説明

縦結合共振子型弾性表面波フィルタ

【課題】縦結合共振子型弾性表面波フィルタの挿入損失と反射特性を改善する。
【解決手段】弾性表面波の伝搬方向に配列した2以上のIDTを有する弾性表面波フィルタで、IDTのうちの1以上のIDTの電極指ピッチを、当該IDTが主ピッチ領域を有しないように当該IDTに含まれる略全部の電極指について異ならせる。隣り合う2つのIDTのうち、少なくとも相対的に電極対数が少ないIDTのピッチを、主ピッチ領域を有しないよう変化させる。更に、相対的に電極対数が少ないIDTの最大ピッチが、相対的に電極対数が多いIDTの最大ピッチよりも小さく、かつ相対的に電極対数が少ないIDTの最小ピッチが、相対的に電極対数が多いIDTの最小ピッチよりも大きくする望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波フィルタに係り、特に、縦結合共振子型弾性表面波フィルタにおいて低損失化と反射特性の改善を図り、良好なフィルタ特性を実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電効果によって発生する弾性表面波(Surface Acoustic Wave/SAW)を利用した弾性表面波フィルタは、小型軽量で信頼性に優れることから、移動体通信機器の送受信フィルタやアンテナ分波器などに近年広く使用されている。かかる弾性表面波フィルタは、一般に、弾性表面波を励振する複数の交差指状電極(インターデジタルトランスデューサ:Interdigital Transducer/以下、IDTという)を圧電基板上に複数形成し、これらのIDTを電気的あるいは音響的に接続することにより構成される。
【0003】
IDTの接続構造としては、梯子形に複数のIDTを接続するラダー型構造や、複数のIDTを弾性表面波の伝搬経路内に配して音響的に結合させる縦結合共振子型構造が知られているが、縦結合共振子型構造は、ラダー型構造に較べ、一般に広帯域での減衰特性が優れ、不平衡信号だけでなく平衡信号も容易に取り出せるという特徴を有する。
【0004】
また、縦結合共振子型弾性表面波フィルタを開示するものとして下記特許文献がある。
【特許文献1】特開2002‐9588号公報
【特許文献2】特表2002‐528987号公報
【特許文献3】特開2003‐92527号公報
【特許文献4】特開2003‐243965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記文献記載の発明は、いずれもフィルタ特性の向上を図るものであるが次のような問題があり、縦結合共振子型弾性表面波フィルタに対し更なる特性改善の余地がある。以下、具体的に述べる。
【0006】
上記特許文献1(特開2002‐9588)は、IDT端から一部分の電極周期λI1を、それ以外の部分の電極周期λI2よりも小さくして周期的な連続性を保つことで、バルク放射を防ぎ広帯域化と低挿入損失化の実現を図るものである。なお、以下の説明では、このような電極の一部分について異ならせた電極周期を「従ピッチ」、このうち特に周期を狭くした電極周期を「狭ピッチ」、他の電極大部分を占める一定の電極周期を「主ピッチ」とそれぞれ称する。
【0007】
また特許文献2(特表2002‐528987)は、2つのIDT対向部において移行部領域を設け、その移行部のピッチを連続的に小さくすると共に境界を境に連続的に大きくすることで、バルク波損失を低減し、広帯域化と低挿入損失化を図る。さらに特許文献3(特開2003‐92527)は、IDT対向部の近傍領域の電極を狭ピッチにするだけでなく更に、対数が多いIDTの主ピッチP1を、対数が少ないIDTの主ピッチP2よりも大きくすることで広帯域化を図る。
【0008】
ところが、これら特許文献1から3に記載の従来のフィルタでは、様々な手法で電極指のピッチを変えているものの、いずれのフィルタにおいても電極の大部分(対数全体の70%超)はピッチが一定にされ(つまり主ピッチ領域を有する)、IDTの端部一部分についてのみピッチを変えているに過ぎないから、この小さな従ピッチ領域のみでは弾性表面波の周期的な連続性を保つことは難しく、バルク波放射の低減には限界があって挿入損失を十分に抑制することは出来ない。
【0009】
一方、上記特許文献4(特開2003‐243965)では、IDTを複数のブロックに分け、それぞれのブロック毎にピッチを徐々に変えることにより、隣り合う2つのIDTで生成される弾性表面波の位相を連続的にし、これによりバルク波放射を小さくして広帯域化と低損失化を図っている。
【0010】
しかしながら、実施例の記載からも明らかなようにこの文献では、配列された3つのIDTそれぞれの電極対数は(13対‐2対‐1.5対)‐(2対‐13.5対‐2対)‐(1.5対‐2対‐13対)、これらの電極のピッチは(2.065μm‐1.995μm‐1.855μm)−(1.920μm‐2.040μm‐1.920μm)−(1.855μm‐1.995μm‐2.065μm)というように(同文献段落0067〜0068参照)、IDT全体のうちのほとんどを占める主ピッチ領域(下線を引いた電極対の領域)が依然として存在し、技術思想として上記特許文献1から3の発明と軌を一にするものであるから、上記特許文献1から3について述べたのと同様の問題が生じ得る。
【0011】
さらに上記特許文献1から4に共通の問題として、2つの隣り合うIDTにおいて相対的に対数の少ないIDTについては、対数の多いIDTよりもIDT全体に占める主ピッチ領域の割合が小さくなるが、従来のIDT構成においてこのように主ピッチ領域が小さくなると反射特性が劣化する可能性もある。
