説明

織物を印刷するための混合物および方法

本発明は織物を印刷する方法およびこのための混合物に関し、前記混合物が以下のものを含有する:少なくとも1種の顔料、オキシアルキル化線状または分枝状アルカン、脂肪酸または脂肪アルコールおよび/またはアルキルスルフェートまたはアルキルスルホネートおよび/またはポリ電解質および/またはアルキル化および/またはアリール化グリコシドをベースとする少なくとも1種の分散剤、2000g/モルより大きい分子量および少なくとも1個のウレタン基または尿素基により結合剤分子と結合している、結合剤分子当たり少なくとも2個の重合可能な基を有する少なくとも1種の水溶性または水で希釈可能な放射線硬化可能な結合剤、水。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は織物を印刷するための混合物および方法に関する。
【0002】
織物を印刷する一般的な方法はインクジェット印刷およびスクリーン印刷である。
【0003】
インクジェット印刷はコンピュータ技術の急速な発展により広く普及し、個人的な分野で多くは紙に着色画像を製造するために利用される。織物印刷においてもこの新しい技術が導入され、現在小さい大きさの模様付けおよび製造に有利に使用される。現在市場で優勢なインクジェット印刷装置は180〜720dpiの印刷解像度を供給し、反応染料、酸性染料、分散染料または顔料の染料の品目からの4〜16の基本色を使用して運転される。その際特に顔料の印刷に種々の基材への広い使用可能性のためにきわめて重要な、中心的意義が生じる。印刷の解像度に応じて現在150m/hまでの印刷速度が可能であり、この速度はきわめて短い準備時間により小さい大きさの模様付けおよび製造に十分である。
【0004】
インクジェット印刷により高価な着色された織物のきわめて柔軟な製造が可能であると思われるにもかかわらず、従来の定着法はこの技術の出現に関して限定する要因を有する。一般的な定着装置、例えば蒸発機および乾燥定着装置はその大きさによりこの革新的な印刷法に任意に適合することができず、これによりインクジェット印刷の利点が部分的に再び消失する。この場合に定着がオフラインで別の作業工程で行わなければならないことが特に不利である。織物の印刷にインクジェットプリンターを使用する公知の装置において、蒸発機の形の定着装置を使用し、前記定着装置はインクジェットプリンターの直後に接続され、熱空気または飽和蒸気による印刷パターンの熱オンライン定着を多少とも可能にする。この場合の欠点は、印刷パターンを完成するために、織物を最後の作業工程で更に洗浄して前処理化学物質および定着していない染料部分を除去しなければならないことである。この後処理は公知方法により洗浄装置および乾燥機を使用して行う。オンライン法でのインクジェット印刷パターンの製造は現在までなお実現されてなく、従って依然としてインクジェット法の後の個々の印刷パターンの柔軟な製造の際に限定する要因である。従って強いUV光源の使用により実現できる、小さい寸法できわめて柔軟に使用される定着装置を使用する可能性が要求される。しかしこれは適当なUV硬化性印刷インクの開発および使用を前提とする。
【0005】
インクジェット法のインクは多くの個々の要求を満たさなければならない。印刷インクの製造の際に特に粘度および表面張力が決定的な役割を果たす。使用できるインクジェットインクは6mPas未満の水に類似するインク粘度を有し、20〜50mN/mの表面張力を有する。ノズルでのインクの乾燥を避けるために、更に吸湿性添加剤、例えばエチレングリコール、尿素、またはグリセリンをインクに添加しなければならない。更にインク中の電解質含量(塩)は印刷ヘッドの起こりうる腐食のためにできるだけ少なく維持される。ノズルの閉塞を避けるために(ノズル直径20μm未満)、1μm未満の粒度が必要である。印刷インクのこの周辺条件は印刷ヘッドの種類により決定され、きわめて狭い範囲にある。顔料の染料の場合は一般的な使用濃度は多くの場合に2%にすぎないが、それは結合剤の存在によりインクの粘度が著しく高くなることがあるからである。増加する結合剤の割合と増加する顔料の割合とともにインクの粘度が部分的にきわめて激しく増加し、これによりインクの印刷能力が劣化し、または不可能になる。従って現在は主に結合剤を添加しないで純粋な顔料インクを使用し、その際印刷された材料を別に浸漬含浸することにより結合剤を塗装し、印刷された織物を引き続き別の作業工程で熱により定着する。
