説明

繊維機械用駆動装置のパワーエレクトロニクス回路の冷却装置及びその冷却方法

【課題】頻度の高いメンテナンスが不要な、可能な限り信頼性が高い繊維機械の作動を可能にする装置及び方法を提供すること。
【解決手段】交流から直流へ変換する少なくとも1つの整流器3と、脈動する直流を抑制する少なくとも1つの中間回路4と、異なる周波数の交流を発生する少なくとも1つのインバータ5と、駆動装置を制御する少なくとも1つの制御回路2とを備えて成る繊維機械の駆動方法において、周波数変換器1を、可能な限り低温に保持し、及び/又は少なくとも部分的に前記繊維機械の高温部から分離配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維機械用駆動装置のパワーエレクトロニクス回路の冷却装置及びその冷却方法に関し、特に、交流から直流へ変換する少なくとも1つの整流器と、脈動する直流を抑制する少なくとも1つの中間回路と、異なる周波数の交流を発生する少なくとも1つのインバータと、駆動装置を制御する少なくとも1つの制御回路とを備えて成る繊維機械の駆動のための周波数変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
交流の或る周波数を他の周波数に変換する周波数変換器は、通常、第1の周波数の交流を直流へ変換する整流器、脈動する直流を抑制する中間回路、第2の周波数の交流を発生するインバータ及び上記各部材を制御する制御回路を備えている。尚、中間回路は、ここでは電気的な機能のみではなく、この機能を実行するアセンブリをも意味している。
【0003】
ところで、周波数変換器の各部材は動作中に熱を発生し、特に、コンデンサを備えた中間回路での発熱が著しい。又、この中間回路は過熱に対して特に脆弱であるため、これを頻繁に交換する必要がある。
【0004】
上記のような周波数変換器は、例えば精紡機、粗紡機のような繊維機械に使用され、このような繊維機械は、駆動装置を冷却したり、糸くず等を排出するための通路を既に備えている。尚、通常、この通路には外部からの冷却空気が流通する。
【0005】
上記のような繊維機械においては、大量の熱を発生するパワーエレクトロニクス回路の過熱を防止するために、パワーエレクトロニクス回路が冷却されるような措置が講じられる。例えば、特許文献1にはリング精紡機又は撚糸機の冷却装置及びその冷却方法が提案されている。これによれば、パワーエレクトロニクス回路が発生する熱は熱交換器を通して排熱される。ここで、熱交換器には集合通路から送風機で強制的に導入される空気の一部が流通し、そして、再びこの空気の一部は元の空気の流れに合流する。
【0006】
更に、特許文献2には、繊維機械の駆動装置を作動させる制御装置を有するコントロールユニットを冷却する換気装置が開示されている。この換気装置は給排気用の開口部を有する通気路を備え、この通気路は、制御装置の反対側に設けられ、且つ、一方では当該通気路と対向しない側で制御モジュールを担持する冷却部材により境界が付されている。
【0007】
又、特許文献3には、長さ方向に沿って複数のスピンドルモータを配置して構成された、長く延在する紡績機が開示されているが、これら複数のスピンドルモータを冷却する必要がある。そのため、上記スピンドルモータを完全に糸くず吸入部の排気通路内に配置させている。
【0008】
しかしながら、これはパワーエレクトロニクス回路や分離可能な部材に関するものではない上、このような冷却方法は構造的に複雑であるとともにコストも嵩んでしまう。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0478993号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19915235号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第19612707号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的とする処は、頻度の高いメンテナンスが不要な、可能な限り信頼性が高い繊維機械の作動を可能にする装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、各請求項に記載した特徴によって達成される。特に、本発明の基本的な解決手段によれば、周波数変換器を、可能な限り低温に保持し、及び/又は少なくとも部分的に前記繊維機械の高温部から分離配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、周波数変換器の中間回路で発生する熱を効果的に排熱できるとともに、中間回路で発生する熱を周波数変換器の他の部材へ伝えることもなく、更に、中間回路の交換を容易に行うことができる。
