)に、ヘキサン−1,6−ジカルボン酸クロライド1.5g(7.11mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)307gを加えて溶解させた後、ドライアイス/メタノール浴で−20℃に冷却した。また、同様に、容器(三角フラスコ)に、上記式(2-4)で表される3,3’−ジヒドロキシベンジジン30.7g(142mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)307gを加えて溶解させた後、ドライアイス/メタノール浴で−20℃に冷却した。冷却装置で−18℃以下に保った反応容器へ、上記2液を、シリンジを用いて等速度で混合し、1.5時間攪拌した。反応終了後、エバポレータを用いて固形分濃度が15重量%になるまで溶媒を留去した。別の容器中のメタノール1000mlへ滴下し、沈殿と上澄みからなるスラリーを、滴下終了後から約1時間撹拌した。生成した沈殿物を濾別し、フラスコに再度移し、得られた濾過物に固形分濃度が15重量%になるようにDMAcを加え溶解した。別の容器中のメタノール1000mlへ滴下し、沈殿と上澄みからなるスラリーを、滴下終了後から約1時間撹拌した。生成した沈殿物を濾別した。この7回繰り返した。最終的に得られた固形分を真空乾燥機で乾燥させた。
真空乾燥機で乾燥した生成物のNMRスペクトルを測定したところ、NMRスペクトルデータにより、上記式(1b-5)で表される化合物が形成されていることを確認した。
[NMRスペクトルデータ]
1H−NMR(DMSO−d6) δ(ppm):1.35(4H<−CH2−>),2.40(4H<−CH2−>),2.50(4H<−CH2−>),4.63(4H<−NH2>),6.57−7.05(10H<芳香環プロトン>),7.64(2H<芳香環プロトン>),9.10−9.78(6H)
【0121】
比較例1[(2-1)と(2-2)からの膜の作製(膜1)]
よく乾燥させた容器(ナス型フラスコ)に、前記式(2-2)で表されるカルボン酸化合物464mg(0.752mmol)及び前記式(2-1)で表されるアミン化合物1330mg(0.752mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)6.73g及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI) 6.73gを加えて溶解させた後、攪拌しながら真空ポンプを用いて脱気、窒素置換を3回繰り返した。遮光し、1時間攪拌後、攪拌を止め一晩放置した。この溶液を、0.2μm及び0.1μmPTFEろ紙でろ過後、1000rpm/20sec→3000rpm/20secの条件でシリコン基板上に塗布した。その後すぐに50℃→250℃(30min)→400℃(30min)の条件で焼成し、膜1を得た。膜1の膜厚は170.0nmであった。
[赤外線吸収スペクトルデータ(cm-1)]
3419(N−H<伸縮振動>),2933(−CH2−<伸縮振動>),1623(−C=N−<伸縮振動>),1420−1520(芳香族<面内振動>),1280(芳香族−NH2<伸縮振動>),807(C−H<面外変角振動>)
【0122】
実施例1[(2-2)と(1b-3)からの膜の作製(膜2)]
よく乾燥させた容器(ナス型フラスコ)に、前記(2-2)で表されるカルボン酸化合物395mg(0.641mmol)及び前記(1b-3)で表されるアミン化合物680mg(1.28mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)3.49g及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI) 3.50gを加えて溶解させた後、攪拌しながら真空ポンプを用いて脱気、窒素置換を3回繰り返した。遮光し、1時間攪拌後、攪拌を止め一晩放置した。この溶液を、0.2μm及び0.1μmPTFEろ紙でろ過後、1000rpm/20sec→3000rpm/20secの条件でシリコン基板上に塗布した。その後すぐに50℃→250℃(30min)→400℃(30min)の条件で焼成し、膜2を得た。膜2の膜厚は214.7nmであった。
[赤外線吸収スペクトルデータ(cm-1)]
3445(N−H<伸縮振動>),2930(−CH2−<伸縮振動>),1620(−C=N−<伸縮振動>),1420−1520(芳香族<面内振動>),1280(芳香族−NH2<伸縮振動>),806(C−H<面外変角振動>)
【0123】
実施例2[(1b-1)と(2-1)からの膜の作製(膜3)]
よく乾燥させた容器(ナス型フラスコ)に、前記(1b-1)で表される1,4−フェニレンジプロピオン酸(1,4−phenylenedipropionic acid)0.401g(1.81mmol)及び前記(2-1)で表されるアミン化合物1.20mg(0.904mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)5.88g及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI) 5.88gを加えて溶解させた後、攪拌しながら真空ポンプを用いて脱気、窒素置換を3回繰り返した。遮光し、1時間攪拌後、攪拌を止め一晩放置した。この溶液を、0.2μm及び0.1μmPTFEろ紙でろ過後、1000rpm/20sec→3000rpm/20secの条件でシリコン基板上に塗布した。その後すぐに50℃→250℃(30min)→400℃(30min)の条件で焼成し、膜3を得た。膜3の膜厚は217.2nmであった。
[赤外線吸収スペクトルデータ(cm-1)]
3420(N−H<伸縮振動>),2933(−CH2−<伸縮振動>),1620(−C=N−<伸縮振動>),1420−1520(芳香族<面内振動>),1260(芳香族−NH2<伸縮振動>),810(C−H<面外変角振動>)
【0124】