【0006】
インクジェット印刷およびスクリーン印刷のためにすでに多くのUV硬化性系が販売されるが、これらは多くは100%系として存在し、低粘性の多くは毒性のある反応希釈剤の添加により必要な粘度水準に調整しなければならない。その際100%系の用語は織物に被覆する際に完全に、すなわち100%定着して硬化する系であるという意味である。これらの系は使用されるモノマーの皮膚の反応性作用および毒性の可能性のために織物の使用のための硬化した印刷パターン中の反応しない残留モノマーとして許容されない。このために、これらの100%系の使用が織物印刷パターンの許容されない手触りの硬さを生じ、この理由から市場で許容されないことが生じる。
【0007】
相当する低粘性有機溶剤の添加による印刷能力を改良するための粘度低下の可能性は生態的理由から最初から排除され、織物のインクジェットに使用する場合に特に衣料品の分野で受け入れられない。水で希釈可能な系の使用は織物加工工程で原則的に考慮される。しかし従来文献に記載される水で希釈可能なUV硬化性印刷インキはインクジェットプリントのために分散剤として顔料を生分解しないアルキルフェノールエトキシレート(APEO)を含み、この物質はその魚毒性および有毒な分解生成物であるために近い将来禁止される。更にこのような製剤中にホルムアルデヒドとアリールスルホン酸の縮合生成物およびナフタリンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合生成物をベースとする分散剤が使用され、これらの物質は同様に生分解が困難であり、更に皮膚に敏感にさせるホルムアルデヒドを逆に形成する問題を有する。この種の系の例はドイツ特許第19739620号、ドイツ特許第19753831号、ドイツ特許第19727766号およびドイツ特許第19727767号に記載される。前記欠点のために100%系も水で希釈可能なUV硬化性系も織物の実用に導入されない。
【0008】
本発明の課題は、できるだけ合理的で、環境にやさしい織物の印刷を、これらの織物の品質および機能性を高くして可能にすることである。
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1および36の特徴が考慮される。本発明の有利な実施態様および有利な構成は従属請求項に記載される。
【0010】
請求項1による本発明の混合物の重要な利点はこの混合物が完全にアルキルフェノールエトキシレート(APEO)およびホルムアルデヒド縮合生成物を含まず、従ってきわめて環境に適することである。
【0011】
他の重要な利点は、本発明による混合物で印刷された織物が引き続く後処理工程なしに柔らかい手触りおよび良好な堅牢性、特に良好な耐光性、耐摩擦性、耐洗浄性を有することである。
【0012】
本発明の方法の重要な利点は、印刷および定着がオンライン法で行われ、すなわち印刷に続いて中間工程なしに直に定着が行われることである。同時に熱を供給する織物の照射を含む、織物に印刷された混合物の定着は合理的に、エネルギーを節約して行うことができる。
【0013】
印刷工程で織物に被覆された混合物を硬化するために、第1の実施態様により電子線を使用することができる。
【0014】
この実施態様において請求項1による成分を有する混合物で十分であり、それは電子線を使用して他の添加剤なしに結合剤の重合が達成され、これにより混合物の顔料と織物の繊維が接着する。
【0015】
選択的にまたは付加的に混合物の硬化を赤外線(IR)を使用して行うことができ、その際このために請求項6および7によるラジカル開始剤の添加が必要である。
【0016】
本発明の有利な実施態様において、印刷される織物を化学物質の含浸で前処理することができる。カチオン化合物および/または希釈剤を予め含浸することにより印刷の際の輪郭特性の改良が達成できる。堅牢性の改良は織物に結合剤および光開始剤および/または付着助剤を予め含浸することにより達成される。
【0017】
有利な実施態様において、本発明の混合物は有利な多色印刷パターンを形成するために着色顔料を含有する。
【0018】
しかし本発明はこの種の印刷パターンの形成に限定されない。むしろ織物の決められた機能性を達成するために異なる顔料の混合物を含有してもよい。
【0019】