【0012】
中間回路を周波数変換器の他の部材と空間的に分離して配置することにより、中間回路で発生する熱が周波数変換器の他の部材へ伝わるのを防止することができる。即ち、周波数変換器の中間回路以外の部材から僅かな熱のみを排熱させれば足りるので、これら中間回路以外の部材を低温に維持することが容易となる。
【0013】
又、中間回路を周波数変換器の他の部材と空間的に分離して配置することにより、更に、中間回路を、該中間回路で発生する熱を排熱するための空気流が流通する排気通路内に設けることができる。この際、周波数変換器の中間回路以外の部材を繊維機械のコントロールユニット等の適当な箇所に配置することができる。
【0014】
更に、中間回路を周波数変換器の他の部材と空間的に分離して配置することにより、中間回路を1つのモジュールとして構成し、必要であればこれを容易に交換することが可能である。
【0015】
そして、中間回路を繊維機械の既存の排気通路に直接配置することにより、高温による影響を受け易い部材の冷却を容易且つ安価に行うことができる。又、中間回路を排気通路に突出させて設けることもでき、例えば中間回路に、これと熱交換するフィンを設けるとともに、このフィンも排気通路内に突出させ、冷却効果を高めることができる。
【0016】
又、排気通路に設けられた中間回路をコネクタにより他の部材と電気的に容易に接続させることができる。そして、例えば、埃や汚れの層の形成、糸くず等によるフィンの効果の低下等の汚れによる伝熱効果の悪化を防止するため、冷却媒体としての空気が中間回路の冷却前にフィルタに通される。
【0017】
更に、本発明によれば、中間回路を隔離されたモジュールとして形成するとともに、埃等が侵入しないよう封止することができる。従って、周辺からの汚れによる冷却効果の低下を容易に防止することができる。
【0018】
他の有利な実施の形態は、従属請求項に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は特にリング精紡機又は粗紡機等の繊維機械の駆動装置で使用される周波数変換器1の基本的な構成部材のブロック図であり、この周波数変換器1は、制御回路2、整流器3、中間回路4及びインバータ5で構成されている。整流器3は、その入力側がAC電源6に接続されており、交流電圧を直流電圧に変換する。そして、この直流電圧は配線7,8を介して中間回路4へ供給される。
【0021】
又、中間回路4として、整流器電圧の変換、中間回路4の静電容量による直流電圧の脈動抑制等、様々なものが知られている。本発明は、中間回路4の静電容量に関するのみでなく、放熱する電子部品及び/又は熱の影響を受け易い電子部品に適用されるものでもあるが、図示の実施の形態では、中間回路4の静電容量による脈動抑制を用いている(図中、中間回路4に記載したコンデンサ記号参照)。
【0022】
又、電流が、整流器3から配線7,8を通って中間回路4へ供給され、そして、配線9,10を通ってインバータ5へ供給され、更に、駆動装置であるモータ11へ供給される一方、周波数変換器1の上記各構成部材は、信号伝達ケーブル12を介して制御回路2により制御される。
【0023】
而して、本発明の本質は、中間回路4或いは中間回路4の静電容量を周波数変換器1から分離して配置するとともに、周波数変換器1の上記構成部材、即ち、制御回路2、整流器3及びインバータ5と、中間回路4とをそれぞれ別のモジュール13,14として構成することにある。
【0024】
尚、周波数変換器1の制御回路2、整流器3及びインバータ5は、多くの熱を発生する中間回路4から分離されて、例えば配電盤や駆動装置近傍等の適当な箇所に配置される。
【0025】
上記のように分離された中間回路4も、配線7,8,9,10及び信号伝達ケーブル12を介して他の構成部材に接続されており、更に、コネクタ15を介して制御回路2、整流器3及びインバータ5のモジュール13と接続されている。尚、周波数変換器1は、締結部材等(図示せず)により繊維機械本体部に固定されている。
【0026】
上記のように中間回路4を分離配置することにより、当該中間回路4を図中に断面で示した排気通路16に設けることができる。ここで、排気通路16は、例えば綿毛の排出通路及び/又は駆動装置の冷却用通路として使用される。
【0027】
又、中間回路4に、図示のように冷却用のフィン17で形成された熱交換器を設けることができるとともに、このフィン17を排気通路16内へ突出させて設けることにより大きな冷却効果が得られる。
【0028】
以上説明した本実施の形態によれば、大量に放熱する、特に中間回路4としてのパワーエレクトロニクス回路を、例えば付加的な通路を設ける等することなく容易且つ安価に十分冷却することができる。
【0029】
