説明

繊維強化樹脂成形品の製造方法、および繊維強化樹脂成形品

【課題】好適な外観を有する繊維強化樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】繊維強化樹脂成形品の製造方法は、配置工程と、加熱成形工程と、剥離工程とからなり、離型フィルム100は離型層110を有する。離型層110は、主にポリメチルペンテン系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂、またはポリブチレンテレフタレート系樹脂からなる。配置工程では、離型フィルム100を金型200上に配置する。このとき、離型フィルム100は、金型200と接する側と反対側に離型層110が位置するようにして配置する。加熱成形工程で、樹脂前駆体が含浸される布帛300を金型200によって加熱成形して繊維強化樹脂成形品を作製した後、繊維強化樹脂成形品から離型フィルム100を剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂成形品の製造方法、および繊維強化樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂などの樹脂前駆体が含浸された炭素繊維またはガラス繊維などの布帛を、金型で加熱成形することによって、任意の形状の繊維強化樹脂成形品が製造されている。このような繊維強化樹脂成形品の製造では、布帛と金型との間に配置される離型フィルムとして、例えば、フッ素樹脂フィルムが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−66918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フッ素樹脂フィルムは、金型への追従性が十分ではない場合がある。そのため、繊維強化樹脂成形品の表面には、シワが発生しやすい。よって、繊維強化樹脂成形品の外観不良が起こりやすい。
【0005】
本発明の目的は、好適な外観を有する繊維強化樹脂成形品を得ることができる繊維強化樹脂成形品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
本発明に係る繊維強化樹脂成形品の製造方法は、配置工程と、加熱成形工程と、剥離工程とを備える。離型フィルムは、離型層を有する。この離型フィルムは、離型層のみからなる単層構造のフィルムであってもよいし、複数の層からなる多層構造のフィルムであってもよい。離型層は、主に、ポリメチルペンテン系樹脂(以下、「PMP系樹脂」という)、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂(以下、「SPS系樹脂」という)、またはポリブチレンテレフタレート系樹脂(以下、「PBT系樹脂」という)からなる。配置工程では、離型フィルムを金型上に配置する。このとき、離型フィルムは、金型と接する側と反対側に離型層が位置するようにして配置される。加熱成形工程では、樹脂前駆体が含浸される布帛を、金型によって加熱成形して繊維強化樹脂成形品を作製する。剥離工程では、繊維強化樹脂成形品から離型フィルムを剥がす。
【0007】
主に、PMP系樹脂、SPS系樹脂、またはPBT系樹脂からなる離型層を有する離型フィルムは、従来のフッ素樹脂フィルム等からなる離型フィルムに比べて柔らかく、金型への追従性が高い。そのため、繊維強化樹脂成形品は、設計通りの形状で作製されやすい。また、繊維強化樹脂成形品の表面に発生するシワが低減される。よって、繊維強化樹脂成形品は好適な外観を有する。
【0008】
また、主に、PMP系樹脂、SPS系樹脂、またはPBT系樹脂からなる離型層を有する離型フィルムは、従来のフッ素樹脂フィルム等からなる離型フィルムに比べて安価である。そのため、繊維強化樹脂成形品の製造コストを低減させることができる。
【0009】
さらに、主に、PMP系樹脂、SPS系樹脂、またはPBT系樹脂からなる離型層は表面粗さを調整しやすい。そのため、繊維強化樹脂成形品の艶消し等の表面加工が容易となる。
【0010】
(2)
上述(1)の繊維強化樹脂成形品の製造方法では、離型フィルムは、クッション層をさらに備えることが好ましい。
【0011】
離型性を維持しつつ、極力薄くなるように離型フィルムが形成された場合、この離型フィルムは、クッション層を備えていない離型フィルムに比べて柔らかく、金型への追従性が高い。そのため、繊維強化樹脂成形品は、より設計通りの形状で作製されやすい。また、繊維強化樹脂成形品の表面に発生するシワがより低減される。
【0012】
(3)
上述(1)または(2)の繊維強化樹脂成形品の製造方法では、離型層の熱収縮率は、2.0%以下であることが好ましい。
【0013】
熱収縮率が所定の値である離型層を有する離型フィルムを用いることで、繊維強化樹脂成形品の表面に発生するシワがより低減される。
【0014】
(4)
上述(1)〜(3)のいずれかの繊維強化樹脂成形品の製造方法では、離型層の表面粗さRz(JIS B0601に準じて測定)は、1.0μm以上15.0μm以下であることが好ましい。
【0015】
表面粗さRzが所定の値である離型層を有する離型フィルムを用いることで、繊維強化樹脂成形品に対する離型フィルムの離型性が向上し、かつ、繊維強化樹脂成形品の表面に発生するシワがより低減される。また、繊維強化樹脂成形品の艶消し等の表面加工も可能となる。