顔料は特に白色顔料として形成されてもよく、その際この顔料は特にTiO、硫酸バリウムおよび/または酸化亜鉛からなっていてもよい。これにより白いインキを製造できる。
【0020】
更に明るいインキを製造するために、光学的に明るい顔料を使用することができる。このために、スチルベン、クマリン誘導体、ジフェニルピラゾリン、ビスベンゾアゾレンをベースとする光学的漂白剤が適している。
【0021】
透明な混合物を製造するために、顔料としてナノスケール粒子を使用できる。この種の透明な混合物を使用して例えば人間の目に見えない安全コードを織物に被覆することができ、この織物をUV線またはIR線により眼に見えるようにできる。この種の安全性の特定により本物を偽物と区別できる。
【0022】
他の変形により本発明の混合物は導電性粒子を含有することができ、これによりこうして印刷した織物に特定の導電性または電磁的遮断作用が達成される。選択的にまたは付加的に混合物は磁性粒子を含有することができる。
【0023】
他の変形により本発明の混合物は熱反射または熱吸収粒子を含有することができる。これによりこうして印刷した織物に冷却作用または熱の作用を達成できる。
【0024】
本発明の混合物は分散剤成分としてアルキルスルフェートまたはアルキルスルホネートを含有する。これらは特に可塑剤として作用し、これは本発明の混合物にとって特に印刷された織物の柔らかい手触りを達成するために重要な特性である。
【0025】
更に本発明の混合物はシリコーンをベースとするおよび/または脂肪酸ポリグリコールエステルおよび/またはアルコキシル化脂肪アルコールおよび/またはアルキルアミンポリグリコールエーテルおよび/または脂肪酸アミドポリグリコールエーテルおよび/または脂肪アルコールスルフェートおよび/またはアルキルカルボキシレートをベースとする可塑剤を含有することができる。更に第四級アンモニウム化合物をベースとするカチオン可塑剤を使用することができる。
【0026】
本発明の混合物は有利にインキ調製物として形成されていてもよい。有利な実施態様は請求項24から31に記載されている。この場合に織物の印刷を有利にインキジェット法により行う。インキ調製物の特性、特に粘度をこのインキジェット法の要求に適合できる。
【0027】
本発明の混合物は更にペースト調製物として形成されていてもよい。有利な実施態様は請求項31から33に記載されている。この場合に織物の印刷を有利にスクリーン印刷法により行う。
【0028】
本発明を以下に具体的な実施態様および実施例により詳細に説明する。
【0029】
本発明によるAPEO不含顔料分散液の製造は有利に顔料(成分A)と水および、適当なオキシアルキル化直鎖または分枝状アルカン、脂肪酸または脂肪アルコールおよび/またはアルキルスルフェート/スルホネートおよび/またはポリ電解質および/またはアルキル化および/またはアリール化グリコシドをベースとする分散剤(成分B)とをパールミル中で粉砕することにより達成される。顔料(成分A)は、微粒子の無機または有機顔料またはその混合物であると理解される。この種の顔料の例はピグメントレッド122、ピグメントブラック7、ピグメントブルー15:3、ピグメントイエロー17およびピグメントイエロー83であり、これらは特にCMYKインキ組成物に適している。一般に他の無機または有機着色顔料および色を与えない顔料もインキ組成物に使用できる。顔料に関する分散剤割合は使用される顔料および分散剤に応じて10〜300%の範囲である。パールミル中で粉砕後、顔料分散液を0.1〜10%の必要な使用濃度に水で希釈し、これにより沈殿安定性で、低粘性の(10mPas未満)水ベース顔料分散液が得られ、前記分散液は本発明による特にUV硬化性印刷インキ組成物に適している。
【0030】
本発明による放射線硬化性顔料インキの結合剤(成分C)として、分子当たり少なくとも2個の反応性重合可能な基を有するラジカル硬化性ウレタンアクリレートを使用する。特に有利に親水性に変性されたウレタンアクリレートもしくはウレタンメタクリレートおよび相当する尿素類似化合物(2000g/モルより大きい分子量を有する尿素アクリレートもしくは尿素メタクリレート)が適しており、これらは2段階の合成により容易に製造できる。