説明

緩衝器用油圧作動油組成物及び緩衝器における減衰力向上方法

【課題】ツインチューブ式緩衝器の減衰力を向上させることができる緩衝器用油圧作動油組成物、並びにツインチューブ式緩衝器におけるキャビテーションによる泡の発生を抑制でき、減衰力を向上させることができるツインチューブ式緩衝器の減衰力向上方法を提供すること。
【解決手段】本発明の緩衝器用油圧作動油組成物は、潤滑油基油と、該基油に配合するリン含有添加剤とを含み、該リン含有添加剤の含有割合が組成物全量基準で、リン量として0.005〜0.2質量%であり、組成物の40℃における動粘度が30〜50mm2/sであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツインチューブ式緩衝器の減衰力を高めることができるツインチューブ式緩衝器用油圧作動油組成物及びツインチューブ式緩衝器における減衰力向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器にはさまざまな形式があるが、基本的に弁のついたピストンとチューブ(外筒若しくはシリンダーともいう)とからなる。ピストンはロッドに固定されており、チューブ内面を摺動し、ロッドはロッドガイド部のシールを摺動する。緩衝器は油圧作動油と必要によりガスを封入しバルブやオリフィス等の弁を通過する油圧作動油の抵抗により減衰力を発生し、緩衝作用を行う。同じ断面積の緩衝器であれば、発生する減衰力が高いほど緩衝器の設置面積を最小にできるため、減衰力の向上が求められている。
緩衝器用油圧作動油は、低温時も作動させるために粘度は低いほうが好ましいが、減衰力は低くなる。逆に、油圧作動油の粘度を高くするとキャビテーションによる泡が発生しやすくなり、緩衝器の減衰力を高めることができない。
従って、緩衝器用の油圧作動油には、低温粘度特性と減衰力の向上の両性能をバランス良く向上させる必要がある。
【0003】
緩衝器の中でも、ツインチューブ式緩衝器は、インナーチューブ、アウターチューブ及びインナーチューブ内を摺動するピストンロッドを備え、該インナーチューブ下部にベースバルブ及び/又はオリフィスを有し、インナーチューブ−アウターチューブ間にリザーバ室が形成されており、インナーチューブ内及びリザーバ室に油圧作動油とガスを充填してなり、緩衝器の伸縮に伴う圧縮・膨張によって、前記インナーチューブ下部のベースバルブ又はオリフィスを通じてインナーチューブ内の油圧作動油の過不足分がリザーバ室の油圧作動油によって調整される機構を有する。
このようなツインチューブ式緩衝器においては、ピストンの動きが早くなると、油圧作動油中にキャビテーションによる泡の発生が始まり、これが過度に続くと、リザーバ室に戻る油圧作動油も泡立った状態が続き、インナーチューブ下部のベースバルブやオリフィスを通して泡立った油圧作動油がインナーチューブ内に供給されてしまうため、該泡によって減衰力特性が急激に悪化する。
従来、緩衝器用油圧作動油としては、要求される様々な性能を改善するために、例えば、特許文献1〜7において、リン酸エステル、アミン化合物、粘度指数向上剤等の各種添加剤を用いることが、また、例えば、特許文献8〜16において、ポリα−オレフィン、エステル、シリコンオイル、あるいは深脱ろう基油等の各種高性能基油を用いることが提案されている。
しかし、ツインチューブ式緩衝器の特性に応じた減衰力の向上方法は十分に検討されていないのが現状である。
【特許文献1】特開平5−255683号公報
【特許文献2】特開平7−224293号公報
【特許文献3】特開平7−258678号公報
【特許文献4】特開平6−128581号公報
【特許文献5】特開2000−192067号公報
【特許文献6】特開2002−194376号公報
【特許文献7】特開平3−285988号公報
【特許文献8】特開平3−285989号公報
【特許文献9】特開平5−86390号公報
【特許文献10】特開平5−247482号公報
【特許文献11】特開平6−220480号公報
【特許文献12】特開2000−119672号公報
【特許文献13】特開2000−044971号公報
【特許文献14】特開2000−109876号公報
【特許文献15】特開2000−119672号公報
【特許文献16】特開2005−314609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ツインチューブ式緩衝器の減衰力を向上させることができる緩衝器用油圧作動油組成物を提供することにある。
本発明の別の課題は、ツインチューブ式緩衝器におけるキャビテーションによる泡の発生を抑制でき、減衰力を向上させることができるツインチューブ式緩衝器の減衰力向上方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、リン含有添加剤を特定量含有するとともに、組成物の40℃における動粘度が特定範囲である油圧作動油組成物が、ツインチューブ式緩衝器の減衰力を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。そして、ツインチューブ式緩衝器におけるリザーバ室に、該油圧作動油組成物を特定量充填することで、キャビテーションによる泡の影響を受けにくく、該緩衝器の減衰力を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明によれば、潤滑油基油と、該基油に配合するリン含有添加剤とを含み、該リン含有添加剤の含有割合が組成物全量基準で、リン量として0.005〜0.2質量%であり、組成物の40℃における動粘度が30〜50mm2/sであることを特徴とするツインチューブ式緩衝器用油圧作動油組成物(以下、本発明の組成物と略すことがある)が提供される。