【0012】
したがって、本発明の目的は、弾性表面波フィルタ、特に縦結合共振子型弾性表面波フィルタにおける挿入損失と反射特性を改善し、より一層良好な特性を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る弾性表面波フィルタは、弾性表面波の伝搬方向に配列されるように圧電基板上に備えた2以上の交差指状電極を有する弾性表面波フィルタであって、前記交差指状電極のうちの1以上の交差指状電極の電極指ピッチを、当該交差指状電極が主ピッチ領域を有することがないように当該交差指状電極に含まれる略全部の電極指について異なるようにした。
【0014】
本発明の弾性表面波フィルタでは、従来のフィルタ(IDT)構成と異なり、少なくとも1つのIDT(交差指状電極)について、主ピッチ領域を備えることがないようにする。ここで、「主ピッチ領域」とは、当該IDTの大部分(例えば当該IDTに含まれる全電極指のうちの50%以上)を占めかつ一定の(同一の)ピッチを有するIDTの電極部分を言う。
【0015】
このように主ピッチ領域を備えることないようにする具体的な手段としては、当該IDTに含まれる略全部の電極指について電極指ピッチを異ならせる。「略全部の電極指について電極指ピッチを異ならせる」とは、当該IDTが備える完全に総ての電極指について(電極1本毎に)ピッチを変えることを典型的には言うが、これのみに限定されるものではなく、電極の大部分(例えば60〜70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の電極)の電極指のピッチを異なるものとすること、更には、細かくステップ状に電極指ピッチが異なるようにする(例えば電極指数本ずつ、より具体的には2本ずつ、又は3本ずつ、又は4本ずつ、又は5本から10本程度ずつを1つのグループとして、これら電極指グループ毎に電極指ピッチを徐々にあるいは不規則に変える。)ことをも含む。
【0016】
完全に1本ずつ総ての電極指についてピッチを異なるものとしなくても、このようにIDTの大部分の電極指を、あるいは数本ずつグループ化してピッチを変えていけば、実質的にIDT全体に亘ってピッチを変えたのと同等であり、程度の差異こそあれ同様の効果を得ることが出来るからである。なお、上記ステップ状にピッチを変える場合には、上記グループを構成する電極指の本数は1つのIDT内で必ずしも同一本数に揃える必要はなく、例えば電極指2本のグループと3本のグループと4本のグループが1つのIDT内に含まれるというように、電極指本数の異なるグループ単位が1つのIDT内に複数混在していても構わない。
【0017】
また、上記のように複数本の電極指からなるグループ毎にピッチを異ならせる場合には、当該電極指グループの数は、1つのIDT内に例えば3グループ以上、好ましくは4グループ以上、更に好ましくは5グループ以上でかつ当該IDTが備える電極指の総本数以下とする。あるいは、このように複数本の電極指からなるグループ毎にピッチを異ならせる場合には、当該IDT内で電極対数が最も多い電極指グループの対数が当該IDTの全対数の例えば30%以下となるようにすることが望ましい。
【0018】
このように主ピッチ領域(多数本の電極指ピッチが一定となっている部分)を備えない本発明に係る電極構造によれば、従来のようにIDTの端部に設けた従ピッチ領域のみで弾性表面波の周期的な連続性(位相の連続性)を保つ必要が無くなり、IDT全体を使って弾性表面波の周期性を保つようにピッチを調整することが可能となるから、バルク波放射をより良好に低減し低損失化を実現することが出来る。
【0019】
上記のような本発明のフィルタ構造(IDTの電極構造)は、電極対数が異なる2つのIDTが隣り合っている場合に、特に、相対的に電極対数の少ないIDTに適用すると特性劣化を防ぐ点でより効果的である。具体的には、上記本発明のフィルタが音響結合するよう隣り合って配置されかつ電極対数が異なる少なくとも1組のIDTを含み、当該1組のIDTのうち相対的に電極対数が少ないIDTの電極指ピッチを、当該IDTが主ピッチ領域を有することがないように当該IDTに含まれる略全部の電極指について異ならせる。
【0020】
さらに、相対的に対数が少ないIDTだけでなく、相対的に対数の多いIDTについても同様の電極構造としても、すなわち上記1組のIDT双方の電極指ピッチを、両IDTが主ピッチ領域を有することがないように当該IDTに含まれる略全部の電極指のピッチを異ならせても良い。
【0021】
また本発明のフィルタでは、相対的に電極対数が少ないIDTにおける電極指の最大ピッチが、相対的に電極対数が多いIDTの最大ピッチよりも小さく、かつ、前記相対的に電極対数が少ないIDTにおける電極指の最小ピッチが、相対的に電極対数が多いIDTの最小ピッチよりも大きくなるようにすることが望ましい。このような構造によれば、相対的に対数の少ないIDT内における電極指ピッチの変化を小さくすることが出来るため、弾性表面波の連続性を更に向上させることが出来る。
【0022】
さらに、上記のようにIDTの電極指ピッチを主ピッチ領域を有することがないように異ならせる場合には、電極指ピッチを単調に異ならせることがないように、すなわち、1つのIDT内に少なくとも、電極指ピッチを次第に減少させるピッチ減少領域と、電極指ピッチを次第に増加させるピッチ増加領域とをそれぞれ1以上含むようにすることが望ましい。
【0023】