第1合成段階で、多くアルコキシル化(例えばエトキシル化、プロポキシル化、または混合アルコキシル化)されていてもよくおよび/または官能基を有してもよい、ジオールもしくはポリオール(ジアミンもしくはポリアミン)1モルを、ジイソシアネート(特に有利に段階付けられた反応性を有するジイソシアネート、例えばイソホロンジイソシアネート(IPDI)およびヘキサメチレンジイソシアネートまたはジイソシアネートの混合物)少なくとも2モルと触媒の存在で反応させ、水溶性ジイソシアネートもしくはポリイソシアネートを生成する。第2合成段階で、引き続き得られた水溶性ジイソシアネートもしくはポリイソシアネートの未反応イソシアネート基を触媒の存在でヒドロキシアルキルアクリレートまたはヒドロキシアルキルメタクリレートと反応させ、ウレタンアクリレートもしくはウレタンメタクリレート(尿素アクリレート、尿素メタクリレート)を生成し、これにより分子当たり少なくとも2個の反応性重合可能な基が得られる。得られたウレタンアクリレートもしくはウレタンメタクリレート(尿素アクリレート、尿素メタクリレート)は水溶性であり、水の添加によりインキジェットインキの所望の使用濃度に調節できる。多くの重合可能な基を有する、これらの水で希釈可能なウレタンアクリレートもしくはウレタンメタクリレート(および類似する尿素アクリレート、尿素メタクリレート)の使用により本発明によるUV硬化性インキジェットインキを製造することができ、前記インキは硬化後に架橋されたポリマーフィルムを形成し、前記フィルムは顔料を繊維と接着し、インキ20ml/qmまでの通常の適用量で特に良好な耐摩擦性が得られ、同時に良好な手触りを生じる。この結合剤の他の利点は、前記結合剤が圧電インキジェット印刷機およびバブルジェット印刷機上で水性希釈剤中で20%までの濃度で特に良好に印刷することができ、これにより印刷される塗被物に堅牢性の要求を満たすために、十分に高い結合剤濃度が可能になることである。この結合剤の利点は顔料を添加せずに結合剤を印刷できることである。
【0031】
本発明のUV硬化性インキ組成物は更に光開始剤(成分E)を結合剤に対して14%までの使用濃度で含有する。光開始剤として、種々の一般に知られた光開始剤構造およびその誘導体(例えばα−ヒドロキシケトン、ベンジルケトン、モノマーおよびポリマーヒドロキシケトン、α−アミノケトン、ビスアシルジフェニルホスフィンオキシド(例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)、ベンゾフェノン、アセトフェノン、2−フェニルアセトフェノン、イソプロピルチオキサントン、ケトスルホンをベースとする二官能性光開始剤等)の水性組成物(分散剤および水溶性光開始剤)の特に有利な混合物が適しており、前記構造および誘導体は特定の波長のUV放射線を吸収することができ、吸収されたエネルギーによりラジカルを形成し、ラジカルがポリマー結合剤の重合を開始する。更に窒素含有同時開始剤(例えばエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート)および共同作用する第三級アミンおよびアルコキシル化アクリレートモノマーを添加できる。
【0032】
本発明のUV硬化性顔料インキは他の成分として更に熱活性化ラジカル開始剤(成分F)の水性分散液、例えばジベンゾイルペルオキシド、ペルオキソ二硫酸ナトリウム等を含有することができる。これとともに赤外線を硬化に使用できる。希釈媒体としてガス抜き水(成分D)を使用する。本発明による放射線硬化性インキジェットインキは他の成分として更にインキの流延特性および堅牢性を改良する添加剤を成分Gとして含有することができる。このために特に有利に多価アルコールおよび/またはポリアルキレンアルコールを使用する。更にインキはなお消泡剤、可塑剤、保存剤および増粘剤のような他の助剤の添加剤を成分Hとして含有することができる。
【0033】
本発明によるUV硬化性水性顔料インキは特に有利に以下の組成物を有する。
顔料割合(A):10%まで(標準的CMYKの通常の濃度2%)
分散剤(B):6%まで(標準的CMYKは顔料割合2%)
結合剤(C):水溶性UV硬化性結合剤10%まで
光開始剤(E):活性光開始剤1.4%まで
ラジカル開始剤(F):1%まで
吸湿性添加剤(G):5%まで
添加剤(H):界面活性剤、可塑剤、消泡剤、保存剤0.5%まで
ガス抜き水(D):残部。
【0034】