また本発明によれば、インナーチューブ、アウターチューブ及びインナーチューブ内を摺動するピストンロッドを備え、該インナーチューブ下部にベースバルブ及び/又はオリフィスを有し、インナーチューブ−アウターチューブ間にリザーバ室が形成されており、インナーチューブ内及びリザーバ室に油圧作動油とガスを充填してなり、前記ピストンロッドの作動により、インナーチューブ下部のベースバルブ及び/又はオリフィスを通じてインナーチューブ内の油圧作動油の過不足分がリザーバ室の油圧作動油によって調整される機構を有するツインチューブ式緩衝器における減衰力向上方法であって、前記ピストンロッドが作動していない状態の位置にある際の前記インナーチューブ下部のベースバルブ又はオリフィスの位置に対する前記リザーバ室における該油圧作動油の液面高さ(h)が、少なくとも3cm以上となるように本発明の組成物を充填することを特徴とするツインチューブ式緩衝器における減衰力向上方法が提供される。
更に本発明によれば、インナーチューブ、アウターチューブ及びインナーチューブ内を摺動するピストンロッドを備え、該インナーチューブ下部にベースバルブ及び/又はオリフィスを有し、インナーチューブ−アウターチューブ間にリザーバ室が形成されており、インナーチューブ内及びリザーバ室に油圧作動油とガスを充填してなり、前記ピストンロッドの作動により、インナーチューブ下部のベースバルブ及び/又はオリフィスを通じてインナーチューブ内の油圧作動油の過不足分がリザーバ室の油圧作動油によって調整される機構を有するツインチューブ式緩衝器における減衰力向上方法であって、前記ピストンロッドが作動していない状態の位置にある際の前記リザーバ室における前記油圧作動油の油量をvr(ml)とし、緩衝器に充填される前記油圧作動油の全油量をV(ml)とすると、前記リザーバ室以外に充填された前記油圧作動油の油量(V−vr)(ml)に対する前記リザーバ室における前記油圧作動油の油量vrの割合(X)((vr)/(V−vr))が0.5以上となるように、本発明の組成物を充填することを特徴とするツインチューブ式緩衝器における減衰力向上方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物は、リン含有添加剤を特定割合含み、かつ40℃における動粘度が特定範囲であるので、ツインチューブ式緩衝器におけるキャビテーションによる泡立ちを抑制し、減衰力を向上でき、消泡剤を含有することでさらに減衰力を向上させることができる。
本発明の減衰力向上方法は、前記液面高さ(h)を特定高さ以上となるように、また、前記割合(X)を特定値以上となるように本発明の組成物を充填するので、リザーバ室に戻る本発明の組成物が泡立っていても、十分な消泡時間を確保することができ、インナーチューブ下部のベースバルブ又はオリフィスからインナーチューブ内へ泡立った本発明の組成物が供給されることが防止でき、緩衝器の減衰力を維持することができる。
従って、本発明の組成物は、ツインチューブ式緩衝器を採用した、ショックアブソーバー、アクティブサスペンション、ステーダンパー、エンジンダンパー等の自動車の懸架装置、二輪車のフロントフォーク等の緩衝器用に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳述する。
本発明の組成物に用いる潤滑油基油としては、鉱油系潤滑油基油、合成系潤滑油基油又はこれらの混合基油が挙げられる。
鉱油系潤滑油基油としては、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、芳香族系鉱油から選ばれる1種又は2種以上の混合基油を好ましく使用することができ、パラフィン系鉱油及び/又はナフテン系鉱油を使用することがより好ましい。
【0009】
パラフィン系鉱油としては、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理の1種もしくは2種以上の精製手段を適宜組み合わせて適用して得られる鉱油、あるいはワックス異性化鉱油、GTL WAX(ガストゥリキッドワックスあるいはフィッシャートロプシュワックス)を異性化する手法で製造される基油が例示できる。
パラフィン系鉱油としては、ツインチューブ式緩衝器の減衰力を向上するため、あるいは、緩衝器用油圧作動油に要求される諸性能を満足するために、以下の諸性状を示すパラフィン系鉱油の使用が望ましい。
【0010】
パラフィン系鉱油の%CP/%CNの値は、通常1以上、好ましくは1〜20、より好ましくは1.5〜10、更に好ましくは2〜3である。
パラフィン系鉱油の%CPは特に制限はないが、通常50以上、より好ましくは55〜85、更に好ましくは60〜70である。
パラフィン系鉱油の%CNは特に制限はないが、好ましくは40以下、より好ましくは10〜35、更に好ましくは20〜30である。本発明においては、%CNが28以上のパラフィン系鉱油も好適に使用することができる。
パラフィン系鉱油の%CAは特に制限はないが、好ましくは0〜10、より好ましくは1〜9、更に好ましくは3〜7である。
なお、本発明において%CP、%CN及び%CAは、ASTM D 3238−85に準拠した方法(n−d−M環分析)により求められる、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率、ナフテン炭素数の全炭素数に対する百分率及び芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率をそれぞれ意味する。
本発明においては、上記潤滑油基油の規定に合致したパラフィン系鉱油も好適に使用することができる。
【0011】
パラフィン系鉱油の動粘度は、100℃において、通常1〜20mm2/s、好ましくは1.5〜10mm2/s、更に好ましくは2〜5mm2/sであり、40℃において、通常3〜60mm2/s、好ましくは4〜40mm2/s、更に好ましくは5〜25mm2/sである。
パラフィン系鉱油の粘度指数は、通常80以上、好ましくは80〜120、より好ましくは85〜110、更に好ましくは85〜105である。
パラフィン系鉱油の流動点は、通常0℃以下、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−20℃以下である。
