説明

総ころ軸受

【課題】組み立て時の外輪の組み付けの際に、各ころが内輪から離脱しにくくて、組み立てが容易で、かつ、外輪を外した際にも、ころが内輪から離脱しにくい総ころ軸受を提供すること。
【解決手段】円錐ころ3に、円錐ころ3の小径端面である第1端面30から軸方向に突出する突出部32を形成する。内輪2の外周面において、内輪2の円錐軌道面12の小径側に位置する部分に、断面コ字状の保持リング4を、締まり嵌めにより外嵌して固定する。上記突出部32の一部が、保持リング3の大径筒部42の内周面に径方向に重なるように、円錐ころ3を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周方向に隣接する二つのころが接触可能な総ころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、総ころ軸受としては、特開平11−132243号公報(特許文献1)に記載されているものがある。
【0003】
この総ころ軸受は、外輪、内輪および複数の円錐ころを組み立てた後、外輪と内輪との間に、流動可能な状態の潤滑剤を注入して、その後、この流動可能な潤滑剤を硬化させて、形成されている。この総ころ軸受は、組み立てが容易でないという問題がある。
【0004】
また、特開平11−132243号公報に記載の第2の総ころ軸受としては、単に、外輪、内輪および複数の円錐ころを組み立てたものがある。
【0005】
この総ころ軸受は、外輪を外した際に、各円錐ころが、内輪から離脱して、円錐ころのばらけが発生するから、取り扱いにくいという課題がある。また、組み立て時の外輪の組み付けの際に、円錐ころが離脱するから、組み立てが容易ではないという問題がある。
【特許文献1】特開平11−132243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、組み立て時の外輪の組み付けの際に、各ころが離脱しにくくて、組み立てが容易で、かつ、外輪を外した際にも、ころが離脱しにくい総ころ軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の総ころ軸受は、
軌道面と、この軌道面の一端側に位置する鍔部とを有する内輪と、
軌道面を有する外輪と、
第1端面と、上記内輪の軸方向において、上記第1端面よりも上記内輪の上記軌道面の一端側に位置する第2端面とを有し、上記内輪の上記軌道面と、上記外輪の上記軌道面との間に配置された複数のころと、
上記内輪の外周面において上記内輪の上記軌道面の他端側に位置する部分に、外嵌されて固定された保持リングと
を備え、
上記各ころは、上記第1端面から突出する突出部を有し、
上記内輪の周方向において隣接する2つの上記ころは、接触可能であり、
上記保持リングは、上記突出部を係止可能な係止部を有していることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、各ころは、第1端面から突出する突出部を有し、かつ、内輪の外周面に嵌合されて固定された上記保持リングが、上記突出部を係止可能な係止部を有しているから、各ころが、内輪から無制限に離れようとしても、上記各ころの突出部が、上記保持リングの係止部によって係止されて、各ころが内輪か無制限に離脱しにくくなる。したがって、組み立て時において外輪を組み付ける際に、各ころが内輪から離脱しにくいから、外輪を容易に内輪アッセンブリ(内輪、複数のころおよび保持リングからなるアッセンブリ)に組み付けできる。したがって、総ころ軸受の組み立てを容易に行うことができる。
【0009】
また、一度組み立てられた総ころ軸受において、外輪を取り外す必要が生じた際にも、各ころが内輪から無制限に離脱しにくくなるから、総ころ軸受の点検等を容易に行うことができる。
【0010】
すなわち、ころを内輪と一体の部材として取り扱うころができるから、総ころ軸受の取り扱い性を格段に向上させることができるのである。
【0011】
また、本発明によれば、周方向に隣接するころが接触可能であって保持器を有さない構成であるから、負荷容量を格段に向上させることができると共に、破損部品を削減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の総ころ軸受によれば、組み立て時の外輪の組み付けの際に、各ころが内輪から無制限に離脱しにくくて、組み立てを容易に行うことできると共に、外輪を外した際における、ころの内輪からの無制限の離脱を抑制できる。
