説明

線維筋痛症の治療のためのサリドマイドを含んでなる方法および組成物

線維筋痛症および関連症状を治療、予防、調節および/または管理する方法が開示される。具体的な実施形態は、サリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグの、単独でのあるいは第2の活性薬剤および/または理学療法もしくは心理療法と組み合わせた投与を包含する。本発明の方法において使用するのに好適な医薬組成物、単一単位剤形およびキットもまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 発明の属する技術分野
本発明は、単独または公知の治療薬との併用でのサリドマイドの投与を含む、線維筋痛症および関連症候群を治療、予防、調節および/または管理する方法に関する。本発明はまた、医薬組成物および投薬計画に関する。特に、本発明は、線維筋痛症および関連症候群のための理学療法もしくは心理療法および/または他の標準的な治療法との併用でのサリドマイドの使用を包含する。
【背景技術】
【0002】
2. 発明の背景
サリドマイドは、商品名Thalomid(登録商標)のもとで販売されるラセミ化合物であり、化学的名称はα-(N-フタルイミド)グルタルイミドまたは2-(2,6-ジオキソ-3-ピペリジニル)-1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオンである。この化合物は構造I:
【化1】

【0003】
を有する。
【0004】
サリドマイドは当初、つわりを治療するために1950年代に開発されたが、その催奇性作用に起因して使用が中止された。サリドマイドは、らい病におけるらい性結節性紅斑の皮膚症状の急性的な治療のために米国で認可されている。Physicians' Desk Reference, 1153-1157(第57版, 2003)。妊娠した女性への投与が先天異常を引き起こし得るため、サリドマイドの販売は厳重に管理されている。同文献。サリドマイドは、他の疾患(例えば、慢性移植片対宿主病、関節リウマチ、サルコイドーシス、ある種の炎症性皮膚疾患および炎症性腸疾患)の治療において研究されてきた。一般的には、Koch,H.P., Prog.Med.Chem.22:165-242(1985)を参照のこと。Moller,D.R.ら, J.Immunol.159:5157-5161(1997);Vasiliauskas, E.A.ら, Gastroenterology 117:1278-1287(1999);Ehrenpreis,E.D.ら, Gastroenterology 117:1271-1277(1999)もまた参照のこと。さらに、サリドマイドは、冠閉塞および脳閉塞に伴う虚血/再灌流を治療するために他の薬物と併用することができるとされている。米国特許第5,643,915号を参照のこと(参照により本明細書に組み込まれる)。
【0005】
より最近、サリドマイドは、種々の疾患状態、AIDSでの悪液質、およびAIDSでの日和見感染において、免疫調節作用および抗炎症作用を発揮することが見出された。サリドマイドの生理学的標的を明らかにするための研究では、この薬物は、神経毒性、催奇性、単球/マクロファージによるTNF-α産生および高レベルのTNF-αに付随する炎症毒性の抑制、ならびに血管新生および新血管形成の阻害をはじめとする、その鎮静作用以外の広範な種々の生物学的活性を有することが見出された。
【0006】
さらに、種々の皮膚科学的症状、潰瘍性大腸炎、クローン病、ベーチェット症候群、全身性エリテマトーデス、アフタ性潰瘍、癌およびループスにおいて、有益な作用が観察されている。in vivoモデルではサリドマイドの抗血管新生特性が報告されている。D'Amato ら, Thalidomide Is An Inhibitor Of Angiogenesis, 1994, PNAS, USA 91:4082-4085。
【0007】
しかし、サリドマイドの活性スペクトルは完全には特定されていない。in vitro研究および予備的臨床試験から入手可能なデータは、異なる条件下ではこの化合物の免疫学的作用がかなり変動し得ることを示唆している。サリドマイドは、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)産生の抑制および白血球の遊走に関与する選択された細胞表面接着分子のダウンモジュレーションに関与する可能性がある。
【0008】
2.1 線維筋痛症の病理生物学
線維筋痛症は、広汎性の疼痛、疲労、不眠および特定の部位での再現性のある圧痛の増大を特徴とする、筋骨格系の複数の領域における慢性の痛みにより構成される臨床的症候群である。Bradley ら, Rheum Dis Clin North Am 1999, 25(1):56;およびPellegrino ら, Arch Phys Med Rehabil, 1999, 70:61。線維筋痛症は、FM、線維筋痛症候群(FMS)、結合組織炎、筋筋膜症候群および広汎性慢性疼痛症候群としても知られている。Pellegrino ら, Arch Phys Med Rehabil, 1999, 70:61。線維筋痛症は、外傷、リウマチ性疾患(例えば、関節リウマチおよび骨関節炎)、結合組織疾患、甲状腺機能低下症、悪性腫瘍および他の状態に対して二次的に起こり得る。同文献。これらの状態のうちの1つに付随しない場合には、その線維筋痛症は原発性である。同文献。
【0009】
線維筋痛症の患者における疼痛は、軸骨格から、主に筋肉を含む身体の広い領域にわたってびまん性に広がり、消耗性、灼熱感がある、不愉快、または耐え難いものであると記載されている。線維筋痛症の診断のための1990年のAmerican College of Rheumatology(ACR)分類基準は、3カ月間より長期の広汎性の疼痛、および11箇所以上の規定された圧痛点での約4kg/cm2の手動圧力によって誘発可能な単なる圧痛ではない疼痛の存在となっている。Bradley ら, Rheum Dis Clin North Am 1999, 25(1):56。
【0010】
線維筋痛症の患者における疼痛は、侵害受容質と非侵害受容質(例えば、接触、暖かさ、冷たさ)との識別に関する疼痛知覚閾値、およびより強い刺激を受容することに対する嫌悪に関する疼痛耐容性についての閾値における全般な低下に部分的に由来する。Bradley ら, Rheum Dis Clin North Am 1999, 25(1):59。
【0011】
精神的苦痛は、線維筋痛症の患者の疼痛経験および全体的な病的状態において中心的な役割を果たす。Bradley ら, Rheum Dis Clin North Am 1999, 25(1):59-60。精神的苦痛の増大は、線維筋痛症の一般的な特徴である。精神的苦痛は、線維筋痛症の患者および一般集団のいずれにおいても、圧痛点の数と強く相関する。高レベルの不安および苦痛、疼痛の解消の不確実性、ならびに外傷の前歴は、その患者が急性疼痛から慢性疼痛に進行するかどうかの予測因子である。同文献。
【0012】
この症候群の発症率は、男性よりも女性において高いが、両方の性別が罹患する。Pellegrino ら, Arch Phys Med Rehabil, 1999, 70:62。この症候群は、小児集団をはじめとするいずれの年齢のグループにおいても発生し得る。Gedalia ら, Clinical and Experimental Rheumatology, 2000, 18:415-419。線維筋痛症の原因は多因子性のようである。多様な原因として以下が挙げられるが、これらに限定されない:生物学的変数(例えば、遺伝、異常睡眠、外傷、組織損傷、悪性腫瘍、ストレス、神経内分泌および自律神経失調、神経伝達物質異常、中枢性感作につながるニューロン活性化、低カルシウムレベル、低セロトニンレベル、上昇したレベルのサブスタンスP、上昇したレベルの脳脊髄液(CSF)神経成長因子、上昇したレベルのCSFダイノルフィンA、上昇したレベルのCSFカルシトニン遺伝子関連ペプチド、および種々の他の抗侵害受容性分子)、機能的脳活性の異常(視床および尾状核における局所的血流低下)、神経的に媒介される低血圧、認知-行動変数(例えば、幼少期の有害な経験、機能不全または慢性的に病気の親を持つ子供として生活することにより習得した行動、自己有効性(self-efficacy)の低下につながる目的指向行動での失敗、目的達成能力の欠如、失敗に対する恐怖、ストレス、抑うつおよび不安)、ならびに環境的および社会-文化的変数(幼少期の心理社会的経験および配偶者または家族のサポートの欠如を含む)。Bradley ら, Rheum Dis Clin North Am 1999, 25(1):61-70;およびPellegrino ら, Arch Phys Med Rehabil, 1999, 70:62。
【非特許文献1】Physicians' Desk Reference, 1153-1157(第57版, 2003)
【非特許文献2】Koch,H.P., Prog.Med.Chem.22:165-242(1985)
【非特許文献3】Moller,D.R.ら, J.Immunol.159:5157-5161(1997)
【非特許文献4】Vasiliauskas, E.A.ら, Gastroenterology 117:1278-1287(1999)
【非特許文献5】Ehrenpreis,E.D.ら, Gastroenterology 117:1271-1277(1999)
【非特許文献6】D'Amato ら, Thalidomide Is An Inhibitor Of Angiogenesis, 1994, PNAS, USA 91:4082-4085
【非特許文献7】Bradley ら, Rheum Dis Clin North Am 1999, 25(1):56, 59-70
【非特許文献8】Pellegrino ら, Arch Phys Med Rehabil, 1999, 70:61-62
【非特許文献9】Gedalia ら, Clinical and Experimental Rheumatology, 2000, 18:415-419
【特許文献1】米国特許第5,643,915号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
2.2 線維筋痛症の治療
現在まで、線維筋痛症および関連症候群に有効な治療はほとんど存在していない。一部のケースでは理学療法が用いられる。線維筋痛症のための理学療法としては、マッサージおよび段階的な有酸素運動(例えば、低強度のエアロビクス、ウォーキング、水中エアロビクス、水泳およびサイクリングマシン)が挙げられる。Gedalia ら, Clinical and Experimental Rheumatology, 2000, 18:418。しかし、別の人間による理学療法および治療様式(modality)の施行への過度の依存は、疼痛制御のために自己有効性を達成しようとする患者の努力を混乱させる可能性がある。
【0014】
線維筋痛症の治療のために現在使用される医薬としては、抗不安剤、催眠剤、筋弛緩剤、非麻薬性鎮痛剤、オピオイド性鎮痛剤、抗うつ剤、抗痙攣剤および降圧剤が挙げられる。Gedalia ら, Clinical and Experimental Rheumatology, 2000, 18:418。しかし、これらの薬物が完全な疼痛の緩和をもたらすことはまれである。したがって、線維筋痛症を治療および管理する安全かつ有効な方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
3. 発明の概要