なお、本発明において流動点は、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」に準拠して規定される流動点を意味する。
【0012】
パラフィン系鉱油は、例えば、(P1)アニリン点が96℃以上、好ましくは120以下、より好ましくは100℃以下のパラフィン系鉱油及び/又は(P2)アニリン点が95℃以下、好ましくは66〜95℃、より好ましくは80〜90℃のパラフィン系鉱油の使用が望ましい。これらのうち、本発明においては比較的緩い振動条件において減衰力をより高めることができる点で、上記(P1)及び(P2)を好適に使用することができ、より厳しい振動条件において減衰力をより高めることができる点で、特に上記(P1)成分の使用が望ましい。
なお、本発明においてアニリン点は、JIS K 2256「石油製品アニリン点及び混合アニリン点試験方法」に準拠して規定されるアニリン点を意味する。
【0013】
ナフテン系鉱油としては、ナフテン分の多いナフテン基原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理の1種もしくは2種以上の精製手段を適宜組み合わせて適用して得られる鉱油が例示できる。
ナフテン系鉱油としては、ツインチューブ式緩衝器の減衰力を向上するため、あるいは、緩衝器用油圧作動油に要求される諸性能を満足するために、以下の諸性状を示すナフテン系鉱油の使用が望ましい。
【0014】
ナフテン系鉱油の%CP/%CNの値は、通常1未満、好ましくは0.2〜1未満、より好ましくは0.5〜0.95、更に好ましくは0.7〜0.95である。
ナフテン系鉱油の%CPは特に制限はないが、通常50未満、より好ましくは30〜48、更に好ましくは35〜45である。
ナフテン系鉱油の%CNは特に制限はないが、好ましくは30〜80、より好ましくは35〜70、更に好ましくは40〜60である。
ナフテン系鉱油の%CAは特に制限はないが、好ましくは0〜25、より好ましくは5〜20、更に好ましくは10〜15である。
【0015】
ナフテン系鉱油の動粘度は、100℃において、通常1〜20mm2/s、好ましくは2〜15mm2/s、更に好ましくは3〜15mm2/sであり、40℃において、通常3〜500mm2/s、好ましくは10〜300mm2/s、更に好ましくは15〜250mm2/sである。
ナフテン系鉱油の粘度指数は、通常120以下、好ましくは50以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下であり、好ましくは−50以上、より好ましくは−30以上である。
ナフテン系鉱油の流動点は、通常0℃以下、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−20℃以下、更に好ましくは−30℃以下である。
【0016】
ナフテン系鉱油は、例えば、アニリン点20℃以上のナフテン系鉱油が使用でき、具体的には、(N1)アニリン点96℃以上のナフテン系鉱油及び/又は(N2)アニリン点95℃以下のナフテン系鉱油が挙げられる。
前記(N2)成分としては、例えば、(N2-1)アニリン点66〜95℃、好ましくは70〜85℃のナフテン系鉱油及び/又は(N2-2)アニリン点65℃以下、20℃以上、より好ましくは50℃以上のナフテン系鉱油が挙げられる。これらのうち、本発明においては減衰力をより高めることができ、組成物の粘度指数をより高めることができる点で、特に上記(N2-1)成分の使用が望ましい。
【0017】
潤滑油基油に用いることができる合成系基油としては、ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフィン又はその水素化物;ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のジエステル;ネオペンチルグリコールエステル、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、芳香族エステル等の芳香族系合成油;これら2種以上の混合物が例示できる。これらの中でも、40℃における動粘度が20〜50mm2/sのアルキルナフタレン(以下、(A)成分と略すことがある)の使用が好ましい。
本発明において使用可能な合成系基油は、ツインチューブ式緩衝器の減衰力を向上でき、あるいは更に緩衝器用油圧作動油に要求される諸性能を満足するために、以下の諸性状を示す合成系基油の使用が望ましい。
【0018】
合成系基油の動粘度は、100℃において、通常1〜500mm2/s、好ましくは2〜100mm2/s、更に好ましくは3〜50mm2/sであり、40℃において、通常3〜2000mm2/s、好ましくは10〜500mm2/s、更に好ましくは20〜50mm2/s、特に好ましくは25〜40mm2/sである。
合成系基油の粘度指数は、通常−50〜300、好ましくは0〜150、より好ましくは50〜120、更に好ましくは70〜95である。
合成系鉱油の流動点は、通常0℃以下、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−20℃以下である。
【0019】
合成系基油としては、例えば、(S1)アニリン点96℃以上の合成系基油及び/又は(S2)アニリン点95℃以下の合成系基油が挙げられる。
(S2)成分としては、例えば、(S2-1)アニリン点66〜95℃、好ましくは70〜90℃の合成系基油及び/又は(S2-2)アニリン点20℃以上、65℃以下、好ましくは50℃以下の合成系基油が挙げられる。
(S2-2)成分としては、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等の芳香族系合成基油を例示することができ、特に、上記(A)成分の使用が好ましい。
【0020】
前記(A)成分は、40℃における動粘度が20〜50mm2/sアルキルナフタレンであり、本発明の所望の効果を更に改善するために以下の諸性状を有するアルキルナフタレンが好ましい。