印刷インキの製造は成分A〜CおよびE、Fおよび成分GおよびHを、必要な使用量で、適当な装置(例えば攪拌装置を有するガラスビーカー)中に一緒に入れ、まず10分攪拌するように行う。引き続き集中的に攪拌しながら15分以内にガス抜き水を加えて必要な使用濃度に希釈する。こうして製造した印刷インキを使用する前に以下の多段階法により濾過する。
【0035】
【表1】

【0036】
ろ過したインキは印刷に使用できるように用意され、バブルジェット印刷機および圧電インキジェット印刷機に使用できる。前記インキを使用してインキジェット印刷機を使用して織物に直接印刷することができ、後方に接続されたUV定着装置により中間乾燥せずに70℃より高い作業温度で定着する。UV定着装置は有利にUVスキャナーとして形成され、前記スキャナーにおいてUV放射線源または放射線源から放射されるUV放射線を周期的に供給する。
【0037】
印刷試験はミマキJV2−130インキジェットプリンターを使用して実施し、前記プリンターはドロップ・オン・デマンド(DOD)法により圧電技術により運転する。印刷解像度720dpiおよび8パスおよび印刷速度5qm/hで印刷され、これにより平均インキ塗布量約18.7ml/mで完全に印刷された平面が得られた。ノズル直径は20μmであった。他の印刷試験はENCADTX1500(バブルジェットプリンター)を使用して印刷速度6qm/分で実施し、印刷解像度は360dpiで4パスであった。インキ塗布量は約15ml/mであり、ノズル直径は45μmであった。種々の細かい線および色平面からなるパターンおよび全面印刷(幅90cm)を印刷し、これらは輪郭特性、色の濃さおよび完全印刷の評価を可能にした。
【0038】
印刷パターンのオンライン定着を、印刷の間連続的に、5個のダブル放射線(5パス)を有する、インキジェットプリンターの後方に接続されたUVスキャナー、IST−METZ社(Nuertingen)により行った。織物の全平均放射児管が最大10秒になるようにUVスキャナーを調節した。出力200W/cmを有するHg−UVランプを使用して織物との間隔約5cmで定着した。使用されるUVスキャナーの赤外線に起因して定着の間織物が70℃より高く加熱し、これにより結合剤の定着が本発明により有利に保護された。コールドライトUV定着装置を使用する場合は、必要な堅牢度を達成するために、織物を別の装置を使用して70℃より高く加熱しなければならなかった。
【0039】
本発明のインキを使用して本発明の方法により印刷され、定着された織物は高い堅牢度の色の濃い印刷パターンを生じる。この方法により印刷される織物は更にすぐれた乾燥および湿潤堅牢性および高い光堅牢性、特に柔らかい手触りを示す。本発明の他の利点はポリプロピレンおよび繊維混合物を高い堅牢性で印刷する可能性である。
【0040】
例1
インキ組成物のために、Minerva/イタリア社のAPEO不含顔料分散液を使用した。この場合にProjekt Innoprintからの製品、すなわちピグメントブルー153−16、ピグメントレッド122−01およびピグメントイエロー83−02およびピグメントブラック07−01を使用し、これらは10%水性分散液として存在し、それぞれ製造したインキに対して20%の割合で入れた。結合剤としてウレタンアクリレートベースの水で希釈できる系、名称Ebecryl2001、UCB/ベルギーを使用し、この系は製造したインキに対して10%の割合で装入物に添加された。他の主成分として、水に分散された光開始剤(EsacureDP250)、Lamberti/イタリアを製造したインキに対して0.3%の割合で添加し、引き続き10分攪拌する。引き続きガス抜き水69.7%を使用して集中的に攪拌しながら15分以内で必要な使用濃度に希釈した。こうして製造した印刷インキを使用する前に引き続く多段階の方法により約100ミリバールの真空を適用して濾過した。
【0041】
【表2】

【0042】
濾過したインキは印刷できるように用意され、5mPas未満のインキ粘度を有し、20〜50mN/mの範囲の表面張力を示した。このインキはバブルジェットプリンター(Encad)および圧電インキジェットプリンター(ミマキ)で直接織物の印刷に使用できた。
【0043】