【0013】
また、本発明の総ころ軸受によれば、周方向に隣接するころが接触可能であって保持器を有さない構成であるから、負荷容量を格段に向上させることができると共に、破損部品を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態の総ころ円錐ころ軸受の軸方向の断面図である。
【0016】
総ころ軸受の一例としてのこの総ころ円錐ころ軸受(以下、実施形態において、単に、円錐ころ軸受という)は、図1に示すように、軸受鋼製の外輪1、内輪2、複数の円錐ころ3、および、環状の金属製の保持リング4を備える。
【0017】
外輪1は、軌道面の一例としての円錐軌道面11を有する一方、内輪2は、軌道面の一例としての円錐軌道面12と、この円錐軌道面12の小径側(軌道面の他端側に相当)に位置する小鍔部13と、円錐軌道面12の大径側(軌道面の一端側に相当)に位置する大鍔部14とを有する。
【0018】
上記円錐ころ3は、第1端面30と、第2端面31と、突出部32とを有する。上記第2端面31は、軸方向(正確には内輪2の軸方向)において第1端面30よりも内輪2の円錐軌道面12の一端側である大径側に位置している。上記第1端面30および第2端面31の径方向の外方の端は、円形の形状を有している。上記第2端面31の端の直径は、第1端面30の端の直径よりも大きくなっている。上記複数の円錐ころ3は、外輪1の円錐軌道面11と、内輪2の円錐軌道面12との間に、周方向(内輪2の周方向)に隣接する各2つの円錐ころが互いに接触できる状態で、周方向に配置されている。
【0019】
上記突出部32は、略円柱形状をしている。上記突出部32の軸中心は、円錐ころ3の軸中心に略一致している。上記突出部32は、各円錐ころ3の第1端面30の略中央部から円錐ころ3の軸方向に突出している。
【0020】
上記保持リング4は、断面略コ字状の形状を有している。上記保持リング4は、小径筒部40と、円板部41と、大径筒部42とを有し、上記小径筒部40の外周面の外径は、大径筒部42の内周面の内径よりも小さくなっている。上記小径筒部40の軸方向の寸法と、上記大径筒部42の軸方向の寸法とは、略同一であり、小径筒部40の外周面と、大径筒部42の内周面とは、小径筒部40の径方向に、その径方向に重なるように対向している。
【0021】
上記円板部41は、小径筒部40の径方向に延在している。上記円板部41は、小径筒部40の外周面の軸方向の一方の側の端部と、大径筒部42の軸方向の上記一方の側の端部との間を接続している。
【0022】
上記保持リング4の小径筒部40の内周面は、内輪2の外周面において、内輪2の円錐軌道面12よりも内輪2の円錐軌道面12の他端側である小径側の部分に、圧入により外嵌されて固定されている。すなわち、上記保持リング4の小径筒部40の内周面は、内輪2の外周面の部分に、締まり嵌めにより外嵌されて固定されている。
【0023】
上記内輪2の外周面は、小鍔部13の円錐軌道面12側とは、反対側に、小鍔部13の外周面に段部を介して連なる円筒面からなる保持リング取付面45を有している。上記小鍔部13の外周面の外径は、保持リング取付面45の外周面の外径よりも大きくなっている。
【0024】
上記保持リング4の小径筒部40の内周面は、この保持リング取付面45に締まり嵌めにより外嵌されて固定されている。上記小径筒部40の軸方向の円板部41側とは反対側の端面は、上記段部に当接している。このようにして、保持リング4の軸方向の位置決めを行っている。
【0025】
図1に示すように、上記円錐ころ3の突出部32の一部は、大径筒部42の内周面に径方向に重なっている。上記円錐ころ3の突出部32の一部は、保持リング4の小径筒部40、円板部41および大径筒部42によって囲まれた空間に位置している。このようにして、円錐ころ軸受において、外輪1を取り外した際に、円錐ころ3が内輪2から無制限に離れることを防止している。
【0026】
詳しくは、内輪2の大鍔部14のころ案内面50で、円錐ころ3の第2端面31の一部を支えると共に、突出部32を、保持リング4で係止することにより、外輪1を取り外した際に、円錐ころ3が内輪2から無制限に離れることを防止するようにしている。上記保持リング4の大径筒部42の内周面は、突出部32を係止可能な係止部を構成している。
【0027】
