説明

締め付け座面ピッチ吸収ブラケット及び一対の締め付け座面ピッチ吸収ブラケット

【課題】使用する金属カラーを1種類に抑えながら、取付相手部材及び合成樹脂部品の形成段階における公差による位置ズレを吸収することができる、締め付け座面ピッチ吸収ブラケットを得る。
【解決手段】座面蓋部13を閉状態にして形成される、座面蓋部13及び座面土台部14による収納空間CS内にカラー支持部材20が収納される。この際、カラー支持部材20の本体部20aが収納空間CS内に移動可能な余裕を有し、芯部20bの両端部の高さ方向の形成位置がロック部13aの開口部13h及びロック引掛部14aの開口部14hの形成位置とほぼ一致し、芯部20bが開口部13h(開口部14h)内に移動可能な余裕を有する形態で収納されている。そして、芯部20b内に金属カラー30が装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、取付相手部材に対してボルト固定される合成樹脂部品の締め付け座面ピッチ吸収ブラケット及び一対の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両にワイヤーハーネスを固定する場合、合成樹脂製のプロテクタを用いて行うことが多く、プロテクタに一体に形成した取付用の締め付け座面ブラケットのボルト挿通孔にボルトを通し、そのボルトで締め付け座面ブラケットを車体に締結することにより、プロテクタを固定し、ワイヤーハーネスを車体に固定している。この場合、樹脂製の締め付け座面ブラケットは締め込みにより破損しやすいので、それを防ぐために、ボルト挿通孔の内周に補強用の金属カラーを嵌め込むことが広く行われている。金属カラーを用いた締め付け座面ブラケットとして例えば特許文献1に開示された締め付け座面ブラケットが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−286218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した締め付け座面ブラケットを一部に有する合成樹脂部品を複数箇所で取付相手部材に固定する場合、取付相手部材それぞれのボルト固定位置に対するように複数の締め付け座面ブラケットが設けられる。そして、複数の締め付け座面ブラケットそれぞれのボルト貫通孔にボルトを通して複数箇所で取付相手部材に取り付ける。
【0005】
しかしながら、取付相手部材と複数の締め付け座面ブラケットを有する合成樹脂部品とは個別に製造される関係上、取付相手部材における複数のボルト固定位置と複数の締め付け座面ブラケットのボルト貫通孔との間に公差により位置ズレが生じてしまう可能性があった。
【0006】
そこで、上記公差によって生じる位置ズレを吸収するために、複数の締め付け座面ブラケットのうち少なくとも一つの締め付け座面ブラケットに設けるボルト挿通孔を長円形等の一方向に長い形状にするとともに、ボルト挿通孔内に挿入する金属カラーの形状も長円形等のボルト挿通孔に合致した形状にしていた。
【0007】
このように、上記公差による位置ズレを考慮してボルト挿通孔の形状を設定する場合、公差による位置ズレのバリエーションに対応すべく、複数種類(複数形状)のボルト挿通孔及び金属カラーを準備する必要があるため、比較的コストを要する必要があるという問題点があった。
【0008】
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、使用する金属カラーを1種類に抑えながら、取付相手部材及び合成樹脂部品の形成段階における公差による位置ズレを吸収することができる、締め付け座面ピッチ吸収ブラケットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る請求項1記載の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットは、取付相手部材にボルト固定可能な締め付け座面ピッチ吸収ブラケットであって、第1の開口部を有する座面土台部と、第2の開口部を有し、前記座面土台部への組立時において、前記第1の開口部に前記第2の開口部を対向させながら、前記座面土台部との間に所定の収納空間を形成可能な座面蓋部と、前記所定の収納空間内に収納可能なカラー支持部材とを備え、前記カラー支持部材は、前記第1及び第2の開口部から抜け出ない平面形状を有する本体部と、前記本体部内に設けられ、ボルト挿通用の金属カラーが装着可能な芯部とを含み、前記所定の収納空間内に収納時において、前記芯部を前記第1及び第2の開口部の重複領域内で移動可能にしたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットであって、前記座面土台部と前記座面蓋部とはヒンジ部を介して一体形成され、前記座面蓋部はヒンジ部を回転軸とした回転動作によって、前記座面土台部を塞ぐように位置決めされる閉状態、あるいは前記座面を開放するように位置決めされる開状態の配置設定が可能であり、前記座面土台部への組立時には前記閉状態を呈する。