説明

総コレステロールおよびLDLコレステロール値を低下させる大豆ペプチドを用いる生成物および方法

対照研究では、大豆関連のペプチドを使用した生成物および関連方法が個体の総コレステロール値およびLDLコレステロール値を低下させることが実証されている。本開示の一例示的実施形態においては、ルナシンペプチドを消費する個体のコレステロール値を低下させるルナシンペプチドの有効量を含有する生成物が提供される。本開示の別の例示的実施形態においては、ルナシンペプチドまたはルナシンペプチド誘導体の有効量および1つ以上の酵素阻害剤を含む組成物が提供される。本開示の関連する例示的実施形態においては、個体におけるコレステロール値を低下させるまたは低減する方法が提供され、前記方法では、個体にルナシンペプチドの有効量を含有する生成物が提供され、該生成物が、該組成物を消費する個体のコレステロール値、総コレステロール値、LDLコレステロール値または脂質値を低下させるまたは低減すると主張される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願)
本願は、2006年9月16日に出願された米国仮特許出願第60/966,529号(先の米国特許出願第11/532,526号)に対する優先権を主張する。米国仮特許出願第60/966,529号は、参考として本明細書中に援用される。本願はさらに、2007年7月17日に出願された米国仮特許出願第61/007,925号(先の米国特許出願第11/879,249号)に対する優先権を主張する。米国仮特許出願第61/007,925号は、参考として本明細書中に援用される。
【0002】
2006年9月16日に出願された米国特許出願第11/532,528号は、その全体が、全ての目的のために、本明細書中に参考として援用される。
【0003】
(発明の分野)
本発明は一般的に、個体におけるコレステロール関連病態を治療するための組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、種々の健康に関連する利益を個体に提供するペプチドのクラス、および前記ペプチドを含む組成物に関する。より具体的には、本発明は、大豆ペプチドを含む新規組成物、前記組成物を使用して個体の総コレステロール値およびLDLコレステロール値を低下させる方法、および前記ペプチドを含む組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
冠動脈性心疾患(CHD)は、米国における大きな健康上の問題であり、死亡率が年間100万人を超えている。危険因子には、喫煙および高血圧が含まれるが、血漿コレステロールの上昇がCHDの主要な危険因子として関わっている。総コレステロールおよび低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールの高値は、アテローム斑の形成に寄与し、最終的には血栓症または心筋梗塞に寄与する。それゆえ、コレステロール値の管理は、冠動脈性心疾患の発生率、死亡率および罹患率を減らすための予防および治療策において最も重要な部分を占める。
【0005】
特定の大豆タンパク質の消費などの食事の要因が特定の個体でコレステロール値を管理し、CHDのリスクを低減するのに役立つという実質的な疫学的エビデンスがある。いくつかの疫学試験では、大豆食品の消費が、一部のアジア人集団における心血管疾患のリスク低減に関連することが明らかにされている(1)。より最近になって、中国人女性75,000名を対象とした3年間の大規模コホート研究では、大豆食品の摂取と冠動脈性心疾患(特に非致死性心筋梗塞)のリスク低減との用量反応関係が明らかにされている(2)。730名の調査ボランティアを含む38の臨床試験を組み入れたメタアナリシスの結果からは、大豆タンパク質の摂取に関連して、血清コレステロール値が9.3%減少し、血清LDLコレステロール値が12.9%減少し、血清トリグリセライド値が10.5%減少したが、高密度リポタンパク質(HDL)値の増加は無視できる程度であったことが明らかにされている(3)。大豆タンパク質が関わる実験の臨床結果により、米国食品医薬品局(FDA)は、飽和脂肪やコレステロールの低い日々の食事の一部としての大豆タンパク質25gが心疾患のリスクを低減し得ると記載した食品ラベルの健康強調表示を承認することとなった。
【0006】
コレステロール低下作用に寄与する可能性のある大豆の候補成分には、大豆タンパク質、ならびに非タンパク質成分のサポニンおよびイソフラボン(ゲニステインおよびダイドゼイン)が含まれる。残念なことに、一連の実験データでは、これらの成分のいずれがコレステロール低下作用をもたらすかが依然として不明であることが示されている。多くの場合、大豆イソフラボンが動物のコレステロール低減の原因であると仮定されている。実際、数多くの研究において、動物(4〜6)およびヒト(7、8)のコレステロール値を低減する大豆イソフラボンの役割に焦点が当てられている。興味深いことに、これらおよび他の研究では、大豆イソフラボンがいかなるコレステロール低下作用ももたらさないことが示されている。例えば、一研究において、大豆タンパク質の非存在下でイソフラボンに富んだ大豆抽出物をカニクイザルに与えた場合、いかなるコレステロール低下作用も生じなかった(9)。
【0007】
いくつかの研究では、大豆タンパク質を単に動物の飼料に加えただけで、コレステロールの顕著な減少が観察された(10)。また、イソフラボンに起因する現実性ある心保護作用機序に対する懸念(11〜13)により、CHDのリスクを低減するイソフラボンの役割に対する熱意が削がれている。また、トリテルペンまたはステロイド配糖体の構造的に異なる群であるサポニンも、コレステロール低下活性の原因となる可能性がある大豆成分として提唱されている(14)。しかし、サポニンが大豆のコレステロール低下活性の原因となることを示す説得力ある動物またはヒト研究も、現実性のある作用機序も存在しない。同様のことが主要な大豆蓄積タンパクである7Sグロブリンにも当てはまり、これは、マウスのアテローム性動脈硬化を抑制することが認められているものの、コレステロール低下作用は示さなかった(15)。
【0008】
2006年2月、米国心臓協会は、FDAが健康強調表示を承認してから発表された最近の臨床データを解析することによって、大豆タンパク質、イソフラボンおよび心臓血管の健康に関する科学的な勧告書を公表した(16)。大豆イソフラボンに関する19件の研究のうち、概してイソフラボンが低密度リポタンパク質コレステロール(「LDLコレステロール」)やその他の脂肪の危険因子に対して作用を示さないことを、米国心臓協会は発見した。勧告書では、1日のタンパク質摂取量の半分を超える「きわめて大量の大豆タンパク質」は、動物タンパク質混合物の1日のタンパク質と置き換えると、LDLコレステロールを数パーセントポイント低下させ得ると結論付けている。このエビデンスでは、原因となる栄養分として大豆イソフラボンよりもむしろ大豆タンパク質が支持されている。しかし、この時点で、大豆の別の成分が活性因子であり得るという可能性を除外することはできない。したがって、大豆タンパク質のどの成分がCHDのリスクを低減する有益なコレステロール低下作用をもたらすかは依然として不明である。その結果、大豆タンパク質を使用してコレステロールを低下させる現在の方法は、目標とするものでもなければきわめて効果的なものでもない、種々の結果をもたらしている。
【0009】
上記の臨床試験で報告され、FDAによって支持された大豆生成物の使用に関するさらなる欠点は、有益な結果を得るためには大量(25mg/日)の大豆生成物が必要である点である。大豆生成物の所望の部分を十分量得やすくして、このような大豆生成物の調製および包装をより実現可能にする、より濃縮された組成物を得るのが望ましいと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、個体の総コレステロールおよびLDLコレステロールを効果的に低減する組成物および関連方法の改善が必要とされている。本発明は、これらおよびその他の関連する利益を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語および語句を以下に定義する。特に定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語、表記および他の科学用語は、本発明が関係する当業者が通常理解する意味を有するものとして意図される。場合により、通常理解する意味を有する用語が、明確にするためおよび/またはすぐに参照するために本明細書で定義されるが、このような定義が本明細書に包含されることは、当該技術分野で通常理解されるものとの実質的な違いを表すと必ずしも解釈してはならない。本明細書に記載または参照される一般技術および手順は、通常、当業者により詳細に理解されており、従来の方法を使用して共通して採用されている。通常、市販のキットおよび試薬の使用に関わる手順は、特に明記されない限り、製造業者の定めるプロトコルおよび/またはパラメータに従って適宜実施される。
【0012】
本明細書で使用する「a」、「an」および「the」という単数形は、特に明記されない限り、複数の言及を含む。例えば、「a protease enzyme inhibitor」は、1つ以上のプロテアーゼ酵素阻害剤を含む。
【0013】
本明細書で使用する「μg」はマイクログラムの省略形であり、「μM」はマイクロモルの省略形である。
【0014】
本明細書で使用する「生物活性」および「生理活性」は、化合物のin vivo活性、または化合物、組成物もしくは他の混合物のin vivo投与時に生じる生理反応を指す。したがって、生物活性は、このような化合物、組成物および混合物の治療効果および薬学的活性を包含する。また、生物活性は、このような活性を試験または使用するために設計されたin vitro系で観察および測定される場合もある。
【0015】
本明細書で使用する「生物学的に活性な」という用語は、天然のルナシン分子の構造的、調節的および/または生化学的機能を有する分子を指す。
【0016】
本明細書で使用する「組み合わせ」は、2つ以上の項目の間のいずれかの結び付きを指す。
【0017】
本明細書で使用する「疾患に罹患する」という用語は、被験体(例えば、ヒト)が特定の疾患を経験していることを指す。本発明はいずれかの徴候もしくは症状、または疾患に限定されるものとして意図されず、したがって、本発明は、いずれかの範囲の疾患(例えば、無症状の発現から十分に発達した疾患まで)を経験している被験体であって、特定の疾患に関連する少なくともいくらかのしるし(例えば、徴候および症状)を呈する、被験体を包含するものとして意図される。
【0018】
本明細書で使用する「疾患」、「障害」および「病態」という用語は、生存する動物またはその器官もしくは組織のいずれかの正常状態の障害であって、正常な機能の実行を中断または変更する障害に関連し、環境因子(例えば、栄養失調、工業災害または気候)、特定の病原体(例えば、蠕虫、細菌またはウイルス)、生体の固有の欠陥(例えば、種々の遺伝子異常)またはこれらおよび他の因子の組み合わせの反応となり得る、状態、徴候および/または症状を説明するために交換可能に使用される。
【0019】
本明細書で使用する「有効量」という用語は、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な組成物(例えば、ルナシンを含む)の量を指す。有効量は、1回以上の投与、塗布または投薬で投与することができ、特定の調合または投薬経路に限定されるものとして意図されない。
【0020】
本明細書で使用する「投与」および「投与する」という用語は、薬物、プロドラッグもしくは他の薬剤、または治療的処置(例えば、本発明の組成物)を被験体(例えば、被験体またはin vivo、in vitroもしくはex vivo細胞、組織および器官)に与える行為、および/またはいずれかの目的(好ましくは、本明細書に記載の目的)への組成物の使用を指示、指導もしくは助言する行為を指す。1つ以上の本発明の組成物の投与が指示、指導または助言される場合、このような指示は、組成物の使用が本明細書に記載の利益の1つ以上を提供し得るおよび/または提供することを使用者に指導および/または報告するものであり得る。
【0021】
人体への例示的な投与経路は、目(眼内)、口(経口)、皮膚(局所または経皮)、鼻(経鼻)、肺(吸入)、口腔粘膜(口腔内)、耳、直腸、膣を介するもののほか、注射(例えば、静脈内、皮下、腫瘍内、腹腔内)によるものなどであってよい。
【0022】
指示される投与は、例えば、口頭による指示(例えば、医師、医療従事者、営業部員もしくは組織、および/またはラジオもしくはテレビ媒体(すなわち、広告)からの口頭による指示を介したもの)、または書面による指示(例えば、医師もしくはその他の医療従事者(例えば、手書き)、営業部員もしくは組織(例えば、マーケティング小冊子、パンフレット、または他の指導ツール)、書面の媒体(例えば、インターネット、電子メールまたは他のコンピュータ関連媒体)、および/または組成物に関連する包装(例えば、組成物を含む包装上に存在するラベル)からの書面による指示を介したもの)を含み得る。本明細書で使用する「書面による」は、単語、図、記号および/または他の可視の記述子を介することを含む。このような指示は、本明細書で使用される実際の単語を利用する必要はなく、むしろ同一または類似の意味を伝える単語、図、記号などの使用が本発明の適用範囲内で企図される。
【0023】
本明細書で使用する「同時投与」および「同時投与する」という用語は、被験体への少なくとも2つの薬剤(例えば、ルナシンと1つ以上の他の薬剤(例えば、プロテアーゼ酵素阻害剤)とを含む組成物)または療法の投与を指す。いくつかの実施形態において、2種以上の薬剤または療法の同時投与は同時に行われる。他の実施形態においては、第1の薬剤/療法が、第2の薬剤/療法の前に投与される。使用される種々の薬剤または療法の調合および/または投与経路は変動する場合があることを、当業者は理解する。同時投与に適切な用量は、当業者が容易に決定することができる。いくつかの実施形態において、薬剤または療法が同時投与される場合、それぞれの薬剤または療法は、これらの単独投与に適した用量よりも少ない用量で投与される。したがって、同時投与は、薬剤もしくは療法の同時投与によって有害(例えば、毒性)な可能性がある薬剤の必要量が低減される実施形態、および/または2種以上の薬剤の同時投与によって他の薬剤の同時投与による前記薬剤の内の1つの有益な作用に対する被験体の感作が惹起される実施形態において、特に望ましい。
【0024】
本明細書で使用する「治療」という用語または文法上の相当語句は、疾患(例えば、心疾患)の症状の改善および/または反転を包含する。したがって、本発明のスクリーニング法で使用される場合に疾患に関連するいずれかのパラメータの改善を引き起こす組成物を、治療組成物として特定される場合がある。「治療」という用語は、治療的処置および予防または防止措置を指す。例えば、本発明の組成物および方法による治療から利益が得られる者には、すでに疾患および/または障害(例えば、コレステロール値の上昇)を有する者、ならびに(例えば、本発明の予防的処置を使用して)疾患および/または障害を予防する者が含まれる。
【0025】
本明細書で使用する「疾患のリスクがある」という用語は、特定の疾患を経験する素因のある被験体(例えば、ヒト)を指す。この素因は、遺伝的(例えば、遺伝的障害などの疾患を経験する特定の遺伝的傾向)である場合もあれば、他の因子(例えば、年齢、体重、環境条件、環境に存在する有害化合物への曝露)による場合もある。したがって、本発明はいずれか特定のリスクに限定されるものとして意図されず、また本発明はいずれか特定の疾患に限定されるものとして意図されることもない。
【0026】
本明細書で使用する「個体」、「宿主」、「被験体」および「罹患体」という用語は、研究、解析、検査、診断または治療されるヒトおよび非ヒト動物(例えば、霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、齧歯類、家禽、魚類、甲殻類があるがこれらに限定されない)を含むがこれらに限定されない、いずれかの動物を指す。本明細書で使用する「個体」、「宿主」、「被験体」および「罹患体」という用語は、特に明記されない限り、交換可能に使用される。
【0027】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、抗原決定基に特異的に結合し、これらの産生を促進する抗原決定基と同一であるか構造的に関連するタンパク質に特異的に結合するいずれかの免疫グロブリンを指す。したがって、抗体は、これらの産生を促進する抗原を検出するためのアッセイで有用であり得る。モノクローナル抗体は、Bリンパ球(すなわち、B細胞)の単一クローンに由来し、一般的には構造および抗原特異性が均一である。ポリクローナル抗体は、抗体産生細胞の多くの異なるクローンから生じるため、それらの構造およびエピトープ特異性は異種であるものの、すべてが同じ抗原を認識する。また、「抗体」という用語は、いずれかの供給源(例えば、ヒト、齧歯類、非ヒト霊長類、ウサギ、ヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジ)から得られるいずれかの免疫グロブリン(例えば、IgG、IgM、IgA、IgE、IgD)を包含するものとして意図される。
【0028】
