繊維補強樹脂成形品の製造方法、並びに、中間成形品及びその製造方法
【課題】 長繊維で補強された繊維補強樹脂成形品を製造でき、非常に長いものや、途中で屈曲したり、ねじれたりする形状であっても、製造しやすく、強度の高い成形品の製造を可能とする。
【解決手段】 本発明の繊維補強樹脂成形品の製造方法は、中間成形品11を製造し、中間成形品11を用いて繊維補強樹脂成形品を製造する。この中間成形品11には、樹脂存在部20と樹脂非存在部21とを有し、樹脂非存在部21は繊維部23だけであるので曲げることができる。そのため、中間成形品11の移動や保管が容易であり、また、使用現場で樹脂非存在部21に樹脂を含浸させて成形することにより、全域に繊維部23が設けられた成形品を製造することができる。
【解決手段】 本発明の繊維補強樹脂成形品の製造方法は、中間成形品11を製造し、中間成形品11を用いて繊維補強樹脂成形品を製造する。この中間成形品11には、樹脂存在部20と樹脂非存在部21とを有し、樹脂非存在部21は繊維部23だけであるので曲げることができる。そのため、中間成形品11の移動や保管が容易であり、また、使用現場で樹脂非存在部21に樹脂を含浸させて成形することにより、全域に繊維部23が設けられた成形品を製造することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維補強樹脂成形品の製造方法、及び、繊維補強樹脂成形品の製造に用いる中間成形品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維で補強された樹脂を成形する方法の1つとして、長繊維に樹脂を含浸させて成形する方法がある。具体的には、長繊維を束状として引き揃え、これに未硬化の熱硬化性樹脂などの液状の樹脂を含浸させ、金型内で樹脂を硬化させて、連続的に繊維補強樹脂を成形することが行われている。そして、このような技術は特許文献1などに記載されている。
【特許文献1】特公昭48−36420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような繊維補強樹脂の製造方法では、繊維補強樹脂成形品を長尺状に連続的に製造できるので生産性に優れており、また、繊維が長尺方向に配向している高い強度を有する成形品を製造することができる。
そして、このような方法で製造された成形品は、材質が軟らかい場合など、全体を曲げることが可能なものについては巻き取るなどして、長尺状態で保管することができる。一方、材質が硬いものなどは製造直後に所定の長さに切断されている。特に、合成まくら木など、成形後の樹脂が硬く、成形品の断面が大きいものなどは曲げることが困難であるので、製造直後に所定の長さに切断している。
【0004】
そして、このような成形品の場合、切断後の成形品の長さは、一定以上の長さとすることができなかった。これは、切断後の長さを長くするほど製造ラインが長くなってしまい、また、長すぎるものは取り扱いや保管や輸送が困難となるからである。
【0005】
従って、限界の長さ以上のものが必要な場合は、複数の成形品を接着やボルトなどで接合して対応していた。しかし、このように複数の成形品を接合したものは、接合部分で繊維が分断されるので、接合部分の強度が低下してしまう。
【0006】
また、長繊維で補強された樹脂成形品は、直線状ではないものは連続的に製造が困難であり、例えば、「L」字状などに途中で屈曲した形状や、或いは、途中でねじれた形状のものは連続成形することが難しかった。
したがって、このようなものを製造するには、かかる形状の型を作成し、型内に長繊維を配置して樹脂を充填して製造したり、また、連続成形されたものを複数用意して接合して製造したりしていた。しかし、前者の方法では製造が難しく、後者の方法では接合部分の強度が低下してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、長繊維で補強された繊維補強樹脂成形品の製造方法であって、非常に長いものや、途中で屈曲したり、ねじれたりする形状であっても、製造しやすく、強度の高い成形品を製造できる繊維補強樹脂成形品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するための請求項1に記載の発明は、一定の長さの繊維を所定の方向に配向させた繊維部に部分的に樹脂を成形して形成されており、繊維部及び樹脂で構成される樹脂存在部と、繊維部のみで構成される樹脂非存在部とが設けられていることを特徴とする繊維補強樹脂成形品用の中間成形品である。
【0009】
請求項1に記載の中間成形品は、繊維部で曲げることにより保管や移動を邪魔にならずすることができ、また、樹脂非存在部に樹脂を含浸させるなどして後から成形することにより、かかる部分も繊維補強をすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の中間成形品の樹脂非存在部に液状の樹脂を含浸させ、当該樹脂を硬化させて行うことを特徴とする繊維補強樹脂成形品の製造方法である。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の中間成形品の樹脂非存在部に液状の樹脂を含浸させ、当該樹脂を硬化させて行うので、製造された繊維補強樹脂成形品の全域で繊維補強が可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、繊維からなる連続体に液状の樹脂を部分的に含浸させて含浸部と非含浸部とを設けながら、筒状の成形通路に連続的に供給し、前記成形通路内で含浸部の樹脂を硬化させて樹脂存在部を形成し、非含浸部に樹脂非存在部を設けながら成形を行うことを特徴とする繊維補強樹脂成形品用の中間成形品の製造方法である。
ここで、繊維からなる連続体とは、一方向に長いものであり、例えば、線状体、テープ状体などの形態を用いることができ、さらに、線状体を束ねたものや、繊維を用いたマットや織物状のものを用いることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、繊維からなる連続体に液状の樹脂を部分的に含浸させて含浸部と非含浸部とを設けて、樹脂存在部と樹脂非存在部とを設けながら連続的に成形を行うので成形が容易であり、また、この中間成形品を用いて繊維補強樹脂成形品の成形を行うことにより、長さが長い成形品を製造する場合でも製造がしやすく強度が高い成形品を製造することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、繊維からなる連続体は束状の長繊維を用いたものであることを特徴とする請求項2に記載の中間成形品の製造方法である。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、繊維からなる連続体は束状の長繊維を用いたものであるので、繊維補強樹脂成形品の長尺方向に配向した繊維を多くの配置することができるので、より強度を高くすることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の中間成形品の製造方法によって製造された中間成形品を、樹脂存在部に挟まれた樹脂非存在部を含んだ状態で切断し、樹脂非存在部に液状の樹脂を含浸させ、当該樹脂を硬化させて行うことを特徴とする繊維補強樹脂成形品の製造方法である。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、樹脂存在部に挟まれた樹脂非存在部を含んだ状態で中間成形品を切断し、樹脂非存在部に液状の樹脂を含浸させ、当該樹脂を硬化させて行うので、中間成形品を使用現場に搬送して、樹脂非存在部への樹脂の含浸及び硬化を使用現場行うことにより、長い繊維補強樹脂成形品の場合であっても、樹脂非存在部で折り曲げることができる中間成形品の状態で、搬送や保管を行うことができ、繊維補強樹脂成形品の製造を容易に行うことができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、一定の長さの繊維を所定の方向に配向させた状態で液状の樹脂を部分的に含浸させて含浸部と非含浸部とを設け、含浸部の樹脂を硬化させて樹脂存在部を形成し、非含浸部に樹脂非存在部を設けて中間成形品を形成し、さらに、前記樹脂非存在部に液状の樹脂を含浸させ、当該樹脂を硬化させて行うことを特徴とする繊維補強樹
脂成形品の製造方法である。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、繊維からなる連続体に液状の樹脂を部分的に含浸させて含浸部と非含浸部とを設けて、樹脂存在部と樹脂非存在部とを設けながら中間成形品の成形を行い、この中間成形品を用いて繊維補強樹脂成形品の成形を行うので、長さが長い成形品を製造する場合でも製造がしやすく強度が高い成形品を製造することができる。
【0020】