本発明は、線維筋痛症を治療または予防する方法であって、それを必要とする患者に、治療上または予防上有効量のサリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを投与するステップを含む方法を包含する。本発明はまた、線維筋痛症を調節または管理する方法であって、そのような管理を必要とする患者に、治療上または予防上有効量のサリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを投与するステップを含む方法を包含する。
【0016】
本発明の別の実施形態は、線維筋痛症を治療または予防するために現在使用されている他の治療剤(例えば、抗うつ剤、降圧剤、抗不安剤、催眠剤、抗痙攣剤、カルシウムチャネルブロッカー、筋弛緩剤、非麻薬性鎮痛剤、オピオイド性鎮痛剤、α-アドレナリン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、抗炎症剤、cox-2阻害剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、高圧酸素、JNK阻害剤およびコルチコステロイドであるがこれらに限定されない)との併用でのサリドマイドの使用を包含する。
【0017】
本発明のまた別の実施形態は、線維筋痛症を治療、予防、調節または管理するために使用される従来の療法(手術、介入処置(例えば、神経遮断)、理学療法および心理療法を含むがこれらに限定されない)との併用でのサリドマイドの使用を包含する。
【0018】
本発明はさらに、線維筋痛症を治療、予防、調節および/または管理する際に使用するのに好適な医薬組成物、単一単位剤形およびキットであって、サリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを含んでなるものを包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
4. 発明の詳細な説明
本発明は、一部には、本発明の化合物が、種々のタイプおよび重篤度の線維筋痛症を有効に治療、予防、調節および/または管理するために、単独でまたは他の薬物との併用で作用し得るという考えに基づく。理論によって限定されることなく、本発明の化合物は、必ずではないものの鎮痛剤として作用し得る。特に、該化合物はサイトカイン(例えば、TNF-α)の産生に劇的に影響を与え得るので、これらの化合物は、それらが投与される損傷を受けた動物またはヒトのベースラインまたは正常な疼痛閾値を回復することによって、「抗痛覚過敏剤」(antihyperalgesics)および/または「神経調節物質」として機能し得ると考えられる。したがって、本発明の化合物は、典型的には刺激により誘導される応答を消滅させる鎮痛剤とは異なり、疼痛に伴う苦痛を抑制することまたは侵害受容器の応答性を直接的に低減させることのいずれかによって、応答に耐える患者の能力を変更することにより作用することができる。さらに、本発明の化合物が作用すると考えられる独自の機構に起因して、これらの化合物は、全身的に投与された場合でさえ、一部の鎮痛剤(例えば、オピオイド)に典型的な有害作用(例えば、麻酔効果)を引き起こすことなく疼痛を緩和または低減し得ると考えられる。
【0020】
本発明の第1の実施形態は、線維筋痛症を治療、予防、調節または管理する方法であって、それを必要とする患者に、治療上または予防上有効量のサリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを投与するステップを含む方法を包含する。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「線維筋痛症」、「線維筋痛症候群」、「筋筋膜症候群」および「線維筋痛症および関連症候群」とは、以下のうち1つ以上により特徴付けられる慢性疼痛障害を意味する:異痛症(通常は痛みを伴わない刺激に対する痛みを伴う応答)および痛覚過敏(通常軽い痛みを伴うだけの刺激に対する誇張された応答)をはじめとする疼痛;一連の局所的疼痛(例えば、非心臓性の胸部痛、消化不良、頭痛、腹部痙攣(過敏性腸症候群)、側頭下顎痛および慢性骨盤痛);硬直;筋骨格系の複数の領域における慢性的な痛み;疲労;不眠;圧痛点;注意および記憶に関する認知困難;体重変動;アレルギー症状(例えば、鼻づまり);環境刺激(例えば、臭い、強い光、大きな騒音)および医薬に対する過敏症;失神;息切れ;ならびに頻尿および尿意ひっ迫。
【0022】
本発明の別の実施形態は、疼痛の閾値、発生および持続時間を調節または調整する方法であって、このような調節または調整を必要とする患者に、治療上または予防上有効量のサリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを投与するステップを含む方法を包含する。
【0023】
本発明の別の実施形態は、線維筋痛症の治療、予防、調節または管理に好適な医薬組成物であって、サリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグおよび付加的な担体を含んでなる医薬組成物を包含する。
【0024】
線維筋痛症を治療、予防、調節または管理する際に使用するのに好適な単一単位剤形であって、サリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグおよび付加的な担体を含有するものもまた本発明によって包含される。
【0025】
本発明の別の実施形態は、線維筋痛症を治療、予防、調節または管理する際に使用するのに好適なキットであって、サリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを含んでなる医薬組成物を含むキットを包含する。本発明はさらに、単一単位剤形を含むキットを包含する。
【0026】
理論によって限定されることなく、線維筋痛症の症状を治療するために使用されるサリドマイドおよび他の医薬は、線維筋痛症の治療、予防、調節または管理において相補的または相乗的な方法で作用し得ると考えられる。したがって、本発明の一実施形態は、線維筋痛症を治療、予防、調節および/または管理する方法であって、それを必要とする患者に、治療上または予防上有効量のサリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグ、および治療上または予防上有効量の第2の活性薬剤を投与するステップを含む方法を包含する。
【0027】
第2の活性薬剤の例としては、抗うつ剤、降圧剤、抗不安剤、催眠剤、抗痙攣剤、カルシウムチャネルブロッカー、筋弛緩剤、非麻薬性鎮痛剤、オピオイド性鎮痛剤、α-アドレナリン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、抗炎症剤、cox-2阻害剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、高圧酸素、JNK阻害剤、コルチコステロイドおよび、例えばPhysician's Desk Reference(2003)中に見出される他の治療剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0028】
本発明はまた、サリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグ、および第2の活性薬剤を含んでなる医薬組成物、単一単位剤形およびキットを包含する。例えば、キットは、サリドマイドおよび抗うつ剤、降圧剤、抗不安剤、催眠剤、抗痙攣剤、カルシウムチャネルブロッカー、筋弛緩剤、非麻薬性鎮痛剤、オピオイド性鎮痛剤、α-アドレナリン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、抗炎症剤、cox-2阻害剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、高圧酸素、JNK阻害剤、コルチコステロイドまたは線維筋痛症の症状を緩和もしくは軽減することができる他の薬物を含んでよい。
【0029】
さらに、サリドマイドは、線維筋痛症を治療するために使用される治療剤の投与に付随する有害作用を低減または排除し、したがって患者に対するより大きな量のそれらの薬剤の投与を可能にしかつ/または患者の服薬率を増大させることができると考えられる。結果として、本発明の別の実施形態は、線維筋痛症に罹患した患者において第2の活性薬剤の投与に付随する有害作用を逆転、低減または回避する方法であって、それを必要とする患者に、治療上または予防上有効量のサリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを投与するステップを含む方法を包含する。このような有害作用の例としては、嘔吐、不眠症および下痢が挙げられるがこれらに限定されない。
【0030】
本明細書の他の箇所で述べられているように、線維筋痛症の症状は、理学療法および心理療法を用いて処置される場合がある。理論によって限定されることなく、このような従来の療法とサリドマイドとの併用は、線維筋痛症の独自に有効な治療を提供し得ると考えられる。したがって、本発明は、線維筋痛症を治療、予防、調節および/または管理する方法であって、患者(例えばヒト)に、理学療法、心理療法または他の従来の非薬物ベースの線維筋痛症治療の前、その間またはその後に、サリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを投与するステップを含む方法を包含する。
【0031】
本発明において使用される化合物としては、ラセミ体サリドマイド、立体異性体的に富化されたか、または立体異性体的に純粋なサリドマイド、ならびにその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートおよびプロドラッグが挙げられる。
【0032】
本明細書で使用する場合、別に示されない限り、用語「立体異性体的に純粋」とは、ある化合物の1種類の立体異性体からなり、該化合物の他の立体異性体を実質的に含まない組成物を意味する。典型的な立体異性体的に純粋な化合物は、約80重量%を超える該化合物の1種類の立体異性体および約20重量%未満の該化合物の他の立体異性体を含み、より好ましくは約90重量%を超える該化合物の1種類の立体異性体および約10重量%未満の該化合物の他の立体異性体を含み、さらにより好ましくは約95重量%を超える該化合物の1種類の立体異性体および約5重量%未満の該化合物の他の立体異性体を含み、そして最も好ましくは約97重量%を超える該化合物の1種類の立体異性体および約3重量%未満の該化合物の他の立体異性体を含んでなる。
【0033】
本明細書で使用する場合、別に示されない限り、用語「立体異性体的に富化された」とは、約60重量%を超えるある化合物の1種類の立体異性体、好ましくは約70重量%を超える該化合物の1種類の立体異性体、より好ましくは約80重量%を超える該化合物の1種類の立体異性体を含んでなる組成物を意味する。
【0034】
本明細書で使用する場合、別に示されない限り、用語「エナンチオマー的に純粋」とは、1つのキラル中心を有する化合物の立体異性体的に純粋な組成物を意味する。同様に、用語「エナンチオマー的に富化された」とは、1つのキラル中心を有する化合物の立体異性体的に富化された組成物を意味する。
【0035】
サリドマイドは、商業的に購入するか(Celgene Corp., New Jerseyから)、または公知の方法に従って調製するかのいずれかであり得る。例えば、The Merck Index, p.9182(第11版;1989)およびその中に開示されている参考文献を参照のこと。エナンチオマー的に純粋なサリドマイドは、公知の分割剤またはキラルカラムならびに他の標準的な合成有機化学技術を使用してラセミ分割することができる。例えば、Blaschke, Arzneimittelforschung 29:1640-1642(1979);Shealy ら, Chem.Indus.1030(1965);およびCasini ら, Farmaco Ed.Sci.19:563(1964)を参照のこと。