本明細書で使用する「抗原」という用語は、抗体により認識することができるいずれかの物質に関して使用される。
【0029】
本明細書で使用する「ウェスタンブロット」、「ウェスタン免疫ブロット」、「免疫ブロット」および「ウェスタン」という用語は、膜支持体上に固定されているタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの免疫学的分析を指す。最初に、タンパク質をポリアクリルアミドゲル電気泳動(すなわち、SDS‐PAGE)で分解するによってタンパク質を分離した後、タンパク質をゲルから固体支持体(例えば、ニトロセルロースまたはナイロン膜)に移す。次に、固定したタンパク質を、対象となる抗原に対して反応性を有する抗体に曝露する。抗体(すなわち、一次抗体)の結合を、一次抗体に特異的に結合する二次抗体を使用することによって検出する。通常、二次抗体は、着色した反応生成物の産生によって抗原‐抗体複合体を視覚化させるか、発光酵素反応(例えば、ECL試薬、Amersham)を触媒する酵素に結合する。
【0030】
「化合物」という用語は、疾患、疾病、病気、または身体機能の障害を治療または予防するために使用することができる、いずれかの化学物質、医薬品、および薬物などを指す。化合物は、既知および潜在的な治療化合物を含む。化合物は、本明細書に記載のポリペプチドなどのポリペプチドを含む。
【0031】
本明細書で使用する「毒性の」という用語は、毒物の投与前に同一の細胞または組織と比べた被験体、細胞または組織に対するいずれかの不利益または有害な作用を指す。
【0032】
本明細書で使用する「医薬組成物」という用語は、活性薬剤(例えば、ルナシン)と、組成物をin vitro、in vivoまたはex vivoでの診断または治療用途に特に適切にする担体(不活性または活性)との組み合わせを指す。
【0033】
本明細書で使用する「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という用語は、被験体に投与した場合に、有害反応(例えば、毒性、アレルギー性、または免疫学的反応)を実質的に示さない組成物を指す。
【0034】
本明細書で使用する「局所的に」という用語は、皮膚の表面、ならびに粘膜細胞および組織(例えば、歯槽、口腔、舌、咀嚼器官、または鼻粘膜、ならびに中空器官または体腔の内側を覆う他の組織および細胞)への本発明の組成物の塗布を指す。
【0035】
本明細書で使用する「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、乳濁液(例えば、油/水乳濁液または水/油乳濁液)、種々の型の湿潤剤、いずれかおよびすべての溶剤、分散媒、コーティング剤、ラウリル硫酸ナトリウム、等張および吸収遅延剤、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)を含むがこれらに限定されない、標準的な医薬担体のいずれかを指す。組成物はまた、安定剤および防腐剤も含み得る。担体の例としては、安定剤およびアジュバントがある(例えば、参考として本明細書で援用される、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.,Mack Publ.Co.,Easton,Pa.(1975)を参照)。
【0036】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチド、前駆体またはRNA(例えば、rRNA、tRNA)の産生に必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNA)の配列を指す。ポリペプチドは、全長コード配列によって、または全長もしくは断片の所望の活性もしくは機能特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達、免疫原性)が保持される限り、コード配列のいずれかの部分によってコードされ得る。本用語はまた、遺伝子が全長mRNAの長さに対応するように、いずれかの末端側〜約1kb以上離れた5’末端および3’末端上のコード領域に隣接して位置する構造遺伝子および配列のコード領域も包含する。コード領域の5’側に位置し、mRNA上に存在する配列は、5’非翻訳配列と呼ばれる。コード領域の3’側または下流に位置し、mRNA上に存在する配列は、3’非翻訳配列と呼ばれる。「遺伝子」という用語は、cDNAおよび遺伝子のゲノム形態の両方を包含する。遺伝子のゲノム形態またはクローンは、「イントロン」、「介在領域」または「介在配列」と呼ばれる非コード配列で遮断されたコード領域を含む。イントロンは、核RNA(hnRNA)に転写される遺伝子断片であり、イントロンはエンハンサーなどの調節エレメントを含み得る。イントロンは、核または一次転写産物から除去されるか、「スプライシングされる」ため、イントロンはメッセンジャーRNA(mRNA)転写産物中に存在しない。転写時にmRNAは、新生ポリペプチド中のアミノ酸の配列または順序を特定するように機能する。
【0037】
本明細書で使用する「遺伝子発現」および「発現」という用語は、遺伝子の「転写」により(すなわち、RNAポリメラーゼの酵素作用を介して)遺伝子中にコードされた遺伝情報をRNA(例えば、mRNA、rRNA、tRNA、またはsnRNA)に変換するプロセス、およびタンパク質コード遺伝子の場合は、mRNAの「翻訳」により前記情報をタンパク質に変換するプロセスを指す。遺伝子発現は、前記プロセスの多くの段階で調節することができる。「上方調節」または「活性化」は、遺伝子発現産物(例えば、RNAまたはタンパク質)の産生を増加させるおよび/または増強する調節を指すのに対して、「下方調節」または「抑制」は、産生を低減する調節を指す。上方調節または下方調節に関与する分子(例えば、転写因子)は、それぞれ「活性化因子」および「抑制因子」と呼ばれることが多い。
【0038】
本明細書で使用する「プロモータ/調節配列」という用語は、プロモータ/調節配列に操作可能に結合する遺伝子産物の発現に必要な核酸配列を意味する。場合により、この配列が中心的なプロモータとなる場合もあれば、この配列がエンハンサー配列および遺伝子産物の発現に必要とされる他の調節エレメントを含む場合もある。プロモータ/調節配列は、例えば、組織に特異的な様式で遺伝子産物を発現する配列であり得る。
【0039】
本明細書で使用する「細胞培養物」という用語は、いずれかのin vitro細胞培養物を指す。本用語の範囲内に含まれるものとしては、連続継代細胞系(例えば、不死化表現型の細胞系)、初代細胞培養物、形質転換細胞系、有限細胞系(例えば、非形質転換細胞)、およびin vitroで維持されるその他いずれかの細胞集団がある。
【0040】
本明細書で使用する「in vitro」という用語は、人工的環境、および人工的環境内で行われるプロセスまたは反応を指す。In vitro環境は、試験管および細胞培養物から構成され得るが、これらに限定されない。「in vivo」という用語は、自然環境(例えば、動物または細胞)、および自然環境内で行われるプロセスまたは反応を指す。
【0041】
本明細書で使用する「アミノ酸」は、以下の表1に列挙する標準の名称を有する天然アミノ酸のいずれかを指す。また、本用語は既知の合成アミノ酸も指す。特に記載がない限り、本開示に列挙されるすべてのアミノ酸配列は、アミノ末端からカルボキシル末端への順序で列挙される。本明細書で使用するいずれかの保護基、アミノ酸および他の化合物の省略形は、特に記載がない限り、これらの一般的な用法、承認された省略形、またはIUPAC‐IUB Commission on Biochemical Nomenclatureと一致する(Biochemistry 11:1726(1972)を参照)。本明細書で使用するアミノ酸残基は、下表に記載するその正式名称、それに対応する3文字コード、またはそれに対応する1文字コードによって表される。
【0042】
【表1A】

【0043】
【表1B】

本明細書で使用する「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語はすべて、共有結合形の「ペプチド結合」により連結したアミノ酸の一次配列を指す。一般的にペプチドは、数個のアミノ酸、典型的には2〜50個のアミノ酸から構成される。「ペプチド」という用語は、ペプチドおよびタンパク質を包含し、この場合の「タンパク質」という用語は、典型的には大きなポリペプチドを指し、「ペプチド」という用語は、典型的には短いポリペプチドを指す。いくつかの実施形態において、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は合成であるのに対し、他の実施形態において、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は組換えまたは天然である。「合成」ペプチドは、人工的手段によりin vitroにて産生される(すなわち、in vivoにて産生されなかった)ペプチドである。さらに「ペプチド」という用語は、修飾アミノ酸(天然または非天然を問わない)もさらに含むが、このような修飾には、リン酸化、グリコシル化、ペグ化、脂質化およびメチル化が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
「単離ペプチド」とは、細胞内で天然に共存する成分(例えば、DNA、RNA、他のタンパク質およびペプチド、炭水化物および脂質)から実質的に分離しているペプチドである。
【0045】
ポリペプチドに適用される「実質的な同一性」という用語は、2つのペプチド配列が、欠失ギャップ量を使用して例えばGAPプログラムまたはBESTFITプログラムにより最適に整列させた場合に、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%以上の配列同一性(例えば、99%の配列同一性)を共有することを意味する。好ましくは、同一でない残基の位置は、保存的アミノ酸置換により異なる。
【0046】
「機能的に同等の」という語句は、ポリペプチドの変異体、類似体または断片がルナシンポリペプチドと共通する所望の生物活性を保持することを意味する。本発明の少なくとも1つの実施形態において、ルナシンと共通する所望の生物活性とは、コレステロール、LDLコレステロール、総コレステロールまたは脂質の産生または既存の値の制御、安定化または低減に関連する生物活性である。好ましくは、一定量の類似体、変異体または断片は、前記類似体、変異体または断片が由来する天然のルナシンの当量と少なくとも10%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50、60、80、90、95または99%同程度有効である。類似体、変異体または断片の相対的有効性の判定は、本発明の1つ以上のアッセイ法で所定量の類似体、変異体または断片を利用し、次いでヒストンH3のアセチル化を阻害するか、HMG Co‐A還元酵素、Sp1もしくはLDL受容体の発現を生じさせる試料の能力を測定する試験において天然のルナシンと類似体、変異体または断片の能力とを比較することによって容易に実施することができる。
【0047】
ポリペプチドに関して本明細書で使用する「類似体」という用語は、本発明のポリペプチドの誘導体であるポリペプチドを意味し、この場合の誘導体は、前記ポリペプチドが以下で特定するルナシンポリペプチドと実質的に同一の機能を保持するように行われる、1つ以上のアミノ酸の付加、欠失および/または置換を含む。
【0048】
「断片」という用語は、完全長ルナシンポリペプチドの構成要素であり、完全長ルナシンポリペプチドと共通する定性的な生物活性を有するポリペプチド分子を指す。断片は、完全長ルナシンポリペプチドに由来する場合もあれば、あるいはその他いくつかの手段(例えば、化学合成)によって合成される場合もある。「断片」においては、長さが少なくとも5個、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも20個、および最も好ましくは少なくとも30、40または50個のアミノ酸からなり、かつ前記アミノ酸が断片となるタンパク質と機能的に同等であるタンパク質の断片を包含することが意図される。
【0049】
本明細書で使用する「変異体」という用語は、ルナシンをコードする核酸から産生されるが、改変されたアミノ酸配列を有するように異なって加工されている点で野生型ルナシンと異なるポリペプチドを指す。例えば、変異体は、野生型ルナシンを産生するものの代替となる一次RNA転写産物のスプライシングパターンによって産生され得る。
【0050】
類似体および変異体は、元のタンパク質のアミノ酸配列と好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも85、90、95、98、99または99.9%同一のアミノ酸配列を生じるように1つ以上のアミノ酸の付加、欠失または置換によって類似体および変異体が誘導されるタンパク質と異なるアミノ酸配列を有するタンパク質を包含するものとして意図される。類似体または変異体は、特に多型変異体および種間類似体を含む。本発明の類似体および変異体はさらに、置換アミノ酸が類似の構造または化学特性を有する「保存的」変化も有し得る。保存的アミノ酸置換の一種は、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり、脂肪族‐ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびトレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニンおよびヒスチジンであり、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。好適な保存的アミノ酸置換基は、バリン‐ロイシン‐イソロイシン、フェニルアラニン‐チロシン、リジン‐アルギニン、アラニン‐バリン、およびアスパラギン‐グルタミンである。より稀には、変異体が「非保存的」変化(例えば、グリシンのトリプトファンによる置換)も含み得る。また、類似の軽微な変異には、アミノ酸の欠失または挿入(すなわち、付加)、またはそれらの両方が含まれ得る。生物活性を損うことなくどのアミノ酸残基をいくつ置換、挿入または欠失させ得るかを判定する手引きは、当該技術分野で周知のコンピュータプログラム(例えば、DNAStarソフトウェア)を使用して見出すことができる。変異体は、以下の実施例に記載のような機能的アッセイで検査することができる。
【0051】
本明細書で使用する「保存的アミノ酸置換」という用語は、ポリペプチド鎖(タンパク質の一次配列)内における1つのアミノ酸と類似の特性を有する別のアミノ酸との置換または交換を指す。例えば、類似に帯電したアミノ酸のアスパラギン酸(Asp)の、荷電したアミノ酸のグルタミン酸(Glu)による置換は、保存的アミノ酸置換であると考えられる。
【0052】
本明細書で使用する「ルナシン」は、(配列番号1)に記載される天然の、合成または組換えにより得られる大豆ルナシンポリペプチドを指す。ルナシンペプチドのさらなる説明および種々の機能的に同等の断片および類似体の評価については、すべての目的において全体が参考として本明細書で援用される、米国特許第6107287号、米国特許第6544956号、2002年11月22日出願の米国特許出願第2003/0229038号、米国特許第6391848号、2002年9月23日出願の米国特許出願第10/252256号、および2002年11月22日出願の米国特許出願第10/302633号に記載されている。これらの開示は、ルナシンの機能的に同等で、生物学的に活性な断片、変異体および類似体を特定する際に、当業者の手引きとなるであろう。
【0053】
本明細書で使用する「ルナシンに富んだ」とは、生物学的に活性なレベルの天然ルナシンまたはルナシンの天然類似体を、すなわち、ルナシンまたは類似体の供給源として使用される物質中にルナシンが含まれる濃度よりも高い濃度で含有する組成物を指す。本明細書で使用する「ルナシンに富んだ種子抽出物」とは、生物学的に活性なレベルの天然ルナシンまたはルナシンの天然類似体を、すなわち、供給源の種子中にルナシンが天然に含まれる濃度の少なくとも2倍の濃度で含有する組成物を指す。本発明の組成物のいずれか特定の供給源に本発明を限定するものではないが、ルナシンに富んだ組成物は、市販されるものかどうかにかかわらず、大豆、小麦、大麦、大豆分離物、大豆濃縮物、または他の大豆由来生成物から得ることができる。
【0054】
本明細書で使用する「ルナシン保護大豆粉」とは、大豆粉と、ルナシンまたはその類似体、変異体もしくは断片を完全な消化から保護するのに十分な量のプロテアーゼ阻害剤とを含む大豆粉組成物であって、本組成物を摂取した個体に有害反応を生じ得るレベルの栄養分吸収阻止要素を有さない大豆粉組成物を指す。
【0055】
本明細書で使用する「消化された」とは、ポリペプチドをその成分のアミノ酸に分解する消化物質によりポリペプチドを処理することを指す。使用できる消化物質の例は、当該技術分野で周知であり、パンクレアチン、ならびにトリプシン、キモトリプシン、ペプシン、プロテイナーゼK、サーモリシン、トロンビン、Arg‐Cプロテイナーゼ、Asp‐Nエンドペプチダーゼ、Asp‐Nエンドペプチダーゼ+N末端Glu、BNPS‐Skatole、CNBr、クロストリパイン、ギ酸、グルタミルエンドペプチダーゼ、ヨードソ安息香酸、LysC、LysN、NTCB(2‐ニトロ‐5‐チオシアノ安息香酸)およびブドウ球菌ペプチダーゼなどの他のプロテアーゼを含むが、これらに限定されない。