【0016】
(5)
本発明に係る繊維強化樹脂成形品は、上述(1)〜(4)のいずれかの繊維強化樹脂成形品の製造方法で製造される。
【0017】
主に、PMP系樹脂、SPS系樹脂、またはPBT系樹脂からなる離型層を有する離型フィルムは、従来のフッ素樹脂フィルム等からなる離型フィルムに比べて、金型への追従性に優れるため、繊維強化樹脂表面のシワによる外観不良の発生を低減することができる。
【0018】
また、主に、PMP系樹脂、SPS系樹脂、またはPBT系樹脂からなる離型層を有する離型フィルムは、従来のフッ素樹脂フィルム等からなる離型フィルムに比べて柔らかく、金型への追従性が高い。そのため、繊維強化樹脂成形品は、設計通りの形状で作製されやすい。また、繊維強化樹脂成形品の表面に発生するシワが低減される。
【0019】
さらに、主に、PMP系樹脂、SPS系樹脂、またはPBT系樹脂からなる離型層を有する離型フィルムの表面にある微細な凹凸が、繊維強化樹脂成形品の表面に転写される。そのため、繊維強化樹脂成形品の意匠性が向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る繊維強化樹脂成形品の製造方法は、好適な外観を有する繊維強化樹脂成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る繊維強化樹脂成形品の製造方法の配置工程にかかる離型フィルム、金型、および樹脂前駆体が含浸されている布帛の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る繊維強化樹脂成形品の製造方法の加熱成形工程にかかる離型フィルム、金型、および繊維強化樹脂成形品の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る繊維強化樹脂成形品の製造方法の剥離工程にかかる離型フィルム、金型、および繊維強化樹脂成形品の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る変形例(A)繊維強化樹脂成形品の製造方法の配置工程にかかる離型フィルム、金型、および樹脂前駆体が含浸されている布帛の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係る繊維強化樹脂成形品の製造方法は、配置工程と、加熱成形工程と、剥離工程とを備える。以下、各工程について、それぞれ詳しく説明する。なお、繊維強化樹脂成形品の製造方法は、上記以外の工程を備えてもよい。
【0023】
<配置工程>
図1に示されるように、配置工程では、先ず、離型フィルム100が金型200上に配置される。次いで、離型フィルム100が配置された金型200間に、樹脂前駆体が含浸される布帛(以下、「プリプレグ」という)300を配置する。なお、配置工程では、あらかじめプリプレグ300の表面に貼り付けられた状態の離型フィルム100が、金型200間に配置されてもよい。
【0024】
離型フィルム100は、離型層110からなる単層構造のフィルムである。この離型層110は、主に、ポリメチルペンテン系樹脂(以下、「PMP系樹脂」という)、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂(以下、「SPS系樹脂」という)、またはポリブチレンテレフタレート系樹脂(以下、「PBT系樹脂」という)からなる。
【0025】
PMP系樹脂として、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体、または4−メチル−1−ペンテンと他のα−オレフィン等が用いられる。α−オレフィンとして、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン等の炭素数2から20のα−オレフィンとの共重合体などが用いられる。具体的に、PMP系樹脂として、4−メチル−1−ペンテンを主成分とする三井化学株式会社製の商品名TPX(登録商標)等が用いられる。
【0026】
SPS系樹脂は、シンジオタクチック構造、すなわち炭素−炭素シグマ結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基や置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体規則構造を有するポリスチレン系樹脂である。
【0027】
このようなSPS系樹脂としては、例えば、特開2000−038461号公報に示されるように、ラセミダイアッドで75%以上、好ましくは85%以上、またはラセミペンタッドで30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有するポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(アリールスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、これらの水素化重合体およびこれらの混合物、あるいはこれらを主成分とする共重合体などが挙げられる。
【0028】
ポリ(アルキルスチレン)としては、例えば、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソプロピルスチレン)、ポリ(t−ブチルスチレン)等が挙げられる。
【0029】
