説明

締結バンド

【課題】締結バンドの開閉作業を小さな力で、単純かつ容易に行えるようにする。
【解決手段】第1リング半体3と第2リング半体4とを備え、第1リング半体3の端部に一端がヒンジ連結されたアーム8とこのアーム8の他端側に基端9aから離間した位置でヒンジ連結されたレバー9とを備え、レバー9の基端側に係合軸11を備え、第2リング半体の端部の外周面に結合用突起部12を備える。結合用突起部12はリング半径方向外方の面の、係合軸11が係合可能な結合用凹所12aと、結合用凹所に対してヒンジ結合側と反対側の端部側の、前記係合軸11が係合可能な離反用凹所12bとを備える。開放作業及び閉鎖作業をてこ作用の小さな力で行うことができ、かつ単にレバーを回動させるという1段階の操作だけで行うことができる。開く際には、レバーの係合軸11を離反用凹所12bに係合させてレバーをさらに回動させることで、さらに大きく開放できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒンジ結合された2つのリング半体からなる開閉可能なリング状の締結バンドに関し、特にその締結機構に関する。
【背景技術】
【0002】
互いの端部がヒンジ結合されて開閉可能なリングを形成する第1のリング半体と第2のリング半体とを備えた締結バンドは、例えば、光ファイバや電線の接続部を密封状態で収容するクロージャのスリーブと端面板(蓋体)との封止結合に用いられている。
この種の締結バンドとして、特表平11−504595の締結バンド(クランプ)がある。この締結バンドの要部を図11、図12に示す。この締結バンド39は、ヒンジ結合された第1部分31と第2部分32とからなる開閉可能なリング状をなしている。2つの部分31、32はそれぞれ内面に、締結対象部分が収容される溝31a、32a(32aは不図示)を有している。第1部分31に回動可能に取り付けた腕部33と、この腕部33に回動可能に取り付けたレバー34とを有する。レバー34は、第2部分32の端部に設けた突起部35の端面35aと反対側の面35bに係合する係合面34aを有する。レバー34がオーバーセンタ位置(図12の1点鎖線で示す)にあるとき、レバー34の係合面34aが突起部35の面35bに係合した状態で、締結バンドの2つの部分31、32が締結される。
レバー34は係合面34aを越えて延びるL形の2つの伸長部36を有する。
締結バンドを閉鎖する時は、図11のようにL形の伸張部36の背側の面36aを突起部35のバンド厚み方向の両側に設けた突出軸37に係合させて、レバー34を矢印方向に回動させると、第2部分32が初期閉鎖てこ作用の力で第1部分31側に接近する。次いで、レバー34を図12の1点鎖線で示すように倒し、レバー34の係合面34aを突起部35の面35bに係合させて、締結バンドの2つの部分31、32を締結する。
図12の閉鎖状態の締結バンドを開く時は、L形の伸張部36の内側の面(フック状部分36b)を突出軸37に係合させて、レバー34を矢印方向に回動させると、初期開放てこ作用の力で開かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平11−504595
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の締結バンド39は、バンド開放時及び閉鎖時に、いずれもてこ作用を利用するので、小さな力で締結バンドの開閉できる。
しかし、締結バンドの閉鎖時には、レバー34を回動させL形の伸長部36の背側の面36aで第2部分32側の突出軸37を押して第2部分32を第1部分31側に接近させる操作と、前記伸長部36の突出軸37との係合を解除した後、レバー34の一端側を把持して倒して他端側の係合面34aを第2部分32の突起部35の面35bに係合させる、という2段階の操作を必要とするので、煩雑である。