【0056】
ポリペプチドに関して本明細書で使用する「部分的に消化された生物学的に活性な」とは、ポリペプチドの生物活性を増強する条件下で消化物質によりポリペプチドを処理することを指す。
【0057】
「併用療法」という語句は、本発明の組成物を、障害を治療または予防する適応がある別の医薬品とともに、これらの治療薬の相互作用により有益な作用を提供することを意図した特定の治療法の一部として投与することを包含する。
【0058】
本明細書では、本発明で利用される種々の成分を含む成分の商品名が参照されている。本明細書の発明者は、特定の商品名の物質によって限定されることを意図していない。商品名によって参照される物質と等価の物質(例えば、異なる名前または参照番号の異なる供給源から得られる物質)が、本明細書の説明で代用および利用され得る。
【0059】
本明細書の組成物は、本明細書に記載される要素のいずれかを含み得るか、これらから本質的に構成され得るか、またはこれらから構成され得る。
【0060】
本発明の実施においては、特に記載がない限り、当該技術分野の技術範囲内に含まれる分子生物学(組換え技法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、免疫学およびタンパク質動態の従来技法が利用されるであろう。このような技法は、以下の文献に詳細に説明されている:Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook et al.,1989)Cold Spring Harbor Press、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984)、Methods in Molecular Biology,Humana Press、Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987)、Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press、Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993‐8)J.Wiley and Sons、Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.)、Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.)、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987)、PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al.,eds.,1994)、Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991)、Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999)、およびMass isotopomer distribution analysis at eight years:theoretical,analytic and experimental considerations by Hellerstein and Neese(Am J Physiol 276(Endocrinol Metab.39)E1146‐E1162,1999)(これらはすべて全体が参考として本明細書で援用される)。さらに、市販のアッセイキットおよび試薬を使用する手順は、特に明記されない限り、典型的には製造業者規定のプロトコルに従って使用される。
【0061】
本開示は、個体における総コレステロール値およびLDLコレステロール値を低下させるために大豆関連ペプチドを使用する生成物および関連方法に関する。
【0062】
一実施形態において、本発明は、個体におけるコレステロール値を低下させる方法であって、コレステロール値を低下させることを希望または必要とする個体、ならびに配列番号2のペプチドおよび前記ペプチドの機能的に同等の変異体、断片または類似体からなる群から選択される化合物を含む組成物を提供することと、前記被験体に前記組成物を投与することとを含む、方法を提供する。特定の実施形態において、化合物は、大豆、小麦もしくは大麦から、または組換えDNA法を使用して前記化合物を産生、抽出および精製することにより、または合成ポリペプチドの産生により得られる。特定の実施形態において、個体はヒトである。特定の実施形態において、投与は組成物の経口摂取を含み、特定の実施形態において、組成物は、カプセル剤、錠剤、散剤、半固形製剤、液体、ゲル、懸濁液またはエアゾールスプレーの形態である。特定の実施形態において、組成物は、大豆粉もさらに含む。特定の実施形態において、大豆粉は、ルナシン保護大豆粉である。特定の好適な実施形態において、組成物は、キモトリプシン阻害剤もさらに含む。特定の実施形態において、化合物は、毎日0.05mg/kg〜50mg/kgにて前記個体に投与される。特定の実施形態において、個体は、アテローム性動脈硬化、動脈硬化症、心筋梗塞、心臓発作、糖尿病、冠動脈性心疾患、狭心症または不安定狭心症のリスクを有する。
【0063】
別の実施形態において、本発明は、心血管疾患を治療または予防する方法であって、心血管疾患に罹患するまたは前記疾患を発症するリスクがある個体、ならびに配列番号2のペプチドおよび前記ペプチドの機能的に同等の変異体、断片または類似体からなる群から選択される化合物を含む組成物を提供することと、前記被験体に前記組成物を投与することとを含む、方法を提供する。特定の実施形態において、化合物は、大豆、小麦もしくは大麦から、または組換えDNA法を使用して前記化合物を産生、抽出および精製することにより、または合成ポリペプチドの産生により得られるか、あるいは前記個体はヒトである。特定の実施形態において、投与は組成物の経口摂取を含み、特定の実施形態において、組成物は、カプセル剤、錠剤、散剤、半固形製剤、液体、ゲル、懸濁液またはエアゾールスプレーの形態である。特定の実施形態において、組成物は、大豆粉もさらに含む。特定の好適な実施形態において、組成物は、キモトリプシン阻害剤もさらに含む。特定の実施形態において、化合物は、毎日0.05mg/kg〜50mg/kgにて前記個体に投与される。特定の実施形態において、個体は、アテローム性動脈硬化、動脈硬化症、心筋梗塞、心臓発作、糖尿病、冠動脈性心疾患、狭心症または不安定狭心症のリスクを有する。
【0064】
別の実施形態において、本発明は、配列番号1の部分的に消化された生物学的に活性なペプチドを含む組成物を提供する。特定の実施形態において、組成物はまた、キモトリプシン阻害剤も含む。特定の実施形態において、組成物は、大豆粉もさらに含む。
【0065】
別の実施形態において、本発明は、個体の皮膚を治療する方法であって、a)i)個体およびii)請求項23に記載の組成物を提供することと、b)請求項23に記載の組成物を個体に局所投与することとを含む、方法を提供する。
【0066】
別の実施形態において、本発明は、ルナシンに富んだ種子抽出物および大豆粉を含む組成物を提供する。特定の実施形態において、ルナシンに富んだ種子抽出物と大豆粉の重量比は、a)ルナシンに富んだ種子抽出物90%対大豆粉10%から、b)ルナシンに富んだ種子抽出物60%対大豆粉40%、好ましくはルナシンに富んだ種子抽出物70%対大豆粉30%の間である。特定の実施形態において、大豆粉は、キモトリプシン阻害剤を含む。特定の実施形態において、ルナシンは、0.5重量%〜5重量%の組成物の濃度で組成物中に存在する。
【0067】
別の実施形態において、本発明は、ルナシンの生物活性を改善する方法であって、a)ルナシンを提供することと、b)前記ルナシンを部分的に消化することとを含む、方法を提供する。特定の実施形態において、大豆粉は、ルナシンが消化されている間に存在する。
【0068】
別の実施形態において、本発明は、個体のコレステロール値を低下させるまたは低減する方法であって、配列番号2のペプチドおよび配列番号2の機能的に同等の断片、変異体または類似体からなる群から選択されるペプチドを含有する生成物を提供することと、前記生成物が組成物を消費する個体においてコレステロール値、総コレステロール値、LDLコレステロール値または脂質値を低減するまたは維持すると主張することとを含む、方法を提供する。特定の実施形態において、ペプチドは、大豆、小麦もしくは大麦から、または組換えDNA法を使用して前記化合物を産生、抽出および精製することにより、または合成ポリペプチドの産生により得られる。特定の実施形態において、個体はヒトである。特定の実施形態において、投与は組成物の経口摂取を含み、特定の実施形態において、組成物は、カプセル剤、錠剤、散剤、半固形製剤、液体、ゲル、懸濁液またはエアゾールスプレーの形態である。特定の実施形態において、組成物は、大豆粉もさらに含む。特定の好適な実施形態において、組成物は、キモトリプシン阻害剤もさらに含む。特定の実施形態において、組成物は、毎日25mg/kg〜100mg/kgにて前記個体に投与される。特定の実施形態において、個体は、アテローム性動脈硬化、動脈硬化症、心筋梗塞、心臓発作、糖尿病、冠動脈性心疾患、狭心症または不安定狭心症のリスクを有する。
【0069】
別の実施形態において、本発明は、コレステロール値を低減または維持する方法であって、前記低減または維持を必要とするヒトに生物学的に活性な量の配列番号2のペプチドを提供することを含む、方法を提供する。
【0070】
本発明の一例示的実施形態においては、生成物を消費する個体におけるコレステロール値を低下させるルナシンペプチドの有効量を含有する生成物が提供される。
【0071】
本発明の別の例示的実施形態においては、ルナシンペプチドまたはルナシンペプチド誘導体の有効量、および組成物を消費する個体のコレステロール値を低下させるためにともに作用する1つ以上の酵素阻害剤を含有する組成物が提供される。
【0072】
本発明のさらに別の例示的実施形態においては、個体のコレステロール値を低下または低減する方法が提供される。本方法は、個体にルナシンペプチドの有効量を含有する生成物を提供することと、本生成物が組成物を消費する個体においてコレステロール値、総コレステロール値、LDLコレステロール値または脂質値を低下させる、低減するまたは維持すると主張することとを含む。
【0073】
本発明の少なくとも一実施形態の一態様において、個体のコレステロール値を低下させるルナシンペプチドおよび/またはルナシン誘導体ペプチドの有効量は、1日25mg〜100mgであるが、但し、大豆タンパク質が平均0.1%のルナシンを含有し、少なくとも1日25gmの大豆タンパク質がヒトのLDLコレステロールを低減することが臨床的に証明されていることを前提とする。
【0074】
本発明の少なくとも1つの実施形態の別の態様において、個体において低下させるコレステロール値は、LDLコレステロール値および総コレステロール値である。
【0075】
本発明の少なくとも1つの実施形態のさらに別の態様において、ルナシンペプチドは、ルナシンペプチドまたはルナシンペプチド誘導体を含む。
【0076】
本発明の少なくとも1つの実施形態のさらに別の態様において、ルナシンペプチドは、大豆から得られる。
【0077】
本発明の少なくとも1つの実施形態のさらに別の態様において、ルナシンペプチドは、大豆および他の種子植物から得られる。
【0078】
本発明の少なくとも1つの実施形態のさらに別の態様において、ルナシンペプチドまたはルナシンペプチド誘導体は、組換えDNA法を使用してルナシンペプチドまたはルナシンペプチド誘導体を産生、抽出および精製することにより得られる。
【0079】
本発明の少なくとも1つの実施形態のさらに別の態様において、ルナシンペプチドまたはルナシンペプチド誘導体は、合成塩基配列決定法により得られる。
【0080】
本発明の少なくとも1つの実施形態のさらに別の態様において、1つ以上の酵素阻害剤は、1つ以上のトリプシン阻害剤を含む。
【0081】
本発明の少なくとも1つの実施形態のさらに別の態様において、以下の実施例に記載のアッセイは、ルナシン分離物、濃縮物、抽出物、類似体、断片および変異体をスクリーニングして、本発明の方法でこれらを使用する前に所望の活性を確認するために使用することができる。本発明は、大豆分離物、濃縮物および抽出物、ならびにルナシンの変異体、断片および類似体をスクリーニングして、本発明の組成物および方法で使用するのに好適な活性を有するものを特定するために活性を測定する方法を包含し、これにより、本明細書に記載のものと類似の実験が、ルナシンの代わりにルナシン類似体、断片または変異体を使用して実施され、それによって本発明で使用するルナシンの類似体、変異体および断片の活性レベルをスクリーニングする簡便な方法が当業者に教示される。
【0082】
本開示の上述の特徴および目的は、同じ参照番号が同じ要素を示す添付の図面と併せて記載された以下の説明を参照することにより、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】Gm2S 1 cDNA(配列番号2)によってコードされた2Sアルブミンタンパク質を示す。矢印は、小サブユニット(ルナシン)(配列番号2)および大サブユニット(メチオニンに富んだタンパク質)を生じるエンド型タンパク質分解部位を示す。両サブユニットの重要な領域を示す。
【図2】ステロール調節因子結合タンパク質(SREBP)を活性化するために無コレステロール培地(CFM)で24時間インキュベートする前に、ルナシンで24時間処理したHepG2細胞(CFM+LS(24))または処理していないHepG2細胞(CFM)におけるHMG‐CoA還元酵素の相対的な発現レベルを示す、ウェスタンブロット解析の写真(上図)と、デンシトメータ値を示す表(下図)である。インキュベーション後、総タンパク質を抽出し、10μgのタンパク質を10%トリス‐グリシンゲル上に充填して、ニトロセルロース膜上に電気ブロットし、HMG‐CoA還元酵素およびアクチンに対して産生される一次抗体で免疫染色した(タンパク質の等しい充填を示すため)。スポットデンシトメータ値は、3件別々の実験データの平均および標準偏差を表す。
【図3】SREBPを活性化するために無コレステロール培地(CFM)で24時間インキュベートする前に、ルナシンで24時間処理したHepG2細胞(CFM+LS(24))または処理していないHepG2細胞(CFM)におけるLDL受容体の相対的な発現レベルを示す、ウェスタンブロット解析の写真(上図)と、デンシトメータ値を示す表(下図)である。インキュベーション後、総タンパク質を抽出し、10μgのタンパク質を10%トリス‐グリシンゲル上に充填して、ニトロセルロース膜上に電気ブロットし、LDL受容体およびアクチンに対して産生される一次抗体で免疫染色した(タンパク質の等しい充填を示すため)。スポットデンシトメータ値は、3件別々の実験データの平均および標準偏差を表す。
【図4】培養培地を、新しい培養培地(Media)、ルナシン含有培地(Media+LS)、またはルナシン含有の無コレステロール培地(CFM+LS)もしくはルナシン非含有の無コレステロール培地(CFM)と交換する前に、培養培地で集密から24時間培養したHepG2細胞におけるSp1の相対的な発現レベルを示す、ウェスタンブロット解析の写真(上図)と、デンシトメータ値を示す表(下図)である。次いで試料を記載の通り24時間または48時間インキュベートした。インキュベーション後、総タンパク質を抽出し、10μgのタンパク質を10%トリス‐グリシンゲル上に充填して、ニトロセルロース膜上に電気ブロットし、Sp1およびアクチンに対して産生される一次抗体で免疫染色した(タンパク質の等しい充填を示すため)。スポットデンシトメータ値は、1件の実験データを表す。
【図5】市販される5種類の大豆タンパク質供給源(A〜E)から抽出した20μgサイズの大豆タンパク質試料、ならびに0.25μg、0.5μgおよび1.0μgの合成ルナシン試料を示す、Coomasieブルーで染色したSDS‐PAGEゲルのデジタル画像(I)とウェスタンブロット解析の写真(II)である。各5kDaのルナシンバンドを矢印で示す。
【図6】0.5μg、1.0μgおよび1.5μgの合成ルナシンの試料と比較した、ルナシンに富んだ種子抽出物(特に、調合したルナシンに富んだ大豆濃縮物(LeSC)、大豆粉(SF)、および大豆粉を補充したLeSC(LeSC+SF)(LeSCおよびLeSC+SFの調合および開発については、以下の実施例4を参照))のタンパク含有量および(特に興味深い点として)ルナシン含有量のウェスタンブロット解析の写真である。
【図7】大豆タンパク質の種々の抽出物、濃縮物および分離物の生物活性に対するパンクレアチンによる消化の作用を示す、ウェスタンブロット解析の写真である。ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)アッセイを使用して、生物活性を判定した。各列は以下を表す:LeSC(A)、LeSC+SF(B)、消化LeSC+SF(C)、消化LeSC(D)、消化大豆タンパク質分離物(E)、および消化大豆濃縮物(F)。ニワトリ赤血球に由来するコアヒストンを、HATアッセイの陰性対照列およびテンプレート(Temp‐)ヒストンとして使用した。陽性対照列は、最大のヒストンアセチル化を生じたHATアッセイの未処理(Untrt)テンプレートコアヒストンが該当する。弱いシグナルは、試料がヒストンH3のアセチル化を防止したことから、生理活性を有することを示す。強いシグナルは、試料が不活性であったため、ヒストンH3のアセチル化のレベルに影響を及ぼさなかったことを示す。