(A)成分の40℃における好ましい動粘度は、25〜45mm2/s、更に好ましくは30〜40mm2/sである。
(A)成分の100℃における動粘度は、通常1〜10mm2/s、好ましくは3〜8mm2/s、更に好ましくは4〜6mm2/sである。
(A)成分のアニリン点は特に制限はないが、通常65℃以下、好ましくは20〜50℃、より好ましくは30〜40℃である。
(A)成分の粘度指数は特に制限はないが、通常0以上、より好ましくは40〜100、更に好ましくは60〜90、特に好ましくは70〜90である。
(A)成分の流動点は特に制限はないが、通常0℃以下、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−20℃以下である。
【0021】
(A)成分としては、より具体的には式(1)で表される化合物が好ましく用いられる。
【化1】

式(1)中、R1、R2、R3及びR4は同一でも異なっていても良く、それぞれ水素原子又は炭素数1〜40の炭化水素基を示し、R1、R2、R3又はR4の少なくとも1つはアルキル基を示す。
【0022】
式(1)においてR1、R2、R3及びR4の炭化水素基としては、例えば、アルキル基の他に、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が含まれるが、R1、R2、R3及びR4は全てアルキル基であることが好ましい。
アルキル基の炭素数は、通常1〜40、好ましくは8〜30、より好ましくは10〜20である。
1、R2、R3及びR4の合計炭素数は、好ましくは8〜50、より好ましくは10〜40である。
1、R2、R3及びR4のうち2つ以上が炭化水素基である場合、そのうち少なくとも1つがアルキル基であればその組み合わせは任意であるが、全てアルキル基であることが好ましい。また、R1及びR2が炭化水素基であるような、同一のベンゼン環に2つの炭化水素基が結合しているものでもよく、更に、R1及びR3が炭化水素基であるような、異なるベンゼン環にそれぞれ1つずつの炭化水素基が結合しているものでもよい。
【0023】
式(1)で表されるアルキルナフタレンとしては、例えば、デシルナフタレン、ウンデシルナフタレン、ドデシルナフタレン、トリデシルナフタレン、テトラデシルナフタレン、ペンタデシルナフタレン、ヘキサデシルナフタレン、ヘプタデシルナフタレン、オクタデシルナフタレン、ノナデシルナフタレン、イコシルナフタレン、ジ(デシル)ナフタレン、ジ(ウンデシル)ナフタレン、ジ(ドデシル)ナフタレン、ジ(トリデシル)ナフタレン、ジ(テトラデシル)ナフタレン、ジ(ペンタデシル)ナフタレン、ジ(ヘキサデシル)ナフタレン、ジ(ヘプタデシル)ナフタレン、ジ(オクタデシル)ナフタレン、ジ(ノナデシル)ナフタレン、ジ(イコシル)ナフタレンが挙げられ、これらの全ての異性体も挙げられる。
これらの中でも、炭素数8〜30、より好ましくは10〜20のアルキル基を1〜4個、より好ましくは1〜2個有するアルキルナフタレンが好ましく、更に、アルキルナフタレンが有するアルキル基の合計炭素数が8〜50、より好ましくは10〜40であるアルキルナフタレンが好ましい。
上記アルキルナフタレンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。2種以上のアルキルナフタレンの混合物を用いる場合、当該混合物の平均分子量は200〜500であることが好ましい。
【0024】
上記アルキルナフタレンの製造方法は任意であり、種々の公知の方法で製造できる。例えば、炭化水素のハロゲン化物、オレフィン類、スチレン類等を、硫酸、リン酸、ケイタングステン酸、フッ化水素酸等の鉱酸、酸性白土、活性白土等の固体酸性物質、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のハロゲン化金属であるフリーデルクラフツ触媒等の酸触媒の存在下、ナフタレンへ付加反応させる方法が挙げられる。
【0025】
本発明における潤滑油基油としては、上記鉱油系基油、合成系基油及びこれらの混合基油であって、ツインチューブ式緩衝器の減衰力を向上でき、あるいは更に緩衝器用油圧作動油に要求される諸性能を満足するために、以下の諸性状に調整してなる好適な潤滑油基油の使用が望ましい。
【0026】
潤滑油基油の%CNは特に制限はないが、好ましくは0〜60、より好ましくは15〜50、さらに好ましくは20〜40である。
潤滑油基油の%CP/%CN特に制限はないがは、好ましくは0.7以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2以上、特に好ましくは2.5以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である。
潤滑油基油の%CPは特に制限はないが、好ましくは40〜100、より好ましくは50〜80、さらに好ましくは60〜70である。
潤滑油基油の%CAは特に制限はないが、好ましくは0〜20、より好ましくは2〜10、更に好ましくは3〜8である。
【0027】
潤滑油基油の動粘度は、100℃において、好ましくは1〜10mm2/s、好ましくは3〜6mm2/s、更に好ましくは4〜5mm2/sであり、40℃において、好ましくは15〜40mm2/s、好ましくは18〜30mm2/s、更に好ましくは20〜25mm2/sである。
潤滑油基油の粘度指数は特に制限はないが、好ましくは20以上、更に好ましくは80以上、特に好ましくは90以上であり、好ましくは120以下、より好ましくは110以下である。
潤滑油基油の流動点は、通常0℃以下、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−20℃以下、更に好ましくは−30℃以下である。
潤滑油基油のアニリン点は特に制限はなく、通常120℃以下、好ましくは105℃以下であり、好ましくは50℃以上、更に好ましくは80℃以上、特に好ましくは90℃以上である。
【0028】