以下に示される印刷機の結果はミマキJV2−130インキジェットプリンターを使用して達成され、このプリンターはDOD法により圧電技術により運転される。印刷解像度720dpiおよび8パスおよび印刷速度5qm/hで印刷され、これにより平均インキ塗布量約18.7ml/mで完全に印刷された平面が得られた。ノズル直径は20μmであった。印刷パターンのオンライン定着は印刷の間連続的に、5個のダブル放射線(5パス)を有するインキジェットプリンターの後方に接続されたUVスキャナー、IST−METZ社(Nueringen)により行った。織物の全平均照射時間が最大10秒になるように、UVスキャナーを調節した。出力200W/cmを有するHg−UVランプを使用して織物との間隔約5cmで定着した。使用されるUVスキャナーの赤外線に起因して織物が定着の間70℃より高く加熱し、これにより結合剤の定着が本発明により有利に保護された。定着の際に露光値に依存してスキャナー速度300mm/秒で以下の温度を測定した。
1.露光 37℃
2.露光 43℃
3.露光 49℃
4.露光 70℃
5.露光 77℃
6〜10.露光 88℃。
【0044】
綿100%からなる印刷前処理された織物を印刷した。ポリエステルおよびビスコースからなる織物を比較して更に印刷した。
【0045】
以下の印刷パターンの特性が確認された。
【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
【表8】

【0052】
結果が示すように、インキジェットプリンターで織物に印刷可能な、UV硬化性インキを製造することができ、特性水準は通常の熱硬化性顔料インキの範囲およびそれより高い。インキは連続的運転に適しており、オンライン定着できる。達成可能な色の濃さは十分であることが示される。乾燥および湿潤耐摩擦性は等級3〜4およびそれより高くきわめて良好であると示され、使用される標準的インキ(BASF EVOP100、160℃で熱定着3分)の相当する値を部分的にかなり上回る。堅牢性の他の改良は酸素減少雰囲気(不活性ガス)中で印刷される塗被物の硬化により達成される(表7)。更にすぐれた耐洗浄性が最高等級5で得られる。製造された印刷パターンの柔らかい手触り(曲げ強さの値は比較パターンより低い)およびきわめて良好な光堅牢性が示され、前記堅牢性はすべての色で6〜7およびそれより高い堅牢等級が達成される。
【0053】
例2
例1からの印刷の用意ができたインキを使用して例1と同様の方法で綿に印刷パターンを製造し、その際印刷面に向かって開いたUVランプのケーシングを照射の間不活性ガスで洗浄した。不活性ガスとして窒素ガスを選択し、窒素ガスが250l/分の流れで露光領域で酸素減少雰囲気を形成した(酸素含量1000ppm未満)。酸素減少雰囲気中で硬化された印刷パターンは良好な耐摩擦性を示した。
【0054】
【表9】

【0055】
例3
導電性UV硬化ペーストを黒鉛の使用により製造できる。このために黒鉛粉末20gを分散剤、Brij78(エイコサエチレングリコール−オクタで知るエーテル)5gと一緒に水50mlに予め入れ、パールミル中で30分粉砕する。この分散液に名称Ebecryl2001、UCB/ベルギーのウレタンアクリレートベースの水で希釈可能の結合剤2gを攪拌しながら導入し、水で分散された光開始剤Esacure DP250、Lamberti/イタリア0.2gを添加し、引き続き5分攪拌した。引き続き増粘剤Prisulon SNP113S(CHT/ドイツ)1.5gを添加し、水を加えてペースト100gに満たし、印刷ペーストを製造するために更に30分攪拌した。同様の方法で結合剤および光開始剤のない比較ペーストを製造した。
【0056】
平面フィルム印刷機、Zimmer社を使用して印刷速度5m/分で綿に印刷した。印刷パターンの定着は例1に記載と同じ条件下で行った。耐摩擦性を評価するために、印刷されたパターンをクロックメーターで100回の擦る運動にさらし、1cmの測定電極の間隔で電気抵抗を測定した。以下の測定値が得られた。
【0057】
【表10】

【0058】
電気抵抗の測定が示すように、導電性ペースト中のUV硬化性結合剤の使用は耐摩擦性の明らかな改良を生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)少なくとも1種の顔料
B)オキシアルキル化線状または分枝状アルカン、脂肪酸または脂肪アルコールおよび/またはアルキルスルフェートまたはアルキルスルホネートおよび/またはポリ電解質および/またはアルキル化および/またはアリール化グリコシドをベースとする少なくとも1種の分散剤