【図8】大豆粉の存在下または非存在下におけるルナシンに富んだ大豆濃縮物の生物活性に対するパンクレアチンによる消化の作用を示す、ウェスタンブロット解析の写真である。HAT生理活性アッセイは、PCAF触媒HAT反応のテンプレート/陰性対照(temp(‐))としてHeLa細胞に由来する酸抽出コアヒストンを使用して実施した。陽性対照としては、酪酸ナトリウム(NaB)で処理したHeLa細胞に由来するコアヒストンを使用した。PCAFによるヒストンH3アセチル化に対する合成ルナシン(+synL)の阻害作用を使用して、LeSC(A)、消化LeSC(A Dig)、LeSC+SF(B)、および消化LeSC+SF(B Dig)の作用を比較した。記号の下の数値は、HeLaコアヒストンテンプレート(temp(‐))の免疫シグナルを使用して正規化したデンシトメータの相対的測定値を示す。低い数値は生物活性を示す。
【図9】トリプシンおよび/またはキモトリプシン阻害剤の存在下および非存在下におけるルナシンに富んだ大豆濃縮物に対するパンクレアチンによる消化の作用を示す、ウェスタンブロット解析の写真である。トリプシン阻害剤を含むルナシンに富んだ大豆濃縮物(LeSC+Try)、およびトリプシン+キモトリプシン阻害剤を含むLeSC(LeSC+Try+Chy)の試料を、パンクレアチンで消化し、ルナシン抗体で免疫染色した。合成ルナシン(0.8μg、0.4μg、0.2μg)および不消化LeSCを対照として含めた。
【図10】PCAF触媒HAT反応のテンプレートとしてニワトリ赤血球細胞に由来するコアヒストンを使用して実施したHAT生理活性アッセイ(図6)の結果を示す、ウェスタンブロット解析の写真である。未処理の陰性対照(‐synL)における最大のヒストンアセチル化と比較した、PCAFによるヒストンH3アセチル化に対する合成ルナシン(+synL)の阻害作用を対照として使用し、ルナシンに富んだ大豆濃縮物(LeSC)(A)、トリプシンおよびキモトリプシン阻害剤を含むLeSC(B)、トリプシン阻害剤を含むLeSC(C)に対する消化の作用を比較した。また、未消化LeSC(D)および未消化LeSC+大豆粉(E)も含めた。記号の下の数値は、未消化LeSC(D)の免疫シグナルを使用して正規化したデンシトメータの相対的測定値を示す。低い数値は、試料の生物活性が認められることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0084】
本発明は一般的に、個体におけるコレステロール関連病態を治療するための組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、種々の健康に関連する利益を個体に提供するペプチドのクラス、および前記ペプチドを含む組成物に関する。より具体的には、本発明は、大豆ペプチドを含む新規組成物、前記組成物を使用して個体の総コレステロール値およびLDLコレステロール値を低下させる方法、および前記ペプチドを含む組成物を製造する方法に関する。
ルナシン
ルナシンは、新規のクロマチン結合特性および遺伝子発現に対する後成的作用を有する大豆(glycine max)中に最近発見された生理活性成分である(17、18)。ルナシンは、子葉特異的2Sアルブミンの小サブユニットペプチドである。図1には、2Sアルブミンタンパク質(配列番号1)および小ルナシンサブユニット(配列番号2)が示されている。ルナシン大豆ペプチドは、耐熱性で、水溶性であり、選択された大豆タンパク質製剤中に多量に含まれ、重要なガイダンスが、ルナシンを分離または濃縮するための大豆および大豆生成物の供給源の選択に関する文献に提供されている(19)。
【0085】
本明細書において、ルナシンは、コレステロール低下作用を有する大豆の活性成分として特定されている。とりわけコレステロールを低減するための組成物、ならびにルナシンを製造および使用する方法についても記載されている。
【0086】
この発見により、これまでコレステロール低減への大豆生成物の使用を困難にしてきたいくつかの問題が解決される。これまではコレステロール低減のための大豆の活性成分が特定されていなかったため、大豆生成物で選択することができなかった。そのため、これまでは、毎日大量の大豆を摂取する必要があったが、それでもコレステロールのわずかな減少しか認められなかった。現在は、高濃度のルナシンを含む大豆組成物が提供され、これにより、より少ない用量で治療の有効性を向上させ、より一貫した治療結果を得ることが可能となっている。
【0087】
さらに、個体に大量の大豆を提供することに伴う加工および包装上の問題が対処され、現在では種々の調合物が入手できるようになっている。
【0088】
ルナシンは、RGD細胞接着モチーフを介して哺乳類の上皮細胞に入り、脱アセチル化ヒストンと優先的に結合し、ヒストンH3およびH4のアセチル化を阻害する能力を有することが、研究により明らかにされている(20)。また、細胞形質転換、ホルモンに対する反応、ならびに食事および環境作用は、DNAのメチル化‐脱メチル化およびヒストンのアセチル化‐脱アセチル化の可逆的プロセスによって調整される遺伝子発現の後成的変化に関与するというエビデンスが得られ始めている(21、22)。
【0089】
ルナシンは、ヒストンアセチラーゼ阻害剤として特定された最初の天然物質であるが、ヒストンアセチラーゼ酵素に直接影響は及ぼさない。ルナシンは、ヒストンH3およびH4のN末端尾部の特定の脱アセチル化されたリジン残基に結合し、これらをヒストンアセチル化の基質として利用できなくさせることによって、H3およびH4のアセチル化を阻害する(20)。作用機序が解明されたことで、ルナシンは、重要な生物学的プロセスにおける後成学およびクロマチン修飾の新しい役割を解明する調査研究にとって重要な分子となっている。
【0090】
カリフォルニア大学デービス校で行われた前立腺発癌に対するルナシンの作用に関する研究により、ヒストンH4の修飾および化学発癌抑制遺伝子の上方調節に対するルナシンの作用が明らかとなった(23)。しかし、生物系における脱アセチル化H3 N末端尾部に結合するルナシンの特異的作用、およびH3ヒストンアセチル化の阻害については、現在のところ確認されていない。
【0091】
血液中の大部分の循環コレステロールは、体内で合成されるため、HMG‐CoA還元酵素(コレステロール生合成のための律速酵素)によって触媒されるコレステロールの体内産生、および肝臓細胞膜中のLDL受容体量は、LDLコレステロール値を調整する上で重要な因子である(33)。
【0092】
脱アセチル化ヒストンH3に結合するルナシンの特異的生体作用、およびアセチル化の阻害を判定するために、ステロール調節因子結合タンパク質(SREBP)によるコレステロール生合成において関与する遺伝子の誘導を、生体モデルとして使用した。この生体モデルを選択した理由は、ステロール枯渇によりSREBPが活性化されると、HMG‐CoA還元酵素(コレステロール生合成のための律速酵素)およびLDL受容体遺伝子のプロモータ/調節配列に最も近いクロマチンにおいて、ヒストンアセチラーゼ酵素P300/CBP結合因子(PCAF)により、ヒストンH3のアセチル化が増大するものの、ヒストンH4のアセチルは増大しないためである(24)。さらに、SREBPが活性化されると、HMG‐CoA還元酵素遺伝子のプロモータ/調節配列への共調節因子サイクリックアデノシン一リン酸応答要素結合(CREB)の補充、およびLDL受容体遺伝子のプロモータ/調節配列へのSp1の補充も増大する(24)。
【0093】
In vitroにおけるヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)アッセイ(以下の実施例8に記載)に関する本発明者等の研究により、ルナシンは、ヒストンアセチラーゼ酵素(PCAF)によるヒストンH3のアセチル化を顕著に阻害することが明らかにされている。HepG2肝細胞を使用した細胞培養物実験により、合成ルナシンは、スタチン型コレステロール低下薬の作用と同様に、無コレステロール培地中でHMG‐CoA還元酵素の発現を顕著に低減し、LDL受容体遺伝子の発現を増大させ得ることが明らかにされている(以下の実施例1)。また、本発明者等の研究では、無コレステロール培地中で、LDL受容体発現の増大がSp1発現の増大と一致することも明らかにされている(以下の実施例2)。
【0094】
本発明をいずれか特定の作用機序または作用様式に限定することを意図するものではないが、ルナシンは、HMG‐CoA還元酵素の発現の活性化に必要となるヒストンアセチラーゼ酵素(PCAF)によるヒストンH3のアセチル化を低減し、LDL受容体の発現を増大させるという分子作用機序が、記載の実験に基づき提案されている。それゆえ、ルナシンは、1)コレステロール低下スタチン薬によって酵素活性が低減されるHMG‐CoA還元酵素の遺伝子発現を阻害することと、2)血中LDLコレステロールのクリアランスを増加させるLDL受容体発現を増大させることとによって、総コレステロール値およびLDLコレステロール値を低減することができる。
【0095】
さらに、実施例に示す通り、ルナシンの生物活性は、大豆タンパク質の消費とLDLコレステロール値および心血管疾患リスクの低下とを結びつける大規模な疫学および臨床データによってもさらに裏付けられている(3)。大豆タンパク質においてルナシンがコレステロール低下特性をもたらす主成分として特定されたことで、心臓の健康への利益を最大限高めるように大豆タンパクの成分を最適に活用することが容易になる。
【0096】
以前に発表されたデータでは、異なる大豆の種類、大豆タンパク質濃縮物および大豆タンパク質分離物におけるルナシンの含有量が、調製により互いに著しく異なることが実証されている(19)。本発明をいずれか特定の作用様式または機序に限定することを意図するものではないが、本データから、ルナシンは、大豆タンパク質のコレステロール低下特性を解明する現実性ある分子作用機序を有する大豆に由来した唯一の生理活性剤であることが見受けられる(実施例1および2に後述)。また、本データは、米国心臓協会の学術報告書に引用される広範な臨床結果を解明する上でも役立つ(16)。現在、ルナシンは、種々の大豆タンパク質製剤中に種々の量で存在することが知られているため(19)、大豆タンパク質分離物を使用した以前の研究、さらには高濃度の大豆タンパク質を試験した研究においても認められた、コレステロール低下作用に関する予測不可能な結果、および用量依存作用の欠如は、ルナシン量の変動もしくは消化中にルナシンを保護するキモトリプシン阻害剤の不在のいずれか、またはこれら2つの因子の組み合わせに起因する可能性があると見受けられる。
【0097】
ルナシンが個体におけるコレステロールを低減し、LDLコレステロール低下の原因となる大豆成分であるという本発明者等の驚くべき所見は、50%の大豆粉と50%の大豆タンパク質濃縮物を混合させた場合に、臨床試験で最高のLDLコレステロール低減率(低減率20〜30%)が報告されたことを示す実験により、さらに裏付けられている(26、27)。市販される種々の供給源においてルナシンの濃度および生物活性は変化するものの、ルナシンの種々の供給源の中では大豆タンパク質濃縮物が、生理活性ルナシンの収率が高いことが、いくつかの実験で明らかにされている(実施例4および参考文献(19)を参照)。本発明の好適な実施形態において、大豆タンパク質濃縮物は、本発明の組成物および方法で使用されるルナシンの供給源である。
【0098】
例えば、上述の臨床試験で使用されたもののように大豆タンパク質混合物中に大豆粉が含まれると、摂取時に消化および分解からルナシンを保護することが本書で明らかにされている(実施例5を参照)。また、大豆粉と混合したルナシンに富んだ種子抽出物の部分消化も、ルナシンの生理活性を増大させることが明らかにされている(実施例6)。
【0099】
以下では、大豆粉が、消化作用による生物活性の低減からルナシン含有組成物の生物活性を保護することが明らかにされている。また、トリプシン阻害剤、および具体的には大豆粉で見られるキモトリプシン阻害剤(34)が、消化の有害作用からルナシン含有組成物の生物活性を保護することも、本発明者等は発見した。本発明をいずれかの作用機序または作用様式に限定することを意図するものではないが、上述の臨床研究では、大豆粉中に内因性キモトリプシン阻害剤を含めたことで、ルナシンが消化から保護され、ルナシンペプチドは本研究に参加した個体の肝臓および血液における生物学的利用能が高くなり、これによって最高のLDLコレステロール低減率が得られたと考えられる。
【0100】
大豆タンパク質のコレステロール低下作用は、個体の血漿LDLコレステロール値を顕著に低下させるために必要となる、ルナシンの適切な吸着および肝臓への送達を最適にする調合物を開発することによって、さらに増大させることができる。本発明の好適な実施形態は、大豆粉もしくはキモトリプシンまたはこれら2つの組み合わせとともにルナシンを含む組成物、このような組成物を使用および製造する方法を包含する。
【0101】
ルナシンは、無子葉特異的2Sアルブミンの小サブユニットペプチドである。図1には、2Sアルブミンタンパク質(配列番号1)および小ルナシンサブユニット(配列番号2)が示されている。哺乳動物細胞内のルナシン遺伝子の構成的発現により、動原体の形成が妨げられ、有糸分裂が破壊されることにより、細胞死がもたらされることが明らかにされている(18)。哺乳類の細胞培養物に外部からルナシンペプチドが加えられると、ルナシンペプチドは、化学発癌物質および腫瘍遺伝子によって誘発される、正常細胞から癌性病巣への変換を抑制する。その化学発癌抑制の作用機序を解明するために、本発明者等は、ルナシンが(a)RGD細胞接着モチーフを介して内在化され、(b)前中期のテロメア中において低アセチル化クロマチンと共局在化し、(c)他のクロマチン結合タンパク質で見られる構造保存性ヘリカルモチーフの存在下で促進される、脱アセチル化ヒストンH4に優先的に結合し、(d)ヒストンH3およびH4のアセチル化を阻害し、(e)E1Aトランスフェクト細胞のアポトーシスを誘発することを明らかにした(20)。これらの結果に基づき、ルナシンが核内に入り、脱アセチル化ヒストンと結合し、それらのアセチル化を防止し、Rb腫瘍抑圧遺伝子およびhラス腫瘍遺伝子によって制御されるもののような遺伝子発現を阻害する、新規の化学発癌抑制機序が提案されている。
【0102】
マイクロアレイ実験では、ルナシンを使用しても負の遺伝子変化がわずかまたは全く生じないことが実証されている。ルナシン治療に伴う遺伝子変化を判定するために、合成ルナシンで治療した非腫瘍形成性(RWPE‐1)および腫瘍形成性(RWPE‐2)前立腺細胞の遺伝子発現プロフィールを、マイクロアレイ解析を使用して評価した。結果では、調査した14,500個の遺伝子の内で123個の遺伝子が、2μMのルナシンに24時間曝露した細胞で、2倍を超える発現量の変化が見られたことが示されている(23)。これらの遺伝子の内で121個の遺伝子がRWPE‐1細胞で上方調節され、RWPE‐2細胞で上方調節された遺伝子はわずか2個であった。2μMのルナシンで処理した非腫瘍形成性または腫瘍形成性上皮細胞で下方調節された遺伝子は認められなかった。RWPE‐1細胞で上方調節された遺伝子には、腫瘍抑制、プロアポトーシス、有糸分裂チェックポイント、および細胞分裂の制御などの癌形成の予防に関与する遺伝子が含まれる(23)。
【0103】
また、本発明者等の実験のマイクロアレイの結果により、ルナシンは、変換から正常細胞を保護する遺伝子の転写活性化因子として作用し得ることも示唆されている。これらの所見は、脱アセチル化ヒストンH4のアセチル化を阻害することによって、ルナシンが正常細胞から腫瘍への変換を予防することを示唆する、以前の機序モデルとは対照的な所見である(20)。これらのヒストンのアセチル化を阻害することにより、Rb(網膜芽細胞腫タンパク質)などの腫瘍抑制因子の非存在下または失活下でさえも、腫瘍遺伝子の染色質凝縮および転写サイレンシングが生じることが考えられる。しかし、最近の研究において、国立衛生研究所より入手し、E1A腫瘍遺伝子をトランスフェクトしたルナシン処理マウス繊維芽細胞3T3細胞(NIH 3T3細胞)(24時間前処理)は、E1Aのトランスフェクションの8日後にp21/WAF1/Cipiタンパク質値の5倍の増加を示した(28)。タンパク質p21/WAF1/Cipiは、細胞周期進行の主要な制御点であるサイクリン依存性キナーゼの強力な全身性阻害剤である(29)。マイクロアレイの結果では、24時間以内にp21/WAF1/Cipiの上方調節が示されなかったが、p21/WAF1/Cipの転写活性化因子(30)である遺伝子SP3は、24時間後にルナシンにより上方調節され、このことが、NIH 3T3細胞におけるp21/WAF1/Cipiの発現の後の増加の説明となっている。
【0104】
さらに、マイクロアレイの結果は、ルナシンで前処理したC3H/T101/2細胞を化学発癌物質のジメチルベンゾアントラセン(DMBA)およびMCAに曝露した場合に認められる病巣形成の70%の低減の説明にも役立つ(20)。わずか125nMのルナシンにこれら細胞を1回24時間曝露するだけで、6週間継続した化学発癌アッセイにおいて病巣形成を抑制するのに十分であった(20)。ルナシンによるC3H/T101/2細胞の24時間の前処理によって、DMBAおよびMCAにより誘発される変換から細胞を保護する化学発癌抑制遺伝子の発現が上方調節されると考えられる。