ポリ(アリールスチレン)としては、例えば、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルスチレン)等が挙げられる。
【0030】
ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、例えば、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)等が挙げられる。
【0031】
ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、例えば、ポリ(クロロメチルスチレン)等が挙げられる。
【0032】
ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)等が挙げられる。
【0033】
なお、上述のSPS系樹脂のうち、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−t−ブチルスチレン)、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリ(m−クロロスチレン)、ポリ(p−フルオロスチレン)、水素化ポリスチレン、およびこれらの構造単位を含む共重合体が特に好ましい。
【0034】
PBT系樹脂としては、ポリブチレンテレフタレートの単独重合体、またはポリブチレンテレフタレートとポリアルキレングリコールとの共重合体などが用いられる。ポリアルキレングリコールとして、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が用いられる。具体的に、ポリブチレンテレフタレートとポリアルキレングリコールとの共重合体として、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製の商品名ノバデュラン(登録商標)5505S、5510S等が用いられる。
【0035】
離型層110の熱収縮率は、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。離型層110の熱収縮率は、離型フィルム100の離型層110に10cm間隔でマークキングをして、離型フィルム100を130℃のオーブン内で10分間加熱した後、マークキング間の距離変化量を測定することによって行った。
【0036】
離型層110の表面粗さRz(JIS B0601に準じて測定)は、1.0μm以上15.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以上10.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上5.0μm以下であることがさらに好ましい。離型層110の表面粗さRz(十点平均粗さ)の測定は、表面粗さ形状測定機(東京精密社製、HANDYSURF E−35A)を用いて、測定巾4000μm、速度0.6mm/sの条件で行った。
【0037】
これらPMP系樹脂、SPS系樹脂、PBT系樹脂には、各種の添加剤、例えば、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、核剤、帯電防止剤、プロセスオイル、可塑剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、顔料などが配合されてもよい。
【0038】
アンチブロッキング剤として、無機粒子または有機粒子が用いられる。無機粒子として、IA族、IIA族、IVA族、VIA族、VIIA族、VIIIA族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族元素の酸化物、水酸化物、硫化物、窒素化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩、亜燐酸塩、有機カルボン酸塩、珪酸塩、チタン酸塩、硼酸塩、およびそれらの含水化合物、ならびにそれらを中心とする複合化合物、ならびに天然鉱物粒子が用いられる。有機粒子として、フッ素樹脂、メラミン系樹脂、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、アクリル系レジンシリコーン、およびそれらの架橋体が用いられる。これらのアンチブロッキング剤は、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。
【0039】
酸化防止剤として、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、2−[(1−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート等が用いられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。
【0040】
核剤として、アルミニウムジ(p−t−ブチルベンゾエート)等のカルボン酸の金属塩、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウム等のリン酸の金属塩、タルク、フタロシアニン誘導体などが用いられる。これらの核剤は、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。
【0041】