また、樹脂非存在部に樹脂を含浸させて硬化させる場合に、樹脂非存在部を挟む2ヵ所の樹脂存在部を、直線状に配置した状態で行うことができる(請求項7)。
【0021】
さらに、樹脂非存在部に樹脂を含浸させて硬化させる場合に、樹脂非存在部を挟む2ヵ所の樹脂存在部を、屈曲する関係となるように配置した状態で行うことができる(請求項8)。ここで、屈曲する関係となる配置とは、2ヵ所の樹脂存在部の長尺方向が傾斜する関係となるような配置を意味するものである。
【0022】
そして、樹脂非存在部に樹脂を含浸させて硬化させる場合に、樹脂非存在部を挟む2ヵ所の樹脂存在部を、ねじれの関係となるように配置した状態で行うことができる(請求項9)。ここで、ねじれの関係となる配置とは、2ヵ所の樹脂存在部の長尺方向を軸として相対回転させた関係となるような配置を意味するものである。
【0023】
また、樹脂非存在部が2ヵ所以上あって、樹脂非存在部に樹脂を含浸させて硬化させる場合に、樹脂非存在部を挟む2ヵ所の樹脂存在部の位置関係を、直線状に配置、屈曲する関係となる配置、ねじれの関係となる配置の少なくとも2種類の配置を含んだ状態で行うことができる(請求項10)。
【0024】
請求項11に記載の発明は、樹脂存在部と樹脂非存在部とを有する中間成形品を製造現場で製造する工程と、繊維補強樹脂成形品を使用する使用現場で樹脂非存在部に樹脂を含浸させる工程を有することを特徴とする請求項2、5〜10のいずれかに記載の繊維補強樹脂成形品の製造方法である。
【0025】
請求項9に記載の発明によれば、樹脂存在部と樹脂非存在部とを有する中間成形品を製造現場で製造する工程と、繊維補強樹脂成形品を使用する使用現場で樹脂非存在部に樹脂を含浸させる工程を有しており、中間成形品を製造する場所と、この中間成形品を用いて繊維補強樹脂成形品を製造する場所は別の場所であって、中間成形品を搬送させて繊維補強樹脂成形品を製造するので、繊維補強樹脂成形品が搬送しにくい大きなものの場合にも、容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の繊維補強樹脂成形品の製造方法によれば、非常に長いものや、途中で屈曲したり、ねじれたりする形状であっても、製造しやすく、強度の高い成形品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下さらに本発明の具体的実施例について説明する。
図1は、本発明の中間成形品を示した斜視図である。図2は、図1の中間成形品を用いて繊維補強樹脂成形品を製造する方法を示した斜視図である。図3は、図1の中間成形品を用いて製造された繊維補強樹脂成形品を示す斜視図である。図4は中間成形品の樹脂存在部を重ねた状態を示した正面図である。図5は中間成形品の樹脂存在部を重ねた状態を示した斜視図である。図6は連続成形ラインを示した斜視図である。図7は連続成形ラインを示した模式図である。図8は、連続成形ラインで中間成形品を製造しながら、樹脂存
在部を重ねる方法を横から見た模式図である。図9〜図13は、連続成形ラインで中間成形品を製造しながら、樹脂存在部を重ねる方法を示した模式図であり、(a)は横から見た図であり、(b)は上から見た図であり、(c)は斜視図である。図14〜図17は、繊維補強樹脂成形品の変形例を示す斜視図である。
なお、図4の樹脂存在部に付した番号は重ねる順番を示している。
【0028】
本発明の繊維補強樹脂成形品10は中間成形品11を用いて製造される。そして、この中間成形品11は、図1に示されるように、樹脂存在部20と樹脂非存在部21とが交互に配置している。そして、樹脂存在部20は長尺状であり、更に詳しくは所定の厚みと幅を有する角柱状であり、樹脂部22と繊維部23とによって構成されている。また、樹脂非存在部21は繊維部23のみにより構成されている。
【0029】
また、繊維部23は連続体を用いて製造され、繊維部23は中間成形品11の全域に設けられており、全ての樹脂存在部20及び樹脂非存在部21に繊維部23が連続的に配置されている。
【0030】
樹脂非存在部21は樹脂部22が存在しておらず繊維部23のみであるので、かかる部分で曲げることができる。そして、図4に示すように、樹脂非存在部21で曲げることにより樹脂存在部20を積み重ねるような状態にすることができる。
【0031】
樹脂部22の材質は特に限定されないが、後述するように液状の樹脂を含浸させて、その後硬化する方法で製造されるので、熱硬化性の樹脂や、液状の原料を反応させて硬化させる樹脂などが望ましく、例えば、ウレタン樹脂やポリエステル樹脂やエポキシ樹脂やフェノール樹脂やウレア樹脂などを採用することができる。
また、樹脂部22は、成形時に発泡させた発泡樹脂であっても、発泡させない無発泡樹脂であってもよい。
【0032】
また、樹脂部22に樹脂以外のものを添加することができる。この添加するものの例としては、珪砂や樹脂の切粉などの無機、有機の固体充填材がある。
【0033】
繊維部23の種類は、特に問わないが、例えば、ガラス繊維やカーボン繊維や有機繊維などを用いることができ、コストと強度のバランスの良さからガラス繊維が好適である。また、繊維部23の形態は、一方向に長い連続体であればどのようなものでも良く、モノフィラメント、マルチフィラメントなどの線状体を束ねたものや、マット状にしたものや織物状に織ったもの等のように所定の幅を持つものを用いることができる。
【0034】
このような中間成形品11は、図6、図7に示されるような連続成形ライン50を用いて製造される。連続成形ライン50には、繊維供給工程51、樹脂含浸工程52、成形工程53、引取部55を有している。
そして、繊維供給工程51から引取部55へ向かって進むように連続的に繊維部23を供給し、引取部55に引き取られて出来上がった中間成形品11が出てくる。なお、連続成形ライン50を示した図6、図7においては、左から右へと工程が進む。
【0035】
繊維供給工程51は、繊維部23となる繊維を連続的に供給する部分であり、図示は省略しているが、ガラス長繊維をボビンなどに巻きつけておき、これから繰り出して供給される。また、繊維供給工程51には、複数本のガラス長繊維が束状に供給され、このガラス長繊維は樹脂含浸工程52へと進む。
【0036】
樹脂含浸工程52には、噴霧ノズル60と含浸ロール61と揉み板62を有している。そして、噴霧ノズル60から樹脂液を繊維部23に向けて噴霧し、その後、含浸ロール6
1を通過させて揉み板62で揉むことにより、樹脂液を全体に均一に行き渡るようにする。
【0037】
また、この樹脂含浸工程52による樹脂液の噴霧は、断続的に行われいる。そして、図7に示されるように、繊維部23に樹脂液を付着させた部分である含浸部70と、繊維部23に樹脂液を含浸させない非含浸部71とを設けるようにしながら行われる。
この含浸部70や非含浸部71の間隔は、後述する樹脂存在部20や樹脂非存在部21に合わせている。
【0038】
そして、含浸部70と非含浸部71とが設けられた繊維部23は、成形工程53に供給される。成形工程53は、4つの無端ベルト63、64、65、66を有しており、この4つの無端ベルト63、64、65、66の内側に成形通路68が形成される。無端ベルト63、64、65、66の表面は平面状であり、成形通路68の断面形状はほぼ長方形状となっており、樹脂存在部20の断面形状に合わせている。また、上下の無端ベルト63、64は左右の無端ベルト65、66よりも幅広であり、樹脂存在部20の断面形状は上下の幅(厚み)より横方向の幅の長さの方が長い。
【0039】
成形の際には無端ベルト63、64、65、66が作動する。そして、無端ベルト63、64、65、66が作動したときの内側の進行方向及び速度は、繊維部23の進行方向及び速度と同じである。したがって、無端ベルト63、64、65、66と、成形途中の樹脂との間の摩擦を小さくすることができる。
【0040】
また、無端ベルト63、64、65、66によって形成される成形通路68は、樹脂液が硬化に必要な程度に加熱されている。そして、含浸部70で含浸された樹脂は、成形通路68内で硬化して樹脂存在部20となり、非含浸部71では樹脂が含浸されないので、樹脂非存在部21となる。樹脂非存在部21は繊維部23のみであり、変形が容易な状態となっている。
【0041】
成形通路68を通過して硬化した樹脂は、引取部55によって引き取られて、引取部55から、樹脂存在部20と樹脂非存在部21とが交互に形成された中間成形品11が排出される。
引取部55では、上側ベルト55aと下側ベルト55bが設けられており、樹脂存在部20が上側ベルト55aと下側ベルト55bとの間に挟まれた状態で作動することにより、中間成形品11の引き取りが行われる。
【0042】
そして、引取部55から出てきた中間成形品11は、樹脂非存在部21で曲げて、樹脂存在部20を図4に示すように重ねるようにする。なお、図4の樹脂存在部に付した番号は重ねる順番を示している。