本発明に用いる潤滑油基油は、より具体的には、例えば、1つの態様として、上記パラフィン系鉱油と上記ナフテン系鉱油を含むものが挙げられ、必要に応じ合成系基油を含有させても良く、減衰力に優れた組成物を得ることができる。この場合、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油及び合成系基油の含有割合は特に制限はないが、潤滑油基油全量基準で、パラフィン系鉱油の含有割合は、好ましくは5〜70質量%、特に好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは20〜40質量%であり、ナフテン系基油の含有割合は、好ましくは30〜95質量%、さらに好ましくは50〜90質量%、特に好ましくは60〜80質量%であり、合成系基油の含有割合は、好ましくは0〜30質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。なお、合成系基油としては、前記(A)成分の使用が好ましい。
本発明に用いる潤滑油基油は、より具体的には、例えば、1つの態様として、上記パラフィン系鉱油からなる潤滑油基油を挙げることができる。この場合、ツインチューブ式緩衝器において、より厳しい振動条件においても減衰力をより向上できるため特に好ましい。
【0029】
本発明の組成物は、上述した潤滑油基油を含むことで、ツインチューブ式緩衝器の減衰力を向上させることができるが、緩衝器用油圧作動油に要求される摩擦特性や摩耗防止性を満足するために、リン含有摩耗防止剤としてのリン含有添加剤を含有することが必要である。
リン含有添加剤としては、リン酸エステル類、亜リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、チオ亜リン酸エステル類、これらの誘導体、これらの金属塩又はこれらのアミン塩等のリン含有摩耗防止剤が挙げられ、これらの中でも、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、炭素数1〜30、好ましくは炭素数4〜24、より好ましくは炭素数12〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する亜リン酸エステル及び/又はリン酸エステルが望ましく、オレイルハイドロジェンホスファイト等の炭素数12〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する亜リン酸エステル類の使用が特に望ましい。
リン含有添加剤の含有割合は、組成物全量基準で、リン量として0.005〜0.2質量%、好ましくは0.01〜0.08質量%、更に好ましくは0.01〜0.04質量%である。
【0030】
本発明の組成物は、減衰力をさらに向上させるために消泡剤を含むことが望ましい。
消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコーン、フルオロアルキルエーテルが挙げられる。消泡剤の含有量は、組成物全量基準で、1〜50質量ppm、好ましくは15〜40質量ppm、さらに好ましくは20〜35質量ppmである。
【0031】
本発明の組成物は、上記特定の潤滑油基油、特定の添加剤の他に、本発明の所望の効果を損なうことなく、他の効果を向上させるために、潤滑油に一般的に使用されている他の添加剤の少なくとも1種を配合することができる。
このような添加剤としては、例えば、リンを含有しない摩耗防止剤、無灰分散剤、摩擦調整剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、流動性向上剤、金属不活性化剤、金属系清浄剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、着色剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0032】
リンを含有しない摩耗防止剤としては、潤滑油に通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、硫黄含有摩耗防止剤が挙げられる。具体的には、例えば、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、ジチオカーバメート、ジチオカルバミン酸亜鉛等の硫黄含有化合物、及びこれら摩耗防止剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物が挙げられるがこれらに限定されない。
リンを含有しない摩耗防止剤を含有させる場合の割合は、組成物全量基準で、通常0.01〜5質量%の範囲である。
【0033】
無灰分散剤としては、潤滑油の無灰分散剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアミン又はそれらのホウ素化合物、リン化合物、硫黄化合物、含酸素有機化合物等により変性された誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。これらのうち、数平均分子量が通常700〜2500、好ましくは900〜1500のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも1つ有するコハク酸イミド、中でもビスタイプの該コハク酸イミドの使用が望ましい。
無灰分散剤を含有させる場合の割合は、組成物全量基準で、通常0.01〜20質量%、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。なお、無灰分散剤の窒素量としての含有割合は、組成物全量基準で、通常0.0001〜0.2質量%、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0.005質量%以下である。
【0034】