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1あるいは請求項2に記載の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットであって、前記座面土台部及び前記座面蓋部の少なくとも一方は、前記所定の収納空間の外縁の少なくとも一部に沿って形成される凸部を有する。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のうち、いずれか1項に記載の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットであって、前記座面蓋部及び前記座面土台部の所定箇所に、前記座面蓋部の前記座面土台部への組立時において、前記座面蓋部を前記座面土台部に固定するためのロック機構を有する。
【0013】
この発明における請求項5記載の一対の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットは、第1及び第2の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットからなる一対の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットであって、前記第1の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットは、請求項1ないし請求項4のうち、いずれか1項に記載の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットを含み、前記第2の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットは、前記第1の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットと所定の間隔を隔てて設けられ所定の基準穴を有する。
【0014】
請求項6の発明は、請求項5記載の一対の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットであって、前記第1の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットにおける前記第1及び第2の開口部の重複領域は長円形状を呈する。
【0015】
請求項7の発明は、請求項5記載の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットであって、前記第1の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットにおける前記第1及び第2の開口部の重複領域は前記所定の基準穴より大きな巨大円状を呈する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の本願発明である締め付け座面ピッチ吸収ブラケットにおけるカラー支持部材は、所定の収納空間内に収納時において芯部を第1及び第2の開口部の重複領域内で移動可能にしている。
【0017】
このため、金属カラーの種別を固定しながら、カラー支持部材の所定の収納空間内における移動範囲によって、公差によって生じる取付相手部材に固定するボルト位置のズレを吸収することができる。
【0018】
その結果、本願発明の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットは、1種類の金属カラーを用いながら、取付相手部材との位置ズレ吸収を図ることが可能となる。
【0019】
請求項2記載の本願発明は、座面土台部と座面蓋部とをヒンジ部を介して一体形成することにより比較的安価に得ることができる。
【0020】
請求項3記載の本願発明は、前記座面土台部及び前記座面蓋部の少なくとも一方に設けられる凸部によって、カラー支持部材を所定の収納空間内に安定して収納することができる。
【0021】
請求項4記載の本願発明は、ロック機構の配置によってロック機構の存在しない方向における座面土台部及び座面蓋部の形成長さを短くすることができる。
【0022】
その結果、ロック機構の配置箇所を設計段階で適切に設定することにより、所望の平面形状に合致した本体座面部及び本体蓋部を得ることができる。
【0023】