樹脂存在部20を重ねるには、また、図4(a)に示されるように、樹脂非存在部21で折り曲げの方向を同じ方向として樹脂存在部20を巻くようにして重ねる方法と、図4(b)に示されるように、樹脂非存在部21での折り曲げの方向を交互に反対方向として、樹脂存在部20をつづら折り状で重ねる方法がある。
【0043】
樹脂存在部20を巻くようにして重ねる方法では、外側ほど樹脂非存在部21の必要な長さが長くなるので、樹脂存在部20の重ねる枚数に限界がある。そのため、中間成形品11を成形しながら適当な枚数で切断される。
【0044】
また、図4(b)のように、樹脂非存在部21で折り曲げて樹脂存在部20を重ねる方向は、図5(a)に示すように樹脂存在部20の幅が短い側を重ねるように折り曲げる方が、図5(b)に示すように樹脂存在部20の幅が長い側を重ねるように折り曲げるより
も、樹脂非存在部21の繊維部23の変形が緩やかになるので折り曲げやすい。そのため、中間成形品11の上下の幅(厚み)の方が横方向の幅よりも短い本実施形態の連続成形ライン50では、樹脂非存在部21を支点として樹脂存在部20を上側又は下側へ向かって回転させるようにしなければならない。そして、特に樹脂存在部20が長い場合には地面などに接触するので、図8(a)、(b)、(c)に示されるように、上側へ向かって回転させながら樹脂存在部20を重ねることとなる。
【0045】
そこで、図9〜図13に示されるように、引取部55から出てきた中間成形品11を90°捻ることにより、樹脂存在部20を水平方向に回転させるようにして巻き付けるようにすることができる。この場合には、樹脂存在部20が大きく重い場合などでも回転がしやすくなり、小さな力で行うことができる。
すなわち、図9、図10に示すように、引取部55から出てきた中間成形品11を、樹脂非存在部21で90°捻って、図11に示すように樹脂存在部20を90°回転させる。そして、90°回転した状態で樹脂存在部20を、樹脂非存在部21を中心として水平方向に回転させ、(図12)、樹脂存在部20を水平方向に向かって重ねるようにする(図13)。
【0046】
また、図4(b)のように、樹脂非存在部21での折り曲げの方向を交互に反対方向として樹脂存在部20をつづら折り状で重ねる方法では、図6に示されるように、捻ることなく上下方向に重ねるようにしても良く、また、上記したように、成形品貯留部56で90°捻り、樹脂存在部20を水平方向に回転させるようにしながら折り重ねることもできる。
つづら折り状で重ねる場合には巻き付ける方法とは異なり、樹脂非存在部21の必要な長さはいずれの位置でも短い。そのため、上記した巻くようにして重ねる方法とは異なり、樹脂非存在部21での折り曲げて樹脂存在部20の積み重ねを半永久的に続けることができるので、多くの樹脂存在部20がつながった状態で生産が可能である。そして、連続成形ライン50から別のラインに移動させ、さらに、必要な長さに切断して製造することができる。
【0047】
さらに、樹脂存在部20の長さが比較的短い場合、ドラムなどに巻き付けることもできる。すなわち、樹脂存在部20の長さに対して直径の長いドラムには、中間成形品11がドラムを一周する間に、多くの樹脂非存在部21によってドラムに沿うように曲げることができ、中間成形品11をドラムに巻き付けることができる。
【0048】
なお、上記の連続成形ライン1で、樹脂を含浸させるのに、噴霧ノズル60と含浸ロール61と揉み板62とによって行うものであり、樹脂の含浸を確実に行うために繊維に摩擦を与えるものであったが、他の方法でも良く、例えば、樹脂液をためた槽に繊維を通過させた後、余分な樹脂を搾り出して除去する方法や、束状の繊維に圧力を与えた樹脂を供給する圧入方法などを採用することができる。
【0049】
そして、連続成形ライン50で成形された中間成形品11を必要な長さに切断する。この切断は、両側に樹脂存在部20が配置されている樹脂非存在部21を設けるようにして切断する。この樹脂非存在部21は、1ヵ所でも良く、2ヵ所以上設けても良い。そして、図1に示す中間成形品11のように切断した後、樹脂非存在部21に液状の樹脂を含浸させ、当該樹脂を硬化させて後成形部21aの成形を行い、後成形部21aによって、樹脂非存在部21の両側の樹脂存在部20同士を固定し繊維補強樹脂成形品10を製造する。
【0050】
この樹脂非存在部21に樹脂を含浸させて硬化させて後成形部21aの成形を行う場合には、図2に示すように、樹脂非存在部21を囲むような金型40を配置し、金型40に
樹脂を入れて硬化させることができる。また、この場合、金型40を加熱して硬化を促進することができる。このように、金型40などの型を用いた場合には、外観を向上させることができる。なお、金型40などの型を用いずに樹脂非存在部21に樹脂を含浸させて硬化させることもできる。
さらに、繊維部21を引っ張りながら樹脂を硬化させることが推奨され、かかる場合には、後成形部21aの長手方向の曲げ性能や引っ張り性能を向上させることができる。
そして、図3に示すように、繊維補強樹脂成形品10が完成する。
【0051】
この樹脂非存在部21への樹脂の硬化作業は、繊維補強樹脂成形品10が用いられる場所で行うことが望ましい。すなわち、樹脂非存在部21の樹脂の硬化作業が終わると、樹脂非存在部21で曲げたりねじったりすることができなくなり、移動や保管がし難くなるからである。
また、樹脂非存在部21に含浸させて使用する樹脂は、連続成形ライン50に用いる樹脂と同じ種類の樹脂を用いても良いが、異なるものを用いても良い。
【0052】
また、樹脂非存在部21の樹脂の硬化作業を行うまでは、樹脂非存在部21で曲げたりねじったりすることにより、隣接する樹脂存在部20同士の位置関係に自由度がある。そのため、図3に示すように、樹脂存在部20同士を直線状に配置して直線状態で固定することもできるが、樹脂非存在部21で曲げやねじりを加えた状態で、樹脂非存在部21の樹脂の硬化作業を行うこともできる。
【0053】
具体的には、図14に示されるような繊維補強樹脂成形品10のように、樹脂存在部20同士の長手方向の関係が同一直線状でなく角度を持つ配置とし、全体を屈曲状態としても良い。さらに、図15に示されるような繊維補強樹脂成形品10のように、樹脂存在部20の長手方向を中心軸として相対回転させた配置であってねじれ状態としても良い。また、上記した状態以外であってもよく、例えば、図16に示されるような繊維補強樹脂成形品10のように、樹脂存在部20同士の長手方向が同一直線状でなく、平行にずれた配置としてもよい。
そして、樹脂非存在部21が2ヵ所以上有する場合には、樹脂存在部20同士の相対的な配置を組み合わせてもよい。例えば、図17に示される繊維補強樹脂成形品10では、一方の樹脂非存在部21で屈曲させた状態となっており、他方の樹脂非存在部21でねじられた状態となっている。
【0054】
また、後成形部21aの幅や厚みは、樹脂存在部20と異なってもよく、幅や厚みを大きくすることができる。さらに、後成形部21aの樹脂を樹脂存在部20の表面に配置して、後成形部21aと樹脂存在部20との境界の強度を向上させることもできる。
【0055】
なお、樹脂存在部20と樹脂非存在部21とを有する中間成形品11の製造は、上記の連続成形ライン50を用いる方法以外の方法を採用することができる。例えば、一定の長さの繊維部23を所定の方向に配向するように配置した状態で、部分的に樹脂を含浸させて含浸部70と非含浸部71を設け、含浸部70の樹脂を硬化させて、樹脂存在部20と樹脂非存在部21とを設ける。そして、このように製造された中間成形品11を用いて、上記した方法と同様な方法で、繊維補強樹脂成形品10を製造することができる。
【0056】
樹脂存在部20の長さは、特に限定されないが、10m以下が望ましく、かかる長さ以下であれば、製造時などの取り扱いや保管や運搬などを行いやすい。また、樹脂存在部20の長さは2m以上が望ましく、かかる長さよりも樹脂存在部20が長いと全体の長さが長い場合にも樹脂非存在部21の数をが少なくなり、作業しやすい。
【実施例】
【0057】
以下のようにして、繊維補強樹脂成形品10を製造した。
まず、中間成形品11を上記した連続成形ライン50を用いて製造した。
繊維部23は、ガラスロービング138000番手を用いて束状としたものを使用した。また、樹脂部22としてウレタン樹脂を用い、繊維部23に含浸させて含浸部70を形成するが、その含浸量は樹脂部22と繊維部23との長さ当たりの重量比で50:50となるようにする。
【0058】
また、樹脂液に発泡剤が添加されており、成形通路64内で発泡させながら成形する。そして、成形後の樹脂存在部20の比重は0.74となるように調整した。
【0059】
成形通路64の幅(横方向の長さ)は600mmであり、厚み(上下方向の長さ)は30mmであり、成形された中間成形品11の樹脂存在部20の幅、厚みも同様の長さとなっている。また、含浸部70の長さは約3000mmであり、非含浸部71の長さは約500mmであるので、樹脂存在部20の長さが約3000mm、樹脂非存在部21の長さが約500mmとなる。
【0060】