上記第1実施形態の円錐ころ軸受によれば、各円錐ころ3は、第1端面30から突出する突出部32を有し、かつ、保持リング4が、突出部32を係止可能な係止部を有しているから、各円錐ころ3が、内輪2から無制限に離れようとしても、各円錐ころ3の突出部32が、保持リング4の係止部によって係止されて、各円錐ころ3が内輪2から無制限に離脱しにくくなる。したがって、組み立て時の外輪1を組み付ける際に、各円錐ころ3が内輪2から無制限に離脱しにくいから、外輪1を容易に内輪アッセンブリ(内輪2、複数の円錐ころ3および保持リング4からなるアッセンブリ)に組み付けできる。したがって、円錐ころ軸受の組み立てを容易に行うことができる。
【0028】
また、一度組み立てられた円錐ころ軸受において、外輪1を取り外す必要が生じた際にも、各円錐ころ3が内輪2から無制限に離脱しにくくなる。したがって、円錐ころ軸受の点検等を容易に行うことができる。
【0029】
すなわち、上記第1実施形態の円錐ころ軸受によれば、円錐ころ3を内輪2と一体の部材として取り扱うころができるから、円錐ころ軸受の取り扱い性を格段に向上させることができるのである。
【0030】
また、上記第1実施形態の円錐ころ軸受によれば、周方向に隣接する円錐ころ3が接触可能であって保持器を有さない構成であるから、負荷容量を格段に向上させることができると共に、破損部品を削減することができる。
【0031】
尚、上記第1実施形態の円錐ころ軸受では、保持リング4の小径筒部40の軸方向の一方の側の端部が、内輪2の段部に当接する構成であったが、この発明では、保持リングの小径筒部の軸方向の両側の端部が、内輪の段部に当接していない構成であっても良い。
【0032】
また、上記第1実施形態の円錐ころ軸受では、保持リング4において、小径筒部40の軸方向の寸法と、大径筒部42の軸方向の寸法とが、同一であったが、この発明では、保持リングにおいて、小径筒部の軸方向の寸法と、大径筒部の軸方向の寸法とは、異なっていても良い。
【0033】
また、上記第1実施形態の円錐ころ軸受では、保持リング4において、大径筒部42の内周面が、円筒面であったが、この発明では、保持リングにおいて、大径筒部の内周面は、円錐面等、円筒面以外の環状面であっても良い。
【0034】
また、上記第1実施形態の円錐ころ軸受では、内輪2の外周面の円錐軌道面12の他端側である小径側に小鍔部13が存在していたが、この発明では、内輪の外周面の円錐軌道面の小径側に小鍔部が存在していなくても良い。
【0035】
図2は、本発明の第2実施形態の円錐ころ軸受の軸方向の断面図である。
【0036】
第2実施形態の円錐ころ軸受では、第1実施形態の円錐ころ軸受の構成部と同一構成部には、同一参照番号を付して説明を省略することにする。また、第2実施形態の円錐ころ軸受では、第1実施形態の円錐ころ軸受と共通の作用効果および変形例については説明を省略することにし、第1実施形態の円錐ころ軸受と異なる構成、作用効果および変形例についてのみ説明を行うことにする。
【0037】
図2に示すように、第2実施形態の円錐ころ軸受では、円錐ころ103が、第1突出部132および第2突出部133を有している。上記第1突出部132は、円錐ころ103の他端側である小径側の第1端面130から突出している一方、第2突出部133は、円錐ころ103の一端側である大径側の第2端面131から突出している。
【0038】
また、第2実施形態の円錐ころ軸受は、第1保持リング4および第2保持リング104を有している。上記第1保持リング4は、内輪102の外周面において、円錐軌道面112の小径側の部分に締まり嵌めにより外嵌されている一方、第2保持リング104は、内輪102の外周面において、円錐軌道面112の大径側の部分に締まり嵌めにより外嵌されて固定されている。尚、上記第1保持リング4は、第1実施形態の保持リング4と同一である。
【0039】
上記内輪102の外周面は、小鍔部113の円錐軌道面112側とは、反対側に、小鍔部113の外周面に段部を介して連なる円筒面からなる第1保持リング取付面145を有し、小鍔部113の外周面の外径は、第1保持リング取付面145の外周面の外径よりも大きくなっている。
【0040】
上記第1保持リング4の小径筒部の内周面は、この第1保持リング取付面145に締まり嵌めにより外嵌されて固定されている。上記第1保持リング4の小径筒部の軸方向の円板部側とは反対側の端面は、内輪102の上記段部に当接している。このようにして、第1保持リング4の軸方向の位置決めを行っている。
【0041】