C)2000g/モルより大きい分子量および少なくとも1個のウレタン基または尿素基により結合剤分子と結合している、結合剤分子当たり少なくとも2個の重合可能な基を有する少なくとも1種の水溶性または水で希釈可能な放射線硬化可能な結合剤
D)水
を含有する織物を印刷するための混合物。
【請求項2】
結合剤が電子線を使用して硬化可能である請求項1記載の混合物。
【請求項3】
混合物が他の成分として
E)少なくとも1種の水溶性または水に分散された光開始剤
を含有する請求項2記載の混合物。
【請求項4】
光開始剤として、α−ヒドロキシケトン、ベンジルケトン、モノおよびポリマーヒドロキシケトン、α−アミノケトン、ビス−アシル−ジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、アセトフェノン、2−フェニルアセトフェノン、またはイソプロピルチオキサントンを使用することができ、その際光開始剤に同時開始剤、特に窒素含有同時開始剤、第三級アミンおよび/またはアルコキシル化アクリレートモノマーを添加することができる請求項3記載の混合物。
【請求項5】
結合剤がUV放射線を使用して硬化可能である請求項3または4記載の混合物。
【請求項6】
混合物が他の成分として
F)少なくとも1種の熱活性化ラジカル開始剤を含有する請求項1から5までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項7】
ラジカル開始剤がジベンゾイルペルオキシドまたはペルオキソ二硫酸ナトリウムから形成される請求項6記載の混合物。
【請求項8】
結合剤が赤外線を使用して硬化可能である請求項6または7記載の混合物。
【請求項9】
結合剤の重合可能な基がアクリレートまたはメタクリレートである請求項1から8までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項10】
顔料として有機または無機着色顔料が用意される請求項1から9までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項11】
顔料として白色顔料が用意される請求項1から10までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項12】
白色顔料がTiO、硫酸バリウムおよび/または酸化亜鉛からなる請求項11記載の混合物。
【請求項13】
顔料として導電性粒子が用意されている請求項1から12までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項14】
導電性粒子が黒鉛、カーボンブラック、錫アンチモン酸化物または金属粒子からなる請求項13記載の混合物。
【請求項15】
顔料として磁性粒子が用意される請求項1から14までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項16】
磁性粒子が鉄またはFeからなる請求項15記載の混合物。
【請求項17】
顔料として熱反射粒子が用意される請求項1から15までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項18】
熱反射粒子がTiOまたは金属酸化物が被覆された雲母からなる請求項17記載の混合物。
【請求項19】
顔料として熱吸収粒子が用意される請求項1から18までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項20】
熱吸収粒子がSbドープSnOまたはカーボンブラックからなる請求項19記載の混合物。
【請求項21】
混合物がナノスケールの粒子を使用することにより顔料として光学的に透明な特性を有する請求項1から20までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項22】
混合物が光学的に明るい顔料を有する請求項1から21までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項23】
顔料がスチルベン、クマリン誘導体、ジフェニルピラゾリンまたはビスベンゾアゾレンから形成される請求項22記載の混合物。
【請求項24】
混合物がインキ調製物から形成される請求項1から23までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項25】
インキ調製物が質量に対して以下の割合:
成分A0.1〜10質量%