実施例3[(1a-1)と(2-1)からの膜の作製(膜4)]
よく乾燥させた容器(ナス型フラスコ)に、前記(1a-1)で表されるエステル化合物1.00g(0.531mmol)及び前記(2-1)で表されるアミン化合物0.707g(0.531mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)7.2g及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI) 7.1gを加えて溶解させた後、攪拌しながら真空ポンプを用いて脱気、窒素置換を3回繰り3た。遮光し、1時間攪拌後、攪拌を止め一晩放置した。この溶液を、0.2μm及び0.1μmPTFEろ紙でろ過後、1000rpm/20sec→3000rpm/20secの条件でシリコン基板上に塗布した。その後すぐに50℃→250℃(30min)→400℃(30min)の条件で焼成し、膜4を得た。膜4の膜厚は211.1nmであった。
[赤外線吸収スペクトルデータ(cm-1)]
3419(N−H<伸縮振動>),2931(−CH2−<伸縮振動>),1623(−C=N−<伸縮振動>),1420−1520(芳香族<面内振動>),1282(芳香族−NH2<伸縮振動>),805(C−H<面外変角振動>)
【0125】
実施例4[(3-1)からの膜の作製(膜5)]
製造例3で得た式(3-1)で表されるエトキシカルボニルブチル基及びアミノ基含有アダマンタン誘導体の溶液を、0.2μm及び0.1μmPTFEろ紙でろ過後、1000rpm/20sec→3000rpm/20secの条件でシリコン基板上に塗布した。その後すぐに50℃→250℃(30min)→400℃(30min)の条件で焼成し、膜5を得た。膜5の膜厚は114.7nmであった。
[赤外線吸収スペクトルデータ(cm-1)]
3419(N−H<伸縮振動>),2929(−CH2−<伸縮振動>),1620(−C=N−<伸縮振動>),1420−1520(芳香族<面内振動>),1280(芳香族−NH2<伸縮振動>),810(C−H<面外変角振動>)
【0126】
評価試験1
実施例1〜4及び比較例1で得られた膜について、同一膜内の任意の12箇所で比誘電率を測定した。その結果を図3及び図4に示す。横軸は測定箇所の番号、縦軸は比誘電率の値を示す。図から明らかなように、比較例1の膜では測定箇所により比誘電率に大きなばらつきが見られるが、実施例で得られた膜は、測定箇所による比誘電率のばらつきが少なく、均質な膜であった。
【0127】
評価試験2
実施例1及び比較例1で得られた膜について、リーク電流を測定した。その結果を図5に示す。横軸は印加電界E(V/cm)、縦軸はリーク電流(A/cm2)を示す。図から明らかなように、実施例1の膜は比較例1の膜に比較して絶縁性に優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】製造例1で得られたアミノ基含有アダマンタン誘導体のNMRスペクトルである。
【図2】製造例1で得られたアミノ基含有アダマンタン誘導体の赤外線吸収スペクトルである。
【図3】実施例1及び比較例1で得られた膜の同一膜内で比誘電率のバラツキを示すグラフである。
【図4】実施例2、3及び4で得られた膜の同一膜内で比誘電率のバラツキを示すグラフである。
【図5】実施例1及び比較例1で得られた膜の印加電界とリーク電流との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの化合物の分子内に2以上の官能基又は官能基群を有しており、一方の化合物の官能基又は官能基群と他方の化合物の官能基又は官能基群との結合により重合して空孔構造を有するポリマーを形成することが可能な2つの化合物A及びB、及び/又は、分子内に2以上の官能基又は官能基群を有しており、一の官能基又は官能基群と他の官能基又は官能基群との結合により重合して空孔構造を有するポリマーを形成することが可能な化合物Cを含む絶縁膜形成材料であって、前記化合物A、化合物B、化合物Cが下記の条件(i)又は(ii)を満たすことを特徴とする絶縁膜形成材料。
(i)化合物A及び化合物Bの少なくとも一方が、中心骨格として有橋脂環骨格又は芳香環骨格を有し、化合物A及び化合物Bの少なくとも一方が、中心骨格と前記官能基又は官能基群との間に芳香環を含む2価の有機基からなる耐熱性骨格を有し、且つ化合物A及び化合物Bの少なくとも一方が、分子内にアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の有機基からなるフレキシブルユニットを有しているとともに、化合物Aの官能基又は官能基群と化合物Bの官能基又は官能基群が、互いに反応して複素環を形成しうる一対の官能基又は官能基群であるか、又はともに置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である
(ii)化合物Cが、中心骨格として有橋脂環骨格又は芳香環骨格を有し、中心骨格と前記一の官能基又は官能基群との間及び/又は中心骨格と他の官能基又は官能基群との間に芳香環を含む2価の有機基からなる耐熱性骨格を有し、且つ中心骨格と前記一の官能基又は官能基群との間及び/又は中心骨格と他の官能基又は官能基群との間にアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の有機基からなるフレキシブルユニットを有しているとともに、化合物Cの一の官能基又は官能基群と他の官能基又は官能基群が、互いに反応して複素環を形成しうる一対の官能基又は官能基群であるか、又はともに置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である
【請求項2】
化合物A及び化合物Bの少なくとも一方、又は化合物Cが有する中心骨格としての有橋脂環骨格又は芳香環骨格に係る有橋脂環又は芳香環が、下記式から選ばれる環、又はこれらが2以上結合した環である請求項1記載の絶縁膜形成材料。
【化1】