上記第2保持リング104は、断面略コ字状の形状を有している。上記第2保持リング104は、小径筒部140と、円板部141と、大径筒部142とを有し、上記小径筒部140の外周面の外径は、大径筒部142の内周面の内径よりも小さくなっている。上記小径筒部140の軸方向の寸法は、大径筒部142の軸方向の寸法よりも小さくなっている。上記円板部141は、小径筒部140の径方向に延在している。上記円板部141は、小径筒部140の外周面の軸方向の一方の側の端部と、大径筒部142の軸方向の上記一方の側の端部との間を接続している。
【0042】
図2に示すように、上記大径筒部142の円板部141側とは反対側の端部は、小径筒部140の円板部141側とは反対側の端部よりも軸方向の内方に位置している。
【0043】
上記内輪102の外周面は、大鍔部114の円錐軌道面112側とは、反対側に、大鍔部114の外周面に段部を介して連なる円筒面からなる第2保持リング取付面165を有し、大鍔部114の外周面の外径は、第2保持リング取付面165の外周面の外径よりも大きくなっている。
【0044】
上記第2保持リング104の小径筒部140の内周面は、この第2保持リング取付面165に締まり嵌めにより外嵌されて固定されている。上記第2保持リング104の小径筒部140の軸方向の円板部141側とは反対側の端面は、内輪102の上記段部に当接している。このようにして、第2保持リング104の軸方向の位置決めを行っている。
【0045】
上記第2突出部133の一部は、第1保持リング104の大径筒部142の内周面に、径方向に重なっている。上記第1保持リング4の大径筒部の内周面、および、第2保持リング104の大径筒部142の内周面の夫々は、突出部132,133を係止可能な係止部を構成している。
【0046】
上記第2実施形態の円錐ころ軸受によれば、円錐ころ103が、内輪102から離れようとした場合において、円錐ころ103の軸方向の両側で、第1および第2保持リング4,104で、円錐ころ103の第1および第2突出部132,133を係止できるので、内輪102、円錐ころ103および第1,第2保持リング4,104からなる内輪アッセンブルから、円錐ころ103が離脱することを完全に防止できる。
【0047】
尚、上記第2実施形態の円錐ころ軸受によれば、第2保持リング104の小径筒部140の軸方向の一方の側の端部が、内輪102の段部に当接する構成であったが、この発明では、第2保持リングの小径筒部の軸方向の両側の端部が、内輪の段部に当接していない構成であっても良い。
【0048】
また、上記第2実施形態の円錐ころ軸受では、第2保持リング104において、小径筒部40の軸方向の寸法と、大径筒部42の軸方向の寸法とが、異なっていたが、この発明では、第2保持リングにおいて、小径筒部の軸方向の寸法と、大径筒部の軸方向の寸法とが同一であっても良い。
【0049】
また、上記第2実施形態の円錐ころ軸受では、第2保持リング104において、大径筒部142の内周面が、円筒面であったが、この発明では、保持リングにおいて、大径筒部の内周面は、円錐面等、円筒面以外の環状面であっても良い。
【0050】
図3は、本発明の第3実施形態の円錐ころ軸受の軸方向の断面図である。
【0051】
第3実施形態の円錐ころ軸受では、第2実施形態の円錐ころ軸受の構成部と同一構成部には、同一参照番号を付して説明を省略することにする。また、第3実施形態の円錐ころ軸受では、第1実施形態の円錐ころ軸受と共通の作用効果および変形例、および、第2実施形態の円錐ころ軸受と共通の作用効果および変形例については説明を省略することにし、第1実施形態および第2実施形態の円錐ころ軸受と異なる構成、作用効果および変形例についてのみ説明を行うことにする。
【0052】
第3実施形態の円錐ころ軸受は、円錐ころ203の構造のみが、第2実施形態の円錐ころ軸受と異なる。
【0053】
第3実施形態では、円錐ころ203は、本体部240およびピン241からなる。上記本体部240は、円錐外周面229、および、軸方向の2つの端面である第1端面230および第2端面231を有する。また、上記本体部240は、貫通穴250を有する。上記貫通穴250は、上記円錐外周面229の中心軸に沿って軸方向に延在している。上記貫通穴250は、円筒内周面253を有している。上記円錐外周面229の中心軸は、貫通穴250の円筒内周面253の中心軸に略一致している。
【0054】
上記ピン241は、略円柱状の形状を有している。上記ピン241の円筒外周面の外径は、貫通穴250の内周円筒面253の内径よりも若干大きくなっている。上記ピン241は、本体部240の貫通穴250に圧入により挿入されている。上記ピン241の軸方向の寸法は、貫通穴250の軸方向の寸法よりも大きくなっている。