この単調でないピッチ変化は、具体的には例えば、弾性表面波の伝搬方向に配列した複数のIDT全体の中央に近い側を「内側」、両端に近い側を「外側」と称したときに、弾性表面波の伝搬方向に配列した前記複数のIDTのうち、両端(最も外側)に位置するIDTについては、外側から内側に向け、電極指ピッチを次第に減少させ、当該IDTの内側端部において当該電極指ピッチを逆に増加させた後、再び当該電極指ピッチを減少させるピッチ変化とすることが好ましい。
【0024】
一方、前記弾性表面波の伝搬方向に配列した複数のIDTのうち、他の2つのIDTに挟まれている(両端が他のIDTに隣り合っている)IDTについては、例えば、全体として中央部の電極指ピッチが大きくかつ両端の電極指ピッチが次第に小さくなるようにすると共に、中央部に電極指ピッチを部分的に減少させた領域を有するようなピッチ変化とすることが好ましい。
【0025】
本発明のIDT構造は、縦結合共振子多重モード型弾性表面波フィルタに好ましく適用することができ、当該フィルタは、弾性表面波の伝搬方向に配列されるように備えられたIDTとして2または3以上のIDTを含み、これらのIDTの両側に反射器を配置し、前記2または3以上のIDTにおいて複数の共振モードを利用するようにする。
【0026】
さらに、本発明に基づいて、平衡信号出力が得られるフィルタを構成することも可能である。具体的には、出力信号の位相が互いに略180°異なる2つの弾性表面波フィルタを入力端子と出力端子との間に電気的に並列に接続し、この接続点から引き出される前記入力端子を不平衡端子とし、前記出力端子を平衡端子とした弾性表面波フィルタにおいて、前記2つの弾性表面波フィルタとして上記本発明に係るいずれかの弾性表面波フィルタを用いれば良い。
【0027】
また上記のような各弾性表面波フィルタには、1つ以上の弾性表面波共振子を直列または並列に接続しても良く、さらに複数のフィルタを複数段にカスケード接続したフィルタ構成やその他様々な接続構造をとって良い。また、当該フィルタへの入出力端子は、平衡端子および不平衡端子のいずれとすることも可能である(平衡入力‐平衡出力、不平衡入力‐不平衡出力、平衡入力‐不平衡出力、ならびに不平衡入力‐平衡出力のいずれであっても良い)。
【0028】
さらに上記のような本発明の各IDT構造は、弾性表面波フィルタだけなく、弾性境界波フィルタに対しても同様に適用することが出来る。
【0029】
具体的には、当該弾性境界波フィルタは、圧電基板と、当該圧電基板に接するように配した非圧電材(例えば非圧電基板または非圧電膜)と、前記圧電基板と非圧電材の境界面に弾性境界波の伝搬方向に配列されるように備えた2以上のIDTとを有する弾性境界波フィルタであって、前記IDTのうちの1以上のIDTの電極指ピッチを、当該IDTが主ピッチ領域を有することがないように当該IDTに含まれる略全部の電極指について異ならせる。
【0030】
また、上記弾性境界波フィルタにおいても、前記弾性表面波フィルタと同様に、音響結合するよう隣り合って配置されかつ電極対数が異なる少なくとも1組のIDTを含み、当該1組のIDTのうち相対的に電極対数が少ないIDTの電極指ピッチを、当該IDTが主ピッチ領域を有することがないように当該IDTに含まれる略全部の電極指について異ならせるようにしても良い。また、上記1組のIDTの双方の電極指ピッチを、両IDTが主ピッチ領域を有することがないように当該IDTに含まれる略全部の電極指について異ならせても良い。さらに好ましくは、相対的に電極対数が少ないIDTにおける電極指の最大ピッチが、相対的に電極対数が多いIDTの最大ピッチよりも小さく、かつ、相対的に電極対数が少ないIDTにおける電極指の最小ピッチが、相対的に電極対数が多いIDTの最小ピッチよりも大きくする。
【0031】
また本発明に基づいて、弾性境界波の伝搬方向に配列されるように備えられたIDTとして3以上のIDTを含み、これらのIDTの両側に反射器を配置し、前記3以上のIDTにおいて複数の共振モードを利用するようにすることで、縦結合共振子多重モード型弾性境界波フィルタを構成することが出来る。さらにこの弾性境界波フィルタにおいても、前記弾性表面波フィルタと同様に、互いに出力信号の位相が略180°異なる2つの弾性境界波フィルタを電気的に並列接続することで平衡信号出力が得られるフィルタを構成することが可能である。また、1つ以上の弾性境界波共振子を直列または並列に接続しても良く、複数のフィルタを複数段にカスケード接続したフィルタ構成やその他様々な接続構造をとることができ、あるいは入出力端子を平衡・不平衡のいずれとすることも可能である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、弾性表面波フィルタの挿入損失を低減し反射特性を改善することによりフィルタ特性をより一層向上することが出来る。
【0033】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、まず、従来の縦結合共振子型弾性表面波フィルタについて述べ、その後にこれとの比較において本発明の各実施形態について述べる。
【0035】
図22は、従来の縦結合共振子型弾性表面波フィルタの一例(以下、第1従来例という)を模式的に示すものである。同図に示すようにこの第1従来例の弾性表面波フィルタは、弾性表面波の伝搬方向に配列するように圧電基板上に設けた3つのIDT12,13,22,23と、その両端に設けた反射器10とを備えた所謂3‐IDTの縦結合多重モード型弾性表面波フィルタを2段に接続したもので、第1段のフィルタ11および第2段のフィルタ21の中央に配した各IDT12,22(以下、「中央IDT」という)を入力端子1と出力端子2とにそれぞれ接続し、第1段フィルタ11および第2段フィルタ21の各々において中央IDT12,22の両側にそれぞれ配したIDT13,23(以下、「外側IDT」という)同士を電気的に接続したものである。
