説明

線維成分をもつマスカラ

本発明は線維成分をもつマスカラおよび製造方法に関する。前記マスカラは、少なくとも0.1ないし10重量パーセントの脂溶性もしくは油分散性のポリマーまたはコポリマー、0.3ないし10重量パーセントの平均長3mmないし6mmの天然繊維もしくは合成繊維、10ないし30重量パーセントの25℃で凝固する天然ワックスもしくは合成ワックス、1ないし10重量パーセントの18℃以上で液体である合成ワックス、0.5ないし10重量パーセントの無機色素、有機着色料およびそれらの混合物、40ないし80重量パーセントの水ならびに100重量パーセントまでの化粧品補助剤、活性成分およびそれらの混合物としての残余物を含み、また前記マスカラは、水溶性もしくは水分散性の親水性ポリマー、塗膜形成要素、増粘剤もしくは粘土を含まない。前記繊維は良好に分散し、前記マスカラはマスカラフィルムの粘着性および脆弱性の間で良好なバランスを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は線維成分をもつマスカラに関する。
【背景技術】
【0002】
マスカラの組成において、繊維を含むことは既に知られている。繊維を中に含むマスカラの最大の長所は、まつげの伸長およびより確かなボリューム効果である。このようなマスカラの欠点は、通常毎日の使用している間(通常8ないし12時間/日)の不快な使用感である。この繊維−マスカラの使用感について、実践に際して示される、従来の特徴は三つある。
1)まつげからの繊維の剥離。これは上品な膜形成には不十分な粘着性質であることを示す。
2)薄片にはがれる。これはまつげ上の膜の、粘着性およびもろさが不均衡であることを示す。
3)短いにしろ長いにしろ、乾燥時間。乾燥時間が長すぎると、すぐ次の塗布過程の繊維が、まつげからはがれる可能性がある。乾燥時間が短すぎると、塗布がかたまらずにまた失敗する可能性が生じて、まつげが分離し、まつげから繊維がはがれる可能性が生じる。
これらの特徴は単独もしくはともにあって、断片が目に落下し、そして異物を取り除くためにこすれてしまうので、このマスカラの美容性および落下に対する安定性を減じる。剥がれ落ちるような繊維の全ての欠点は、消費者にとってこれら製品を好ましくないものとする。
既知の製法に従って、すべての既知の繊維−マスカラ製剤は、水溶性もしくは水分散性ポリマー/フィルム形成体を単独で、または、脂溶性もしくは油分散性フィルム形成体/ポリマーとの組み合わせで使用する(特許文献1−4)。
大部分の水溶性フィルム形成体は、pH4ないし6の範囲に存在する。一般的に、マスカラのpHの性質は、7および8の範囲であり、それによって、フィルム形成ポリマーの性質は修正される。大部分のポリマー/フィルム形成体も吸湿性であり、その吸湿性を減じて消耗を改善するための、特別な方法を必要とする。
混合物製造の際には一つの特別な過程が存在する。これは繊維をもつマスカラのために特に重要なもので、繊維の分散を制御および維持し、生成物の機能性の質を確実に継続的に保持する。特許文献2において、技術的過程の記述がそれに言及していて、すなわち、膨張剤、色素および他の成分を水相に加えたあとの、85ないし90℃における繊維分散である。
【特許文献1】米国特許第6491931号明細書
【特許文献2】米国特許出願第2002/0110571号明細書
【特許文献3】米国特許出願第2002/0192251号明細書
【特許文献4】米国特許第6482400号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、その繊維質が良好な分離性をもち、かつそのマスカラ−フィルムの保持性および脆弱性の間に良好なバランスをもつ、マスカラを提供することである。