請求項5記載の本願発明である一対の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットは、上記第2の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットにおいて基準穴用ボルトで固定するとともに、上記第1の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットにおいて金属カラー用ボルトで固定することにより。2箇所のボルト固定によって取付相手部材に安定性良く取り付けることができる。
【0024】
そして、金属カラー用ボルトで固定する際、基準穴用ボルト,金属カラー用ボルト間の位置ズレをカラー支持部材の移動範囲によって吸収することにより、上記位置ズレを吸収して安定性良く取付相手部材に取り付けることができる。
【0025】
請求項6記載の本願発明における第1の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットは、長円形状の金属カラーを用いることなく、取付相手部材に固定するボルト位置のズレが長円形状に沿って生じる場合においても、適切に当該ズレを吸収することができる。
【0026】
請求項7記載の本願発明における第1の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットは、巨大円状の金属カラーを用いることなく、取付相手部材に固定するボルト位置のズレが巨大円状に沿って生じる場合においても、適切に当該ズレを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の実施の形態1である締め付け座面ピッチ吸収ブラケットの構成を示す説明図(組立時)である。
【図2】カラー支持部材の構成を示す説明図である。
【図3】実施の形態1の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットの構成を示す説明図(開放時)である。
【図4】実施の形態1の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットにおける収納空間内をカラー支持部材が移動する状況を模式的に示す平面図である。
【図5】実施の形態1の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットによる取付相手部材の取付状態を模式的に示す斜視図である。
【図6】この発明の実施の形態2である締め付け座面ピッチ吸収ブラケットの構成を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態3である締め付け座面ピッチ吸収ブラケットの収納空間内をカラー支持部材が移動する状況を模式的に示す平面図である。
【図8】締め付け座面ピッチ吸収ブラケットとそこに形成される貫通穴との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<実施の形態1>
図1はこの発明の実施の形態1である締め付け座面(ピッチ吸収)ブラケットの構成を示す説明図(組立時)である。図2はカラー支持部材の構成を示す説明図、図3は実施の形態1の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットの構成を示す説明図(開放時)である。
【0029】
なお、図1(a) は締め付け座面(ピッチ吸収)ブラケット5の全体構成を示す斜視図であり、図1(b) は図1(a) のA−A断面図である。また、図2(a) はカラー支持部材20の全体構成を示す斜視図であり、図2(b) は平面図であり、図2(c) は図2(b) のB−B断面図(その1)、図2(d) は図2(b) のB−B断面図(その2)である。また、図2(a) は斜視図であり、図3(b) は図2(a) のC−C断面図である。
【0030】
図1に示すように、合成樹脂部品1に締め付け座面ブラケット5が固定される。合成樹脂部品1は、例えば、自動車に配索されるワイヤーハーネスを保護するプロテクタ、又は、ワイヤーハーネスが接続されるジャンクションボックス、リレーボックスの枠体等である。
【0031】
締め付け座面ブラケット5は、ブラケット固定部11、本体側面部12、座面蓋部13、座面土台部14、及びヒンジ部15並びにカラー支持部材20から構成される。
【0032】
ブラケット固定部11は合成樹脂部品1と本体側面部12とそれぞれ結合されることにより、締め付け座面ブラケット5を合成樹脂部品1に固定している。
【0033】
図3に示すように、座面土台部14は中央に開口部14h(第1の開口部)を有し、表面における外縁の一部に沿ってリブ14c(凸部)を有している。
【0034】
座面蓋部13は座面土台部14とヒンジ部15を介して一体的に形成されており、中央に開口部13h(第2の開口部)を有する。実施の形態1では開口部13hと開口部14hとは同一の円状を呈している。
【0035】