【0036】
図23は、上記第1従来例の第1段フィルタ11および第2段フィルタ21の各3つのIDT12,13,22,23における電極指ピッチを示すものである。この図に示すように、中央IDT12,22と外側IDT13,23は共に、電極指ピッチを一定とした主ピッチ領域P11,P21を備えかつ、他のIDTに隣り合う側(中央IDT12,22は両端部、外側IDT13,23は中央IDT12,22に隣接する側)の端部に主ピッチ領域P11,P21よりピッチを小さくした狭ピッチ領域P12,P22(それぞれ4対、2対)を備えている。なお、このフィルタは、800MHz帯(中心周波数は881.5MHz)のCDMA受信用フィルタを想定したもので、各IDTの電極指の対数は中央IDT12,22が32対、外側IDT13,23が9対である。
【0037】
また、図26(a)に示すようにIDTは、互いに対向する一対の櫛形電極8a,8bによって構成されるが、本明細書においてIDTの電極指ピッチとは、当該櫛形電極8a又は8bの交差し合う電極指の中心間の距離L1を言い、本発明ではIDTが主ピッチ領域を有さないようにこのL1を様々に変化させる。一方、図26(b)に示すように反射器10の電極中心間の距離の2倍をλ(λは一定である)として、このλを基準としてIDT間の距離や交差幅等を規定する。
【0038】
また図24は、従来の別の一例(以下、第2従来例という)に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタの電極指ピッチを示すものである。この第2従来例は、上記第1従来例に係る縦結合多重モード型弾性表面波フィルタ(図22)において、第1段フィルタ11および第2段フィルタ21の各中央IDT12,22と各外側IDT13,23の電極指対数をそれぞれ中央IDT12,22が31対、外側IDT13,23が12.5対とし、上記第1従来例と同様に主ピッチ領域P11,P21と狭ピッチ領域P12,P22(それぞれ2対)とを各IDTの端部に備えた。なお、この第2従来例はPCS用のSAWフィルタを想定したものである。
【0039】
〔実施形態1〕
一方、図1は、本発明の第一の実施形態に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタを模式的に示すものである。この図に示すように本実施形態の弾性表面波フィルタは、上記従来例と同様に、弾性表面波の伝搬方向に配列した3つのIDT32,33,42,43を2つの反射器10の間に備えた3‐IDTの縦結合多重モード型弾性表面波フィルタを2段に接続したもので、第1段フィルタ31および第2段フィルタ41が共に中央IDT32,42は主ピッチ領域P11を備えかつ、電極指ピッチを小さくした狭ピッチ領域P12を当該IDT32,42の両端に有している。
【0040】
しかしこのフィルタでは図2に示すように、外側IDT33,43は、電極指ピッチを外側(反射器側)から内側(中央IDT側)に向け次第に小さくなるようにIDT33,43の略全幅に亘って(当該IDT33,43の略全部の電極指について)変化させ、これにより外側IDT33,43が主ピッチ領域(一定ピッチ領域)を備えないようにしてある。また同図から明らかなように、外側IDT33,43の最大ピッチである当該IDT33,43の最外部の電極指のピッチは、中央IDT32,42の最大ピッチ(主ピッチP11)よりも小さく、外側IDT33,43の最小ピッチである当該IDT33,43の最内部の電極指のピッチP32は、中央IDT32,42の最小ピッチ(狭ピッチ)である当該IDTの両端部の電極指のピッチP12よりも大きい。
【0041】
またこの実施形態に係るフィルタは、前記第1従来例と同様に、800MHz帯(中心周波数881.5MHz)CDMAの受信用フィルタを想定したものであり、第1段フィルタ31と第2段フィルタ41は共に、中央IDT32,42の電極対数が40対で、外側IDT33,43の電極対数が11対である。また、反射器10の電極本数は50本で、反射器10の電極ピッチの2倍であるλが4.56μm(反射器のピッチ:λ/2=2.28μm)である。さらに各IDT32,33,42,43の交差幅は30λ、IDT間の距離は0.467λ、IDT‐反射器間の距離は共に0.5λである。
【0042】
さらに、各IDT32,33,42,43および反射器10は、39°YカットX伝搬LiTaO3基板の表面に、TiNからなる下地膜を例えば4nmの厚さで成膜し、その上にAl単結晶膜を例えば330nmの厚さで成膜して各電極パターンを形成することにより構成する。またこれらの電極パターンは、上記圧電基板上に同時に多数作成し、ダイシングにより分割することで個々のフィルタチップとする。チップ化したフィルタは、フリップチップボンディングによりセラミックのベース基板上に搭載し、これを樹脂で封止する。また、入出力端子1,2は共に不平衡端子で、入出力インピーダンスは50Ωである。
【0043】
このようにして作成した本実施形態のサンプルと、同様の材料により作成した上記第1従来例のフィルタとについて、伝送および反射の周波数特性を測定した。結果は、図3から図5に示すとおりであり、実線が本実施形態の測定結果を、破線が第1従来例の測定結果を示している(以降の実施形態:図7,図8,図11,図12,図14,図15,図18,図19についても同様)。これらの図から明らかなように、本実施形態によれば通過帯域の挿入損失を改善することができ(図3)、反射特性についても従来例と同等以上とすることが出来る(図4)。