【0036】
本明細書で使用する場合、別に特定されない限り、本明細書で使用する用語「製薬上許容される塩」には、サリドマイドの酸性または塩基性部分の塩が含まれるがこれらに限定されない。塩基性部分は、種々の無機酸および有機酸と共に広範な塩を形成することができる。このような塩基性化合物の製薬上許容される酸付加塩を調製するために使用し得る酸は、無毒の酸付加塩、すなわち薬理学的に許容されるアニオンを含む塩を形成する酸である。好適な有機酸としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、コハク酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、桂皮酸、オレイン酸、タンニン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、グリコール酸、グルタミン酸、グルコン酸、グルクロン酸(glucaronic acid)、糖酸、イソニコチン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはパモ酸(pamoic acid)(すなわち、1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))。好適な無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸または硝酸が挙げられるがこれらに限定されない。アミン部分を含む化合物は、上記の酸に加えて、種々のアミノ酸と共に製薬上許容される塩を形成し得る。
【0037】
元来酸性である化合物は、種々の製薬上許容される塩基と共に塩を形成することができる。このような酸性化合物の製薬上許容される塩基付加塩を調製するために使用し得る塩基は、無毒の塩基付加塩、すなわち薬理学的に許容されるカチオンを含む塩(例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、および特にカルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩であるがこれらに限定されない)を形成する塩基である。好適な有機塩基としては、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(meglumaine)(N-メチルグルカミン)、リジンおよびプロカインが挙げられるがこれらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用する場合、別に示さない限り、用語「プロドラッグ」とは、生物学的条件下(in vitroまたはin vivo)で加水分解、酸化または他の方法で反応して、ある化合物を提供し得る、該化合物の誘導体を意味する。プロドラッグの例としては、生体加水分解可能な(biohydrolyzable)部分を含むサリドマイドの誘導体、例えば、生体加水分解可能なアミド、生体加水分解可能なエステル、生体加水分解可能なカルバメート、生体加水分解可能なカーボネート、生体加水分解可能なウレイドおよび生体加水分解可能なホスフェートアナログが挙げられるがこれらに限定されない。プロドラッグの他の例としては、-NO、-NO2、-ONOまたは-ONO2部分を含むサリドマイドの誘導体が挙げられる。プロドラッグは典型的に、周知の方法、例えば1 Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery, 172-178, 949-982(Manfred E.Wolff編, 第5版, 1995)およびDesign of Prodrugs(H.Bundgaard編, Elselvier, New York, 1985)中に記載されている方法を使用して調製することができる。
【0039】
本明細書で使用する場合、別に示されない限り、用語「生体加水分解可能なアミド」、「生体加水分解可能なエステル」、「生体加水分解可能なカルバメート」、「生体加水分解可能なカーボネート」、「生体加水分解可能なウレイド」、「生体加水分解可能なホスフェート」とはそれぞれ、ある化合物のアミド、エステル、カルバメート、カーボネート、ウレイドまたはホスフェートであって、以下のいずれかであるものを意味する:1)その化合物の生物学的活性を妨害しないが、その化合物にin vivoでの有利な特性(例えば、取り込み、作用の持続時間、または作用の開始)を付与し得るもの;または2)生物学的に不活性であるが、生物学的に活性な化合物にin vivoで変換されるもの。生体加水分解可能なエステルの例としては、低級アルキルエステル、低級アシルオキシアルキルエステル(例えば、アセトキシルメチルエステル、アセトキシエチルエステル、アミノカルボニルオキシメチルエステル、ピバロイルオキシメチルエステル、およびピバロイルオキシエチルエステル)、ラクトニルエステル(lactonyl ester)(例えば、フタリジルエステルおよびチオフタリジルエステル)、低級アルコキシアシルオキシアルキルエステル(例えば、メトキシカルボニルオキシメチルエステル、エトキシカルボニルオキシエチルエステルおよびイソプロポキシカルボニルオキシエチルエステル)、アルコキシアルキルエステル、コリンエステルおよびアシルアミノアルキルエステル(例えば、アセトアミドメチルエステル) が挙げられるがこれらに限定されない。生体加水分解可能なアミドの例としては、低級アルキルアミド、α-アミノ酸アミド、アルコキシアシルアミド、およびアルキルアミノアルキルカルボニルアミドが挙げられるがこれらに限定されない。生体加水分解可能なカルバメートの例としては、低級アルキルアミン、置換エチレンジアミン、アミノ酸、ヒドロキシアルキルアミン、複素環アミンおよび複素芳香族アミン、ならびにポリエーテルアミンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0040】
4.1 第2の活性薬剤
第2の活性成分または薬剤を、サリドマイドと共に本発明の方法および組成物に使用することができる。好ましい実施形態では、この第2の活性薬剤は、疼痛を緩和すること、炎症反応を阻害すること、鎮静作用または抗神経痛作用を提供すること、抑うつおよび不安を軽減すること、または患者に安息を確保することができるものである。
【0041】
第2の活性薬剤の例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:オピオイド性鎮痛剤、非麻薬性鎮痛剤、抗炎症剤、cox-2阻害剤、α-アドレナリン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、ケタミン、麻酔剤、NMDAアンタゴニスト、免疫調節剤、免疫抑制剤、抗うつ剤、催眠剤、抗痙攣剤、降圧剤、抗不安剤、カルシウムチャネルブロッカー、筋弛緩剤、コルチコステロイド、高圧酸素、JNK阻害剤、疼痛を緩和することが知られている他の治療剤、ならびにそれらの製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート、プロドラッグおよび薬理学的に活性な代謝物。
【0042】
オピオイドは、重篤な疼痛を治療するために使用することができる。オピオイド性鎮痛剤の例としては、オキシコドン(OxyContin(登録商標))、硫酸モルヒネ(MS Contin(登録商標)、Duramorph(登録商標)、Astramorph(登録商標))、メペリジン(Demerol(登録商標))およびフェンタニル経皮パッチ(Duragesic(登録商標))および他の公知の慣用の医薬が挙げられるがこれらに限定されない;例えば、Physicians' Desk Reference, 2834, 2851および2991(第57版, 2003)を参照のこと。オキシコドン(OxyContin(登録商標))は、長期作用形態のオピオイドであり、線維筋痛症の患者に一般に使用される。硫酸モルヒネは、信頼性のある予測可能な作用、安全性プロフィールおよびナロキソンによる作用の打消しの容易さのため、鎮痛のために使用することがある。例えば、Physicians' Desk Reference, 2834(第57版, 2003)を参照のこと。
【0043】
降圧剤は、オピオイドの漸減の間の禁断症状を制御する際に使用することができる。クロニジン(Catapres(登録商標))は、脳幹においてα-2アドレナリン受容体を刺激して抑制性ニューロンを活性化し、その結果、交感神経の出力を減少させる。例えば、Physicians' Desk Reference, 1033(第57版, 2003)を参照のこと。
【0044】
非麻薬性鎮痛剤および抗炎症剤は、好ましくは妊娠および授乳中の疼痛の治療のために使用する。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)やcox-2阻害剤などの抗炎症剤は、典型的には、プロスタグランジン合成を担うシクロオキシゲナーゼの活性を低下させることによって炎症反応および疼痛を阻害する。NSAIDは、線維筋痛症の初期ステージにおいて疼痛の緩和をもたらすことができる。抗炎症剤の例としては、サリチル酸アセテート(Aspirin(登録商標))、アセタミノフェン(Tylenol(登録商標)、Feverall(登録商標)、Tempra(登録商標)、Aspirin-Free Anacin(登録商標))、イブプロフェン(Motrin(登録商標)、Advil(登録商標))、ケトプロフェン(Oruvail(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))、ナプロキセンナトリウム(Anaprox(登録商標)、Naprelan(登録商標)、Naprosyn(登録商標))、ケトロラック(Acular(登録商標))および他の公知の慣用の医薬が挙げられるがこれらに限定されない。具体的なcox-2阻害剤はセレコキシブ(Celebrex(登録商標))である。例えば、Physicians' Desk Reference, 1065, 1903, 1910および2891(第57版, 2003);Physicians' Desk Reference for Nonprescription Drugs and Dietary Supplements, 511, 667および773(第23版, 2002)を参照のこと。
【0045】
抗うつ剤は、シナプス前ニューロン膜による再取り込みを阻害することによって、CNSにおいてセロトニンおよび/またはノルエピネフリンのシナプス濃度を増大させる。抗うつ剤の例としては、ケタミン、ノルトリプチリン(Pamelor(登録商標))、アミトリプチリン(Elavil(登録商標))、イミプラミン(Tofranil(登録商標))、ドキセピン(Sinequan(登録商標))、クロミプラミン(Anafranil(登録商標))、フルオキセチン(Prozac(登録商標))、セルトラリン(Zoloft(登録商標))、ネファゾドン(Serzone(登録商標))、ベンラファキシン(Effexor(登録商標))、トラゾドン(Desyrel(登録商標))、ブプロピオン(Wellbutrin(登録商標))および他の公知の慣用の医薬が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、Physicians' Desk Reference, 329, 1417, 1831および3270(第57版, 2003)を参照のこと。
【0046】