そして、連続成形ライン50の成形品貯留部56で成形された中間成形品11を巻き取り、また、所定の長さで切断する。
この巻き取りの方法は、引取部55から出てきた樹脂存在部20を厚み方向が水平方向となるように約90°回転させ、樹脂非存在部21を同じ方向に曲げて巻き取った。そして、5ヵ所の樹脂存在部20と、4ヵ所の樹脂非存在部21とを有する状態となるように中間成形品11を切断する。切断すると、1個の中間成形品11の長さは約17mとなる。
【0061】
この中間成形品11の切断までの工程は、工場などの製造現場で行う。そして、5ヵ所の樹脂存在部20と、4ヵ所の樹脂非存在部21とを有する状態の中間成形品11を使用現場に搬送する。
中間成形品11は、樹脂非存在部21で曲げることができるので、樹脂存在部20を重ねる状態として搬送することにより搬送が容易である。
【0062】
中間成形品11の樹脂非存在部21に、液状のウレタン樹脂を含浸させる。このウレタン樹脂は、連続成形ライン1で使用したものと同様のものを用いる。また、含浸させる量は、樹脂存在部20に使用される量の1.5倍であり、その含浸量は樹脂部22と繊維部23との長さ当たりの重量比で50:100となるようにする。
【0063】
樹脂液を含浸させた状態の樹脂非存在部21を、金型内に入れてウレタン樹脂を硬化させて後成形部21aの成形を行う。この金型の内形は樹脂存在部20の外形とほぼ同様であり、後成形部21aの成形がされると、長手方向に垂直方向の断面形状は樹脂存在部20とほぼ同じ形状となる。また、後成形部21aの成形の際には、この両側の樹脂存在部20を直線状となるように配置し、4ヵ所の後成形部21aの成形が終わると、5ヵ所全ての樹脂存在部20が直線状に並んだ状態になる。
【0064】
後成形部21aの成形の際には、金型を80℃に加熱して、ウレタン樹脂を発泡させつつ硬化させる。また、後成形部21aを成形した後で、後成形部21aの表面などにはみ出した樹脂など、サンダーなどで削り落とす。
このようにして、中間成形品11から繊維補強樹脂成形品10を製造することができる。
【0065】
また、後成形部21aの成形に用いる金型の内形の形状を変更し、この両側の樹脂存在部20の配置を変更して、上記とは異なる形状の繊維補強樹脂成形品10を製造した。
具体的には、図14に示される繊維補強樹脂成形品10では、樹脂非存在部21を挟む2ヵ所の樹脂存在部20を、長尺方向が傾斜する関係となっており、屈曲状態となっている。そして、この傾斜の角度は30°である。また、図15に示される繊維補強樹脂成形品10では、樹脂非存在部21を挟む2ヵ所の樹脂存在部20を、長尺方向を軸として回転させたねじれ状態となっている。そして、このねじれの回転角は90°である。
【0066】
このように、製造された繊維補強樹脂成形品10は製造が容易であり、後成形部21aも含めて全体に繊維部23が配置されているので強度が高い。
また、中間成形品11の製造を工場で行い、中間成形品11を使用現場に移動させて、この中間成形品11を用いて繊維補強樹脂成形品10を製造する。そして、このように製造することにより、移動や保管などは中間成形品11の状態ですることができ、樹脂非存在部21で曲げて樹脂存在部20を重ねる状態とすることにより移動や保管が容易であり、繊維補強樹脂成形品10が完成した状態では移動や保管をする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の中間成形品を示した斜視図である。
【図2】図1の中間成形品を用いて繊維補強樹脂成形品を製造する方法を示した斜視図である。
【図3】図1の中間成形品を用いて製造された繊維補強樹脂成形品を示す斜視図である。
【図4】(a)及び(b)は中間成形品の樹脂存在部を重ねた状態を示した正面図である。
【図5】(a)及び(b)は中間成形品の樹脂存在部を重ねた状態を示した斜視図である。
【図6】連続成形ラインを示した斜視図である。
【図7】連続成形ラインを示した模式図である。
【図8】(a)、(b)、(c)は、連続成形ラインで中間成形品を製造しながら、樹脂存在部を重ねる方法を横から見た模式図である。
【図9】、連続成形ラインで中間成形品を製造しながら、樹脂存在部を重ねる方法を示した模式図であり、(a)は横から見た図であり、(b)は上から見た図であり、(c)は斜視図である。
【図10】、連続成形ラインで中間成形品を製造しながら、樹脂存在部を重ねる方法を示した模式図であり、(a)は横から見た図であり、(b)は上から見た図であり、(c)は斜視図である。
【図11】、連続成形ラインで中間成形品を製造しながら、樹脂存在部を重ねる方法を示した模式図であり、(a)は横から見た図であり、(b)は上から見た図であり、(c)は斜視図である。
【図12】、連続成形ラインで中間成形品を製造しながら、樹脂存在部を重ねる方法を示した模式図であり、(a)は横から見た図であり、(b)は上から見た図であり、(c)は斜視図である。
【図13】、連続成形ラインで中間成形品を製造しながら、樹脂存在部を重ねる方法を示した模式図であり、(a)は横から見た図であり、(b)は上から見た図であり、(c)は斜視図である。
【図14】繊維補強樹脂成形品の変形例を示す斜視図である。
【図15】繊維補強樹脂成形品の変形例を示す斜視図である。
【図16】繊維補強樹脂成形品の変形例を示す斜視図である。
【図17】繊維補強樹脂成形品の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
10 繊維補強樹脂成形品
11 中間成形品
20 樹脂存在部
21 樹脂非存在部
64 成形通路
70 含浸部
71 非含浸部
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維補強樹脂成形品の製造方法、及び、繊維補強樹脂成形品の製造に用いる中間成形品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維で補強された樹脂を成形する方法の1つとして、長繊維に樹脂を含浸させて成形する方法がある。具体的には、長繊維を束状として引き揃え、これに未硬化の熱硬化性樹脂などの液状の樹脂を含浸させ、金型内で樹脂を硬化させて、連続的に繊維補強樹脂を成形することが行われている。そして、このような技術は特許文献1などに記載されている。
【特許文献1】特公昭48−36420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような繊維補強樹脂の製造方法では、繊維補強樹脂成形品を長尺状に連続的に製造できるので生産性に優れており、また、繊維が長尺方向に配向している高い強度を有する成形品を製造することができる。
そして、このような方法で製造された成形品は、材質が軟らかい場合など、全体を曲げることが可能なものについては巻き取るなどして、長尺状態で保管することができる。一方、材質が硬いものなどは製造直後に所定の長さに切断されている。特に、合成まくら木など、成形後の樹脂が硬く、成形品の断面が大きいものなどは曲げることが困難であるので、製造直後に所定の長さに切断している。
【0004】
そして、このような成形品の場合、切断後の成形品の長さは、一定以上の長さとすることができなかった。これは、切断後の長さを長くするほど製造ラインが長くなってしまい、また、長すぎるものは取り扱いや保管や輸送が困難となるからである。
【0005】
従って、限界の長さ以上のものが必要な場合は、複数の成形品を接着やボルトなどで接合して対応していた。しかし、このように複数の成形品を接合したものは、接合部分で繊維が分断されるので、接合部分の強度が低下してしまう。
【0006】
また、長繊維で補強された樹脂成形品は、直線状ではないものは連続的に製造が困難であり、例えば、「L」字状などに途中で屈曲した形状や、或いは、途中でねじれた形状のものは連続成形することが難しかった。
したがって、このようなものを製造するには、かかる形状の型を作成し、型内に長繊維を配置して樹脂を充填して製造したり、また、連続成形されたものを複数用意して接合して製造したりしていた。しかし、前者の方法では製造が難しく、後者の方法では接合部分の強度が低下してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、長繊維で補強された繊維補強樹脂成形品の製造方法であって、非常に長いものや、途中で屈曲したり、ねじれたりする形状であっても、製造しやすく、強度の高い成形品を製造できる繊維補強樹脂成形品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するための請求項1に記載の発明は、一定の長さの繊維を所定の方向に配向させた繊維部に部分的に樹脂を成形して形成されており、繊維部及び樹脂で構成される樹脂存在部と、繊維部のみで構成される樹脂非存在部とが設けられていることを特徴とする繊維補強樹脂成形品用の中間成形品である。
【0009】