可塑剤として、ポリエチレングリコール、ポリアミドオリゴマー、エチレンビスステアロアマイド、フタル酸エステル、ポリスチレンオリゴマー、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル等が用いられる。これらの可塑剤は、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。
【0042】
離型剤として、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル、長鎖カルボン酸、長鎖カルボン酸金属塩などが用いられる。これらの離型剤は、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。
【0043】
プロセスオイルとして、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル等が用いられる。これらの中でもn−d−M法で算出されるパラフィン(直鎖)に係る炭素数の全炭素数に対する百分率が60%Cp以上のパラフィン系オイルが好ましい。
【0044】
単層構造である離型フィルム100の厚みは、20μm以上200μm以下であることが好ましい。厚みが20μm以上200μm以下の離型フィルム100は、フィルム破れ等の発生を抑制し、ハンドリング性が良好となり、かつ、金型200への追従性が良好となる。
【0045】
プリプレグ300の布帛として、公知の繊維材料が用いられ、例えば、炭素繊維またはガラス繊維などが用いられる。プリプレグ300の樹脂前駆体として、例えば、エポキシ系樹脂前駆体、アクリル系樹脂前駆体、フェノール樹脂前駆体、シアネート樹脂前駆体などが用いられる。エポキシ系樹脂前駆体として、例えば、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート樹脂などの前駆体が用いられる。アクリル系樹脂前駆体として、例えば、熱硬化性のアクリル系樹脂などの前駆体が用いられる。
【0046】
<加熱成形工程>
図2に示されるように、加熱成形工程では、金型200を移動させて金型200でプリプレグ300を挟み込む。その後、金型200によってプリプレグ300を加熱成形して繊維強化樹脂成形品310を作製する。なお、加熱成形工程では、上記のような、プリプレグ300を金型200に配置して加熱成形を行う方法(例えば、ハンドレイアップ成形)以外の公知の成形法が用いられてもよい。例えば、樹脂前駆体を含浸させていない布帛を金型200内に配置した状態で、圧力を加えて樹脂前駆体を金型200中に流し込むことで、布帛に樹脂前駆体を含浸させるレジントランスファーモールディングなどの方法が用いられる。
【0047】
<剥離工程>
図3に示されるように、剥離工程では、金型200を移動させて繊維強化樹脂成形品310から離型フィルム100が剥がされ、任意の形状に成形された繊維強化樹脂成形品310が得られる。
【0048】
<本実施形態における効果>
【0049】
主に、PMP系樹脂、SPS系樹脂、またはPBT系樹脂からなる離型層110を有する離型フィルム100は、従来のフッ素樹脂フィルム等からなる離型フィルムに比べて柔らかく、金型200への追従性が高い。そのため、繊維強化樹脂成形品310は、設計通りの形状で作製されやすい。また、繊維強化樹脂成形品310の表面に発生するシワが低減される。よって、繊維強化樹脂成形品310は好適な外観を有する。
【0050】
また、主に、PMP系樹脂、SPS系樹脂、またはPBT系樹脂からなる離型層110を有する離型フィルム100は、従来のフッ素樹脂フィルム等からなる離型フィルムに比べて安価である。そのため、繊維強化樹脂成形品310の製造コストを低減させることができる。
【0051】
さらに、主に、PMP系樹脂、SPS系樹脂、またはPBT系樹脂からなる離型層110は表面粗さを調整しやすい。そのため、繊維強化樹脂成形品310表面の艶消し等の表面加工が容易となる。
【0052】
熱収縮率が2.0%以下である離型層110を有する離型フィルム100を用いることで、繊維強化樹脂成形品310の表面に発生するシワがより低減される。
【0053】
表面粗さRzが1.0μm以上15.0μm以下である離型層110を有する離型フィルム100を用いることで、繊維強化樹脂成形品310に対する離型フィルム100の離型性が向上し、かつ、繊維強化樹脂成形品310の表面に発生するシワがより低減される。
【0054】
<変形例>
(A)
図4に示されるように、離型フィルム100aは、単層構造のフィルムに代えて、複数の層からなる多層構造のフィルムであってもよい。
【0055】
離型フィルム100aは、3層構造であり、第1離型層110a、クッション層120、第2離型層130とを備える。金型200上に配置された離型フィルム100aは、金型200と接する側とは反対側に離型層110が位置すると共に、プリプレグ300と対向するようにして配置されている。なお、離型フィルム100aは、第1離型層110a、クッション層120および第2離型層130以外の機能層をさらに備えてもよいし、クッション層120および第2離型層130に代えて他の機能層を備えてもよい。
【0056】
第1離型層110aの材料として、上記の離型層110の材料が用いられる。第1離型層110aの厚みは、15μm以上120μm以下であることが好ましい。厚みが15μm以上120μm以下の第1離型層110aを有する離型フィルム100aは、離型性が良好となり、かつ、金型200への追従性が良好となる。