【0044】
これは、本実施形態では、外側IDT33,43について主ピッチ領域を無くすことにより、中央IDT32,42との間の周期の連続性を、従来例のように狭ピッチ領域P22のみで取る必要がなくなり、不連続性から生じるバルク波放射による損失の増加を従来以上に抑えることが出来たためと考えられる。また、通過帯域の両肩部S1,S2(図5)の特性については、従来例と略同様であり、従来例と比べ本実施形態のピッチ構成を採っても劣化しないことが分かる。
【0045】
〔実施形態2〕
図6は、本発明の第二の実施形態に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタのIDTの電極指ピッチを示すものである。この実施形態の弾性表面波フィルタは、前記第一実施形態(図1)において、当該主ピッチ領域を有さないようにした外側IDT33,43の電極指ピッチを前記第一実施形態(図2)とは違って単調に変化させないようにしたものである。
【0046】
具体的には、前記第一実施形態(図2)では、外側IDT33,43の電極指ピッチを、主ピッチ領域を有することがないように外側(反射器10に隣り合う側)から内側(中央IDT32,42に隣り合う側)に向け単に小さくしていくだけであったが、この実施形態では、外側から内側になるにつれ小さくした電極指ピッチP31を、中央IDT32,42に隣り合う内側領域で一旦、逆に増加させ(図6の符号P33)、再度小さくなるようにしている(図6の符号P32)。なお、外側IDT33,43の最大ピッチが中央IDT32,42の最大ピッチP11よりも小さく、外側IDT33,43の最小ピッチP32が中央IDT32,42の最小ピッチP12よりも大きいことは、前記第一実施形態と同様である。
【0047】
本実施形態のような単調ではない(減少又は増加のみでない)ピッチ変更は、本発明につき様々な検討を行う中で見出したもので、このように単調(減少のみ或いは増加のみ)ではないピッチ変化を、主ピッチ領域を有さないようにしたIDTに付与すれば、低損失化だけでなく反射特性も更に改善することが出来ることが分かった。図7および図8はそれぞれ、本実施形態に係るフィルタの通過帯域特性と反射特性の測定結果を、前記第一実施形態と同様に第1従来例との比較において示すものである。これらの測定結果から明らかなように、挿入損失と反射特性が更に改善されている。
【0048】
〔実施形態3〕
図9は、本発明の第三の実施形態に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタを模式的に示す図であり、図10は、本実施形態におけるIDTの電極指ピッチを示すものである。図9に示すように本実施形態の弾性表面波フィルタは、前記第一および第二実施形態と同様に、一対の反射器10の間に3つのIDT52,53,62,63を配列させた3‐IDTの縦結合多重モード型フィルタ51,61を不平衡入力端子1と不平衡出力端子2との間に2段に接続したものであるが、図10に示すように、中央IDT52,62に主ピッチ領域(一定ピッチ領域)を設けないようにした。
【0049】
すなわち、中央IDT52,62は、中心部が最も大きい電極指ピッチを有し、両端部に向かうにつれ次第に電極指ピッチが小さくなるような山型の電極指ピッチP41としており、外側IDT53,63の最大ピッチP21は中央IDT52,62の最大ピッチよりも小さく、外側IDT53,63の最小ピッチP22は中央IDT52,62の最小ピッチP42よりも大きい。なお、外側IDT53,63は、主ピッチ領域P21を備え、中央IDT52,62との隣接端部には狭ピッチ領域P22を有する。
【0050】
図11および図12はそれぞれ、本実施形態に係るフィルタの通過帯域特性と反射特性の測定結果を示すものである。これらの測定結果から明らかなように、本実施形態のフィルタ構成によっても挿入損失と反射特性を改善することが出来る。
【0051】
〔実施形態4〕
図13は、本発明の第四の実施形態に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタのIDTの電極ピッチを示すものである。この実施形態の弾性表面波フィルタは、前記第三実施形態のフィルタと同様に3‐IDTの縦結合多重モード型フィルタを2段に接続したものであるが、2つの外側IDTについては前記第二実施形態(図6)の外側IDTと同様に主ピッチ領域を有さずかつ単調ではない電極指ピッチP31,P33,P32とし、中央IDTについては前記第三実施形態(図10)の外側IDTと同様に山型の電極指ピッチP41とすることで、第1段フィルタ51および第2段フィルタ61の各3つのIDT52,53,62,63の総てが主ピッチ領域を有さないようにしたものである。なお、本実施形態でも、外側IDTの最大ピッチが中央IDTの最大ピッチよりも小さく、外側IDTの最小ピッチが中央IDTの最小ピッチよりも大きくなっている。
【0052】
図14および図15はそれぞれ、本実施形態に係るフィルタの通過帯域特性と反射特性の測定結果を示すものである。これらの測定結果から明らかなように、本実施形態のフィルタ構成によれば、従来例ならびに前記各実施形態より更に挿入損失と反射特性を改善することが出来る。
【0053】
〔実施形態5〕
図16は、本発明の第五の実施形態に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタを模式的に示す図であり、図17は、本実施形態におけるIDTの電極指ピッチを示すものである。図16に示すように本実施形態の弾性表面波フィルタは、出力信号の位相がそれぞれ180°異なる2つの縦結合多重モード型フィルタ71を電気的に並列接続し、その接続点3から不平衡端子を引き出し、この不平衡端子と入力端子1との間に弾性表面波共振子101を挿入(直列に接続)したものである。