(式中、rは0〜5の整数を示す)
【請求項3】
化合物A及び化合物Bの少なくとも一方、又は化合物Cが有する芳香環を含む2価の有機基からなる耐熱性骨格が、下記式から選ばれる基、又はこれらが2以上結合した基である請求項1記載の絶縁膜形成材料。
【化2】

(式中、sは0〜5の整数を示す)
【請求項4】
化合物A及び化合物Bの少なくとも一方、又は化合物Cが有するアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の有機基からなるフレキシブルユニットが下記式から選ばれる基からなるフレキシブルユニットである請求項1記載の絶縁膜形成材料。
【化3】

(式中、tは1〜19の整数を示し、uは1〜10の整数を示し、vは1〜3の整数を示し、wは1〜16の整数を示し、xは1〜14の整数を示す。y及びzは、それぞれ0〜6の整数を示す。但し、y及びzは同時に0となることはない)
【請求項5】
化合物Aの官能基又は官能基群と化合物Bの官能基又は官能基群が互いに反応して形成する複素環、又は化合物Cの一の官能基又は官能基群と他の官能基又は官能基群が互いに反応して形成する複素環がベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環又はベンズチアゾール環である請求項1記載の絶縁膜形成材料。
【請求項6】
化合物A、化合物B、化合物Cが下記の条件(iii)又は(iv)を満たす請求項1記載の絶縁膜形成材料。
(iii)化合物Aが下記式(1a)
【化4】

[式中、X1は2〜4価の有橋脂環式基又は芳香族環式基を示す。Y1a、Y1bは、同一又は異なって、単結合、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、又はこれらの基が2以上結合した2価の基を示す。W1はアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z1は下記式(2)におけるZ2と反応して複素環を形成しうる官能基若しくは官能基群、又は置換基を有していてもよいエチニル基を含む基(但し、式(2)におけるZ2が置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である場合に限る)を示す。R1は、水素原子又は炭化水素基を示す。n1は2〜4の整数を示し、n2は0〜2の整数を示す。n1+n2=2〜4である。分子内の複数のY1a、Y1b、W1、Z1、及び複数存在する場合のR1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい]
で表される化合物、又は下記式(1b)
【化5】