座面蓋部13はヒンジ部15を回転軸とした回転動作によって、座面土台部14を塞ぐように位置決めされる閉状態(図1参照)、あるいは座面土台部14を開放するように位置決めされる開状態(図3参照)の配置設定が可能であり、座面土台部14への組立時には上記閉状態を呈する。
【0036】
図1(b) 及び図3に示すように、座面蓋部13の閉状態時には、開口部13hと開口部14hとは平面視完全位置するように互いに対向する。すなわち、座面蓋部13の座面土台部14への組立時において、開口部13hと開口部14hとの重複領域は開口部13h(開口部14h)そのものとなる。
【0037】
図1に示すように、座面蓋部13を閉状態にして形成される、座面蓋部13及び座面土台部14による収納空間CS(所定の収納空間)内にカラー支持部材20が収納される。この際、座面蓋部13のロック部13aの先端部が座面土台部14のロック引掛部14aに係止されることにより、カラー支持部材20を収納空間CSに収納した状態で座面蓋部13と座面土台部14とは図1で示す態様で固定される。このように、ロック部13a及びロック引掛部14aは座面蓋部13及び座面土台部14間のロック機構として機能する。
【0038】
図2に示すように、カラー支持部材20は平面視円状の本体部20aと本体部20a内の中央部において、本体部20aを貫通して設けられる芯部20bとから構成される。この芯部20b内に金属カラー30を装着することができる。
【0039】
このように、芯部20bは、金属カラー30が配置される貫通孔部を有する筒形状に形成されており、同図(b) に示すように、貫通方向に直交する断面視において略円形の貫通孔部を有する円筒形状を成している。
【0040】
本体部20a及び芯部20bを有するカラー支持部材20は、合成樹脂材料を射出成型する工法等により、本体部20aと芯部20bとが一体となって形成されることが望ましい。
【0041】
金属カラー30は、筒形状(ここでは円筒形状)に形成された金属部材である。この金属カラー30は、内部にボルトが挿通可能である。なお、金属カラー30は図2(c) に示すように、圧入タイプが一般的であるが、図2(d) で示すように一端がカシメられた金属カラー31を金属カラー30の代わりに用いるようにしても良い。この場合、芯部20bに変えて金属カラー31のカシメ部分を受け入れ可能な形状の芯部20cが用いられる。
【0042】
図1に示すように、上記した構成のカラー支持部材20が収納空間CS内に収納される際、本体部20aが収納空間CS内に移動可能な余裕(第1の余裕)を有し、芯部20bの両端部の高さ方向の形成位置がロック部13aの開口部13h及びロック引掛部14aの開口部14hの形成位置とほぼ一致し、芯部20bが開口部13h(開口部14h)内に移動可能な余裕(第2の余裕)を有する形態で収納されている。
【0043】
すなわち、収納空間CSはカラー支持部材20の本体部20aより平面形状が広い空間を有しており、かつ、開口部13h(開口部14h)はカラー支持部材20の芯部20bよりも十分大きな平面形状を呈している。したがって、本体部20aを空間領域SP内において限界可動線MXまで可動させることにより、芯部20bを開口部13h(開口部14h)内の任意の位置に移動させることができる。
【0044】
なお、カラー支持部材20の収納は、図3に示すように、座面蓋部13の開状態にして座面土台部14の開口部14hの中心部付近に芯部20bが位置するようカラー支持部材20を配置した後、図1に示すように、座面蓋部13を閉状態にしてロック部13a,ロック引掛部14aによって固定することにより行える。
【0045】
なお、図1に示すように、カラー支持部材20の本体部20aの平面形状は開口部13h及び開口部14hより大きい円状を呈するため、カラー支持部材20の収納空間CS内に収納時に開口部13h及び開口部14hからカラー支持部材20が抜け出ることはない。また、本体側面部12、ロック部13a、ヒンジ部15等のカラー支持部材20の座面土台部14外への飛び出しを阻止する部位が設けられていない、座面土台部14の表面における外縁部の一部にはリブ14cが設けられているため、本体部20aが平面視して座面土台部14外に飛び出すこともない。
【0046】
このように、実施の形態1の締め付け座面ブラケット5は、芯部20bを開口部13h及び開口部14hの重複領域(図1の例示では開口部13h及び開口部14hは完全一致で重複しているため、重複領域=開口部13h(開口部14h)となる)で移動可能な態様で、収納空間CS内に収納している。
【0047】
図4は実施の形態1の締め付け座面ブラケット5における収納空間CS内をカラー支持部材20が移動する状況を模式的に示す平面図である。
【0048】
同図(a) は収納空間CS内の中央にカラー支持部材20を配置した場合を示しており、同図(b) は収納空間CS内の平面視右方向に中央にカラー支持部材20を配置した場合を示している。同図(a) ,(b) それぞれにおいて、開口部13hから目視可能なカラー支持部材20部分を斜線ハッチングで示し、座面蓋部13によって塞がれており目視不能なカラー支持部材20部分を点線ハッチングで示している。