【0105】
正常な前立腺細胞においてルナシンにより上方調節された121個の遺伝子に関するバイオインフォマティクス解析では、25%を超える遺伝子が、CpGアイランドから(10ヌクレオソーム離れて)0〜2,000bpまでに位置することが明らかにされているが、これは、ゲノムにおける遺伝子のランダム分布の観点からだけも大きな意義がある。腫瘍形成性前立腺細胞系(RWPE‐2)におけるこれらの化学発癌抑制遺伝子のルナシンによる上方調節が見られないことは、発癌に特徴的なCpGアイランドのシトシンメチル化およびクロマチン低アセチル化の増大に起因する可能性がある。
スクリーニングアッセイ
本発明はさらに、本発明の方法において有用な生物学的に活性な物質について、ルナシンまたはルナシンの類似体、断片もしくは変異体の潜在的な供給源をスクリーニングするために使用できるin vitroアッセイも提供する。本発明の一実施形態においては、HeLa細胞およびニワトリ赤血球細胞の酸抽出タンパク質から精製されたコアヒストン、ならびに組換えヒストンH3(Upstate/Milliporeより市販)を、ルナシンの存在下または非存在下でPCAFヒストンアセチラーゼ酵素を使用したヒストンアセチラーゼ(HAT)反応のテンプレートとして使用する。本発明の好適な実施形態においては、ルナシンまたはルナシンの類似体、断片もしくは変異体の潜在的供給源を以下の通りスクリーニングする。まず、コアヒストンテンプレートおよびルナシン試料(10:1 w/w)を、氷中で5分間および25℃にて10分間インキュベートした後、溶液を1×HAT反応混合物、1μMアセチルCoAおよび5μLのPCAF(Upstate/Milliporeの推奨濃度に基づく)に加える。混合物を、250rpmで1時間振盪させながら、30℃にてインキュベートする。β‐メルカプトエタノールを含有するLaemmli停止緩衝液(1:1 v/v)を加え、5分間煮沸し、氷中で15分間急冷することによって、反応を停止させる。PCAF HAT反応の生成物を16%SDS‐PAGE上で泳動し、ニトロセルロース膜上にブロットし、ジアセチル化ヒストンH3(Ac‐Lys13+Ac‐Lys14 H3)および/またはAc‐Lys14ヒストンH3に対して産生される一次抗体の後、HRP結合二次抗体で免疫染色する。抗体複合体の化学発光シグナルを、標準の化学発光試薬を使用して視覚化し、コダックBioMAXフィルムに曝露し、現像して、デジタルスキャナおよびSilk Scientific(米国ユタ州オレム)製のUN‐SCAN‐ITソフトウェアプログラムを使用してスポットデンシトメータで測定することができる。
【0106】
このin vitro HATアッセイは、時間と費用を要する細胞培養物および/または動物実験に頼ることなく、種々の供給源から誘導されるルナシン(実施例5および6を参照)の生物活性を判定するために使用することができる。SREBP転写活性化因子によるHMG‐CoA還元酵素遺伝子の発現の活性化には、ヒストンH3のアセチル化が必要であり(24)、ヒストンH3のアセチル化を阻害するルナシンの能力によって、HMG‐CoA還元酵素の発現が低減され、その結果、肝臓におけるコレステロールの生合成が低減される。
ルナシンの供給源
天然のルナシンは、大豆の種子中、ならびに市販の大豆タンパク質供給源(19)、および大麦(35)や小麦(36)などの他の種子供給源に由来するその類似体から多量に見つけることができる。種子発生のDNA核内倍加ステージにおけるルナシンの生物学的役割により(18)、ルナシンおよびその類似体は、同様に他の種子産生植物(被子植物)の内乳および子葉でも発見されることが予想される。
【0107】
本発明のポリペプチドは、当該技術分野で周知のいくつかの方法で得ることができる。例えば、本発明の適用範囲を本発明のペプチドを得るいずれか特定の方法に限定することを意図するものではないが、ルナシンならびにその類似体、変異体および断片は、従来のMerrifield固相f‐Mocまたはt‐Boc化学を含むがこれに限定されない、市販の自動化手順を使用して化学的に合成することができる。ポリペプチドの精製法も当該技術分野で周知であり、これらの方法には、陽イオンおよび陰イオン交換クロマトグラフィ、免疫アフィニティクロマトグラフィ、およびサイズ排除クロマトグラフィが含まれるが、これらに限定されない。目的によっては、組換え系でポリペプチドを産生するのが好ましい。
【0108】
タンパク質の断片は、いくつかの方法で(例えば、組換え手段、タンパク質分解、または化学合成によって)産生することができる。ポリペプチドの内部または末端断片は、ポリペプチドをコードする核酸の片側の末端(末端断片の場合)または両側の末端(内部断片の場合)から1つ以上のヌクレオチドを取り出すことによって生成することができる。突然変異DNAの発現によって、ポリペプチドの断片が産生される。したがって「末端から取り出す」エンドヌクレアーゼによる消化により、断片の配列をコードするDNAを生成することができる。また、タンパク質の断片をコードするDNAも、ランダム剪断、制限消化、または上述の方法の組み合わせによって生成することができる。
【0109】
また、断片も、従来のMerrifield固相f‐Mocまたはt‐Boc化学などの当該技術分野で既知の技法を使用して化学的に合成することができる。例えば、本発明のペプチドは、断片の重複のない所望の長さの断片に任意に分割することもできれば、所望の長さの重複した断片に分割することもできる。
【0110】
タンパク質のアミノ酸配列変異体は、タンパク質またはタンパク質の特定のドメインもしくは領域をコードするDNAのランダム突然変異誘発により調製することができる。有用な方法には、PCR突然変異誘発および飽和突然変異誘発が含まれる。また、ランダムなアミノ酸配列変異体のライブラリも、一組の縮重オリゴヌクレオチド配列の合成により生成することができる(変異体ライブラリのタンパク質のスクリーニング法については、本明細書の別記する)。
【0111】
ルナシンペプチド類似体、断片および変異体のスクリーニング:ルナシンペプチドならびにその類似体、断片および変異体の存在および量は、ルナシンペプチドの生理活性カルボキシル末端に対して産生されるルナシン抗体でウェスタンブロットを免疫染色することにより判定することができる(実施例3を参照)。ルナシンペプチドならびにその類似体、断片および変異体の生理活性は、実施例4および実施例8に記載のようなin vitro HATアッセイを実施することにより判定および定量分析することができる。
ルナシンの天然供給源
ルナシンは、自然界に存在し、大豆の種子、ならびに市販の大豆タンパク質供給源(19)、および大麦(35)や小麦(36)などの他の種子の供給源に由来するその類似体から得られる。ルナシンを得るいずれかの方法に限定することを意図するものではないが、ルナシンは、以下の大豆供給源から抽出することができる:フレークまたは粉末形態の大豆粉、大豆タンパク質濃縮物、および大豆分離物(実施例3を参照)。
【0112】
大豆フレークは、通常、大豆を脱皮、脱脂および粉砕することによって産生され、典型的には無水ベースで約65%(重量)未満の大豆タンパク質を含有する。また、大豆フレークは、可溶性炭水化物、不溶性炭水化物(例えば、大豆繊維)、および大豆に固有の脂肪も含有する。大豆フレークは、例えばヘキサンで抽出することによって脱脂することができる。大豆粉、粗挽き大豆、および挽き割り大豆は、ハンマーミルまたはエアジェットミルなどの粉砕器および製粉器で大豆フレークを所望の粒径まで粉砕することにより、大豆フレークから製造される。粉砕した物質は、典型的には、乾熱で熱処理するか湿熱で蒸らし、挽いたフレークを「トースト」して、大豆に含まれる栄養分吸収阻止要素(Bowman‐BirkおよびKunitzトリプシン阻害剤、ならびに他のプロテアーゼ阻害剤を含む)を不活化する。
【0113】
本発明の一実施形態において、トースティングは、プロテアーゼ阻害剤の活性を破壊する条件下では実施されない。本発明の好適な実施形態において、トースティングは、キモトリプシン阻害剤の活性を破壊するのに十分な時間または熱で実施されない。物質中の大豆タンパク質の変性を防止し、大豆物質への水の添加および大豆物質からの水の除去に伴う費用を避けるために、多量な水の存在下で粉砕フレークを加熱処理することは避けられる。粉砕・加熱処理して得られた物質は、物質の平均粒径に応じて大豆粉、粗挽き大豆、または挽き割り大豆となる。大豆粉は、一般的に約150.mu.m未満の粒径を有し、粗挽き大豆は、一般的に約150〜約1,000.mu.mの粒径を有し、挽き割り大豆は、一般的に約1,000.mu.mを超える粒径を有する。
【0114】
大豆タンパク質濃縮物は、典型的には無水ベースで約65(重量)%〜約90(重量)%未満の大豆タンパク質を含有し、主要な非タンパク質成分は繊維である。大豆タンパク質濃縮物は、典型的には、脱脂大豆フレークを水性アルコール溶液または酸性水溶液のいずれかで洗浄して、タンパク質および繊維から可溶性炭水化物を取り除くことにより、脱脂大豆フレークから形成される。
【0115】
より高度に精製された大豆タンパク質物質である大豆タンパク質分離物(単離大豆タンパク質とも呼ばれる)は、無水ベースで少なくとも約90(重量)%の大豆タンパク質を含有し、可溶性炭水化物または繊維をほとんど含まないように加工される。単離大豆タンパク質は、典型的には、大豆タンパク質および水溶性炭水化物をアルカリ性水性抽出物で脱脂大豆フレークまたは大豆粉から抽出することにより形成される。水性抽出物は、可溶性タンパク質および可溶性炭水化物とともに、抽出物に溶解しない物質(主に、繊維)から分離される。次いで、抽出物は、典型的には酸で処理して抽出物のpHをタンパク質の等電点に調整し、抽出物からタンパク質を沈殿させる。沈殿したタンパク質は、可溶性炭水化物を保持する抽出物から分離され、任意のpH調整ステップを行った後に乾燥させられる。
ルナシンおよびルナシンに富んだ組成物の供給源の抽出
ルナシンおよびルナシンに富んだ組成物は、大豆に含まれる天然プロテアーゼ阻害剤とともに、大豆タンパク質の低分子量アルブミン画分から得ることができる(37、38)。また、大豆プロテアーゼ阻害剤の抽出手順を使用して、ルナシンを抽出し、ルナシンに富んだ組成物を得ることもできる。
【0116】
大豆プロテアーゼ阻害剤の抽出方法には、当該技術分野で既知のものがある。例えば、以下すべての全体が参考として本明細書で援用される、米国特許第7235269号(Konwinski et al)、米国特許第4793996号、第5217717号、第5505946号(Kennedy et al.)、2003年4月3日出願の米国特許出願第2003/0064121号(Konwinski、et al.)、米国特許第7235269号(Singe)を参照されたい。但し、これまでの大豆プロテアーゼ阻害剤の抽出方法は、ルナシンの収率を最適に調節することに焦点が置かれていない。本発明の組成物の生物活性は、抽出を実施する前にルナシン濃縮のためのルナシン抽出に関して出発物質の供給源を事前にスクリーニングすることにより、改善することができる。本発明の好適な方法では、本発明の方法に使用する前に、ルナシンの潜在的供給源がスクリーニングされ、ルナシン濃縮が測定される。
【0117】
ルナシンに富んだ組成物を得る方法の以下のさらなる例は、本発明をいずれか特定のルナシン抽出方法に限定するものとして意図されるものではない。脱脂大豆粉は、60%エタノールで抽出し、冷アセトンで沈殿させた後、多段階カラムクロマトグラフィにかけることができる。プロテアーゼ阻害剤は、(他のタンパク質とともに)60%エタノールに溶解する。次いで、プロテアーゼ阻害剤を冷アセトンで沈殿させ、遠心沈殿させ、水に再溶解し、さらなる精製用の粗抽出液を作成する(37)。本手順の変形は、CMセルロースおよびDEAEセルロースクロマトグラフィでのさらなる精製のための出発原料として使用された大豆エキスを単離するために、Odani et al.(38)によって使用された。本手順では、室温にて脱脂大豆粉を60%エタノール(4:1)で抽出した後、2倍容量の冷アセトンを加え、沈殿物を水に再溶解し、蒸留水で透析し、pHを4.0に調整した後、さらに5mMのNaAcetate、pH4.0で透析する。
【0118】
ルナシンの富んだ組成物を得る別の方法には、大豆タンパク質の低分子量画分を抽出することによる方法がある(39、40)。本手順では、高塩濃度の緩衝溶媒(0.1MのNaPhosphate緩衝液、pH7.5、0.5MのNaCl、1mMのPMSF、5mMのDTT)を使用して、大豆粉から総タンパク質を抽出する。蒸留水に対して透析することによって、溶液中に大豆アルブミンが残る。なぜなら、大豆アルブミンは水溶性であり、不水溶性のグロブリンが沈殿するためである。アルブミン溶液を凍結乾燥させ、最小容量に再溶解して、多量のルナシンペプチドを含有するであろうアルブミン濃縮物を得る。
【0119】
低分子量アルブミンおよびプロテアーゼ阻害剤に富んだ大豆抽出物のさらなるルナシン精製は、陰イオン交換または分子排除クロマトグラフィおよび免疫アフィニティクロマトグラフィによって達成することができる。陰イオン交換樹脂の例には、DEAEセファデックス、QAEセファデックス、DEAEセファロース、QAEセファロース、DEAEセファセル、DEAEセルロース、およびQAEセルロースがある。分子排除樹脂の例には、Sephadex G‐25(ペプチド1〜5kDaを分離)、Sephadex G‐50(タンパク質1.5〜30kDaを分離)がある。免疫アフィニティカラムは、ルナシン抗体を使用して大豆タンパク質画分からルナシンペプチドを捕捉することにより調製することができる。
【0120】
以下の実施例3および4では、以下のようにしてルナシンに富んだ種子抽出物を得た。本明細書に記載の別の実験で生物学的に活性なルナシンを含有することが判明した大豆タンパク質濃縮物を、0.1×PBSを用いた一段階緩衝液抽出で出発物質として使用し、次いで遠心分離によって上澄みを分離した。約2倍容量のアセトンを上澄みに加えて、フィルタバッグを用いた遠心分離によって沈殿物を分離した後、真空乾燥させて、ルナシンに富んだ種子抽出物を得た。本発明の特定の実施形態において、本手順の変形例では、アセトン沈殿の代わりに、緩衝液抽出後に上澄みを75℃まで真空加熱することによって原体積の最高10分の1まで濃縮した後、凍結乾燥させて粉末形態のルナシンに富んだ種子抽出物を得る。
投与
組成物は、経口投与、局所投与、経皮投与または体内への直接注射を含めたいくつかの異なる経路を使用して投与することができる。本発明の実施において使用する組成物の投与は、全身投与(すなわち、上述の経路のいずれかを介した被験体全体への投与)であってもよければ、局所投与(すなわち、上述の経路のいずれかを介した被験体の特定の疾患または病態がある特定の部位への投与)であってもよい。
【0121】
また、本発明の方法、キットおよび組成物は、高いコレステロール値または脂質値に関連または由来する障害を治療または予防する適応がある別の組成物または治療(例えば、前記障害に関連する症状および合併症を治療、防止または最小化するために通常投与される、スタチン(例えば、ロバスタチン)、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、抗不整脈剤、抗コレステロール血症剤、利尿剤、ドーパミン受容体作動薬、ドーパミン受容体拮抗薬、または血管拡張剤)との「併用療法」で使用することができる。これらの薬物には使用に伴う特定の欠点があるが、それらのいくつかは、本発明の組成物と併せて投与した場合に治療効果を達成するのに必要な用量を低減することにより改善することができる。
投薬
本発明の一例示的実施形態においては、生成物を消費する個体におけるコレステロール値を低下させるルナシンペプチドの有効量を含有する生成物が提供される。但し、ルナシンの有効量は、本組成物を消費する個体の大きさ、体重、健康および所望の目標により少なくとも一部が変動することを理解しなければならない。したがって、少なくとも1つの実施形態において、個体に提供するルナシンの有効量は、毎日25mg/kg〜100mg/kgであると考えられる。
【0122】
本発明の組成物は、関連のある個々の被験体における特定の必要性に応じて、種々の用量で投与し、本発明の教示に基づき有効な治療濃度を提供することができる。選択された組成物の活性、被験体の生理特性、被験体の疾患または病態の程度または性質、および投与方法などの因子によって、選択された組成物の有効量を構成する要素が決まる。一般的に初回量は、特定の被験体の治療に最適な用量を決定するために変更される。適切な用量は、ヒトまたは個体の大きさ、体重、健康、年齢および性別、罹患体の所望の目的、組成物が投与される病態の重症度、治療に対する反応、本組成物と相互作用する(本組成物を強化または阻害する)可能性がある、罹患体に投与されている他の薬物の種類および量、ならびに肝臓および腎臓の機能などの他の薬物動態学的考慮事項などの因子のいずれかまたはすべてを考慮することにより選択することができる。これらの考慮事項は、当該技術分野で周知であり、標準的な教材に記載されている。
【0123】