抗痙攣薬もまた、線維筋痛症および関連症候群の慢性疼痛状態のために本発明の実施形態で使用することができる。これらはまた、疼痛に伴う抑うつおよび不安を緩和し得る。抗痙攣剤の例としては、カルバマゼピン(Tegretol(登録商標))、オクスカルバゼピン(Trileptal(登録商標))、ガバペンチン(Neurontin(登録商標))、フェニトイン、バルプロ酸ナトリウム、クロナゼパム、トピラメート、ラモトリジン、ゾニサミド、およびチアガビンが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、Physicians' Desk Reference, 2323(第57版, 2003)を参照のこと。
【0047】
抗不安剤および催眠剤は、不安およびパニックを軽減するために、ならびに不眠が線維筋痛症においてほぼ普遍的であるので睡眠補助剤として、使用することができる。これらはまた、慢性疼痛を有する患者において抗侵害受容作用を有する。抗不安剤はしばしば、抗うつ剤および抗てんかん薬と併用して使用される。アルプラゾラム(Xanax(登録商標))、ロラゼパム(Ativan(登録商標))、クロナゼパム(Klonopin(登録商標))、ブスピロン(BuSpar(登録商標))、トラゾドン(Desyrel(登録商標))、ゾルピデム(Ambien(登録商標))およびテマゼパム(Restoril(登録商標))は、サリドマイドとの併用において有用である。例えば、Physicians' Desk Reference, 1280, 2517および2794(第57版, 2003)を参照のこと。
【0048】
骨格筋弛緩剤(例えば、シクロベンザプリン(Flexeril(登録商標))またはカリソプロドール(Soma(登録商標)))は、筋肉の緊張に付随する侵害受容性疼痛のための補助的療法として使用することができる。例えば、Physicians' Desk Reference, 1897および3254(第57版, 2003)を参照のこと。
【0049】
コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、デキサメタゾンまたはヒドロコルチゾン)、経口的に活性なクラスIb抗不整脈剤(例えば、メキシレチン)、カルシウムチャネルブロッカー(例えば、ニフェジピン)、β-ブロッカー(例えば、プロプラノロール)、α-ブロッカー(例えば、フェノキシベンザミン)、およびα2-アドレナリンアゴニスト(例えば、クロニジン)もまた、サリドマイドと併用して使用することができる。例えば、Physicians' Desk Reference, 1034, 1979, 2190および3404(第57版, 2003)を参照のこと。
【0050】
本発明で用いる具体的な第2の活性薬剤としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:サリチル酸アセテート(Aspirin(登録商標))、アセタミノフェン(Tylenol)、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、Enbrel(登録商標)、ケタミン、ガバペンチン(Neurontin(登録商標))、フェニトイン(Dilantin(登録商標))、カルバマゼピン(Tegretol(登録商標))、オクスカルバゼピン(Trileptal(登録商標))、バルプロ酸(Depakene(登録商標))、硫酸モルヒネ、ヒドロモルフォン、プレドニゾン、グリセオフルビン、ペントニウム(penthonium)、アレンドロネート、ジフェンヒドラミド(dyphenhydramide)、グアネチジン、ケトロラック(Acular(登録商標))、チロカルシトニン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロニジン(Catapress(登録商標))、ブレチリウム、ケタンセリン、レセルピン、ドロペリドール、アトロピン、フェントラミン、ブピバカイン、リドカイン、アセタミノフェン、ノルトリプチリン(Pamelor(登録商標))、アミトリプチリン(Elavil(登録商標))、イミプラミン(Tofranil(登録商標))、ドキセピン(Sinequan(登録商標))、クロミプラミン(Anafranil(登録商標))、フルオキセチン(Prozac(登録商標))、セルトラリン(Zoloft(登録商標))、ネファゾドン(Serzone(登録商標))、ベンラファキシン(Effexor(登録商標))、トラゾドン(Desyrel(登録商標))、ブプロピオン(Wellbutrin(登録商標))、メキシレチン、ニフェジピン、プロプラノロール、トラマドール、ラモトリジン、ジコノチド、ケタミン、デキストロメトルファン、ベンゾジアゼピン、バクロフェン、チザニジン、フェノキシベンザミン、アルプラゾラム(Xanax(登録商標))、ロラゼパム(Ativan(登録商標))、クロナゼパム(Klonopin(登録商標))、ブスピロン(BuSpar(登録商標))、トラゾドン(Desyrel(登録商標))、ゾルピデム(Ambien(登録商標))、テマゼパム(Restoril(登録商標))、シクロベンザプリン(Flexeril(登録商標))およびカリソプロドール(Soma(登録商標))。
【0051】
4.2 治療および管理の方法
本発明の方法は、種々のタイプの線維筋痛症および関連症候群を予防、治療、調節および/または管理する方法を包含する。本明細書で使用する場合、別に特定されない限り、用語「線維筋痛症を予防すること」には、線維筋痛症に関連する1つ以上の症状を阻害するかまたはその重篤度を低減することが含まれるがこれらに限定されない。線維筋痛症に関連する症状としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:異痛症(通常は痛みを伴わない刺激に対する痛みを伴う応答)および痛覚過敏(通常軽い痛みを伴うだけの刺激に対する誇張された応答)をはじめとする疼痛;一連の局所的疼痛(例えば、非心臓性の胸部痛、消化不良、頭痛、腹部痙攣(過敏性腸症候群)、側頭下顎の疼痛および慢性骨盤痛);疲労;不眠;圧痛点;注意および記憶に関する認知困難;体重変動;アレルギー症状(例えば、鼻づまり);環境刺激(例えば、臭い、強い光、大きな騒音)および医薬に対する過敏症;失神;息切れ;頻尿および尿意ひっ迫;自律神経機能不全;抑うつ;ならびに不安。
【0052】
本明細書で使用する場合、別に特定されない限り、用語「線維筋痛症を治療すること」とは、線維筋痛症の症状発生後のサリドマイドまたは他の付加的な活性薬剤の投与をいうが、「予防すること」とは、特に線維筋痛症のリスクがある患者への、症状発生前の投与をいう。線維筋痛症のリスクがある患者の例としては、外傷、神経学的障害、心筋梗塞、骨格筋障害、リウマチ性疾患、結合組織疾患、甲状腺機能低下症および悪性腫瘍が発生している患者が挙げられるがこれらに限定されない。線維筋痛症および関連症候群の家族歴を有する患者もまた、予防的処方のための好ましい候補である。
【0053】
本明細書で使用する場合、別に示されない限り、用語「線維筋痛症を調節すること」は、疼痛の閾値、発生および/または持続時間を調節すること、あるいは疼痛に対して患者が応答する様式を変化させることを包含する。理論によって束縛されることなく、本発明の化合物は、抗痛覚過敏剤および/または神経調節物質として作用し得ると考えられる。一実施形態において、「線維筋痛症を調節すること」は、患者の誇張された疼痛応答(すなわち、特定の刺激に応答して、患者が正常の疼痛よりも強い疼痛を経験するレベル)を低減または除去すること、ヒトまたは動物のシステムを正常な疼痛閾値にまで戻すことを包含する。別の実施形態では、「線維筋痛症を調節すること」は、特定の強度の刺激に対する患者の疼痛応答を低減することを含む。別の実施形態では、「線維筋痛症を調節すること」は、このような調節の前の患者の疼痛閾値と比較して、その患者の疼痛閾値を引き上げることを包含する。
【0054】
本明細書で使用する場合、別に示されない限り、用語「線維筋痛症を管理すること」は、線維筋痛症に罹患した患者での線維筋痛症の再発を予防すること、および/または線維筋痛症に罹患した患者が寛解したままでいる時間を延長させることを包含する。
【0055】
本発明は、種々のステージおよび特定のタイプの疾患を有する患者において線維筋痛症および関連症候群を治療、予防、調節および管理する方法を包含し、そのような疾患としては、FM、線維筋痛症候群(FMS)、結合組織炎、筋筋膜症候群、広汎性慢性疼痛症候群、慢性疲労症候群、神経根障害および他の有痛性神経障害状態(例えば、糖尿病性神経障害)といったものが挙げられるがこれらに限定されない。線維筋痛症について以前に治療されたが標準的な治療法に対して非応答性の患者、および線維筋痛症について以前に治療されていない患者を治療する方法も、さらに包含される。線維筋痛症の患者は、不均一な(heterogenous)臨床所見および様々な臨床転帰を有するので、患者に施される治療は、患者の予後に依存して変動し得る。熟練の臨床医は、個々の患者を治療するために有効に使用することができる具体的な補助的薬剤および理学療法のタイプを、過度の実験を行わなくとも容易に決定できるであろう。
【0056】
本発明により包含される方法は、線維筋痛症に罹患しているかまたは罹患する可能性が高い患者(例えばヒト)に、サリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを投与するステップを含む。
【0057】
本発明の一実施形態では、サリドマイドを、約50〜約1,500mg/日、好ましくは約50〜約1,000mg/日、そしてより好ましくは約100〜約400mg/日(例えば、約300mg/日)の量で、単一または分割された1日用量として経口投与する。一実施形態では、サリドマイドを約100〜約400mg/日の量で、単一または分割された1日用量として線維筋痛症の患者に経口投与する。別の実施形態では、サリドマイドを、1日おきに、1週間に数回または別の省略された(syncopated)投薬計画で投与する。
【0058】
別の実施形態では、本発明は、計画的な手術(すなわち、計画的な外傷)に伴う線維筋痛症を治療、予防、管理および/または調節する方法であって、それを必要とする患者に有効量のサリドマイドを投与するステップを含む方法に関する。この実施形態において、サリドマイドは、計画的な手術の前、その間および/またはその後に投与することができる。一実施形態では、患者には、約1〜約200mg/日、約1〜約100mg/日、約1〜約75mg/日、約1〜約50mg/日、約5〜約40mg/日、約5〜約25mg/日、または約5〜約10mg/日のサリドマイドを、計画的な手術の約1〜21日前から、および/または計画的な手術の約1〜21日後から投与する。別の実施形態では、この患者には、約10mg/日のサリドマイドを、計画的な手術の約1〜21日前から、および/または計画的な手術の約1〜21日後から投与する。
【0059】
4.2.1 第2の活性薬剤との併用療法
本発明の具体的な方法は、サリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを、第2の活性薬剤または活性成分と併用して投与するステップを含む。第2の活性薬剤の例は本明細書にも開示されている(例えば、4.1節を参照のこと)。
【0060】
患者へのサリドマイドおよび第2の活性薬剤の投与は、同じかまたは異なる投与経路によって、同時または連続的に行うことができる。特定の活性薬剤のために使用される特定の投与経路の好適さは、活性薬剤自体(例えば、血流に入る前に分解することなく経口投与し得るか否か)および治療される疾患に依存するであろう。サリドマイドの好ましい投与経路は経口である。本発明の第2の活性薬剤または活性成分の好ましい投与経路は、当業者に公知である。例えば、Physicians' Desk Reference, 594-597(第57版, 2003)を参照のこと。
【0061】
一実施形態では、第2の活性薬剤は、約1〜約3,500mg、約5〜約2,500mg、約10〜約500mgまたは約25〜約250mgの量で1日1回または2回、経口的に、静脈内に、筋内に、皮下に、粘膜に、または経皮的に投与する。