【0049】
同図(a) に示すように、カラー支持部材20を空間領域SPの中央に配置した場合、カラー支持部材20(本体部20a)の全方向において限界可動線MXに達するまで距離に余裕(第1の余裕)がある。同様に、芯部20bの全方向において開口部13hに達するまで距離に余裕(第2の余裕)がある。したがって、上記第1の余裕を上記第2の余裕と同程度以上に設定しておくことにより、芯部20bは開口部13h内の任意の位置に移動配置することができる。
【0050】
なお、芯部20bのサイズ(外径)と座面蓋部13の開口部13h(=開口部14h)のサイズ(直径)との関係である上記第2の余裕は、予め設定された合成樹脂部品1の締め付け座面ブラケット5おける後述するボルト40を挿通する位置、及び、予め設定された取付相手部材におけるボルト40が立設される位置について、合成樹脂部品1及び取付相手部材の形成段階で設定された公差によって生じる位置ズレずれを吸収(「ピッチ吸収」とも言う)できるように設定することが望ましい。
【0051】
すなわち、上記第2の余裕は、開口部13hの内側で芯部20bが上記公差によって生じ得る位置ズレの距離分移動可能な関係に設定されることが望ましい。例えば、上記公差によって生じ得る最大の位置ずれの距離分だけ、芯部20bの外径より開口部14hの直径が大きく設定することが望ましい。この際、上記第2の余裕を実現可能にすべく、上記第1の余裕は上記第2の余裕と同程度以上に設定しておくことが望ましい。
【0052】
図5は締め付け座面ブラケット5による取付相手部材の取付状態を模式的に示す斜視図である。同図(a) は全体斜視図、同図(b) はボルト40及びその周辺を示す斜視図である。なお、図示しない取付相手部材は、自動車の金属パネル等である。
【0053】
図5に示すように、ボルト40としてのスタッドボルトが、図示しない取付相手部材に立設されており、カラー支持部材20内に設けた金属カラー30内にボルト40を貫通させた状態で、該ボルト40に対して図示しないナットを上方から締結することにより、締め付け座面ブラケット5が取付相手部材に固定される結果、合成樹脂部品1が取付相手部材に取り付けられる。
【0054】
ここでは、ボルト40が取付相手部材に立設されたスタッドボルトである例で説明したが、取付相手部材にネジ穴が形成され、このネジ穴に、頭部を有するボルトを締結することにより合成樹脂部品1を固定するものであってもよい。
【0055】
このように、実施の形態1の締め付け座面ブラケット5におけるカラー支持部材20は、収納空間CS内に収納時において芯部20bを開口部13h(開口部14h)内で移動可能である。このため、金属カラーの種別を1種類の金属カラー30(あるいは金属カラー31)で固定しながら、カラー支持部材20の移動範囲によって、公差によって生じる取付相手部材に固定するボルト位置のズレを吸収することができる。
【0056】
その結果、実施の形態1のブラケットは、1種類の金属カラー30(31)を用いながら、取付相手部材との位置ズレ吸収を図ることが可能となる。
【0057】
加えて、実施の形態1の締め付け座面ブラケット5は、座面土台部14と座面蓋部13とをヒンジ部15を介して一体形成することにより比較的安価に得ることができる。
【0058】
さらに、座面土台部14の表面における外縁の一部にリブ14cを設けることにより、カラー支持部材20を収納空間CS内により安定して収納することができる。
【0059】
なお、実施の形態1では座面土台部14側にリブ14cを設ける例を示したが、座面蓋部13の座面土台部14と対向する面の外縁の少なくとも一部にリブを設けることによっても同様な効果を奏する。
【0060】
実施の形態1の締め付け座面ブラケット5(第1の締め付け座面ブラケット)は、通常、基準穴を有する他の締め付け座面ブラケット(第2の締め付け座面ブラケット)と共に用いられ一対の締め付け座面ブラケットを構成する。
【0061】
すなわち、一対の締め付け座面ブラケットを用いて、第2の締め付け座面ブラケットの基準穴に基準穴用ボルトを挿通するとともに、第1の締め付け座面ブラケットにけるカラー支持部材20の芯部20b内の金属カラー30(31)内に金属カラー用ボルトを挿入することにより、2箇所のボルト固定によって取付相手部材に取り付けることができる。
【0062】
そして、金属カラー用ボルトで固定する際、基準穴用ボルト,金属カラー用ボルト間の位置ズレを上述したカラー支持部材20の移動範囲によって吸収することにより、安定性良く取付相手部材に取り付けることができる。
【0063】
なお、取付安定性を最重視しない場合、本実施の形態の締め付け座面ブラケット5(内部に収納されるカラー支持部材20等を含む)のみによる1箇所のボルト固定によって取付相手部材に取り付けることも勿論可能である。