更に、本実施の形態のように分離配置すること、及びこの分離配置による取り扱い易さ(中間回路4を駆動装置近傍ではなく、これをより取り扱い易い排気通路16に配置する)により、大量に放熱するパワーエレクトロニクス回路の部品を、その故障時に容易に交換することができる。これは、制御回路2、整流器3及びインバータ5と、中間回路4とが、係合によらない接続又は離脱を行うコネクタ15としての配線7,8,9,10及び信号伝達ケーブル12を介して接続されている場合に特に有利である。
【0030】
又、排気通路16に例えば埃、ほつれた糸、糸くず等の異物があると、これら異物を避け、冷却用のフィン17に対する悪影響を防止するために、排気通路中に不図示のフィルタを設けて、空気を中間回路4及び冷却用のフィン17の手前でフィルタにかけることが可能である。
【0031】
更に、例えば中間回路4等の分離可能なパワーエレクトロニクス回路ユニットを埃が内部に侵入しないよう封止することができ、埃等の侵入とそれによるマイナスの効果を防止することができる。
【0032】
ところで、本実施の形態では周波数変換器について説明したが、本発明は、もちろんその他の放熱する電子部品についても、これらをパワーエレクトロニクス回路から分離し、排気通路等に設けることにより適用することが可能である。又、もちろん、冷却媒体は空気だけではなく、任意で適当に用いることができ、例えば水等の液体を用いることもできる。
【0033】
以上説明した、中間回路4をコネクタにより周波数変換器1の制御回路2、整流器3及びインバータ5と接続する解決手段は、コントローラエリアネットワークバス(CAN−Bus)による解決手段である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】周波数変換器の基本的な構成部材のブロック図である。
【符号の説明】
【0035】
1 周波数変換器
2 制御回路
3 整流器
4 中間回路
5 インバータ
6 AC電源
7,8,9,10 配線
11 モータ
12 信号伝達ケーブル
13,14 モジュール
15 コネクタ
16 排気通路
17 フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流から直流へ変換する少なくとも1つの整流器と、
脈動する直流を抑制する少なくとも1つの中間回路と、
異なる周波数の交流を発生する少なくとも1つのインバータと、
駆動装置を制御する少なくとも1つの制御回路と
を備えて成る繊維機械の駆動方法において、
周波数変換器(1)を、可能な限り低温に保持し、及び/又は少なくとも部分的に前記繊維機械の高温部から分離配置したことを特徴とする駆動方法。
【請求項2】
前記中間回路(4)を分離配置したことを特徴とする請求項1記載の駆動方法。
【請求項3】
前記中間回路(4)を、前記周波数変換器(1)から空間的に分離して設けるとともに、前記繊維機械内に設けられた冷却媒体が流通する通路(16)内に設けたことを特徴とする請求項2記載の駆動方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の駆動方法に適合させたことを特徴とする周波数変換器。
【請求項5】
前記中間回路(4)を、コネクタ(15)を介して前記制御回路(2)、前記整流器(3)及び前記インバータ(5)に接続したことを特徴とする、請求項4記載の周波数変換器を備えた装置。
【請求項6】
前記中間回路(4)に、少なくとも部分的に冷却媒体が流通するフィン(17)を設けて冷却効果を高めたことを特徴とする、請求項4記載の周波数変換器を備えた装置。
【請求項7】
前記中間回路(4)を冷却する前に、冷却媒体をフィルタに通すことを特徴とする、請求項4記載の周波数変換器を備えた装置。
【請求項8】
請求項4記載の周波数変換器を備える構成としたことを特徴とする繊維機械。
【請求項9】
請求項5〜7の何れかに記載の装置を備える構成としたことを特徴とする繊維機械。

【図1】
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【公表番号】特表2008−524973(P2008−524973A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545944(P2007−545944)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013470
【国際公開番号】WO2006/066784
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(504011069)ザウラー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディトゲゼルシャフト (17)
【Fターム(参考)】