【0054】
並列接続した各多重モード型フィルタ71は、一対の反射器10の間に3つのIDT72,73を配列させてなり、図17に示すように外側IDT73は主ピッチ領域P21を有し、また中央IDT72に隣接する内側部分に狭ピッチ領域P22を有する。しかし、中央IDT72はIDT全体に亘って2〜7本程度ずつの電極指を1つのグループとしてステップ状にピッチを変化させることにより主ピッチ領域を有さないようにしている。また、この中央IDT72のピッチ変化は、単調(増加のみ或いは減少のみ)なものではない。
【0055】
具体的には、IDT端部からIDT中央に向け次第に(ステップ状に)ピッチを増加させるが、IDT中央部で一端ピッチを減少させ(P52)、再びピッチを増加させた後、当該IDTの他端部に向け再度ピッチを減少させるというように(うねるように)ピッチを変化させている。言い換えれば、前記第三実施形態では、IDT中央部が最もピッチが大きくその左右が両端部に向け次第にピッチが小さくなる比較的単純な山型のピッチ変化としたのに対し、本実施形態では、IDT全体としては略山型のピッチ変化を有するが、IDTの中央部でピッチを一旦減少させる凹部P52を有するようなピッチ変化としている。なお、本実施形態でも、外側IDT73の最大ピッチP21が中央IDT72の最大ピッチよりも小さく、外側IDT73の最小ピッチP22が中央IDT72の最小ピッチP53よりも大きい。
【0056】
本実施形態に係るフィルタは、PCS受信用フィルタ(中心周波数1960MHz)を想定したものであり、並列接続した各フィルタ71は共に、中央IDT72の対数が39.0対、外側IDT73の対数が14.5対、反射器10の電極本数が65本、反射器10の電極ピッチの2倍であるλが2.01μmである。さらに各IDT72,73の交差幅は40λ、IDT間の距離は0.468λ、IDT‐反射器間の距離は共に0.5λである。
【0057】
さらに、各IDT72,73および反射器10は、46°YカットX伝搬LiTaO3基板の表面に、TiNからなる下地膜を例えば4nmの厚さで成膜し、その上にAl単結晶膜を例えば170nmの厚さで成膜して各電極パターンを形成することにより構成する。またこれらの電極パターンは、前記第一実施形態等と同様に、圧電基板上に同時に多数作成し、ダイシングにより分割することで個々のフィルタチップとし、フリップチップボンディングによりセラミックのベース基板上に搭載してこれを樹脂で封止することにより作成する。また、入力端子1は50Ωの入力インピーダンスを有する不平衡端子で、出力端子2は150Ωの出力インピーダンスを有する平衡端子2a,2bで、当該平衡出力端子2a,2b間にインピーダンス整合用のインダクタ(図示せず)を備える。
【0058】
また、これら多重モード型フィルタ71に直列接続する弾性表面波共振子101は、一対の反射器110の間にIDT111を備えたもので、IDT111の電極ピッチならびに反射器110の電極ピッチの2倍であるλが1.972μm、IDT111の電極対数が169.0対、交差幅が30λ、反射器110の電極本数が80本、IDT間の距離ならびにIDT‐反射器間の距離は共に0.5λである。
【0059】
図18および図19はそれぞれ、本実施形態に係るフィルタの通過帯域特性と反射特性の測定結果を示すものである。これらの測定結果から分かるように、本実施形態によれば、挿入損失と反射特性について非常に良好な特性が得られている。
【0060】
なお、多重モード型フィルタに接続する共振子101は、図示の例のほかにも様々な接続態様ならびに接続個数であって良く、例えば共振子を並列に接続しても良いし、直列接続した共振子あるいは並列接続した共振子を複数個備えることも可能である。
【0061】
〔実施形態6〕
図20は、本発明の第六の実施形態に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタを模式的に示す図であり、図21は、本実施形態におけるIDTの電極指ピッチを示すものである。図20に示すように本実施形態の弾性表面波フィルタは、弾性表面波の伝搬方向に配列した5つのIDT81〜85(これらを一方の反射器側から他方の反射器側に向け順に第1IDT、第2IDT、第3IDT、第4IDTおよび第5IDTと称する)を一対の反射器の間に備えた縦結合多重モード型フィルタである。
【0062】
上記第1から第5の5つのIDT81〜85の電極指ピッチは、いずれも主ピッチ領域を有さないようにピッチ変化をさせている。具体的には、図21に示すように、反射器10に隣り合う両端のIDTである第1IDT81と第5IDT85は、前記第二実施形態(図6)の外側IDTと同様のピッチ変化をさせ、また第2IDT82と第4IDT84は、前記第三実施形態(図10)の中央IDTと同様のピッチ変化をさせている。
【0063】
また、各IDTについて他のIDTと隣接する端部領域について電極指ピッチを、前記第一から第五の実施形態ではステップ状に変化させたのに対し、この実施形態では当該IDT端部領域について電極指ピッチを連続的に変化させている。しかしながら、当該端部領域における電極指ピッチの変化は、本実施形態ならびに前記第一から第五実施形態において、ステップ状の変化ならびに連続的な変化のいずれとすることも可能である。
【0064】