【0064】
<実施の形態2>
図6はこの発明の実施の形態2である締め付け座面(ピッチ吸収)ブラケット6の構成を示す説明図である。同図(a) は全体構成を示す斜視図であり、同図(b) が平面図である。
【0065】
同図に示すように、締め付け座面ブラケット6は、ブラケット固定部11、本体側面部22、座面蓋部23、座面土台部24、及びヒンジ部25並びにカラー支持部材20から構成される。
【0066】
座面土台部24は実施の形態1の座面土台部14と同様、開口部24h(第1の開口部;開口部23hと平面視同一形状)を有し、外縁の一部に沿ってリブ(図示せず)を有している。
【0067】
座面蓋部23は座面土台部24とヒンジ部25を介して一体的に形成されており、中央に開口部23h(第2の開口部)を有する。実施の形態2では開口部23hは本体土台部24に形成される開口部24hと同一の円状を呈している。
【0068】
座面蓋部23はヒンジ部25を回転軸とした回転動作によって、実施の形態1と同様、座面土台部24を塞ぐように位置決めされる閉状態(図6参照)、あるいは座面土台部24を開放するように位置決めされる開状態の配置設定が可能であり、座面土台部24への組立時には上記閉状態を呈する。
【0069】
実施の形態2の締め付け座面ブラケット6は、座面蓋部23を閉状態にして形成され、座面蓋部23及び本体土台部24による収納空間内にカラー支持部材20が収納される。この際、実施の形態1と同様、座面蓋部23のロック部23aの先端部が座面土台部14のロック引掛部24aに係止されることにより座面蓋部23と座面土台部24とは図6で示す態様で固定される。
【0070】
ただし、実施の形態2の締め付け座面ブラケット6では、ヒンジ部25及びロック部23aの形成位置がブラケット固定部11の形成面に対して平行な位置関係になるように設けられた点が異なる。なお、実施の形態1の締め付け座面ブラケット5では、ヒンジ部15及びロック部23aの形成位置がブラケット固定部11の形成面に対して垂直な位置関係になるように設けられている。
【0071】
また、実施の形態2の締め付け座面ブラケット6では本体土台部24の突出辺部分(図6(b) の下辺部分)にヒンジ部が設けられていないため、当該突出辺部分の外縁にはカラー支持部材20の飛び出しを防止するためのリブ24cを設けることが望ましい。
【0072】
また、実施の形態2では座面蓋部23の上面の外縁部ほぼすべて(ロック部23a,ヒンジ部25形成領域を除く)に補強用のリブ23cを設けている。なお、実施の形態1の座面蓋部13においても、同様に補強用のリブを設けるようにしても良い。なお、他の構成は実施の形態1の締め付け座面ブラケット5と同様であるため説明を省略する。
【0073】
このように、実施の形態2では、ロック部23aの位置を実施の形態1と変えることにより、開口部23hからブラケット固定部11への最短距離dBを、実施の形態1の開口部13hからブラケット固定部11への最短距離dA(図4(a) 参照)に比べ、ロック部13aを設ける必要がない分、短くすることができる。
【0074】
このように、実施の形態2の締め付け座面ブラケット6は、ロック機構であるロック部23a,ロック引掛部24aの配置を、実施の形態1のロック機構であるロック部13a,ロック引掛部14aの配置から変更することにより、ロック部23a,ロック引掛部24aが存在しない方向における座面蓋部23及び座面土台部24の形成長さを短くすることができる。
【0075】
したがって、実施の形態2の締め付け座面ブラケット6は、ロック部23a,ロック引掛部24aの配置箇所を適宜変更することによって、所望の平面形状に合致した平面形状を有する座面土台部24(座面蓋部23)を得ることができる。
【0076】
例えば、実施の形態1の締め付け座面ブラケット5及び実施の形態2の締め付け座面ブラケット6うち、所望の平面形状に合致した座面土台部14,24(座面蓋部13,23)が実現する方を設計段階で選択することができる。
【0077】
<実施の形態3>
図7はこの発明の実施の形態3である締め付け座面(ピッチ吸収)ブラケット7の収納空間CS内をカラー支持部材20が移動する状況を模式的に示す平面図である。
【0078】
同図(a) は収納空間CS内の中央にカラー支持部材20を配置した場合を示しており、同図(b) は収納空間CS内の平面視右方向に中央にカラー支持部材20を配置した場合を示している。
【0079】
図7に示すように、実施の形態3の締め付け座面ブラケット7は、座面蓋部13の開口部13x(座面土台部14の14x)の形状を、実施の形態1の開口部13h(開口部14h)の円状から図中右長の長円状にした点が異なる。他は実施の形態1の締め付け座面ブラケット5と同様であるため、同一符号を付して説明を適宜省略する。