本発明のいずれかの実施形態の治療有効量は、当該技術分野の通常の技能を有する薬理学者および臨床医に既知の方法を使用して決定される。例えば、有効量は、治療中の罹患体がコレステロール値、総コレステロール値、LDLコレステロール値または脂質値の低下を示す時まで、本発明の組成物量を増加させながら投与することにより、主観的に決定することができる。組成物、コレステロールおよび脂質の血中値は、定期的な生物学的および化学的アッセイを使用して測定することができ、これらの血中値は、投与経路に適合させることができる。その後、最も所望のレベルのコレステロール低減をもたらす血中値および投与経路を使用して、治療のための医薬組成物の「有効量」を確立することができる。
【0124】
投与経路と並行して組成物を滴定するこの同一の方法を使用して、本明細書に記載のいずれかおよびすべての障害を治療するための本発明の組成物の治療有効量を確認することができる。さらに、以下に記載のような動物モデルを使用して、特定の疾患または病態に適切な用量を決定することができる。典型的には、最初にin vitroまたはin vivo試験から得られた用量作用関係によって、被験体への投与に適切な用量に関する有用なガイダンスが得られる。
【0125】
コレステロール値、LDLコレステロール値もしくは脂質値の低減もしくは制御、またはコレステロールもしくはLDLコレステロールの合成に関する本発明の一実施形態において、本発明の方法および組成物は、約5ng〜約1,000g、約100ng〜約600mg、約1mg〜約500mgまたは約20mg〜約400mgのルナシンまたはルナシンの機能的に同等の変異体、類似体もしくは断片を含む組成物の用量を包含する。実例として、本発明の組成物の用量単位は、典型的には、例えば、本発明の組成物の約5ng、50ng、100ng、500ng、1mg、10mg、20mg、40mg、80mg、100mg、125mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1g、5g、10g、20g、30gまたは40gを含有し得るが、これらに限定されない。本発明の特定の好適な実施形態において、本発明の組成物は、約2.5〜100mg、好ましくは5〜50mg、より好ましくは約25mgのルナシンまたはルナシンの断片、変異体および類似体を含有する。
【0126】
ルナシンまたはその断片、変異体および類似体の例示的な用量は、本発明の教示に従って、平均体重が60kgのヒトおよび他の個体の場合に0.0001mg〜200mg、好ましくは2.5mg〜100mg、より好ましくは25mg〜50mgの範囲となるが、代替の用量も本発明の適用範囲内に含まれるものとして企図される。局所投与のための組成物および方法に関する本発明の特定の好適な実施形態において、ルナシンまたはその断片、変異体および類似体は、25μg/mL〜25mg/mL、より好ましくは50μg/mL〜1mg/mL、より好ましくは100μg/mL〜500μg/mL、さらにより好ましくは約250μg/mLのレベルで存在する。経口投与のための組成物および方法に関する本発明の特定の好適な実施形態において、ルナシンまたはその断片、変異体および類似体は、0.01mg/体重kg〜100mg/体重kg、好ましくは0.05mg/体重kg〜50mg/体重kg、より好ましくは0.5mg/体重kg〜2.5mg/体重kg、およびさらにより好ましくは0.2mg/体重kg〜1.5mg/体重kgのレベルで個体に提供される。
【0127】
用量は、1日当たり1回〜約4回の用量で、または治療効果を誘引するためには1日当たり多数回の用量で投与することができる。剤形は、所定の投与量を達成するために使用される所望の投与頻度、ならびに送達経路に合わせて選択することができる。
【0128】
治療効果を誘引するのに必要な治療薬の量は、例えば、血清への薬剤の吸収速度、薬剤の生物学的利用能、ならびにHMG‐CoA還元酵素および/またはLDL受容体の発現または作用を調整する効力を基にして、ならびに総コレステロールおよびLDLコレステロールの低減を監視することにより、実験的に決定することができる。これらのパラメータの決定は、当該技術分野の適用範囲内に十分含まれる。
調合物
また、本発明は、本発明の組成物を含有する調合物にも関する。本発明の生成物および組成物は単独で使用することもできれば、あるいは食品、散剤、バー、カプセル剤、シェイク、およびその他の個体が消費する周知の生成物中で使用することもできる。
【0129】
好適な一実施形態において、本発明の組成物は、食事に適した賦形剤、希釈剤、担体、または食品と一緒にされる。本発明の好適な実施形態において、調合物は、丸剤、錠剤、カプセル剤、散剤、フードバーの形態または類似の剤形である。
【0130】
調合物は、液体または固体の調合物(飲料、滅菌注射液、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、散剤、ドロップ、懸濁液またはシロップ剤、軟膏、ローション剤、クリームペースト、ゲルを含む)である、本発明の特定の組成物を補充した栄養補給剤、製剤、ビタミン剤、食品添加物または食品など、広範な種類のものであり得る。
【0131】
調合物は、都合のよい用量形態に包装され、他の活性成分も含み、ならびに/または従来の賦形剤、薬学的に許容される担体および希釈剤を含有し得る。また、薬草療法および治療に本発明の組成物を含めることも、本発明の好適な部分である。
【0132】
医薬および化粧品の両用途において本発明の組成物を局所塗布するのに好適な調合物は、局所塗布に適した賦形剤を使用する。局所調合物は、典型的にはゲル、軟膏、散剤または液体であるが、所望の表面において規定量の活性成分を放出する制御型調合物も望ましい。調合物は、表皮を介した活性部分の浸透性を高める物質を含有し得る。このような浸透剤には、例えば、DMSO、種々の胆汁酸塩、無毒性界面活性剤などが含まれる。化粧品/医薬組成物の標準的な成分は、当該技術分野で周知であり、医薬品の局所塗布用の調合物については、参考として本明細書で援用される、Remington’s Pharmaceutical Sciences,latest edition,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.に記載されている。化粧品の調合物は多種多様であり、実務家に周知である。
【0133】
本発明の好適な一実施形態においては、厳密に化粧品の目的であるか、医薬/化粧品の目的であるかにかかわらず、活性成分の局所使用のための組成物が企図される。
【0134】
本発明のいくつかの実施形態は、以下の疾患または病態(コレステロール値、総コレステロール値、LDLコレステロール値または脂質値の上昇、癌性腫瘍、アテローム硬化症、高血圧、肥満、糖尿病および腎臓疾患を含むがこれらに限定されない高脂血症に関連するいずれかの疾患)の1つ以上を治療する方法であって、これらの疾患または病態の1つに罹患する罹患体を、本発明の方法に従って、生物学的に活性なレベルのルナシンまたはその機能的に同等の断片、変異体もしくは類似体を含む組成物で治療することを含む、方法を包含する。本発明の別の実施形態は、特定のコレステロール値、総コレステロール値、LDLコレステロール値または脂質値を維持することを望む個体を、本発明の方法に従って、生物学的に活性なレベルのルナシンまたはその機能的に同等の断片、変異体もしくは類似体で治療することを含む方法を包含する。
【0135】
本発明の物質の主な用途はヒトを対象としたものであるが、治療が家畜もしくは農用動物または実験動物で望まれる場合もあり得る。実際に、本発明の一態様として、本発明の組成物の安全性および有効性を確認するための実験動物の使用がある。したがって、コレステロール値を低減または制御する個々の製剤の能力を確認し、個々の製剤が毒性でないことを保証するために、ヒトでの使用が意図される生成物をラット、マウスまたはウサギなどの実験動物に適用することができる。直前に記載の通り、品質管理の状況下における本発明の物質の使用も、本発明の一部である。
ルナシンの生物活性を維持するまたは向上させる方法
本発明の別の例示的実施形態においては、ルナシンペプチドまたはルナシンペプチド誘導体の有効量を含有する組成物、および組成物を消費する個体のコレステロール値を一緒に低下させる1つ以上のプロテアーゼ酵素阻害剤を含む組成物が提供される。
【0136】
プロテアーゼ酵素阻害剤は、ルナシンを消化から保護することで、適切な目標領域への吸収および送達を促進する作用を持つ。適切なプロテアーゼ酵素阻害剤の例には、パンクレアチン、トリプシンおよびキモトリプシンの阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。但し、本発明の適用範囲には、ルナシンならびにルナシンの断片、類似体および変異体と、個体におけるルナシンの吸収または送達を促進することが知られるか、そのような促進が考えられるその他いずれかの組成物または生成物との使用が含まれることを理解しなければならない。
【0137】
本発明のさらに別の例示的実施形態においては、個体のコレステロール値を低下させるまたは低減する方法が提供される。本方法は、個体にルナシンペプチドの有効量を含有する生成物を提供することと、本生成物が組成物を消費する個体においてコレステロール値、総コレステロール値、LDLコレステロール値または脂質値を低下させる、低減するまたは維持すると主張することとを含む。但し、本発明は、本生成物が組成物を消費する個体においてコレステロール値、総コレステロール値、LDLコレステロール値または脂質値を低下させる、低減するまたは維持すると、種々の方法(示唆、または書面、口頭もしくは電子的手段を介した明示を含むがこれらに限定されない)で主張することを含むことを理解しなければならない。
【0138】
本発明の少なくとも1つの実施形態の一態様において、ルナシンペプチドは大豆から得られる。本発明の少なくとも1つの実施形態の別の態様において、ルナシンペプチドは、他の種子植物、または大豆と他の種子植物との組み合わせから得られる。十分な量のルナシンを含有する種子植物は、当該技術分野で周知である。
【0139】
本発明の少なくとも1つの実施形態のさらに別の態様において、ルナシンペプチドまたはルナシンペプチド誘導体は、組換えDNA法を使用してルナシンペプチドもしくはルナシンペプチド誘導体を産生、抽出および精製するか、またはその他の方法で単離ルナシンペプチドを得ることにより得られる。本発明の少なくとも1つの実施形態のさらに別の態様において、ルナシンペプチドまたはルナシンペプチド誘導体は、合成ポリペプチドの産生により得られる。これらのルナシンを得る方法は、当該技術分野で周知である。
ルナシンの部分消化
本発明の驚くべき発見としては、ルナシンの部分消化によって、ルナシンの生物活性は低減または破壊されるのではなく、むしろ実際にはルナシンの生物活性が増強または増大されるという発見がある(以下の図8および実施例6を参照)。したがって、本発明の好適な実施形態は、部分的に消化された生物学的に活性なルナシンペプチドを包含する。
【0140】
大豆粉と混合したルナシンに富んだ大豆タンパク質(LeSC+SF)のパンクレアチン消化酵素による部分消化によって、ルナシンペプチドの生理活性が増大する(図8)。これは、局所塗布のためのルナシンに富んだ種子抽出物の調製において実際に適用される。
【0141】
合成ルナシンは、送達系としてエタノールを使用して局所的に塗布されると、マウスにおける皮膚腫瘍の形成を低減することが明らかにされている(20)。部分的に消化された生物学的に活性なルナシンを、適切な賦形剤を加えた局所調合物で使用することにより、皮膚腫瘍および癌の形成、光線性角化症、酒さ、染み、そばかす、ならびに細胞分裂および細胞増殖の異常に伴うその他の皮膚疾患を低減することなど、塗布におけるルナシンの有効性を増大させることが可能である。また、この調合物をルナシンの局所送達に使用することで、コレステロール値を低減し、ならびにアテローム硬化症、高血圧、肥満および糖尿病などがあるがこれらに限定されないその他のコレステロール関連疾患を治療することもできる。
【0142】
大豆粉が含まれると、消化時にルナシンの生物活性が保護されることが明らかにされている(実施例5を参照)。本発明をいずれか特定の作用機序または作用様式に限定することを意図するものではないが、消化時に大豆粉が含まれることで、ルナシンは完全な消化から保護されるものの、ルナシンの生物活性を増大させる部分消化は行われることが考えられる。
【0143】
本発明の一実施形態は、部分的に消化されたルナシンペプチド、その断片、変異体または類似体である。本発明の好適な実施形態は、大豆粉と組み合わせた、部分的に消化されたルナシンペプチド、その断片、変異体または類似体である。本発明の別の好適な実施形態は、局所塗布に適した調合物中における、部分的に消化されたルナシンペプチド、その断片、変異体または類似体である。本発明の別の好適な実施形態は、皮膚障害を治療する方法であって、このような治療を必要とする罹患体に部分的に消化されたルナシンペプチド、その類似体、変異体または断片を局所塗布することを含む、方法である。
【0144】
前述の考察、実施形態および例は単に特定の好適な実施形態の詳細な説明を示すだけのものであることを理解しなければならない。また、本発明の趣旨および適用範囲から逸脱することなく、種々の変更および同等物が可能であることが、当業者には明らかになるであろう。
【0145】
以下の非限定的な実施例は、本発明をより詳細に例示するために提供するものである。これらの実施例は、本発明の適用範囲を限定するものとして意図されるものではなく、またこれらの実施例をそのように解釈してもならない。これらの反応スキームおよび本発明に基づく組成物の構造を参照すれば、当業者にはその他の手順および適応形態が明らかになるであろう。このような手順は、本発明の適用範囲に含まれると見なされる。特に記載がない限り、量は重量部または重量パーセントの単位をとる。引用した特許および刊行物はすべて、参考として本明細書で援用される。
【実施例】
【0146】
以下の実施例は、本発明の特定の好適な実施形態および態様を示し、さらに例証するために提供するものであり、本発明の適用範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
(実施例1)
ルナシンがLDLコレステロール値および総コレステロール値を低下させることを実証する実験:スタチン薬による血清コレステロールの低下は、HMG‐CoA還元酵素(コレステロール合成の体内代謝経路における律速酵素)を競合的に阻害することによって達成させる。また、スタチンは、内因性コレステロール合成を低減することによって、肝細胞によるLDL受容体の発現の上方調節を生じ、これによって血流からの低密度リポタンパク質(LDL)のクリアランスを増加させる(25)。1985年、Michael BrownおよびJoseph Goldsteinは、LDLの低下機序を解明した業績に対してノーベル医学生理学賞を受賞した。
【0147】
HMG‐CoA還元酵素およびLDL受容体の転写調節は、Sterol Regulatory Element‐Binding Protein(SREBP)‐1および‐2によって制御される。このタンパク質は、還元酵素およびLDL受容体遺伝子の5’末端に位置するステロール調節エレメント(SRE)と結合する。SREBPが不活性であると、ERまたは核膜に結合する。コレステロール値が低下すると、SREBPがタンパク質分解により膜から放出され、核に移動する。ここでSREBPはSREに結合し、HMG‐CoA還元酵素およびLDL受容体の転写を上方調節する(24、25)。
【0148】
HepG2肝細胞の細胞培養物では、培養培地中のコレステロールを除去することによって、SREBPを活性化させ、HMG‐CoA還元酵素およびLDL受容体の発現を増大させることができる。これは、細胞を無血清培地に24時間曝露することによって達成することができる(31、32)。
【0149】
以下の関連する実験は、HMG‐CoA還元酵素発現およびLDL受容体発現に対するルナシンの作用を評価するために実施した。
【0150】
第1の実験では、HepG2細胞(1×10)を、10%FBSを含むDMEM中で10μM合成ルナシンを用いるか、または用いずに24時間処理した後、培養培地を無コレステロール培地と交換して、SREBPを活性化させた。24時間後、総タンパク質を抽出し、10μgのタンパク質を10%トリス‐グリシンゲル上に充填して、ニトロセルロース膜上に電気ブロットし、HMG‐CoA還元酵素およびアクチンに対して産生される一次抗体で免疫染色した(タンパク質の等しい充填を示すため)。スポットデンシトメータ値は、デジタルスキャンおよびUn‐Scan Itソフトウェアにより得て、3件別々の実験データの平均および標準偏差を表す。結果を図2に示す。
【0151】
第2の実験では、HepG2細胞(1×10)を、10%FBSを含むDMEM中で10μM合成ルナシンを用いるか、または用いずに24時間処理した後、培養培地を無コレステロール培地と交換して、SREBPを活性化させた。24時間後、総タンパク質を抽出し、10μgのタンパク質を10%トリス‐グリシンゲル上に充填して、ニトロセルロース膜上に電気ブロットし、LDL受容体およびアクチンに対して産生される一次抗体で免疫染色した(タンパク質の等しい充填を示すため)。スポットデンシトメータ値は、デジタルスキャンおよびUn‐Scan Itソフトウェアにより得て、3件別々の実験データの平均および標準偏差を表す。結果を図3に示す。
【0152】
図2および図3は、HepG2細胞を無コレステロール培地で24時間培養した時のHMG‐CoA還元酵素(98%増加)およびLDL受容体(34%増加)の上方調節を示す。但し、ルナシンを無コレステロール培地に加えると、HMG‐CoA還元酵素の発現は50%を超えて低下するのに対し(図2)、LDL受容体の発現は60%を超えて増加している(図3)。