また、バンド開放時には、レバー34のL形の伸長部36のフック状部分36bを突出軸37に係合させるので、突出軸37に係合させ易いし、またレバー34の伸長部36が安定して突出軸37と係合し続けるが、バンド閉鎖時には、L形の伸長部36の引っ掛かり部のない背側の面36aを突出軸37に係合させるので、伸長部36の背側の面36aの適切な箇所を突出軸37に当てるためにやや慎重な操作が必要であり、またレバー34を回動させる間、伸長部36の背側の面36aが突出軸37と安定して係合し続けるとは必ずしも言えず、伸長部36の背側の面36aが突出軸37から外れる可能性もあり、やや慎重な作業を必要とする。
また、バンド開放は、閉鎖状態にあるレバー34を単に回動させるのではなく、レバー34を起こして伸長部36のフック状部36bを突出軸37に引っ掛けてから、レバー34を図12の矢印方向に回動させる必要があるので、やはり2段階の操作が必要であり、煩雑である。
また、バンド開放は、レバー34のL形の伸長部36のフック状部分36bを係合軸37に係合させてレバー34を回動させるので、第2部分32を第1部分31側から必ずしも十分な距離だけ離反させることができない。開放初期には大きな力を必要としその後はそれ程大きな力を必要とはしないが、レバー34の操作で極力十分に離反させることができれば、バンド開放作業が一層楽になる。
【0005】
ところで、この種の締結バンド(クランプ)を、例えば、光ファイバや電線の接続部を密封状態で収容するクロージャのスリーブと端面板との結合に用いる場合について説明すると、スリーブと端面板との結合部として、その要部を簡略化して示した図10(この図は本発明と共通)のような構造を採用する場合がある。同図において、21は例えばポット形のクロージャの有底円筒状のスリーブ、22はこのスリーブの開口部に被せられるケーブル貫通穴付きの端面板であり、その一部分のみを示している。
スリーブ21と端面板22との結合部23は、スリーブ21側のカギ形断面の鍔状に突出するカギ形フランジ部21aと、同じく端面板22側のカギ形断面の鍔状に突出するカギ形フランジ部22aとが対向するとともに、端面板22側に内部突片22bを有してパッキング配置部23aが形成され、このパッキング配置部23aにリング状のパッキング24が配置された構造となっており、結合部23がスリーブ21の外周面位置から鍔状に突出した外形をなしている。
この鍔状に突出した外形の結合部23を前記締結バンド39で結合させるとすれば、開状態の締結バンドの2つの部分31、32で囲んで、その内面側の溝31a、32aに結合部23を収容し、レバー4を操作して締結バンドを締結して、スリーブ21と端面板22とをパッキング24を介在させて結合させることになる。
【0006】
上記の締結バンド39でスリーブ21と端面板22との結合部23を締結する場合あるいは締結解除を行う場合、すなわち、レバー4を操作して締結バンドの開閉を行う場合、圧縮されるパッキング24の反発力が大きいために、結合部23の側面と溝31a、32aの内側面との接触面25の摩擦力が大きく、締結バンドの2つの部分31、32を、その摩擦力に打ち勝って結合部23の側面25に対して摺動させて開く必要があるため、レバー4の操作に極めて大きな力を必要とし、容易な作業ではない。
このように締結バンドの開閉に大きな力が必要になることなどから、小さな力で開閉が可能であるとともに、そのバンド開閉作業が極力単純かつ容易な作業で行えることが望ましい。
【0007】
しかし、上記従来の締結バンド39は、上述の通り、バンド閉鎖時に2段階の操作が必要とする点、バンド閉鎖時には伸長部36の引っ掛かり部のない背側の面36aで突出軸37を押す動作なのでやや慎重な作業を必要とする点、バンド開放時に2つの部分31、32を十分な距離だけ離反させることが必ずしもできない点などで、改善すべき問題点がある。
本発明は上記従来の問題点を解決して、締結バンドの開閉を小さな力で行うことができ、しかも、極力単純かつ容易な作業で開閉作業を行うことが可能な締結バンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する請求項1の発明は、互いの端部がヒンジ結合されて開閉可能なリングを形成する第1のリング半体と第2のリング半体とを備えた締結バンドであって、