さらにフィルタ中央の第3IDT83は、IDT全体としては山型のピッチ変化をさせているが、左右両端部において前記第1IDT81および第5IDT85と同様に一旦ピッチを増大させている。また、隣り合ういずれの2つのIDTについても、相対的に対数の少ないIDTの最大ピッチが、相対的に対数の多いIDTの最大ピッチよりも小さく、相対的に対数の少ないIDTの最小ピッチが、相対的に対数の多いIDTの最小ピッチよりも大きくなるようにしてある。
【0065】
電極対数は、例えば第1IDT81、第3IDT83および第5IDT85がそれぞれ14.5対、25.0対、14.5対、第2IDT82および第4IDT84がいずれも38.0対、両側の反射器10が共に65本とする。また反射器10の電極指ピッチの2倍であるλを例えば2.01μmとし、IDT81〜85の交差幅を例えば40λ、IDT間の距離を0.468λ、IDT‐反射器間の距離を共に例えば0.5λとする。
【0066】
本発明は、図面に基づいて説明した前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことが可能である。
【0067】
例えば、主ピッチ領域を有さないようにピッチ変化を持たせるIDTは、フィルタを構成する総てのIDTとしても良いし、そのうちの一部としても良い。また、ステップ状のピッチ変化と、連続状(1本ずつ)のピッチ変化とを1つのIDT内であるいは1つのフィルタ内で適宜組み合わせることも可能である。入力端子と出力端子は、平衡入力‐平衡出力、不平衡入力‐不平衡出力、平衡入力‐不平衡出力、ならびに不平衡入力‐平衡出力のいずれとすることも可能である。
【0068】
また、圧電基板は、LiTaO3以外にも、LiNbO3や水晶などの圧電単結晶、あるいはチタン酸ジルコン酸鉛系圧電セラミックスのような圧電セラミックスにより形成することもでき、絶縁基板上にZnO薄膜などの圧電薄膜を形成したものを圧電基板として使用することも可能である。さらにIDTや反射器を構成する電極は、Alのほか、Al合金やCu、Auその他の材料からなるものであっても良く、複数種類の導電材料を積層した電極構造とすることも可能である。
【0069】
さらに本発明は弾性表面波フィルタだけでなく、図25に示すように圧電基板5(例えばLiTaO3、LiNbO3等)と非圧電材6(SiO2、Si等)との間にIDTおよび反射器電極7を備えた弾性境界波フィルタに対しても同様に適用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタを模式的に示す概念図である。
【図2】前記第一実施形態の弾性表面波フィルタにおけるIDTの電極指ピッチを示す図である。
【図3】前記第一実施形態に係る弾性表面波フィルタの通過帯域特性を示す線図である。
【図4】前記第一実施形態に係る弾性表面波フィルタの反射特性を示す線図である。
【図5】前記第一実施形態に係る弾性表面波フィルタの通過帯域特性を示す線図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタにおけるIDTの電極指ピッチを示す図である。
【図7】前記第二実施形態に係る弾性表面波フィルタの通過帯域特性を示す線図である。
【図8】前記第二実施形態に係る弾性表面波フィルタの反射特性を示す線図である。
【図9】本発明の第三の実施形態に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタを模式的に示す概念図である。
【図10】前記第三実施形態の弾性表面波フィルタにおけるIDTの電極指ピッチを示す図である。
【図11】前記第三実施形態に係る弾性表面波フィルタの通過帯域特性を示す線図である。
【図12】前記第三実施形態に係る弾性表面波フィルタの反射特性を示す線図である。
【図13】本発明の第四の実施形態に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタにおけるIDTの電極指ピッチを示す図である。
【図14】前記第四実施形態に係る弾性表面波フィルタの通過帯域特性を示す線図である。
【図15】前記第四実施形態に係る弾性表面波フィルタの反射特性を示す線図である。
【図16】本発明の第五の実施形態に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタを模式的に示す概念図である。
【図17】前記第五実施形態の弾性表面波フィルタにおけるIDTの電極指ピッチを示す図である。
【図18】前記第五実施形態に係る弾性表面波フィルタの通過帯域特性を示す線図である。
【図19】前記第五実施形態に係る弾性表面波フィルタの反射特性を示す線図である。
【図20】本発明の第六の実施形態に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタを模式的に示す概念図である。
【図21】前記第六実施形態の弾性表面波フィルタにおけるIDTの電極指ピッチを示す図である。
【図22】従来の縦結合共振子型弾性表面波フィルタの第一の例を模式的に示す概念図である。
【図23】前記従来の第一例に係る弾性表面波フィルタの各IDTの電極ピッチを示す図である。
【図24】従来の第二の例に係る縦結合共振子型弾性表面波フィルタの各IDTの電極ピッチを示す図である。
【図25】本発明を適用可能な弾性境界波フィルタを示す概念図である。
【図26】IDT(a)および反射器(b)のピッチを示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 入力端子
2 出力端子
5 圧電基板
6 非圧電材
7 電極(IDT電極指,反射器)
10 反射器