【0062】
第2の活性薬剤の具体的な量は、使用される具体的な薬剤、治療または管理される線維筋痛症のタイプ、線維筋痛症の重篤度およびステージ、ならびにサリドマイドおよび患者に同時に投与されるいずれかの任意の付加的な活性薬剤の量に依存するであろう。特定の実施形態では、第2の活性薬剤は、IMiDsTM、SelCIDsTM、サリチル酸アセテート(Aspirin(登録商標))、アセタミノフェン(Tylenol)、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、Enbrel(登録商標)、ケタミン、ガバペンチン(Neurontin(登録商標))、フェニトイン(Dilantin(登録商標))、カルバマゼピン(Tegretol(登録商標))、オクスカルバゼピン(Trileptal(登録商標))、バルプロ酸(Depakene(登録商標))、硫酸モルヒネ、ヒドロモルフォン、プレドニゾン、グリセオフルビン、ペントニウム(penthonium)、アレンドロネート、ジフェンヒドラミド(dyphenhydramide)、グアネチジン、ケトロラック(Acular(登録商標))、チロカルシトニン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロニジン(Catapress(登録商標))、ブレチリウム、ケタンセリン、レセルピン、ドロペリドール、アトロピン、フェントラミン、ブピバカイン、リドカイン、アセタミノフェン、ノルトリプチリン(Pamelor(登録商標))、アミトリプチリン(Elavil(登録商標))、イミプラミン(Tofranil(登録商標))、ドキセピン(Sinequan(登録商標))、クロミプラミン(Anafranil(登録商標))、フルオキセチン(Prozac(登録商標))、セルトラリン(Zoloft(登録商標))、ネファゾドン(Serzone(登録商標))、ベンラファキシン(Effexor(登録商標))、トラゾドン(Desyrel(登録商標))、ブプロピオン(Wellbutrin(登録商標))、メキシレチン、ニフェジピン、プロプラノロール、トラマドール、ラモトリジン、ジコノチド、ケタミン、デキストロメトルファン、ベンゾジアゼピン、バクロフェン、チザニジン、フェノキシベンザミン、アルプラゾラム(Xanax(登録商標))、ロラゼパム(Ativan(登録商標))、クロナゼパム(Klonopin(登録商標))、ブスピロン(BuSpar(登録商標))、トラゾドン(Desyrel(登録商標))、ゾルピデム(Ambien(登録商標))、テマゼパム(Restoril(登録商標))、シクロベンザプリン(Flexeril(登録商標))、カリソプロドール(Soma(登録商標))またはこれらの組み合わせ、あるいはこれらの製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート、プロドラッグまたは薬理学的に活性な代謝物である。
【0063】
ヒドロモルフォン(Dilaudid(登録商標))は好ましくは、中程度〜重篤な疼痛を管理するために、経口で約2mg、または静脈内に約1mgの開始用量で投与する。例えば、Physicians' Desk Reference, 441-446(第57版, 2003)を参照のこと。硫酸モルヒネ(Duramorph(登録商標)、Astramorph(登録商標)、MS Contin(登録商標))は好ましくは、患者が既に麻薬性鎮痛剤を摂取したか否かに依存して、約2mg IV/SC/IMの開始用量で投与する。例えば、Physicians' Desk Reference, 594-595(第57版, 2003)を参照のこと。硫酸モルヒネは、即時放出製剤および時限放出製剤の経口形態でも利用可能である。長期作用性の経口形態は、1日2回の投与でもよい。即時放出形態は、それ以前の使用に依存した用量で、疼痛解消の時間だけ必要である場合がある。オキシコドン(OxyContin(登録商標))は、長期作用型のオピオイドであり、線維筋痛症の初期ステージおよび後期ステージで使用することができる。オキシコドン(OxyContin(登録商標))は好ましくは、1日2回、約10〜160mgの量で投与する。例えば、Physicians' Desk Reference, 2851(第57版, 2003)を参照のこと。メペリジン(Demerol(登録商標))は好ましくは、3〜4時間毎に、約50〜150mg PO/IV/IM/SCの量で投与する。メペリジン(Demerol(登録商標))の典型的な小児用量は、3〜4時間毎に、1〜1.8mg/kg(0.5〜0.8mg/lb) PO/IV/IM/SCである。例えば、Physicians' Desk Reference, 2991(第57版, 2003)を参照のこと。
【0064】
非麻薬性鎮痛剤および抗炎症剤(例えば、NSAIDおよびcox-2阻害剤)は、軽度〜中程度の疼痛に見舞われている患者を治療するために使用することができる。イブプロフェン(Motrin(登録商標)、Advil(登録商標))は、1日3回、400〜800mgの量で経口投与する。例えば、Physicians' Desk Reference, 1900(第57版, 2003);Physicians' Desk Reference for Nonprescription Drugs and Dietary Supplements, 511, 667, 773(第23版, 2002)を参照のこと。ナプロキセンナトリウム(Anaprox(登録商標)、Naprelan(登録商標)、Naprosyn(登録商標))もまた好ましくは、軽度〜中程度の疼痛の緩和に対して、1日3回約275mgまたは1日2回約550mgの量で使用することができる。例えば、Physicians' Desk Reference, 2891(第57版, 2003)を参照のこと。アセタミノフェン(Tylenol(登録商標)、Feverall(登録商標)、Tempra(登録商標)、Aspirin-Free Anacin(登録商標))は好ましくは、アスピリンまたはNSAIDに対する過敏症を有する患者での疼痛に対して、4〜6時間毎に約325〜650mgまたは1日3回もしくは4回約1,000mgの量で使用することができる。例えば、Physicians' Desk Reference, 1910-1914(第57版, 2003)を参照のこと。
【0065】
抗うつ剤(例えば、ノルトリプチリン(Pamelor(登録商標)))もまた、慢性および/または神経障害性の疼痛に見舞われている患者を治療するために、本発明の実施形態において使用することができる。経口成人用量は典型的には約25〜100mgの量であるが、200mg/dを超えないことが好ましい。典型的な小児用量は、開始用量としては約0.1mg/kg POであり、耐容性が示されるにつれ、約0.5〜2mg/dまで量を増やす。アミトリプチリン(Etrafon(登録商標))は好ましくは、約10〜100mg POの成人用量で、神経障害性疼痛のために使用する。例えば、Physicians' Desk Reference, 329, 1417, 1831および3270(第57版, 2003)を参照のこと。
【0066】
抗痙攣剤(例えば、ガバペンチン(Neurontin(登録商標)))もまた、慢性および神経障害性の疼痛に見舞われている患者を治療するために使用することができる。好ましくは、ガバペンチンは、1日3回または4回、約100〜1,200mgの量で経口投与する。例えば、Physicians' Desk Reference, 2563(第57版, 2003)を参照のこと。カルバマゼピン(Tegretol(登録商標))は、真性三叉神経痛に関連する疼痛を治療するために使用される。経口成人用量は、典型的には、開始用量として1日2回約100mgの量であり、耐容性が示されるにつれ、約2,400mg/dまで量を増やす。例えば、Physicians' Desk Reference, 2323-25(第57版, 2003)を参照のこと。
【0067】
抗不安剤および催眠剤(例えば、アルプラゾラム(Xanax(登録商標))、ロラゼパム(Ativan(登録商標))、クロナゼパム(Klonopin(登録商標))、ブスピロン(BuSpar(登録商標))、トラゾドン(Desyrel(登録商標))、ゾルピデム(Ambien(登録商標))およびテマゼパム(Restoril(登録商標)))は、分割用量として1日約0.25〜300mgの量で、線維筋痛症の患者において、疼痛、不安およびパニックを緩和するため、ならびに睡眠補助剤として使用することができる。例えば、Physicians' Desk Reference, 1280, 2517および2794(第57版, 2003)を参照のこと。
【0068】
骨格筋弛緩剤は、筋肉の緊張に伴う疼痛のための補助的療法として使用することができる。シクロベンザプリン(Flexeril(登録商標))は、分割用量として、1日約20〜40mgの量で経口投与する。カリソプロドール(Soma(登録商標))は、分割用量として、1日約350mgの量で経口投与する。例えば、Physicians' Desk Reference, 1897および3254(第57版, 2003)を参照のこと。
【0069】
4.2.2 理学療法または心理療法との併用
また別の実施形態では、本発明は、線維筋痛症を治療、予防、調節および/または管理する方法であって、サリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを、理学療法または心理療法と併用して投与するステップを含む方法を包含する。
【0070】
線維筋痛症の患者にとっての運動の利益としては、疼痛の主観的および客観的測定、ならびに健康状態の全体的な感覚における改善が挙げられる。慢性疼痛を有する多くの患者は、活動が彼らの疼痛および疲労を悪化させることを恐れるために、体力が弱くなる。したがって、理学療法(例えば、低強度のエアロビクス、ウォーキング、水中エアロビクス、サイクリングマシン、マッサージおよび水泳)は、機能回復において重要な役割を果たし得る。
【0071】
サリドマイドと理学療法との併用は、一部の患者では予測以上に有効な独自の治療計画を提供し得るものと考えられる。
【0072】
サリドマイドと心理学的治療との併用は、一部の患者では予測以上に有効な独自の治療計画を提供し得るものと考えられる。理論によって束縛されることなく、サリドマイドは、心理療法(バイオフィードバック、リラクゼーショントレーニング、活動のペース配分調整、視覚心像、気分転換ストラテジー、認知-行動療法および個人または家族のサイコセラピーが含まれるがこれらに限定されない)と同時に与えられる場合、付加的または相乗的な効果を提供し得ると考えられる。
【0073】
サリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグは、理学療法または心理学的治療の前、その間またはその後に投与する。具体的な方法では、第2の活性薬剤をも、患者に対して投与する。
【0074】
4.3 医薬組成物および単一単位剤形
医薬組成物は、単独・単一単位剤形の調製に使用することができる。本発明の医薬組成物および剤形は、サリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを含んでなる。本発明の医薬組成物および剤形は、1種以上の賦形剤をさらに含むことができる。
【0075】
本発明の医薬組成物および剤形はまた、1種以上の付加的な活性成分を含むことができる。したがって、本発明の医薬組成物および剤形は、本明細書に開示されている活性薬剤(例えば、サリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグ、および第2の活性薬剤)を含んでなる。任意の付加的な活性薬剤の例は、本明細書に開示されている(例えば、4.1節を参照のこと)。