【0153】
このルナシンの作用は、HMG‐CoA還元酵素活性を阻害することによって内因性コレステロール合成を低減し、LDL受容体発現の増大をもたらすスタチン薬と類似している。但し、本発明がいずれかの明確な作用機序または作用様式に限定されることを意図するものではないが、ルナシンの作用様式は、酵素活性を阻害するのではなく、むしろ転写段階でHMG‐CoA還元酵素の発現を阻害すると考えられる点で、スタチン薬と異なると考えられる。スタチン薬のように、ルナシンは、LDL‐受容体遺伝子の発現を上方調節する。さらにまた、本発明がいずれかの明確な作用機序または作用様式に限定されることを意図するものではないが、これら2つのSREBP制御遺伝子に対するルナシンの対照的な作用は、2件別々のコレステロール制御プロモータ/調節配列への共調節転写因子の選択的補充によって説明することができる。
(実施例2)
Sp1活性化補助因子の発現に対するルナシンの作用
HMG‐CoA還元酵素とは異なり、ステロール枯渇によるLDL受容体のSREBP活性化では、LDL受容体遺伝子のプロモータ/調節配列におけるSREBPに隣接した部位へのSp1活性化補助因子の補充を増大させる必要がある(25)。図3に示す通り、無コレステロール培地中のルナシン(LS)によるLDL受容体の上方調節は、Sp1活性化補助因子の利用能およびLDL受容体プロモータ/調節配列へのSp1活性化補助因子の補充の増大によると思われる。この仮説を検証するために、以下の通り、Sp1抗体を使用したウェスタン解析により、ルナシン処理培養培地および無コレステロール培地においてSp1値を判定した。HepG2細胞(1×10)を、10%FBSを含むDMEM中で集密から24時間培養した後、培養培地を新しい培養培地または無コレステロール培地(SREBPを活性化するために)と交換し、10μMの合成ルナシンを用いるか、または用いずに処理した。24時間後、各処理から総タンパク質を抽出し、10μgのタンパク質を10%トリス‐グリシンゲル上に充填して、ニトロセルロース膜上に電気ブロットし、Sp1およびアクチンに対して産生される一次抗体で免疫染色した(タンパク質の等しい充填を示すため)。スポットデンシトメータ値は、デジタルスキャンおよびUn‐Scan Itソフトウェアにより得て、1つの実験のデータを表す。結果を図4に示す。
【0154】
図4は、対照およびルナシン処理培養培地のSp1値に有意差がなかったことを示している。しかし、Sp1値は、培養培地に比べて無コレステロール培地中で23%増加した。無コレステロール培地中でルナシンを添加することにより、Sp1値がさらに約60%増加した。これはルナシン処理した無コレステロール培地におけるLDL受容体値の増加を密接に反映している。
【0155】
これらの実験のデータは、ステロール枯渇培地中のルナシンによるLDL受容体発現の増大がSp1転写性活性化補助因子の利用能の増大に起因し得ることを示している。また、ルナシンによるHMG‐CoA還元酵素発現の阻害は、細胞内のコレステロール値を低下させ、これによりSREBPを活性化した状態に維持し、結果としてLDL受容体の発現を上方調節する。したがって、これらのデータは、ルナシンがHMG‐CoA還元酵素(コレステロール合成の体内代謝経路における律速酵素)の発現を阻害すると同時に、LDL受容体の発現を増大させ、結果として血流からの低密度リポタンパク質(LDL)のクリアランスを増大させて、個体の総コレステロールおよびLDLコレステロールを低下させることを示している。
【0156】
個体の大部分の循環コレステロールは体内で合成され、ヒトの食事における腸からの200〜300mg/日の摂取量と比べて、平均で1,000mg/日合成される。したがって、肝細胞膜内のHMG‐CoA還元酵素およびLDL受容体の量によって触媒されるコレステロールの体内産生は、個体のコレステロール値の調整における単独の最も重要な因子である。したがって、これらの実験は、ルナシンの有効量によって個体のLDLコレステロール値および総コレステロール値が低減されることを示している。
(実施例3)
ルナシンは市販の大豆タンパク質供給源から抽出可能:ルナシンは、大豆タンパク質(19)、ならびに大麦(4)および小麦(5)などの他の種子供給源に由来するその類似体の市販の供給源から多量に発見されている。ルナシンに富んだ種子抽出物を得るために使用可能な出発原材料に好適な供給源を特定するために、ルナシンの存在について市販の大豆タンパク質生成物をいくつかスクリーニングした。
【0157】
使用した手順は、以下の通りであった。異なる市販の供給源(Selae、米国ミズーリ州セントルイス)から得られた大豆タンパク質試料(A〜E)約500mgを、室温にて1時間振盪することによりリン酸緩衝食塩水溶液(pH7.2)50mLに溶解した。試料を2,500rpmで30分間遠心分離し、水性画分を分離して、別々のチューブに入れた。タンパク質濃度をBradfordアッセイによって測定し、総タンパク質約20μgを2つのBio‐Rad Laboratories(カリフォルニア州ハーキュリーズ)16%トリス‐トリシンゲルに充填した。SDS‐PAGEゲルの1つ(I)をCoomasieブルーで染色し、デジタル画像処理を行う前に脱染色した。5kDaのルナシンバンドを矢印で示す。その他の1つ(II)を、ニトロセルロース膜上に電気ブロットし、アフィニティ精製したルナシンポリクローナル抗体(Pacific Immunology、米国カリフォルニア州ラモーナ)、次いでHRP結合ロバ抗ウサギ二次抗体(Amersham Biosciences、米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)とともにインキュベートした。ルナシン免疫シグナル(矢印で指示)を、Amersham製のECLウェスタンブロットキットを使用して検出する。
【0158】
結果を図5に記載する。写真から、ルナシン濃度が供給源の間で大幅に異なることは明らかである。このアッセイは、本発明の組成物および方法の使用における天然ルナシンの供給源を特定する上で有用なツールである。最も多くのルナシンを含有した大豆濃縮物(図5の試料A)を、ルナシンに富んだ種子抽出物(以下の実施例およびこれらが参照される図では「ルナシンに富んだ大豆濃縮物」または「LeSC」と呼ぶ)を産生するための緩衝液抽出手順において出発物質として使用した。
(実施例4)
調合したルナシンに富んだ大豆濃縮物(LeSC)および大豆粉(SF)を補充したLeSCは多量のルナシンを含有:この実験では、ルナシンに富んだ大豆濃縮物(LeSC)および大豆粉を補充したLeSC中のルナシン量を評価した。留意されたい点は、本発明の特定の実施形態において、ルナシンに富んだ種子抽出物が大豆濃縮物よりむしろ大豆分離物または他の大豆生成物から得られる点である。
【0159】
ルナシンに富んだ大豆濃縮物は、最初に、実施例3に記載の通り、ルナシンポリクローナル抗体に使用したウェスタンブロット解析によって、多量のルナシンを含有する市販の大豆タンパク質製剤を特定することによって産生した。次いで、最も多くルナシンを含有することが特定された大豆タンパク質濃縮物を一段階緩衝抽出手順(0.1×PBS pH7.2)において出発物質として使用し、遠心分離によって上澄みを分離した。2倍容量のアセトンを上澄みに加えて、フィルタバッグを用いた遠心分離によって沈殿物を分離した後、真空乾燥させて、ルナシンに富んだ大豆濃縮物を得た。
【0160】
望ましくない過剰な消化に対するルナシンの抵抗性を高める取り組みによって、ルナシンンの生物学的利用能が向上し、摂取時の生理活性が保持され、その結果、本発明の少なくとも1つの好適な実施形態、すなわち、ルナシンに富んだ種子抽出物および大豆粉を含む組成物が発見された。
【0161】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、天然のルナシンを含む本発明の組成物は、使用する大豆濃縮物の量によって制御することができる総タンパク質およびルナシンの含有量を変更し、使用する大豆粉の量によって制御することができる消化からのルナシン保護量を変更することによって、本発明の特定の方法における使用に対して最適に調整することができる。
【0162】
食品をベースとした品目では、生成物中のプロテアーゼ阻害剤の量を制限することが望ましい場合もある。例えば、参考として本明細書で援用される、2007年4月26日出願の米国特許出願第20070092633号では、いくつかの大豆生成物の標準的な加工の一部に、Bowman‐BirkおよびKuntz阻害剤などの栄養分吸収阻止要素を不活性化する熱処理が含まれることが教示されている。したがって、本発明の好適な実施形態において、ルナシンおよび大豆粉を含む組成物は、経口用途に望ましくないレベルの栄養分吸収阻止要素を有するには十分でないが、消化中のルナシンの生物活性を保護するには十分であるレベルのプロテアーゼ阻害剤を有するように、本明細書に記載のまたは当業者に既知の調製法によって最適に調整される。
【0163】
大豆濃縮物および大豆粉の50:50の混合に関する臨床試験では、LDLコレステロールの20〜30%の低減がもたらされた(26、27)。これらの臨床試験は、ルナシンがLDLコレステロールを低減する際の大豆濃縮物の活性要素であることを認識せずに実施したため、混合物中に存在するルナシンの値は制御されなかった。本発明は、ルナシンの濃度を最大にし、したがってコレステロールに関連する用途における治療の組成物の活性を最大にするために、本発明の出発物質および最終生成物中のルナシン濃度を測定する改善された方法を教示している。本発明の少なくとも1つの好適な実施形態において、大豆粉とルナシンに富んだ種子抽出物との比率は、10:90〜50:50、より好ましくは20:80〜40:60、より好ましくは約30:70(大豆粉:大豆濃縮物)である。本発明の好適な実施形態において、大豆粉とルナシンに富んだ種子抽出物との比率は、ルナシンの生物学的に活性な濃度、および大豆粉による消化からの十分な保護を提供する比率である。
【0164】
以下のいくつかの実験では、大豆粉(SF)を出発大豆濃縮物に加えた(30:70 w/wの混合)後、0.1×PBS pH7.2を用いた緩衝液抽出およびアセトン沈殿を実施し、ルナシンに富んだ大豆濃縮物と大豆粉の混合物(LeSC+SF)を得た。
【0165】
この実験で使用したウェスタンブロット解析手順は、以下の通りであった。LeSC、SFおよびLeSC+SFの総タンパク質約20μgを、16%トリス‐トリシンゲルに電気泳動し、ニトロセルロース膜上へ電気ブロットした。ブロットをルナシンのポリクローナル抗体、次いでHRP結合抗ウサギ二次抗体とともにインキュベートした後、ルナシン免疫シグナルをECLキットで検出した。図6に示す通り、LeSCおよびLeSC+SFは、多量のルナシンを含有した。
(実施例5)
大豆粉と合わせたルナシンに富んだ種子抽出物は、消化酵素で消化された時でも生理活性を保持
LeSC(A)、LeSC+SF(B)、消化LeSC+SF(C)、消化LeSC(D)、消化大豆タンパク質分離物(E)および消化大豆濃縮物(F)の生物活性を、H3ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)アッセイを使用して測定した(実施例8を参照)。LeSC、LeSC+SF、大豆タンパク質分離物および大豆濃縮物の総タンパク質約100mgを、1:1(w/w)でパンクレアチン(Sigma Life Sciences、米国ミズーリ州セントルイス)を混合し、40℃にて30分間インキュベートすることによって消化させた。HATアッセイが作用していることを確認するために、合成ルナシン(+synL)による処理を含めた。合成ルナシンは、HATアッセイのテンプレートとしてニワトリ赤血球(Upstate/Millipore、米国マサチューセッツ州ビルリカ)から単離したコアヒストンを使用して、ヒストンアセチラーゼ酵素(PCAF)によるヒストンH3のアセチル化を低減させた。試料タンパク質約10μgを、コアヒストン1μgとともにインキュベートした後、PCAF酵素およびアセチルCoA基質とのHAT反応にかけた。反応生成物を、16%トリス‐トリシンゲル上で泳動し、ニトロセルロース膜上へ電気ブロットした。ブロットを、(ヒストン14およびヒストン10でジアセチル化された)アセチル化H3に対して産生される一次抗体およびHRP結合抗ウサギ二次抗体とともにインキュベートした後、ECLキットを使用してシグナルを検出した。弱いシグナルは、ルナシンペプチドがヒストンH3のアセチル化を防止したことから、生理活性を有することを示した。強いシグナルは、ルナシンペプチドが消化され、不活性になったため、ヒストンH3のアセチル化のレベルに影響を及ぼさなかったことを示した。結果を図7に示す。
【0166】
未処理の対照に比べて、合成ルナシンの存在下でH3アセチル化の顕著な低下が認められた。LeSC(図7のA)およびLeSC+SF(図7のB)は、PCAFによるH3のアセチル化を顕著に低減することができ、このことは両方の大豆タンパク質抽出物に含まれるルナシンが生物学的に活性であることを示した。パンクレアチンによるLeSC+SF(図7のC)の消化は、生物活性を低減させたものの、LeSCが単独で消化される場合ほどではなかった(図7のD)。LeSCのように、多量のルナシンを含有する大豆タンパク質分離物および大豆濃縮物は、パンクレアチンによる消化の後、ルナシンの生物活性を示さなかった(図7のEおよびF)。これらの結果は、調合したLeSC+SFがパンクレアチンによる消化からある程度ルナシンを保護し、ルナシンに生物活性を保持させることを示している。
(実施例6)
調合したLeSC+SFの部分消化によりルナシンの生物活性が増大:消化および未消化のLeSCおよびLeSC+SFの生物活性を判定するための確証実験を、異なるコアヒストンテンプレートを使用して実施した。今回、本発明者等は、HeLa腫瘍細胞から抽出されたコアヒストンを使用した。ニワトリ赤血球細胞とは異なり、酪酸ナトリウム処理したHeLa細胞に由来するコアヒストンは市販されており(Upstate/Millipore、米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)、ヒストンアセチル化の陽性対照として使用することができる。未処置のHeLa細胞から単離されたコアヒストンを、陰性対照(低レベルのヒストンアセチル化)およびHATアッセイのテンプレートとして使用した。
【0167】
PCAF触媒HAT反応のテンプレート(temp(‐)対照)としてHeLa細胞に由来する酸抽出コアヒストン(Upstate/Millipore)を使用して、HAT生理活性アッセイを実施した。陽性対照としては、酪酸ナトリウム(NaB)で処理したHeLa細胞に由来するコアヒストンを使用した。これはNaBがヒストンアセチル化を増大させることが知られているヒストンデアセチラーゼ阻害剤であるためである。PCAFによるヒストンH3のアセチル化に対する合成ルナシン(+synL)の阻害作用を使用して、ルナシンに富んだ大豆濃縮物(A)、消化LeSC(A Dig)、LeSC+SF(B)、および消化LeSC+SF(B Dig)の作用を比較した。1:0.5(w/w)でパンクレアチンを加え、38℃にて15分間インキュベートすることにより、LeSCおよびLeSC+SFを部分的に消化した。記号の下の数値は、テンプレート(temp)の免疫シグナルを使用して正規化したデンシトメータの相対的測定値を示す。低い数値は、ルナシンの生物活性が認められることを示している。
【0168】
結果を図8に示す。合成ルナシンの存在下では、H3アセチル化の顕著な低減が認められた。未消化LeSC(A)およびLeSC+SF(B)は、H3アセチル化レベルの低減を示し、このことは、これらの大豆抽出物に含まれる天然ルナシンが生物学的に活性であったことを示している。LeSC(A Dig)の部分消化は、生物活性の低減をもたらした。
【0169】
驚くべきことに、LeSC+SFの部分消化は、生物活性の低減よりもむしろ増加をもたらした。本発明がいずれかの明確な機序に限定されることを意図するものではないが、ルナシンは高分子量タンパク質複合体に共有結合し、大豆粉の保護により、部分消化は、単にこれらの結合を分解し、生理活性ルナシンを溶液中に放出するだけで、これを破壊することはないと考えられる。本発明の好適な実施形態において、ルナシンは、使用前に部分消化させる。本発明の別の好適な実施形態において、ルナシンが部分的に消化される時には、大豆粉が存在する。
【0170】
LeSC+SFを、1:0.5(w/w)の比率で新たに調製されたパンクレアチン溶液(蒸留水10μg/mL)と混合することによって、部分的に消化させた。混合物を、38℃にて15分間インキュベートした後、プロテアーゼおよび消化酵素を5分間沸騰させ、次に氷中で急冷することによって不活性化させた。これらの消化条件下でLeSC大豆抽出物中のルナシンを消化および不活性化したが(図8のA Dig列)、LeSC+SFのルナシンの方がより生物学的に活性であった(図8のB Dig列)。但し、LeSC+SFの部分消化の条件は、ルナシン含有量に関して消化生成物(図6)を分析し、HATアッセイを使用して生物活性(図8)を分析することによって、実験的に決定する必要がある。
【0171】