摩擦調整剤としては、潤滑油の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、脂肪族アミン、脂肪酸、脂肪酸エステル、サルコシン類等の窒素を含む脂肪酸又はこれらの誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。これらのうち、炭素数12〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪酸又はその誘導体が好ましく、該脂肪酸と多価アルコールとのエステル、例えば、グリセリンモノオレエート、グリセリンジオレエート、グリセリントリオレエートの少なくとも1種の使用が特に望ましい。
摩擦調整剤を含有させる場合の割合は、組成物全量基準で通常0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
【0035】
粘度指数向上剤としては、潤滑油の粘度指数向上剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体又は共重合体若しくはその水添物等のいわゆる非分散型粘度指数向上剤、更に窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体が挙げられる。ここで、α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンが例示できる。
その他にもポリイソブチレン若しくはその水添物、スチレン−ジエン共重合体の水素化物、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体又はポリアルキルスチレン等の粘度指数向上剤も使用可能である。
粘度指数向上剤の重量分子量は、例えば、分散型及び非分散型ポリメタクリレートの場合、通常5000〜1000000、好ましくは100000〜900000であるが、せん断安定性に優れる点で300000以下が特に好ましく、減衰力をさらに向上できる点で150000以上、特に200000以上が望ましい。ポリイソブチレン又はその水素化物の場合、通常800〜5000、好ましくは1000〜4000、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物の場合、通常800〜500000、好ましくは3000〜200000である。
これらの粘度指数向上剤は、任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができ、その際の含有割合は、組成物全量基準で通常0.1〜20質量%である。
【0036】
酸化防止剤としては、潤滑油の酸化防止剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル置換脂肪酸エステル類等のフェノール系酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン等のアミン系酸化防止剤が挙げられる。
酸化防止剤を含有させる場合の割合は、組成物全量基準で、通常0.01〜5質量%である。
【0037】
流動性向上剤としては、潤滑油の流動性向上剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、ポリメタクリレート系流動性向上剤が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、β−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリルが挙げられる。
金属系清浄剤としては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート、フィネート、サリシレート、ホスホネートが挙げられる。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系化合物が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステルが挙げられる。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤が挙げられる。
これらの添加剤を含有させる場合の割合は、組成物全量基準で、流動性向上剤、金属系清浄剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤ではそれぞれ通常0.005〜5質量%、金属不活性化剤では通常0.005〜1質量%、消泡剤では通常0.0005〜1質量%である。
【0038】
本発明の組成物は、上記潤滑油基油及び各種添加剤を含有させることで、組成物の40℃における動粘度が30〜50mm2/sとすることが必要であり、好ましくは31〜40mm2/s、より好ましくは32〜38mm2/sである。組成物の40℃における動粘度が30mm2/s未満の場合、ツインチューブ式緩衝器の減衰力が小さく、50mm2/sを超えるとキャビテーションによる泡の発生により減衰力向上効果が小さくなる傾向にある。なお、本発明においては、組成物の40℃における動粘度を30〜35mm2/sとすると、より厳しい振動条件においても高い減衰力を発生できるので、特に望ましい。
本発明の組成物の100℃における動粘度は、特に制限はないが、好ましくは6〜9mm2/s、より好ましくは6.5〜8.5mm2/s、さらに好ましくは7〜8mm2/sであり、本発明においては、組成物の100℃における動粘度を7.6mm2/s以下とすると、より厳しい振動条件においても高い減衰力を発生できるので、特に望ましい。
本発明の組成物の粘度指数は、特に制限はないが、好ましくは150〜250、より好ましくは170〜220、さらに好ましくは180〜210である。本発明においては、粘度指数を200以下とすると、より厳しい振動条件においても高い減衰力を発生できるので、特に望ましい。
【0039】
次に、基本的なツインチューブ式緩衝器の例を図面により示し、本発明の組成物及び減衰力向上方法について詳述するが、本発明の適用は、図示するツインチューブ式緩衝器に限定されるものではない。