第1のリング半体のヒンジ結合側と反対側の端部の外周に一端がヒンジ連結されたアームとこのアームの他端側に基端から離間した位置でヒンジ連結されたレバーとを備え、前記レバーのヒンジ結合位置より基端側にバンド幅方向をなす係合軸を備え、第2のリング半体のヒンジ結合側と反対側の端部の外周面に結合用突起部を備え、前記結合用突起部は、リング半径方向外方の面に形成された前記レバーの係合軸が係合可能な結合用凹所とリング半径方向外方の面において前記結合用凹所に対してヒンジ結合側と反対側の端部側に形成された前記レバーの前記係合軸が係合可能な離反用凹所とを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項2は、請求項1の締結バンドにおいて、2つのリング半体が開状態である時に、レバーの係合軸を結合用突起部の結合用凹所に係合させ、レバーを係合軸を中心として第1のリング半体側と反対向きに、第2のリング半体の外周面に当たるまで回動させることで、2つのリング半体が最終的な閉状態となるように、各部の形状、寸法、位置が設定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3は、請求項1又は2の締結バンドにおいて、結合用突起部の結合用凹所が、その開口部が狭く奥部が広い奥広がり形状をなしていることを特徴とする。
【0011】
請求項4は、請求項1〜3のいずれかの締結バンドにおいて、レバーの係合軸が、アームとのヒンジ連結部のバンド幅方向の両側からそれぞれ基端側に延出する延出板部間に渡されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5は、請求項1〜4のいずれかの締結バンドにおいて、レバーが、全体としてリング半体の外周面に沿う円弧状をなしていることを特徴とする。
【0013】
請求項6は、請求項1〜5のいずれかの締結バンドにおいて、第2のリング半体が、ロック用突出部を外周面の前記結合用突起部から離れた位置に有し、レバーが、先端側の部分に前記ロック用突出部が嵌るロック用穴を有することを特徴とする。
【0014】
請求項7は、請求項1〜6のいずれかの締結バンドにおいて、アームが、バンド幅方向の両側をなす側板部と、両側板部をリング半径方向外方側で一体連結する一体連結部とからなることを特徴とする。
【0015】
請求項8は、請求項1〜7のいずれかの締結バンドにおいて、少なくとも一端側が開口している円筒体とこの円筒体の前記開口部に被せられる蓋体とが、円筒体の外周面位置から鍔状に突出する外形の結合部で互いに結合している場合に、前記結合部を締結するために用いられる締結バンドであり、
前記各リング半体が、その内面側に、前記円筒体と蓋体との鍔状に突出する外形の結合部を嵌合させる溝を有することを特徴とする。
【0016】
請求項9は、請求項8の締結バンドにおいて、結合部が、いずれも鍔状に突出する結合部円筒体側部分と結合部蓋体側部分との間にリング状のパッキングを配置してなる封止結合部であることを特徴とする。
【0017】
請求項10は、請求項9の締結バンドにおいて、光ファイバ又は電線の接続部を密封状態で収容するクロージャにおける円筒状のスリーブとこのスリーブの端部開口に被せられる端面板との封止結合部を締結するためのものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の締結バンドにおいて、締結バンドを閉鎖する時は、第1のリング半体にアームを介して連結されたレバーの基端側の係合軸を、第2のリング半体の結合用突起部の結合用凹所に嵌合させ、レバーを係合軸を中心として第1のリング半体側と反対向きに、第2のリング半体の外周面に当たるまで回動させると、第2のリング半体の端部が第1のリング半体の端部側に移動して、第1のリング半体と第2のリング半体とがリング状に閉鎖される。
このように、レバーを単に第1のリング半体側と反対向きに回動させるという1段階の操作だけで、締結バンドを締結することができる。
また、締結バンドを閉鎖する際には、まず、レバーの基端側の係合軸を結合用突起部の結合用凹所に嵌合させるという操作、すなわち、係合軸を結合用凹所に嵌合させるという、あいまいさのない操作をすればよいので、従来の締結バンドのように伸長部6の背側の面6aの適切な箇所を突出軸7に当てるためにやや慎重な操作が必要であるということはなく、操作性が良好である。