[式中、Y1は、単結合、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、又はこれらの基が2以上結合した2価の基を示す。Wはアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2〜4価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z1は下記式(2)におけるZ2と反応して複素環を形成しうる官能基若しくは官能基群、又は置換基を有していてもよいエチニル基を含む基(但し、式(2)におけるZ2が置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である場合に限る)を示す。nは2〜4の整数を示す。分子内の複数のY1、Z1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい]
で表される化合物であり、化合物Bが下記式(2)
【化6】

[式中、X2は2〜4価の有橋脂環式基又は芳香族環式基を示す。Y2a、Y2bは、同一又は異なって、単結合、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、又はこれらの基が2以上結合した2価の基を示す。W2はアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z2は前記式(1a)又は(1b)におけるZ1と反応して複素環を形成しうる官能基若しくは官能基群、又は置換基を有していてもよいエチニル基を含む基(但し、式(1a)又は(1b)におけるZ1が置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である場合に限る)を示す。R2は、水素原子又は炭化水素基を示す。m1は2〜4の整数を示し、m2は0〜2の整数を示す。m1+m2=2〜4である。iは0又は1を示し、kは0又は1を示す。分子内の複数のY2a、Y2b、W2、Z2、及び複数存在する場合のR2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい]
で表される化合物である
(iv)化合物Cが下記式(3)
【化7】

[式中、X1は2〜4価の有橋脂環式基又は芳香族環式基を示す。Y1a、Y1b、Y2a、Y2bは、同一又は異なって、単結合、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、又はこれらの基が2以上結合した2価の基を示す。W1、W2は、同一又は異なって、アルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z1、Z2は、互いに反応して複素環を形成しうる対となる官能基若しくは官能基群であるか、又はZ1、Z2のいずれもが置換基を有していてもよいエチニル基を含む置換基を示す。R1は、水素原子又は炭化水素基を示す。kは0又は1を示す。p1、p2は、それぞれ1〜3の整数を示し、p3は0〜2の整数を示す。p1+p2+p3=2〜4である。分子内に複数存在する場合のY1a、Y1b、Y2a、Y2b、W1、W2、Z1、Z2、R1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい]
で表される化合物である
【請求項7】
式(1a)、式(3)におけるX1の2〜4価の有橋脂環式基又は芳香族環式基に係る有橋脂環、芳香環が下記式から選ばれる環、又はこれらが2以上結合した環である請求項6記載の絶縁膜形成材料。
【化8】

(式中、rは0〜5の整数を示す)
【請求項8】
式(1a)、式(1b)、式(2)、式(3)におけるY1a、Y1b、Y1、Y2a、Y2bが、単結合、又は下記式から選ばれる基、若しくはこれらが2以上結合した基である請求項6記載の絶縁膜形成材料。
【化9】

(式中、sは0〜5の整数を示す)
【請求項9】
式(1a)、式(1b)、式(2)、式(3)におけるW1、W、W2が、下記式から選ばれる基からなるフレキシブルユニットである請求項6記載の絶縁膜形成材料。
【化10】

(式中、tは1〜19の整数を示し、uは1〜10の整数を示し、vは1〜3の整数を示し、wは1〜16の整数を示し、xは1〜14の整数を示す。y及びzは、それぞれ0〜6の整数を示す。但し、y及びzは同時に0となることはない)
【請求項10】
式(1a)又は式(1b)におけるZ1と式(2)におけるZ2とで形成される複素環、式(3)におけるZ1と式(3)におけるZ2とで形成される複素環がベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環又はベンズチアゾール環である請求項6記載の絶縁膜形成材料。
【請求項11】
式(1a)又は式(1b)におけるZ1と式(2)におけるZ2、又は式(3)におけるZ1と式(3)におけるZ2のうち一方がカルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ホルミル基、ハロホルミル基又は置換基を有していてもよいエチニル基を含む基であり、他方が3,4−ジアミノフェニル基、3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル基、3−アミノ−4−メルカプトフェニル基、4−アミノ−3−メルカプトフェニル基又は置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である(但し、一方が置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である場合には、他方も置換基を有していてもよいエチニル基を含む基である)請求項6記載の絶縁膜形成材料。
【請求項12】
化合物A及び化合物B、及び/又は化合物Cが有機溶媒に溶解した溶液である請求項1〜11の何れかの項に記載の絶縁膜形成材料。
【請求項13】
請求項1〜12の何れかの項に記載の絶縁膜形成材料を重合反応に付して得られる空孔構造を有するポリマー。
【請求項14】
請求項13記載の空孔構造を有するポリマーからなる絶縁膜。
【請求項15】
請求項12記載の絶縁膜形成材料を基材上に塗布した後、重合反応に付して空孔構造を有するポリマーからなる絶縁膜を形成することを特徴とする絶縁膜の製造方法。
【請求項16】
下記式(7)
【化11】