請求項1に記載の中間成形品は、繊維部で曲げることにより保管や移動を邪魔にならずすることができ、また、樹脂非存在部に樹脂を含浸させるなどして後から成形することにより、かかる部分も繊維補強をすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の中間成形品の樹脂非存在部に液状の樹脂を含浸させ、当該樹脂を硬化させて行うことを特徴とする繊維補強樹脂成形品の製造方法である。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の中間成形品の樹脂非存在部に液状の樹脂を含浸させ、当該樹脂を硬化させて行うので、製造された繊維補強樹脂成形品の全域で繊維補強が可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、繊維からなる連続体に液状の樹脂を部分的に含浸させて含浸部と非含浸部とを設けながら、筒状の成形通路に連続的に供給し、前記成形通路内で含浸部の樹脂を硬化させて樹脂存在部を形成し、非含浸部に樹脂非存在部を設けながら成形を行うことを特徴とする繊維補強樹脂成形品用の中間成形品の製造方法である。
ここで、繊維からなる連続体とは、一方向に長いものであり、例えば、線状体、テープ状体などの形態を用いることができ、さらに、線状体を束ねたものや、繊維を用いたマットや織物状のものを用いることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、繊維からなる連続体に液状の樹脂を部分的に含浸させて含浸部と非含浸部とを設けて、樹脂存在部と樹脂非存在部とを設けながら連続的に成形を行うので成形が容易であり、また、この中間成形品を用いて繊維補強樹脂成形品の成形を行うことにより、長さが長い成形品を製造する場合でも製造がしやすく強度が高い成形品を製造することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、繊維からなる連続体は束状の長繊維を用いたものであることを特徴とする請求項2に記載の中間成形品の製造方法である。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、繊維からなる連続体は束状の長繊維を用いたものであるので、繊維補強樹脂成形品の長尺方向に配向した繊維を多くの配置することができるので、より強度を高くすることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の中間成形品の製造方法によって製造された中間成形品を、樹脂存在部に挟まれた樹脂非存在部を含んだ状態で切断し、樹脂非存在部に液状の樹脂を含浸させ、当該樹脂を硬化させて行うことを特徴とする繊維補強樹脂成形品の製造方法である。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、樹脂存在部に挟まれた樹脂非存在部を含んだ状態で中間成形品を切断し、樹脂非存在部に液状の樹脂を含浸させ、当該樹脂を硬化させて行うので、中間成形品を使用現場に搬送して、樹脂非存在部への樹脂の含浸及び硬化を使用現場行うことにより、長い繊維補強樹脂成形品の場合であっても、樹脂非存在部で折り曲げることができる中間成形品の状態で、搬送や保管を行うことができ、繊維補強樹脂成形品の製造を容易に行うことができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、一定の長さの繊維を所定の方向に配向させた状態で液状の樹脂を部分的に含浸させて含浸部と非含浸部とを設け、含浸部の樹脂を硬化させて樹脂存在部を形成し、非含浸部に樹脂非存在部を設けて中間成形品を形成し、さらに、前記樹脂非存在部に液状の樹脂を含浸させ、当該樹脂を硬化させて行うことを特徴とする繊維補強樹
脂成形品の製造方法である。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、繊維からなる連続体に液状の樹脂を部分的に含浸させて含浸部と非含浸部とを設けて、樹脂存在部と樹脂非存在部とを設けながら中間成形品の成形を行い、この中間成形品を用いて繊維補強樹脂成形品の成形を行うので、長さが長い成形品を製造する場合でも製造がしやすく強度が高い成形品を製造することができる。
【0020】
また、樹脂非存在部に樹脂を含浸させて硬化させる場合に、樹脂非存在部を挟む2ヵ所の樹脂存在部を、直線状に配置した状態で行うことができる(請求項7)。
【0021】
さらに、樹脂非存在部に樹脂を含浸させて硬化させる場合に、樹脂非存在部を挟む2ヵ所の樹脂存在部を、屈曲する関係となるように配置した状態で行うことができる(請求項8)。ここで、屈曲する関係となる配置とは、2ヵ所の樹脂存在部の長尺方向が傾斜する関係となるような配置を意味するものである。
【0022】
そして、樹脂非存在部に樹脂を含浸させて硬化させる場合に、樹脂非存在部を挟む2ヵ所の樹脂存在部を、ねじれの関係となるように配置した状態で行うことができる(請求項9)。ここで、ねじれの関係となる配置とは、2ヵ所の樹脂存在部の長尺方向を軸として相対回転させた関係となるような配置を意味するものである。
【0023】
また、樹脂非存在部が2ヵ所以上あって、樹脂非存在部に樹脂を含浸させて硬化させる場合に、樹脂非存在部を挟む2ヵ所の樹脂存在部の位置関係を、直線状に配置、屈曲する関係となる配置、ねじれの関係となる配置の少なくとも2種類の配置を含んだ状態で行うことができる(請求項10)。
【0024】
請求項11に記載の発明は、樹脂存在部と樹脂非存在部とを有する中間成形品を製造現場で製造する工程と、繊維補強樹脂成形品を使用する使用現場で樹脂非存在部に樹脂を含浸させる工程を有することを特徴とする請求項2、5〜10のいずれかに記載の繊維補強樹脂成形品の製造方法である。
【0025】
請求項9に記載の発明によれば、樹脂存在部と樹脂非存在部とを有する中間成形品を製造現場で製造する工程と、繊維補強樹脂成形品を使用する使用現場で樹脂非存在部に樹脂を含浸させる工程を有しており、中間成形品を製造する場所と、この中間成形品を用いて繊維補強樹脂成形品を製造する場所は別の場所であって、中間成形品を搬送させて繊維補強樹脂成形品を製造するので、繊維補強樹脂成形品が搬送しにくい大きなものの場合にも、容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の繊維補強樹脂成形品の製造方法によれば、非常に長いものや、途中で屈曲したり、ねじれたりする形状であっても、製造しやすく、強度の高い成形品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下さらに本発明の具体的実施例について説明する。
図1は、本発明の中間成形品を示した斜視図である。図2は、図1の中間成形品を用いて繊維補強樹脂成形品を製造する方法を示した斜視図である。図3は、図1の中間成形品を用いて製造された繊維補強樹脂成形品を示す斜視図である。図4は中間成形品の樹脂存在部を重ねた状態を示した正面図である。図5は中間成形品の樹脂存在部を重ねた状態を示した斜視図である。図6は連続成形ラインを示した斜視図である。図7は連続成形ラインを示した模式図である。図8は、連続成形ラインで中間成形品を製造しながら、樹脂存
在部を重ねる方法を横から見た模式図である。図9〜図13は、連続成形ラインで中間成形品を製造しながら、樹脂存在部を重ねる方法を示した模式図であり、(a)は横から見た図であり、(b)は上から見た図であり、(c)は斜視図である。図14〜図17は、繊維補強樹脂成形品の変形例を示す斜視図である。
なお、図4の樹脂存在部に付した番号は重ねる順番を示している。
【0028】
本発明の繊維補強樹脂成形品10は中間成形品11を用いて製造される。そして、この中間成形品11は、図1に示されるように、樹脂存在部20と樹脂非存在部21とが交互に配置している。そして、樹脂存在部20は長尺状であり、更に詳しくは所定の厚みと幅を有する角柱状であり、樹脂部22と繊維部23とによって構成されている。また、樹脂非存在部21は繊維部23のみにより構成されている。
【0029】
また、繊維部23は連続体を用いて製造され、繊維部23は中間成形品11の全域に設けられており、全ての樹脂存在部20及び樹脂非存在部21に繊維部23が連続的に配置されている。
【0030】
樹脂非存在部21は樹脂部22が存在しておらず繊維部23のみであるので、かかる部分で曲げることができる。そして、図4に示すように、樹脂非存在部21で曲げることにより樹脂存在部20を積み重ねるような状態にすることができる。
【0031】
樹脂部22の材質は特に限定されないが、後述するように液状の樹脂を含浸させて、その後硬化する方法で製造されるので、熱硬化性の樹脂や、液状の原料を反応させて硬化させる樹脂などが望ましく、例えば、ウレタン樹脂やポリエステル樹脂やエポキシ樹脂やフェノール樹脂やウレア樹脂などを採用することができる。