さらに他の目的は、前記マスカラの製造方法を提供するとである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のマスカラは、0.1ないし10重量%の少なくとも脂溶性もしくは分散性のポリマー、もしくはコポリマー、0.3ないし10重量%の平均長3ないし6mmをもった天然もしくは合成繊維、10ないし30重量%の約25℃で固化する天然もしくは合成ワックス、1ないし10重量%の約18℃以上で液化する合成ワックス、0.5ないし10重量%の無機色素、有機顔料およびこれらの混合物、40ないし80重量%の水ならびに、100重量%に達するまでの美容補助剤、活性化剤およびこれらの混合物から構成され、ここで、上記マスカラは、水溶性もしくは水分散性であるような、親水性ポリマー、フィルム形成体、膨張剤または粘土を含まず、ならびに、質量に関するパーセントのデータは、すべての混合物に対するものである。
【0005】
本発明は、疎水性フィルム形成体および一の良好な繊維保持負荷をもった繊維−マスカラ−混合物を提供する。このマスカラの製造方法に従えば、繊維はポリマーとともに中間段階において混合前に冷却し、続いてこれらの混合に先立ちエマルジョンを加える。
【0006】
前記マスカラ中の繊維は、好ましくは平均長4ないし4.5mmである。
【0007】
繊維は、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、綿繊維、テフロン(登録商標)繊維および特にLycra(登録商標)繊維から選択される。
【0008】
脂溶性もしくは油分散性ポリマーもまたはコポリマーは、無水マレイン酸、イソプロピルマレアートおよびオレフィンモノマーからの30ないし45炭素原子をもつコポリマー;ビニルピロリドンおよび長鎖アルファ−オレフィンからのコポリマー;フマル酸、フタル酸およびトリシクロデカンジメチルアルコールとのアジピン酸からのコポリマー;アジピン酸、シクロヘキサン−ジメタノール、無水マレイン酸、ネオペンチルグリコールおよび無水トリメリット酸−無水−モノマーからのコポリマー;アジピン酸およびPPG−10−モノマーからのコポリマー;ポリエチレン;ブタジエン/イソプレン−コポリマー;PVM/MA−コポリマーからのエチルエステルもしくはブチルエステルからのコポリマー;トリコンタニルPVP;C20−40の酸(および)ポリエチレン;PVP/エイコセン;ビス−ジグリセリルポリアシルアジペート−1;ポリビニルーオクタデシルエーテル;ならびにこれらの混合物;または一の他の脂溶性物質もしくは油分散性物質ポリマー、フィルム形成体、または油濃縮剤/油ゲル化剤からなる群から選択される。
【0009】
特に好ましくはトリコンタニルPVP,C20−40の酸(および)ポリエチレンならびにPVP/エイコセンである(PVPは、ポリビニルピロリドン)。この脂溶性または油分散性ポリマーは、特に0.5ないし7重量%の範囲で構成される。
【0010】
補助手段は、香料、標識剤、ビタミン、酸化防止剤および、保護剤、これはグラム陽性およびグラム陰性バクテリアに対して効果的である、酵母、ならびにかたどり剤である。さらに油相のゲル化剤/濃縮剤は、上記脂溶性ポリマーまたは油分散性ポリマー、C20−40酸(および)ポリエチレン、デセン/ブテンコポリマー、ジステアルジモニウムヘクトライトのような生成物である。
【0011】
表面活性化剤は、例えば、レシチン、セスキオレイン酸ソルビタンまたは、E/O−エマルジョンについて低いHLBをもつ他の任意のものである。W/O−エマルジョンについてこのましくは、表面活性化剤は、例えば、ポリソルベート20、オレス−20、または高いHLBをもった他の任意のものである。
【0012】
無機物色素は、例えば、酸化鉄、二酸化チタン、ウルトラマリン、グリマー、酸化クロム、水酸化クロムである。FD&Cレッド40、FD&Cイエロー5、FD&Cブルー1ならびに、カーミンとグリーンD&C5といったそのラッカーのような、有機色素も投入することができる。
【0013】
本発明のマスカラは、まつげの塗り、広がり、体積増加および曲がりの改良に関連してすぐれた性質を持つ。組成は単独でまつげ上に載せることができ、または他のマスカラとともにさらに重ね塗りすることができ、また通常のエマルジョンをベースにすることもできる。すなわち「耐水性」カテゴリーまたはゲルカテゴリー、すなわち下層マスカラもしくは表層マスカラとしてである。本組成は、眉毛補填剤としても使用することができる。本組成は、比類のない塊を作らない繊維保持力を持っている。