11,21,31,41,51,61,71 縦結合多重モード型弾性表面波フィルタ
12,22,32,42,52,62,72 中央IDT
13,23,33,43,53,63,73 外側IDT
81,82,83,84,85 IDT
P11,P21 主ピッチ(定ピッチ)領域
P12,P22 狭ピッチ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性表面波の伝搬方向に配列されるように圧電基板上に備えた2以上の交差指状電極を有する弾性表面波フィルタであって、
前記交差指状電極のうちの1以上の交差指状電極の電極指ピッチを、当該交差指状電極が主ピッチ領域を有することがないように当該交差指状電極に含まれる略全部の電極指について異ならせた
ことを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項2】
圧電基板と、
当該圧電基板に接するように配した非圧電材と、
前記圧電基板と非圧電材の境界面に弾性境界波の伝搬方向に配列されるように備えた2以上の交差指状電極と、
を有する弾性境界波フィルタであって、
前記交差指状電極のうちの1以上の交差指状電極の電極指ピッチを、当該交差指状電極が主ピッチ領域を有することがないように当該交差指状電極に含まれる略全部の電極指について異ならせた
ことを特徴とする弾性境界波フィルタ。
【請求項3】
音響結合するよう隣り合って配置されかつ電極対数が異なる少なくとも1組の交差指状電極を含み、
当該1組の交差指状電極のうち相対的に電極対数が少ない交差指状電極の電極指ピッチを、当該交差指状電極が主ピッチ領域を有することがないように当該交差指状電極に含まれる略全部の電極指について異ならせた
請求項1に記載の弾性表面波フィルタまたは請求項2に記載の弾性境界波フィルタ。
【請求項4】
前記1組の交差指状電極の双方の電極指ピッチを、両交差指状電極が主ピッチ領域を有することがないように当該交差指状電極に含まれる略全部の電極指について異ならせた
請求項3に記載の弾性表面波フィルタまたは弾性境界波フィルタ。
【請求項5】
前記相対的に電極対数が少ない交差指状電極における電極指の最大ピッチが、相対的に電極対数が多い交差指状電極の最大ピッチよりも小さく、かつ、
前記相対的に電極対数が少ない交差指状電極における電極指の最小ピッチが、相対的に電極対数が多い交差指状電極の最小ピッチよりも大きい
請求項3または4に記載の弾性表面波フィルタまたは弾性境界波フィルタ。
【請求項6】
前記交差指状電極の電極指ピッチを主ピッチ領域を有することがないように異ならせる場合に、1つの交差指状電極内に少なくとも、電極指ピッチを次第に減少させるピッチ減少領域と、電極指ピッチを次第に増加させるピッチ増加領域とをそれぞれ1以上含む
請求項1から5のいずれか一項に記載の弾性表面波フィルタまたは弾性境界波フィルタ。
【請求項7】
前記弾性表面波または弾性境界波の伝搬方向に配列された複数の交差指状電極のうち、両端に位置する交差指状電極は、外側から内側に向け、電極指ピッチが次第に減少し、当該交差指状電極の内側端部において当該電極指ピッチが逆に増加した後、再び当該電極指ピッチが減少するピッチ変化を有する
請求項6に記載の弾性表面波フィルタまたは弾性境界波フィルタ。
【請求項8】
前記弾性表面波または弾性境界波の伝搬方向に配列された複数の交差指状電極のうち、他の2つの交差指状電極に挟まれるように配置された交差指状電極は、全体として中央部の電極指ピッチが大きくかつ両端の電極指ピッチが次第に小さくなるようなピッチ変化を有すると共に、中央部に電極指ピッチを部分的に減少させた領域を有する
請求項6に記載の弾性表面波フィルタまたは弾性境界波フィルタ。
【請求項9】
弾性表面波または弾性境界波の伝搬方向に配列されるように備えられた前記交差指状電極として3以上の交差指状電極を含み、
これらの交差指状電極の両側に反射器を配置し、
前記3以上の交差指状電極において複数の共振モードを利用するようにした
請求項1から8のいずれか一項に記載の縦結合共振子多重モード型弾性表面波フィルタまたは縦結合共振子多重モード型弾性境界波フィルタ。
【請求項10】
出力信号の位相が互いに略180°異なる2つの弾性表面波フィルタまたは弾性境界波フィルタを入力端子と出力端子との間に電気的に並列に接続し、この接続点から引き出される前記入力端子を不平衡端子とし、前記出力端子を平衡端子とした弾性表面波フィルタまたは弾性境界波フィルタであって、
前記2つの弾性表面波フィルタまたは弾性境界波フィルタとして、前記請求項1から9のいずれか一項に記載の弾性表面波フィルタまたは弾性境界波フィルタを用いた
弾性表面波フィルタまたは弾性境界波フィルタ。
【請求項11】
請求項9または10に記載のフィルタに、1つ以上の弾性表面波共振子または弾性境界波共振子を直列にさらに接続した
縦結合共振子多重モード型弾性表面波フィルタまたは縦結合共振子多重モード型弾性境界波フィルタ。
【請求項12】
請求項9または10に記載のフィルタに、1つ以上の弾性表面波共振子または弾性境界波共振子を並列にさらに接続した
縦結合共振子多重モード型弾性表面波フィルタまたは縦結合共振子多重モード型弾性境界波フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2008−252678(P2008−252678A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93357(P2007−93357)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】