【0076】
本発明の単一単位剤形は、患者に対する、経口、粘膜(例えば、鼻、舌下、膣、頬腔内もしくは直腸)または非経口(例えば、皮下、静脈内、ボーラス注射、筋内もしくは動脈内)、経真皮(transdermal)または経皮(transcutaneous)投与に好適である。剤形の例としては、錠剤;カプレット剤;カプセル剤(例えば、軟質弾性ゼラチンカプセル剤);カシェ剤;トローチ剤;ロゼンジ剤;分散液剤;坐剤;散剤;エアロゾル剤(例えば、鼻用スプレーまたは吸入剤);ゲル剤;患者への経口投与または粘膜投与に好適な液体剤形(懸濁液剤(例えば、水性もしくは非水性懸濁液、水中油型エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョン)、溶液剤およびエリキシル剤を含む);患者への非経口投与に好適な液体剤形;ならびに再調製されて患者への非経口投与に好適な液体剤形を提供し得る無菌固体(例えば、結晶または無定形固体)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0077】
本発明の剤形の組成、形状およびタイプは、典型的にはそれらの使用に依存して変わるであろう。例えば、ある疾患の急性治療で使用する剤形は、それを構成する1種以上の活性成分を、同じ疾患の慢性治療で使用する剤形が含有するよりも多い量、含有してもよい。同様に、非経口剤形は、それを構成する1種以上の活性成分を、同じ疾患を治療するために使用される経口剤形が含有するよりも少ない量、含有してもよい。本発明に包含される具体的な剤形がそれぞれ異なるこれらおよび他の様式は、当業者にはすぐにも明らかとなるであろう。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版, Mack Publishing, Easton PA(1990)を参照のこと。
【0078】
典型的な医薬組成物および剤形は、1種以上の賦形剤を含んでなる。好適な賦形剤は、薬学の分野における当業者には周知であり、好適な賦形剤の非限定例は本明細書中に提供されている。特定の賦形剤が、医薬組成物または剤形中への取り込みに好適か否かは、当該分野で周知の種々の要因(剤形を患者に投与する方法を含むがこれに限定されない)に依存する。例えば、錠剤のような経口剤形は、非経口剤形での使用には適さない賦形剤を含有することができる。特定の賦形剤の好適さは、剤形中の具体的な活性成分にも依存し得る。例えば、ある種の活性成分の分解は、ラクトースのような一部の賦形剤によって、または水に曝露されたときに加速する場合がある。第1級または第2級アミンを含む活性成分は、このような加速された分解に対して特に感受性である。したがって、本発明は、ラクトース、他の単糖または二糖を、たとえ含有するとしてもほとんど含有しない医薬組成物および剤形を包含する。本明細書で使用する場合、用語「ラクトースフリー(ラクトースを含有しない)」とは、存在するラクトースの量が、たとえあるとしても、活性成分の分解速度を実質的に増大させるには不十分であることを意味する。
【0079】
本発明のラクトースフリーの組成物は、当該分野で周知の賦形剤であって、例えば米国薬局方(USP)25-NF20(2002)中に列挙されているものを含んでなることができる。一般に、ラクトースフリーの組成物は、製薬上適合性かつ製薬上許容される量で、活性成分、結合剤/充填剤および滑沢剤を含んでなる。好ましいラクトースフリーの剤形は、活性成分、微結晶セルロース、アルファ化デンプンおよびステアリン酸マグネシウムを含んでなる。
【0080】
本発明はさらに、活性成分を含んでなる無水の医薬組成物および剤形を包含する。なぜなら、水は一部の化合物の分解を促進し得るからである。例えば、水の添加(例えば5%)は、保存寿命または経時的な製剤の安定性のような特性を決定するために、長期保存を模擬する手段として、製薬分野で広く受け入れられている。例えば、Jens T.Carstensen, Drug Stability:Principles & Practice, 第2版, Marcel Dekker, NY, NY, 1995, 379-80ページを参照のこと。実際、水および熱は一部の化合物の分解を加速させる。したがって、製剤の製造、取扱い、包装、保存、出荷および使用の間に、水分および/または湿度に遭遇するのは一般的なので、製剤に対する水の影響は非常に重要なものであり得る。
【0081】
本発明の無水の医薬組成物および剤形は、無水または低水分含有成分および低水分または低湿度条件を使用して調製することができる。ラクトース、および第1級または第2級アミンを含む少なくとも1種の活性成分を含んでなる医薬組成物および剤形は、製造、包装および/または保存の間に水分および/または湿度と実質的に接触することが予測される場合、好ましくは無水である。
【0082】
無水医薬組成物は、その無水の性質が維持されるように調製および保存すべきである。したがって、無水組成物は好ましくは、水への曝露を防止することが知られる材料を使用して包装し、それによりそれらを好適な処方キット中に含めることができるようになる。好適な包装の例としては、密閉シールされたホイル、プラスチック、単位用量容器(例えばバイアル)、ブリスターパックおよびストリップパックが挙げられるがこれらに限定されない。
【0083】
本発明はさらに、活性成分が分解する速度を減速させる1種以上の化合物を含んでなる医薬組成物および剤形を包含する。このような化合物は、本明細書中で「安定化剤」と呼ばれ、アスコルビン酸のような抗酸化剤、pH緩衝剤または塩緩衝剤が含まれるがこれらに限定されない。
【0084】
賦形剤の量および種類と同様に、剤形中の活性成分の量および具体的なタイプは、限定するものではないが、患者への投与経路などの要因に依存して異なることがある。しかし、本発明の典型的な剤形は、サリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを、約50〜約1,500mgの量で含んでなる。典型的な剤形は、サリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレートもしくはプロドラッグを、約50、100、200、300または400mgの量で含んでなる。典型的な剤形は、第2の活性薬剤を、約1〜約3,500mg、約5〜約2,500mg、約10〜約500mgまたは約25〜約250mgの量で含んでなる。言うまでもなく、第2の活性成分の具体的な量は、使用する具体的な薬剤、治療または管理される線維筋痛症のタイプ、ならびにサリドマイドおよび患者に同時に投与されるいずれかの任意の付加的な活性薬剤の量に依存するであろう。
【0085】
4.3.1 経口剤形
経口投与に好適な本発明の医薬組成物は、個別的な剤形(例えば、錠剤(例えば、そしゃく錠剤)、カプレット剤、カプセル剤および液剤(例えば、香味付けされたシロップ)であるがこれらに限定されない)であることが可能である。このような剤形は、所定量の活性成分を含有し、当業者に周知の薬学の方法によって調製することができる。一般的には、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版, Mack Publishing, Easton PA(1990)を参照のこと。
【0086】
本発明の典型的な経口剤形は、慣用の医薬調合技術に従って、緊密混合物中の活性成分を少なくとも1種の賦形剤と組み合わせることにより調製する。賦形剤は、投与のために所望される製剤の形態に依存して、広範な種々の形態をとり得る。例えば、経口用液体剤形またはエアロゾル剤形での使用に好適な賦形剤としては、水、グリコール、油、アルコール、香料、防腐剤および着色剤が挙げられるがこれらに限定されない。固体経口剤形(例えば、散剤、錠剤、カプセル剤およびカプレット剤)での使用に好適な賦形剤の例としては、デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤および崩壊剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0087】
投与が容易であるため、錠剤およびカプセル剤が最も有利な経口単位剤形であり、この場合、固体賦形剤を使用する。所望であれば、錠剤を、標準的な水性または非水性の技術によりコートすることができる。このような剤形は、任意の薬学の方法によって調製することができる。一般に、医薬組成物および剤形は、活性成分を液体担体、微細に分断した固体担体またはこれらの両方と均一かつ緊密に混合し、次いで必要に応じて所望の体裁に生成物を成形することによって調製する。
【0088】
例えば、錠剤は、圧縮または型成形によって調製することができる。圧縮錠剤は、場合によっては賦形剤と混合した、自由流動形態の活性成分(例えば、粉末または顆粒)を適切な機械で圧縮することにより調製することができる。型成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混合物を適切な機械で型成形することにより製造することができる。
【0089】
本発明の経口剤形で使用することができる賦形剤の例としては、結合剤、充填剤、崩壊剤および滑沢剤が挙げられるがこれらに限定されない。医薬組成物および剤形での使用に好適な結合剤としては、コーンスターチ、ジャガイモデンプンもしくは他のデンプン、ゼラチン、天然および合成ガム(例えば、アラビアガム)、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギネート、粉末化トラガカント、グアーガム、セルロースおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、2208番、2906番、2910番)、微結晶セルロース、ならびにこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0090】
微結晶セルロースの好適な形態としては、AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103 AVICEL RC-581、AVICEL-PH-105(FMC Corporation, American Viscose Division, Avicel Sales, Marcus Hook, PAから入手可能)として市販の物質およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な結合剤は、AVICEL RC-581として市販の微結晶セルロースとカルボキシメチルセルロースナトリウムとの混合物である。好適な無水または低水分の賦形剤または添加剤としては、AVICEL-PH-103TMおよびStarch 1500 LMが挙げられる。
【0091】
本明細書に開示されている医薬組成物および剤形での使用に好適な充填剤の例としては、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒または粉末)、微結晶セルロース、粉末化セルロース、デキストレート(dextrate)、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、およびこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。本発明の医薬組成物中の結合剤または充填剤は、典型的には、この医薬組成物または剤形の約50〜約99重量%で存在する。
【0092】
崩壊剤は、水性環境に曝露されたときに崩壊する錠剤を提供するために、本発明の組成物中に使用する。含有する崩壊剤が多すぎる錠剤は保存中に崩壊することがあり、含有する崩壊剤が少なすぎる錠剤は、所望の速度または所望の条件下で崩壊しない可能性がある。したがって、活性成分の放出を不利に変更するほど多すぎも少なすぎもしない十分量の崩壊剤を、本発明の固体経口剤形を形成するために使用すべきである。使用する崩壊剤の量は、製剤のタイプに基づいて変化し、当業者には容易に理解可能である。典型的な医薬組成物は、約0.5〜約15重量%の崩壊剤、好ましくは約1〜約5重量%の崩壊剤を含んでなる。