【0014】
約25℃で固体になる天然または合成ワックスは、たとえば、蜜ろう、オゾケライト、カルナウバろう、キャンデリラろう、羊毛脂、固形パラフィン、セレシン、シリコンワックス、ポリエチレングリコールワックスまたはグリコールエステルワックスである。
【0015】
より好ましいワックスは、約18℃以上で液体であり、たとえば、より適切なポリエチレンワックス、合成ワックス(INCI:Sythetic Wax)またはVP/ヘキサデセンコポリマーである。
【0016】
繊維−マスカラの製造方法は、本発明に記載したように、明確な主成分の生成(液体合成ワックス)において、繊維分散製造の制御可能な分離を計画する。マスカラ製造のための本発明に従った工程は、約65℃ないし78℃において、完全に乳化するまで、水相とともに、含有する油相、ワックス、油、色素、ならびに少なくとも一の脂溶性もしくは油分散性のポリマーもしくはコポリマーを混合することを含み、さらに、繊維および液状合成ワックス、液状ポリエチレンもしくは他の液状ポリマーフィルム形成体のような同質の混合物を、前記エマルジョンとともに約50ないし70℃において混合することを含み、これにより、繊維混合物を生じる。繊維エマルジョンの前記製造は、約18ないし25℃において約12ないし20U/分で行われる。
【0017】
繊維エマルジョン/分散は、アルコールの添加なしに製造される。
【0018】
水溶性もしくは水分散性ポリマー、フィルム形成体、濃縮剤、または粘土も有利である。
【0019】
室温の範囲(18ないし25℃)および5ないし15分間の小さな攪拌力をもったこの利用可能な方法を通して、すぐれた繊維−付着力をもった非常に安定した繊維分散を与える。
【0020】
本発明によるマスカラの付着力を、市販の製品と比較試験のために試験した。その際、付着力は15ないし20%改良されていて、消費者テストにおいても繊維分散およびマスカラの塗抹に対して優れているという意見が示された。
【0021】
エマルジョン全体として、pH値7ないし8をもち、このため使用者の体に負担をかけないことに 非常にすぐれている。
【0022】
以下、さらに本発明を実施例の記述を通して詳細に説明する。すべての%データは、他に記述のない限りは重量%である。
【実施例1】
【0023】
マスカラI
相A
カルナウバろう: 4
オゾケライト: 2
パラフィン: 4
ステアリン酸: 4
セスキオレイン酸ソルビタン: 1
蜜ろう: 6
トリコンタニルPVP:2
相B
黒色酸化物顔料: 8
相C
シメチコン: 0.2
相D
水: 100に達するまでの十分量
トリエタノールアミン:1.5
プロピレングリコール:1.8
相E
合成ワックス(約20℃において液体):5
レーヨン繊維: 1
相F
ビタミン: 1.2
相G
防腐剤: 1.0
油相(A)は80ないし85℃に熱せられる。相(B)の色素を添加し、20分間約2500rpmで均質化した。そのあとで、シメチコン(C)を添加した。水相(D)を75℃以上に加熱し、200ないし300rpmで混合した。両相をともに混合し、約2500U/分で20分間均質化した。これを約65ないし70℃の温度に維持した。引き続き、55℃ないし60℃に冷やした。
この繊維を約20℃、15U/分以上で5分ないし10分間、相(E)由来の合成ワックスとともに混合した。この混合物を主容器中で約60℃ないし65℃にした。ついで、相FおよびGを低温で加えた。
これら方法の重要な過程は、繊維を調整および分離することによって繊維分散を凝固することなく維持するよう、液体合成ワックスと繊維を処理することである。この段階は、繊維をエマルジョンに誘導するに先立って生じる中間段階である「冷却」段階である。この処理は良好な繊維分散を維持する。他の混合物への繊維相の添加は、約65℃で穏やかに攪拌することによって行われる。
【実施例2】
【0024】
マスカラII
相A
蜜ろう: 5
モンタンワックス: 3
キャンデリラ: 2
ステアリン酸: 5
レシチン: 1
微結晶ワックス: 4