また、係合軸を結合用凹所に嵌合させてレバーを回動するので、従来の締結バンドのように伸長部6の背側の面6aが突出軸7から外れる可能性のある構造と異なり、レバーを回動する間に係合軸が結合用凹所から外れる恐れはなく、この点でも操作性が良好である。
また、締結バンド開放時には、レバーの係合軸が結合用突起部の結合用凹所に嵌合している閉鎖状態から、そのままレバーを第1のリング半体側に向けて回動させるだけで、開放時初期段階の開放がなされる。したがって、やはり2段階の操作が必要な従来の締結バンドと比べて操作性が良好である。
そして、続いて、レバーの係合軸を、結合用凹所から外し結合用突起部の離反用凹所に係合させて、レバーをさらに回動させると、第2のリング半体を第1のリング半体からさらに十分に離反させることができる。開放初期には大きな力を必要としその後はそれ程大きな力を必要とはしないが、このようにレバーの操作で極力十分に離反させることができれば、締結バンドの開放作業が楽になる。
また、上記のレバーを回動して行う開閉は、てこ作用による増大した力で行うことができるので、作業者は小さな力で開閉作業を行うことができ、労力が軽減される。
上記の通りであり、締結バンドの開閉作業を小さな力で行うことが可能となり、しかも、単純かつ容易な作業で行うことが可能となる。例えばクロージャのスリーブと端面板との結合部に適用した場合には、その開閉作業の作業性を向上させることができる。
【0019】
請求項3のように、結合用突起部の結合用凹所が、その開口部が狭く奥部が広い奥広がり形状をなしていることは、レバーの基端側の係合軸が結合用凹所から外れないために有効であり、かつ、開閉を1段階の操作で行うことを可能にするために適切な構造である。
【0020】
請求項4のように、レバーの係合軸が、アームとのヒンジ連結部のバンド幅方向の両側からそれぞれ基端側に延出する延出板部間に渡されている構造も、本発明の締結バンドの動作を適切に行わせるたための構造として適切である。
【0021】
請求項6のように、第2のリング半体に外周面にロック用突出部を備え、レバーが前記ロック用突出部が嵌るロック用穴を有する構造は、閉鎖状態にあるレバーがみだりに開かないようにロックするための構造として適切である。
また、請求項7のように、アームが、バンド幅方向の両側をなす側板部と、両側板部を、第1のリング半体とのヒンジ連結部側に寄った位置のリング半径方向外方側で一体連結する一体連結部とからなる構成は、レバーの基端側部分がアーム側と干渉しないための構造として適切である。
【0022】
本発明の締結バンドは、請求項8のように、各リング半体の内面に溝を設けて、円筒体と蓋体とが鍔状に突出する係合部で互いに係合する場合に用いて好適であり、また、請求項9のように係合部がリング状のパッキングを介しての係合部である場合に用いて好適であり、特に、請求項10のようにクロージャにおけるスリーブと端面板との封止結合部に用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例の締結バンドの環状に閉じた状態を示すもので、(イ)は斜視図、(ロ)は正面図である。
【図2】(イ)は図1(イ)の右側面図、(ロ)は(イ)のA−A断面図である。
【図3】(イ)は図2(ロ)の要部の拡大図、(ロ)は(イ)の模式的な平面図(右半分は概ね矢印B方向から見た図)である
【図4】締結バンドが図1の閉じた状態から開く操作をする際の途中段階を示すもので、(イ)は斜視図、(ロ)は正面図である。
【図5】締結バンドが図1の閉じた状態から開く操作をする際の図4に続く段階を示すもので、(イ)は斜視図、(ロ)は正面図である。
【図6】締結バンドが図1の閉じた状態から開く操作をする際の図5に続く段階を示すもので、(イ)は斜視図、(ロ)は正面図である。
【図7】締結バンドを開く操作をする際の手順をまとめて図示したもので、(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)は、図1、図4、図5、図6のそれぞれ(ロ)と同じものである。