【0057】
クッション層120として、公知の離型フィルムで用いられる樹脂フィルムを用いることができる。樹脂フィルムとして、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のα−オレフィン系重合体、またはエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メチルペンテン等を共重合成分として有するα−オレフィン系共重合体が用いられる。これらα−オレフィン系重合体、α−オレフィン系共重合体は、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。これらα−オレフィン系共重合体のうち、繊維強化樹脂成形品310を設計通りの形状で作製するという観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)などのα−オレフィン系共重合体、およびそれらの部分イオン架橋物などが好ましい。
【0058】
クッション層120の厚みは、5μm以上100μm以下であることが好ましい。厚みが5μm以上100μm以下のクッション層120を有する離型フィルム100aは、金型200への追従性が良好となり、かつ、離型性が良好となる。
【0059】
第2離型層130の材料として、公知の離型層の材料が用いられてもよいが、上記の離型層110の材料が用いられることが好ましい。また、第2離型層130の材料は、第1離型層110aの材料と同じであってもよいし、第1離型層110aの材料と異なっていてもよい。
【0060】
第2離型層130の厚みは、15μm以上120μm以下であることが好ましい。厚みが15μm以上120μm以下の第2離型層130を有する離型フィルム100aは、離型性が良好となり、かつ、金型200への追従性が良好となる。
【0061】
離型フィルム100aは、共押出法、押出ラミネート法などの方法で製造される。共押出法では、フィードブロック、マルチマニホールドダイを使用して第1離型層110aとクッション層120と第2離型層130とを同時に押し出すことにより離型フィルム100aを製造する。押出しラミネート法では、押出機シリンダーの温度を270℃以上300℃以下に設定して第1離型層110aと第2離型層130とをそれぞれ押出し、第1離型層110aおよび第2離型層130をクッション層120と合流させて、第1離型層110aとクッション層120と第2離型層130とを積層させることにより離型フィルム100aを製造する。
【0062】
多層構造である離型フィルム100aの厚みは、20μm以上200μm以下であることが好ましい。厚みが20μm以上200μm以下の離型フィルム100aは、フィルム破れ等の発生を抑制し、ハンドリング性が良好となり、かつ、金型200への追従性が良好となる。
【0063】
この離型フィルム100aは、クッション層120を備えていない離型フィルムに比べて柔らかく、金型200への追従性が高い。そのため、繊維強化樹脂成形品310は、より設計通りの形状で作製されやすい。また、繊維強化樹脂成形品310の表面に発生するシワがより低減される。
【符号の説明】
【0064】
100、100a 離型フィルム
110 離型層
110a 第1離型層(離型層)
120 クッション層
130 第2離型層
200 金型
300 プリプレグ(樹脂前駆体が含浸される布帛)
310 繊維強化樹脂成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に、ポリメチルペンテン系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂、またはポリブチレンテレフタレート系樹脂からなる離型層を有する離型フィルムを、金型上に、前記離型フィルムの前記金型と接する側と反対側に前記離型層が位置するようにして配置する配置工程と、
樹脂前駆体が含浸される布帛を前記金型によって加熱成形して繊維強化樹脂成形品を作製する加熱成形工程と、
前記繊維強化樹脂成形品から前記離型フィルムを剥がす剥離工程とを備える繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記離型フィルムは、クッション層をさらに備える請求項1に記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記離型層の熱収縮率は、2.0%以下である請求項1または2に記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記離型層の表面粗さRz(JIS B0601に準じて測定)は、1.0μm以上15.0μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法で製造された繊維強化樹脂成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−218257(P2012−218257A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84980(P2011−84980)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】