C20−40の酸(および)ポリエチレン:3
相B
黒色酸化物顔料: 9
相C
水: 100に達するまでの十分量
トリエタノールアミン:1.7
グリセリン: 1
相D
VP/ヘキサデケンコポリマー:6
レーヨン繊維: 2
ポリウレタン−「Lycra」−繊維:1
相F
ビタミン: 1
相G
防腐剤: 0.8
この油相を調整し、同じようにこの水相を調整する。両相を上記のように混合する。次に、VP/ヘキサデセンコポリマーと繊維の予混合処理を行い、そしてこの予混合を、実施例1の実施に従って主エマルジョンに供した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相、ワックス、油、色素、ならびに少なくとも一の脂溶性もしくは油分散性のポリマーもしくはコポリマーを含み、水相とともに約65℃ないし78℃において完全に乳化混合し、約18ないし25℃にて12ないし20U/分で攪拌して均質に製造し、繊維および液状の合成ワックス、液体ポリエチレンもしくはそれらの混合物からなるアルコール分なしの混合物を、前記エマルジョンともに50ないし70℃にて攪拌して混合することを特徴とする、繊維成分をもつマスカラの製造方法。
【請求項2】
脂溶性もしくは油分散性ポリマーまたはコポリマーが、無水マレイン酸、イソプロピルマレアートおよびオレフィンモノマーからの30ないし45炭素原子をもつコポリマー;ビニルピロリドンおよび長鎖アルファ−オレフィンからのコポリマー;フマル酸、フタル酸およびトリシクロデカンジメチルアルコールとのアジピン酸からのコポリマー;アジピン酸、シクロヘキサン−ジメタノール、無水マレイン酸、ネオペンチルグリコールおよび無水トリメリット酸−モノマーからのコポリマー;アジピン酸およびPPG−10−モノマーからのコポリマー;ポリエチレン;ブタジエン/イソプレン−コポリマー;PVM/MA−コポリマーからのエチルエステルもしくはブチルエステルからのコポリマー;トリコンタニルPVP;C20−40の酸(および)ポリエチレン;PVP/エイコセン;ビス−ジグリセリルポリアシルアジペート−1;ポリビニルーオクタデシルエーテル;ならびにこれらの混合物からなる群から少なくとも選択されることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
脂溶性もしくは油分散性ポリマーまたはコポリマーが、トリコンタニルPVP、C20−40の酸(および)ポリエチレン、PVP/エイコセンならびにこれらの混合物からなる群から少なくとも選択されることを特徴とする、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記繊維として、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、綿繊維、テフロン(登録商標)繊維および特にLycra(登録商標)繊維を使用することを特徴とする、請求項1ないし3記載の製造方法。
【請求項5】
前記繊維として、平均長4ないし4.5mmであるような繊維を使用することを特徴とする、請求項1ないし4記載の製造方法。
【請求項6】
油相中に使用されるワックスで、約25℃以下で固体になる前記天然または合成のワックスが、好ましくは蜜ろう、オゾケライト、カルナウバろう、キャンデリラろう、羊毛脂、固形パラフィン、セレシン、シリコンワックス、ポリエチレングリコールワックスまたはグリコールエステルワックスであることを特徴とする、請求項1ないし5記載の製造方法。

【公表番号】特表2007−510693(P2007−510693A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538805(P2006−538805)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012855
【国際公開番号】WO2005/044204
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(500080007)
【Fターム(参考)】