【図8】締結バンドを閉じる操作をする際の手順をまとめて図示したもので、(イ)は図7の(ハ)と、(ロ)は図7の(ロ)と、、(ハ)は図7の(イ)とそれぞれ同じものである。
【図9】上記の締結バンドをポット形の光クロージャの有底円筒状のスリーブに端面板を固定するために用いた例を説明する図で、(イ)は光クロージャの正面図、(ロ)は左側面図である。
【図10】図9の拡大したC−C断面図である。
【図11】従来の締結バンド(クランプ)の要部を示す斜視図で、締結バンドを閉じる動作を説明する図である。
【図12】図11の締結バンドを開く動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施した締結バンドについて、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は本発明の一実施例の締結バンド1の環状に閉じた状態を示すもので、(イ)は斜視図、(ロ)は正面図である。図2(イ)は図1(ロ)の右側面図、(ロ)は(イ)のA−A断面図である。図3(イ)は図2(ロ)の要部の拡大図、(ロ)は(イ)の模式的な平面図(右半分は概ね矢印B方向から見た図)である。図4、図5、図6は、締結バンド1の開閉動作の途中の状態を示す。
これらの図に示すように、この締結バンド1は、互いの端部がヒンジ軸2でヒンジ結合されて開閉可能なリングを形成する第1のリング半体3と第2のリング半体4とを備えている。各リング半体3、4は内面に、後述する結合部23を収容する溝3a、4aを備えている。
前記第1のリング半体3のヒンジ結合2側と反対側の端部の外周に形成されたピン受け部6に一端がヒンジピン7でヒンジ連結されたアーム8とこのアーム8の他端側に基端9aから離間した位置でヒンジピン10でヒンジ連結されたレバー9とを備えている。
前記レバー9の基端9aに近接して、バンド幅方向(図2(イ)の左右方向、図3(ロ)で上下方向)をなす係合軸11を備えている。
第2のリング半体4は、ヒンジ結合2側と反対側の端部の外周面に結合用突起部12を備えている。この結合用突起部12は、そのリング半径方向外方(図3(イ)で上方)の面に、前記レバー9の係合軸11が係合可能な結合用凹所12aを備え、かつ、前記結合用凹所12aに対してヒンジ結合側と反対側の端部側(図3(イ)で左方の端部側)に、同じく前記係合軸11が係合可能な離反用凹所12bを備えている。すなわち、係合軸11は、レバー9の姿勢を変えて、結合用凹所12aにも離反用凹所12bにも係合できる。
前記第1のリング半体3、第2のリング半体4、ヒンジピン7、アーム8、レバー9、ヒンジピン10、係合軸11、結合用凹所12aなどの各部の形状、寸法、位置は、2つのリング半体3、4が開状態である時に、レバー9の係合軸11を結合用突起部12の結合用凹所12aに係合させ、レバー9を係合軸11を中心として第1のリング半体3側と反対向き(図4、図5などで右向き)に、第2のリング半体4の外周面に当たるまで回動させることで、2つのリング半体3、4が最終的な閉状態となるように設定されている。
【0026】
前記結合用突起部12の結合用凹所12aは、その開口部が狭く奥部が広い奥広がり形状をなしている。
また、前記アーム8は、バンド幅方向の両側をなす側板部8aと、両側板部8aを一体連結する一体連結部8bとからなっている。一体連結部8bは、第1のリング半体3とのヒンジ連結部(ヒンジピン7)側に寄った位置における、リング半径方向外方側(図3(イ)で上側)で、両側板部8a、8aを一体連結している。この構造では、レバー9とのヒンジ部(ヒンジピン10)と一体連結部8bとの間に、レバー9の基端側部分9bが入り込む空間が形成されるので、レバー9の基端側部分9bがアーム8側と干渉しないための構造として適切である。
また、レバー9の基端側部分9bは、アーム8とのヒンジ連結部(ヒンジピン10)のバンド幅方向の両側からそれぞれ基端側に延出する2つの延出板9cからなり、レバー9の前記係合軸11は前記両側の延出板9c間に渡されており、バンド幅方向の中央に位置している。