また、樹脂部22は、成形時に発泡させた発泡樹脂であっても、発泡させない無発泡樹脂であってもよい。
【0032】
また、樹脂部22に樹脂以外のものを添加することができる。この添加するものの例としては、珪砂や樹脂の切粉などの無機、有機の固体充填材がある。
【0033】
繊維部23の種類は、特に問わないが、例えば、ガラス繊維やカーボン繊維や有機繊維などを用いることができ、コストと強度のバランスの良さからガラス繊維が好適である。また、繊維部23の形態は、一方向に長い連続体であればどのようなものでも良く、モノフィラメント、マルチフィラメントなどの線状体を束ねたものや、マット状にしたものや織物状に織ったもの等のように所定の幅を持つものを用いることができる。
【0034】
このような中間成形品11は、図6、図7に示されるような連続成形ライン50を用いて製造される。連続成形ライン50には、繊維供給工程51、樹脂含浸工程52、成形工程53、引取部55を有している。
そして、繊維供給工程51から引取部55へ向かって進むように連続的に繊維部23を供給し、引取部55に引き取られて出来上がった中間成形品11が出てくる。なお、連続成形ライン50を示した図6、図7においては、左から右へと工程が進む。
【0035】
繊維供給工程51は、繊維部23となる繊維を連続的に供給する部分であり、図示は省略しているが、ガラス長繊維をボビンなどに巻きつけておき、これから繰り出して供給される。また、繊維供給工程51には、複数本のガラス長繊維が束状に供給され、このガラス長繊維は樹脂含浸工程52へと進む。
【0036】
樹脂含浸工程52には、噴霧ノズル60と含浸ロール61と揉み板62を有している。そして、噴霧ノズル60から樹脂液を繊維部23に向けて噴霧し、その後、含浸ロール6
1を通過させて揉み板62で揉むことにより、樹脂液を全体に均一に行き渡るようにする。
【0037】
また、この樹脂含浸工程52による樹脂液の噴霧は、断続的に行われいる。そして、図7に示されるように、繊維部23に樹脂液を付着させた部分である含浸部70と、繊維部23に樹脂液を含浸させない非含浸部71とを設けるようにしながら行われる。
この含浸部70や非含浸部71の間隔は、後述する樹脂存在部20や樹脂非存在部21に合わせている。
【0038】
そして、含浸部70と非含浸部71とが設けられた繊維部23は、成形工程53に供給される。成形工程53は、4つの無端ベルト63、64、65、66を有しており、この4つの無端ベルト63、64、65、66の内側に成形通路68が形成される。無端ベルト63、64、65、66の表面は平面状であり、成形通路68の断面形状はほぼ長方形状となっており、樹脂存在部20の断面形状に合わせている。また、上下の無端ベルト63、64は左右の無端ベルト65、66よりも幅広であり、樹脂存在部20の断面形状は上下の幅(厚み)より横方向の幅の長さの方が長い。
【0039】
成形の際には無端ベルト63、64、65、66が作動する。そして、無端ベルト63、64、65、66が作動したときの内側の進行方向及び速度は、繊維部23の進行方向及び速度と同じである。したがって、無端ベルト63、64、65、66と、成形途中の樹脂との間の摩擦を小さくすることができる。
【0040】
また、無端ベルト63、64、65、66によって形成される成形通路68は、樹脂液が硬化に必要な程度に加熱されている。そして、含浸部70で含浸された樹脂は、成形通路68内で硬化して樹脂存在部20となり、非含浸部71では樹脂が含浸されないので、樹脂非存在部21となる。樹脂非存在部21は繊維部23のみであり、変形が容易な状態となっている。
【0041】
成形通路68を通過して硬化した樹脂は、引取部55によって引き取られて、引取部55から、樹脂存在部20と樹脂非存在部21とが交互に形成された中間成形品11が排出される。
引取部55では、上側ベルト55aと下側ベルト55bが設けられており、樹脂存在部20が上側ベルト55aと下側ベルト55bとの間に挟まれた状態で作動することにより、中間成形品11の引き取りが行われる。
【0042】
そして、引取部55から出てきた中間成形品11は、樹脂非存在部21で曲げて、樹脂存在部20を図4に示すように重ねるようにする。なお、図4の樹脂存在部に付した番号は重ねる順番を示している。
樹脂存在部20を重ねるには、また、図4(a)に示されるように、樹脂非存在部21で折り曲げの方向を同じ方向として樹脂存在部20を巻くようにして重ねる方法と、図4(b)に示されるように、樹脂非存在部21での折り曲げの方向を交互に反対方向として、樹脂存在部20をつづら折り状で重ねる方法がある。
【0043】
樹脂存在部20を巻くようにして重ねる方法では、外側ほど樹脂非存在部21の必要な長さが長くなるので、樹脂存在部20の重ねる枚数に限界がある。そのため、中間成形品11を成形しながら適当な枚数で切断される。
【0044】
また、図4(b)のように、樹脂非存在部21で折り曲げて樹脂存在部20を重ねる方向は、図5(a)に示すように樹脂存在部20の幅が短い側を重ねるように折り曲げる方が、図5(b)に示すように樹脂存在部20の幅が長い側を重ねるように折り曲げるより
も、樹脂非存在部21の繊維部23の変形が緩やかになるので折り曲げやすい。そのため、中間成形品11の上下の幅(厚み)の方が横方向の幅よりも短い本実施形態の連続成形ライン50では、樹脂非存在部21を支点として樹脂存在部20を上側又は下側へ向かって回転させるようにしなければならない。そして、特に樹脂存在部20が長い場合には地面などに接触するので、図8(a)、(b)、(c)に示されるように、上側へ向かって回転させながら樹脂存在部20を重ねることとなる。
【0045】
そこで、図9〜図13に示されるように、引取部55から出てきた中間成形品11を90°捻ることにより、樹脂存在部20を水平方向に回転させるようにして巻き付けるようにすることができる。この場合には、樹脂存在部20が大きく重い場合などでも回転がしやすくなり、小さな力で行うことができる。
すなわち、図9、図10に示すように、引取部55から出てきた中間成形品11を、樹脂非存在部21で90°捻って、図11に示すように樹脂存在部20を90°回転させる。そして、90°回転した状態で樹脂存在部20を、樹脂非存在部21を中心として水平方向に回転させ、(図12)、樹脂存在部20を水平方向に向かって重ねるようにする(図13)。
【0046】
また、図4(b)のように、樹脂非存在部21での折り曲げの方向を交互に反対方向として樹脂存在部20をつづら折り状で重ねる方法では、図6に示されるように、捻ることなく上下方向に重ねるようにしても良く、また、上記したように、成形品貯留部56で90°捻り、樹脂存在部20を水平方向に回転させるようにしながら折り重ねることもできる。
つづら折り状で重ねる場合には巻き付ける方法とは異なり、樹脂非存在部21の必要な長さはいずれの位置でも短い。そのため、上記した巻くようにして重ねる方法とは異なり、樹脂非存在部21での折り曲げて樹脂存在部20の積み重ねを半永久的に続けることができるので、多くの樹脂存在部20がつながった状態で生産が可能である。そして、連続成形ライン50から別のラインに移動させ、さらに、必要な長さに切断して製造することができる。
【0047】
さらに、樹脂存在部20の長さが比較的短い場合、ドラムなどに巻き付けることもできる。すなわち、樹脂存在部20の長さに対して直径の長いドラムには、中間成形品11がドラムを一周する間に、多くの樹脂非存在部21によってドラムに沿うように曲げることができ、中間成形品11をドラムに巻き付けることができる。
【0048】
なお、上記の連続成形ライン1で、樹脂を含浸させるのに、噴霧ノズル60と含浸ロール61と揉み板62とによって行うものであり、樹脂の含浸を確実に行うために繊維に摩擦を与えるものであったが、他の方法でも良く、例えば、樹脂液をためた槽に繊維を通過させた後、余分な樹脂を搾り出して除去する方法や、束状の繊維に圧力を与えた樹脂を供給する圧入方法などを採用することができる。
【0049】
そして、連続成形ライン50で成形された中間成形品11を必要な長さに切断する。この切断は、両側に樹脂存在部20が配置されている樹脂非存在部21を設けるようにして切断する。この樹脂非存在部21は、1ヵ所でも良く、2ヵ所以上設けても良い。そして、図1に示す中間成形品11のように切断した後、樹脂非存在部21に液状の樹脂を含浸させ、当該樹脂を硬化させて後成形部21aの成形を行い、後成形部21aによって、樹脂非存在部21の両側の樹脂存在部20同士を固定し繊維補強樹脂成形品10を製造する。
【0050】
この樹脂非存在部21に樹脂を含浸させて硬化させて後成形部21aの成形を行う場合には、図2に示すように、樹脂非存在部21を囲むような金型40を配置し、金型40に
樹脂を入れて硬化させることができる。また、この場合、金型40を加熱して硬化を促進することができる。このように、金型40などの型を用いた場合には、外観を向上させることができる。なお、金型40などの型を用いずに樹脂非存在部21に樹脂を含浸させて硬化させることもできる。