【0080】
同図(a) に示すように、カラー支持部材20を収納空間CSの中央に配置した場合、カラー支持部材20(本体部20a)の全方向において限界可動線MXに達するまで距離に余裕(第1の余裕)がある。同様に、芯部20bの図中左右方向において開口部13xに達するまで距離に余裕(第2の余裕)がある。したがって、第1の余裕(正確には図中左右方向の余裕)を第2の余裕と同程度以上に設定しておくことにより、芯部20bは開口部13x内の任意の位置に配置することができる。
【0081】
なお、芯部20bのサイズ(外径)と座面蓋部13の開口部13xのサイズ(長径)との関係である上記第2の余裕は、予め設定された合成樹脂部品1の締め付け座面ブラケット5おけるボルト40を挿通する位置、及び、予め設定された取付相手部材におけるボルト40が立設される位置について、合成樹脂部品1及び取付相手部材の形成段階で設定された公差によって生じる位置ズレずれを吸収(ピッチ吸収とも言う)できるように設定することが望ましい。
【0082】
すなわち、上記第2の余裕は、開口部13xの内側で芯部20bが上記公差によって生じ得る位置ズレの距離分移動可能な関係に設定されることが望ましい。例えば、上記公差によって生じ得る図7の左右方向における最大の位置ずれの距離分だけ、芯部20bの外径より開口部14xの長径が大きく設定されているとよい。この際、上記第2の余裕を実現可能にすべく、上記第1の余裕は上記第2の余裕と同程度以上に設定しておくことが望ましい。
【0083】
このように、実施の形態3の締め付け座面ブラケット7は、長円形状の金属カラーを別途用いることなく、円状の金属カラー30(31)を用いながら、取付相手部材に固定するボルト位置のズレが長円形状に沿って生じる場合においても、適切に当該ズレを吸収することができる。
【0084】
(一対の締め付け座面(ピッチ吸収)ブラケットによる固定)
図8は締め付け座面ブラケットとそこに形成される貫通穴との関係を示す説明図である。同図(a) に示す締め付け座面ブラケット51は基準となる円状の基準穴51hを有しており、同図(b) に締め付け座面締め付け座面ブラケット52は基準穴51hより十分大きい円状の巨大穴(バカ穴)52hを有しており、同図(c) 示す締め付け座面締め付け座面ブラケット53は長円状の長穴53hを有している。
【0085】
一対の締め付け座面ブラケットを構成する場合、基準穴51hを有する締め付け座面ブラケット51(第2の締め付け座面ブラケット)と共に、第1の締め付け座面ブラケットとして実施の形態1の締め付け座面ブラケット5〜7のいずれかを用いる態様が考えられる。この態様において、実施の形態1の締め付け座面ブラケット5や実施の形態2の締め付け座面ブラケット6は、締め付け座面締め付け座面ブラケット52の代用として機能することができる。
【0086】
その結果、基準穴51h用ボルト,金属カラー30用ボルト間の位置ズレをカラー支持部材20の移動範囲によって吸収することにより、取付相手部材に安定性の良い取り付けが実現可能な一対の締め付け座面ブラケット(締め付け座面ブラケット5(6)+締め付け座面ブラケット51)を得ることができる。
【0087】
すなわち、一対の締め付け座面ブラケットのうち第1の締め付け座面ブラケットとして機能する実施の形態1及び実施の形態2の締め付け座面ブラケット5及び6は、巨大円状の金属カラーを別途用いることなく、通常の円状の金属カラー30(31)を用いながら、取付相手部材に固定するボルト位置のズレが長円形状に沿って生じる場合においても、適切に当該ズレを吸収することができる効果を奏する。
【0088】
また、一対の締め付け座面ブラケットを構成する場合、実施の形態3の締め付け座面ブラケット7を第1の締め付け座面ブラケットとして、締め付け座面締め付け座面ブラケット51と共に用いる態様が考えられる。この態様において、実施の形態3の締め付け座面ブラケット7は、締め付け座面締め付け座面ブラケット53の代用として機能することができる。
【0089】
その結果、基準穴51h用ボルト,金属カラー30用ボルト間の位置ズレをカラー支持部材20の移動範囲によって吸収することにより、取付相手部材に安定性の良い取り付けが実現可能な一対の締め付け座面ブラケット(締め付け座面ブラケット7+締め付け座面ブラケット51)を得ることができる。
【0090】
すなわち、一対の締め付け座面ブラケットのうち第1の締め付け座面ブラケットとして機能する実施の形態3の締め付け座面ブラケット7は、長円状の金属カラーを別途用いることなく、通常の円状の金属カラー30(31)を用いながら、取付相手部材に固定するボルト位置のズレが長円形状に沿って生じる場合においても、適切に当該ズレを吸収することができる効果を奏する。
【符号の説明】
【0091】
1 合成樹脂部品
5〜7 締め付け座面ブラケット
13,23 座面蓋部