【0093】
本発明の医薬組成物および剤形において使用することができる崩壊剤としては、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリン(polacrilin)カリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、他のデンプン、アルファ化デンプン、他のデンプン、粘土、他のアルギン(algin)、他のセルロース、ガム、およびこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0094】
本発明の医薬組成物および剤形において使用することができる滑沢剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(例えば、ピーナツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、およびダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリル酸エチル(ethyl laureate)、寒天、およびこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。さらなる滑沢剤としては、例えば、シロイド(syloid)シリカゲル(AEROSIL200、W.R.Grace Co., Baltimore, MDにより製造)、合成シリカの凝集エアロゾル(Degussa Co., Plano, TXにより販売)、CAB-O-SIL(Cabot Co., Boston, MAにより販売されている発熱性二酸化ケイ素製品)、およびこれらの混合物が挙げられる。仮に使用する場合、滑沢剤は典型的には、それらが組み込まれる医薬組成物または剤形の約1重量%未満の量で使用する。
【0095】
本発明の好ましい固体経口剤形は、サリドマイド、無水ラクトース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸、コロイド状無水シリカ、およびゼラチンからなる。例えば、2003年6月30日出願の米国特許出願第10/608,077号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0096】
4.3.2 遅延放出剤形
本発明の活性薬剤は、当業者に周知の制御放出手段または送達デバイスによって投与することができる。例としては、以下に記載されるものが挙げられるがこれらに限定されない:米国特許第3,845,770号;同第3,916,899号;同第3,536,809号;同第3,598,123号;および同第4,008,719号、同第5,674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、同第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号および同第5,733,566号(これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる)。このような剤形は、例えば、ヒドロプロピルメチル(hydropropylmethyl)セルロース、他のポリマー性マトリックス、ゲル、透過性メンブレン、浸透圧システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム、マイクロスフェア、またはこれらの組合せを、所望の放出プロフィールを提供するために種々の割合で用いて、1種以上の活性成分の持続放出または制御放出をもたらすために使用することができる。本明細書に記載されるものをはじめとする当業者に公知の好適な制御放出製剤は、本発明の活性成分での使用のために容易に選択することができる。したがって、本発明は、経口投与に好適な単一単位剤形(例えば、制御放出に適合した錠剤、カプセル剤、ジェルキャップ剤およびカプレット剤であるが、これらに限定されない)を包含する。
【0097】
すべての制御放出医薬製品は、それらの制御されていない対応物によって達成されるものを超える薬物療法の改善という共通の目的を有する。理想的には、薬物療法における最適に設計された制御放出製剤の使用は、最短の時間でその症状を治癒または制御するために最小限の薬物物質を使用することを特徴とする。制御放出製剤の利点としては、薬物の延長された活性、投薬頻度の減少、および患者の服薬率の増大が挙げられる。さらに、制御放出製剤は、作用の開始の時間または他の特徴(例えば、薬物の血中レベル)に影響を与えるために使用することができ、したがって、副作用(例えば有害作用)の発生頻度に影響を与えることができる。
【0098】
ほとんどの制御放出製剤は、所望の治療効果を即座に生じる一定量の薬物(活性成分)を最初に放出し、延長された期間にわたってこのレベルの治療効果または予防効果を維持するために、他の量の薬物を徐々にかつ継続的に放出するように設計されている。身体内でこの一定レベルの薬物を維持するために、代謝され、また身体から排泄される薬物の量を置き換える速度で、薬物が剤形から放出されなければならない。活性成分の制御放出は、種々の条件(pH、温度、酵素、水、もしくは他の生理学的条件または化合物が含まれるがこれらに限定されない)によって刺激され得る。
【0099】
4.3.3 非経口剤形
非経口剤形は、種々の経路(皮下、静脈内(ボーラス注射を含む)、筋内および動脈内を含むがこれらに限定されない)により患者に投与することができる。それらの投与は典型的には汚染物に対する患者の天然の防御を迂回するので、非経口剤形は好ましくは無菌であるか、または患者への投与の前に滅菌することができるものである。非経口剤形の例としては、そのまま注射するための溶液、注射用の製薬上許容されるビヒクル中にそのまま溶解または懸濁するための乾燥製品、そのまま注射するための懸濁液、およびエマルジョンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0100】
本発明の非経口剤形を提供するために使用することができる好適なビヒクルは、当業者に周知である。例としては、USP注射用水;水性ビヒクル(例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、ブドウ糖注射液、ブドウ糖および塩化ナトリウム注射液、ならびに乳酸化リンゲル注射液であるが、これらに限定されない);水混和性ビヒクル(例えば、エチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールであるが、これらに限定されない);ならびに非水性ビヒクル(例えば、コーン油、綿実油、ピーナツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルおよび安息香酸ベンジルであるが、これらに限定されない)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0101】
本明細書に開示されている1種以上の活性成分の溶解性を増大させる化合物もまた、本発明の非経口剤形中に取り込むことができる。例えば、シクロデキストリンおよびその誘導体を、サリドマイドの溶解性を増大させるために使用することができる。例えば、米国特許第5,134,127号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0102】
4.3.4 局所および粘膜剤形
本発明の局所および粘膜剤形としては、スプレー剤、エアロゾル剤、溶液剤、エマルジョン剤、懸濁液剤または当業者に公知の他の形態が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版および第18版, Mack Publishing、Easton PA(1980 & 1990);およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 第4版, Lea & Febiger, Philadelphia(1985)を参照のこと。口腔内の粘膜組織を治療するために好適な剤形は、うがい薬または経口ゲルとして製剤化することができる。
【0103】
本発明により包含される局所および粘膜剤形を提供するために使用することができる好適な賦形剤(例えば、担体および希釈剤)および他の物質は、製薬分野の当業者に周知であり、所与の医薬組成物または剤形が適用される特定の組織に依存する。この事実を考慮すると、典型的な賦形剤としては、無毒で製薬上許容される溶液、エマルジョンまたはゲルを形成するための水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、およびこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。保湿剤または湿潤剤もまた、所望であれば、医薬組成物および剤形に添加することができる。このような付加的な成分の例は当技術分野で周知である。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版および第18版, Mack Publishing, Easton PA(1980 & 1990)を参照のこと。
【0104】
医薬組成物または剤形のpHを調整して、1種以上の活性成分の送達を改善することもできる。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度または張性を調整して、送達を改善することができる。ステアレートのような化合物を、1種以上の活性成分の親水性または親油性を有利に変更して送達を改善するために、医薬組成物または剤形に添加することもできる。これに関して、ステアレートは、製剤のための脂質ビヒクルとして、乳化剤または界面活性剤として、および送達増強剤または浸透増強剤として作用することができる。活性成分の種々の塩、水和物または溶媒和物を、最終的な組成物の特性をさらに調整するために使用することができる。
【0105】
4.3.5 キット
典型的には、本発明の活性成分群は、患者に対して同時に、または同じ投与経路により投与しないことが好ましい。したがって本発明は、医師によって使用される際に、適切な量の活性成分群の患者への投与を単純化し得るキットを包含する。
【0106】
本発明の典型的なキットは、サリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、プロドラッグもしくはクラスレートの剤形を含んでなる。本発明により包含されるキットは、付加的な活性薬剤またはそれらの組合せをさらに含むことができる。この付加的活性薬剤の例としては、抗うつ剤、抗痙攣剤、降圧剤、抗不安剤、カルシウムチャネルブロッカー、筋弛緩剤、非麻薬性鎮痛剤、オピオイド性鎮痛剤、抗炎症剤、cox-2阻害剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、コルチコステロイド、または本明細書で述べた他の治療剤(例えば、4.1節を参照のこと)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0107】
本発明のキットは、活性薬剤を投与するために使用するデバイスをさらに含むことができる。このようなデバイスの例としては、シリンジ、点滴バッグ、パッチおよび吸入器が挙げられるがこれらに限定されない。
【0108】