さらに、繊維部21を引っ張りながら樹脂を硬化させることが推奨され、かかる場合には、後成形部21aの長手方向の曲げ性能や引っ張り性能を向上させることができる。
そして、図3に示すように、繊維補強樹脂成形品10が完成する。
【0051】
この樹脂非存在部21への樹脂の硬化作業は、繊維補強樹脂成形品10が用いられる場所で行うことが望ましい。すなわち、樹脂非存在部21の樹脂の硬化作業が終わると、樹脂非存在部21で曲げたりねじったりすることができなくなり、移動や保管がし難くなるからである。
また、樹脂非存在部21に含浸させて使用する樹脂は、連続成形ライン50に用いる樹脂と同じ種類の樹脂を用いても良いが、異なるものを用いても良い。
【0052】
また、樹脂非存在部21の樹脂の硬化作業を行うまでは、樹脂非存在部21で曲げたりねじったりすることにより、隣接する樹脂存在部20同士の位置関係に自由度がある。そのため、図3に示すように、樹脂存在部20同士を直線状に配置して直線状態で固定することもできるが、樹脂非存在部21で曲げやねじりを加えた状態で、樹脂非存在部21の樹脂の硬化作業を行うこともできる。
【0053】
具体的には、図14に示されるような繊維補強樹脂成形品10のように、樹脂存在部20同士の長手方向の関係が同一直線状でなく角度を持つ配置とし、全体を屈曲状態としても良い。さらに、図15に示されるような繊維補強樹脂成形品10のように、樹脂存在部20の長手方向を中心軸として相対回転させた配置であってねじれ状態としても良い。また、上記した状態以外であってもよく、例えば、図16に示されるような繊維補強樹脂成形品10のように、樹脂存在部20同士の長手方向が同一直線状でなく、平行にずれた配置としてもよい。
そして、樹脂非存在部21が2ヵ所以上有する場合には、樹脂存在部20同士の相対的な配置を組み合わせてもよい。例えば、図17に示される繊維補強樹脂成形品10では、一方の樹脂非存在部21で屈曲させた状態となっており、他方の樹脂非存在部21でねじられた状態となっている。
【0054】
また、後成形部21aの幅や厚みは、樹脂存在部20と異なってもよく、幅や厚みを大きくすることができる。さらに、後成形部21aの樹脂を樹脂存在部20の表面に配置して、後成形部21aと樹脂存在部20との境界の強度を向上させることもできる。
【0055】
なお、樹脂存在部20と樹脂非存在部21とを有する中間成形品11の製造は、上記の連続成形ライン50を用いる方法以外の方法を採用することができる。例えば、一定の長さの繊維部23を所定の方向に配向するように配置した状態で、部分的に樹脂を含浸させて含浸部70と非含浸部71を設け、含浸部70の樹脂を硬化させて、樹脂存在部20と樹脂非存在部21とを設ける。そして、このように製造された中間成形品11を用いて、上記した方法と同様な方法で、繊維補強樹脂成形品10を製造することができる。
【0056】
樹脂存在部20の長さは、特に限定されないが、10m以下が望ましく、かかる長さ以下であれば、製造時などの取り扱いや保管や運搬などを行いやすい。また、樹脂存在部20の長さは2m以上が望ましく、かかる長さよりも樹脂存在部20が長いと全体の長さが長い場合にも樹脂非存在部21の数をが少なくなり、作業しやすい。
【実施例】
【0057】
以下のようにして、繊維補強樹脂成形品10を製造した。
まず、中間成形品11を上記した連続成形ライン50を用いて製造した。
繊維部23は、ガラスロービング138000番手を用いて束状としたものを使用した。また、樹脂部22としてウレタン樹脂を用い、繊維部23に含浸させて含浸部70を形成するが、その含浸量は樹脂部22と繊維部23との長さ当たりの重量比で50:50となるようにする。
【0058】
また、樹脂液に発泡剤が添加されており、成形通路64内で発泡させながら成形する。そして、成形後の樹脂存在部20の比重は0.74となるように調整した。
【0059】
成形通路64の幅(横方向の長さ)は600mmであり、厚み(上下方向の長さ)は30mmであり、成形された中間成形品11の樹脂存在部20の幅、厚みも同様の長さとなっている。また、含浸部70の長さは約3000mmであり、非含浸部71の長さは約500mmであるので、樹脂存在部20の長さが約3000mm、樹脂非存在部21の長さが約500mmとなる。
【0060】
そして、連続成形ライン50の成形品貯留部56で成形された中間成形品11を巻き取り、また、所定の長さで切断する。
この巻き取りの方法は、引取部55から出てきた樹脂存在部20を厚み方向が水平方向となるように約90°回転させ、樹脂非存在部21を同じ方向に曲げて巻き取った。そして、5ヵ所の樹脂存在部20と、4ヵ所の樹脂非存在部21とを有する状態となるように中間成形品11を切断する。切断すると、1個の中間成形品11の長さは約17mとなる。
【0061】
この中間成形品11の切断までの工程は、工場などの製造現場で行う。そして、5ヵ所の樹脂存在部20と、4ヵ所の樹脂非存在部21とを有する状態の中間成形品11を使用現場に搬送する。
中間成形品11は、樹脂非存在部21で曲げることができるので、樹脂存在部20を重ねる状態として搬送することにより搬送が容易である。
【0062】
中間成形品11の樹脂非存在部21に、液状のウレタン樹脂を含浸させる。このウレタン樹脂は、連続成形ライン1で使用したものと同様のものを用いる。また、含浸させる量は、樹脂存在部20に使用される量の1.5倍であり、その含浸量は樹脂部22と繊維部23との長さ当たりの重量比で50:100となるようにする。
【0063】
樹脂液を含浸させた状態の樹脂非存在部21を、金型内に入れてウレタン樹脂を硬化させて後成形部21aの成形を行う。この金型の内形は樹脂存在部20の外形とほぼ同様であり、後成形部21aの成形がされると、長手方向に垂直方向の断面形状は樹脂存在部20とほぼ同じ形状となる。また、後成形部21aの成形の際には、この両側の樹脂存在部20を直線状となるように配置し、4ヵ所の後成形部21aの成形が終わると、5ヵ所全ての樹脂存在部20が直線状に並んだ状態になる。
【0064】
後成形部21aの成形の際には、金型を80℃に加熱して、ウレタン樹脂を発泡させつつ硬化させる。また、後成形部21aを成形した後で、後成形部21aの表面などにはみ出した樹脂など、サンダーなどで削り落とす。
このようにして、中間成形品11から繊維補強樹脂成形品10を製造することができる。
【0065】
また、後成形部21aの成形に用いる金型の内形の形状を変更し、この両側の樹脂存在部20の配置を変更して、上記とは異なる形状の繊維補強樹脂成形品10を製造した。
具体的には、図14に示される繊維補強樹脂成形品10では、樹脂非存在部21を挟む2ヵ所の樹脂存在部20を、長尺方向が傾斜する関係となっており、屈曲状態となっている。そして、この傾斜の角度は30°である。また、図15に示される繊維補強樹脂成形品10では、樹脂非存在部21を挟む2ヵ所の樹脂存在部20を、長尺方向を軸として回転させたねじれ状態となっている。そして、このねじれの回転角は90°である。
【0066】
このように、製造された繊維補強樹脂成形品10は製造が容易であり、後成形部21aも含めて全体に繊維部23が配置されているので強度が高い。
また、中間成形品11の製造を工場で行い、中間成形品11を使用現場に移動させて、この中間成形品11を用いて繊維補強樹脂成形品10を製造する。そして、このように製造することにより、移動や保管などは中間成形品11の状態ですることができ、樹脂非存在部21で曲げて樹脂存在部20を重ねる状態とすることにより移動や保管が容易であり、繊維補強樹脂成形品10が完成した状態では移動や保管をする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の中間成形品を示した斜視図である。
【図2】図1の中間成形品を用いて繊維補強樹脂成形品を製造する方法を示した斜視図である。
【図3】図1の中間成形品を用いて製造された繊維補強樹脂成形品を示す斜視図である。
【図4】(a)及び(b)は中間成形品の樹脂存在部を重ねた状態を示した正面図である。
【図5】(a)及び(b)は中間成形品の樹脂存在部を重ねた状態を示した斜視図である。
【図6】連続成形ラインを示した斜視図である。
【図7】連続成形ラインを示した模式図である。
【図8】(a)、(b)、(c)は、連続成形ラインで中間成形品を製造しながら、樹脂存在部を重ねる方法を横から見た模式図である。
【図9】、連続成形ラインで中間成形品を製造しながら、樹脂存在部を重ねる方法を示した模式図であり、(a)は横から見た図であり、(b)は上から見た図であり、(c)は斜視図である。
【図10】、連続成形ラインで中間成形品を製造しながら、樹脂存在部を重ねる方法を示した模式図であり、(a)は横から見た図であり、(b)は上から見た図であり、(c)は斜視図である。