図1において、10はツインチューブ式緩衝器であり、該緩衝器10は、インナーチューブ11、アウターチューブ12及びインナーチューブ11内を摺動する、バルブ及びオリフィスを備えたピストン13、該ピストン13に接続したロッド14を備える。
該インナーチューブ11の下部にはベースバルブ15を、インナーチューブ11の上部にはガイドブッシュ16a及びオイルシール16bを有し、インナーチューブ11とアウターチューブ12の間にリザーバ室17が形成されている。
インナーチューブ11内及びリザーバ室17には、本発明の組成物からなる油圧作動油18及びガス19が充填されている。該ガス19は大気でも良いので必ずしも充填される必要はない。
【0040】
緩衝器10は、前記ピストンロッド(13,14)の上下作動により、インナーチューブ11の下部のベースバルブ15を通じてインナーチューブ11内の油圧作動油18の過不足分がリザーバ室17の油圧作動油18によって調整される機構を備えている。
【0041】
本発明の減衰力向上方法は、上記緩衝器10等のツインチューブ式緩衝器における減衰力向上方法であって、図面に基づいて説明すると、前記ピストンロッド(13,14)が作動していない状態の位置、即ち、最初に緩衝器10に油圧作動油18及びガス19を充填・封入した状態のピストンロッド(13,14)の位置に、該ピストンロッド(13,14)がある際の前記インナーチューブ11の下部のベースバルブ15の位置に対する前記リザーバ室17における前記油圧作動油18の液面高さ(h)(図1中のh)が、少なくとも3cm以上、好ましくは5cm以上、さらに好ましくは7cm以上、特に好ましくは8cmとなるように本発明の組成物からなる油圧作動油を充填することにより行うことができる。
このような液面高さ(h)は、キャビテーションで発生した泡がベースバルブから吸い込まれない高さであるので、ピストン径やリザーバーの径が変化しても、上記液面高さが確保できれば本発明の所望の効果を更に改善することができる。
【0042】
該液面高さ(h)を3cm以上、特に7cm以上となるように前記油圧作動油を充填することにより、リザーバ室17に戻る前記油圧作動油が泡立っていても、該泡が上方に移動する十分な消泡時間を確保できるため、インナーチューブ11の下部のベースバルブ15からインナーチューブ11内へ泡立った油圧作動油が供給されることが防止され、緩衝器10の減衰力を高く維持することができる。
要するに、泡発生速度と消泡速度とのバランスがくずれると急激に減衰力が低下するため、消泡速度を早くするとともに、十分な消泡時間を確保することで、緩衝器の減衰力を高いまま維持することができる。
従って、本発明の組成物は、このような減衰力向上方法のための油圧作動油組成物としての用途に好適である。
【0043】
本発明のもう1つの減衰力向上方法は、上記緩衝器10等のツインチューブ式緩衝器における減衰力向上方法であって、図面に基づいて説明すると、上述した前記ピストンロッド(13,14)が作動していない状態の位置にある際の前記リザーバ室17における前記油圧作動油18の油量をvr(ml)とし、緩衝器10に充填される前記油圧作動油18の全油量をV(ml)とすると、前記リザーバ室17以外に充填された前記油圧作動油18の油量(V−vr)(ml)に対する前記リザーバ室17における前記油圧作動油18の油量vrの割合(X)((vr)/(V−vr))が0.5以上となるように該油圧作動油18を充填することにより行うことができる。
【0044】
該割合(X)を、好ましくは0.8以上、さらに好ましくは1.1以上、特に好ましくは1.3以上となるように前記油圧作動油を充填することで、さらなる減衰力の向上が実現できる。
従って、本発明の組成物は、このような減衰力向上方法のための油圧作動油組成物としての用途に好適である。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されない。
実施例1〜6及び比較例1
表1に示す各種パラフィン系基油、ナフテン系基油、合成系基油を用い、表2に示す組成の緩衝器用油圧作動油組成物(試料1〜5)を調整した。この試料1〜5の組成物を、ツインチューブ式緩衝器に、インナーチューブ下部のベースバルブの位置に対する前記リザーバ室における該組成物の液面高さ(h)や、リザーバ室における該組成物の充填量(vr)が表3に示す所定の範囲となるように充填した。試料を充填したツインチューブ式緩衝器を用い、以下の条件にて減衰力試験を実施した。結果を表3に示す。
(緩衝器の減衰力試験条件)
比較的緩い振動条件:周波数4Hz、振幅20mm、
厳しい振動条件:周波数5Hz、振幅10mm、
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

1)基油A〜E:表1参照
2)ポリイソブチレン(PIB)コハク酸イミド(ビス型、PIB分子量1300、N量1.5%)
3)オレイルホスファイト
4)グリセリンオレート
5)ポリメタクリレート系粘度指数向上剤(Mw230000)
6)ポリメタクリレート系粘度指数向上剤(Mw160000)
7)シリコン系消泡剤
【0048】
【表3】

【0049】
表3の結果から明らかなとおり、ツインチューブ式緩衝器の減衰力は、使用する緩衝器用油圧作動油組成物の組成や動粘度によって異なる挙動を示す。中でも、組成物の40℃における動粘度が30mm2/sに満たない試料5を使用した場合に対し、本発明の規定を満たす試料1〜4を使用した場合の減衰力向上効果は大幅に高いものであり、前記液面高さ(h)や充填量(vr)が大きい場合には、減衰力がさらに向上していることがわかる。また、より厳しい振動条件においては、パラフィン系基油を主として使用する試料3、4の減衰力がより高く、中でも組成物の動粘度や粘度指数を最適化した試料4が最も減衰力が高い結果であった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の減衰力向上方法を説明するためのツインチューブ式緩衝器の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0051】