成分B0.1〜30質量%
成分C0.1〜15質量%
成分E0.1〜5質量%
成分F0.1〜5質量%
成分D少なくとも50質量%
を有する請求項24記載の混合物。
【請求項26】
付加的成分Gとしてインキ調製物中に流延性を改良するために水より高い沸点を有する一価アルコールおよび/またはポリアルキレングリコールが含有される請求項24または25記載の混合物。
【請求項27】
付加的成分Hとしてインキ調製物中に界面活性剤、可塑剤、消泡剤および/または保存剤から形成される添加剤が含有される請求項24から26までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項28】
シリコーンをベースとするおよび/または脂肪酸ポリグリコールエステルをベースとする可塑剤および/または可塑剤としてアルコキシル化脂肪アルコールおよび/またはアルキルアミノポリグリコールエーテルおよび/または脂肪酸アミドポリグリコールエーテルおよび/または脂肪アルコールスルフェートおよび/またはアルキルカルボキシレートおよび/または第四級アンモニウム化合物をベースとするカチオン可塑剤が使用可能である請求項27記載の混合物。
【請求項29】
インキ調製物が成分Gおよび/またはH0.1〜10質量%を含有する請求項26から28までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項30】
インキ調製物が10mPas未満のインキ粘度および20〜50mN/mの範囲の表面張力を有する請求項24から29までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項31】
顔料が0.8μm未満の粒度を有する請求項24から30までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項32】
混合物がペースト調製物から形成される請求項1から23までのいずれか1項記載の混合物。
【請求項33】
ペースト調製物がインキ調製物の成分と並んで他の成分として増粘剤を有する請求項32記載の混合物。
【請求項34】
増粘剤がポリアクリル酸ベースおよび/またはポリビニルアルコールベースの物質であり、またはグアル、澱粉、カルボキシメチルセルロース、アルギネートまたはその混合物から形成される請求項33記載の混合物。
【請求項35】
ペースト調製物が10mPasより大きいペースト粘度を有する請求項34記載の混合物。
【請求項36】
請求項1から35までのいずれか1項記載の混合物を使用して織物を印刷し、直後に放射線の作用を使用して70℃より高く、140℃より低い温度で印刷物を定着することからなる、連続的処理工程によりインキを処理する方法。
【請求項37】
定着を電子線、UV線および/または赤外線を使用して行う請求項36記載の方法。
【請求項38】
印刷をインキの形で存在する混合物を使用してインキジェット法で行う請求項36または37記載の方法。
【請求項39】
印刷をペーストの形で存在する混合物を使用してスクリーン印刷法で行う請求項37または38記載の方法。
【請求項40】
織物の照射を酸素減少雰囲気で行う請求項36から39までのいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
印刷される織物を含浸化学物質を使用して前処理する請求項36から40までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2008−533217(P2008−533217A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552531(P2007−552531)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/014053
【国際公開番号】WO2006/079415
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(507251402)
【氏名又は名称原語表記】ITCF Institut fuer Textilchemie und Chemiefasern
【住所又は居所原語表記】Koerschtalstr. 26, D−73770 Denkendorf, Germany
【Fターム(参考)】