[式中、X1は2〜4価の芳香族又は非芳香族環式基を示す。Y1a、Y1bは、同一又は異なって、単結合、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、又はこれらの基が2以上結合した2価の基を示す。但し、Y1a、Y1bのうち少なくとも一方は、2価の芳香族複素環式基、又は2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基を含む基である。W1は少なくともアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z1はカルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ホルミル基、ハロホルミル基、置換基を有していてもよいエチニル基を含む基、3,4−ジアミノフェニル基、3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル基、3−アミノ−4−メルカプトフェニル基又は4−アミノ−3−メルカプトフェニル基を示す。R1は、水素原子又は炭化水素基を示す。n1は2〜4の整数を示し、n2は0〜2の整数を示す。n1+n2=2〜4である。分子内の複数のY1a、Y1b、W1、Z1、及び複数存在する場合のR1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい]
で表される重合性化合物。
【請求項17】
1a、Y1bのうち少なくとも一方が、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環又はベンズチアゾール環を含む2価の芳香族複素環式基、又は前記2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基である請求項16記載の重合性化合物。
【請求項18】
下記式(8)
【化12】

[式中、Y1は、2価の芳香族複素環式基、又は2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基を示す。Wはアルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2〜4価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z1はカルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ホルミル基、ハロホルミル基、置換基を有していてもよいエチニル基を含む基、3,4−ジアミノフェニル基、3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル基、3−アミノ−4−メルカプトフェニル基又は4−アミノ−3−メルカプトフェニル基を示す。nは2〜4の整数を示す。分子内の複数のY1、Z1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい]
で表される重合性化合物。
【請求項19】
1が、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環又はベンズチアゾール環を含む2価の芳香族複素環式基、又は前記2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基である請求項18記載の重合性化合物。
【請求項20】
下記式(9)
【化13】

[式中、X1は2〜4価の有機基を示す。Y1a、Y1b、Y2a、Y2bは、同一又は異なって、単結合、2価の芳香族炭化水素基、2価の芳香族複素環式基、2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基、又はこれらの基が2以上結合した2価の基を示す。但し、Y1a、Y1bのうち少なくとも一方は、2価の芳香族複素環式基、又は2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基を含む基である。W1、W2は、同一又は異なって、アルキレン基又はエーテル結合を少なくとも含む全原子数2〜20の2価の基からなるフレキシブルユニットを示す。Z1、Z2は、それぞれ、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ホルミル基、ハロホルミル基、置換基を有していてもよいエチニル基を含む基、3,4−ジアミノフェニル基、3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル基、3−アミノ−4−メルカプトフェニル基又は4−アミノ−3−メルカプトフェニル基を示す。R1は、水素原子又は炭化水素基を示す。kは0又は1を示す。p1、p2は、それぞれ1〜3の整数を示し、p3は0〜2の整数を示す。p1+p2+p3=2〜4である。分子内に複数存在する場合のY1a、Y1b、Y2a、Y2b、W1、W2、Z1、Z2、R1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい]
で表される重合性化合物。
【請求項21】
1a、Y1bのうち少なくとも一方が、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環又はベンズチアゾール環を含む2価の芳香族複素環式基、又は前記2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基である請求項20記載の重合性化合物。
【請求項22】
2a、Y2bのうち少なくとも一方が、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環又はベンズチアゾール環を含む2価の芳香族複素環式基、又は前記2価の芳香族複素環式基の前駆体に相当する2価の基である請求項20又は21記載の重合性化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−19193(P2009−19193A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124799(P2008−124799)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】