前記レバー9は、アーム8とのヒンジ連結位置10から基端側の部分9bの長さより先端側の部分9dの長さが長く(大きな力を得るてこ作用)、先端側の部分9dにロック用穴9eが形成されている。また、レバー9は、全体としてリング半体の外周面に沿う円弧状をなしており、図1等に示すように、2つのリング半体3、4を閉ざした時に、リング半体4の外周面に概ね接している。
第2のリング半体4の外周面にロック用突出部15を備えている。このロック用突出部15は、第2のリング半体4の結合用突起部12から離れた位置にあり、図1のようにレバー9を倒して締結バンド1を閉じた状態で、レバー9に設けたロック用穴9eに嵌る。このロック用突出部15の上部側にレバー抜け止め穴15aを有し、図示せぬ抜け止めピンを挿入してレバー9の抜け止めを図ることができる。
【0027】
上記の締結バンド1の開閉操作について説明する。
締結バンド1を開く時は、図1、図4、図5、図6のような各段階を経る。その各段階を図7にまとめて示す。図1及び図7(イ)は締結バンド1の閉状態を示す。
締結バンド開放時には、ロック用突出部15の抜け止め穴15aに挿入されている図示略の抜け止めピンを外し、レバー9の係合軸11が結合用突起部12の結合用凹所12aに嵌合している閉鎖状態(図1、図2)から、そのままレバー9の先端部を把持して第1のリング半体3側に向けて回動させる(図4、図7(ロ))と、ヒンジピン10を支点、係合軸11を作用点とするてこ作用の力を受けて、第2のリング半体4が第1のリング半体3から離れる。
このように、閉鎖状態をある程度の開放状態にするだけに限れば、レバー9を第1のリング半体3側に向けて回動させるという1段階の操作だけで、開放が行われ、2段階の操作が必要な従来の締結バンドと比べて操作性が良好である。
続いて、レバー9の係合軸11を、結合用凹所12aから外し(図5、図7(ハ))、係合軸11を今度は結合用突起部12の離反用凹所12bに係合させる(図6、図7(ニ))。次いで、レバー9をさらに第1のリング半体3側に回動させると、第2のリング半体4を第1のリング半体3からさらに十分に離反させることができる。開放初期には大きな力を必要としその後はそれ程大きな力を必要とはしないが、このようにレバー9の操作で極力十分に離反させることができれば、締結バンドの開放作業が一層楽になる。
【0028】
締結バンドを閉鎖する時は、図8(イ)、(ロ)、(ハ)の段階を経る。図8(イ)、(ロ)、(ハ)はそれぞれ図5、図4、図1と同じである。
図5及び図8(イ)は締結バンド1の開状態を示す。この状態で、レバー9の係合軸11を、第2のリング半体4の結合用突起部12の結合用凹所12aに嵌合させる(図8(ロ)、図4)。次いで、レバー9を係合軸11を中心として矢印のように第1のリング半体3側と反対向きに、第2のリング半体4の外周面に当たるまで回動させと、第2のリング半体4の端部が第1のリング半体3の端部に移動して、第1のリング半体3と第2のリング半体4とがリング状に閉鎖される(図8(ハ)、図1)。
このように、レバー9を単に第1のリング半体3側と反対向きに回動させるという1段階の操作だけで、締結バンドを締結することができる。
上記の通り、閉鎖する際には、レバー9の基端側の係合軸11を結合用突起部12の結合用凹所12aに嵌合させるという操作、すなわち、係合軸11を結合用凹所12aに嵌合させるという、あいまいさのない操作をすればよいので、従来の締結バンドのように伸長部6の背側の面6aの適切な箇所を突出軸7に当てるためにやや慎重な操作が必要であるということはなく、操作性が良好である。
また、係合軸11を結合用凹所12aに嵌合させてレバー9を回動するので、従来の締結バンドのように伸長部6の背側の面6aが突出軸7から外れる可能性のある構造と異なり、レバー9を回動する間に係合軸11が結合用凹所12aから外れる恐れはなく、この点でも操作性が良好である。特に、結合用凹所12aが開口部は狭く内部が広がっている形状であることで、外れる恐れは一層少ない。
【実施例2】
【0029】