【0055】
図3に示すように、上記ピン240の軸方向の一端部260は、本体部240の第1端面230よりも軸方向の外方に位置し、かつ、ピン240の軸方向の他端部261は、本体部240の第2端面231よりも軸方向の外方に位置している。
【0056】
上記ピン240において、本体部240の第1端面230よりも軸方向の外方に位置している部分、および、本体部240の第2端面231よりも軸方向の外方に位置している部分の夫々は、円錐ころ203の突出部を構成している。
【0057】
上記ピン240の軸方向の一端部260は、第1保持リング4の大径筒部の内周面に径方向に重なっており、ピン240の軸方向の他端部261は、第2保持リング104の大径筒部の内周面に径方向に重なっている。上記第1保持リング4の大径筒部の内周面、および、第2保持リング104の大径筒部の内周面の夫々は、係止部を構成している。
【0058】
上記第3実施形態によれば、円錐ころ203の突出部を、ピン240において、本体部240の第1,第2端面230,231よりも径方向の外方に位置している部分で構成しているから、円錐ころ203の突出部を容易に形成することができる。
【0059】
尚、第1実施形態の円錐ころ軸受において、円錐ころ3を、第3実施形態において用いた円錐ころ203に置き換えただけの円錐ころ軸受が、本願発明の一実施形態を構成することは言うまでもない。また、この場合において、ピンが本体部の第1端面のみから突出し、ピンが本体部の第2端面から突出していない点だけが、第3実施形態の円錐ころ203と異なる円錐ころを使用することができることも言うまでもない。
【0060】
また、上記第1乃至第3実施形態では、ころが、円錐ころであったが、この発明では、ころは、円筒ころや、球面ころ(凸面ころ)等の円錐ころ以外のころであっても良く、本発明の総ころ軸受は、総ころ円筒ころ軸受や、総ころ球面ころ軸受であっても良い。
【0061】
尚、ころが円筒ころである総ころ円筒ころ軸受の場合においては、上記第2および第3実施形態のように、円筒ころの第1端面側と第2端面側の両方に保持リングを設けることが好ましい。一方、ころが円錐ころである総ころ円錐ころ軸受の場合には、円錐ころの両側に保持リングを設ける形態(第2および第3実施形態)であっても、内輪の円錐軌道面の小径側のみに保持リングを設ける形態(第1実施形態)であってもどちらでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態の総ころ円錐ころ軸受の軸方向の断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態の総ころ円錐ころ軸受の軸方向の断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態の総ころ円錐ころ軸受の軸方向の断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 外輪
2,102 内輪
3,103,203 円錐ころ
4 保持リング
11,12,112 円錐軌道面
14,114 大鍔部
30,130,230 第1端面
31,131,231 第2端面
32,132,133 突出部
104 第2保持リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道面と、この軌道面の一端側に位置する鍔部とを有する内輪と、
軌道面を有する外輪と、
第1端面と、上記内輪の軸方向において、上記第1端面よりも上記内輪の上記軌道面の一端側に位置する第2端面とを有し、上記内輪の上記軌道面と、上記外輪の上記軌道面との間に配置された複数のころと、
上記内輪の外周面において上記内輪の上記軌道面の他端側に位置する部分に、外嵌されて固定された保持リングと
を備え、
上記各ころは、上記第1端面から突出する突出部を有し、
上記内輪の周方向において隣接する2つの上記ころは、接触可能であり、
上記保持リングは、上記突出部を係止可能な係止部を有していることを特徴とする総ころ軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−168212(P2009−168212A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9125(P2008−9125)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】