13h,13x,14h,14x.23h,24h 開口部
14,24 座面土台部
15,25 ヒンジ部
13a,23a ロック部
14a,24a ロック引掛部
20 カラー支持部材
20a 本体部
20b 芯部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付相手部材にボルト固定可能な締め付け座面ブラケットであって、
第1の開口部を有する座面土台部と、
第2の開口部を有し、前記座面土台部への組立時において、前記第1の開口部に前記第2の開口部を対向させながら、前記座面土台部との間に所定の収納空間を形成可能な座面蓋部と、
前記所定の収納空間内に収納可能なカラー支持部材とを備え、
前記カラー支持部材は、
前記第1及び第2の開口部から抜け出ない平面形状を有する本体部と、
前記本体部内に設けられ、ボルト挿通用の金属カラーが装着可能な芯部とを含み、
前記所定の収納空間内に収納時において、前記芯部を前記第1及び第2の開口部の重複領域内で移動可能にしたことを特徴とする、
締め付け座面ピッチ吸収ブラケット。
【請求項2】
請求項1記載の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットであって、
前記座面土台部と前記座面蓋部とはヒンジ部を介して一体形成され、
前記座面蓋部はヒンジ部を回転軸とした回転動作によって、前記座面土台部を塞ぐように位置決めされる閉状態、あるいは前記座面を開放するように位置決めされる開状態の配置設定が可能であり、前記座面土台部への組立時には前記閉状態を呈する、
締め付け座面ピッチ吸収ブラケット。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2に記載の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットであって、
前記座面土台部及び前記座面蓋部の少なくとも一方は、前記所定の収納空間の外縁の少なくとも一部に沿って形成される凸部を有する、
締め付け座面ピッチ吸収ブラケット。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうち、いずれか1項に記載の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットであって、
前記座面蓋部及び前記座面土台部の所定箇所に、前記座面蓋部の前記座面土台部への組立時において、前記座面蓋部を前記座面土台部に固定するためのロック機構を有する、
締め付け座面ピッチ吸収ブラケット。
【請求項5】
第1及び第2の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットからなる一対の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットであって、
前記第1の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットは、請求項1ないし請求項4のうち、いずれか1項に記載の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットを含み、
前記第2の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットは、前記第1の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットと所定の間隔を隔てて設けられ所定の基準穴を有する、
一対の締め付け座面ピッチ吸収ブラケット。
【請求項6】
請求項5記載の一対の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットであって、
前記第1の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットにおける前記第1及び第2の開口部の重複領域は長円形状を呈する、
一対の締め付け座面ピッチ吸収ブラケット。
【請求項7】
請求項5記載の一対の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットであって、
前記第1の締め付け座面ピッチ吸収ブラケットにおける前記第1及び第2の開口部の重複領域は前記所定の基準穴より大きな巨大円状を呈する、
一対の締め付け座面ピッチ吸収ブラケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−24255(P2013−24255A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156491(P2011−156491)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】