図9は本発明の締結バンド1を、例えばポット形の光クロージャ20の有底円筒状のスリーブ21と、このスリーブ21の開口部に被せられるケーブル貫通穴付きの端面板(蓋体)22との結合部を締結するために用いた場合を示し、同図(イ)は光クロージャ20の正面図、(ロ)は左側面図である。
図10はスリーブ21と端面板22との結合部の一部を簡略化して示したもので、スリーブ21と端面板22との結合部23は、カギ形断面の鍔状に突出するスリーブ21側のカギ形フランジ部21aと、同じくカギ形断面の鍔状に突出する端面板22側のカギ形フランジ部22aとが対向するとともに、端面板22側に内部突片22bを有してコ字形断面をなすパッキング配置部23aが形成され、このパッキング配置部23aにリング状のパッキング(Oリング)24が配置された構造となっており、結合部23がスリーブ21の外周面位置から鍔状に突出した外形をなしている。なお、端面板22は図では若干の深さのある凹形状としているが、単なる円板状でもよい。
この鍔状に突出した外形の結合部23を上述の締結バンド1で結合させる場合、開状態の締結バンド1の2つのリング半体3、4で囲んで、その内面側の溝3a、4aに結合部23を収容し、前述したようにレバー9を操作して2つのリング半体3、4を締結して、スリーブ21と端面板22とをパッキング24を介在させて結合させる。締結バンド1を開放する場合の操作も、前述した通りである。
【0030】
上記の締結バンド1でスリーブ21と端面板22との結合部23を締結する場合あるいは締結解除を行う場合、すなわち、レバー9を操作して締結バンドの開閉を行う場合、圧縮されるパッキング24の反発力が大きいために、結合部23の側面と溝3a、4aの内側面との接触面25の摩擦力が大きく、2つのリング半体3、4を、その摩擦力に打ち勝って結合部23の側面25に対して摺動させて開く必要があるため、レバー9の操作に極めて大きな力を必要とし、容易な作業ではない。
しかし、レバー9を回動させた時に、ヒンジピン10を支点、係合軸11を作用点とするてこ作用による増大した力で開閉を行うことができるので、作業者は小さな力で開閉作業を行うことができ、労力が軽減されるとともに、作業性が向上する。
また、閉鎖状態をある程度の開放状態にするだけに限れば、レバー9を第1のリング半体3側に向けて回動させるという1段階の操作だけで、開放が行われるので、この点でも操作性が良好である。レバー9の係合軸11を結合用突起部12の離反用凹所12bに係合させてさらに大きく開放することができるので、バンド開放作業の作業性が向上する。
また、締結バンド1を閉鎖する作業についても、上述した通り1段階の操作で行うことができるので、操作性が良好である。
上記の通り、小さな力で、かつ、単純かつ容易な作業で開閉作業を行うことが可能となり、光クロージャの作業に際してバンド開閉を行う作業の作業性が改善される。
【0031】
上述の実施例では、ポット形の光クロージャの有底円筒状のスリーブと端面板との結合部を締結する場合について説明したが、両端開口円筒状スリーブを有する架空用などの光クロージャのスリーブと開口部を覆うケーブル穴付き又は穴なしの端面板との結合部を締結する場合にも適用できる。また、光クロージャに限らず、電線の接続部を収容するクロージャにも適用できる。
さらに、クロージャに限らず、鍔状に突出する種々の2つの部分を結合する用途に適用することができ、また、単に二つ割構造の円筒体を締結する用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 締結バンド
2 ヒンジ軸(ヒンジ結合部)
3 第1のリング半体
4 第2のリング半体
3a、4a 溝
6 ピン受け部
7 ヒンジピン
8 アーム
8a 側板部
8b 一体連結部
9 レバー
9a (レバーの)基端
9b (レバーの)基端側部分
9c (基端側部分の)延出板
9d (レバーの)先端側の部分
9e ロック用穴
10 ヒンジピン
11 係合軸
12 結合用突起部
12a 結合用凹所
12b 離反用凹所
15 ロック用突出部
15a レバー抜け止め穴
21 光クロージャ
22 スリーブ
22 端面板(蓋体)
23 (スリーブと端面板との)結合部
21a、22a カギ形フランジ部