【図11】、連続成形ラインで中間成形品を製造しながら、樹脂存在部を重ねる方法を示した模式図であり、(a)は横から見た図であり、(b)は上から見た図であり、(c)は斜視図である。
【図12】、連続成形ラインで中間成形品を製造しながら、樹脂存在部を重ねる方法を示した模式図であり、(a)は横から見た図であり、(b)は上から見た図であり、(c)は斜視図である。
【図13】、連続成形ラインで中間成形品を製造しながら、樹脂存在部を重ねる方法を示した模式図であり、(a)は横から見た図であり、(b)は上から見た図であり、(c)は斜視図である。
【図14】繊維補強樹脂成形品の変形例を示す斜視図である。
【図15】繊維補強樹脂成形品の変形例を示す斜視図である。
【図16】繊維補強樹脂成形品の変形例を示す斜視図である。
【図17】繊維補強樹脂成形品の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
10 繊維補強樹脂成形品
11 中間成形品
20 樹脂存在部
21 樹脂非存在部
64 成形通路
70 含浸部
71 非含浸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の長さの繊維を所定の方向に配向させた繊維部に部分的に樹脂を成形して形成されており、繊維部及び樹脂で構成される樹脂存在部と、繊維部のみで構成される樹脂非存在部とが設けられていることを特徴とする繊維補強樹脂成形品用の中間成形品。
【請求項2】
請求項1に記載の中間成形品の樹脂非存在部に液状の樹脂を含浸させ、当該樹脂を硬化させて行うことを特徴とする繊維補強樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
繊維からなる連続体に液状の樹脂を部分的に含浸させて含浸部と非含浸部とを設けながら、筒状の成形通路に連続的に供給し、前記成形通路内で含浸部の樹脂を硬化させて樹脂存在部を形成し、非含浸部に樹脂非存在部を設けながら成形を行うことを特徴とする繊維補強樹脂成形品用の中間成形品の製造方法。
【請求項4】
繊維からなる連続体は束状の長繊維を用いたものであることを特徴とする請求項3に記載の中間成形品の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の中間成形品の製造方法によって製造された中間成形品を、樹脂存在部に挟まれた樹脂非存在部を含んだ状態で切断し、樹脂非存在部に液状の樹脂を含浸させ、当該樹脂を硬化させて行うことを特徴とする繊維補強樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
一定の長さの繊維を所定の方向に配向させた状態で液状の樹脂を部分的に含浸させて含浸部と非含浸部とを設け、含浸部の樹脂を硬化させて樹脂存在部を形成し、非含浸部に樹脂非存在部を設けて中間成形品を形成し、さらに、前記樹脂非存在部に液状の樹脂を含浸させ、当該樹脂を硬化させて行うことを特徴とする繊維補強樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
樹脂存在部は長尺状に成形されており、樹脂非存在部を挟む2ヵ所の樹脂存在部を、直線状に配置した状態で、前記樹脂非存在部に含浸された樹脂を硬化させることを特徴とする請求項2、5、6のいずれかに記載の繊維補強樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
樹脂存在部は長尺状に成形されており、樹脂非存在部を挟む2ヵ所の樹脂存在部を、屈曲する関係となるように配置した状態で、前記樹脂非存在部に含浸された樹脂を硬化させることを特徴とする請求項2、5、6のいずれかに記載の繊維補強樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
樹脂存在部は長尺状に成形されており、樹脂非存在部を挟む2ヵ所の樹脂存在部を、ねじれの関係となるように配置した状態で、前記樹脂非存在部に含浸された樹脂を硬化させることを特徴とする請求項2、5、6のいずれかに記載の繊維補強樹脂成形品の製造方法。
【請求項10】
樹脂存在部は長尺状に成形されており、樹脂存在部に挟まれた樹脂非存在部は少なくとも2ヵ所有し、樹脂非存在部を挟む2ヵ所の樹脂存在部の位置関係を、直線状に配置、屈曲する関係となる配置、ねじれの関係となる配置の少なくとも2種類の配置を含んだ状態で、前記樹脂非存在部に含浸された樹脂を硬化させることを特徴とする請求項2、5、6のいずれかに記載の繊維補強樹脂成形品の製造方法。
【請求項11】
樹脂存在部と樹脂非存在部とを有する中間成形品を製造現場で製造する工程と、繊維補強樹脂成形品を使用する使用現場で樹脂非存在部に樹脂を含浸させる工程を有することを特徴とする請求項2、5〜10のいずれかに記載の繊維補強樹脂成形品の製造方法。
【請求項1】
一定の長さの繊維を所定の方向に配向させた繊維部に部分的に樹脂を成形して形成されており、繊維部及び樹脂で構成される樹脂存在部と、繊維部のみで構成される樹脂非存在部とが設けられていることを特徴とする繊維補強樹脂成形品用の中間成形品。
【請求項2】
請求項1に記載の中間成形品の樹脂非存在部に液状の樹脂を含浸させ、当該樹脂を硬化させて行うことを特徴とする繊維補強樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
繊維からなる連続体に液状の樹脂を部分的に含浸させて含浸部と非含浸部とを設けながら、筒状の成形通路に連続的に供給し、前記成形通路内で含浸部の樹脂を硬化させて樹脂存在部を形成し、非含浸部に樹脂非存在部を設けながら成形を行うことを特徴とする繊維補強樹脂成形品用の中間成形品の製造方法。
【請求項4】
繊維からなる連続体は束状の長繊維を用いたものであることを特徴とする請求項3に記載の中間成形品の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の中間成形品の製造方法によって製造された中間成形品を、樹脂存在部に挟まれた樹脂非存在部を含んだ状態で切断し、樹脂非存在部に液状の樹脂を含浸させ、当該樹脂を硬化させて行うことを特徴とする繊維補強樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
一定の長さの繊維を所定の方向に配向させた状態で液状の樹脂を部分的に含浸させて含浸部と非含浸部とを設け、含浸部の樹脂を硬化させて樹脂存在部を形成し、非含浸部に樹脂非存在部を設けて中間成形品を形成し、さらに、前記樹脂非存在部に液状の樹脂を含浸させ、当該樹脂を硬化させて行うことを特徴とする繊維補強樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
樹脂存在部は長尺状に成形されており、樹脂非存在部を挟む2ヵ所の樹脂存在部を、直線状に配置した状態で、前記樹脂非存在部に含浸された樹脂を硬化させることを特徴とする請求項2、5、6のいずれかに記載の繊維補強樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
樹脂存在部は長尺状に成形されており、樹脂非存在部を挟む2ヵ所の樹脂存在部を、屈曲する関係となるように配置した状態で、前記樹脂非存在部に含浸された樹脂を硬化させることを特徴とする請求項2、5、6のいずれかに記載の繊維補強樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
樹脂存在部は長尺状に成形されており、樹脂非存在部を挟む2ヵ所の樹脂存在部を、ねじれの関係となるように配置した状態で、前記樹脂非存在部に含浸された樹脂を硬化させることを特徴とする請求項2、5、6のいずれかに記載の繊維補強樹脂成形品の製造方法。
【請求項10】
樹脂存在部は長尺状に成形されており、樹脂存在部に挟まれた樹脂非存在部は少なくとも2ヵ所有し、樹脂非存在部を挟む2ヵ所の樹脂存在部の位置関係を、直線状に配置、屈曲する関係となる配置、ねじれの関係となる配置の少なくとも2種類の配置を含んだ状態で、前記樹脂非存在部に含浸された樹脂を硬化させることを特徴とする請求項2、5、6のいずれかに記載の繊維補強樹脂成形品の製造方法。
【請求項11】
樹脂存在部と樹脂非存在部とを有する中間成形品を製造現場で製造する工程と、繊維補強樹脂成形品を使用する使用現場で樹脂非存在部に樹脂を含浸させる工程を有することを特徴とする請求項2、5〜10のいずれかに記載の繊維補強樹脂成形品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−205519(P2006−205519A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19984(P2005−19984)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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