本発明のキットは、1種以上の活性成分を投与するために使用し得る製薬上許容されるビヒクルをさらに含むことができる。例えば、非経口投与のために再調製しなければならない固体形態で活性成分を提供する場合、該キットは、活性成分を溶解して非経口投与に好適な無粒子の無菌溶液を形成することができる、好適なビヒクルの密封容器を含み得る。製薬上許容されるビヒクルの例としては、USP注射用水;水性ビヒクル(例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、ブドウ糖注射液、ブドウ糖および塩化ナトリウム注射液、ならびに乳酸化リンゲル注射液であるが、これらに限定されない);水混和性ビヒクル(例えば、エチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールであるが、これらに限定されない);ならびに非水性ビヒクル(例えば、コーン油、綿実油、ピーナツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルおよび安息香酸ベンジルであるが、これらに限定されない)が挙げられるがこれらに限定されない。
【実施例】
【0109】
5. 実施例
以下の研究は、本発明の範囲を限定することなく、本発明をさらに例示することを意図するものである。
【0110】
5.1 薬理学的研究
サリドマイドによって発揮される生物学的作用の1つは、TNF-αの合成の低減である。サリドマイドは、TNF-α mRNAの分解を増強する。TNF-αは、神経障害性疼痛において病理学的役割を担うことがある。シュワン細胞におけるその発現の増大が、ヒトの有痛性神経障害において示されている。可溶性TNF-α受容体は、異痛症を訴えていない神経障害患者と比較して、異痛症を有する患者の血清中で増加している。このサイトカインは、一次求心性侵害受容器での異所的活性を誘導することができ、したがって、線維筋痛症での疼痛および痛覚過敏の原因である可能性がある。これについて考えられる1つのメカニズムは、TNF-αが、細胞内で活性なナトリウムイオンチャネルを形成し得ることである。侵害受容器へのナトリウム流入の増大は、これら侵害受容器を異所的発火に向かわせる。このサイトカインは、神経損傷または機能不全の部位で活性である場合には、病理学的役割を担うものと考えられる。
【0111】
サリドマイドによる、ヒトPBMCのLPS刺激後のTNF-α産生の阻害を、in vitroで調査した。PBMCのLPS刺激後のTNF-α産生を阻害するためのサリドマイドのIC50は、〜194μM(50.1μg/mL)であった。
【0112】
5.2 線維筋痛症患者における臨床研究
約4kg/cm2の圧力を、線維筋痛症の患者の複数の解剖学上の点に手動で加え、疼痛および圧痛を評価する。疼痛感受性を定量するために有用なデバイスは、圧痛覚計(pressure algometer)または圧疼痛測定器(pressure dolorimeter)である。この装置または複数の他の実験アプローチ(例えば、サーモードの使用)を用いて、疼痛知覚閾値および疼痛耐容閾値についての全般的な低下が、線維筋痛症および関連症候群の患者において明白に実証されている。このことは、変更された中枢侵害受容処理を反映し、患者においては異痛症および痛覚過敏として現れる。
【0113】
従来の理学療法に応答せず、少なくとも1年間続いている線維筋痛症の患者で臨床研究を実施する。一実施形態では、サリドマイドを、1日当たり100〜400mgの量で、3カ月〜1年間にわたって、線維筋痛症の患者に投与する。疼痛の強度、日常生活の活動への疼痛の影響および他の疼痛用医薬の消費に対する薬物治療の効果について、ベースライン評価を行う。連続経口1日用量として300mgを用いる治療は、十分に許容される。サリドマイドで治療した線維筋痛症患者における研究は、この薬物が、この疾患において鎮痛効果を有することを示唆している。
【0114】
本明細書に記載されている本発明の実施形態は、本発明の範囲の例を示すものに過ぎない。本発明の全範囲は、添付の特許請求の範囲を参照してよりよく理解される。本明細書に引用されたすべての参考文献は、その全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に引用された参考文献はいずれも、先行技術と認められるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維筋痛症を治療、予防、調節または管理する方法であって、当該治療、予防、調節または管理を必要とする患者に、治療上または予防上有効量のサリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物もしくは立体異性体を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項2】
線維筋痛症を治療、予防、調節または管理する方法であって、当該治療、予防、調節または管理を必要とする患者に、治療上または予防上有効量のサリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物もしくは立体異性体、および治療上または予防上有効量の第2の活性薬剤を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項3】
前記第2の活性薬剤が、疼痛、抑うつまたは不安を緩和することができるものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の活性薬剤が、抗うつ剤、抗不安剤、催眠剤、降圧剤、抗痙攣剤、カルシウムチャネルブロッカー、筋弛緩剤、非麻薬性鎮痛剤、オピオイド性鎮痛剤、α-アドレナリン受容体アゴニスト、α-アドレナリン受容体アンタゴニスト、抗炎症剤、cox-2阻害剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、高圧酸素、JNK阻害剤またはコルチコステロイドである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の活性薬剤が、サリチル酸アセテート、セレコキシブ、ケタミン、ガバペンチン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、フェニトイン、バルプロ酸ナトリウム、プレドニゾン、ニフェジピン、クロニジン、オキシコドン、メペリジン、硫酸モルヒネ、ヒドロモルフォン、フェンタニル、アセタミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、グリセオフルビン、アミトリプチリン、イミプラミン、ドキセピン、アルプラゾラム、ロラゼパム、クロナゼパム、ブスピロン、トラゾドン、ゾルピデム、テマゼパム、シクロベンザプリンまたはカリソプロドールである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記線維筋痛症が、結合組織炎、筋筋膜症候群、広汎性慢性疼痛症候群、慢性疲労症候群、神経根障害または有痛性神経障害状態である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記サリドマイドがエナンチオマー的に純粋である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
線維筋痛症を治療、予防、調節または管理する方法であって、当該治療、予防、調節または管理を必要とする患者に、前記患者における線維筋痛症の症状を低減または回避するための理学療法または心理療法の前、その間またはその後に、治療上または予防上有効量のサリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物もしくは立体異性体を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項9】
線維筋痛症に罹患した患者における第2の活性成分の投与に付随する有害作用を低減または回避する方法であって、当該低減または回避を必要とする患者に、有効量のサリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物もしくは立体異性体を投与するステップを含む、上記方法。
【請求項10】
前記第2の活性薬剤が、疼痛、抑うつまたは不安を緩和することができるものである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の活性薬剤が、抗うつ剤、抗不安剤、催眠剤、降圧剤、抗痙攣剤、カルシウムチャネルブロッカー、筋弛緩剤、非麻薬性鎮痛剤、オピオイド性鎮痛剤、α-アドレナリン受容体アゴニスト、α-アドレナリン受容体アンタゴニスト、抗炎症剤、cox-2阻害剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、高圧酸素、JNK阻害剤またはコルチコステロイドである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の活性薬剤が、サリチル酸アセテート、セレコキシブ、ケタミン、ガバペンチン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、フェニトイン、バルプロ酸ナトリウム、プレドニゾン、ニフェジピン、クロニジン、オキシコドン、メペリジン、硫酸モルヒネ、ヒドロモルフォン、フェンタニル、アセタミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、グリセオフルビン、アミトリプチリン、イミプラミン、ドキセピン、アルプラゾラム、ロラゼパム、クロナゼパム、ブスピロン、トラゾドン、ゾルピデム、テマゼパム、シクロベンザプリンまたはカリソプロドールである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
サリドマイドまたはその製薬上許容される塩、溶媒和物もしくは立体異性体および第2の活性薬剤を含んでなる医薬組成物であって、前記第2の活性薬剤が、抗うつ剤、抗不安剤、催眠剤、降圧剤、抗痙攣剤、カルシウムチャネルブロッカー、筋弛緩剤、非麻薬性鎮痛剤、オピオイド性鎮痛剤、α-アドレナリン受容体アゴニスト、α-アドレナリン受容体アンタゴニスト、抗炎症剤、cox-2阻害剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、高圧酸素、JNK阻害剤またはコルチコステロイドである、上記医薬組成物。
【請求項14】
前記第2の活性成分が、サリチル酸アセテート、セレコキシブ、ケタミン、ガバペンチン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、フェニトイン、バルプロ酸ナトリウム、プレドニゾン、ニフェジピン、クロニジン、オキシコドン、メペリジン、硫酸モルヒネ、ヒドロモルフォン、フェンタニル、アセタミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、グリセオフルビン、アミトリプチリン、イミプラミン、ドキセピン、アルプラゾラム、ロラゼパム、クロナゼパム、ブスピロン、トラゾドン、ゾルピデム、テマゼパム、シクロベンザプリンまたはカリソプロドールである、請求項13に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2007−509170(P2007−509170A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536857(P2006−536857)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/035180
【国際公開番号】WO2005/039497
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(591120033)セルジーン・コーポレーション (84)
【氏名又は名称原語表記】CELGENE CORPORATION
【Fターム(参考)】