10:ツインチューブ式緩衝器
11:インナーチューブ
12:アウターチューブ
13:ピストン
14:ロッド
15:ベースバルブ
17:リザーバ室
18:油圧作動油
19ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油基油と、該基油に配合するリン含有添加剤とを含み、該リン含有添加剤の含有割合が組成物全量基準で、リン量として0.005〜0.2質量%であり、組成物の40℃における動粘度が30〜50mm2/sであることを特徴とするツインチューブ式緩衝器用油圧作動油組成物。
【請求項2】
潤滑油基油に配合する消泡剤を、組成物全量基準で、1〜50質量ppm含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ツインチューブ式緩衝器が、インナーチューブ、アウターチューブ及びインナーチューブ内を摺動するピストンロッドを備え、該インナーチューブ下部にベースバルブ及び/又はオリフィスを有し、インナーチューブ−アウターチューブ間にリザーバ室が形成されており、インナーチューブ内及びリザーバ室に油圧作動油とガスを充填してなる緩衝器であって、
前記ピストンロッドの作動により、インナーチューブ下部のベースバルブ及び/又はオリフィスを通じてインナーチューブ内の油圧作動油の過不足分がリザーバ室の油圧作動油によって調整される機構を有し、かつ前記ピストンロッドが作動していない状態の位置にある際の前記インナーチューブ下部のベースバルブ及び/又はオリフィスの位置に対する前記リザーバ室における前記油圧作動油の液面高さ(h)が、少なくとも3cm以上となるように前記油圧作動油を充填して使用するための請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記液面高さ(h)が少なくとも7cm以上となるように前記油圧作動油を充填して使用するための請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ツインチューブ式緩衝器が、インナーチューブ、アウターチューブ及びインナーチューブ内を摺動するピストンロッドを備え、該インナーチューブ下部にベースバルブ及び/又はオリフィスを有し、インナーチューブ−アウターチューブ間にリザーバ室が形成されており、インナーチューブ内及びリザーバ室に油圧作動油とガスを充填してなる緩衝器であって、
前記ピストンロッドの作動により、インナーチューブ下部のベースバルブ及び/又はオリフィスを通じてインナーチューブ内の油圧作動油の過不足分がリザーバ室の油圧作動油によって調整される機構を有し、かつ前記ピストンロッドが作動していない状態の位置にある際の前記リザーバ室における前記油圧作動油の油量をvr(ml)とし、緩衝器に充填される前記油圧作動油の全油量をV(ml)とすると、前記リザーバ室以外に充填された前記油圧作動油の油量(V−vr)(ml)に対する前記リザーバ室における前記油圧作動油の油量vrの割合(X)((vr)/(V−vr))が0.5以上となるように前記油圧作動油を充填して使用するための請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記割合(X)が1.1以上となるように前記油圧作動油を充填して使用するための請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
インナーチューブ、アウターチューブ及びインナーチューブ内を摺動するピストンロッドを備え、該インナーチューブ下部にベースバルブ及び/又はオリフィスを有し、インナーチューブ−アウターチューブ間にリザーバ室が形成されており、インナーチューブ内及びリザーバ室に油圧作動油とガスを充填してなり、前記ピストンロッドの作動により、インナーチューブ下部のベースバルブ及び/又はオリフィスを通じてインナーチューブ内の油圧作動油の過不足分がリザーバ室の油圧作動油によって調整される機構を有するツインチューブ式緩衝器における減衰力向上方法であって、
前記ピストンロッドが作動していない状態の位置にある際の前記インナーチューブ下部のベースバルブ又はオリフィスの位置に対する前記リザーバ室における該油圧作動油の液面高さ(h)が、少なくとも3cm以上となるように請求項1又は2に記載の油圧作動油組成物を充填することを特徴とするツインチューブ式緩衝器における減衰力向上方法。
【請求項8】
インナーチューブ、アウターチューブ及びインナーチューブ内を摺動するピストンロッドを備え、該インナーチューブ下部にベースバルブ及び/又はオリフィスを有し、インナーチューブ−アウターチューブ間にリザーバ室が形成されており、インナーチューブ内及びリザーバ室に油圧作動油とガスを充填してなり、前記ピストンロッドの作動により、インナーチューブ下部のベースバルブ及び/又はオリフィスを通じてインナーチューブ内の油圧作動油の過不足分がリザーバ室の油圧作動油によって調整される機構を有するツインチューブ式緩衝器における減衰力向上方法であって、
前記ピストンロッドが作動していない状態の位置にある際の前記リザーバ室における前記油圧作動油の油量をvr(ml)とし、緩衝器に充填される前記油圧作動油の全油量をV(ml)とすると、前記リザーバ室以外に充填された前記油圧作動油の油量(V−vr)(ml)に対する前記リザーバ室における前記油圧作動油の油量vrの割合(X)((vr)/(V−vr))が0.5以上となるように、請求項1又は2に記載の油圧作動油組成物を充填することを特徴とするツインチューブ式緩衝器における減衰力向上方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−248160(P2008−248160A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92997(P2007−92997)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】