パンクレアチンおよびプロテアーゼ酵素の供給源、プロテアーゼ酵素の古さ、またはインキュベーション条件の変動は、消化条件のばらつきをもたらす可能性がある。例えば、部分消化に調製から1カ月後のパンクレアチンを使用すると、上記の同様のインキュベーション条件下で、ルナシンの活性の劣化および低減が生じる。したがって、本発明の好適な実施形態においては、プロテアーゼ酵素の濃度およびインキュベーション時間の許容範囲が、処理した組成物の生物活性を評価するために上記で使用したHATアッセイなどのアッセイを使用して決定される。本発明の好適な実施形態において、新しいパンクレアチン酵素は、38℃にて10分間インキュベートされる。ルナシン抽出物1μgにつき0.5μgのパンクレアチンを使用する。
(実施例7)
キモトリプシン阻害剤(Chy)はルナシンの生理活性を保護:大豆に含まれるどのプロテアーゼ阻害剤がルナシンを消化から保護するのかを判定するために、大豆トリプシン阻害因子およびトリプシン+キモトリプシン阻害剤をSigmaから入手し、1:1 w/wの比率でLeSCと混合した。混合物をパンクレアチンで消化し、消化生成物をルナシン抗体で免疫染色した。
【0172】
実験の詳細は以下の通りである。LeSC+大豆トリプシン阻害剤(1:1 w/w)(Sigma)ならびにLeSC+トリプシンおよびキモトリプシン阻害剤(1:1 w/w)(Sigma)を、38℃にて15分間インキュベートすることにより、パンクレアチン(1:1 w/w)で消化した。消化生成物およびLeSCを、ルナシン一次抗体および標準対照の合成ルナシンを使用して、ウェスタンブロット解析(図9)により分析した。
【0173】
HAT生物活性アッセイは、PCAF触媒HAT反応のテンプレートとしてニワトリ赤血球細胞に由来するコアヒストン(Upstate/Millipore)を使用して実施した(図10)。未処理の陰性対照(‐synL)と比較したPCAFによるヒストンH3アセチル化に対する合成ルナシン(+synL)の阻害作用を使用して、消化LeSC(A)、消化LeSC+try+chy(B)、消化LeSC+try(C)、未消化LeSC(D)および消化LeSC+SF(E)の作用を比較した。記号の下の数値は、未消化LeSC(D)の免疫シグナルを使用して正規化したデンシトメータの相対的測定値を示す。低い数値は、ルナシンの生物活性が認められることを示している。
【0174】
図9および図10の結果は、LeSC+トリプシン+キモトリプシン阻害剤試料においての方が、LeSC+トリプシン阻害剤試料においてもよりも、ルナシンが消化からより良好に保護されたことを示している。同様に、ルナシンの生物活性を判定するHATアッセイでは、LeSC+トリプシン+キモトリプシン阻害剤の消化の方が、LeSC+トリプシン阻害剤の消化よりも顕著な生理活性を示した(図10)。パンクレアチンによるLeSCの消化は、生物活性の低減をもたらした。これらの結果は、ルナシンに富んだ種子抽出物とともにキモトリプシン阻害剤を含めることは、ルナシンの生物活性の保護に役立つだけでなく、ルナシンの過剰な消化からの保護にも役立つことを示している。
(実施例8)
ルナシンの生物活性を判定するためのスクリーニングアッセイ
ニワトリ赤血球細胞から精製したコアヒストンを、PCAFヒストンアセチラーゼ酵素を使用したヒストンアセチラーゼ(HAT)反応のテンプレートとして、約2〜10μMのルナシンの存在下または非存在下で使用した。コアヒストンテンプレートおよびルナシンに富んだ大豆濃縮物(LeSCおよびLeSC+SF)を混合し(10:1 w/w)、氷中で5分間および25℃にて10分間インキュベートした後、混合物を1×HAT反応混合物、1μMアセチルCoA、および5μLのPCAF(Upstate/Milliporeの推奨濃度に基づく)に加えた。反応混合物を、250rpmで1時間振盪させながら、30℃にてインキュベートした。β‐メルカプトエタノールを含むLaemmli停止緩衝液(1:1 v/v)を加え、5分間煮沸した後、氷中で15分間急冷することにより、反応を停止させた。PCAF HAT反応の生成物を16%SDS‐PAGE上で泳動し、ニトロセルロース膜上にブロットし、ジアセチル化ヒストンH3(Ac‐Lys13+Ac‐Lys14 H3)に対して産生される一次抗体の後、HRP結合抗ウサギ二次抗体で免疫染色した。抗体複合体の化学発光シグナルを、標準の化学発光試薬を使用して視覚化し、コダックBioMAXフィルムに曝露し、現像して、デジタルスキャナおよびSilk Scientific(米国ユタ州オレム)製のUN‐SCAN‐ITソフトウェアプログラムを使用してスポットデンシトメータで測定した。図7のA列およびB列は、未処理の対照に比べて、LeSCおよびLeSC+SFで処理した反応混合物ではH3アセチル化が低減されていることを示しており、このことは、このスクリーニング法で、ルナシンに富んだ種子抽出物、およびルナシンまたはルナシンの断片、類似体もしくは変異体を含む他の組成物の生物活性を判定できることを示している。同じ図7では、LeSCの消化(D列)によって生物活性は消失するものの、LeSC+SFの消化(C列)では生物活性が消失せず、単に生物活性の部分低下が示されるだけであることも確認されている。
(実施例9)
先に記載した組成物のin vivo活性、ならびにキットの治療への利用および治療法は、以下の手順のいずれかにより任意に決定することができる。
【0175】
雄イヌ(ビーグル、約9〜約14キログラム、1〜4歳)に、5.5%のラードおよび1%のコレステロールを補充した標準のドックフードを与える。絶食させたイヌからベースラインの血液試料を採取した後、血漿コレステロールの基準値を得る試験を開始する。次に、イヌを、同様の血漿コレステロール値を有する5匹の動物からなる群に無作為化する。本明細書に記載の治療法に従って、給餌の直前に7日間動物に投薬した。血漿コレステロール測定のため、最終投薬の24時間後に血液試料を得る。市販のキットを使用したコレステロール酸化酵素法の変形例によって、血漿コレステロール値を測定する。
【0176】
任意の代替手順では、ハムスターを6匹の群に分けて、0.5%のコレステロールを含有する管理されたコレステロール食餌を7日間与える。食事性コレステロールの曝露を判定するため、食餌の消費量を監視する。本明細書に記載の治療法に従って、食餌の開始から動物に1日1回投薬する。投薬は経口の強制飼養によって行う。瀕死または体調不良の動物はすべて安楽死させる。7日後に、ケタミンを筋肉内(IM)注射することによって動物を麻酔し、断頭によって屠殺する。血漿の脂質分析のため、EDTAを含有する真空チューブに血液を集め、組織の脂質分析のために肝臓を切除する。脂質分析は、発表されている手順(例えば、Schnitzer‐Polokoff et al.,Comp.Biochem.Physiol.99A,4(1991),pp.665‐670)に従って実施し、データを脂質対対照の低減率として記録する。
【0177】
上記の詳細、例およびデータは、本発明の組成物の製造および使用の完全な説明を提供するものである。生成物、組成物および関連する方法は、現在のところ最も実用的で好適な実施形態であると考えられる事項に関連して説明されているものの、本開示を開示された実施形態に限定する必要のないことは理解されるものとする。請求の趣旨および範囲内に含まれる種々の変形および類似の構成を網羅することが意図されており、これらの範囲には、このような変形および類似の構造をすべて包含するように最も広い解釈を適用しなければならない。本開示は、以下の請求項のいずれかおよびすべての実施形態を含む。上で考察または引用したすべての特許、学術論文およびその他の文献は、参考として本明細書で援用される。本明細書で考察もしくは引用した、または以下に列挙するすべての特許、学術論文およびその他の文献も、参考として本明細書で援用される。
【0178】
(参考文献)
上で援用された数値参照は、以下の発表された文献および抄録の一覧に対応する。以下に列挙する刊行物はすべて、個々の刊行物がそれぞれ、全体が参考として援用されるものとして具体的かつ個別に記載される場合と同程度に、全体が参考として本明細書で援用される。
【0179】
【化1】

【0180】
【化2】

【0181】
【化3】

【0182】
【化4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体におけるコレステロール値を低下させる方法であって、(a)(i)コレステロール値を低下させることを希望または必要とする個体、ならびに(ii)配列番号2のペプチドおよび前記ペプチドの機能的に同等の変異体、断片または類似体からなる群から選択される化合物を含む組成物を提供することと、(b)被験体に前記組成物を投与することとを含む、方法。
【請求項2】
前記化合物が、大豆、小麦または大麦から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物が、組換えDNA法を使用して前記化合物を産生、抽出および精製することによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が合成ポリペプチドの産生によって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記個体がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
投与が前記組成物の経口摂取を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
組成物がカプセル剤、錠剤、散剤、半固形製剤、液体、ゲル、懸濁液またはエアゾールスプレーの形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物がキモトリプシン阻害剤もさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物が、毎日0.05mg/kg〜50mg/kgにて前記個体に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記個体が、アテローム硬化症、動脈硬化症、心筋梗塞、心臓発作、糖尿病、冠動脈性心疾患、狭心症または不安定狭心症のリスクがある、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が大豆粉もさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
心血管疾患を治療または予防する方法であって、(i)心血管疾患に罹患するまたは前記疾患を発症するリスクがある個体、ならびに(ii)配列番号2のペプチドおよび前記ペプチドの機能的に同等の変異体、断片または類似体からなる群から選択される化合物を含む組成物を提供することと、(b)被験体に前記組成物を投与することとを含む、方法。
【請求項13】
前記化合物が、大豆、小麦または大麦から得られる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、組換えDNA法を使用して前記化合物を産生、抽出および精製することによって得られる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が合成ポリペプチドの産生によって得られる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記個体がヒトである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
投与が前記組成物の経口摂取を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
組成物が、カプセル剤、錠剤、散剤、半固形製剤、液体、ゲル、懸濁液またはエアゾールスプレーの形態である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物がキモトリプシン阻害剤もさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物が、毎日0.05mg/kg〜50mg/kgにて前記個体に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記個体が、アテローム硬化症、動脈硬化症、心筋梗塞、心臓発作、糖尿病、冠動脈性心疾患、狭心症または不安定狭心症のリスクがある、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が大豆粉もさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
配列番号1の部分的に消化された生物学的に活性なペプチドを含む組成物。
【請求項24】
キモトリプシン阻害剤もさらに含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
大豆粉もさらに含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
個体の皮膚を治療する方法であって、a)i)個体およびii)請求項23に記載の組成物を提供することと、b)前記個体に請求項23に記載の組成物を局所投与することとを含む、方法。
【請求項27】
ルナシンに富んだ種子抽出物および大豆粉を含む組成物。
【請求項28】
ルナシンに富んだ種子抽出物と大豆粉の重量比が、a)ルナシンに富んだ種子抽出物90%対大豆粉10%から、b)ルナシンに富んだ種子抽出物60%対大豆粉40%の間である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
ルナシンに富んだ種子抽出物と大豆粉の重量比が、おおよそルナシンに富んだ種子抽出物70%対大豆粉30%である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記大豆粉がルナシン保護大豆粉を含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
ルナシンが0.5重量%〜5重量%の組成物の濃度で存在する、請求項27に記載の組成物。
【請求項32】
ルナシンの生物活性を改善する方法であって、a)ルナシンを提供することと、b)前記ルナシンを部分的に消化することとを含む、方法。
【請求項33】
大豆粉が、前記ルナシンが消化されている間に存在する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
個体のコレステロール値を低下させるまたは低減する方法であって、a)配列番号2のペプチドおよび配列番号2の機能的に同等の断片、変異体または類似体からなる群から選択されるペプチドを含有する生成物を提供することと、b)前記生成物が組成物を消費する個体においてコレステロール値、総コレステロール値、LDLコレステロール値または脂質値を低減するまたは維持すると主張することとを含む、方法。
【請求項35】
前記ペプチドが、大豆、小麦または大麦から得られる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ぺプチドが、組換えDNA法を使用して前記化合物を産生、抽出および精製することによって得られる、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記ペプチドが合成ポリペプチドの産生によって得られる、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記個体がヒトである、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記生成物が、カプセル剤、錠剤、散剤、半固形製剤、液体、ゲル、懸濁液またはエアゾールスプレーの形態である、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記生成物がキモトリプシン阻害剤もさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記個体が、アテローム硬化症、動脈硬化症、心筋梗塞、心臓発作、糖尿病、冠動脈性心疾患、狭心症または不安定狭心症のリスクがある、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記組成物が大豆粉もさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
個体のコレステロール値を低下させる前記ペプチドの有効量が、毎日0.05mg/kg〜50mg/kgである、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
コレステロール値を低減または維持する方法であって、前記低減または維持を必要とするヒトに生物学的に活性な量の配列番号2のペプチドを提供することを含む、方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−503704(P2010−503704A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528514(P2009−528514)
【出願日】平成19年9月15日(2007.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/078584
【国際公開番号】WO2008/034116
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(309028330)ソイ ラブズ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】