23a パッキング配置部
24 リング状のパッキング
25 (リング半体の溝の内面と結合部との)接触面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの端部がヒンジ結合されて開閉可能なリングを形成する第1のリング半体と第2のリング半体とを備えた締結バンドであって、
第1のリング半体のヒンジ結合側と反対側の端部の外周に一端がヒンジ連結されたアームとこのアームの他端側に基端から離間した位置でヒンジ連結されたレバーとを備え、前記レバーのヒンジ結合位置より基端側にバンド幅方向をなす係合軸を備え、第2のリング半体のヒンジ結合側と反対側の端部の外周面に結合用突起部を備え、前記結合用突起部は、リング半径方向外方の面に形成された前記レバーの係合軸が係合可能な結合用凹所とリング半径方向外方の面において前記結合用凹所に対してヒンジ結合側と反対側の端部側に形成された前記レバーの前記係合軸が係合可能な離反用凹所とを備えていることを特徴とする締結バンド。
【請求項2】
2つのリング半体が開状態である時に、レバーの係合軸を結合用突起部の結合用凹所に係合させ、レバーを係合軸を中心として第1のリング半体側と反対向きに、第2のリング半体の外周面に当たるまで回動させることで、2つのリング半体が最終的な閉状態となるように、各部の形状、寸法、位置が設定されていることを特徴とする請求項1記載の締結バンド。
【請求項3】
前記結合用突起部の結合用凹所は、その開口部が狭く奥部が広い奥広がり形状をなしていることを特徴とする請求項1又は2に記載の締結バンド。
【請求項4】
前記レバーの係合軸は、アームとのヒンジ連結部のバンド幅方向の両側からそれぞれ基端側に延出する延出板部間に渡されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の締結バンド。
【請求項5】
前記レバーは、全体としてリング半体の外周面に沿う円弧状をなしていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の締結バンド。
【請求項6】
前記第2のリング半体は、ロック用突出部を外周面の前記結合用突起部から離れた位置に有し、前記レバーは、先端側の部分に前記ロック用突出部が嵌るロック用穴を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の締結バンド。
【請求項7】
前記アームは、バンド幅方向の両側をなす側板部と、両側板部をリング半径方向外方側で一体連結する一体連結部とからなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の締結バンド。
【請求項8】
少なくとも一端側が開口している円筒体とこの円筒体の前記開口部に被せられる蓋体とが、円筒体の外周面位置から鍔状に突出する外形の結合部で互いに結合している場合に、前記結合部を締結するために用いられる締結バンドであり、
前記各リング半体が、その内面側に、前記円筒体と蓋体との鍔状に突出する外形の結合部を嵌合させる溝を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の締結バンド。
【請求項9】
前記結合部が、いずれも鍔状に突出する結合部円筒体側部分と結合部蓋体側部分との間にリング状のパッキングを配置してなる封止結合部であることを特徴とする請求項8記載の締結バンド。
【請求項10】
光ファイバ又は電線の接続部を密封状態で収容するクロージャにおける円筒状のスリーブとこのスリーブの端部開口に被せられる端面板との封止結合部を締結するためのものであることを特徴とする請求項9記載の締結バンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−97859(P2012−97859A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247176(P2010−247176)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】